以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(実施形態)
<形状測定装置の全体的な構成について>
まず、図1A及び図1Bを参照しながら、本発明の実施形態に係る形状測定装置の全体的な構成について説明する。図1A及び図1Bは、本実施形態に係る形状測定装置の全体的な構成を模式的に示した説明図である。
本実施形態に係る形状測定装置10は、搬送ラインなどにより所定の一次元方向に搬送されている測定対象物の表面を撮像し、撮像された撮像データに対して所定の演算処理を施すことにより、測定対象物の表面形状を算出する装置である。本実施形態に係る形状測定装置10で測定可能な測定対象物は特に限定されるものではなく、例えば、製鉄ライン上を搬送される各種の鋼板、鋼管、線材のような工業製品から、一般的に利用されている各種の製品まで、各種のものを対象とすることが可能である。
以下の説明では、形状測定装置10が、測定対象物から射出された可視光線又は測定対象物で反射された可視光線を撮像する場合を例に挙げて説明を行う。
この形状測定装置10は、例えば図1Aに示したように、撮像部101と、演算処理部103と、を主に備える。
撮像部101は、例えば搬送ライン等により所定の方向に搬送されている測定対象物の表面を撮像して、撮像画像に対応する実体データ(二次元画像である撮像画像の各座標位置に対応した輝度値を表すデータであり、以下、撮像データともいう。)を生成する。本実施形態に係る撮像部101の詳細な構成については、以下で改めて詳述する。撮像部101により生成された撮像データは、演算処理部103へと出力される。
演算処理部103は、撮像部101により生成された撮像データに対して、以下で詳述するような演算処理を施して、測定対象物の表面形状を算出する。また、演算処理部103は、必要に応じて、撮像部101により実施される様々な撮像処理の制御を行うことも可能である。演算処理部103の詳細な構成については、以下で詳述する。
撮像部101及び演算処理部103を備える形状測定装置10は、図1Aに示したように、ある筺体内に一体的に実装されて一つの形状測定装置を形成してもよいが、例えば図1Bに示したように、撮像部101及び演算処理部103が互いに異なる機器や装置に分散して実装されていてもよい。
例えば図1Bに示した例では、撮像部101がレンズや撮像素子等を有する撮像機器に実装され、演算処理部103が、パーソナルコンピュータ、プロセスコンピュータ等といった演算処理装置に実装された例を図示している。このように、本実施形態に係る形状測定装置10は、複数の機器から構成される測定システムとして実現されていてもよい。
なお、本実施形態に係る形状測定装置10では、演算処理部103の各機能が複数の機器に分散されて実現されていてもよい。すなわち、演算処理部103の機能の一部が撮像部101を有する撮像機器に実装され、かつ、演算処理部103の他の機能が演算処理装置に実装されるような態様であってもよい。
以上、図1A及び図1Bを参照しながら、本実施形態に係る形状測定装置10の全体構成について説明した。
<撮像部の構成について>
次に、図2〜図4を参照しながら、本実施形態に係る形状測定装置10が備える撮像部101について、詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る形状測定装置の撮像部について模式的に示した説明図である。図3及び図4は、本実施形態に係る形状測定装置の撮像部を説明するための説明図である。
図2に例示したように、本実施形態に係る撮像部101は、エリアセンサ113を有する撮像機器(以下、「エリアカメラ」ともいう。)111と、エリアカメラ111に装着されたチルトレンズ115と、を主に備える。また、撮像部101は、測定対象物の表面の少なくとも一部である撮像面に対し、所定の照明光を照射する照明光源117を、必要に応じて更に備えていても良い。
エリアカメラ111は、例えば図2に示したように、エリアセンサ113の受光面が、測定対象物の撮像面と平行となるように設けられる。エリアカメラ111によって撮像された撮像データは、エリアセンサ113から演算処理部103へと出力され、後述する演算処理に利用される。
チルトレンズ115は、レンズ主面を撮像面に対して傾動させる操作(チルト操作)が可能なレンズである。チルトレンズ115の焦点距離や開放絞り値等といったレンズ特性は、特に限定されるものではなく、チルトレンズ115と測定対象物との離隔距離や測定対象物の周囲の明るさ等といった撮像条件に応じて、適宜設定すればよい。また、本実施形態では、チルトレンズ115として一枚の両凸レンズを代表させて便宜的に図示しているが、本実施形態に係るチルトレンズ115は、複数のレンズ群から構成されていてもよく、各レンズは、球面レンズであってもよいし非球面レンズであってもよい。
