JP6389150B2 - 水洗大便器 - Google Patents

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Description

本発明は、水洗大便器に関する。
大便器の便鉢部には、洗浄水を吐き出すための開口として、リム吐水孔の他にジェット吐出孔が形成されることがある。リム吐水孔は、便鉢部のリム部に形成され、リム吐水孔から吐き出される洗浄水により便鉢部全体が洗浄される。ジェット吐出孔は、便鉢部の底部等に形成され、ジェット吐出孔から吐き出される洗浄水により、汚物の排出を促進するための水流が形成される。
例えば、特許文献1の図1には、リム部の外周側にリム通水路を形成し、リム通水路の途中位置から分岐するジェット用連通路を形成した便器が開示されている。この便器では、リム通水路に供給される洗浄水を、リム吐水孔から吐き出すとともに、ジェット用連通路を通してジェット吐出孔から吐き出す構造となっている。
特開2008−45276号公報
ところで、特許文献1の便器では、リム通水路の始端側から終端側に向かう経路の途中位置にジェット用連通路の水導入口が開口している。よって、リム通水路内の洗浄水はジェット用連通路に流れ方向を変えずにリム吐水孔に向けて流れ易くなっている。このため、リム通水路からジェット用連通路に洗浄水を取り込み難く、ジェット吐出孔から吐き出される洗浄水の勢いが弱いという問題点がある。
これを改善するため、特許文献1の図5のように、リム部の外周側に左右二つのリム通水路を形成し、一方のリム通水路にはリム吐水孔を形成し、他方のリム通水路はジェット用連通路に連通する構造にすることも考えられる。
ここで、洗浄態様の自由度を高めるため、リム部に複数のリム吐水孔を形成し、二つのリム通水路のそれぞれに供給される洗浄水を、別々のリム吐水孔から吐き出すように構成することがある。特許文献1の便器は、リム部に単数のリム吐水孔しか形成されておらず、このような複数のリム吐水孔がある場合を想定したものではない。また、特許文献1の便器は、このような複数のリム吐水孔を設けつつ、ジェット吐出孔から勢いよく洗浄水を吐き出せるように工夫したものでもない。
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、左右のリム通水路を通してリム吐水孔から洗浄水を吐き出しつつ、吐出孔から勢いよく洗浄水を吐き出せる水洗大便器を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明のある態様は水洗大便器である。水洗大便器は、リム部が上端部に形成される便鉢部と、前記リム部の外周側に形成される便器本体の左右一方側の第1リム通水路と、前記リム部の外周側に形成される便器本体の左右他方側の第2リム通水路と、前記第1リム通水路内から前記便鉢部内に吐水するための第1リム吐水孔と、前記第2リム通水路内から前記便鉢部内に吐水するための第2リム吐水孔と、前記便鉢部の底部、又は、該底部に接続される排水通路部に形成される吐出孔と、前記第1リム通水路と前記吐出孔を連通する連通路と、を備え、前記第1リム吐水孔は、前記第1リム通水路の始端側より終端側に向かう経路の途中位置から分岐して形成され、前記連通路の水導入口は、前記第1リム吐水孔より前記第1リム通水路の終端側に開口することを特徴とする。
この態様によれば、第1リム通水路の終端部まで流れ込んだ洗浄水は、そこから流れ方向を変えるしかなく、その近傍にある水導入口に流れ方向を変えて導入され易くなる。よって、第1リム通水路から連通路に洗浄水を取り込み易くなり、高水圧の洗浄水を吐出孔から吐き出し易くなる。この結果、左右のリム通水路に洗浄水を供給して複数のリム吐水孔から洗浄水を吐き出しつつ、吐出孔から勢いよく洗浄水を吐き出せるようになる。
本発明によれば、左右のリム通水路を通してリム吐水孔から洗浄水を吐き出しつつ、吐出孔から勢いよく洗浄水を吐き出せる水洗大便器を提供できる。
実施形態に係る水洗大便器の平面図である。 図2は図1のA−A線断面図である。 図2のB−B線断面図である。 図3の左リム通水路の拡大図である。 図4のD−D線断面図である 図4のE−E線断面図である。 本実施形態に係る各リム通水路の内底面に形成される勾配を模式的に示す図である。 図8(a)は第1変形例に係る左リム通水路を示す図であり、図8(b)は絞り部に関する説明図である。 図5の絞り部に関する説明図である。 第2変形例に係る絞り部を示す図である。
