JP6381316B2 - Tgr5活性化剤 - Google Patents

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Description

本発明は、持久力向上、疲労抑制、筋力向上、運動機能向上に有効なTGR5活性化剤に関する。
TGR5(G protein−coupled bile acid receptor 1)は、褐色及び白色脂肪組織、骨格筋に主に発現しているGタンパク質共役受容体の一種であり、熱産生やエネルギー代謝調節作用を有することが知られている(非特許文献1)。
TGR5の生体内リガンドとしては胆汁酸が知られている。胆汁酸は肝臓で合成後、小腸に分泌され、小腸下部で再吸収される。胆汁酸は、血液中では5〜15μM程度の濃度で存在しており、脂肪組織や骨格筋の細胞膜上のTGR5に結合することで、細胞内シグナルが活性化される(非特許文献2〜4)。
TGR5シグナルは以下の経路によって活性化される。細胞膜上に存在するTGR5にアゴニストが結合すると、細胞内のcyclic−AMP(cAMP)量が増加し、プロテインキナーゼA(PKA)が活性化する。続いて活性化PKAは、cAMP response element binding protein(CREB)をリン酸化することによって活性化状態にし、最終的にcAMP response element(CRE)配列を有する標的遺伝子の転写が促進される。これら標的遺伝子の代表的なものとしては、type II iodothyronine deiodinase(D2)やperoxisome proliferator−activated receptor gamma coactivator 1−alpha (PGC−1α)が知られている(非特許文献2)。
D2は甲状腺ホルモンの活性調節のキー分子であり、不活性型であるthyroxine(T4)を活性型であるtriiodothyronine(T3)に変換する役割を担っている。甲状腺ホルモンには熱産生など、エネルギー消費促進作用があり、D2遺伝子の発現増加や活性促進が起こると、T3の増加を介して熱産生が亢進することが報告されている(非特許文献3、4)。
また、PGC−1αは転写共役因子であり、核内受容体であるperoxisome proliferator−activated receptor gamma(PPAR−γ)をはじめ、CREBやnuclear respiratory factor(NRF)と相互作用することで、ミトコンドリアの生合成と機能調節を行うことが知られている。ミトコンドリアの主要な機能は、酸化的リン酸化によるATP産生であり、PGC−1αが発現増加すると、ミトコンドリア数が増加するとともに酸化的リン酸化反応が亢進し、ATP量が増加する(非特許文献5、6)。ATP量の増加は、生体における最大のATP消費器官である骨格筋のエネルギー効率を改善させ、疲労の抑制や持久力の向上をもたらすことが報告されている(非特許文献7、8)。さらに、PGC−1αは、直接的にも筋肉量や持久力、疲労に影響を及ぼすと考えられている。実際に、PGC−1αのアイソフォームの一つであるPGC−1α4を骨格筋特異的に高発現させたトランスジェニックマウスは、骨格筋量の増加、疲労抵抗性の向上などの表現型を示すことが報告されている(非特許文献9)。以上のことから、PGC−1αの発現増加や活性化は、ATP量の増加、骨格筋量の増加、疲労抑制、持久力向上につながると考えられる。
前述の通り、PGC−1αはTGR5の標的分子であり、TGR5の活性化により、PGC−1αが発現増加することが明らかになっている(非特許文献2)。したがって、TGR5の活性化は、PGC−1αを介して、持久力向上、疲労抑制、筋力向上、運動機能向上をもたらすと考えられる。
一般的に、筋力等の運動能力の向上には、運動トレーニングとバランスの良い栄養補給が重要と考えられている。最近では、運動愛好者やアスリートにおいて、より効率的に筋力向上を図るため、単にトレーニングを行うだけでなく、サプリメント等の栄養補給を併用する試みがなされている(特許文献1)。しかしながら、一部のタンパク質やアミノ酸を過剰摂取した状態でトレーニングを行うことは、腎機能等に悪影響を及ぼす原因になりうることが懸念されている(非特許文献10)。一方、運動愛好者やアスリート以外においても、無理なダイエットよって栄養成分の体内補給が不足し、骨格筋の減少、及び筋力や持久力をはじめとする運動機能が衰退すること、更には、運動機能衰退に伴う疲労が問題視されている。
従って、パフォーマンス向上を目指す運動愛好者やアスリートだけでなく、肥満軽減を
目指す一般人においても、効率的な運動機能向上方法が望まれている。
斯かる観点から、運動機能向上作用を有する成分の探索が行われており、例えば、茶カテキンによる持久力向上作用(特許文献2)や重合体果実ポリフェノール(特許文献3)に筋力向上作用等が報告されている。
一方、ハッカには消炎鎮痛作用、レモンバームには頭痛やストレス緩和作用、マジョラムには消化促進・食欲増進作用、サンソウニンには鎮静作用や催眠作用、柿の葉茶には血圧降下作用や美白作用、ディルには食欲や消化促進作用、スペアミントには殺菌作用や消化促進作用、バコパモニエラにはストレス軽減作用、ビワ茶には抗肥満作用等の薬理作用が知られている。
