本発明の電解液用溶媒は、式(1−1):
(式中、Rf
1及びRf
2は、同一又は異なって、エーテル結合を有していてもよいフッ素化アルキル基、又は、エーテル結合を有していてもよいフッ素化アルコキシ基)で示される環状カーボネート(1−1)を含む。
なお、本明細書中で「エーテル結合」は、炭素―炭素結合間に挿入された酸素原子による結合であり、「−O−」で表される。
上記式(1−1)において、上記Rf1及びRf2の炭素数は1以上である。電気化学デバイスのサイクル特性をより向上させることができることから、上記Rf1及びRf2の炭素数は、2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。
上記Rf1及びRf2の炭素数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、8以下であることが更に好ましく、6以下であることが特に好ましい。
上記式(1−1)において、電気化学デバイスのサイクル特性をより向上させることができることから、Rf1及びRf2は、同一又は異なって、フッ素化アルキル基(a)、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、又は、フッ素化アルコキシ基(c)であることが好ましい。
上記フッ素化アルキル基(a)は、エーテル結合を有しておらず、アルキル基が有する水素原子の少なくとも1つをフッ素原子で置換したものである。フッ素化アルキル基(a)の炭素数は1以上である。電気化学デバイスのサイクル特性をより向上させることができることから、フッ素化アルキル基(a)の炭素数は、2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。また、上記フッ素化アルキル基(a)の炭素数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、8以下であることが更に好ましく、6以下であることが殊更に好ましい。
上記フッ素化アルキル基(a)のうち、炭素数が1のものとしては、CFH2−、CF2H−及びCF3−が挙げられる。
上記フッ素化アルキル基(a)のうち、炭素数が2以上のものとしては、下記一般式(a−1):
R1−R2− (a−1)
(式中、R1はフッ素原子を有していてもよい炭素数1以上のアルキル基;R2はフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基;ただし、R1及びR2の少なくとも一方はフッ素原子を有している)で示されるフッ素化アルキル基が、電解質塩の溶解性が良好な点から好ましく例示できる。
なお、R1及びR2は、更に、炭素原子、水素原子及びフッ素原子以外の、その他の原子を有していてもよい。
R1は、フッ素原子を有していてもよい炭素数1以上のアルキル基である。R1としては、炭素数1〜16の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。R1の炭素数としては、1〜6がより好ましく、1〜3が更に好ましい。
R1として、具体的には、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基として、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−、CH3CH2CH2CH2−、
等が挙げられる。
また、R1がフッ素原子を有する直鎖状のアルキル基である場合、CF3−、CF3CH2−、CF3CF2−、CF3CH2CH2−、CF3CF2CH2−、CF3CF2CF2−、CF3CH2CF2−、CF3CH2CH2CH2−、CF3CF2CH2CH2−、CF3CH2CF2CH2−、CF3CF2CF2CH2−、CF3CF2CF2CF2−、CF3CF2CH2CF2−、CF3CH2CH2CH2CH2−、CF3CF2CH2CH2CH2−、CF3CH2CF2CH2CH2−、CF3CF2CF2CH2CH2−、CF3CF2CF2CF2CH2−、CF3CF2CH2CF2CH2−、CF3CF2CH2CH2CH2CH2−、CF3CF2CF2CF2CH2CH2−、CF3CF2CH2CF2CH2CH2−、HCF2−、HCF2CH2−、HCF2CF2−、HCF2CH2CH2−、HCF2CF2CH2−、HCF2CH2CF2−、HCF2CF2CH2CH2−、HCF2CH2CF2CH2−、HCF2CF2CF2CF2−、HCF2CF2CH2CH2CH2−、HCF2CH2CF2CH2CH2−、HCF2CF2CF2CF2CH2−、HCF2CF2CF2CF2CH2CH2−、FCH2−、FCH2CH2−、FCH2CF2−、FCH2CF2CH2−、FCH2CF2CF2−、CH3CF2CH2−、CH3CF2CF2−、CH3CH2CH2−、CH3CF2CH2CF2−、CH3CF2CF2CF2−、CH3CH2CF2CF2−、CH3CF2CH2CF2CH2−、CH3CF2CF2CF2CH2−、CH3CF2CF2CH2CH2−、CH3CH2CF2CF2CH2−、CH3CF2CH2CF2CH2−、CH3CF2CH2CF2CH2CH2−、CH3CF2CH2CF2CH2CH2−、HCFClCF2CH2−、HCF2CFClCH2−、HCF2CFClCF2CFClCH2−、HCFClCF2CFClCF2CH2−等が挙げられる。
また、R1がフッ素原子を有する分岐鎖状のアルキル基である場合、
等が好ましく挙げられる。ただし、−CH3や−CF3という分岐を有していると粘性が高くなりやすいため、分岐の数は少ない(1個)かゼロであることがより好ましい。
R2はフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基である。R2は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このような直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を構成する最小構造単位の一例を下記に示す。R2はこれらの単独又は組合せで構成される。
(i)直鎖状の最小構造単位:
−CH2−、−CHF−、−CF2−、−CHCl−、−CFCl−、−CCl2−
(ii)分岐鎖状の最小構造単位:
なお、以上の例示のなかでも、塩基による脱HCl反応が起こらず、より安定なことから、Clを含有しない構成単位から構成されることが好ましい。
R2は、直鎖状である場合には、上述した直鎖状の最小構造単位のみからなるものであり、なかでも−CH2−、−CH2CH2−又は−CF2−が好ましい。電解質塩の溶解性をより一層向上させることができる点からは、−CH2−又は−CH2CH2−がより好ましい。電気化学デバイスのサイクル特性をより向上させることができる点からは、−CF2−が好ましい。
R2は、分岐鎖状である場合には、上述した分岐鎖状の最小構造単位を少なくとも1つ含んでなるものであり、一般式:−(CXaXb)−(XaはH、F、CH3又はCF3;XbはCH3又はCF3。ただし、XbがCF3の場合、XaはH又はCH3である)で表されるものが好ましく例示できる。これらは特に電解質塩の溶解性をより一層向上させることができる。
好ましいフッ素化アルキル基(a)としては、例えばCF3CF2−、HCF2CF2−、H2CFCF2−、CH3CF2−、CF3CF2CF2−、HCF2CF2CF2−、H2CFCF2CF2−、CH3CF2CF2−、CF3CF2CF2CF2−、HCF2CF2CF2CF2−、H2CFCF2CF2CF2−、CH3CF2CF2CF2−、CF3CF2CF2CF2CF2−、HCF2CF2CF2CF2CF2−、H2CFCF2CF2CF2CF2−、CH3CF2CF2CF2CF2−、
等が挙げられる。
上記フッ素化アルキル基(a)は、炭素数が2以上のパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、更に好ましくは、CF3CF2−、CF3CF2CF2−、CF3CF2CF2CF2−、CF3CF2CF2CF2CF2−、
である。
上記エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)は、エーテル結合を有するアルキル基が有する水素原子の少なくとも1つをフッ素原子で置換したものである。上記エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)の炭素数は2以上である。電気化学デバイスのサイクル特性をより向上させることができる点から、フッ素化アルキル基(b)の炭素数は、4以上であることが好ましい。
上記フッ素化アルキル基(b)の炭素数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、8以下であることが特に好ましく、6以下であることが最も好ましい。
炭素数が多過ぎると、粘性が高くなり、また、フッ素含有基が多くなることから、誘電率の低下による電解質塩の溶解性低下や、他の溶剤との相溶性の低下がみられることがある。
上記エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)のエーテル部分を構成するアルキレン基は直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基でよい。そうした直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を構成する最小構造単位の一例を下記に示す。
(i)直鎖状の最小構造単位:
−CH2−、−CHF−、−CF2−、−CHCl−、−CFCl−、−CCl2−
(ii)分岐鎖状の最小構造単位:
アルキレン基は、これらの最小構造単位単独で構成されてもよく、直鎖状(i)同士、分岐鎖状(ii)同士、又は、直鎖状(i)と分岐鎖状(ii)との組み合わせにより構成されてもよい。好ましい具体例は、後述する。
なお、以上の例示のなかでも、塩基による脱HCl反応が起こらず、より安定なことから、Clを含有しない構成単位から構成されることが好ましい。
更に好ましいエーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)としては、一般式(b−1):
R3−(OR4)n1− (b−1)
(式中、R3はフッ素原子を有していてもよい、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基;R4はフッ素原子を有していてもよい、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基;n1は1〜3の整数;ただし、R3及びR4の少なくとも1つはフッ素原子を有している)で示されるものが挙げられる。
R3及びR4としては以下のものが例示でき、これらを適宜組み合わせて、上記一般式(b−1)で表されるエーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)を構成することができるが、これらのみに限定されるものではない。
(1)R3としては、一般式:Xc 3C−(R5)n2−(3つのXcは同じか又は異なりいずれもH又はF;R5は炭素数1〜5のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基;n2は0又は1)で表されるアルキル基が好ましい。
n2が0の場合、R3としては、CH3−、CF3−、HCF2−及びH2CF−が挙げられる。
n2が1の場合の具体例としては、R3が直鎖状のものとして、CF3CH2−、CF3CF2−、CF3CH2CH2−、CF3CF2CH2−、CF3CF2CF2−、CF3CH2CF2−、CF3CH2CH2CH2−、CF3CF2CH2CH2−、CF3CH2CF2CH2−、CF3CF2CF2CH2−、CF3CF2CF2CF2−、CF3CF2CH2CF2−、CF3CH2CH2CH2CH2−、CF3CF2CH2CH2CH2−、CF3CH2CF2CH2CH2−、CF3CF2CF2CH2CH2−、CF3CF2CF2CF2CH2−、CF3CF2CH2CF2CH2−、CF3CF2CH2CH2CH2CH2−、CF3CF2CF2CF2CH2CH2−、CF3CF2CH2CF2CH2CH2−、HCF2CH2−、HCF2CF2−、HCF2CH2CH2−、HCF2CF2CH2−、HCF2CH2CF2−、HCF2CF2CH2CH2−、HCF2CH2CF2CH2−、HCF2CF2CF2CF2−、HCF2CF2CH2CH2CH2−、HCF2CH2CF2CH2CH2−、HCF2CF2CF2CF2CH2−、HCF2CF2CF2CF2CH2CH2−、FCH2CH2−、FCH2CF2−、FCH2CF2CH2−、FCH2CF2CH2−、CH3CF2−、CH3CH2−、CH3CF2CH2−、CH3CF2CF2−、CH3CH2CH2−、CH3CF2CH2CF2−、CH3CF2CF2CF2−、CH3CH2CF2CF2−、CH3CH2CH2CH2−、CH3CF2CH2CF2CH2−、CH3CF2CF2CF2CH2−、CH3CF2CF2CH2CH2−、CH3CH2CF2CF2CH2−、CH3CF2CH2CF2CH2−、CH3CF2CH2CF2CH2CH2−、CH3CH2CF2CF2CH2CH2−、CH3CF2CH2CF2CH2CH2−等が例示できる。
n2が1であり、かつR3が分岐鎖状のものとしては、
等が挙げられる。
ただし、−CH3や−CF3という分岐を有していると粘性が高くなりやすいため、R3が直鎖状のものがより好ましい。
(2)上記一般式(b−1)の−(OR4)n1−において、n1は1〜3の整数であり、好ましくは1又は2である。なお、n1=2又は3のとき、R4は同じでも異なっていてもよい。
R4の好ましい具体例としては、次の直鎖状又は分岐鎖状のものが例示できる。
直鎖状のものとしては、−CH2−、−CHF−、−CF2−、−CH2CH2−、−CF2CH2−、−CF2CF2−、−CH2CF2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CF2−、−CH2CF2CH2−、−CH2CF2CF2−、−CF2CH2CH2−、−CF2CF2CH2−、−CF2CH2CF2−、−CF2CF2CF2−等が例示できる。
分岐鎖状のものとしては、
等が挙げられる。
上記フッ素化アルコキシ基(c)は、アルコキシ基が有する水素原子の少なくとも1つをフッ素原子で置換したものである。上記フッ素化アルコキシ基(c)の炭素数は1以上である。上記フッ素化アルコキシ基(c)の炭素数は2以上であることが好ましく、4以上であることが好ましい。
また、上記フッ素化アルコキシ基(c)の炭素数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、8以下であることが特に好ましく、6以下であることが最も好ましい。
上記フッ素化アルコキシ基(c)としては、一般式:Xd 3C−(R6)n3−O−(3つのXdは同じか又は異なりいずれもH又はF;R6は好ましくは炭素数1〜5のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基;n3は0又は1;ただし3つのXdのいずれかはフッ素原子を含んでいる)で表されるフッ素化アルコキシ基が特に好ましい。
上記フッ素化アルコキシ基(c)の具体例としては、上記一般式(a−1)におけるR1として例示したアルキル基の末端に酸素原子が結合したフッ素化アルコキシ基が挙げられる。
上記環状カーボネート(1−1)におけるフッ素化アルキル基(a)、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、及び、フッ素化アルコキシ基(c)のフッ素含有率は10質量%以上が好ましい。フッ素含有率が低過ぎると、形成皮膜の溶解性が高くなるおそれがある。この観点から上記フッ素含有率は20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。上限は通常85質量%である。
フッ素化アルキル基(a)、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、及び、フッ素化アルコキシ基(c)のフッ素含有率は、各基の構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/各基の式量}×100(%)により算出した値である。
また、形成皮膜の溶解性の点からは、環状カーボネート(1−1)全体のフッ素含有率は55質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましい。上限は通常80質量%である。
なお、環状カーボネート(1−1)のフッ素含有率は、環状カーボネート(1−1)の構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/フッ素化飽和環状カーボネート(1−1)の分子量}×100(%)により算出した値である。
上記環状カーボネート(1−1)の具体例としては、例えば、下記化学式で表される化合物が挙げられる。
本発明の電解液用溶媒は、このように特定の環状カーボネートを含有するものである。これにより、サイクル特性に優れた電気化学デバイスが得ることができる。
つまり、本発明の電解液用溶媒は、二次電池等の電気化学デバイスの電解液用溶媒として好適である。
