(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態の電源監視装置の構成の概要を示したものである。本実施形態の電源監視装置は、制御信号受信手段1と、シーケンス情報保存手段2と、比較手段3を備えている。
制御信号受信手段1は、電圧制御装置が出力電圧の制御に用いている所定の制御信号を、電圧制御装置から受信する。シーケンス情報保存手段2は、電圧制御装置が正常に動作しているときの所定の制御信号のシーケンス情報を、リファレンスデータとしてあらかじめ保存している。比較手段3は、制御信号受信手段1が受信した所定の制御信号のシーケンスとリファレンスデータを比較し、所定の制御信号の送信元の電圧制御装置の異常の有無を判断する。
本実施形態の電源監視装置では、比較手段3が、制御信号受信手段1によって電圧制御装置から受信された所定の制御信号のシーケンスと、シーケンス情報保存手段2にあらかじめ保存されている正常時のシーケンス情報との比較を行っている。比較手段3は、電圧制御装置の実際の動作時の所定の制御信号のシーケンスと、あらかじめ保存されている正常時のシーケンス情報、すなわち、リファレンスデータを比較することにより、電圧制御装置の異常の有無を判断している。このように、電源監視装置の所定の制御信号のシーケンスを基に異常の有無を判断することにより、実際の出力電圧の測定を行わなくとも異常が生じている電源監視装置を検出することが可能となる。そのため、電源監視装置の異常を検出する目的で出力電圧の測定を行う装置を新たに設ける必要はない。その結果、本実施形態の電源監視装置は、装置構成を簡略化しつつ異常を容易に検出することが可能となる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図を参照して詳細に説明する。図2は、本実施形態の電源システムの構成の概要を示したものである。本実施形態の電源システムは、電源監視部10と、VR(Voltage Regulator)回路20と、電源部30と、クロック生成部40を備えている。本実施形態の電源システムでは、電源監視部10、VR回路20およびクロック生成部40は、同一の基板上に備えられている。電源部30は、電源監視部10と同一の基板上に備えられていてもよく、また、独立して備えられていてもよい。また、電源部30の一部の機能が、電源監視部10と同一の基板上に備えられている構成としてもよい。以下の説明では、VR回路20が複数、備えられている例を説明するが、VR回路20が1つの場合でも、異常の検知を行うことができる。
電源監視部10は、信号入力部11と、サンプリング部12と、サンプリングデータ記憶部13と、データ比較部14と、シーケンスデータ記憶部15と、比較結果記憶部16を備えている。
信号入力部11は、VR回路20から送られてくる制御信号S1を受信する機能を有する。信号入力部11は、例えば、GPIO(General Purpose Input / Output)ピンを用いて構成することができる。制御信号S1は、VR回路20が出力電圧を一定に保つために回路を制御する際にVR回路20の内部で用いている信号を出力したものである。信号入力部11は、制御信号S1を受信すると、受信信号S2としてサンプリング部12に送る。制御信号S1と受信信号S2に含まれる情報は同様である。また、1つのVR回路20から信号入力部11に複数の制御信号がそれぞれ別に入力されてもよい。 サンプリング部12は、信号入力部11から入力される受信信号S2をサンプリングする機能を有する。すなわち、受信信号S2とVR回路20から送られてくる制御信号S1は同じ内容のため、サンプリング部12は、制御信号S1を直接、サンプリングした場合と同じ内容のデータを生成する。サンプリング部12は、クロック生成部40から入力される所定の周波数のクロックに基づいて、入力された信号のサンプリングを行う。信号入力部11およびサンプリング部12は、第1の実施形態の制御信号受信手段1に相当する。また、1つのVR回路20から複数の制御信号が信号入力部11にそれぞれ入力される場合は、サンプリング部12においてそれぞれ制御信号のサンプリングを行う構成とすることもできる。
サンプリングデータ記憶部13は、サンプリング部12でサンプリングされたデータを保存する機能を有する。サンプリングデータ記憶部13は、サンプリング部12からサンプリング信号S3として送られてくるサンプリングされたデータを、制御信号S1の送信元のVR回路20の識別子の情報と関連づけてVR回路20ごとに入力された順に保存する。VR回路20の識別子の情報は、VR回路20を個々に識別できるものであれば、他の情報を用いてもよい。例えば、VR回路20の識別子の情報に代えて、制御信号S1が入力される信号入力部11の入力ポートの番号を用いることもできる。また、サンプリングデータ記憶部13は、VR回路20ごとに所定の時間のサンプリングデータを保存すると、サンプリングデータをサンプリングデータ信号S4としてデータ比較部14に送る。サンプリングデータ信号S4は、VR回路20の識別子の情報と所定の時間分のサンプリングデータとを含む信号として構成されている。
