以下、発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
(実施形態1)
図1は、実施形態1の測位システム10及び測位端末20を備える位置判別システム1を示す図である。測位端末20は、カーナビゲーション装置、スマートフォン等の現在位置判別機能を備えた装置である。測位システム10は、測位端末20に測位信号(測距信号、航法信号ともいう。)を送信するシステムである。
測位システム10は、複数の測位信号送信機111〜11Mを備える。測位信号送信機111〜11Mは、それぞれ、構造物(Structure)に配置される。構造物は、例えば、高層ビル、家屋、鉄塔、駅施設、空港施設、港湾施設、スタジアム等の建物である。なお、構造物には、建物のみならず、橋梁、塀、鉄柱等の構築物(Non-building structure)、及び、クレーン、門、風車等の設備も含まれる。また、構造物には、地上の構造物のみならず、桟橋、メガフロート、船舶等の水上の構造物も含まれる。
測位信号送信機111〜11Mの配置場所は、構造物の内部(例えば、建物の内部)であってもよいし、外部であってもよい。なお、本実施形態において、符号に使用されるMは任意の整数である。測位信号送信機111〜11Mは略同じ構成である。以下、測位信号送信機111〜11Mの構成として、測位信号送信機11の構成を説明する。
測位信号送信機11は、測位端末20に対して無線で測位信号を送信する疑似衛星である。無線は、典型的には電波であるが、光(例えば、赤外線)もしくは音(例えば、超音波)であってもよい。測位信号送信機11は、地上若しくは水上の構造物に配置される。本実施形態では、一例として、測位信号送信機11は、IMES(Indoor Messaging System)対応の送信機であるものとする。IMESは、屋内測位技術の一つである。IMESは、準天頂衛星システムユーザインタフェース仕様書(IS−QZSS)等で規定されている。
測位信号送信機11は、測位端末20に対してIMES信号等の地上波を送信する。地上波とは、地上を伝わる電波のことである。IMES信号は、GPS(Global Positioning System)の測位信号(例えば、GPSのL1信号)を模した測位信号である。測位信号送信機11から送信される信号には、測位信号送信機11自身の位置情報(例えば、経度、緯度、及び高度の情報)が含まれる。位置情報は、測位信号に航法メッセージとして重畳される。
図2は、測位信号送信機11のブロック図である。測位信号送信機11は、計時部110と、送信部120と、通信部130と、制御部140と、を備える。
計時部110は、時刻を計時するタイマーである。計時部110は、例えば、水晶振動子、ルビジウム発振器、セシウム発振器等のクロック源からの信号を基準信号として時刻を計時する。計時部110は、測位信号送信機11の計時手段(送信機側計時手段)として機能する。なお、以下の説明では、測位信号送信機11が計時する時刻を「送信機側の時刻」と表現する。
送信部120は、測位信号を送信する送信ユニットである。送信部120は、例えば、情報を高周波信号に乗せる変調回路、高周波信号を増大させる増幅回路、及び、これら回路を制御する制御装置等により構成される。送信部120は、測位信号送信機11の送信手段として機能する。
通信部130は、測位信号送信機11が他の装置と通信するための通信インタフェースである。通信部130は、USB(Universal Serial Bus)インタフェース等の外部機器接続インタフェースであってもよいし、LAN(Local Area Network)インタフェース等のネットワーク接続インタフェースであってもよい。また、通信部130は、有線インタフェースであってもよいし、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線インタフェースであってもよい。勿論、通信部130は、タイミング信号を送受信するタイミングインタフェースであってもよい。タイミングインタフェースも通信インタフェースの一種である。通信部130は、測位信号送信機11の通信手段(送信機側通信手段)として機能する。
制御部140は、プロセッサ等の処理装置で構成される。制御部140は、測位信号送信機11の各部を制御する制御装置として機能する。制御部140は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサで構成されていてもよい。制御部140が複数のプロセッサで構成される場合、これら複数のプロセッサは、測位信号送信機11内の離れた場所(例えば、別の基板)に配置されていてもよい。制御部140は、例えば制御部140内もしくは制御部140外のROM(Read Only Memory)或いはRAM(Random Access Memory)に格納されているプログラムに従って動作することで、後述の信号送信処理を含む種々の動作を実現する。なお、プログラムという概念には、マイクロコードを用いたマイクロプログラムも含まれる。
図3は、制御部140の機能ブロック図である。制御部140は、同期部141、送信制御部142としての機能を有している。これら機能ブロック(同期部141、送信制御部142)は、ソフトウェアブロックであってもよいし、ハードウェアブロックであってもよい。例えば、図3に示した各機能ブロックがそれぞれ1つのハードウェア(例えば、1つのプロセッサ、或いは、半導体チップ(ダイ)上の1つの回路ブロック)で構成されていてもよい。勿論、1つの機能ブロックが複数のプロセッサの協働により実現されていてもよい。また、制御部140を1つのプロセッサとし、各機能ブロックをソフトウェア(マイクロプログラムを含む。)で実現してもよい。なお、各機能ブロックをソフトウェアで実現する場合であっても、制御部140を複数のプロセッサで構成することは可能である。同期部141は測位信号送信機11の同期手段として機能し、送信制御部142は測位信号送信機11の送信制御手段として機能する。送信制御部142を測位信号送信機11の送信手段と見なしてもよい。
次に、測位端末20の構成について説明する。
測位端末20は、現在位置を判別する装置である。測位端末20は、携帯端末(例えば、スマートフォン、タブレット端末)であってもよいし、移動体に設置される装置(例えば、カーナビゲーション装置)であってもよい。測位端末20は、ユーザの移動に伴って、若しくは移動体の移動に伴ってその位置が変化する。
図4は、測位端末20のブロック図である。測位端末20は、計時部210と、受信部220と、通信部230と、表示部240と、制御部250と、を備える。
計時部210は、時刻を計時するタイマーである。計時部210は、例えば、水晶振動子、ルビジウム発振器、セシウム発振器等のクロック源からの信号を基準信号として時刻を計時する。計時部110は、測位端末20の計時手段(端末側計時手段)として機能する。なお、以下の説明では、測位端末20が計時する時刻を「端末側の時刻」と表現する。
受信部220は、測位信号を受信する受信ユニットである。受信部220は、例えば、アンテナで受信した高周波信号を増大させる増幅回路、高周波信号から情報を取り出す復調回路、及び、これら回路を制御する制御装置等により構成される。受信部220は、測位端末20の受信手段として機能する。
通信部230は、測位端末20が他の装置と通信するための通信インタフェースである。通信部230は、USBインタフェース等の外部機器接続インタフェースであってもよいし、LANインタフェース等のネットワーク接続インタフェースであってもよい。また、通信部230は、有線インタフェースであってもよいし、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線インタフェースであってもよい。通信部230は、測位端末20の通信手段(端末側通信手段)として機能する。
表示部240は、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(Organic Electro-Luminescent Display)等の表示装置である。表示部240は、制御部250の制御に従って、ユーザに各種情報を表示する。