本実施形態に係る撮像部101では、チルトレンズ115の受光傾動軸が撮像面に対して平行かつ搬送方向に直角となるように、エリアカメラ111に対して装着される。
測定対象物の撮像面と、エリアカメラ111のエリアセンサ113と、チルトレンズ115との間の光学的な関係については、以下で図3及び図4を参照しながら改めて詳述する。
照明光源117は、撮像面に対して照射される照明光を射出する光源であり、測定対象物を撮像する際に撮像環境が暗い状況下にある等といった場合に、必要に応じて設けられる。照明光源117からの照明光は、特に限定されるものではなく、可視光帯域に属する光を使用すればよい。
また、照明光源117を設置する場合の設置位置についても特に限定されるものではなく、測定対象物の撮像環境に応じて、適宜決定すればよい。
[撮像部の光学的な関係について]
次に、図3及び図4を参照しながら、撮像部101におけるエリアセンサ113及びチルトレンズ115と、測定対象物の撮像表面と、の間に成立する光学的な関係について、詳細に説明する。
先述のように、本実施形態に係る撮像部101では、エリアセンサ113の受光面と測定対象物の撮像面とは互いに平行な位置関係になっており、かつ、エリアセンサ113の受光面とチルトレンズ115の主面とは互いに平行ではなく、交差するような位置関係となっている。このような光学的な位置関係での光学的な原理の一つに、シャインプルーフの原理(Scheimpflug principle)がある。この原理は、「フィルムの感光面とレンズ主面とがある1つの直線で交わるとき、合焦状態となる物体面もまた同一の直線で交わる」というものである。
このシャインプルーフの原理を本実施形態に係る撮像部101に対して適用すると、「エリアセンサ113の受光面(図3中の面S1に対応)とチルトレンズ115の主面(図3中の面S2に対応)とがある1つの直線(図3中の直線Pに対応)で交わるとき、合焦状態となる物体面(以下、合焦面ともいう。図3中のS3に対応)もまた同一の直線で交わる」となる。このようなシャインプルーフの原理に基づく条件(以下、シャインプルーフ条件ともいう。)は、図3中に示したように、「受光面S1、レンズ主面S2及び合焦面S3が同一直線P上で互いに交差する」ことである。更に、結像のためには、結像条件として「レンズの光軸(主光軸Z1)と受光面S1との交点、及び、レンズの光軸(主光軸Z1)と合焦面S3との交点のそれぞれにおいて、結像関係(1/a)+(1/b)=(1/f)が成立する」ことが必要である。なお、この結像条件において、fは、チルトレンズの焦点距離を示し、aは、レンズの主光軸Z1と受光面S1との交点と、レンズの主点との離隔距離を示し、bは、レンズの主光軸Z1と合焦面S3との交点と、レンズの主点との離隔距離を示している。
ここで、上記シャインプルーフ条件及び結像条件に加えて、チルトレンズ115の焦点距離及びチルト角(チルト操作の度合いを表す角)と、チルトレンズ115から測定対象物までの離隔距離と、エリアセンサ113の搬送方向に沿った大きさ(エリアセンサ113のサイズ)と、を更に考慮する。これらの諸条件により、図3に示したような、撮像面の前方(チルトレンズ115側)で合焦状態となっている範囲(前方合焦可能範囲)と、撮像面の後方で合焦状態となっている範囲(後方合焦可能範囲)とが決まる。
その結果、チルトレンズ115を用いて測定対象物を撮像することによって、前方合焦可能範囲及び後方合焦可能範囲で規定される合焦可能範囲内に含まれる測定対象物は、合焦面S3上の何れかの場所(図3における合焦面S3を表す直線上の何れかの場所)で合焦状態となる。そのため、湾曲面を有する測定対象物を測定対象とした場合であっても、得られた撮像データには、ピントの合った領域が存在することとなる。そこで、本実施形態に係る形状測定装置10は、撮像データ上で合焦状態にある領域を特定した上で、かかる合焦状態にある領域の位置が合焦面S3上のいずれの位置に対応するかを判断し、合焦面S3上の位置を測定対象物の高さ方向位置、すなわち表面形状へと変換する。換言すれば、本実施形態に係る形状測定装置10では、合焦面S3で測定対象物を切断した線(合焦線)を測定して、かかる合焦線に基づいて測定対象物の表面形状を特定していると言える。
なお、上記の合焦可能範囲の奥行きをDBと表すこととすると、本実施形態に係る形状測定装置10では、撮像表面の法線方向に対応する奥行き範囲DAが合焦可能範囲の奥行きDBに含まれるように制限して、撮像部101を利用することが好ましい。