しかしながら、これらにTGR5活性化作用、持久力向上作用、疲労抑制作用、筋力向上作用又は運動機能向上作用があることは全く知られていない。
特開2002−65212号公報 特開2005−89384号公報 国際公開第2005/74962号
Houten S.M. et al., EMBO J, 25, 1419-1425 (2006) Thomas C. et al., Nature, 7, 678-693 (2008) Watanabe M. et al., Nature, 439, 484-489 (2006) Watanabe M. et al., PLoS One, 7, 1-9 (2012) Wu Z. et al., Cell, 98, 115-124 (1999) Vieau D.et al., World J Diabetes, 2(9), 149-157 (2011) Bahi L. et al., J Appl Physiol, 96, 59-64 (2004) Tonkonogi M. et al., Exerc Sport Sci Rev, 30, 129-137 (2002) Luas J.L. et al., Cell, 151, 1319-1331 (2012) Anderson C.F. et al., JAMA, 223(1), 68-72 (1973)
本発明は、TGR5活性化剤、更には持久力向上剤、疲労抑制剤、筋力向上剤、運動機能向上剤を提供することに関する。
本発明者らは、種々の天然素材について探索を行った結果、特定の植物の抽出物にTGR5活性化作用があり、持久力向上、疲労抑制、筋力向上及び運動機能向上のための医薬品、医薬部外品、食品及び飼料等の素材として有用であることを見出した。
すなわち本発明は、以下の(1)〜(5)に係るものである。
(1)ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物を有効成分とするTGR5活性化剤。
(2)ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物を有効成分とする持久力向上剤。
(3)ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物を有効成分とする疲労抑制剤。
(4)ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物を有効成分とする筋力向上剤。
(5)ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物を有効成分とする運動機能向上剤。
本発明によれば、持久力向上、疲労抑制、筋力向上、運動機能向上に有用な医薬品又は医薬部外品、或いは医薬品、医薬部外品、食品又は飼料に使用される素材が提供される。したがって、本発明によれば、TGR5を活性化させ、持久力向上、疲労抑制、筋力向上、運動機能向上が可能となる。
PBS(コントロール)、コール酸及びハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ、ビワ茶の抽出物のルシフェラーゼ活性(TGR5アゴニスト活性)を示す図である。
本発明において「TGR5活性化」とは、細胞膜上に存在するTGR5へのアゴニストの結合を起点とし、細胞内のcAMPの増加を介して、D2やPGC−1αなどの標的遺伝子の転写が活性化されることをいう。この活性化により、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化反応が亢進し、ATP産生量の増加がもたらされる。TGR5の活性化はレポーターアッセイによる活性評価や、TGR5シグナル下流の遺伝子発現を解析することで確認することができる。
本発明において、「持久力向上」とは、持久力を必要とする運動や筋肉動作を繰り返し行う必要のある労働等を始めとする広義の運動に対して持久力を向上させる作用のことをいい、全身持久力(ランニングや水泳等の、より全身に負荷が作用している場合)及び局所持久力(ボクシングでガードを維持する腕の運動など)のいずれに対しても持久力を向上させる作用である。運動は、エネルギー供給の観点から、有酸素的なエネルギー供給に基づく、基本的にゆっくりとした動きを持続させる長距離走、水泳、及びエアロビクスなどの有酸素運動、ならびに無酸素的なエネルギー供給に基づく、ボクシングでのパンチの連打などの激しい動きを持続させる運動などが例示される。
本発明において、「疲労」とは、持続的な筋収縮により筋出力(張力)と弛緩速度が低下した状態を指し、すなわち、「疲労抑制」とは、筋疲労による張力低下を抑制することをいう。
本発明において、「筋力向上」とは、筋肉が収縮することにより発生する力が増強することである。筋量が増えることにより全体として筋力が向上することとは異なる。
本発明において、「運動機能向上」とは、筋機能(筋力)の低下を抑制させることによって運動能が維持又は向上することをいう。
本発明のTGR5活性化剤、持久力向上剤、疲労抑制剤、筋力向上剤及び運動機能向上剤においては、ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ、ビワ茶の各植物の抽出物を有効成分とする。