本発明の電解液用溶媒は、更に、フッ素化飽和環状カーボネート(但し、環状カーボネート(1−1)を除く)、非フッ素化飽和環状カーボネート、フッ素化鎖状カーボネート及び非フッ素化鎖状カーボネートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
上記非フッ素化飽和環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等を挙げることができる。
なかでも、上記非フッ素化飽和環状カーボネートとしては、誘電率が高く、粘度が好適となる点で、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び、ブチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
上記非フッ素化飽和環状カーボネートとして、上述した化合物の1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記フッ素化飽和環状カーボネートは、フッ素原子が付加した飽和環状カーボネートである。例えば、下記一般式(A):
(式中、X
1及びX
2は、同じか又は異なり、それぞれ−H、−CH
3、−F、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルキル基、又は、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルコキシ基を表す。X
3及びX
4は、同じか又は異なり、それぞれ−H、−CH
3、又は、−Fを表す。ただし、X
1〜X
4の少なくとも1つは、−F、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルキル基、又は、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルコキシ基である)で表されるフッ素化環状カーボネート(A)が挙げられる。
上記フッ素化環状カーボネート(A)を含むと、上記電解液用溶媒をリチウムイオン二次電池等に適用した場合に、負極に安定な被膜を形成することができ、負極での電解液の副反応を充分に抑制することができる。その結果、極めて安定で優れた充放電特性が得られる。
上記一般式(A)において、誘電率、耐酸化性が良好な点から、X1及びX2の1つ又は2つが、−F、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルキル基、又は、エーテル結合を有してもよいフッ素化アルコキシ基であることが好ましい。
上記一般式(A)において、誘電率、耐酸化性が良好な点から、X3及びX4の1つ又は2つが、−Fであることが好ましい。
上記一般式(A)において、低温での粘性の低下、引火点の上昇、更には電解質塩の溶解性の向上が期待できることから、X1及びX2は、−H、−F、フッ素化アルキル基(a)、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、又は、フッ素化アルコキシ基(c)であることが好ましい。
上記一般式(A)において、上記フッ素化アルキル基(a)は、エーテル結合を有しておらず、アルキル基が有する水素原子の少なくとも1つをフッ素原子で置換したものである。フッ素化アルキル基(a)の炭素数は1以上である。フッ素化アルキル基(a)の炭素数は、2以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。また、上記フッ素化アルキル基(a)の炭素数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、8以下であることが更に好ましく、6以下であることが特に好ましい。
炭素数が大きくなりすぎると低温特性が低下したり、電解質塩の溶解性が低下したりするおそれがあり、炭素数が少な過ぎると、電解質塩の溶解性の低下、放電効率の低下、更には粘性の増大等がみられることがある。
上記フッ素化アルキル基(a)としては、環状カーボネート(1−1)で例示したものが挙げられる。
上記一般式(A)において、上記エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)は、エーテル結合を有するアルキル基が有する水素原子の少なくとも1つをフッ素原子で置換したものである。上記エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)の炭素数は2以上である。フッ素化アルキル基(b)の炭素数は、4以上であることが好ましい。
上記フッ素化アルキル基(b)の炭素数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、8以下であることが特に好ましく、6以下であることが最も好ましい。
炭素数が多過ぎると、粘性が高くなり、また、フッ素含有基が多くなることから、誘電率の低下による電解質塩の溶解性低下や、他の溶剤との相溶性の低下がみられることがある。この観点から上記エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)の炭素数は2〜10がより好ましく、2〜7が更に好ましい。
上記フッ素化アルキル基(b)としては、環状カーボネート(1−1)で例示したものが挙げられる。
上記一般式(A)において、アルコキシ基が有する水素原子の少なくとも1つをフッ素原子で置換したものである。上記フッ素化アルコキシ基(c)の炭素数は1以上である。上記フッ素化アルコキシ基(c)の炭素数は2以上であることが好ましく、4以上であることが好ましい。
また、上記フッ素化アルコキシ基(c)の炭素数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、8以下であることが特に好ましく、6以下であることが最も好ましい。
上記フッ素化アルキル基(c)としては、環状カーボネート(1−1)で例示したものが挙げられる。
フッ素化飽和環状カーボネート(A)におけるフッ素化アルキル基(a)、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、及び、フッ素化アルコキシ基(c)のフッ素含有率は10質量%以上が好ましい。フッ素含有率が低過ぎると、引火点の上昇効果が充分に得られないおそれがある。この観点から上記フッ素含有率は20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。上限は通常85質量%である。
フッ素化アルキル基(a)、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、及び、フッ素化アルコキシ基(c)のフッ素含有率は、各基の構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/各基の式量}×100(%)により算出した値である。
また、誘電率、耐酸化性が良好な点からは、フッ素化飽和環状カーボネート(A)全体のフッ素含有率は5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は通常76質量%である。
なお、フッ素化飽和環状カーボネート(A)のフッ素含有率は、フッ素化飽和環状カーボネート(A)の構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/フッ素化飽和環状カーボネート(A)の分子量}×100(%)により算出した値である。
上記フッ素化飽和環状カーボネート(A)としては、具体的には、例えば、以下が挙げられる。
上記一般式(A)において、X1〜X4の少なくとも1つが−Fであるフッ素化飽和環状カーボネート(A)の具体例として、
等が挙げられる。これらの化合物は、耐電圧が高く、電解質塩の溶解性も良好である。他に、
等も使用できる。
上記一般式(A)において、X1及びX2の少なくとも1つがフッ素化アルキル基(a)であり、かつX1〜X4残りが全て−Hであるフッ素化飽和環状カーボネート(A)の具体例としては、
等が挙げられる。
上記一般式(A)において、X1及びX2の少なくとも1つが、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、又は、フッ素化アルコキシ基(c)であり、かつX1〜X4の残りが全て−Hであるフッ素化飽和環状カーボネート(A)の具体例としては、
等が挙げられる。
上記フッ素化環状カーボネート(A)としては、なかでも、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、及び、4−フルオロアルキルエチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
フッ素化環状カーボネート(A)におけるフッ素化アルキル基(a)、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、及び、フッ素化アルコキシ基(c)のフッ素含有率は10質量%以上が好ましい。フッ素含有率が低過ぎると、引火点の上昇効果が充分に得られないおそれがある。この観点から上記フッ素含有率は20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。上限は通常85質量%である。
フッ素化アルキル基(a)、エーテル結合を有するフッ素化アルキル基(b)、及び、フッ素化アルコキシ基(c)のフッ素含有率は、各基の構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/各基の式量}×100(%)により算出した値である。
また、誘電率、耐酸化性が良好な点からは、フッ素化飽和環状カーボネート(A)全体のフッ素含有率は5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。上限は通常76質量%である。
なお、フッ素化飽和環状カーボネート(A)のフッ素含有率は、フッ素化飽和環状カーボネート(A)の構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/フッ素化飽和環状カーボネート(A)の分子量}×100(%)により算出した値である。
なお、上記フッ素化飽和環状カーボネート(A)は、上述した具体例のみに限定されるものではない。また、上記フッ素化飽和環状カーボネート(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記非フッ素化鎖状カーボネートとしては、例えば、CH3OCOOCH3(ジメチルカーボネート:DMC)、CH3CH2OCOOCH2CH3(ジエチルカーボネート:DEC)、CH3CH2OCOOCH3(エチルメチルカーボネート:EMC)、CH3OCOOCH2CH2CH3(メチルプロピルカーボネート)、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート等の炭化水素系鎖状カーボネートが挙げられる。これらの中でも、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、及び、エチルブチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
上記フッ素化鎖状カーボネートは、フッ素原子を有する鎖状カーボネートである。
上記フッ素化鎖状カーボネートは、フッ素含有率が10〜70.0質量%であることが好ましい。上記フッ素含有率は、フッ素化鎖状カーボネートの構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/フッ素化鎖状カーボネートの分子量}×100(%)により算出した値である。
上記フッ素化鎖状カーボネートとしては、一般式(2)で表される化合物が好ましい。
(式中、Rf5及びRf6は、同じか又は異なり、炭素数1〜4のアルキル基又はフッ素化アルキル基を表す。ただし、Rf5及びRf6の少なくとも一方は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基である。)
上記一般式(2)で表されるフッ素化鎖状カーボネートにおいて、Rf5及びRf6は、同じか又は異なり、炭素数1〜4のアルキル基又はフッ素化アルキル基を表す。ただし、Rf5及びRf6の少なくとも一方は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基である。
上記炭素数は、電解液への相溶性が良好である点で、1〜3が好ましい。
Rf5としては、例えば、CF3−、CF3CF2−、(CF3)2CH−、CF3CH2−、C2F5CH2−、HCF2CH2−、HCF2CF2CH2−、CF3CFHCF2CH2−等が挙げられる。なかでも、難燃性が高く、レート特性や耐酸化性が良好な点から、CF3CH2−、HCF2CH2−が好ましい。
Rf6としては、例えば、CF3−、CF3CF2−、(CF3)2CH−、CF3CH2−、C2F5CH2−、HCF2CH2−、HCF2CF2CH2−、CF3CFHCF2CH2−等が挙げられる。なかでも、難燃性が高く、レート特性や耐酸化性が良好な点から、CF3CH2−、HCF2CH2−が好ましい。
上記一般式(2)で表されるフッ素化鎖状カーボネートの具体例としては、例えば、CF3CH2OCOOCH2CF3、CF3CH2OCOOCH3、CF3CF2CH2OCOOCH2CF2CF3、CF3CF2CH2OCOOCH3などのフッ素化鎖状カーボネートが挙げられる。また、たとえば特開平06−21992号公報、特開2000−327634号公報、特開2001−256983号公報などに記載された化合物も例示できる。これらの中でも、ガスの発生を抑制し、高温保存特性を向上させる効果が高いことから、CF3CH2OCOOCH2CF3、CF3CH2OCOOCH3、及び、CF3CF2CH2OCOOCH2CF2CF3からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。上記フッ素含有率は、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、33質量%以上であることが特に好ましい。上記フッ素含有率は、60質量%以下がより好ましく、55質量%以下が更に好ましい。
式(1−1)で表される環状カーボネート(1−1)の含有量は、電解液用溶媒中0.005〜30質量%であることが好適な態様の一つである。比較的少量の環状カーボネート(1−1)が電解液用溶媒に含まれる場合、この電解液用溶媒と電解質塩を含む電解液を備える二次電池等の電気化学デバイスは、サイクル特性に優れる。
よりサイクル特性に優れた電気化学デバイスが得られることから、環状カーボネート(1−1)の含有量は、電解液用溶媒中0.01質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましく、0.5質量%以上であることが殊更に好ましい。
また、よりサイクル特性に優れた電気化学デバイスが得られることから、環状カーボネート(1−1)の含有量は、電解液用溶媒中20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、8質量%以下であることが特に好ましく、5質量%以下であることが殊更に好ましく、2質量%以下であることが最も好ましい。
上記電解液用溶媒は、更に、フッ素化飽和環状カーボネート(但し、環状カーボネート(1−1)を除く)、非フッ素化飽和環状カーボネート、フッ素化鎖状カーボネート及び非フッ素化鎖状カーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のカーボネート(X)を含むことも好適な態様の一つである。
フッ素化飽和環状カーボネート(但し、環状カーボネート(1−1)を除く)、非フッ素化飽和環状カーボネート、フッ素化鎖状カーボネート及び非フッ素化鎖状カーボネートとしては、いずれも、上述したものが使用でき、上述した好適なものを使用することが好ましい。
上記電解液用溶媒は、環状カーボネート(1−1)、非フッ素化飽和環状カーボネート、フッ素化飽和環状カーボネート(但し、環状カーボネート(1−1)を除く)、非フッ素化鎖状カーボネート及びフッ素化鎖状カーボネートを、合計で、80〜100体積%含むことが好ましく、95〜100体積%含むことがより好ましく、99〜100体積%含むことが更に好ましい。実質的に100体積%含むものであってもよい。
式(1−1)で表される環状カーボネート(1−1)の含有量は、上記カーボネート(X)に対して0.01〜30質量%であることが好ましい。比較的少量の環状カーボネート(1−1)が電解液用溶媒に含まれる場合、この電解液用溶媒と電解質塩を含む電解液を備える二次電池等の電気化学デバイスは、サイクル特性に優れる。
よりサイクル特性に優れた電気化学デバイスが得られることから、環状カーボネート(1−1)の含有量は、カーボネート(X)に対して、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが更に好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましい。
