発明の概要
本明細書において、腫瘍細胞におけるCEACAM1を阻害するために有用である組換え型モノクローナル抗体およびその抗原結合部分を提供する。より詳しくは、本明細書において、組換え型抗CEACAM1結合抗体およびペプチドを含む新規組成物、ならびに癌、特に膵臓癌の処置などの、腫瘍増殖抑制療法および腫瘍浸潤抑制療法においてそれらを用いる方法が提供される。さらに、本明細書において記述される抗CECAM結合ペプチドを含む組成物は、評価法およびイメージング法において、例えば、腫瘍生検におけるCEACAM1発現を決定して、個別に設定した医学的アプローチに対する有望な反応者を同定するためのコンパニオン診断、治療に対する反応の連続的モニタリングにおいて用いることができるCEACAM1標的化分子イメージング、および腫瘍のインビボ検出において、有用である。さらに、そのような診断は、個別に設定した医学的応用において用いるための抗癌治療の新規アプローチを提供する。さらに、本明細書において記述される抗CEACAM1結合ペプチドを含む組成物は、ナノ粒子、ポリプレックス、ミクロ粒子等などの送達剤と組み合わせた、他の診断および治療組成物に対する標的化部分として有用である。そのような抗CEACAM1結合ペプチドはまた、CEACAM1アンタゴニストと呼ぶことができる。
したがって、いくつかの局面において、本明細書において、少なくとも1つの軽鎖成分と少なくとも1つの重鎖成分とを含む、モノクローナル抗体5F4、34B1、または26H7によって認識される抗原に結合する単離されたCEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体またはその抗原結合部分が提供される。これらの局面のいくつかの態様において、少なくとも1つの重鎖成分は、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:30のアミノ酸を含み、および少なくとも1つの軽鎖成分は、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、またはSEQ ID NO:32のアミノ酸を含む。
これらの局面および本明細書において記述されるそのような全ての局面のいくつかの態様において、抗CEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体は、ヒト化抗体またはその一部である。
これらの局面および本明細書において記述されるそのような全ての局面のいくつかの態様において、抗CEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリンγ-1およびκ定常領域にそれぞれ連結された単離されたCEACAM1特異的組換え型抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を含むキメラ抗体である。
いくつかの局面において、本明細書において、単離された組換え型抗体またはその抗原結合部分が、5F4によって認識される抗原に結合するように、アミノ酸残基
からなる重鎖相補性決定領域(CDR)1、アミノ酸残基
からなる重鎖CDR2、アミノ酸残基
からなる重鎖CDR3、アミノ酸残基
からなる軽鎖CDR1、アミノ酸残基
からなる軽鎖CDR2、およびアミノ酸残基
からなる軽鎖CDR3を含む、前記単離された組換え型抗体またはその抗原結合部分が提供される。
いくつかの局面において、本明細書において、単離された組換え型抗体またはその抗原結合部分が、本明細書において5F4、34B1、または26H7と呼ばれる抗体によって認識される抗原に結合するように、アミノ酸残基
からなる重鎖相補性決定領域(CDR)1、アミノ酸残基
からなる重鎖CDR2、アミノ酸残基
からなる重鎖CDR3、アミノ酸残基
からなる軽鎖CDR1、アミノ酸残基
からなる軽鎖CDR2、およびアミノ酸残基
からなる軽鎖CDR3を含む、前記単離された組換え型抗体またはその抗原結合部分が提供される。
これらの局面および本明細書において記述されるそのような全ての局面のいくつかの態様において、抗体部分は、Fab断片、Fab'断片、Fd断片、Fd'断片、Fv断片、dAb断片、F(ab')2断片、一本鎖断片、ダイアボディ、または線形抗体である。
いくつかの局面において、本明細書において記述される単離されたCEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体またはその抗原結合部分、ヒト化抗体、および/またはキメラ抗体のいずれかを含む診断キットが、本明細書において提供される。
いくつかの局面において、本明細書において記述される単離されたCEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体またはその抗原結合部分、ヒト化抗体、および/またはキメラ抗体のいずれかと、担体とを含む組成物が、本明細書において提供される。
これらの局面および本明細書において記述されるそのような全ての局面のいくつかの態様において、単離されたCEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体またはその抗原結合部分、ヒト化抗体、および/またはキメラ抗体は標識に連結されている。
これらの局面および本明細書において記述されるそのような全ての局面のいくつかの態様において、単離されたCEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体またはその抗原結合部分、ヒト化抗体、および/またはキメラ抗体は、CEACAM1に対して特異的なイムノコンジュゲートを形成するために、抗CEACAM1組換え型抗体またはその一部、ヒト化抗体、および/もしくはキメラ抗体にコンジュゲートさせた剤をさらに含む。いくつかのそのような態様において、抗体またはその抗体断片にコンジュゲートさせる剤は、化学療法剤、毒素、放射活性同位元素、低分子、siRNA、ナノ粒子、またはマイクロバブルである。
いくつかの局面において、本明細書において、CEACAM1に特異的に結合する組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部、ヒト化抗体、および/もしくはキメラ抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物が提供される。
いくつかの局面において、本明細書において、それを必要とする対象にCEACAM1に特異的に結合する組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部、ヒト化抗体、および/もしくはキメラ抗体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物の治療的有効量を投与する段階を含む、膵臓癌を処置する方法が提供される。
いくつかの局面において、本明細書において、それを必要とする対象にCEACAM1に特異的に結合する組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部、ヒト化抗体、および/もしくはキメラ抗体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物の治療的有効量を投与する段階を含む、癌または腫瘍を有する対象における腫瘍細胞の浸潤を阻害する方法が提供される。
これらの方法および本明細書において記述されるそのような全ての方法のいくつかの態様において、方法はさらに、1つまたは複数の化学療法剤、血管新生阻害剤、細胞傷害剤、および/または抗増殖剤を投与する段階を含む。
いくつかの局面において、本明細書において、それを必要とする対象にCEACAM1に特異的に結合する組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部、ヒト化抗体、および/もしくはキメラ抗体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物の治療的有効量を投与する段階を含む、それを必要とする対象において、細胞におけるCEACAM1発現および/または機能を阻害することによって腫瘍成長を阻害するおよび腫瘍サイズまたは腫瘍転移を減少させる方法が提供される。
いくつかの局面において、本明細書において、それを必要とする対象にCEACAM1に特異的に結合する組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部、ヒト化抗体、および/もしくはキメラ抗体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物の治療的有効量を投与する段階を含む、腫瘍細胞におけるCEACAM1発現および/または機能を阻害することによって癌の進行を阻害する方法が提供される。
同様にいくつかの局面において、本明細書において、治療剤の有効量、ならびに標的化部分にコンジュゲートさせたCEACAM1に特異的に結合する組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部、ヒト化抗体、および/もしくはキメラ抗体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物の有効量を対象に投与する段階、ならびに標的化部分にコンジュゲートさせた薬学的組成物の有無を分子イメージングを用いて判定する段階を含む、CEACAM1標的化分子イメージングと治療剤のCEACAM1標的化送達とを組み合わせた方法が提供される。
これらの局面および本明細書において記述されるそのような全ての局面のいくつかの態様において、治療剤は、化学療法剤、低分子、ペプチド、またはアプタマーである。
いくつかの局面において、本明細書において、膵臓癌または膵臓腫瘍を有する対象における腫瘍細胞の浸潤を阻害するのに用いるための、CEACAM1に特異的に結合する組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部、ヒト化抗体、および/もしくはキメラ抗体を含む薬学的組成物が提供される。
これらの局面および本明細書において記述されるそのような全ての局面のいくつかの態様において、使用する段階は、1つまたは複数の化学療法剤、血管新生阻害剤、細胞傷害剤、および/または抗増殖剤をさらに含む。いくつかのそのような態様において、治療剤は、化学療法剤、低分子、ペプチド、および/またはアプタマーである。
いくつかの局面において、本明細書において、それを必要とする対象の細胞におけるCEACAM1発現および/または機能を阻害することによって、腫瘍成長を阻害するのにおよび腫瘍サイズまたは腫瘍転移を減少させるのに用いるための、CEACAM1に特異的に結合する組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部、ヒト化抗体、および/もしくはキメラ抗体を含む薬学的組成物が提供される。
いくつかの局面において、本明細書において、5F4抗体の重鎖の可変領域をコードする、SEQ ID NO:33の配列のヌクレオチドを含む単離されたオリゴヌクレオチドが提供される。
いくつかの局面において、本明細書において、5F4抗体の軽鎖の可変領域をコードする、SEQ ID NO:34の配列のヌクレオチドを含む単離されたオリゴヌクレオチドが提供される。
これらの局面および本明細書において記述されるそのような全ての局面のいくつかの態様において、単離されたオリゴヌクレオチドは、単離された発現ベクターの一部を構成する。
これらの局面および本明細書において記述されるそのような全ての局面のいくつかの態様において、単離された発現ベクターは、単離された宿主細胞または単離された宿主細胞集団の一部を構成するか、または一部である。
定義:
便宜上、本明細書において明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において使用されるいくつかの用語をここにまとめる。それ以外であると明記している場合を除き、または本文から明白である場合を除き、以下の用語および句は、以下に提供される意味を含む。それ以外であると明記されている場合を除き、または本文から明らかである場合を除き、以下の用語および句は、それが属する技術分野においてその用語または句が本来持っている意味を除外しない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることから、定義は、特定の態様の説明を助けるために提供され、特許請求される本発明の範囲を制限すると意図されない。それ以外であると定義している場合を除き、本明細書において用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
「抗体」という用語は、その最も広い意味で用いられ、それらが所望の生物活性および特異性を示す限り、モノクローナル抗体(完全長またはインタクトなモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体)、抗体断片、およびその抗原結合部分(たとえば、パラトープ、CDR)を含む。特異的CEACAM1エピトープに結合するという文脈において、抗体およびCEACAM1結合ペプチドという用語は互換的に用いられ、CEACAM1エピトープに選択的に結合する本明細書において記述される特異的抗CEACAM1抗体の部分を意味しうる。
本明細書において用いられる「相補性決定領域」(CDR、すなわち、CDR1、CDR2、およびCDR3)とは、その存在が抗原結合にとって必要である抗体可変ドメインのアミノ酸残基を意味する。各可変ドメインは典型的に、CDR1、CDR2、およびCDR3として同定される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabatによって定義される「相補性決定領域」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおけるおよそ24〜34(L1)、50〜56(L2)、および89〜97(L3)番目の残基、ならびに重鎖可変ドメインにおけるおよそ31〜35(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(L3)番目の残基(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987, 1991))、および/または「超可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおけるおよそ26〜32(L1)、50〜52(L2)、および91〜96(L3)番目の残基、ならびに重鎖可変ドメインにおけるおよそ26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)番目の残基(Chothia & Lesk 196 J. Mol. Biol. 901 (1987)))を含むことができる。いくつかの例において、相補性決定領域は、Kabatに従って定義されるCDR領域と超可変ループの両方からのアミノ酸を含むことができる。
本明細書において用いられる「抗体可変ドメイン」とは、相補性決定領域(CDR;すなわちCDR1、CDR2、およびCDR3)およびフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖および重鎖の一部を意味する。VHとは、重鎖の可変ドメインを意味する。VLとは軽鎖の可変ドメインを意味する。本発明において用いられる方法に従って、CDRおよびFRに割付されるアミノ酸の位置は、Kabatに従って定義することができる。抗体または抗原結合断片のアミノ酸の番号付けもまた、Kabatの番号付けに従う。
本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体集団から得られた抗体を意味し、すなわち集団を構成する個々の抗体は、少量存在しうる潜在的な天然の変異を除き、同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、1つの抗原に対して向けられる。さらに、種々の決定基(エピトープ)に向けられた種々の抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の1つの決定基に向けられる。「モノクローナル」という修飾語は、任意の特定の方法によって抗体を産生する必要があると解釈されるべきではない。たとえば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、Kohler et al., 256 Nature 495 (1975)によって初めて記述されたハイブリドーマ法によって作製することができ、または組換えDNA法(たとえば、米国特許第7,829,678号、第7,314,622号を参照されたい)によって作製することができる。「モノクローナル抗体」はまた、たとえばClackson et al., 352 Nature 624 (1991)またはMarks et al., 222 J. Mol. Biol. 581 (1991)において記述される技術を用いて、ファージ抗体ライブラリから単離することも可能である。モノクローナル抗体は、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、およびヒトモノクローナル抗体を非限定的に含む任意の種の抗体でありうる。
本明細書において用いられる「抗体断片」という用語は、一般的にインタクト抗体の抗原結合部位を含みかつしたがって抗原結合能を保持しているインタクト抗体の一部分のみを含む、タンパク質断片を意味する。本発明の定義に包含される抗体断片の例には:(i)VL、CL、VH、およびCH1ドメインを有するFab断片;(ii)CH1ドメインのC末端の1つまたは複数のシステイン残基とを有する、Fab断片であるFab'断片;(iii)VHおよびCH1ドメインを有するFd断片;(iv)VHおよびCH1ドメインと、CH1ドメインのC末端で1つまたは複数のシステイン残基を有するFd'断片;(v)抗体の1つのアームのVLおよびVHドメインを有するFv断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., 341 Nature 3544 (1989));(vii)単離されたCDR領域;(viii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab'断片を含む二価の断片であるF(ab')2断片;(ix)一本鎖抗体分子(たとえば、一本鎖Fv;scFv)(Bird et al., 242 Science 423 (1988); and Huston et al., 85 PNAS 5879 (1988));(x)同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含む2つの抗原結合部位を有する「ダイアボディ」(たとえば、EP 404,097; WO 93/11161 ; Hollinger et al., 90 PNAS 6444 (1993)を参照されたい);(xi)相補的軽鎖ポリペプチドと共に、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメントを含む、「線形抗体」(Zapata et al., 8 Protein Engin. 1057 (1995);および米国特許第5,641,870号)が挙げられる。
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは典型的に、FR1、FR2、FR3、およびFR4として同定される4つのFRを有する。CDRがKabatに従って定義される場合、軽鎖FR残基は、およそ1〜23(LCFR1)、35〜49(LCFR2)、57〜88(LCFR3)、および98〜107(LCFR4)番目の残基に位置し、重鎖FR残基は、重鎖残基においておよそ1〜30(HCFR1)、36〜49(HCFR2)、66〜94(HCFR3)、および103〜113(HCFR4)番目の残基に位置する。CDRが超可変ループからのアミノ酸残基を含む場合、軽鎖FR残基は、軽鎖においておよそ1〜25(LCFR1)、33〜49(LCFR2)、53〜90(LCFR3)、および97〜107(LCFR4)番目の残基に位置し、重鎖FR残基は、重鎖残基においておよそ1〜25(HCFR1)、33〜52(HCFR2)、56〜95(HCFR3)、および102〜113(HCFR4)番目の残基に位置する。いくつかの例において、CDRがKabatによって定義されるCDRと超可変ループの残基の両方からのアミノ酸を含む場合、FR残基はそれに従って調節されるであろう。たとえば、CDRH1がアミノ酸H26〜H35を含む場合、重鎖FR1残基は、1〜25番目の位置に存在し、FR2残基は、36〜49番目の位置に存在する。
「特異性」という用語は、本明細書において記述される抗体またはその抗体断片が結合することができる抗原または抗原性決定基の異なるタイプの数を意味する。抗体またはその抗体断片の特異性は、親和性および/またはアビディティに基づいて決定されうる。抗原と抗原結合タンパク質との解離(KD)に関する平衡定数によって表される親和性は、抗原性決定基と、抗体またはその抗体断片などの抗原結合タンパク質上の抗原結合部位とのあいだの結合強度の測定値であり、KDの値が小さければ小さいほど、抗原性決定基と抗原結合分子のあいだの結合強度はより強くなる。または、親和性はまた、1/KDである親和性定数(KA)として表記することもできる。当業者に明白であるように、親和性は、関心対象の特異的抗原に応じて、それ自体公知の様式で決定することができる。したがって、該アミノ酸配列またはポリペプチドがもう1つの標的またはポリペプチドに結合する親和性より少なくとも100倍、および好ましくは少なくとも1000倍、および10000倍までまたはそれより高い親和性などの、少なくとも10倍である親和性(上記のように、およびたとえばKD値として適切に表記される)で第一の抗原に結合する場合、本明細書において定義される抗体またはその抗体断片は第二の標的または抗原と比較して第一の標的または抗原に対して「特異的」であると言うことができる。
抗体の親和性は、たとえば、表面プラズモン共鳴を用いるアッセイ(PCT出願公開番号WO2005/012359に記述されるBIACOREアッセイなどの);酵素免疫測定法(ELISA);および競合アッセイ(たとえば、RIA)によって決定することができる。本明細書において記述されるある局面において、抗CEACAM1抗体は、CEACAM1活性が関係する疾患または状態を標的として妨害するための治療剤として用いることができる。同様に、たとえば治療剤としてのその有効性を評価するために、または診断補助剤としてのその有効性を評価する等のために、抗CEACAM1抗体を、他の生物活性アッセイに供することができる。そのようなアッセイは、当技術分野において公知であり、標的抗原および抗体の意図される用途に依存する。例には、HUVEC阻害アッセイ;腫瘍細胞成長阻害アッセイ(たとえば、WO 89/06692を参照されたい);抗体依存性細胞傷害アッセイ(ADCC)および補体依存性細胞傷害アッセイ(CDC)(米国特許第5,500,362号);およびアゴニスト活性または造血アッセイ(WO 95/27062を参照されたい)が挙げられる。抗CEACAM1抗体を評価するために用いることができる他の生物活性アッセイは本明細書において記述される。
「アビディティ」とは、抗原結合分子(本明細書において記述される抗体またはその抗体断片などの)と適切な抗原との結合強度の尺度である。アビディティは、抗原性決定基と、抗原結合分子上のその抗原結合部位との親和性、および抗原結合分子上に存在する適切な結合部位の数の両方に関連する。典型的に、抗原結合タンパク質(本明細書において記述される抗体または抗体の一部などの)は、その同起源のまたは特異的抗原に対して、10-5から10-12 mol/Lもしくはそれ未満、例えば10-7から10-12 mol/Lもしくはそれ未満、または10-8から10-12 mol/Lの解離定数(KD)(すなわち、105から1012 L/molまたはそれ以上、例えば107から1012 L/molまたは108から1012 L/molの結合定数(KA))で結合するであろう。10-4 mol/Lより大きい任意のKD値(または104 M-1より小さい任意のKA値)は、一般的に非特異的結合を示すと考えられる。意味がある(たとえば、特異的である)と見なされる生物学的相互作用のKDは、典型的に10-10 M(0.1 nM)から10-5 M(10000 nM)の範囲である。相互作用がより強ければ、そのKDはより小さくなる。たとえば、本明細書において記述される抗体またはその一部における結合部位は、500 nM未満、例えば200 nM未満、または10 nM未満、例えば500 pM未満の親和性で所望の抗原に結合するであろう。抗原または抗原性決定基に対する抗原結合タンパク質の特異的結合は、たとえば、スキャッチャード分析および/またはラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、およびサンドイッチ競合アッセイなどの競合的結合アッセイ、ならびに当技術分野においてそれ自体公知である種々のその変化形と共に、本明細書において言及した他の技術を含む、それ自体公知である任意の適した様式で決定することができる。
したがって、本明細書において用いられる「選択的に結合する」または「特異的に結合する」とは、本明細書において記述される抗CEACAM1結合ペプチド(たとえば、組換え型抗体またはその一部)が、細胞表面上に存在する分子などの標的に、10-5 M(10000 nM)またはそれ未満、たとえば、10-6 M、10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M、10-11 M、10-12 Mまたはそれ未満のKDで結合できることを意味する。特異的結合は、たとえば、ポリペプチド剤の親和性およびアビディティ、ならびにポリペプチド剤の濃度によって影響を受けうる。当業者は、適した細胞結合アッセイにおけるポリペプチド剤の滴定などの任意の適した方法を用いて、本明細書において記述されるポリペプチド剤が標的に選択的に結合する適切な条件を決定することができる。
本明細書において用いられる「標的」という用語は、結合部位を有するポリペプチドドメインが選択的に結合することができる生物学的分子(たとえば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、脂質、炭水化物)を意味する。標的は、たとえば細胞内標的(たとえば、細胞内タンパク質標的)、細胞表面タンパク質などの細胞表面標的(たとえば、膜タンパク質、受容体タンパク質)でありうる。
本明細書において記述される「抗原」とは、抗体またはその抗体断片などのポリペプチド剤上の結合部位によって結合される分子である。典型的に、抗原は、抗体リガンドによって結合され、インビボで抗体反応を生じることができる。抗原は、ポリペプチド、タンパク質、核酸、または他の分子でありうる。通常の抗体およびその断片の場合、可変ループ(L1、L2、L3、およびH1、H2、H3)によって定義される抗体結合部位は、抗原に結合することができる。「抗原性決定基」という用語は、抗原結合分子、およびより詳しくは分子の抗原結合部位によって認識される抗原上のエピトープを意味する。
本明細書において用いられる「エピトープ」は、隣接しているアミノ酸、またはタンパク質の三次元フォールディングによって近接する隣接していないアミノ酸の両方から形成することができる。隣接しているアミノ酸によって形成されるエピトープは典型的に、変性溶媒に曝露されても保持されるが、三次元フォールディングによって形成されるエピトープは、変性溶媒による処置によって典型的には失われる。エピトープは典型的に、独自の空間的コンフォメーションで、少なくとも3個、およびより通常少なくとも5個、約9個、または約8〜10個のアミノ酸を含む。「エピトープ」は、免疫グロブリンVH/VL対によって通常結合される構造単位を含む。エピトープは、抗体の最小の結合部位を定義して、このように抗体の特異性の標的を表す。シングルドメイン抗体の場合、エピトープは、分離された可変ドメインによって結合される構造単位を表す。「抗原性決定基」および「エピトープ」という用語はまた、本明細書において互換的に用いられうる。
非ヒト(たとえば、マウス)抗体の「ヒト化」型とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むように遺伝子操作または設計されたキメラ抗体である。たいていの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基に交換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に交換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において認められない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに高めるために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFR領域である、少なくとも1つ、典型的に2つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体はまた任意で、典型的にヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含むであろう。Jones et al., 321 Nature 522 (1986); Riechmann et al., 332 Nature 323 (1988); Presta, 2 Curr. Op. Struct. Biol. 593 (1992)を参照されたい。本明細書において用いられる「複合ヒト抗体」とは、特殊なタイプの遺伝子操作抗体またはヒト化抗体である。
「ヒト抗体」、「非遺伝子操作ヒト抗体」、または「完全なヒト抗体」とは、ヒトが産生する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する、および/または本明細書において開示されるヒト抗体を作製するための任意の技術を用いて作製された、抗体である。ヒト抗体のこの定義は特に、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、当技術分野において公知の様々な技術を用いて産生することができる。1つの態様において、ヒト抗体は、ヒト抗体を発現するファージライブラリから選択される。Vaughan et al., 14 Nature Biotechnol. 309 (1996); Sheets et al., 95 PNAS 6157 (1998); Hoogenboom & Winter, 227 J. Mol. Biol. 381 (1991); Marks et al., 222 J. Mol. Biol., 581 (1991)。
ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン座をトランスジェニック動物、たとえば内因性のマウス免疫グロブリン座が部分的または完全に不活化されているマウスに導入することによっても作製することができる。抗原をチャレンジすると、ヒト抗体の産生が観察されるが、このヒト抗体は、遺伝子再配列、アセンブリ、および抗体レパートリーを含む全ての点において、ヒトにおいて認められる抗体と厳密に類似している。このアプローチは、たとえば米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号;Marks et al., 10 Bio/Technology 779 (1992); Lonberg et al., 368 Nature 856 (1994); Morrison, 368 Nature 812 (1994); Fishwild et al., 14 Nat. Biotechnol. 845 (1996); Neuberger, 14 Nat. Biotechnol. 826 (1996); Lonberg & Huszar, 13 Intl. Rev. Immunol. 65 (1995)において記述される。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に向けられた抗体を産生する、ヒトBリンパ球の不死化によって調製することができる(そのようなBリンパ球は、個体から回収することができるか、またはインビトロで免疫することができる)。たとえば、Cole et al., Monoclonal Antibodies & Cancer Therapy 77 (Alan R. Liss, 1985); Boerner et al., 147 J. Immunol., 86 (1991);米国特許第5,750,373号を参照されたい。