以下、実施形態、変形例では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略する。
図1は本実施形態に係る水洗大便器10の平面図である。
水洗大便器10は、陶器を素材とする便器本体12を備える。便器本体12は、トイレ室の側壁面100に掛けた状態で取り付けられる壁掛け型便器である。
図2は図1のA−A線断面図である。
便器本体12は、便器本体12の前部に形成される便鉢部14と、便鉢部14の底部に接続される排水通路部16と、を備える。排水通路部16は、便鉢部14内から下水側水路(不図示)に排出される汚物の通り道となる。排水通路部16は、通水方向の空気の流れを遮断するための封水18が貯められるトラップ部20を備える。トラップ部20の下流端部には接続管102が接続され、排水通路部16は接続管102を介して下水側水路に接続される。
図3は図2のB−B線断面図である。
便鉢部14は、図2、図3に示すように、汚物を受けるための鉢状の受け面部22と、受け面部22の下縁部から下方に窪むとともに便鉢部14の底部に形成される凹部24と、便鉢部14の上端部に形成されるリム部26と、を備える。受け面部22は、平面視にて左右寸法より前後寸法が大きくなるような楕円状に形成される。凹部24の底面部には排水通路部16の入口16aが開口し、凹部24には封水18の一部が溜水28として貯められる。
便器本体12は、図3に示すように、洗浄水を吐き出すための吐水部30を備える。吐水部30は、リム部26の外周側に形成される二つのリム通水路32L、32Rと、各リム通水路32L、32Rのそれぞれに洗浄水を供給するための共通通水路34(図2も参照)と、リム部26に形成される二つのリム吐水孔36L、36Rと、を有する。また、吐水部30は、便鉢部14の凹部24に形成されるジェット吐出孔38と、ジェット吐出孔38に洗浄水を供給するためのジェット用連通路40と、を有する。水洗大便器10は、リム通水路32Lに主な特徴の一つがあるが、先に吐水部30の他の特徴から説明する。
二つのリム通水路32L、32Rには、便器本体12の左右一方側となる左側の左リム通水路32L(第1リム通水路)と、便器本体12の左右他方側となる右側の右リム通水路32R(第2リム通水路)とが含まれる。左リム通水路32Lは、図1に示すように、便器本体12の左右中心線CLに対して左側に配置される。右リム通水路32Rは、便器本体12の左右中心線CLに対して右側に配置される。この左右中心線CLとは、便器本体12の外面部分の左右寸法を二等分して前後方向に沿って延びる直線をいう。
図3に戻り、各リム通水路32L、32Rは共通通水路34の下流端部から左右に分岐して形成される。各リム通水路32L、32Rの分岐元になる分岐位置42はリム部26の後方に配置される。共通通水路34には、図2に示すように、洗浄水供給装置104の一部となる送水管104aから洗浄水が供給される。
左リム通水路32Lは、分岐位置42側の始端部32aから周方向の一方側(図3中の時計回り方向)に延びるように形成される。左リム通水路32Lの延び方向の末端位置にある終端部32bは行き止まりとなるように形成される。左リム通水路32Lの詳細は後述する。
右リム通水路32Rは、始端側となる分岐位置42から周方向の他方側(図3中の反時計回り方向)に延びるように形成される。右リム通水路32Rの延び方向の末端位置となる終端部には右リム吐水孔36Rが形成される。以下、「周方向の一端側」を時計回り方向といい、「周方向の他端側」を反時計回り方向という。
二つのリム吐水孔36L、36Rには、便器本体12の左側の左リム吐水孔36L(第1リム吐水孔)と、便器本体12の右側のリム吐水孔36R(第2リム吐水孔)とが含まれる。左リム吐水孔36Lは、図1に示すように、便器本体12の左右中心線CLに対して左側であって、便鉢部14の後部に配置される。右リム吐水孔36Rは、便器本体12の左右中心線CLに対して右側であって、便鉢部14の前後方向での中間位置に配置される。
図3に戻る。左リム吐水孔36Lは、左リム通水路32Lから便鉢部14内に吐水するためのものである。右リム吐水孔36Rは、右リム通水路32Rから便鉢部14内に吐水するためのものである。二つのリム吐水孔36L、36Rからは、リム部26の内周面に沿って反時計回り方向に洗浄水が吐き出される。これにより、便鉢部14の内面、特に、リム部26や受け面部22の内面を洗浄するための水流が形成される。この水流は、便鉢部14内を反時計回り方向に旋回するように導かれる旋回流となる。