奥行き範囲DAを、合焦可能範囲の奥行きDBに対してどの程度小さくすれば良いかについては、測定対象物の設計値や過去の操業条件等から、測定対象物において撮像したい範囲(すなわち、奥行き範囲DA)がどの程度の大きさであるかを予め解析しておくことで、決定することができる。
また、上記のような奥行き範囲DAと合焦可能範囲の奥行きDBとの間の条件を決めた上で、この条件を満たすようにチルトレンズ115のチルト角を決定するようにしてもよい。
水平面に対する合焦面S3の傾斜角φの大きさは、例えば図4に示したように、受光面S1と、レンズ主面S2と、合焦面S3との間の幾何学的な位置関係から決定することができる。
すなわち、図4における△PACに着目すると、d・tanθ=aが成立し、△PBCに着目すると、d・tanθ’=bが成立することがわかる。従って、両式を連立することで、tanθ/tanθ’=(a/b)を得ることができる。一方、図4から明らかなように、φ=θ+θ’である。ここで、離隔距離a,bは、撮像される画像に求められる撮像倍率M=a/bと、チルトレンズの焦点距離fと、に応じて、結像公式から決まる値に予め設定される。従って、チルト角θを決定することで、上記2つの関係式に基づいて合焦面S3の傾斜角φが一義的に決定される。
かかる傾斜角φと、上記離隔距離a,bと、エリアセンサ113の搬送方向の大きさl(エリアセンサ113の端点J−K間の大きさ)と、を用いて、合焦可能範囲の奥行きDBを求める方法を、図4を参照しながら説明する。図4では、エリアセンサ113の搬送方向の中心(点A)を光軸Z1が貫く場合を示しているが、以下の説明はかかる例に限られるものではない。
図4において、エリアセンサ113の大きさlと離隔距離aが決まると、△JKCは一意に定まる。そのため、直線KCと合焦面S3の交点Mと、直線JCとS3の交点Nと、を求めることができ、MとNの高さ方向の位置の差からDBが求められる。
上記をまとめると、チルト角θ、焦点距離f、交点M、エリアセンサ113の大きさlから奥行きDBが一意に決定されるため、DBをDAよりも大きくするためには、これらのパラメータを、物体の撮像分解能などと同時に考慮して決定する必要があるのは明らかである。lは、使用するエリアカメラ111の仕様で決まってしまい、f、Mは、測定対象物との離隔距離及び撮像分解能から決まるため、DBを他の条件と独立に決める自由度は、チルト角θとなる。
図3からも明らかなように、本実施形態に係る撮像部101では、エリアセンサ113の受光面とチルトレンズ115の主面とのなす角として規定されるチルト角(図5における角度θ)を変化させることで、合焦可能範囲の奥行きDBを制御することが可能である。
以上、図2〜図4を参照しながら、本実施形態に係る撮像部101について、詳細に説明した。
<演算処理部の構成について>
次に、図5〜図8Bを参照しながら、本実施形態に係る形状測定装置10が備える演算処理部103について、詳細に説明する。図5は、本実施形態に係る形状測定装置の演算処理部の構成の一例について説明するためのブロック図である。図6は、本実施形態に係る演算処理部が有するデータ処理部の構成の一例について説明するためのブロック図である。図7〜図8Bは、本実施形態に係るデータ処理部で実施されるデータ処理について説明するための説明図である。
本実施形態に係る演算処理部103は、図5に示したように、撮像制御部151と、データ取得部153と、データ処理部155と、処理結果出力部157と、表示制御部159と、記憶部161と、を主に備える。
撮像制御部151は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。撮像制御部151は、本実施形態に係る撮像部101による測定対象物の撮像処理全般を制御することができる。例えば、撮像制御部151は、測定対象物と撮像部101との間の相対的な位置を変化させる搬送ライン等の駆動機構から定期的に送出されるシフトパルス信号(例えば、測定対象物が1mm移動する毎等に出力されるPLG信号)に基づいて、撮像部101に対して撮像を開始するためのトリガ信号を送出する。これにより、撮像部101は、測定対象物の搬送方向の各位置における撮像データを随時生成することが可能となる。
また、撮像部101が照明光源117を有している場合には、撮像制御部151は、測定対象物の撮像を開始する場合に、照明光源117に対して、照明光の照射を開始させるための制御信号を送出してもよい。
データ取得部153は、例えば、CPU、ROM、RAM、通信装置等により実現される。データ取得部153は、撮像部101によって生成され、撮像部101から出力された撮像データを取得して、後述するデータ処理部155へと伝送する。また、データ取得部153は、取得した撮像データに、当該データを取得した日時等に関する時刻情報を紐づけて、履歴情報として後述する記憶部161に格納してもよい。