「アフィニティ成熟」抗体とは、1つまたは複数のCDRにおける1つまたは複数の変化を有する抗体であり、該変化によって該変化を保有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性が改善している。好ましいアフィニティ成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル濃度またはピコモル濃度さえもの親和性を有するであろう。アフィニティ成熟抗体は、当技術分野において公知の技法によって産生される。Marks et al., 1992は、VHおよびVLドメインシャッフリングによるアフィニティ成熟を記述している。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム変異誘発は、Barbas et al., 91 PNAS 3809 (1994); Schier et al., 169 Gene 147 (1995); Yelton et al., 155 J. Immunol. 1994 (1995); Jackson et al., 154 J. Immunol. 3310 (1995); Hawkins et al., 226 J. Mol. Biol. 889 (1992)によって記述される。
抗体の「機能的抗原結合部位」とは、標的抗原に結合することができる部位である。抗原結合部位の抗原結合親和性は、抗原結合部位が由来する親抗体と必ずしも同程度に強い必要はないが、抗原の結合能は、抗原に対する抗体の結合を評価するために公知の多様な方法のいずれか1つを用いて測定可能でなければならない。関心対象抗体によって結合される抗原上のエピトープに結合する抗体に関してスクリーニングするために、Antibodies, A Laboratory Manual, (Harlow & Lane, Cold Spring Harbor Lab., 1988)において記述されるアッセイなどのルーチンの交叉ブロッキングアッセイを行うことができる。その上、本明細書における多価抗体の抗原結合部位の各々の抗原結合親和性は、定量的に同じである必要はない。多量体抗体に関して、機能的抗原結合部位の数は、米国特許出願公開第2005/0186208号の実施例2に記述される超遠心分離分析を用いて評価することができる。この分析法に従って、様々な比率の標的抗原 対 多量体抗体を組み合わせて、複合体の平均分子量を計算し、それによって、異なる数の機能的結合部位を仮定する。機能的結合部位の数を評価するために、これらの理論値を、得られた実際の実験値と比較する。
本明細書において用いられる「ブロッキング」抗体または抗体「アンタゴニスト」とは、それが結合する抗原の生物活性を阻害または減少させる抗体である。たとえば、いくつかの態様において、CEACAM1特異的アンタゴニスト抗体は、CEACAM1に結合して、CEACAM1の腫瘍細胞関連活性を阻害する。
それ以外であると明記している場合を除き、「多価抗体」という表現は、本明細書を通して、3つまたはそれより多くの抗原結合部位を含む抗体を示すために用いられる。たとえば、多価抗体は、3つまたはそれより多くの抗原結合部位を有するように遺伝子操作され、一般的にネイティブ配列のIgMまたはIgA抗体ではない。
指定された抗体の「生物学的特徴」を有する抗体とは、同じ抗原に結合する他の抗体から該抗体を識別する、該抗体の生物学的特徴の1つまたは複数を保有する抗体である。
本明細書において用いられる「抗体変異体」または「抗体変種」とは、種依存的抗体のアミノ酸残基の1つまたは複数が修飾されている、該種依存的抗体のアミノ酸配列変種を意味する。そのような変異体は必ず、種依存的抗体に対して100%未満の配列同一性または類似性を有する。1つの態様において、抗体変異体は、種依存的抗体の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのいずれかのアミノ酸配列と少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性または類似性を有するアミノ酸配列を有するであろう。この配列に関する同一性または類似性は、本明細書において、最大のパーセント配列同一性を達成するために配列を整列させかつ必要であればギャップを導入した後の、種依存的抗体残基と同一(すなわち、同じ残基)であるかまたは類似(すなわち共通の側鎖特性に基づく同じ群からのアミノ酸残基、以下を参照されたい)である、候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。可変ドメイン外部の抗体配列に対するN末端、C末端、または内部での伸長、欠失、または挿入のいずれを構築してもよく、それらは配列同一性または類似性に影響を及ぼさないであろう。
本明細書において記述されるアミノ酸配列を含む抗体またはポリペプチドの半減期を増加させるために、たとえば米国特許第5,739,277号に記述されるように、抗体(特に抗体断片)にサルベージ受容体結合エピトープを付着させることができる。たとえば、遺伝子操作された核酸分子によって発現された融合タンパク質がサルベージ受容体結合エピトープおよび本明細書において記述されるポリペプチド配列を含むように、サルベージ受容体結合エピトープをコードする核酸分子を、インフレームで、本明細書において記述されるポリペプチド配列をコードする核酸に連結することができる。本明細書において用いられる「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボ血清半減期の増加に関与するIgG分子(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを意味する(たとえば、Ghetie et al., 18 Ann. Rev. Immunol. 739 (2000)を参照されたい)。そのFc領域に置換を有し、血清半減期が増加した抗体も、WO 00/42072、WO 02/060919; Shields et al., 276 J. Biol. Chem. 6591 (2001); Hinton, 279 J. Biol. Chem. 6213-6216 (2004)において記述されている。もう1つの態様において、血清半減期はまた、たとえば他のポリペプチド配列を付着させることによっても増加させることができる。たとえば、本発明の方法において有用な抗体または他のポリペプチドを、血清アルブミンが該抗体またはポリペプチドに結合するように、血清アルブミンに、またはFcRn受容体に結合する血清アルブミンの一部に、または血清アルブミン結合ペプチドに付着させることができ、たとえばそのようなポリペプチド配列は、WO 01/45746において開示されている。1つの態様において、Fabの半減期は、これらの方法によって増加する。同様に、さらなる血清アルブミン結合ペプチド配列に関して、Dennis et al., 277 J. Biol. Chem. 35035 (2002)も参照されたい。
「単離された」抗体は、その天然の環境の成分から同定および分離および/または回収されている抗体である。その天然の環境からの混入成分は、抗体の診断または治療的使用を妨害する物質であり、これらは酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質を含みうる。ある態様において、抗体は、たとえば、(1)ローリー法によって決定された抗体の95重量%超まで、もしくは99重量%超まで、(2)スピニングカップ配列決定器を用いてN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは銀染色を用いて還元もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEによって均一になるまで、精製されるであろう。単離された抗体には、抗体の天然の環境からの少なくとも1つの成分が存在しないことから、インサイチューで組換え型細胞内の抗体が含まれる。しかし通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製段階によって調製されるであろう。
抗体、その抗体断片、もしくは抗原結合ペプチドなどのポリペプチド、または核酸分子の「一部」とは、参照核酸分子またはポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれより多くを含む。一部は、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100、200、300、400、500、600個、もしくはそれ以上を含むヌクレオチドを含むことができ、または3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、190、200個、もしくはそれ以上を含むアミノ酸を含むことができる。
「抗癌治療」という用語は、癌を処置するために有用な治療を意味する。抗癌治療剤の例には、たとえば、手術、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害剤、放射線療法において用いられる剤、血管新生抑制剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、ならびにHER-2抗体(たとえば、HERCEPTIN(登録商標))、抗CD20抗体、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)アンタゴニスト(たとえば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(たとえば、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、血小板由来増殖因子阻害剤(たとえば、GLEEVECTM(メシル酸イマチニブ))、COX-2阻害剤(たとえば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA、またはVEGF受容体の1つまたは複数に結合するアンタゴニスト(たとえば、中和抗体)、TRAIL/Apo2、および他の生物活性化学物質および有機化学物質等などの癌を処置するための他の剤が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。その併用もまた、本発明に含まれる。
本明細書において用いられる「細胞傷害剤」という用語は、細胞の機能を阻害または妨害する、および/または細胞の破壊を引き起こす物質を意味する。この用語には、放射活性同位元素(たとえば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、およびLuの放射活性同位元素)、化学療法剤、ならびにその断片および/または変種を含む、細菌、真菌、植物、または動物起源の低分子毒素または酵素的に活性な毒素などの毒素が含まれると意図される。
「化学療法剤」とは、癌の処置において有用な化学化合物である。化学療法剤の例には、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、イムプロスルファン、およびピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミンおよびメチルメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特に、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログであるトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログであるKW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロフォスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン系抗生物質(たとえば、カリケアミシン、特に、カリケアミシンγ1I、およびカリケアミシンωI1(Agnew, 33 Chem. Intl. Ed. Engl. 183 (1994)を参照されたい);ダイネミシンAを含むダイネミシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連するクロモプロテインエンジイン系抗生物質クロモフォア);アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジンなどのピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フォリン酸(frolinic acid)などの葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシンおよびアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK□多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;ジゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、たとえば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、ABRAXANE□パクリタキセルのクレモフォアフリーアルブミン結合ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Ill.)、およびTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル(chloranbucil);GEMZAR(登録商標)ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチンなどの白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イフォスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar、CPT-11)(5-FUおよびロイコボリンと併用したイリノテカンの治療計画を含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチン酸などのレチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン治療計画(FOLFOX)を含むオキサリプラチン;ラパチニブ(TYKERB(登録商標));細胞増殖を減少させる、PKC-α、Raf、H-Ras、EGFR(たとえば、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、およびVEGF-Aの阻害剤、ならびに上記の任意の薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
たとえば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェン)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびFARESTON(登録商標)トレミフェンを含む抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体調整剤(SERM)などの、腫瘍に及ぼすホルモンの作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤;たとえば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタン(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、およびARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールなどの、副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素であるアロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲン;ならびにトロキサシタビン(a 1,3ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特にたとえばPKC-α、Ralf、およびH-Rasなどの異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を阻害するオリゴヌクレオチド;VEGF発現阻害剤(たとえば、ANGIOZYME(登録商標)リボザイム)およびHER2発現阻害剤などのリボザイム;遺伝子治療ワクチン、たとえば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、およびVAXID(登録商標)ワクチンなどのワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rIL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ならびに上記の任意の薬学的に許容される塩、酸、または誘導体もまた、本定義に含まれる。
本明細書において用いられる「成長阻害剤」とは、インビトロおよび/またはインビボで細胞の成長を阻害する化合物または組成物を意味する。このように、成長阻害剤は、S期の細胞の割合を有意に減少させる剤でありうる。成長阻害剤の例には、G1期停止およびM期停止を誘導する剤などの、細胞周期の進行(S期以外の期で)を遮断する剤が挙げられる。古典的なM期遮断剤には、ビンカ(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、TAXOL(登録商標)、ならびにドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、およびブレオマイシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤が挙げられる。G1期で停止させる剤はまた、S期停止剤にも波及し、たとえばタモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、およびara-CなどのDNAアルキル化剤である。さらなる情報は、Murakami et al., Cell cycle regulation, oncogenes, & antineoplastic drugs, in MOLECULAR BASIS OF CANCER (Mendelsohn & Israel, eds., WB Saunders, Philadelphia, 1995)において認められうる。
本出願において用いられる「プロドラッグ」という用語は、親薬物と比較して腫瘍細胞に対する細胞傷害性が低くかつ酵素的に活性化または変換させてより活性な親化合物型にすることができる、薬学的に活性な物質の前駆体または誘導体型を意味する。たとえば、Wilman, 14 Biochem. Socy. Transactions 375, 615th Meeting Belfast (1986); Stella et al., Prodrugs: Chem. Approach to Targeted Drug Deliv., in DIRECTED DRUG DELIVERY, (Borchardt et al., (ed.), Humana Press, 1985)を参照されたい。本明細書において記述されるプロドラッグは、より活性な細胞傷害性の遊離薬物に変換することができる、リン酸エステル含有プロドラッグ、チオリン酸エステル含有プロドラッグ、硫酸エステル含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、置換されてもよいフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、または置換されてもよいフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5-フルオロシトシンおよび他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含むがこれらに限定されるわけではない。本発明において用いられるプロドラッグ型へと誘導体化することができる細胞傷害剤の例は、上記の化学療法剤を含むがこれらに限定されるわけではない。
「放射線治療」とは、正常に機能する能力を制限するためまたは細胞を完全に破壊するために、細胞に対して十分な損傷を誘導するように向けられるγ線またはβ線の使用を意味する。線量および処置の期間を決定するために当技術分野において公知の多くの方法が存在すると認識されるであろう。典型的な処置は、1回照射として与えられ、典型的な線量は1日あたり10から200単位(Gray)の範囲である。
「減少させるまたは阻害する」とは、約20%もしくはそれ以上、30%もしくはそれ以上、40%もしくはそれ以上、45%もしくはそれ以上、50%もしくはそれ以上、55%もしくはそれ以上、60%もしくはそれ以上、65%もしくはそれ以上、70%もしくはそれ以上、または75%、80%、85%、90%、95%、もしくはそれ以上の全体的な減少を引き起こすことができることを意味する。減少または阻害とは、たとえば、処置される障害の症状、転移または微小転移の存在またはサイズ、原発腫瘍のサイズ、休眠状態の腫瘍の存在またはサイズの、減少または阻害を意味しうる。
「静脈内注入」という用語は、動物またはヒト対象の静脈内に、およそ5分より長い、例えばおよそ30分から90分のあいだの期間にわたり薬物を導入することを意味するが、本発明によると、静脈内注入は代替的に、10時間もしくはそれ未満の時間をかけて投与される。「静脈内ボーラス」または「静脈内プッシュ」という用語は、およそ15分もしくはそれ未満で、例えば5分もしくはそれ未満で身体に薬物が投与されるように、動物またはヒトの静脈に薬物を投与することを意味する。
「皮下投与」という用語は、薬物貯留部位からの比較的遅い持続的な送達によって、動物またはヒト対象の皮膚の下に、好ましくは皮膚とその下の組織とのあいだの嚢内に、薬物を導入することを意味する。嚢は、皮膚を上につまむかまたは引っ張って、その下の組織から離すことによって作製することができる。
「皮下注入」という用語は、30分もしくはそれ未満、または90分もしくはそれ未満を含むがこれらに限定されるわけではない期間にわたる薬物貯留部位からの比較的遅い持続的な送達によって、動物またはヒト対象の皮膚の下に、好ましくは皮膚とその下の組織とのあいだの嚢内に、薬物を導入することを意味する。任意で、注入は、動物またはヒト対象の皮膚の下に埋め込まれた薬物送達ポンプの皮下植え込みによって行うことができ、ポンプは、30分、90分、または治療計画の期間全体に及ぶ期間などの既定の期間にわたり、薬物の既定量を送達する。
「皮下ボーラス」という用語は、動物またはヒト対象の皮膚の下への薬物の投与を意味し、ボーラス薬物送達はおよそ15分未満であり、例えば5分未満、または60秒未満でさえある。投与は好ましくは、皮膚とその下の組織とのあいだの嚢内に行われ、嚢は、たとえば皮膚をつまむかまたは引っ張って、その下の組織から離すことによって作製される。
「障害」とは、たとえば本明細書において記述される抗体による処置によって恩典が得られる任意の状態である。この用語は、当該の障害に哺乳動物を罹りやすくする病理学的状態を含む慢性および急性の障害または疾患を含む。本明細書において処置される障害の非制限的な例には、癌、特に膵臓癌が挙げられる。
「標識」という用語は、本明細書において用いられる場合、ポリペプチドに直接または間接的にコンジュゲートされる検出可能な化合物または組成物を意味する。標識は、それ自体検出可能でありうるか(例えば、放射性同位元素標識または蛍光標識)、または、酵素標識の場合には、検出可能である基質化合物または組成物の化学変化を触媒することができる。
「対象」とは、ヒト、またはウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、もしくはネコ等などの非ヒト哺乳動物を含むがこれらに限定されるわけではない哺乳動物を意味する。個体および患者もまた、本明細書における対象である。
本明細書において記述される特定の方法論、プロトコール、および試薬等は変化しうることから、本発明はそれらに限定されないと理解すべきである。本明細書において用いられる用語は、特定の態様を説明する目的に限られ、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を制限しないと意図される。
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられるように、本文が明らかにそうでないことを示している場合を除き、単数形は、複数形を含み、およびその逆も含む。実施例以外においてまたはそれ以外であると示されている場合を除き、本明細書において用いられる成分または反応条件の量を表す数字は全て、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解すべきである。
同定された全ての特許および他の出版物は、たとえば、本発明に関連して用いられうるそのような刊行物に記述される方法論を説明および開示する目的のために参照により本明細書に明白に組み入れられる。これらの刊行物は、それらの開示が単に本出願の提出日より前になされたために提供される。この点におけるいかなるものも、先行発明に基づいて、または他のいかなる理由にせよ、本発明者らがそのような開示に先行する権利がないと自認したと解釈すべきではない。日付に関する全ての声明またはこれらの文書の内容に関する表現は、本出願人に入手可能な情報に基づいており、これらの文書の日付または内容が正確であると認めたわけではない。
それ以外であると定義されている場合を除き、本明細書において用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。いかなる公知の方法、装置、および材料も本発明の実践または試験において用いられ得るが、この点における方法、装置、および材料を本明細書において記述する。
詳細な説明
本明細書において、新規組換え型抗CECAM1抗体および抗CEACAM1結合ペプチド、ならびに癌、特に膵臓癌の処置などの腫瘍細胞増殖抑制療法および腫瘍浸潤抑制療法におけるそれらの使用法が提供される。さらに、本明細書において記述される抗CECAM結合ペプチドおよび組換え型抗体を含む組成物は、「治療診断応用」、例えば個別に設定した医学的アプローチの有望な反応者を同定するために腫瘍生検におけるCEACAM1発現を決定するためのコンパニオン診断、治療に対する反応の連続的モニタリングおよび腫瘍のインビボでの検出のためにたとえば用いることができる、CEACAM1によって標的化される腫瘍形成の分子イメージングなどの、評価およびイメージング法において有用である。さらに、そのような診断は、個別に設定した医学的応用において用いられる抗癌治療の新規アプローチを提供する。さらに、本明細書において記述される抗CEACAM1結合ペプチドおよび抗CEACAM1抗体を含む組成物は、ナノ粒子、ポリプレックス、マイクロ粒子等などの送達剤と組み合わせて、他の診断および治療組成物の標的化部分として有用である。特に、本発明の態様は、多様な抗CEACAM1結合ペプチドにおいて用いることができる特異的抗CEACAM1抗体の相補性決定領域(CDR)配列を提供する。
本明細書において証明されるように、抗CEACAM1抗体である5F4の投与により、マウス膵臓癌モデルにおいて、膵臓癌の成長、および他の臓器への転移ならびに局所リンパ節への転移が防止される。したがって、本明細書において記述される組成物および方法は、膵臓癌の処置、阻害、および/または予防において、ならびに転移の処置、阻害、および/または予防において特にふさわしく、有用である。
CEACAM1
増えつつある臨床での証拠により、腫瘍および腫瘍浸潤リンパ球における高レベルCEACAM1発現が予後不良および高い転移リスクと相関することが示されているが、逆説的に言えば、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)は長い間、腫瘍抑制因子として作用すると考えられてきた。
癌胎児性抗原(CEA)関連細胞接着分子1(CEACAM1)は、免疫グロブリン(Ig)様膜貫通タンパク質のCEAファミリーメンバーである。Beauchemin et al., 252 Exp. Cell Res. 243 (1999); Gray-Owen & Blumberg, 6 Nat. Rev. Immunol. 433 (2006)。CEACAM1は、広範囲の組織および細胞タイプにおいて構成的に発現されている。しかし、ナチュラルキラー(NK)細胞およびT細胞におけるその発現は主に、サイトカインおよび膜活性化受容体活性化によって誘導される。Azuz-Lieberman et al., 17 Int. Immunol. 837 (2005); Gray-Owen & Blumberg, 2006; Moller et al., 65 Int. J. Cancer 740 (1996); Nakajima et al., 168 J. Immunol. 1028 (2002); Singer et al., 168 J. Immunol. 5139 (2002)。発現されると、CEACAM1は、有意な選択的RNAスプライシングにより特徴付けられ、それによって、ヒトにおいて11個のイソ型およびマウスにおいて少なくとも4つのイソ型となる。これらのイソ型は、細胞質テール(CT)の長さおよび細胞外Ig様ドメインの数が異なり、それに従って命名される。CEACAM1イソ型の大部分は、長い(CEACAM1-L)CTまたは短い(CEACAM1-S)CTのいずれかを有する。
CEACAM1-Lイソ型は、NK細胞およびT細胞に主に存在し、2つの免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含む。Beauchemin et al., 14 Oncogene 783 (1997); Chen et al., 180 J. Immunol. 6085 (2008); Singer et al., 168 J. immunol. 5139 (2002)。これまでの研究から、CEACAM1-Lイソ型が、T細胞受容体(TCR)/CD3複合体、B細胞受容体(BCR)、およびToll様受容体2(TLR-2)媒介免疫応答を阻害することが示されている。Boulton & Gray-Owen, 3 Nat. Immunol. 229 (2002); Chen et al., 86 J. Leukoc. Biol. 195 (2009); Chen et al., 2008; Lobo et al., 86 J. Leukoc. Biol. 205 (2009); Slevogt et al., 9 Nat. Immunol. 1270 (2008)。これらの場合の各々において、この阻害は、作用機序としてCEACAM1-L CT関連ITIMの増殖因子受容体チロシンキナーゼまたはSrcキナーゼ媒介リン酸化、Src Homologyホスファターゼ1(SHP-1)および/またはSHP-2の動員、およびその結果下流のシグナル伝達エレメントの阻害に関連している。Abou-Rjaily et al., 114 J. Clin. Invest. 944 (2004); Beauchemin et al., 1997; Chen et al., 2008; Huber et al., 274 J. Biol. Chem. 335 (1999); Izzi et al., 18 Oncogene 5563 (1999); Klaile et al., 187 J. Cell Biol. 553 (2009); Muller et al., 187 J. Cell Biol 569 (2009); Najjar, 13 Metab. 240 (2002); Nouvion et al. 123 J. Cell Sci. 4421 (2010)。