データ比較部14は、サンプリング部12でサンプリングされたデータの異常の有無を判断する機能を有する。データ比較部14は、サンプリングデータ記憶部13からサンプリングデータ信号S4として送られてくるデータと、シーケンスデータ記憶部15に保存されたデータを比較する。データ比較部14は、サンプリングデータ記憶部13から送られてくるデータと、シーケンスデータ記憶部15に保存されているシーケンスデータが異なっているときに、制御信号S1の送信元のVR回路20に異常があると判断する。データ比較部14は、異常があると判断すると、異常と判断されたサンプリングデータの基となった制御信号S1の送信元のVR回路20の識別子の情報と異常が生じている情報を、比較結果信号S5として比較結果記憶部16に保存する。また、データ比較部14は、第1の実施形態の比較手段3に相当する。
起動の際や所定の動作の開始する際に、VR回路20が出力電圧の制御に用いる制御信号のシーケンスは、VR回路20が正常動作をしているときは、毎回、同じシーケンスとなる。制御信号のシーケンス、すなわち、所定の信号がHigh状態やLow状態となる順番は、正常時の起動等から所定の期間において、VR回路20ごとに毎回、同じになる。一方で、VR回路20またはその出力先等に異常が生じているときは、電源としての出力電圧が正常時とは異なる挙動を示すので、出力電圧を調整する制御信号は正常時とは異なるシーケンスとなり得る。よって、データ比較部14は、所定のタイミングを起点として、その起点からの制御信号の実際のシーケンスを正常時のシーケンスと比較し、異なっているときにVR回路20に異常が生じていると判断することができる。
シーケンスデータ記憶部15は、データ比較部14がサンプリングデータの異常の有無を判断する際に、判断基準として用いるデータであるリファレンスデータを保存する機能を有する。シーケンスデータ記憶部15には、VR回路20が正常に動作しているときの制御信号S1のシーケンスのデータがリファレンスデータとして保存されている。正常に動作しているときのシーケンスのデータはVR回路20ごとに保存されている。正常時のシーケンスが同一のVR回路20が、複数、備えられている場合は、同一のシーケンスのVR回路20で、共通するシーケンスのデータを共有する方法とすることもできる。また、シーケンスデータ記憶部15は、第1の実施形態のシーケンス情報保存手段2に相当する。
比較結果記憶部16は、データ比較部14が行ったVR回路20の異常の有無の判断結果を保存する機能を有する。比較結果記憶部16は、データ比較部14から比較結果信号S5として受け取った情報を基に、異常の有無の判断が行われた日時、VR回路20の識別子の情報および判断結果を関連づけて保存している。本実施形態では、比較結果記憶部16は、比較結果信号S5を受け取った日時を異常の有無の判断が行われた日時として比較結果の情報の保存を行う。本実施形態の比較結果記憶部16は、内部に日時を計測する機能を備えている。日時の情報は、外部から入力される構成としてもよい。また、日時に代えて、異常の有無の確認が行われた順番が判断結果とともに保存される方法としてもよい。また、比較結果記憶部16は、異常のあった場合のみ判断結果を保存する構成とすることもできる。
VR回路20は、電源部30から供給される電源を元に、出力電圧が所定の電圧値となるように調整し、出力電圧を一定にして出力する電圧制御装置としての機能を有する。本実施形態のVR回路20は、電圧レギュレータとして構成されている。図3は、VR回路20の構成の例を示したものである。図3に示したVR回路20は、電圧変換部21と、電圧制御部22と、制御信号出力部23を備えている。
電圧変換部21は、電源部30から電源として入力される電気信号を所定の電圧値に変換し、出力電圧が一定になるように出力する。電圧制御部22は、電圧変換部21の出力電圧を監視し、出力が一定になるように電圧変換部21を制御する。また、電圧制御部22は、電圧変換部21に送る制御信号を制御信号出力部23に送る。制御信号出力部23は、電圧制御部22から入力された制御信号を制御信号S1として電源監視部10に送る。制御信号の電圧値は、所定の電圧値としてあらかじめ設定されている。すなわち、制御信号が示すLowの状態およびHighの状態は、それぞれ所定の電圧値の信号として設定されている。また、VR回路20からの電源としての出力電圧は、電源の供給を行う装置の仕様に応じてそれぞれ設定されている。VR回路20から出力された電力は、半導体装置等に電源として供給される。