データ処理部155は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。データ処理部155は、撮像部101により生成された撮像データを利用し、この撮像データに対して以下で説明するような演算処理を施すことで、測定対象物の表面形状を算出する。データ処理部155は、表面形状の算出処理を終了すると、得られた処理結果に関する情報を、処理結果出力部157に伝送する。
なお、このデータ処理部155における表面形状の算出処理については、以下で詳述する。
処理結果出力部157は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。処理結果出力部157は、データ処理部155から出力された測定対象物の表面形状に関する情報を、後述する表示制御部159に出力する。これにより、測定対象物の表面形状に関する情報が、表示部(図示せず。)に出力されることとなる。また、処理結果出力部157は、得られた処理結果を、各種コンピュータ等の外部の装置に出力してもよく、得られた処理結果を利用して、製品に関する各種の帳票を作成してもよい。また、処理結果出力部157は、得られた表面形状に関する情報を、当該情報を算出した日時等に関する時刻情報と関連づけて、記憶部161等に履歴情報として格納してもよい。
表示制御部159は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置等により実現される。表示制御部159は、処理結果出力部157から伝送された、測定対象物の表面形状に関する情報を、形状測定装置10が備えるディスプレイ等の出力装置や形状測定装置10の外部に設けられた出力装置等に表示する際の表示制御を行う。これにより、形状測定装置10の利用者は、測定対象物の表面形状等といった各種の処理結果を、その場で把握することが可能となる。
記憶部161は、例えば本実施形態に係る形状測定装置10が備えるRAMやストレージ装置等により実現される。記憶部161には、本実施形態に係る撮像部101や演算処理部103が、何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベースやプログラム等が、適宜記録される。この記憶部161は、撮像制御部151、データ取得部153、データ処理部155、処理結果出力部157、表示制御部159等が、自由にデータのリード/ライト処理を行うことが可能である。
[データ処理部における演算処理について]
続いて、図6〜図8B及び図13を参照しながら、本実施形態に係るデータ処理部155で実施される演算処理(より詳細には、表面形状の算出処理)について、詳細に説明する。
以下で詳述するデータ処理部155の役割は、撮像部101によって生成された画像中での合焦位置を特定することで、合焦線を求めることである。その目的のために、データ処理部155は、測定対処物(例えば、鋼板)の表面に存在する地肌模様を利用する。地肌模様に対して合焦した場合、撮像された画像の空間周波数スペクトルは高い周波数帯域まで広がるため、当該周波数帯域の成分の大きさに着目して、その大きさが最大となるように合焦位置を特定すればよい。
本実施形態に係るデータ処理部155は、例えば図6に示したように、フィルタ処理部171と、前処理部173と、近似処理部175と、形状算出部177と、を備える。
フィルタ処理部171は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。フィルタ処理部171は、データ取得部153から伝送された二次元の撮像画像としての撮像データを、一次元信号の集合(すなわち、測定対象物の搬送方向に沿った一次元信号(輝度データ)が、幅方向の各位置に対して紐づけられた信号群)として取り扱う。その上で、フィルタ処理部171は、それぞれの一次元信号(以下に示す図13におけるL(x))に対して、以下で説明するようなフィルタ演算処理を実施する。
本実施形態に係る撮像部101では、デジタル撮像処理が行われているため、エリアセンサ113から出力される撮像データには、電気的ノイズが重畳している。従って、かかる電気的ノイズを撮像データから除去するために、ローパスフィルタを用いることが好ましい。また、以下で説明する表面形状算出処理では、撮像データの合焦判断を実施するが、合焦判断は局所的な地合いに着目する必要があるため、ハイパスフィルタを用いることが好ましい。以上のような2つの観点から、フィルタ処理部171は、データ取得部153から伝送された撮像データに対して、バンドパスフィルタを用いたフィルタ演算処理を行うことが好ましい。
