以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されている。図1は、その全体構成を示すブロック図である。超音波診断装置は、病院等の医療機関に設置され、人体に対する超音波の送受波により超音波画像を形成する装置である。
図1において、プローブ10は、診断領域に対して超音波を送受波する送受波器である。プローブ10は、超音波を送受波する複数の振動素子を備えており、複数の振動素子によって超音波ビームが形成される。
プローブ10は、画像形成用の超音波を送受する機能を備えている。また、プローブ10は、せん断波を発生させる超音波(プッシュパルス)を送波する機能と、せん断波を計測するための超音波(トラッキングパルス)を送受する機能と、を備えている。画像形成用の超音波ビームは繰り返し電子的に走査され、これによりビーム走査面が順次形成される。電子走査方式としては、電子セクタ走査、電子リニア走査等をあげることができる。
送信部12は送信ビームフォーマである。送信部12は、送信時において、プローブ10の複数の振動素子に対して一定の遅延関係をもった複数の送信信号を供給する。これにより、超音波の送信ビームが形成される。超音波画像を形成する場合、送信部12は、画像形成用の送信信号を複数の振動素子に供給する。これにより、画像形成用の送信ビームが形成される。せん断波を発生させる場合、送信部12は、プッシュパルス用の送信信号を複数の振動素子に供給する。これにより、プッシュパルスの送信ビームが形成される。また、せん断波を計測する場合、送信部12は、トラッキングパルス用の送信信号を複数の振動素子に供給する。これにより、トラッキングパルスの送信ビームが形成される。受信時において、生体内からの反射波がプローブ10によって受波されると、これにより、プローブ10から複数の受信信号が受信部14に出力される。
受信部14は受信ビームフォーマである。受信部14は、受信時において、複数の振動素子から得られる複数の受信信号に対して整相加算処理等を施すことにより、受信ビームを形成する。プローブ10によって画像形成用の超音波が送受された場合、受信部14は、複数の受信信号に基づいて画像形成用の受信ビームを形成する。プローブ10によってトラッキングパルスが送受された場合、受信部14は、複数の受信信号に基づいてトラッキングパルス用の受信ビームを形成する。
送信部12及び受信部14の作用により、画像形成用の送信ビーム及び受信ビーム(両者併せて画像形成用の超音波ビーム)が電子的に走査される。これによりビーム走査面が構成される。ビーム走査面は複数のビームデータに相当し、それらは受信フレーム(受信フレームデータ)を構成する。なお、各ビームデータは深さ方向に並ぶ複数のエコーデータにより構成される。画像形成用の超音波ビームの電子走査を繰り返すことにより、受信部14から時間軸上に並ぶ複数の受信フレームが出力される。それらは受信フレーム列を構成する。
なお、送信機能及び受信機能を切り替えるための送受信切替部(図示しない)が設けられている。送受信切替部は、送信時において、送信部12からの送信信号を各振動素子に供給する。また、送受信切替部は、受信時において、複数の振動素子から得られる複数の受信信号を受信部14に供給する。
組織信号処理部16は、受信部14から出力されるビームデータに対して、Bモード断層画像を形成するための信号処理を実行するモジュールであり、検波回路、信号圧縮回路、ゲイン調整回路、フィルタ処理回路等を含むものである。
断層画像形成部18は、座標変換機能及び補間処理機能等を有するデジタルスキャンコンバータにより構成されている。断層画像形成部18は、組織信号処理部16から出力された受信フレーム列に基づいて、複数の組織表示フレームによって構成される組織表示フレーム列を形成する。個々の組織表示フレームはBモード断層画像のデータである。組織表示フレーム列は、表示処理部52を介してモニタ等の表示部54に出力されて表示される。これにより、リアルタイムでBモード断層画像が動画像として表示される。
