JP6375624B2 - Lox−1阻害活性を有する後発酵茶精製組成物 - Google Patents

Lox−1阻害活性を有する後発酵茶精製組成物 Download PDF

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Description

本発明は、カメリア属である茶を加工して得られる後発酵茶葉の水抽出物由来の、レクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)の酸化LDL結合活性阻害剤組成物、及び該阻害剤組成物を含有する食品組成物に関する。
従来から、緑茶には心血管病リスクを低減させる効果があることが広く知られている。欧米諸国と比較して、日本人は喫煙率が高いにも関わらず、冠動脈疾患が少ないといった疫学データや、緑茶の抗動脈硬化を検証するヒト試験(例えば、非特許文献1)、あるいは多岐に渡るインビトロの試験などから裏付けられている。
現に日本においては、心血管病予防にも関係した健康機能を高めるための緑茶も既に多く市販されている。コレステロールの吸収を防ぐための緑茶、体脂肪の蓄積抑制や燃焼促進効果を有する緑茶、カテキンを高濃度に含有させた緑茶飲料、カテキンを高濃度に含有させた清涼飲料などの非緑茶系飲料などが大きな市場を形成しており、社会ニーズの高さがうかがえる。
同じカメリア属植物より製造されるプーアル茶は、製造工程に微生物による醗酵過程を含む後醗酵茶であり、その独特な風味が特徴的なお茶である。科学的実証は無いが、古くから「唾液を湧き出させ、渇きを止め、酒の酔いを醒まし、むかつきを抑え、消化を助ける養生の妙薬」として珍重されてきた(非特許文献2)。また、近年、脂肪吸収抑制効果(非特許文献3)や、糖吸収抑制作用(非特許文献4)などの効果が動物実験でも報告され、ヒトに対する痩身効果が期待されている。一方、プーアル茶独特の風味である古臭くかび臭い風味は1,2,3−トリメトキシベンゼン(TMB)に代表されるメトキシルフェノール類によりもたらされている(非特許文献5)ことが報告されているが、この独特の風味や色合いは日本人に馴染み難く、飲料としては緑茶や紅茶、ウーロン茶ほど普及はしていない。そこで、これまでも、独特な風味、色合いを改善するプーアル茶の醗酵方法の改良方法(特許文献1)や、抽出方法の改善方法(特許文献2)などが提案されているものの、これら風味改善物が心血管病を予防または改善する効果を有することについては報告されていない。
日本国厚生労働省の最近の人口動態統計によると、日本における疾患別死亡者の1位が悪性新生物(腫瘍及び癌)、2位が心疾患、3位が脳血管疾患となっているが、心疾患と脳血管疾患による死亡者の合計は全体の約26%であり、これは悪性新生物の死亡者割合である約30%にほぼ匹敵する(平成22年(2010年))。悪性新生物の対処方法に関しては、その発症プロセスから考慮すると早期発見・早期治療が重要であり、臨床学的なアプローチが望ましいとされる。一方、心疾患・脳血管疾患については、生活習慣病に起因する、慢性的な疾患である肥満症・動脈硬化症の下流に位置する疾患であり、その治療も長期間わたるものである。
慢性的な疾患に対する治療法としては、長期投薬による治療と日常生活習慣への指導という形での対処法が一般的であるが、疾患の特性から、日常的に摂取可能な形態を用いる食品からの予防学的なアプローチが可能なプロセスであり、むしろ、このようなプロセスでの対処方法が望ましい。
心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患の危険因子として、低密度リポタンパク質(LDL)が知られている。元来LDLは血漿脂質の運搬に必要な脂質蛋白質複合体であるが、酸化を受け易い不飽和脂肪酸を多く含み、容易に酸化的修飾を受ける。そして、この酸化型のLDL(酸化LDL)が血管内皮細胞の機能変化を引き起こし、病的生理活性を担う重要な因子であることが近年わかりつつある。
酸化LDLによる血管内皮細胞への作用を媒介する受容体として、レクチン様酸化低密度リポ蛋白質受容体(LOX−1)が本発明者の一人である沢村 達也氏により血管内皮細胞より初めて分離同定されており(非特許文献6)、その後の研究により、LOX−1は内皮細胞のみならず、マクロファージ、血小板、血管平滑筋細胞などにおいても発現が確認されている(非特許文献7〜9)。
LOX−1の発現は、糖尿病、高血圧、高脂血症などで増加しており、また、沢村 達也氏により作製された抗LOX−1抗体(抗ヒトLOX−1マウスモノクローナル抗体TS92)は、酸化LDLとLOX−1との結合を阻害することにより、酸化LDLによる内皮依存性弛緩反応の低下を回復し、さらに、心筋梗塞後の梗塞巣の形成やバルーン傷害後の血管内膜肥厚を抑制しており、また、血栓の形成や、エンドトキシン起因性炎症作用、脳卒中の発症にもLOX−1が関与することが示唆されていることから、LOX−1が心血管病の発症において様々なレベルで関与していることが想定されている(非特許文献7、10〜15)。
例えば、LOX−1へのリガンドの結合を阻害することを目的とした発明として、酸化LDL受容体に対する抗体を利用した医薬組成物やリンゴポリフェノール、ガレート型カテキンなどが沢村 達也氏より提案されている(特許文献3〜5)。