制御部250は、プロセッサ等の処理装置で構成される。制御部250は、測位端末20の各部を制御する制御装置として機能する。制御部250は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサで構成されていてもよい。制御部250が複数のプロセッサで構成される場合、これら複数のプロセッサは、測位端末20内の離れた場所(例えば、別の基板)に配置されていてもよい。制御部250は、例えば制御部250内もしくは制御部250外のROM或いはRAMに格納されているプログラムに従って動作することで、後述の位置判別処理を含む種々の動作を実現する。なお、プログラムという概念には、マイクロコードを用いたマイクロプログラムも含まれる。
図5は、制御部250の機能ブロック図である。制御部250は、観測部251、判別部252、取得部253、出力部254としての機能を有している。これら機能ブロック(観測部251〜出力部254)は、ソフトウェアブロックであってもよいし、ハードウェアブロックであってもよい。観測部251は測位端末20の観測手段として機能し、判別部252は測位端末20の判別手段として機能する。また、取得部253は測位端末20の取得手段として機能し、出力部254は測位端末20の出力手段として機能する。
次に、このような構成を有する位置判別システム1の動作について説明する。
位置判別システム1の動作は測位信号送信機11の動作と測位端末20の動作とに分けられる。最初に測位信号送信機11の動作について説明する。
測位信号送信機11に電源が投入されると、測位信号送信機11の制御部140は信号送信処理を開始する。上述したように、制御部140は、同期部141、送信制御部142として機能する。以下、図6のフローチャートを参照して信号送信処理を説明する。
同期部141は、計時部110が計時する時刻を測位システム10が備える他の測位信号送信機11の時刻と同期させる(ステップS101)。時刻を同期させる方法は様々な方法を使用可能である。一例として以下の方法を使用できる。
システム設置者は、測位システム10を設置する際に、測位信号送信機111〜11Mの内の一台をマスター、他の測位信号送信機11をスレーブに設定する。そして、同期部141は、通信部130を介してマスターと設定された測位信号送信機11から時刻を取得し、その時刻に計時部110の時刻を一致させる。自身の測位信号送信機11がマスターの場合は、同期部141は、他の測位信号送信機11に、計時部110の時刻を送信するだけでよい。これにより、測位システム10が備える全ての測位信号送信機11の時刻が一致する。
次に、送信制御部142は、送信部120に測位信号を送信させる(ステップS102)。送信部120は、同期部141によって同期された時刻に基づいて測位信号を送信する。
続いて、同期部141は、前回、時刻を同期した時から一定時間が経過したか判別する(ステップS103)。一定時間は装置設計者或いはシステム設置者が任意に設定可能である。例えば、一定時間は、10秒であってもよいし、10分であってもよい。
一定時間が経過していない場合(ステップ103:No)、同期部141はステップS102に戻る。送信制御部142は、前回、ステップS101で同期した時刻のまま、送信部120に測位信号の送信を継続させる。
一定時間が経過している場合(ステップ103:Yes)、同期部141はステップS101に戻り、再び、計時部110が計時する時刻を他の測位信号送信機11の時刻と同期させる。制御部140は、ステップS101〜ステップS103の動作を繰り返す。
次に測位端末20の動作について説明する。
測位端末20に電源が投入されると、測位端末20の制御部250は位置判別処理を開始する。上述したように、制御部250は、観測部251、判別部252、取得部253、出力部254として機能する。以下、図7のフローチャートを参照して位置判別処理を説明する。
観測部251は、測位信号送信機11から送信される測位信号を観測(検出)する(ステップS111)。例えば、観測部251は、受信部220によって復調された信号に含まれる測距コード(例えばC/Aコード)を測位信号として検出する。測距コードは、航法メッセージを変調することにより生成されるコードである。測距コードは、測位端末20が信号を発信した測位信号送信機11を識別するための識別符号として機能するとともに、送信元の測位信号送信機11までの距離を測定するためのタイムマークとして機能する。測距コードを復調して得られる航法メッセージには、測位信号の送信元の測位信号送信機11の位置情報が含まれている。
観測部251は、検出した測位信号に基づいて、測位信号送信機11が測位信号を送信してから受信部220が測位信号を受信するまでの時間差を取得する。また、観測部251若しくは受信部220は、判別部252が高精度に現在位置を判別できるように、測位信号の搬送波位相を観測してもよい。
次に、観測部251は、4つ以上の異なる測位信号送信機11から一度に測位信号を受信したか判別する(ステップS112)。判別部252が現在位置を算出するにあたり、4つの求めるべき変数がある。具体的には、判別部252は、測位端末20の位置を示す3つの変数xU、yU、zU、及び、端末側時刻と送信機側時刻との時刻差δtnを求める必要がある。そのため、判別部252が現在位置を算出するには、測位信号が少なくとも4つ必要である。4以上の測位信号を受信していない場合(ステップS112:No)、観測部251は、4以上の測位信号を受信するまでステップS111とステップS112を繰り返す。
4以上の測位信号を受信している場合(ステップS112:Yes)、取得部253は、受信した測位信号に基づいて観測情報を取得する(ステップS113)。観測情報は、例えば、測位信号送信機11の位置情報、及び測位信号送信機11までの観測距離である。位置情報は測位信号を復調して得られる航法メッセージに含まれている。観測距離は、測位信号送信機111〜114それぞれと測位端末20との距離である。この観測距離には、送信機側の時刻と端末側の時刻との時刻差による誤差が含まれている。
以下、観測距離について詳細に説明する。なお、以下の説明では、理解を容易にするため、測位端末20は、測位信号送信機111〜114の4台から測位信号を受信したものとする。図8は、測位端末20が測位信号送信機111〜114の4台から測位信号を受信した様子を示す図であり、図9は、その時の測位端末20付近の拡大図である。
図8に示すL1〜L4は、測位信号送信機11と測位端末20との観測距離を示している。L1が測位信号送信機111と測位端末20との観測距離である。L2が測位信号送信機112と測位端末20との観測距離である。L3が測位信号送信機113と測位端末20との観測距離である。L4が測位信号送信機114と測位端末20との観測距離である。
観測距離には誤差(特に、送信機側の時刻と端末側の時刻との時刻差δtnによる誤差)が不可避的に含まれる。そのため、観測距離(図8に示すL1〜L4)は、測位信号送信機11と測位端末20との実際の距離(図8に示すρ1〜ρ4)とは一致しない。観測距離L1〜L4の観測モデルは以下の式(1−1)〜式(1−4)で表現される。
L1=ρ1+Cδtn+ε1 (1−1)
L2=ρ2+Cδtn+ε2 (1−2)
L3=ρ3+Cδtn+ε3 (1−3)
L4=ρ4+Cδtn+ε4 (1−4)
ここで、ε1〜ε4はマルチパスを含む観測誤差であり、Cは光速(およそ30万km/s)である。また、δtnは測位端末20と測位信号送信機11との時刻差であり、以下の式(2)で示される。式(2)において、tUは端末側の時刻であり、tは送信機側の時刻である。なお、本実施形態では、測位信号送信機111〜11Mの時刻は、同期部141によって同期されている。従って、送信機側の時刻tは全ての測位信号送信機11で略同じである。
δtn=tU−t (2)
また、式(1−1)〜式(1−4)において、ρ1〜ρ4は、測位信号送信機111〜114のアンテナ位相中心位置と測位端末20のアンテナ位相中心位置との間の幾何距離を示している。幾何距離とは実際の距離(幾何学的距離)のことである。ρ1〜ρ4は、以下の式(3−1)〜式(3−4)で示される。式(3−1)〜式(3−4)において、(xU、yU、zU)は測位端末20のアンテナ位相中心位置である。また、(x1、y1、z1)〜(x4、y4、z4)は測位信号送信機111〜114のアンテナ位相中心位置である。
