JP6389125B2 - 赤血球の処理法 - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2011年11月7日に提出された仮出願第61/556,661号の優先権を主張する。この先行出願の内容はすべて、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
技術分野
本発明は、哺乳動物への投与の前の赤血球の処理のための組成物および方法に関する。
背景
2週間よりも長く保存した赤血球の輸血には、感染率の増大、入院期間の延長、ならびに集中治療室患者および心臓血管手術を受けた患者における死亡率の増加が伴ってみられる(Triulzi et al., Transfus Apher Sci 2010; 43:95-106(非特許文献1))。赤血球の長期保存は、赤血球の生化学的、機械的および機能的変質の原因となり、これらは「保存損傷」と総称される(Kim-Shapiro et al., Transfusion 2011; 51:844-51(非特許文献2))。保存赤血球の輸血に伴う有害作用を減少または消失させるための組成物および方法が必要とされている。
Triulzi et al., Transfus Apher Sci 2010; 43:95-106 Kim-Shapiro et al., Transfusion 2011; 51:844-51
概要
本発明は、少なくとも一部には、一酸化窒素による保存赤血球のエクスビボ処理が、細胞外二価鉄ヘモグロビンを酸化させて三価鉄ヘモグロビンにすること、およびこの処理により、保存赤血球が哺乳動物への投与後に血管収縮を誘発することが予防されるという発見に基づく。一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物による保存赤血球の前処理は、保存血液の輸血に伴う有害作用の発生を減少または消失させるための手段として用いることができる。哺乳動物への投与の前に血液を処理することによって、保存血液の輸血に起因する有害作用に対処するために哺乳動物を輸血後に治療する必要性をなくすことができる。
開示されるのは、赤血球試料をエクスビボで、赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも一部分を三価鉄ヘモグロビンに変換させるのに十分な量の一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させることによって、赤血球試料を処理する方法である。細胞外二価鉄ヘモグロビンは無細胞ヘモグロビンおよび細胞外ヘモグロビン含有微粒子の両方を範囲に含む(Donadee et al., Circulation 2011;124: 465-76を参照)。
同じく開示されるのは、赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも一部分を三価鉄ヘモグロビンに変換させるのに十分な量の一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物とエクスビボで接触させた赤血球試料を哺乳動物に投与することによって、赤血球の投与後の哺乳動物における血管収縮を予防または軽減する方法である。
本明細書に記載の方法のいくつかの態様において、本方法は、試料中の赤血球を著しく酸化させることもなく、それらの酸素運搬能を低下させることもない(例えば、メトヘモグロビンに変換されるのは、赤血球中のヘモグロビンの20%未満、15%未満、10%未満または5%未満である)。
本明細書に記載の方法のいくつかの態様において、赤血球試料は、一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、ポンプ(例えば、陰圧ポンプ吸引)、膜および/または気泡のうち1つまたは複数にエクスビボでさらされている。本明細書に記載の方法のいくつかの態様において、赤血球試料は、一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、血液透析、術中血液回収または開心術吸引回路(cardiotomy suction)にエクスビボでさらされている。これらの方法では、赤血球が哺乳動物の体外にある必要があるのは、本明細書に記載の方法による処理が必要になると考えられる侵襲にさらされる前の、短時間(例えば、数秒または数分)のみである。
赤血球試料は、赤血球と上清または血漿とを含む。赤血球試料は、例えば、全血または濃縮赤血球であってよい。
赤血球試料は、ドナーから取り出された後に、一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、例えば少なくとも24時間、エクスビボで保存することができる。いくつかの態様において、赤血球試料は、ドナーから取り出した後に、一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、少なくとも7日間、少なくとも14日間、少なくとも28日間、少なくとも42日間またはそれ以上にわたって、エクスビボで保存することができる。任意で、赤血球試料を保存の前に保存用溶液で希釈してもよい。
赤血球は、哺乳動物への投与の前に自己または同種のドナーから得ることができる。このため、赤血球試料は自己赤血球または同種赤血球を含みうる。赤血球試料は種々の保存媒質(例えば、Adsol)中で保存することができる。任意で、赤血球試料を、一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物による処理の前に凍結および解凍させてもよい。
本明細書に記載の方法のいくつかの態様において、処理は、赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも20%(または少なくとも50%または少なくとも80%)を、三価鉄ヘモグロビンに変換させる。
本明細書に記載の方法のいくつかの態様においては、赤血球試料を、不活性ガス中に希釈されたガス状一酸化窒素を含む治療用ガスと接触させる。治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度は、例えば、少なくとも20ppm、少なくとも40ppm、少なくとも50ppm、少なくとも80ppm、少なくとも100ppm、少なくとも200ppm、少なくとも300ppm、または少なくとも500ppmであってよい。いくつかの態様において、治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度は、50ppm〜800ppm(例えば、40ppm〜200ppm、80ppm〜200ppm、80ppm〜500ppm、100ppm〜800ppmまたは40ppm〜3,000ppm)の範囲にある。赤血球試料は、種々の期間(例えば、少なくとも1秒、5秒未満、30秒未満、少なくとも1秒であるが5秒未満、少なくとも1秒であるが30秒未満、少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも3分、少なくとも4分、少なくとも5分、少なくとも6分、少なくとも7分、少なくとも8分、少なくとも9分、少なくとも10分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、またはそれ以上)の過程にわたって、治療用ガスと接触させることができる。
本明細書に記載の方法のいくつかの態様においては、赤血球試料を一酸化窒素放出性化合物と接触させる。任意で、一酸化窒素放出性化合物は亜硝酸塩を含みうる。一酸化窒素放出性化合物は、超短時間作用性の一酸化窒素放出性化合物(例えば、1-[2-(カルボキシラト)ピロリジン-1-イル]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレートまたは(Z)-1-[N-メチル-N-[6-(N-メチルアンモニオヘキシル)アミノ]]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレート)または中間体放出性ノノエートであってよい。
本明細書に記載の方法のいくつかの態様において、本方法は無菌条件下で行われる。赤血球試料は、それをドナーから入手した時点から、一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物による処理の過程全体を通じて、無菌条件下で維持することができる。
本明細書に記載の方法のいくつかの態様においては、赤血球試料を、赤血球試料が試料を含む容器から流れ出て、不活性ガス中の一酸化窒素の供給源と接続されていて赤血球試料を一酸化窒素に曝露させる層流デバイスまたは二次流ガス交換デバイス内のガス透過性材料(例えば、微孔性膜)と接触して、一酸化窒素への曝露後に哺乳動物へと送達されるインライン注入システムの一部として、一酸化窒素と接触させる。一酸化窒素の供給源は、例えば、圧縮された一酸化窒素ガスを含むタンク、または電気的一酸化窒素発生装置(NO2スカベンジャーを伴うことも伴わないこともある)であってよい。
本明細書に記載の方法によって処理される哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長動物、または別の哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ウサギまたはハムスターなどであってよい。
本明細書中で言及している刊行物、特許出願、特許および他の参考文献はすべて、それらの全体が参照により組み入れられる。別に定める場合を除き、本明細書で用いる技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。食い違いがある場合には、定義を含め、本明細書が優先するものとする。適した方法および材料は以下に記載されているが、本明細書に記載されたものと同様または同等な方法および材料を、本発明の実施または試験に用いることもできる。材料、方法および例は例示的であるに過ぎず、限定を意図したものではない。
[本発明1001]
赤血球試料を処理する方法であって、赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも一部分を三価鉄ヘモグロビンに変換させるのに十分な量の一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と、赤血球試料をエクスビボで接触させる段階を含む、方法。
[本発明1002]
赤血球試料が、一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、血液透析、術中血液回収、または開心術吸引回路(cardiotomy suction)にエクスビボでさらされている、本発明1001の方法。
[本発明1003]
赤血球試料が、一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、ポンプ、膜、および/または気泡のうちの1つまたは複数にエクスビボでさらされている、本発明1001の方法。
[本発明1004]
赤血球試料が、ドナーから取り出された後で、かつ一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、少なくとも24時間エクスビボで保存されている、本発明1001の方法。
[本発明1005]
赤血球試料が、ドナーから取り出された後で、かつ一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、少なくとも7日間エクスビボで保存されている、本発明1001の方法。
[本発明1006]
