JP6388279B2 - 周期構造を有する光学フィルムの製造方法 - Google Patents

周期構造を有する光学フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、周期構造を有する光学フィルムの製造方法に関する。
一般に、物体が光の波長オーダーの周期構造を有する場合、その周期に応じた特定の波長の光に強く作用する特徴がある。そのような周期構造を有する物体により光が反射される場合、その光の反射方向は波長に応じて異なり、光は異なる波長成分に分解される。そのような周期構造を有する物体の一例としては、回折格子やフォトニック結晶等が挙げられる。そして、このような回折格子としては、例えば、格子パターンとして直線状の溝がマイクロメートルオーダーの周期で等間隔に平行に並んで構成されているものが広く知られている。このような回折格子は、従来よりスペクトロメーターやモノクロメーター等の分光素子として利用されるなど利用価値が高い素子である。また、前記フォトニック結晶は、例えば、2006年8月1日発行の「物質材料研究アウトルック,P227−P231(非特許文献1)」や2004年発行の「フォトニック結晶入門(非特許文献2)」に例示されるように、粒径の等しい微粒子を光の波長オーダーの間隔で周期的に配列させた場合に形成されるものである。このように、光の波長オーダーで配列した微粒子の周期構造体(フォトニック結晶)中においては、光のエネルギー禁制帯(フォトニックバンドギャップ)が結晶中のすべての方位に形成され、ある特定の波長の光が存在し得ない状態が形成される。そのような構造を有する結晶中に、例えば、微小な欠陥構造を導入することで、閉じ込められ増幅された光を効率よく取り出すことができ、非常に閾値の低い微小レーザーを作製することが可能となると考えられている。
このような回折格子やフォトニック結晶に関して、先ず、回折格子の工業的な製造方法としては、例えば、ミクロンオーダーの直線状の溝を機械的に彫り付ける手法により製造する方法、フォトリソグラフィやレーザの2干渉露光を利用したホログラフィック露光法等の光学的な手法により製造する方法等が知られている。しかしながら、このような従来の回折格子の製造方法においては、溝を彫り付ける際に特殊な機械が必要となったり、光学的な手法を利用する場合においても露光される材料として感光性を有する特殊な材料を使用する必要がある等、製造上の制約が多く、必ずしも簡便に回折格子を製造することができなかった。一方、上述のようなフォトニック結晶を製造する際には、光の波長オーダーで粒径がほぼ均一に揃った微粒子を均一に3次元的に配列させる必要がある。そのため、フォトニック結晶を製造する際には、そのような粒子を配列させるための元型となる基板(フォトニック結晶を成長させるためのテンプレート)として微細な周期構造を有する構造体が必要であるが、そのような微細な周期構造を有する構造体の製造は、上述の回折格子と同様に、必ずしも簡便に製造できるものではなかった。従って、回折格子や、フォトニック結晶を成長させるためのテンプレート等に利用可能となるような、十分に高度な周期性を有する周期構造が形成された光学フィルムを、より簡便に製造することが可能な光学フィルムの製造方法の出現が望まれている。
「2006年度 物質材料研究アウトルック」,独立行政法人 物質・材料研究機構,2006年8月1日発行,P227−P231 迫田和彰著,「フォトニック結晶入門」,森北出版,2004年発行
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に高度な周期性を有する周期構造が形成された光学フィルムをより簡便に製造することが可能な、周期構造を有する光学フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、第一の重合性化合物と、同一条件で重合させた場合に前記第一の重合性化合物よりも重合完了時間が長い第二の化合物とを含有し、且つ、前記第一の重合性化合物、前記第二の化合物及び重合後に得られる化合物のうちの少なくとも1種が液晶性を示す化合物である、重合性組成物からなる膜を用いて、前記膜の一部の領域から前記重合性組成物の重合を開始し、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて重合した後、重合後の膜を冷却する工程を施し、その工程中、前記重合時に前記膜を80〜150℃の加熱温度に加熱しながら重合し、かつ、前記冷却の際に、前記膜の温度が少なくとも前記重合時に採用した加熱温度と同じ温度から60℃になるまでの間、0.1〜30℃/分の冷却速度で前記膜を冷却することにより、驚くべきことに、重合後の光学フィルム内に十分に高度な周期性を有する周期構造を形成することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法は、第一の重合性化合物と、同一条件で重合させた場合に前記第一の重合性化合物よりも重合完了時間が長い第二の化合物とを含有し、且つ、前記第一の重合性化合物、前記第二の化合物及び重合後に得られる化合物のうちの少なくとも1種が液晶性を示す化合物である、重合性組成物からなる膜を用いて、
重合時に前記膜を80〜150℃の加熱温度で加熱する温度条件下において、前記膜の一部の領域から露光して前記重合性組成物の重合を開始し、前記液晶性を示す化合物が配向する1×10 −7 〜4×10 −1 m/sの速度で露光領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて、前記膜の全領域を光重合により重合する工程と、重合後の膜の温度が少なくとも前記重合時に採用した加熱温度と同じ温度から60℃になるまでの間、0.8〜12℃/分の冷却速度で冷却する条件で、前記重合後の膜を冷却して、周期構造を有する光学フィルムを得る工程を含むこと、
を特徴とする方法である。
上記本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法においては、前記周期構造を有する光学フィルムが、
該光学フィルムの任意の3点以上の測定点に対してそれぞれ波長633nmのヘリウムネオンレーザーを垂直な方向から照射したときに測定される1次回折光の回折強度の平均値Isと、
第一の重合性化合物と、同一条件で重合させた場合に前記第一の重合性化合物よりも重合完了時間が長い第二の化合物とを含有し、且つ、前記第一の重合性化合物、前記第二の化合物及び重合後に得られる化合物のうちの少なくとも1種が液晶性を示す化合物である、重合性組成物からなる膜を用いて、重合時に前記膜を80〜150℃の加熱温度で加熱する温度条件下において、前記膜の一部の領域から露光して前記重合性組成物の重合を開始し、前記液晶性を示す化合物が配向する1×10−7〜4×10−1m/sの速度で露光領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて、前記膜の全領域を光重合により重合する工程と、前記冷却の際に、前記冷却速度で冷却する方法を採用せずに、重合後の膜を液体窒素に5秒間浸漬して前記重合後の膜を冷却し、透過光測定用のフィルムを得る工程とを含む光学フィルムの製造方法を採用して得られる透過光測定用のフィルムの任意の3点以上の測定点に対してそれぞれ波長633nmのヘリウムネオンレーザーを垂直な方向から照射したときに測定される透過光の強度の平均値Irと、
に基いて、下記式(1):
[E]=([Is]/[Ir])×100 (1)
[式(1)中、Isは前記光学フィルムの1次回折光の回折強度の平均値(単位:mW)を示し、Irは透過光測定用のフィルムの透過光の強度の平均値(単位:mW)を示し、Eは回折効率(単位:%)を示す。]
を計算して求められる回折効率が5%以上となる光学フィルムであることが好ましい。
上記本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法においては、前記第一の重合性化合物が1以上の重合性官能基を有する化合物であり、且つ、該重合性官能基の数が前記第二の化合物の有する重合性官能基の数より1以上大きいことが好ましい。
また、上記本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法においては、前記境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させるために、光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させることが好ましい。
さらに、上記本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法においては、前記光重合の際にフォトマスクを利用し、該フォトマスクを連続的に移動させることにより前記光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させることが好ましい。
さらに、上記本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法においては、前記第一の重合性化合物が1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートであり、且つ、
前記第二の化合物が4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニルであること、
が好ましい。
ここで、前記第一の重合性化合物として選択され得る化合物C11〜C13は、それぞれ、下記一般式(1):
p−M−L−(M−L)q−M−Zr (1)
で表される化合物であって、
化合物C11は、式(1)中のZおよびZは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ式:−L−S−Fで表わされる基であり、Fがアクリル基及びメタクリル基のうちのいずれかであり、Sが単結合及び炭素数1から12の直鎖アルキレン基のうちのいずれかであり、Lがエーテル基、エステル基及びカーボネート基のうちのいずれか(より好ましくはエーテル基)であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが単結合及び−COO−のうちのいずれか(より好ましくは単結合)であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、且つ、rが1である化合物であり、
化合物C12は、式(1)中のZおよびZは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ式:−L−S−Fで表わされる基であり、Fがアクリル基及びメタクリル基のうちのいずれかであり、Sが単結合若しくは炭素数1から12の直鎖アルキレン基のうちのいずれかであり、Lがエーテル基、エステル基及びカーボネート基のうちのいずれか(より好ましくはエーテル基)であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが−COO−であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが−OCO−であり、qが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、且つ、rが1である化合物であり、
化合物C13は、式(1)中のZおよびZは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ式:−L−S−Fで表わされる基であり、Fがアクリル基及びメタクリル基のうちのいずれかであり、Sが式:(CHCHO)z(zは2及び3のうちのいずれかである。)で表される基であり、Lが単結合であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが単結合及びエステル基のいずれか(より好ましくは単結合)であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、且つ、rが1である化合物である。
また、前記第一の重合性化合物として選択され得る化合物C14は、下記一般式(2):
(式中、Rが水素及びメチル基のうちのいずれかであり、xは2又は3である。)
で表される化合物であり、
前記第一の重合性化合物として選択され得る化合物C15は、下記一般式(3):
(式中、Rが水素及びメチル基のうちのいずれかであり、yは2から12の整数である。)
で表される化合物である。
また、前記第二の化合物として選択され得る化合物C21〜C24は、それぞれ、下記一般式(1):
p−M−L−(M−L)q−M−Zr (1)
で表される化合物であって、
化合物C21は、式(1)中のZが式:−L−S−Fで表わされる基であり、Fがアクリル基及びメタクリル基のうちのいずれかであり、Sが単結合であり、Lが単結合であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが単結合であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Zが水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基の中から選択される1種(より好ましくはシアノ基)であり、且つ、rが1である化合物であり、
化合物C22は、式(1)中のZが式:−L−S−Fで表わされる基であり、Fがアクリル基及びメタクリル基のうちのいずれかであり、Sが炭素数1から12の直鎖アルキレン基であり、Lがエーテル基であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが単結合であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Zが水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基の中から選択される1種(より好ましくはシアノ基)であり、且つ、rが1である化合物であり、
化合物C23は、式(1)中のZが式:−L−S−Fで表わされる基であり、Fがアクリル基及びメタクリル基のうちのいずれかであり、Sが式:(CHCHO)z(zは2若しくは3である。)で表わされる基であり、Lが単結合であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが単結合であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Zが水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基の中から選択される1種(より好ましくはシアノ基)であり、且つ、rが1である化合物であり、
化合物C24は、Zが式:−L−S−Fで表わされる基であり、Fがアクリル基及びメタクリル基のうちのいずれかであり、Sが炭素数1から12の直鎖アルキレン基であり、Lがエーテル基であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが−COO−であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Zが水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基の中から選択される1種(より好ましくはシアノ基)であり、rが1である化合物である。
なお、本発明においては、重合時に液晶性を示す化合物(前記第一の重合性化合物、前記第二の化合物及び重合後に得られる化合物のうちの少なくとも1種の化合物)を配向させながら重合し、重合後、膜を冷却する際に、少なくとも上記所定の温度域において上記所定の冷却速度で冷却することによりフィルム中に周期構造を形成する。このような配向や周期構造が形成される原理を、前記第一の重合性化合物や前記第二の化合物として光重合性の化合物を用いた場合の好適な一実施形態を例に挙げて、図面を参照しながら簡単に説明する。以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、重合性組成物からなる膜に対して光重合を開始する前の状態を模式的に示す概略縦断面図である。また、図2は、光源から光を照射して膜の一部の領域から重合を開始した状態を模式的に示す概略縦断面図であり、図3は、図2中の重合領域の境界を未重合の領域に向けて移動させた後の状態を模式的に示す概略縦断面図であり、図4は、図3の重合領域の境界を未重合の領域に向けて移動させた後の状態を模式的に示す概略縦断面図である。なお、図中、点線Sは重合領域の境界を示しており、矢印Aは重合領域の境界Sを移動させる方向を概念的に示しており、矢印Lは光源から照射される光を概念的に示すものであり、A1は光Lが照射されて重合された領域(重合領域:露光部)を概念的に示し、A2は光Lが照射されていない未重合の領域(未重合領域:遮光部)を概念的に示し、A3は配向が形成されている領域を概念的に示す。