観測距離L1〜L4は、それぞれ、疑似距離であってもよいし、搬送波位相距離であってもよい。また、観測距離L1〜L4は、疑似距離或いは搬送波位相距離を独自に補正して算出される距離であってもよい。疑似距離LP及び搬送波距離LΦの観測モデルを以下の式(A1)及び式(A2)に示す。式(A1)及び式(A2)において、εPはマルチパスを含む疑似距離観測ノイズであり、εΦはマルチパスを含む搬送波距離観測ノイズである。Nはアンビギュイティであり、λは測位信号の搬送波の波長である。
LP=ρ+Cδtn+εP (A1)
LΦ=ρ+Cδtn+Nλ+εΦ (A2)
取得部253は、測位信号を受信して得た情報に基づいて、観測距離L1〜L4を計算する。この計算に使用する情報は、例えば、測位信号が送信されてから測位端末20がその測位信号を受信するまでの時間差、及び、測位信号の搬送波位相である。疑似距離をそのまま観測距離とすることも可能である。しかしながら、測位精度を考慮すると、観測距離の算出には搬送波距離も使用することが望ましい。
また、取得部253は、測位信号を復調して得られる航法メッセージから測位信号送信機111〜114それぞれの位置情報(x1、y1、z1)〜(x4、y4、z4)を取得する。取得部253は、4つの位置情報(x1、y1、z1)〜(x4、y4、z4)と、それらに対応する4つの観測距離L1〜L4と、を観測情報として取得する。
なお、上記では測位信号が4つの例を示したが、測位信号は4つより多くてもよい。例えば、観測部251が同時に5つの測位信号を受信したのであれば、取得部253は5つの位置情報と、それらに対応する5つの観測距離と、を観測情報として取得してもよい。
次に、判別部252は、観測情報に基づいて測位端末20の現在位置を判別する(ステップS114)。例えば、取得部253が観測情報として4つの観測距離L1〜L4と4つの位置情報(x1、y1、z1)〜(x4、y4、z4)とを取得したとする。このとき、判別部252は、これら4つの観測距離と4つの位置情報とに基づいて、4つの変数(xU、yU,zU、δtn)の値を算出する。上述したように、(xU、yU,zU)は測位端末20のアンテナ位相中心位置であり、δtnは測位端末20と測位信号送信機11との時刻差である。
このとき、判別部252は、4つの変数(xU、yU、zU、δtn)の値を最小二乗法により算出してもよい。例えば、取得部253が観測情報として4つの観測距離L1〜L4と4つの位置情報(x1、y1、z1)〜(x4、y4、z4)とを取得したとする。このとき、判別部252は、上記式(1−1)〜式(1−4)に示す観測誤差ε1〜ε4の二乗和fが最小となるように4つの変数の値を定める。二乗和fは以下の式(4)で示される。式(4)に示す各項には重みが付与されていてもよい。
f=ε1 2+ε2 2+ε3 2+ε4 2 (4)
なお、観測誤差ε1〜ε4は、図9に示すように、観測距離L1〜L4からCδtnを減じた残りの誤差である。Cδtnは、測位端末20と測位信号送信機11との時刻差δtnに光速Cを乗じたものであり、送信機側の時刻と端末側の時刻との時刻差による誤差を示している。なお、図9は、Cδtnがプラスの値となることとを想定した図である。時刻差δtnがマイナスの値となれば、当然、Cδtnもマイナスの値となる。
判別部252は、4つの変数のうちの3つの変数xU、yU、zUを測位端末20の現在位置として取得する。その後、出力部254は、判別部252が取得した現在位置を表示部240に出力する(ステップS115)。出力部254はマップに現在位置を表示してもよい。出力が完了したら、制御部250は、ステップS111に戻り、ステップS111〜ステップS115の処理を繰り返す。
本実施形態によれば、測位信号送信機111〜11Mは、それぞれ、内部の時刻を他の測位信号送信機の時刻と同期させる同期部141を有している。測位端末20は現在位置の判別にあたり、送信機の時刻と端末側の時刻との時刻差δtnも算出する。測位信号送信機111〜11M間の時刻差が大きいと、時刻差δtnの値も送信機毎に大きく変化することになるので、測位端末20は高精度に現在位置の判別ができない。しかしながら、本実施形態の測位システム10は、同期部141によって、計時部110が計時する時刻が他の測位信号送信機の時刻と同期している。そのため、測位信号送信機間の時刻差が小さくなるので、測位端末20は高精度に現在位置を判別できる。
(実施形態2)
実施形態1の測位システム10は、測位信号送信機11の時刻を他の測位信号送信機11の時刻と同期させた。実施形態2では、測位信号送信機11間の時刻が同期していなくても、測位端末20が高精度に現在位置を判別できるようにする。
図10は、実施形態2の位置判別システム2を示す図である。位置判別システム2は、測位システム10と、測位端末20と、測位信号受信機30と、を備える。測位端末20の構成は、図4及び図5に示す実施形態1の測位端末20の構成と略同じである。
測位システム10は、測位信号送信機111〜11Mを有している。測位信号送信機111〜11Mの構成は、図2及び図3に示した実施形態1の測位信号送信機11と略同じであるが、同期部141は必ずしも必要ない。また、測位システム10は、測位信号送信機111〜11Mに加えて情報処理装置12を備えている。
図11は、情報処理装置12のブロック図である。情報処理装置12は、計時部150と、制御部160と、通信部170と、を備える。
計時部150は、時刻を計時するタイマーである。計時部150は、例えば、水晶振動子、ルビジウム発振器、セシウム発振器等のクロック源からの信号を基準信号として時刻を計時する。
制御部160は、プロセッサ等の処理装置で構成される。制御部160は、情報処理装置12の各部を制御する制御装置として機能する。制御部160は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサで構成されていてもよい。制御部160が複数のプロセッサで構成される場合、これら複数のプロセッサは、情報処理装置12内の離れた場所(例えば、別の基板)に配置されていてもよい。制御部160は、例えば制御部160内もしくは制御部160外のROM或いはRAMに格納されているプログラムに従って動作することで、後述の情報通知処理を含む種々の動作を実現する。なお、プログラムという概念には、マイクロコードを用いたマイクロプログラムも含まれる。
図12は、制御部160の機能ブロック図である。制御部160は、情報取得部161、情報生成部162、情報通知部163、としての機能を有している。これら機能ブロック(情報取得部161〜情報通知部163)は、ソフトウェアブロックであってもよいし、ハードウェアブロックであってもよい。情報取得部161は情報処理装置12の情報取得手段として機能し、情報生成部162は情報処理装置12の情報生成手段として機能し、情報通知部163は情報処理装置12の情報通知手段として機能する。
図11に戻り、通信部170は、測位端末20が他の装置と通信するための通信インタフェースである。通信部170は、USBインタフェース等の外部機器接続インタフェースであってもよいし、LANインタフェース等のネットワーク接続インタフェースであってもよい。また、通信部170は、有線インタフェースであってもよいし、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線インタフェースであってもよい。通信部170は、タイミング信号を送受信するタイミングインタフェースを有していてもよい。情報処理装置12は、図10に示すように、測位信号送信機111〜11Mと通信するとともに、測位信号受信機30とも通信する。
測位信号受信機30は、測位信号送信機11間の測位信号の送信タイミングのズレ(以下、時刻ズレという。)を判別する装置である。測位信号受信機30は、測位信号送信機11から送信される測位信号を受信可能に構成されている。測位信号受信機30の構成は測位端末20と略同じであるが、測位信号受信機30は、測位端末20とは異なり、地上若しくは水上の構造物に固定されている。
測位信号受信機30には、各測位信号送信機111〜11Mまでの幾何距離が予め記憶されている。測位信号受信機30は、この幾何距離と、測位信号を受信して得られる観測距離と、に基づいて、基準時刻(例えば、自身が計時する時刻)と測位信号送信機送信機それぞれの時刻との時刻差を判別する。基準時刻は必ずしも測位信号受信機30が計時する時刻である必要はない。各測位信号送信機11の時刻が同期している場合、これら複数の時刻差の値は略同じ値となる。しかしながら、各測位信号送信機11の時刻が同期していない場合、時刻差の値は測位信号送信機11毎に異なる値となる。測位信号受信機30は、判別した時刻差を情報処理装置12に送信する。
