以下、添付図面を参照しながら本発明による超伝導電磁石の一実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係る超伝導電磁石を採用したマグネット装置を示す斜視図である。図2は、図1に示す超伝導電磁石の概略構成を示す模式的な断面図である。図3は、超伝導電磁石のコイルユニットを示す斜視図である。図4は、コイルユニットの平面図である。図5は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。図6は、図3のV−V線に沿った断面図である。図1に示すように、マグネット装置100は、上下一対の超伝導電磁石1を対向配置すると共に、超伝導電磁石1を支持台101で支持することによって構成されている。超伝導電磁石1は、内部に図3に示すコイルユニット2を収容する真空容器であるクライオスタット3と、クライオスタット3の外側に設けられるヨーク4と、を備えている。上側の超伝導電磁石1のクライオスタット3と下側の超伝導電磁石1のクライオスタット3とは、互いに上下を逆転した状態で対向し、支柱6を介して互いに離間するように連結されている。また、図2に示すように、上側のクライオスタット3と下側のクライオスタット3とは、クライオスタット連結部材51によって連結されている。マグネット装置100は、一対のクライオスタット3の間を通過する荷電粒子線Bの軌道を切り替える偏向磁石として機能する。例えば、マグネット装置100は、加速器から出射された荷電粒子線Bの軌道を、軌道T1と軌道T2との間で切り替えることができる。荷電粒子線Bを出射する加速器として、リングサイクロトロン、AVFサイクロトロン、シンクロトロン、ベータトロン等の円形加速器や、ライナック等の線形加速器などが挙げられる。
クライオスタット3は、矩形環状の形状を有している。ヨーク4は、このように構成されたクライオスタット3の少なくとも一部を収容するように構成される。図1及び図2に示すように、具体的には、クライオスタット3の長辺部分がヨーク4に取り囲まれると共に、クライオスタット3の短辺部分がヨーク4の端面4aから外部に露出するように構成される。ヨーク4は、クライオスタット3を上方(下側のクライオスタット3の場合は下方)から覆う壁部41と、クライオスタット3の長辺部分を外側から覆う側壁部42と、クライオスタット3の中央の空洞部分に入り込む突出壁部43と、を備えている。以上のような構成により、クライオスタット3の一部はヨーク4の内部に収容され、他の一部はヨーク4の外部に配置される。これによって、ヨーク4は、後述のコイル10及び支持容器11のそれぞれの少なくとも一部を収容する。また、コイル10及び支持容器11の他の一部はヨーク4の外部に配置される。
図3に示すように、超伝導電磁石1は、磁束を発生させるコイル10(図5参照)を有するコイルユニット2と、コイルユニット2の荷重を支持する荷重支持部7と、コイルユニット2のコイル10を冷却する冷凍機8と、コイルユニット2のコイル10に電流を導入する電流導入部9と、を備えている。また、コイルユニット2は、環状のコイル10と、コイル10を覆う支持容器11と、コイルを冷却する冷却部材15と、を備えている。コイルユニット2は、コイル10の形状に対応して、全体として環状に形成されている。本実施形態に係るコイルユニット2(すなわちコイル10)は、平面視において略矩形状をなしている。コイルユニット2(コイル10)は、周方向において少なくとも2以上の異なる曲率を有している。具体的には、コイルユニット2は、互いに対向する最大曲率部2Aと、互いに対向する湾曲辺部2Bと、最大曲率部2Aと湾曲辺部2Bとを接続するように湾曲する角部2Cと、を備えている。なお、本実施形態では、最大曲率部2Aの曲率は無限大に設定されることで、最大曲率部2Aは直線状に延びている。ただし、最大曲率部2Aは、少なくとも湾曲辺部2B及び角部2Cよりも大きな曲率を有するように湾曲していてもよい。