JP6371660B2 - 固体電解質材料 - Google Patents

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Description

本発明は、水熱状態の前後における結晶相の変化が小さく、水熱状態に起因する強度の低下が抑制されている固体酸化物形燃料電池の固体電解質層や燃料極層を作製することができる固体電解質材料、当該固体電解質材料から作製された固体電解質膜および燃料極膜、並びに、当該固体電解質膜および/または燃料極膜を含む固体酸化物形燃料電池用単セルに関するものである。
燃料電池はクリーンなエネルギー源として注目されており、その用途は家庭用発電から業務用発電、さらには自動車用発電などを主体にして、改良研究や実用化研究が急速に進められている。かかる燃料電池の中でも固体酸化物形燃料電池は、発電効率が高く長期安定性にも優れることから、家庭用や業務用の電力源として期待されている。
この固体酸化物形燃料電池においては、固体電解質膜としてセラミックシートが用いられている。セラミックスは、耐熱性などの機械的性質に加え、電気的特性や磁気的特性に優れることによる。中でもジルコニアを主体とするセラミックシートは、優れた酸素イオン伝導性や、耐熱性、耐食性、靭性などを有することから、固体酸化物形燃料電池の固体電解質膜として利用されている。
ジルコニアシートの原料となるジルコニアには、結晶相を制御するために種々の添加物が添加される。かかる添加物としてはイットリアとスカンジアがよく用いられる。一般には、これら添加物が固溶したジルコニアを安定化ジルコニアという。
これら安定化ジルコニアの中でもスカンジア安定化ジルコニアは、特に酸素イオン伝導性に優れるので、スカンジア安定化ジルコニア粉末は、固体酸化物形燃料電池の固体電解質膜や燃料極を作成するための材料として利用される。
しかし、スカンジア含有量が多く、その結晶相が立方晶を主とする安定化ジルコニアからなるシートは、酸素イオン伝導性に優れるものの機械的強度が比較的劣るという問題がある。
また、ジルコニアシートには、水熱条件下で強度が低下するという問題もある。この問題は、特に結晶相が正方晶を主とする安定化ジルコニアからなるシートにおいて顕著である。詳しくは、固体酸化物燃料電池に供給される燃料ガスは、加湿されたり、また、都市ガスに多量の水を加えて改質されたものである場合がある。固体酸化物形燃料電池の発電時における一般的な温度は700〜1,000℃程度であり、このような高温下では上記水分の存在は影響しない。しかし、発電開始時や発電終了時などにおける100〜300℃付近の温度域では、電池内部に残った上記水分や大気中の水分などと相まっていわゆる水熱劣化環境状態(水熱状態ともいう)になる。かかる水熱状態下では、ジルコニアシートの結晶相における単斜晶比率が上がることにより、シート強度が低下してしまうことが知られている。
特許文献1では、導電率の低下を軽減しつつ、かかる水熱劣化が抑制可能なジルコニア質焼結体として、結晶相が主として正方晶と立方晶の混合相または立方晶相からなる3〜6モル%スカンジア安定化ジルコニアに対して、ランタンガレート系酸化物やランタンアルミネート系酸化物を含有させてなるものが提案されている。また、特許文献2には、従来よりも水熱劣化が抑制されているジルコニア系固体電解質として、実質的に単斜晶を含まず、主として正方晶と立方晶の混合相または正方晶相からなる3〜7モル%スカンジア安定化ジルコニアに、0.5〜2モル%の酸化ガリウムが添加されたジルコニア系固体電解質が開示されている。
ところで、スカンジアに加え、さらに第三成分を添加したジルコニアも検討されている。例えば特許文献3には、導電率や機械的強度の低下を招くことなく比較的低温での焼結性に優れた固体電解質材料として、スカンジアを5〜15モル%、酸化ビスマスを0.5〜3モル%含むジルコニアからなる低温焼結性固体電解質材料が開示されている。
特開2004−67489号公報 特開2007−26874号公報 特開2003−51321号公報
上述したように、水熱状態による劣化が抑制されているジルコニア焼結体の例はあった。
しかし、ランタンガレート系酸化物やランタンアルミネート系酸化物を添加した特許文献1のジルコニア電解質と、酸化ガリウムを添加した特許文献2のジルコニア電解質は、結晶相として主に正方晶相または正方晶と立方晶の混合相を有するものであり、主に立方晶相からなるジルコニア電解質についてはほとんど検討されていない。その一方で、水熱劣化がより一層抑制された固体電解質層などが求められている。
そこで本発明は、結晶相が主に立方晶からなり、水熱状態の前後における結晶相の変化が小さく、水熱劣化環境に晒されても強度の低下が抑制されている固体酸化物形燃料電池の固体電解質層や燃料極層を作製することができる固体電解質材料、当該固体電解質材料から作製された固体電解質膜および燃料極膜、並びに、当該固体電解質膜および/または燃料極膜を含む固体酸化物形燃料電池用単セルを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、安定化剤としてスカンジアに加えてセリアおよび酸化ビスマスを固溶させたものであり、結晶相が主に立方晶であるジルコニアを固体電解質材料として用いれば、水熱状態前後における結晶相の変化が極めて小さく、水熱劣化が顕著に抑制された固体電解質膜や燃料極膜が得られることを見出して、本発明を完成した。
以下、本発明を示す。