次に、このような構成を有する位置判別システム2の動作について説明する。
位置判別システム1の動作は、測位信号送信機11の動作と、情報処理装置12の動作と、測位端末20の動作と、に分けられる。測位信号送信機11の動作は、時刻の同期が行われない点を除いては実施形態1と同じであるので説明を省略する。最初に、情報処理装置12の動作について説明する。
情報処理装置12に電源が投入されると、情報処理装置12の制御部160は情報通知処理を開始する。上述したように、制御部160は、情報取得部161、情報生成部162、情報通知部163として機能する。以下、図13のフローチャートを参照して情報通知処理を説明する。
情報取得部161は、測位信号受信機30から測位信号送信機11の時刻差の情報を取得する(ステップS201)。情報取得部161が取得する時刻差は、基準時刻(例えば、測位信号受信機30が計時する時刻)と測位信号送信機11それぞれの時刻との差分である。
次に、情報生成部162は、ステップS201で取得した複数の時刻差の情報に基づいて補正情報を生成する(ステップS202)。補正情報は、測位信号送信機11間の測位信号の送信タイミングのズレ(時刻ズレ)の情報が含まれているのであれば、どのようなフォーマットであってもよい。
このとき、補正情報に含まれる時刻ズレ情報は、複数の時刻差の基準時刻を、他の時刻に置き換えたものであってもよい。例えば、時刻ズレの情報は、複数の時刻差それぞれを、複数の時刻差の平均値からの差分に置き換えたものであってもよい。この場合、時刻ズレ情報の基準時刻tTは、複数の時刻差の基準時刻(例えば、測位信号受信機30が計時する時刻)に平均値を加えた時刻となる。時刻ズレ情報の基準時刻tTは平均値に限られず、他の時刻(例えば、情報処理装置12が計時する時刻)であってもよい。ステップS201で取得した複数の時刻差をそのまま時刻ズレ情報とするのであれば、基準時刻tTは複数の時刻差の基準時刻そのものとなる。
次に、情報通知部163は、ステップS202で生成した補正情報を測位端末20に通知する(ステップS203)。通知の方法は様々な方法を使用可能である。例えば、情報通知部163は、通信部170を制御し、測位信号送信機11を介して測位端末20に補正情報を通知してもよい。このとき、測位信号送信機11は、測位信号に重畳させる航法メッセージに補正情報を含ませることにより、補正情報を測位端末20に通知してもよい。
補正情報の通知が完了したら、制御部160は、ステップS201に戻り、ステップS201〜ステップS203の処理を繰り返す。
次に測位端末20の動作について説明する。
測位端末20に電源が投入されると、測位端末20の制御部250は位置判別処理を開始する。以下、図14のフローチャートを参照して位置判別処理を説明する。
観測部251は、測位信号送信機11から送信される測位信号を観測する(ステップS211)。そして、取得部253は、情報処理装置12が通知する補正情報を取得する(ステップS212)。補正情報が航法メッセージに含まれるのであれば、取得部253は、測位信号を復調して得られる航法メッセージから補正情報を抽出する。上述したように、補正情報には、時刻ズレ情報が含まれている。時刻ズレ情報は、測位信号送信機111〜11Mそれぞれの時刻の、基準時刻tTまでの時刻差を示す情報である。
次に、観測部251は、4つ以上の異なる測位信号送信機11から一度に測位信号を受信したか判別する(ステップS213)。4以上の測位信号を受信していない場合(ステップS213:No)、制御部250は、4以上の測位信号を受信するまでステップS211からステップS213までの処理を繰り返す。
4以上の測位信号を受信している場合(ステップS213:Yes)、取得部253は、受信した測位信号に基づいて観測情報を取得する(ステップS214)。観測情報は、例えば、測位信号送信機11の位置情報、及び測位信号送信機11までの観測距離である。ステップS212で取得した観測距離には、測位信号送信機11側の時刻と測位端末20側の時刻との時刻差による誤差が含まれている。
測位信号送信機111〜11Mの時刻が同期していない場合、測位信号送信機11側の時刻が送信機毎に異なる。そのため、判別部252が求めるべき4つの変数の1つである時刻差δtnが送信機毎に大きく異なることになる。このままでは、判別部252は、測位端末20の現在位置(xU、yU、zU)を精度よく計算できない。
そこで、判別部252は、ステップS212で取得した補正情報に基づいて、観測距離を補正する(ステップS215)。より具体的には、判別部252は、各観測距離にそれぞれ対応する時刻ズレ分だけ距離を加算する。これにより、測位信号送信機111〜11Mの時刻がすべて基準時刻tTとなったものとみなすことができ、判別部252は、測位端末20の現在位置(xU、yU、zU)を精度よく計算することが可能になる。以下の説明では、基準時刻tTのことを「送信機側の時刻」ともいう。
次に、判別部252は、観測情報に基づいて測位端末20の現在位置を判別する(ステップS216)。判別手順は実施形態1のステップS114で説明した方法と略同じであるが、計算に使用する観測距離はステップS215で補正された観測距離とする必要がある。例えば、取得部253が、図8に示すように、観測情報として4つの観測距離と4つの位置情報を取得したとする。このとき、判別部252は、実施形態1の式(1−1)〜(1−4)で示した観測距離L1〜L4をそれぞれステップS215で補正された観測距離とする必要がある。
また、実施形態1で示した式(2)は以下の式(2A)に置き換える必要がある。式(2A)において、tTは送信機側の時刻、すなわち時刻ズレ情報の基準時刻である。
δtn=tU−tT (2A)
判別部252が測位端末20の現在位置を判別したら、出力部254は、判別部252が判別した現在位置を表示部240に出力する(ステップS217)。出力が完了したら、制御部250は、ステップS211に戻り、ステップS211〜ステップS217の処理を繰り返す。
本実施形態によれば、情報処理装置12は測位信号送信機11間の時刻ズレの情報が含まれる補正情報を測位端末20に通知するよう構成されている。測位端末20は、補正情報に基づいて観測情報を補正できるので、測位信号送信機11間の時刻が同期していなくても、高精度に現在位置を判別できる。
(実施形態3)
実施形態1、2では、測位端末20は受信した測位信号をそのまま使用したが、信頼性の低い測位信号を使用しないよう構成されていてもよい。以下、実施形態3の位置判別システム3について説明する。
図15は、実施形態3の位置判別システム3を示す図である。位置判別システム3は、測位システム10と、測位端末20と、を備える。測位端末20の構成は実施形態1或いは実施形態2の測位端末20と略同じ構成である。
測位システム10は、測位信号送信機111〜11Mを有している。測位信号送信機111〜11Mは、実施形態1或いは実施形態2の測位信号送信機11と略同じ構成である。また、測位システム10は、測位信号送信機111〜11Mに加えて情報処理装置12を備えている。情報処理装置12は、実施形態2の情報処理装置12と略同じ構成であるが、測位信号送信機111〜11Mに関する周知情報を取得するよう構成されている。周知情報は、複数の測位端末20に周知させる情報である。情報処理装置12はネットワークを介して他の装置(例えば、測位システム10を管理するサーバ)から周知情報を取得する。
次に、このような構成を有する位置判別システム3の動作について説明する。
位置判別システム1の動作は、測位信号送信機11の動作と、情報処理装置12の動作と、測位端末20の動作と、に分けられる。測位信号送信機11の動作は、実施形態1或いは実施形態2の測位信号送信機11と同じであるので説明を省略する。最初に、情報処理装置12の動作について説明する。
情報処理装置12に電源が投入されると、情報処理装置12の制御部160は情報通知処理を開始する。上述したように、制御部160は、情報取得部161、情報生成部162、情報通知部163として機能する。以下、図16のフローチャートを参照して情報通知処理を説明する。
