JP6386954B2 - 表面形状測定装置及び表面形状測定方法 - Google Patents

表面形状測定装置及び表面形状測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、干渉縞を利用して、非接触で表面形状を測定する技術に関する。
測定面に照射された光の反射光と参照面に照射された光の反射光とを干渉させることによって生成される干渉縞の位相を利用して、測定面の表面形状を非接触で測定する技術が知られている。この測定技術によれば、ナノメートルオーダー以下の測定精度を実現でき、例えば、半導体ウェハの表面形状の測定に用いられている。
上記測定技術において、干渉縞の位相を算出する方法として、位相シフトを利用する方法(例えば、特許文献1参照)、フーリエ変換を利用する方法(例えば、特許文献1、特許文献2参照)、相関積分を利用する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
位相シフトを利用する方法では、測定面と参照面との距離を変えて、複数枚の干渉縞の画像を撮影する必要がある。測定面と参照面との距離を調整中に、外乱振動等により測定面及び参照面が振動していれば、測定面と参照面との距離を正確に設定することができない。これが原因で、表面形状の測定精度が低下することがある。
フーリエ変換を利用する方法では、一枚の干渉縞の画像で位相の算出が可能なので、外乱振動等により測定面及び参照面が振動しても、表面形状の測定精度が低下することはない。
しかし、フーリエ変換を利用する方法には、以下の欠点がある。
(1)干渉縞が途切れる箇所(例えば、測定面の端部に対応する箇所)では、干渉縞の空間周波数が特異となるので、フーリエ変換を利用する方法では、その箇所での干渉縞の位相を解析することが困難である。従って、干渉縞が途切れる箇所の形状は、測定が不能又は測定精度が低下する。
(2)フーリエ変換を利用する方法では、干渉縞の画像全体をフーリエ変換する処理がされる。従って、測定面の局所にゴミ等の異物が存在すれば、異物を含めて解析されることになるので、測定精度が低下する。
相関積分を利用する方法では、干渉縞の局所から干渉縞の位相を算出するので、(1)及び(2)の欠点を解消することが可能となる。
特開2007−333428号公報(段落0011、0017) 特開2002−296003号公報
S.TOYOOKA and M.TOMINAGA(S.トヨオカとM.トミナガ)、「SPATIAL FRINGE SCANNING FOR OPTICAL PHASE MEASUREMENT(光学位相測定のための空間的なフリンジスキャンニング)」、OPTICS COMMUNICATIONS(光学通信)、Volume 51、number 2、 15 August 1984、第68頁〜第70頁
非特許文献1に記載された相関積分を利用して干渉縞の位相を算出しているが、干渉縞の空間周波数が所定の空間周波数に、ほぼ一致する条件のみで有効である。試料面が曲面である場合、試料面内で干渉縞の空間周波数が変化するため、測定毎に、参照面に対する測定面の傾きを調整する必要がある。
本発明の目的は、測定面及び参照面の少なくとも一方が傾斜された状態で生成される干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てられる画素数に誤差が生じても、測定面の表面形状を正確に測定できる表面形状測定装置及び表面形状測定方法を提供することである。
本発明の一局面に係る表面形状測定装置は、測定面及び参照面を通る光軸を有し、前記光軸と直交する面に対して、前記測定面及び前記参照面の少なくとも一方が傾斜された状態で、前記測定面に照射された光の反射光と前記参照面に照射された光の反射光とを干渉させることによって干渉縞を生成する光学系と、前記光学系によって生成された前記干渉縞の二次元画像を撮影する撮像素子と、前記干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てる前記撮像素子の画素の数を4としたときに、前記干渉縞の二次元画像の撮影によって前記撮像素子のn番目の画素から出力される受光信号の予測値Pを示す予測関数を、A1、B、β、φを未定係数とする下記式とし、前記撮像素子の連続する複数の画素において、前記未定係数が等しいと見なし、前記式、及び、前記干渉縞の二次元画像の撮影によって前記n番目の画素を含む連続する複数の画素のそれぞれから出力された受光信号の実測値を用いて、前記未定係数の解を算出する第1の算出部と、前記第1の算出部によって算出された前記未定係数の解のうち、位相を示す前記φの解を用いて、前記n番目の画素に対応する前記測定面の箇所の高さを算出する第2の算出部と、を備え、前記第1の算出部は、前記撮像素子を構成する所定数の画素のそれぞれについて、前記未定係数の解を算出し、前記第2の算出部は、前記所定数の画素のそれぞれの前記φの解を用いて、前記所定数の画素のそれぞれに対応する前記測定面の箇所の高さを算出する。