このような図1〜4に示す実施形態においては、光重合により配向を形成する際に、先ず、図1に示すように、光源11と、光源11から照射される光を透過させることが可能な2枚の基板12と、前記2枚の基板12の間に配置した重合性組成物からなる膜13と、光源11から照射される光を遮光することが可能なフォトマスク14とを準備し、前記2つの基板12のうちの一方の基板側に光源11を配置し、膜13の一部の領域のみに光源11からの光が照射されるように、膜13と光源11との間に、膜13の一部を遮光することが可能なフォトマスク14を配置する。次に、図2に示すように、光源11を点灯し、光源11から光Lを照射する。このようにして光Lを照射すると、遮光部A2では反応は進行せず未重合のままであるが、光が照射される露光部A1においては重合が進行する。このようにして一部の領域を露光して、膜13の一部の領域(露光部)A1から前記重合性組成物の重合を開始する。そして、このようにして重合された領域(重合領域:露光部)A1においては、重合完了時間がより短い第一の重合性化合物から優先的に光重合が進行して、第一の重合性化合物が優先的に消費されていくため、重合領域(露光部)A1と未重合領域(遮光部)A2との間では重合性組成物中の化合物の濃度に偏りが生じる。このようにして、組成物中に化合物の濃度に偏りが生じると、通常は、物質の拡散現象により濃度勾配を解消する方向に物質の拡散が生じる。そのため、上述のように光を照射すると、重合領域(露光部)A1と未重合領域(遮光部)A2の境界Sにおいては、濃度勾配を解消する方向に化合物の拡散が誘起され、未重合領域である遮光部A2から重合領域である露光部A1へと化合物の流れ(主に第一の重合性化合物の流れ)が発生する。このようにして未重合領域A2から重合領域A1への化合物の流れが生じると、その流れにより液晶性を示す化合物(重合領域に存在する前記第一の重合性化合物、前記第二の化合物及び重合後に得られる化合物のうちの少なくとも1種の化合物)には一種のずり応力が加わり、液晶性を示す化合物が重合領域(露光部)A1と未重合領域(遮光部)A2の境界Sの近傍の領域において配向し、配向領域A3が形成(誘起)される。なお、このような化合物の移動による流れが生じる方向は重合領域(露光部)A1と未重合領域(遮光部)A2の境界Sに対して略垂直な方向となるため、液晶性を示す化合物が棒状のものである場合、通常、平均的な配向方向は境界Sに対して略垂直な方向となる。このように、膜13の一部の領域から前記重合性組成物の重合を開始した後(図2参照)、例えば、フォトマスク14を連続的に移動させて重合領域の境界Sを未重合の領域A2に向けて連続的に移動させることにより(図2〜4参照)、境界Sの移動していく先々において(新たな位置で)化合物の拡散が誘起され、光重合と拡散誘起による配向とを連続的に引き起こすことが可能となる。この際、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で(前述の化合物の移動により生じる一種のずり応力が、配向を形成するために前記液晶性を示す化合物に十分に加えられるような速度で)、境界Sを連続的に移動させることにより、拡散誘起による配向を連続的に生じさせることが可能である。そして、本発明においては、上述のようにして配向を形成しながら重合した後(より好ましくは膜全体の重合を促進させた後)、重合後の膜を、少なくとも重合時に採用した加熱温度と同じ温度から60℃となるまでの間、所定の冷却速度で冷却することにより、周期構造を形成させる。すなわち、本発明者らは、前記重合時に加熱温度を80〜150℃としながら重合して配向を形成した後、膜の冷却の際に、前記膜の温度が少なくとも前記重合時に採用した加熱温度と同じ温度から60℃になるまでの間、冷却速度を0.1〜30℃/分に制御しながら前記膜を冷却することにより、驚くべきことに、配向状態が形成された重合後の膜中に、液晶分子の渦状や球状等の所定の配向を有する周期構造を形成することが可能となることを見出しており、本発明によれば、そのような冷却時の温度制御によって周期構造が形成された光学フィルムを簡便に製造することが可能となる。
ここで、図5は、周期構造形成後の光学フィルムの一実施形態を模式的に示す概略縦断面図であり、図6は、図5に示す実施形態の光学フィルムを模式的に示す概略平面図である。なお、このような実施形態の光学フィルムは、図5に示すような渦状にみえる配向状態が、図5の紙面に対する垂直な方向(紙面奥行き方向)に連続して配列されている構造を有する(図5及び図6参照)。また、図6に示す概略平面図では、配列状態がより分かり易くなるように、図5に示す渦状の液晶分子の配列状態を、基板12側から見て、深さ方向に渦の半個分(渦の最外層を形成する液晶分子の数で基板12側から深さ方向に3個分)の液晶分子の配向状態を模式的に表している。ここにおいて、図6中の符号Dは、周期構造の格子周期(一つの周期の幅)を概念的に示すものである。このように、図5に示す縦断面図中の渦状に見える部分を底辺とし、紙面奥行き方向に幅を持つ(渦状の配向状態が連続して並んでいる)状態(以下、「シリンダー状」という。)の配向が形成されている。このような図5の点線で囲まれた渦状の配列が形成されている領域A4を底面にして、渦状の配列構造が紙面の厚み方向に向かって3列分並んだ状態を、シリンダーに模した円柱の図面を利用して図7に模式的に示す。ここで、図7においては、見易さを考慮して、渦状の配向状態の最外層のみを模式的に示している。なお、図5中の矢印Aが重合時における前記境界Sの移動方向であり、上述のシリンダーに模した構造(図7に示すシリンダーに模した円柱)の配列は、そのような重合時の前記境界Sの移動方向に対して垂直な方向に配列する。なお、本発明の冷却条件を適用することにより、液晶分子は、図5〜7に示すようにシリンダー状に配向するだけでなく、その条件を適宜選定することで、球状に配向する場合も生じ得る。この場合の球状の構造は前記重合の進行方向(境界Sの移動していく方向)に配向する。
本発明は、前述のように、配向構造を形成しながら重合する際に、重合時の膜の加熱温度を80〜150℃としながら重合し、かつ、少なくとも前記重合時に採用した加熱温度と同じ温度(前記重合時の温度:80〜150℃の温度)から60℃になるまでの間の冷却速度を0.1〜30℃/分として、重合後の膜を冷却することにより、周期構造を有する構造体を得る方法である。なお、周期構造が形成される原理は必ずしも定かではないが、重合によりモノマー溶液中でポリマーが生成されていき、ポリマーとモノマーの混合状態から徐々に冷却することで熱力学的に安定なモノマー成分が過多の領域とポリマー成分が過多の領域へ相分離が起こり、周期構造の原型となる図5〜7に模式的に示すようなシリンダー状の構造体や、場合により球状の構造体が形成されるものと本発明者らは推察する。なお、このような周期構造を形成させる方法においては、その原理から、液晶分子を面内配向させるため配向規制力を持たせるための前処理を施していない基板(例えばラビング処理を施していないような基板)等を用いた場合においても、周期構造の前駆構造となる配向構造を効率よく形成した後に、周期構造を有する光学フィルムを効率よく製造することができることは明らかである。そのため、ラビング処理により生じる発塵や静電気の問題、光学フィルムへのほこりの付着や混入等の問題も効率よく回避することが可能であるばかりか、基板やセルに予め周期構造の前駆構造となる液晶分子を面内配向させるための配向規制力を持たせるための前処理を施す必要もなく、作業性の点においても効率的な方法といえる。
なお、図1〜7に示す例においては前記第一の重合性化合物や前記第二の化合物として光重合性の化合物を用いた場合を例にして、配向が形成される原理や周期構造の形成について説明しているが、本発明は、重合領域(露光部)A1と未重合領域(遮光部)A2の境界Sを未重合領域A2に向けて移動させることにより生じる物質の拡散現象を利用して、周期構造の前駆構造となる液晶分子の面内配向を誘起させた後、重合後の膜を所定の冷却条件で冷却して周期構造を形成させることを可能とする方法であることから、前記第一の重合性化合物や前記第二の化合物としては、面内配向を誘起させることが可能なものであればよく、光重合性の化合物に限定されるものではなく、光重合性の化合物以外の化合物(例えば熱重合性の化合物等)を利用してもよい。また、前記液晶性を示す化合物の周期構造の形成方法が、重合を開始した後に膜中において未重合領域から重合領域に移動する化合物を利用して、前記液晶性を示す化合物の面内配向を誘起させた後、上述のような相分離を利用して周期構造(好ましくは渦状の配列が周期的に並んだ周期構造)を形成させる方法であることから、その化合物が移動する方向(前記領域の境界にほぼ垂直な方向)に配向の方向を制御しながら、周期構造を形成することが可能である。そのため、例えば、重合を光重合で行う場合にはマスクの形状に応じて様々な方向に配向を制御して周期構造の特性を変更することも可能となる。
本発明によれば、十分に高度な周期性を有する周期構造が形成された光学フィルムをより簡便に製造することが可能な周期構造を有する光学フィルムの製造方法を提供することが可能となる。
このような本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法は、原理的に分子構造の制約が少なく、様々な分子の配向や高次構造の制御に応用可能であることから、これにより得られる周期構造を有する光学フィルムは幅広い機能性フィルムへの展開が期待でき、例えば、回折格子やフォトニック結晶を成長させるためのテンプレートに利用することも可能である。
重合性組成物からなる膜に対して光重合を開始する前の状態を模式的に示す概略縦断面図である。 光源から光を照射して膜の一部の領域から重合を開始した状態を模式的に示す概略縦断面図であり、 図2中の重合領域の境界を未重合の領域に向けて移動させた後の状態を模式的に示す概略縦断面図である。 図3中の重合領域の境界を未重合の領域に向けて移動させた後の状態を模式的に示す概略縦断面図である。 周期構造を有する光学フィルムの好適な一実施形態の状態を模式的に示す概略縦断面図である。 図5に示す光学フィルムの周期構造を基材側から見た場合の状態を模式的に示す概略平面図である。 図5及び図6に示す光学フィルムの、いわゆるシリンダー状の周期構造を概念的に示す模式図である。 図8(a)は、光源側から見た場合におけるフォトマスクと基板との光重合開始前の関係(光照射領域の境界を移動させる前の状態)を模式的に示す概略平面図であり、図8(b)は、光源側から見た場合におけるフォトマスクと基板との光重合開始後の関係(光照射領域の境界を移動させた状態)を模式的に示す概略平面図である。 光源側から見た場合における、エッジを斜めに形成したフォトマスクと基板との光重合開始前の関係を模式的に示す概略平面図である。 光源側から見た場合における、複数の略長方形状の開口部を有するフォトマスクと基板との光重合開始前の関係を模式的に示す概略平面図である。 光源側から見た場合における、複数の略長方形状の開口部を有するフォトマスクと基板との光重合開始前の関係を模式的に示す概略平面図である。 実施例1においてガラスセル中に形成されたフィルム(薄膜)の写真である。 実施例1において、アナライザの振動方向とフォトマスクの移動方向とがなす角度が45°である場合におけるフィルムの状態を示す偏光顕微鏡写真である。 実施例1において、アナライザの振動方向に対して、フォトマスクの移動方向が平行となる方向におけるフィルムの状態を示す偏光顕微鏡写真である。 実施例1において、アナライザの振動方向とフォトマスクの移動方向とがなす角度が45°である場合におけるフィルムの状態を示す偏光顕微鏡写真である。 検板の光学軸の方向とフォトマスクの移動方向とが平行である場合のフィルムの状態の偏光顕微鏡写真である。 検板の光学軸の方向とフォトマスクの移動方向とがなす角度が45°である場合のフィルムの状態の偏光顕微鏡写真である。 検板の光学軸の方向とフォトマスクの移動方向とが平行である場合のフィルムの状態の偏光顕微鏡写真である。 図13及び図16に示す偏光顕微鏡写真から確認される液晶化合物(分子)の配向方向を概念的に示す概念図である。 図14及び図17に示す偏光顕微鏡写真から確認される液晶化合物(分子)の配向方向を概念的に示す概念図である。 図15及び図18に示す偏光顕微鏡写真から確認される液晶化合物(分子)の配向方向を概念的に示す概念図である。 実施例1で得られたフィルムを透過した光をスクリーン上に投射した回折光のパターン(回折像)の写真である。 実施例2においてガラスセル中に形成されたフィルム(薄膜)の写真である。 実施例2で得られたフィルムを透過した光をスクリーン上に投射した回折光のパターン(回折像)の写真である。 実施例2で得られたフィルム(薄膜)の偏光顕微鏡写真である。 比較例1においてガラスセル中に形成されたフィルム(薄膜)の写真である。 比較例1で得られたフィルムを透過した光をスクリーン上に投射した、光のパターンの写真である。 比較例2においてガラスセル中に形成されたフィルム(薄膜)の写真である。 比較例2で得られたフィルムを透過した光をスクリーン上に投射した回折光のパターン(回折像)の写真である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法は、第一の重合性化合物と、同一条件で重合させた場合に前記第一の重合性化合物よりも重合完了時間が長い第二の化合物とを含有し、且つ、前記第一の重合性化合物、前記第二の化合物及び重合後に得られる化合物のうちの少なくとも1種が液晶性を示す化合物である、重合性組成物からなる膜を用いて、
前記膜の一部の領域から前記重合性組成物の重合を開始し、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて重合した後、重合後の膜を冷却して、周期構造を有する光学フィルムを得る工程を含み、
前記重合時に前記膜を80〜150℃の加熱温度で加熱しながら重合し、かつ、
前記冷却の際に、前記膜の温度が少なくとも前記重合時に採用した加熱温度と同じ温度から60℃になるまでの間、0.1〜30℃/分の冷却速度で前記膜を冷却すること、
を特徴とする方法である。
先ず、重合性組成物からなる膜について説明する。このような重合性組成物としては、第一の重合性化合物と、同一条件で重合させた場合に前記第一の重合性化合物よりも重合完了時間が長い第二の化合物とを含有するものを用いる。
このような第一の重合性化合物や第二の化合物としては、同一条件で重合させた場合に重合完了時間が異なるものを用いる。ここで、重合完了時間が長い及び短いといった事項は、第一の重合性化合物と第二の化合物との間において相対的に求められるものであり、ここにいう「同一条件で重合させた場合」とは、第一の重合性化合物を重合させることが可能な条件(熱重合の場合には温度条件、光重合の場合には光の照射条件等)を適宜選択して、その選択した同一条件で重合させた場合をいう。また、「重合完了時間」は、例えば、重合性組成物の重合を光重合で行う場合には、一定の温度条件(例えば85℃)で保持しながら、光(例えば366nmの光)を照射して、第一の重合性化合物と第二の化合物とをそれぞれ用いて、これらをそれぞれセル中に導入して別途重合させて、それぞれの化合物の重合が完了するまでの時間を、フィルムが形成されるまでの時間として測定することによって求めてもよい。このように、本発明においては、セル内で重合を開始し、フィルムが形成された場合に重合が完了したものと判断してもよい。例えば、大きさ25mm角、厚さ1.1mmのソーダガラス基板2枚を用い、これらを100μm厚のポリイミドテープをスペーサー(左右の2箇所)として貼り合わせて、セル厚100μmのガラスセルを作製し(なお、かかるセルは、スペーサーをガラス基板の平行な縦の2辺(左右)の2箇所に形成し、上下の基板の平面部分の重なる領域が縦15mm、横25mmとなるようにして(スペーサーの長辺方向に平行な辺が15mm重なるようにして)貼り合わせ、スペーサーを形成していないガラス基板の部分はそれぞれ開口部とし、セルの内部の大きさを縦15mm、横10mm、厚み100μmとしてもよい。)、重合完了時間を測定するための化合物に対して、光重合開始剤を含有量が所定量(例えば1mol%)となるようにして混合した混合物を準備し、次いで、前記ガラスセル中に前記混合物を100℃の温度条件で融解させつつ毛細管現象によりセル内が満たされるまで注入し、85℃まで0.5℃/分の速度で降温した後、85℃で3分保持して重合性組成物の膜(膜の大きさ:縦15mm、横10mm、厚み100μm)を形成した後、前記膜に、高圧水銀灯からフィルターで取り出した366nmの光を1.9mW/cmの強度で照射して光重合させて、所定の時間ごと(例えば5秒、15秒、30秒、及び60秒)に光を照射した前記膜を前記ガラスセルから取り出し、表面をクロロホルムで洗浄して、フィルムが形成されているか否かを目視で確認することにより、重合完了までの時間を測定してもよい。そして、本発明においては、用いる第一の重合性化合物と第二の化合物とを比較して、重合完了時間がより短い化合物を第一の重合性化合物として用い、重合完了時間がより長い化合物(第一の重合性化合物の重合条件では重合が進行せず、重合完了時間が無限大となるような化合物(非重合性の化合物)も含む。)を第二の化合物として用いる。