赤血球試料が、ドナーから取り出された後で、かつ一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、少なくとも14日間エクスビボで保存されている、本発明1001の方法。
[本発明1007]
赤血球試料が、ドナーから取り出された後で、かつ一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、少なくとも28日間エクスビボで保存されている、本発明1001の方法。
[本発明1008]
赤血球試料が、ドナーから取り出された後で、かつ一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、少なくとも42日間エクスビボで保存されている、本発明1001の方法。
[本発明1009]
赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも20%が三価鉄ヘモグロビンに変換される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1010]
赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも50%が三価鉄ヘモグロビンに変換される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1011]
赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも80%が三価鉄ヘモグロビンに変換される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1012]
ガス状一酸化窒素を含む治療用ガスに赤血球試料を接触させる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1013]
治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が少なくとも20ppmである、本発明1012の方法。
[本発明1014]
治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が少なくとも40ppmである、本発明1012の方法。
[本発明1015]
治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が少なくとも80ppmである、本発明1012の方法。
[本発明1016]
治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が100ppm〜800ppmの範囲にある、本発明1012の方法。
[本発明1017]
治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が40ppm〜200ppmの範囲にある、本発明1012の方法。
[本発明1018]
治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が40ppm〜3,000ppmの範囲にある、本発明1012の方法。
[本発明1019]
赤血球試料を治療用ガスと5秒間未満接触させる、本発明1012〜1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
赤血球試料を治療用ガスと少なくとも15分間接触させる、本発明1012〜1018のいずれかの方法。
[本発明1021]
赤血球試料を治療用ガスと少なくとも1時間接触させる、本発明1012〜1018のいずれかの方法。
[本発明1022]
赤血球試料を治療用ガスと少なくとも2時間接触させる、本発明1012〜1018のいずれかの方法。
[本発明1023]
赤血球試料を一酸化窒素放出性化合物と接触させる、本発明1001〜1011のいずれかの方法。
[本発明1024]
一酸化窒素放出性化合物が亜硝酸塩を含む、本発明1023の方法。
[本発明1025]
一酸化窒素放出性化合物が超短時間作用性の一酸化窒素放出性化合物である、本発明1023の方法。
[本発明1026]
超短時間作用性の一酸化窒素放出性化合物が、1-[2-(カルボキシラト)ピロリジン-1-イル]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレートまたは(Z)-1-[N-メチル-N-[6-(N-メチルアンモニオヘキシル)アミノ]]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレートである、本発明1025の方法。
[本発明1027]
無菌条件下で行われる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1028]
赤血球の投与後の哺乳動物における血管収縮を予防または軽減する方法であって、赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも一部分を三価鉄ヘモグロビンに変換させるのに十分な量の一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物とエクスビボで接触させた赤血球試料を哺乳動物に投与する段階を含む、方法。
[本発明1029]
赤血球試料が自己赤血球を含む、本発明1028の方法。
[本発明1030]
赤血球試料が同種赤血球を含む、本発明1028の方法。
[本発明1031]
赤血球試料を、一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物による処理の前に凍結および解凍させる、本発明1028〜1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
赤血球試料が、赤血球試料を含む容器から流れ出て、一酸化窒素の供給源と接続されていて赤血球試料を一酸化窒素に曝露させるガス透過性材料と接触し、かつ一酸化窒素への曝露後に哺乳動物へと送達される、インライン注入システムの一部として一酸化窒素と赤血球試料を接触させる、本発明1028〜1031のいずれかの方法。
[本発明1033]
一酸化窒素の供給源が、圧縮された一酸化窒素ガスを含むタンクである、本発明1032の方法。
[本発明1034]
一酸化窒素の供給源が電気的一酸化窒素発生装置である、本発明1032の方法。
[本発明1035]
哺乳動物がヒトである、前記本発明のいずれかの方法。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
図1A〜1Dは、インビトロのマウスRBCにおける、保存により誘発される形態学的、生化学的および機能的変化を描写している。(A)新鮮赤血球(FRBC、上のパネル)および保存赤血球(SRBC、下のパネル)の染色塗抹標本。下のパネル中の矢尻は、2週間の保存後に異常な形状のRBCの数が増加したことを示している。(B)FRBCおよびSRBCの酸素解離曲線(ODC)。Hbが50%飽和している時の酸素分圧と定義されるP50をODCから算出した。SRBCのODCは左方移動しており、P50は21±1mmHgであり、対照的にFRBCのP50は43±0mmHgであった。(C)FRBC(n=5)およびSRBC(n=5)の2,3-DPGレベルの変化とFRBC(n=3)およびSRBC(n=3)のP50との比較。(D)FRBC(n=6)またはSRBC(n=6)の存続率(survival)は、輸血24時間後に測定したGFP標識RBCのパーセンテージを、WTマウスにおける時間0でのGFP標識RBCのパーセンテージによって除算することによって決定した。FRBC、新鮮赤血球(≦24時間);SRBC、保存赤血球(2週間)。*P<0.01、FRBCと比較して差がある。 図2A〜2Cは、覚醒したWTマウス(A)、HFD摂取WTマウス(B)およびdb/db(C)マウスにおける、FRBCまたはSRBCの輸血から2時間後の血清鉄レベルを描写しているグラフである。対照、輸血なし(n=4/群);FRBC、FRBCの輸血(n=6/群);SRBC、SRBCの輸血(n=6/群)。*P<0.05、対照およびFRBCと比較して差がある。 図3A〜3Cは、覚醒したWTマウス、HFD摂取WTマウスおよびdb/dbマウスにおける、FRBCまたはSRBCの輸血から2時間後のIL-6(A)、Hp(B)およびHx(C)の血漿レベルを描写しているグラフである。対照、輸血なし(n=4/群);FRBC、新鮮RBCの輸血(n=6/群);SRBC、保存RBCの輸血(n=6/群)。*P<0.05、対照と比較して差がある;†P<0.01、FRBCと比較して差がある。 図4A〜4Cは、覚醒したWTマウス(A)、HFD摂取WTマウス(B)およびdb/dbマウス(C)における、FRBCまたはSRBCの輸血から2時間後の肝臓HO-1 mRNAレベルの変化を描写しているグラフである。対照、輸血なし(n=4/群);FRBC、新鮮RBCの輸血(n=6/群);SRBC、保存RBCの輸血(n=6/群)。*P<0.05、対照およびFRBCと比較して差がある。 図5A〜5Eは、覚醒したWTマウス、HFD摂取WTマウスまたはdb/dbマウスにおける、さまざまな種類の輸血(血液量の推定10%)後の体血圧(SBP、mmHg)を描写しているグラフである。(A)覚醒WTマウスにおけるFRBC(n=5)またはSRBC(n=6)の輸血。(B)覚醒HFD摂取WTマウスにおけるFRBC(n=6)またはSRBC(n=6)の輸血。(C)覚醒db/dbマウスにおけるFRBC(n=9)の輸血、または呼吸性一酸化窒素(iNO、80ppm)を伴うか(n=12)または伴わない(n=9)SRBCの輸血。(D)覚醒db/dbマウスにおける、FRBC由来の上清(SFRBC、n=11)、SRBC由来の上清(SSRBC、n=7)または酸化SSRBC(n=6)の輸血。(E)覚醒db/dbマウスにおける洗浄FRBC(n=9)または洗浄SRBC(n=6)の輸血。FRBC、新鮮赤血球;SRBC、保存赤血球。 *P<0.05、FRBCおよびSRBC+iNOと比較して差がある。 図6A〜6Bは、FRBC上清(SFRBC、n=6)、SRBC上清(SSRBC、n=6)、FRBC(n=7)またはSRBC(n=7)の輸血の前および後のdb/dbマウスにおける全身血行動態測定値の変化の比較を描写しているグラフである。(A)輸血の前および10分後のLVESPの変化(mmHg)。(B)輸血の前および10分後のSVRIの変化(%)。LVESP、左室収縮末期圧;SVRI、体血管抵抗係数 *P<0.05、FRBC上清群またはFRBC群と比較して差がある。 白血球除去処理を行って追加溶液-1(additive solution-1)中で保存したヒツジPRBCのインビボ存続率を描写しているグラフである。循環血中ビオチン化PRBCをy軸に描写している。ビオチン化新鮮PRBCの96±4%が輸血後の最初の24時間存続したが、一方、輸血24時間後に循環血中にあったのはビオチン化保存PRBCの76±7%であった。*P=0.001、新鮮PRBCと比較して値に差がある、†P=0.002、新鮮PRBCと比較して値に差がある、#P<0.001、新鮮PRBCと比較して値に差がある、§P=0.002、新鮮PRBCの値が保存PRBCと比較して差がある。PRBC=濃縮赤血球。データはすべて平均±SD。 図8A〜8Bは、覚醒仔ヒツジにおいて新鮮PRBCおよび保存PRBCの輸血中および輸血後に測定した(A)平均肺動脈圧および(B)肺血管抵抗係数を描写しているグラフである。数頭の仔ヒツジには保存PRBCの輸血中および輸血後に一酸化窒素を吸入させた。*P<0.05、ANOVAで保存PRBCの値が新鮮PRBCおよび保存PRBC+iNOのいずれとも差がある、iNO=一酸化窒素吸入;PAP=平均肺動脈圧;PRBC=濃縮赤血球;PVRI=肺血管抵抗係数。