以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る熱処理装置1の要部構成を示す図である。熱処理装置1は、ゲートラストプロセスにおいてダミーゲートが形成された基板Wに対してフラッシュ光を照射して当該ダミーゲートの加熱処理を行うフラッシュランプアニール(FLA)装置である。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
熱処理装置1は、基板Wを収容するチャンバー10と、チャンバー10内にて基板Wを載置して保持する保持プレート21と、チャンバー10から排気を行う排気部77と、チャンバー10内に不活性ガスを供給するガス供給部74と、基板Wにフラッシュ光を照射するフラッシュ照射部60と、を備えている。また、熱処理装置1は、これらの各部を制御してフラッシュ加熱処理を実行させる制御部90を備える。
チャンバー10は、フラッシュ照射部60の下方に設けられており、基板Wを収容可能な筐体である。チャンバー10の上部開口にはチャンバー窓69が装着されて閉塞されている。チャンバー10の側壁および底壁とチャンバー窓69とによって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。チャンバー10の天井部を構成するチャンバー窓69は、合成石英により形成された板状部材であり、フラッシュ照射部60から出射されたフラッシュ光を熱処理空間65に透過する石英窓として機能する。合成石英は、波長300nm以下の紫外域においても高い透過率を有する。
チャンバー10の側壁には、基板Wの搬入および搬出を行うための搬送開口部68が設けられている。搬送開口部68は、図示を省略するシャッターによって開閉可能とされている。搬送開口部68が開放されると、図外の搬送ロボットによってチャンバー10に対する基板Wの搬入および搬出が可能となる。また、搬送開口部68が閉鎖されると、熱処理空間65が外部との通気が遮断された密閉空間となる。
保持プレート21は、予備加熱機構22を内蔵した金属製(例えば、アルミニウム)の略円板形状の部材であり、チャンバー10内にて基板Wを載置して水平姿勢(主面の法線方向が鉛直方向に沿う姿勢)に保持する。予備加熱機構22としては、例えばニクロム線等の抵抗発熱体を用いることができる。予備加熱機構22は、少なくとも保持プレート21のうちの載置する基板Wに対向する領域には均一な配設密度にて設けられている。このため予備加熱機構22は、当該領域を均一に加熱することができる。
また、保持プレート21の内部には熱電対を用いて構成された温度センサ23が配設されている。温度センサ23は保持プレート21の上面近傍の温度を測定する。温度センサ23による測定結果は制御部90に伝達される。温度センサ23によって測定される保持プレート21の温度が予め設定された予備加熱温度となるように、制御部90が予備加熱機構22を制御する。すなわち、制御部90は、温度センサ23の測定結果に基づいて、保持プレート21の温度をフィードバック制御する。なお、温度センサ23は、保持プレート21が載置する基板Wが対向する領域に複数設けるようにしても良い。
保持プレート21の上面には、図示を省略する複数個(3個以上)のプロキシミティボールが配設されている。プロキシミティボールは、例えばアルミナ(Al2O3)等の部材によって構成され、その上端が保持プレート21の上面から微少量だけ突出する状態で配設される。このため、複数個のプロキシミティボールによって基板Wを支持したときには、基板Wの裏面と保持プレート21の上面との間にいわゆるプロキシミティギャップと称される微小間隔が形成される。なお、保持プレート21の上面に石英製のサセプタを設置し、そのサセプタを介して基板Wを支持するようにしても良い。
保持プレート21には、その上面に出没する複数本(本実施の形態では3本)のリフトピン24が設けられている。3本のリフトピン24の上端高さ位置は同一水平面内に含まれる。3本のリフトピン24はエアシリンダ25によって一括して鉛直方向に沿って昇降される。各リフトピン24は、保持プレート21に上下に貫通して設けられた挿通孔の内側に沿って昇降する。エアシリンダ25が3本のリフトピン24を上昇させると、各リフトピン24の先端が保持プレート21の上面から突出する。また、エアシリンダ25が3本のリフトピン24を下降させると、各リフトピン24の先端が保持プレート21の挿通孔の内部に埋入する。
ガス供給部74は、チャンバー10内に不活性ガスとして窒素ガス(N2)を供給する。ガス供給部74は、窒素供給源75とバルブ76とを備えており、バルブ76を開放することによってチャンバー10内の熱処理空間65に窒素ガスを供給する。なお、窒素供給源75としては、熱処理装置1に設けられたタンクと送給ポンプなどによって構成するようにしても良いし、熱処理装置1が設置される工場の用力を用いるようにしても良い。
排気部77は、排気装置78およびバルブ79を備えており、バルブ79を開放することによってチャンバー10内の雰囲気を排気する。排気装置78としては、真空ポンプや熱処理装置1が設置される工場の排気ユーティリティを用いることができる。排気装置78として真空ポンプを採用し、ガス供給部74から何らのガス供給を行うことなく密閉空間である熱処理空間65の雰囲気を排気すると、チャンバー10内を真空雰囲気にまで減圧することができる。また、排気装置78として真空ポンプを用いていない場合であっても、ガス供給部74からガス供給を行うことなく排気を行うことにより、チャンバー10内を大気圧よりも低い気圧に減圧することができる。