また、よりサイクル特性に優れた電気化学デバイスが得られることから、環状カーボネート(1−1)の含有量は、カーボネート(X)に対して、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、8質量%以下であることが特に好ましく、5質量%以下であることが殊更に好ましく、2質量%以下であることが最も好ましい。
上記電解液用溶媒は、非フッ素化飽和環状カーボネート及び非フッ素化鎖状カーボネートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び、ブチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の非フッ素化飽和環状カーボネートと、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、及び、エチルブチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の非フッ素化鎖状カーボネートとを含むことが更に好ましい。
上記電解液用溶媒は、環状カーボネート(1−1)、非フッ素化飽和環状カーボネート及び非フッ素化鎖状カーボネートを、合計で、80〜100体積%含むことが好ましく、95〜100体積%含むことがより好ましく、99〜100体積%含むことが更に好ましい。
この場合、非フッ素化飽和環状カーボネートと非フッ素化鎖状カーボネートとの体積比(非フッ素化飽和環状カーボネート/非フッ素化鎖状カーボネート)は、10/90〜90/10であることが好ましく、20/80以上であることが好ましく、30/70以上であることがより好ましく、80/20以下であることが好ましく、50/50以下であることがより好ましい。
上記電解液用溶媒は、環状カーボネート(1−1)の含有量が電解液用溶媒中20〜90体積%以下であることも好適な態様の一つである。比較的多量の環状カーボネート(1−1)が電解液用溶媒に含まれる場合、この電解液用溶媒と電解質塩を含む電解液を備える二次電池等の電気化学デバイスは、サイクル特性に優れる。
上記電解液用溶媒は、環状カーボネート(1−1)の含有量が、25体積%以上であることがより好ましく、30体積%以上であることが更に好ましい。また、85体積%以下であることがより好ましく、80体積%以下であることが更に好ましく、75体積%以下であることが特に好ましい。
上記電解液用溶媒は、環状カーボネート(1−1)の含有量が20〜90体積%である場合には、フッ素化鎖状カーボネートを含むことが好ましい。上記フッ素化鎖状カーボネートは、上記電解液用溶媒に対して、20体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましく、80体積%以下であることが好ましく、70体積%以下であることがより好ましい。フッ素化鎖状カーボネートを含む溶媒を含有する電解液は、比較的高電圧で使用される電気化学デバイスに好適に利用できる。
上記電解液用溶媒は、環状カーボネート(1−1)及びフッ素化鎖状カーボネートを、合計で、80〜100体積%含むことが好ましく、95〜100体積%含むことがより好ましく、99〜100体積%含むことが更に好ましい。実質的に100体積%含むものであってもよい。
上記電解液用溶媒がフッ素化鎖状カーボネートを含む場合、上記電解液用溶媒は更に非フッ素化鎖状カーボネートを含むことも好ましい。
上記電解液用溶媒は、フッ素化鎖状カーボネート及び非フッ素化鎖状カーボネートを合計で50体積%以上含むことが好ましく、60体積%以上含むことがより好ましく、90体積%以下含むことが好ましく、80体積%以下含むことがより好ましい。
フッ素化鎖状カーボネートと非フッ素化鎖状カーボネートとの体積比は、5/95以上であることが好ましく、10/90以上であることがより好ましく、50/50以下であることが好ましく、40/60以下であることがより好ましい。
上記電解液用溶媒がフッ素化鎖状カーボネートを含む場合、上記電解液用溶媒は更に非フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化飽和環状カーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の飽和環状カーボネートを含有することが好ましい。
上記電解液用溶媒は、フッ素化鎖状カーボネート及び上記飽和環状カーボネートを合計で70〜100体積%含むことが好ましく、80〜100体積%含むことがより好ましく、90〜100体積%含むことが更に好ましく、100体積%含むことが特に好ましい。
非フッ素化鎖状カーボネートと上記飽和環状カーボネートとの体積比は、10/90〜95/5であることが好ましく、30/70以上であることがより好ましく、40/60以上であることが更に好ましく、90/10以下であることがより好ましい。
上記電解液用溶媒が、上記環状カーボネートとして、非フッ素化飽和環状カーボネート及びフッ素化飽和環状カーボネートの両方を含む場合、非フッ素化飽和環状カーボネートとフッ素化飽和環状カーボネートとの体積比は、10/90〜90/10であることが好ましく、30/70以上であることが好ましく、70/30以下であることが好ましい。
上記電解液用溶媒は、上記環状カーボネート(1−1)、フッ素化飽和環状カーボネート(但し、環状カーボネート(1−1)を除く)、非フッ素化飽和環状カーボネート、フッ素化鎖状カーボネート及び非フッ素化鎖状カーボネート以外の化合物を含有してもよく、その含有量は、0〜10質量%であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
以下、上記環状カーボネート(1−1)、フッ素化飽和環状カーボネート(但し、環状カーボネート(1−1)を除く)、非フッ素化飽和環状カーボネート、フッ素化鎖状カーボネート及び非フッ素化鎖状カーボネート以外の化合物について説明する。
本発明の電解液用溶媒は、更に、重量平均分子量が2000〜4000であり、末端に−OH、−OCOOH、又は、−COOHを有するポリエチレンオキシドを含有することも好ましい。
このような化合物を含有することにより、電極界面の安定性が向上し、電池特性を向上させることができる。
上記ポリエチレンオキシドとしては、例えば、ポリエチレンオキシドモノオール、ポリエチレンオキシドカルボン酸、ポリエチレンオキシドジオール、ポリエチレンオキシドジカルボン酸、ポリエチレンオキシドトリオール、ポリエチレンオキシドトリカルボン酸等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なかでも、電池特性がより良好となる点で、ポリエチレンオキシドモノオールとポリエチレンオキシドジオールの混合物、及び、ポリエチレンオキシドカルボン酸とポリエチレンオキシドジカルボン酸の混合物であることが好ましい。
上記ポリエチレンオキシドの重量平均分子量が小さすぎると、酸化分解されやすくなるおそれがある。上記重量平均分子量は、3000〜4000がより好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算により測定することができる。
上記ポリエチレンオキシドの含有量は、電解液用溶媒中1×10−6〜1×10−2mol/kgであることが好ましい。上記ポリエチレンオキシドの含有量が多すぎると、電池特性を損なうおそれがある。
上記ポリエチレンオキシドの含有量は、5×10−6mol/kg以上であることがより好ましい。
本発明の電解液用溶媒は、更に、添加剤として、不飽和環状カーボネート、フッ素化飽和環状カーボネート、及び、環状スルホン酸化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有していることが好ましい。これらの化合物を含有することにより、電池特性の低下を抑制することができる。
上記不飽和環状カーボネートは、不飽和結合を含む環状カーボネート、すなわち、環状カーボネートであって、分子内に炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するものである。具体的には、例えば、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート化合物;4−ビニルエチレンカーボネート(VEC)、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−エチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4−n−プロピル−4−ビニレンエチレンカーボネート、5−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,4−ジメチル−5−メチレンエチレンカーボネート、4,4−ジエチル−5−メチレンエチレンカーボネート等のビニルエチレンカーボネート化合物等が挙げられる。このうち、ビニレンカーボネート、4−ビニルエチレンカーボネート、4−メチル−4−ビニルエチレンカーボネート又は4,5−ジビニルエチレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネート又は4−ビニルエチレンカーボネートが特に好ましい。
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、50以上、250以下である。この範囲であれば、電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。不飽和環状カーボネートの分子量は、より好ましくは80以上であり、また、より好ましくは150以下である。
また、不飽和環状カーボネートとしては、フッ素化不飽和環状カーボネートも好適に用いることができる。
フッ素化不飽和環状カーボネートが有するフッ素原子の数は1以上であれば、特に制限されない。中でもフッ素原子が通常6以下、好ましくは4以下であり、1個又は2個のものが最も好ましい。
フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、フッ素化ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
フッ素化ビニレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4−アリル−5−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート等が挙げられる。
芳香環又は炭素−炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−アリルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−アリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジアリルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、50以上であり、また、500以下である。この範囲であれば、電解液用溶媒に対するフッ素化不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
上記不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記フッ素化飽和環状カーボネートとしては、上記電解液用溶媒に使用可能なフッ素化飽和環状カーボネートとして例示した化合物を挙げることができる。
上記環状スルホン酸化合物としては、例えば、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン等が挙げられる。
なかでも、高温特性を向上させることができる点で、本発明の電解液用溶媒は、1,3−プロパンスルトン、及び/又は、1,4−ブタンスルトンを含有することが好ましい。
上記不飽和環状カーボネート、フッ素化飽和環状カーボネート、及び、環状スルホン酸化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を添加剤として用いる場合、その含有量は、電解液中0.1〜10質量%であることが好ましく、1質量%以上がより好ましく、5質量%以下がより好ましい。
本発明の電解液用溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、環状及び鎖状カルボン酸エステル、エーテル化合物、窒素含有化合物、ホウ素含有化合物、有機ケイ素含有化合物、不燃(難燃)化剤、界面活性剤、高誘電化添加剤、サイクル特性及びレート特性改善剤、又は、過充電防止剤等の他の溶媒又は添加剤を更に含有してもよい。
上記環状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素原子数が3〜12のものが挙げられる。具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イソプシロンカプロラクトン等が挙げられる。中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
環状カルボン酸エステルの配合量は、通常、溶媒100質量%中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。この範囲であると、電解液の電気伝導率を改善し、電解液電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、環状カルボン酸エステルの配合量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。このように上限を設定することにより、電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくする。
また、上記環状カルボン酸エステルとしては、フッ素化環状カルボン酸エステル(フッ素化ラクトン)も好適に用いることができる。フッ素化ラクトンとしては、例えば、下記式(C):
(式中、X15〜X20は同じか又は異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CH3又はフッ素化アルキル基;ただし、X15〜X20の少なくとも1つはフッ素化アルキル基である)で示されるフッ素化ラクトンが挙げられる。
X15〜X20におけるフッ素化アルキル基としては、例えば、−CFH2、−CF2H、−CF3、−CH2CF3、−CF2CF3、−CH2CF2CF3、−CF(CF3)2等が挙げられ、耐酸化性が高く、安全性向上効果がある点から−CH2CF3、−CH2CF2CF3が好ましい。
X15〜X20の少なくとも1つがフッ素化アルキル基であれば、−H、−F、−Cl、−CH3又はフッ素化アルキル基は、X15〜X20の1箇所のみに置換していてもよいし、複数の箇所に置換していてもよい。好ましくは、電解質塩の溶解性が良好な点から1〜3箇所、更には1〜2箇所である。
フッ素化アルキル基の置換位置は特に限定されないが、合成収率が良好なことから、X17及び/又はX18が、特にX17又はX18がフッ素化アルキル基、なかでも−CH2CF3、−CH2CF2CF3であることが好ましい。フッ素化アルキル基以外のX15〜X20は、−H、−F、−Cl又はCH3であり、特に電解質塩の溶解性が良好な点から−Hが好ましい。
フッ素化ラクトンとしては、上記式で示されるもの以外にも、例えば、下記式(D):
(式中、A及びBはいずれか一方がCX26X27(X26及びX27は同じか又は異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CF3、−CH3又は水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよくヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよいアルキレン基)であり、他方は酸素原子;Rf12はエーテル結合を有していてもよいフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基;X21及びX22は同じか又は異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CF3又はCH3;X23〜X25は同じか又は異なり、いずれも−H、−F、−Cl又は水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよくヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよいアルキル基;n=0又は1)で示されるフッ素化ラクトン等も挙げられる。
式(D)で示されるフッ素化ラクトンとしては、下記式(E):
(式中、A、B、Rf12、X21、X22及びX23は式(D)と同じである)で示される5員環構造が、合成が容易である点、化学的安定性が良好な点から好ましく挙げられ、更には、AとBの組合せにより、下記式(F):
(式中、Rf12、X21、X22、X23、X26及びX27は式(D)と同じである)で示されるフッ素化ラクトンと、下記式(G):
(式中、Rf12、X21、X22、X23、X26及びX27は式(D)と同じである)で示されるフッ素化ラクトンがある。
これらのなかでも、高い誘電率、高い耐電圧といった優れた特性が特に発揮できる点、そのほか電解質塩の溶解性、内部抵抗の低減が良好な点で本発明の電解液用溶媒を用いた電解液としての特性が向上する点から、