データはすべて平均±SD。 図9A〜9Cは、新鮮PRBCおよび保存PRBCの輸血中および輸血後に測定した(A)平均肺動脈圧、(B)肺毛細血管楔入圧、および(C)肺血管抵抗係数を描写しているグラフである。数頭の仔ヒツジには保存PRBCの輸血中および輸血後に一酸化窒素を吸入させた。*P<0.05、ANOVAで保存PRBCの値が新鮮PRBCおよび保存PRBC+iNOのいずれとも差がある。内皮機能不全を誘導するために、輸血前にL-NAMEを投与した(†P<0.05、各群において-60分(L-NAMEの前)での測定値は-50分〜-10分での測定値と異なる)。iNO=一酸化窒素吸入:L-NAME=NG-ニトロ-L-アルギニンメチル-エステル;PAP=平均肺動脈圧;PCWP=肺毛細血管楔入圧;PRBC=濃縮赤血球;PVRI=肺血管抵抗係数。データはすべて平均±SD。 健常覚醒仔ヒツジにおいて新鮮PRBCおよび保存PRBCの輸血の前および後に測定した血漿ヘモグロビンレベルを描写しているグラフである。数頭の仔ヒツジには保存PRBCの輸血中および輸血後に一酸化窒素を吸入させた。*P<0.05、ANOVAで新鮮PRBCの値が保存PRBCおよび保存PRBC+iNOのいずれとも差がある。iNO=一酸化窒素吸入;PRBC=濃縮赤血球。データはすべて平均±SD。 図11A〜11Bは、覚醒仔ヒツジにおいて新鮮PRBCおよび保存PRBCの輸血前および輸血後に測定した血漿中(A)硝酸塩レベルおよび(B)亜硝酸塩レベルを描写しているグラフである。*P<0.05、ANOVAで保存PRBC+iNOの値が新鮮PRBCおよび保存PRBCのいずれとも差がある。iNO=一酸化窒素吸入;PRBC=濃縮赤血球。データはすべて平均±SD。 微孔性ガス交換器を介して窒素中のガス状一酸化窒素によって処理した赤血球上清中のヘモグロビン種の相対濃度を描写しているグラフである。 微孔性ガス交換器を介して窒素中のガス状一酸化窒素によって処理した赤血球中のメトヘモグロビンの相対濃度を描写しているグラフである。 図14A〜14Bは、ヒトおよびマウスの保存赤血球に対するMAHMA/NO処理の効果を描写しているグラフである。A)メトヘモグロビンの細胞内赤血球レベルと比較した上清無細胞ヘモグロビンの酸化。B)上清([Hb]、μM)および赤血球(Hct、%)におけるヘモグロビンの濃度。 覚醒db/dbマウスへの、保存赤血球(2週間保存)または1mM MAHMA/NO、5% v/vによって前処理した保存赤血球のいずれかの注入の前および後に、非侵襲性尾部カフによって測定した収縮期血圧(mmHg)を描写しているグラフである。*P<0.05 MAHMA/NOで前処理したSRBCと差がある。 ガス-ガス移行実験のために用いた膜含有デバイスを描写している。 さまざまなガス流量比で微孔性(MP)膜およびポリメチルペンテンペンテン(PMP)膜を通して測定した一酸化窒素濃度を描写しているグラフである(データは平均±SDとして提示、n=6;G1/G2 7:1、ガス流量比が7:1;G1/G2 14:1、ガス流量比が14:1)。
詳細な説明
哺乳動物への保存赤血球の投与が原因となって、血管収縮および他の有害作用が起こる。本発明は、保存赤血球の投与後の有害作用の発生を軽減するかまたは消失させるための組成物および方法を提供する。添付した実施例に詳述しているように、一酸化窒素への曝露によって保存赤血球の上清を酸化することにより、細胞外の活性二価鉄ヘモグロビンが不活性三価鉄ヘモグロビンに変換されて、保存赤血球の投与に起因する血管収縮の発生が消失する。
赤血球
赤血球を自己または同種ドナーから得て、その後にレシピエントに投与することができる。赤血球の保存は、結果として、レシピエントへの保存血液の投与後に血管収縮の誘発をもたらす(Reynolds et al. (2007) Proc. Natl. Acad. Set 104:17058-62;Bennett-Guerrero et al. (2007) Proc. Natl. Acad. Set 104:17063-68)。ヒト赤血球は、本明細書に記載の方法によるドナーへの注入の前に、さまざまな期間にわたって保存することができる(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6もしくは12時間、または少なくとも1、2、3、4、5、6、7、14、21、28、42日、またはそれ以上)。赤血球は、例えば全血または濃縮赤血球として投与することができる。
一酸化窒素
赤血球試料の処理に用いるのに適した一酸化窒素の濃度は、赤血球試料のサイズ、流速、一酸化窒素曝露期間の長さ、微孔性ガス透析器における層流と混合との対比の度合いといった要因、および/または治療に当たる医師が該当すると判断する可能性のある他の要因に応じて、例えば、20ppm〜80ppm、200ppm〜500ppm、500ppm〜800ppm、2,800ppm、3,000ppmまたはそれ以上というようにさまざまでありうる。医薬品級の一酸化窒素が市販されている(INOmax(商標), Ikaria, Inc., Clinton, NJ)。
赤血球試料の処理に用いられるガス状一酸化窒素は、保存下にある圧縮された一酸化窒素ガスの供給源から投与しうる。一酸化窒素の供給源は、100%一酸化窒素であってもよく、またはN2もしくは他の任意の不活性ガス(例えば、ヘリウム)で希釈してもよい。一酸化窒素は、混入性のO2も窒素高級酸化物も全く含まない混合物として入手して保管することができる。所望であれば、一酸化窒素の純度を化学発光分析によって実証してもよい。化学発光NO-NOx分析装置は市販されている(例えば、Model 14A, Thermo Environmental Instruments, Franklin, MA)。混合物中の一酸化窒素の最終濃度は、化学的手法または化学発光の手法によって確かめることができる(例えば、Fontijin et al., Anal. Chem. 42:575 (1970))。または、NO濃度およびNO2濃度を、電気化学的分析装置を使ってモニターすることもできる。NO2などの不純物は、NaOH溶液、バラライムまたはソーダ石灰への曝露によって洗い流すことができる。さらなる管理として、最終的なガス混合物の最終的なガス混合物のFiO2を評価してもよい。
赤血球試料への一酸化窒素ガスの投与は、例えば、N2(または不活性ガス)中にある圧縮された一酸化窒素ガスのタンク、および窒素(または別の不活性ガス)の第2のタンクを、2つの供給源からのガスを混合するように設計されたデバイスに取り付けることによって遂行することができる。各供給源からのガスの流れを制御することによって、赤血球試料に投与される一酸化窒素の濃度を最適なレベルに維持することができる。また、標準的な低流量配合機(例えば、Bird Blender, Palm Springs, CA)を用いて、一酸化窒素ガスを室内空気と混合してもよい。
電気的一酸化窒素発生装置を用いることによって、一酸化窒素をN2およびO2(すなわち、空気)から生成させることができる。そのような発生装置は、Zapol、米国特許第5,396,882号に記載されている。そのようなデバイスからのNO2形成は、血液試料がNO2に曝露される前に、ガス混合物のスカベンジングを行うことによって減少させることができる。
赤血球試料への一酸化窒素送達のためのガス送達デバイスは、試料が曝露される一酸化窒素の総用量のモニタリングを可能にする一酸化窒素用量測定計(dosimeter)を含む。用量測定計の使用により、試料が一酸化窒素の所要量を受け取ったことの判定を行うことができ、その結果、一酸化窒素の投与を漸減または終了することができるようになる。用量測定計は、治療用ガス中の一酸化窒素の濃度(一酸化窒素濃度計により測定)をガス流速(ガス流量計により測定)と統合して、赤血球試料が曝露される一酸化窒素の総量を決定することができる。
ガス透過性材料を用いることにより、ガス状一酸化窒素がそれを通って拡散して、赤血球試料と接触することが可能になる。そのような材料の例には、血液酸素供給器に用いられるもののようなガス透過性膜(例えば、ジメチルポリシロキサンまたはポリアルキルスルホン)、および、一酸化窒素などのガス分子がその微小孔を通過して液体中に溶解することを可能にするゴアテックス(Gore-tex)(商標)またはセルガード(Celgard)(商標)などの微孔性材料が含まれる。例示的な酸素供給器(Living Systems Instrumentation Inc., St. Albans, Vermont)の使用について、添付の実施例で説明している。ガス透過性材料のある区域を、1つの面が赤血球試料と接触し、第2の面が一酸化窒素と接触していて、赤血球を一酸化窒素の供給源と分離させるものの一酸化窒素ガスの個々の分子が通過して試料中に拡散することは可能にするように構成することができる。一酸化窒素を任意で、注入過程の間に赤血球試料と接触させ、それにより、赤血球試料がそれを含む容器から流れ出て、ガス透過性材料を通過すること(一酸化窒素の赤血球試料中への拡散が可能になる)によって一酸化窒素に曝露され、最終的にレシピエントに投与することもできる。二次流を伴うガス交換装置を用いることができる(例えば、Zapol and Qvist, Artificial Lungs for Acute Respiratory Failure, New York, Academic Press, 1976を参照)。
一酸化窒素を含有する水性溶液を、一酸化窒素の赤血球試料への送達のために調製することができる。一酸化窒素は、赤血球試料中への導入の前に、薬学的に許容される担体液体中に溶解させることができる。この目的に有用な担体液体には、一酸化窒素が高度の溶解性を示し、その結果、小容量の担体中にある状態で高濃度の一酸化窒素を送達することができる、標準的な食塩溶液、赤血球試料のアリコート、およびフルオロカーボンまたは有機溶媒などの液体が含まれる(Shaw and Vosper J, Chem. Soc. Faraday Trans. 1. 73:1239-1244, 1977;Young, Solubility Data Series 8:336-351, 1981)。
一酸化窒素放出性化合物
一酸化窒素の使用に代わる(またはそれに加わる)ものとして、一酸化窒素放出性化合物を、本明細書に記載の方法に従って赤血球試料に曝露させることもできる。本明細書に記載の方法において有用な一酸化窒素放出性化合物には、以下のものが含まれる:化合物から生理的条件下で自然発生的に放出されるかまたは他の様式で移行する一酸化窒素モイエティーを特徴とするニトロソ化合物またはニトロシル化合物(例えば、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン、S-ニトロソ-L-システイン、およびニトロソグアニジン);一酸化窒素が遷移金属複合体上のリガンドであり、そのため生理的条件下で化合物から容易に放出されるかまたは移行する化合物(例えば、ニトロプルシド、一酸化窒素-フェレドキシン、または一酸化窒素-ヘム複合体);および、酵素によって代謝されて一酸化窒素ラジカルを生成する窒素含有化合物(例えば、アルギニン、三硝酸グリセリン、亜硝酸イソアミル、亜硝酸ナトリウム、無機亜硝酸塩、アジドおよびヒドロキシルアミン)。そのほかの一酸化窒素放出性化合物には、ニトログリセリンおよびSIN-1が含まれる。