しかしながら、本発明者らが検討を進めたところ、リンゴポリフェノールやガレート型カテキンには、LOX−1が作用する現実の血管系と同じ血清由来蛋白質を評価系に存在させると酸化LDLとLOX‐1との結合を阻害する活性が大きく低下するという問題があることがあらたに判明した。
特許第04583417号公報 特開2013−9641号公報 特許第4497586号公報 特開2011−006326号公報 特開2012−111747号公報
J Am Coll Nutr.2005 Oct;24(5):p.342−346 谷本陽蔵著「中国茶の魅力」柴田書店 Phytotherapy Research Volume 25, Issue 2,p.234-238,2011 沼津工業高等専門学校研究報告第46号 p.331−336 Food Chemistry Vol 130, Issue 4, 1 5 February 2012, p.1074-1081 Sawamura T, et al., Nature, 386:p. 73‐77,(1997) Chen M, et al., Biochem Biophys Re s Commun, 282:p.153‐158 (2001) Kataoka H, et al., Arterioscler Th romb Vasc Biol, 21:p.955‐960(2001) Yoshida H, et al., Biochem J, 334: p.9‐13(1998) Mehta JL, et al., Cir Res 100(11) p.1634‐1642(2007) Li et al., J.Pharmacol. Exp. Ther ., 302:p.601‐605(2002) Hinagata et al., Cardiovasc Res, 69:p.263‐271(2006) Kakutani M., et al., Proc Natl Ac ad Sci USA. 97:p.360‐364(2000) Honjo M., et al., Proc Natl Acad Sci USA. 100:p.1274‐1279(2003) Inoue N., et al., Clin Chem. 2010 Apr;56(4):p.550‐558
本発明者らは、より風味に優れ、茶抽出物を利用した健康機能性が期待される食品等の研究を進めた結果、心血管病予防効果が高い成分を後発酵茶の一種であるプーアル茶の抽出物が有することを見出し、しかも後発酵茶抽出物から後発酵茶由来の不快臭を低減できる技術を開発することに初めて成功し、本発明を完成するに至った。
したがって、本発明は、LOX−1阻害活性を有する後発酵茶葉抽出物の精製物であって、後発酵茶葉由来の不快臭を減少させた、非常に風味のよい後発酵茶精製組成物およびその製造方法、ならびに前記後発酵茶精製組成物を含む飲食品を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、
〔1〕LOX−1阻害活性を有する後発酵茶精製組成物であって、
前記後発酵茶精製組成物の固形分の濃度が1%(w/v)である水溶液中のテアブラウニンの濃度が380nmの吸光度にて1.3以上で示され、且つ、
前記後発酵茶精製組成物の固形分の濃度が0.1%(w/v)である水溶液中の1,2,3−トリメトキシベンゼン濃度が20ng/mL以下または1,2−ジメトキシベンゼン濃度が1ng/mL以下であることを特徴とする後発酵茶精製組成物、
〔2〕LOX−1阻害活性を有する後発酵茶葉抽出物の精製物を含む後発酵茶精製組成物の製造方法であって、
(a)〜(c)の工程:
(a)低級アルコール又は含水低級アルコールに浸漬させる工程を経た後発酵茶葉を熱水で抽出する工程、
(b)後発酵茶葉の熱水抽出物又は前記(a)工程で得られる後発酵茶葉抽出物を固体吸着剤と接触させ非吸着成分を回収する工程、
(c)後発酵茶葉の熱水抽出物又は前記(a)工程で得られる後発酵茶葉抽出物を分画分子量が1000〜10000の限外ろ過膜により処理を行い、該限外ろ過膜を通過しない成分を回収する工程、
からなる群より選ばれる一つ以上の工程を有することを特徴とする、前記〔1〕に記載の後発酵茶精製組成物の製造方法、
〔3〕前記〔1〕に記載の後発酵茶精製組成物を含有することを特徴とする飲食品、
に関する。
なお、本発明において、「LOX−1阻害活性」とは、後述の実施例に記載のような方法で評価した場合に、LOX−1への酸化LDLの結合を阻害する作用を意味する。また、「LOX−1阻害活性を高めた」とは、後述の試験例1に記載のような方法でLOX−1阻害活性を評価した場合に、一般的な後発酵茶の淹れ方に則った後発酵茶葉抽出方法によって得られた抽出物を比較品としたときに、この比較品よりLOX−1への酸化LDLの結合を阻害する作用が強化されていることを意味する。
本発明の後発酵茶精製組成物は、血管系においてLOX−1への酸化LDLの結合を有意に阻害することで優れた健康機能性が期待され、且つ、不快臭を抑えたものであるため経口摂取が非常にし易いものである。
また、本発明の後発酵茶精製組成物を飲食品に配合しても後発酵茶葉に由来する不快臭が顕著に抑えられているために摂取する際に問題が生じ難く、しかも、得られる飲食品の健康機能性を高めることができる。