等が挙げられる。
フッ素化環状カルボン酸エステルを含有させることにより、イオン伝導度の向上、安全性の向上、高温時の安定性向上といった効果が得られる。
上記鎖状カルボン酸エステルとしては、その構造式中の全炭素数が3〜7のものが挙げられる。具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸−t−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸−n−プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸−n−プロピル、イソ酪酸イソプロピル等が挙げられる。
中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル等が粘度低下によるイオン伝導度の向上の点から好ましい。
また、フッ素化鎖状カルボン酸エステルも好適に用いることができる。フッ素化エステルとしては、下記式(H):
Rf10COORf11 (H)
(式中、Rf10は炭素数1〜2のフッ素化アルキル基、Rf11は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基)で示されるフッ素化鎖状カルボン酸エステルが、難燃性が高く、かつ他溶媒との相溶性や耐酸化性が良好な点から好ましい。
Rf10としては、例えばCF3−、CF3CF2−、HCF2CF2−、HCF2−、CH3CF2−、CF3CH2−等が例示でき、なかでもCF3−、CF3CF2−が、レート特性が良好な点から特に好ましい。
Rf11としては、例えば−CF3、−CF2CF3、−CH(CF3)2、−CH2CF3、−CH2CH2CF3、−CH2CF2CFHCF3、−CH2C2F5、−CH2CF2CF2H、−CH2CH2C2F5、−CH2CF2CF3、−CH2CF2CF2CF3等が例示でき、なかでも−CH2CF3、−CH(CF3)2、−CH2C2F5、−CH2CF2CF2Hが、他溶媒との相溶性が良好な点から特に好ましい。
フッ素化鎖状カルボン酸エステルの具体例としては、例えばCF3C(=O)OCH2CF3、CF3C(=O)OCH2CH2CF3、CF3C(=O)OCH2C2F5、CF3C(=O)OCH2CF2CF2H、CF3C(=O)OCH(CF3)2等の1種又は2種以上が例示でき、なかでもCF3C(=O)OCH2C2F5、CF3C(=O)OCH2CF2CF2H、CF3C(=O)OCH2CF3、CF3C(=O)OCH(CF3)2が、他溶媒との相溶性及びレート特性が良好な点から特に好ましい。
上記エーテル化合物としては、炭素数3〜10の鎖状エーテル、及び炭素数3〜6の環状エーテルが好ましい。
炭素数3〜10の鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、ジエトキシメタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、ジエトキシエタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
また、上記エーテル化合物としては、フッ素化エーテルも好適に用いることができる。
上記フッ素化エーテルとしては、下記一般式(I):
Rf13−O−Rf14 (I)
(式中、Rf13及びRf14は同じか又は異なり、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数1〜10のフッ素化アルキル基である。ただし、Rf13及びRf14の少なくとも一方は、フッ素化アルキル基である。)で表されるフッ素化エーテル(I)が挙げられる。フッ素化エーテル(I)を含有させることにより、電解液の難燃性が向上するとともに、高温高電圧での安定性、安全性が向上する。
上記一般式(I)においては、Rf13及びRf14の少なくとも一方が炭素数1〜10のフッ素化アルキル基であればよいが、電解液の難燃性及び高温高電圧での安定性、安全性を一層向上させる観点から、Rf13及びRf14が、ともに炭素数1〜10のフッ素化アルキル基であることが好ましい。この場合、Rf13及びRf14は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
なかでも、Rf13及びRf14が、同じか又は異なり、Rf13が炭素数3〜6のフッ素化アルキル基であり、かつ、Rf14が炭素数2〜6のフッ素化アルキル基であることが好ましい。
Rf13およびRf14の合計炭素数が少な過ぎるとフッ素化エーテルの沸点が低くなりすぎ、また、Rf13又はRf14の炭素数が多過ぎると、電解質塩の溶解性が低下し、他の溶媒との相溶性にも悪影響が出始め、また粘度が上昇するためレート特性(粘性)が低減する。Rf13の炭素数が3又は4、Rf14の炭素数が2又は3のとき、沸点およびレート特性に優れる点で有利である。
上記フッ素化エーテル(I)は、フッ素含有率が40〜75質量%であることが好ましい。この範囲のフッ素含有率を有するとき、不燃性と相溶性のバランスに特に優れたものになる。また、耐酸化性、安全性が良好な点からも好ましい。
上記フッ素含有率の下限は、45質量%がより好ましく、50質量%が更に好ましく、55質量%が特に好ましい。上限は70質量%がより好ましく、66質量%が更に好ましい。
なお、フッ素化エーテル(I)のフッ素含有率は、フッ素化エーテル(I)の構造式に基づいて、{(フッ素原子の個数×19)/フッ素化エーテル(I)の分子量}×100(%)により算出した値である。
Rf13としては、例えば、CF3CF2CH2−、CF3CFHCF2−、HCF2CF2CF2−、HCF2CF2CH2−、CF3CF2CH2CH2−、CF3CFHCF2CH2−、HCF2CF2CF2CF2−、HCF2CF2CF2CH2−、HCF2CF2CH2CH2−、HCF2CF(CF3)CH2−等が挙げられる。また、Rf14としては、例えば、−CH2CF2CF3、−CF2CFHCF3、−CF2CF2CF2H、−CH2CF2CF2H、−CH2CH2CF2CF3、−CH2CF2CFHCF3、−CF2CF2CF2CF2H、−CH2CF2CF2CF2H、−CH2CH2CF2CF2H、−CH2CF(CF3)CF2H、−CF2CF2H、−CH2CF2H、−CF2CH3等が挙げられる。
上記フッ素化エーテル(I)の具体例としては、例えばHCF2CF2CH2OCF2CF2H、CF3CF2CH2OCF2CF2H、HCF2CF2CH2OCF2CFHCF3、CF3CF2CH2OCF2CFHCF3、C6F13OCH3、C6F13OC2H5、C8F17OCH3、C8F17OC2H5、CF3CFHCF2CH(CH3)OCF2CFHCF3、HCF2CF2OCH(C2H5)2、HCF2CF2OC4H9、HCF2CF2OCH2CH(C2H5)2、HCF2CF2OCH2CH(CH3)2等が挙げられる。
なかでも、片末端又は両末端にHCF2−又はCF3CFH−を含むものが分極性に優れ、沸点の高いフッ素化エーテル(I)を与えることができる。フッ素化エーテル(I)の沸点は、67〜120℃であることが好ましい。より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上である。
このようなフッ素化エーテル(I)としては、例えば、CF3CH2OCF2CFHCF3、CF3CF2CH2OCF2CFHCF3、HCF2CF2CH2OCF2CFHCF3、HCF2CF2CH2OCH2CF2CF2H、CF3CFHCF2CH2OCF2CFHCF3、HCF2CF2CH2OCF2CF2H、CF3CF2CH2OCF2CF2H等の1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、高沸点、他の溶媒との相溶性や電解質塩の溶解性が良好な点で有利なことから、HCF2CF2CH2OCF2CFHCF3(沸点106℃)、CF3CF2CH2OCF2CFHCF3(沸点82℃)、HCF2CF2CH2OCF2CF2H(沸点92℃)及びCF3CF2CH2OCF2CF2H(沸点68℃)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、HCF2CF2CH2OCF2CFHCF3(沸点106℃)及びHCF2CF2CH2OCF2CF2H(沸点92℃)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
炭素数3〜6の環状エーテルとしては、1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離度を向上させる点で好ましく、特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
上記窒素含有化合物としては、ニトリル、フッ素化ニトリル、カルボン酸アミド、フッ素化カルボン酸アミド、スルホン酸アミド及びフッ素化スルホン酸アミド等が挙げられる。また、1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサジリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシンイミド等も使用できる。
上記ホウ素含有化合物としては、例えば、トリメチルボレート、トリエチルボレート等のホウ酸エステル、ホウ酸エーテル、及び、ホウ酸アルキル等が挙げられる。
上記有機ケイ素含有化合物としては、例えば、(CH3)4−Si、(CH3)3−Si−Si(CH3)3等が挙げられる。
上記不燃(難燃)化剤としては、リン酸エステルやホスファゼン系化合物が挙げられる。上記リン酸エステルとしては、例えば、フッ素化アルキルリン酸エステル、非フッ素系アルキルリン酸エステル、アリールリン酸エステル等が挙げられる。なかでも、少量で不燃効果を発揮できる点で、フッ素化アルキルリン酸エステルであることが好ましい。
上記フッ素化アルキルリン酸エステルとしては、具体的には、特開平11−233141号公報に記載されたフッ素化ジアルキルリン酸エステル、特開平11−283669号公報に記載された環状のアルキルリン酸エステル、又は、フッ素化トリアルキルリン酸エステル等が挙げられる。
上記不燃(難燃)化剤としては、(CH3O)3P=O、(CF3CH2O)3P=O等が好ましい。
上記界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよいが、サイクル特性、レート特性が良好となる点から、フッ素原子を含むものであることが好ましい。
このようなフッ素原子を含む界面活性剤としては、例えば、下記式(J):
Rf15COO−M+ (J)
(式中、Rf15は炭素数3〜10のエーテル結合を含んでいてもよいフッ素化アルキル基;M+はLi+、Na+、K+又はNHR’3 +(R’は同じか又は異なり、いずれもH又は炭素数が1〜3のアルキル基)である)で表されるフッ素化カルボン酸塩や、下記式(K):
Rf16SO3 −M+ (K)
(式中、Rf16は炭素数3〜10のエーテル結合を含んでいてもよいフッ素化アルキル基;M+はLi+、Na+、K+又はNHR’3 +(R’は同じか又は異なり、いずれもHまたは炭素数が1〜3のアルキル基)である)で表されるフッ素化スルホン酸塩等が好ましい。
上記界面活性剤の含有量は、充放電サイクル特性を低下させずに電解液の表面張力を低下させることができる点から、電解液用溶媒中0.01〜2質量%であることが好ましい。
上記高誘電化添加剤としては、例えば、スルホラン、メチルスルホラン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリル等が挙げられる。
上記サイクル特性及びレート特性改善剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
上記過充電防止剤としては、過充電等のときに電池の破裂・発火を抑制することができる点で、芳香環を有する過充電防止剤であることが好ましい。上記芳香環を有する過充電防止剤としては、例えば、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化物、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ジクロロアニリン、トルエン等の芳香族化合物;ヘキサフルオロベンゼン、フルオロベンゼン、2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の芳香族化合物のフッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等のフッ素化アニソール化合物等が挙げられる。中でも、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物が好ましい。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼン又はt−アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種を併用するのが過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
上記過充電防止剤の含有量は、過充電等の場合に電池の破裂や発火を防止できる点で、電解液用溶媒中0.1〜5質量%であることが好ましい。
本発明の電解液用溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、公知のその他の助剤を更に含有してもよい。上記公知のその他の助剤としては、例えば、エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;無水コハク酸、無水グルタン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物及びフェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のスピロ化合物;エチレンサルファイト、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホレン、ジフェニルスルホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミドといった鎖状スルホン、フッ素化鎖状スルホン、鎖状スルホン酸エステル、フッ素化鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン、フッ素化環状スルホン、スルホン酸ハライド及びフッ素化スルホン酸ハライド等の含硫黄化合物;ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物等のフッ素化芳香族化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
また、本発明の電解液用溶媒は、更に高分子材料と組み合わせてゲル状(可塑化された)のゲル電解液用溶媒としてもよい。
かかる高分子材料としては、従来公知のポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド、それらの変性体(特開平8−222270号公報、特開2002−100405号公報);ポリアクリレート系ポリマー、ポリアクリロニトリルや、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂(特表平4−506726号公報、特表平8−507407号公報、特開平10−294131号公報);それらフッ素樹脂と炭化水素系樹脂との複合体(特開平11−35765号公報、特開平11−86630号公報)等が挙げられる。特には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体をゲル電解質用高分子材料として用いることが望ましい。
そのほか、本発明の電解液用溶媒は、特願2004−301934号明細書に記載されているイオン伝導性化合物も含んでいてもよい。
このイオン伝導性化合物は、式(1−A):
A−(D)−B (1−A)
[式中、Dは式(2−A):
−(D1)n−(FAE)m−(AE)p−(Y)q− (2−A)
(式中、D1は、式(2a):
(式中、Rfは架橋性官能基を有していてもよいフッ素化エーテル基;R10はRfと主鎖を結合する基又は結合手)で示される側鎖にフッ素化エーテル基を有するエーテル単位;
FAEは、式(2b):
(式中、Rfaは水素原子、架橋性官能基を有していてもよいフッ素化アルキル基;R11はRfaと主鎖を結合する基又は結合手)で示される側鎖にフッ素化アルキル基を有するエーテル単位;
AEは、式(2c):
(式中、R13は水素原子、架橋性官能基を有していてもよいアルキル基、架橋性官能基を有していてもよい脂肪族環式炭化水素基又は架橋性官能基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R12はR13と主鎖を結合する基又は結合手)で示されるエーテル単位;
Yは、式(2d−1)〜(2d−3):
の少なくとも1種を含む単位;
nは0〜200の整数;mは0〜200の整数;pは0〜10000の整数;qは1〜100の整数;ただしn+mは0ではなく、D1、FAE、AE及びYの結合順序は特定されない);