なお、コイルユニット2(コイル10)の形状は特に限定されず、略D型の形状を有するD型コイルを採用してもよく、レーストラックコイルを採用してもよく、くら形コイルを採用してもよい。あるいは、コイル10として、そら豆のような形状(長円形状を全体的に湾曲させたような形状であり、一方の長辺を外周側へ湾曲させ、他方の長辺を内周側に湾曲させたような形状)のコイルを採用してもよい。コイルユニット2(コイル10)は中心に対して対称をなす形状を有していてもよく、非対称をなす形状を有していてもよい。なお、以降の説明においては、説明のために図3に示す状態の超伝導電磁石1の姿勢を基準として「上」「下」の語を用いる。ただし、超伝導電磁石1の姿勢は図3に示すものに限定されず、適宜変更してもよい。
コイル10は、超伝導線材を巻回した構成を有している。超伝導線材として高温超伝導線材を用いてよい。高温超伝導線材として、例えばBi2223、Bi2212、Y123、MgB2、酸化物超伝導体等を用いてよい。なお、超伝導線材として低温超伝導線材を用いてもよい。本実施形態では、一のコイルユニット2内において、二段のコイル10が積層されている。
支持容器11は、コイル10を覆うと共に、コイル10の周方向に沿って延びる環状の部材である。支持容器11は、SUS、アルミ合金やFRP(繊維強化プラスチック)等によって構成されている。支持容器11は、コイル10の一の辺部の断面視(図5参照)において、コイル10の周囲を覆うように構成されている。支持容器11は、図3に示すコイル10の中心軸CLが延びる方向(軸方向)における一端側(ここでは上端)でコイル10を覆う端壁部12と、軸方向における他端側(ここでは下端)でコイル10を覆う端壁部13と、コイル10の内周側でコイル10を覆う内周壁部14と、コイル10の外周側でコイル10を覆う外周壁部16と、を備えている。端壁部12は、コイル10に対して、軸方向における一端側に積層され、コイル10の一端面を覆う環状の板部材である。端壁部13は、コイル10に対して、軸方向における他端側に積層され、コイル10の他端面を覆う環状の板部材である。内周壁部14は、コイル10の内周面を覆うように、コイル10の内周側に配置される環状の部材である。なお、本実施形態では、内周壁部14は、後述の各冷却部材15同士の間に積層される二段構造を有している。外周壁部16は、コイル10の外周面を覆うように、コイル10の外周側に配置される部材である。
ここで、本実施形態に係る支持容器11は、周方向における一部において、コイル10の外周側で切り欠かれた切欠部17A,17Bを有している。切欠部17A,17Bは、外周壁部16を除くと共に、端壁部12,13の外周側の縁部を切り欠くことによって形成されている。切欠部17A,17Bが形成された部分では、コイル10の外周面が支持容器11から露出している(特に、図3及び図6を参照)。
コイルユニット2のうち、最大曲率部2Aに対応する領域では、切欠部が形成されることなく、コイル10が外周側で支持容器11に覆われている。最大曲率部2Aの一端側における湾曲辺部2B及び角部2Cに対応する領域では、切欠部17Aが形成されることによって、コイル10の外周面が露出している。最大曲率部2Aの他端側における湾曲辺部2B及び角部2Cに対応する領域では、切欠部17Bが形成されることによって、コイル10の外周面が露出している。
図4に示すように、コイルユニット2のうち、周方向において切欠部17Aが形成された領域を切欠部形成領域GE1とする。コイルユニット2のうち、周方向において切欠部17Bが形成された領域を切欠部形成領域GE2とする。コイルユニット2のうち、周方向において切欠部17A,17Bが形成されておらず、支持容器11の外周側の強度が確保されている領域を補強領域RE1,RE2とする。本実施形態では、湾曲辺部2B及び角部2Cが切欠部形成領域GE1,GE2に対応し、最大曲率部2Aが補強領域RE1,RE2に対応する。