このような第一の重合性化合物及び第二の化合物としては、前記第一の重合性化合物が1以上の重合性官能基を有する化合物であり、且つ、該重合性官能基の数が前記第二の化合物の有する重合性官能基の数(0であってもよい)より1以上大きいという条件を満たすものが好ましく、このような好適な条件を満たす範囲において、前記第一の重合性化合物が1以上(より好ましくは2以上、さらに好ましくは2〜4)の重合性官能基を有する化合物であり、且つ、前記第二の化合物が0又は1(より好ましくは1)の重合性官能基を有する化合物であることがより好ましい。このように重合性官能基の数が異なる化合物を第一の重合性化合物及び第二の化合物としてそれぞれ用いることで、これらの化合物間において重合速度の差を大きくすることができ、重合時に重合領域の境界近傍において、化合物濃度の偏りをより効率よく生じせしめることが可能となり、化合物の拡散をより効率よく引き起こして、重合領域の境界近傍に、より効率よく配向を形成することが可能となる。また、このような第一の重合性化合物の重合性官能基の数が前記下限未満では、重合しないか、又は、十分に早い速度で第一の重合性化合物を重合させることが困難となり、効率よく配向領域を拡大させることが困難となる傾向にある。また、このような第一の重合性化合物の重合性官能基の数が前記上限を超えると化合物の拡散よりも重合が速く進みすぎるため、拡散に伴う配向を形成することが困難となる傾向にある。
また、このような重合性官能基としては、特に制限されず、公知のものを適宜利用することができ、例えば、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アクリル基、メタクリル基、オキセタン基、エポキシ基、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基等が挙げられ、中でも、化合物の合成の容易さ、取り扱い性等の観点から、ビニルエーテル基、アクリル基、メタクリル基、オキセタン基、エポキシ基、シンナモイル基、カルコン基が好ましく、アクリル基、メタクリル基、オキセタン基、エポキシ基がより好ましい。
さらに、本発明においては、液晶が持つ自己組織化能により周期構造の前駆構造となる液晶分子の面内での配向が誘起され、その後、膜を少なくとも所定の温度域において上記冷却速度で冷却することによって、前述のような相分離を効率よく誘起させることができ、液晶が持つ自己組織化能によって周期構造が形成されるという観点から、第一の重合性化合物、第二の化合物及び重合後に得られる化合物のうちの少なくとも1種が、液晶性を示す化合物である必要がある。すなわち、前記第一の重合性化合物及び前記第二の化合物のうちの少なくとも1種は、重合前及び/又は重合後に液晶性を示す化合物である必要がある。なお、ここにいう「重合後に得られる化合物」とは、前記重合性組成物を重合させた場合に得られる化合物をいい、例えば、第一の重合性化合物の単独重合体、第二の化合物の単独重合体及び第一の重合性化合物と第二の化合物との共重合体を含む。また、前記液晶性を示す化合物としては、所定の温度範囲で液晶性を示すような化合物(いわゆるサーモトロピック液晶化合物)であることが好ましい。なお、このようなサーモトロピック液晶化合物としては、昇温及び降温を行った場合に液晶相の挙動を確認した場合に、昇温過程及び降温過程の両方で液晶性を示すエナンチオトロピック液晶化合物であっても、昇温過程及び降温過程のうちの一方の過程においてのみ液晶性を示すモノトロピック液晶化合物であってもよい。なお、本発明においては、第一の重合性化合物、第二の化合物及び重合後に得られる化合物のうちの少なくとも1種を液晶性を示す化合物(液晶性を有する化合物)とすることにより、重合の開始により膜中において化合物の拡散が励起されて前記液晶性を示す化合物にずり応力(せん断応力)を加えることが可能となり、これにより、一旦、前記液晶性を有する化合物の配向が始まると、液晶が持つ自己組織化能力によって配向が増幅されるため効率よく配向を形成することが可能である。
前記液晶性を示す化合物としては、下記一般式(1):
p−M−L−(M−L)q−M−Zr (1)
[式中、Z及びZはそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子(より好ましくはF、Cl、Br);CN;NO;OCF;炭素数1から18の直鎖又は分岐したアルキル基{なお、前記アルキル基は、前記アルキル基のうち、1個または複数の炭素が連続して結合することのない酸素原子、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CONR−、−NRCO−、−OCO−NR−、又は−NRCOO−に置換されていても良い(式中:Rは水素原子、または炭素数1から6のアルキル基を表す。)。};炭素数1から18のアルコキシ基;及び、式:−L−S−F
{式中:Fは下記式(F−1)から(F−20):
(式中、Rは水素原子、または炭素数1から6のアルキル基を表す。)、
で表わされる基のいずれかを表し、
は、単結合、炭素数1から18の直鎖または分岐したアルキレン基(なお、前記アルキレン基は、前記アルキレン基のうち、1個又は複数の炭素が、連続して結合することのない酸素原子、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CONR−、−NRCO−、−OCO−NR−、または−NRCOO−に置換されていても良い(式中、Rは水素原子、または炭素数1から6のアルキル基を表す。)。)のうちのいずれかであり、
は、単結合、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−CH−CH―、−CF−CF−、―COO−、−OCO−、−OCOO−、−CONR−、−NRCO−、−OCO−NR−、−NRCOO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、または−C≡C−を表す(式中、Rは水素原子、または炭素数1から6のアルキル基を表す。)。}
で表わされる基のうちのいずれかを示し、
、Lは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−CH−CH―、−CF−CF−、―COO−、−OCO−、−CONR−、−NRCO−、−OCO−NR−、−NRCOO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、または−C≡C−を表し(式中、Rは水素原子、または炭素数1から6のアルキル基を表す)、
およびMは、それぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,6−ジイル基、1,3,4−ベンゼントルイル基、1,3,5−ベンゼントルイル基、1,3,4,5−ベンゼンテトライル基を表し、Mは、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基または1,3−ジオキサン−2,6−ジイル基を表し、
、MおよびMとして選択される基に含まれる水素原子は、それぞれ独立してアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基で置換されていてもよく、
pおよびrはそれぞれ独立に1、2、または3を表し、
qは0、1、または2を表し、
および/またはZが複数の場合は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
で表わされる化合物が好ましい。なお、このような液晶性を示す化合物は1種を単独で或は2種以上を組み合わせて利用してもよい。
前記液晶性を示す化合物以外に使用できる化合物としては、液晶性を示す化合物と同様に、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アクリル基、メタクリル基、オキセタン基、エポキシ基、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基等の官能基を有する化合物を使用することができる。このような液晶性を示す化合物以外に使用できる化合物として利用可能な各種熱重合化合物や光重合化合物としては、市販されているものも多く、それらを適宜使用することができる。
前記ビニル基を有するビニル系化合物の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
前記ビニルエーテル基を有するビニルエーテル系化合物の例としては、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル等を挙げることができる。
前記アクリル基、メタクリル基を有する(メタ)アクリル系の化合物としては、1官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の飽和又は不飽和脂環式アルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等の置換アリール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート及び2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコシキ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロイルモルホリン等の不飽和アミド化合物;フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びコハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;ヘキサヒドロフタルイミドエチル(メタ)アクリレート及びコハクイミドエチル(メタ)アクリレート等のイミド(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル系の多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
前記エポキシ基を有する化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3‘、4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2−エポキシ−4−(2−メチルオキシラニル)−1−メチルシクロヘキサン、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、1,2:8,9−ジエポキシリモネンなどを挙げることができる。
前記オキセタン基を有する化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、2−エチルヘキシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3(((3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ)メチル)オキセタン、1,4−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン、3−エチル−3−(フェニキシメチル)オキセタン、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンなどを挙げることができる。
また、前記重合性組成物に含有させる前記第一の重合性化合物及び前記第二の化合物としては、重合時に重合領域と未重合領域の境界の位置の制御が容易であり、より効率よく所望の周期構造を有するフィルムを形成することが可能となって、作業効率をより向上させることが可能であることから、光重合性の化合物を用いることが好ましい。すなわち、本発明においては、第一の重合性化合物及び第二の化合物のうちの少なくとも一方あるいは双方を光重合性の化合物とし、前記重合性組成物の重合を光重合により行うことが好ましく、第一の重合性化合物及び第二の化合物の双方を光重合性の化合物を用いることがより好ましい。なお、ここで言う光重合性の化合物とは、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、アクリル基、メタクリル基、オキセタン基、エポキシ基のように、光開始剤の存在により官能基が反応する化合物でもよいし、光開始剤がなくとも官能基が光により反応する化合物でもよい。光開始剤がなくても官能基が反応する光重合性化合物の例としては、シンナモイル基やカルコン基、クマリン基のような光2量化反応が可能な官能基を有する化合物等を例示することができる。
また、前記第一の重合性化合物としては、より効率よく重合を進行させることが可能なモノマーであるという観点から、前記一般式(1)で表される化合物であって、式中のZ及びZがいずれも−L−S−Fで表わされる基であり(なお、Z及びZは同一であっても異なっていてもよく、合成の容易さの観点からは、同一の基であることが好ましい。)、Fがアクリル基若しくはメタクリル基であり、Sが単結合若しくは炭素数1から12の直鎖アルキレン基であり、Lがエーテル基(−O−)、エステル基(−COO−、−OCO−)及びカーボネート基(−OCOO−)のうちのいずれか(より好ましくはエーテル基)であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが単結合及び−COO−のうちのいずれか(より好ましくは単結合)であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、且つ、rが1である化合物C11、
前記一般式(1)で表される化合物であって、式中のZ及びZがいずれも−L−S−Fで表わされる基であり(なお、Z及びZは同一であっても異なっていてもよく、合成の容易さの観点からは、同一の基であることが好ましい。)、Fがアクリル基若しくはメタクリル基であり、Sが単結合若しくは炭素数1から12の直鎖アルキレン基であり、Lがエーテル基、エステル基及びカーボネート基のうちのいずれか(より好ましくはエーテル基)であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが−COO−であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが−OCO−であり、qが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、且つ、rが1である化合物C12、
前記一般式(1)で表される化合物であって、式中のZおよびZがいずれも−L−S−Fで表わされる基であり(なお、Z及びZは同一であっても異なっていてもよく、合成の容易さの観点からは、同一の基であることが好ましい。)、Fがアクリル基若しくはメタクリル基であり、Sが式:(CHCHO)z(zは2若しくは3である。)で表わされる基であり、Lが単結合であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが単結合及びエステル基のいずれか(より好ましくは単結合)であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、且つ、rが1である化合物C13、
下記一般式(2):
(式中、Rが水素及びメチル基のうちのいずれかであり(なお、複数のRは同一のものであっても異なるものであってもよい。)、xは2又は3である。)
で表される化合物C14、及び、
下記一般式(3):
(式中、Rが水素及びメチル基のうちのいずれかであり(なお、複数のRは同一のものであっても異なるものであってもよい。)、yは2から12の整数である。)
で表される化合物C15、
も好ましい。これらは重合前後の少なくとも一方において液晶性を示す重合性化合物であってもよいし、後述する第二の化合物が液晶性を示す場合は、液晶性を示さないものでもよい。
また、このような第一の重合性化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、4,4’−ビス(8−(メタ)アクリロイルオキシ−3,6−ジオキサオクチル−1−オキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(9−(メタ)アクリロイルオキシ)ノニルオキシビフェニル、4,4’−ビス(6−(メタ)アクリロイルオキシ)ヘキシロキシビフェニル、1,4−ビス(6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシロキシ)メチルヒドロキノンが特に好ましい。
また、前記重合性組成物に含有させる前記第二の化合物としては、より効率よく光学フィルムを形成するという観点から、重合の前後の少なくとも一方において液晶性を示す化合物であることが好ましいが、前記第一の重合性化合物が液晶性を示す場合には、必ずしも液晶性を示す化合物である必要はない。
さらに、このような第二の化合物としては、第二の化合物に液晶性を示す化合物を利用することにより、より効率よく光学フィルムを形成することが可能となることから、前記一般式(1)で表される化合物であって、式中のZが−L−S−Fで表わされ、Fがアクリル基若しくはメタクリル基であり、Sが単結合であり、Lが単結合であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが単結合であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Zが水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基の中から選択される1種(より好ましくはシアノ基)であり、且つ、rが1である化合物C21、