個別変位演算部20は、時間軸上で隣接する2つの受信フレームに基づいて、生体組織の変位量(移動量)を演算する。変位量として、例えば、2つの受信フレーム間の輝度変化量又は相関値が用いられる。例えば、個別変位演算部20は、時間軸上で隣接する2つの受信フレーム間の輝度変化量又は相関値を、関心領域(ROI)内の全点について、時間軸に沿って順次演算する。これにより、各点の個別の変位量(移動量)が、時間軸に沿って演算される。個別変位演算部20は、ビーム方位における変位量を演算してもよいし、ビーム走査面における二次元の変位量を演算してもよい。また、個別変位演算部20は、各点の移動ベクトル(移動方向と移動量)を演算してもよい。
静的弾性情報演算部22及び弾性画像形成部24は、静的弾性情報を計測する場合に使用される。静的弾性情報の計測においては、例えば、被検者の体表から静的な圧力を加えて生体組織を圧縮変形させ、生体組織内のひずみを超音波によって計測し、そのひずみから弾性情報を計測する。
静的弾性情報演算部22は、生体組織に圧力が印加される前の受信フレームと圧力が印加された後の受信フレームとの間の各点の変位量を、空間微分(例えば深さ方向に微分)する。これにより、各点のひずみ量が演算される。
弾性画像形成部24は、座標変換機能及び補間処理機能等を有するデジタルスキャンコンバータにより構成されている。弾性画像形成部24は、静的弾性情報演算部22によって演算された各点のひずみ量に基づいて、ひずみ量の二次元分布を表す弾性画像データを形成する。また、弾性画像形成部24は、弾性画像データの各点の色を、ひずみの大きさに応じた色に変換する機能を備えている。例えば、弾性画像形成部24は、ひずみが大きい点の色を赤色に変換し、ひずみが小さい点の色を青色に変換する。弾性画像データは表示処理部52に出力される。
トラッキング部26及び動的弾性情報演算部28は、動的弾性情報を計測する場合に使用される。動的弾性情報の計測においては、計測領域に対してプローブ10からプッシュパルスが送波され、その後、プローブ10からトラッキングパルスが送波される。このとき、プッシュパルスによって生じた横波(せん断波)の伝搬方向に沿って、複数のトラッキングパルスが送波される。例えば、伝搬方向に沿って、2つの観測位置にトラッキングパルスが送波される。トラッキングパルスによる反射波がプローブ10によって受波されると、トラッキングパルス用のビームデータが受信部14からトラッキング部26に供給される。
トラッキング部26は、プッシュパルスの照射位置とせん断波の観測位置との差(せん断波の伝搬距離)を演算し、観測位置にせん断波が伝搬するまでに要する時間を、各トラッキングパルス用の受信ビームの受信時間(各トラッキングパルスの送波時間)に基づいて演算する。
動的弾性情報演算部28は、観測位置にせん断波が伝搬するまでに要した時間に基づいて、せん断波の伝搬速度を演算する。そして、動的弾性情報演算部28は、せん断波の伝搬速度に基づいて、生体組織の弾性情報を演算する。例えば、E=3ρC2の式に従って、ヤング率が演算される。ここで、Eはヤング率であり、ρは生体組織の密度であり、Cはせん断波の伝搬速度である。弾性情報は表示処理部52に出力される。
なお、本実施形態に係る超音波診断装置は、静的弾性情報を計測する機能及び動的弾性情報を計測する機能の両方を備えていてもよいし、一方の機能のみを備えていてもよい。つまり、超音波診断装置は、静的弾性情報の計測機能を実行する部分(静的弾性情報演算部22及び弾性画像形成部24)、及び、動的弾性情報の計測機能を実行する部分(トラッキング部26及び動的弾性情報演算部28)のうち少なくとも一方の部分を備えていればよい。
変位総和演算部30は、個別変位演算部20によって演算された各点の変位量に基づいて、関心領域内の各点の変位量の総和又は平均値を、時間軸に沿って順次演算する。
呼吸波形生成部32は、時間軸に沿って順次演算された変位量の総和又は平均値に基づいて、変位量の総和又は平均値の時間変化を示す変位波形(運動波形の一例に相当)を生成する。生体組織の変位が被検者の呼吸運動に起因する場合、この変位波形は、被検者の呼吸運動を示す呼吸波形に相当する。また、呼吸波形生成部32は、変位量の総和又は平均値を時間軸に沿って積算することにより、積算値の時間変化を示す積算変位波形を生成してもよい。
波形解析部34は、変位波形を解析することにより、変位波形の周期性を検出する。また、波形解析部34は、変位波形に基づいて、被検者に呼吸指示を与えるタイミング、及び、息止め指示を与えるタイミングを検出する。また、波形解析部34は、息止め期(被験者が息を止めている期間)における変位波形の安定状態を検出する。検出結果を示す情報は、制御部42に供給される。