VR回路20から電源監視部10に送る制御信号S1としては、例えば、PSON(Power Supply ON)信号とPWRGD(Power Good)信号が用いられる。PSON信号は、電源の出力が行われているときはLowの信号、電源の出力が行われていないときはHighの信号として出力される。PWRGD信号は、VR回路20からの出力が所定の出力より大きい場合はHighの信号、所定の出力電圧よりも小さいときはLowの信号として出力される。所定の出力電圧は、VR回路20の設計に応じて設定されている。
電源監視部10のデータ比較部14は、PSON信号が所定の変化をした時点から所定の時間のPWRGD信号のシーケンスを、シーケンスデータ記憶部15にリファレンスとして保存されたシーケンスデータと比較する。PSON信号の所定の変化とは、例えば、PSON信号がHigh状態からLow状態への変化することをいう。PSON信号が変化した時点から所定の時間のPWRGD信号のシーケンスが、正常時を基準としたリファレンスのシーケンスデータと異なるときに、データ比較部14は、制御信号に対応するVR回路20に異常が生じていると判断する。
電源部30は、各VR回路20に電力を供給する電源としての機能を有する。電源部30は、外部からの供給される電力を元に、各VR回路20に電力を供給する。
クロック生成部40は、所定の周波数のクロックを生成する機能を有する。クロック生成部40は、所定の周波数のクロック信号を生成し、サンプリング部12にクロック信号を送る。所定の周波数は、サンプリング部12においてVR回路20から送られてくる制御信号S1のサンプリングが行われる際のサンプリングの周期に応じて設定されている。
本実施形態の電源システムの動作について説明する。図4は、本実施形態の電源システムにおいて、VR回路20の異常の有無の監視が行われる際の動作フローの概要を示したものである。
VR回路20は、電圧を制御する際の制御信号S1を電源監視部10に出力する。VR回路20から出力された制御信号S1は、電源監視部10の信号入力部11に入力される(ステップ101)。信号入力部11に入力された制御信号S1は受信信号S2として、サンプリング部12に送られる。サンプリング部12に入力された受信信号S2は、サンプリング部12でサンプリングされる(ステップ102)。サンプリングは、クロック生成部40から入力される所定の周波数のクロックの周期に基づいて行われる。サンプリングされた制御信号S1のデータは、サンプリングデータ記憶部13にサンプリング信号S3として送られる。
サンプリングされた受信信号S2のデータがサンプリシング信号S3として入力されると、サンプリングデータ記憶部13は受け取ったデータを保存する(ステップ103)。データの保存が行われた際に所定の時間のサンプリングデータが保存されていない場合は(ステップ104でNo)、所定の時間のサンプリングデータが保存されるまでステップ101からの動作が継続される。また、所定の時間の開始点は、例えば、入力されたPSON信号の変化点として設定することができる。
所定の時間のサンプリングデータが保存されると(ステップ104でYes)、サンプリングデータ記憶部13は所定の時間分のサンプリングデータを、データ比較部14にサンプリングデータ信号S4として送る。データ比較部14は、サンプリングデータをサンプリングデータ信号S4として受け取ると、受け取ったデータとシーケンスデータ記憶部15に保存されたシーケンスデータを比較する(ステップ105)。
本実施形態では、データ比較部14は、PSON信号がLow状態に変化してから所定の時間のPWRGD信号のシーケンスを、シーケンスデータ記憶部15に保存されたシーケンスデータと比較し、VR回路20の異常の有無を判断する。本実施形態ではシーケンスデータ記憶部15に保存されたシーケンスデータをリファレンスデータと呼ぶ。データ比較部14は、PSON信号が変化してから所定の時間のPWRGD信号のシーケンスをリファレンスデータと比較し、リファレンスデータと実際のシーケンスが異なるときに信号が対応するVR回路20に異常が生じていると判断する。
サンプリングデータとリファレンスデータが一致するとき(ステップ106でYes)、データ比較部14は、サンプリングデータに対応する制御信号S1の送信元のVR回路20が正常であると判断する。VR回路20が正常であると判断すると、VR回路20が正常であることを示す情報とVR回路20の識別子の情報を比較結果記憶部16に、比較結果信号S5として送る。比較結果記憶部16は、VR回路20が正常であることを示す比較結果信号S5を受け取ると、信号を受け取った日時の情報と、VR回路20の識別子の情報と、正常であることを示す情報とを関連づけて保存する(ステップ107)。