なお、図1に示すように、コイルユニット2のうち、補強領域RE1,RE2がヨーク4に取り囲まれるように構成され、切欠部形成領域GE1,GE2がヨーク4の外側に配置されるように構成される。従って、コイルユニット2(すなわちコイル10及び支持容器11)のうち、最大曲率部2Aに対応する部分がヨーク4の内部に収容され、湾曲辺部2B及び角部2Cに対応する部分がヨーク4の外部に配置される。なお、本実施形態では、切欠部形成領域GE1,GE2がヨーク4の外部に対応する領域であることを意味し、補強領域RE1,RE2がヨーク4の内部に対応する領域であることを意味する。図9に示す(詳細は後述する)ように、ヨーク4の内部に対応する領域ではコイル10の内周側から外周側へ向かう電磁力F1が働き、当該領域に補強領域RE1,RE2が配置される。ヨーク4の外部に対応する領域には、コイル10に対して外周側から内周側へ向かう電磁力F2が働き、当該領域に切欠部形成領域GE1,GE2が配置される。
なお、支持容器11は、切欠部17A,17Bにおいて、コイル10が完全に露出するまで切り欠かれていなくともよい。切欠部形成領域GE1,GE2における支持容器11の外周側の端面が、少なくとも補強領域RE1,RE2における支持容器11の外周側の端面(すなわち外周壁部16の外周側の端面)よりも内周側に配置されていればよい。
冷却部材15は、冷凍機8と接続される部材であり、当該冷凍機8からの伝熱によってコイル10を冷却する部材である。冷却部材15は、良熱伝導金属である銅、アルミニウム、銅合金(真鍮やりん青銅等)、アルミニウム合金等によって構成される。冷却部材15は、支持容器11内に設けられている。冷却部材15は、各コイル10を軸方向の両側から挟み込むように複数(ここでは3枚)積層される、環状の板部材である。図5及び図6に示すように、本実施形態では、軸方向の一方(上方)から他方(下方)へ向かって、支持容器11の端壁部12、冷却部材15、コイル10、冷却部材15、コイル10、冷却部材15、及び支持容器11の端壁部13の順で積層されている。なお、冷却部材15の内周側の縁部は、コイル10よりも内周側まで拡がっており、支持容器11の内周面から露出している。また、支持容器11の内周壁部14は、冷却部材15の内周側の縁部に挟まれるように配置される。
次に、支持容器11及び冷却部材15の分割構造について説明する。図7及び図8は、分割部の拡大斜視図である。
支持容器11は、周方向において分割される分割部18A,18Bを有する。分割部18Aは、切欠部形成領域GE1に設けられる。分割部18Bは、切欠部形成領域GE2に設けられる。本実施形態では、分割部18A,18Bは、湾曲辺部2Bの周方向における中央位置に形成されている。図7に示すように、分割部18Aは、支持容器11の端壁部12,13に対して、内周側から外周側へ向かって延在するスリットを設けることによって構成される。当該スリットでは、端壁部12,13の一方の切断面と他方の切断面とが周方向に互いに離間して対向した状態となる。分割部18Aでは、当該スリットに絶縁材料31が配置される。絶縁材料31として、プラスチック、FRP、セラミック(アルミナ等)、ポリイミド、ポリカーボネード等が採用される。これによって、分割部18Aで端壁部12,13の電気的なループが切断される。周方向における端壁部12のスリットと端壁部13のスリットとの位置は同一である。分割部18Aでは、分割された一方の端壁部12,13と他方の端壁部12,13とが、スリットを跨いで配置される連結部材33によって連結される。なお、分割された一方の端壁部12,13を流れる電流が、連結部材33を介して他方の端壁部12,13に流れないように、端壁部12,13と連結部材33との間は絶縁材料を介在させることによって絶縁されている。なお、図中、グレースケールを付した部分は、絶縁材料であることを示している。連結部材33は、ボルト締結などによって端壁部12,13に連結される。分割部18Bにおいても、分割部18Aと同様な分割構造によって支持容器11が分割されている。ただし、分割部18Bでは、スリットに絶縁材料ではなく導電材料が配置されているため、端壁部12,13は電気的には分割されていない。