(ここで、nは、整数を示し、ωは、空間周波数を示す。)
撮像素子を構成する各画素は、有限の開口を有するので、各画素から出力される受光信号の強度は、各画素の大きさに依存する。画素が大きければ、その画素から出力される受光信号の強度が大きくなり、画素が小さければ、その画素から出力される受光信号の強度が小さくなる。干渉縞は、空間的な強度分布を有しており、干渉縞の密度が高い場合、特に、各画素から出力される受光信号の強度は、各画素の大きさに依存する。
本発明の第1の局面では、4つの画素で干渉縞の1波長成分を検出すると見なし、予測値Pを示す予測関数の上記式を導いている。そして、本発明の第1の局面は、上記式及び干渉縞の受光信号の実測値から、上記式の未定係数を算出することにより、位相φを算出している。従って、本発明の第1の局面によれば、測定面及び参照面の少なくとも一方が傾斜された状態で生成された干渉縞について、この干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てられる画素数に誤差が生じても、測定面の表面形状を正確に測定できる。
そして、本発明の第1の局面によれば、干渉縞の局所毎に、そこでの干渉縞の位相を計算するので、干渉縞が途切れる箇所(例えば、測定面の端部に対応する箇所)や測定面の局所にゴミ等の異物が存在しても、測定面の表面形状を正確に測定できる。なお、複数の画素の「複数」とは、未定係数を算出するのに必要が数であり、「所定数」は、撮像素子の全画素数以下の任意の値である。
上記構成において、前記測定面を有する試料が載置されるステージと、前記撮像素子による撮影視野より広い前記干渉縞を、隣り合う領域が部分的に重なるように、前記撮影視野より狭い複数の前記領域に分割する分割部と、前記ステージを移動させることにより、前記撮影視野に複数の前記領域を順番に移動させるステージ制御部と、前記撮影視野に移動してきた前記領域の二次元画像を前記撮像素子に撮影させる撮像制御部と、前記部分的な重なりを目印にして、複数の前記領域の二次元画像をつなげて、前記干渉縞の二次元画像を生成する画像生成部と、をさらに備える。
この構成によれば、測定面の面積が大きい場合でも、測定面の表面形状を測定する精度を高めることができる。
上記構成において、前記光学系及び前記撮像素子を含むフィゾー干渉計を備える。
この構成によれば、フィゾー干渉計で干渉縞の二次元画像を撮影するので、フィゾー干渉計の利点を利用して、測定面の表面形状を測定できる。フィゾー干渉計の利点とは、例えば、測定光の光路と参照光の光路とが、概ね共通しているので、光学系内の空気の揺らぎ等の外乱の影響を受けにくい。
本発明の第2の局面に係る表面形状測定方法は、測定面及び参照面を通る光軸を有し、前記光軸と直交する面に対して、前記測定面及び前記参照面の少なくとも一方が傾斜された状態で、前記測定面に照射された光の反射光と前記参照面に照射された光の反射光とを干渉させて、干渉縞を生成する生成ステップと、前記生成ステップによって生成された前記干渉縞の二次元画像を、撮像素子を用いて撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップによって撮影される前記干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てる前記撮像素子の画素の数を4としたときに、前記干渉縞の二次元画像の撮影によって前記撮像素子のn番目の画素から出力される受光信号の予測値Pを示す予測関数を、A1、B、β、φを未定係数とする下記式とし、前記撮像素子の連続する複数の画素において、前記未定係数が等しいと見なし、前記式、及び、前記干渉縞の二次元画像の撮影によって前記n番目の画素を含む連続する複数の画素のそれぞれから出力された受光信号の実測値を用いて、前記未定係数の解を算出する第1の算出ステップと、前記第1の算出ステップによって算出された前記未定係数の解のうち、位相を示す前記φの解を用いて、前記n番目の画素に対応する前記測定面の箇所の高さを算出する第2の算出ステップと、を備え、前記第1の算出ステップは、前記撮像素子を構成する所定数の画素のそれぞれについて、前記未定係数の解を算出し、前記第2の算出ステップは、前記所定数の画素のそれぞれの前記φの解を用いて、前記所定数の画素のそれぞれに対応する前記測定面の箇所の高さを算出する。

(ここで、nは、整数を示し、ωは、空間周波数を示す。)
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面と同様の作用効果を有する。