図1の左図は、試験例2における各抽出物の腸間膜動脈における脂質沈着面積の解析のための腸間膜動脈の写真を示したものである。 また、図1の右図は、試験例2における各抽出物を摂取したラットの各腸間膜動脈における脂質沈着をOil Red Oにより染色し、腸間膜動脈総面積に占める脂質沈着部位の面積の割合を、1群をn=12で試験し測定した平均値の結果をグラフ化したものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の後発酵茶精製組成物は、LOX−1阻害活性を高めた後発酵茶葉抽出物の精製物を含み、
前記精製物の固形分の濃度が1%(w/v)である水溶液中のテアブラウニンの濃度が380nmの吸光度にて1.3以上で示され、且つ、
前記精製物の固形分の濃度が0.1%(w/v)である水溶液中の1,2,3−トリメトキシベンゼン濃度が20ng/mL以下または1,2−ジメトキシベンゼン濃度が1ng/mL以下であることを特徴とする。
本発明で用いる後発酵茶葉とは、カメリア属(Camellia属)の葉を、カビ〔アスペルギルス(Aspergillus)属、リゾパス(Rhizopus)属〕等の微生物により発酵することにより製造される長期熟成した茶で、茶の分類において「後発酵茶」と呼ばれるものであり、「プーアル茶」「黒茶」「普▲ある▼茶」などの名前で広く中国で飲用されている。日本国内でも高知県の「碁石茶」や、富山県の「バタバタ茶」などが少量生産され、消費されているものである。本発明で用いる後発酵茶葉は、上述のように微生物で後発酵しているものであれば、いずれも使用可能であるが、入手のし易さの観点から、プーアル茶が好ましい。
本発明で用いる後発酵茶葉抽出物の精製物とは、後発酵茶葉抽出物がさらに精製されたものを意味し、具体的には、後述の方法で得られるものであればよい。
後発酵茶葉の発酵の進行度を測定する方法として、テアブラウニン濃度を測定する方法がある。テアブラウニンは後発酵茶葉抽出物中の酢酸エチル、及びn-ブタノールに溶解しない水溶性成分の総称であるが、驚くべきことに、テアブラウニン濃度は、LOX-1阻害活性と相関があり、高テアブラウニン濃度のものは高いLOX-1阻害活性を有していることを本発明者らが当該分野で初めて明らかにした。本発明におけるテアブラウニン濃度を測定する方法としては、具体的には、後発酵茶葉抽出物の精製物を固形分濃度が1%(w/v)となるように水に溶解し、この溶液を後の実施例に示す方法で処理を行い、テアブラウニン濃度を吸光光度計により380nmの吸光度で測定した値にて表す。
精製処理を行わない後発酵茶葉抽出物のテアブラウニン濃度を前記の方法で測定すると、通常の熱水抽出では380nmの吸光度が1.0、加圧加熱抽出では1.2程度になる。しかしながら、これらの抽出方法で得られる後発酵茶葉抽出物は後発酵茶特有の不快な風味を多分に含む抽出物である。
これに対して、本発明の後発酵茶精製組成物のテアブラウニン濃度を前記の方法で測定すると380nmの吸光度が1.3以上であり、好ましくは1.6以上、より好ましくは1.8以上である。前記テアブラウニン濃度が1.3未満であると十分なLOX-1阻害活性が望めず、特に1.0未満であると不快な風味が際立つ、またはLOX-1阻害活性がほとんど見られなくなる。
また、本発明の後発酵茶精製組成物で用いる後発酵茶葉抽出物の精製物は、この精製物の固形分を濃度0.1%(w/v)とした水溶液中の1,2,3−トリメトキシベンゼン濃度が20ng/mL以下または1,2−ジメトキシベンゼン濃度が1ng/mL以下となるものである。
本発明では、後発酵茶独特の風味である古臭くかび臭い風味の原因として、1,2,3−トリメトキシベンゼンおよび1,2−ジメトキシベンゼンに着目し、前記のような範囲にそれぞれの含有量が低減した後発酵茶葉抽出物の精製物を用いることで、後発酵茶独特の不快臭を顕著に低減した後発酵茶精製組成物とすることができる。
本発明における1,2,3−トリメトキシベンゼンおよび1,2−ジメトキシベンゼンの濃度の測定は、具体的には、後発酵茶葉抽出物の精製物を固形分濃度が0.1%(w/v)となるように水に溶解し、この溶液を後の実施例に示すようにガスクロマトグラフィー−質量分析計により測定することができる。
本発明で用いる後発酵茶葉抽出物の精製物としては、1,2,3−トリメトキシベンゼンの濃度が20ng/mL以下であるか、または1,2−ジメトキシベンゼンの濃度が1ng/mL以下であればよいが、1,2,3−トリメトキシベンゼンの濃度が20ng/mL以下であり、且つ1,2−ジメトキシベンゼンの濃度が1ng/mL以下であれば後発酵茶由来の不快臭がより抑えられたものとなるため好ましい。
本発明の後発酵茶精製組成物は、前記後発酵茶葉抽出物の精製物からなるものであればよい。
本発明の後発酵茶精製組成物の製造方法は、次の(a)〜(c)の工程:
(a)低級アルコール又は含水低級アルコールに浸漬させる工程を経た後発酵茶葉を水または熱水で抽出する工程、
(b)後発酵茶葉の熱水抽出物又は前記(a)工程で得られる後発酵茶葉抽出物を固体吸着剤と接触させ非吸着成分を回収する工程、
(c)後発酵茶葉の熱水抽出物又は前記(a)工程で得られる後発酵茶葉抽出物を分画分子量が1000〜10000の限外ろ過膜により処理を行い、該限外ろ過膜を通過しない成分を回収する工程、
からなる群より選ばれる一つ以上の工程を有する。
前記(a)工程において、まず、後発酵茶葉を、低級アルコール又は含水低級アルコールに浸漬させて前処理を行う。この前処理により後発酵茶葉に付着している不純物を除去することができる。