CEACAM1発現、またはその欠如は、多様な腫瘍、特に上皮細胞起源の腫瘍に関係している(Obrink, 60 Lung Cancer 309 (2008))。初期の研究から、腸上皮細胞(IEC)のトランスフォーメーションに由来する散在性の結腸直腸癌および前立腺癌は、一般的にCEACAM1を発現しないことが認識されており、CEACAM1-L CTイソ型が上皮細胞において一般的に発現されて典型的に阻害性であることを考慮すると、上皮におけるCEACAM1-Lイソ型が腫瘍抑制因子機能を果たすことを示している。Hsieh et al., 41 Prostate 31 (1999); Izzi et al., 1999; Obrink, 2008; Rosenberg et al., 53 Cancer Res. 4938 (1993)。これと一致して、腫瘍のサイズおよび数は、アゾキシメタン投与に曝露されたCeacam1-/-マウスでは増加する(Leung et al., 25 Oncogene 5527 (2006))。
しかし、そのような初期の試験とは対照的に、黒色腫(Gambichler et al., 131 Am. J. Pathol. 782 (2009); Markel et al., 59 Cancer Immunol. Immunother. 215 (2010));ならびに肺癌(Dango et al., 60 Lung Cancer 426 (2008); Sienel et al., 9 Clin. Cancer Res. 2260 (2003); Xi et al., 36 Nucl. Acids Res. 6535 (2008));膵臓癌(Simeone et al., 34 Pancreas 436 (2007));膀胱癌(Tilki et al., 57 Eur. Urol. 648(2010));結腸癌(Kang et al, 22 Intl. J. Colorectal Dis. 869 (2007));甲状腺癌(Liu et al., 26 Oncogene 2747 (2007));および前立腺癌(Briese et al., 25 Intl. J. Gynecol. Pathol. 161 (2006))を含む多種多様なヒト腫瘍における最近の多数の臨床試験により、腫瘍細胞または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)における高レベルCEACAM1発現(Markel et al., 177 J. Immunol. 6062 (2006))が、予後不良と直接相関することが観察されている。
CEACAM1は腫瘍の微小環境に対する他の効果にも関与しうることに注目することが、重要である。たとえば、新生血管によるCEACAM1の発現は、血管新生を促進し、かつ、おそらく同種親和性のまたは他の相互作用を介して、CEACAM1を有する腫瘍の血管および/またはリンパ管への遊走を促進し得、このことは、これらの遮断により腫瘍の進行が阻害され得ることを示している。Horst et al., 116 J. Clin. Invest. 1596 (2006); Wagener & Ergun, 261 Exp. Cell Res. 19 (2000); Zhou et al., 205 Pathol. Res. Pract. 483 (2009a); Zhou et al., 4 Nat. Immunol. 565 (2009b)。その上、CEACAM1は、T細胞(たとえば、IL-2受容体およびTCR)(Chen et al., 2008; Lee et al., 180J. Immunol. 6827 (2008))、B細胞(BCR)(Lobo et al, 2009)、および上皮細胞(EGFRおよびTLR2)(Slevogt et al., 9 Nat. Immunol. 1270 (2008))上の多様な活性化免疫受容体を負に調節しうるが、これは、関連する腫瘍の状況において抗腫瘍免疫にさらに影響を及ぼしうる。
CEACAM1が腫瘍そのものまたは関連する免疫エフェクター細胞のいずれかのレベルで抗腫瘍免疫を調節することを可能にする上記の作用機序の全てに共通の特色は、ITIM含有CEACAM1イソ型の発現を通して、SHP-1と会合することができることである。SHP-1が、チロシン残基の脱リン酸化によって多種多様な酵素的活性分子を不活化できることにより(Lorenz, 228 Immunol. Rev. 342 (2009))、CEACAM1-Lイソ型によるSHP-1との会合およびSHP-1の調節は、抗腫瘍免疫に関して広い意味を有しうる。たとえば、TおよびNK細胞では、SHP-1は典型的に脂質ラフト構造に含まれないが(Fawcett & Lorenz, 174 J. Immunol. 2849 (2005))、TCR/CD3複合体およびNKG2Dなどの受容体は典型的に細胞活性化の際に脂質ラフト構造に存在し、CEACAM1は、理論に拘束または制限されたくはないが、SHP-1をこの場所へと輸送するためのシャトルとして機能し、TCR/CD3複合体の場合には対応するチロシン残基の脱リン酸化によって、ZAP-70を不活化することができる(Chen et al., 2008)。この場合、TおよびNK細胞上にCEACAM1が発現されることは、生得のおよび適応免疫機構から腫瘍細胞が逃れる際に有利に働く。これに対し、腫瘍細胞においてEGFRなどの細胞膜会合増殖因子受容体の近位にSHP-1が動員されると、その成長促進特性の不活化が起こりうる。Abou-Rjaily et al., 2004。そのため、CEACAM1-Lイソ型は腫瘍細胞の成長に対して阻害的効果を示すことが考えられる。このように、CEACAM1-Lイソ型がSHP-1と会合してこれを多様な異なる細胞表面受容体に向けることができることは、原発腫瘍の発達および抗腫瘍免疫に対して広い効果を有することができる。
CEACAM1アンタゴニストおよび抗CEACAM1抗体
本明細書において、CEACAM1標的に特異的に結合する該CEACAM1標的に特異的な抗CEACAM1抗体またはその一部などのCEACAM1生物活性を中和、遮断、阻害、廃止、減少、または妨害することができるCEACAM1アンタゴニストを含む、組成物が提供される。いくつかの態様において、CEACAM1はヒトCEACAM1である。このように、本明細書において記述される組成物および方法において有用である抗CEACAM1抗体またはその一部は、CEACAM1に対して十分な親和性および特異性で結合し、すなわちCEACAM1に対して特異的であり、かつCEACAM1の生物活性を減少または阻害することができる、任意の抗体またはその抗体断片を含む。いくつかの局面において、CEACAM1に結合し、かつCEACAM1生物活性を阻害するかまたは免疫細胞などの細胞とCEACAM1との相互作用を遮断する、抗CEACAM1抗体またはその一部が、本明細書において提供される。本明細書において記述される組成物および方法によって有用である抗CEACAM1抗体およびその一部のさらなる説明および例、ならびにこれらを作製して特徴を調べる方法は、当技術分野において公知であるか、または本明細書において説明される。
抗CEACAM1抗体および抗体産生
本明細書において、いくつかの局面において、本明細書において記述される組成物および方法において用いるためのヒト化抗CEACAM1抗体もしくは複合ヒト抗CEACAM1抗体またはそれらの一部が提供される。本明細書において用いられる非ヒト(たとえば、マウス)抗体のヒト化型とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体を意味する。たいていの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域の残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域の残基に交換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に交換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には認められない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改良するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応して、FR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFR領域である、少なくとも1つ、および典型的に2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことができる。任意でヒト化抗体はまた、典型的にヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含むことができる。Jones et al., 1986); Riechmann et al., 332 Nature 323 (1988); Presta, 2 Curr. Op. Struct. Biol. 593 (1992)。
ヒト化抗体は、非ヒト供給源からその中に導入される1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基はしばしば、「インポート」残基と呼ばれ、これは典型的に、「インポート」可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的に、Winterと共同研究者(Jones et al., 1986); Riechmann et al., 1988); Verhoeyen et al., 239 Science 1534 (1988))の方法に従って、ヒト抗体の対応する配列の代わりに齧歯類のCDRまたはCDR配列を用いることによって行うことができる。したがって、そのようなヒト化抗体は、実質的にインタクトではないヒト可変ドメインが非ヒト種からの対応する配列で置換されている、キメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際に、ヒト化抗体は典型的に、いくつかのCDR残基およびおそらくいくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似の部位からの残基で置換されている、ヒト抗体である。いくつかの態様において、抗CEACAM1抗体5F4の可変重鎖(SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:30)および/または可変軽鎖(SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、またはSEQ ID NO:32)ドメインのアミノ酸配列を含む1つまたは複数の可変ドメインを含む、ヒト化抗体が提供される。
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、免疫グロブリン重鎖における残基の番号付けは、ワールドワイドウェブ上で入手可能であり、本明細書においてその全体が明白に参照により本明細書に組み入れられる、Kabat et al. , Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)におけるEUインデックスの番号付けである。「KabatのEUインデックス」とは、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを意味する。
本明細書において用いられる「抗体可変ドメイン」とは、相補性決定領域(CDR、すなわち、CDR1、CDR2、およびCDR3)およびフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖および重鎖の部分を意味する。VHとは、重鎖の可変ドメインを意味する。VLとは、軽鎖の可変ドメインを意味する。本明細書において用いられる方法に従って、CDRおよびFRに割り付けされるアミノ酸の位置は、Kabat(Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987 and 1991))に従って定義される。抗体または抗原結合断片のアミノ酸番号付けも同様にKabatの番号付けに従う。
本明細書において用いられる「相補性決定領域」(CDR、すなわちCDR1、CDR2、およびCDR3)という用語は、その存在が抗原結合にとって必要である抗体可変ドメインのアミノ酸残基を意味する。各可変ドメインは典型的に、CDR1、CDR2、およびCDR3として同定される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabatによって定義される「相補性決定領域」からのアミノ酸残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおけるおよそ24〜34(L1)、50〜56(L2)、および89〜97(L3)番目の残基、ならびに重鎖可変ドメインにおけるおよそ31〜35(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3)番目の残基;Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public health Services, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))および/または「超可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメインにおけるおよそ26〜32(L1)、50〜52(L2)、および91〜96(L3)番目の残基ならびに重鎖可変ドメインにおけるおよそ26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)番目の残基;Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含みうる。いくつかの態様において、相補性決定領域は、Kabatに従って定義されるCDR領域と超可変ループの両方からのアミノ酸を含みうる。
ハイブリドーマによる生成および産生のほかに、CEACAM1に特異的に結合する抗体または抗体の部分は、McCafferty et al., 348 Nature 552 (1990); Clackson et al., 352 Nature, 624 (1991)において記述される技術を用いて生成された抗体ファージライブラリから単離することができる。 Marks et al., 222 J. Mol. Biol. 581 (1991)は、ファージライブラリを用いるマウスおよびヒト抗体の単離をそれぞれ記述している。その後の出版物は、鎖シャッフリング(Marks et al., 10 Bio/Technol. 779 (1992))による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生、ならびに非常に大きいファージライブラリを構築するために戦略としてのコンビナトリアル感染およびインビボ組換えを記述している。Waterhouse et al., 21 Nuc. Acids. Res. 2265 (1993)。このように、これらの技術は、モノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する実行可能な代替策である。
CEACAM1に特異的に結合する抗体または抗体断片をコードするDNA配列は、たとえば、ヒト重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインのコード配列で、相同なマウス配列を置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison et al., 81 PNAS 6851 (1984))、または本明細書において他所で同様に記述されているように非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てまたは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合させることによって、修飾することもできる。
CEACAM1特異的組換え型抗体またはその一部のペプチドをコードすることができる(またはそのようなオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの組に対して相補的である)適したオリゴヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチドの組を、(上記の技法を用いて)同定し、合成し、そして当技術分野において周知の手段によって、抗CEACAM1抗体またはその可変もしくは定常領域を発現することができる細胞に由来するDNAまたはcDNA調製物にハイブリダイズさせる。「最も可能性が高い」抗CEACAM1領域ペプチドコード配列と相補的な一本鎖オリゴヌクレオチド分子を、当業者に周知の技法を用いて合成することができる。Belagaje et al., 254 J. Biol. Chem. 5765-80 (1979); Maniatis et al., in MOLEC. MECH. CONTROL GENE EXPRESSION (Nierlich et al., eds., Acad. Press, NY, 1976); Wu et al., 1978; Khorana, 203 Science 614-25 (1979)を参照されたい。
さらに、DNA合成は、自動合成機を用いることによって行うことができる。
同様に、本発明において用いるための抗体コード領域もまた、本明細書において記述される抗体およびペプチドの変種(アゴニスト)が得られる標準的な分子生物学技術を用いて既存の抗体遺伝子を変化させることによって提供することができると意図される。そのような変種は、組換え型抗CEACAM1抗体またはペプチドのアミノ酸配列において欠失、付加、および置換を含むがこれらに限定されるわけではない。
さらに、非免疫グロブリンポリペプチドで抗体の定常ドメインを置換することができ、または、それらで抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインを置換して、ある抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と異なる抗原に対する特異性を有するもう1つの抗原結合部位とを含む、キメラ二価抗体を作製することができる。
したがって、本明細書において、いくつかの局面において、本明細書において記述される抗体の配列を含むまたは抗体の配列からなるヒト化抗CEACAM1抗体またはその一部が提供される。これらの局面のいくつかの態様において、ヒト化抗CEACAM1抗体またはその抗原結合部分の1つもしくは複数の重鎖CDR領域および/または1つもしくは複数の軽鎖CDR領域は、本明細書において記述される抗体の配列を含むまたは抗体の配列からなる。
ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3によって産生されるモノクローナル抗体の重鎖のCDR1のアミノ酸は
である。ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3によって産生されるモノクローナル抗体の重鎖のCDR2のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3によって産生されるモノクローナル抗体の重鎖のCDR3のアミノ酸は、
である。
ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR1のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR2のアミノ酸配列は、
である。ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR3のアミノ酸は、
である。
ハイブリドーマ34B1/2E8/2E6によって産生されるモノクローナル抗体の重鎖のCDR1のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ34B1/2E8/2E6によって産生されるモノクローナル抗体の重鎖のCDR2のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ34B1/2E8/2E6によって産生されるモノクローナル抗体の重鎖のCDR3のアミノ酸は、
である。
ハイブリドーマ34B1/2E8/2E6によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR1のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ34B1/2E8/2E6によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR2のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ34B1/2E8/2E6によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR3のアミノ酸は、
である。
ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10によって産生されるモノクローナル抗体の重鎖のCDR1のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10によって産生されるモノクローナル抗体の重鎖のCDR2のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10によって産生されるモノクローナル抗体の重鎖のCDR3のアミノ酸は、
である。
ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10(seq1)によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR1のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10(seq1)によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR2のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10(seq1)によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR3のアミノ酸は、
である。
ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10(seq2)によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR1のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10(seq2)によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR2のアミノ酸は、
である。ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10(seq2)によって産生されるモノクローナル抗体の軽鎖のCDR3のアミノ酸は、
である。
したがって、本明細書において記述されるいくつかの局面において、ヒト化抗CEACAM1抗体またはその一部の1つもしくは複数の可変重鎖CDR領域および/または1つもしくは複数の可変軽鎖CDR領域は、本明細書において記述されるモノクローナル抗体の配列を含むまたはモノクローナル抗体の配列からなる。
いくつかのそのような態様において、1つまたは複数の可変重鎖CDR1領域は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:7、およびSEQ ID NO:13からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
いくつかのそのような態様において、1つまたは複数の可変重鎖CDR2領域は、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:8、およびSEQ ID NO:14からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
いくつかのそのような態様において、1つまたは複数の可変重鎖CDR3領域は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:9、およびSEQ ID NO:15からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
いくつかのそのような態様において、1つまたは複数の可変軽鎖CDR1領域は、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:16、およびSEQ ID NO:19からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
いくつかのそのような態様において、1つまたは複数の可変軽鎖CDR2領域は、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:17、およびSEQ ID NO:20からなる群より選択されるペプチド配列を含む。
いくつかのそのような態様において、1つまたは複数の可変軽鎖CDR3領域は、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:18、およびSEQ ID NO:21からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、ヒトCEACAM1がそのリガンドに結合するのを遮断するヒト化抗CEACAM1モノクローナル抗体は、変異したヒトIgG1フレームワーク領域、ならびに本明細書において記述される抗ヒトCEACAM1モノクローナル抗体5F4からの1つもしくは複数の重鎖CDR領域および/または1つもしくは複数の軽鎖CDR領域を含む。いくつかの態様において、ヒトCEACAM1がそのリガンドに結合するのを遮断するヒト化抗CEACAM1モノクローナル抗体は、変異したヒトIgG4フレームワーク領域、ならびに本明細書において記述されるマウス抗ヒトCEACAM1モノクローナル抗体5F4からの1つもしくは複数の重鎖CDR領域および/または1つもしくは複数の軽鎖CDR領域を含む。
ヒト化抗体を作製するのに用いるための軽鎖および重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を減少させるために重要である。いわゆる「ベストフィット」法に従って、5F4抗体のドメインなどの抗体の可変重鎖ドメインおよび可変軽鎖ドメインのアミノ酸配列(それぞれ、SEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:27)を、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングする。次に、齧歯類の配列に最も近いヒト配列を、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として容認する。Sims et al., 151 J. Immunol. 2296 (1993); Chothia et al., 196 J. Mol. Biol. 901 (1987)。もう1つの方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全ヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを用いる。同じフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体のために用いることができる(Carter et al., 89 PNAS 4285 (1992); Presta et al., 1993)。
ヒト化される抗体は、抗原に対して高い親和性および他の都合のよい生物学的特性、たとえば本明細書において記述される抗CEACAM1抗体5F4の抗腫瘍または抗転移特性を保持することがさらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法によれば、親配列および様々な概念的ヒト化配列の三次元モデルを用いる親配列および該ヒト化産物の分析プロセスによって、ヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般的に入手可能であり、当技術分野において周知である。選択された候補免疫グロブリン配列に関して潜在的な三次元コンフォメーション構造を図解および表示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの表示を調べることによって、候補免疫グロブリン配列の機能における潜在的な残基の役割を分析する、すなわちその抗原に対する候補免疫グロブリンの結合能に影響を及ぼす残基を分析することができる。このように、標的抗原に対する親和性の増加などの所望の抗体特徴が得られるように、レシピエントからFR残基を選択して結合させて配列をインポートすることができる。一般的に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接および最も実質的に関係している。
または、免疫すると、内因性の免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができる、トランスジェニック動物(たとえば、マウス)を産生することが可能である。たとえば、キメラおよび生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失によって、内因性の抗体産生の完全な阻害が得られることが記述されている。そのような生殖系列変異体マウスにヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイを移入すると、抗原チャレンジによってヒト抗体が産生されるであろう。たとえば、Jakobovits et al., 90 PNAS 2551 (1993); Jakobovits et al., 362 Nature 255 (1993); Bruggermann et al., 7 Yr. Immunol. 33 (1993); Duchosal et al., 355 Nature 258 (1992)を参照されたい。
または、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al., 348 Nature 552 (1990))を用いて、免疫したドナーの免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからインビトロでヒト抗体および抗体断片を産生することができる。この技術に従って、抗体Vドメイン遺伝子は、M13またはfdなどの糸状バクテリオファージの主または副コートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面に機能的抗体断片として表示される。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むことから、抗体の機能的特性に基づく選択によってもまた、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子が選択される。このように、ファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、多様なフォーマットで行うことができる。その論評に関しては、たとえばJohnson et al., 3 Curr. Op. Str. Biol. 564 (1993)を参照されたい。V遺伝子セグメントのいくつかの起源を、ファージディスプレイのために用いることができる。Clackson et al., 1991は、免疫したマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さなランダムコンビナトリアルライブラリから抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。免疫していないヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーを構築することができ、かつMarks et al., 1991、またはGriffith et al., 12 EMBO J. 725 (1993)によって記述される技術に本質的に従って、多様な抗原(自己抗原を含む)アレイに対する抗体を単離することができる。同様に、米国特許第5,565,332号および第5,573,905号を参照されたい。
ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞によっても生成することができる(米国特許第5,567,610号および第5,229,275号を参照されたい)。
複合ヒト抗体
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、脱免疫した100%遺伝子操作ヒト抗体を生成する複合ヒト抗体技術を用いて、たとえばAntitopeによって記述される技術を用いて、本明細書において記述される組成物および方法において用いるための「複合ヒト」または「複合ヒト化」抗CEACAM1抗体を調製することができる。
簡単に説明すると、本明細書において用いられる「複合ヒト抗体」または「複合ヒト化抗体」は、5F4抗体などの開始前駆抗ヒトCEACAM1モノクローナル抗体の抗原結合にとって重要なモノクローナル抗体配列を維持するように選択され、「インシリコツール」(Holgate & Baker, 2009)を用いて、潜在的なT細胞エピトープの存在に関して全てが選別されている、無関係なヒト抗体のV領域に由来する多数の配列セグメント(「複合体」)を含む。ヒト配列セグメントと開始抗体V領域の全ての区分とが厳密に適合すること、および抗体合成前にCD4+ T細胞エピトープが消失することにより、この技術は、抗原特異性にとって必要な配列を予め分析することによって最適な親和性および特異性を維持しながら、「100%遺伝子操作複合ヒト」治療抗体の開発における免疫原性を回避することができる(Holgate & Baker, 2009)。
したがって、いくつかの態様において、抗CEACAM1複合ヒト抗体は、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を有するペプチドから選択される可変重鎖(VH)アミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、抗CEACAM1複合ヒト抗体は、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、およびSEQ ID NO:32からなる群より選択される可変軽鎖(VL)アミノ酸配列を含む。
いくつかの態様において、抗CEACAM1複合ヒト抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1領域を含みうる。いくつかの態様において、抗CEACAM1複合ヒト抗体は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2領域を含みうる。いくつかの態様において、抗CEACAM1複合ヒト抗体は、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3領域を含む。
いくつかの態様において、抗CEACAM1複合ヒト抗体は、SEQ ID NO:4の配列を含む軽鎖CDR1領域を含む。いくつかの態様において、抗CEACAM1複合ヒト抗体は、SEQ ID NO:5のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2領域を含む。いくつかの態様において、抗CEACAM1複合ヒト抗体は、SEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3領域を含む。
抗CEACAM1抗体断片
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、たとえば、抗CEACAM1 5F4抗体;SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、およびSEQ ID NO:3からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の重鎖CDR領域を含む抗CEACAM1抗体;SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、およびSEQ ID NO:6からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の軽鎖CDR領域を含む抗CEACAM1抗体;SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、およびSEQ ID NO:30からなる群より選択される可変重鎖(VH)アミノ酸配列を含む抗CEACAM1複合ヒトまたは複合ヒト化抗体;および/またはSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、およびSEQ ID NO:32からなる群より選択される可変軽鎖(VL)アミノ酸配列を含む抗CEACAM1複合ヒト抗体、などのCEACAM1に対して特異的な組換え型抗体を、その抗体断片へと処理または加工することができる。
抗体断片を産生するために、様々な技術が開発されており、利用可能である。従来、これらの断片は、インタクト抗体のタンパク質分解消化により誘導された。たとえば、Morimoto et al., 24 J. Biochem. Biophys. Meths. 107 (1992); Brennan et al., 229 Science 81 (1985)を参照されたい。しかし、これらの断片は、現在では組換え型宿主細胞によって直接産生することができる。たとえば、抗体断片を、本明細書において考察される抗体ファージライブラリから単離することができる。または、Fab'-SH断片を大腸菌(E. coli)から直接回収して、化学的に連結させてF(ab')2断片を形成することができる(Carter et al., 1992)。もう1つのアプローチに従って、F(ab')2断片を組換え型宿主細胞培養から直接単離することができる。抗体断片を産生するための他の技術は、当業者に明らかであろう。他の態様において、選択される抗体断片は、一本鎖Fv断片(scFv)である。たとえばWO 93/16185を参照されたい。
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、ヒトCEACAM1特異的抗体断片は、VL、CL、VH、およびCH1ドメインを含むFab断片である。Fab断片は、軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメイン、ならびに重鎖の可変ドメインおよび第一の定常ドメイン(CH1)を含む、または本質的にそれらからなる。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を有するペプチドから選択される。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、およびSEQ ID NO:15からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の重鎖CDR領域を含む。いくつかのそのような態様において、VLドメインは、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、およびSEQ ID NO:32からなる群より選択される。いくつかのそのような態様において、VLドメインは、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、およびSEQ ID NO:21からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の軽鎖CDR領域を含む。
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、ヒトCEACAM1特異的抗体断片はFab'断片であり、これはCH1ドメインのC末端で1つまたは複数のシステイン残基を有するFab断片を意味する。
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、ヒトCEACAM1特異的抗体断片は、VHおよびCH1ドメインを含む、または本質的にそれらからなるFd断片である。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を有するペプチドから選択される。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、およびSEQ ID NO:15からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の重鎖CDR領域を含む。
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、ヒトCEACAM1特異的抗体の部分は、VHおよびCH1ドメインならびにCH1ドメインのC末端で1つまたは複数のシステイン残基を含むFd'断片である。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を有するペプチドから選択される。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、およびSEQ ID NO:15からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の重鎖CDR領域を含む。いくつかのそのような態様において、VLドメインは、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、およびSEQ ID NO:32からなる群より選択される。いくつかのそのような態様において、VLドメインは、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、およびSEQ ID NO:21からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の軽鎖CDR領域を含む。
一本鎖FvまたはscFv抗体断片は、これらのドメインが1つのポリペプチド鎖に存在するように、抗体のVHおよびVLドメインを含むまたは本質的にそれらからなる。一般的に、Fvポリペプチドはさらに、VHとVLドメインのあいだにポリペプチドリンカーを含み、それによってscFvは抗原結合にとって所望の構造を形成することができる。たとえばPluckthun, 113 Pharmacology Monoclonal Antibodies 269(Rosenburg & Moore, eds., Springer-Verlag, New York, 1994)を参照されたい。したがって、本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、ヒトCEACAM1特異的抗体断片は、抗体の1つのアームのVLおよびVHドメインを含むまたは本質的にそれらからなるFv断片である。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、およびSEQ ID NO:30からなる群より選択される。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、およびSEQ ID NO:15からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の重鎖CDR領域を含む。いくつかのそのような態様において、VLドメインは、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、およびSEQ ID NO:32からなる群より選択される。いくつかのそのような態様において、VLドメインは、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、およびSEQ ID NO:21からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の軽鎖CDR領域を含む。
ダイアボディという用語は、同じポリペプチド鎖(VHおよびVL)において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む2つの抗原結合部位を有する、小さな抗体部分を意味する。同じ鎖上の2つのドメイン間の対を形成させるには短すぎるリンカーを用いることによって、ドメインは、もう1つの鎖の相補的ドメインと対を形成するように強いられ、2つの抗原結合部位を作製する。たとえば、EP 404,097;WO 93/11161;Hollinger et al., 90 PNAS 6444 (1993)を参照されたい。
したがって、本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、ヒトCEACAM1特異的抗体部分は、同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む2つの抗原結合部位を含む、ダイアボディである。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を有するペプチドから選択される。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、およびSEQ ID NO:15からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の重鎖CDR領域を含む。いくつかのそのような態様において、VLドメインは、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、およびSEQ ID NO:32からなる群より選択される。いくつかのそのような態様において、VLドメインは、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、およびSEQ ID NO:21からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の軽鎖CDR領域を含む。
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、ヒトCEACAM1特異的抗体部分は、VHドメインを含むまたは本質的にそれらからなるdAb断片である。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を有するペプチドから選択される。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、およびSEQ ID NO:15からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の重鎖CDR領域を含む。
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、ヒトCEACAM1特異的抗体部分は、1つまたは複数の単離されたCDR領域を含むまたは本質的にそれらからなる。いくつかのそのような態様において、単離されたCDR領域は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、およびSEQ ID NO:15からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の重鎖CDR領域を含む。いくつかのそのような態様において、単離されたCDR領域は、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、およびSEQ ID NO:21からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の軽鎖CDR領域を含む。
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、ヒトCEACAM1特異的抗体部分は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab'断片を含む二価の断片を含むF(ab')2断片である。
線形抗体とは、Zapata et al. , Protein Engin., 8(10): 1057-1062 (1995)によって記述される抗体を意味する。簡単に説明すると、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。線形抗体は、二重特異性または単特異性でありうる。
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、ヒトCEACAM1特異的抗体断片は、相補的軽鎖ポリペプチドと共に、抗原結合領域の対を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む線形抗体である。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を有するペプチドから選択される。いくつかのそのような態様において、VHドメインは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、およびSEQ ID NO:15からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の重鎖CDR領域を含む。いくつかのそのような態様において、VLドメインは、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、およびSEQ ID NO:32からなる群より選択される。いくつかのそのような態様において、VLドメインは、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、およびSEQ ID NO:21からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の軽鎖CDR領域を含む。
これらの局面の他の態様において、組換え型ヒトCEACAM1特異的抗体部分は、本明細書において記述され、ハイブリドーマ5F4によって産生されるモノクローナル抗CEACMAM1抗体5F4と同じエピトープに対して特異性を有する。これらの局面の他の態様において、組換え型ヒトCEACAM1特異的抗体部分は、本明細書において記述され、ハイブリドーマ26H7によって産生されるモノクローナル抗CEACMAM1抗体26H7と同じエピトープに対して特異性を有する。これらの局面の他の態様において、組換え型ヒトCEACAM1特異的抗体部分は、本明細書において記述され、ハイブリドーマ34B1によって産生されるモノクローナル抗CEACMAM1抗体34B1と同じエピトープに対して特異性を有する。
他のアミノ酸配列修飾
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、本明細書において記述されるCEACAM1に対して特異的な抗体またはその抗体断片のアミノ酸配列修飾が企図される。たとえば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい可能性がある。抗体のアミノ酸配列変種は、抗体核酸に適切なヌクレオチド変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。そのような修飾は、たとえば抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または挿入、および/または置換を含む。最終構築物が、所望の特徴、たとえば結合特異性、生物活性の阻害を保有する限り、最終構築物を得るための欠失、挿入、および置換のいかなる組み合わせも行われる。アミノ酸変化はまた、グリコシル化部位の数または配置を変化させることなどの、抗体の翻訳後プロセスを変化させることができる。
変種抗CEACAM1抗体またはペプチドは、完全に機能的でありうるか、または1つもしくは複数の活性の機能を欠如しうる。完全に機能的な変種は典型的に、保存的変化のみ、または重要でない残基もしくは重要でない領域において変化を含む。機能的変種はまた、機能に変化が起こらないまたは有意でない変化が起こる類似のアミノ酸の置換を含みうる。または、そのような置換は、機能にある程度の正のまたは負の影響を及ぼしうる。非機能的変種は典型的に、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、もしくは切断、または重要な残基もしくは重要な領域における置換、挿入、逆位、もしくは欠失を含む。
変異誘発にとって好ましい位置である抗体のある残基または領域を同定するための有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれ、Cunningham & Wells, Science 244: 1081 (1989)によって記述される。この場合、標的残基の1つの残基または基を同定して(たとえば、arg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電残基)、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼすように中性または陰性荷電アミノ酸(典型的にアラニンまたはポリアラニン)に交換する。次に、置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸の位置を、置換部位でまたは置換部位に関してさらなるまたは他の変種を導入することによって精査する。このように、アミノ酸配列変種を導入するための部位は予め決定されているが、変異そのものの性質は、予め決定されている必要はない。たとえば、所定の部位での変異の性能を分析するために、alaスキャニングまたはランダム変異誘発を、標的コドンまたは領域で行って、発現された抗体変種を所望の活性に関してスクリーニングする。
アミノ酸配列挿入は、1つの残基から100個またはそれより多くの残基を含むポリペプチドまでの多様な長さのアミノおよび/またはカルボキシ末端融合、ならびに1つまたは多数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体または細胞傷害性ポリペプチドに融合した抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変種は、酵素またはたとえばビオチンなどの抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの、抗体のN末端またはC末端の融合を含む。
もう1つのタイプの変種は、アミノ酸置換変種である。これらの変種は、抗体分子において異なる残基に交換された少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換による変異誘発に関する最大の関心対象となる部位は超可変領域を含むが、FRの変化もまた、本明細書において記述されるCEACAM1に対して特異的な抗体またはその抗体断片における使用が企図される。
CEACAM1に対して特異的な抗体またはその抗体断片の生物学的特性の実質的な修飾は、(a)たとえばシートもしくはらせんコンフォメーションとしての置換領域におけるポリペプチド骨格構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩の維持に及ぼすその効果が有意に異なる置換を選択することによって行われる。アミノ酸は、側鎖の特性の類似性に従って群分けすることができる(たとえば、Lehninger, BIOCHEMISTRY (2nd ed., Worth Publishers, New York, 1975を参照されたい):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。このように、たとえば、5F4重鎖のCDR1は、X2X2X4X2X1X2として表すことができ、式中X2は、Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、またはGln(Q)であり;X4は、Lys(K)、Arg(R)、またはHis(H)であり;およびX1は、Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、またはMet(M)である。
または、天然に存在する残基を、共通の側鎖特性に基づいて群に分けることができる:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖の方向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。非保存的置換とは、これらのクラスの1つにおけるあるメンバーの、別のクラスへの交換を必然的に伴う。
CEACAM1に対して特異的な抗体またはその抗体断片の適切なコンフォメーションの維持に関係しない任意のシステイン残基を、分子の酸化に対する安定性を改善するためおよび異常な架橋形成を防止するために、一般的にはセリンで置換することができる。逆に、その安定性を改善するためにシステイン結合を抗体に付加することができる(特に、抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
特に好ましいタイプの置換変種は、親抗体(たとえば、本明細書において提供される、モノクローナル抗CEACAM1抗体5F4、またはCEACAM1に対して特異的なヒト化もしくは複合ヒト抗体もしくはその抗体断片)の1つまたは複数の超可変領域の残基を置換する段階を伴う。一般的に、さらなる開発のために選択される結果としての変種は、それらが生成される親抗体と比較して、改善された生物学的特性を有するであろう。そのような置換変種を生成するための簡便な方法は、ファージディスプレイを用いるアフィニティ成熟を伴う。簡単に説明すると、いくつかの超可変領域部位(たとえば、6〜7個の部位)を変異させて、各部位で起こりうる全てのアミノ酸置換を生成する。このように生成された抗体変種は、各粒子内でパッケージされたM13の遺伝子III産物との融合体として糸状ファージ粒子から一価の様式で表示される。次に、ファージ上に表示された変種を、本明細書において開示されるその生物活性(たとえば、結合親和性)に関してスクリーニングする。修飾のための候補超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング変異誘発を行って、抗原結合に対して有意に寄与する超可変領域残基を同定することができる。
または、もしくはさらに、CEACAM1に対して特異的な抗体またはその抗体断片とヒトCEACAM1との接点を同定するために抗原抗体複合体の結晶構造を分析することは、有益でありうる。そのような接触残基および隣接残基は、本明細書において入念に作られた技術に従う置換のための候補である。そのような変種を生成した後、変種のパネルを、本明細書において記述されるスクリーニングに供して、1つまたは複数の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体またはその抗体断片を、さらなる開発のために選択することができる。
抗体のアミノ酸変種のもう1つのタイプは、抗体の当初のグリコシル化パターンを変化させる。「当初のグリコシル化パターンを変化させる」とは、抗体において認められる1つまたは複数の炭水化物部分を欠失させること、および/または抗体に存在しない1つまたは複数のグリコシル化部位を付加することを意味する。抗体のグリコシル化は、典型的にN結合またはO結合のいずれかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の付着ことを意味する。Xがプロリンを除く任意のアミノ酸であるトリペプチド配列アスパラギン-X-セリンおよびアスパラギン-X-トレオニンは、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的付着のための認識配列である。このように、ポリペプチドにこれらのトリペプチド配列のいずれかが存在することにより、潜在的なグリコシル化部位が作製される。O結合型グリコシル化とは、糖であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの1つによる、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの付着を意味するが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも同様に用いることができる。CEACAM1に対して特異的な抗体または抗体断片にグリコシル化部位を付加することは、上記のトリペプチド配列(N結合型グリコシル化部位)の1つまたは複数を含むようにアミノ酸配列を変化させることによって行われる。変化はまた、当初の抗体の配列(O結合型グリコシル化部位)への、1つまたは複数のセリンまたはトレオニン残基の付加または置換によっても行うことができる。
抗体が、Fc領域を含む場合、それに付着する炭水化物を変化させることができる。たとえば、抗体のFc領域に付着するフコースを欠いた成熟炭水化物構造を有する抗体が記述されている。たとえば、米国特許出願公開第2003/0157108号;第2004/0093621号を参照されたい。抗体のFc領域に付着した炭水化物に二分岐N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を有する抗体は、WO 03/011878;米国特許第6,602,684号に参考文献として引用されている。抗体のFc領域に付着したオリゴ糖に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体は、WO 97/30087において報告される。変化した炭水化物がそのFc領域に付着している抗体に関しては、WO 98/58964;WO 99/22764も参照されたい。
いくつかの態様において、たとえば抗体の抗原依存性細胞傷害性(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を増強するために、本明細書において記述されるCEACAM1に対して特異的な抗体またはその抗体断片を、エフェクター機能に関して修飾することが望ましい可能性がある。これは、抗体またはその抗体断片のFc領域に1つまたは複数のアミノ酸置換を導入することによって行うことができる。またはもしくはさらに、システイン残基をFc領域に導入することができ、それによってこの領域において鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。このように生成されたホモ二量体抗体は、改善されたインターナリゼーション能および/または増加した補体依存性細胞傷害性および抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有しうる。Caron et al., 176 J. Exp. Med. 1191 (1992); Shopes, 148 J. Immunol. 2918 (1992)を参照されたい。増強された抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体はまた、Wolff et al., 53 Cancer Res. 2560 (1993)に記述されるヘテロ二官能性架橋剤を用いて調製することができる。または、二つのFc領域を有し、それによって増強された補体溶解およびADCC能を有しうる抗体を遺伝子操作することができる。Stevenson et al., 3 Anti-Cancer Drug Design 219 (1989)を参照されたい。