サンプリングデータとリファレンスデータが一致しないとき(ステップ106でNo)、データ比較部14は、サンプリングデータに対応するVR回路20に異常が生じていると判断する。VR回路20に異常が生じていると判断すると、VR回路20に異常が生じていることを示す情報とVR回路20の識別子の情報を比較結果記憶部16に比較結果信号S5として送る。比較結果記憶部16は、異常が生じていることを示す比較結果信号S5として受け取ると、信号を受け取った日時の情報と、VR回路20の識別子の情報と、異常が生じていることを示す情報とを関連づけて保存する(ステップ108)。
作業者は、情報端末装置等で比較結果記憶部16に保存されているVR回路20の異常の有無の判断結果を参照することで、異常の発生したVR回路20の識別子の情報から異常が発生したVR回路20を特定することができる。また、データ比較部14で、VR回路20に異常が生じていると判断されたときに、電源監視部10から異常を示す信号がコンピュータシステム等に出力される構成とすることもできる。また、VR回路20に異常が生じていると判断されたときに、音や表示などで作業者に通知する構成とすることもできる。
本実施形態の電源システムにおいてVR回路20から電源監視部10に送られる制御信号の例について図5、図6および図7を参照して説明する。図5は、正常時の各信号の例を示したものである。図6は、電源部30に異常が生じた際の各信号の例を示したものである。また、図7は一部のVR回路20に異常が生じた場合の各信号の例を示したものである。
図5、図6および図7は、VR回路20としてVR回路AおよびVR回路Bの2つのVR回路を用いた場合の各信号の例を示している。また、図7は、VR回路Bに異常が生じた場合の例を示している。図5、図6および図7では、最上段から順に、PSON信号、電源部の出力電圧、電源部のPWRGD信号、VR回路AのPWRGD信号、VR回路BのPWRGD信号および電源システム全体のPWRGD信号の例が示されている。図5、図6および図7の横軸は、時間を示している。各グラフは、信号の波形を模式的に表したものであり、縦方向の段差により信号のHigh状態やLow状態を示している。直線状態であるとき、各グラフは信号に変化がないことを示している。
正常時の各信号の例を示す図5では、PSON信号がLow状態、すなわち、電源がONの状態になると、ほぼ同時に電源部30からの出力が開始されている。また、PSON信号がLow状態となった後、VR回路AおよびVR回路BのPWRGD信号が順次、High状態となる。電源部30のPWRGD信号および電源システム全体のPWRGD信号も、正常であることを示すHigh状態を順次、示している。
シーケンスデータ記憶部15には、正常時のリファレンスデータとして図5のようなPSON信号、並びに、VR回路AおよびVR回路BのPWRGD信号のシーケンスデータが保存されている。一方で、電源部30に異常が生じている図6では、PSON信号がLow状態となり、電源がONの状態になっても、各VR回路は正常な出力を行えないため各PWRGD信号は、Low状態のままとなる。図6のような状態のシーケンスの場合、シーケンスデータ記憶部15に保存されているリファレンスと異なるので、データ比較部14は、異常が生じていると判断する。図6の例の場合は、電源システム全体のPWRGD信号がLowの状態のままであるので、電源システム全体のPWRGD信号を電源監視部10に入力する構成とすることにより、電源部30に異常が生じていると判断することができる。
また、VR回路Bで異常が生じた場合を示す図7では、PSON信号がLow状態となった後、VR回路AのPWRGD信号は図5と同様に正常時の挙動を示すが、VR回路BのPWRGD信号はHigh状態からすぐにLow状態に戻っている。VR回路BのPWRGD信号は、正常時とは異なるシーケンスとなるので、データ比較部14は、VR回路Bに異常が生じていると判断する。
本実施形態の電源システムにおいて、電源監視部10は、VR回路20から出力電圧の制御に用いる制御信号を受信し、受信した制御信号のシーケンスとあらかじめ保存している正常時のシーケンスとの比較を行っている。電源監視部10は、受信した制御信号のシーケンスと、リファレンスとして保存されている正常時のシーケンス情報が異なるときに、制御信号の送信元のVR回路20に異常が生じていると判断する。