ここで、どのようなバンドパスフィルタを撮像データに対して作用させればよいかを検討するために、本発明者は、測定対象物として、表面に地肌模様を有する平板を測定した。その上で、以下で詳細に説明するような合焦位置の特定処理を実施して、合焦位置の搬送方向座標を画素単位で特定し、かかる座標のバラつき度合い(すなわち、標準偏差)を算出した。より詳細には、様々な通過帯域を有するバンドパスフィルタを利用した、以下で詳述するような合焦位置の特定処理を実施して、得られた合焦位置のバラつき度合いを検討した。
得られた結果を、図7に示した。
図7において、横軸は、バンドパスフィルタの透過帯域の下限側(以下、低周波側ともいう。)の周波数であり、縦軸は、バンドパスフィルタの透過帯域の上限側(以下、高周波側ともいう。)の周波数であり、各格子点における円形が標準偏差の大きさ(単位:画素)を示している。ここで、バンドパスフィルタの透過帯域周波数は、画素間隔に対応する空間周波数の1/2、すなわちナイキスト周波数を1として、表している。なお、図7では、円形状の直径が標準偏差に比例するように図示しており、標準偏差が100以上であるものについては、例えば(低周波側0、高周波側0.1)の位置の円形で表されるような一定の直径を有する円形として図示を行った。
図7から明らかなように、画素間隔をサンプリング間隔とした場合のナイキスト周波数で正規化した周波数に対して、通過帯域の下限が0.1以上0.3以下であり、上限が0.5以上0.7以下であるバンドパスフィルタを利用した場合に、標準偏差が極めて小さくなることが明らかとなった。そのため、本実施形態に係るフィルタ処理部171は、一次元信号の集合である撮像データに対して、画素間隔をサンプリング間隔とした場合のナイキスト周波数で正規化した周波数周波数に対して、通過帯域の下限が0.1以上0.3以下であり、上限が0.5以上0.7以下であるバンドパスフィルタを用いたフィルタ演算処理を実施することが好ましい。その後、フィルタ処理部171は、得られたフィルタ処理後のデータ(図13におけるLbpf(x))を、前処理部173に出力する。
前処理部173は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。前処理部173は、フィルタ処理部171によるフィルタ演算処理が実施された後の撮像データ(一次元信号の集合)に基づいて、かかる一次元信号の絶対値波形を算出する処理や、一次元信号のベースライン処理等といった各種の前処理を実施する。このような前処理を実施することで、データ処理部155は、精度良く合焦位置を特定して、より正確に表面形状を算出することが可能となる。以下、これらの前処理について、詳細に説明する。
前処理部173は、フィルタ演算処理後の撮像データ(一次元信号群)に対して、まず、絶対値波形を算出する処理を実施する。かかる絶対値波形(図13におけるLabs(x))の算出処理は、一次元信号のそれぞれについて、絶対値を取ることで実施される。
その後、前処理部173は、得られた絶対値波形から、絶対値波形のデータの最頻値(モード)又は中央値(メジアン)を差し引く処理を実施する。絶対値波形のデータは、絶対値を取るという操作によって算出されたものであるため、その波形の裾部の値はゼロとはならないことが多い。一方、後述する近似処理部175における近似処理で用いられる関数は、関数の裾の値がゼロとなるものであるため、絶対値波形の裾部の値がゼロではない場合には、後述する近似処理において誤差の要因となってしまう。そこで、前処理部173は、絶対値波形のデータの最頻値又は中央値を絶対値波形のデータから差し引くことで、後述する近似処理の精度をより向上させる。
前処理部173は、以上説明したような前処理を絶対値波形のデータに対して施した後、得られた絶対値波形のデータ(図13におけるLo(x))を、後述する近似処理部175に出力する。
近似処理部175は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。近似処理部175は、前処理部173から出力された前処理後の絶対値波形のデータ群のそれぞれについて、その絶対値波形を、左右対称な凸形状であり凸部ピークから離れるに従って値が0に漸近する関数により近似する。近似のためには、関数のパラメータを最適化手法により調整することが求められるが、この際、関数のパラメータは、必要最小限(すなわちピーク位置、ピークの幅、ピークの大きさの3つであること)が、安定な最適解を得るために望ましい。
このような、左右対称な凸形状の関数の例として、例えば、図8Aに示したような三角波関数や、図8Bに示したようなガウス関数を挙げることができる。