低級アルコール又は含水低級アルコールを用いた前処理は、一般に、使用する低級アルコールに合わせて常圧〜加圧下で常温〜加圧下での溶媒の沸点の温度条件下で10分〜1週間程度行えばよい。前記低級アルコールとしては、処理工程にあわせて通常用いられる溶媒を適宜選択して用いればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の一級アルコール、又はプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。処理溶媒として一級アルコールがより好ましい。また、含水低級アルコールは、前記低級アルコールと水との混合物であるが、含水低級アルコールにおける水と低級アルコールとの量の比率は低級アルコールの含有量が50%(v/v)以上であれば特に限定はない。
中でも、本発明の後発酵茶精製組成物を食品に添加する場合のように、有機溶媒の残留が好ましくない場合には、エタノール、含水エタノール等を使用することが好ましい。含水エタノールとしては70〜95%(v/v)を使用することが最も好ましい。
これらの低級アルコール又は含水低級アルコールは、抽出溶媒として単独で用いることもできるが、2種類以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
(a)工程における前処理方法としては、特に制限はなく、静置、攪拌処理、常温ホモジナイズ処理、還流抽出処理、超臨界流体抽出処理等が使用可能である。
代表的な方法としては、以下のようなものが挙げられる。すなわち、後発酵茶葉に対し、低級アルコール又は含水低級アルコールを5〜20倍量加え、常圧下、室温で1週間程度静置、又は低級アルコール又は含水低級アルコールの沸点付近もしくは加圧条件下での使用溶媒の沸点付近で30〜120分程還流処理してから濾過し、得られた茶葉を風乾、あるいは圧搾して抽出用後発酵茶葉を得る。
次いで、得られた抽出用後発酵茶葉を水又は熱水で抽出する。前記のような前処理を行ったのち、水又は熱水で抽出して得られたものは、後発酵茶葉の抽出物よりも不純物が除去された精製物となる。
前記抽出に用いるのは水又は熱水のいずれでもよいが、特に抽出効率の点で、熱水で抽出されることが好ましい。熱水の温度としては、80〜130℃であればよい。
水又は熱水の使用量は抽出用後発酵茶葉100重量部に対して100〜10,000重量部が好ましく、150〜9,000重量部がより好ましく、200〜5,000重量部がさらに好ましい。
水又は熱水の使用量が100重量部以上にすることで抽出物のLOX−1阻害活性が高くなり、また、10,000重量部以下にすることで抽出後の固液分離を良好に行うことができる。
抽出にあたっては水又は熱水と抽出用後発酵茶葉を抽出タンクに入れ加熱すれば良く、必要に応じて撹拌すればよい。加熱温度としては、抽出タンク内の水の温度が80〜130℃になるように調整すればよい。また、抽出時間は抽出時の温度により一概に特定できないが、抽出物のLOX−1阻害活性が高くなり、抽出物の量も確保できる観点から、0.1〜5時間が好ましく更には0.2〜4時間が好ましい。
また、抽出効率促進のために圧力釜などで、抽出用後発酵茶葉に蒸気を直接吹き付ける方法や、圧力釜の周囲に付属されたジャケットを加熱し、この伝播熱を利用して温度を上昇させやすくする方法、レトルトを用い加圧しながら加熱する方法を採用してもよい。
前記(a)工程で得られた後発酵茶葉抽出物の精製物を常法により乾燥させたものは、前記テアブラウニンの濃度が1%(w/v)である水溶液中の380nmの吸光度にて1.3以上で示され、且つ、1,2,3−トリメトキシベンゼン濃度が20ng/mL以下または1,2−ジメトキシベンゼン濃度が1ng/mL以下となっているため、そのまま後発酵茶精製組成物として使用することができる。
ただし、通常は、遠心分離等による固液分離の処理、又はフィルタープレスにより異物を除去して、抽出物を得、かかる抽出物を濃縮しエキスの形態で使用してもよいし、あるいは、さらに乾燥させて使用してもよい。かかる抽出エキスを濃縮する方法としては、特に限定されないが減圧濃縮、膜濃縮、凍結濃縮等があり、乾燥にはスプレードライ、フリーズドライ、ニーダー、ナウターミキサーなどの機械を用いて粉末化することができる。
また、前記(b)工程または(c)工程では、後発酵茶葉の熱水抽出物又は前記(a)工程で得られる後発酵茶葉抽出物を使用する。
(b)工程または(c)工程で使用する後発酵茶葉の熱水抽出物とは、後発酵茶葉を熱水に浸漬することで抽出されるものをいう。
熱水の温度条件としては、80〜130℃であればよい。
後発酵茶葉100重量部に対して、100〜10,000重量部が好ましく、150〜9,000重量部がより好ましく、200〜5,000重量部がさらに好ましい。
水又は熱水の使用量が100重量部以上にすることで抽出物のLOX−1阻害活性が高くなり、また、10,000重量部以下にすることで抽出後の固液分離を良好に行うことができる。
前記抽出手法としては、例えば、圧力釜などで、後発酵茶葉に蒸気を直接吹き付ける方法や、圧力釜の周囲に付属されたジャケットを加熱し、この伝播熱を利用して温度を上昇させやすくする方法、レトルトを用い加圧しながら加熱する方法を採用してもよい。
(b)工程では、前記後発酵茶葉の熱水抽出物又は前記(a)工程で得られる後発酵茶葉抽出物に対し、固体吸着剤を用いさらに精製を進めることができる。