[1] スカンジアを8モル%以上、12モル%以下、セリアを0.5モル%以上、2.5モル%以下、酸化ビスマスを0.5モル%以上、5.0モル%以下含み、且つ、結晶相が主に立方晶であるジルコニアからなることを特徴とする固体電解質材料。
[2] スカンジアを9モル%以上、11モル%以下、セリアを0.5モル%以上、2.5モル%以下、酸化ビスマスを0.5モル%以上、3.0モル%以下含み、セリアと酸化ビスマスの合計が2.1モル%以上、6.0モル%以下であるジルコニアからなる上記[1]に記載の固体電解質材料。
[3] セリアに対する酸化ビスマスのモル比が1.05以上、4以下である上記[1]または[2]に記載の固体電解質材料。
[4] 上記結晶相における上記立方晶の比率が95%以上である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の固体電解質材料。
[5] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載の固体電解質材料に由来する電解質組成を有することを特徴とする固体電解質膜。
なお、本発明における「固体電解質膜」には、その両面に燃料極層と空気極層を形成して固体酸化物形燃料電池用単セルとすることができ、独立して存在することができるジルコニアシートの他、例えば、電解質支持型セル(以下、「ESC」という場合がある)、燃料極支持型セル(以下「ASC」という場合がある)、空気極支持型セル(以下、「CSC」という場合がある)および金属支持型セル(以下、「MSC」という場合がある)など、各種の固体酸化物形燃料電池用単セルにおいて、通常、燃料極層と空気極層またはバリア層との間に挟まれた固体電解質層が含まれるものとする。勿論、例えば、空気極層を形成して単セルにする前の燃料極支持体−燃料極層−固体電解質層積層体における固体電解質層なども、本発明の「固体電解質膜」に含まれる。
[6] 上記[1]〜[4]のいずれかに記載の固体電解質材料に由来する電解質組成を有することを特徴とする燃料極膜。
なお、本発明における「燃料極膜」には、固体電解質層とさらに空気極層を形成して固体酸化物形燃料電池用単セルとすることができ、独立して存在することができる燃料極支持体や、燃料極支持体と燃料極層の積層体の他、各種の固体酸化物形燃料電池用単セルにおいて固体電解質層の片面に形成される燃料極層が含まれるものとする。勿論、例えば、空気極層を形成して単セルにする前の燃料極層−固体電解質層積層体における燃料極層なども、本発明の「燃料極膜」に含まれる。燃料極支持体上に形成された上記燃料極層は、燃料極機能層や燃料極活性層といわれることもある。
[7] 上記[5]に記載の固体電解質膜および/または上記[6]に記載の燃料極膜を含むことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用単セル。
本発明に係る固体電解質材料を用いれば、水熱状態の前後における結晶相の変化が小さく、水熱劣化環境に晒されても強度の低下が抑制されている固体酸化物形燃料電池の固体電解質層や燃料極層を作製することができる。かかる固体電解質層や燃料極層では水熱劣化が顕著に抑制されているため、これらを有する固体酸化物形燃料電池用単セルは起動と停止が繰り返されても破損することが少なくなり、安定した発電が可能である。
本発明に係る固体電解質材料は、少なくともスカンジア(酸化スカンジウム:Sc23)、セリア(酸化セリウム:CeO2)および酸化ビスマス(Bi23)を安定化剤として含み、且つ、結晶相が主に立方晶であるジルコニアからなる。
スカンジアは、ジルコニアに固溶することによりジルコニアの結晶相を安定化するのみでなく、スカンジアが固溶したジルコニアは酸素イオン伝導性に優れる。ジルコニア全体に対するスカンジアの割合、即ち固溶量としては8モル%以上、12モル%以下が好ましい。当該割合が8モル%以上であれば、結晶相が主に立方晶となり、安定化効果や酸素イオン伝導性の向上などの効果がより確実に得られる。一方、スカンジアの固溶量が過剰になると強度が低下するおそれがあり得るので、当該割合としては12モル%以下が好ましい。当該割合としては、9モル%以上、11モル%以下がより好ましい。
本発明では、スカンジアに加えてセリアと酸化ビスマスをジルコニアに固溶させることにより、その理由は明らかではないが、水熱状態前後における結晶相の変化が低減され、水熱劣化が顕著に抑制されている。かかる効果が確実に発揮されるためには、ジルコニア全体に対するセリアの割合を0.5%モル%以上、2.5モル%以下、ジルコニア全体に対する酸化ビスマスの割合を0.5モル%以上、5.0モル%以下にすることが好ましい。セリアの上記割合としては、0.8モル%以上がより好ましく、1.1モル%以上がさらに好ましく、1.2モル%以上がよりさらに好ましく、また、2.2モル%以下がより好ましく、2.0モル%以下がさらに好ましく、1.5モル%以下がよりさらに好ましい。酸化ビスマスの上記割合としては、0.6モル%以上がより好ましく、また、4.0モル%以下がより好ましく、3.0モル%以下がさらに好ましく、2.5モル%以下がよりさらに好ましい。
ジルコニア全体に対するセリアと酸化ビスマスの合計の割合としては、2.1モル%以上、6.0モル%以下が好ましい。当該合計量がこの範囲にあれば、上記のセリアと酸化ビスマスによる効果がより確実に得られる。当該割合としては、2.2モル%以上がさらに好ましく、また、5.0モル%以下がより好ましく、4.5モル%以下または4.0モル%以下がよりさらに好ましく、3.0モル%以下が特に好ましい。