情報取得部161は、通信部170を制御して、他の装置から周知情報を取得する(ステップS301)。周知情報には、信頼性の低い測位信号送信機11を特定するための送信機情報が含まれる。信頼性の低い測位信号送信機11は、例えば、故障、メンテナンス等により、信頼性の低い測位信号を出力している測位信号送信機11のことである。信頼性の低い測位信号送信機11には、付近への構造物の新設のため、マルチパスによる誤差が著しく大きくなってしまった測位信号送信機11が含まれていてもよい。信頼性の低い測位信号送信機か否かは、例えば、自身の現在位置がすでに分かっている固定の測位信号受信機が、受信した測距信号に基づいて計算される自身の現在位置と、すでに分かっている自身の現在位置(以下、保持現在位置という。)と、を比較することによって判別する。一例として、固定の測位信号受信機は、以下に示す方法で信頼性の低い測位信号送信機11を特定する。
例えば、固定の測位信号受信機は、受信した複数の測位信号に基づき現在位置を計算する。そして、固定の測位信号受信機は、計算した現在位置が保持現在位置を中心として予め設定された範囲内にない場合、その複数の測位信号の中に信頼性の低い測位信号が含まれていると判別する。固定の測位信号受信機は、複数の測位信号の組み合わせを変えて現在位置の計算を繰り返し、最終的に信頼性の低い測位信号を発信している測位信号送信機11を特定する。
次に、情報通知部163は、ステップS302で取得した送信機情報を測位端末20に通知する(ステップS302)。通知の方法は様々な方法を使用可能である。例えば、情報通知部163は、測位信号送信機11を介して測位端末20に補正情報を通知してもよい。このとき、測位信号送信機11は、測位信号に重畳させる航法メッセージに補正情報を含ませることにより、補正情報を測位端末20に通知してもよい。
送信機情報の通知が完了したら、制御部160は、ステップS301に戻り、ステップS301〜ステップS302の処理を繰り返す。
次に測位端末20の動作について説明する。
測位端末20に電源が投入されると、測位端末20の制御部250は位置判別処理を開始する。以下、図17のフローチャートを参照して位置判別処理を説明する。
観測部251は、測位信号送信機11から送信される測位信号を観測する(ステップS311)。そして、取得部253は、情報処理装置12が通知する送信機情報を取得する(ステップS312)。送信機情報が航法メッセージに含まれるのであれば、取得部253は、測位信号を復調して得られる航法メッセージから送信機情報を抽出する。このとき、取得部253は、実施形態2のステップS212で説明したように、観測情報を補正するための補正情報を取得してもよい。
次に、判別部252は、送信機情報に基づいて信頼性の低い測位信号送信機11を特定する(ステップS313)。そして、判別部252は、4つ以上の異なる測位信号送信機11から一度に測位信号を受信したか判別する(ステップS314)。このとき、判別部252は、受信した測位信号の中に信頼性の低い測位信号送信機11からの測位信号が含まれていた場合は、その測位信号は除いて測位信号の数をカウントする。4以上の測位信号を受信していない場合(ステップS314:No)、制御部250は、4以上の測位信号を受信するまでステップS311からステップS314までの処理を繰り返す。
4以上の測位信号を受信している場合(ステップS314:Yes)、取得部253は、受信した測位信号に基づいて観測情報を取得する(ステップS315)。観測情報は、例えば、測位信号送信機11の位置情報、及び測位信号送信機11までの観測距離である。このとき、判別部252は、信頼性の低い測位信号送信機11からの測位信号は観測情報の取得に使用しない。判別部252は、補正情報によって観測距離を補正してもよい。
次に、判別部252は、観測情報に基づいて測位端末20の現在位置を判別する(ステップS316)。判別手順は、実施形態1のステップS114、及び実施形態2のステップS216で説明した方法と略同じである。
判別部252が測位端末20の現在位置を判別したら、出力部254は、判別部252が判別した現在位置を表示部240に出力する(ステップS317)。出力が完了したら、制御部250は、ステップS311に戻り、ステップS311〜ステップS317の処理を繰り返す。
本実施形態によれば、情報処理装置12は信頼性の低い測位信号送信機11を特定するための送信機情報が含まれる送信機情報を測位端末20に通知するよう構成されている。測位端末20は、送信機情報に基づいて信頼性の低い測位信号を使用しないようにできるので、高精度に現在位置を判別できる。
(実施形態4)
実施形態1〜3では、測位端末20が受信する測位信号は測位信号送信機11からの信号であった。しかし、測位端末20が受信する測位信号には、測位衛星からの信号が含まれていてもよい。以下、実施形態4の位置判別システム4について説明する。
図18は、実施形態4の位置判別システム4を示す図である。位置判別システム4は、測位システム10と、測位端末20と、測位システム40と、を備える。測位システム10の構成は実施形態1、2、或いは3の測位システム10と略同じ構成である。なお、図18に示す測位システム10には情報処理装置12が含まれていないが、含まれていてもよい。
測位システム40は、航法衛星システム(NSS)である。測位システム40は、全地球航法衛星システム(GNSS)であってもよいし、地域航法衛星システム(RNSS)であってもよい。航法衛星システムは、衛星測位システム(SPS)と呼ばれることもある。全地球航法衛星システムの例として、GPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo、Compass等が挙げられる。また、地域航法衛星システムの例として、QZSS(準天頂衛星システム)、DORIS(Doppler Orbitography and Radiopositioning Integrated by Satellite)、IRNSS(Indian Regional Navigation Satellite System)等が挙げられる。
測位システム40は、複数の測位衛星411〜41Mを備える。測位衛星411〜41Mは、それぞれ、航法衛星システムが備える航法衛星である。航法衛星システムの時刻(以下、衛星側の時刻という。)に同期しており、衛星側の時刻に基づいて測位信号を送信する。なお、本実施形態において、符号に使用されるMは任意の整数であるものとする。11MのMと41MのMは異なる数であってもよい。以下の説明では、測位衛星411〜41Mを総称して測位衛星41という。
測位端末20は、測位信号に基づいて現在位置を判別する装置である。測位端末20の構成は、実施形態1〜3の測位端末20と略同じ構成であるが、測位端末20の受信部220は測位衛星41からも測位信号を受信可能である。また、制御部250の構成が一部異なっている。
図19は、制御部250の機能ブロック図である。制御部250は、観測部251a、観測部251、判別部252、取得部253、出力部254としての機能を有している。これら機能ブロック(観測部251a〜出力部254)は、ソフトウェアブロックであってもよいし、ハードウェアブロックであってもよい。観測部251aは測位端末20の第1の観測手段として機能し、観測部251bは測位端末20の第2の観測手段として機能し、判別部252は測位端末20の判別手段として機能し、取得部253は測位端末20の取得手段として機能し、出力部254は、測位端末20の出力手段として機能する。
次に、このような構成を有する位置判別システム1の動作について説明する。
位置判別システム1の動作は、測位信号送信機11の動作と、測位衛星41の動作と、測位端末20の動作と、に分けられる。測位信号送信機11及び測位衛星41の動作は、実施形態1、2、或いは3の測位信号送信機11と略同じであるので説明を省略する。以下、測位端末20の動作について説明する。
測位端末20に電源が投入されると、測位端末20の制御部250は位置判別処理を開始する。以下、図20のフローチャートを参照して位置判別処理を説明する。
観測部251a、測位信号送信機11から送信される測位信号を観測する。また、観測部251bは、測位衛星41から送信される測位信号を観測する(ステップS411)。なお、以下の説明では、測位信号送信機11から送信される測位信号のことを送信機測位信号、測位衛星41から送信される測位信号のことを衛星測位信号と呼ぶ。