前記一般式(1)で表される化合物であって、式中のZが−L−S−Fで表わされ、Fがアクリル基若しくはメタクリル基であり、Sが炭素数1から12の直鎖アルキレン基であり、Lがエーテル基であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが単結合であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Zが水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基の中から選択される1種(より好ましくはシアノ基)であり、且つ、rが1である化合物C22、
前記一般式(1)で表される化合物であって、式中のZが−L−S−Fで表わされ、Fがアクリル基若しくはメタクリル基であり、Sが式:(CHCHO)z(zは2若しくは3である。)で表わされる基であり、Lが単結合であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが単結合であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Zが水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基の中から選択される1種(より好ましくはシアノ基)であり、且つ、rが1である化合物C23、及び
前記一般式(1)で表される化合物であって、式中のZが−L−S−Fで表わされ、Fがアクリル基若しくはメタクリル基であり、Sが炭素数1から12の直鎖アルキレン基であり、Lがエーテル基であり、pが1であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Lが−COO−であり、qが0であり、Mが1,4−フェニレン基であり、Zが水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数1〜12のアルコキシ基の中から選択される1種(より好ましくはシアノ基)であり、且つ、rが1である化合物C24、
が好ましい。
このような第二の化合物としては、4−(6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニル、4−(9−(メタ)アクリロイルオキシノニルオキシ)−4’−シアノビフェニル、4−(5−(メタ)アクリロイルオキシ−3−オキサペンチル−1−オキシ)−4‘−シアノビフェニル、4−(8−(メタ)アクリロイルオキシ−3,6−ジオキサオクチル−1−オキシ)−4’−シアノビフェニル、4−シアノフェニル−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾエートを用いることが特に好ましい。
また、前記重合性組成物中に含有させる前記第一の重合性化合物と前記第二の化合物の含有比率としては、特に制限されるものではないが、前記第一の重合性化合物と前記第二の化合物のモル比([第一の重合性化合物]:[第二の化合物])が0.1:99.9〜99.9:0.1であることが好ましく、0.5:99.5〜99.5:0.5であることがより好ましく、2:98〜98:2であることが更に好ましい。なお、前記第一の重合性化合物と前記第二の化合物のモル比([第一の重合性化合物]:[第二の化合物])は、組み合わせる化合物の種類によっては、5:95〜95:5とすることがより好ましく、10:90〜80:20とすることが更に好ましい。このような第一の重合性化合物の含有比率が前記下限未満では拡散速度が遅くなるため、境界を移動させる速度が遅くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると化合物の拡散よりも重合が速く進みすぎるため、拡散に伴う配向を形成することが困難となる傾向にある。
さらに、このような重合性組成物においては、前記第一の重合性化合物及び第二の化合物以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で各種溶媒、光重合開始剤、粘度調整剤、可塑剤、重合禁止剤、界面活性剤などを適宜含有させることができる。なお、このように重合性組成物中に各種添加剤等を含有させる場合において、前記重合性組成物中の前記第一の重合性化合物と前記第二の化合物の総量はモル比で70モル%以上(より好ましくは80モル%以上)であることが好ましい。このような前記第一の重合性化合物と前記第二の化合物の総量が前記下限未満では液晶性が低下し、周期構造の形成が困難となる傾向にある。
また、前記重合性組成物を光重合させる場合には、より効率よく重合を進行せしめることが可能となることから光重合開始剤を用いることが好ましい。このような光重合開始剤としては特に制限されず、公知のものを適宜利用することができ、市販のもの(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア651」等)を用いてもよい。また、このような光重合開始剤を用いる場合においては、その使用量は用いる重合性組成物中の化合物の種類や光の吸収波長、等に応じて適宜設計することができ、例えば、重合性組成物中の全化合物に対して0.1〜10モル%としてもよい。なお、このような光重合開始剤の含有比率が前記下限未満では光重合開始剤を用いる効果が十分に得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると液晶性を低下させる傾向にあり、これにより良好な周期構造が効率よく得られなくなる傾向にある。
また、このような重合性組成物からなる膜の形態(厚み等を含む大きさ)は、特に制限されず、目的の設計に応じて適宜その形態を変更することができ、例えば、厚みを0.1〜200μmとしてもよい。また、このような重合性組成物からなる膜としては、基板上に前記重合性組成物を塗布することにより得られる塗膜であってもよく、いわゆるセル中に重合性組成物を導入してセルにより重合性組成物を膜状としたものであってもよく、その膜の形成方法やその製造時の基板の使用の有無等も特に制限されず、公知の方法を適宜利用でき、その条件等は重合性組成物の種類、重合の方式(光重合や熱重合)、最終製品の用途等に応じて適宜選択することができる。更に、前記重合性組成物からなる膜を基板上やセル中に製造する場合において、用いる基板等は水平なものではなくてもよい。
また、このような重合性組成物からなる膜としては、膜の形状や均一性を十分に維持しつつ光学フィルムを形成するという観点から、2枚の基板の間に重合性組成物の膜を配置して基板により膜を支持すること(例えば2枚の基板を含むセルを利用してセル中に膜を配置する等)や、1枚の基板上に前記重合性組成物からなる膜を形成し、もう一方の面は気相界面としたものが好ましい。また、このような基板やセルの材料は特に制限されず、公知の材料(例えばガラスやプラスチック等)を適宜利用することができる。また、重合を光重合により行う場合において、前記膜の光の入射面側に基板が接触しているような場合には、その基板を介して光を入射させる必要があることから、該基板は少なくとも光重合に使用される波長の光を透過可能な材料からなるものとすることが好ましい。
次に、前記膜の一部の領域から前記重合性組成物の重合を開始し、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて重合した後、重合後の膜を冷却して、周期構造を有する光学フィルムを得る工程について説明する。
このような工程においては、先ず、前記重合性組成物からなる膜を用いて、該膜の一部の領域から前記重合性組成物の重合を開始する。なお、ここにいう「膜の一部の領域から前記重合性組成物の重合を開始する」といった事項には、例えば、当初より膜の一部分を重合を開始させるための領域として設定し、その領域から重合を開始する場合(例えば、光重合の場合に、予め光源からの光が照射される部分(露光部)に膜の一部が存在するような状態にし、その膜の露光部から前記重合性組成物の重合を開始するような場合)の他、重合するための領域を徐々に形成させながら膜の一部の領域から重合を開始する場合(例えば、フォトマスクを用いる光重合の場合に、前記マスクで膜の全体を覆い、前記マスクで遮光されている部分に膜が全て入るような状態とした後、光の照射の際に膜を光の照射領域に徐々に露出させて行き、膜の露光されている部分(膜の一部の領域)から重合を開始するような場合:なお、この場合、光の照射領域に前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で前記膜を導入(露出)させることが好ましい。)を含む。
このように、前記重合性組成物からなる膜を一部の領域から重合する方法としては特に制限されるものではなく、公知の方法を適宜採用することができる。このような膜の一部の領域から重合を開始する方法としては、例えば、一部の領域に光(X線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)等)を照射して、その照射領域から重合を開始する光重合による方法や、一部の領域から加熱を開始して、その加熱領域から重合を開始する熱重合による方法等が挙げられる。このような重合の方法としては、重合させる領域の制御がより容易であるという観点や、取り扱いの容易さ、照射する光の照射強度や照射エネルギーの設定や管理の容易さの観点から、一部の領域に光を照射する光重合による方法を採用することが好ましい。なお、このような光重合において、光重合の対象物である膜をセル等で支持している場合において、光照射面側の基板等が透明でない場合には電子線を用いることで光重合することが可能であり、電子線の利用は基板が透明でない場合に有用である。
また、本発明においては、前記重合性組成物の重合方法によらず、前記膜の一部の領域から前記重合性組成物の重合を開始し、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて重合する際(重合時)に、前記膜を80〜150℃(より好ましくは85〜140℃、更に好ましくは90〜130℃)に加熱する温度条件を採用する必要がある。このような重合時に採用する加熱温度の条件が前記下限未満では、重合性組成物もしくはその中の1成分が結晶化するなどにより、重合反応や配向膜の形成を効率よく進行させることが困難となったり、重合性組成物の粘度が高くなることによって、重合反応の速度が遅くなる等といった問題が生じ、他方、前記上限を超えると、熱によって膜全体の重合が進行し易くなり、配向構造を形成できなくなったり、空気中で反応を行う場合に重合性化合物が分解される可能性が高くなり、安定して光学フィルムを得ることが困難となる。なお、いわゆる後重合工程を実施する場合においても、前記重合時の温度条件と同様の温度条件(80〜150℃、より好ましくは85〜140℃、更に好ましくは90〜130℃)を採用することが好ましい。
さらに、前記重合性組成物の重合方法として光重合を採用する場合には、より効率よく重合反応を進行させることが可能となることから、紫外線又は可視光を利用することが好ましい。このような光を照射するための光源としては特に制限されず、光重合に利用可能な公知の光源を適宜利用することができ、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ等を利用してもよい。
また、このような光重合の際に利用する光の照射波長としては特に限定は無く、化合物の吸収スペクトルと、光開始剤の推奨使用波長等を勘案して決定すればよい。また、例えば、重合性組成物からなる膜が基板上に形成され、膜の一方の界面が周囲の雰囲気ガスに接触するような状態において重合を行う場合において、アクリル基やメタクリル基を含む化合物を用いてラジカル反応を利用する場合には、酸素が存在すると酸素阻害により重合が進み難い等といった観点から、窒素等の不活性ガス雰囲気下で重合を行うことが好ましい。オキセタン基やエポキシ基のようにカチオン反応を用いた酸素阻害の影響のない重合性官能基の場合には、特に不活性雰囲気下で重合を行う必要はなく、大気中で重合を行ってよい。一方、セルなどを用いて重合性組成物からなる膜が、雰囲気ガスと接触しないような状態にある場合には、大気中において重合を開始してもよい。このように、本発明においては、重合性組成物からなる膜が雰囲気ガスと接触する状態(膜の界面が気相と接触する状態)で重合を行ってもよく、重合性組成物からなる膜が雰囲気ガスと接触しないような状態(膜の界面がセルの壁面(固相)と接触する状態)で重合を行ってもよい。
また、このような光重合の際には、0.1μW/cm〜30mW/cmの強度で光を照射することが好ましく、0.5μW/cm〜10mW/cmの強度で光を照射することがより好ましい。このような光の照度が前記下限未満では反応速度が遅くなるため、前記境界の移動速度が遅くなり、生産性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合性化合物が拡散する速度よりも重合反応速度の方が速くなり過ぎることにより、化合物の拡散が十分に起こらず、フィルム中に十分に配向構造を形成することが困難となり、結果として冷却時に周期構造を形成することが困難となる傾向にある。
さらに、このような光重合の際に、一部の領域から光を照射するための方法は特に制限されず、例えば、一部の領域のみに光を照射できるようにした光源を利用してもよく、あるいは、フォトマスクを利用して一部の領域から光を照射してもよいが、重合領域と未重合領域の制御がより容易となるため、フォトマスクを利用することが好ましい。
また、本発明においては、上述のようにして、前記重合性組成物からなる膜の一部の領域から前記重合性組成物の重合を開始し、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させる。このようにして重合領域と未重合領域との境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させることにより、連続的に重合を行って、移動して行く境界の近傍の領域において、物質の拡散現象を順次連続的に引き起こすことが可能となり、これにより配向領域を連続的に増大させて周期構造の前駆構造となる液晶分子の面内配向、および周期構造を有する構造体を形成することが可能となる。なお、このように前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させる際における重合条件は、前述の重合開始時の重合条件と同様の条件を採用すればよい。
ここで、前記境界を移動させる際の移動速度である「液晶性を示す化合物が配向するような速度」は、液晶性を示す化合物の種類、拡散移動する化合物の種類、重合して形成される化合物(重合物)の種類(第一の重合性化合物、第二の化合物の種類、重合後に得られる化合物の種類)、重合時に採用する重合の条件(例えば光重合を採用する場合の光の照射条件等)等によっても、前記膜中の液晶性を示す化合物を配向させるために必要となる時間等が異なることから、一概に言えるようなものではない。すなわち、本発明においては、重合領域と未重合領域とにおいて生じる化合物の濃度勾配に起因して、重合領域と未重合領域との境界の近傍において前記重合性組成物中の化合物の拡散移動(流れ)を引き起こし、前記重合性組成物中に存在する液晶性を示す化合物に、一種のずり応力を付加して、前記境界の近傍において前記液晶性を示す化合物を配向させるため、「液晶性を示す化合物が配向するような速度」は、その液晶性を示す化合物の種類や拡散移動する化合物の種類、更には重合して形成される化合物(重合物)の種類等によって異なるものとなる。例えば、第二の化合物に液晶性を示す化合物を利用し、重合の開始により第一の重合性化合物を重合させて、第一の重合性化合物の重合領域への移動を引き起こさせるようにして、第一の重合性化合物及び第二の化合物を利用する場合について考慮すると、第一の重合性化合物の重合速度が非常に速く、重合領域と未重合領域において化合物の濃度勾配が急激に生じて、第一の重合性化合物の重合領域への移動速度が非常に速いものとなるような場合には、前記境界の移動速度を比較的早くしても、第一の重合性化合物の重合領域への移動に伴って生じるずり応力を、重合領域に存在する液晶性を示す化合物に十分に加えることができ、液晶性を示す化合物を十分に配向させることが可能となるのに対して、第一の重合性化合物の重合速度が遅く、重合領域と未重合領域において化合物の濃度勾配が穏やかに発生し、第一の重合性化合物の重合領域への移動速度が遅くなるような場合には、液晶性を示す化合物に十分にずり応力を付与するためには時間がかかるため、前記境界の移動速度を早くすると、前記境界の近傍において、十分に液晶性を示す化合物を配向させることが困難となる。このように、「液晶性を示す化合物が配向するような速度」は、液晶性を示す化合物の種類や拡散移動する化合物の種類、更には重合して形成される化合物(重合物)の種類、重合条件等に応じて適宜配向が生じるように決定すればよく、その速度の設定は適宜変更することができる。