本発明によれば、測定面及び参照面の少なくとも一方が傾斜された状態で生成される干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てられる画素数に誤差が生じても、測定面の表面形状を正確に測定できる。
第1実施形態に係る表面形状測定装置の構成を示すブロック図である。 撮像素子によって撮影された干渉縞の二次元画像の一例を示す撮影図である。 図2に示される干渉縞の二次元画像の一部の拡大図である。 βがωの20%となる条件で生成された干渉縞の波形を示す波形図である。 図4に示す干渉縞の波形について、非特許文献1に開示された方法を用いて、位相を算出した結果を示すグラフである。 図5に示すグラフから直線的な位相変化を引いた結果を示すグラフである。 撮像素子の一つの画素を示す模式図である。 撮像素子の連続する4つの画素である画素n、画素n+1、画素n+2、画素n+3を示す模式図である。 干渉縞の波形の第1例を示す波形図である。 測定面のある箇所の位相のデータを示すグラフである。 図10に示すデータに対応する干渉縞の波形を示す波形図である。 図11に示される受光信号の値(実測値)及び連立方程式F,Fn+1,Fn+2を用いて位相を算出した結果を示すグラフである。 図11に示される受光信号の値(実測値)及び非特許文献1に開示された方法を用いて位相を算出した結果を示すグラフである。 第1実施形態の変形例に係る表面形状測定装置の構成を示すブロック図である。 第2実施形態に係る表面形状測定装置の構成を示すブロック図である。 分割部によって、複数の領域に分割された干渉縞の一例を説明する説明図である。 二つの領域の二次元画像をつなげる方法を説明する説明図である。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、第1実施形態に係る表面形状測定装置1aの構成を示すブロック図である。表面形状測定装置1aは、カメラ2、レーザ光源3、ステージ装置4、ステージ制御部5、光学系6及びコンピュータ7を備える。カメラ2、レーザ光源3、ステージ装置4、ステージ制御部5及び光学系6によって、フィゾー干渉計が構成されている。
カメラ2は、二次元イメージセンサ(例えば、CCDイメージセンサ又はCMOSイメージセンサ)からなる撮像素子20を含むデジタルカメラである。カメラ2に近い順番で、カメラ2の光軸上に、レンズ60、ビームスプリッタ61、レンズ62、平板ガラス63及びステージ装置4が配置されている。カメラ2の光軸は、光学系の光軸66と一致している。
レーザ光源3は、例えば、波長633nmの光を出射するHeNeレーザである。レーザ光源3の光軸は、カメラ2の光軸と交差している。レーザ光源3に近い順番で、レーザ光源3の光軸上に、レンズ64及びビームスプリッタ61が配置されている。
ステージ装置4は、ステージ40、駆動部41及びベース部42を備える。ステージ40には、測定面90を有する試料9が載置される。ステージ40は、駆動部41を介してベース部42に支持されている。駆動部41(例えば、ピエゾ素子)は、ステージ40の傾斜角の制御に用いられる。
ステージ制御部5は、コンピュータ7から送信されてきたステージ40の傾斜角の設定値に基づいて、駆動部41を制御して、ステージ40の傾きを制御する。
光学系6は、上述したレンズ60、ビームスプリッタ61、レンズ62、平板ガラス63及びレンズ64を備える。光学系6は、後で説明するように、測定面90及び参照面(平板ガラス63の上面65)を通る光軸66を有し、光軸66と直交する面(図1では水平面)に対して、測定面90及び参照面の少なくとも一方が傾斜された状態で、測定面90に照射された光の反射光(測定光)と参照面に照射された光の反射光(参照光)とを干渉させることによって干渉縞を生成する。この干渉縞は、撮像素子20によって撮影される。
コンピュータ7は、撮像素子20で撮影された干渉縞の二次元画像を解析して、測定面90の表面形状を算出する。
コンピュータ7は、制御部70、入力部71及び出力部72を備える。
制御部70は、CPU、RAM及びROM等により構成され、機能ブロックとして、第1の算出部73及び第2の算出部74を備える。第1の算出部73及び第2の算出部74については、後で詳しく説明する。
入力部71は、外部からコマンド(命令)やデータ等を制御部70に入力するための装置であり、例えば、タッチパネルやキーボード等である。
出力部72は、入力部71から制御部70に入力されたコマンドやデータ及び制御部70で演算された測定面90の表面形状等を出力するための装置であり、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)の表示装置や、例えば、プリンタ等の印刷装置である。
干渉縞の生成について説明する。レーザ光源3からレンズ64に向けて出射された光は、レンズ64で発散光となる。この発散光の一部は、ビームスプリッタ61でレンズ62に向けて反射され、レンズ62で平行光束にされる。平行光束は、平板ガラス63に照射される。平板ガラス63の下面は、無反射コーティングがされている。平板ガラス63に照射された平行光束の一部は、平板ガラス63の上面65で反射され、残りは、平板ガラス63を透過する。