次に、取得部253は、補正情報を取得する(ステップS412)。補正情報は、例えば、測位システム10或いは測位システム40が備える情報処理装置より送信される。補正情報が航法メッセージに含まれるのであれば、取得部253は、測位信号を復調して得られる航法メッセージから補正情報を抽出する。補正情報は、測位信号送信機11の航法メッセージに含まれていてもよいし、測位衛星41の航法メッセージに含まれていてもよい。
補正情報には、測位衛星41それぞれが送信する測位信号の伝搬遅延等を補正するための情報が含まれている。例えば、補正情報には、測位衛星41それぞれについての伝搬遅延情報(電離層伝搬遅延量、対流圏伝搬遅延量)、精密暦等の情報が含まれている。
次に、判別部252は、5つ以上の異なる測位信号送信機11及び測位衛星41から一度に測位信号を受信したか判別する(ステップS413)。判別部252が現在位置を算出するにあたり、5つの求めるべき変数がある。具体的には、判別部252は、測位端末20の現在位置を示す3つの変数xU、yU、zU、端末側の時刻と送信機側の時刻との差である時刻差δtn(第1の時刻差)、及び、端末側の時刻と衛星側の時刻との差である時刻差δts(第2の時刻差)、を求める必要がある。そのため、判別部252が現在位置を算出するには、測位信号が少なくとも5つ必要である。5以上の測位信号には、送信機測位信号と衛星測位信号とが混ざっていてもよい。
5以上の測位信号を受信していない場合(ステップS413:No)、制御部250は、5以上の測位信号を受信するまでステップS411からステップS413までの処理を繰り返す。なお、判別部252は、測位信号の数をカウントするにあたり、信頼性の低い測位信号送信機11或いは測位衛星41からの測位信号が含まれていた場合は、その測位信号は除いて測位信号の数をカウントしてもよい。信頼性の低い測位信号送信機11或いは測位衛星41の判別方法は実施形態2に示した方法と同様であってもよい。
5以上の測位信号を受信している場合(ステップS413:Yes)、取得部253は、受信した測位信号に基づいて観測情報を取得する(ステップS414)。観測情報は、例えば、測位信号送信機11或いは測位衛星41の位置情報、及び測位信号送信機11或いは測位衛星41までの観測距離である。位置情報は測位信号を復調して得られる航法メッセージに含まれている。測位衛星41までの観測距離は、実施形態1で説明したとおり、測位信号側の時刻と端末側の時刻との時刻差δtnによる誤差Cδtnが含まれている。また、測位衛星41までの観測距離には、衛星側の時刻と端末側の時刻との時刻差δtsによる誤差Cδtsに加えて、測位信号の伝搬遅延等による誤差が含まれている。
以下、観測距離について詳細に説明する。なお、以下の説明では、理解を容易にするため、測位端末20は、測位端末20が測位衛星411、412の2台、測位信号送信機111〜113の3台、合わせて5台の装置から同時に測位信号を受信したものとする。図21は、測位端末20が5台の装置から測位信号を受信した様子を示す図である。
図21に示すLS1、LS2は、測位衛星41と測位端末20との観測距離を示している。LS1が測位衛星411と測位端末20との観測距離であり、LS2が測位衛星412と測位端末20との観測距離である。また、図21に示すL3〜L5は、測位信号送信機11と測位端末20との観測距離を示している。L3が測位信号送信機113と測位端末20との観測距離であり、L4が測位信号送信機114と測位端末20との観測距離である。また、L5が測位信号送信機115と測位端末20との観測距離である。
観測距離には誤差が不可避的に含まれる。そのため、観測距離(図21に示すLS1、LS2、L3〜L5)は、測位衛星41或いは測位信号送信機11と測位端末20との実際の距離(図21に示すρS1、ρS2、ρ3〜ρ5)とは一致しない。観測距離LS1、LS2、L3〜L5の観測モデルは以下の式(1B−1)〜式(1B−5)で表現される。
LS1=ρS1+Cδts+εS1 (1B−1)
LS2=ρS2+Cδts+εS2 (1B−2)
L3 =ρ3 +Cδtn+ε3 (1B−3)
L4 =ρ4 +Cδtn+ε4 (1B−4)
L5 =ρ5 +Cδtn+ε5 (1B−5)
ここで、εS1、εS2、ε3〜ε5はマルチパスを含む観測誤差であり、Cは光速である。また、δtnは測位端末20と測位信号送信機11との時刻差であり、実施形態1の式(2)或いは実施形態2の式(2A)で示される。また、δtsは測位衛星41と測位信号送信機11との時刻差であり、以下の式(2B)で示される。式(2B)において、tUは端末側の時刻であり、tSは衛星側の時刻である。
δts=tU−tS (2B)
また、式(1B−1)、式(1B−2)において、ρS1、ρS2は、測位衛星411、412のアンテナ位相中心位置と測位端末20のアンテナ位相中心位置との間の幾何距離を示している。また、式(1B−3)〜式(1B−5)において、ρ3〜ρ5は、測位信号送信機113〜115のアンテナ位相中心位置と測位端末20のアンテナ位相中心位置との間の幾何距離を示している。ρS1、ρS2、ρ3〜ρ5は、以下の式(3B−1)〜式(3B−5)で示される。ここで(xU、yU、zU)は測位端末20のアンテナ位相中心位置である。また、(xS1、yS1、zS1)と(xS2、yS2、zS2)は測位衛星411、412のアンテナ位相中心位置である。また、(x3、y3、z3)〜(x5、y5、z5)は測位信号送信機113〜115のアンテナ位相中心位置である。
観測距離L3〜L5は、それぞれ、疑似距離であってもよいし、搬送波位相距離であってもよい。また、観測距離L3〜L5は、疑似距離或いは搬送波位相距離を独自に補正して算出される距離であってもよい。また、観測距離L3〜L5は、送信機間の時刻ズレの情報に基づいて補正された距離であってもよい。疑似距離LPと搬送波距離LΦの観測モデルは実施形態1の式(A1)及び式(A2)に示した通りである。
観測距離L3〜L5と同様に、観測距離LS1、LS2も、それぞれ、疑似距離であってもよいし、搬送波位相距離であってもよい。また、観測距離LS1、LS2は、疑似距離或いは搬送波位相距を独自に補正して算出される距離であってもよい。疑似距離LSPと搬送波距離LSΦの観測モデルを以下の式(B1)及び式(B2)に示す。ここでεSPはマルチパスを含む疑似距離観測ノイズであり、εSΦはマルチパスを含む搬送波距離観測ノイズである。Iは電離層伝搬遅延であり、Tは対流圏伝搬遅延であり、Wは位相ワインドアップ効果である。また、Nはアンビギュイティであり、λSは衛星測位信号の搬送波の波長である。
LSP=ρS+Cδts+I+T+εSP (B1)
LSΦ=ρS+Cδts−I+T+W+NλS+εSΦ (B2)
取得部253は、測位信号を受信して得た情報に基づいて、観測距離LS1、LS2、L3〜L5を計算する。この計算に使用する情報は、例えば、測位信号が送信されてから測位端末20がその測位信号を受信するまでの時間差、及び、測位信号の搬送波位相である。疑似距離をそのまま観測距離とすることも可能である。しかしながら、測位精度を考慮すると、観測距離の算出には搬送波距離も使用することが望ましい。
また、取得部253は、測位信号を復調して得られる航法メッセージから測位衛星411、412それぞれの位置情報(xS1、yS1、zS1)と(xS2、yS2、zS2)を取得する。また、取得部253は、測位信号送信機113〜115それぞれの位置情報(x3、y3、z3)〜(x5、y5、z5)を取得する。取得部253は、5つの位置情報(xS1、yS1、zS1)〜(x5、y5、z5)と、それらに対応する5つの観測距離LS1〜L5と、を観測情報として取得する。
なお、測位衛星41までの観測距離には、衛星特有の誤差(例えば、電離層伝搬遅延、対流圏伝搬遅延、位相ワインドアップ効果)が含まれている。これらの誤差は測位信号送信機11までの観測距離にはほとんど含まれていない。高精度な測位を実現するためには、衛星特有の誤差は観測距離から取り除かれる方が望ましい。特に、位置判別に使う複数の測位信号の中に送信機測位信号と衛星測位信号とが混ざっている場合は、両者の観測距離に含まれる誤差レベルを同レベルにするためにも、衛星特有の誤差は測位衛星41までの観測距離の中に含まれていない方が望ましい。
そこで、判別部252は、ステップS412で取得した補正情報に基づいて、観測距離を補正する(ステップS415)。測位衛星41までの観測距離としてLS1、LS2を取得したのであれば、判別部252は、その双方から衛星特有の誤差を取り除く。以下、補正された観測距離LS1、LS2も単に観測距離LS1、LS2と呼ぶ。