また、このような液晶性を示す化合物が配向するような速度(前記境界を移動させる移動速度)としては、1×10−7〜4×10−1m/sとすることが好ましく、1×10−6〜4×10−2m/sとすることがより好ましい。このような速度が前記下限未満では化合物の拡散よりも重合反応が早く進行するため、粘性が高くなることにより化合物の拡散移動が却って抑制されてしまい、液晶性を示す化合物にずり応力を十分に付与することができなくなり、広範囲を効率よく配向させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、速度が速くなり過ぎて、境界近傍において十分に化合物の拡散移動を行うことが困難となり、重合領域において配向を形成することが困難となる傾向にある。また、前記第一の重合性化合物と第二の化合物の組み合わせが前述の好適な組み合わせのうちのいずれかであり、重合性組成物の重合に際して、0.1μW/cm〜30mW/cmの強度で照射する光重合法を採用する場合においては、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度(前記境界を移動させる移動速度)は、光学フィルムを効率よく形成することが可能であるという観点から、1×10−7〜4×10−1m/sに設定することが好ましい。
また、前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させる方法としては、特に制限されず、例えば、重合方法が熱重合である場合には、加熱領域を未重合の領域に連続的に移動させていくことが可能な方法を適宜採用すればよく、また、重合方法が光重合である場合には、光の照射領域を未照射の領域に連続的に移動させていくことが可能な方法を適宜採用すればよい。
また、このような領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させる方法としては、境界の移動速度をより容易に制御でき、より効率よく配向領域を形成させることが可能であることから、前記重合性組成物の重合を光重合により行い、且つ、前記境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させるために、光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させる方法を採用することが好ましい。また、光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させる方法としては、境界を移動させることが可能な方法であればよく特に制限されず、前記重合性組成物膜に対して、一部の領域のみに光を照射できるようにした光源自体を連続的に移動させるような方法や、前記光源を固定しつつ前記重合性組成物の膜を連続的に移動させる方法、フォトマスクを利用し、フォトマスクを連続的に移動させる方法、更には、フォトマスクを利用し、フォトマスクを固定しつつ前記重合性組成物の膜を連続的に移動させる方法を利用してもよい。
また、このような光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させる方法の中でも、前記光重合の際にフォトマスクを利用し、そのフォトマスクを連続的に移動させる方法や、前記光重合の際にフォトマスクを利用し、そのフォトマスクを固定しつつ前記重合性組成物の膜を連続的に移動させる方法を採用することが好ましい。このように、前記重合性組成物の重合に光重合を採用し、フォトマスクを利用することで、前記光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させることを、より容易に達成することが可能である。
ここで、前記重合性組成物の重合を光重合により行い、その光重合の際にフォトマスクを利用する場合の好適な実施形態について、図1〜4を参照して簡単に説明する。図1〜4に示す好適な実施形態においては、先ず、膜13の一部の領域のみに光源11からの光が照射されるように膜13と光源11との間に光を遮蔽することが可能なフォトマスク14を配置した後(図1)、光源11から光を照射することにより膜13の一部の領域A1から前記重合性組成物の重合を開始し(図2参照)、その後、液晶性を示す化合物が配向するような速度でフォトマスク14を連続的に移動させることにより、液晶性を示す化合物が配向するような速度で重合領域の境界Sを未重合の領域A2に向けて(矢印Aの方向に向けて)連続的に移動させて(図3〜4参照)、配向構造を形成しつつ膜を重合させることができる。このように、前記重合性組成物の重合に光重合を利用した場合には、フォトマスク14を移動させる方法のような簡便な方法で、重合領域と未重合領域の境界Sを移動させることを達成でき、配向構造が形成された重合フィルム(周期構造を有する光学フィルムの前駆体としての配向性フィルム)を形成することが可能となる。なお、膜を重合する際にフォトマスクを利用する場合の好適な実施形態について図1〜4を参照して説明したが、フォトマスクを利用する場合の実施形態は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記図1〜4に示す実施形態においては、重合領域と未重合領域の境界Sを移動させるために、フォトマスク14の移動させる方法を採用しているが、フォトマスク14を固定して膜13自体を移動させる方法を採用してもよい。また、上記図1〜4に示す実施形態においては、膜13の一部の領域A1に光が照射されるような状態とした後に前記重合性組成物の重合を開始しているが、本発明の光学フィルムの製造方法において採用可能な重合方法は、かかる実施形態において採用したような方法に制限されるものではなく、例えば、フォトマスクにより膜の全てを覆い、光の照射開始とともに、液晶性を示す化合物が配向するような速度でフォトマスク又は膜を連続的に移動させて、膜が前記速度で光の照射領域(露光部)に導入されていくようにすることにより、その光の照射領域(露光部)に導入された領域(膜の一部の領域)から重合を開始し、そのまま液晶性を示す化合物が配向するような速度で重合領域の境界を未重合の領域に向けて移動させて重合させるような方法を採用してもよい。
また、前記重合性組成物の重合を光重合により行い、その光重合の際にフォトマスクを利用する場合、フォトマスクのエッジ形状に応じて、周期構造の前駆構造となる液晶分子の配向方向を容易に制御することが可能である。以下、このようなフォトマスクのエッジ形状に応じた配向の制御に関して、図8及び9にそれぞれ示す実施形態を参照しながら簡単に説明する。例えば、フォトマスクとして、図8に示すようなフォトマスク14を用いた場合には、図8に示す境界Sに対してほぼ垂直な方向に化合物の流れが生じ、境界Sに対してほぼ垂直に周期構造の前駆構造となる液晶分子の配向方向が制御できる。また、フォトマスクとして、図9に示すようなエッジが斜め方向に形成されたフォトマスク14を利用した場合、基本的に、図9に示す境界Sに対してほぼ垂直な方向に化合物の流れが生じ、その斜めの境界Sに対してほぼ垂直、又は境界Sの移動速度が速い場合には境界Sの移動方向のベクトル(矢印A)と境界Sに対して垂直方向のベクトル(矢印P)とのベクトル和の方向に配向方向が制御できる。そのため、フォトマスクを利用した光重合を行う場合には、フォトマスクのエッジ形状に応じて周期構造の前駆構造となる液晶分子の配向方向を所望の方向により容易に制御することが可能となる。従って、所望の周期構造の前駆構造となる液晶分子の配向方向を形成するために、フォトマスクのエッジ形状を適宜変更しながら利用してもよく、これにより簡便に周期構造の前駆構造となる液晶分子の配向方向を制御することが可能である。
また、前記重合性組成物の重合を光重合により行い、その光重合の際にフォトマスクを利用する場合、前記フォトマスクとして、複数の略長方形状の開口部が、各開口部の長辺が略平行となるようにして形成されたフォトマスクを好適に利用することができる。以下、このような複数の略長方形状の開口部が各開口部の長辺が略平行となるように形成されたマスクを利用した場合における光重合の方法の好適な実施形態を、図10や図11を参照しながら簡単に説明する。図10及び図11は、それぞれ、光源側(照射する光の光軸方向)から見た場合におけるフォトマスク14と基板12との関係を模式的に示す概略平面図である。なお、これらの実施形態においては、開口部14Aを介して透過した光により基板12上に配置された膜の光重合が可能となるように、光源とフォトマスク14と基板12とが配置されている。
このような図10及び図11に示すフォトマスク14は、複数の略長方形状の開口部14Aを有する。ここで、「略長方形状」とは、図10に示す開口部14Aのような長方形の形状の他、長方形の四隅が円弧状となっている形状、長方形の長辺又は短辺に対応する部分が円弧状の辺となっている形状、更には、図11に示す開口部14Aのような四隅の角度が90度ではない平行四辺形の形状(なお、このような形状の場合にも、四隅が円弧状のものや、長辺又は短辺に対応する部分が円弧状の辺となっている形状も含む。)をも含む概念である。このように、略長方形状の開口部とは、開口部が、長方形の様に長辺(円弧状の辺でもよい)に相当する辺が短辺(円弧状の辺でもよい。)に相当する辺よりも長くなっている細長い形状であることを意図する表現である。
このような開口部14Aの略長方形状(細長い形状)は特に制限されず、長辺の長さYが短辺の長さXよりも長ければよい。このような長辺の長さYと短辺の長さXとの比(Y/X)が2.0以上であることが好ましく、5.0〜2.0×10であることがより好ましい。)。
また、このような開口部14Aの短辺の長さXとしては、重合させる際に用いる基板12や膜の大きさ等によっても異なるものであり、一概には言えないが、1μm〜10mmであることが好ましく、10μm〜1mmであることがより好ましい。このような開口部14Aの短辺の長さXが前記下限未満では、配向が生じ難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、膜面内の配向が均一なフィルムが得られ難くなる傾向にある。
また、このような開口部14Aは、各開口部の長辺が略平行に配置されている。このように開口部14Aを、各開口部の長辺が略平行になるように配置することで、大面積に配向フィルムを形成する際に、その配向方向が基本的に一様な方向になるように制御することが可能となる。また、このような開口部14Aを有するマスクとしては、開口部14Aが周期的に形成されていることが好ましく、同様の形状の開口部14Aが周期的に形成されていることがより好ましい。このように、開口部14Aは周期的に形成されている場合、開口部14Aのピッチは特に制限されるものではないが、1μm〜10mmであることが好ましく、10μm〜1mmであることがより好ましい。このような開口部14Aのピッチが前記下限未満では配向が生じ難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、膜面内の配向が均一なフィルムが得られ難くなる傾向にある。なお、このような開口部を複数有するフォトマスクにおいて、開口部の数は2以上であればよく、特に制限されず、マスクや基板の大きさ等に応じて、その設計を適宜変更することができる。
このような複数の長方形状の開口部が略平行に形成されたマスク14を用いて、例えば、基板12を方向Aと同じ方向に向かって動かしながら基板上に形成された膜に対して、開口部14Aを介して光を照射して光重合を行った場合、各開口部14Aごとに重合領域の境界Sが形成され、各境界Sをそれぞれ未重合の領域に向けて連続的に移動させることが可能となり、各開口部14Aごとにそれぞれ配向領域を形成していくことが可能となる。そのため、複数の長方形状の開口部が略平行に形成されたマスク14を用いた場合には、マスクを、隣り合う開口部の間隔(距離)と同じ長さ移動させることにより、大面積に配向領域を形成することが可能となり、効率よく周期構造の前駆構造となる液晶分子の配向を形成することが可能となる。
また、このような複数の長方形状の開口部が略平行に形成されたマスク14を用いる場合においては、開口部14Aのエッジの形状に応じて、配向方向を制御することも可能であり、例えば、図10に示す実施形態において、基板12を方向Aに向かって動かしながら光重合を行った場合、配向方向を開口部14Aの長辺に対して垂直な方向に制御することが可能である。また、図11に示す実施形態においては、基板12を方向Aと同じ方向に向かって動かしながら光重合を行った場合、光源側から見た場合に、開口部14Aのエッジが基板12の2辺に対して斜め方向に形成されているため、重合により開口部14Aの長辺に対してほぼ垂直な方向に化合物の流れが生じ、その長辺に対してほぼ垂直、又は、基板12の移動速度が速い場合には、その移動方向のベクトル(矢印A)と長辺に対してほぼ垂直方向のベクトル(矢印P)とのベクトル和の方向に配向方向が制御できる。なお、図10〜11を参照して本発明に好適に採用することが可能な光重合の方法について説明したが、本発明において採用することが可能な光重合の方法は、これらの方法に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態においては基板12を移動させる方法を説明しているが、基板12を固定化し、マスクと光源とを移動させる方法等を適宜採用して光重合を行なってもよい。
また、本発明においては、重合性組成物からなる膜の一部の領域から前記重合性組成物の重合を開始し、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて、膜中に周期構造の前駆構造となる液晶分子の配向構造を形成して重合するが、このような重合に用いる重合性組成物からなる膜としては、予備重合を施した膜を利用してもよい。このような予備重合を施した膜を利用することにより、重合領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させる速度をより速くしても十分に配向構造を形成することが可能となり、より効率よくフィルムの大面積に周期構造を形成することが可能となる傾向にある。なお、ここにいう「予備重合」とは、前記重合性組成物の膜を、重合性組成物の流動性が損なわれない程度にわずかに重合させること(例えば予備重合及び本重合の双方に光重合を利用する場合、前記重合性組成物の膜に対して、本重合よりも強度の弱い光を照射することで、流動性が損なわれない程度に膜中の成分をわずかに重合させること)をいう。
このように、本発明においては、重合領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させる速度をより速くして、なるべく短時間で光学フィルムを形成させるという観点から、予備重合後の膜を好適に利用することができる。このような予備重合の方法としては、特に制限されず、例えば、予備重合に光重合を採用する場合には、フォトマスクを用いた予備的な重合であっても、フォトマスクを利用せずに行なう予備的な重合であってもよい。このように、前記予備重合は、例えば、複数の略長方形状の開口部が各開口部の長辺が略平行となるようにして形成されたフォトマスクを用いた光重合による予備的な重合であってもよい。
このような予備重合の際に、光重合を採用する場合には、0.001μW/cm〜10mW/cmの強度で光を照射することが好ましく、0.05μW/cm〜1mW/cmの強度で光を照射することがより好ましい。このような光の照度が前記下限未満では反応が不十分となり予備重合の効果が得られ難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合性化合物の重合が進み過ぎた膜となり、前記重合性組成物からなる膜の一部の領域から前記重合性組成物の重合を開始した後に、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させても、化合物の拡散が十分に起こらず、重合時にフィルムに十分な配向が形成されなくなり、結果として周期構造を十分に形成することが困難となる傾向にある。なお、このような予備重合の際に光重合を採用する場合、光重合の条件としては、前記光の照度に関する条件以外は、前記重合性組成物の重合方法として説明した光重合の条件と同様の条件を採用することができる。
このようにして、本発明においては、第一の重合性化合物と、同一条件で重合させた場合に前記第一の重合性化合物よりも重合完了時間が長い第二の化合物とを含有し、且つ、前記第一の重合性化合物、前記第二の化合物及び重合後に得られる化合物のうちの少なくとも1種が液晶性を示す化合物である、重合性組成物からなる膜を用いて、前記膜の一部の領域から前記重合性組成物の重合を開始し、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて重合する。なお、このような配向の形成方法は、重合を開始した後に膜中において未重合領域から重合領域に移動する化合物により生じる一種のずり応力を利用して、前記液晶性を示す化合物を配向させる方法であることから、基本的に、その化合物が移動する方向(前記領域の境界に垂直な方向)に配向の方向を制御することが可能であり、重合を光重合で行う場合にはマスクの形状に応じて様々な方向に配向を制御することや場所により周期構造の前駆構造となる液晶分子の配向方向を変えたパターン配向も可能となる。