一酸化窒素放出性化合物が、超短時間作用性の一酸化窒素放出性化合物、例えば1-[2-(カルボキシラト)ピロリジン-1-イル]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレート(「PROLI/NO」)、1-ヒドロキシ-2-オキソ-3-(N-メチル-3-アミノプロピル)-3-メチル-1-トリアゼン(「NOC-7」;Zhang et al. (1996) Circulation 94:2235)、N,N'-ジメチルヘキサンジアミンの一酸化窒素付加物(「DMHD/NO」;Kaul et al. (1997) J. Cardiovasc. Pharmacol. Ther. 1997 2(3):181)、または(Z)-1-[N-メチル-N-[6-(N-メチルアンモニオヘキシル)アミノ]]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレート(「MAHMA/NO」)。いくつかの態様において、超短時間作用性の一酸化窒素放出性化合物の半減期は90分未満(または60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満または1分未満)である。
一酸化窒素放出性化合物(例えば、超短時間作用性の一酸化窒素放出性化合物)であると判明しているかまたはそう考えられている化合物を、本明細書に記載の動物モデルの使用によって直接試験することができる。または、そのような化合物を、まず、一酸化窒素が結合してそれによってその生物活性を発揮する酵素であるグアニル酸シクラーゼを刺激する能力に関して、Ishii et al. (1991) Am. J. Physiol. 261:H598-H603によって記載されたようなインビトロアッセイでスクリーニングすることもできる。
以下は、本発明の実施に関する実施例である。それらは本発明の範囲をいかなるようにも限定するとはみなされるべきではない。
実施例1:マウスにおける同系保存血輸血の有害な血液動態作用を糖尿病は増強し、一酸化窒素は防止する
動物
試験した動物はすべて、Massachusetts General Hospital, Boston, MAの研究動物管理小委員会(Subcommittee on Research Animal Care)による承認を得た。試験は8〜10週齡の雄性C57BL/6J野生型(WT)マウスおよびB6.Cg-m+/+Leprdb/J(C57BL/6Jバックグラウンド)糖尿病(db/db)マウスで行った。さらにWTマウスに高脂肪食(脂肪60kcal%;Research Diets, Inc., New Brunswick、NJ)を4〜6週間与えた(HFD摂取WT)。RBC存続率の測定には、赤血球上でGFPを発現する、8〜10週齡の雄性の緑色蛍光性タンパク質(GFP)トランスジェニックC57BL/6-Tg(UBC-GFP)30Scha/J(C57BL/6Jバックグラウンド)マウスを用いた。マウスはすべて、Jackson Laboratory(Bar Harbor, ME)から入手した。
マウス血液の収集および保存
C57BL/6J WTマウスから開胸心臓穿刺によって血液(ほぼ1ml/マウス1匹)を無菌的に採取し、CPDA-1(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を含むシリンジに入れた。CPDA-1の最終濃度は14%であった。収集の後に、新生仔用の白血球除去処理フィルター(Pall Biomedical Products Co., East Hills, NY)に通過させることによって血液の白血球除去を行った。白血球除去処理の効果は全血球計算によって測定した(HemaVet Veterinary Analyzer. Heska, Loveland, CO)。白血球の除去処理を行った血液を600gで15分間遠心し、血漿を除去することによってヘマトクリット値(Hct)を70〜75%に調整した上で、Eppendorfチューブ内にて4℃で保存した。新鮮な白血球除去処理マウスRBC(FRBC)または保存した白血球除去処理マウスRBC(SRBC)における試料中のリポ多糖(LPS)レベルを、リムラスアメーバ様細胞溶解物アッセイ(LAL)を用いて測定した(Novitsky et al. J Clin Microbiol 1985;21: 211-6を参照)。
保存RBC成分の調製
FRBCまたはSRBCを4℃、400gで10分間遠心した後に上清を得た。洗浄によって誘発される溶血を最小限に抑えるために、FRBCおよびSRBCを10倍容量の1.5%塩化ナトリウムで穏やかに洗浄して、4℃、400gで10分間遠心した。洗浄したFRBCまたはSRBCを輸血の前に新鮮マウス血漿中に再懸濁させて、70〜75%という最終Hctを得た。
SRBCの上清中の二価鉄Hbを酸化させるために、酸素供給器(Living Systems Instrumentation Inc., St. Albans, Vermont)を通じて、上清を窒素中の800ppm一酸化窒素ガスに2時間曝露させて、メトHbを生成させた(Yu et al., Circulation 2008:117: 1982-90)。続いて上清(2ml)を、低分子量の一酸化窒素代謝産物を減少させるために、3Lの0.9%食塩水に対して3回透析した(Spectra/Por分子多孔性膜MWCO:12〜14,000, Spectrum Laboratories Inc., Rancho Dominguez, CA)。
保存マウスRBCにおける生化学的、血液学的および形態的な変化
FRBCおよびSRBCにおける血液ガス圧(PCO2およびPO2)、pHおよび標準塩基過剰(SBE)を測定した(ABL800FLEX, Radiometer, Westlake, OH)。FRBCおよびSRBCにおける電解質濃度(ナトリウム、カリウム、カルシウム、塩素、HCO3 -)および乳酸塩も決定した(Critical CareXpress, Nova Biomedical, Waltham, MA)。
上清におけるHbレベルを決定するためには、FRBCまたはSRBCを4℃にて1700gで8分間遠心して、上清HbレベルをQuantiChrom Hbアッセイキット(BioAssaySystems, Hayward, CA)によって測定した。溶血(%)は、標準的な式:溶血(%)=[上清Hb×(1-%Hct)]/総Hb×100を用いて計算した(Kamel et al., Blood Transfus 2010:8: 260-6を参照)。
RBC形態に対する保存の影響を調べるには、FRBCまたはSRBCの塗沫標本を作製した上で、Hema3手作業染色システム(Fisher Diagnostics, Middletown, VA)によって染色し、Plan Fluor 60倍乾式対物レンズ(Nikon Instruments Inc., Melville, NY)を装着したNikon EDIPSE 80i正立顕微鏡を用いて画像を入手した。
FRBCおよびSRBC(20μlの添加物-Aおよび10μlの消泡剤を含む5mlのHemox溶液に20μlのRBCを添加)の酸素解離曲線(ODC)を、Hemox-分析装置(TCS Scientific Corp., New Hope, PA)を用いて求めた。Hbが50%飽和する酸素分圧と定義されるP50を、ODCから計算した。FRBCおよびSRBCにおける2,3-DPGのレベルは、2,3-DPGキット(Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)を用いて測定した。
マウスRBCの存続率の測定
Gilsonら(Gilson et al., Transfusion 2009:49: 1546-53)によって報告されているGFP標識RBCの方法を用いて、輸血したマウスRBCの存続率を測定した。手短に述べると、UBC-GFPマウスおよびWTマウスの両方から、CPDA-1を含む1mlシリンジ内に心臓穿刺によって血液を採取し、UBC-GFPマウスからは40% RBCを、WTマウスからは60% RBCを含む血液混合物を調製した上で、白血球を減少させ、遠心処理を行って、4℃で24時間未満(FRBC)および2週間(SRBC)にわたって保存した。WTマウスに対して、GFP標識RBCを含む100μLのFRBCまたはSRBCを、尾静脈を介して輸血した。輸血から10分後、30分後、1時間後、24時間後および8日後の時点で、血液試料を後眼窩腔から、ヘパリン添加したガラス製マイクロキャピラリー管の中に入手した。GFP陽性RBCのパーセンテージは、5 Laser LSR Fortessa(BD Biosciences, San Jose, CA)での前方散乱/側方散乱(FSC/SSC)によって決定した。フローサイトメーターは、Sphero rainbow蛍光性粒子(Spherotech Inc., Lake Forest, IL)によって、異なる取得日でも同じ設定になるように較正した。輸血24時間後に測定したGFP陽性RBCのパーセントを時間0でのGFP陽性RBCのパーセントで除算することによって、輸血24時間後のRBC存続率(%)を計算した。時間0での蛍光は、10分、30分および1時間でのデータから線形回帰によって外挿した。
輸血2時間後の生化学的アッセイ
FRBCまたはSRBCの輸血後に、ペントバルビタール(200mg/kg)の腹腔内注射から2時間の時点でマウスを屠殺した。およそ1mlの血液を各マウスから心臓穿刺によってヘパリン加シリンジ内に採取して、4℃、4000rpmでの遠心処理を8分間行った。ヘパリン加血漿を入手して、血液化学検査値、ならびにインターロイキン-6(IL-6)、ハプトグロビン(Hp)およびヘモペキシン(Hx)のレベルを測定した。血清試料は、鉄レベルの測定のために入手した。肝臓標本は、以後にヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)の決定を行うために液体窒素中で急速凍結させた。
FRBCまたはSRBCの輸血による急性な生化学的影響を比較するために、12匹のWTマウスおよび12匹のdb/dbマウスを、輸血10分後にペントバルビタール(200mg/kg)の腹腔内注射によって屠殺した。血液化学検査値の測定のために、心臓穿刺によって全血を入手した。
血清鉄レベルの測定
血清鉄レベルは、鉄/不飽和鉄結合能アッセイ(Thermo Fisher Scientific, Middletown, VA)を用いて決定した。
血漿IL-6レベル、HpレベルおよびHxレベルの測定
血漿IL-6レベルは、DuosetマウスIL-6 Elisa Kit(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いて決定した。血漿HpレベルおよびHxレベルは、それぞれマウス用のHpおよびHx Elisaキットを用いて測定した(Life Diagnostics, Inc,、West Chester, PA)。
組織mRNAレベルの定量
マウス肝臓からTrizol試薬(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)を用いて全mRNAを抽出した。逆転写酵素反応(MMLV-RT, Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)によってcDNAを合成した。転写物のリアルタイム増幅を、Eppendorf Mastercycler Realplex(Eppendorf, Hamburg, Germany)を用いるSYBR法によって行った。標的転写物の相対的発現を18S rRNAのレベルに対して標準化し、相対的CT法を用いて分析した。
FRBCまたはSBRCの輸血後の覚醒したWTマウス、HFD摂取WTマウスおよびdb/dbマウスにおける血圧の非侵襲性測定