血流速度演算部36及び血流画像形成部38は、ドプラデータ(血流の流れ情報)を取得する場合に使用される。この場合、エコーデータ(組織の輝度情報)及びドプラデータ(血流の流れ情報)の両者を取得するために、エコーデータ取得用の超音波の送受波とドプラデータ取得用の超音波の送受波とが、ビーム方位毎に行われる。もちろん、同じ超音波の送受波によってエコーデータ及びドプラビームの両者を同時に得るようにしてもよい。
血流速度演算部36は、受信部14から出力されたビームデータに含まれるドプラ情報に対して、二次元血流画像を形成するための信号処理を実行するモジュールである。二次元血流画像としてはカラードプラ画像が周知である。血流速度演算部36は、受信部14から出力される血流画像形成用のビームデータ(ドプラ情報を含むデータ)に対して、直交検波、自己相関演算、速度演算等の信号処理を行う。これにより、血流データとしての血流速度データが形成される。
血流画像形成部38は、座標変換機能及び補間処理機能等を有するデジタルスキャンコンバータにより構成されている。血流画像形成部38は、血流速度演算部36から出力された血流速度に対応する受信フレーム列に基づいて、複数の血流表示フレームによって構成される血流表示フレーム列を形成する。個々の血流表示フレームは二次元のカラー血流画像のデータである。血流表示フレーム列は表示処理部52に出力される。
なお、血流画像を形成しない場合、超音波診断装置は、血流速度演算部36及び血流画像形成部38を備えていなくてもよい。
血流部分評価部40は、カラー血流画像データに基づいて、関心領域内における血流部分の面積を演算する。または、血流部分評価部40は、Bモード断層画像データに基づいて、関心領域内における低輝度部分(黒抜け部分)の面積を演算してもよい。例えば、輝度値が閾値以下となる部分が低輝度部分に該当する。一般的に、Bモード断層画像データにおいて血流部分は低輝度となるため、低輝度部分が血流部分に対応する。そのため、低輝度部分の面積を演算することにより、血流部分の面積が得られる。また、血流部分評価部40は、血流部分又は低輝度部分の面積を、関心領域の全体の面積で規格化する。規格化された面積値は、制御部42の指示生成部46に出力される。
制御部42は、図1に示す各構成の動作制御を行っている。制御部42には、入力部48が接続されている。入力部48は、一例として、トラックボールやキーボード等の入力デバイスを含む操作パネルによって構成されている。ユーザは入力部48を使用して、関心領域(ROI)等を指定することが可能である。
また、制御部42は、SW計測制御部44と指示生成部46とを含んでいる。
SW計測制御部44は、波形解析部34による変位波形の解析結果に基づいて、動的弾性情報の計測タイミングを制御する。例えば、変位波形の安定状態が検出されると、SW計測制御部44は、送信部12にプッシュパルスを送波させ、続けて、トラッキングパルスを送波させる。
指示生成部46は、被検者に対して呼吸及び息止めを指示するための指示情報を生成する。例えば、指示生成部46は、吸気(息を吸う動作)を指示するための吸気指示情報、呼気(息を吐く動作)を指示するための呼気指示情報、息止めを指示するための息止め指示情報、及び、呼吸再開(息止め解除)を指示するための呼吸再開指示情報を生成する。これらの情報は、例えば、図形情報、音声情報又は波形情報である。図形情報及び波形情報は表示処理部52に出力され、音声情報は音声出力部50に出力される。
例えば、指示生成部46は、波形解析部34による波形解析結果に基づいて、息を吸うタイミングで吸気指示情報を出力する。また、指示生成部46は、波形解析結果に基づいて、息を吐くタイミングで呼気指示情報を出力する。また、指示生成部46は、波形解析結果に基づいて、息を止めるタイミングで息止め指示情報を出力する。また、指示生成部46は、弾性計測が終了したタイミングで、呼吸再開指示情報を出力する。
指示生成部46は、呼吸基準波形(指示波形の一例に相当)を生成して出力してもよい。呼吸基準波形は、被検者に呼吸及び息止めを指示するための教師的な波形である。呼吸基準波形は、変位波形の解析結果に依拠しない波形であってもよいし、その解析結果に依拠する波形であってもよい。呼吸基準波形は、吸期(息を吸っている期間)、呼期(息を吐いている期間)、及び、息止め期が、波形として表されたものである。呼吸基準波形においては、吸期及び呼期が一定の周期で繰り返し表されている。