また、前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて、膜中に配向領域を形成させた後においては、その重合反応を完了させるとの観点から、いわゆる後重合工程を施してもよい。なお、このような後重合工程は、配向領域中に残存する未重合成分を更に効率よく重合させるために更に光を照射する等して、重合を更に進行せしめる工程であり、前記重合領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて、膜中に配向領域を形成させた後に形成された配向領域を更に重合させる工程である。このように、本発明においては、重合領域の境界を移動させながら物質の拡散現象を利用して配向を形成するが、その境界の移動に伴う重合工程で膜中の成分が完全に重合されていない場合には、前記領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させた後、重合を更に進行させる工程(後重合工程)を実施して、重合反応を完了(より促進)させてもよい。なお、このような後重合工程の条件は、特に制限されず、用いる重合性組成物中の成分の種類等に応じて適宜変更しながら実施すればよい。なお、本発明においては、後重合工程の重合時に採用する温度条件は、80〜150℃(より好ましくは85〜140℃、更に好ましくは90〜130℃)に膜を加熱する温度条件とすることが好ましい。また、このようにしてフィルム内に配向構造を形成する場合には、基板に長尺の基板フィルム等を使用して、ロール・ツー・ロールで長尺の配向構造を形成してもよい。
また、このようにして膜を重合した後においては、前記膜を重合時に採用した加熱温度よりも高温に加熱(昇温)して、前記液晶性を示す化合物(液晶性化合物)が等方相となるような温度に保持してもよい。このようにして、配向構造を形成した後に、前記液晶性を示す化合物(液晶性化合物)が等方相となるような温度に加熱することで、より効率よく周期構造を形成することができる。なお、ここにいう「液晶性化合物が等方相となるような温度」とは、化合物が液晶相を示す温度よりも高い温度(等方相に相転移を起こす温度)であり、その温度においては液晶分子の運動性が高まりランダムな配向状態となるため、長時間その温度を継続(維持)すると液晶分子が示す光学的な異方性が消失し始めるような温度である。このように、膜の重合後、冷却工程を施す前に加熱(昇温)工程を施す場合には、その加熱温度を、重合時に採用した加熱温度よりも高温で、かつ、前記液晶性を示す化合物(液晶性化合物)を等方相とすることが可能となるような温度とすることが好ましい。なお、このような加熱(昇温)工程を施す場合には、加熱温度の上限は200℃とすることが好ましい。このような加熱温度が液晶性化合物が等方相となるような温度よりも低い場合には、より効率よく周期構造を形成することが難しくなる傾向にあり、他方、前記上限の温度よりも高い場合には、分子の運動性が高くなりすぎて、重合時に形成された液晶性化合物の配向方向の秩序が失われ、規則正しい周期構造の形成が困難となる傾向にある。なお、このように等方相となるような温度に加熱する工程における加熱時間としては、0.5〜10分(より好ましくは1〜5分)であることが好ましい。このような加熱時間が前記下限未満では、より効率の良い周期構造形成を達成することが難しくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると分子の運動性が高くなりすぎ、重合時に形成された液晶性化合物の配向方向の秩序が失われ、却って規則正しい周期構造の形成が困難となる傾向にある。
また、本発明においては、上述のようにして前記重合性組成物からなる膜を80〜150℃の加熱温度で加熱する温度条件下において、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で重合領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて重合した後(場合により、前述のように、前記重合を行った後に液晶性化合物を等方相となるような温度に加熱した後)、重合後の膜を冷却する。このような冷却の際には、前記膜の温度が、少なくとも前記重合時に採用した加熱温度と同じ温度(80〜150℃の間の温度であり、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で重合領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて重合する際(重合時)に採用した温度である。)から60℃になるまでの間は、0.1〜30℃/分の冷却速度で前記膜を冷却する。なお、前記膜の温度に関する「前記重合時に採用した加熱温度」とは、前記液晶性を示す化合物が配向するような速度で重合領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて重合させる際に採用した温度(後重合工程を採用する際の後重合の際に採用した加熱温度ではなく、液晶性を示す化合物が配向するように重合する際に採用した温度)をいう。ここにおいて、このような膜の温度は熱電対を貼りつけ、キーエンス社製の商品名「データロガーGR−3500」を用いることにより測定することができ、ガラスセル中に膜が存在している場合には、ガラスセルに熱電対を貼り付けて測定される温度を採用することができる。
なお、このような冷却速度の制御を、前述のような「重合時に採用した加熱温度と同じ温度」から始めることで、冷却速度の制御の始点となる温度においては膜中の液晶性化合物の流動性が十分に維持された状態となっているため、冷却速度に応じた周期構造を形成することが可能となる。なお、重合後、特に昇温工程を施すことなく、そのまま冷却工程を施す場合には、重合終了後、そのまま前記冷却速度で膜を冷却すればよく(重合終了後、重合終了時の温度から60℃になるまでの間、前記冷却速度に制御しながら膜を冷却すればよく)、他方、上述のような更なる昇温工程を施す場合には、昇温後、重合時に採用した加熱温度と同じ温度に戻し、その後、冷却条件を制御しながら冷却してもよく、あるいは、昇温後、その昇温後の温度からそのまま上記冷却速度に制御しながら前記膜を冷却することで、少なくとも「重合時に採用した加熱温度と同じ温度」から60℃になるまでの間の温度域において、上記冷却速度で膜を冷却するようにしてもよい。
また、本発明においては、前述のように、重合後の膜を冷却する際(場合により、重合後の膜を、前記液晶性化合物が等方相となるような温度に加熱した後、冷却する際)に、前記膜の温度が少なくとも重合時に採用した加熱温度と同じ温度から60℃になるまでの間、冷却速度を0.1〜30℃/分(より好ましくは0.5〜20℃/分、更に好ましくは0.8〜12℃/分)とする必要がある。このような冷却速度が前記下限未満では周期構造が形成されなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、配向構造が形成された膜中に十分に高度な周期性を有する周期構造を形成することが困難となる傾向にある。なお、本発明にいう「冷却速度」とは、膜又は膜を収容するセル(例えばガラスセル等)に熱電対を貼りつけ、キーエンス社製の商品名「データロガーGR−3500」を用いて測定することが可能な、重合時の加熱温度から60℃になるまでの各タイミング(瞬間)における冷却速度(いわゆる瞬間速度)を採用する(なお、重合時に採用した加熱温度と同じ温度(重合工程の加熱時に採用した温度と同じ高さの温度)から60℃になるまでの時間を測定して、前記加熱温度から60℃を引いた温度をその時間により除して求められるような単位時間あたりの平均冷却速度ではない。)。そのため、本発明にかかる前記冷却工程においては、前記膜の温度が前記重合時に採用した加熱温度と同じ温度から60℃になるまでの間において、いずれのタイミングにおいても前記測定装置(キーエンス社製の商品名「データロガーGR−3500」)を用いて測定される冷却速度が0.1〜30℃/分の範囲にあることとなる。
また、本発明においては、前記膜の温度が、少なくとも前記重合時に採用した加熱温度と同じ温度から60℃になるまでの間において、冷却速度を前記範囲に制御するが、これにより、自己組成的に周期構造(分子配向が周期的に変化する周期構造)が形成されることとなる。なお、このような周期構造が形成された光学フィルム中における配向の状態としては、例えば、重合の進行方向に対して分子が平行に配向している層と、垂直に配向している層が交互に形成されており、その中間層では分子が斜めに配向している状態を挙げることができる(図5〜7等参照)。また、このような配向の状態や周期構造は、偏光顕微鏡においても確認することができる。
また、このような冷却に際しては、周期構造をより安定的に固定化することが可能となるため、重合後の膜の温度が前記重合時に採用した加熱温度と同じ温度から30℃(より好ましくは室温(25℃)程度)になるまでの間、前記冷却速度の範囲で冷却することが好ましい。
また、このように冷却速度を制御する方法としては、特に制限されず、上記冷却速度を達成することが可能な方法を適宜採用することができ、例えば、温度制御手段(例えば、ホットステージ等の加熱手段等:膜を配置して冷却速度に応じて熱を加えることが可能となるようなもの等)を利用して所望の冷却速度(ほぼ一定)となるように膜の温度を調節しながら冷却する方法等を採用してもよい。なお、冷却に際しては、重合終了後の膜を冷却用の基板(例えば、温度制御用のホットステージの基板等)を利用せずに、雰囲気ガスを接触させて、雰囲気ガスの温度を制御しながら冷却してもよく、あるいは、前記冷却用の基板を利用して、該冷却用の基板上で冷却してもよいが、厳密な温度制御をより効率よく行うことが可能であるという観点から、前記冷却用の基板を用いながら冷却することが好ましい。なお、ここにいう「冷却用の基板上で冷却」とは、膜自体を直接的に前記冷却用の基板に接触させて、その基板からの加熱や基板の熱伝導率を利用しながら冷却する場合の他、例えば、セル中の重合膜を冷却する場合においては、該セルを冷却用の基板に接触させて、雰囲気ガスのみによる冷却ではなく、セルを介して、間接的に冷却用の基板からの加熱や冷却用の基板の熱伝導率を利用しながら冷却するような場合を含む。
このような冷却条件を採用して重合後の膜を冷却することで周期構造を有する光学フィルムを製造できる。なお、本発明にいう「周期構造」とは、該光学フィルムの任意の3点以上の測定点に対してそれぞれ波長633nmのヘリウムネオンレーザーを垂直な方向から照射したときに測定される1次回折光の回折強度の平均値と、透過光測定用のフィルムの任意の3点以上の測定点に対してそれぞれ波長633nmのヘリウムネオンレーザーを垂直な方向から照射したときに測定される透過光の強度の平均値とに基いて、下記式(1):
[E]=([Is]/[Ir])×100 (1)
[式(1)中、Isは前記光学フィルムの1次回折光の回折強度の平均値(単位:mW)を示し、Irは透過光測定用のフィルムの透過光の強度の平均値(単位:mW)を示し、Eは回折効率(単位:%)を示す。]
を計算して求められる回折効率が5%以上となるような構造をいう。ここにおいて、透過光測定用のフィルムは、前記冷却の際に、前記膜の温度が少なくとも前記重合時に採用した加熱温度と同じ温度から60℃になるまでの間、0.1〜30℃/分の冷却速度で前記膜を冷却する方法を採用せずに、前記重合後の膜を液体窒素に5秒間浸漬して前記膜を冷却する方法を採用する以外は、本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法と同様の方法を採用して得られるフィルムを利用する。すなわち、本発明においては、前記冷却の際に、前記冷却速度で冷却する方法を採用せずに、前記重合後の膜を液体窒素に5秒間浸漬して前記膜を冷却する方法を採用する以外は、本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法と同様の方法を採用して得られるフィルムを透過光測定用のフィルムとして用いる。このように、冷却工程のみを、前記重合後の膜を液体窒素に5秒間浸漬して前記膜を冷却する工程に変更して得られるフィルムは、その冷却条件(膜の固定化の条件)から、重合後の状態(配列状態)がそのまま固定化されたフィルムであるものと擬制でき、かかるフィルム中には、周期構造の前駆構造である配向構造のみが形成されているものとみなせる。そのため、このような透過光測定用のフィルムは、本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法により得られる光学フィルムと同一の成分からなるものの、周期構造が形成されていないフィルムであるものとみなせる。そして、このような周期構造が形成されていない透過光測定用のフィルムの透過光(0次光)の平均値に対する、前記光学フィルムの1次回折光の回折強度の平均値の比率から回折効率(E)を求めることができる。このような回折効率(E)がより高い値(より大きな比率)となるほど、周期構造がより周期性の高いもの(周期性の均一性が高いもの)となることは明白である。このような観点から、本発明においては、前記回折効率(E)が5%以上となるような周期性を有するものを周期構造を有する光学フィルムと判断する。すなわち、回折効率(E)が5%未満となるようなものは、回折光が確認されても十分に規則的な回折が起きるような周期性がないことが明らかであり、その場合、フィルム内に、基本的に十分に規則的な繰り返し構造(周期的な構造)が形成されていないこととなる。このような観点で、本発明においては、回折効率が5%未満となるようなものは、回折光が確認されても周期構造が形成されていないフィルムと判断する。
なお、ここにいう透過光の平均値及び1次回折光の平均値は、波長633nmのヘリウムネオンレーザー(He−Neレーザー)を、透過光又は1次回折光の測定対象物(光学フィルム及び透過光測定用のフィルム)上の任意の3点以上の測定点に対して、該測定対象物に対して垂直な方向から照射して、各測定点における透過光又は1次回折光の強度のピークを求めて、平均化することにより求められる。例えば、前記周期構造を有する光学フィルムの任意の3点以上の測定点に、波長633nmのヘリウムネオンレーザー(He−Neレーザー)を該光学フィルムに対して垂直な方向から照射して、各測定点における、構造体から平行方向に任意の距離(例えば74mm)離れた位置における回折光強度のピークをそれぞれ測定し、その平均値を求めることで、前記光学フィルムの1次回折光の回折強度の平均値を求めることができ、また、測定対象物を光学フィルムから透過光測定用のフィルムに変更する以外は、1次回折光の回折強度の平均値を求める場合と同一の条件を採用して任意の3点以上の測定点で透過光のピークをそれぞれ測定し、その平均値を求めることで、透過光測定用のフィルムの透過光の強度の平均値を求めることができる。なお、顕微鏡で観察できる程度に周期が大きい周期構造の場合には、偏光顕微鏡観察により液晶分子の配向方向の周期的な変動を確認することで、その周期構造を確認することもできる。
また、前記回折光強度のピークの平均値及び前記透過光の強度の平均値の測定方法、および回折効率の算出方法としては、より具体的には、以下に記載のような方法を採用することができる。すなわち、先ず、測定装置として、日置電機社製の商品名「光パワーメータ3664」及び商品名「光センサ9742」を用い、レーザー光源としてMELLES GRIOT社製のHe−Neレーザー(商品名「05−LHR−151」)を用いて、前記周期構造を有する光学フィルムに対して垂直な方向から、フィルム上の任意の測定点に対して、波長633nmのヘリウムネオンレーザー(He−Neレーザー)を照射し、フィルムと平行に配置されたスクリーン上の1次回折光強度のピークを測定する。このとき、構造体と平行に設置するスクリーンまでの距離は任意に設定してよく、回折光を測定装置の測定範囲内に収めるためにレンズ等を用いて集光させてもよい。このような測定は、フィルム上の測定点を任意の位置に順次変更しながら、少なくとも3回行う(任意の3点以上の測定点において測定を行う。)。そして、各測定点において求められた各回折光強度のピークの値に基いて、その平均を求めることにより、前記1次回折光強度のピークの平均値を求めることができる。また、光学フィルムの代わりに透過光測定用のフィルムを用い、更に回折光の代わりに透過光を測定する以外は、上記1次回折光強度のピークの平均値を求める方法と同様にすることで、前記透過光の強度の平均値を求めることができる。このようにして、重合後の冷却を液体窒素により急冷させて均一な配向を固定化することで周期構造が全く発生しないサンプル(透過光測定用のフィルム)の透過光の強度の平均値を求めることができる。そして、これらの平均値に基づいて、下記式(1):
[E]=([Is]/[Ir])×100 (1)
[式(1)中、Isは前記光学フィルムの1次回折光の回折強度の平均値(単位:mW)を示し、Irは透過光測定用のフィルムの透過光の強度の平均値(単位:mW)を示し、Eは回折効率(単位:%)を示す。]
を計算することにより、周期構造を有する光学フィルムの回折効率(%)を求めることができる。
なお、本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法によれば、前記回折効率が5%以上(より好ましくは7%以上、)となる、十分に高い周期性を有する周期構造を確実に製造することが可能となる。このような回折効率が前記下限未満の場合には、周期性の程度が十分なものではなく、フィルム中に様々な用途に利用できるような周期構造が形成されていないこととなる。