セリアと酸化ビスマスとの割合は、酸化ビスマスの含有量がセリアの含有量と同等もしくは少なくてもよいが、酸化ビスマスの含有量が多い方がとりわけ水熱劣化抑制に効果がある。この場合、セリアに対する酸化ビスマスのモル比(Bi23/CeO2)としては1.05以上、4以下が好ましい。当該モル比としては、1.1以上がより好ましく、1.2以上がさらに好ましく、また、3.8以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましい。
本発明に係るジルコニアは、スカンジア、セリアおよび酸化ビスマスを含むものであれば、さらに他の金属酸化物を含んでいてもよい。かかる金属酸化物としては、例えば、MgO、CaO、SrO、BaOなどのアルカリ土類金属酸化物;Y23、La23、Pr23、Nd23、Sm23、Eu23、Gd23、Tb23、Dy23、Ho23、Er23、Yb23などの希土類元素酸化物;Al23、In23などの第13族元素酸化物;SiO2、Ge23、SnO2などの第14族元素酸化物;Sb23などの第15族元素酸化物;TiO2などの第4族元素酸化物;Nb25、Ta25などの第5族元素酸化物を挙げることができる。これらの中でも、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)、アルミニウム(Al)およびチタン(Ti)からなる群より選択される1種以上の金属の酸化物が特に好ましい。これらその他の金属酸化物は、いずれか1種のみであってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよく、また、そのジルコニア全体に対する割合としては、0.5モル%以上、2.5モル%以下が好ましい。
本発明に係るジルコニアの結晶相は、主に立方晶相である。なお、本発明において「結晶相が主に立方晶であるジルコニア」とは、X線回折パターンのピーク強度から下記式のより算出した立方晶比率Cが95%以上のジルコニアのことをいう。当該立方晶比率Cとしては、97%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がよりさらに好ましい。
単斜晶比率M(%)=100×[m(111)+m(11−1)]/[m(111)+m(11−1)+tc(111)]
正方晶比率T(%)=(100−M)×[t(400)+t(004)]/[t(400)+t(004)+c(400)]
立方晶比率C(%)=100−M−T
m(111):単斜晶(111)面のX線回折パターンのピーク強度
m(11−1):単斜晶(11−1)面のX線回折パターンのピーク強度
tc(111):正方晶(111)面のX線回折パターンのピーク強度と立方晶(111)面のX線回折パターンのピーク強度との和
t(400):正方晶(400)面のX線回折パターンのピーク強度
t(004):正方晶(004)面のX線回折パターンのピーク強度
c(400):立方晶(400)面のX線回折パターンのピーク強度
本発明に係る固体電解質材料は、共沈法、均一沈殿法、ゾルゲル法、噴霧熱分解法、粉末混合法などの常法により製造することができる。例えば共沈法では、上記金属酸化物を構成する金属を含む化合物を原料化合物とし、各金属の相対的モル数が所望の割合となるよう秤量した上で水や硝酸などに溶解し、さらにアルカリを加えて中和共沈させる。得られた沈殿物を濾別し、水洗した後、仮焼成することにより各金属酸化物がジルコニアに固溶した固体電解質材料が得られる。或いは、例えば各原料化合物をクエン酸水溶液中で混合し、複合クエン酸塩とし、これを仮焼成してもよい。
上記の原料化合物としては、例えば、上記金属酸化物、または、上記金属酸化物を構成する金属の水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩、シュウ酸塩などを用いることができる。また、アルカリとしてはアンモニアや水酸化ナトリウムを用いることができる。仮焼成温度は、500℃以上、1500℃以下程度とすることができる。
本発明に係る固体電解質材料は、固体電解質層などの作製のし易さなどから、粉末であることが好ましい。よって、上記で得られた仮焼体は、ボールミルやビーズミルなどにより粉砕することが好ましい。
粉砕の程度は適宜調整すればよいが、例えば、平均二次粒子径が0.2μm以上、1.0μm以下程度になるようにすればよい。当該平均二次粒子径が1.0μm以下と比較的細かい固体電解質材料を用いることで、後述するスラリー調製におけるバインダー使用量を低減することができ、焼成時における寸法安定性に優れたグリーンシートが得られる。一方、細か過ぎるとバインダーなどの必要量が多くなり、焼成後のシート平坦性が悪化するおそれがあり得ることから、好適には0.2μm以上とする。当該平均二次粒子径としては、0.3μm以上、0.8μm以下程度がより好ましい。なお、平均二次粒子径は、例えば、固体電解質材料の分散液を調製し、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いてその粒度分布を測定し、50体積%における径(D50)として求めることができる。
次に、本発明に係る固体電解質材料を用いて固体電解質膜または燃料極膜を製造する方法につき、ジルコニア膜前駆体を経由する方法を例として、工程ごとに説明する。なお、本発明において「固体電解質膜」と「燃料極膜」とは、固体酸化物形燃料電池用単セルなどの多層構造における固体電解質層と、燃料極活性層および/または燃料極支持層からなる燃料極層のみでなく、支持基板として単独で存在する固体電解質膜と、燃料極支持体や燃料極支持層と燃料極活性層との多層体も含む概念である。