たとえば、WO 00/42072は、そのFc領域にアミノ酸置換を含む、ヒトエフェクター細胞の存在下で改善されたADCC機能を有する抗体を記述する。好ましくは、改善されたADCCを有する抗体は、Fc領域の298、333、および/または334番目の位置(残基のEU番号付け)で置換を含む。典型的に、改変されたFc領域は、これらの位置の1つ、2つ、または3つで置換を含む、または置換からなるヒトIgG1 Fc領域である。そのような置換を任意で、C1q結合および/またはCDCを増加させる置換と組み合わせる。
変化したC1q結合および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を有する抗体は、WO 99/51642、米国特許第6,194,551号、第6,242,195号、第6,528,624号、および第6,538,124号において記述される。抗体は、そのFc領域の270、322、326、327、329、313、333、および/または334番目の位置のアミノ酸(残基のEu番号付け)の1つまたは複数でアミノ酸置換を含む。
本明細書において記述されるCEACAM1に対して特異的な抗体の血清半減期を増加させるために、たとえば米国特許第5,739,277号に記述される抗体(特に抗体断片)にサルベージ受容体結合エピトープを組み入れることができる。本明細書において用いられる「サルベージ受容体結合エピトープ」という用語は、IgG分子のインビボ血清半減期の増加に関与するIgG分子(たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを意味する。
新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合が改善したおよび半減期が増加した抗体は、WO 00/42072および米国特許出願公開第2005/0014934号に記述される。これらの抗体は、FcRnに対するFc領域の結合を改善させる1つまたは複数の置換をその中に有するFc領域を含む。たとえば、Fc領域は、238、250、256、265、272、286、303、305、307、311、312、314、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、428、または434番目の位置(残基のEu番号付け)の1つまたは複数で置換を有しうる。FcRn結合が改善された好ましいFc領域を含む抗体変種は、そのFc領域の307、380、および434番目の位置(残基のEU番号付け)の1つ、2つ、または3つでアミノ酸置換を含む。1つの態様において、抗体は、307/434番目の位置で変異を有する。3つまたはそれより多く(たとえば、4つ)の機能的抗原結合部位を有するCEACAM1に対して特異的な遺伝子操作抗体も同様に企図される。たとえば、米国特許出願公開第2002/0004587号を参照されたい。
抗体およびその抗体断片の産生
抗体のアミノ酸配列変種をコードする核酸分子は、当業者に公知の多様な方法によって調製される。これらの方法は、天然起源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列変種の場合)、または先に調製された変種抗体または非変種型抗体のオリゴヌクレオチド指定(または部位特異的)変異誘発、PCR変異誘発およびカセット変異誘発による調製を含むがこれらに限定されるわけではない。
従来、モノクローナル抗体は、マウスハイブリドーマ細胞株における天然の分子として産生されてきた。その技術のほかに、本明細書において記述される方法および組成物は、モノクローナル抗体の組換えDNAによる発現を提供する。これによって、選択される宿主種におけるヒト化抗体の産生ならびに広範囲の抗体誘導体および融合タンパク質の産生が可能となる。細菌、酵母、トランスジェニック動物、および鶏卵における抗体の産生もまた、ハイブリドーマを用いる産生系の代替である。トランスジェニック動物の主な利点は、再生可能な供給源からの収率がおそらく高い点である。
本発明の少なくとも1つの抗CEACAM1抗体、その一部またはポリペプチドをコードする核酸配列を、ライゲーションのための平滑末端または付着末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切であれば付着末端の埋め込み、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処置、および適切なリガーゼによるライゲーションを含む通常の技術に従って、ベクターDNAと組換えすることができる。そのような操作に関する技術は、たとえば、Maniatis et al., Molecular Cloning, Lab. Manual (Cold Spring Harbor Lab. Press, NY, 1982 and 1989), and Ausubel, 1987, 1993において開示され、モノクローナル抗体分子またはその抗原結合領域をコードする核酸配列を構築するために用いることができる。
DNAなどの核酸分子は、それが、転写および翻訳調節情報を含むヌクレオチド配列を含む場合、ポリペプチドを「発現することができる」と言われ、そのような配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に「機能的に連結して」いる。機能的な連結とは、調節DNA配列と、発現が求められるDNA配列とが、抗CPAAペプチドまたは抗体部分として回収可能な量で遺伝子を発現させることができるように接続された、連結である。遺伝子発現にとって必要な調節領域の正確な性質は、類似の技術分野において周知であるように、生物によって異なりうる。たとえば、Sambrook et al., 1989; Ausubel et al., 1987-1993を参照されたい。
したがって、抗CEACAM1抗体またはペプチドの発現は、原核細胞または真核細胞のいずれかで起こりうる。適した宿主は、インビボまたはインサイチューのいずれかでの酵母、昆虫、真菌、トリ、および哺乳動物細胞を含む細菌もしくは真核細胞宿主、または哺乳動物、昆虫、真菌、トリ、もしくは酵母起源の宿主細胞を含む。哺乳動物の細胞または組織は、ヒト、霊長類、ハムスター、ウサギ、齧歯類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌ、またはネコ起源の細胞または組織でありうるが、他のいかなる哺乳動物細胞も用いてもよい。
さらに、たとえば、酵母ユビキチンヒドロラーゼ系を用いることによって、ユビキチン膜貫通ポリペプチド融合タンパク質のインビボ合成を行うことができる。そのように産生された融合タンパク質を、インビボで処理するか、またはインビトロで精製および処理することができ、それにより明記されたアミノ末端配列を有する本発明の抗CEACAM1抗体またはその一部を合成することができる。その上、酵母(または細菌)のダイレクト発現の際の開始コドン由来メチオニン残基が残ることに関連する問題が回避されうる。Sabin et al., 7 Bio/Technol. 705 (1989); Miller et al., 7 Bio/Technol. 698 (1989)。
酵母をグルコースに富む培地において増殖させた場合に大量に産生される糖分解酵素をコードする能動的発現遺伝子からのプロモーターおよび終止エレメントを組み入れる一連の酵母遺伝子発現系のいずれも、本発明の組換え型抗CEACAM1抗体またはペプチドを得るために利用することができる。公知の糖分解遺伝子はまた、非常に効率的な転写制御シグナルを提供しうる。たとえば、ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子のプロモーターおよびターミネーターシグナルを利用することができる。
昆虫における抗CEACAM1抗体もしくはペプチド、またはその機能的誘導体の産生は、たとえば、当業者に公知である方法によって膜貫通ポリペプチドを発現するように遺伝子操作されたバキュロウイルスを昆虫宿主に感染させることによって得ることができる。Ausubel et al., 1987, 1993を参照されたい。
いくつかの態様において、導入されたヌクレオチド配列は、レシピエント宿主において自律複製することができるプラスミドまたはウイルスベクターに組み入れられる。多種多様なベクターのいずれもこの目的のために使用することができ、当業者に公知であり利用可能である。たとえば、Ausubel et al., 1987, 1993を参照されたい。特定のプラスミドまたはウイルスベクターの選択における重要な要素は:ベクターを含むレシピエント細胞を、ベクターを含まないレシピエント細胞から認識して選択する際の容易さ;特定の宿主において望ましいベクターのコピー数;および異なる種の宿主間でベクターを「シャトル」させることができることが望ましいか否かを含む。
当技術分野において公知の例としての原核細胞ベクターは、たとえば大腸菌において複製することができるプラスミドなどのプラスミドを含む。抗CEACAM1抗体またはペプチドをコードするcDNAの発現にとって有用な他の遺伝子発現エレメントは、(a)SV40初期プロモーター(Okayama et al., 3 Mol. Cell. Biol. 280 (1983))、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gorman et al., 79 PNAS 6777 (1982))、およびモロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grosschedl et al., 41 Cell 885 (1985))などのウイルス転写プロモーターおよびそのエンハンサーエレメント;(b)SV40後期領域に由来する部位(Okayarea et al., 1983)などのスプライス領域およびポリアデニル化部位;ならびに(c)SV40(Okayama et al., 1983)などのポリアデニル化部位を含むがこれらに限定されるわけではない。
免疫グロブリンcDNA遺伝子は、発現エレメントとしてSV40初期プロモーターおよびそのエンハンサー、マウス免疫グロブリンH鎖プロモーターエンハンサー、SV40後期領域mRNAスプライシング、ウサギS-グロビン介在配列、免疫グロブリン、およびウサギS-グロビンポリアデニル化部位、およびSV40ポリアデニル化エレメントを用いて、Liu et al.、下記およびWeidle et al., 51 Gene 21 (1987)によって記述されるように発現させることができる。
部分的cDNA、部分的ゲノムDNAを含む免疫グロブリン遺伝子(Whittle et al., 1 Protein Engin. 499 (1987))の場合、転写プロモーターは、ヒトサイトメガロウイルスであり得、プロモーターエンハンサーは、サイトメガロウイルスおよびマウス/ヒト免疫グロブリンであり得、かつmRNAスプライシングおよびポリアデニル化領域は、天然の染色体免疫グロブリン配列であり得る。
いくつかの態様において、齧歯類細胞においてcDNA遺伝子を発現させる場合、転写プロモーターは、ウイルスLTR配列であり、転写プロモーターエンハンサーは、マウス免疫グロブリン重鎖エンハンサーおよびウイルスLTRエンハンサーのいずれかまたは両方であり、スプライス領域は31 bpより大きいイントロンを含み、ポリアデニル化および転写終止領域は、合成される免疫グロブリン鎖に対応する天然の染色体配列に由来する。他の態様において、他のタンパク質をコードするcDNA配列を、哺乳動物細胞におけるタンパク質の発現を得るために上記で引用された発現エレメントに結合させる。
各融合遺伝子を、発現ベクターにおいてアセンブルするか、または挿入する。次に、キメラ免疫グロブリン鎖遺伝子産物を発現することができるレシピエント細胞に、抗CPAAペプチドコード遺伝子またはキメラH鎖もしくはキメラL鎖コード遺伝子を1つづつトランスフェクトするか、またはキメラH鎖遺伝子およびキメラL鎖遺伝子を同時トランスフェクトする。トランスフェクトされたレシピエント細胞を、組み入れられた遺伝子の発現を可能にする条件で培養して、発現された免疫グロブリン鎖またはインタクト抗体または断片を培養物から回収する。
いくつかの態様において、抗CEACAM1ペプチドまたはキメラH鎖およびL鎖、またはその一部をコードする融合遺伝子を、別個の発現ベクターにアセンブルして、次にこれを用いてレシピエント細胞に同時トランスフェクトする。各ベクターは、2つの選択可能な遺伝子、すなわち細菌系における選択のために設計される第一の選択可能な遺伝子と、真核細胞系における選択のために設計される第二の選択可能な遺伝子を含むことができ、各々のベクターは異なる遺伝子対を有する。この戦略によって、細菌系において融合遺伝子の産生を最初に指示して、増幅させることができるベクターが得られる。次に、細菌宿主においてそのように産生され、増幅された遺伝子を用いて、真核細胞に同時トランスフェクトして、所望のトランスフェクト遺伝子を有する同時トランスフェクト細胞を選択することができる。細菌系において用いるための選択可能な遺伝子の非制限的な例は、アンピシリンに対する抵抗性を付与する遺伝子、およびクロラムフェニコールに対する抵抗性を付与する遺伝子である。真核細胞トランスフェクタントにおいて用いるための選択可能な遺伝子は、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gptと呼ばれる)およびTn5からのホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoと呼ばれる)を含む。または、キメラH鎖およびL鎖をコードする融合遺伝子を同じ発現ベクターにおいてアセンブルすることができる。
発現ベクターのトランスフェクションおよび本明細書において記述されるキメラ抗体、ヒト化抗体、または複合ヒト抗体の産生に関して、レシピエント細胞株は骨髄腫細胞でありうる。骨髄腫細胞は、トランスフェクトした免疫グロブリン遺伝子によってコードされる免疫グロブリンを合成、アセンブル、および分泌することができ、免疫グロブリンのグリコシル化機構を保有する。たとえば、いくつかの態様において、レシピエント細胞は、組換え型Ig産生骨髄腫細胞SP2/0(ATCC #CRL 8287)である。SP2/0細胞は、トランスフェクトした遺伝子によってコードされる免疫グロブリンのみを産生する。骨髄腫細胞を、培養物中でまたはマウスの腹腔において成長させることができ、腹腔の場合には、分泌された免疫グロブリンを腹水から得ることができる。他の適したレシピエント細胞は、ヒトまたは非ヒト起源のBリンパ球、ヒトまたは非ヒト起源のハイブリドーマ細胞、または種間ヘテロハイブリドーマ細胞などのリンパ系細胞を含む。
キメラ抗体、ヒト化抗体、または複合ヒト抗体構築物、または本明細書において記述される抗CEACAM1ポリペプチドを有する発現ベクターを、形質転換、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、およびジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランなどのポリカチオンの適用などの生化学手段、ならびに電気穿孔、直接マイクロインジェクション、および微小発射物衝突などの機械的手段を含む、任意の多様な適した手段によって、適切な宿主細胞に導入することができる。当業者に公知である、Johnston et al., 240 Science 1538 (1988)。
酵母は、免疫グロブリンH鎖およびL鎖の産生に関して、細菌と比較して一定の利点を提供する。酵母は、グリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を行う。酵母において所望のタンパク質を産生するために用いることができる強いプロモーター配列および高コピー数のプラスミドを利用する多数の組換えDNA戦略が存在する。酵母は、クローニングされた哺乳動物遺伝子産物のリーダー配列を認識して、リーダー配列を有するペプチド(すなわち、プレペプチド)を分泌する。Hitzman et al., 11th Intl. Conf. Yeast, Genetics & Molec. Biol. (Montpelier, France, 1982)。
酵母遺伝子発現系を、抗CEACAM1ペプチド、抗体、およびアセンブルされたキメラ抗体、ヒト化抗体、または複合ヒト抗体、その断片および領域の産生、分泌および安定性レベルに関してルーチンとして評価することができる。酵母をグルコースに富む培地中で増殖させる場合に大量に産生される糖分解酵素をコードする能動的発現遺伝子からのプロモーターおよび終止エレメントを組み入れるいかなる一連の酵母遺伝子発現系も利用することができる。公知の糖分解遺伝子はまた、非常に効率的な転写制御シグナルを提供することができる。たとえば、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーターおよびターミネーターシグナルを利用することができる。酵母においてクローニングした免疫グロブリンcDNAを発現させるために最適な発現プラスミドを評価するために、多くのアプローチを利用することができる。II DNA Cloning 45, (Glover, ed., IRL Press, 1985)およびたとえば、米国特許出願公開第2006/0270045 A1号を参照されたい。
本明細書において記述される抗体分子またはペプチドを産生するための宿主として、細菌株もまた利用することができ、大腸菌W3110(ATCC 27325)などの大腸菌K12株、バシラス(Bacillus)種、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)または霊菌(Serratia marcescens)などの腸内細菌、および様々なシュードモナス(Pseudomonas)種を用いることができる。レプリコンおよび宿主細胞と適合性である種に由来する制御配列を含むプラスミドベクターを、これらの細菌宿主に関連して用いる。ベクターは、複製部位ならびに形質転換細胞において表現型の選択を提供することができる特異的遺伝子を有する。細菌においてクローニングされた免疫グロブリンcDNAまたはCDRによってコードされるキメラ抗体、ヒト化抗体、または複合ヒト化抗体およびその断片の産生に関して発現プラスミドを評価するために、多数のアプローチを利用することができる(Glover, 1985; Ausubel, 1987, 1993; Sambrook, 1989; Colligan, 1992-1996を参照されたい)。
哺乳動物宿主細胞は、インビトロまたはインビボで成長させることができる。哺乳動物細胞は、リーダーペプチドの除去、H鎖およびL鎖のフォールディングおよびアセンブリ、抗体分子のグリコシル化、ならびに機能的抗体タンパク質の分泌を含む、免疫グロブリンタンパク質分子に対して翻訳後修飾を提供することができる。
上記のリンパ系起源の細胞のほかに、抗体タンパク質を産生するための宿主として有用でありうる哺乳動物細胞は、Vero(ATCC CRL 81)またはCHO-K1(ATCC CRL 61)細胞などの線維芽細胞起源の細胞を含む。ポリペプチドを発現させるために用いることができる例示的な真核細胞には、COS7細胞を含むCOS細胞;293-6E細胞を含む293細胞;CHO-SおよびDG44細胞を含むCHO細胞;PER.C6.RTM.細胞(Crucell);ならびにNSO細胞が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、特定の真核宿主細胞は、抗CEACAM1重鎖および/または抗CEACAM1軽鎖に対して所望の翻訳後修飾を行うことができることに基づいて選択される。たとえば、いくつかの態様において、CHO細胞は、293細胞において産生された同じポリペプチドより高レベルのシアリル化を有するポリペプチドを産生する。
いくつかの態様において、1つまたは複数の抗CEACAM1ポリペプチドは、任意の適した方法に従ってポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸分子によって遺伝子操作されているかまたは核酸分子をトランスフェクトされている動物において、インビボで産生することができる。
いくつかの態様において、抗CEACAM1抗体は、無細胞系において産生される。非制限的な例示的な無細胞系は、たとえば、Sitaraman et al., Methods Mol. Biol. 498: 229-44 (2009); Spirin, Trends Biotechnol. 22: 538-45 (2004); Endo et al., Biotechnol. Adv. 21: 695-713 (2003)において記述される。
クローニングされた抗CEACAM1ペプチドH鎖遺伝子およびL鎖遺伝子を哺乳動物細胞において発現させるために、多くのベクター系が利用可能である(Glover, 1985を参照されたい)。異なるアプローチに従って、完全なH2L2抗体を得ることができる。先に考察したように、完全な四量体H2L2抗体および/またはCEACAM1特異的ペプチドへと、H鎖とL鎖を細胞内で会合および連結させるために、同じ細胞においてH鎖とL鎖とを同時発現させることが可能である。同時発現は、同じ宿主において同じまたは異なるプラスミドのいずれかを用いて起こりうる。H鎖およびL鎖の両方ならびに/または抗CEACAM1ペプチドの遺伝子を同じプラスミドに配置することができ、次にこれを細胞にトランスフェクトして、それによって両方の鎖を発現する細胞に関して直接選択することができる。または、最初に1つの鎖、たとえばL鎖をコードするプラスミドを細胞にトランスフェクトした後、得られた細胞株に、第二の選択可能マーカーを含むH鎖プラスミドをトランスフェクトすることができる。いずれかの経路を介して抗CEAMCAM1ペプチドおよび/またはH2L2分子を産生している細胞株に、さらなる選択可能マーカーと共に、ペプチド、H、L、またはH+L鎖のさらなるコピーをコードするプラスミドをトランスフェクトして、増強された特性、例えばアセンブルされたH2L2抗体分子のより高い産生またはトランスフェクト細胞株の増強された安定性などを有する、細胞株を生成することができる。
さらに、微生物または動物細胞の大規模培養に基づく組換え型抗体産生のための簡便で安全かつ経済的な代替主流発現系として、植物が浮上してきている。抗体を植物細胞培養物中でまたは従来どおり成長させた植物において発現させることができる。植物における発現は、植物全体でありうる、または細胞下プラスチドに限定されうる、または種子(内乳)に限定されうる。たとえば、米国特許出願公開第2003/0167531号;米国特許第6,080,560号;米国特許第第6,512,162号;WO 0129242を参照されたい。いくつかの植物由来抗体が、臨床試験を含む進行した開発段階に達している(たとえば、Biolex, NCを参照されたい)。
いくつかの局面において、本明細書において、ヒト化抗体の軽鎖をコードする第一の発現ベクターおよびヒト化抗体の重鎖をコードする第二の発現ベクターによって形質転換された宿主を、各鎖が発現されるような条件下で維持する段階、ならびにこのように発現された鎖のアセンブリによって形成されたヒト化抗体を単離する段階を含むプロセスによって調製される、ヒト化抗体を産生するための方法およびシステムが提供される。第一および第二の発現ベクターは同じベクターでありうる。同様に本明細書において、ヒト化抗体の軽鎖または重鎖をコードするDNA配列;該DNA配列を組み入れる発現ベクター;および発現ベクターによって形質転換された宿主が提供される。
当業者は、過度の実験を行うことなく、本明細書において提供される配列および情報からヒト化抗体を生成する段階を実践することができる。1つのアプローチにおいて、モノクローナル抗体をヒト化するために使用される4つの一般的な段階が存在する。たとえば、米国特許第5,585,089号;第6,835,823号;第6,824,989号を参照されたい。これらは、(1)開始抗体の軽鎖および重鎖ドメインのヌクレオチドおよび予想アミノ酸配列を決定する段階;(2)ヒト化抗体を設計する段階、すなわちヒト化プロセスの際にどの抗体フレームワーク領域を用いるかを決定する段階;(3)実際のヒト化方法論/技術;ならびに(4)ヒト化抗体のトランスフェクションおよび発現である。
発現させた後、本発明の抗体全体、その二量体、個々の軽鎖および重鎖、または他の免疫グロブリン型を回収して、公知の技術、たとえば免疫吸収またはイムノアフィニティクロマトグラフィー、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などのクロマトグラフ法、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、またはこれらの任意の組み合わせによって精製することができる。一般的に、Scopes, PROTEIN PURIF. (Springer-Verlag, NY, 1982)を参照されたい。特に薬学的に使用するためには、98%から99%、またはそれより高い均一性を有する免疫グロブリンなどの、少なくとも約90%から95%の均一性を有する実質的に純粋な免疫グロブリンが有用である。部分的にまたは所望の均一性になるまで精製した後、ヒト化抗体または複合ヒト化抗体を治療的に用いることができ、またはアッセイ技法、免疫蛍光染色、およびその他を開発および実行するために用いることができる。一般的に、Vols. I & II Immunol. Meth. (Lefkovits & Pernis, eds., Acad. Press, NY, 1979 and 1981)を参照されたい。
さらに、本明細書において記述されるように、ヒトの治療に関して、機能的活性を維持しながら、潜在的な免疫原性を減少させるために、組換え型ヒト化抗体をさらに最適化することができる。この点において、機能的活性とは、本発明の組換え型CEACAM1抗体に関連する1つまたは複数の公知の機能的活性を示すことができるポリペプチドを意味する。そのような機能的活性は、生物活性および抗CEACAM1抗体のリガンドの結合能を含む。さらに、機能的活性を有するポリペプチドとは、たとえば生物アッセイなどの特定のアッセイにおいて測定した場合に、用量依存性の有無によらず、成熟型を含む本明細書において記述される抗CEACAM1抗体活性に対して、ポリペプチドが、類似であるが必ずしも同一ではない活性を示すことを意味する。用量依存性が存在する場合、抗CEACAM1抗体の用量依存性と同一である必要はなく、むしろ本発明の抗CEACAM1抗体と比較して所定の活性の用量依存性と実質的に類似である(すなわち、候補ポリペプチドは、本明細書において記述される5F4などの抗CEACAM1抗体と比較して、より高い活性、または多くて約25倍低い、約10倍低い、または約3倍低い活性を示すであろう)。
抗CEACAM1イムノコンジュゲート
本明細書において記述される局面のいくつかの態様において、CEACAM1に対して特異的な抗体および抗体断片を、化学療法剤、毒素(たとえば、細菌、真菌、植物、または動物起源の酵素的活性毒素、またはその断片)、低分子、siRNA、ナノ粒子、標的化剤(たとえば、マイクロバブル)、または放射活性同位元素(すなわち、ラジオコンジュゲート)などの剤にコンジュゲートさせる。そのようなコンジュゲートは、本明細書において「イムノコンジュゲート」と呼ばれる。そのようなイムノコンジュゲートは、たとえば、診断法、治療法、または標的化法において用いることができる。
1つまたは複数の細胞毒素を含むイムノコンジュゲートは、「免疫毒素」と呼ばれる。細胞毒素または細胞傷害剤は、細胞に対して有害で、特に細胞を殺す任意の剤を含む。例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミスラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそのアナログまたは相同体が挙げられる。
本発明のイムノコンジュゲートを形成するための適した治療剤は、抗代謝剤(たとえば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン)、アルキル化剤(たとえば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトトゾトシン、マイトマイシンC、およびシスジクロロジアミン白金錯体(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(たとえば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)、およびドキソルビシン)、抗生物質(たとえば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミスラマイシン、およびアントラマイシン(AMC))、および抗分裂剤(たとえば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)を含むがこれらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、治療剤は、細胞傷害剤または放射性毒物である。
そのようなイムノコンジュゲートの生成において有用な化学療法剤を本明細書において記述する。用いることができる酵素的に活性な毒素およびその断片は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、マイトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンを含む。多様な放射性同位元素が、ラジオコンジュゲート抗体を産生するために利用可能である。例には、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
本明細書において記述されるCEACAM1に対して特異的な抗体と細胞傷害剤のコンジュゲートは、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能誘導体(アジプイミド酸ジメチル塩酸塩など)、活性エステル(スベリン酸ジスクシンイミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビスジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トリエン-2,6-ジイソシアネートなど)、およびビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの多様な任意の二官能タンパク質カップリング剤を用いて作製することができる。たとえば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al., 238 Science 1098 (1987)において記述されるように調製することができる。炭素14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、抗体に放射性核種をコンジュゲートさせるための例示的なキレート剤である。WO 94/11026を参照されたい。
他の態様において、CEACAM1特異的抗体またはその一部を、腫瘍のプレターゲティングに利用するために「受容体」(たとえば、ストレプトアビジン)にコンジュゲートさせることができ、この場合、抗体受容体コンジュゲートを対象に投与した後、結合していないコンジュゲートを除去剤を用いて循環中から除去し、細胞傷害剤(たとえば、放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートさせた「リガンド」(たとえば、アビジン)を投与する。いくつかの態様において、たとえば血管新生の分子イメージングにおいて用いるために、CEACAM1特異的抗体またはその抗体断片をビオチンにコンジュゲートさせることができ、ビオチンコンジュゲート抗体またはその抗体断片をさらにストレプトアビジンコーティングマイクロバブルなどのストレプトアビジンを結合させたかまたはコーティングした剤にコンジュゲートまたは連結させることができる。
そのような治療部分を抗体にコンジュゲートさせる技術は、周知であり、たとえば、Amon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., "Antibodies For Drug Delivery", in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, "Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985); "Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985), and Thorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev., 62: 119-58 (1982)を参照されたい。