また、指示生成部46は、血流部分評価部40によって演算された血流部分の面積に基づいて、血流面積の時間変化を表す血流面積波形(血流波形の一例に相当)を生成してもよい。
音声出力部50はスピーカによって構成されており、指示生成部46によって生成された指示情報(音声情報)に従って、音声を出力する。例えば、音声出力部50は、吸気指示情報に従って、「息を吸ってください」等のように、吸気を指示する音声を出力する。また、音声出力部50は、呼気指示情報に従って、「息を吐いてください」等のように、呼気を指示する音声を出力する。また、音声出力部50は、息止め指示情報に従って、「息を止めてください」等のように、息止めを指示する音声を出力する。また、音声出力部50は、呼吸再開指示情報に従って、「呼吸を再開してください」等のように、呼吸再開を指示する音声を出力する。
表示処理部52は、Bモード断層画像、弾性画像、動的弾性情報、カラー血流画像、血流面積波形、及び、指示情報に対して、必要なグラフィックデータをオーバーレイ処理し、これによって表示画像を構成している。この画像データは表示部54に出力され、表示モードに従った表示形態で画像が表示される。表示部54は例えば液晶ディスプレイ等の表示デバイスによって構成されている。表示部54は複数の表示デバイスによって構成されてもよい。
なお、表示処理部52は、複数の画像を合成してもよい。例えば、表示処理部52は、Bモード断層画像上にカラー血流画像を合成してもよい。
図2には、Bモード断層画像の表示例が示されている。例えば、表示部54の画面60にBモード断層画像62が表示される。Bモード断層画像62は、断層画像形成部18によって形成された画像である。このBモード断層画像62に対して関心領域(ROI)64が設定されている。関心領域64の形状、サイズ及び位置は、例えばユーザによる入力部48の操作によって指定される。
図3には、変位波形の一例が示されている。この変位波形は、被検体の呼吸運動による生体組織(例えば胸腹部内組織)の変位(運動)を表している。図3(a)には変位波形が示されている。この変位波形は、関心領域64内における各点の変位量の総和又は平均値の時間変化を表している。図3(b)には積算変位波形が示されている。この積算変位波形は、時間軸方向に対する総和又は平均値の積算値の時間変化を表している。なお、図3(a)及び図3(b)に示されている波形は、説明の都合上、模式的に表現されている。
図3中のA点は、検出の開始時点を示している。B点は、被検者が息を吸っている場合において、変位量が最大となる時点を示している。C点は、被検者が息を吐いている場合において、変位量(絶対値)が最大となる時点を示している。D状態は、変化量がゼロ又は予め設定された範囲内となっている状態であり、生体組織の運動が安定している状態である。すなわち、D状態は、生体組織が静止した状態又は生体組織の運動量(移動量)が少ない状態である。F点は、被検者の肺が膨らみきった時点を示している。
次に、図3及び図4を参照して、呼吸及び息止め指示のタイミングについて説明する。本実施形態では、弾性計測の前段階として、被検者の呼吸(変位波形)の周期がある程度一定となるように、超音波診断装置によって呼吸の指示が繰り返し被検者に与えられる(S01)。まず、任意のタイミングで吸気指示が与えられる。そのために、指示生成部46は、吸気指示情報(図形情報、音声情報、波形情報)を出力する。これにより、表示部54に吸気図形や吸期波形が表示される。または、吸気を指示する音声が音声出力部50から出力される。吸気指示に応じて被験者が息を吸っていくと、変位量が増加していく。そして、波形解析部34によってB点(吸気時の変位量が最大となる時点)が検出されると、指示生成部46は、呼気指示情報(図形情報、音声情報、波形情報)を出力する。これにより、表示部54に呼気図形や呼期波形が表示される。または、呼気を指示する音声が音声出力部50から出力される。呼気指示に応じて被験者が息を吐いていくと、変位量が減少していく。そして、波形解析部34によってC点(呼気時の変位量(絶対値)が最大となる時点)が検出されると、指示生成部46は、吸気指示情報を出力する。被検者が息を吸っていき、再びB点が検出されると呼気指示が与えられる。このように、呼吸(変位波形)の周期が一定となるように、B,C点の検出に応じて吸気及び呼気の指示が被検者に与えられる。波形解析部34は、変位波形のピーク(B,C点)を検出することにより、呼吸(変位波形)の周期性を検出する。なお、図3には、1周期分の波形が示されているが、これは説明の都合上のものであり、実際は、複数周期分の波形が得られる。