図8Aに示した三角波関数は、高さA、半幅W及び中心pで規定される三角形状の関数であり、max(0,A×(1−|x−p|/w))で表される。また、図8Bに示したガウス関数は、高さA、中心p及び分散σを用いて、A×exp((x−p)2/σ2)で表される関数である。このような関数を用いることで、絶対値波形のピーク位置を精度良く特定することが可能となる。また、凸形状の関数として、特にガウス関数を用いた場合には、絶対値波形を滑らかな関数で近似することが可能となり、近似処理をより簡便に行うことが可能となる(図13におけるLfit(x))。
絶対値波形のデータを上記のような関数に近似する技法については、特に限定されるものではなく、多変数準ニュートン法のような公知の様々な手法を利用することが可能である。
近似処理部175は、前処理部173から出力された前処理後の絶対値波形のデータ群のそれぞれについて、上記のような凸形状の関数を用いて近似処理を行った後、そのピーク位置を特定する。近似処理部175は、このようにして得られたピーク位置を、着目している一次元信号における合焦位置として取り扱う。近似処理部175は、このような近似処理を、幅方向の各位置における一次元信号に対して実施することで、各幅方向位置での合焦位置を特定することができる。
近似処理部175は、着目している撮像データにおける各合焦位置に関する情報を、後述する形状算出部177に出力する。
形状算出部177は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。形状算出部177は、近似処理部175により算出された合焦位置に関する情報と、撮像部101における撮像分解能と、チルトレンズ115のチルト角θから決まる合焦面の傾斜角φとに基づいて、測定対象物の表面形状を算出する。
より詳細には、形状算出部177は、それぞれの幅方向位置について、搬送方向に沿った合焦位置p(単位:画素、原点:エリアセンサ113の搬送方向中心)と、撮像分解能d(単位:mm/画素)と、合焦面の傾斜角φ(単位:度)とを利用して、以下の式101により規定される値H(i)を算出し、幅方向位置iにおける光軸Z1と合焦面S3の交点の高さを原点とする表面の高さとして取り扱う。
H(i)=p×d×tanφ ・・・(式101)
合焦面の傾斜角φの大きさに関する情報は、形状算出部177が撮像制御部151から予め取得したり、演算処理に先立ってユーザが予め演算処理部103に対して値を入力したりすることで、得ることが可能である。また、撮像分解能bは、撮像部101の光学設計値等に基づいて予め把握可能な値であるため、記憶部161等に予めデータベースとして格納しておけばよい。
形状算出部177は、以上説明したような演算処理により測定対象物の高さ分布を算出すると、得られた算出結果を、測定結果として処理結果出力部157に出力する。
以上、図5〜図8Bを参照しながら、本実施形態に係る形状測定装置10が備える演算処理部103について、詳細に説明した。
以上、本実施形態に係る演算処理部の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
なお、上述のような本実施形態に係る演算処理部の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
<形状測定方法の流れについて>
続いて、図9及び図10を参照しながら、本実施形態に係る形状測定装置10で実施される形状測定方法の流れの一例について、簡単に説明する。図9及び図10は、本実施形態に係る形状測定方法の流れの一例を示した流れ図である。
[全体的な流れについて]
まず、図9を参照しながら、形状測定方法の全体的な流れについて簡単に説明する。
形状測定装置10の撮像部101は、演算処理部103の撮像制御部151による制御のもとで、所定の方向に搬送されている測定対象物を搬送方向に走査して撮像データを生成し(ステップS101)、得られた撮像データを演算処理部103に出力する。
演算処理部103のデータ取得部153は、撮像部101によって生成された撮像データを取得すると、取得した撮像データを、データ処理部155へと出力する。
演算処理部103のデータ処理部155は、伝送された撮像データを利用して、形状算出処理を実施する(ステップS103)。その後、データ処理部155は、得られた測定対象物の測定結果を、処理結果出力部157に出力する。
処理結果出力部157は、データ処理部155により算出された測定対象物の表面形状に関する情報を、ユーザや外部に設けられた各種の機器に出力する(ステップS105)。これにより、ユーザは、測定対象物の表面形状に関する測定結果を把握することが可能となる。
[表面形状の算出処理の流れについて]
次に、図10を参照しながら、データ処理部155によって実施される表面形状の算出処理の流れについて、簡単に説明する。