次に、判別部252は、観測情報に基づいて測位端末20の現在位置を判別する(ステップS416)。例えば、取得部253が観測情報として、図21に示す5つの観測距離LS1〜L5と5つの位置情報(xS1、yS1、zS1)〜(x5、y5、z5)とを取得したとする。このとき、判別部252は、これら5つの観測距離と5つの位置情報に基づいて、5つの変数(xU、yU、zU、δtn、δts)の値を算出する。判別部252は、実施形態1で示した手法、例えば、最小二乗法を使用して5つの変数(xU、yU、zU、δtn、δts)の値を算出してもよい。例えば、判別部252は、式(1B−1)〜式(1B−5)で示した5つの観測誤差εS1〜ε5の二乗和が最小となるように、5つの変数の値を定める。
なお、位置判別に使う複数の測位信号の中に送信機測位信号と衛星測位信号とが混ざっている場合、判別部252は、精度よく現在位置を判別できない恐れがある。測位信号送信機11がせいぜい測位端末20から数m〜数kmの範囲に位置しているのに対し、測位衛星41は遥か上空(およそ地上2万km)に位置しているからである。複数の測位信号の中に送信機測位信号と衛星測位信号とが混ざっている場合、測位信号の複数の発信元の幾何配置があまりに悪く、場合によっては、計算で現在位置が求まらない。例えば、判別部252が最小二乗法を使って現在位置を算出する場合、観測モデルが非線形であるために判別部252は近似解を反復計算する必要があるが、最終的に近似解が収束しない恐れがあるためである。例え判別部252が解を算出できたとしても、その精度はあまり良くない恐れがある。
そこで、判別部252は、測位信号送信機11までの距離スケールに合うように測位衛星41の位置を測位端末20に仮想的に近づけ、そして、その近づけた位置(以下、仮想位置という。)に測位衛星41があるものと仮定して測位端末20の現在位置を計算する。図22は、図21に示す測位衛星411、412を仮想位置PV1PV2まで仮想的に近づけた様子を示す図である。以下、図22を参照しながら、判別部252の現在位置の判別方法について説明する。
まず、判別部252は、予め設定された基準に従って測位衛星41それぞれについて仮想位置を決める。図22の例であれば、測位端末20と測位衛星411とを結ぶ直線上に測位衛星411の仮想位置PV1を定める。また、測位端末20と測位衛星412とを結ぶ直線上に測位衛星412の仮想位置PV2を定める。このとき、仮想位置は予め決められた距離範囲の中から定める。予め決められた距離範囲は、測位端末20の距離スケールにあわせ、装置設計者が任意に設定可能である。例えば、予め決められた距離範囲は、数m〜数kmの範囲である。
なお、判別部252が仮想位置を決定する時点で、測位端末20の正確な位置は求まってない。そのため、仮想位置の決定に使用する測位端末20の位置は仮の位置でよい。例えば、仮の位置は、測位端末20の移動中に求まった直近の測位端末20の位置であってもよい。判別部252は、直近の位置情報を、測位端末20の移動速度および移動方向等の情報に基づいて補正した、尤もらしい位置を測位端末20の仮の位置としてもよい。
また、測位端末20から仮想位置までの距離は、測位端末20から測位信号送信機11までの距離に基づいて決められてもよい。例えば、判別部252は、測位信号送信機11までの複数の観測距離の平均値を算出する。そして、判別部252は、測位端末20の仮の位置と測位衛星41の位置とを結ぶ直線上、かつ、測位端末20の仮の位置から平均値ほど離れた位置を測位衛星41の仮想位置としてもよい。仮想位置の決定方法はこれに限定されず、システム設計者が任意に定めてよい。
続いて、判別部252は、測位衛星までの実際の観測距離に基づいて、測位衛星41までの仮想観測距離を計算する。仮想観測距離は、測位衛星41が仮想位置にあると仮定した場合の測位衛星41までの仮想の距離である。図22の例であれば、LV1が測位衛星411までの仮想観測距離であり、LV2が測位衛星412までの仮想観測距離である。仮想観測距離LV1、LV2は以下の式(1B’−1)、式(1B’−2)で表現される。理解を容易にするため、測位信号送信機113〜115までの観測距離L3〜L5を示す式(1B−3)〜式(1B−5)も転記する。
LV1=LS1−V1=ρV1+Cδts+εS1 (1B’−1)
LV2=LS2−V2=ρV2+Cδts+εS2 (1B’−2)
L3 =ρ3+Cδtn+ε3 (1B−3)
L4 =ρ4+Cδtn+ε4 (1B−4)
L5 =ρ5+Cδtn+ε5 (1B−5)
式(1B’−1)、式(1B’−2)において、ρV1、ρV2は、測位衛星411、412の仮想位置PV1、PV2と測位端末20のアンテナ位相中心位置との間の幾何距離を示している。ρV1、ρV2は、以下の式(3B’−1)、式(3B’−2)で示される。ここで(xU、yU、zU)は測位端末20のアンテナ位相中心位置である。また、(xV1、yV1、zV1)と(xV2、yV2、zV2)は測位衛星411、412の仮想位置である。理解を容易にするため、測位信号送信機113〜115までの幾何距離ρ3〜ρ5を示す式(3B−3)〜式(3B−5)も転記する。
式(1B’−1)、式(1B’−2)において、V1、V2は、測位衛星411、412のアンテナ位相中心位置と測位端末20の仮想位置PV1、PV2との間の幾何距離を示している。V1、V2は、以下の式(4−1)、式(4−2)で示される。ここで、(xS1、yS1、zS1)と(xS2、yS2、zS2)は測位衛星411、412のアンテナ位相中心位置である。また(xV1、yV1、zV1)と(xV2、yV2、zV2)は測位衛星411、412の仮想位置である。
判別部252は、仮想観測距離を含む5つ以上の観測距離の情報と測位衛星の仮想位置の情報を含む5つ以上の位置情報とに基づいて、5つの変数(xU、yU、zU、δtn、δts)の値を計算する。例えば、取得部253が、図22に示すように、仮想観測距離LV1、LV2を含む5つの観測距離LV1〜L5と、仮想位置PV1、PV2を含む5つの位置情報(xS1、yS1、zS1)〜(x5、y5、z5)と、を取得したとする。このとき、判別部252は、これら5つの観測距離と5つの位置情報とに基づいて、5つの変数(xU、yU、zU、δtn、δts)の値を算出する。
このとき、判別部252は、実施形態1で示した手法、例えば、最小二乗法を使用して5つの変数(xU、yU、zU、δtn、δts)の値を算出してもよい。例えば、取得部253が5つの観測距離LV1〜L5と5つの位置情報(xS1、yS1、zS1)〜(x5、y5、z5)とを取得したとする。このとき、判別部252は、上記式(1B’−1)〜式(1B−4)に示す観測誤差εS1〜ε5の二乗和fBが最小となるように4つの変数の値を定める。二乗和fBは以下の式(4B)で示される。
fB=εS1 2+εS2 2+ε3 2+ε4 2+ε5 2 (4B)
なお、式(4B)に示す各項には重みが付与されていてもよい。各項に付与される重みの大きさの範囲は、誤差レベルを考慮して変化させてもよい。例えば、各項に付与される重みの大きさの範囲は、測位衛星41に関する観測誤差の項(式(4B)の例であればεS1 2、εS2 2)と、測位信号送信機11に関する観測誤差に関する項(式(4B)の例であれば、ε3 2、ε4 2、ε5 2)と、で異なっていてもよい。例えば、測位衛星41に関する観測誤差の項に付与される重みは、測位信号送信機11に関する観測誤差に関する項に付与される複数の重みのうちの最小の重みより小さなものであってもよい。
判別部252は、算出した5つの変数のうちの3つの変数(xU、yU、zU)を測位端末20の現在位置とする。なお、判別部252が最小二乗法を使って現在位置を算出する場合、5つの変数の解が収束するまで、5つの変数の近似解(測位端末20の近似位置)が繰り返し求まる。より正確に測位端末20の現在位置を算出するため、判別部252は近似解が求まるたびに、その近似解に基づいて測位衛星41の仮想位置を計算し直してもよい。
判別部252が測位端末20の現在位置を判別したら、出力部254は、判別部252が判別した現在位置を表示部240に出力する(ステップS417)。出力が完了したら、制御部250は、ステップS411に戻り、ステップS411〜ステップS417の処理を繰り返す。