1.スラリー調製工程
本工程では、少なくとも本発明に係る固体電解質材料、溶媒およびバインダーを混合することによりスラリーを得る。当該スラリーには、その他に、例えば可塑剤、分散剤、消泡剤などを添加してもよい。また、燃料極層用のスラリーの場合には、さらに導電性成分や、多孔質化するための発泡剤などを添加してもよい。かかる導電性成分は、メタンなどの炭化水素系燃料を水蒸気改質する触媒作用も示す。
スラリー調製に用いる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノンなどのケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類などを例示することができ、これらから適宜選択して使用する。これらの溶媒は単独で使用し得る他、2種以上を混合して使用することができる。
溶媒の使用量は、グリーンシート成形時におけるスラリーの粘度を加味して調節するのがよく、好ましくはスラリー粘度が1Pa・s以上、20Pa・s以下、より好ましくは1Pa・s以上、5Pa・s以下の範囲となるように調整するのがよい。
スラリーを製造する際に用いられるバインダーの種類は、焼成により分解したり燃焼することで除去されるものであれば格別の制限はなく、従来から知られた有機質のバインダーを適宜選択して使用することができる。有機質バインダーとしては、例えばエチレン系共重合体、スチレン系共重合体、(メタ)アクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ワックス類、エチルセルロースなどのセルロース類などが例示される。
これらの中でも特に好ましいのは、数平均分子量が5,000以上、200,000以下、より好ましくは10,000以上、50,000以下の(メタ)アクリレート系共重合体である。これらの有機質バインダーは、単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。特に好ましいのは、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートおよび/または2−エチルヘキシルアクリレートを60質量%以上含むモノマーの重合体である。
バインダーの使用量は適宜調整すればよいが、固体電解質材料100質量部に対して10質量部以上、30質量部以下程度が好ましい。
本発明で用いる可塑剤は、グリーンシートに柔軟性を付与するために添加する。
可塑剤としては、例えば、低分子可塑剤、コオリゴマー可塑剤および高分子可塑剤がある。低分子可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチルやフタル酸ジオクチルなどフタル酸エステル類を挙げることができる。コオリゴマー可塑剤および高分子可塑剤としては、ポリエステル類が挙げられる。
可塑剤の配合量は、使用するバインダーのガラス転移温度にもよるが、固体電解質材料100質量部に対して0.5質量部以上、10質量部以下とすることが好ましい。
スラリーの調製に当たっては、固体電解質材料の解膠や分散を促進し、スラリーの流動性を増加せしめ、スラリー中での固体電解質材料の沈降を抑制するため、分散剤を添加してもよい。分散剤の配合量は、固体電解質材料100質量部に対して0.5質量部以上、5質量部以下程度とすることが好ましい。
燃料極層用のスラリーに添加する導電性成分としては、例えば、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄など、発電時における還元雰囲気下で還元されて導電性を示す成分を挙げることができる。導電性成分の添加量は適宜調整すればよいが、例えば、固体電解質材料と導電性成分との合計に対して40質量%以上、80質量%以下程度とすることができる。
上記各成分は、常法により混合すればよい。例えば、所望の二次粒子径を有する固体電解質材料を事前に得ている場合は、ディスパーなどを用い、それ以上粉砕されない条件で混合すればよい。固体電解質材料の二次粒子径を事前に調整していない場合には、ボールミルなどを用い、所望の二次粒子径となるまで粉砕混合してもよい。
2.ジルコニア膜前駆体の製造工程
次に、上記スラリーを基材に塗工した後に乾燥することによりジルコニア膜前駆体を得る。なお、本発明では、単独のジルコニアシートの前駆体以外、即ち、固体電解質膜上に形成された燃料極層の焼結前の前駆体や、燃料極支持体上の形成された固体電解質層の焼結前の前駆体も、便宜上、ジルコニア膜前駆体というものとする。
基材としては、固体電解質支持体や燃料極支持体として利用できる単独のジルコニアシートを製造する場合には、PETフィルムなどの基材フィルムを用いることができる。
単独の燃料極支持体や、燃料極活性層と燃料極支持層との積層体の燃料極活性層の上に固体電解質層を形成する場合には、基材としては、燃料極支持体や上記積層体を用いる。なお、単層の燃料極支持体は、支持体と燃料極の両方の機能を有する。また、支持体である固体電解質支持体を基材として、その片面または両面に上記スラリーを塗工し、多層固体電解質層としてもよい。この場合、固体電解質支持体および第二固体電解質層のいずれか1以上を、本発明に係る固体電解質膜とすることができる。
スラリーの塗工方法は特に制限されず、ドクターブレード法、カレンダーロール法、印刷法などの常法を用いることができる。具体的には、スラリーを塗工ダムへ輸送し、ドクターブレードやスクリーン印刷機などにより均一な厚さとなるよう基材上にキャスティングし、乾燥することにより膜前駆体とする。