FRBC、SRBC、洗浄したFRBCおよびSRBC、FRBCおよびSRBC由来の上清、ならびに酸化SRBC由来の上清を、WTマウス、HFD摂取WTマウスまたはdb/dbマウスに、尾静脈を介して輸血した(注入物の総容量は推定血液量の10%とした)。収縮期血圧は、非侵襲性血圧システム(XBP 1000, Kent Scientific, Torrington, CT)を用いて測定した(Yu et al., Circulation 2008:117: 1982-90;Yu et al., Anesthesiology 2010;112: 586-94)。尾静脈注射はすべて、1分間かけて行った。db/dbマウスの一群には、輸血10分前から輸血2時間後まで、Yu et al., Circulation 2008;117: 1982-90に記載される方法を用いて、80ppm一酸化窒素を含む空気(Medical-Technical Gases, Inc., Medford, MA)中で呼吸させながらSRBCを投与した。
麻酔マウスにおける侵襲的血行動態測定
侵襲的血行動態測定は、Yu et al., Anesthesiology 2010;112: 586-94に記載された通りに行った。左室圧-容積ループおよび心拍出量(CO)、ならびに平均動脈血圧(MAP)を、ベースライン時、およびFRBC、SRBC、FRBC由来の上清、またはSRBC由来の上清の輸血(推定血液量の10%を、右頸動脈内に留置した別個のカテーテルを通して、75μL/分の速度で3分間かけて注入)から5分間後に測定した。
統計分析
値はすべて平均±SEMとして表した。データは、Tukey調整を伴う一元配置ANOVAによって解析した(SigmaStat 3.0.1; Systat Software, Inc., San Jose, CA)。覚醒マウスにおける収縮期血圧の測定値は、相互作用を伴う反復測定二元配置ANOVAによって解析した。0.05未満の確率値を有意とみなした。
保存マウス血液の特性決定
24時間以下の保存を行ったFRBCを、2週間保存したSRBCと比較した。SRBCではpH、PO2、HCO3 -およびSBEが顕著に低下していたが、PCO2および乳酸塩はFRBCよりも高かった(表1)。加えて、SRBCの方がFRBCよりもナトリウムレベルは低く、カリウムレベルは高かった。SRBCにおける溶血のレベルはFRBCよりも顕著に高かった。同様に、上清HbレベルはSRBCの方がFRBCよりも高かった。FRBCおよびSRBCの上清で測定されたメトHbレベルはいずれも、上清Hbの1%未満であった。
(表1)FRBC(24時間以下)およびSRBC(2週間)における血液化学検査値の比較
Figure 0006389125
値は平均±SEMである。FRBC、新鮮赤血球;SRBC、保存赤血球;SBE、標準塩基過剰;Hb、ヘモグロビン。
*P<0.01、FRBCと比較して差がある。
FRBCでは、細胞形態は円板状赤血球が主体であった(図1A、上のパネル)。2週間の保存後には、RBCの大半が異常な形状であった(例えば、図1A、下のパネルに指し示されているようなウニ形赤血球または球状ウニ形赤血球)。保存したヒトRBCで報告されているものに類似した外観の、保存により誘発される形態学的変化が、マウスRBCで観察された(Makley et al., Shock 2010;34: 40-5)。
RBCの主な機能は酸素を輸送することである;このことから、RBC保存後のHb-酸素親和性の変化を測定した。SRBCのODCは、FRBCと比較して顕著に左方推移した(それぞれ21±1mmHgに対して43±0mmHg;図1B、n=5、P<0.01)。赤血球の2,3-DPGレベルは、FRBCにおける3.8±0.1mmol/Lから、SRBCでは0.2±0.1mmol/Lに低下した(図1C)。酸素親和性はマウスにおけるHbに対する2,3-DPGのアロステリック抑制性結合作用によってモジュレートされるため、保存したヒトRBCで観察されるものに類似した、保存による2,3-DPGの減少により、酸素親和性が顕著に増強された。これらの結果は、マウスRBCが、2週間の保存の間に生化学的、血液学的および形態学的な変化を起こしたことを実証している。
同系輸血後のRBC存続に対する保存継続時間の影響
注入したFRBCおよびSRBCの存続率を追跡するために、GFP標識RBCに対する保存の影響について調べた。GFP標識FRBCの輸血から24時間後に、GFP標識赤血球の割合は、注入後の時間0の時点に計算したものの99±3%であった(図1D)。GFP標識SRBCの輸血から24時間後には、GFP標識赤血球の割合は、注入後の時間0の時点に計算したものの68±1%であった(図1D)。輸血24時間後以降には、FRBCおよびSRBCにおけるGFP標識赤血球の減少速度は同程度であった。これらの結果は、Gilsonら(Gilson et al., Transfusion 2009:49: 1546-53)によって報告されたものと一致しており、保存血液で見られる保存損傷が赤血球に対して異種混交的な影響を及ぼすことを示唆する。
WTマウス、HFD摂取WTマウスおよびdb/dbマウスにおけるHct、Hbおよび血漿Hbに対するFRBCおよびSRBC輸血の影響
FRBCまたはSRBCの輸血から10分後(WTマウスおよびdb/dbマウス)および2時間後(WTマウス、HFD摂取WTマウスおよびdb/dbマウス)に、マウスから動脈血試料を採取した。FRBCまたはSRBCのいずれの輸血も、すべての被験マウスにおける輸血10分後および2時間後のHctレベルおよび総Hbレベルを上昇させた。SRBCの輸血は、被験マウスのすべての群で輸血10分後および2時間後の血漿Hbレベルを上昇させたが、FRBCはそうではなかった。これらの結果は、SRBC輸血後の血漿Hbレベルの上昇は、保存中および輸血後のHbの放出に起因する可能性が最も高いことを指し示している。
輸血後の血清鉄レベル
SRBCは寿命が短く、循環中から急速に除去されることから考えると、それらは、そのヘムからの鉄が反応性酸素種の生成を強化するのに寄与しうると考えられる。FRBCまたはSRBCの輸血2時間後に、マウスにおける血清鉄レベルを測定した(図2)。血清鉄レベルは、WTマウス、HFD摂取WTマウスおよびdb/dbマウスへのSRBCの輸血2時間後には高かったが、FRBCの輸血後はそうでなかった。これらの結果は、SRBCの輸血は、FRBCの輸血よりも血清中の鉄を増加させることを実証している。
輸血後の炎症
FRBCまたはSRBCのいずれかの輸血がマウスにおける全身性炎症反応を誘発するか否かを知るために、WTマウス、HFD摂取WTマウスおよびdb/dbマウスから輸血2時間後に収集した血漿試料におけるIL-6レベルを測定した(図3A)。SRBCの輸血は、WTマウス、HFD摂取WTマウスおよびdb/dbマウスにおける血漿IL-6のレベルを上昇させたが、FRBCの輸血はそうでなかった(P<0.05)。保存細胞における白血球(WBC)のおよそ97%は白血球除去処理によって除去され、輸血した試料中にエンドトキシン(例えば、LPS)は検出されなかったことから、IL-6レベルの上昇はSRBC輸血の結果である可能性が最も高い。
輸血後の血漿Hp、Hxおよび肝臓HO-1
細胞外Hbに対する主な防御機構は、しばしば「抗酸化タンパク質」と呼ばれ、これには例えばHp、HxおよびHO-1などがある。細胞外Hbは循環血中のHpと結合する。Hb-Hp複合体の排除は循環中および肝臓内(マクロファージ)で起こり、最終的にはHO-1を介したヘムの分解につながる(Buehler et al., Antioxid Redox Signal 2010;14: 1713-28)。Hxは血漿ヘムの主な担体としての役を果たし、それを肝臓に輸送することによってその排除に関与する(Gutteridge et al., Biochem J 1988;256: 861-5)。HO-1はヘム分解の誘導性アイソフォームであり、炎症性傷害に対して防御的である(Immenschuh et al., Curr Drug Targets 2010;11: 1541-50)。
SRBC輸血後の血漿Hbレベルの上昇を測定した後に、血漿Hbの排除の原因となる機構に対するFRBCおよびSRBCの輸血の影響を検討した。血漿Hpレベルは、FRBCまたはSRBCのいずれの輸血でも2時間後には低下していた(図3B)。SRBCの輸血は、HFD摂取WTマウスおよびdb/dbマウスでは2時間時点の血漿Hxレベルを低下させたが、WTマウスではそうではなかった(図3C)。FRBCの輸血はHxレベルを変化させなかった。輸血2時間後の時点で、肝臓HO-1 mRNAレベルは、SRBC輸血後のWTマウス、HFD摂取WTマウスおよびdb/dbマウスでは上昇していたが、FRBC輸血後はそうではなかった(図4、P<0.05)。これらの結果は、マウスにおけるベースラインのHpレベルが極めて低いため、FRBC輸血に反応して放出された少量のHbでもHpレベルを顕著に低下させるには十分であり、一方、Hxレベルはより高いため、輸血2時間後にもわずかしか低下しなかったことを示唆する。SRBCの輸血は、SRBCから放出されたヘムの増加に起因して肝臓HO-1 mRNAレベルを誘導した。
FRBCおよびSRBCの輸血の血行動態への影響
四量体Hbを1%未満しか含まない代用血液の輸血は、全身性血管収縮作用を生じさせる恐れがある(Yu et al., Anesthesiology 2010;112: 586-94)。収縮期血圧に対するFRBCおよびSRBCの輸血の影響を検討するために、覚醒マウスにFRBCまたはSRBC(注射血液量の10%として)を尾静脈を介して投与した。FRBCまたはSRBCのいずれの輸血も、覚醒WTマウスにおける収縮期血圧を変化させなかった(図5A)。内皮機能不全のあるマウス(例えば、HFD摂取WTマウスまたはdb/dbマウス)は、四量体Hbの血管収縮作用に対してより感受性が高い(Yu et al., Anesthesiology 2010;112: 586-94を参照)。覚醒HFD摂取WTマウスにおいて、FRBCまたはSRBCの輸血はいずれも収縮期血圧を変化させなかった(図5B)。対照的に、覚醒db/dbマウスではSRBCの輸血により、収縮期血圧が上昇した(ベースラインの111±2mmHgから10分時点では127±3mmHgに、P<0.05、図5C)が、FRBCではそうではなかった。一酸化窒素呼吸により、マウスにおいて四量体Hbを注入することによって誘発される全身性血管収縮が予防されたことから(Yu et al., Circulation 2008;117: 1982-90)、吸入した一酸化窒素が、db/dbマウスへのSRBCの輸血による血管収縮作用を予防する能力について試験した。80ppm一酸化窒素の呼吸を輸血10分前に開始してそれから2時間続けることにより、db/dbマウスへのSRBCの輸血によって誘発される全身性高血圧が完全に予防された(図5C)。
SRBCのどの成分がその血管収縮作用の原因であるかを調べるために、SRBCまたは洗浄SRBCから入手した上清を覚醒db/dbマウスに輸血した。SRBCの上清(db/dbマウス38の推定血液量の10%または250μL、これは250μLのSRBCを輸血することによって得られる上清の容積の4倍に相当)は体血圧を上昇させ(112±4mmHgから132±4mmHgに、P<0.05)、これは40分間持続した(図5Dおよび5E)。
洗浄によって誘発される溶血を最小限に抑えるために、SRBCを1.5g%の塩化ナトリウム中に懸濁させた。db/dbマウスへの洗浄SRBCの輸血は体血圧を上昇させなかった(図5E)。