ジェット吐出孔38は、便鉢部14の凹部24の左側かつ前側の壁面に形成される。ジェット吐出孔38からは便鉢部14の凹部24内の溜水28(図2参照)に向けて洗浄水が吐き出される。詳しくは、便鉢部14の凹部24の溜水28に向けて、凹部24の内周面に沿うように反時計回り方向に洗浄水が吐き出される。これにより、便鉢部14の凹部24内に反時計回りの旋回流が形成され、この旋回流により凹部24内の汚物が旋回中心に集められる。この汚物は、受け面部22上から凹部24内に流れ込む洗浄水によって、排水通路部16内に入口16aを通して押し流される。このように、ジェット吐出孔38から吐き出される洗浄水により、汚物の排出を促進するための水流が溜水28に形成される。
ジェット用連通路40は、左リム通水路32Lとジェット吐出孔38を連通する。ジェット用連通路40は、左リム通水路32Lからジェット吐出孔38にかけて順に設けられる、第1部分40a、第2部分40b及び第3部分40を有する。第1部分40aは、左リム通水路32Lの内壁面に開口する水導入口40d(後述する)から下方かつ便鉢部14の径方向内側に向かって延びる。第2部分40bは、便鉢部14の外周側にて、第1部分40aの下流端部から時計回り方向かつ下方に向かって曲がりながら延びる。第3部分40cは、第2部分40bの下流端部からジェット吐出孔38に向かって後方に延びる。
図4は図3の左リム通水路32Lの拡大図である。
左リム通水路32Lは、始端部32aから終端部32bに向けてL字状に曲がりながら延びる形状である。左リム通水路32Lに始端部32aから供給される洗浄水は、左リム通水路32Lの内壁面に当たることで流れ方向を変えつつ終端部32bまで誘導される。このように左リム通水路32Lは、始端側から終端側に向けて洗浄水を誘導可能に形成される。
左リム吐水孔36Lは、左リム通水路32Lの始端側より終端側に向かう経路Paの途中位置から分岐して形成される。左リム吐水孔36Lは、この途中位置から便鉢部14の内側、かつ、反時計回り方向に延びるように形成される。
ジェット用連通路40内に洗浄水を導入するための水導入口40dは、左リム吐水孔36Lより左リム通水路32Lの終端側に開口する。詳しくは、水導入口40dは、左リム通水路32Lの終端部32bの内底面に開口する。また、この水導入口40dは、便器本体12の左側にて左リム吐水孔36Lより便器本体12の前方側に配置される。
左リム通水路32Lに始端側から供給される洗浄水は、左リム通水路32Lに誘導されることにより、左リム吐水孔36Lより水導入口40d側にある水路部分に先に流れ込む。左リム吐水孔36Lより水導入口40d側の水路部分が洗浄水で満たされはじめると、洗浄水の一部は、左リム通水路32Lの始端側から終端側に向かう途中で流れ方向を変えて左リム吐水孔36Lに流入する(方向Pb参照)。このように左リム吐水孔36Lは、左リム通水路32Lの始端側から供給される洗浄水が流れ方向を変えることで流入可能な位置に形成される。
図5は図4のD−D線断面図であり、図6は図4のE−E線断面図である。
左リム通水路32Lには、図4〜図6に示すように、左リム吐水孔36Lと水導入口40dの間に絞り部44が形成される。図4では絞り部44の位置を二点鎖線で示す。
絞り部44は、左リム通水路32Lの始端側から終端側に向かう洗浄水の流れを絞るために形成される。絞り部44は、左リム通水路32Lの内壁面から突き出る壁部分44aと、洗浄水が通過可能な通水部分44bと、を有する。通水部分44bは、左リム通水路32Lの内壁面と壁部分44aとにより囲まれた開口部として形成される。絞り部44は、左リム通水路32L内の空間が始端側から終端側に向かって狭められた後に広がるように形成される。絞り部44は、左リム通水路32Lの絞り部44より始端側にある水路部分32d(以下、始端側水路部分32dという)から、左リム通水路32Lの絞り部44より終端側にある水路部分32e(以下、終端側水路部分32eという)に流れ込む洗浄水の流量を減少させる機能をもつ。
以上の水洗大便器10の動作を説明する。
図2、図3に示すように、共通通水路34には、送水管104aから洗浄水が供給される。送水管104aから洗浄水が供給されると、共通通水路34の分岐位置42から各リム通水路32L、32Rに洗浄水が分岐して供給される(図3の方向Wp参照)。右リム通水路32Rを流れる洗浄水は右リム吐水孔36Rから吐き出される。左リム通水路32Lを流れる洗浄水の一部は左リム吐水孔36Lから吐き出され、残部はジェット用連通路40を通してジェット吐出孔38から吐き出される。