イムノリポソーム
本明細書において記述されるCEACAM1に対して特異的な抗体およびその抗体断片は、イムノリポソームとして調合することもできる。抗体を含むリポソームは、Epstein et al., 82 PNAS 3688 (1985); Hwang et al., 77 PNAS 4030 (1980);ならびに米国特許第4,485,045号および第4,544,545号において記述される方法などの、当技術分野において公知の方法によって調製される。循環時間が増強されたリポソームは、米国特許第5,013,556号において開示される。
特に有用なリポソームは、たとえば、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物による逆相蒸発法によって生成することができる。リポソームは、所望の直径を有するリポソームを生じるように既定の孔サイズを有するフィルターの中を押し出される。本発明の抗体のFab'断片を、ジスルフィド交換反応によって、Martin et al., 257 J. Biol. Chem. 286 (1982)において記述されるようにリポソームにコンジュゲートさせることができる。化学療法剤は任意で、リポソーム内に含まれる。Gabizon et al., 81 J. Natl. Cancer Inst. 1484 (1989)を参照されたい。
組換え型の5F4抗体、34B1抗体、および26H7抗体を産生する宿主細胞株は、維持されて保存されている。
抗CEACAM1抗体およびその抗原結合部分の治療的および診断的使用
本明細書において証明されるように、本明細書において記述される抗CEACAM1抗体は、癌の拡散および転移の阻害および予防において驚くほど有効である。したがって、本明細書において記述される抗CEACAM1組換え型抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、および/または複合ヒト抗体を用いて、膵臓癌などの癌を阻害および/または予防する新規薬学的組成物および方法が、本明細書において提供される。
他の標的に対する抗体ベースの癌治療は臨床への導入に成功しており、かつ従来の薬物と比較してより高い特異性およびより低い副作用プロファイルという恩典を提供し、これは部分的に、その作用様式が、補体活性化および細胞傷害性免疫細胞の動員などの毒性の少ない免疫学的抗腫瘍機序に依存するからである。腫瘍の治療に関して臨床で既に承認されているかまたは臨床開発中のいずれかである抗体の他の標的は、独特な特性を有する。プロテオグリカンMUC-1に対する抗体の場合、標的の骨格におけるペプチド反復エピトープは、腫瘍細胞におけるグリコシル化がより少なく、したがってその正常な相対物と比較して変化している。CD20に対する抗体(リツキシマブ)、CD52に対する抗体(Campath-1H)、およびCD22に対する抗体(エプラツズマブ)の場合、抗体標的は、腫瘍細胞および正常なリンパ球において同等の発現レベルを有する。抗体標的の近づきやすさが異なるもう1つの例は、炭酸脱水素酵素IX(CA9)である。
8種類の抗体が、新生物疾患を処置するために承認されているが、そのほとんどはリンパ腫および白血病の処置である(Adams, G. P. & Weiner, L. M. (2005) Nat. Biotechnol. 23, 1147-1157)。3種類のmAb、すなわちHerceptin、Avastin、およびErbituxのみしか、癌による死亡の90%より多くを占める固形癌タイプに対処していない。医療における必要性が実質的には残っていること、承認されたモノクローナル抗体が有意な臨床での恩典を既に提供していること、およびそれらがかなりの商業的成功を収めていることを併せると、癌の処置および阻害に関する新規の抗体ベースの療法を同定および特徴付けすることの重要性が示される(Brekke, O. H. & Sandlie, I. (2003) Nat. Rev. Drug Discov. 2, 52-62; Carter, P. (2001) Nat. Rev. Cancer 1, 118-129)。
したがって、いくつかの局面において、抗CEACAM1抗体またはその抗体部分の有効量を投与する段階を含む、癌もしくは腫瘍を有する、または癌もしくは腫瘍のリスクを有する対象を処置する方法が本明細書において提供される。癌を処置するためのこれらの方法のいくつかのそのような態様において、抗CEACAM1抗体またはその抗体部分は、組換え型抗CEACAM1抗体またはその部分である。いくつかのそのような態様において、抗CEACAM1抗体またはその抗体部分は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、およびSEQ ID NO:3からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の重鎖CDR領域を含む。いくつかのそのような態様において、抗CEACAM1抗体またはその抗体部分は、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、およびSEQ ID NO:6からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の軽鎖CDR領域を含む。
これらの局面および本明細書において記述される全てのそのような局面のいくつかの態様において、疾患または障害は、癌、特に膵臓癌である。本明細書において記述される組成物および治療法を用いた原発腫瘍部位および二次腫瘍部位での腫瘍細胞成長の阻害は、疾患の転移および進行を予防および制限するために役立つ。
これらの局面のいくつかの態様において、組換え型抗CEACAM1抗体は、モノクローナル抗CEACAM1抗体5F4と同じエピトープに対して特異性を有する抗体部分であり、ハイブリドーマ5F4によって産生される。いくつかのそのような態様において、組換え型抗CEACAM1抗体は、組換え型モノクローナル抗体のSEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:3からなる群より選択される1つもしくは複数の可変重鎖CDR配列、および/またはSEQ ID NO:4〜SEQ ID NO:6からなる群より選択される1つもしくは複数の可変軽鎖CDR配列を含む、抗体部分である。いくつかの態様において、抗体部分はFab断片である。いくつかの態様において、抗CEACAM1抗体部分は、Fab'断片である。いくつかの態様において、抗CEACAM1抗体部分は、Fd断片である。いくつかの態様において、抗CEACAM1抗体部分は、Fd'断片である。いくつかの態様において、抗体部分はFv断片である。いくつかの態様において、抗CEACAM1抗体断片は、dAb断片である。いくつかの態様において、抗CEACAM1抗体部分は、単離されたCDR領域を含む。いくつかの態様において、抗CEACAM1抗体部分は、F(ab')2断片である。いくつかの態様において、抗CEACAM1抗体部分は、一本鎖抗体分子である。いくつかの態様において、抗CEACAM1抗体部分は、2つの抗原結合部位を含むダイアボディである。いくつかのそのような態様において、抗CEACAM1抗体部分は、一対のタンデムFdセグメントを含む線形抗体(VH-CH1-VH-CH1)である。
「癌」および「癌様」という用語は、典型的に、調節されない細胞成長を特徴とする哺乳動物における生理的状態を意味するまたは説明する。良性および悪性癌ならびに休眠状態の腫瘍または微小転移がこの定義に含まれる。したがって、本明細書において用いられる「癌」または「腫瘍」という用語は、癌幹細胞および腫瘍血管ニッシェを含む、体の臓器および系の正常な機能を妨害する制御されない細胞成長を意味する。癌または腫瘍を有する対象とは、その身体に客観的に測定可能な癌細胞が存在する対象である。この定義には、良性および悪性癌、ならびに休眠状態の腫瘍または微小転移が含まれる。その当初の位置から遊走して、重要な臓器に播種する癌は、罹患した臓器の機能の悪化を通して、最終的に対象を死に至らせうる。白血病などの造血系の癌は、対象の正常な造血細胞分画を打ち負かすことが可能で、それによって造血不全(貧血、血小板減少症、および好中球減少症の形で)に至り、最終的に死亡に至る。
本明細書において証明されるように、本明細書において記述される組換え型抗CEACAM1抗体またはその抗体部分は、膵臓癌の転移の阻害および予防に対して驚くほど有効である。「転移」とは、その原発部位から体の他の部位への癌の拡散を意味する。癌細胞は、原発腫瘍から離脱して、リンパ管および血管内に侵入し、血流を循環して、そして体のどこかの正常組織の遠位座で成長(転移)する。転移は、局所または遠位でありうる。転移は、腫瘍細胞が原発腫瘍から離脱して、血流の中を移動し、遠位部位で止まることを条件とした、腫瘍細胞における連続プロセスである。新しい部位で、細胞は血液供給を確立し、成長して、生命を脅かす腫瘤を形成しうる。腫瘍細胞内の刺激性および阻害性の分子経路はいずれもこの挙動を調節し、腫瘍細胞と遠位部位の宿主細胞との相互作用もまた重要である。
転移は、特異的症状のモニタリングに加えて、磁気共鳴イメージング(MRI)スキャン、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、血球数および血小板数、肝機能検査、胸部X-線、および骨スキャンを単独でまたは組み合わせて使用することによって検出されることが最も多い。
本明細書において記述される方法のいくつかの態様において、抗CEACAM1抗体またはその抗体部分を投与される癌または腫瘍を有する対象は、膵臓癌を有するか、または膵臓癌のリスクが高い。膵臓癌は、米国における癌による死因の第四位であり、推定で世界中で年間227000人が死亡している。膵管腺癌は、非侵襲性の前駆病変から、最も典型的に膵上皮内新生物から発生し、その発達に伴って、クローン的に選別される遺伝的および後成的変化を獲得する。膵臓癌はまた、膵管内乳頭粘液性腫瘍または粘液性嚢胞新生物からも発生しうる。この悪性疾患の危険因子は、喫煙、慢性膵炎の家族歴、高齢、男性、糖尿病、肥満、非O型血液型、および職業的曝露(たとえば、塩素化炭化水素溶媒およびニッケルに対する曝露)、アフリカ系アメリカ人民族起源、高脂肪食、肉類中心で野菜および葉酸の少ない食事、およびおそらくヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染症および歯周病(Vincent A, et al., Lancet. 2011 Aug 13;378(9791):607-20. Pancreatic cancer)を含む。
いくつかのそのような態様において、膵臓癌を有するかまたは膵臓癌のリスクを有する対象は、初期膵臓癌を有する。初期膵臓癌は通常、臨床的に沈黙しており、疾患は典型的に、腫瘍が周辺組織へと浸潤した後、または遠隔臓器へと転移した後にしか顕性とならない。
いくつかのそのような態様において、膵臓癌を有するかまたは膵臓癌のリスクを有する対象は、膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)を有する。本明細書において用いられるように、膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)とは、膵臓の浸潤性腺癌の前駆新生物であり、顕微鏡腫瘍であり(直径<5 mm)、膵臓のイメージングによって直接見えない。PanINは、浸潤性の膵臓癌において見られるいくつかの遺伝的変化を有し、PanINにおける細胞学的および構造学的異型の量が増加すると、これらの遺伝的変化を有する割合が上昇する。低グレードPanIN(PanIN 1)は、年齢の増加と共に非常に一般的となり、高グレードPanIN(PanIN 3)は通常、浸潤癌を有する膵臓に存在する。膵臓癌に関して強い家族歴を有する個体から切除した膵臓は、通常、小葉中心性萎縮に関連する多巣性PanINを有する。
いくつかのそのような態様において、膵臓癌を有するかまたは膵臓癌のリスクを有する対象は、膵管内乳頭粘液性腫瘍を有する。膵管内乳頭粘液性腫瘍は、浸潤性の膵臓癌のそれほど頻繁には見られない前駆病変であるが、それらは膵臓のイメージングの改善により、大きい嚢胞性新生物(≧5 mm)であると診断されることが増えている。非浸潤性の膵管内乳頭粘液性腫瘍は、細胞学的および構造上の異形成の量に基づいて、低グレード、中間グレード、または高グレード異形成(上皮内癌)のいずれかとして分類される。関連する浸潤性膵臓癌を有しない膵管内乳頭粘液性腫瘍の切除後の治癒率は非常に高いが、放置すると、これらの病変は不治の浸潤性癌へと進行しうる。膵管内乳頭粘液性腫瘍は、分岐膵管、主膵管、またはその両方に影響を及ぼしうる。分岐膵管におけるほとんどの小さな無症候性の膵管内乳頭粘液性腫瘍は、悪性能が低く、その処置に関する国際ガイドラインが作成されており、当業者に公知である。
いくつかのそのような態様において、膵臓癌を有するかまたは膵臓癌のリスクを有する対象は、粘液産生上皮細胞と関連する卵巣型間質で構成される粘液性嚢胞腫瘍を有する。膵管内乳頭粘液性腫瘍とは異なり、粘液性嚢胞腫瘍は、膵管に連通してはいない。粘液性嚢胞腫瘍は主に女性に発生し、これらの新生物前駆病変の約3分の1は、関連する浸潤性癌を有する。
いくつかのそのような態様において、膵臓癌のリスクが高い対象は、膵臓癌の家族歴を有する。膵臓癌の家族歴は、疾患の重要な危険因子である。罹患した人の約7〜10%が家族歴を有する。ほとんどの研究において、家族性膵臓癌とは、一親等の両親が膵臓腫瘍と診断されている家族を意味する。この悪性疾患を有する家族の前向き分析により、家族性膵臓癌を有する人の一親等親族は、一般集団と比較してこの新生物のリスクが9倍高いことが示されている。このリスクは、膵臓癌を有する一親等親族が3人またはそれ以上いる子供では32倍に上昇する。さらに、膵臓癌のリスクは、散在性膵臓癌を有する患者の一親等親族では、一般集団と比較して中等度に高いことが証拠により示されている。家族性膵臓癌を有する子供のうち、家族に若年発症型膵臓癌の症例を有する子供では、若年発症例(年齢<50歳)を有しない家族と比較してリスクが最も高い。家族性膵臓癌の患者はまた、散在性膵臓腫瘍を有する患者より多くの前癌様病変を有し、膵外癌を発症するリスクが高い(Vincent A, et al., Lancet. 2011 Aug 13;378(9791):607-20. Pancreatic cancer)。
いくつかの態様において、方法はさらに、膵臓癌を有するかまたは膵臓癌のリスクが増加した対象を最初に選択、スクリーニング、または診断する段階を含みうる。いくつかのそのような態様において、対象の診断は、標識、たとえば放射活性標識、または本明細書において他所で記述される分子イメージングのために用いられる標識に連結させた抗CEACAM1抗体またはその抗体部分を対象に投与する段階を含みうる。そのような態様において、標識された抗CEACAM1抗体または抗体部分が検出されれば、対象が癌または腫瘍を有することを示している。
いくつかのそのような態様において、膵臓癌のリスクが高いという診断は、膵臓癌のリスクの増加に関連する1つまたは複数の遺伝子変異および/または疾患状態を調べることによって決定することができる。膵臓癌のリスクの増加に関連する遺伝子変異および/または疾患状態の非制限的な例には:BRCA2、PALB2、CDKN2A、STK11、およびPRSS1遺伝子の生殖系列変異、ならびに実質的に増加した膵臓癌のリスクに関連するリンチ症候群;遺伝性膵臓癌の公知の原因の中でも最高の割合を占め、家族性膵臓癌を有する家族の5〜17%において同定されており、およびアシュケナージユダヤ人集団における任意抽出の明白に散在性の膵臓癌の10%に関連する生殖系列BRCA2遺伝子変異;膵臓癌感受性遺伝子として同定されており、家族性膵臓癌を有する患者の3%までにおいて記録されているPALB2(partner and localiser of BRCA2)の生殖系列変異;家族性異型多発母斑黒色腫を有する家族において一般的に認められる生殖系列CDKN2A遺伝子変異;ポイツ・ジェーガーズ症候群を有する患者において認められる生殖系列STK11変異;遺伝性膵臓炎を有する人において認められる生殖系列PRSS1変異;膵臓癌を発症するリスクが中等度に高い遺伝性非ポリポーシス大腸癌患者;および/または非O型血液型の対象が挙げられる。
いくつかのそのような態様において、膵臓癌を有するかまたは膵臓癌のリスクが高いという診断は、非侵襲性に測定することができる膵臓癌に関連する血液マーカーによって決定することができる。
いくつかのそのような態様において、膵臓癌を有するかまたは膵臓癌のリスクが高いという診断は、約1 cmの小さな浸潤前病変の検出能を有する内視鏡超音波によって決定することができる。膵管内乳頭粘液性腫瘍などの、内視鏡超音波によって明らかとなる巣状浸潤前病変は、たとえば細針吸引によって採取することができる。
いくつかのそのような態様において、膵臓癌を有するかまたは膵臓癌のリスクが高いという診断は、三相膵臓プロトコールCTによって決定することができる。
これらの方法のいくつかの態様において、膵臓癌であるかまたは膵臓癌のリスクが高いと診断されている対象は、転移を検出するために1つまたは複数の追加の段階または技法をさらに受けることができる。いくつかのそのような態様において、転移を検出するための1つまたは複数の追加の段階は、胸部イメージング、たとえば肺転移を検出するための胸部ラジオグラフィーまたはCTを含む。いくつかの態様において、転移を検出するための1つまたは複数の追加の段階は、PET CTを含む。いくつかの態様において、転移を検出するための1つまたは複数の追加の段階は、たとえば腹膜転移を検出するために、腹腔鏡検査を含む。
これらの方法のいくつかの態様において、膵臓癌であるかまたは膵臓癌のリスクが高いと診断されている対象は、悪性腫瘍の存在をさらに確認するために1つまたは複数の追加の段階または技法を受けることができる。たとえば、内視鏡超音波またはCTによる細針吸引によって細胞学的確認を行うことができる。膵臓腫瘤の内視鏡超音波による細針吸引の感度は、約80%であると報告されている。胆管または膵管狭窄の原因を同定するためには、いくつかの場合において、内視鏡的逆行性胆道膵管造影および細胞学診断のためのブラッシングを必要としうる。
本明細書において記述される組成物および方法を用いて処置されるべき膵臓癌を有するかまたは膵臓癌のリスクが高い対象は、当業者に公知のガイドラインに従ってさらに進行期を分類することができる。たとえば、臨床進行期分類ガイドラインは以下のとおりである:局所または切除可能な膵臓癌(約10%、生存期間の中央値17〜23ヶ月)、これはさらに以下のように細分することができる:ステージ0(Tis、N0、M0);ステージIA(T1、N0、M0);ステージIB(T2、N0、M0);ステージIIA(T3、N0、M0);およびステージIIB(T1、N1、M0;T2、N1、M0;T3、N1、M0);ボーダーラインの切除可能膵臓癌(10%、生存期間の中央値は20ヶ月まで)、これは、上腸管動脈もしくは腹腔動脈、または肝動脈もしくは上腸間膜静脈の短い区分、肺静脈、またはこれらの静脈の合流部に腫瘍が隣接しているかまたは周囲180度未満が腫瘍に囲まれているステージ3疾患を意味する;局所進行または切除不可能な膵臓癌(約30%、生存期間の中央値8〜14ヶ月);ステージIII膵臓癌(T4、任意のN、M0、腫瘍は上腸管動脈または腹腔動脈の180度より大きい周囲を取り囲み、任意の再構成不可能な静脈浸潤、および転移性(約60%、生存期間の中央値4〜6ヶ月));およびステージIV膵臓癌(任意のT、任意のN、M1)、ここでTは原発腫瘍であり、TXは原発腫瘍を評価できないことを示している;T0は原発腫瘍の証拠がないことを示し;Tisは上皮内癌(PanIN3分類を含む)を示す;T1は、膵臓に限局された最大寸法2 cm以下の腫瘍を示す;T2は、膵臓に限局された最大寸法2 cm超の腫瘍を示す;T3は、膵臓を超えて伸長しているが、腹腔動脈または上腸管動脈に浸潤していない(または門脈もしくは上腸管動脈まで伸びているが、なおも切除可能である)腫瘍を示す;およびT4は、腫瘍が腹腔動脈または上腸管動脈に浸潤していることを示す(切除不可能な原発腫瘍);Nは局所リンパ節であり、およびNXは局所リンパ節を評価できないことを示す;N0は局所リンパ節転移がないことを示し;およびN1は局所リンパ節転移を示し;ならびにMは遠位転移であり、M0は遠位転移がないことを示し、およびM1は遠位転移を示す。
処置の効能
本明細書において記述されるCEACAM1特異的アンタゴニストを含む組成物の治療製剤を含む、膵臓癌などの癌の処置法の効能は、腫瘍の退縮、腫瘍の重量またはサイズの縮小、無増悪期間、生存期間、無増悪生存期間、全奏功率、奏功期間、およびクオリティオブライフを含むがこれらに限定されるわけではない癌の処置を評価するために一般的に用いられる様々なエンドポイントによって、測定することができる。CEACAM1特異的アンタゴニスト、たとえば本明細書において記述される組換え型抗CEACAM1抗体およびその一部は、独自のクラスの抗癌剤を表すことから、それゆえそれらは薬物に対する臨床反応の独自の測定および定義を必要としうる。癌の場合、組換え型CEACAM1抗体またはその一部の治療的有効量は、癌細胞の数を減少させることができ;腫瘍サイズを減少させることができ;末梢臓器への癌細胞浸潤を阻害する(すなわち、ある程度遅らせるおよび好ましくは停止させる)ことができ;腫瘍転移を阻害する(すなわちある程度遅らせるおよび好ましくは停止させる)ことができ;腫瘍成長をある程度阻害することができ;および/または障害に関連する症状の1つもしくは複数をある程度軽減することができる。組換え型CEACAM1抗体またはその一部が既に存在する癌細胞の成長を防止するおよび/または癌細胞を殺すように作用するという点において、それは細胞抑制性および/または細胞傷害性でありうる。癌治療の場合、インビボでの効能は、たとえば生存期間、無増悪生存期間(PFS)、奏功率(RR)、奏功期間、および/またはクオリティオブライフを評価することによって測定することができる。
膵臓癌の処置または予防に関連するそれらの態様において、膵臓癌に関連する症状は、腹痛または中背部痛、閉塞性黄疸、および体重減少を含むがこれらに限定されるわけではない。体重減少は、食欲不振、膵管閉塞による消化不良、および悪液質により生じうる。時に、膵管閉塞によって膵炎発作が起こりうる。深部および表在性静脈血栓症もまた、いくつかの場合において、膵臓癌の症状であり、かつ悪性疾患の徴候でありうる。悪心および嘔吐を伴う胃幽門閉塞は、時に、より進行した疾患で起こる。いくつかの態様において、本明細書において記述される組成物および方法を用いて阻害または処置される膵臓癌の症状は、皮下脂肪織炎、および抑うつを含むがこれらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、本明細書において記述される組成物および方法を用いて阻害または処置される膵臓癌の症状は、糖尿病および/または耐糖能障害を含むがこれらに限定されるわけではない。
他の態様において、本明細書において、膵臓癌などの癌に対して感受性を有するかまたは癌を有すると診断されたヒト対象の無増悪生存期間を延長させる方法が記述される。無増悪期間とは、薬物の投与から疾患の増悪または死亡までの期間として定義される。好ましい態様において、組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部などのCEACAM1特異的アンタゴニストと、1つまたは複数の化学療法剤とを用いる本発明の併用処置は、化学療法単独による処置と比較して、無増悪生存期間を、少なくとも約1ヶ月、1.2ヶ月、2ヶ月、2.4ヶ月、2.9ヶ月、3.5ヶ月、例えば約1から約5ヶ月、有意に増加させうる。もう1つの態様において、本明細書において記述される方法は、様々な治療剤によって処置される、癌に対して感受性がある、または癌を有すると診断されたヒト対象の群における奏功率を有意に増加させうる。奏功率は、処置に反応した処置対象の百分率として定義される。1つの態様において、組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部などのCEACAM1特異的アンタゴニストと、1つまたは複数の化学療法剤とを用いる本明細書において記述される併用処置は、化学療法剤単独によって処置した群と比較して処置対象群において奏功率を有意に増加させる。
膵臓癌治療に関して、CTは、腫瘍の負荷を測定するための標準的な方法であり、臨床試験は通常、腫瘍の反応を測定するためにRECIST(固形腫瘍における反応評価基準)基準を用いる。膵臓癌の処置に関連するいくつかの態様において、処置の反応または疾患の再発を予測するためにCA19-9の連続濃度を用いることができる。いくつかの態様において、腫瘍の負荷および処置に対する反応を表すために、血漿中の変異体DNAの量の測定を用いることができる。
本明細書において用いられるように、「処置」、「処置する」、または「改善」という用語は、治療的処置を意味し、目的は、疾患または障害に関連する状態の進行または重症度を逆転、軽減、改善、阻害、遅らせる、または停止させることである。「処置する」という用語は、慢性感染症または癌などの、しかしこれらに限定されるわけではない慢性的な免疫状態に関連する状態、疾患、または障害の少なくとも1つの有害効果または症状を減少または軽減することを含む。処置は一般的に、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが減少すれば、「有効」である。または、処置は、疾患の増悪が減少または停止すれば、「有効」である。すなわち、「処置」とは、症状またはマーカーの改善のみならず、処置を行わない場合に予測される少なくとも緩徐な増悪の中止または症状の悪化の中止を含む。有益なまたは所望の臨床結果は、検出可能であるか検出不能であるかによらず、1つまたは複数の症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の安定化(すなわち悪化しない)状態、疾患増悪の遅延または緩徐化、疾患状態の改善または緩和、および寛解(部分的または完全)を含むがこれらに限定されるわけではない。疾患の「処置」という用語はまた、疾患の症状または副作用の軽減を提供する段階(緩和処置を含む)を含む。
たとえば、いくつかの態様において、本明細書において記述される方法は、膵臓癌などの癌の症状を軽減するために、本明細書において記述される組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部の有効量を対象に投与する段階を含む。本明細書において用いられる「癌の症状を緩和する」とは、癌に関連する任意の状態または症状を改善または減少させることである。同等の無処置対照と比較すると、そのような減少または予防の程度は、任意の標準的な技術によって測定した場合に、少なくとも5%、10%、20%、40%、50%、60%、80%、90%、95%、または100%である。理想的には、当技術分野において公知の標準的な任意の方法によって検出した場合に、癌は完全に消失し、この場合癌は処置されていると見なされる。癌に関して処置される患者は、医師がそのような状態を有すると診断している患者である。診断は、任意の適切な手段によって行うことができる。診断およびモニタリングはたとえば、生物試料中の癌細胞のレベルを検出する段階(たとえば、組織またはリンパ節生検、血液検査、または尿検査)、生物試料中の癌の代用マーカーレベルを検出する段階、特定の癌に関連する症状を検出する段階、またはそのような癌に典型的な免疫応答に関係する免疫細胞を検出する段階を伴いうる。
本明細書において用いられる「有効量」という用語は、疾患または障害の少なくとも1つまたは複数の症状を軽減するために必要な組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部の量を意味し、所望の効果を提供するために、すなわち新しい血管の形成を阻害するために十分な薬理学的組成物の量に関する。それゆえ、「治療的有効量」という用語は、本明細書において開示される方法を用いて、典型的な対象に投与した場合に特定の効果を発揮するために十分である組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部の量を意味する。本明細書において用いられる有効量はまた、疾患の症状の発生を遅らせるために、疾患の症状の経過を変化させるために(たとえば、疾患の症状の進行を遅らせるために、しかしこれに限定されない)、または疾患の症状を逆転させるために十分な量を含むであろう。したがって、厳格な「有効量」を明記することは不可能である。しかし、いかなる所定の場合に関しても、当業者は、単なるルーチンの実験を用いて、適切な「有効量」を決定することができる。
有効量、毒性、および治療効能は、細胞培養物または実験動物において、たとえばLD50(集団の50%に対して致死である用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効である用量)を決定するための標準的な薬学的技法によって決定することができる。用量は、使用される投与剤形および利用される投与経路に応じて変化しうる。毒性効果と治療効果との用量比が治療指数であり、比LD50/ED50として表記することができる。大きい治療指数を示す組成物および方法が好ましい。治療的有効量は、まず細胞培養アッセイから推定することができる。同様に、用量は、細胞培養物または適切な動物モデルにおいて決定した場合に症状の半最大阻害が得られるIC50(すなわち、組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するように動物モデルにおいて処方することができる。血漿中レベルは、たとえば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。任意の特定の用量の効果を、適したバイオアッセイによってモニターすることができる。医師は、用量を決定して、観察された処置の効果に適合するように必要に応じて調節することができる。
投与様式
本明細書において記述される組換え型抗CEACAM1抗体またはその抗体部分などのCEACAM1特異的アンタゴニスト剤を、対象において有効な処置が得られる任意の適切な経路によって、それを必要とする対象に投与することができる。本明細書において用いられる「投与する」および「導入する」という用語は、互換的に用いられ、所望の効果を生じるように、炎症または癌の部位などの所望の部位にそのような剤の少なくとも部分的局在が得られる方法または経路によって、抗CEACAM1抗体またはその抗体部分を対象に留置することを意味する。
いくつかの態様において、組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部は、全身にまたは所望の表面もしくは標的に剤を送達しかつ注射、注入、点滴注入、および吸入投与を含むことができるがこれらに限定されるわけではない任意の投与様式によって、阻害されるべき膵臓癌などの癌を有する対象に投与される。抗CEACAM1抗体またはその抗体断片を腸管での不活化から保護することができる限り、経口投与剤形も同様に企図される。「注射」は、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、脳脊髄内、および胸骨内の注射および注入を含むがこれらに限定されるわけではない。好ましい態様において、本明細書において記述される方法において用いるための抗CEACAM1抗体またはその抗体断片は、静脈内注入または注射によって投与される。
本明細書において用いられる「非経口投与」および「非経口投与される」という句は、通常、注射による、腸管および表面投与以外の投与様式を意味する。本明細書において用いられる「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」、および「末梢に投与される」という句は、それが対象の循環系に入るような、かつしたがって代謝およびその他の類似のプロセスを受けるような、腫瘍部位などの標的部位、組織、または臓器への直接投与以外の二重特異性または多重特異性ポリペプチド剤の投与を意味する。