A及びBは同じか又は異なり、水素原子、フッ素原子及び/又は架橋性官能基を含んでいてもよいアルキル基、フッ素原子及び/又は架橋性官能基を含んでいてもよいフェニル基、−COOH基、−OR(Rは水素原子又はフッ素原子及び/又は架橋性官能基を含んでいてもよいアルキル基)、エステル基又はカーボネート基(ただし、Dの末端が酸素原子の場合は−COOH基、−OR、エステル基及びカーボネート基ではない)]で表される側鎖にフッ素化基を有する非晶性フッ素化ポリエーテル化合物である。
本発明の電解液用溶媒には必要に応じて、さらに他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、例えば、金属酸化物、ガラス等が挙げられる。
本発明の電解液用溶媒は、上述した成分を用いて、任意の方法で調製するとよい。
本発明の電解液は、上記電解液用溶媒及び電解質塩を含む。
上記電解質塩としては、二次電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイス用の電解液に使用することができる任意のものを用いることができるが、なかでも、リチウム塩が好ましい。
上記リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiPF6及びLiBF4等の無機リチウム塩;LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(SO2CF3)2、LiPF4(SO2C2F5)2、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(SO2CF3)2、LiBF2(SO2C2F5)2、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート、リチウムビス(オキサレート)ボレート、及び、式:LiPFa(CnF2n+1)6−a(式中、aは0〜5の整数であり、nは1〜6の整数である)で表される塩等のフッ素化有機酸リチウム塩等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、上記リチウム塩は、電解液を高温保存した後の劣化を抑制することができる点で、LiPF6、LiBF4、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート、リチウムビス(オキサレート)ボレート、及び、式:LiPFa(CnF2n+1)6−a(式中、aは0〜5の整数であり、nは1〜6の整数である)で表される塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
式:LiPFa(CnF2n+1)6−aで表される塩としては、例えば、LiPF3(CF3)3、LiPF3(C2F5)3、LiPF3(C3F7)3、LiPF3(C4F9)3、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(C3F7)2、LiPF4(C4F9)2(ただし、式中のC3F7、C4F9で表されるアルキル基は、直鎖、分岐構造のいずれであってもよい。)等が挙げられる。
電解液中の上記電解質塩の濃度は、0.5〜3モル/リットルが好ましい。この範囲外では、電解液の電気伝導率が低くなり、電池性能が低下してしまう傾向がある。
上記電解質塩の濃度は、0.9モル/リットル以上がより好ましく、1.5モル/リットル以下がより好ましい。
上記電解質塩としては、アンモニウム塩が好ましい。
上記アンモニウム塩としては、以下(IIa)〜(IIe)が挙げられる。
(IIa)テトラアルキル4級アンモニウム塩
一般式(IIa):
(式中、R1a、R2a、R3a及びR4aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜6のエーテル結合を含んでいてもよいアルキル基;X−はアニオン)で示されるテトラアルキル4級アンモニウム塩が好ましく例示できる。また、このアンモニウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
テトラアルキル4級アンモニウム塩の好ましい具体例としては、一般式(IIa−1):
(式中、R1a、R2a及びX−は前記と同じ;x及びyは同じか又は異なり0〜4の整数で、かつx+y=4)で示されるテトラアルキル4級アンモニウム塩、一般式(IIa−2):
(式中、R5aは炭素数1〜6のアルキル基;R6aは炭素数1〜6の2価の炭化水素基;R7aは炭素数1〜4のアルキル基;zは1又は2;X−はアニオン)で示されるアルキルエーテル基含有トリアルキルアンモニウム塩、などがあげられる。アルキルエーテル基を導入することにより、粘性の低下が図ることができる。
アニオンX−は、無機アニオンでも有機アニオンでもよい。無機アニオンとしては、例えばAlCl4 −、BF4 −、PF6 −、AsF6 −、TaF6 −、I−、SbF6 −が挙げられる。有機アニオンとしては、例えばCF3COO−、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−などが挙げられる。
これらのうち、耐酸化性やイオン解離性が良好な点から、BF4 −、PF6 −、AsF6 −、SbF6 −が好ましい。
テトラアルキル4級アンモニウム塩の好適な具体例としては、Et4NBF4、Et4NClO4、Et4NPF6、Et4NAsF6、Et4NSbF6、Et4NCF3SO3、Et4N(CF3SO2)2N、Et4NC4F9SO3、Et3MeNBF4、Et3MeNClO4、Et3MeNPF6、Et3MeNAsF6、Et3MeNSbF6、Et3MeNCF3SO3、Et3MeN(CF3SO2)2N、Et3MeNC4F9SO3、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム塩などが挙げられ、特に、Et4NBF4、Et4NPF6、Et4NSbF6、Et4NAsF6、Et3MeNBF4、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム塩が好ましい。
(IIb)スピロ環ビピロリジニウム塩
一般式(IIb−1):
(式中、R8a及びR9aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜4のアルキル基;X−はアニオン;n1は0〜5の整数;n2は0〜5の整数)で示されるスピロ環ビピロリジニウム塩、一般式(IIb−2):
(式中、R10a及びR11aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜4のアルキル基;X−はアニオン;n3は0〜5の整数;n4は0〜5の整数)で示されるスピロ環ビピロリジニウム塩、又は、一般式(IIb−3):
(式中、R12aおよびR13aは同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜4のアルキル基;X−はアニオン;n5は0〜5の整数;n6は0〜5の整数)で示されるスピロ環ビピロリジニウム塩が好ましく挙げられる。また、このスピロ環ビピロリジニウム塩の水素原子の一部または全部がフッ素原子および/または炭素数1〜4のフッ素化アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
アニオンX−の好ましい具体例は、(IIa)の場合と同じである。なかでも、解離性が高く、高電圧下での内部抵抗が低い点から、BF4−、PF6−、(CF3SO2)2N−または(C2F5SO2)2N−が好ましい。
スピロ環ビピロリジニウム塩の好ましい具体例としては、例えば、
などが挙げられる。
このスピロ環ビピロリジニウム塩は溶媒への溶解性、耐酸化性、イオン伝導性の点で優れている。
(IIc)イミダゾリウム塩
一般式(IIc):
(式中、R14a及びR15aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜6のアルキル基;X−はアニオン)
で示されるイミダゾリウム塩が好ましく例示できる。また、このイミダゾリウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
アニオンX−の好ましい具体例は、(IIa)と同じである。
イミダゾリウム塩の好ましい具体例としては、例えば
(X−はアニオン)などがあげられる。
アニオンX−の好ましい具体例は、(IIa)と同じである。
このイミダゾリウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
(IId):N−アルキルピリジニウム塩
一般式(IId):
(式中、R16aは炭素数1〜6のアルキル基;X−はアニオン)
で示されるN−アルキルピリジニウム塩が好ましく例示できる。また、このN−アルキルピリジニウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
アニオンX−の好ましい具体例は、(IIa)と同じである。
N−アルキルピリジニウム塩の好ましい具体例としては、例えば
などが挙げられる。
このN−アルキルピリジニウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
(IIe)N,N−ジアルキルピロリジニウム塩
一般式(IIe):
(式中、R17a及びR18aは同じか又は異なり、いずれも炭素数1〜6のアルキル基;X−はアニオン)
で示されるN,N−ジアルキルピロリジニウム塩が好ましく例示できる。また、このN,N−ジアルキルピロリジニウム塩の水素原子の一部又は全部がフッ素原子及び/又は炭素数1〜4のフッ素化アルキル基で置換されているものも、耐酸化性が向上する点から好ましい。
アニオンX−の好ましい具体例は、(IIa)と同じである。
N,N−ジアルキルピロリジニウム塩の好ましい具体例としては、例えば
などが挙げられる。
このN,N−ジアルキルピロリジニウム塩は粘性が低く、また溶解性が良好な点で優れている。
これらのアンモニウム塩のうち、(IIa)、(IIb)及び(IIc)が溶解性、耐酸化性、イオン伝導性が良好な点で好ましく、さらには
(式中、Meはメチル基;Etはエチル基;X−、x、yは式(IIa−1)と同じ)
が好ましい。
また、上記電解質塩として、リチウム塩を用いてもよい。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiN(SO2C2H5)2が好ましい。
更に容量を向上させるために、マグネシウム塩を用いてもよい。マグネシウム塩としては、例えば、Mg(ClO4)2、Mg(OOC2H5)2等が好ましい。
電解質塩が上記アンモニウム塩である場合、濃度は、0.6モル/リットル以上であることが好ましい。0.6モル/リットル未満であると、低温特性が悪くなるだけでなく、初期内部抵抗が高くなってしまう。上記電解質塩の濃度は、0.9モル/リットル以上であることがより好ましい。
上記濃度の上限は、低温特性の点で、3.0モル/リットル以下であることが好ましく、2.0モル/リットル以下であることがより好ましい。
上記アンモニウム塩が、4フッ化ホウ酸トリエチルメチルアンモニウム(TEMABF4)の場合、その濃度は、低温特性に優れる点で、0.8〜1.9モル/リットルであることが好ましい。
また、4フッ化ホウ酸スピロビピロリジニウム(SBPBF4)の場合は、0.7〜2.0モル/リットルであることが好ましい。
本発明の電解液は、上述した成分を用いて、任意の方法で調製するとよい。
本発明の電解液を備えた電気化学デバイス又は二次電池もまた、本発明の一つである。
上記電気化学デバイスとしては、リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、キャパシタ(電気二重層キャパシタ)、ラジカル電池、太陽電池(特に色素増感型太陽電池)、燃料電池、各種電気化学センサー、エレクトロクロミック素子、電気化学スイッチング素子、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ等が挙げられ、リチウムイオン二次電池等の二次電池、電気二重層キャパシタが好適である。
以下に、本発明の電気化学デバイス又は二次電池の例として、リチウムイオン二次電池の場合を説明する。
上記リチウムイオン二次電池は、正極、負極、及び、上述の電解液を備える。
<正極>
正極は、正極の材料である正極活物質を含む正極合剤と、集電体とから構成される。
上記正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限されないが、例えば、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム含有遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。なかでも、正極活物質としては、特に、高電圧を産み出すリチウム含有遷移金属複合酸化物が好ましい。
上記リチウム含有遷移金属複合酸化物としては、例えば、
式(L):LiaMn2−bM1 bO4(式中、0.9≦a;0≦b≦1.5;M1はFe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属)で表されるリチウム・マンガンスピネル複合酸化物、
式(M):LiNi1−cM2 cO2(式中、0≦c≦0.5;M2はFe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属)で表されるリチウム・ニッケル複合酸化物、又は、
式(N):LiCo1−dM3 dO2(式中、0≦d≦0.5;M3はFe、Ni、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属)で表されるリチウム・コバルト複合酸化物が挙げられる。
なかでも、エネルギー密度が高く、高出力なリチウムイオン二次電池を提供できる点から、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiMn2O4、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、またはLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2が好ましい。
その他の上記正極活物質として、LiFePO4、LiNi0.8Co0.2O2、Li1.2Fe0.4Mn0.4O2、LiNi0.5Mn0.5O2、LiV3O6等が挙げられる。
また、正極活物質にリン酸リチウムを含ませると、連続充電特性が向上するので好ましい。リン酸リチウムの使用に制限はないが、前記の正極活物質とリン酸リチウムを混合して用いることが好ましい。使用するリン酸リチウムの量は上記正極活物質とリン酸リチウムの合計に対し、下限が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、上限が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
また、上記正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加、乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加後、加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により該正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いることもできる。
表面付着物質の量としては、上記正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上、上限として、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
正極活物質の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が挙げられる。また、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成していてもよい。
正極活物質のタップ密度は、好ましくは0.5g/cm3以上、より好ましくは0.8g/cm3以上、さらに好ましくは1.0g/cm3以上である。該正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極活物質層形成時に、必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく、特に上限はないが、大きすぎると、正極活物質層内における電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、上限は、好ましくは4.0g/cm3以下、より好ましくは3.7g/cm3以下、さらに好ましくは3.5g/cm3以下である。
なお、タップ密度は、正極活物質粉体5〜10gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タップした時の粉体充填密度(タップ密度)g/ccとして求める。