麻酔下のdb/dbマウスで入手した侵襲性血行動態測定値により、覚醒db/dbマウスにおける所見が裏づけられた。SRBCまたはSRBC由来の上清の輸血は、左室(LV)収縮末期圧(LVESP、図6A)および体血管抵抗係数(SVRI、図6B)を上昇させたが、一方、FRBCまたはFRBC由来の上清の輸血はこれらの血行動態パラメーターを変更させなかった。SRBCから入手した上清を一酸化窒素ガスへの曝露によって酸化させ(それによって二価鉄Hbを三価鉄Hbに変換させ)、その後に低分子量成分(例えば、亜硝酸塩および硝酸塩)を除去するために透析を行った後には、覚醒db/dbマウスへの輸血はそれらの体血圧を上昇させなかった(図5D)。これらの血行動態の結果は、SRBC由来の上清の注入が全身性血管収縮を引き起こし、それは2週間の保存中に放出された上清Hbの注入に起因する可能性が最も高いことを示唆する(Donadee et al., Circulation 2011;124: 465-76;Yu et al., Anesthesiology 2010;112: 586-94)。
実施例2:保存血液を輸血した仔ヒツジにおける肺高血圧
血液製剤の加工処理
実験はすべて、Massachusetts General Hospital, Boston, MAの研究動物管理小委員会による承認を得た。3カ月齢または4カ月齢で体重32±2kgのPolypay仔ヒツジ(New England Ovis, Dover、NH)36匹で試験を行った(Hulet et al., J Anim Sci 1984; 58:15-24)。ケタミンHCl(15mg/kg;Hospira, Inc., Lake Forest, IL)の筋肉内注射後に、クエン酸塩-リン酸塩-デキストロース溶液を含むDouble Blood-Pack Unit(Fenwal, Inc., Lake Zurich, IL)内に、外頸動脈から血液(450ml)を採取した。続いて、血液の白血球除去処理を、一体型RS2000白血球除去処理フィルターを用いて室温で行った。遠心分離(600gを10分間、24℃)によって赤血球を血漿から分離し、食塩水、アデニン、グルコースおよびマンニトールを含む追加溶液(110ml)(AS-1, Adsol Solution, Fenwal, Inc.)中で4℃にて2日間または40日間保存した。
ヒツジ赤血球のビオチン化
輸血した濃縮赤血球(PRBC)のインビボ存続率を、Mock et al. Transfusion 1999;39:156-6の方法の変法を用いて、8匹の仔ヒツジにおいて測定した。AS-1中での2日間(n=4)または40日間(n=4)の保存後に、PRBC(60ml)を血液保存バッグから採取して、4℃、600gでの15分間の遠心分離によって上清から分離した。上清を4℃で保存した。ペレット化したPRBCを、洗浄溶液(60ml:塩化ナトリウム0.87%、炭酸水素ナトリウム0.2%、デキストロース0.2%およびリン酸ナトリウム0.1%;Hospira, Inc.)中に再懸濁させた。遠心分離を再度行い、上清を廃棄した。洗浄したPRBCを、スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド-ビオチンを含む洗浄溶液(60ml)(10μg/ml;Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL)中に再懸濁させて、室温で40分間インキュベートした。結合しなかったスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド-ビオチンを除去するために、PRBCを上記の通りに洗浄溶液で2回洗浄した。最終的な洗浄段階の後に、PRBCをそれまで保存していた上清中に再懸濁させた。
ビオチン化PRBCを、外頸動脈内に留置した16-G Angiocath(BD Infusion Therapy Systems, Inc., Sandy, UT)を介してヒツジドナーに輸血した。15分後、30分後、60分後、24時間後および7日後の時点で、静脈血液試料をヘパリン加4ml Vacutainer(BD, Franklin Lakes, NJ)内に採取した。
ビオチン化PRBCの存続率を評価するには、血液試料(50μl)を、フルオレセインイソチオシアネート標識ストレプトアビジン(20μg/mlストレプトアビジン-フルオレセインイソチオシアネートを含む洗浄溶液の250μl;Biolegend, San Diego, CA)とともに室温で20分間インキュベートした。フルオレセインイソチオシアネート標識PRBCを、LSRFortessaフローサイトメーター(BD Biosciences, San Jose, CA)にて、前方散乱と側方散乱との比(FSC/SSC)として検出した。Sphero rainbow蛍光性粒子(3.0〜3.4μm;Spherotech, Inc., Lake Forest, IL)を用いて、異なる取得日のフローサイトメーターの設定を較正した。0時間時点のビオチン化PRBCの数の外挿を行い、100%に相当させた。合計100,000件のイベントにおける、輸血後に入手した血液試料におけるビオチン化細胞のパーセンテージと、0時間時点に存在したと計算されたビオチン化細胞のパーセンテージとの比を計算した。
動物の準備および血行動態のモニタリング
侵襲的血行動態測定を28匹の仔ヒツジで行った。5%イソフルラン(Baxter, Deerfield, IL)を含む酸素をマスクを介して呼吸させることによって麻酔を導入した。以前の記載の通りに(Yu et al., Anesthesiology 2010; 112:586-94)、気管内挿管後に動物に気管切開術を行い、頸動脈および肺動脈に留置カテーテルを装着した。大型動物用拘束装置(Lomir, Malone, NY)において全身麻酔からの2時間の回復期間を置いた後に、Gould 6600 amplifierシステム(Gould Electronics, Inc., Eastlake, OH)を用いて、平均動脈圧(MAP)、平均肺動脈圧(PAP)および中心静脈圧を連続的にモニターした。肺毛細血管楔入圧(PCWP)および心拍数は10〜30分毎に間欠的に測定した。心拍出量は、熱希釈により、10mlの氷冷食塩液の静脈内ボーラス注射後の3回の測定値の平均として評価した。体血管抵抗係数および肺血管抵抗係数(PVRI)ならびに心係数は、標準的な式を用いて計算した。血行動態データは、輸血終了から4時間後まで収集した。
覚醒仔ヒツジにおける保存PRBC輸血の血行動態作用
6群の覚醒仔ヒツジで試験を行った。動物にはすべて、体重の6.5%が血液量であると推定した上で、それらの各々の総血液量の14%に相当するPRBCの自己輸血を行った(Hansard et al., Proc Soc Exp Biol Med 1956; 91:31-4)。PRBCを37℃まで温めた上で30分間かけて輸血し、その間、仔ヒツジには気管切開術の上で吸入酸素濃度(FiO2)0.25として自発呼吸させた。仔ヒツジの1群(n=5)には、加工処理した上で輸血前に2日間保存したPRBC(新鮮PRBC)を投与した。仔ヒツジの第2の群(n=6)には、輸血前に40日間保存したPRBC(保存PRBC)を輸血した。仔ヒツジの第3の群(n=4)には、保存PRBCの輸血中に、80ppm一酸化窒素(Medical-Technical Gases, Medford, MA)を0.25 FiO2で呼吸させた。一酸化窒素呼吸は、輸血が終了して30分後まで継続した。
内皮機能不全の仔ヒツジモデルにおける保存PRBCの輸血による血行動態作用
仔ヒツジのさらに3つの群では、NOS阻害薬であるNG-ニトロ-L-アルギニンメチル-エステル(L-NAME、Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)の静脈内注入後に試験を行った。輸血の1時間前に25mg/kg L-NAMEのボーラスを静脈内注射した(Weimann et al., Anesthesiology 2000; 92:1702-12)。それと同時に、5mg/kg/h L-NAMEの注入を開始し、試験期間を通じて継続した。アセチルコリン(Sigma-Aldrich)の静脈内ボーラス注射によって誘発される全身性血管拡張を評価することにより、L-NAME投与を開始する前、ならびに開始から45分後および5時間後の、一酸化窒素生成の部分的阻害が確認された。NOS非依存的な全身性血管拡張についても、各実験の終了時にナトリウムニトロプルシド(Sigma-Aldrich)の静脈内注射によって評価した。
L-NAME投与後に、仔ヒツジの第4の群(n=4)には新鮮PRBCを投与し、第5の群(n=5)には保存PRBCを投与した。第6の群(n=4)には、L-NAMEの注射後、保存PRBCの輸血の10分前にFiO2 0.25での80ppm一酸化窒素の吸入を開始した。一酸化窒素呼吸は輸血中を通じて、さらに輸血が終了した後も30分間継続した。
血液試料の生化学的分析
動脈血および静脈血試料(10ml)を、輸血の直前、ならびに輸血の終了から30分後、2時間後および4時間後に採取した。輸血保存バッグからの試料(10ml)は、細菌混入を避けるために輸血直後に入手して加工処理した。血液ガス圧およびpHは、ABL800 Flex血液ガス分析装置(Radiometer Medical, Copenhagen, Denmark)を用いて分析した。
血漿および上清における無細胞ヘモグロビンレベルは、QuantiChromヘモグロビンアッセイキット(BioAssay Systems, Hayward, CA)を用いて測定した。ヘマトクリット値は、毛細管(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)における全血の400g、10分間の遠心分離によって測定した。溶血(パーセント値)は、以下の式から計算した:無細胞ヘモグロビン[g/dl]・(100-ヘマトクリット値[%])/総ヘモグロビン[g/dl]。
硝酸塩および亜硝酸塩の血漿中濃度および上清中濃度は、硝酸塩/亜硝酸塩蛍光測定アッセイキット(Cayman Chemical Company, Ann Arbor, MI)を用いて測定した。血漿トロンボキサンB2(TXB2)レベルは、EIAキット(Cayman Chemical Company)を用いて決定した。2,3-ジホスホグリセリン酸(2,3-DPG)のレベルは、Roche Diagnostics(Mannheim, Germany)のキットを用いて測定した。血漿インターロイキン-6(IL-6)レベルは、Thermo Fisher Scientificのウシ用キットを用いて測定した。ハプトグロビン(Hp)濃度は、ウシ用Hp ELISAキット(Immunology Consultants Lab, Inc., Newberg, OR)を用いて評価した。
2日間または40日間保存した白血球除去処理血液の酸素解離曲線は、Hemox-analyzer(TSC Scientific Corp., New Hope, PA)を用いて決定した。ヘモグロビンの半分が飽和する酸素分圧(P50)を、酸素解離曲線から計算した。
メッセンジャーRNA(mRNA)レベルの定量
輸血から4時間後の時点で、イソフルラン麻酔下での50mlの20%塩化カリウム溶液の静脈内注射によって動物を屠殺した。組織試料を肺および肝臓から入手して、液体窒素中で急速凍結させ、さらなる分析まで-80℃で保存した。
Trizol(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いてRNAを組織から抽出し、MMLV-RT(Invitrogen)を用いて相補的DNAを合成させた。転写物のリアルタイム増幅について、Mastercycler ep Realplex(Eppendorf, Hamburg, Germany)を用いて検出した。標的転写物の相対的発現を、18S調節性RNAのレベルに対して標準化した。プライマー対を用いて、IL-6、
Figure 0006389125
;腫瘍壊死因子-α、