ここで、仮に、左リム通水路32Lの終端部32bに左リム吐水孔36Lが形成され、始端側から終端側に向かう経路の途中位置にジェット用連通路40の水導入口40dが開口する場合を考える。この場合、左リム通水路32L内を始端側から流れる洗浄水は、ジェット用連通路40があっても流れ方向を変えずに終端部32bの左リム吐水孔36Lまで誘導され易くなる。よって、左リム通水路32L内からジェット用連通路40を通して洗浄水を取り込み難くなり、高水圧の洗浄水をジェット吐出孔38から吐き出し難くなる。
(A)一方、本実施形態の水洗大便器10によれば、左リム通水路32Lの終端部32bまで流れ込んだ洗浄水は、そこから流れ方向を変えるしかなく、その近傍にある水導入口40dに流れ方向を変えて導入され易くなる。よって、左リム通水路32Lからジェット用連通路40に洗浄水を取り込み易くなり、高水圧の洗浄水をジェット吐出孔38から吐き出し易くなる。この結果、左右のリム通水路32L、32Rに洗浄水を供給して複数のリム吐水孔36L、36Rから洗浄水を吐き出しつつ、ジェット吐出孔38から勢いよく洗浄水を吐き出せるようになる。
(B)また、左リム通水路32Lには左リム吐水孔36Lと水導入口40dの間に絞り部44が形成される。このため、左リム通水路32Lの絞り部44より始端側にある水路部分まで流れ込んだ洗浄水のうちの一部が、絞り部44を通して、左リム通水路32Lの絞り部44より終端側にある水路部分に流れ込む。よって、左リム通水路32Lの絞り部44より始端側にある水路部分の方が、絞り部44より終端側にある水路部分よりも、早期に洗浄水が満たされ易くなる。これにより、絞り部44より始端側にある水路部分の洗浄水による水圧を早期に高めることができ、その水路部分から左リム吐水孔36Lを通して高水圧の洗浄水を早期に吐き出せるようになる。この結果、一回の洗浄動作の中で、高水圧の洗浄水を左リム吐水孔36Lから吐き出す時間を長くでき、それだけ便器洗浄能力や汚物排出能力を高め易くなる。
もともと、本実施形態の水洗大便器10では、左リム吐水孔36Lより左リム通水路32Lの終端側の水路部分がある分、高水圧の洗浄水を左リム吐水孔36Lから吐き出すタイミングが遅くなり易い。この場合でも、左リム吐水孔36Lと水導入口40dの間に絞り部44を形成することで、高水圧の洗浄水をジェット吐出孔38から吐き出しつつ、高水圧の洗浄水を左リム吐水孔36Lから早期に吐き出せるようになる利点がある。
また、この他にも、絞り部44の通水部分44dの寸法調整により、左リム通水路32Lの始端側から、左リム吐水孔36L及びジェット吐出孔38のそれぞれに分配される洗浄水の分配量を調整できるようになる。
次に、水洗大便器10の他の特徴を説明する。
各リム通水路32L、32Rに残留した残留水は、すじ状の水(以下、すじ状水という)となって、各リム吐水孔36L、36Rから便鉢部14の内面を伝って流れ落ちる場合がある。このすじ状水は、便鉢部の内面を伝う経路を不規則に変えながら流れるうえ、長期間に亘って流れ落ちることもあり、見栄えの低下を招く原因となる。以下、これを改善するための工夫点を説明する。
図7は各リム通水路32L、32Rの内底面に形成される勾配を模式的に示す図である。本図では高位置から低位置に向かう勾配を矢印により示す。各リム通水路32L、32Rの内底面には、各リム吐水孔36L、36Rから奥側に向かうにつれて下り傾斜となる勾配が設けられる。
詳しくは、左リム通水路32Lの内底面には、各リム通水路32L、32Rの分岐元となる分岐位置42側が高位置となり、ジェット用連通路40の水導入口40dが低位置となる第1勾配50が設けられる。第1勾配50は、左リム吐水孔36Lから奥側に向かうにつれて下り傾斜となるように設けられる。右リム通水路32Rの内底面には、右リム吐水孔36Rが高位置となり、各リム通水路32L、32Rの分岐位置42側が低位置となる第2勾配52が設けられる。第2勾配52は、右リム吐水孔36Rから奥側に向かうにつれて下り傾斜となるように設けられる。なお、各リム通水路32L、32Rの分岐位置42には下向きに窪む窪み部54が形成される。
以上の勾配52、54により、ジェット用連通路40の水導入口40dは、各リム吐水孔36L、36Rより低位置に少なくとも一部が配置される。本実施形態に係る水導入口40dは、各リム吐水孔36L、36Rより低位置に全体が配置される。