前記固体吸着剤としては、活性炭、珪藻土、シリカゲル、ゼオライト等を単独で又は適宜組み合わせて用いることができる。例えば、活性炭34重量部に対し珪藻土を66重量部混合した吸着剤をカラムに充填し、前記後発酵茶葉の熱水抽出物又は前記(a)工程で得られる後発酵茶葉抽出物を通液させることで精製を行うことができる。
また、前記(c)工程では、後発酵茶葉の熱水抽出物又は前記(a)工程で得られる後発酵茶葉抽出物を、分画分子量1000〜10000の限外ろ過膜で処理を行い、該限外ろ過膜を通過しない成分を回収することで精製を進めることができる。
前記限外ろ過膜の分画分子量としては、1000未満であると不快成分が残存する上、膜を通過しない高分子量物の残存が多く、且つ、溶液の膜通過に時間がかかり、作業効率が悪くなり好ましくない。逆に、分画分子量が10000を超えると有効成分も膜を通過し、回収率が悪くなり、後発酵茶葉抽出物の精製には好ましくない。限外ろ過膜の分画分子量としては、3,000〜10,000が好ましい。
本発明では、前記(a)、(b)、(c)工程のいずれかの工程を用いて後発酵茶葉抽出物の精製物を製造すればよいが、例えば、(a)工程、(b)工程、(c)工程のうち2つ以上の工程を用いて得た後発酵茶葉抽出物の精製物を混合してもよい。
以上のような本発明の製造方法にて得られた後発酵茶葉抽出物の精製物を用いることで、高いテアブラウニン濃度を維持し、且つ、不快な風味の無いLOX-1阻害活性を高めた後発酵茶精製組成物を得ることができる。
以上のようにして得られる後発酵茶葉抽出物の精製物は、原料である後発酵茶葉抽出物に比べて、より強いLOX-1阻害活性を有しており、該LOX-1阻害作用により心血管病予防、改善効果を図ることができることから、前記後発酵茶葉抽出物の精製物を有効成分として含む本発明のLOX-1阻害活性を高めた後発酵茶精製組成物は、新規の心血管病予防剤としても有用である。
なお、本発明で使用する後発酵茶葉抽出物の安全性は、すでに一般的に確認されていることから、本発明のLOX-1阻害活性を高めた後発酵茶精製組成物の安全性も同様に優れたものであると考えられる。
本発明のLOX-11阻害活性を高めた後発酵茶精製組成物は、風味の良い精製組成物であることから、飲食品に配合してもよい。飲食品としては特に限定されず、例えば、飲料、アルコール飲料、ゼリー、菓子、機能性食品、健康食品、健康志向食品等が挙げられる。保存性、携帯性、摂取の容易さ等を考慮すると、菓子類が好ましく、菓子類の中でも、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、グミキャンディ、タブレット、チューイングガム等が好ましい。
本発明のLOX-1阻害活性を高めた後発酵茶精製組成物を飲食品に配合する場合、LOX-1阻害活性を高めた後発酵茶精製組成物の飲食品における含有量は、その生理活性効果が期待できる量であればよい。通常1日あたり10〜10000mg、より好ましくは100〜3000mg摂取できるように飲食品の形態にあわせ適宜配合量を決定することが好ましい。例えば、固形状食品の場合には5〜50質量%、飲料等の液状食品場合には0.01〜10質量%が好ましい。上記LOX-1阻害活性を高めた後発酵茶精製組成物を配合した飲食品を日常的に摂取することにより、酸化LDLがLOX-1に結合することで誘発される心血管病の予防効果が期待される。
また、本発明の製造方法により得られるLOX-1阻害活性を高めた後発酵茶精製組成物は、安全性に優れたものであるので、ヒトに対してだけでなく、非ヒト動物、例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジー等の哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類等の治療剤又は飼料に配合してもよい。飼料としては、例えばヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ニワトリ等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、ウナギ、タイ、ハマチ、エビ等に用いる魚介類用飼料、イヌ、ネコ、小鳥、リス等に用いるペットフードが挙げられる。
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例にのみ限定されるものではない。
(試験例1:各種茶抽出物のLOX−1阻害活性比較)
カメリア属植物より製造される茶として代表的な茶である緑茶(不醗酵茶)、紅茶(強醗酵茶)、プーアル茶(後醗酵茶)の各熱水抽出物についてのLOX−1阻害活性を以下のようにして比較した。
緑茶葉(宇治森徳社製)、紅茶葉(京都グレインシステム社製)、プーアル茶葉(京都グレインシステム社製)それぞれ5gを450mLの蒸留水に加え、抽出タンクで120℃、20分間加圧、加熱を行い、熱水抽出を行った後、固体と分離した抽出エキスを真空乾燥させ、各抽出エキスの乾燥物を得た。
LOX−1阻害活性の測定に用いる組換えhLOX−1タンパク質は、ヒト由来LOX−1の細胞外ドメインである。human LOX−1 cDNA(Genbank:NM002543)のうち、細胞外ドメイン(ex−hLOX−1)をコードする領域(61〜273番目の塩基配列)を、定法に従い発現、精製したものを使用した。組換えhLOX−1タンパク質は酸化LDLに対する結合能力を有していることを確認し、以下のELISA(Enzyme Linked Immunosorbent Assay:酵素免疫測定法)による試験用LOX−1標品として用いることにした。