例えば、異常の有無を判断するための制御信号としてPSON信号のような第1の信号と、PWRGDのような第2の信号を用いた場合に、第1の信号の所定の変化から、所定の時間の第2の信号のシーケンスを基に異常の有無を判断することができる。このような場合において、第1の信号には起動や所定の動作の開始を示す制御信号が用いられる。また、第2の信号としては、VR回路20の電源としての出力電圧を制御する信号または出力状態を示す信号が用いられる。第1の信号と第2の信号はそれぞれ独立した信号として用いるのではなく、1つの制御信号の中に第1の信号と第2の信号を含む構成とすることもできる。また、各VR回路20から第1の信号が電源監視部10に入力される構成に代えて、装置の起動等に係る他の素子から電源監視部10に第1の信号が入力される構成とすることもできる。このように、制御信号から異常の有無を判断することにより、本実施形態の電源システムの電源監視装置10は、異常の生じたVR回路20を特定することができる。
また、本実施形態の電源監視部10は、VR回路20が出力電圧の制御に用いている制御信号を基に異常の有無を判断している。制御信号は、信号のレベルが所定の電圧値に設定されているため、信号のレベルを測定しなくとも信号のONとOFF状態を判別し信号のシーケンスの情報を得ることができる。そのため、本実施形態の電源システムでは、電源監視部10が異常の有無を判断するための出力電圧の測定部をVR回路20ごとに備える必要がない。その結果、本実施形態の電源システムは、システムや装置の構成を簡略化しつつ異常の生じている箇所を容易に特定することが可能となる。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について図を参照して詳細に説明する。図8は、本実施形態の電源システムの構成の概要を示したものである。第2の実施形態では、あらかじめ保存されているシーケンスデータをリファレンスとして制御信号の異常の有無の判断を行っている。本実施形態の電源システムは、シーケンスデータが保存されていないときなどに、制御信号をサンプリングしたデータを基にリファレンスとして用いるシーケンスデータを生成する機能をさらに有する。
本実施形態の電源システムは、電源監視部50と、VR回路20と、電源部30と、クロック生成部40を備えている。VR回路20、電源部30およびクロック生成部40の構成と機能は第2の実施形態の同名称の部位と同様である。
電源監視部50は、信号入力部51と、サンプリング部52と、サンプリングデータ記憶部53と、データ比較部54と、シーケンスデータ記憶部55と、比較結果記憶部56と、シーケンスデータ生成部57を備えている。信号入力部51、サンプリング部52、サンプリングデータ記憶部53および比較結果記憶部56の構成と機能は第2の実施形態の同名称の部位と同様である。また、制御信号S11、受信信号S12、サンプリング信号S13、サンプリングデータ信号S14および比較結果信号S15は、第2の実施形態の同名称の信号と同様の構成および機能を有する信号である。
データ比較部54は、第2の実施形態のデータ比較部と同様の機能に加え、シーケンスデータ記憶部55にシーケンスデータが無い場合に、シーケンスデータ生成部57にサンプリングしたデータを送る機能を有する。データ比較部54は、シーケンスデータ記憶部55にサンプリングデータに対応するVR回路20のシーケンスデータが保存されていない場合に、サンプリングデータをシーケンスデータ生成部57に生成用データ信号S16として送る。生成用データ信号S16は、サンプリングデータとサンプリングデータに対応する制御信号S11の送信元のVR回路20の識別子の情報で構成されている。また、データ比較部54は、シーケンスデータ記憶部55にシーケンスデータが保存されていない場合に、VR回路20の識別子の情報と評価を行っていない情報を比較結果記憶部56に、比較結果信号S15として送る
シーケンスデータ記憶部55は、第2の実施形態のシーケンスデータ記憶部と同様の機能に加え、シーケンスデータ生成部57からシーケンスデータ信号S17として送られてくるシーケンスデータを保存する機能を有する。シーケンスデータ信号S17は、シーケンスデータ生成部57が生成したシーケンスデータと対応するVR回路20の識別子の情報によって構成されている。シーケンスデータ記憶部55は、シーケンスデータ生成部57からシーケンスデータ信号S17が送られてきたときに、シーケンスデータと対応するVR回路20の識別子の情報を関連づけて保存する。