平板ガラス63を透過した光は、測定面90に照射される。これにより測定面90で反射された反射光(以下、測定光)は、平板ガラス63、レンズ62、ビームスプリッタ61及びレンズ60を通り、撮像素子20に送られる。
一方、平板ガラス63の上面65で反射された反射光(以下、参照光)は、レンズ62、ビームスプリッタ61及びレンズ60を通り、撮像素子20に送られる。平板ガラス63の上面65は、参照面として機能する。
平板ガラス63の上面65(参照面)は、水平である。測定面90を有する試料9は、光軸66と直交する面に対して傾斜しているステージ40に載置されているので、測定面90は、傾斜している。このため、測定光と参照光との光路差により、測定光と参照光とが干渉し合うことによって(強め合ったり、打ち消し合ったりすることによって)、干渉縞が生成される。なお、参照面を、光軸66と直交する面に対して傾斜させることによって、干渉縞を生成してもよいし、測定面90と参照面の両方を、光軸66と直交する面に対して傾斜させることによって、干渉縞を生成してもよい。
図2は、撮像素子20によって撮影された干渉縞の二次元画像の一例を示す撮影図である。図3は、図2に示される干渉縞の二次元画像の一部10の拡大図である。干渉縞は、空間において、明パターン10aと暗パターン10bとが交互に繰り返されて構成されている。例えば、干渉縞は、測定面90の全域において、100〜200本の明パターン10aと暗パターン10bとが交互に繰り返されて構成されている。
撮像素子20で撮影される干渉縞の光強度Iは、光路差をDとすると、一般に、式(1)で示される。
A、Bは、光学系6、測定面90の反射率等に依存する係数である。φは、位相であり、測定面90の形状情報(高さ情報)を有する。
測定面90の傾きによる干渉縞の空間周波数(角周波数)をω+βとしたとき、位置xでの干渉縞の光強度Iは、式(2)で示される。
ωは、干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てられた撮像素子20の画素数が4であるときの測定面90の傾き(測定面90の理想の傾き)を示す値である。βは、理想の傾きに対する誤差を示している。干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てられた撮像素子20の画素数が4となるように、測定面90の傾きを調整できたとき、βは0となる。
背景技術で説明した非特許文献1は、式(2)から位相φを抽出する方法として、直交検波を用いる位相抽出法を開示している。具体的に説明すると、式(2)に、sin(ωx)及びcos(ωx)を乗じた値V1を求め、V1の逆正接V2を求め、V2から位相φを求める。
非特許文献1に開示された方法によれば、ωがβに対して十分に大きいとき、すなわち、発明が解決しようとする課題で説明した「誤差」が極めて小さいとき、平面形状の測定精度に影響を及ぼさない。しかし、そうでないとき、測定精度が低下する。
これについて具体的に説明する。図4は、βがωの20%となる条件で生成された干渉縞の波形を示す波形図である。この条件は、ωがβに対して十分に大きくない場合の一例である。図4において、横軸は、撮像素子20を構成する全画素のうち、連続する50個の画素で構成されるある画素群において、各画素の位置を示している。例えば、0は、一つ目の画素の位置を示し、1は、次の画素の位置を示し、2は、その次の画素の位置を示している。縦軸は、撮像素子20によって干渉縞を撮影したときに撮像素子20の各画素から出力された受光信号のレベルを示している。
図5は、図4に示す干渉縞の波形について、非特許文献1に開示された方法を用いて、位相φを算出した結果を示すグラフである。図5の横軸は、図4の横軸と同じであり、図5の縦軸は、位相φを示している。図5に示すグラフは、測定面90の傾きによって生じる直線的な位相変化βxを含むので、図5に示すグラフから直線的な位相変化βxを引いた結果を、図6に示す。図6の横軸は、図4のグラフの横軸と同じであり、縦軸は、図5に示すグラフで示される位相と直線的な位相変化βxとの位相差を示している。
図6のグラフに比較的大きなギザギザが発生するのは、ωがβに対して十分に大きくない、すなわち、ステージ40の傾きの誤差が大きいからである。位相差を干渉縞の位相とみなすと、位相に、0.02rad程度の誤差が発生していることが分かる。この誤差を測定面90の高さ(=位相・λ/4π)に換算すると、1nm程度の誤差となる。位相を空間的に平均化することにより、誤差を低減できるが、平均化すると、測定空間において、空間分解能が低下する。