以上のようにして、波形解析部34によって呼吸(変位波形)の周期性が検出されると、指示生成部46は吸気指示情報を出力する(S02)。吸気指示に応じて被検者が息を吸っていいき、波形解析部34によってB点が検出されると(S03)、指示生成部46は、呼気指示情報を出力する(S04)。呼気指示に応じて被検者が息を吐いていき、波形解析部34によってC点が検出されると(S05)、指示生成部46は、息止め指示情報(図形情報、音声情報、波形情報)を出力する(S06)。これにより、表示部54に息止め図形や息止め期波形が表示される。または、息止めを指示する音声が音声出力部50から出力される。このように、一例として、呼気指示情報を出力した後に、息止め指示情報が出力される。すなわち、被検者が息を吐いている途中で息止めの指示が与えられる。息止指示に従って被検者が息を止めると、変位量が徐々に「0」に近づいていき、やがて、変位量がほぼ一定となる(状態D)。波形解析部34によって状態D(安定状態)が検出された時点で(S07)、制御部42は弾性計測を実行する(S08)。動的弾性情報の計測を実行する場合、SW計測制御部44は、送信部12にプッシュパルスを送波させ、続けて、トラッキングパルスを送波させる。上述したように、トラッキング部26によって、せん断波の到来タイミングが検出される。そして、動的弾性情報演算部28によって、せん断波の伝搬速度が演算され、更に、ヤング率等の弾性情報が演算される。この弾性情報は表示部54に表示される。また、静的弾性の計測を実行する場合、静的弾性情報演算部22によって各点のひずみ量が演算され、弾性画像形成部24によって、ひずみ量の二次元分布を表す弾性画像のデータが形成される。この弾性画像は表示部54に表示される。弾性計測が終了すると、指示生成部46は、呼吸再開指示情報(図形情報、音声情報、波形情報)を出力する(S09)。これにより、表示部54に呼吸再開図形が表示される。または、呼吸再開を指示する音声が音声出力部50から出力される。以上のようにして、超音波診断装置によって呼吸及び息止めの指示が与えられ、息止めの指示に続いて、弾性計測が実行される。
図5〜図7には、指示情報の表示例が示されている。図5〜図7に示されているように、表示部54の画面60には、Bモード断層画像が表示されている。また、画面60には、吸気の指示を示す吸気図形70、呼気の指示を示す呼気図形72、及び、息止めの指示を示す息止め図形74が表示されている。これらの図形は、指示生成部46によって生成されたグラフィックデータである。例えば、吸気指示情報が指示生成部46から表示処理部52に出力されると、表示処理部52はその指示に従い、図5に示すように吸気図形70を点灯させる(図5中、黒丸で示されている)。また、図3に示すB点が検出されると、呼気指示情報が指示生成部46から表示処理部52に出力される。表示処理部52はその指示に従い、図6に示すように呼気図形72を点灯させる(図6中、黒丸で示されている)。このとき、表示処理部52は吸気図形70の点灯を消す。また、図3に示すC点が検出されると、息止め指示情報が指示生成部46から表示処理部52に出力される。表示処理部52はその指示に従い、図7に示すように息止め図形74を点灯させる(図7中、黒丸で示されている)。このとき、表示処理部52は呼気図形72の点灯を消す。そして、安定状態(D状態)が検出されると弾性計測が開始される。画面60には、計測の進行状況を示すバー76が表示されている。表示処理部52は、制御部42から計測の進行状態を示す情報を受け、その情報に従ってバー76を点灯させる。例えば、表示処理部52は、進行状況に応じてバー76中のインジケータ(1〜5)を段階的に点灯させる。
次に、図8に示されているフローチャートを参照して、本実施形態に係る超音波診断装置による処理について説明する。ここでは、動的弾性情報を計測する場合について説明する。