以上の構成の利点を説明する。洗浄水供給装置104からの洗浄水の供給が終了すると、各リム通水路32L、32R内の水は、各リム吐水孔36L、36Rの他に、左リム通水路32Lの水導入口40dを通してジェット用連通路40から排出される。ここで、各リム吐水孔36L、36Rの下縁近くまで各リム通水路32L、32R内の水位が下がった状況を考える。この状況のとき、各リム通水路32L、32Rの内底面上に残留する残留水は、各リム吐水孔36L、36Rより低位置にある水導入口40dを通してジェット用連通路40から排出でき、各リム吐水孔36L、36Rを通して便鉢部14内に流れる水の量を減らし易くなる。これにより、前述の状況のように各リム通水路32L、32R内の水位が下がったとき、各リム吐水孔36L、36Rから便鉢部14の内面をすじ状水が流れ落ちるのを防止でき、便器洗浄に起因する便鉢部14内の見栄えの低下を効果的に防止できる。
なお、ここでの「残留水」には、便器洗浄に用いられる洗浄水が残留して形成されるものが含まれる。また、この他にも、便器洗浄により溜水28がトラップ部20から排出された後、再び溜水28を溜めるために供給される補給水が残留して形成されるものも含まれる。
また、各リム通水路32L、32R内の水位が下がる過程において、各リム通水路32L、32Rの内底面上の水を、第1勾配50、第2勾配52により、ジェット用連通路40の水導入口40dまで自重によって導き易くなる。よって、各リム通水路32L、32Rの内底面上の水をジェット用連通路40を通して排出でき、各リム吐水孔36L、36Rを通して便鉢部14内に流れる水の量を減らし易くなる。この結果、各リム通水路32L、32R内の水位が下がる過程において、各リム吐水孔36L、36Rから便鉢部14の内面をすじ状水が流れ落ちるのをより効果的に防止でき、便器洗浄に起因する便鉢部14内の見栄えの低下を更に効果的に防止できる。
ここで、図5に示すように、絞り部44に対して左リム吐水孔36L側(始端側)にある水路部分36dを始端側水路部分36dといい、絞り部44に対して水導入口40d側(終端側)にある水路部分36eを終端側水路部分36eという。このとき、絞り部44の通水部分44bの底面44cは、始端側水路部分36dの内底面と、終端側水路部分36eの内底面とを、左リム吐水孔36L側から水導入口40d側に向かって下り傾斜の面で滑らかに連ねるように接続する。この底面44cは、図6に示すように、絞り部44の形成位置において、左リム通水路32Lの水路幅方向の全幅に亘る範囲で形成される。このような絞り部44は、左リム通水路32Lの内底面上を伝わる残留水を、左リム吐水孔36L側から水導入口40d側に向けて方向Pcに導水可能な形状をもつことになる。
これにより、絞り部44に対して左リム吐水孔36L側から水導入口40d側に残留水が淀みなく流れ易くなる。よって、左リム通水路32Lに絞り部44が形成される場合でも、各リム通水路32L、32R内からジェット用連通路40を通して洗浄水を排出し易くなる。この結果、各リム吐水孔36L、36Rから便鉢部14の内面をすじ状水が流れ落ちるのを効果的に防止できる。
なお、このような観点から、絞り部44の底面44cは、始端側水路部分32dの内底面と、終端側水路部分32eの内底面とを、始端側から終端側に向かって水平に連ねるように接続するか、始端側より終端側が低位置となるように接続していればよい。いずれの場合でも、左リム通水路32Lの内底面上を伝わる残留水を、左リム吐水孔36L側から水導入口40d側に向けて導水可能な形状をもつことになる。
また、このような作用効果を発揮する観点から、絞り部44の底面44cは、絞り部44の形成位置において、左リム通水路32Lの水路幅方向の一部に亘る範囲で形成されていればよい。
ちなみに、前述のように、左リム通水路32Lの内底面には、ジェット用連通路40の水導入口40dに近づくにつれて下り傾斜となる第1勾配50(図7参照)が設けられる。よって、左リム通水路32Lの終端側水路部分36e内の洗浄水に給水圧に応じた水圧が付与されたとき、その終端側水路部分36e内の洗浄水が第1勾配50に沿って水導入口40dに向けてスムーズに誘導され易くなる。この結果、左リム通水路32Lからジェット用連通路40に洗浄水を更に取り込み易くなり、高水圧の洗浄水をジェット吐出孔38から更に吐き出し易くなる。
次に、水洗大便器10の他の特徴を説明する。
図8(a)は第1変形例に係る左リム通水路32Lを示す図である。本図では図5と同様の視点から左リム通水路32Lを示す。
本例の絞り部44は、図5の例と比べて、始端側水路部分32dと、終端側水路部分32eとの間で、これらの下側領域を通る流体の流れを遮るように壁部分44aが形成される点で異なる。なお、この水洗大便器10でも前述の(A)、(B)の作用効果を得られる。