Figure 0006389125
;およびミエロペルオキシダーゼ、
Figure 0006389125
をコードする転写物を検出した。
統計分析
データはすべて平均±SDとして表している。統計分析は、GraphPad Prism 5ソフトウエア(GraphPad Software, Inc., La Jolla, CA)を用いて行った。AS-1保存後の新鮮PRBCと保存PRBCの比較、PRBC存続率実験、およびmRNAレベルの比較のためには、2標本の両側独立t検定を適用して2群間の差を比較し、Bonferroni調整を用いて多重比較に関して補正した。血行動態実験については、反復測定を伴う二元配置ANOVAを用いて、さまざまな時点での群間の差を比較した。しかし、時点間および条件間の相互作用P値が有意であった場合には、事後Bonferroni-adjusted比較検定を伴う一元配置ANOVAを用いて個々の各時点での比較を行った。群内比較は両側対応t検定を用いて行った。0.05未満のP値は有意とみなした。
白血球除去処理を行ってAS-1保存した仔ヒツジPRBCの化学的特性
白血球除去処理を行ったPRBCおよびそれらの上清の化学的特徴を、AS-1中での2日間または40日間の保存後に分析した。新鮮PRBCの上清における無細胞ヘモグロビン濃度は41±13mg/dlであり、その結果算出された溶血レベルは0.10±0.04%であった。保存PRBC上清において、無細胞ヘモグロビン濃度および溶血レベルは新鮮PRBC上清よりも高かった(それぞれ148±20mg/dlおよび0.50±0.05%;いずれのパラメーターについても新鮮PRBCとの比較でP<0.001)が、保存ヒト血液について米国食品医薬品局(Food and Drug Administration)が要求しているレベルよりも低いままであった。
保存PRBCの上清の方が新鮮PRBCよりもカリウム濃度および乳酸塩濃度は高く、一方、pHは低かった。PO2は保存PRBCの方が新鮮PRBCよりも大きかった。以前に記載されている通り(Bunn, Science 1971; 172:1049-5)、ヒツジ赤血球で測定された2,3-DPGのレベルは極めて低かった。2,3-DPGの赤血球内レベルについて新鮮PRBCと保存PRBCの間に差はなかった。P50についても新鮮PRBCと保存PRBCの間に差はなかった。白血球除去処理後には、PRBC中の白血球は検出不能であった。このように、ヒツジPRBCは、ヒトPRBC保存に関する以前の諸研究との比較で、AS-1中で多くの類似した保存特性を示した。
白血球除去処理を行ってAS-1保存した仔ヒツジPRBCのインビボ存続性
PRBCをビオチン化し、2日間または40日間の保存後に輸血した。循環血中ビオチン化PRBCに関する存続曲線は図7に示されている。新鮮PRBCをビオチン化して輸血した場合には、96±4%が少なくとも24時間にわたって存続したが、一方、輸血24時間後に循環血中に残っていたのは保存PRBCの76±7%であった(P=0.002、値には差がある)。ビオチン化した保存PRBCの損失はほとんどすべてが輸血後の最初の1時間に起こり、輸血1時間後には77±2%しか残っていなかった。輸血から1時間後〜24時間後の間は、標識した新鮮PRBCおよび保存PRBCの循環血中レベルは安定に保たれた(保存PRBC:1時間後に77±2%で24時間後に76±7%、P=0.72;新鮮PRBC:1時間後に99±2%で24時間後に96±4%、P=0.26)。輸血から一週間後には、ビオチン化新鮮PRBCおよび保存PRBCのそれぞれ80±8%および54±4%が循環血中に残っていた。このように、保存および輸血後のヒツジPRBCのインビボ存続特性は、ヒトPRBCで測定されたものと類似している。
覚醒仔ヒツジにおける保存PRBCの輸血による血行動態作用
PAPおよびPVRIに対する保存PRBC輸血の影響は、新鮮PRBC輸血の影響とは差があった(一元配置ANOVA、PAPについてはP<0.001、PVRIについてはP=0.02、図8)。新鮮PRBCの輸血では、測定した血行動態パラメーターのいずれもベースラインから変化しなかった。保存PRBCの輸血は、PAP(ベースラインの13±1mmHgに対して18±1mmHg、P<0.001)およびPVRI(ベースラインの108±19dyn・sec・cm-5/・m-2に対して156±35dyn・sec・cm-5/・m-2、P=0.02)を増大させ、どちらのパラメーターも輸血終了時にピークとなった(図8)。PAPおよびPVRIはいずれも、輸血の終了から60分後にはベースライン値に回復した(図8)。測定した他の血行動態パラメーターはすべて、保存PRBCの輸血後に変化しなかった。したがって、保存PRBCの輸血は仔ヒツジにおける肺血管圧および肺血管抵抗を上昇させるが、体血管圧および体血管抵抗についてはそうではなかった。
L-NAME誘発性内皮機能不全の仔ヒツジモデルにおける保存PRBC輸血の血行動態作用
内皮機能不全によって保存PRBCの輸血に対する肺血管収縮反応が変化するか否かを調べるために、仔ヒツジに対してL-NAMEを前投与した。アセチルコリン注入が全身性血管拡張を誘発する能力の50%低下によって反映される、NOS活性を部分的に阻害する用量のL-NAMEを注入した。予想された通り、L-NAME投与は、ナトリウムニトロプルシドの静脈内ボーラス注入に対する血管拡張反応を変化させなかった。L-NAMEの注入は、MAP、PAP、中心静脈圧およびPCWP、ならびに体血管抵抗係数および肺血管抵抗係数を増大させたが、一方、心係数および心拍数は低下した(図9)。
新鮮PRBCの輸血は、測定した血行動態パラメーターをいずれも変化させなかった。対照的に、保存PRBCの輸血は、L-NAMEを投与した覚醒仔ヒツジにおけるPAP(ベースラインの17±1mmHgに対して26±4mmHg、P<0.001)、PCWP(ベースラインの7±1mmHgに対して10±2mmHg、P=0.02)およびPVRI(ベースラインの170±34dyn・sec・cm-5/・m-2に対して312±85dyn・sec・cm-5/・m-2、P=0.009)を増大させた(図9)。保存PRBCの輸血によって誘導されたPAPおよびPVRIの増大は、L-NAMEの存在下の方がL-NAMEの非存在下よりも大きかった(L-NAMEの非存在下におけるΔPAPである5±1mmHgは、L-NAMEの存在下におけるΔPAPである9±4mmHgとは差がある、P=0.03;L-NAMEの非存在下におけるΔPVRIである47±33dyn・sec・cm-5/・m-2は、L-NAMEの存在下におけるΔPVRIである142±53dyn・sec・cm-5/・m-2とは差がある、P=0.006)。MAPについては群間に統計学的な差はなかった(一元配置ANOVA、P=0.09)。このように、NOSの部分的阻害により、肺に対する保存PRBCの血管収縮作用は増強されたが、全身性循環に対してはそうではなかった。
保存PRBCの輸血中の一酸化窒素の同時吸入
一酸化窒素吸入により、HBOC-201の注入中の肺血管収縮が予防される(Yu et al., Anesthesiology 2009; 110:113-2)。一酸化窒素の呼吸によって保存PRBCの輸血に対する肺血管収縮反応が予防されるか否かを検討するために、80ppmの一酸化窒素を輸血中およびその後30分間にわたって同時に投与した。L-NAMEを前投与していない仔ヒツジにおいて、一酸化窒素の呼吸により、保存PRBCの輸血に伴うPAP(ベースラインの12±1mmHgに対して13±1mmHg、P=0.13)およびPVRI(ベースラインの107±14dyn・sec・cm-5/・m-2に対して105±22dyn・sec・cm-5/・m-2、P=0.87)の増大が予防された(図8)。
L-NAMEを前投与した仔ヒツジでは、80ppmの一酸化窒素の同時吸入により、PAPおよびPVRIがベースラインまで低下し、保存PRBCの輸血に伴って観察された肺血管収縮が予防された。一酸化窒素の呼吸を輸血30分後に停止した後に、PAPおよびPVRIは徐々に増大し、一酸化窒素の呼吸の終了から60分後には輸血前レベルに戻った(図9Aおよび9C)。予想通り、一酸化窒素の吸入はMAPを変化させなかった(一元配置ANOVA、P=0.89)。このように、一酸化窒素呼吸により、仔ヒツジにおける保存PRBCの輸血に伴う肺血管収縮作用が予防された。
保存PRBCの輸血によって引き起こされる肺高血圧の考えられる機序
保存PRBCの輸血後に観察される肺血管収縮の原因である可能性のある機序を解明するために、ヒツジ血漿における無細胞ヘモグロビン濃度を、新鮮PRBCおよび保存PRBCの輸血の前および後に測定した。新鮮PRBCの輸血は、無細胞ヘモグロビンレベルを変化させなかった(図10)。対照的に、保存PRBCの輸血は、無細胞ヘモグロビンレベルを60分間時点で上昇させ、レベルは4.5時間まで上昇したままであった。一酸化窒素の呼吸は、保存PRBCが無細胞ヘモグロビンを増加させる能力を変化させなかった。
ヒトと比較して、ヒツジではヘモグロビン-スカベンジャーHpの血漿中濃度が低い(Kallapur et al., Am J Respir Crit Care Med 2009; 179:955-61)。Hpの血漿レベルは、新鮮PRBCまたは保存PRBCのいずれの輸血後にも低下した。しかし、保存PRBCの輸血後に、Hpのより顕著な低下が測定された(新鮮PRBCと保存PRBCとを経時的に比較した両側ANOVAで、P=0.002)。
トロンボキサンB2(TXB2)は、強力な血管収縮物質であるトロンボキサンA2の安定した代謝産物である。肺血管内マクロファージによるトロンボキサン代謝産物の放出は、顕著な肺高血圧を誘発する恐れがある(Staub, Annu Rev Physiol 1994; 56:47-67)。保存PRBCの輸血によって誘導されるPAPおよび肺血管抵抗の増大が、トロンボキサン代謝産物の血漿中濃度の上昇によって媒介されるか否かを明らかにするために、新鮮PRBCおよび保存PRBCの輸血の前および後にTXB2レベルを測定した。TXB2の血漿中濃度は、新鮮PRBCまたは保存PRBCのいずれについても輸血前と輸血30分後で差がなく、このことから、トロンボキサンが保存PRBCの輸血に伴う肺高血圧症の原因である可能性は低いという証拠が得られた。
亜硝酸塩は、亜硝酸レダクターゼを介して一酸化窒素に変換されうる(Weitzberg et al., Anesthesiology 2010; 113:1460-75)。輸血後の血漿中の亜硝酸塩の枯渇は、このため、保存PRBCの輸血と関連している可能性がある。PRBCの輸血が血漿中の一酸化窒素代謝産物の変化をもたらすか否かを検討するために、血漿中の硝酸塩および亜硝酸塩のレベルを、新鮮PRBCおよび保存PRBCの輸血後に測定した。硝酸塩および亜硝酸塩の血漿レベルは、新鮮PRBCまたは保存PRBCのいずれについても、投与前にも投与後にも差はなかった(二元配置ANOVA、硝酸塩についてはP=0.37、亜硝酸塩についてはP=0.21;図11)。
白血球除去処理を行ってAS-1で保存した仔ヒツジPRBCの輸血は全身性炎症を誘発しない
自己PRBCの輸血が炎症反応をもたらすか否かを明らかにするために、血漿中IL-6濃度、ならびにIL-6、腫瘍壊死因子-αおよびミエロペルオキシダーゼをコードするmRNAの肺および肝臓でのレベルを、新鮮PRBCまたは保存PRBCの輸血の前および後に測定した。血漿IL-6レベルも、炎症メディエーターをコードするmRNAのレベルも、新鮮PRBCまたは保存PRBCの輸血によって変化しなかった。新鮮PRBCまたは保存PRBCの輸血の前および後に測定された白血球濃度にも差がなかった。このように、白血球除去処理を行った自己性の新鮮PRBCまたは保存PRBCの輸血は、この仔ヒツジモデルにおいて、輸血後4時間以内に炎症反応を誘発しなかった。
