JP6377465B2 - 無段変速機の油圧制御装置 - Google Patents
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Description
そのため、プライマリプーリへの油圧供給の発生により、セカンダリプーリに供給されていた作動油の流量が低下し、セカンダリ圧が不安定になってしまう。また、プライマリプーリへは急激に作動油が流れ込むため、プライマリプーリに供給される油圧(プライマリ圧)が大きくオーバーシュートし、安定するまでに時間がかかる。
これにより、プライマリ圧とセカンダリ圧の油圧バランスが崩れてしまい、再発進後の速やかな変速制御を行うことができないという問題が生じる。
前記プーリ油圧回路は、油圧供給源と、前記油圧供給源の吐出圧を元圧にしてライン圧を調圧するライン圧調整弁と、前記ライン圧を元圧にして前記プライマリプーリに供給するプライマリ圧を調圧するプライマリ圧調整弁と、を有する。
前記油圧コントローラは、前記油圧供給源と、前記ライン圧調整弁と、前記プライマリ圧調整弁をそれぞれ制御する。そして、この油圧コントローラでは、停車し、走行駆動源を停止したときに、前記油圧供給源を停止させると共に、前記プライマリ圧調整弁に対する指示値を、ゼロより大きく且つ停車直前の値よりも小さい値に設定する。
ここで、停車時にプライマリ圧調整弁に対する指示値を低下させることで、再発進意図発生時に、このプライマリ圧調整弁に対する指示値を任意の速度で上昇させ、プライマリ圧を調圧することが可能となる。
一方、停車時にプライマリ圧調整弁に対する指示値をゼロに設定すると、再発進意図発生に伴ってプライマリ圧を調圧するときのプライマリ圧初期値がゼロになってしまう。そのため、プライマリ圧の調圧開始時、プライマリプーリに急激に作動油が流れ込み、セカンダリプーリ側の作動油流量の低下を招く。これに対し、停車時のプライマリ圧調整弁に対する指示値をゼロより大きい値に設定することで、プライマリ圧の調圧初期に、プライマリプーリへの油路に作動油を充填することができる。これにより、プライマリ圧の調圧中に、セカンダリプーリ側の作動油流量の急激な低下を抑制し、セカンダリプーリに供給する油圧の変動を抑えることができる。
この結果、停車後の再発進時、プライマリ圧とセカンダリ圧の油圧バランスの崩れを防止することができる。
まず、実施例1の無段変速機の油圧制御装置の構成を、「ハイブリッド車両の全体システム構成」、「プーリ油圧回路の詳細構成」、「無段変速機油圧制御処理構成」に分けて説明する。
図1は、実施例1の制御装置が適用されたハイブリッド車両(車両の一例)を示す全体システム図である。以下、図1に基づいて、実施例1のハイブリッド車両の全体システム構成を説明する。
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放し、第2クラッチCL2を締結してモータ/ジェネレータMGのみを駆動源に有する電気自動車モードである。
前記「HEVモード」は、第1,第2クラッチCL1,CL2を締結してエンジンEngとモータ/ジェネレータMGを駆動源に有するハイブリッド車モードである。
また、この変速機コントローラ11では、プーリ油圧回路100に供給される油圧を制御する。すなわち、サブモータS/Mを駆動する際、機械式オイルポンプO/Pからの吐出油圧(モータ回転数センサ24の検出値から演算)に応じて、電動オイルポンプM/O/Pの回転数制御を行う。さらに、この変速機コントローラ11では、停車時にアイドルストップ制御部10aによって走行駆動源が停止されたら、サブモータS/Mが駆動しているときには、このサブモータS/Mを停止させ、油圧供給源OILからの油圧供給を停止する。そして、停車後の再発進意図が発生し、走行駆動源が再駆動したら、サブモータS/Mを作動させて油圧供給源OILからの油圧供給を再開する。
図2は、実施例1のハイブリッド車両に備えられたプーリ油圧回路を示す油圧回路図である。以下、図2に基づいて、実施例1のプーリ油圧回路の詳細構成を説明する。
ここで、プライマリ圧調整弁112に対して全開指示値を出力すると、このプライマリ圧調整弁112は全開状態になり、ライン圧PLを減圧することなくプライマリ圧PPriにする。すなわち、ライン圧PL指示値=プライマリ圧PPri指示値のときには、プライマリ圧調整弁112に対して全開指示値が出力される。