塗工厚さは、目的とする固体電解質層や燃料極層の厚さに応じて適宜調整すればよい。例えば、乾燥後における単独の固体電解質支持体用のジルコニア膜前駆体の厚さが70μm以上、300μm以下程度になるように、また、単独の燃料極支持体用のジルコニア膜前駆体の厚さが150μm以上、1500μm以下程度になるように塗工すればよい。また、固体電解質支持体の片面または両面に形成する第二固体電解質層や、固体電解質支持体または燃料極支持体上に形成する燃料極層の場合、乾燥後における膜前駆体の厚さが1.3μm以上、30μm以下程度、より好ましくは2.6μm以上、20μm以下程度になるように塗工すればよい。
ジルコニア膜前駆体の形状や大きさは、目的の固体電解質層や燃料極層の形状や大きさに合わせて決定すればよい。例えば、使用する基材に合わせればよい。また、固体電解質支持体や燃料極支持体を製造する場合には、幅10cm以上、400cm以下程度の幅の長尺とした後に、所望の形状や大きさに切断すればよい。
ジルコニア膜前駆体の乾燥条件は、使用した溶媒の種類などに応じて適宜調整すればよいが、通常は40℃以上、より好ましくは80℃以上で、150℃以下程度とする。乾燥は一定温度で行ってもよいし、50℃、80℃、120℃の様に順次連続的に昇温して加熱乾燥してもよい。
固体電解質支持体や燃料極支持体を製造する場合には、好ましくは、グリーンシートは長尺のまま保存された後、所望の形状に切断する。シートの形状は特に制限されず、目的の固体電解質膜や燃料極支持体の形状に合わせればよく、例えば、円形、楕円形、R(アール)を持った角形などとすることができ、また、これらのシート内に円形、楕円形、Rを持った角形などの穴を有するものであってもよい。
固体電解質支持体や燃料極支持体を製造する場合のジルコニア膜前駆体の大きさも、目的物に合わせればよいが、例えば、一辺が40mm以上、400mm以下の角形や、直径が40mm以上、400mm以下の円形とすることができる。当該長さまたは直径としては、70mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、また、300mm以下が好ましく、250mm以下がより好ましい。
3.焼結工程
次に、上記ジルコニア膜前駆体を焼結することにより固体電解質層または燃料極層を得る。
焼結条件は適宜調整すればよいが、例えば、1200℃以上、1500℃以下で焼結する。1200℃以上で焼結すれば十分な焼成効果が得られ、基板として十分な強度が得られる。一方、焼結温度が高過ぎるとシートの結晶粒径が過大となって靭性がかえって低下するおそれがあるため、上限を1500℃とする。より好ましくは1250℃以上、1450℃以下である。
焼結温度に至るまでの加熱速度は適宜調整すればよいが、通常、0.05℃/分以上、4℃/分以下程度とすることができる。
本発明に係る固体電解質層の形状や大きさは適宜決定すればよいが、例えばその厚さとしては、50μm以上、300μm以下とすることができる。当該厚さが薄い程、固体酸化物形燃料電池の発電性能は高くなり、300μm以下であれば十分に高い発電特性が得られる。一方、薄過ぎると強度に問題が生じるおそれがあり得るので、当該厚さとしては50μm以上が好ましい。当該厚さとしては、60μm以上がより好ましく、80μm以上がさらに好ましく、また、200μm以下がより好ましく、180μm以下がさらに好ましく、160μm以下が特に好ましい。形状は、正方形や長方形などの角形や、円形など、特に制限されない。角形の一辺の長さや円形の直径としては、例えば、30mm以上、300mm以下とすることができる。当該長さおよび直径としては、50mm以上がより好ましく、70mm以上がさらに好ましく、また、200mm以下がより好ましく、150mm以下がさらに好ましい。
本発明に係る燃料極支持体の形状や大きさも適宜決定することができる。例えばその厚さとしては、100μm以上、1200μm以下とすることができる。形状は特に制限されず、所望の形状にすればよい。角形の一辺の長さや円形の直径としては、例えば、30mm以上、300mm以下とすることができる。当該長さおよび直径としては、50mm以上がより好ましく、70mm以上がさらに好ましく、また、200mm以下がより好ましく、150mm以下がさらに好ましい。
固体電解質層や燃料極支持体の上に形成される本発明に係る燃料極層、および固体電解質支持体の片面または両面に形成する第二固体電解質層の形状や大きさは、固体電解質層に合わせればよい。但し、厚さとしては1μm以上、30μm以下が好ましく、2μm以上、20μm以下がより好ましい。
以上の工程で得られる本発明に係る固体電解質膜と燃料極膜は、本発明に係る固体電解質材料を用いて作製されたものであり、本発明に係る電解質材料に由来する電解質組成を有する。即ち、本発明に係る固体電解質膜と燃料極膜は上記焼結工程により焼結されたものではあるが、その電解質組成は、不可避的不純物や、製造工程で用いたバインダーなどの成分である不可避的残留物など意図しない成分、燃料極膜の場合には導電性成分などの他、使用した固体電解質材料の電解質組成と同じである。
より具体的には、本発明に係る固体電解質膜と燃料極膜は、スカンジア、セリアおよび酸化ビスマスが固溶した安定化ジルコニアからなる。当該安定化ジルコニアにおけるスカンジアの割合、即ち固溶量としては8モル%以上、12モル%以下が好ましい。当該割合が8モル%以上であれば、結晶相の安定化効果や酸素イオン伝導性の向上などの効果がより確実に得られる。一方、スカンジアの固溶量が過剰になると強度が低下するおそれがあり得るので、当該割合としては12モル%以下が好ましい。当該割合としては、9モル%以上、11モル%以下がより好ましい。