冷却部材15は、周方向において分割される分割部21A,21Bを有する。分割部21Aは、切欠部形成領域GE1に設けられる。分割部21Bは、切欠部形成領域GE2に設けられる。本実施形態では、分割部21A,21Bは、湾曲辺部2Bの周方向における中央位置に形成されている。すなわち、分割部21A,21Bは、支持容器11の分割部18A,18Bと周方向において同位置に配置されている。図7に示すように、分割部21Aは、各冷却部材15に対して、内周側から外周側へ向かって延在するスリットを設けることによって構成される。当該スリットでは、冷却部材15の一方の切断面と他方の切断面とが周方向に互いに離間して対向した状態となる。分割部21Aでは、当該スリットに絶縁材料31が配置される。絶縁材料31として、プラスチック、FRP、セラミック(アルミナ等)、ポリイミド、ポリカーボネード等が採用される。これによって、分割部21Aで冷却部材15の電気的なループが切断される。周方向における各冷却部材15のスリットの位置は互いに同一である。また、冷却部材15に設けられるスリットの位置(すなわち分割部21Aの位置)は、支持容器11に設けられるスリットの位置(すなわち分割部18Aの位置)と同一である。なお、ここでの「同一」とは、スリットの位置及び大きさが完全に一致している必要はなく、平面視において、支持容器11のスリットの絶縁材料31と冷却部材15のスリットの絶縁材料31が少なくとも一部で重なる程度に近接した位置に配置されていればよい。
冷却部材15は、分割部21Aの位置(すなわち切欠部形成領域GE1)において、コイル10の外周側へ張り出す張出部22を有している。張出部22は、分割された一方の冷却部材15と、他方の冷却部材15の両方に形成されている。張出部22は、分割部21Aの位置から周方向に沿って所定距離延びるように設けられている。最上段の冷却部材15の張出部22、中段の冷却部材15の張出部22、及び最下段の冷却部材15の張出部22は、上下方向に延びる支柱25によって互いに連結されている。
張出部22は、分割部21Aの位置でコイル10の軸方向へ延びるように屈曲する屈曲部23を有している。図8に示すように、最上段の冷却部材15の張出部22には、上方へ延びるように屈曲する屈曲部23が設けられる。最下段の冷却部材15の張出部22には、下方へ延びるように屈曲する屈曲部23が設けられる。中段の冷却部材15には屈曲部23は設けられていない。分割された一方の冷却部材15の屈曲部23と他方の冷却部材15の屈曲部23とは、分割部21Aの位置において周方向に互いに対向している。対向する一対の屈曲部23同士の間には、シート状の絶縁材料32が配置される。絶縁材料32として、プラスチック、FRP、セラミック(アルミナ等)、ポリイミド、ポリカーボネード等が採用される。一対の屈曲部23は、互いにボルト締結などによって連結されている。
分割部21Bにおいても、分割部21Aと同様な分割構造によって冷却部材15が分割されている。ただし、分割部21Bでは、スリットには絶縁材料ではなく導電材料が配置され、屈曲部23同士の間には絶縁材料ではなく導電材料が配置されているため、冷却部材15は電気的には分割されていない。また、分割部21で分割される一方の冷却部材15の張出部22Aは、他の張出部22に比して、周方向における延在距離が長い。この張出部22Aは、冷凍機8との接続部として機能する。従って、冷却部材15は、張出部22Aにおいて冷凍機8と接続される。
上述のように構成されたコイルユニット2に対し、冷凍機8、及び電流導入部9は、切欠部形成領域GE2でコイルユニット2に接続される。本実施形態では、冷凍機8及び電流導入部9は、切欠部形成領域GE2のうち、湾曲辺部2Bの外周側に対応する位置に配置されている。