なお、プライマリ圧PPriが過剰な場合には、このプライマリ圧調整弁112を介して余剰分の油圧がドレン回路103に抜かれる。
ここで、セカンダリ圧調整弁113に対して全開指示値を出力すると、このセカンダリ圧調整弁113は全開状態になり、ライン圧PLを減圧することなくセカンダリ圧PSecにする。すなわち、ライン圧PL指示値=セカンダリ圧PSec指示値のときには、セカンダリ圧調整弁113に対して全開指示値が出力される。
なお、セカンダリ圧PSecが過剰な場合には、このセカンダリ圧調整弁113を介して余剰分の油圧がドレン回路103に抜かれる。
なお、ここでは、前進クラッチFCと後退ブレーキRBに供給する油圧を個別に調圧する。また、第2クラッチ圧PCL2が過剰な場合には、この第2クラッチ圧調整弁114を介して余剰分の油圧がドレン回路103に抜かれる。
なお、第1クラッチ圧PCL1が過剰な場合には、この第1クラッチ圧制御弁115を介して余剰分の油圧がドレン回路103に抜かれる。
図3は、実施例1の統合コントローラにて実行される無段変速機油圧制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、図3に基づいて、実施例1の無段変速機油圧制御処理構成を説明する。
ここでは、車両の停止(停車)は、ブレーキスイッチがONになると共に、車速が所定値未満になったことで判断する。
ここで、「オイルポンプ停止条件」とは、例えばアイドルストップ制御部10aによって走行駆動源が停止されたこと等である。
ここで、停車直前では、車速の低下に伴ってモータ/ジェネレータMGの出力回転数が低下し、機械式オイルポンプO/Pの吐出油圧が不足する。そのため、通常、サブモータS/Mを駆動して電動オイルポンプM/O/Pを作動させ、油圧供給源OILからの油圧供給を確保している。このステップS4において電動オイルポンプM/O/Pを停止することで、油圧供給源OILからの油圧供給が停止する。これにより、変速機油圧回路101等から作動油が抜けていく。
また、プライマリ圧調整弁112に対する指示値を変更することで、プライマリ圧PPriの目標値が低下する。
なお、ライン圧PLを調圧するライン圧調整弁110に対する指示値と、セカンダリ圧PSecを調圧するセカンダリ圧調整弁113に対する指示値は、いずれも電動オイルポンプM/O/Pの停止前と同じ値のままとする。
ここで、「再発進させる意図」は、ブレーキスイッチがOFFになったこと(ブレーキペダルから足が離れたこと)で発生したと判断する。
ここで、「閾値」とは、セカンダリ圧PSecが発生した(セカンダリ回路105への作動油充填が完了した)と判断できると共に、セカンダリ圧PSecの目標値よりは小さい値に設定される。また、実セカンダリ圧は、セカンダリ回路105に設けた油圧センサ105aにて検出する。
ここで、「任意の速度」とは、セカンダリ圧PSecが安定するまでの間に、プライマリ圧調整弁112に対する指示値が、プライマリ圧PPriの必要油圧(目標値)に達する速度である。なお、セカンダリ圧PSecが安定するまでの時間は、作動油の油圧応答特性から推定する。また、「セカンダリ圧PSecが安定する」とは、実セカンダリ圧の値が目標値に対して所定の許容範囲内に所定時間の間収束することである。
ここで、「必要油圧」とは、無段変速機CVTの変速を可能とする油圧であり、任意に設定する。
ここで、ステップS2又はステップS10に続く「通常油圧制御」とは、走行中油圧制御であり、プライマリ圧PPri及びセカンダリ圧PSecを、アクセル開度と車速に基づいて設定される要求変速比に応じた値とするように、プライマリ圧調整弁112及びセカンダリ圧調整弁113を個別に制御することである。
また、ステップS3に続く「通常油圧制御」とは、アイドルストップ中油圧制御であり、無段変速機CVTの変速比は維持したまま、プーリ油圧回路100の各回路からのオイル抜けを防止するように、サブモータS/Mを制御することである。
まず、「比較例の制御装置における油圧制御とその課題」を説明し、続いて、実施例1の無段変速機の油圧制御装置における油圧制御作用を説明する。
(第1比較例)
図4は、第1比較例の制御装置において、アイドルストップ前後におけるアクセル開度・ブレーキスイッチ・車速・電動オイルポンプ回転数・プライマリ圧指示値・セカンダリ圧指示値・実プライマリ圧・実セカンダリ圧の各特性を示すタイムチャートである。以下、図4に基づいて、第1比較例の制御装置における油圧制御とその課題を説明する。