本発明に係る固体電解質膜と燃料極膜では、スカンジアに加えてセリアと酸化ビスマスをジルコニアに固溶させることにより、その理由は明らかではないが、水熱状態前後における結晶相の変化が低減され、水熱劣化が顕著に抑制されている。かかる効果が確実に発揮されるためには、ジルコニア全体に対するセリアの割合を0.5%モル%以上、2.5モル%以下、ジルコニア全体に対する酸化ビスマスの割合を0.5モル%以上、5.0モル%以下にすることが好ましい。セリアの上記割合としては、0.8モル%以上がより好ましく、1.1モル%以上がさらに好ましく、1.2モル%以上がよりさらに好ましく、また、2.2モル%以下がより好ましく、2.0モル%以下がさらに好ましく、1.5モル%以下がよりさらに好ましい。酸化ビスマスの上記割合としては、0.6モル%以上がより好ましく、また、4.0モル%以下がより好ましく、3.0モル%以下がさらに好ましく、2.5モル%以下がよりさらに好ましい。
ジルコニア全体に対するセリアと酸化ビスマスの合計の割合としては、2.1モル%以上、6.0モル%以下が好ましい。当該合計量がこの範囲にあれば、上記のセリアと酸化ビスマスによる効果がより確実に得られる。当該割合としては、2.2モル%以上がさらに好ましく、また、5.0モル%以下がより好ましく、4.5モル%以下または4.0モル%以下がよりさらに好ましく、3.0モル%以下が特に好ましい。
セリアと酸化ビスマスとの割合は、酸化ビスマスの含有量がセリアの含有量と同等もしくは少なくてもよいが、酸化ビスマスの含有量が多い方がとりわけ水熱劣化抑制に効果がある。この場合、セリアに対する酸化ビスマスのモル比(Bi23/CeO2)としては1.05以上、4以下が好ましい。当該モル比としては、1.1以上がより好ましく、1.2以上がさらに好ましく、また、3.8以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましい。
本発明に係る固体電解質膜と燃料極膜を構成する安定化ジルコニアには、スカンジア、セリアおよび酸化ビスマスに加えてさらに他の金属酸化物を含んでいてもよい。さらなる金属酸化物の添加により、ジルコニアシートの酸素イオン伝導性、強度、耐久性などの特性がより一層向上する可能性がある。かかる金属酸化物としては、例えば、MgO、CaO、SrO、BaOなどのアルカリ土類金属酸化物;Y23、La23、Pr23、Nd23、Sm23、Eu23、Gd23、Tb23、Dy23、Ho23、Er23、Yb23などの希土類元素酸化物;Al23、In23などの第13族元素酸化物;SiO2、Ge23、SnO2などの第14族元素酸化物;Sb23などの第15族元素酸化物;TiO2などの第4族元素酸化物;Nb25、Ta25などの第5族元素酸化物などを挙げることができる。これらの中でも、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)、アルミニウム(Al)およびチタン(Ti)からなる群より選択される1種以上の金属の酸化物が特に好ましい。これらその他の金属酸化物は、いずれか1種のみであってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよく、また、そのジルコニア全体に対する割合としては、0.5モル%以上、2.5モル%以下が好ましい。
本発明に係る固体電解質膜と燃料極膜には、常法により空気極層などを形成することにより固体酸化物形燃料電池とすることができる。
例えば、本発明により固体電解質支持体を得た場合には、通常、焼結温度の関係から、まずその一方の面に燃料極層を形成し、次に他方の面に空気極層を形成する。固体電解質膜と空気極層との間には、層間反応を抑制するためのバリア層を形成してもよい。バリア層は、燃料極層よりも先に形成してもよいし、或いは、バリア層用スラリーと燃料極層用スラリーをそれぞれ塗工して乾燥した後に、同時に焼結して形成してもよい。また、当該燃料極層は、本発明に係る固体電解質材料から製造してもよい。
本発明により燃料極支持体を得た場合には、その上に、任意の燃料極活性層、固体電解質層、任意の中間層、空気極層を順次形成すればよい。当該固体電解質層は、本発明に係る固体電解質材料から製造してもよい。
その他、本発明に係る固体電解質材料を用い、固体電解質支持体上に燃料極層を形成してもよい。
このようにして得られた固体電解質膜や燃料極膜は、水熱状態の前後における結晶相の変化が小さく、水熱劣化環境に晒されても強度の低下が抑制されている。よって、本発明に係る固体電解質膜および/または燃料極膜を含む固体酸化物形燃料電池用単セルや固体酸化物形燃料電池は、作動と停止が繰り返される断続的な発電などに対しても高い耐久性を示すものである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1: 本発明に係る固体電解質粉末とジルコニアシートの製造
(1) 固体電解質粉末の調製