実施例3:一酸化窒素による赤血球の処理後のメトヘモグロビン変換
添加したヒトヘモグロビンを含む血漿を、アドソール(adsol)保存を行ったヒト赤血球に添加した。赤血球をポンプで送り出して(5、7.5および10ml/分の流速で)、細胞を(ガス交換器を通る単一路上で)2600ppm一酸化窒素ガスを含む窒素に曝露させる、膜ガス交換器(Living Systems Instrumentation Inc., St. Albans, Vermont)に通過させた。この一酸化窒素処理により、上清オキシヘモグロビンのおよそ50%がメトヘモグロビンに変換された(図12)。しかし、ヒト赤血球はメトヘモグロンレダクターゼという酵素を多量に含むため、一酸化窒素処理によってメトヘモグロビンに変換されたのはヒト赤血球ヘモグロビンの数パーセントに過ぎなかった(図13)。
実施例4:一酸化窒素放出性化合物による保存赤血球の処理
ヒト保存赤血球(46日保存)を、MAHMA/NO((Z)-1-[N-メチル-N-[6-(N-メチルアンモニオヘキシル)アミノ]]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレート)で処理した。0.5mM MAHMA/NO処理により、上清ヘモグロビンの99%がメトヘモグロビンへと酸化された(図14A)。対照的に、この処理によって酸化されたのは赤血球ヘモグロビンの15%に過ぎなかった(図14A)。加えて、MAHMA/NOの添加後にヒト保存赤血球のさらなる溶血は起こらなかった(図14B)。
マウス保存赤血球(14日保存)を用いた試験により、酸化上清の量を増やすためには、より多量のMAHMA/NOが必要であることが指し示された(1mM MAHMA/NOは70%の上清メトヘモグロビンをもたらした;図14A)。これは、マウス赤血球の保存に際して観察された溶血のレベルがより高いことに起因する可能性が高い。ベースラインのレベルでは、溶血はヒト保存赤血球の方が高度であり、無細胞ヘモグロビンを完全に酸化するためにはMAHMA/NOの濃度を高めることが必要であった。マウス保存赤血球の上清における無細胞ヘモグロビンのレベルはさまざまであり、MAHMA/NOを添加すると低下する(図14B)。
マウス保存赤血球を、db/dbマウスへの注入の前に1mM MAHMAによって前処理した。合計8匹のdb/dbマウスを2群に分けて試験した:保存赤血球(n=2;SRBC)、前処理した保存赤血球(n=6;Mahma処理SRBC)。MAHMA/NOによる保存赤血球の前処理により、db/dbマウスへの保存赤血球の注入によって引き起こされる血圧上昇作用は減弱した(図15)。
実施例5:赤血球のエクスビボ一酸化窒素処理に用いるための膜
市販の膜を通過するガス状一酸化窒素の輸送速度を、微孔性(MP)膜(Micro-1 Rat Oxygenator, Kewei Rising, Shenzhen, Guangdong Province, China)およびポリメチルペンテン(PMP)膜酸素供給器(Quadrox-iD Pediatric Oxygenators, MAQUET Cardiovascular, Wayne, NJ)を用いるガス-ガス試験において評価した。膜の評価は、(i)気相中にある300百万分率(ppm)一酸化窒素を含む窒素(NO2への酸化を防ぐため)、および(ii)通常は血液とした、他の相の中にある純窒素ガス、の対向流を用いて行った(図16)。MP膜は、デバイスの両端間で一酸化窒素レベルのほぼ完全な平衡を可能にした(図17)。PMP膜でも良好な成績が得られ、一酸化窒素レベルは300ppmという気相の一酸化窒素レベルに近くなった(図17)。このように、PMP膜およびMP膜は、細胞外メトヘモグロビンを酸化するための手段として、血液を一酸化窒素に曝露させるために用いることができる。
その他の態様
本発明をその詳細な説明とともに説明してきたが、前記の説明は本発明を例示することを意図しており、その範囲を限定する意図はなく、その範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。他の局面、利点および改変は、以下の特許請求の範囲内に含まれる。

Claims (23)

  1. 赤血球試料を処理する方法であって、赤血球試料を
    (i) ガス状一酸化窒素を含む治療用ガス、または、
    (ii) 1-[2-(カルボキシラト)ピロリジン-1-イル]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレート、
    1-ヒドロキシ-2-オキソ-3-(N-メチル-3-アミノプロピル)-3-メチル-1-トリアゼン、
    N,N'-ジメチルヘキサンジアミンの一酸化窒素付加物、もしくは
    (Z)-1-[N-メチル-N-[6-(N-メチルアンモニオヘキシル)アミノ]]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレートである、一酸化窒素放出性化合物
    と、エクスビボで接触させる段階を含み、
    ガス状一酸化窒素または一酸化窒素放出性化合物の量が、赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも20%を三価鉄ヘモグロビンに変換させるのに十分であり、かつ、赤血球試料中の赤血球中に存在するヘモグロビンの20%未満がメトヘモグロビンに変換される、
    方法。
  2. 赤血球試料が、ガス状一酸化窒素を含む治療用ガスまたは一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、血液透析、術中血液回収、または開心術吸引回路(cardiotomy suction)にエクスビボでさらされている、請求項1記載の方法。
  3. 赤血球試料が、ガス状一酸化窒素を含む治療用ガスまたは一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、ポンプ、膜、または気泡のうちの1つまたは複数にエクスビボでさらされている、請求項1記載の方法。
  4. 赤血球試料が、ドナーから取り出された後で、かつガス状一酸化窒素を含む治療用ガスまたは一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、少なくとも24時間エクスビボで保存されている、請求項1記載の方法。
  5. 赤血球試料が、ドナーから取り出された後で、かつガス状一酸化窒素を含む治療用ガスまたは一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、少なくとも7日間エクスビボで保存されている、請求項1記載の方法。
  6. 赤血球試料が、ドナーから取り出された後で、かつガス状一酸化窒素を含む治療用ガスまたは一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、少なくとも14日間エクスビボで保存されている、請求項1記載の方法。
  7. 赤血球試料が、ドナーから取り出された後で、かつガス状一酸化窒素を含む治療用ガスまたは一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、少なくとも28日間エクスビボで保存されている、請求項1記載の方法。
  8. 赤血球試料が、ドナーから取り出された後で、かつガス状一酸化窒素を含む治療用ガスまたは一酸化窒素放出性化合物と接触させられる前に、少なくとも42日間エクスビボで保存されている、請求項1記載の方法。
  9. 赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも20%が三価鉄ヘモグロビンに変換される、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
  10. 赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも50%が三価鉄ヘモグロビンに変換される、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
  11. 赤血球試料中に存在する細胞外二価鉄ヘモグロビンの少なくとも80%が三価鉄ヘモグロビンに変換される、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
  12. 治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が少なくとも20ppmである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
  13. 治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が少なくとも40ppmである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
  14. 治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が少なくとも80ppmである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
  15. 治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が100ppm〜800ppmの範囲にある、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
  16. 治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が40ppm〜200ppmの範囲にある、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
  17. 治療用ガス中のガス状一酸化窒素の濃度が40ppm〜3,000ppmの範囲にある、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
  18. 赤血球試料を治療用ガスと5秒間未満接触させる、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
  19. 赤血球試料を治療用ガスと少なくとも15分間接触させる、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
  20. 赤血球試料を治療用ガスと少なくとも1時間接触させる、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
  21. 赤血球試料を治療用ガスと少なくとも2時間接触させる、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
  22. 一酸化窒素放出性化合物が、1-[2-(カルボキシラト)ピロリジン-1-イル]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレートまたは(Z)-1-[N-メチル-N-[6-(N-メチルアンモニオヘキシル)アミノ]]ジアゼン-1-イウム-1,2-ジオレートである、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
  23. 無菌条件下で行われる、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
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