一方、プライマリ圧PPriの指示値及びセカンダリ圧PSecの指示値は、停車前の値に対して変動させずに維持する。
なお、このとき油圧のオーバーシュート(指示値に対して大きく上振れすること)を抑制するため、電動オイルポンプM/O/Pの回転数は時間に応じて増加させていく。
しかも、プライマリプーリPriへ油圧供給がなされた瞬間、プライマリ回路104へ作動油が急激に流れ込むため、プライマリプーリPriへの油圧供給過多になり、実プライマリ圧が大きく変動してしまう。そのため、この実プライマリ圧が安定するまでに時間がかかる。
そして、時刻t5時点において、プライマリ圧PPriが安定すれば、プライマリプーリPriとセカンダリプーリSecの有効径を変化させることができ、無段変速機CVTの変速が可能になる。
図5は、第2比較例の制御装置において、アイドルストップ前後におけるアクセル開度・ブレーキスイッチ・車速・電動オイルポンプ回転数・プライマリ圧指示値・セカンダリ圧指示値・実プライマリ圧・実セカンダリ圧の各特性を示すタイムチャートである。以下、図5に基づいて、第2比較例の制御装置における油圧制御とその課題を説明する。
しかしながら、プライマリ回路104に作動油が急激に流れ込むことで、セカンダリ回路105に流れる作動油流量が低下し、安定していたセカンダリ圧PSecに影響が発生して、実セカンダリ圧が不安定になってしまう。
図6は、実施例1の制御装置において、アイドルストップ前後におけるアクセル開度・ブレーキスイッチ・車速・電動オイルポンプ回転数・プライマリ圧指示値・セカンダリ圧指示値・実プライマリ圧・実セカンダリ圧の各特性を示すタイムチャートである。以下、図6に基づいて、実施例1の制御装置における油圧制御作用を説明する。
一方、プライマリ圧調整弁112に対する指示値は、ゼロより大きく且つ停車直前の値よりも小さい値になっている。そのため、プライマリ回路104に作動油は流れ込むものの、流れこむ作動油流量は抑制され、実プライマリ圧が急上昇することはない。
これにより、プライマリ圧調整弁112がゆっくりと開放されることになり、実プライマリ圧を指示値に向かって少しずつ上昇させることができる。つまり、実プライマリ圧の急上昇を抑制することができる。
さらに、プライマリ圧調整弁112に対する指示値の上昇は、セカンダリ圧PSecが目標値に達する前に開始する。そのため、セカンダリ圧PSecが立ち上がった後には、プライマリ回路104にも油圧を供給することになり、セカンダリ回路105への油圧の供給過多を抑制して、実セカンダリ圧が大幅にオーバーシュートすることを防止できる。
また、プライマリ圧調整弁112に対する指示値は、ランプ制御によって上昇させているので、実プライマリ圧の急上昇は抑えられる。しかも、このときのプライマリ圧調整弁112に対する指示値の上昇速度は、セカンダリ圧PSecが安定するまでにこの指示値をプライマリ圧PPriの必要油圧にする速度である。
そのため、実プライマリ圧の変動を抑制しつつ、実セカンダリ圧とほぼ同じタイミング(時刻t26時点)において実プライマリ圧を安定させることができる。これにより、車速が上昇するとほぼ同時に無段変速機CVTの変速を可能にすることができる。
さらに、プライマリ圧調整弁112に対する指示値を上昇させる開始タイミングは、実セカンダリ圧が目標値に達する前である。そのため、セカンダリ圧PSecが立ち上がった後には、プライマリ回路104へも油圧供給が開始されるので、セカンダリ回路105への油圧供給過多を抑制し、実セカンダリ圧の大幅なオーバーシュートを防止して、セカンダリ圧PSecを早期に安定させることができる。
実施例1の無段変速機の油圧制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
油圧供給源OILと、前記油圧供給源OILの吐出圧を元圧にしてライン圧PLを調圧するライン圧調整弁110と、前記ライン圧PLを元圧にして前記プライマリプーリPriに供給するプライマリ圧PPriを調圧するプライマリ圧調整弁112と、を有するプーリ油圧回路100と、
前記油圧供給源OILと、前記ライン圧調整弁110と、前記プライマリ圧調整弁112をそれぞれ制御する油圧コントローラ(変速機コントローラ11)と、を備え、
前記油圧コントローラ(変速機コントローラ11)は、停車時に、前記油圧供給源OILを停止させると共に、前記プライマリ圧調整弁112に対する指示値を、ゼロより大きく且つ停車直前の値よりも小さい値に設定する構成とした。