本実施形態によれば、測位端末20は、送信機測位信号と衛星測位信号とを含む5つ以上の測位信号を観測して得られる観測情報に基づいて現在位置を計算している。したがって、測位端末20は、測位システム10からも測位システム40からもそれぞれ必要な数(例えば、4つ)の測位信号を一度に得られない環境(例えば、屋内と屋外の境界付近
)であっても、現在位置を判別できる。結果として、測位端末20はシームレスに現在位置を取得できる。
また、測位端末20は、測位信号送信機11までの距離スケールに合うように測位衛星41の位置を測位端末20に仮想的に近づけ、そして、その近づけた位置に測位衛星41があるものとして測位端末20の現在位置を計算している。現在位置の計算に使用する複数の観測距離の距離スケールが全て同じとなるので、測位端末20は、精度よく現在位置を判別できる。
上述の各実施形態はそれぞれ一例を示したものであり、種々の変更及び応用が可能である。
例えば、実施形態1〜4では、測位端末20は複数の測位信号送信機11からの測位信号を観測して得られる観測情報に基づいて測位端末20の判別部252は、測位端末20の現在位置を判別した。しかしながら、判別部252は、測位端末20の現在位置に加えて、測位信号送信機11の配置位置を判別するように構成されていてもよい。より具体的には、判別部252は、移動しながら判別した測位端末20の複数の現在位置の情報と、設置位置の判別対象となる測位信号送信機11の複数の観測情報と、に基づいて、設置位置の判別対象となる測位信号送信機11の位置を判別するように構成されていてもよい。
例えば、測位端末20が、図23に示すように、位置情報が分かっている4台の測位信号送信機111〜114と、位置情報が分かっていない1台の測位信号送信機11n(設置位置の判別対象となる測位信号送信機11)と、から測位信号を受信したとする。このとき、測位端末20は測位信号送信機111〜114の測位信号に基づいて自身の現在位置を特定するとともに、測位信号送信機11nから測位信号を受信する。そして、測位端末20は移動しながら観測を重ね、複数の自身の位置情報(例えば、図23に示す位置(xU1、yU1、zU1)〜(xU1、yU1、zU1))と、測位信号送信機11nからの複数の観測情報(例えば、図23に示す観測距離Ln1〜Ln4)と、を取得する。そして、測位端末20の判別部252はこれら複数の位置情報と複数の観測情報とに基づいて、測位信号送信機11nの位置(xn、yn、zn)を計算する。測位端末20の時刻と測位信号送信機11nの時刻との時刻差が分かっているのであれば、その時刻差の情報も測位信号送信機11nの位置の計算に使用してよい。測位端末20は特定した位置(xn、yn、zn)を外部の装置(測位システム10の管制のためのサーバ)に送信する。
これにより、新たな測位信号送信機11の設置が容易になる。なお、上記の例では1台の測位端末20で設置位置が未知の測位信号送信機11の位置を特定したが、複数台の測位端末を使って未知の測位信号送信機11の位置を特定してもよい。例えば、測位端末20をもう一台加えて、2重差による干渉測位と同じ方式を使って未知の測位信号送信機11の位置を特定してもよい。
また、実施形態1〜4では、測位信号送信機11は、IMES対応の送信機であるものとしたが、測位信号送信機11は、IMES対応の送信機に限定されない。測位信号送信機11は、例えば、UWB通信機(例えば、UWBアクセスポイント)、Bluetooth(登録商標)通信機、ZigBee(登録商標)通信機、携帯電話基地局、レーザー出力装置、音波/超音波出力装置であってもよい。測位端末20の受信部220はこれらの装置から信号を受信するよう構成されていてもよい。また、測位信号送信機11が送信する測位信号は、GPSのL1信号を模した信号に限られず、他の方式の信号であってもよい。
また、実施形態1〜3では、測位端末20が4つの測位信号に基づいて現在位置を判別する例を示したが、測位信号は4つより多くてもよい。例えば、測位端末20の観測部251が同時に5つの測位信号を受信したのであれば、測位端末20の取得部253は5つの位置情報と、それらに対応する5つの観測距離と、を取得してもよい。そして、測位端末20の判別部252はこれら5つの位置情報と5つの観測距離とに基づいて現在位置を判別してもよい。
また、実施形態4では、測位端末20が、2つの衛星測位信号および3つの送信機測位信号、合わせて5つの測位信号に基づいて現在位置を判別する例を示した。しかしながら、測位信号は5つより多くてもよい。測位信号の数が5つ以上なのであれば、衛星測位信号の数は2つより多くてもよいし少なくてもよい。また、測位信号の数が5つ以上なのであれば、送信機測位信号の数は3つより多くてもよいし少なくてもよい。これらの場合も、測位端末20の判別部252は、実施形態4に例示した方法と同様の方法で現在位置を判別できる。
また、実施形態1〜3では、求める変数をxU、yU、zU、δtnの4つとし、測位信号が少なくとも4つ必要であるとした。しかしながら、位置を示す3つの変数のうち、高度は比較的特定しやすい。特に、屋内は高度が特定しやすい。そのため、高度を仮定する二次元測位も可能である。そのため、求める変数を高度zUを除いたxU、yU、δtnの3つとすることで、測位信号は4つより少ない3つとすることが可能である。例えば、測位端末20の観測部251が同時に3つの測位信号を受信したのであれば、測位端末20の取得部253は3つの位置情報と、それらに対応する3つの観測距離と、を取得する。そして、測位端末20の判別部252はこれら3つの位置情報と3つの観測距離とに基づいて現在位置(xU、yU)を判別する。なお、実施形態4についても上記と同様の変形が可能である。すなわち、求める変数を高度zUを除いたxU、yU、δtn、δtsの4つとすることで、測位信号は5つより少ない4つとすることが可能である。
また、実施形態1〜4では、測位端末20の取得部253が取得する観測情報は、測位信号送信機11或いは測位衛星41の位置情報、及び測位信号送信機11或いは測位衛星41までの観測距離であるものとした。しかしながら、観測情報は位置情報と観測距離に限られない。例えば、観測情報は、観測距離を算出するための情報と位置情報であってもよい。観測距離を算出するための情報は、例えば、測位信号が送信されてから測位端末20がその測位信号を受信するまでの時間差、及び、測位信号の搬送波位相である。
また、実施形態3では、情報処理装置12が測位端末20に通知する周知情報には送信機情報が含まれるものとした。しかし、周知情報に含まれる情報は送信機情報に限定されない。例えば、周知情報には、精度劣化情報もしくは不審測位信号情報が含まれていてもよい。精度劣化情報は、観測情報を補正するための補正情報に精度劣化が生じているということを判別するための情報である。また、不審測位信号情報は、システムの成立に影響を与える不審な測位信号を特定するための情報である。不審な測位信号の例としては、システムを混乱させようとする攻撃者が測位信号を模して発する信号等が挙げられる。
本実施形態の測位信号送信機11、情報処理装置12、或いは測位端末20を制御する制御装置は、専用のコンピュータシステムによって実現してもよいし、通常のコンピュータシステムにより実現してもよい。例えば、上述の動作を実行するためのプログラムを、光ディスク、半導体メモリ、磁気テープ、フレキシブルディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、該プログラムをコンピュータにインストールし、上述の処理を実行することによって制御装置を構成してもよい。制御装置は、測位信号送信機11、情報処理装置12、或いは測位端末20の外部の装置(例えば、パーソナルコンピュータ)であってもよいし、これらの内部の装置(例えば、制御部140、160、250)であってもよい。また、上記プログラムをインターネット等のネットワーク上のサーバ装置が備えるディスク装置に格納しておき、コンピュータにダウンロード等できるようにしてもよい。また、上述の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションソフトとの協働により実現してもよい。この場合には、OS以外の部分を媒体に格納して配布してもよいし、OS以外の部分をサーバ装置に格納しておき、コンピュータにダウンロード等できるようにしてもよい。
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。