フラッシュ照射部60は、チャンバー10の上方に設けられている。フラッシュ照射部60は、複数本のフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ62と、を備えて構成される。フラッシュ照射部60は、チャンバー10内にて保持プレート21に保持される基板Wに石英のチャンバー窓69を介してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持プレート21に保持される基板Wの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
図2は、フラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。同図に示すように、コンデンサ93と、コイル94と、フラッシュランプFLと、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)96とが直列に接続されている。また、図2に示すように、制御部90は、パルス発生器98および波形設定部99を備えるとともに、入力部67に接続されている。入力部67としては、キーボード、マウス、タッチパネル等の種々の公知の入力機器を採用することができる。入力部67からの入力内容に基づいて波形設定部99がパルス信号の波形を設定し、その波形に従ってパルス発生器98がパルス信号を発生する。
フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部に陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。コンデンサ93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧(充電電圧)に応じた電荷が充電される。また、トリガー電極91にはトリガー回路97から高電圧を印加することができる。トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングは制御部90によって制御される。
IGBT96は、ゲート部にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)を組み込んだバイポーラトランジスタであり、大電力を取り扱うのに適したスイッチング素子である。IGBT96のゲートには制御部90のパルス発生器98からパルス信号が印加される。IGBT96のゲートに所定値以上の電圧(Highの電圧)が印加されるとIGBT96がオン状態となり、所定値未満の電圧(Lowの電圧)が印加されるとIGBT96がオフ状態となる。このようにして、フラッシュランプFLを含む駆動回路はIGBT96によってオンオフされる。IGBT96がオンオフすることによってフラッシュランプFLと対応するコンデンサ93との接続が断続される。
コンデンサ93が充電された状態でIGBT96がオン状態となってガラス管92の両端電極に高電圧が印加されたとしても、キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガー回路97がトリガー電極91に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には両端電極間の放電によってガラス管92内に電流が瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
本実施形態のフラッシュランプFLは、紫外域の波長成分を比較的多く含んだフラッシュ光を放射する。図3は、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の分光分布を示す図である。同図に示すように、本実施形態のフラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光は、分光分布にて波長200nm〜300nmの範囲内にピークを有する。また、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光は、分光分布にて波長500nmに対する波長300nmの相対強度が20%以上である。図3に示すような分光分布は、ガラス管92内に封入するキセノンガスの成分やガス圧の調整によって得ることができる。なお、ガラス管92も波長300nm以下の紫外域において高い透過率を有する合成石英にて形成するのが好ましい。
図1に戻り、リフレクタ62は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ62の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ62はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