このような絞り部44がある場合、本発明者が実験的検討をしたところ、ジェット吐出孔38から気泡が吐き出され易くなるという知見を得た。このようにジェット吐出孔38から気泡が吐き出されると、気泡の破裂音が生じたり、見た目の面から違和感があるため、使用者に不快感を与えかねない。
この現象のメカニズムは明らかではないが、以下の理由によるものと推察される。前述のように、左リム通水路32Lに洗浄水Wが供給されると、図8(b)に示すように、始端側水路部分32dが先に洗浄水Wで満たされる。このとき、終端側水路部分32eには空気Arが抜けずに残る場合がある。この場合、絞り部44の通水部分44bから見て終端側に空気Arが存在する状態となる。よって、この状態のままで通水部分44bを通して終端側水路部分32eに洗浄水Wが流れ込むと、終端側水路部分32e内の空気Arを巻き込みつつ洗浄水Wがジェット用連通路40に流れ込もうとする。この巻き込まれた空気がジェット吐出孔38から気泡として吐き出されてしまうものと推察される。
これに対して、図5に示すように、本実施形態に係る絞り部44は、始端側水路部分32dと終端側水路部分32eとの間で、これらの上側領域を通る流体の流れを遮るように壁部分44aが形成される。壁部分44aは、図6に示すように、絞り部44の形成位置において、左リム通水路32Lの水路幅方向の全幅に亘る範囲で形成される。
この利点を説明する。図9に示すように、左リム通水路32Lの始端側水路部分32dが先に洗浄水Wで満たされ、終端側水路部分32eに空気Arが残る場合を考える。この場合、本実施形態によれば、絞り部44の通水部分44bから見て終端側には空気Arではなく洗浄水Wが存在する状態となる。よって、この状態のままで通水部分44bを通して終端側水路部分32eに洗浄水Wが流れ込んだとしても、終端側水路部分32e内の空気が洗浄水Wに巻き込まれ難くなり、ジェット用連通路40に空気が流れ込み難くなる。このため、左リム通水路32Lに絞り部44を形成した場合でも、ジェット吐出孔38からの気泡の吐き出しを防止できる。
また、この他にも、前述のような絞り部44の壁部分44が形成されることで、左リム通水路32L内に洗浄水が供給されたときに、左リム通水路32Lの終端側水路部分32eから空気Arが外部に逃げずに残り易くなる。よって、絞り部44の通水部分44bを洗浄水Wが通ったとき、その空気Arが抵抗となることで、終端側水路部分32e内に流れ込む洗浄水が広がり難くなる。この結果、洗浄水が終端側水路部分32e内で広がることによる水勢の低下を防止でき、ジェット吐出孔38から勢いよく洗浄水を吐き出し易くなる。
なお、図6に示すように、絞り部44の壁部分44aは、絞り部44の形成位置において、左リム通水路32Lの水路高さをH0としたとき、左リム通水路32Lの内上面からの高さ寸法H1が水路高さH0の1/2以上となるように形成される。絞り部44の壁部分44aは、左リム通水路32Lの上内面からの高さ寸法H1が水路高さH0の3/4以上となるように形成されてもよい。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
水洗大便器10は、洗い落し式、サイホン式等の洗浄方式により便鉢部14内を洗浄してもよい。水洗大便器10は、水道直圧式、重力を用いた重力給水式等の給水方式が用いられてもよい。便器本体12は壁掛け式便器を例に説明したが、トイレ室の床面上に設置される床置き式便器でもよい。また、便器本体12は陶器の他に樹脂等を素材としてもよい。
左リム通水路32L、右リム通水路32Rは共通通水路34の下流端部から分岐して形成される例を説明したが、これらは別々に分離して形成されてもよい。
ジェット吐出孔38は便鉢部14の底部に形成される例を説明したが、排水通路部16のトラップ部20に形成されてもよい。この場合、ジェット吐出孔38から吐き出される洗浄水により、トラップ部20の下流側に向かう水流が封水18に形成され、汚物の排出が促進される。つまり、ジェット吐出孔38は便鉢部14の底部または排水通路部16に形成されていればよい。これらの場合、汚物の排出を促進するための水流が溜水28又は封水18に形成されることになる。
ジェット用連通路40は、ジェット吐出孔38と左リム通水路32Lを連通する例を説明したが、ジェット吐出孔38と右リム通水路32Rを連通してもよい。また、ジェット用連通路40の水導入口40dは、左リム通水路32Lの終端部32bに開口する例を説明したが、リム通水路のリム吐水孔より終端側に開口していればよい。また、ジェット用連通路40の水導入口40dは左リム通水路32Lの内底面に開口する例を説明した。水導入口40dはリム通水路の内壁面に開口していればよく、リム通水路の内底面の他にも内側面に開口していてもよい。