なお、前記酸化LDLは、Sawamura T, et al.Nature, 386:73−77,(1997)に記載の方法に準じて作製した。
ELISAは、マキシソープ・イムノプレート(96ウェルタイプ、NUNC製)を用いて行った。上記のように精製した組換えhLOX−1タンパク質を5μg/mLとなるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS(−)バッファー)で調整し、50μLずつ各ウェルにアプライした。4℃で1晩静置後、PBS(−)バッファーで各ウェルを400μL×2回で洗浄し、20%イムノブロックを含むPBS(−)バッファー300μLを各ウェルにアプライした。25℃で2時間静置した後に、PBS(−)バッファーで各ウェルを400μL×2回で洗浄し、HamF12−HEPESバッファー(HamF12培地(ギブコ(GIBCO)社製)、1%牛胎児血清、10mM 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸;HEPES)で0.1〜30μg/mLとなるように調整した各精製サンプルを50μLずつ各ウェルにアプライした。4℃で1時間静置した後に、PBS(−)バッファーで各ウェルを400μL×3回で洗浄し、1μg/mLとなるようにHamF12−HEPESバッファーで調整した酸化LDLを各ウェルにアプライした。4℃で1時間静置した後に、PBS(−)バッファーで各ウェルを400μL×3回で洗浄し、Anti−ApoB抗体(Binding site社製)を10mM HEPES/150 mM NaCl/1% ウシ血清アルブミン(BSA)で適当量希釈し、50μLずつ各ウェルにアプライした。室温で1時間の静置後、PBS(−)バッファーで各ウェルを400μL×3回で洗浄し、HRP−ウサギ抗−ヒツジIgG抗体(invitrogen社製)を10mM HEPES/150 mM NaCl/1% BSAで適当量希釈し、50μLずつ各ウェルにアプライした。室温で1時間の静置後、PBS(−)バッファーで各ウェルを400μL×5回で洗浄し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンヂジン(TMB)ペルオキシダーゼ−酵素免疫測定(EIA)−基質−キット試薬(Bio−rad社製)を50μLずつ各ウェルにアプライした。適当な反応時間後に、0.5M硫酸を50μLずつ各ウェルにアプライして反応を停止させた。最終的に450nmで検出を行い、LOX−1阻害活性(LOX‐1に対する酸化LDL結合阻害率)を定量し、IC50(50%阻害濃度)を算出し比較した。また、阻害剤添加時に系に牛胎児血清を含まない試験条件でのIC50も算出し比較した。表1に結果を示す。なお、表中のIC50は、数値が低いほどLOX−1阻害活性が高いことを示す。
その結果、緑茶、紅茶、プーアル茶共に、阻害剤反応時に血清由来タンパク質を含まない場合(表1の下段)ではそれぞれ高い活性を示すものの、系に血清由来タンパク質が存在する場合(表1の上段)では緑茶と紅茶は阻害活性の低下が観察された。一方、プーアル茶抽出物は系に血清由来タンパク質が存在する場合も高いLOX−1阻害活性を維持することが明らかになり、プーアル茶抽出物の血清由来タンパク質存在下での優位性が明らかになった。
(試験例2:プーアル茶葉抽出物の有効性試験)
試験例1で得られたプーアル茶葉抽出物を用いて、自然発症脳卒中モデルラット(SHRSP/Izm系、雄、8週齢、日本クレア社製)の腸間膜動脈における脂質沈着に対する抑制能を評価した。
上記モデルラット12匹を1群として、1%食塩水飲水群と0.2%重量濃度プーアル茶熱水抽出物を含む1%食塩水飲水群、0.2%重量濃度リンゴポリフェノールを含む1%食塩水飲水群、0.2%重量濃度緑茶熱水抽出物を含む1%食塩水飲水群の4群で試験を行った。全群とも日本クレア社製の「High Fat Diet」(α―トコフェロール抜き)を摂餌させ、これらの固形飼料及び食塩水については自由摂取の形態で行い、1週間を飼育期間とした。また、自然発症脳卒中モデルラットを用いた腸間膜動脈の脂質沈着に関する実験は、既報(Japanese Circulation Journal, Vol.39, p601−609, 1975)を参考に、下記のように変法して行った。
コントロール食塩水、あるいはプーアル茶葉抽出物含有食塩水による、1週間の経口投与をモデルラットに行った後に、イソフルランで吸入麻酔を行い、開腹・開胸を行った。開腹・開胸したラットから血清を採取し、さらに、腸間膜動脈を周囲脂肪組織とともに摘出し、摘出後にPBSバッファー中でピンセットを用いながら腸間膜動脈の周囲脂肪組織を除去した。得られた腸間膜動脈を60%イソプロパノールで洗浄・平衡化した後に、Oil Red O染色液(和光純薬社製)による腸間膜動脈に沈着した脂質の染色を行い、60%イソプロパノール/30%イソプロパノール/PBSバッファーへと段階的にイソプロパノール濃度を下げながら脱色操作を行った。最終的に、顕微鏡下でOil Red O染色により染色された脂質沈着部の面積を計測した。