本明細書において記述されるCEACAM1特異的アンタゴニストは、ボーラスとしてのまたは一定期間の連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液内、髄腔内、経口、表面、または吸入経路などの公知の方法に従って、対象、たとえばヒト対象に投与される。広範囲の副作用または毒性がCEACAM1アンタゴニストの使用に付随する場合には、たとえば血管新生が起こっている腫瘍または癌の部位への局所投与が特に望ましい。エクスビボ戦略もまた、いくつかの態様において治療応用のために用いることができる。エクスビボ戦略は、対象から得た細胞にCEACAM1アンタゴニストをコードするポリヌクレオチドをトランスフェクトまたは形質導入する段階を伴う。次に、トランスフェクトされたまたは形質導入された細胞を対象に戻す。細胞は、造血細胞(たとえば、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞、またはB細胞)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチノサイト、または筋細胞を含むがこれらに限定されるわけではない広範囲の任意の細胞タイプでありうる。
いくつかの態様において、CEACAM1特異的アンタゴニストが抗CEACAM1組換え型抗体またはその一部である場合、抗体またはその一部は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内、ならびに局所免疫抑制処置にとって望ましい場合には病変内投与を含む任意の適した手段によって投与される。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与を含む。いくつかの態様において、抗体またはその抗体断片はふさわしくは、パルス注入によって、特に抗体の用量を次第に減少させて投与される。好ましくは、投与は注射によって行われ、最も好ましくは、投与が短期間または長期間であるか否かに部分的に応じて、静脈内または皮下注射によって行われる。
いくつかの態様において、CEACAM1特異的アンタゴニスト化合物は、障害または腫瘍の位置が許す限り、局所に、たとえば直接注射によって投与され、注射を定期的に繰り返すことができる。CEACAM1特異的アンタゴニストはまた、たとえば休眠状態の腫瘍または微小転移の局所再発または転移を予防または減少させるために、対象に全身送達することができ、または腫瘍細胞、たとえば、腫瘍の外科的切除後の腫瘍もしくは腫瘍床に直接送達することができる。
抗体標的化ソノポレーション法は、本明細書において提供される抗CEACAM1組換え型抗体およびその一部を含む治療組成物の効能および効力を増強するために、本明細書において記述される腫瘍を阻害するための方法のいくつかの態様において用いることが企図される。本明細書において用いられる「ソノポレーション」とは、細胞の細胞膜の透過性を一時的に改変し、それによって治療剤などの高分子の取り込みを可能にするために、好ましくは超音波周波数の音波を用いること、または超音波と造影剤(たとえば、安定化マイクロバブル)の相互作用を用いることを意味する。ソノポレーションによって引き起こされる膜の透過性は、一過性であり、超音波曝露後に剤は細胞内に捕捉される。ソノポレーションは、高分子の送達を増強するためにマイクロバブルの音響キャビテーションを使用する。
したがって、方法のいくつかの態様において、マイクロバブルなどの超音波造影剤と混合した、本明細書において記述される抗CEACAM1抗体およびその一部などの抗CEACAM1治療剤を、癌の処置を必要とする対象に局所的または全身的に注射することができ、かつ、本明細書において記述される抗CEACAM1組換え型抗体およびその一部の標的化送達を行うために、超音波をカップリングさせ、さらに規定の領域、たとえば腫瘍部位に集中させることも可能である。
いくつかの態様において、本明細書において記述される抗CEACAM1抗体およびその抗体断片の標的化送達を行うために、方法は焦点式超音波法を用いる。本明細書において用いられるHIFUまたは「高密度焦点式超音波」とは、その上のまたは周囲の健康な組織に対して損傷を引き起こすことなく、悪性または病原性の組織を加熱および破壊するために高密度超音波を用いる非侵襲性の治療法を意味する。Khaibullina et al., 49 J. Nucl. Med. 295 (2008)、およびWO 2010127369において記述されるように、HIFUはまた、抗体またはその抗体断片などの治療剤の送達手段として用いることもできる。
コントラスト増強超音波(CEUS)を用いる方法もまた、本明細書において記述される抗CEACAM1阻害剤と共に用いることが企図される。コントラスト増強超音波(CEUS)とは、超音波造影媒体と超音波造影剤を従来の医用ソノグラフィーに適用することを意味する。超音波造影剤とは、音波が物質のあいだの界面から反射される様式が異なることに依る剤を意味する。
本明細書において記述される組成物および方法と共に用いるための多様なマイクロバブル造影剤が利用可能である。マイクロバブルはその外殻構成、ガスコア構成、およびそれらが標的化されるか否かが異なりうる。CEACAM1などの、血管新生障害の特徴である受容体に結合する標的化リガンドを、マイクロバブルにコンジュゲートさせることができ、それにより、マイクロバブル複合体を、疾患または異常な組織などの関心対象領域に選択的に蓄積させることができる。標的化コントラスト増強超音波として知られるこの型の分子イメージングは、関心対象領域に標的化マイクロバブルが結合すると、強い超音波シグナルを生成する。標的化コントラスト増強超音波は、医学的診断および医学的治療の両方において多くの適応を有する。
したがって、本明細書において記述される方法のいくつかの態様において、たとえばSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、またはSEQ ID NO:15からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の重鎖CDR領域を含む抗CEACAM1組換え型抗体またはその一部;SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、またはSEQ ID NO:21からなる群より選択される配列を含む1つまたは複数の軽鎖CDR領域を含む抗CEACAM1抗体またはその抗体断片;SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:30からなる群より選択される可変重鎖(VH)アミノ酸配列を含む抗CEACAM1抗体または抗体断片;および/またはSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、またはSEQ ID NO:32からなる群より選択される可変軽鎖(VL)アミノ酸配列を含む抗CEACAM1抗体またはその抗体断片、などの組換え型抗CEACAM1抗体またはその抗体結合断片は、標的化超音波送達を用いて、膵臓癌などの癌または腫瘍の処置を必要とする対象に投与される。いくつかのそのような態様において、標的化超音波送達は、抗CEACAM1抗体またはその抗体断片の造影剤としてマイクロバブルを用いることを含む。いくつかのそのような態様において、標的化超音波はHIFUである。
薬学的製剤
本明細書において記述される方法の臨床での使用に関して、本明細書において記述される組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部などのCEACAM1アンタゴニストの投与は、非経口投与のための、たとえば静脈内、粘膜、たとえば鼻内;眼、または他の投与様式のための薬学的組成物または薬学的製剤への処方を含むことができる。いくつかの態様において、本明細書において記述される抗CEACAM1抗体またはその抗体断片は、対象において有効な処置が得られる任意の薬学的に許容される担体化合物、材料、または組成物と共に投与することができる。このように、本明細書において記述される方法において用いるための薬学的組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される成分と共に、本明細書において記述される抗CEACAM1抗体またはその抗体断片を含むことができる。
「薬学的に許容される」という句は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を引き起こすことなく、妥当な利益/リスク比に釣り合って、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織に接触して用いるために適している化合物、材料、組成物、および/または投与剤形を意味する。本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」という句は、抗CEACAM1抗体またはその一部の安定性、溶解度、または活性の維持に関係する、液体または固体増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、培地、封入材料、製造補助剤(たとえば、潤滑剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、またはステアリン酸亜鉛、またはステアリン酸)、または溶媒カプセル封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物、または媒体を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者に対して有害ではないという意味において「許容」されなければならない。「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」またはその他という用語は、本明細書において互換的に用いられる。
本明細書において記述される組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部は、以下のために適合された剤形を含む、固体、液体、またはゲル剤形で対象に化合物を投与するために特別に処方することができる:(1)たとえば、滅菌溶液または懸濁液、または徐放性製剤として、たとえば皮下、筋肉内、静脈内、または硬膜外注射による非経口投与;(2)たとえば皮膚に適用されるクリーム、軟膏、または徐放性パッチもしくはスプレーとしての表面適用;(3)たとえばペッサリー、クリームまたはフォームとしての膣内または直腸内;(4)眼;(5)経皮;(6)経粘膜;または(7)鼻。さらに、組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部は、薬物送達システムを用いて患者に埋め込むかまたは注射することができる。たとえば、Urquhart et al., 24 Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 199 (1984); CONTROLLED RELEASE OF PESTICIDES & PHARMACEUTICALS (Lewis, ed., Plenum Press, New York, 1981);米国特許第3,773,919号、第3,270,960号を参照されたい。
本明細書において記述される組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部などのCEACAM1特異的アンタゴニスト剤の治療製剤は、所望の程度の純度を有するCEACAM1特異的アンタゴニストを、任意の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, ed., 1980)と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の剤形で保存するために調製することができる。許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、使用される用量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール:レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなどの);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アルパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(たとえば、亜鉛-タンパク質錯体);および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン製界面活性剤を含む。
任意で、本明細書において記述される組成物を含む製剤は、薬学的に許容される塩、典型的にたとえば塩化ナトリウムを含み、好ましくはおよそ生理的濃度で含む。任意で、本発明の製剤は、薬学的に許容される保存剤を含むことができる。いくつかの態様において、保存剤濃度は、0.1から2.0%、典型的にv/vの範囲である。適した保存剤は、薬学分野において公知の保存剤を含む。ベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、メチルパラベン、およびプロピルパラベンは、保存剤の例である。任意で、本発明の製剤は、0.005から0.02%の濃度で薬学的に許容される界面活性剤を含むことができる。
本明細書において記述される組換え型抗CEACAM1抗体およびその一部などのCEACAM1特異的アンタゴニストを含む組成物の治療的製剤はまた、処置される特定の適応にとって必要な1つより多くの活性化合物、好ましくは互いに有害な影響を及ぼさない相補的活性を有する化合物を含むことができる。または、もしくはさらに、組成物は、細胞傷害剤、サイトカイン、成長阻害剤、および/またはVEGFRアンタゴニストなどの血管新生阻害剤を含むことができる。そのような分子は、意図される目的にとって有効である量で組み合わされて適切に存在する。
本明細書において記述されるCEACAM1特異的アンタゴニストを含む組成物の治療的製剤の活性成分はまた、コロイド状薬物送達システム(たとえば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルションにおいて、たとえばコアセルベーション技術または界面重合化によってそれぞれ調製されたマイクロカプセル、たとえばヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル、およびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入することもできる。そのような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences (16th ed., Osol, ed., 1980)において開示される。
いくつかの態様において、徐放性調製物を用いることができる。徐放性調製物の適した例は、マトリクスが成型された商品、たとえばフィルムまたはマイクロカプセルの形状である、組換え型抗CEACAM1抗体などのCEACAM1特異的アンタゴニストを含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスを含む。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ハイドロゲル(たとえば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とyエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドで構成される注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日超にわたる分子の放出を可能にするが、あるハイドロゲルは、より短い期間でタンパク質を放出する。封入された抗体が体内に長期間留まる場合、それらは37℃で湿度に曝露された結果として変性または凝集して、それによって生物活性の喪失および潜在的な免疫原性の変化が起こりうる。関係する作用機序に応じた安定化のために合理的戦略を考案することができる。たとえば、凝集の機序が、チオ-ジスルフィド交換を通しての分子間S-S結合形成であることが発見されれば、スルフヒドリル残基を修飾する、酸性溶液から凍結乾燥する、水分含有量を制御する、適切な添加剤を用いる、および特異的ポリマーマトリクス組成物を開発することによって、安定化を得ることができる。
本明細書において記述される方法において非経口投与などのインビボ投与のために用いられる治療的製剤は、無菌的であり得、これは、滅菌濾過メンブレンを通しての濾過、または当業者に公知の他の方法によって容易に行われる。
用量および期間
組換え型抗CEACAM1抗体およびその抗体断片などの、本明細書において記述されるCEACAM1特異的アンタゴニストは、良質医療に関する原則(Good Medical Practice)に一致する様式で処方、投薬、または投与される。この文脈において検討される要素は、処置される特定の障害、処置される特定の対象、個々の対象の臨床状態、障害の原因、剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、および医療従事者に公知の他の要素を含む。投与されるCEACAM1特異的アンタゴニストの「治療的有効量」とは、そのような検討によって左右され、癌を改善、処置、または安定化するために、無増悪期間(無増悪生存期間)を延長させるために、または腫瘍、休眠状態腫瘍、もしくは微小転移の発生もしくは再発を処置もしくは予防するために必要な、最少量を意味する。CEACAM1特異的アンタゴニストは、任意で、癌または癌を発症するリスクを予防または処置するために現在用いられる1つまたは複数の追加の治療剤と共に処方される。そのような他の剤の有効量は、製剤中に存在するCEACAM1特異的アンタゴニストの量、障害または処置のタイプ、および先に考察した他の要素に依存する。これらは一般的に、本明細書において前述で用いた用量および投与経路と同じ用量および同じ投与経路で、または前述で使用された用量のおよそ1から99%で用いられる。
疾患のタイプおよび重症度に応じて、たとえば1回もしくは複数回の個別の投与によるか、または連続注入によるかによらず、対象に投与するためのCEACAM1特異的アンタゴニストの初回候補用量は、約1 μg/kgから100 mg/kg(たとえば、0.1から20 mg/kg)である。典型的な1日量は、先に言及した要素に応じて、約1 μg/kgから約100 mg/kgまたはそれ以上の範囲でありうる。典型的な用量は、たとえば5 mg/kg、7.5 mg/kg、10 mg/kg、および15 mg/kgを含む。数日間またはそれより長い反復投与の場合、状態に応じて、処置はたとえば、先に記述した方法または当技術分野において公知の方法によって測定した場合に、癌が処置されるまで継続される。しかし、他の投与治療計画も有用でありうる。1つの非制限的な例において、CEACAM1特異的アンタゴニストが抗CEACAM1抗体またはその抗体断片である場合、抗CEACAM1抗体またはその抗体断片は、1週間に1回、2週間毎、または3週間毎に、5 mg/kg、7.5 mg/kg、10 mg/kg、または15 mg/kgを含むがこれらに限定されるわけではない約5 mg/kgから約15 mg/kgの範囲の用量で投与される。本明細書において記述される方法を用いる推移は、通常の技術およびアッセイによって容易にモニターすることができる。
本明細書において記述される方法を用いる治療の期間は、医学的に指示された期間、または所望の治療効果(たとえば、本明細書において記述される効果)が得られるまで続くであろう。ある態様において、本明細書において記述されるCEACAM1特異的組換え型抗体またはその一部などのCEACAM1特異的アンタゴニスト治療は、1ヶ月、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、10ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、10年、20年、または対象の寿命までの期間継続される。
併用治療
組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部などの抗CEACAM1阻害剤の血管新生阻害量を含む組成物の治療的有効量を対象に投与することによって癌または癌のリスクを有する対象における癌を阻害または処置するための、本明細書において提供される方法は、いくつかの態様において、血管新生阻害剤、化学療法、放射線、手術、または血管新生を阻害するために当業者に公知である他の処置などの1つまたは複数の追加の処置の投与をさらに含む。
いくつかの態様において、本明細書において記述される方法はさらに、組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部などの少なくとも1つのCEACAM1特異的アンタゴニストと、1つまたは複数の追加の抗癌治療との併用の投与を含む。追加の抗癌治療の例には、手術、放射線治療(放射線療法)、生物療法、免疫療法、化学療法、またはこれらの治療の併用が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。加えて、細胞傷害剤、血管新生抑制剤および抗増殖剤を、CEACAM1特異的アンタゴニストと併用して用いることができる。
任意の方法および使用に関するある態様において、本発明は、局所再発したかまたはこれまで無処置の癌に対して感受性があるかまたはそれらを有すると診断されている対象に、組換え型抗CEACAM1抗体および1つまたは複数の化学療法剤の有効量を投与することによる、癌の処置を提供する。多様な化学療法剤を、本発明の併用処置法および使用において用いることができる。本明細書において記述される方法において用いることが企図される化学療法剤の例示的なおよび非制限的リストは、「定義」に提供されるか、または本明細書において記述される。
膵臓癌に関連するそれらの態様において、方法はさらに、膵臓癌の処置および治療に用いられる1つまたは複数の追加の治療的処置を含みうる。いくつかのそのような態様において、治療的処置は、手術または膵臓切除である。いくつかの態様において、膵臓切除は、本明細書において記述される組換え型抗CEACAM1抗体の有効量を投与する前または後に行われる。いくつかの態様において、膵臓切除は、組換え型抗CEACAM1抗体の有効量の投与を開始した後に行われる。いくつかの態様において、膵臓切除は、組換え型抗CEACAM1抗体の有効量の投与と同時に行われる。いくつかの態様において、膵臓切除は、門脈または上腸間膜静脈の切除および再形成を伴う。いくつかの態様において、腹腔鏡による切除が用いられる。いくつかのそのような態様において、内視鏡的点墨法を用いて、腹腔鏡による切除の前に小さな病変の位置を特定することができる。切除後の術後の合併症は、膵臓吻合部の漏出および胃内容排出時間の遅延を含みうる。
膵臓癌に関連する態様において、方法はさらに、組換え型抗CEACAM1抗体の投与の前、あいだ、および/または後の膵臓癌の病理評価を含みうる。当業者に公知であるように、切除された膵臓腫瘍などの膵臓腫瘍の病理評価は、重要な予後情報を提供する。病理評価は、膵管腺癌の組織学的変種の分類を含む。そのような変種は、膠様癌(腸管型膵管内乳頭粘液性腫瘍に関連)、髄様癌(マイクロサテライト不安定性を有しうる)、および腺扁平上皮腫瘍、肝様癌、環状体細胞癌、未分化癌、および破骨細胞様巨細胞を有する未分化癌を含むその他の癌を含む。いくつかのそのような態様において、広範囲の転移発生のリスクの増加および外科的切除後の転帰不良に関連しているSMAD4免疫標識を行うこと、有害な転帰に関連している線維芽細胞におけるSPARC発現などの、公知の膵臓癌マーカーの分子評価も同様に行うことができる。
膵臓癌を処置または阻害する方法に関連するいくつかの態様において、1つまたは複数の追加の治療的処置は、アジュバント療法を含むことができる。そのようなアジュバント療法は、ゲムシタビン;化学放射線;フルオロウラシルを用いる化学放射線;フルオロウラシルを用いる化学放射線の前後でのゲムシタビンとフルオロウラシルの併用;外部線源放射線と同時に行われるインターフェロンα-2b、シスプラチン、および連続注入フルオロウラシルの併用;エルロチニブ;ゲムシタビン、ドセタキセル、およびカペシタビンの併用;フルオロウラシル、葉酸、イリノテカン、およびオキサリプラチンの併用;ゲムシタビンと上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)阻害剤であるエルロチニブとの併用;調節性T細胞枯渇剤としてのシクロホスファミドの存在下または非存在下での顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子分泌性膵臓癌ワクチン;および/またはその任意の組み合わせを含むがこれらに限定されるわけではない。
膵臓癌を処置または阻害する方法に関連するいくつかの態様において、1つまたは複数の追加の治療的処置は、放射線療法を伴う。膵臓癌の処置において、分割放射線療法は、典型的に約6週間のあいだに45〜60 Gy(1.8〜2.0 Gy/日)として、放射線増感剤として経口フルオロピリミジンであるフルオロウラシルまたはカペシタビンと共に送達される。アジュバント療法として、45 Gyを最初に腫瘍床、外科的吻合部位、および局所リンパ節に送達する。次に、顕微鏡的浸潤部を標的とするために、追加の放射線(約5〜15 Gy)を腫瘍床に向けることができる。術前CTスキャン(コントラスト剤の経口および静脈内投与を伴う)および外科用クリップを用いて、放射線の最適量および位置を計算することができる。
膵臓癌を処置または阻害する方法のいくつかの態様において、1つまたは複数の追加の治療的処置は、オラパリブなどのPARP阻害剤を含む。BRCA2-PALB2-Fanconi DNA修復経路に欠損を有する膵臓癌細胞は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤に対して感受性を有することが示されている。
膵臓癌を処置または阻害する方法のいくつかの態様において、1つまたは複数の追加の治療的処置は、hedgehog経路阻害剤を含む。たとえば、hedgehog経路阻害剤であるGDC-0449(Genentech, San Francisco, CA, USA)は、転移性膵臓腺癌患者においてゲムシタビンおよびパクリタキセルのナノ粒子製剤と併用して、現在フェーズ2臨床試験において治験中である。本明細書において記述される膵臓癌を処置または阻害する方法において用いることができる他の治療剤は、マルチキナーゼ阻害剤であるソラフェニブ、ならびにSRC(ダサチニブ)、γセクレターゼ、MTOR、TNFSF10(TRAILとしても知られる)、およびIGF1を標的とする剤を含む。
これらの方法のいくつかの態様において、化学療法、低温療法、光力学療法、および/または高周波アブレーションの内視鏡による送達を含むがこれらに限定されるわけではない、内視鏡による処置を用いて、CEACAM1特異的アンタゴニストおよび/または1つもしくは複数のさらなる治療剤を送達または投与することができる。
いくつかの態様において、本明細書において記述される方法は、1つまたは複数の化学療法剤(たとえば、カクテル)またはその任意の組み合わせと共にCEACAM1特異的アンタゴニストの投与を含む。ある態様において、化学療法剤は、たとえばカペシタビン、タキサン、アントラサイクリン、パクリタキセル、ドセタキセル、パクリタキセルタンパク質結合粒子(たとえば、Abraxane(商標))、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、またはその併用治療である。本明細書において用いられる併用投与は、個別の製剤または1つの薬学的製剤を用いる同時投与、および好ましくは両方(または全て)の活性な剤がその生物活性を同時に発揮する期間が存在するいずれかの順序での連続投与を含む。そのような化学療法剤の調製および投与スケジュールは、製造元の説明書に従って、または当業者によって経験的に決定されるように用いることができる。化学療法の調製および投与スケジュールはまた、Perry CHEMOTHERAPY SERVICE ED. (Williams & Wilkins, Baltimore, Md., 1992)において記述される。したがって、いくつかの態様において、化学療法剤は、CEACAM1特異的アンタゴニストの投与前もしくは後に行うことができ、またはCEACAM1アンタゴニストの投与と同時に行うことができる。
本明細書において記述される方法のいくつかの他の態様において、組換え型抗体などの本発明のCEACAM1アンタゴニストとの腫瘍の併用治療にとって有用な他の治療剤は、EGFR、ErbB2(Her2としても知られる)、ErbB3、ErbB4、またはTNFなどの腫瘍成長に関係する他の因子のアンタゴニストを含む。いくつかの態様において、1つまたは複数のサイトカインを対象に投与することが有益でありうる。いくつかの態様において、CEACAM1アンタゴニストは、成長阻害剤と同時投与される。たとえば、成長阻害剤を最初に投与した後、CEACAM1アンタゴニストを投与することができる。CEACAM1アンタゴニストを同時に投与することまたはCEACAM1アンタゴニストを先に投与することも同様に企図される。成長阻害剤の適した用量は、現在用いられる用量であり、成長阻害剤とCEACAM1アンタゴニストの併用作用(相乗)により低下させることができる。
本明細書において記述される組換え型抗CEACAM1抗体およびその一部などのCEACAM1阻害剤と併用して用いることができる血管新生阻害剤の例には、直接の血管新生阻害剤、アンジオスタチン、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、アレステン、カンスタチン、コンブレタスタチン、エンドスタチン、NM-3、トロンボスポンジン、タムスタチン、2-メトキシエストラジオール、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、およびビタキシン;ならびに間接的血管新生阻害剤:ZD1839(Iressa)、ZD6474、OSI774(TARCEVA)、CI1033、PKI1666、IMC225(Erbitux)、PTK787、SU6668、SU11248、Herceptin、およびIFN-α、CELEBREX(登録商標)(セレコキシブ)、THALOMID(登録商標)(サリドマイド)、およびIFN-αが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、本明細書において記述される方法において用いるための血管新生阻害剤は、多様な血管新生促進性の増殖因子受容体の低分子チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)を含むがこれらに限定されるわけではない。現在、抗癌治療として承認されている3つのTKIは、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、およびスニチニブ(SUTENT(登録商標))である。
いくつかの態様において、本明細書において記述される方法において用いられる血管新生阻害剤は、テムシロリムス(TORICEL(商標))、ボルテゾミブ(VELCADE(登録商標))、サリドマイド(THALOMID(登録商標))、およびドキシサイクリンなどのmTOR(ラパマイシンの哺乳動物標的)の阻害剤を含むがこれらに限定されるわけではない。