まず、検査者は、診断部位がBモード断層画像に表されるようにプローブ10の位置決めを行う。例えば、肝臓の弾性計測を行う場合、検査者は被検者の肋間にプローブ10を当てる。そして、検査者が入力部48を利用して、弾性計測開始を指示する。この指示に従って、画像形成用の超音波ビームがプローブ10によって送受波され、Bモード断層画像データが形成される(S20)。例えば、図2に示すように、Bモード断層画像62が表示部54に表示される。そして、検査者が入力部48を利用して、Bモード断層画像62上に関心領域64を設定する。
一方、個別変位演算部20は、関心領域64内の全点の変位量を時間軸に沿って順次演算する。変位総和演算部30は、関心領域64内の各点の変位量の総和又は平均値を、時間軸に沿って順次演算する(S21)。そして、呼吸波形生成部32は、変位量の総和又は平均値の時間変化を示す変位波形を生成する(S22)。波形解析部34は、変位波形を解析する(S23)。この解析の結果、変位波形の周期性が検出され、図3に示すC点(呼気時の変位量(絶対値)が最大となる時点)が検出されると、指示生成部46は吸気指示情報を出力する。これにより、被検者に対する吸気の指示がなされる(S24)。例えば図5に示すように、表示処理部52は、吸気図形70、呼気図形72及び息止め図形74を表示部54に表示させた上で、吸気図形70を点灯させる。この表示を見た被検者は、吸気図形70の点灯に従って息を吸う。そして、変位波形の解析によって、呼気指示を与えるタイミングが検出されると、指示生成部46は呼気指示情報を出力する。これにより、被検者に対する呼気の指示がなされる(S25)。例えば、波形解析の結果、図3に示すB点(吸気時の変位量が最大となる時点)が検出されると、指示生成部46は呼気指示情報を出力する。例えば図6に示すように、表示処理部52は呼気図形72を点灯させる。この表示を見た被検者は、呼気図形72の点灯に従って息を吐く。そして、弾性計測に適したBモード断層画像データが形成された場合(S26,Yes)、指示生成部46は息止め指示情報を出力する。これにより、被検者に対する息止め指示がなされる(S27)。例えば、図3に示すC点(呼気時の変位量(絶対値)が最大となる時点)が検出されると、指示生成部46は息止め指示情報を出力する。呼吸による横隔膜の周期的な運動に応じて肝臓の位置が変動し、Bモード断層画像も明るくなったり暗くなったりする。C点の時点では、Bモード断層画像が鮮明になっていると推測され、この時点のBモード断層画像データが弾性計測に適していると推測される。それ故、C点が検出された時点で、息止めの指示がなされる。例えば図7に示すように、表示処理部52は、息止め図形74を点灯させる。この表示を見た被検者は、息止め図形74の点灯に従って息を止める。一方、弾性計測に適したBモード断層画像データが形成されない場合(S26,No)、吸気の指示(S24)及び呼気の指示(S25)がなされる。そして、息止め指示の後、波形解析によって変位波形の安定状態(図3に示すD状態)が検出されると(S28,Yes)、SW計測制御部44は、送信部12にプッシュパルスを送波させ、続けて、トラッキングパルスを送波させる(S29)。トラッキング部26及び動的弾性情報演算部28によって、せん断波の伝搬速度が演算され、更に、ヤング率等の弾性情報が演算される(S30)。弾性情報の計測が終了すると、指示生成部46は呼吸再開情報を出力する。これにより、被検者に対する呼吸再開(息止め解除)の指示がなされる(S31)。一方、変位波形の安定状態が検出されない場合、処理はステップS24に戻る。
以上のように、本実施形態では、変位波形(呼吸運動を示す波形)に基づいて、呼吸及び息止めの指示がなされる。そのため、検査者が呼吸及び息止めの指示を出さずに済む。指示が検査者に依存していないため、指示タイミングのずれや指示漏れの発生等を防止又は低減すること可能となる。これにより、検査者が指示を与える場合と比べて、弾性情報の計測精度を向上させることが可能となる。また、検査者の負担が軽減する。被検者にとっては、被検者の実際の呼吸運動に基づいて指示が与えられるため、指示のタイミングに合わせて呼吸及び息止めを行うことが容易となる。また、変位波形の安定状態が検出された段階で弾性計測を実行することにより、生体組織が静止した状態又は生体組織の移動量が少ない状態で、弾性計測が実行される。これにより、計測精度を向上させることが可能となる。