また、このような周期構造には、1次回折光が重合移動方向のみ2箇所に確認される場合と、重合移動方向の2箇所に加えて、垂直方向に2箇所、計4箇所に確認される場合がある。特に1次回折光が重合移動方向のみ2箇所に発生する場合は、前記シリンダー状の配向状態を形成しており、重合移動方向に液晶の配向方向が周期的に変化している。一方、1次回折光が4箇所に発生する場合は、前記球状の配向状態を形成しており、重合移動方向、および重合移動方向と垂直方向に液晶の配向方向が周期的に変化している。この1次回折光の発生数は、使用する液晶化合物や配合比、添加剤の濃度、重合移動方向、重合時の温度、光強度、重合後の冷却速度等により変動する。また、このような周期構造としては、2次元の周期構造を形成させる場合には、回折光が縦方向(垂直方向:上下2方向)と横方向(重合移動方向:左右2方向)の四方向(4箇所)に確認されるようなものが好ましく、1次元の周期構造を形成させる場合には、1次回折光が重合移動方向のみ2箇所に確認されるようなものが好ましい。
また、このような周期構造としては、周期構造体の用途に応じて異なるため一概にいうことはできないが、例えば、格子周期0・3〜5.0μmであることが好ましく、0.5〜3.0μmであることがより好ましい。なお、このような格子周期としては、以下のようにして算出される値を採用する。すなわち、先ず、前述の前記回折光強度のピークの測定方法と同様の方法を採用して、フィルム上の任意の点に対して、フィルムに対して垂直な方向から波長633nmのヘリウムネオンレーザー(He−Neレーザー)を照射し、フィルムと平行に配置されたスクリーンに回折光を投射させる。そして、フィルムとスクリーンとの間の距離をLとし、1次光のうち最も0次光に近い点と0次光との間の距離をDとして、下記計算式(2):
[回折角(α)]=arctan(D/L) (2)
を計算して回折角αを求める。次いで、このようにして求められる回折角αと、照射光の波長λ(=633nm)と、回折次数m(=1)とに基いて、下記計算式(3):
[格子周期(Λ)]=(m×λ)/sinα (3)
を計算することで、格子周期を算出することができる。
このようにして本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法により得られる周期構造を有する光学フィルムは、回折格子やフォトニック結晶等のテンプレート等に好適に利用することが可能である。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(合成例1:A6CBの合成及びそのホモポリマーの合成)
4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニル(A6CB)を、以下に示す方法により合成した。すなわち、4−シアノー4‘−ヒドロキシビフェニル(100mmol)を120mLのN,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)中に溶解して溶解液を得た。次に、前記溶解液に1−ブロモヘキサノール(110mmol)、炭酸カリウム(110mmol)及びヨウ化カリウム(触媒量:炭酸カルシウム1molに対して1mmolの割合)を加えて、100℃で5時間加熱攪拌した。次いで、加熱攪拌を中止して反応を終了せしめた後、得られた反応液を酢酸エチルで抽出し、形成された有機層を1規定の塩酸、飽和食塩水の順で洗浄した。次いで、洗浄後の有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、乾燥剤をろ過により取り除いた後、溶媒を減圧留去した。その後、シリカゲルクロマトグラフィーで目的物(4−シアノー4’−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ビフェニル)を分離、精製した後、クロロホルムとヘキサンで再結晶することにより白色固体状の化合物A(4−シアノー4’−(6−ヒドロキシヘキシルオキシ)ビフェニル)21.3g(72mmol)を得た。
次に、前記化合物A(50mmol)、トリエチルアミン20.7mL(150mmol)、THF30mLをナスフラスコ中で混合し、ヒドロキノン(触媒量:前記化合物1molに対して2mmolの割合)を加えて混合物を得た後、前記ナスフラスコを23℃の水浴に沈め、ナスフラスコ内部の雰囲気を窒素雰囲気とした後に、前記混合物に対して、窒素雰囲気下、攪拌しながら塩化アクリロイル(150mmol)をゆっくりと滴下して反応溶液を得た。このようにして窒素雰囲気下、48時間攪拌を行った後、前記反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を300mL加え、更に30分攪拌を行った。その後、得られた反応溶液をクロロホルムで抽出し、有機層を1規定の塩酸、飽和食塩水の順で洗浄した。次いで、得られた有機層から溶媒を室温で減圧留去し,シリカゲルクロマトグラフィーで目的物(4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニル)を分離精製した後、メタノールで再結晶することにより、4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニル9.8g(28mmol)を得た。なお、このようにして得られた化合物の構造をNMR及びIR測定により確認したところ、下記一般式(4)で表される4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニルであることが確認された。
このようにして得られた4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニルは、上記式(4)からも明らかなように、剛直なシアノビフェニル構造をメソゲンとして有する化合物である。また、示差走査熱量計(DSCエスアイアイ・ナノテクノロジー製DSC6220)を用いて、1℃/分の速度で昇温及び降温を行い、4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4‘−シアノビフェニルからなる液晶相の挙動を確認したところ、液晶性を示さず、昇温過程では69℃で結晶層から等方相へと相転移し、降温過程では53℃で等方相から結晶性へと相転移した。
このようにして得られた4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニル15mmolを35mLのN,N−ジメチルフォルムアミド(DMF)中に添加した後、更に、0.75mmolのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を熱重合開始剤として添加して、70℃の温度条件で6時間攪拌し、反応を進行せしめて重合溶液を得た。次に、反応終了後の前記重合溶液を0.5Lのメタノール中に投入し、ポリマーを析出させ、再度0.5Lのメタノール中で洗浄してから濾別して固形分を得た。次いで、得られた固形分を室温(25℃)で24時間真空乾燥することにより4.7gのポリマーを得た。
このようにして得られたポリマーに対してGPC測定を行ったところ、前記ポリマーの数平均分子量Mnは、ポリスチレン標準で換算したところ、8000g/molであることが確認された。更に、前記ポリマーを示差走査熱量計(DSC)を用いて示差走査熱量分析したところ、昇温過程では38℃においてガラス転移温度を示し、38〜126℃で液晶性を示し、降温過程では124〜29℃まで液晶性を示し、29℃においてガラス転移温度を示した。このように、4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニルは重合後に液晶性を示す化合物であることが分かった。
(実施例1)
先ず、第一の重合性化合物(化合物1)として下記一般式(5):
で表される1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA:東京化成工業社製:2官能メタクリレート)を用い、第二の化合物(化合物2)として合成例1で得られた4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニル(A6CB:1官能アクリレート)を用いて、これらを混合比がモル比([第一の重合性化合物]:[第二の化合物])で2:98となるようにして混合した後、光重合開始剤としてイルガキュア651(BASF社製)を全化合物に対して1モル%となる割合で添加し、ジクロロメタンに一旦溶解してから溶媒を留去することにより、重合性組成物を調製した。
また、第一の重合性化合物と第二の化合物の重合完了時間は、それぞれ、次のようにして測定した。大きさ25mm角、厚さ1.1mmのソーダガラス基板2枚を、100μm厚のポリイミドテープをスペーサーとし、上下の基板の平面部分の重なる領域が縦15mm、横25mmとなるようにして(スペーサーの長辺方向に平行な辺が15mm重なるようにして)貼り合わせて、セル厚100μmのガラスセルを作製した(なお、かかるセルは、スペーサーをガラス基板の平行な縦の2辺(左右)の2箇所に形成し、スペーサーを形成していないガラス基板の部分はそれぞれ開口部とし、セル内部の大きさを縦15mm、横10mm、厚み100μmとした。)。次に、重合完了時間を測定するための化合物に対して、光重合開始剤イルガキュア651を含有量が1mol%となるようにして混合した混合物を準備した。次いで、前記ガラスセルをホットステージ(メトラートレド社製の商品名「FP−90、FP−82HT」)上に設置した後、100℃の温度条件で前記混合物を融解させつつ毛細管現象により、前記ガラスセル中に前記混合物(光重合開始剤イルガキュア651を1mol%含む)をセル内部が満たされるまで注入した後、85℃まで0.5℃/分の速度で降温し、85℃で3分保持して重合性組成物の膜(膜の大きさ:縦1.5cm、横1.0cm、厚み100μm)を得た。次いで、前記膜に、高圧水銀灯からフィルターで取り出した366nmの光を、1.9mW/cmの強度で照射して光重合させた。このような光重合を開始後、光を5秒、15秒、30秒、及び60秒間照射した後に、それぞれ前記膜を前記ガラスセルから取り出し、表面をクロロホルムで洗浄してフィルムの形成状態を目視で確認した。前記第一の重合性化合物(HDDMA)は、照射時間30秒でフィルムの形成が確認され、重合完了時間は15秒超30秒以下の間であることが確認され、前記第二の化合物(A6CB)は、照射時間60秒でフィルムの形成が確認され、重合完了時間は30秒超60秒以下の間にあることが確認された。
次に、大きさ25mm角、厚さ1.1mmのソーダガラス基板2枚を、直径2μmのシリカ粒子を混合したエポキシ系接着剤をガラス基板の左右の端部(左右の平行な2辺)に縦25mm、幅2.5mmで塗って、貼り合わせることでセル厚2μmのガラスセル(該接着剤はスペーサーとしても機能する。該接着剤を塗っていない部分はそれぞれ開口部とした。)を作製した。なお、前記ソーダガラス基板は、中性洗剤、イオン交換水、アセトン、イソプロパノールの順に超音波洗浄を行った後、UVオゾン処理を行ったものを使用した。
次いで、前記ガラスセルをホットステージ(メトラートレド社製の商品名「FP−90、FP−82HT」)上に設置した後、150℃の温度条件で重合性組成物を融解させつつ前記ガラスセルの一方の開口部から、前記ガラスセル中に毛細管現象により重合性組成物を開口部から2分間かけて注入した後、120℃まで降温した後、120℃で3分保持して重合性組成物の膜(膜の大きさ:縦20mm、横20mm、厚み2μm)を得た。次に、120℃の温度条件を維持しつつ、縦:30mm、横30mmの正方形の形状のフォトマスクを、前記ガラスセル中の前記膜の全体を覆うように(遮光部に膜が入るように)配置した。次いで、光源から光の照射を開始し、光を照射しながら、前記ガラスセル中の膜に光が照射されるように、前記フォトマスクを20μm/sで移動させることで膜の一部の領域から重合を開始し、そのまま光照射領域と光の未照射領域の境界が未照射領域に向けて20μm/sで移動するようにフォトマスクを移動させ続けて、120℃の温度条件下(加熱条件下)で光重合を行った。ここで、このようなフォトマスクを移動させる工程を図8を参照して説明すると、フォトマスクを移動させる前のセルのソーダガラス基板12上の露光部A1を縦:5mm、横25mmの長方形の領域とし(該領域は重合性組成物を注入していない側の開口部から縦に5mmの領域となっており、その領域中に前記膜は存在していない。また、ここにいう縦方向は、図中の矢印Aの示す方向をいう。)、また、フォトマスクの移動方向は、図8(a)〜(b)に示すように、光照射領域A1の境界Sと垂直な方向(図中の矢印Aに示す方向)とした。なお、図8は、光源側(照射する光の光軸方向)から基板及びフォトマスクを見た状態を模式的に示す概略平面図である。また、このような光重合においては、光源として高圧水銀灯(ウシオ社製の商品名「SX−UI501HQ」)を用い、照度1.2mW/cm(ピーク波長:366nm)の紫外光を照射した。このようにして、一部の領域から重合を開始して、重合領域と未重合領域の境界を移動させながら前記重合性組成物を重合し、前記膜状の重合性組成物の全領域に光を照射して光重合を行った。このようにして前記膜状の重合性組成物にフォトマスクを移動させながら光を照射して光重合を行った後に、120℃の温度条件で5分間、照度1.2mW/cm(ピーク波長:366nm)の紫外光を照射させることにより前記膜の重合を完了させる後重合を行った。次いで、このような後重合を行った後の膜の温度を120℃から150℃に昇温させて3分間保持することで、液晶性化合物が等方相となるような温度に保持した後、150℃から重合時に採用した加熱温度と同温(120℃)になるまで降温(冷却)させた。
その後、ガラスセルをホットステージに設置したまま、ガラスセル中の重合膜を、冷却速度(降温速度:冷却の瞬間速度)が1℃/分(ほぼ一定)となるようにホットステージの温度を調整しながら、重合時に採用した加熱温度(フォトマスクを移動させながら光を照射して光重合した際に採用していた温度)と同温である120℃〜室温(25℃)になるまで冷却した。なお、120℃〜60℃までの冷却速度(瞬間速度)及び120℃〜室温(25℃)になるまでの冷却速度(瞬間速度)は、ともに、ガラスセルに熱電対を貼りつけ、キーエンス社製の商品名「データロガーGR−3500」で測定したところ、1℃/分(ほぼ一定)であった。なお、このような120℃〜室温(25℃)になるまでの冷却速度は、常に0.1〜30℃/分の範囲内の速度であった。このようにして室温まで冷却した後に、ガラスセルをホットステージから取り出してガラスセル中に形成されたフィルム(色:白色)を得た。得られたガラスセル中に形成されたフィルム(薄膜)の写真を図12に示す。
このようにして得られたフィルムの特性を確認するため、偏光顕微鏡(オリンパス社製の商品名「BX50」)により直交に配置した2枚の偏光板の間に前記ガラスセルを挿入し、かかる2枚の偏光板を直交配置のまま回転させながら測定した。このような測定の結果として、2枚の偏光板(アナライザ及びポラライザ)を直交配置のまま回転させた場合のアナライザの振動方向とフォトマスクの移動方向とのなす角度が45°である場合におけるフィルムの偏光顕微鏡写真を図13に示し、2枚の偏光板を直交配置のまま回転させ、フィルム膜厚方向に焦点を変え、アナライザの振動方向と前記フォトマスクの移動方向が平行となる方向に設定した際のフィルムの偏光顕微鏡写真を図14に示し、さらに2枚の偏光板を直交配置のまま回転させ、フィルム膜厚方向に焦点を変え、アナライザの振動方向とフォトマスクの移動方向とのなす角度が45°である場合におけるフィルムの偏光顕微鏡写真を図15に示す。なお、図13〜図15中、ANは検光子(アナライザ)の振動方向を示し、POは偏光子(ポラライザ)の振動方向を示し、Aはフォトマスクの移動方向を示す。また、得られたフィルムに対して、検板を利用することにより偏光顕微鏡を用いてフィルムの状態を測定した。このような測定の結果として、検板の光学軸の方向を変化させた場合におけるフィルムの状態の偏光顕微鏡写真を図16〜18に示す。なお、図13に示すフィルムと図16に示すフィルムとが、顕微鏡に対して同じ向きにフィルムをセットして測定されたものであり、図14に示すフィルムと図17に示すフィルムとが、顕微鏡に対して同じ向きにフィルムをセットして測定されたものであり、図15に示すフィルムと図18に示すフィルムとが、顕微鏡に対して同じ向きにフィルムをセットして測定されたものである。なお、図16〜18中、Oは検板の光学軸の方向を示す。
図13〜18に示す偏光顕微鏡写真からも明らかなように、重合進行方向(フォトマスクの移動方向)と垂直な方向に明暗のストライプ状のパターンが確認され、図13〜図15に示す結果からはフィルム膜厚方向に焦点を変えることで異なるテクスチャーが確認できることが分かった。また図16〜図18に示すように、検板を用いて各層における分子の配向方向を調べたところ、フォトマスクの移動方向に対して分子が平行に配向している層と垂直に配向している層が交互に形成されており、その中間層では分子が斜めに配向していることが明らかとなった。