図6の例では、絞り部44の通水部分44bは、左リム通水路32Lの内壁面と絞り部44の壁部分44aにより囲まれて形成される例を説明した。この他に、通水部分44bは、図10に示すように、絞り部44の壁部分44aに切り欠き56を形成し、その切り欠き56と左リム通水路32Lの内壁面等によって囲まれて形成されてもよい。また、通水部分44bは、図10に示すように、複数箇所に形成されていてもよい。この他に、通水部分44bは、絞り部44の壁部分44aに貫通孔を形成し、その壁部分44aの貫通孔のみによって形成されてもよい。
図1の例では、左リム通水路32Lに供給される洗浄水を吐き出す第1リム吐水孔36Lは左右中心線CLに対して左側に配置され、右リム通水路32Rに供給される洗浄水を吐き出す第2リム吐水孔36Rは左右中心線CLに対して右側に配置される例を説明した。この他にも、第1リム吐水孔36Lは左右中心線CLに対して右側に配置されてもよいし、第2リム吐水孔36Rは左右中心線CLに対して左側に配置されてもよい。いずれにしても、各リム吐水孔36L、32Rの位置は特に限られない。また、リム部26には更に他のリム吐水孔が形成されてもよい。
図7では各リム通水路32L、32Rの内底面に勾配50、52を設けることで、各リム吐水孔36L、36Rより水導入口40dが低位置に配置されるようにした例を説明した。この他にも、第1リム通水路32Lの第1リム吐水孔36Lから終端側に向けて下り段となる段差を設けることで、第1リム吐水孔36Lより水導入口40dが低位置に配置されてもよい。
また、リム吐水孔36L、36Rはリム部26の内周面に沿って周方向の一方側に向けて洗浄水を吐き出す例を説明した。リム部26に形成される吐水口は、便鉢部14内に洗浄水を吐き出すためのものであればよく、洗浄水の吐き出し方向はこれに限られない。たとえば、下向きに洗浄水を吐き出してもよい。
ジェット吐出孔38は凹部24の左側かつ前側の壁面に形成される例を説明したが、その位置はこれに限られない。
以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の技術的思想が導かれる。
前述の課題を解決するための手段に記載の態様の水洗大便器は、前記第1リム通水路には、前記第1リム吐水孔と前記水導入口の間に、洗浄水の流れを絞るための絞り部が形成されてもよい。
この態様によれば、第1リム通水路の絞り部より始端側にある水路部分の方が、絞り部より終端側にある水路部分よりも、早期に洗浄水が満たされ易くなる。よって、絞り部より始端側にある水路部分の洗浄水による水圧を早期に高めることができ、その水路部分から第1リム吐水孔を通して高水圧の洗浄水を早期に吐き出せるようになる。
前述の態様の水洗大便器は、前記水導入口は、前記第1リム吐水孔より低位置に少なくとも一部が配置されてもよい。
この態様によれば、第1リム通水路内の残留水を、第1リム吐水孔より低位置にある水導入口を通して排出し易くなり、第1リム吐水孔を通して便鉢部内に流れる水の量を減らし易くなる。これにより、第1リム吐水孔から便鉢部の内面をすじ状水が流れ落ちるのを防止できる。
前述の態様の水洗大便器は、前記水導入口は、前記第1リム吐水孔より低位置に少なくとも一部が配置され、前記絞り部は、前記第1リム通水路の内底面上を伝わる残留水を、前記第1リム吐水孔側から前記水導入口側に向けて導水可能な形状であってもよい。
この態様によれば、第1リム通水路内の残留水が絞り部に対して第1リム吐水孔側から水導入口側に淀みなく流れ易くなる。よって、第1リム通水路に絞り部が形成される場合でも、第1リム通水路内の残留水を連通路を通して排出し易くなる。これにより、第1リム吐水孔から便鉢部の内面をすじ状水が流れ落ちるのを効果的に防止できる。
前述の態様の水洗大便器は、前記第1リム通水路の内底面には、前記第1リム吐水孔から奥側に向かうにつれて下り傾斜となる勾配が設けられてもよい。
この態様によれば、第1リム通水路内の残留水を自重によって水導入口まで導き易くなり、第1リム吐水孔を通して便鉢部内に流れる水の量を減らし易くなる。これにより、第1リム吐水孔から便鉢部の内面をすじ状水が流れ落ちるのを効果的に防止できる。
前述の態様の水洗大便器は、前記絞り部は、該絞り部に対して始端側の水路部分と、該絞り部に対して終端側の水路部分との間で、これらの上側領域を通る流体の流れを遮る壁部分を有してもよい。