制御部90は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部90は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用アプリケーションやデータなどを記憶しておく磁気ディスク等を備えて構成される。制御部90のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
次に、上記の構成を有する熱処理装置1における基板処理の手順について説明する。ここでは、ゲートラストプロセスによる基板Wの処理手順を簡単に説明しつつ、特に熱処理装置1での加熱処理について詳細に説明する。図4は、ゲートラストプロセスによる基板Wの概略処理手順を示すフローチャートである。図6の模式図を参照しつつ、ゲートラストプロセスによる処理手順を簡単に説明する。
まず、基板Wにポリシリコン(多結晶シリコン)のダミーゲート115を形成する(ステップS1)。基板Wはシリコンの半導体ウェハーである。基板Wを構成する単結晶シリコンの基材111の上にシリコン酸化膜114(二酸化ケイ素(SiO2)の膜)を形成し、その上にポリシリコンのダミーゲート115を形成する。続いて、ダミーゲート115の両側方にSiNのサイドウォール116を形成する(ステップS2)。
次に、基板Wの基材111にボロン(B)、ヒ素(As)、リン(P)などのイオン注入を行う(ステップS3)。イオン注入は、基材111のソース・ドレイン領域112およびエクステンション領域113に対して行う。エクステンション領域113は、ソース・ドレイン領域112とチャネルとの電気的接続部である。
その後、注入したイオンを活性化するためのアニール処理を実行する(ステップS4)。イオン活性化のためのアニール処理はイオンの拡散を抑制するために極力短時間で行うことが好ましく、フラッシュアニール装置を用いるのが最適であるが、ハロゲンランプを用いた急速加熱によって行うようにしても良い。ゲートラストプロセスでは、このイオン活性化のためのアニール処理を行うときに高誘電率ゲート絶縁膜を形成せずにダミーゲートとしているため、高誘電率ゲート絶縁膜に加熱に起因した欠陥が生じるのを防ぐことができる。
アニール処理が終了した後、必要に応じてコンタクト等の形成処理を行う(ステップS5)。なお、図6ではコンタクト等の要素については図示を省略している。その後、ダミーゲート115の剥離処理を行う(ステップS6)。図5は、本発明に係るダミーゲート115の剥離処理の手順を示すフローチャートである。
剥離処理に際しては、まず、フラッシュアニール(フラッシュ加熱)によってダミーゲート115のポリシリコンの結晶粒を粒成長させる(ステップS61)。このフラッシュアニールが熱処理装置1によって行われる。熱処理装置1では、図示省略のシャッターが開いて搬送開口部68が開放され、上述したイオン活性化処理後の基板Wが装置外部の搬送ロボットによってチャンバー10内に搬入される。搬入される基板Wの表面には、ダミーゲート115が形成されている。
図7は、フラッシュアニール前のダミーゲート115の結晶粒を示す図である。同図に示すように、熱処理装置1によるフラッシュアニール前では、ダミーゲート115を構成するポリシリコンのシリコン結晶粒が比較的小さい。このような組織を有するポリシリコンのダミーゲート115が形成された基板Wを保持した搬送ロボットが搬送開口部68からチャンバー10内に進入し、保持プレート21の直上にて停止する。続いて、3本のリフトピン24が上昇して搬送ロボットから基板Wを受け取る。その後、搬送ロボットがチャンバー10から退出するとともに、搬送開口部68が閉鎖されることによってチャンバー10内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
また、搬送ロボットが退出した後、基板Wを支持する3本のリフトピン24が下降して保持プレート21の挿通孔の内部に埋入する。リフトピン24が下降する過程において、基板Wはリフトピン24から保持プレート21の上面に渡され、その上面に水平姿勢にて載置・保持される。
保持プレート21は、予め予備加熱機構22によって所定の予備加熱温度に維持されている。その保持プレート21に基板Wが載置されることによって、基板Wの全体が予備加熱されて所定の予備加熱温度まで昇温される。そして、基板Wが保持プレート21に保持されてから所定時間が経過した時点で制御部90の制御によりフラッシュ照射部60のフラッシュランプFLから保持プレート21に保持された基板Wの表面に向けてフラッシュ光が照射される。このときには、ガス供給部74および排気部77によってチャンバー70内の雰囲気が窒素雰囲気に置換されていても良い。
フラッシュランプFLがフラッシュ光照射を行うに際しては、予め電源ユニット95によってコンデンサ93に電荷を蓄積しておく。そして、コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にて、制御部90のパルス発生器98からIGBT96にパルス信号を出力してIGBT96をオンオフ駆動する。
パルス信号の波形は、パルス幅の時間(オン時間)とパルス間隔の時間(オフ時間)とをパラメータとして順次設定したレシピを入力部67から入力することによって規定することができる。このようなレシピをオペレータが入力部67から制御部90に入力すると、それに従って制御部90の波形設定部99はオンオフを繰り返すパルス波形を設定する。そして、波形設定部99によって設定されたパルス波形に従ってパルス発生器98がパルス信号を出力する。その結果、IGBT96のゲートにはオンオフを繰り返すパルス信号が印加され、IGBT96のオンオフ駆動が制御されることとなる。具体的には、IGBT96のゲートに入力されるパルス信号がオンのときにはIGBT96がオン状態となり、パルス信号がオフのときにはIGBT96がオフ状態となる。