また、図13〜18に示す偏光顕微鏡写真の結果からも明らかなように、ガラスセル面と垂直方向から見た場合、図13及び図16に示す結果からは、重合進行方向(フォトマスクの移動方向)に配列した液晶分子が確認され(図13及び図16に示す測定結果により確認された液晶分子の配列方向を概念的に示す図面を図19に示す。)、図14及び図17に示す結果から重合進行方向(フォトマスクの移動方向)に対してなす角度が45°となるように配列した液晶分子が確認され(図14及び図17に示す測定結果により確認された液晶分子の配列方向を概念的に示す図面を図20に示す。)、図15及び図18に示す結果から重合進行方向(フォトマスクの移動方向)に対して垂直な方向に配列した液晶分子が確認された(図15及び図18に示す測定結果により確認された液晶分子の配列方向を概念的に示す図面を図21に示す。)。このような結果から、得られたフィルムにおいては、重合進行方向で隣接する液晶分子の配向方向が段階的に変化する構造が形成されていることが分かり、得られたフィルム中には図6〜7に示すようなシリンダー状の配向構造が形成されていると考えられる結果が得られた。
また、このようにして得られたフィルム上の任意の3点の測定点に対して、それぞれ、波長633nmのヘリウムネオンレーザー(He−Neレーザー、MELLES GRIOT社製の商品名「05−LHR−151」)を照射し、ガラスセルと平行に配置されたスクリーン上に回折光を投射し、その投射された回折光の測定を行った。なお、このような測定に際しては、ガラスセルとスクリーンとの間に集光用のレンズ(直径30mm、焦点距離40mmの片凸レンズ)を設置し、検出器に回折光を集光させた。このようなガラスセル上の測定点のうちの任意の1点に関して、スクリーン上に投射された回折光のパターンの写真を図22に示す。このようなスクリーン上に投射された回折光のパターン(回折像)から、縦方向、横方向(重合領域と未重合領域の境界の移動方向)に光が回折していることが確認された。
また、光の強度の測定装置として日置電機社製の商品名「光パワーメータ3664」及び商品名「光センサ9742」を用い、上記3点の各測定点に関して、1次回折光の強度のピークを測定したところ、回折光強度のピークの平均値は0.90mWであった。なお、重合後の冷却の方法を液体窒素に5秒間浸漬することにより急冷させる方法に変更した以外は上記光学フィルムと同様の製造方法を採用して得られた透過光測定用フィルム(均一配向を固定化することで周期構造が全く発生していない透明なサンプル:後述の比較例1で得られた透明フィルム)を用い、1次回折光の強度のピークを測定した方法と同様にして、透過光測定用フィルムの透過光の強度の平均値を測定すると、その透過光強度の平均値は5.72mWとなっていた。このような1次回折光の強度のピークの平均値と透過光強度の平均値の結果から、前述の式(1)に基づいて回折効率(%)を求めたところ、回折効率(E)は15.7%となった。このような高い回折効率が確認されたことから、得られたフィルム中には、十分に高い周期性を有する周期構造が形成されていることが分かった。また、回折光の強度の測定の際に、前述のようにして格子周期も算出したところ、格子周期は1.14μmとなっていた。なお、図12に示すフィルム(薄膜)の写真からも明らかなように、得られたフィルムは全面に亘って光の散乱が見られることが確認された
以上の結果から、実施例1で得られたフィルムにおいては、十分な回折効率が得られ、十分に高度な周期性を有する周期構造が形成されていることが確認された。このような結果から、実施例1で得られたフィルムは、周期構造を有する光学フィルムとなっていることが分かった。得られた結果を表1に示す。
(実施例2)
ガラスセル中の重合膜を冷却する際に、120℃〜室温(25℃)になるまでの冷却速度及び120℃〜60℃までの冷却速度(ホットステージの温度を調整しながら、ガラスセルに熱電対を貼りつけ、キーエンス社製の商品名「データロガーGR−3500」で測定した値:瞬間速度)をともに、1℃/分(ほぼ一定)から10℃/分(ほぼ一定)に変更した以外は、実施例1と同様にしてガラスセル中に形成されたフィルム(色:白色)を得た。なお、このような120℃〜室温(25℃)になるまでの冷却速度は、常に0.1〜30℃/分の範囲内の速度であった。このようにして得られたガラスセル中に形成されたフィルム(薄膜)の写真を図23に示す。
また、このようにして得られたフィルム上の任意の3点の測定点に対して、実施例1と同様にして回折光の測定を行った。このようなフィルム上の測定点のうちの任意の1点に関して、スクリーン上に投射された回折光のパターンの写真を図24に示す。このようなスクリーン上に投射された回折光のパターン(回折像)から、横方向(重合移動方向:重合領域と未重合領域の境界の移動方向)に特に強い回折が確認され、得られたフィルムには格子状の周期構造が形成されていることが分かった。また、測定装置として日置電機社製の商品名「光パワーメータ3664」及び商品名「光センサ9742」を用い、各測定点に関して回折光強度のピークを測定したところ、回折光強度のピークの平均値は0.522mWであることが確認され、更に、実施例1と同様にして回折効率(%)を求めたところ、回折効率は9.1%であることが分かった。このような高い回折効率が確認されたことから、得られるフィルムにおいては、十分に高い周期性を有する周期構造が形成されていることが分かった。また、前述のようにして、格子周期を算出したところ、格子周期は1.14μmとなっていた。
また、偏光顕微鏡(オリンパス社製の商品名「BX50」)を用いて観察することにより、得られたフィルムの構造を確認した。得られた偏光顕微鏡写真を図25に示す。図25に示す偏光顕微鏡写真からも明らかなように、フォトマスクの移動方向(図25の左から右に向かう方向であって、図25中の矢印POと垂直な方向)において、2μmの長さに2本の格子状の周期構造が確認され、偏光顕微鏡にて確認された格子周期は1.0μmとなり、上記算出値とほぼ一致した。このような偏光顕微鏡による測定によっても、得られたフィルム中に格子状の周期構造(いわゆるシリンダー状の周期構造)が形成されていることが確認された。なお、図23に示すフィルム(薄膜)の写真からも明らかなように、得られたフィルムは全面に亘って光の散乱が見られることが確認された。
以上の結果から、実施例2で得られたフィルムにおいては、十分に高度な周期性を有する周期構造が形成されていることが確認された。このような結果から、実施例2で得られたフィルムは、周期構造を有する光学フィルムとなっていることが分かった。得られた結果を表1に示す。
(比較例1)
ガラスセル中の重合膜を冷却する際に、冷却速度(降温速度)を1℃/分(ほぼ一定)で室温(25℃)まで冷却する代わりに、ガラスセルをホットステージから取り出し、液体窒素中に5秒間浸漬させて、液体窒素によりガラスセル中の膜を急冷し、その後、冷却後のガラスセルを液体窒素中から取り出して膜の温度を室温(25℃)とした以外は、実施例1と同様にしてガラスセル中に形成されたフィルム(色:無色透明)を得た。得られたガラスセル中に形成されたフィルム(薄膜)の写真を図26に示す。
このようにして得られたフィルムの特性を確認するため、直交に配置した2枚の偏光板の間に前記ガラスセルを挿入し、かかるガラスセルを回転させながら観察したところ、暗視野と明視野を有し、得られたフィルムは、約20mm角の領域で、ほぼ均一に配向した配向性フィルムであることが確認された。なお、暗視野となる方向は、直交に配置した2枚の偏光板の吸収軸に対して、フォトマスク移動方向と平行又は垂直の方向であった。
また、このようにして得られたフィルム上の任意の3点の測定点に対して、実施例1と同様にして回折光の測定を行った。このようなフィルム上の測定点のうちの任意の1点に関して、スクリーン上に投射された光のパターンの写真を図27に示す。このようなスクリーン上に投射された光のパターン(光の投射像)からは光の回折が確認されず、得られたフィルムには周期構造が何ら形成されていないことが分かった。なお、測定装置として日置電機社製の商品名「光パワーメータ3664」及び商品名「光センサ9742」を用い、かかるフィルムの任意の3点の測定点における透過光の強度の平均値を求めたところ、該フィルムの透過光の強度の平均値は5.72mWであった。
以上の結果から、比較例1で得られたフィルムにおいては、液晶性を有する化合物(A6CBに由来する構造単位を有する重合物)が配向するものの、周期構造は形成されないことが確認された。得られた結果を表1に示す。
(比較例2)
ガラスセル中の重合膜を冷却する際に、冷却速度(降温速度)を1℃/分(ほぼ一定)として室温(25℃)まで冷却する代わりに、ガラスセルをホットステージから取り出し、5℃の冷蔵庫内の冷気(庫内の雰囲気ガス)にセルの全面が接触できるように、ガラスセルを冷蔵庫内に吊り下げて配置し、光重合後の膜を冷気中(空気中)で冷却し、その後、そのままの条件で、冷蔵庫内で室温(25℃)まで冷却した以外は、実施例1と同様にしてガラスセル中に形成されたフィルム(色:白色で部分的に透明)を得た。なお、ガラスセル中の膜の温度が120℃〜60℃となるまでの時間を測定して、温度差60℃(120℃−60℃)を、測定された時間により割ることで求めた平均冷却速度は37℃/分(なお、膜の温度自体はガラスセルに熱電対を貼りつけ、キーエンス社製の商品名「データロガーGR−3500」で測定した。)であった。このようにして得られたガラスセル中に形成されたフィルム(薄膜)の写真を図28に示す。
このようにして得られたフィルムの特性を確認するため、直交に配置した2枚の偏光板の間に前記ガラスセルを挿入し、かかるガラスセルを回転させながら観察したところ、一部の領域で暗視野と明視野を有し、得られたフィルムは、約20mm角の領域で、部分的に配向し、一部の領域である程度の周期性があることが分かった。なお、暗視野となる方向は、直交に配置した2枚の偏光板の吸収軸に対して、平行又は垂直の方向であった。
また、このようにして得られたフィルム上の任意の3点の測定点に対して、実施例1と同様にして回折光の測定を行った。このようなフィルム上の測定点のうちの任意の1点に関して、スクリーン上に投射された回折光のパターンの写真を図29に示す。このようなスクリーン上に投射された回折光のパターン(回折像)から、縦方向、横方向(重合移動方向)に回折光は確認できるものの、測定装置として日置電機社製の商品名「光パワーメータ3664」及び商品名「光センサ9742」を用い、各測定点に関して1次回折光強度のピークを測定したところ、1次回折光強度のピークの平均値は0.025mWであり、実施例1と同様にして回折効率を算出したとこと、得られたフィルムの回折効率(%)は0.4%となっていた。このような結果から、得られたフィルムにおいては周期性が十分に確認されず、回折効率は5%以上となるような周期構造が形成されていないことが分かった。なお、十分な周期性を有する周期構造は形成されていないものの、確認された回折光からフィルムの格子周期を算出してみたところ、格子周期は1.14μmとなっていた。また、図28に示すフィルム(薄膜)の写真からも明らかなように、得られたフィルムにおいては光の散乱(白色)が全面には確認されなかった。
以上の結果から、比較例2で得られたフィルムにおいては、液晶性を有する化合物(A6CBに由来する構造単位を有する重合物)が配向するものの、回折効率は5%以上となるような周期構造は形成されていないことが確認された。得られた結果を表1に示す。
上述のような結果からも明らかなように、実施例1〜2で得られたフィルムにおいては、十分に高度な周期性を有する周期構造が形成された光学フィルムが形成されていることが確認され、本発明の光学フィルムの製造方法によれば、周期構造がフィルム中に形成された光学フィルムを製造する際に、ミクロンオーダーの直線状の溝をフィルムに機械的に彫り付ける方法や、フォトリソグラフィ等の光学的な方法等を採用することなく、より簡便に周期構造を有する光学フィルムを製造することが可能であることが分かった。
以上説明したように、本発明によれば、十分に高度な周期性を有する周期構造が形成された光学フィルムをより簡便に製造することが可能な、周期構造を有する光学フィルムの製造方法を提供することが可能となる。このように、本発明の周期構造を有する光学フィルムの製造方法は、全面に亘って均一に周期構造を形成することが可能であるため、例えば、回折格子やフォトニック結晶を成長させるためのテンプレート等に利用するための周期構造を有する光学フィルムを製造するための方法として特に有用である。
11:光源、12:基板、13:重合性組成物からなる膜、14:フォトマスク、14A:開口部、X:開口部14Aの短辺の長さ、Y:開口部14Aの長辺の長さ、S:重合領域の境界、A:重合領域の境界Sを移動させる方向を概念的に示す矢印、P:重合領域の境界Sに垂直な方向を概念的に示す矢印、L:光源から照射される光、A1:光が照射されて重合された領域(重合領域:露光部)、A2:光が照射されていない未重合の領域(未重合領域:遮光部)、A3:配向が形成されている領域、A4:1つの渦状の配列が形成されている領域、D:周期構造の格子周期(一つの周期の幅)、AN:検光子(アナライザ)の振動方向、PO:偏光子(ポラライザ)の振動方向、O:検板の光学軸の方向。

Claims (6)

  1. 第一の重合性化合物と、同一条件で重合させた場合に前記第一の重合性化合物よりも重合完了時間が長い第二の化合物とを含有し、且つ、前記第一の重合性化合物、前記第二の化合物及び重合後に得られる化合物のうちの少なくとも1種が液晶性を示す化合物である、重合性組成物からなる膜を用いて、
    重合時に前記膜を80〜150℃の加熱温度で加熱する温度条件下において、前記膜の一部の領域から露光して前記重合性組成物の重合を開始し、前記液晶性を示す化合物が配向する1×10−7〜4×10−1m/sの速度で露光領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて、前記膜の全領域を光重合により重合する工程と、重合後の膜の温度が少なくとも前記重合時に採用した加熱温度と同じ温度から60℃になるまでの間、0.8〜12℃/分の冷却速度で冷却する条件で、前記重合後の膜を冷却して、周期構造を有する光学フィルムを得る工程を含むこと、
    を特徴とする、周期構造を有する光学フィルムの製造方法。
  2. 前記周期構造を有する光学フィルムが、
    該光学フィルムの任意の3点以上の測定点に対してそれぞれ波長633nmのヘリウムネオンレーザーを垂直な方向から照射したときに測定される1次回折光の回折強度の平均値Isと、
    第一の重合性化合物と、同一条件で重合させた場合に前記第一の重合性化合物よりも重合完了時間が長い第二の化合物とを含有し、且つ、前記第一の重合性化合物、前記第二の化合物及び重合後に得られる化合物のうちの少なくとも1種が液晶性を示す化合物である、重合性組成物からなる膜を用いて、重合時に前記膜を80〜150℃の加熱温度で加熱する温度条件下において、前記膜の一部の領域から露光して前記重合性組成物の重合を開始し、前記液晶性を示す化合物が配向する1×10−7〜4×10−1m/sの速度で露光領域の境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させて、前記膜の全領域を光重合により重合する工程と、前記冷却の際に、前記冷却速度で冷却する方法を採用せずに、重合後の膜を液体窒素に5秒間浸漬して前記重合後の膜を冷却し、透過光測定用のフィルムを得る工程とを含む光学フィルムの製造方法を採用して得られる透過光測定用のフィルムの任意の3点以上の測定点に対してそれぞれ波長633nmのヘリウムネオンレーザーを垂直な方向から照射したときに測定される透過光の強度の平均値Irと、
    に基いて、下記式(1):
    [E]=([Is]/[Ir])×100 (1)
    [式(1)中、Isは前記光学フィルムの1次回折光の回折強度の平均値(単位:mW)を示し、Irは透過光測定用のフィルムの透過光の強度の平均値(単位:mW)を示し、Eは回折効率(単位:%)を示す。]
    を計算して求められる回折効率が5%以上となる光学フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の周期構造を有する光学フィルムの製造方法。
  3. 前記第一の重合性化合物が1以上の重合性官能基を有する化合物であり、且つ、該重合性官能基の数が前記第二の化合物の有する重合性官能基の数より1以上大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の周期構造を有する光学フィルムの製造方法。
  4. 前記境界を未重合の領域に向けて連続的に移動させるために、光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の周期構造を有する光学フィルムの製造方法。
  5. 前記光重合の際にフォトマスクを利用し、該フォトマスクを連続的に移動させることにより前記光の照射領域の境界を光の未照射の領域に向けて連続的に移動させることを特徴とする請求項4に記載の周期構造を有する光学フィルムの製造方法。
  6. 前記第一の重合性化合物が1,6−ヘキサンジオールジメタクリレートであり、且つ、
    前記第二の化合物が4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニルであること、
    を特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の周期構造を有する光学フィルムの製造方法。
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