始端側水路部分が先に洗浄水で満たされ、終端側水路部分の上側領域に空気が残る場合を考える。この場合、本態様によれば、絞り部の通水部分から見て終端側には空気ではなく洗浄水が存在し易い状態になる。よって、この状態のままで絞り部を通して終端側水路部分に洗浄水が流れ込んだとしても、終端側水路部分内の空気が洗浄水に巻き込まれ難くなり、連通路に空気が流れ込み難くなる。このため、第1リム通水路に絞り部を形成した場合でも、吐出孔からの気泡の吐き出しを防止できる。
前述の態様の水洗大便器は、前記第1リム吐水孔は、前記便器本体の左右一方側に配置され、前記水導入口は、前記便器本体の左右一方側にて前記第1リム吐水孔より該便器本体の前方側に配置されてもよい。
なお、以上の実施形態、変形例には、以下の項目に記載の発明が含まれているともいえる。
[項目]
リム部が上端部に形成される便鉢部と、
前記リム部の外周側に形成される第1リム通水路と、
前記第1リム通水路内から前記便鉢部内に洗浄水を吐水するための第1リム吐水孔と、
前記便鉢部の底部、又は、該底部に接続される排水通路部に形成される吐出孔と、
前記第1リム通水路と前記吐出孔を連通する連通路と、を備え、
前記第1リム吐水孔は、前記第1リム通水路の始端側より終端側に向かう経路の途中位置から分岐して形成され、
前記連通路の水導入口は、前記第1リム吐水孔より前記第1リム通水路の終端側に開口し、
前記第1リム通水路には、前記第1リム吐水孔と前記水導入口の間に、洗浄水の流れを絞るための絞り部が形成されることを特徴とする水洗大便器。
10…水洗大便器、14…便鉢部、16…排水通路部、26…リム部、32L…左リム通水路(第1リム通水路)、32R…右リム通水路(第2リム通水路)、36L…左リム吐水孔(第1リム吐水孔)、36L…右リム吐水孔(第2リム吐水孔)、38…ジェット吐出孔(吐出孔)、40…ジェット用連通路(連通路)、40d…水導入口、44…絞り部、50…勾配、52…勾配。

Claims (7)

  1. リム部が上端部に形成される便鉢部と、
    前記リム部の外周側に形成される便器本体の左右一方側の第1リム通水路と、
    前記リム部の外周側に形成される便器本体の左右他方側の第2リム通水路と、
    前記第1リム通水路内から前記便鉢部内に吐水するための第1リム吐水孔と、
    前記第2リム通水路内から前記便鉢部内に吐水するための第2リム吐水孔と、
    前記便鉢部の底部、又は、該底部に接続される排水通路部に形成される吐出孔と、
    前記第1リム通水路と前記吐出孔を連通する連通路と、を備え、
    前記第1リム吐水孔は、前記第1リム通水路の始端側より終端側に向かう経路の途中位置から分岐して形成され、
    前記連通路の水導入口は、前記第1リム吐水孔より前記第1リム通水路の終端側に開口することを特徴とする水洗大便器。
  2. 前記第1リム通水路には、前記第1リム吐水孔と前記水導入口の間に、洗浄水の流れを絞るための絞り部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の水洗大便器。
  3. 前記水導入口は、前記第1リム吐水孔より低位置に少なくとも一部が配置されることを特徴とする請求項1または2に記載の水洗大便器。
  4. 前記水導入口は、前記第1リム吐水孔より低位置に少なくとも一部が配置され、
    前記絞り部は、前記第1リム通水路の内底面上を伝わる残留水を、前記第1リム吐水孔側から前記水導入口側に向けて導水可能な形状であることを特徴とする請求項2に記載の水洗大便器。
  5. 前記第1リム通水路の内底面には、前記第1リム吐水孔から奥側に向かうにつれて下り傾斜となる勾配が設けられることを特徴とする請求項3または4に記載の水洗大便器。
  6. 前記絞り部は、該絞り部に対して始端側の水路部分と、該絞り部に対して終端側の水路部分との間で、これらの上側領域を通る流体の流れを遮る壁部分を有することを特徴とする請求項2または4に記載の水洗大便器。
  7. 前記第1リム吐水孔は、前記便器本体の左右一方側に配置され、
    前記水導入口は、前記便器本体の左右一方側にて前記第1リム吐水孔より該便器本体の前方側に配置されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の水洗大便器。
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