採取した血清より、コレステロールEテストワコー、HDLコレステロールEテストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて血中総コレステロール濃度、HDLコレステロール濃度をそれぞれ測定したところ、コントロール食塩水あるいはプーアル茶抽出物、リンゴポリフェノール、緑茶抽出物含有食塩水を摂取したラット間で血中総コレステロール濃度、HDLコレステロール濃度に有意な差はみられなかった。
また、試験例2により得られた、腸間膜動脈における脂質沈着面積の測定結果(図1の右図)及び解析された実際の腸間膜動脈の写真(図1の左図)を示す。この結果より、Oil Red O染色液により染色された血管での脂質沈着面積は、プーアル茶葉抽出物摂取群(図中「プーアル」と表記)で有意に低下しており、平均的な沈着面積はリンゴポリフェノールよりも小さくなった。つまり、高脂肪食により誘発される動脈硬化症をプーアル茶抽出物が抑制したと考えられる。このことから、プーアル茶葉抽出物は、血中総コレステロール値などには大きな変動は及ぼさないものの、動脈硬化の予防に対しては顕著な効果を有することが明らかとなった。
なお、上記実施例においてプーアル茶葉抽出物を投与したラットは、投与していないラットと比べても体重増加率は変わらなかった。また、プーアル茶葉抽出物を投与したラットを開腹したところ、顕著な臓器異常も見られなかった。以上のことから、プーアル茶葉抽出物の安全性が高いことも明らかとなった。
(実施例1:プーアル茶抽出物の精製物の製造)
<含水エタノールによる浸漬条件の検討>
プーアル茶葉(京都グレインシステム社製)10gを、50,60,70,80,90,100%(v/v)のエタノール水溶液500mLに添加し、2時間還流した。還流後、プーアル茶葉を濾紙No.101(アドバンテック社)にて濾過し、ろ液である還流抽出物(試作品1〜6)を得た。還流ろ過後の茶葉を1晩風乾し、全量を900mLの蒸留水に添加し、加圧タンクで120℃、20分間加圧、加熱抽出を行い、抽出液を濾紙No.101にて濾過、プーアル茶葉抽出物精製物(試作品7〜12)を得た。
各抽出物、精製物のLOX−1阻害活性の測定は試験例1の手順で行い、得られたIC50より以下の式:
相対活性比=比較品IC50/試作品IC50
に基づき相対活性比を求めた。比較品より試作品の阻害活性が高いものは相対活性比が1より大きくなり、相対活性比が大きなものほど阻害活性が高いことを示す。比較品には試験例1の方法で抽出したプーアル茶葉抽出物を用いた。
また、各抽出物精製物のテアブラウニン濃度(TB値)は次のような手順で測定した。試作品1〜12を、遠心エバポレーターを用い乾燥し、それぞれを10mg/mLの濃度に蒸留水に溶解、その後、等量のn−ブタノールと、3分間激しく震盪混合を行った後、2400×gで遠心分離を行う。得られた下層の水層部分80μL, 飽和シュウ酸水溶液80μL, 蒸留水 240μL, 95%(v/v)エタノール 600μLを混合し、380nmの吸光度を測定し、TB値とした。比較品には試験例1の方法で抽出したプーアル茶葉抽出物を用いた。
各試作品の抽出条件を表2に、各試作品、比較品の相対活性比及びTB値を表3に示す。
この結果、比較品と比べた場合に、特に試作品1、2、11にてLOX−1阻害活性の向上がみられた。
上記、試作品1、2、11について特にLOX−1阻害活性が優れていたことから、比較品と試作品1、2、11を0.5%重量濃度に水に溶解したプーアル茶精製物の風味を、5名のパネラーの評価により比較した。不快臭が無いものに1点、不快臭が残っているものに0点
と点数をつけ、5名の合計点により比較を行った。各評価品の合計点を表4に示す。
なお、合計点で4点以上を合格品とする。
その結果、試作品11には不快臭が無く、風味が良好であり、かつ、LOX−1阻害活性の上昇した精製物であった。一方、試作品1、2については、LOX−1阻害活性の上昇はあるものの、不快臭があり比較品とは甚だしく劣る風味となっており、本発明には不適である。
また、試作品9、11、12のようにLOX−1阻害活性の向上が見られるプーアル茶葉抽出物精製物の風味を同様に調べたところ、いずれも評価の合計点が4点以上となった。
以上の結果から、LOX−1阻害活性の向上が見られるプーアル茶葉抽出物の精製物ではTB値が1.3以上となり、しかも不快臭が顕著に低減され、風味が良好なものであるのに対し、TB値が1.3未満のプーアル茶葉抽出物の精製物は不快な風味を有することが明らかとなった。
(実施例2:プーアル茶葉抽出物の精製物の製造)
プーアル茶葉(京都グレインシステム社製)20g又は40gを、90%(v/v)のエタノール水溶液1000mLに添加し、24時間ごとに攪拌しながら1週間浸漬した。浸漬後、プーアル茶葉を濾紙No.101(アドバンテック社)にて濾過し、1晩風乾、得られた茶葉5gを450mLの蒸留水に加え、加圧タンクで120℃、20分間加圧、加熱を行い、熱水抽出を行った。プーアル茶葉20g浸漬物より試作品13を得、プーアル茶葉40g浸漬物より試作品14を得た。得られたプーアル茶葉抽出物の精製物のLOX−1阻害活性の相対活性比とTB値をそれぞれ実施例1と同様に測定した。なお、試験例1の方法で抽出したプーアル茶葉抽出物を比較品とした。その結果を表5に示す。