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上、最も好ましくは1.0μm以上であり、また、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、さらに好ましくは25μm以下、最も好ましくは22μm以下である。上記下限を下回ると、高タップ密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきたしたり、電池の正極作成、即ち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等の問題を生ずる場合がある。ここで、異なるメジアン径d50をもつ上記正極活物質を2種類以上混合することで、正極作成時の充填性をさらに向上させることができる。
なお、メジアン径d50は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。粒度分布計としてHORIBA社製LA−920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、上記正極活物質の平均一次粒子径としては、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上であり、上限は、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下、最も好ましくは2μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。逆に、上記下限を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題を生ずる場合がある。
なお、一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
正極活物質のBET比表面積は、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.2m2/g以上、さらに好ましくは0.3m2/g以上であり、また、好ましくは50m2/g以下、より好ましくは40m2/g以下、さらに好ましくは30m2/g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいとタップ密度が上がりにくくなり、正極活物質層形成時の塗布性に問題が発生しやすい場合がある。
なお、BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研社製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義される。
上記リチウムイオン二次電池が、ハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウムイオン二次電池として使用される場合、高出力が要求されるため、上記正極活物質の粒子は二次粒子が主体となることが好ましい。
上記正極活物質の粒子は、二次粒子の平均粒子径が40μm以下で、かつ、平均一次粒子径が1μm以下の微粒子を、0.5〜7.0体積%含むものであることが好ましい。平均一次粒子径が1μm以下の微粒子を含有させることにより、電解液との接触面積が大きくなり、電極と電解液との間でのリチウムイオンの拡散をより速くすることができ、その結果、電池の出力性能を向上させることができる。
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷移金属の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
正極の製造のために、前記の正極活物質を単独で用いてもよく、異なる組成の1種以上を、任意の組み合わせ又は比率で併用してもよい。この場合の好ましい組み合わせとしては、LiCoO2とLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2などのLiMn2O4若しくはこのMnの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせ、あるいは、LiCoO2若しくはこのCoの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせが挙げられる。
上記正極活物質の含有量は、電池容量が高い点で、正極合剤の50〜99質量%が好ましく、80〜99質量%がより好ましい。また、正極活物質の、正極活物質層中の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、特に好ましくは84質量%以上である。また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。正極活物質層中の正極活物質の含有量が低いと電気容量が不十分となる場合がある。逆に含有量が高すぎると正極の強度が不足する場合がある。
上記正極合剤は、更に、結着剤、増粘剤、導電材を含むことが好ましい。
上記結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
結着剤の含有量は、正極活物質層中の結着剤の割合として、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上であり、また、通常80質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。
上記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下の範囲である。この範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。上回ると、正極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題が生じる場合がある。
上記導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。含有量がこの範囲よりも低いと導電性が不十分となる場合がある。逆に、含有量がこの範囲よりも高いと電池容量が低下する場合がある。
スラリーを形成するための溶媒としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。水系媒体としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体としては、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
正極用集電体の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼、ニッケル等の金属、又は、その合金等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。なかでも、金属材料、特にアルミニウム又はその合金が好ましい。
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。薄膜がこの範囲よりも薄いと集電体として必要な強度が不足する場合がある。逆に、薄膜がこの範囲よりも厚いと取り扱い性が損なわれる場合がある。
また、集電体の表面に導電助剤が塗布されていることも、集電体と正極活物質層の電子接触抵抗を低下させる観点で好ましい。導電助剤としては、炭素や、金、白金、銀等の貴金属類が挙げられる。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の正極活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値が20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、最も好ましくは10以下であり、また、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。この範囲を下回ると、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
正極の製造は、常法によればよい。例えば、上記正極活物質に、上述した結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状の正極合剤とし、これを集電体に塗布し、乾燥した後にプレスして高密度化する方法が挙げられる。
上記高密度化は、ハンドプレス、ローラープレス等により行うことができる。正極活物質層の密度は、好ましくは1.5g/cm3以上、より好ましくは2g/cm3以上、さらに好ましくは2.2g/cm3以上であり、また、好ましくは5g/cm3以下、より好ましくは4.5g/cm3以下、さらに好ましくは4g/cm3以下の範囲である。この範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下し高出力が得られない場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し高出力が得られない場合がある。
本発明の電解液を用いる場合、高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、二次電池の外装の表面積に対する正極の電極面積の総和が面積比で15倍以上とすることが好ましく、さらに40倍以上とすることがより好ましい。電池外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合材層に対向する正極合材層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合材層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
正極板の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、また、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下である。
また、上記正極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
<負極>
負極は、負極活物質を含む負極合剤と、集電体とから構成される。
上記負極活物質としては、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物や人造黒鉛、天然黒鉛等のリチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料;酸化錫、酸化ケイ素等のリチウムを吸蔵・放出可能な金属酸化物材料;リチウム金属;種々のリチウム合金;リチウム含有金属複合酸化物材料等を挙げることができる。これらの負極活物質は、2種以上を混合して用いてもよい。
リチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料としては、種々の原料から得た易黒鉛性ピッチの高温処理によって製造された人造黒鉛もしくは精製天然黒鉛、又は、これらの黒鉛にピッチその他の有機物で表面処理を施した後炭化して得られるものが好ましく、天然黒鉛、人造黒鉛、人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400〜3200℃の範囲で1回以上熱処理した炭素質材料、負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる結晶性を有する炭素質からなり、かつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、負極活物質層が少なくとも2種以上の異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、から選ばれるものが、初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスがよくより好ましい。また、これらの炭素材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記の人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400〜3200℃の範囲で1回以上熱処理した炭素質材料としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ及びこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素剤、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−ヘキサン等の低分子有機溶剤に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる。
上記負極活物質として用いられる金属材料(但し、リチウムチタン複合酸化物を除く)としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム単体、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物のいずれであってもよく、特に制限されない。リチウム合金を形成する単体金属及び合金としては、13族及び14族の金属・半金属元素を含む材料であることが好ましく、より好ましくはアルミニウム、ケイ素及びスズ(以下、「特定金属元素」と略記)の単体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物である。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質としては、いずれか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、及びその化合物の酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も挙げられる。具体的には、例えばケイ素やスズでは、これらの元素と負極として作動しない金属との合金を用いることができる。例えば、スズの場合、スズとケイ素以外で負極として作用する金属と、さらに負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
具体的には、Si単体、SiB4、SiB6、Mg2Si、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu6Si、FeSi2、MnSi2、NbSi2、TaSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2、SiC、Si3N4、Si2N2O、SiOv(0<v≦2)、LiSiOあるいはスズ単体、SnSiO3、LiSnO、Mg2Sn、SnOw(0<w≦2)が挙げられる。
また、SiまたはSnを第1の構成元素とし、それに加えて第2、第3の構成元素を含む複合材料が挙げられる。第2の構成元素は、例えば、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム及びジルコニウムのうち少なくとも1種である。第3の構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウム及びリンのうち少なくとも1種である。
特に、高い電池容量および優れた電池特性が得られることから、上記金属材料として、ケイ素またはスズの単体(微量の不純物を含んでよい)、SiOv(0<v≦2)、SnOw(0≦w≦2)、Si−Co−C複合材料、Si−Ni−C複合材料、Sn−Co−C複合材料、Sn−Ni−C複合材料が好ましい。
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、特に制限されないが、高電流密度充放電特性の点からチタン及びリチウムを含有する材料が好ましく、より好ましくはチタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、さらにリチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記)が好ましい。すなわち、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、電解液電池用負極活物質に含有させて用いると、出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
上記リチウムチタン複合酸化物としては、一般式(O):
LixTiyMzO4 (O)
[一般式(O)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。]
で表される化合物であることが好ましい。
上記の一般式(O)で表わされる組成の中でも、
(i)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(ii)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(iii)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましい。