冷凍機8は、切欠部形成領域GE2において、伝熱接続部26を介して冷却部材15と熱的に接続される。伝熱接続部26は、分割部21B付近において外周側へ張り出している張出部22A(図4参照)に連結されている。本実施形態では、コイルユニット2に対して一つの冷凍機8が設けられている。また、冷却部材15の分割部のうち、絶縁箇所に係る分割部21Aは、周方向において、冷凍機8が接続される張出部22Aの反対側に設けられている。すなわち、絶縁箇所に係る分割部21Aは、中心軸CLを挟んで冷凍機8の反対側に形成されている。ここで、冷凍機8側に形成されている分割部21Bは、熱抵抗の大きい絶縁材料ではなく、熱抵抗の小さい導電材料が配置されている。従って、冷凍機8は、一つであっても、分割部21Bで妨げられることなく、コイルユニット2全体を良好に冷却することができる。
電流導入部9は、切欠部形成領域GE2において、導電接続部27を介してコイル10と電気的に接続される。本実施形態では、コイルユニット2に対して一つの電流導入部9が設けられている。また、支持容器11の分割部のうち、絶縁箇所に係る分割部18Aは、周方向において、電流導入部9の反対側に設けられている。すなわち、絶縁箇所に係る分割部18A,21Aは、中心軸CLを挟んで電流導入部9の反対側に形成されている。
荷重支持部7は、切欠部形成領域GE1,GE2で、支持容器11に接続される。本実施形態では、切欠部形成領域GE1,GE2のうち、コイルユニット2の四隅の角部2Cに荷重支持部7が設けられる。荷重支持部7は、コイル10の軸方向から支持容器11を挟む一対の挟持部36と、コイル10の外周側において一対の挟持部36に接続されると共に、ヨーク4に接続される支柱部37と、を備えている。上側に配置される挟持部36は、支持容器11の端壁部12の上面と当接すると共に、端壁部12にボルト締結などによって連結されている。下側に配置される挟持部36は、支持容器11の端壁部13の下面と当接すると共に、端壁部13にボルト締結などによって連結されている。また、各挟持部36の一部は、端壁部12,13よりも外周側へ向かって延在している。支柱部37は、コイルユニット2の外周側の位置で上下方向に延びており、一対の挟持部36に連結される。また、支柱部37は上側の挟持部36よりも上方へ延びて、構造体40に接続される。なお、支柱部37の接続対象物である構造体40は、荷重を受けることができるものであれば特に限定されないが、クライオスタット3の壁面などであってよい。支柱部37は下側の挟持部36よりも下方へ延びて、クライオスタット3の壁面などの構造体に接続される。
以上のように、分割部18A,18B、分割部21A,21B、及び張出部22は切欠部形成領域GE1,GE2に設けられ、荷重支持部7、張出部22、冷凍機8、及び電流導入部9は、切欠部形成領域GE1,GE2にてコイルユニット2に接続されている。すなわち、分割部18A,18B及び分割部21A,21Bはヨーク4の外部に設けられ、張出部22はヨーク4の外部にて外周側へ張り出している。また、荷重支持部7、張出部22、冷凍機8、及び電流導入部9は、ヨーク4の外部にてコイルユニット2に接続されている。
次に、本実施形態に係る超伝導電磁石1の作用・効果について説明する。
本実施形態に係る超伝導電磁石1では、ヨーク4は、コイル10及び支持容器11のそれぞれの少なくとも一部を収容している。すなわち、超伝導電磁石1は、コイル10及び支持容器11の一部をヨーク4の内部に収容すると共に、他の一部をヨーク4の外部に出すような構成となっている。このように、コイル10及び支持容器11を外部に出した分だけ、ヨーク4を小さくすることができる。また、図9に示すように、ヨーク4の外部では、コイル10に対して外周側から内周側へ向かう電磁力F2が働く。従って、当該部分では、コイル10を外周側から支持する必要がないため、支持容器11は、ヨーク4の外部において、コイルの外周側で切り欠かれた切欠部17A,17Bを有する。