データ処理部155は、データ取得部153から出力された撮像データI(x,y)(x:搬送方向、y:幅方向)を取得すると(ステップS201)、パラメータi=1に設定することで(ステップS203)、処理対象とする一次元信号L(x)を、I(x,i)とする(ステップS205)。
続いて、データ処理部155のフィルタ処理部171は、処理対象である一次元信号L(x)に対して、上記のようなバンドパスフィルタ処理を実施し、フィルタ処理後の信号Lbpf(x)を生成する(ステップS207)。その後、フィルタ処理部171は、得られた信号Lbpf(x)を、前処理部173に出力する。
前処理部173は、まず、信号Lbpf(x)に対して絶対値処理を実施して、絶対値処理後の信号Labs(x)を生成する(ステップS209)。続いて、前処理部173は、得られた信号Labs(x)に対して、中央値又は最頻値を利用したベースライン処理を実施して、ベースライン処理後の信号Lo(x)を生成する(ステップS211)。その後、前処理部173は、得られた前処理後の信号Lo(x)を、近似処理部175に出力する。
続いて、近似処理部175は、ガウス関数や三角波関数等といった凸状関数を利用して、信号Lo(x)に対して関数近似処理を実施し(ステップS213)、ピーク位置pを特定する。その後、近似処理部175は、得られたピーク位置pに関する情報を、形状算出部177に出力する。
続いて、形状算出部177は、近似処理部175によって算出されたピーク位置pと、撮像分解能dと、合焦面の傾斜角φと、を利用して、幅方向iにおける表面高さの分布を示す関数Hi(x)=p×d×tanφを算出する(ステップS215)。
その後、データ処理部155は、パラメータiが画像高さに等しいか否かを判断する(ステップS217)。パラメータiが画像高さに等しくない場合には、パラメータiをi+1に設定して(ステップS219)、データ処理部155は、ステップS205以降の処理を再び実行する。一方、パラメータiが画像高さに等しい場合には、得られたHi(x)の集合を、着目している撮像データにおける幅方向の高さ分布とし(ステップS221)、処理結果出力部157に出力する。
以上、図9及び図10を参照しながら、本実施形態に係る形状測定装置10で実施される形状測定方法の流れの一例について、簡単に説明した。
(ハードウェア構成について)
次に、図11を参照しながら、本発明の実施形態に係る演算処理部103のハードウェア構成の一例について、詳細に説明する。図11は、本発明の実施形態に係る演算処理部103のハードウェア構成の一例を説明するためのブロック図である。
演算処理部103は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、演算処理部103は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、形状測定装置10内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、形状測定装置10の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。さらに、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。形状測定装置10のユーザは、この入力装置909を操作することにより、形状測定装置10に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、形状測定装置10が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、形状測定装置10が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
ストレージ装置913は、演算処理部103の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、形状測定装置10に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−ray(登録商標)メディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
接続ポート917は、機器を形状測定装置10に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、形状測定装置10は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
以上、本発明の実施形態に係る演算処理部103の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