また、呼吸及び息止めの指示を図形によって行うことにより、被検者にとって指示が認識しやすいという効果がある。なお、上記の例では、呼吸及び息止めの指示に図形が用いられているが、音声によって指示がなされてもよい。もちろん、図形と音声とを併用してもよい。
上記の例では、被検者が息を吐いている途中で息止めの指示がなされているが、診断部位に応じて、被検者が息を吸っている途中で息止めの指示がなされてもよい。この場合、指示生成部46は、B点が検出されて吸気指示情報を出力した後に、息止め指示情報を出力する。
表示処理部52は、変位波形を表示部54に表示させてもよい。これにより、被検者は自身の呼吸の状態を確認しながら、指示に従った呼吸を行うことが可能となる。検査者は、変位波形を実際に確認して弾性計測の開始を判断することが可能となる。
上記の例では、変位波形が用いられているが、積算変位波形に基づいて呼吸及び息止めの指示がなされてもよい。例えば、呼期の段階で、積算変位量が閾値以下となった場合に、指示生成部46は息止め指示情報を出力してもよい。この閾値は、例えば、積算変位量の最大値の60%程度の値である。なお、閾値は、被検者や診断部位に応じて変更されてもよい。なお、診断部位に応じて、吸期の段階で、積算変位量が閾値以上となった場合に、指示生成部46は息止め指示情報を出力してもよい。
図9には、指示情報の別の例が示されている。表示部54の画面60には、変位波形80及び呼吸基準波形90が表示されている。横軸が時間を示し、縦軸が変位量を示している。変位波形80は、呼吸波形生成部32によって生成された波形であり、実際に測定された変位量を表す波形である。変位は被検者の呼吸に起因しているため、変位波形80は、被検者の呼吸運動を示している。呼吸基準波形90は、実際に測定された変位量に依拠せずに、指示生成部46によって生成された波形である。呼吸基準波形90は、被検者にとって呼吸のインジケータとして機能する波形である。表示処理部52は、例えば、変位波形80と呼吸基準波形90とを重ねて表示部54に表示させる。
呼吸基準波形90は、一例として方形波である。呼吸基準波形90は、吸期(息を吸う期間)を示す吸期波形92、呼期(息を吐く期間)を示す呼期波形94、及び、息止め期間(息を止める期間)を示す息止め期波形96によって構成されている。なお、説明の便宜上、息止め期波形96は破線で示されている。吸期波形92及び呼期波形94は、予め設定された周期で繰り返し表されている。なお、この周期の長さは、検査者によって任意に変更されてもよい。
指示生成部46は、時間軸に沿って、順次、吸期波形92と呼期波形94とを交互に表示処理部52に出力する。表示処理部52は、時間軸に沿って、順次、吸期波形92と呼期波形94とを交互に表示部54に表示させる。吸期波形92の表示に従って被検者が息を吸い、呼期波形94の表示に従って被検者が息を吐いていくと、変位波形80が順次生成され、表示部54に表示される。そして、波形解析部34によって変位波形80の周期性が検出されると、指示生成部46は、息止め期波形96を表示処理部52に出力する。表示処理部52は、その息止め期波形96を表示部54に表示させる。例えば、指示生成部46は、被検者が息を吐いている途中で息止め波形96が表示されるように、呼期波形94を出力した後に息止め期波形96を出力する。例えば、指示生成部46は、呼期波形94の途中の時点で息止め期波形96を出力する。そして、息止め期波形96の表示に従って被検者が息を止めると、変位量は徐々に「0」に近づいていき、やがて、変位量が一定となる。この段階で、弾性計測が実行される。
以上のように、教師的な呼吸基準波形90を表示することにより、被検者は、その呼吸基準波形90を参考にして呼吸及び息止めを行うことが可能となる。呼吸及び息止めの期間が波形として表示されるので、指示されたタイミングで呼吸及び息止めを行うことが容易となる。また、実際に測定された変位波形80と教師的な呼吸基準波形90とを表示することにより、被検者は自身の呼吸の状態を確認しながら、呼吸基準波形90による指示に従った呼吸を行うことが可能となる。例えば、実際の呼吸の状態(変位波形80の形状)と呼吸基準波形90とを比較することにより、被検者は、指示と自身の呼吸との間のタイミングずれ等を確認することができる。これにより、自身の呼吸リズムの修正が容易となる。また、検査者も、そのずれ等を確認して、弾性計測の開始タイミングを判断することが可能となる。