ここで、「ハッカ」は、シソ科ハッカ属の多年草であり、学名はMentha arvensis L. var. piperascens Malinv.である。使用部位としては、例えば、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
「レモンバーム」は、シソ科コウスイハッカ属の多年草であり、学名はMelissa officinalis L.である。使用部位としては、例えば、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
「マジョラム」は、シソ科ハナハッカ属の多年草で、学名はOriganum majorana L.である。使用部位としては、例えば、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
「サンソウニン」は、クロウメモドキ科の落葉高木サネブトナツメの種子であり、学名はZiziphus jujubaである。
「柿の葉」は、カキノキ科カキノキ属の落葉樹の葉であり、学名はDiospyros kakiである。
「ディル」は、セリ科イノンド属の一年草であり、学名はAnethum graveolens L.である。
「スペアミント」は、シソ科ハッカ属の多年草であり、学名はMentha spicata L.である。
「バコパモニエラ」は、ゴマノハグサ科バコパ属の多年草であり、学名はBacopa monnieraである。使用部位としては、例えば、茎、葉、枝、枝葉、根、根茎、根皮、これらの混合物などが挙げられ、これらの中でも、葉が好ましい。
「ビワ茶」は、バラ科ビワ属の常緑高木の葉であり、学名はEriobotrya japonicaである。
斯かる植物の抽出物としては、公知の抽出方法により抽出して得られる各種溶剤抽出液、その希釈液、その濃縮液又はその乾燥末が挙げられる。公知の抽出方法としては、例えば、浸漬、煎出、浸出、固液抽出、還流抽出、超臨界抽出、超音波抽出及びマイクロ波抽出等が挙げられる。例えば、浸漬は、0℃〜溶媒沸点(好ましくは15〜40℃)で1時間〜4週間、浸漬・浸出することが挙げられ、固液抽出は、0℃〜溶媒沸点(好ましくは15〜40℃)下、30〜1000rpmで30分〜2週間の攪拌することが挙げられる。また、抽出物の酸化を防止するため、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する手段を併用してもよい。また、還流抽出の場合には、ソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて行うことができる。
抽出のための溶剤には、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができる。溶剤の具体例としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;及びジメチルスルホキシド;超臨界二酸化炭素;ピリジン類;油脂、ワックス等その他オイル類等の有機溶剤;ならびにこれらの混合物が挙げられる。好適には、水、アルコール類及び水−アルコール系混合溶剤が挙げられ、アルコール類としてはエタノールが好ましい。このうち、水、及びエタノール水溶液が好適である。また、エタノール水溶液としては、エタノール濃度が、好ましくは10%(v/v)以上、より好ましくは20%(v/v)以上、より好ましくは50%(v/v)以上、より好ましくは90%(v/v)以上、且つ好ましくは95%(v/v)以下、より好ましくは90%(v/v)以下であり、また好ましくは10〜95%(v/v)、より好ましくは20〜95%(v/v)、より好ましくは50〜95%(v/v)であるものが挙げられる。
上記植物の抽出物は、例えば、植物体1質量部に対して1質量部以上50質量部以下の抽出溶剤を用い、4℃以上100℃以下にて0.5時間〜30日間で、抽出することにより行うことができる。より具体的には、抽出溶剤としてエタノール水溶液を用いる場合には、植物体1質量部に対して5質量部以上30質量部以下、室温で1時間〜10日間が好ましい。また、これらの作業を繰り返し行っても良い。
本発明において、上記の抽出物はそのまま用いることもできるが、当該抽出物を希釈、濃縮若しくは凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して用いることもできる。また、凍結乾燥し、用時に、通常抽出に用いられる溶剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、水・エタノール混液、水・プロピレングリコール混液、水・ブチレングリコール混液等の溶剤で希釈して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
本発明の植物抽出物は、例えば食品や医薬品上許容し得る規格に適合し、本発明の効果を発揮するものであれば粗精製物であってもよい。また、必要に応じて、液々分配、固液分配、濾過膜、活性炭、吸着樹脂、イオン交換樹脂等の公知の手段を用いて、不活性な夾雑物の除去、脱臭、脱色等の処理を施すことができ、さらに公知の分離精製方法を適宜組み合わせてこれらの純度を高めてもよい。精製手段としては、有機溶剤沈殿、遠心分離、限界濾過膜、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ等が挙げられる。