このように、切欠部17A,17Bを設けることで支持容器の外周側への張り出し分の大きさを省略することができる。一方、ヨーク4の内部ではコイル10の内周側から外周側へ向かう電磁力F1が働く。従って、コイル10の変形を防ぐためには、ヨーク4の内部においてコイル10の外周側で支持を行う必要がある。支持容器11は、ヨーク4の内部では切欠部17A,17Bを有することなく、コイル10を外周側から支持することができる構造となっている。このように、支持容器11でコイルを外周側から支持することによって、例えば従来のように、コイル10の電磁力を支持するための(棒状の)荷重支持体をヨーク内部に設けるような構成に比して、ヨーク4がコイル10の外周側へ張り出すことを抑制することができる。以上より、超伝導電磁石1の小型化を図ることができる。
本実施形態に係る超伝導電磁石1は、ヨーク4の外部において支持容器11に接続される荷重支持部7を更に有している。荷重支持部7をヨーク4の外部に配置することができるため、ヨーク4が大きくなることを抑制できる。また、ヨーク4の外部の切欠部形成領域GE1,GE2では、支持容器11に切欠部17A,17Bが形成されることによって、切欠部17A,17Bが形成されていない補強領域RE1,RE2に比して、支持容器11の外周側への張り出し量が小さくなっている。このような切欠部形成領域GE1,GE2にて荷重支持部7が支持容器11に接続されるため、荷重支持部7の外周側への張り出し量も小さくすることができる。以上より、超伝導電磁石1の小型化を図ることができる。
本実施形態に係る超伝導電磁石1において、荷重支持部7は、コイル10の軸方向から支持容器11を挟む一対の挟持部36と、コイル10の外周側において一対の挟持部36に接続されると共に、構造体40に接続される支柱部37と、を備えている。このような構成により、荷重支持部7の支柱部37を、支持容器11に近接させた位置に配置することで、荷重支持部7の外周側への張り出し量を小さくすることができる。例えば、図6に示すように、支柱部37とコイル10の外周面との間の寸法Lが可能な限り小さくなるように支柱部37の位置を調整することにより、荷重支持部7の外周側への張り出し量を抑制することができる。なお、補強領域RE1,RE2に荷重支持部7を配置した場合、支持容器11の外周壁部16よりも外周側へ支柱部37を配置する必要がある。従って、外周壁部16の厚み分だけ、支柱部37を外周側へ配置することにより、荷重支持部7の張り出し量が大きくなる。以上より、本実施形態によれば、超伝導電磁石1の小型化を図ることができる。
本実施形態に係る超伝導電磁石1において、支持容器11は、周方向において分割される分割部18A,18Bを有し、分割部18A,18Bは、ヨーク4の外部である切欠部形成領域GE1,GE2に設けられている。このような構造により、分割部18Aに絶縁材料31を配置することにより、周方向における支持容器11の電気的なループを分割部18Aで遮断することができ、渦電流の発生を抑制することができる。ここで、分割部18A,18Bでは支持容器11の強度が下がるため接続部材が必要となるが、当該接続部材がヨーク4の内部に配置された場合、その分だけ磁気回路の磁路が長くなり、ヨーク4を大きくする必要が生じる。一方、支持容器11の分割部18A,18Bをヨーク4の外部に設けることによって、接続部材がヨーク4の外部に設けられることになり、ヨーク4の大型化を防ぐことができる。