比較結果記憶部56は、第2の実施形態の比較結果記憶部と同様の機能に加え、データ比較部54から送られてくる、評価を行っていない情報とVR回路20の識別子の情報とを保存する機能を有する。比較結果記憶部56は、評価を行っていない情報を受け取ったときは、第2の実施形態において評価結果の情報を受け取ったときと同様に受け取った情報を保存する。すなわち、比較結果記憶部56は、データ比較部54から比較結果信号S15を受け取った日時、VR回路20の識別子の情報および評価を行っていない情報を関連づけて保存する。
シーケンスデータ生成部57は、データ比較部54から受け取ったサンプリングデータを基に、制御信号S11の異常の有無を判断する際にリファレンスデータとして用いるシーケンスデータを生成する機能を有する。シーケンスデータ生成部57は、データ比較部54からサンプリングデータを生成用データ信号S16として受け取ると、VR回路20の識別子の情報と関連づけて保存する。VR回路20ごとに所定の数のサンプリングデータを受け取ると、シーケンスデータ生成部57は、同一のVR回路20のサンプリングデータを比較する。比較した結果、一致した場合は、シーケンスデータ生成部57はサンプリングデータをそのVR回路20の異常の有無の判定の際にリファレンスデータとして用いるシーケンスデータとして生成する。シーケンスデータを生成すると。シーケンスデータ生成部57は、シーケンスデータと対応するVR回路20の識別子の情報をシーケンスデータ記憶部55にシーケンスデータ信号S17として送る。
本実施形態の電源システムの動作について説明する。図9は、本実施形態の電源システムにおいて、VR回路20の異常の有無の監視が行われる際の動作フローの概要を示したものである。また、図10は、本実施形態の電源システムにおいて、VR回路20の異常を判断する際にリファレンスデータとして用いるシーケンスデータを生成する際の動作フローの概要を示したものである。本実施形態の電源システムにおいて、VR回路20の異常の有無の判断に関する動作は、第2の実施形態の電源システムの場合と同様である。本実施形態の電源システムは、主としてシーケンスデータの生成に関する動作の部分で第2の実施形態の電源システムとは異なる動作を行う。
VR回路20は、電圧を制御する際の制御信号S11を電源監視部50に出力する。VR回路20から出力された制御信号S11は、電源監視部50の信号入力部51に入力される(ステップ111)。信号入力部51に入力された制御信号S11は、サンプリング部52に受信信号S12として送られる。受信信号S12が入力されると、サンプリング部52は、受信した信号のサンプリングを行う。(ステップ112)。サンプリングは、クロック生成部40から入力される所定の周波数のクロックに対応する周期で行われる。サンプリングされた受信信号S12のデータは、サンプリングデータ記憶部53にサンプリング信号S13として送られる。
サンプリング信号S13が入力されると、サンプリングデータ記憶部53は受け取ったデータを保存する(ステップ113)。所定の時間のサンプリングデータが保存されると、サンプリングデータ記憶部53は所定の時間のサンプリングデータを、データ比較部54にサンプリングデータ信号S14として送る。
データ比較部54は、サンプリングデータをサンプリングデータ信号S14として受け取るとシーケンスデータ記憶部54を参照し、サンプリングデータに対応するVR回路20のシーケンスデータの有無を確認する。対応するVR回路20のシーケンスデータが保存されている場合は(ステップ115でYes)、データ比較部54は、受け取ったデータとシーケンスデータ記憶部55に保存されたシーケンスデータを比較する(ステップ116)。
サンプリングデータとリファレンスであるシーケンスデータが一致するとき(ステップ117でYes)、データ比較部54は、サンプリングデータに対応するVR回路20が正常であると判断する。VR回路20が正常であると判断すると、VR回路20が正常であることを示す情報とVR回路20の識別子の情報を比較結果記憶部56に比較結果信号S15として送る。比較結果記憶部16は、正常であることを示す比較結果信号S15を受け取ると、信号を受け取った日時の情報と、VR回路20の識別子の情報と、正常であることを示す情報とを関連づけて保存する(ステップ118)。
サンプリングデータとリファレンスのシーケンスデータが一致しないとき(ステップ117でNo)、データ比較部54は、サンプリングデータに対応するVR回路20に異常が生じていると判断する。VR回路20に異常が生じていると判断すると、データ比較部54は、VR回路20に異常が生じていることを示す情報とVR回路20の識別子の情報を比較結果記憶部56に比較結果信号S15として送る。比較結果記憶部56は、異常が生じていることを示す比較結果信号S15を受け取ると、信号を受け取った日時の情報と、VR回路20の識別子の情報と、異常が生じていることを示す情報とを関連づけて保存する(ステップ119)。