後記実施例に示すように、ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶の各植物抽出物は強力なTGR5活性化作用を有している(図1)。前述したとおり、TGR5シグナルが活性化されると、PGC−1αの転写が活性化し、骨格筋においてβ−酸化や酸化的リン酸化反応が亢進する。当該作用により、骨格筋において多くのATPが合成され、持久力向上作用、疲労抑制作用、筋力向上作用、さらには運動機能向上作用が期待できる(前記非特許文献2−9)。
よって、本発明のハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶の各植物抽出物は、TGR5活性化剤、持久力向上剤、疲労抑制剤、筋力向上剤、運動機能向上剤(以下、「TGR5活性化剤等」と称する)となり得、また、TGR5活性化剤等を製造するために使用することができる。また、ヒトを含む動物に使用して、TGR5活性化、持久力向上、疲労抑制、筋力向上、さらには運動機能向上を図ることができる。ここで、ヒトに対する使用は、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶の各植物抽出物は、単独で、もしくは任意の組み合わせで使用することができる。
本発明のTGR5活性化剤等を含む組成物は、TGR5活性化、持久力向上、疲労抑制、筋力向上、さらには運動機能向上を図るための、医薬品、医薬部外品、食品又は飼料となり、また、TGR5活性化剤等は、医薬品、医薬部外品、食品又は飼料を製造するための原料又は素材となる。すなわち、本発明のTGR5活性化剤等は、持久力向上、疲労抑制、筋力向上、運動機能向上の各効果を発揮する、ヒト用若しくは動物用の医薬品、医薬部外品、食品又は飼料等の有効成分として配合可能である。ここで、食品には、運動不足者や中高年、ベッドレスト者、或いはアスリートにおける持久力向上、疲労抑制、筋力向上、運動機能向上をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した食品、機能性食品、病者用食品、特定保健用食品、サプリメント等が包含される。
上記医薬品、医薬部外品の製剤形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与製剤又は注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、外用剤等による非経口投与製剤が挙げられる。また、このような種々の剤型の製剤を調製するには、本発明の植物抽出物を単独、もしくは任意の組み合わせで配合する以外に、TGR5活性化作用が失われない限り、他の有効成分や薬理成分、栄養成分等を含有していてもよい。さらに、薬学的に許容される担体や、医薬品又は医薬部外品に使用できる添加物を含有していてもよい。当該担体や添加剤としては、賦形剤、被膜剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、分散剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、保存剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、溶剤、軟化剤、香料、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。また、これらの投与形態のうち、好ましい形態は経口投与であり、経口用液体製剤を調製する場合は、嬌味剤、緩衝剤、安定化剤等を加えて常法により製造することができる。
上記食品の形態としては、牛乳、加工乳、乳飲料、ヨーグルト、清涼飲料水、茶系飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、炭酸飲料、ジュース、ゼリー、ウエハース、ビスケット、パン、麺、ソーセージ等の飲食品や栄養食等の各種食品の他、さらには、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、シロップ等)の栄養補給用組成物が挙げられる。
種々の形態の食品を調製するには、本発明の植物抽出物を素材として他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、本発明の上記植物抽出物以外の薬効成分等と適宜組み合わせて、持久力向上用食品、疲労抑制用食品、筋力向上用食品、運動機能向上用食品、ペットフード等とすることが可能である。
上記食品は、適当量の栄養補給が困難な高齢者やベッドレスト状態の病者に対する食品である場合には、経腸栄養剤等の栄養組成物の形態として配合することが可能である。
また、飼料としては、上記食品と同様の形態に調製することができる。
上記飲料、例えば乳飲料、清涼飲料水、茶系飲料等に対する本発明の植物抽出物(乾燥物換算)の含有量は、飲料中、通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上であり、2.0質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。また、0.0001〜2.0質量%、さらに0.001〜1.0質量%、さらに0.001〜0.2質量%とするのが好ましい。