なお、呼吸基準波形90は変位波形80に基づいて生成されてもよい。つまり、指示生成部46は、実際に計測された変位波形80の周期から吸期及び呼期を求め、その吸期を示す吸期波形92及び呼期波形94を生成して出力し、更に、息止め期波形96を出力してもよい。
図9に示す例では、変位波形80と呼吸基準波形90とが表示部54に表示されているが、呼吸基準波形90のみが表示部54に表示されてもよい。もちろん、呼吸基準波形90による指示、及び、図5〜図7に示す図形による指示を併用してもよいし、音声による指示を併用してもよい。
また、別の例として、カラー血流画像及び血流面積波形が表示部54に表示されてもよい。図10には、Bモード断層画像及びカラー血流画像の表示例が示されている。例えば、表示部54の画面60に、Bモード断層画像62及びカラー血流画像100が表示される。カラー血流画像100は、血流画像形成部38によって形成された画像である。このように、カラー血流画像が形成された場合、表示処理部52は、Bモード断層画像62とカラー血流画像100とを重畳して表示部54に表示させる。また、血流部分評価部40は、カラー血流画像100に基づいて、関心領域64内における血流部分の面積を演算し、血流部分の面積を関心領域64の全体の面積で規格化する。指示生成部46は、規格化された血流面積の時間変化を示す血流面積波形を生成する。この血流面積波形は、例えば、変位波形や呼吸基準波形と共に表示部54に表示される。
図11には、その表示例が示されている。表示部54の画面60には、変位波形80、呼吸基準波形90及び血流面積波形110が表示されている。右側の縦軸が、規格化された血流面積(%)を示している。なお、説明の便宜上、血流面積波形110は破線で示されている。
血流部分の輝度は低輝度であるため、弾性計測の対象領域に含まれる血流部分の面積が大きくなるほど、弾性計測の精度が低下する。それとは逆に、血流部分の面積が小さくなるほど計測精度が向上する。このような血流部分の面積を示す血流面積波形110を表示することにより、計測精度を判断するための参考情報が提供される。検査者は、血流面積波形110を参考にして、弾性計測の開始時点を判断することが可能となる。例えば、血流面積が閾値以下となった場合に、弾性計測を開始することが想定される。
なお、血流部分評価部40は、Bモード断層画像データに基づいて、関心領域内における低輝度部分の面積を演算し、規格化された面積を演算してもよい。この場合、血流面積波形110は、その低輝度部分の面積を示すことになる。
また、血流面積が閾値以下となった場合に、制御部42は、弾性計測を実行してもよい。これにより、一定の計測精度が得られる段階になって、弾性計測が自動的に実行される。
図11に示す例では、変位波形80、呼吸基準波形90及び血流面積波形110の3つの波形が表示部54に表示されているが、これらの中のいずれかの波形が表示されてもよい。例えば、変位波形80及び血流面積画像110の組み合わせが表示部54に表示されてもよい。または、呼吸基準波形90及び血流面積波形110の組み合わせが表示部54に表示されてもよい。もちろん、血流面積波形110、及び、図5〜図7に示す図形による指示を、併用してもよいし、音声による指示を併用してもよい。
上述した実施形態では、個別変位演算部20及び変位総和演算部30は、デジタルスキャンコンバート前のビームデータを用いて変位量(総和、平均値)を演算しているが、デジタルスキャンコンバート後の画像データ(例えばBモード断層画像データ)に基づいて変位量(総和、平均値)を演算してもよい。
なお、図1に示されているプローブ10以外の構成は、例えばプロセッサや電子回路等のハードウェアを利用して実現することができ、その実現において必要に応じてメモリ等のデバイスが利用されてもよい。また、図1に示されているプローブ10以外の構成は、例えばコンピュータにより実現することもできる。つまり、コンピュータが備えるCPUやメモリやハードディスク等のハードウェアと、CPU等の動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により、図1のプローブ10以外の構成の全部又は一部が実現されてもよい。そのプログラムは、例えば、図示しない記憶部に記憶されていてもよいし、ネットワーク等の通信経路を介して取得されるようにしてもよい。