Sc23が10.5モル%、CeO2が1.2モル%、Bi23が1.5モル%、残部がZrO2となるように、オキシ塩化ジルコニウム、塩化スカンジウム、塩化セリウムおよび塩化ビスマスの混合水溶液を調製した。混合水溶液は、ZrO2の濃度が0.2モル/Lとなるように調製した。別途、攪拌機付槽型反応器に純水300mLを入れ、さらにアンモニア水を加えてpHを8.5に調整した。当該アンモニア水溶液に上記混合水溶液を液速50mL/分の割合で、また、28質量%アンモニア水溶液を50mL/時の割合で、定量ポンプを用いてそれぞれ攪拌下注加した。反応器内の液量がほぼ一定となるように別の定量ポンプで反応液を排出しつつ、反応中pHが8.5±0.2の範囲になるように上記混合水溶液と上記アンモニア水溶液の液速を微調整しながら、中和共沈反応を連続的に行った。排出液中の混合水酸化物を濾過により母液から分離し、次いで水洗することによって塩化アンモニウムを除去した。得られた混合水酸化物をn−ブタノール中に分散し、105℃で常圧蒸留を行うことにより脱水した。次いで、この脱水された混合水酸化物を含むn−ブタノール分散液を噴霧乾燥し、流動性のよい粉末を得た。この粉末を大気中において1050℃で5時間焼成し、ボールミルで解砕することにより、(ZrO20.868(Sc230.105(CeO20.012(Bi230.015粉末(10.5Sc1.2Ce1.5BiSZ粉末)を得た。
(2) グリーンシートの製造
上記(1)で得られた固体電解質粉末を100質量部、溶媒としてトルエン60質量部、および分散剤としてソルビタン脂肪酸エステル系界面活性剤1.5量部とを混合し、ボールミルにより混合することにより混合物を調製した。得られた混合物へ、バインダーとしてメタクリレート系共重合体(数平均分子量:55000,ガラス転移温度:−8℃,固形分濃度:50質量%)を固形分として12〜18質量部となるよう添加し、さらに可塑剤としてジブチルフタレート2質量部を添加し、ボールミルにより20時間混合してスラリーを調製した。得られたスラリーを濃縮脱泡することにより25℃での粘度を2〜13Pa・sに調整し、塗工用スラリーとした。
得られた塗工用スラリーを、ドクターブレード法によりPETフィルム上に塗工した。当該PETフィルムを、0.2m/分の速度で、50℃、80℃および110℃の3つの温度域の乾燥機中を通過させた後、スリッターで切断し、幅150mm、長さ200m、厚さが約150μmのグリーンテープを得た。当該グリーンテープを切断し、直径約400mmの円形グリーンシートと、約60mm×15mmの長方形グリーンシートを得た。
(3) ジルコニアシートの製造
一辺が約165mmの正方形アルミナ多孔質シート(気孔率:45%,厚さ:0.2mm)で、上記(2)で得られた円形グリーンシートと長方形グリーンシートを挟んで積層体とし、この積層体を脱脂した後、大気雰囲気下、1300℃で3時間焼結することにより、厚さ120μm、直径30mmの円形ジルコニアシートと、厚さ120μm、50mm×10mmの長方形ジルコニアシートを製造した。
実施例2: 本発明に係る固体電解質粉末とジルコニアシートの製造
上記実施例1において、ZrO2:Sc23:CeO2:Bi23がモル比で86.4:11:0.6:2となるように各原料粉末を秤量し、大気中において1150℃で5時間焼成した以外は同様にして、(ZrO20.864(Sc230.11(CeO20.006(Bi230.02粉末(11Sc0.6Ce2BiSZ粉末)を調製し、当該粉末を原料としてジルコニアシートを製造した。
実施例3: 本発明に係る固体電解質粉末とジルコニアシートの製造
上記実施例1において、ZrO2:Sc23:CeO2:Bi23がモル比で84.5:11.5:1.5:2.5となるように各原料粉末を秤量し、大気中において1000℃で5時間焼成した以外は同様にして、(ZrO20.845(Sc230.115(CeO20.015(Bi230.025粉末(11.5Sc1.5Ce2.5BiSZ粉末)を調製し、当該粉末を原料としてジルコニアシートを製造した。
実施例4: 本発明に係る固体電解質粉末とジルコニアシートの製造
上記実施例1において、ZrO2:Sc23:CeO2:Bi23がモル比で87.9:10:1:1.1となるように各原料粉末を秤量し、大気中において1000℃で5時間焼成した以外は同様にして、(ZrO20.879(Sc230.1(CeO20.01(Bi230.011粉末(10Sc1Ce1.1BiSZ粉末)を調製し、当該粉末を原料としてジルコニアシートを製造した。
実施例5: 本発明に係る固体電解質粉末とジルコニアシートの製造
上記実施例1において、ZrO2:Sc23:CeO2:Bi23がモル比で87.9:10:1.3:0.8となるように各原料粉末を秤量し、大気中において1000℃で5時間焼成した以外は同様にして、(ZrO20.879(Sc230.1(CeO20.013(Bi230.008粉末(10Sc1.3Ce0.8BiSZ粉末)を調製し、当該粉末を原料としてジルコニアシートを製造した。
比較例1: Bi23を含まない固体電解質粉末とジルコニアシートの製造
上記実施例1において、Bi源を用いずにZrO2:Sc23:CeO2がモル比で90.4:9:0.6となるように各原料粉末を秤量し、大気中において1250℃で5時間焼成した以外は同様にして、(ZrO20.904(Sc230.09(CeO20.006粉末(9Sc0.6CeSZ粉末)を調製し、当該粉末を原料としてジルコニアシートを製造した。
比較例2: CeO2を含まない固体電解質粉末とジルコニアシートの製造
上記実施例1において、Ce源を用いずにZrO2:Sc23:Bi23がモル比で87:11:2となるように各原料粉末を秤量し、大気中において750℃で5時間焼成した以外は同様にして、(ZrO20.87(Sc230.11(Bi230.02粉末(11Sc2BiSZ粉末)を調製し、当該粉末を原料としてジルコニアシートを製造した。
試験例1: 結晶相の変化率測定
ジルコニアシートの水熱劣化は、一般的に、単斜晶が増加することによって強度が低下することで認められる。そこで、上記で得られた各ジルコニアシートと水熱処理前後の各ジルコニアシートについての結晶相の変化率を求めた。