上記飲料以外の食品又は飼料に対する本発明の植物抽出物(乾燥物換算)の含有量は、通常0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、50質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。また、通常0.0001〜50質量%、さらに0.001〜20質量%、さらに0.01〜10質量%とするのが好ましい。
上記以外の医薬品又は医薬部外品、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等の経口用固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤の場合には、医薬品等の各全重量中における本発明の植物抽出物(乾燥物換算)の含有量は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1.0%以上であり、95質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。また、通常0.01〜95質量%、さらに0.1〜80質量%、さらに1.0〜60質量%とするのが好ましい。尚、上記植物抽出物は、溶解状態にあっても、分散状態にあってもよく、その存在状態は問わない。
本発明のTGR5活性化剤等の投与又は摂取量は、剤形や用途によって異なるが、本発明の植物抽出物(乾燥物換算)として、成人に対して一日あたり、0.01mg/kg体重以上、好ましくは0.1mg/kg体重以上であり、100mg/kg体重以下、好ましくは50mg/kg体重以下、より好ましくは20mg/kg体重以下である。また0.01〜100mg/kg体重とするのが好ましく、さらに0.1〜50mg/kg体重、さらに0.1〜20mg/kg体重とするのが好ましい。
投与又は摂取の対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物が挙げられる。これらの対象は、TGR5の活性化、持久力向上、疲労抑制、筋力向上、運動機能向上を必要とする、又は希望する対象であり得る。
上述した実施形態に関し、本発明においてはさらに以下の態様が開示される。
<1>ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物を有効成分とするTGR5活性化剤、持久力向上剤、疲労抑制剤、筋力向上剤又は運動機能向上剤。
<2>ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物を有効成分とする、TGR5活性化による、持久力向上剤、疲労抑制剤、筋力向上剤、又は、運動機能向上剤。
<3>TGR5活性化剤、持久力向上剤、疲労抑制剤、筋力向上剤又は運動機能向上剤を製造するためのハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物の使用。
<4>TGR5活性化、持久力向上、疲労抑制、筋力向上又は運動機能向上に使用するためのハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物。
<5>TGR5活性化による持久力向上、疲労抑制、筋力向上又は運動機能向上に使用するためのハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物。
<6>ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物の有効量を投与又は摂取することによる、TGR5活性化方法、持久力向上方法、疲労抑制方法、筋力向上方法又は運動機能向上方法。
<7>ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶より選択される一種以上の植物の抽出物の有効量を投与又は摂取することによる、TGR5活性化による持久力向上方法、疲労抑制方法、筋力向上方法又は運動機能向上方法。
<8>前記<3>において、使用は非治療的使用である。
<9>前記<6>又は<7>において、方法は非治療的方法である。
<10>前記<6>又は<7>において、投与又は摂取の対象は、TGR5の活性化、持久力向上、疲労抑制、筋力向上又は運動機能向上を必要とする又は希望するヒトである。
<11>前記<6>又は<7>において、投与又は摂取の対象は、運動不足者や中高年、ベッドレスト者、或いはアスリートである。
<12>前記<6>又は<7>において、投与量又は摂取量は成人に対して一日あたり、植物抽出物として0.01〜100mg/kg体重、好ましくは0.1〜50mg/kg体重、さらに好ましくは0.1〜20mg/kg体重である。
1.各植物抽出物の調製
(1)ハッカ抽出物:
乾燥したハッカ葉(新和物産株式会社より入手)100gに対して50%エタノール水溶液1000mLを加え、室温、静置条件下で7日間抽出を行った後、ろ過にて得た抽出液を用いた。抽出液の固形分濃度は1.65%(w/v)であった。
(2)レモンバーム抽出物:
レモンバームエキス(研光通商株式会社より入手)を20%エタノール水溶液にて、濃度1%(w/v)となるように溶解し用いた。
(3)マジョラム抽出物:
乾燥したマジョラムの全草(株式会社栃本天海堂より入手)10gに対して50%エタノール水溶液100mLを加え、室温、静置条件下で7日間抽出を行った後、ろ過にて得た抽出液を用いた。抽出液の固形分濃度は2.22%(w/v)であった。