上記化合物の特に好ましい代表的な組成は、(i)ではLi4/3Ti5/3O4、(ii)ではLi1Ti2O4、(iii)ではLi4/5Ti11/5O4である。また、Z≠0の構造については、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3O4が好ましいものとして挙げられる。
上記負極合剤は、更に、結着剤、増粘剤、導電材を含むことが好ましい。
上記結着剤としては、上述した、正極に用いることができる結着剤と同様のものが挙げられる。負極活物質に対する結着剤の割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、0.6質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対する結着剤の割合が、上記範囲を上回ると、結着剤量が電池容量に寄与しない結着剤割合が増加して、電池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対する結着剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
上記増粘剤としては、上述した、正極に用いることができる増粘剤と同様のものが挙げられる。負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
負極の導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;グラファイト、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒としては、水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
負極用集電体の材質としては、銅、ニッケルまたはステンレス等が挙げられる。なかでも、薄膜に加工しやすいという点、及び、コストの点から銅が好ましい。
集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚すぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄すぎると取扱いが困難になることがある。
負極の製造は、常法によればよい。例えば、上記負極材料に、上述した結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、集電体に塗布し、乾燥した後にプレスして高密度化する方法が挙げられる。また、合金材料を用いる場合には、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法も用いられる。
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がさらに好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3以下がさらに好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
負極板の厚さは用いられる正極板に合わせて設計されるものであり、特に制限されないが、芯材の金属箔厚さを差し引いた合材層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは280μm以下、より好ましくは250μm以下が望ましい。
また、上記負極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
<セパレータ>
上記リチウムイオン二次電池は、更に、セパレータを備えることが好ましい。
上記セパレータの材質や形状は、電解液に安定であり、かつ、保液性に優れていれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。なかでも、本発明の電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。ポリプロピレン/ポリエチレン2層フィルム、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層フィルム等、これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なかでも、上記セパレータは、電解液の浸透性やシャットダウン効果が良好である点で、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等であることが好ましい。
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、8μm以上がさらに好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、電解液電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
さらに、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上がさらに好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下がさらに好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤として多孔層を形成させることが挙げられる。
<電池設計>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
集電構造は、特に制限されないが、本発明の電解液による高電流密度の充放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
電極群が上記の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。一枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が上記の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
外装ケースの材質は用いられる電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
上記リチウムイオン二次電池の形状は任意であり、例えば、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等の形状が挙げられる。なお、正極、負極、セパレータの形状及び構成は、それぞれの電池の形状に応じて変更して使用することができる。
なお、本発明の電解液を備える電気化学デバイス又は二次電池を備えるモジュールもまた、本発明の一つである。
本発明の電解液を用いた電気化学デバイスの例として、電気二重層キャパシタが挙げられる。
上記電気二重層キャパシタでは、正極及び負極の少なくとも一方は分極性電極であり、分極性電極及び非分極性電極としては特開平9−7896号公報に詳しく記載されている以下の電極が使用できる。
活性炭を主体とする分極性電極は、好ましくは大比表面積の不活性炭と電子伝導性を付与するカーボンブラック等の導電剤とを含むものである。分極性電極は種々の方法で形成することができる。例えば、活性炭粉末とカーボンブラックとフェノール系樹脂を混合し、プレス成形後不活性ガス雰囲気中及び水蒸気雰囲気中で焼成、賦活することにより、活性炭とカーボンブラックからなる分極性電極を形成できる。好ましくは、この分極性電極は集電体と導電性接着剤などで接合する。
また、活性炭粉末、カーボンブラック及び結合剤をアルコールの存在下で混練してシート状に成形し、乾燥して分極性電極とすることもできる。この結合剤には、例えばポリテトラフルオロエチレンが用いられる。また、活性炭粉末、カーボンブラック、結合剤及び溶媒を混合してスラリーとし、このスラリーを集電体の金属箔にコートし、乾燥して集電体と一体化された分極性電極とすることもできる。
活性炭を主体とする分極性電極を両極に用いて電気二重層キャパシタとしてもよいが、片側に非分極性電極を用いる構成、例えば、金属酸化物等の電池活物質を主体とする正極と、活性炭を主体とする分極性電極の負極とを組合せた構成、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とする負極、又はリチウム金属やリチウム合金の負極と、活性炭を主体とする分極性電極とを組合せた構成も可能である。
また、活性炭に代えて又は併用して、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛、ポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ケッチェンブラックなどの炭素質材料を用いてもよい。
非分極性電極としては、好ましくはリチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とするものとし、この炭素材料にリチウムイオンを吸蔵させたものを電極に使用する。この場合、電解質にはリチウム塩が使用される。この構成の電気二重層キャパシタによれば、さらに高い4Vを超える耐電圧が得られる。
電極の作製におけるスラリーの調製に用いる溶媒は結合剤を溶解するものが好ましく、結合剤の種類に合わせ、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、イソホロン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、フタル酸ジメチル、エタノール、メタノール、ブタノール又は水が適宜選択される。
分極性電極に用いる活性炭としては、フェノール樹脂系活性炭、やしがら系活性炭、石油コークス系活性炭などがある。これらのうち大きい容量を得られる点で石油コークス系活性炭又はフェノール樹脂系活性炭を使用するのが好ましい。また、活性炭の賦活処理法には、水蒸気賦活処理法、溶融KOH賦活処理法などがあり、より大きな容量が得られる点で溶融KOH賦活処理法による活性炭を使用するのが好ましい。
分極性電極に用いる好ましい導電剤としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、金属ファイバ、導電性酸化チタン、酸化ルテニウムがあげられる。分極性電極に使用するカーボンブラック等の導電剤の混合量は、良好な導電性(低い内部抵抗)を得るように、また多すぎると製品の容量が減るため、活性炭との合計量中1〜50質量%とするのが好ましい。
また、分極性電極に用いる活性炭としては、大容量で低内部抵抗の電気二重層キャパシタが得られるように、平均粒径が20μm以下で比表面積が1500〜3000m2/gの活性炭を使用するのが好ましい。また、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とする電極を構成するための好ましい炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化メソカーボン小球体、黒鉛化ウィスカ、気層成長炭素繊維、フルフリルアルコール樹脂の焼成品又はノボラック樹脂の焼成品があげられる。
集電体は化学的、電気化学的に耐食性のあるものであればよい。活性炭を主体とする分極性電極の集電体としては、ステンレス、アルミニウム、チタン又はタンタルが好ましく使用できる。これらのうち、ステンレス又はアルミニウムが、得られる電気二重層キャパシタの特性と価格の両面において特に好ましい材料である。リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料を主体とする電極の集電体としては、好ましくはステンレス、銅又はニッケルが使用される。
また、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料にあらかじめリチウムイオンを吸蔵させるには、(1)粉末状のリチウムを、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料に混ぜておく方法、(2)リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料と結合剤により形成された電極上にリチウム箔を載せ、電極と電気的に接触させた状態で、この電極をリチウム塩を溶かした電解液中に浸漬することによりリチウムをイオン化させ、リチウムイオンを炭素材料中に取り込ませる方法、(3)リチウムイオンを可逆的に吸蔵、離脱しうる炭素材料と結合剤により形成された電極をマイナス側に置き、リチウム金属をプラス側に置いてリチウム塩を電解質とする非水系電解液中に浸漬し、電流を流して電気化学的に炭素材料中にリチウムをイオン化した状態で取り込ませる方法がある。
電気二重層キャパシタとしては、巻回型電気二重層キャパシタ、ラミネート型電気二重層キャパシタ、コイン型電気二重層キャパシタなどが一般に知られており、本発明の電気二重層キャパシタもこれらの形式とすることができる。
例えば巻回型電気二重層キャパシタは、集電体と電極層の積層体(電極)からなる正極及び負極を、セパレータを介して巻回して巻回素子を作製し、この巻回素子をアルミニウム製などのケースに入れ、電解液、好ましくは非水系電解液を満たしたのち、ゴム製の封口体で封止して密封することにより組み立てられる。
セパレータとしては、従来公知の材料と構成のものが本発明においても使用できる。例えば、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン繊維やガラス繊維、セルロース繊維の不織布などがあげられる。
また、公知の方法により、電解液とセパレータを介してシート状の正極及び負極を積層したラミネート型電気二重層キャパシタや、ガスケットで固定して電解液とセパレータを介して正極及び負極をコイン型に構成したコイン型電気二重層キャパシタとすることもできる。
本発明の電解液用溶媒及び電解液を用いれば、サイクル特性に優れた二次電池や、その二次電池を用いたモジュールや、電気二重層キャパシタを好適に得ることができる。
本発明の環状カーボネートは、式(1−2):
(式中、Rf
3及びRf
4は、同一又は異なって、エーテル結合を有していてもよい炭素数2〜8のフッ素化アルキル基、又は、エーテル結合を有していてもよい炭素数2〜8のフッ素化アルコキシ基)で示される新規な化合物である。
本発明の環状カーボネート(式(1−2)で表される化合物)は、電解液用溶媒に好適に使用することができ、この電解液用溶媒を備える電気化学デバイスに適用すれば、サイクル特性に優れた電気化学デバイスを実現できる。
上記式(1−2)中、Rf
3及びRf
4としては、環状カーボネート(1−1)のRf
1及びRf
2として挙げたもののうち、炭素数が2〜8のフッ素化アルキル基又はフッ素化アルコキシ基が挙げられる。
上記式(1−1)及び(1−2)で示される環状カーボネートは、フッ素化オレフィンを酸化することでフッ素化ジオールを得て、得られたフッ素化ジオールとホスゲンまたは炭酸エステルとを反応させることにより得ることができる。
上記フッ素化ジオールは、ルテニウム触媒の存在下にフッ素化オレフィンを酸化してフッ素化ジオールを得る工程を含む製造方法により得ることができる。
上記フッ素化オレフィンは、目的とするフッ素化ジオールに応じて適宜決定すればよいが、例えば、下記式:
(式中、Rf
1及びRf
2は、同一又は異なって、エーテル結合を有していてもよいフッ素化アルキル基、又は、エーテル結合を有していてもよいフッ素化アルコキシ基)で示される化合物であることが好ましい。
上記式中、Rf
1及びRf
2は、環状カーボネート(1−1)と同じである。このフッ素化オレフィンからフッ素化ジオールを得て、該フッ素化ジオールとホスゲンまたは炭酸エステルとを反応させることで、式(1−1)で表される環状カーボネート(1−1)を製造することができる。
また、式(1−2)で表される環状カーボネートを製造するために用いるフッ素化ジオールを製造する場合、上記Rf
1及びRf
2を、式(1−2)のRf
3及びRf
4に変更したフッ素化オレフィンを使用すればよい。
上記ルテニウム触媒としては、特に限定されないが、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム(0)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、クロロ(シクロペンタジエニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジクロロ(ベンゼン)ルテニウム(II)ダイマー、ジクロロ(p−シメン)ルテニウム(II)ダイマー、ジクロロ(p−シメン)トリシクロヘキシルホスフィンルテニウム(II)、ジクロロジカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ルテニウム(III)アセチルアセトナート、塩化ルテニウム(III)、沃化ルテニウム(III)、酸化ルテニウム(II)、酸化ルテニウム(IV)等が挙げられる。中でも、塩化ルテニウム(III)、酸化ルテニウム(II)、酸化ルテニウム(IV)が好ましく、塩化ルテニウム(III)がより好ましい。
上記ルテニウム触媒の使用量は、ジオール化が進行する適切な量であればよいが、例えば、フッ素化オレフィン1モルに対して、通常、0.001〜2.0モルであり、0.001〜1モルであることが好ましく、0.001〜0.1モルであることがより好ましい。