なお、以上では、可視光を利用する場合について説明したが、可視光以外の場合であっても、適切な撮像素子とレンズ材料とを組み合わせることで、本発明を適用できることは明らかである。例えば、遠赤外光を利用する場合には、撮像素子としてマイクロボロメータ、レンズ材料としてゲルマニウムやジンクセレンを用いればよい。
上記から明らかなように、対象の地肌模様はバンドパスフィルタの高周波側よりも高い周波数成分を含んでおり、かつその大きさが高周波側の電気ノイズより大きい必要がある。
また、測定対象物が有する地肌模様にエンボス加工のような周期性がある場合には、関数近似の必要はなく、かかる周期に対応する周波数成分のみを透過する狭帯域バンドパスフィルタを用いて、バンドパスフィルタ出力の絶対値が最大となる位置を合焦位置pとすればよい。
続いて、具体例を示しながら、本発明の実施形態に係る形状測定装置及び形状測定方法について、具体的に説明を行う。ここで、以下に示す実験例は、本発明の実施形態に係る形状測定装置及び形状測定方法のあくまでも一例であって、本発明の実施形態に係る形状測定装置及び形状測定方法が、以下に示す実験例に限定されるものではない。
(実験例1)
以下に示す実験例1では、本発明の実施形態に係る形状測定装置10を利用して、湾曲面を有する測定対象物を撮像し、正確な表面形状が測定されたか否かについて検証を行った。
なお、撮像部101として、焦点距離f=85mm、F値=2.8のチルトレンズを利用し、チルト角を8.5°に設定し、撮像倍率を1倍に設定した。また、エリアカメラの撮像素子(エリアセンサ)は、幅方向2352画素×積分方向1726画素であり、撮像分解能は、0.01mm/画素であった。また、チルトレンズから測定対象物までの離隔距離は、190mmとした。
また、湾曲面を有する測定対象物としては、直径24mmの棒鋼を利用した。
更に、形状算出処理に用いられるバンドパスフィルタとしては、画素間隔を2とした周波数に対して、通過帯域が0.2〜0.6であるバンドパスフィルタを利用し、ベースライン処理では、絶対値波形のデータから中央値(メジアン)を差し引いた。また、絶対値波形を近似する凸状関数としては、ガウス関数を利用した。
図12は、上記のような撮像部101によって撮像された撮像データを示したものであり、図12の横方向が搬送方向(棒鋼の長手方向)xであり、縦方向が幅方向yである。図12から明らかなように、得られた撮像データには、ピントが合っている領域と、ピントが合っておらずボケた状態となっている領域とが混在していることがわかる。
図12に示した撮像データのある幅方向位置について、一次元信号の強度分布L(x)を、図13の最上段に示した。この一次元信号L(x)に対して、上記のようなバンドパスフィルタを用いたフィルタ処理を行った結果、図13の上から2段目に示したような信号Lbpf(x)が得られた。次に、かかる信号Lbpf(x)に対して絶対値処理を行った結果、図13の上から3段目に示した絶対値波形信号Labs(x)が得られ、この絶対値波形に対してベースライン処理を行った結果、図13の下から2段目に示した信号Lo(x)が得られた。この信号Lo(x)をガウス関数でフィッティングした結果、図13の最下段に示したようなガウス関数が得られた。ガウス関数のピーク位置のx座標として、x=1680が出力された。
このような処理を、撮像データの幅方向に対して随時実施した結果、図14に示したような合焦位置の分布が得られた。このような合焦位置の分布から算出された表面高さHを、図15Aに実線で示した。なお、図15Aでは、得られた測定値に対して7点移動平均を施した後の結果を、示している。また、図15Aでは、直径24mmの棒鋼の断面形状が真円であるとして算出した理論値を、破線であわせて示している。
図15Aから明らかなように、本発明の実施形態に係る形状測定装置10で測定された棒鋼の表面高さの測定値は、理論値に極めて一致していることがわかる。また、図15Bには、得られた測定値の理論値からの誤差を示しているが、得られた測定値の標準偏差は、0.12mmであった。
ここで、上記特許文献2に開示されているようなステレオ法における高さ計測の誤差は、奥行きの1〜2%程度であることが知られている。一方、今回の実験例における奥行き方向の離隔距離は、上記のように190mmであるため、上記の誤差は、0.12mm/190mm×100=0.06%に対応する。従って、本発明の実施形態に係る形状測定装置10で得られた表面形状の測定結果は、ステレオ法によって測定された表面形状よりも極めて優れた精度を有していることが明らかとなった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。