シーケンスデータが保存されていない場合は(ステップ115でNo)、データ比較部54は、比較結果記憶部56にVR回路20の識別子の情報と評価を実施していないことを示す情報を比較結果信号S15として送る。比較結果記憶部56は、評価を行っていないことを示す比較結果信号S15を受け取ると、信号を受け取った日時の情報と、VR回路20の識別子の情報と、未評価であることを示す情報とを関連づけて保存する(ステップ120)。
また、データ比較部54は、サンプリングデータをシーケンスデータ生成部57に生成用データ信号S16として送る。サンプリングデータ生成部57に生成用データ信号S16が入力されると、シーケンスデータ生成部57は、シーケンスデータの生成の動作を開始する(ステップ121)。
ステップ121の動作の詳細は、図10を参照して説明する。シーケンスデータ生成部57は、サンプリングデータを生成用データ信号S16として受け取ると、VR回路20の識別子の情報と関連づけて保存する(ステップ131)。サンプリングデータを保存した際に、同一のVR回路20のサンプリングデータが所定の数未満である場合(ステップ132でNo)、シーケンスデータ生成部57は、次に信号が入力されるまで待機し、シーケンスデータの生成の動作を一時、終了する。
サンプリングデータを保存した際に、同一のVR回路20のサンプリングデータが所定の数以上である場合(ステップ132でYes)、データ比較部54は、同一のVR生成回路20のサンプリングデータを比較する。所定の数のサンプリングデータが互いに一致したとき(ステップ133でYes)、データ比較部54は、サンプリングデータを対応するVR回路20の異常の有無を判断する際にリファレンスとして用いるシーケンスデータとして生成する。
シーケンスデータを生成すると、シーケンスデータ生成部57は、VR回路20の識別子の情報とともにシーケンスデータをシーケンスデータ記憶部55にシーケンスデータ信号S17として送る。シーケンスデータ記憶部55は、シーケンスデータ信号S17を受け取ると、受け取ったデータを対応するVR回路20のシーケンスデータとして保存する(ステップ134)。また、シーケンスデータ生成部57は、内部に保存していた、シーケンスデータを生成済みのVR回路20のサンプリングデータを消去する(ステップ135)。
所定の数のサンプリングデータの中に一致しないものが含まれていたとき(ステップ133でNo)、シーケンスデータ生成部57はシーケンスデータの生成が不可であると判断する。シーケンスデータの生成が不可であると判断すると、データ比較部54は、該当するVR回路20に関連付けられたサンプリングデータを消去する(ステップ136)。サンプリングデータを消去すると、シーケンスデータ生成部57は、次にデータが入力されるまで待機し、シーケンスデータの生成の動作を一時、終了する。
作業者は、情報端末装置等で比較結果記憶部56に保存されているVR回路20の異常の有無の判断結果を参照することで、異常の発生したVR回路20の識別子の情報から異常が発生したVR回路20を特定することができる。本実施形態においても、データ比較部54で、VR回路20に異常が生じていると判断されたときに、電源監視部50から異常を示す信号がコンピュータシステム等に出力される構成とすることもできる。また、VR回路20に異常が生じていると判断されたときに、音や表示などで作業者に通知される構成とすることもできる。また、ステップ115でシーケンスデータが保存されていなかったときに、保存されていないことを示す信号が出力される構成としてもよい。ステップ115でシーケンスデータが保存されていなかったときに、音や表示などで作業者に通知される構成とすることもできる。
リファレンスデータとしてのシーケンスデータの生成は、作業者や情報システムからの開始指示によっても行わる構成としてもよい。また、シーケンスデータの生成から所定の時間が経過した際に、更新用のシーケンスデータが生成されるようにしてもよい。また、VR回路20の交換や増設が行われたときにシーケンスデータが生成されるようにしてもよい。
本実施形態の電源システムを用いることにより第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の電源システムでは、電源監視部50がシーケンスデータ生成部57で、異常の有無を判断する際のリファレンスデータとしてのシーケンスデータの生成を行っている。このように、制御信号を基にリファレンスデータとしてのシーケンスデータの生成を行うことにより、本実施形態の電源監視部50は、シーケンスデータが保存されていない場合でもVR回路20の異常の有無を判断することが可能となる。また、本実施形態の電源システムは、VR回路20の経時変化や回路の変更から生じる負荷の変化等によりシーケンスに変化が生じた場合でも、新たにリファレンスのシーケンスデータを生成することで異常の有無を的確に検出することが可能となる。