本実施形態に係る超伝導電磁石1は、支持容器11内に設けられて、コイル10を冷却する冷却部材15を更に備えている。冷却部材15は、周方向において分割される分割部21A,21Bを有し、分割部21A,21Bは、ヨーク4の外部である切欠部形成領域GE1,GE2に設けられている。このような構造により、分割部21Aに絶縁材料31を配置することにより、周方向における冷却部材15の電気的なループを分割部21Aで遮断することができ、渦電流の発生を抑制することができる。ここで、分割部21A,21Bでは冷却部材15の強度が下がるため接続部材が必要となるが、当該接続部材がヨーク4の内部に配置された場合、その分だけ磁気回路の磁路が長くなり、ヨーク4を大きくする必要が生じる。一方、分割部21A,21Bをヨークの外部に設けることによって、接続部材がヨークの外部に設けられることになり、ヨークの大型化を防ぐことができる。また、冷却部材15の分割部21A,21Bを切欠部形成領域GE1,GE2に設けることによって、次の効果を奏する。絶縁材料31は熱伝導率が悪い(冷却部材15よりも低い)ため、冷却部材15の分割部21Aにて温度差が生じてしまうおそれがある。これを防止するために、伝熱面積を大きくとる方法、すなわち、冷却部材15及び絶縁材料31を大きくする方法が考えられるが、この場合、ヨーク4も大きくする必要が生じてしまう。従って、分割部21Aをヨーク4の外部に設けることで、ヨーク4の大型化を防ぎつつ、分割部21Aにおける温度差の発生を抑制することができる。
本実施形態に係る超伝導電磁石1では、冷却部材15は、切欠部形成領域GE1,GE2においてコイル10の外周側へ張り出す張出部22を有し、冷却部材15は、張出部22において冷凍機8と接続されている。このような構成により、冷凍機8と冷却部材15とを接続するための構造が、外周側へ張り出すことを抑制できる。
本実施形態に係る超伝導電磁石1では、絶縁箇所に係る冷却部材15の分割部21Aは、周方向において、冷凍機8が接続される張出部22Aの反対側に設けられていている。このような構成によれば、冷却部材15において絶縁箇所となる分割部21Aが、冷凍機8が接続される位置に対して周方向の反対側に配置される構成となる。熱抵抗が高い絶縁箇所を冷凍機8から離れた位置に配置することで、冷却部材15全体の冷却効率を向上することができる。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態では、冷却部材15の分割部21A,21Bと支持容器11の分割部18A,18Bとが周方向において同一の位置に配置されていた。すなわち、冷却部材15の絶縁箇所と支持容器11の絶縁箇所が周方向において同一の位置に配置されていた。これに代えて、冷却部材15の絶縁箇所(すなわち分割部)と支持容器11の絶縁箇所(すなわち分割部)を周方向における異なる位置に配置してもよい。ただし、この場合、図10(b)に示すように、支持容器11と冷却部材15との間で電気的なループ(図においてLPで示す)が形成されないように、冷却部材15と支持容器11との間に絶縁材料31や高抵抗材料を配置する。一方、図10(a)に示すように、冷却部材15の絶縁箇所と支持容器11(端壁部12)の絶縁箇所の位置が同一である場合、図10(b)のような電気的なループは形成されないので、冷却部材15と支持容器11との間の絶縁材料を配置しなくともよい。
上述の実施形態では、荷重支持部として、挟持部36及び支柱部37を備える構成を例示したが、荷重支持部の構成は特に限定されない。例えば、ストラップ式の荷重支持体を採用してもよい。なお、荷重支持部として支柱を採用する場合、クライオスタットの上壁部及び下壁部の双方に対して接続するのではなく、何れかの壁部の一方のみに接続するようにしてもよい。また、荷重支持部をコイルの中心軸に沿った方向に延伸させるのではなく、コイルの中心軸に対して傾斜させた方向に延伸するように荷重支持部を設けてもよい。
また、切欠部を形成する位置も特に限定されるものではなく、支持容器のいずれの位置に設けてもよい。また、冷却部材の分割部及び支持容器の分割部の個数も限定されない。なお、冷却部材の分割部を設けなくともよく、支持容器の分割部を設けなくともよい。また、上述の実施形態では、冷却部材及び支持容器の絶縁箇所は一カ所であったが、二カ所以上設けてもよい。
なお、上述の実施形態では、超伝導電磁石を用いた装置として、荷電粒子線の軌道を偏向させるマグネット装置を例示した。ただし、超伝導電磁石の用途は限定されず、他の用途に用いてもよい。