第1実施形態を用いた位相φの算出について説明する。図7は、撮像素子20の一つの画素を示す模式図である。撮像素子20を構成する各画素は、有限の開口を有しており、従って、干渉縞が撮像素子20によって撮影されたとき、一つの画素から出力される受光信号Pは、式(3)で示すことができる。
A、B、ω、β、φについては、既に説明している。一つの画素によって受光されるエリアをN1〜N2で示している。エリアは、実際には二次元であるが、簡単にするために一次元で示している。
撮像素子20を構成する全画素のうち、ある画素を画素nとする。撮像素子20によって干渉縞を撮影したときに、画素nから出力される受光信号の予測値をPとする。予測値Pを示す予測関数において、予測値Pは、干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てられる画素数に応じて異なる。第1実施形態では、4つの画素で干渉縞の1波長成分を検出するとして、予測値Pを示す予測関数を導く。実際には、干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てられる画素数が4になるように、測定面90を正確に傾斜させることはできず、誤差が生じる。
式(3)を基にすると、予測値Pを示す予測関数を、式(4)で示すことができる。nは、1以上の整数であり、撮像素子20を構成する各画素(言い換えれば、測定面90上の各位置)を示す。例えば、「1」は、1番目の画素であり、「2」は、その隣りの2番目の画素であり、「3」は、その隣りの3番目の画素を示す。
ω+βをKとすれば、式(4)を式(5)で示すことができる。
A1は、光学系6、測定面90の反射率等に依存する係数であり、上記Aに相当する係数である。
図8は、撮像素子20の連続する4つの画素である画素n、画素n+1、画素n+2、画素n+3を示す模式図である。これら連続する画素から出力される受光信号の予測値において、A1、B、β、φが等しいとすると、Pの実測値(画素nから出力された受光信号の値)を代入した式(5)を式(5−1)、Pn+1の実測値(画素n+1から出力された受光信号の値)を代入した式(5)を式(5−2)、Pn+2の実測値(画素n+2から出力された受光信号の値)を代入した式(5)を式(5−3)、Pn+3の実測値(画素n+3から出力された受光信号の値)を代入した式(5)を式(5−4)で示すことができる。
式(5−1)〜式(5−4)から、未定係数A1,B,K,φを算出できるが、第1実施形態では、A1を消去した以下の連立方程式F,Fn+1,Fn+2を用いて、未定係数B,K,φを算出する。
=Pn+1−P
n+1=Pn+2−Pn+1
n+2=Pn+3−Pn+2
以上説明した未定係数の算出は、第1の算出部73によって実現される。すなわち、第1の算出部73は、干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てる撮像素子20の画素の数を4としたときに、干渉縞の二次元画像の撮影によって撮像素子20のn番目の画素から出力される受光信号の予測値Pを示す予測関数を、A1、B、β、φを未定係数とする式(4)とし、撮像素子20の連続する複数の画素において、未定係数が等しいと見なし、式(4)、及び、干渉縞の二次元画像の撮影によってn番目の画素を含む連続する複数の画素のそれぞれから出力された受光信号の実測値を用いて、未定係数の解を算出する。そして、第1の算出部73は、撮像素子20を構成する所定数の画素のそれぞれについて、未定係数の解を算出する。なお、複数の画素の「複数」とは、未定係数を算出するのに必要が数であり、「所定数」とは、撮像素子20の全画素数以下の任意の値である。
連立方程式F,Fn+1,Fn+2を用いた解析の第1例を説明する。図9は、干渉縞の波形の第1例を示す波形図である。図9の横軸は、図4の横軸と同じであり、縦軸は、図4の縦軸と同じである。連立方程式では、A1が消去されているので、図9に示す干渉縞の波形は、B=1.1、β=0.3、φ=0.2として、式(6)で示すことができる。
図9に示す波形図で示される受光信号のレベルを実測値とし、連立方程式F,Fn+1,Fn+2を用いて算出されたB、β、φは、上記B=1.1、β=0.3、φ=0に対して、0.1%以下の誤差にすることができた。
連立方程式F,Fn+1,Fn+2を用いた解析の第2例を、非特許文献1に開示された方法を用いた解析例と比較して説明する。図10は、測定面90のある箇所の位相のデータを示すグラフである。このグラフは、評価用のモデルデータである。図10の横軸は、撮像素子20を構成する全画素のうち、連続する40個の画素で構成されるある画素群において、各画素の位置を示している。図10の縦軸は、位相φを示している。
図11は、図10に示すデータに対応する干渉縞の波形を示す波形図である。ここでは、ωをπ/2、βを0.2としている。図11の横軸は、図10の横軸と同じであり、縦軸は、図4の縦軸と同じである。