まず、上記実施例1〜5と比較例1,2で得た円形ジルコニアシートについて、X線回折法によって立方晶(200)面のピーク強度(PH I)を求めた。ここで、強度を測定すべきピークを立方晶(200)面としたのは、上記ジルコニアシートには立方晶相以外の結晶相である単斜晶相・正方晶相・菱面体晶相のピークが認められないか、たとえ認められてもそのピーク強度がそれぞれの主ピークの強度に対して5%以下となる領域に存在していたためである。
X線回折法の測定条件は、以下のとおりである。
X線回折装置: 理学電器社製「RINT−2500型」
走査範囲: 20.0〜80.0°
スキャンスピード: 0.3°/min
サンプリング幅: 0.01°
なお、上記X線回折装置には湾曲モノクロメータが附属されており、そのX線管はCuKα1で50kV/300mA、発散スリットは1°、散乱スリットは1.26mm、発光スリットは0.3mm、モノクロメータ発光スリットは0.8mmである。
測定結果によれば、実施例1〜4と比較例1のジルコニアシートの結晶相では立方晶が99%以上であり、実施例5と比較例2のジルコニアシートの結晶相では立方晶が98%以上であった。
次に、円形ジルコニアシートを水熱処理した。具体的には、オートクレーブ装置(耐圧硝子工業株式会社「TEM−V」)の800mL容の耐圧容器中に、各ジルコニアシートを研磨処理などしないまま、シートが動かないように縦置きにしてセットした。当該容器中に、さらに500mLの純水をゆっくりと注ぎ込んだ後、10気圧、180℃で40時間加熱した。
次いで、上記と同様の条件により水熱処理後のジルコニアシートの立方晶(200)面のピーク強度(PH II)を測定し、下記式により結晶相の変化率を算出した。
結晶相の変化率(%)={[(PH II)−(PH I)]/(PH I)}×100
上記式より、変化率の値がマイナスであることは、立方晶が減少し、そのピーク強度が低下していることを示す。結果を表1に示す。
試験例2: 曲げ強度の変化率測定
上記実施例1〜5と比較例1,2で得た50mm×10mmの長方形ジルコニアシートをテストピースとし、水熱処理前後において同じ条件で3点曲げ強度変化率を測定した。
具体的には、テストピース10枚を、上記試験例1と同条件で水熱処理した。水熱処理前のテストピース10枚と、水熱処理後のテストピース10枚について、JIS R1601に準拠して、3点曲げ強度試験用治具を取付けた万能材料試験装置(インストロン社製、型式4301)を用いて、スパン20mm、クロスヘッド速度0.5mm/分の条件で3点曲げ強度を測定し、平均値を求めた。
水熱処理前後における3点曲げ強度変化率は、水熱処理前の曲げ強度平均値(W I)と水熱処理後の曲げ強度平均値(W II)から、下記式により算出した。
曲げ強度の変化率(%)={[(W II)−(W I)]/(W I)}×100
上記式より、変化率の値がマイナスであることは曲げ強度が低下していることを示す。結果を表1に示す。
Figure 0006371660
表1に示す結果のとおり、スカンジアが固溶しているScSZシートであっても、さらにセリアまたは酸化ビスマスが固溶していないScSZシートは、水熱処理により結晶相の変化が起こり、立方晶以外の結晶相が増えたため、立方晶の比率が減少していた。
それに対して、スカンジアに加えてセリアと酸化ビスマスの両方が固溶している本発明に係るジルコニアシートでは、水熱処理による立方晶の減少の程度が低減されており、水熱劣化が抑制されていることが証明された。特に、セリアに対する酸化ビスマスのモル比(Bi23/CeO2)が1を超える場合(実施例1〜4)は、当該モル比が1未満の場合(実施例5)に比べて立方晶の減少がより一層低減されており、水熱劣化抑制により効果があることが証明された。
また、立方晶率が明らかに減少している比較例1〜2では曲げ強度の低下率はいずれも5%を超えていたのに対して、立方晶率の減少が少ない本発明の実施例1〜5のジルコニアシートの曲げ強度の低下率はいずれも5%以下であり、水熱環境に晒されても強度低下が少ないことが判る。

Claims (6)

  1. スカンジアを8モル%以上、12モル%以下、
    セリアを0.5モル%以上、2.5モル%以下、
    酸化ビスマスを0.5モル%以上、5.0モル%以下含み、
    セリアと酸化ビスマスの合計が2.1モル%以上、6.0モル%以下、
    セリアに対する酸化ビスマスのモル比が1.05以上、4以下であり、且つ、
    結晶相が主に立方晶であるジルコニアからなることを特徴とする固体電解質材料。
  2. セリアに対する酸化ビスマスのモル比が1.1以上である請求項1に記載の固体電解質材料。
  3. 上記結晶相における上記立方晶の比率が95%以上である請求項1または2に記載の固体電解質材料。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載の固体電解質材料に由来する電解質組成を有することを特徴とする固体電解質膜。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の固体電解質材料に由来する電解質組成を有することを特徴とする燃料極膜。
  6. 請求項に記載の固体電解質膜および/または請求項に記載の燃料極膜を含むことを特徴とする固体酸化物形燃料電池用単セル。
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