第1乃至第3の実施形態では、制御信号をサンプリングしたデータを基にVR回路に異常が生じている状態か、異常が生じていない状態かのいずれかであるかの2段階の評価結果での判断が行われている。このような構成に代えて、評価結果を3段階以上とすることもできる。例えば、シーケンスは一致するがタイミングがずれている場合に、異常の兆候がある「warning」状態として検出してもよい。そのような構成とすることにより、異常が生じる前にVR回路の修理や交換の実施、それらの準備を行うことが可能となる。
図11は、制御信号であるPWRGD信号のタイミングがずれた場合の例を、正常時の例である図5と同様に示したものである。図11の例では、VR回路BのPWRGD信号は、High状態となるが、正常時のシーケンスを示す図5とは異なるタイミングでHigh状態となっている。このような場合に、電源監視部のデータ比較部は、VR回路Bに異常の兆候があると判断する。
第2および第3の実施形態の電源監視部は、VR回路の異常の有無の判断結果を比較結果記憶部に保存しているが、サンプリングした信号のシーケンスのデータも判断結果とともに保存する構成とすることもできる。また、電源監視部が異常と判断した場合のみサンプリングした信号のシーケンスのデータを保存する構成とすることもできる。例えば、データ比較部がVR回路に異常が生じていると判断したときに、比較結果記憶部に、異常の有無の判断結果とともにサンプリングデータを送ることによりシーケンスのデータを保存する。そのような構成とすることにより、VR回路に生じている異常がどのような状態であるかを解析することが可能となる。
第2および第3の実施形態の電源システムの構成のより具体的な例について説明する。図12は、第2の実施形態の電源システムについて、より具体的な構成の例を示したものである。図12に示した電源システムは、ベースマネージメントコントローラ60と、VR回路25と、電源ユニット31と、クロック生成装置41を備えている。ベースマネージメントコントローラ60と、複数のVR回路25は、同一の基板上に形成されている。
図12の例では、電源ユニット31から供給されたDC(Direct Current)電源がVR回路25で所定の電圧に変換されて出力される。また、VR回路25から出力される制御信号は、ベースマネージメントコントローラ60に入力され、クロック生成装置40から入力されるクロックの周期を基にサンプリングが行われる。ベースマネージメントコントローラ60は、制御信号をサンプリングして得た実際のシーケンスのデータとあらかじめ保存しているリファレンスデータを比較して、VR回路25の異常の有無を判断する。VR回路25からベースマネージメントコントローラ60に送られる制御信号には、PSON信号およびPWRGD信号が用いられている。
ベースマネージメントコントローラ60は、第2の実施形態における電源監視部10に相当する。ベースマネージメントコントローラ60は、GPIOピン61と、サンプリング62と、メモリ63と、シーケンスチェックテーブル64と、信号異常判定65と、メモリ66を備えている。
GPIOピン61、サンプリング62およびメモリ63は、第2の実施形態における信号入力部11、サンプリング部12およびサンプリングデータ記憶部13にそれぞれ相当する。また、シーケンスチェックテーブル64は、第2の実施形態におけるデータ比較部14とシーケンスデータ記憶部15の機能を併せて有する。信号異常判定65およびメモリ66は、第2の実施形態における比較結果記憶部16に相当する。信号異常判定65は、異常の有無の判断結果を一時的に保存するレジスタとして構成されている。信号異常判定65に一時的に保存された異常の有無の判断結果は、メモリ66にログとして保存される。
VR回路25、電源ユニット31およびクロック生成装置41は、第2の実施形態のVR回路20、電源部30およびクロック生成部40にそれぞれ相当する。
図12の電源システムは、上記でそれぞれ置き換えた各部位により第2の実施形態と同様の動作を行う。また、第3の実施形態の電源システムについても、ベースマネージメントコントローラ内にシーケンスデータを生成する部位を付加することで図12と同様の構成とすることができる。このようにベースマネージメントコントローラ60に、電源監視部としての機能ブロックを形成することで、必要な半導体装置等の数を抑制して装置構成を簡略化しつつ、異常が生じているVR回路25の検出が可能となる。