図12は、図11に示される受光信号の値(実測値)及び連立方程式F,Fn+1,Fn+2を用いて位相φを算出した結果を示すグラフである。図12の横軸は、図10の横軸と同じであり、図12の縦軸は、図10の縦軸と同じである。
位相φの算出は、第2の算出部74によって実現される。すなわち、第2の算出部74は、第1の算出部73によって算出された未定係数の解のうち、位相を示すφの解を用いて、n番目の画素に対応する測定面90の箇所の高さを算出する。測定面90の高さ=位相・λ/4πなので、第2の算出部74は、その式からn番目の画素に対応する測定面90の箇所の高さを算出することができる。第2の算出部74は、所定数の画素のそれぞれのφの解を用いて、所定数の画素のそれぞれに対応する測定面90の箇所の高さを算出する。「所定数」とは、上述したように、撮像素子20の全画素数以下の任意の値である。
第1の算出部73は、撮像素子20を構成する各画素について、上記未定係数の解を算出し、第2の算出部74は、撮像素子20を構成する各画素に対応するφを用いて、各画素に対応する測定面90の箇所の高さを算出する。これにより、測定面90の表面形状が算出される。
図13は、図11に示される受光信号の値(実測値)及び非特許文献1に開示された方法を用いて位相φを算出した結果を示すグラフである。図13の横軸は、図10の横軸と同じであり、図13の縦軸は、図10の縦軸と同じである。
図12に示すグラフは、図13に示すグラフよりも、図10に示すグラフに近いことが分かる。従って、第1実施形態によれば、非特許文献1に開示された方法を用いた場合と比べて、干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てられる画素数に誤差が生じても、測定面90の表面形状を正確に測定できる。
第1実施形態の主な効果を説明する。撮像素子20を構成する各画素は、有限の開口を有するので、各画素から出力される受光信号の強度は、各画素の大きさに依存する。これを式で示すと、上述した式(3)となる。画素が大きければ、その画素から出力される受光信号の強度が大きくなり、画素が小さければ、その画素から出力される受光信号の強度が小さくなる。干渉縞は、空間的な強度分布を有しており、干渉縞の密度が高い場合、特に、各画素から出力される受光信号の強度は、各画素の大きさに依存する。
第1実施形態では、4つの画素で干渉縞の1波長成分を検出すると見なし、式(3)を基にして、予測値Pを示す予測関数の式(4)を導いている。そして、第1実施形態は、式(4)及び干渉縞の受光信号の実測値から、式(4)の未定係数を算出することにより、位相φを算出している(実際には、計算の便宜のために、式(4)から式(5)を導き、式(5)及び干渉縞の受光信号の実測値から、式(5)の未定係数を算出している。これは、式(4)及び干渉縞の受光信号の実測値から、式(4)の未定係数を算出するのと実質的に同じである)。従って、第1実施形態によれば、図1に示すステージ40を傾けることによって測定面90が傾斜された状態で生成された干渉縞について、この干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てられる画素数に誤差が生じても、測定面90の表面形状を正確に測定できる。
そして、第1実施形態によれば、干渉縞の局所毎に、そこでの干渉縞の位相を計算するので、干渉縞が途切れる箇所(例えば、測定面90の端部に対応する箇所)や測定面90の局所にゴミ等の異物が存在しても、測定面90の表面形状を正確に測定できる。
式(4)は、測定光と参照光との干渉において、多重干渉がない場合を前提にしている。このため第1実施形態は、測定光と参照光との干渉において、多重干渉がない場合に特に有効である。
また、第1実施形態によれば、フィゾー干渉計で干渉縞の二次元画像を撮影するので、フィゾー干渉計の利点を利用して、測定面90の表面形状を測定できる。フィゾー干渉計の利点とは、例えば、測定光の光路と参照光の光路とが、概ね共通しているので、光学系6内の空気の揺らぎ等の外乱の影響を受けにくい。
第1実施形態において、図1に表面形状測定装置1aは、測定面90を水平にして、表面形状を測定しているが、測定面90を有する試料9を立て掛けた状態で、測定面90の表面形状を測定してもよい。これを変形例として簡単に説明する。図14は、第1実施形態の変形例に係る表面形状測定装置1bの構成を示すブロック図である。図14において、図1に示す表面形状測定装置1aと同じ構成要素については、同一符号を付すことにより説明を省略する。また、図14において、図1に示すステージ制御部5及びコンピュータ7の図示は省略されている。
表面形状測定装置1bは、測定面90の傾きを調整するのではなく、参照面の傾きを調整するタイプであり、除振台11、保持部12、ユニット13、ユニット14及びステージ装置4を備える。保持部12は、除振台11に取り付けられている。