上記酸化は、25℃以下の温度で行うことが好ましい。より好ましくは10℃以下の温度である。酸化する際の温度が高過ぎると、酸化開裂が進行してフッ素化ジオールが得られにくくなるおそれがある。上記酸化は、0℃を超える温度で行うことが好ましい。
上記酸化に要する時間は特に限定されないが、通常、0.1〜120分であり、1〜20分であることが好ましい。
上記フッ素化ジオールを得る工程では、ルテニウム触媒の使用量を低減するため、再酸化剤を使用してもよい。
上記再酸化剤としては、例えば、過ヨウ素酸ナトリウム、(メタ)過ヨウ素酸カリウム等の過ヨウ素酸塩や、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素等が挙げられる。
上記再酸化剤の使用量は、ジオール化が進行する適切な量であればよいが、例えば、フッ素化オレフィン1モルに対して、通常、0.1〜5.0モルであり、0.5〜2.0モルであることが好ましく、1.0〜1.5モルであることがより好ましい。上記再酸化剤の使用量が少な過ぎるとジオール化が進行しにくくなるおそれがあり、多過ぎると、酸化開裂が進行してフッ素化ジオールが得られにくくなるおそれがある。
上記酸化は、反応溶媒中で行うことが好ましい。上記反応溶媒としては、水、有機溶媒等が挙げられる。但し、有機溶媒としては酸化反応に影響を受けない溶媒を使用する。
上記有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、クロロホルム、四塩化炭素、アセトニトリルなどが挙げられ、好ましくはTHF、ジクロロメタン、アセトニトリルを挙げることができる。
反応溶媒を用いる場合、その使用量は、フッ素化オレフィンに対して、通常0.01〜10重量倍、好ましくは0.1〜2重量倍の範囲である。
上記フッ素化ジオールの製造方法は、反応溶媒として水を用いることが好ましい。すなわち、上記フッ素化ジオールの製造方法は、水及びルテニウム触媒の存在下にフッ素化オレフィンを酸化してフッ素化ジオールを得る工程を含むことが好ましい。
また、上記フッ素化ジオールを得る工程は、水相と油相(上記有機溶媒等)とから構成される二相系中で、ルテニウム触媒の存在下にフッ素化オレフィンを酸化してフッ素化ジオールを得る工程であることが好ましい。二相系中で反応が行われることにより、反応が速やかに進行する。水相と油相との体積の割合は通常1:1000〜1000:1、好ましくは1:50〜50:1であるが特にこれに限るものではない。
上記フッ素化ジオールを得る工程は、フッ素化オレフィンを酸化した後、チオ硫酸ナトリウム水溶液等の還元剤を加えて、反応を停止させてもよい。
上記フッ素化ジオールの製造方法は、フッ素化ジオールを得る工程の後に、得られたフッ素化ジオールを回収する工程を含むものであってもよい。
上記フッ素化ジオールの製造方法によって、フッ素化ジオールを得ることができる。得られるフッ素化ジオールとしては、例えば、下記式:
(式中、Rf
1及びRf
2は、同一又は異なって、エーテル結合を有していてもよいフッ素化アルキル基、又は、エーテル結合を有していてもよいフッ素化アルコキシ基)で示される化合物が挙げられる。
上記式(1−1)及び(1−2)で示される環状カーボネートは、フッ素化ジオールとホスゲンまたは炭酸エステルとを反応させてフッ素化環状カーボネートを得る工程を含む製造方法により得ることができる。
上記フッ素化ジオールは、目的とするフッ素化環状カーボネートに応じて適宜決定すればよいが、上述したフッ素化オレフィンを酸化して得られるフッ素化ジオールであることが好ましい。
上記ホスゲンとしては、モノホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン等が挙げられ、中でもトリホスゲンが好ましい。
上記フッ素化ジオールとホスゲンとの反応は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の求核性の触媒の存在下で行うことが好ましい。
求核性の触媒の使用量は、例えば、フッ素化ジオール1モルに対して、通常、1〜50モルであり、2〜10モルであることが好ましく、3〜6モルであることがより好ましい。
上記フッ素化ジオールとホスゲンとの反応は、−100〜25℃で行うことが好ましい。より好ましくは−80〜25℃である。
上記フッ素化ジオールとホスゲンとの反応に要する時間は特に限定されないが、通常、0.1〜24時間であり、1〜12時間であることが好ましい。
上記フッ素化ジオールとホスゲンとの反応は、有機溶媒中で行うことが好ましく、有機溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。
上記フッ素化ジオールとホスゲンとの反応は、有機溶媒中で撹拌しながら行うことが好ましい。
上記炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が挙げられ、中でもジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましい。
上記フッ素化ジオールと炭酸エステルとの反応は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、t−ブトキシカリウム等の塩基性の触媒の存在下で行うことが好ましい。
塩基性の触媒の使用量は、例えば、フッ素化ジオール1モルに対して、通常、1.0〜2.0モルであり、1.0〜1.5モルであることが好ましく、1.0〜1.2モルであることがより好ましい。
上記フッ素化環状カーボネートの製造方法によって、式(1−1)及び式(1−2)で表される環状カーボネートを製造することができる。
上記フッ素化環状カーボネートの製造方法は、上述したルテニウム触媒の存在下にフッ素化オレフィンを酸化してフッ素化ジオールを得る工程、及び、フッ素化ジオールとホスゲンまたは炭酸エステルとを反応させてフッ素化環状カーボネートを得る工程、を含むものであることが好ましい。
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例で使用した化合物は以下の通りである。
添加剤成分(1−1)
(1−1−1):4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネート
(1−1−2):4−ノナフルオロブチルエチレンカーボネート
(1−1−3):ビニレンカーボネート
溶媒成分(1−2)
(1−2−1):エチレンカーボネート(EC)
溶媒成分(1−3)
(1−3−1):エチルメチルカーボネート(EMC)
電解質成分(2)
(2−1):LiPF6
また、NMRの測定は次のように行った。
(1)NMR:BRUKER社製のAC−300を使用。
19F−NMR:
測定条件:376MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
1H−NMR:
測定条件:400MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
13C−NMR:400MHz
測定条件:400MHz(重クロロホルム=77ppm)
実施合成例1(4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネートの合成)
ガラス製1Lの4口フラスコにスターラーチップを投入し、滴下漏斗、温度計を取り付け反応容器とした。反応容器に水269.4mLとアセトニトリル53.9mLを入れ、次に過ヨウ素酸ナトリウム24.2gを溶解させた。反応容器を0℃に冷却し、塩化ルテニウム(III)1.1gを加えて5分間撹拌したのち、トランス−1,2−ビス(ノナフルオロブチル)エチレン25gを滴下した。滴下終了後、氷冷下で10分間撹拌したのち、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液112.4mLを加えて反応をクエンチした。得られた反応溶液をセライトろ過し、酢酸エチル53.9mLで抽出した。得られた有機層をエバポレーターで濃縮し、1,2−ビス(ノナフルオロブチル)エタン−1,2−ジオール粗体25.8gを得た。
ガラス製500mLの4口フラスコにスターラーチップを投入し、滴下漏斗、温度計を取り付け反応容器とした。反応容器に塩化メチレン53.9mLを入れ、1,2−ビス(ノナフルオロブチル)エタン−1,2−ジオール粗体25.8gとトリホスゲン7.99gを溶解させた。−78℃に冷却した後、ピリジン32.0mLを滴下した。ピリジンの滴下終了後、緩やかに室温まで昇温させながら16時間撹拌したのち、飽和塩化アンモニウム水溶液17.3mLを加えて反応をクエンチした。得られた反応溶液を1N塩酸17.3mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液17.3mL、飽和食塩水17.3mLでそれぞれ洗浄し、得られた有機層をエバポレーターで濃縮することで4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネート粗体を得た(オレフィンからの総反応
19F−NMR収率82.9%)。得られた粗体を昇華生成し、目的とする4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネートを白色固体として得た(総単離収率77.1%)。得られた白色個体をNMRにより分析した結果は以下の通り。
19F−NMR(CDCl
3:CFCl
3標準):δ−80.89ppm(t、J=10.53Hz,6F)、δ−122.89ppm(dddd、J=417.45Hz, 304.62Hz, 17.49Hz, 17.49Hz, 4F)、δ−125.89ppm(dd、J=1901.27Hz, 292.03Hz, 4F)、δ−126.15ppm(dddt、J=443.77Hz, 297.10Hz、8.65Hz, 6.77Hz, 4F)
1H−NMR(CDCl
3:TMS標準):δ5.28ppm(d、J=18.39Hz、2H)
13C−NMR(CDCl
3:標準)δ70.75ppm(dd、J=99.72Hz, 70.65Hz)、δ109.79〜110.45(m)、δ112.738ppm(td、J=130.70Hz, 35.97Hz)、δ115.51ppm(dd、J=279.78Hz, 119.91Hz)、118.52(t、J=133.90Hz)、δ149.55ppm(s)
実施例1
溶媒成分(1−2)としてエチレンカーボネート(EC)と、溶媒成分(1−3)としてエチルメチルカーボネート(EMC)とを、EC/EMCが30/70体積%比となるように混合した。得られた混合物に、添加剤成分(1−1)として4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネートを、上記混合物:4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネート=100:1.0(重量比)となるように添加して電解液用溶媒を得た。この電解液用溶媒にさらに電解質塩としてLiPF6を1.0モル/リットル(1.0M)の濃度となるように加え、25℃にて充分に撹拌して電解液を調製した。
実施例2
ECとEMCの混合物:4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネート=100:0.05(重量比)となるように、4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネートを添加したこと以外は、実施例1と同様の条件で電解液用溶媒及び電解液を調製した。
実施例3
ECとEMCの混合物:4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネート=100:2.0(重量比)となるように、4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネートを添加したこと以外は、実施例1と同様の条件で電解液用溶媒及び電解液を調製した。
実施例4
ECとEMCの混合物:4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネート=100:5.0(重量比)となるように、4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネートを添加したこと以外は、実施例1と同様の条件で電解液用溶媒及び電解液を調製した。
実施例5
溶媒成分(1−2)としてエチレンカーボネート、溶媒成分(1−3)としてエチルメチルカーボネートを30/70体積%比となるように混合した。この混合物に、ビニレンカーボネート(VC)と添加剤成分(1−1)として4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネートを、ECとEMCの混合物:VC:4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネート=100:1.0:0.5(重量比)となるように添加して電解液用溶媒を得て、この電解液用溶媒にさらに電解質塩としてLiPF6を1.0モル/リットルの濃度となるように加え、25℃にて充分に撹拌して電解液を調製した。
実施例6
ECとEMCの混合物:4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネート=100:0.01(重量比)となるように、4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネートの添加量を添加したこと以外は、実施例1と同様の条件で電解液用溶媒及び電解液を調製した。
実施例7
ECとEMCの混合物:4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネート=100:0.5(重量比)となるように、4,5−ビス(ノナフルオロブチル)エチレンカーボネートの添加量を添加したこと以外は、実施例1と同様の条件で電解液用溶媒及び電解液を調製した。
比較例1
溶媒成分(1−2)としてエチレンカーボネート、溶媒成分(1−3)としてエチルメチルカーボネートを30/70体積%比となるように混合して電解液用溶媒を得て、この電解液用溶媒にさらに電解質塩としてLiPF6を1.0モル/リットルの濃度となるように加え、25℃にて充分に撹拌し電解液を調製した。
比較例2
溶媒成分(1−2)としてエチレンカーボネート、溶媒成分(1−3)としてエチルメチルカーボネートを30/70体積%比となるように混合した。この混合物に、添加剤成分(1−1)として4−ノナフルオロブチルエチレンカーボネートを、ECとEMCの混合物:4−ノナフルオロブチルエチレンカーボネート=100:1.0(重量比)となるように添加して電解液用溶媒を得た。この電解液用溶媒にさらに電解質塩としてLiPF6を1.0モル/リットルの濃度となるように加え、25℃にて充分に撹拌し電解液を調製した。
(コイン型電池の作製)
LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2とカーボンブラックとポリフッ化ビニリデン(呉羽化学(株)製、商品名:KF−7200)を92/3/5(質量比)で混合して得られた正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーを準備した。
アルミ集電体上に、得られた正極合剤スラリーを均一に塗布し、乾燥して正極合剤層(厚さ50μm)を形成し、その後、ローラプレス機により圧縮成形して、正極積層体を製造した。正極積層体を打ち抜き機で直径1.6mmの大きさに打ち抜き、円状の正極を作製した。
別途、人造黒鉛粉末に、蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴムを固形分で6質量%となるように加え、ディスパーザーで混合してスラリー状としたものを負極集電体(厚さ10μmの銅箔)上に均一に塗布し、乾燥し、負極合剤層を形成した。その後、ローラプレス機により圧縮成形し、打ち抜き機で直径1.6mmの大きさに打ち抜き円状の負極を作製した。
上記の円状の正極を厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルム(セパレータ)を介して正極と負極を対向させ、実施例1〜5及び比較例1〜2で得られた電解液を注入し、電解液がセパレータ等に充分に浸透した後、封止し予備充電、エージングを行い、コイン型のリチウムイオン二次電池を作製した。
(電池特性の測定)
得られたコイン型リチウムイオン二次電池について、つぎの要領でサイクル特性を調べた。
(充放電条件)
充電:0.5C、4.2Vにて充電電流が1/10Cになるまでを保持(CC・CV充電)
放電:0.5C 3.0Vcut(CC放電)
(サイクル特性)
サイクル特性については、温度を60℃に設定し上記の充放電条件(1.0Cで所定の電
圧にて充電電流が1/10Cになるまで充電し1C相当の電流で3.0Vまで放電する)
で行う充放電サイクルを1サイクルとし、5サイクル後の放電容量と200サイクル後の放電容量を測定する。サイクル特性は、つぎの計算式で求められた値を容量維持率の値とする。その結果を表1〜3に示す。
容量維持率(%)=100サイクル放電容量(mAh)/5サイクル放電容量(mAh)×100