他の態様において、本明細書において記述される方法において用いられる血管新生阻害剤は、α-2アンチプラスミン(断片)、アンジオスタチン(プラスミノーゲン断片)、血管新生抑制性アンチトロンビンIII、軟骨由来阻害剤(CDI)、CD59補体断片、エンドスタチン(コラーゲンXVIII断片)、フィブロネクチン断片、gro-β(C-X-Cケモカイン)、ヘパリナーゼ、ヘパリン六糖断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、インターフェロンα/β/γ、インターフェロン誘導タンパク質(IP-10)、インターロイキン-12、kringle 5(プラスミノーゲン断片)、β-トロンボグロブリン、EGF(断片)、VEGF阻害剤、エンドスタチン、フィブロネクチン(45 kD断片)、高分子量キニノーゲン(ドメイン5)、HGFのNK1、NK2、NK3断片、PF-4、セルピンプロテナーゼ阻害剤8、TGF-β-1、トロンボスポンジン-1、プロサポシン、p53、アンジオアレスチン、メタロプロテナーゼ阻害剤(TIMP)、2-メトキシエストラジオール、胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、プロラクチン16 kD断片、プロリフェリン関連タンパク質(PRP)、レチノイド、テトラヒドロコルチゾル-S-トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)、バスキュロスタチン、およびバソスタチン(カルレチクリン断片)、パミドロネートサリドマイド、TNP470、アミノ-ビスホスホネートであるゾレドロン酸などのビスホスホネートファミリー、RC-3095およびRC-3940-IIなどのボンベシン/ガストリン放出ペプチド(GRP)アンタゴニスト(Bajol et. al., 90 British J. Cancer 245 (2004))、抗VEGFペプチドRRKRRR(dRK6)(SEQ ID NO:40)(Yoo, 174 J.Immunol. 5846 (2005))などの血管新生抑制因子を含む。
このように、組換え型抗CEACAM1抗体およびその一部などのCEACAM1阻害剤の投与に関連して、血管新生を阻害する化合物を臨床的に適切に投与すると、少なくとも統計学的に有意な少数の患者に対して、症状の改善、治癒、疾患の負荷の減少、腫瘍塊または細胞数の減少、寿命の延長、クオリティオブライフの改善、または特定のタイプの疾患もしくは状態、たとえば膵臓癌の処置を周知している医師が陽性として一般的に認識する他の効果などの有益な効果が得られることが示されている。
CEACAM1特異的アンタゴニストおよび1つまたは複数の他の治療剤は、腫瘍、休眠状態腫瘍、または微小転移の発生または再発を減少または消失させるために十分である量および期間で同時または連続的に投与することができる。CEACAM1特異的アンタゴニストおよび1つまたは複数の他の治療剤を、腫瘍の再発の可能性を予防または減少させるために維持療法として投与することができる。
当業者によって理解されるように、化学療法剤または他の抗癌剤の適切な用量は一般的に、たとえば化学療法剤を単独でまたは他の化学療法剤と併用して投与する場合に臨床治療において既に使用されている用量付近であろう。処置される状態に応じて、用量の変更がおそらく起こるであろう。処置を行う医師は、個々の患者の適切な用量を決定することができるであろう。
上記の治療計画に加えて、対象を放射線療法に供することができる。
本明細書において記述される方法、使用および組成物の任意のある態様において、投与される組換え型CEACAM1抗体はインタクトの裸の抗体である。いくつかの態様において、組換え型CEACAM1抗体を、細胞傷害剤にコンジュゲートさせることができる。任意の方法および使用のある態様において、コンジュゲートさせたCEACAM1抗体および/またはそのCEACAM1抗体部分は、細胞によってインターナライズされて、それによってそれが結合する癌細胞の殺細胞におけるコンジュゲートの治療効能を増加させる。いくつかの態様において、CEACAM1組換え型抗体および/またはそのCEACAM1抗体部分にコンジュゲートさせた細胞傷害剤は、癌細胞中の核酸を標的とするか、または核酸を妨害する。そのような細胞傷害剤の例には、メイタンシノイド、カリケアミシン、リボヌクレアーゼ、およびDNAエンドヌクレアーゼが挙げられ、本明細書において他所でさらに記述される。
本明細書において記述される様々な局面の態様を以下の番号をつけたパラグラフによって説明することができる:
1. 少なくとも1つの軽鎖成分と少なくとも1つの重鎖成分とを含む、単離されたCEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、該重鎖成分がSEQ ID NO:26、SEQ ID NO:28、またはSEQ ID NO:30のアミノ酸を含み、かつ該軽鎖成分がSEQ ID NO:27、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:31、またはSEQ ID NO:32のアミノ酸を含み、該抗体またはその抗原結合部分が、モノクローナル抗体5F4、34B1、または26H7によって認識される抗原に結合する、前記単離されたCEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
2. 抗CEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体がヒト化抗体またはその一部である、パラグラフ1の単離されたCEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
3. ヒト免疫グロブリンγ-1およびκ定常領域にそれぞれ連結されたパラグラフ1の組換え型抗体の重鎖および軽鎖の可変領域を含む、キメラ抗体。
4. 単離された組換え型抗体またはその抗原結合部分が5F4によって認識される抗原に結合するように、SEQ ID NO:1のアミノ酸残基からなる重鎖相補性決定領域(CDR)1、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基からなる重鎖CDR2、SEQ ID NO:3のアミノ酸残基からなる重鎖CDR3、SEQ ID NO:4のアミノ酸残基からなる軽鎖CDR1、SEQ ID NO:5のアミノ酸残基からなる軽鎖CDR2、およびSEQ ID NO:6のアミノ酸残基からなる軽鎖CDR3を含む、前記単離された組換え型抗体またはその抗原結合部分。
5. 単離された組換え型抗体またはその抗原結合部分が5F4、34B1、または26H7によって認識される抗原に結合するように、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:7、またはSEQ ID NO:13のアミノ酸残基からなる重鎖相補性決定領域(CDR)1;SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:8、またはSEQ ID NO:14のアミノ酸残基からなる重鎖CDR2;SEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:9またはSEQ ID NO:15のアミノ酸残基からなる重鎖CDR3;SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:16、またはSEQ ID NO:19のアミノ酸残基からなる軽鎖CDR1;SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:17、またはSEQ ID NO:20のアミノ酸残基からなる軽鎖CDR2;およびSEQ ID NO:6、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:18、またはSEQ ID NO:21のアミノ酸残基からなる軽鎖CDR3を含む、前記単離された組換え型抗体またはその抗原結合部分。
6. 抗体部分がFab断片、Fab'断片、Fd断片、Fd'断片、Fv断片、dAb断片、F(ab')2断片、一本鎖断片、ダイアボディ、または線形抗体である、パラグラフ4または5のいずれかの単離されたCEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
7. 前記パラグラフのいずれかの抗体を含む、診断キット。
8. 前記パラグラフのいずれかの抗体と担体とを含む、組成物。
9. 標識に連結されている、前記パラグラフのいずれかの抗体。
10. CEACAM1に対して特異的なイムノコンジュゲートを形成するために抗CEACAM1組換え型抗体またはその一部にコンジュゲートさせた剤をさらに含む、前記パラグラフのいずれかの単離されたCEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
11. 抗体またはその抗体断片にコンジュゲートさせた剤が、化学療法剤、毒素、放射活性同位元素、低分子、siRNA、ナノ粒子、またはマイクロバブルである、パラグラフ10の単離されたCEACAM1特異的組換え型モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
12. 前記パラグラフのいずれかのCEACAM1に特異的に結合する組換え型抗CEACAM1抗体またはその一部と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
13. それを必要とする対象に、パラグラフ12の薬学的組成物の治療的有効量を投与する段階を含む、膵臓癌を処置する方法。
14. それを必要とする対象に、パラグラフ12の薬学的組成物の治療的有効量を投与する段階を含む、癌または腫瘍を有する対象における腫瘍細胞浸潤を阻害する方法。
15. 1つまたは複数の化学療法剤、血管新生阻害剤、細胞傷害剤、または抗増殖剤の投与をさらに含む、パラグラフ13または14のいずれかの方法。
16. それを必要とする対象に、パラグラフ12の薬学的組成物の治療的有効量を投与する段階を含む、それを必要とする対象において、細胞におけるCEACAM1発現および/または機能を阻害することによって腫瘍成長を阻害するおよび腫瘍サイズまたは腫瘍転移を減少させる方法。
17. それを必要とする対象に、パラグラフ12の薬学的組成物の治療的有効量を投与する段階を含む、腫瘍細胞におけるCEACAM1発現および/または機能を阻害することによって癌の進行を阻害する方法。
18. 有効量の治療剤と標的化部分にコンジュゲートさせたパラグラフ12の薬学的組成物とを対象に投与する段階、ならびに該標的化部分にコンジュゲートさせたパラグラフ12の薬学的組成物の有無を分子イメージングを用いて判定する段階を含む、CEACAM1標的化分子イメージングと、治療剤のCEACAM1標的化送達とを組み合わせる方法。
19. 治療剤が化学療法剤、低分子、ペプチド、またはアプタマーである、パラグラフ18の方法。
20. 膵臓癌または膵臓腫瘍を有する対象における腫瘍細胞の浸潤を阻害するのに用いるための、パラグラフ12の薬学的組成物。
21. 1つまたは複数の化学療法剤、血管新生阻害剤、細胞傷害剤、または抗増殖剤をさらに含む、パラグラフ20の薬学的組成物。
22. 治療剤が、化学療法剤、低分子、ペプチド、またはアプタマーである、パラグラフ21の薬学的組成物。
23. それを必要とする対象の細胞におけるCEACAM1発現および/または機能を阻害することによって腫瘍成長を阻害するのに、および腫瘍サイズまたは腫瘍転移を減少させるのに用いるための、パラグラフ12の薬学的組成物。
24. それを必要とする対象の腫瘍細胞におけるCEACAM1発現および/または機能を阻害することによって癌の進行を阻害するのに用いるための、パラグラフ12の薬学的組成物。
25. 5F4抗体の重鎖の可変領域をコードする、SEQ ID NO:33の配列のヌクレオチドを含む単離されたオリゴヌクレオチド。
26. 5F4抗体の軽鎖の可変領域をコードする、SEQ ID NO:34の配列のヌクレオチドを含む単離されたオリゴヌクレオチド。
27. パラグラフ25またはパラグラフ26のいずれかのオリゴヌクレオチドを含む、単離された発現ベクター。
28. パラグラフ27の発現ベクターを含む、単離された宿主細胞または単離された宿主細胞集団。
本発明は、制限的であると解釈すべきではない以下の実施例によってさらに説明される。
実施例1.5F4抗体による膵臓癌の処置および予防
図1は、5F4マウス抗ヒトCEACAM1モノクローナル抗体が、ヒト膵臓細胞株(AsPc-1)微小転移からRag2欠損マウスを保護することを証明する。静脈内注射後の非侵襲性光感作法によるAsPcl腫瘍細胞の早期検出を示す。ヒト膵臓癌細胞株であるAsPc-1(0.5×106個)を尾静脈注射によって投与した。14日後、動物にδ-アミノレブリン酸(ALA;100 mg/kg)の経口投与を行って、4から6時間後に安楽死によって屠殺して組織蛍光を分析した。光退色および光毒性反応を回避するために、動物を弱い光の条件で維持した。動物の腹腔および胸腔を白色光の真下で調べた後、UV光(405 nm)を照射して、肺の実質およびリンパ節における、転移の証拠としての腫瘍の存在を評価した。MOPC処置対照群(上)における出血している肺は、腫瘍細胞の存在による肺実質の損傷を示しているが、5F4処置動物(下)では正常な出血していない肺が認められることに注意されたい。ALA代謝の模式図を右側に示す。
図2A〜2Bは、5F4マウス抗ヒトCEACAM1モノクローナル抗体が、ヒト膵臓細胞株(AsPc-1)微小転移からRag2欠損マウスを保護することを証明する。図1のようにAsPc-1細胞株の静脈内接種後14日目に肺を調べる。図2Aは、水分貯留能を証明する。肺は、胸部内のスポンジ様の葉状構造である。水分貯留は、肺の損傷(例えば、炎症、浮腫、うっ血)を証明するためのルーチンの方法の1つである。水分貯留を測定するために、MOPC処置動物および5F4処置動物からの5葉の1つを切除して重量を測定し、ガラス製の乾燥キャビネット内で14〜18日間維持した。乾燥後、肺の重量を再度測定して、その差をパーセント水分喪失として示す。5F4処置マウスでは肺のほぼいかなる水分喪失も認められないが、MOPC-1処置マウスではかなりの水分喪失が認められる。図2Bは、MOPC処置動物における虚脱した肺を示す(15 mlコニカルチューブ、右)。肺は空気嚢を保有する。損傷した肺はしばしば空気および弾性を失う。正常な肺内部の空気は、浮力の増加をもたらす。肺の損傷を浮力によって測定するために、マウス抗ヒトCEACAM1モノクローナル抗体5F4処置動物(この例では216番、左)およびMOPC処置動物(この例では208番、右)処置動物から5葉中4葉を切除して、蒸留水ですすぎ、PBS緩衝液中に2時間以上浮遊させた。健康な肺(5F4マウス抗ヒトCEACAM1モノクローナル抗体処置)は浮いているが、虚脱した肺(MOPC抗体処置)は沈んでいる。
図3は、本明細書において記述される実験に用いたインビボ転移モデルを示す。ヒト膵臓癌細胞株AsPc-1は、Rag2-/-マウスの脇腹に皮下注射することによって、異種移植片として確立された。抗ヒトCEACAM1モノクローナル抗体5F4(200μg/マウス)またはマウスIgG1(MOPC、200μg)を腫瘍細胞の接種の1日前、2日後、4日後、およびその後3日毎に表記の期間、腹腔内に投与した。腫瘍の転移および接種部位体積を評価するために、マウスを皮下接種後6週目に屠殺した。腫瘍体積は3/4π*(L/2)*(H/2)*(W/2)として計算され、式中Wは幅を表し、Hは高さを表し、およびLは長さを表す。
図4A〜4Dは、本明細書において記述される5F4抗体が、図3に記述したように皮下接種後の腋窩リンパ節へのAsPc-1転移を防止することを証明する。本明細書のデータは、皮下接種後2週間での分析を示す。FACS分析により、MOPC処置マウスの腋窩LNにはヒトCEACAM1+細胞が存在するが、5F4モノクローナル抗体は、ヒトCEACAM1に対して特異的であるがマウスCEACAM1は認識しないことから、5F4処置マウスではヒトCEACAM1+細胞は認められないことが判明した(1群n=3)(図4Aおよび4C)。PCR分析により、MOPC処置マウスの腋窩LNではヒトCEACAM1-Lが検出可能なレベルで存在するが、5F4処置マウスには存在しないことが判明した(1群n=2)(図4Bおよび4D)。Sp、脾臓、LN、腋窩リンパ節、MLN、腸間膜リンパ節。
図5A〜5Eは、本明細書において記述される5F4抗体が、皮下接種後14日目で腹腔へのAsPc-1転移を防止することを示す。MOPCによって処置したRag2-/-マウス(マウス7例中4例;図5B)の腹膜には、AsPc-1由来の腫瘍結節細胞が散在することが観察されたが、5F4で処置したマウス(マウス7例中0例;図5A)では観察されなかった。結節のヘマトキシリン・エオジン染色により、MOPCによって処置したマウスにAsPc-1細胞が存在することが判明した(25倍、図5Cおよび100倍、図5D)。これらの結果の定量を図5Eに示す。
図6A〜6Oは、本明細書において記述される5F4抗体が、Rag2-/-マウスにおけるAsPc-1転移を防止することを証明する。Rag2-/-マウスに、図3のようにAsPc-1細胞を皮下投与した。MOPC(マウスIgG1)または5F4のいずれかを図3に記述されるスケジュールで腹腔内投与して、接種後6週目にマウスを評価した。肉眼で見えるAsPc-1腫瘍が注射部位に局在した。注射部位に局在する腫瘍は、5F4処置マウスにおいて腫瘍の接種後9日目に認められた(図6A、6C、および6E;矢印)。MOPC処置動物の接種部位腫瘍は、より遅い接種後28日目に観察され、より大きかった(図6B、6D、および6F;矢印は接種部位での腫瘍および腹膜転移を示す)。腹腔での拡散は、MOPCを投与されたマウスのみで認められた(図6D、6F、6Lおよび6O;矢印は、膵臓(図6Lおよび6O)および胃(図6O)などの臓器に関連する転移を示し;矢印は図6D、6Lおよび6Oにおいて腹膜への転移を示す)。接種部位での腫瘍内の血管は、MOPC処置マウス(図6H)において観察されたが、5F4処置マウス(図6G)では観察されなかった。腫瘍は、MOPC処置マウスの前立腺(図6J)および膵臓(図6Lおよび6O)において認められたが、5F4処置マウスの前立腺(図6I)または膵臓(図6K)では認められなかった。腫瘍は、膵臓腫瘍(図6O、下の矢印)に隣接している胃壁(図6O、上の矢印)で観察された。腫瘍細胞は、MOPC処置マウスの縦隔LN(図6M、矢印)および肺(図6M、矢印)において検出された。図6Nは、5F4モノクローナル抗体によって5週間処置したAsPc-1細胞の皮下接種後6週目での腹腔の図を示す。転移は観察されない。
図7は、接種後6週目における、皮下接種後の代表的な肉眼的皮下腫瘍を示す。上のパネルは、表記の処置スケジュールで5F4処置動物およびMOPC-1処置動物の脇腹から切除した皮下腫瘍を示す。下のパネルは、表記の実験動物からの同じ腫瘍の水平断面を示す。下のパネルは、5F4処置マウスにおいて腫瘍の壊死が増加したことを示す。腫瘍の体積を示し、体積は3/4π*(L/2)*(H/2)*(W/2)として計算され、式中Wは幅を表し、Hは高さを表し、およびLは長さを表し、腫瘍の下にmm3で示す。
図8は、AsPc-1を皮下接種した動物における6週間後の皮下腫瘍の病理を示す。皮下腫瘍は、上皮様特色を有する低分化癌腫のシートおよびネスト状構造、ならびに腺癌と一致するいくつかの細胞内ムチン性空胞で構成される。それらはいくつかの変性変化および中心壊死を示し、これは5F4ヒトCEACAM1特異的モノクローナル抗体による持続的な処置後に増加する。
図9は、抗ヒトCEACAM1モノクローナル抗体5F4が、Rag2-/-マウスへのAsPc-1細胞皮下接種後6週目に、Rag2欠損マウスをヒト膵臓細胞株(AsPc-1)肉眼的転移から保護していることを証明する。皮下接種後の代表的な肉眼的転移腫瘍は、MOPC処置動物に限って観察される。示されるように、5F4モノクローナル抗体処置を4および5週間行うと、転移を防止することができた。腫瘍は、MOPC処置動物において転移性の膵臓腫瘍に隣接している胃壁においておよび粘膜組織への浸潤が認められる腹腔において認められた(図6に記述される)。
図10は、接種後6週目にMOPC抗体によって処置したマウスにおける、皮下接種後に長距離拡散している膵臓腫瘍細胞転移の病理を示す。ヘマトキシリン・エオジン染色後の個々の組織の病理を示す。星印(*)は、MOPC対照群の免疫欠損Rag2-/-マウスに限って広範な腫瘍成長が観察され、5F4処置マウスでは観察されなかったことを示す。ヒト膵臓癌細胞は、Rag2-/-マウスにおいて成長して、前立腺、肝臓、肺(倍率10倍)、腸間膜リンパ節、および小腸(倍率20倍)へと転移することが観察された。さらに、肺における膵臓腫瘍細胞のリンパ浸潤がこのモデルにおいて認められ、これを2つの星印で示す(倍率20倍)。後者は免疫蛍光染色によって示される(腫瘍を示すサイトケラチン;リンパ管を示すLYVE-1)。
図11は、皮下接種後6週目での転移性腫瘍の同定を示す。MOPC処置動物および5F4処置動物の肺を示す。腫瘍マーカー(サイトケラチン)による染色によって明らかにされるように、腫瘍は、MOPCによって処置した動物に限って同定され5F4投与によって処置した動物では同定されなかった。DAPIは核を染色する。
図12A〜12Bは、皮下接種後のリンパ転移の免疫蛍光による同定を示す。図12Aは、MOPC処置後に同定されたが、5F4処置後では同定されなかったリンパ管(リンパ管内皮マーカー、Lyve-1)および浸潤性腫瘍細胞(サイトケラチン)の特異的染色を示す。腫瘍細胞は、新たに生成されたリンパ管(染色はこれらの2つのマーカーの重なりと一致する)に取り囲まれていた。図12Bは、リンパ管(リンパ管内皮マーカー、Lyve-1)または腫瘍細胞(サイトケラチン)に対する特異的染色が5F4処置後では同定されなかったことを証明する。
図13A〜13Eは、皮下接種後のリンパ転移の免疫蛍光による同定を示す。図13Aは、5F4処置動物の膵臓を示す。リンパ管(リンパ管内皮マーカー、Lyve-1)または腫瘍細胞(サイトケラチン)に対する特異的染色は同定されなかった。図13B〜13Eは、MOPC処置動物の膵臓を示す。リンパ管(リンパ管内皮マーカー、Lyve-1)および浸潤性腫瘍細胞(サイトケラチン)に対する特異的染色が同定された。図13Dおよび13Eにおいて、腫瘍細胞は、新たに生成されたリンパ管に取り囲まれていた。
図20は、5F4モノクローナル抗体による膵臓癌処置の治療モデルを示す。AsPc1細胞2×106個をCeacam1-/-Rag2-/-マウスの皮下に接種した。腫瘍接種後12日目で触診可能な腫瘍の証拠が得られた後、5F4モノクローナル抗体による治療を200μg/注射で開始して、これを2週間のあいだに2〜3日毎に計6回注射した。この期間において、示されるように局所皮下腫瘍結節のサイズを測定した。MOPC(マウスIgG1)を対照とした。マウス番号73(△)によって示されるMOPC処置動物は、マウス番号71および72(□および○)によって示される5F4モノクローナル抗体処置マウスと比較して、腫瘍成長の増加を示した。これらの試験は、原発腫瘍成長の5F4による阻害を証明する。
図21は、5F4モノクローナル抗体による治療的処置が肺への転移性疾患を遮断することを証明する。図20に記述されるプロトコールを用いて、5F4処置マウスおよびMOPC処置マウスを26日目に屠殺した。肺組織を収集して、パラフィン固定後、組織をヘマトキシリン・エオジンによって染色した。組織切片の顕微鏡検査では、5F4処置群(n=4)およびMOPC処置群(n=4)において、肺における明白な腫瘍病巣数ならびに同定された最大の結節サイズを調べた。観察されうるように、5F4処置によって、Ceacam1-/-×Rag2-/-マウスの肺への転移性結節の数およびサイズの減少が起こった。
実施例2.モノクローナル抗CEACAM1抗体のクローニングおよびシークエンシング
本実施例の目的は、3つのハイブリドーマ(5F4/2C6/2H3、34B1/2E8/2E6、および26H7/2H9/2E10)の各々によって発現されたモノクローナル抗体をコードするV領域(VHおよびVL)配列を得ることであった。生存凍結ハイブリドーマ細胞を再生させてRNAを抽出した。mRNAを逆転写して抗体特異的転写物をPCR増幅した。PCR産物をクローニングして、抗体VH領域およびVL領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を決定して、配列データを分析した。
各抗体のアイソタイプを、Pierce Rapid ELISAマウスmAbアイソタイピングキット(Thermo Scientific cat. no. 37503)を用いて細胞培養上清から決定した。3つの抗体は全て、マウスIgG1/κであることが認められた。RNAを、RNAQUEOUS(登録商標)-4PCRキット(Ambionカタログ番号AM1914)を用いて細胞沈降物から抽出した。V領域を、IgGVHおよびIgκVLに関する定常領域プライマーと共にマウス抗体シグナル配列に関する縮重プライマープールを用いてRT-PCRによって増幅した。重鎖V領域mRNAを6個の縮重プライマープール(HAからHF)の組を用いて増幅し、軽鎖V領域mRNAを、7個の縮重プライマープールの組(KAからKG)を用いて増幅した。成功した増幅の各々から得られたPCR産物を精製して、「TA」クローニングベクター(pGEM-T(登録商標)Easy、Promega、カタログ番号A1360)においてクローニングして、そこから配列を得た。
ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3に関して、予想されるサイズの重鎖V領域増幅産物を、プライマープールHA、HC、およびHFについて観察した。軽鎖V領域に関してRT-PCR増幅産物をプライマープールKB、KC、およびKGから得た。18個のVHおよび14個のVκクローンをシークエンシングした。プライマープールHAおよびHFからの10個のクローンにおいて1つの機能的VH遺伝子が同定された。プライマープールHCからシークエンシングされたクローンは、非機能的転写物を含むことが認められた。1つの機能的Vκ遺伝子配列がプライマープールKGからの6個全てのクローンにおいて同定された。プライマープールKBおよびKCからシークエンシングされた残りの8個のVκクローンは、ハイブリドーマ融合パートナーSP2/0に通常関連する異常な転写物(GenBankアクセッション番号M35669)を含んだ。
ハイブリドーマ34B1/2E8/2E6に関して、予想されるサイズの重鎖V領域増幅産物は、プライマープールHA、HC、およびHFに関して観察された。軽鎖V領域に関して、RT-PCR増幅産物は、プライマープールKB、KC、およびKGから得られた。18個のVHおよび14個のVκクローンをシークエンシングした。1つの機能的VH遺伝子がプライマープールHAおよびHFからシークエンシングした11個のクローンにおいて同定された。プライマープールHCからシークエンシングしたクローンは、非機能的転写物を含むことが認められた。1つの機能的Vκ遺伝子配列がプライマープールKGの6個全てのクローンにおいて同定された。プライマープールKBおよびKCからシークエンシングした残りの8個のVκクローンは、ハイブリドーマ融合パートナーSP2/0に通常関連する異常な転写物(GenBankアクセッション番号M35669)を含んだ。
ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10に関して、予想されるサイズの重鎖V領域増幅産物がプライマープールHA、HB、HCおよびHFについて観察された。軽鎖V領域に関して、プライマープールKB、KC、KD、KF、およびKGからRT-PCR増幅産物を得た。28個のVHクローンおよび29個のVκクローンをシークエンシングした。プライマープールHAおよびHFからシークエンシングした10個のクローンにおいて1つの機能的VH遺伝子が同定された。プライマープールHBおよびHCからシークエンシングしたクローンは、非機能的転写物を含むことが認められた。2つの機能的Vκ遺伝子配列が同定され、そのうちの1つはプライマープールKDおよびKGからの8個のクローンにおいて同定され(「seq1」と呼ばれる)、もう1つはプライマープールKDおよびKFからの2つのクローンにおいて同定された(「seq2」と呼ばれる)。プライマープールKBおよびKCからシークエンシングした8個のVκクローンは、通常、ハイブリドーマ融合パートナーSP2/0に関連する異常な転写物(GenBankアクセッション番号M35669)を含んだ。
ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3、34B1/2E8/2E6、および26H7/2H9/2E10から得た配列の分析から、V領域配列がマウスV領域サブグループと高い相同性を有することが示された。さらに、CDRの長さは、マウスV領域の正常範囲内であった。それゆえ、5F4/2C6/2H3、34B1/2E8/2E6、および26H7/2H9/2E10モノクローナル抗体は、ヒト化のための何らかの異例の方策を必要とするいかなる異例の特色も有しないと見なされる。さらに、マウスVH鎖は最も近縁のヒト生殖系列V領域配列(5F4/2C6/2H3、34B 1/2E8/2E6、および26H7/2H9/2E10に関してそれぞれ、78%、79%、75%同一性)ならびに26H7/2H9/2E10抗体のVκ鎖(seq1およびseq2に関してそれぞれ、77%および73%)と良好な相同性を示すが、残りの2つのVκ鎖は、ヒト生殖系列V領域に対してより低い全体的な相同性(5F4/2C6/2H3および34B1/2E8/2E6に関してそれぞれ、62%および60%同一性)を示すことが認められた。このことは、特にヒト生殖系列相同性が低いVκ鎖に関して、標準的な生殖系列ヒト化が、CD4+ T細胞エピトープ作製の可能性を有する生殖系列フレームワークに変異を加えることを必要とすることを示している。これらの検討は、マウスおよびヒト生殖系列V領域のあいだのV領域相同性によって影響を受けず、T細胞エピトープを欠如する完全なヒト化配列を作製する、本明細書において記述されるCOMPOSITE HUMAN ANTIBODY(商標)技術(ヒトV領域のセグメントを用いる)の応用をさらに支持する。
ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3、34B1/2E8/2E6、および26H7/2H9/2E10からのV領域をクローニングおよびシークエンシングして、5F4/2C6/2H3および34B1/2E8/2E6抗体におけるVHおよびVkに関して独自の配列を同定した。26H7/2H9/2E10抗体において、1つのVHおよび2個のVk配列が認められた。しかし、転写物の頻度から、seq1が抗原特異的である可能性があることが示唆されるが、seq1が26H7/2H9/2E10抗体に関する真正のVk配列であることを確認するために、各Vk配列を含む2つの代替抗体(典型的にキメラ抗体として)を、結合分析のために作成することができる。配列の分析により、ヒト化のための何らかの異例の方策を必要とする異例の特色は示されなかった。
ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3 VHのアミノ酸配列は、
である。
ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3 VLのアミノ酸配列は、
である。
ハイブリドーマ34B1/2E8/2E6 HVのアミノ酸配列は、
である。
ハイブリドーマ34B1/2E8/2E6 VLのアミノ酸配列は、
である。
ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10 VHのアミノ酸配列は、
である。
ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10 VL(seq1)のアミノ酸配列は、
である。
ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10 VL(seq2)のアミノ酸配列は、
である。
ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3 VHをコードするオリゴヌクレオチド配列は、
である。
ハイブリドーマ5F4/2C6/2H3 VLをコードするオリゴヌクレオチド配列は、
である。
ハイブリドーマ34B1/2E8/2E6 HVをコードするオリゴヌクレオチド配列は、
である。
ハイブリドーマ34B1/2E8/2E6 LVをコードするオリゴヌクレオチド配列は、
である。
ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10 VHをコードするオリゴヌクレオチド配列は、
である。
ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10(seq1)VLをコードするオリゴヌクレオチド配列は、
である。
ハイブリドーマ26H7/2H9/2E10(seq2)VLをコードするオリゴヌクレオチド配列は、
である。