ユニット13、ユニット14、ステージ装置4の順に、カメラ2の光軸に沿って並んでいる。
ユニット13は、カメラ2、レーザ光源3、レンズ60、ビームスプリッタ61及びレンズ64を備え、保持部12によって保持されている。
ユニット14は、レンズ62を備え、保持部12によって保持されている。
保持部12は、ステージ装置4を起立させた状態でステージ装置4を保持している。
ステージ装置4は、ステージ40、駆動部41、平板ガラス63及び保持部15を備える。測定面90を有する試料9は、ステージ40に立て掛けられている。ステージ40は、駆動部41を介して保持部15を支持している。保持部15は、平板ガラス63を保持する。駆動部41により保持部15の傾きが制御されることにより、平板ガラス63の傾きが制御される。
薄い試料9を水平にしたとき、試料9の自重により、試料9が撓むことがある。変形例によれば、試料9を立て掛けた状態にするので、そのような撓みを防止できる。
第2実施形態について、第1実施形態との相違点を主にして説明する。第2実施形態は、面積が大きい測定面の表面形状を測定する技術である。第2実施形態を簡単に説明すると、第2実施形態では、干渉縞を複数の領域に分割し、複数の領域のそれぞれの二次元画像を撮影し、撮影した二次元画像をつなげる技術である。
測定面90の面積が大きければ、干渉縞の面積も大きくなる。図1に示す表面形状測定装置1aに備えられる撮像素子20を用いて、面積が大きい干渉縞を撮影するには、この撮影に光学系6を対応させる必要がある。例えば、大口径のレンズ62に用いる必要がある。これでは、光学系6のコストが上昇する。また、空間分解能は、撮像素子20の画素数で決定される。現状では、画素数の上限は、一般に4000×4000である。このため、図1に示す表面形状測定装置1aに備えられる撮像素子20を用いて、面積が大きい干渉縞を撮影すると、空間分解能が低下する。
また、第1実施形態及び第2実施形態のように、局所的な干渉縞の波形に対して、収束計算を用いて位相φを算出する場合、干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てる画素数が4近傍の値になるように、ステージ40で測定面90の傾斜を設定することが望ましい。しかし、測定面90のうねり(凹凸)が大きければ、測定面90の全体にわたって、干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てる画素数を4近傍の値になるように、ステージ40で測定面90の傾斜を設定することは困難である。
そこで、第2実施形態では、干渉縞を複数の領域に分割して撮影する。図15は、第2実施形態に係る表面形状測定装置1cの構成を示すブロック図である。図1に示す表面形状測定装置1aと同じ構成要素については、同一符号を付すことにより説明を省略する。
ステージ40は、水平スライド部43を備える。水平スライド部43は、駆動部41を介してステージ40を支持しており、ステージ制御部5の制御に従って、ステージ40及び駆動部41と一緒に、ベース部42上を水平に移動する。
制御部70は、分割部75、撮影制御部76及び画像生成部77の機能を備える。
分割部75は、撮像素子20による撮影視野より広い干渉縞を、隣り合う領域が部分的に重なるように、撮影視野より狭い複数の領域に分割する。
図16は、分割部75によって、複数の領域31に分割された干渉縞30の一例を説明する説明図である。干渉縞30は、9つの領域31に分割されている。各領域31は、撮影視野32よりも狭く、隣り合う領域31が部分的に重なっている。各領域31は、仮想的な領域であり、各領域31を規定する点線は、実際には存在しない。
ステージ制御部5は、水平スライド部43を水平に移動させることにより、ステージ40を水平に移動させ、撮影視野32に複数の領域31(ここでは、9つの領域31)を順番に移動させる。
撮影制御部76は、撮影視野32に移動してきた領域31の二次元画像を撮像素子20に撮影させる。
上述したように、測定面90のうねり(凹凸)が大きければ、測定面90の全体にわたって、干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てる画素数を4近傍の値になるように、ステージ制御部5が測定面90の傾斜を設定することは困難である。そこで、ステージ制御部5は、領域31毎に、測定面90(領域31)の傾きを調整する。これにより、領域31の撮影毎に、測定面90の絶対位置が変化する。
そこで、画像生成部77は、部分的な重なりを目印にして、撮像素子20によって撮影された複数の領域31の二次元画像をつなげて、干渉縞30の二次元画像を生成する。