(4)サンソウニン抽出物:
サンソウニンの種子(新和物産株式会社より入手)100gに対して50%エタノール水溶液1000mLを加え、室温、静置条件下で7日間抽出を行った後、ろ過にて得た抽出液を用いた。抽出液の固形分濃度は0.95%(w/v)であった。
(5)柿の葉茶抽出物:
柿の葉(株式会社栃本天海堂より入手)100gに対して50%エタノール水溶液1000mLを加え、室温、静置条件下で7日間抽出を行った後、ろ過にて得た抽出液を用いた。抽出液の固形分濃度は1.0%(w/v)であった。
(6)ディル抽出物:
ディルの全草を水蒸気蒸留して得られたディルリキッドSP−77544(三栄源エフエフアイ株式会社より入手)を50%エタノール水溶液にて、濃度1%(w/v)となるように溶解し用いた。
(7)スペアミント抽出物:
スペアミントの全草(株式会社栃本天海堂より入手)100gに50%エタノール水溶液1000mLを加え、室温、静置条件下で7日間抽出を行った後、ろ過にて得た抽出液を用いた。抽出液の固形分濃度は2.10%(w/v)であった。
(8)バコパモニエラ抽出物:
バコパモニエラ葉茎の含水エタノール抽出物であるバコパモニエラエキス(オルガノダニスコフードテクノ株式会社より入手)を50%エタノール水溶液にて、濃度1%(w/v)となるように溶解し用いた。
(9)ビワ茶抽出物:
ビワ葉エキス末(松浦薬業株式会社より入手)を50%エタノール水溶液にて、濃度1%(w/v)となるように溶解し用いた。
2.TGR5活性化作用の評価
上記1で調製したハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶の各植物抽出物について、TGR5活性化作用をルシフェラーゼアッセイにより評価した。このアッセイ系は、ヒトTGR5活性を、TGR5下流のシグナルであるCREBの転写活性化にて判定するものであり、ルシフェラーゼ活性による数値化が可能になっている。
ヒトTGR5発現ベクターは以下の手順にて作製した。HepG2細胞(ヒト肝ガン細
胞株)から抽出したTotal RNAをHigh Capacity RNA―to―cDNA Kit(Applied biosystems)にて逆転写することによりcDNAを作製した。作製したcDNAを鋳型として、PCRにてヒトTGR5(hTGR5)遺伝子(NM_170699)のタンパク質コード領域を増幅した。尚、PCRには下記表1記載のプライマーを用いており、Forward primer 、Reverse primerの5’側には制限酵素サイトとして、それぞれKpnI、XhoIの認識配列(大文字にて記載)を付加してある。
Figure 0006381316
増幅したDNA断片は制限酵素(KpnI、XhoI)処理後、pcDNA3.1/Zeo(+)(Invitrogen)のマルチクローニングサイトに組み込み、pcDNA3.1−h.TGR5 Vectorとした。ホタルルシフェラーゼ発現ベクターは、pGL4.29[luc2P/CRE/Hygro] Vector(Promega)を使用した。遺伝子導入効率の補正に用いるウミシイタケルシフェラーゼ発現ベクターはphRL−TK−Vector(Promega)を使用した。
ルシフェラーゼアッセイの一連の手順は以下の通りである。24ウェルプレートにHEK293細胞(ヒト胎児腎細胞株)を5.0×10個/ウェルで播種し、5%のチャコール処理FBS(Life Technologies)を含むDMEM培地(Life Technologies)中で1日培養した。その後、DMEM培地150μLにpcDNA3.1−h.TGR5 Vectorを40ng、pGL4.29[luc2P/CRE/Hygro] Vectorを200ng及びphRL−TK−Vectorを100ng、superfect(QIAGEN)を3μL混合し、HEK293細胞に添加して遺伝子導入した。3時間後、培地を5%のチャコール処理FBSを含むDMEM培地に変換した。培地変換から4時間後に、陽性対照5μM又は被験物質0.001%を添加し、12〜18時間、培養した。陽性対照としては、胆汁酸の主成分であるコール酸(和光純薬工業株式会社)を添加した。その後、細胞内のホタルルシフェラーゼ活性をDual−Luciferase Reporter Assay System(Promega)を用いて、測定した。尚、得られた数値は、ウミシイタケルシフェラーゼ活性にて補正を行った。ルシフェラーゼの発光はルミノメーター(BERTHOLD LB9506)を用いて定量した。得られた結果を図1に示す。
図1から明らかなように、ハッカ、レモンバーム、マジョラム、サンソウニン、柿の葉茶、ディル、スペアミント、バコパモニエラ及びビワ茶の各植物抽出物は陽性対照であるコール酸と同程度の強力なTGR5活性化作用を有している。

Claims (2)

  1. Mentha arvensis L. var. piperascens Malinv.の葉のエタノール水溶液抽出物を有効成分とするTGR5活性化剤。
  2. Mentha arvensis L. var. piperascens Malinv.の葉のエタノール水溶液抽出物を有効成分とするTGR5活性化用食品又は飼料。
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