これにより、停車後の再発進時、プライマリ圧PPriとセカンダリ圧PSecの油圧バランスの崩れを防止することができる。
これにより、プライマリ圧のオーバーシュートを抑制して、再発進後の変速制御を速やかに行うことができる。
これにより、(2)の効果に加え、再発進時に高油圧になるセカンダリ圧PSecを速やかに立ち上げ、再発進時の車両発進性能の低下を防止することができる。
前記停車後の再発進意図が発生してから、前記セカンダリ圧PSecが安定するまでの間に、前記プライマリ圧調整弁112に対する指示値が目標値に達する速度で、前記指示値を上昇させる構成とした。
これにより、(2)又は(3)の効果に加え、実プライマリ圧の変動を抑制しつつ、実セカンダリ圧とほぼ同じタイミングで実プライマリ圧を安定させることができる。
プライマリ圧調整弁112に対する指示値の傾き
=(目標油圧値−上昇開始時油圧)/(トルク伝達開始時間−プライマリ圧指示ランプ制御開始時間) …(1)
Pri プライマリプーリ
Sec セカンダリプーリ
V プーリベルト
OIL 油圧供給源
O/P 機械式オイルポンプ
M/O/P 電動オイルポンプ
10 統合コントローラ
10a アイドルストップ制御部
11 変速機コントローラ(油圧コントローラ)
100 プーリ油圧回路
101 変速機油圧回路
104 プライマリ回路
105 セカンダリ回路
110 ライン圧調整弁
112 プライマリ圧調整弁
113 セカンダリ圧調整弁
Claims (5)
- 有効径が可変であるプライマリプーリ及びセカンダリプーリと、前記プライマリプーリ及び前記セカンダリプーリに巻き掛けられるベルトと、を有する無段変速機において、
油圧供給源と、前記油圧供給源の吐出圧を元圧にしてライン圧を調圧するライン圧調整弁と、前記ライン圧を元圧にして前記プライマリプーリに供給するプライマリ圧を調圧するプライマリ圧調整弁と、を有するプーリ油圧回路と、
前記油圧供給源と、前記ライン圧調整弁と、前記プライマリ圧調整弁をそれぞれ制御する油圧コントローラと、を備え、
前記油圧コントローラは、停車し、走行駆動源を停止したときに、前記油圧供給源を停止させると共に、前記プライマリ圧調整弁に対する指示値を、ゼロより大きく且つ停車直前の値よりも小さい値に設定する
ことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置。 - 請求項1に記載された無段変速機の油圧制御装置において、
前記油圧コントローラは、前記停車後の再発進意図が発生したときに、前記油圧供給源を作動させると共に、前記プライマリ圧調整弁に対する指示値を、必要油圧になるまで任意の速度で上昇させる
ことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置。 - 請求項2に記載された無段変速機の油圧制御装置において、
前記油圧コントローラは、前記停車後の再発進意図が発生した後に前記セカンダリプーリに供給するセカンダリ圧が所定値に達した後、前記セカンダリ圧が目標値に達する前に、前記プライマリ圧調整弁に対する指示値の上昇を開始する
ことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置。 - 請求項2又は請求項3に記載された無段変速機の油圧制御装置において、
前記油圧コントローラは、前記停車後の再発進意図が発生した後、前記セカンダリプーリに供給するセカンダリ圧が安定するタイミングを推定し、
前記停車後の再発進意図が発生してから、前記セカンダリ圧が安定するまでの間に、前記プライマリ圧調整弁に対する指示値が目標値に達する速度で、前記指示値を上昇させる
ことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置。 - 請求項2又は請求項3に記載された無段変速機の油圧制御装置において、
前記油圧コントローラは、前記停車後の再発進意図が発生した後、前記無段変速機を介して走行駆動源トルクを駆動輪へ伝達可能になるまでの時間を推定し、
前記停車後の再発進意図が発生してから、前記無段変速機を介したトルク伝達が可能になるまでの間に、前記プライマリ圧調整弁に対する指示値が目標値に達する速度で、前記指示値を上昇させる
ことを特徴とする無段変速機の油圧制御装置。
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