図17は、隣り合う二つの領域31a,31bの二次元画像をつなげる方法を説明する説明図である。領域31aの二次元画像と領域31bの二次元画像との部分的な重なりを、重なり部分33として示す。画像生成部77は、重なり部分33において、一直線上にない三点を決定し、領域31aの二次元画像の三点と領域31bの二次元画像の三点とが重なるように、領域31aの二次元画像と領域31bの二次元画像とをつなげる。
第2実施形態によれば、測定面90の面積が大きい場合でも、測定面90の表面形状を測定する精度を高めることができる。
1a,1b,1c 表面形状測定装置
6 光学系
20 撮像素子
40 ステージ
65 平板ガラスの上面(参照面の一例)
66 光軸
90 測定面

Claims (4)

  1. 測定面及び参照面を通る光軸を有し、前記光軸と直交する面に対して、前記測定面及び前記参照面の少なくとも一方が傾斜された状態で、前記測定面に照射された光の反射光と前記参照面に照射された光の反射光とを干渉させることによって干渉縞を生成する光学系と、
    前記光学系によって生成された前記干渉縞の二次元画像を撮影する撮像素子と、
    前記干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てる前記撮像素子の画素の数を4としたときに、前記干渉縞の二次元画像の撮影によって前記撮像素子のn番目の画素から出力される受光信号の予測値Pを示す予測関数を、A1、B、β、φを未定係数とする下記式とし、前記撮像素子の連続する複数の画素において、前記未定係数が等しいと見なし、前記式、及び、前記干渉縞の二次元画像の撮影によって前記n番目の画素を含む連続する複数の画素のそれぞれから出力された受光信号の実測値を用いて、前記未定係数の解を算出する第1の算出部と、
    前記第1の算出部によって算出された前記未定係数の解のうち、位相を示す前記φの解を用いて、前記n番目の画素に対応する前記測定面の箇所の高さを算出する第2の算出部と、を備え、
    前記第1の算出部は、前記撮像素子を構成する所定数の画素のそれぞれについて、前記未定係数の解を算出し、
    前記第2の算出部は、前記所定数の画素のそれぞれの前記φの解を用いて、前記所定数の画素のそれぞれに対応する前記測定面の箇所の高さを算出する表面形状測定装置。
    (ここで、nは、整数を示し、ωは、空間周波数を示す。)
  2. 前記測定面を有する試料が載置されるステージと、
    前記撮像素子による撮影視野より広い前記干渉縞を、隣り合う領域が部分的に重なるように、前記撮影視野より狭い複数の前記領域に分割する分割部と、
    前記ステージを移動させることにより、前記撮影視野に複数の前記領域を順番に移動させるステージ制御部と、
    前記撮影視野に移動してきた前記領域の二次元画像を前記撮像素子に撮影させる撮像制御部と、
    前記部分的な重なりを目印にして、複数の前記領域の二次元画像をつなげて、前記干渉縞の二次元画像を生成する画像生成部と、をさらに備える請求項1に記載の表面形状測定装置。
  3. 前記光学系及び前記撮像素子を含むフィゾー干渉計を備える請求項1又は2に記載の表面形状測定装置。
  4. 測定面及び参照面を通る光軸を有し、前記光軸と直交する面に対して、前記測定面及び前記参照面の少なくとも一方が傾斜された状態で、前記測定面に照射された光の反射光と前記参照面に照射された光の反射光とを干渉させて、干渉縞を生成する生成ステップと、
    前記生成ステップによって生成された前記干渉縞の二次元画像を、撮像素子を用いて撮影する撮影ステップと、
    前記撮影ステップによって撮影される前記干渉縞の1波長成分を検出するのに割り当てる前記撮像素子の画素の数を4としたときに、前記干渉縞の二次元画像の撮影によって前記撮像素子のn番目の画素から出力される受光信号の予測値Pを示す予測関数を、A1、B、β、φを未定係数とする下記式とし、前記撮像素子の連続する複数の画素において、前記未定係数が等しいと見なし、前記式、及び、前記干渉縞の二次元画像の撮影によって前記n番目の画素を含む連続する複数の画素のそれぞれから出力された受光信号の実測値を用いて、前記未定係数の解を算出する第1の算出ステップと、
    前記第1の算出ステップによって算出された前記未定係数の解のうち、位相を示す前記φの解を用いて、前記n番目の画素に対応する前記測定面の箇所の高さを算出する第2の算出ステップと、を備え、
    前記第1の算出ステップは、前記撮像素子を構成する所定数の画素のそれぞれについて、前記未定係数の解を算出し、
    前記第2の算出ステップは、前記所定数の画素のそれぞれの前記φの解を用いて、前記所定数の画素のそれぞれに対応する前記測定面の箇所の高さを算出する表面形状測定方法。
    (ここで、nは、整数を示し、ωは、空間周波数を示す。)
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