また、パルス発生器98から出力するパルス信号がオンになるタイミングと同期して制御部90がトリガー回路97を制御してトリガー電極91に高電圧(トリガー電圧)を印加する。コンデンサ93に電荷が蓄積された状態にてIGBT96のゲートにパルス信号が入力され、かつ、そのパルス信号がオンになるタイミングと同期してトリガー電極91に高電圧が印加されることにより、パルス信号がオンのときにはガラス管92内の両端電極間で必ず電流が流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
このように、回路中にスイッチング素子たるIGBT96を接続してそのゲートにオンオフを繰り返すパルス信号を出力することにより、コンデンサ93からフラッシュランプFLへの電荷の供給をIGBT96によって断続してフラッシュランプFLに流れる電流を制御している。その結果、いわばフラッシュランプFLの発光がチョッパ制御されることとなり、コンデンサ93に蓄積された電荷が分割して消費され、極めて短い時間の間にフラッシュランプFLが点滅を繰り返す。但し、フラッシュランプFLに流れる電流値が完全に”0”になる前に次のパルスがIGBT96のゲートに印加されて電流値が再度増加するため、フラッシュランプFLが点滅を繰り返している間も発光出力が完全に”0”になるものではない。従って、比較的間隔の短いパルス信号がIGBT96に出力されているときには、その間フラッシュランプFLが連続して発光していることとなる。
パルス信号の波形は、パルス幅の時間およびパルス間隔の時間を規定することによって任意に設定することができる。このため、IGBT96のオンオフ駆動も任意に制御することができ、パルス信号の波形を適宜に設定することにより、フラッシュランプFLの発光時間を0.1ミリ秒〜1000ミリ秒の範囲で調整することができる。フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー10内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ62により反射されてからチャンバー10内へと向かう。このようなフラッシュ光の照射によって、基板Wの表面がフラッシュ加熱される。
ここで、図3に示したように、本実施形態のフラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光は、分光分布にて波長200nm〜300nmの範囲内にピークを有するとともに、波長500nmに対する波長300nmの相対強度が20%以上である。すなわち、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光には、紫外域の波長成分が比較的多く含まれている。
また、フラッシュ光を透過する石英窓として機能するチャンバー窓69は、波長300nm以下の紫外域においても高い透過率を有する合成石英にて形成されている。従って、フラッシュランプFLから放射されたフラッシュ光に含まれる紫外域の成分はほとんどチャンバー窓69を透過し、チャンバー10内にて保持プレート21に保持された基板Wの表面には、分光分布にて波長200nm〜300nmの範囲内にピークを有するとともに、分光分布にて波長500nmに対する波長300nmの相対強度が20%以上であるフラッシュ光が照射される。
ダミーゲート115を構成するポリシリコンは、波長の短い光ほど高い吸収率を示す。すなわち、ポリシリコンの光吸収率は赤外光や可視光よりも紫外光の方が高い。従来より使用されている典型的なフラッシュランプでは、放射するフラッシュ光に主として可視光域の成分を含んでいるのであるが、本実施形態では紫外域の波長成分が多く含まれているフラッシュ光が基板Wの表面に照射されることとなる。このため、従来よりも高い効率にてポリシリコンのダミーゲート115にフラッシュ光が吸収されることとなり、ダミーゲート115が効率良く加熱される。
ポリシリコンのダミーゲート115が加熱されて昇温することによって、シリコンの結晶粒が粒成長する。図8は、フラッシュアニール後のダミーゲート115の結晶粒を示す図である。図7と図8とを比較すると明らかなように、紫外域の波長成分を多く含むフラッシュ光が基板Wに照射されてダミーゲート115がフラッシュ加熱されることによって、ポリシリコンのシリコン結晶粒が粒成長する。
その一方、フラッシュ光の照射時間は0.1ミリ秒〜1秒であるため、ダミーゲート115以外のソース・ドレイン領域112およびエクステンション領域113までをも数秒程度以上に加熱することはない。このため、ソース・ドレイン領域112等に注入されたイオンの拡散を防止することができる。
さらに、本実施形態では紫外域の波長成分が多く含まれているフラッシュ光が照射されるため、フラッシュ光の到達深さが比較的浅い。このため、ソース・ドレイン領域112等の深い部位にはほとんど熱影響をおよぼすことがない。