その結果、試作品13、14共に比較品より優れたLOX−1阻害活性を示し、且つTB値が1.3以上となり、加えて、実施例1と同様のパネラーによる官能試験を行ったところ、両試作品は、評価の合計点が4点以上であったことから、優れた風味の精製物であった。すなわち、含水エタノールに茶葉を静置浸漬させるという極めて簡便な方法でプーアル茶葉抽出物の精製物の製造できることが示された。
(実施例3:プーアル茶葉抽出物の精製物の製造)
プーアル茶葉(京都グレインシステム社製)100gを、900mL蒸留水に添加し、120℃20分間加圧加熱抽出を行った。抽出液を回収後、粉末活性炭に抽出液を通過させ試作品15を得た。続いて、試作品15を分画分子量10000の限外濾過膜に供し、限外濾過を行い、濾過膜を通過しない成分を回収し試作品16を得た。得られたプーアル茶葉抽出物の精製物のLOX−1阻害活性の相対活性比とTB値をそれぞれ実施例1と同様の方法で測定した。試験例1の方法で抽出したプーアル茶葉抽出物を比較品とした。その結果を表6に示す。
その結果、試作品15、16共に比較品より優れたLOX−1阻害活性を示し、且つTB値が1.3以上となり、加えて、実施例1と同様のパネラーによる官能試験を行ったところ、両試作品は、評価の合計点が4点以上であったことから、優れた風味の精製物であった。すなわち、TB値の高いプーアル茶葉抽出物精製物はLOX−1阻害活性が高く、且つ、風味の優れたプーアル茶葉抽出物の精製物であることが示された。
(実施例4:プーアル茶葉抽出物の精製物の不快臭比較)
試作品11、13、14中のTMB及び1,2−ジメトキシベンゼン(DMB)濃度を測定し、不快臭の有無を比較した。比較品として試験例1の方法で抽出したプーアル茶(比較品1)及び、急須で入れたプーアル茶(比較品2)を使用した。比較品2は、5gの茶葉を急須に入れ160mL熱湯を加え、茶葉をすすいだあと一旦湯を廃棄し、新たに200mL熱湯入れ3分間蒸らし抽出を行い得た。TMB及びDMBの測定はガスクロマトグラフィー−質量分析計(GC−MS)分析を用い行った。使用機器は、Rtx(登録商標)−200MS(0.25mmid×30m、膜厚0.25μm、RESTEK社製)、SPMEファイバー(50/30μm、DVB/CAR/PDMS、スペルコ社製)、GC−MSは、JMS−Q1000GC K9(日本電子社製)を用いた。SPMEファイバーの条件は、前加熱(65℃、1分)、吸着時間(30分)、脱着時間(10分)、注入口温度(250℃)で行った。また、GCの条件は、温度条件(50℃で10分→320℃まで10℃/分→320℃で10分)、スプリット(比:20)、キャリアガス(ヘリウム)で行った。
1,2,3−トリメトキシベンゼン及び1,2−ジメトキシベンゼン(いずれもシグマアルドリッチ社製)を用い検量線を作成し、各試作品及び比較品の重量濃度を0.1%に統一し、それぞれの中に含まれるTMB、DMB濃度を測定した。その結果を表7に示す。
その結果、比較品1、2に対し、試作品中に含まれるTMBは10分の1以下となりDMBも検出下限以下の濃度であることが明らかとなり、これら試作品の不快臭が大きく改善されていることが明らかとなった。
一方、比較品1、2はいずれもプーアル茶葉由来の不快臭を強く感じるものであった。
(実施例5:プーアル茶葉抽出物精製物を含有する食品)
実施例3で得た試作品16の固形物1gをあらかじめ100mLのエタノールに溶解させ、これにパラチニット500g(パラチニット社製)、還元麦芽糖水飴(株式会社東和化成工業製、Bx70)714g(固形分500g)からなる糖液を真空釜で混合し、真空度―600mmHgの条件で155℃まで炊き上げた。これを冷却盤にあけ、約100℃まで冷却した時点で、クエン酸15g、レモン香料1.1mL、色素1mLを添加、混合後に固化してノンシュガーハードキャンディを得た。このノンシュガーハードキャンディは、プーアル茶独特の不快臭が感じられず、菓子として食べ易いものであった。

Claims (3)

  1. LOX−1阻害活性を有する後発酵茶精製組成物であって、
    前記後発酵茶精製組成物の固形分の濃度が1%(w/v)である水溶液中のテアブラウニンの濃度が380nmの吸光度にて1.3以上で示され、且つ、
    前記後発酵茶精製組成物の固形分の濃度が0.1%(w/v)である水溶液中の1,2,3−トリメトキシベンゼン濃度が20ng/mL以下または1,2−ジメトキシベンゼン濃度が1ng/mL以下であることを特徴とする後発酵茶精製組成物。
  2. LOX−1阻害活性を有する後発酵茶葉抽出物の精製物を含む後発酵茶精製組成物の製造方法であって、
    (a)〜(c)の工程:
    (a)低級アルコール又は含水低級アルコールに浸漬させる工程を経た後発酵茶葉を熱水で抽出する工程、
    (b)後発酵茶葉の熱水抽出物又は前記(a)工程で得られる後発酵茶葉抽出物を固体吸着剤と接触させ非吸着成分を回収する工程、
    (c)後発酵茶葉の熱水抽出物又は前記(a)工程で得られる後発酵茶葉抽出物を分画分子量が1000〜10000の限外ろ過膜により処理を行い、該限外ろ過膜を通過しない成分を回収する工程、
    からなる群より選ばれる一つ以上の工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の後発酵茶精製組成物の製造方法。
  3. 請求項1に記載の後発酵茶精製組成物を含有することを特徴とする飲食品。
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