フラッシュ光照射が終了すると、基板Wの表面温度が急速に降温する。そして、3本のリフトピン24が上昇し、保持プレート21に載置されていた基板Wを突き上げて保持プレート21から離間させる。基板Wが保持プレート21から離間することによって、基板Wは予備加熱温度からもさらに降温する。その後、搬送開口部68が再び開放され、搬送ロボットが搬送開口部68からチャンバー10内に進入して基板Wの直下で停止する。続いて、リフトピン24が下降することによって、基板Wがリフトピン24から搬送ロボットに渡される。そして、基板Wを受け取った搬送ロボットがチャンバー10から退出することにより、基板Wがチャンバー10から搬出され、熱処理装置1におけるフラッシュアニール処理が完了する。
フラッシュ加熱処理が終了した後、薬液を用いたウェットプロセスによるダミーゲート115の剥離処理が行われる(ステップS62)。ウェットプロセスによる剥離処理は、熱処理装置1とは異なる別の装置によって実行されるものであるが、複数の基板Wを一括して処理するバッチ式の装置であっても、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置であっても良い。いずれの方式であっても、フラッシュ加熱によってダミーゲート115のシリコン結晶粒が粒成長した基板Wの表面に薬液が供給されてダミーゲート115が剥離される。剥離処理に使用される薬液はアンモニア水またはフッ酸である。
基板Wの表面に薬液が供給されることによって、ダミーゲート115を構成するポリシリコンの腐食(エッチング)が進行する。このとき、ステップS61のフラッシュアニールを行うことなく図7に示したようなシリコン結晶粒が比較的小さなダミーゲート115に薬液を供給した場合には、ダミーゲート115が十分にエッチングされずにポリシリコンの一部が基板Wに残留することがある。特に、ダミーゲート115の下隅部が残留しやすく、このような残留が欠陥となる。
本実施形態のように、フラッシュ加熱処理によってポリシリコンの結晶粒を粒成長させて粗大化したダミーゲート115(図8)に対して薬液を供給すると、シリコン結晶粒の粒界が優先的に腐食され、特にSiNのサイドウォール116とダミーゲート115との界面が顕著に腐食される。その結果、ダミーゲート115がポリシリコンの一部を残留させることなく高い精度にてきれいに基板Wから剥離される。
図9は、ポリシリコンのダミーゲート115が剥離された状態を示す図である。サイドウォール116の内壁面等にポリシリコンが残留することなく、高い精度にてダミーゲート115が除去されている。
図4に戻り、ダミーゲート115の剥離処理が終了した後、シリコン酸化膜114の上に高誘電率のゲート絶縁膜(High-kゲート絶縁膜)を成膜する(ステップS7)。高誘電率ゲート絶縁膜としては、例えばハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)などの酸化物を採用することができる。高誘電率ゲート絶縁膜は極めて薄く、例えばALD(Atomic Layer Deposition)によって成膜される。そして、最後に、その高誘電率ゲート絶縁膜の上にメタルゲート電極を形成する。メタルゲート電極に用いられる材料には、例えばチタン或いはチタンの窒化物を用いることができる。
本実施形態においては、ゲートラストプロセスにて形成されたポリシリコンのダミーゲート115に対して、紫外域の波長成分を比較的多く含むフラッシュ光を照射している。具体的には、ポリシリコンのダミーゲート115に対して、分光分布にて波長200nm〜300nmの範囲内にピークを有するとともに、分光分布にて波長500nmに対する波長300nmの相対強度が20%以上であるフラッシュ光を照射している。
このような紫外域の波長成分が多く含まれるフラッシュ光を照射することにより、短波長の光に対して高い吸収率を有するポリシリコンのダミーゲート115が効率良くフラッシュ光を吸収して昇温し、シリコンの結晶粒が粒成長する。シリコンの結晶粒が粒成長して粗大化することにより、その後の薬液を用いた剥離工程にてサイドウォール116とダミーゲート115との界面が優先的に腐食されることとなり、その結果ダミーゲート115を高い精度にて除去することができる。
また、照射時間が1秒以下と短く、かつ、紫外域の波長成分を多く含むフラッシュ光であれば、ソース・ドレイン領域112等を数秒程度以上にわたって加熱することはないため、注入されたイオンの不要な拡散を防止することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、ポリシリコンのダミーゲート115であったが、これに限定されるものではなく、アモルファスシリコン(非晶質シリコン)のダミーゲート115であっても良い。アモルファスシリコンのダミーゲート115に紫外域の波長成分を比較的多く含むフラッシュ光を照射することにより、アモルファスシリコンが結晶化してさらに粒成長し、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、上記実施形態においては、IGBT96によってフラッシュランプFLの発光を制御するようにしていたが、IGBT96は必ずしも必須の要素ではない。IGBT96を用いなくても、コンデンサ93への印加電圧やコイル94のインダクタンスによってフラッシュランプFLの照射条件を調整することができる。