従来、家庭排水・し尿などの一般排水、工場・事業場排水、農業・畜産業排水といった、下水、排水、廃水、汚水など(原水)の処理には、活性汚泥法による生物学的処理が広く行われている。この生物学的処理工程では、原水中の浮遊物質が最初沈澱池にて汚泥として沈殿、除去される。沈殿した汚泥は引き抜かれ、続く重力濃縮槽での濃縮工程を経て脱水工程へと移される。この重力濃縮槽にて、汚泥はさらに時間をかけて重力による濃縮が行われるのであるが、この工程ではしばしば汚泥中の微生物の活動が進行するため、例えば呼吸作用による二酸化炭素ガスや硝酸呼吸(脱窒反応)により生じる窒素ガスなどが付着して汚泥が浮上することによる濃縮槽越流水への汚濁物質の流出や汚泥濃縮不良、汚泥濃縮不良による汚泥スラリー量の増加に伴う脱水時間の延長や汚泥脱水性の悪化、腐敗に伴う臭気の発生、など数多くの問題がある。
特開2002−361300号公報(特許文献1)には、亜硝酸塩について、臭気および汚泥浮上の抑制に対する有効性が示されている。
特開2006−305489号公報(特許文献2)には、最初沈澱池引き抜き汚泥を含む生汚泥の重力濃縮槽における汚泥浮上を抑制するために、静菌剤と亜硝酸塩とを含有する汚泥浮上抑制剤を該生汚泥に添加することが記載されている。静菌剤としては、ナトリウムピリチオン、アジ化ナトリウム、4,5−ジクロル−1,2−ジチオール−3−オン、ホスホニウム系化合物、トリアジン系化合物が挙げられている。
特開2005−764(特許文献3)には、下水処理場などの汚泥スラリーや有機性汚水から発生する硫化水素やメチルメルカプタンなどの悪臭物質に由来する臭気を防止する脱水方法として、汚泥スラリーに高分子凝集剤を添加した後、機械脱水する方法において、高分子凝集剤として、亜硝酸塩を混合した高分子凝集剤溶液を使用する汚泥スラリーの脱水方法が記載されている。
工場における排水処理設備や下水処理設備には、一般に排水(汚水)を沈降処理することで排水中に含まれる懸濁物質と、その上澄水とを固液分離する沈砂池や沈殿槽(又は沈澱池)が設けられる。沈降堆積した懸濁物は、汚泥として抜出排出される(沈殿汚泥)。
なお、下水処理施設では、「沈殿汚泥」のことを「初沈汚泥」としたり、「生汚泥」と呼んだりすることもあるが、これらは同じものである。
また、懸濁物を水中に吹き込んだ気泡に付着浮上させたり、界面活性剤等により発生させた泡に付着させて浮上させて、浮上した懸濁物を掻き寄せて系外に排出除去する、浮上濃縮装置を設けることもある。
また、微生物や細菌の代謝活動を利用して水中の有機物を浄化処理できる、生物処理槽が設けられる。ここで微生物や細菌は、摂取した有機物の一部を自身の生命維持活動に使用し、代謝の結果として炭酸ガスを排出する。一方、微生物や細菌は増殖する。増殖によって系内に必要以上に存在する微生物や細菌は、浄化処理能力を低下させることがあるので、増殖した分を系外に排出し、一定の量に維持するように制御・管理される。この排出は、生物処理槽から直接系内水の一部を排出したり、系内水の一部、又は、全量を沈殿槽等の静置沈殿できる槽に移送して予め濃度を高め、懸濁物のスラリーとして排出されることもある。この排出されるスラリーは、余分な細菌や微生物を排出することから、「余剰汚泥」と呼ばれる。微生物や細菌は比重が小さく、短時間の静置では固液分離はできても、濃度が十分に高まっていないこともあり、これをさらに濃縮するために、濃縮装置を設けることもある。この濃縮装置には、汚泥を長時間静置堆積させて濃度を高める重力式濃縮槽(沈殿池)や、前述のような、水中に吹き込んだ気泡に付着浮上させたり、界面活性剤等により発生させた泡に付着させて浮上させ、系外に排出除去する浮上濃縮装置や、遠心力を掛けて濃縮を図る遠心濃縮装置、ろ過によって濃度を高める濃縮装置などを設けることもある。
このように、水中から分離された懸濁物からなる沈殿汚泥や、微生物や細菌からなる余剰汚泥は通常、脱水処理がなされて、脱水ケーキとして搬出されることが多い。脱水処理は、脱水機を用いて行なわれることが普通であるが、乾燥(乾燥機や天日乾燥床)によって行なわれることや、脱水と乾燥を組み合わせて行われることもある。
いずれの場合も、被処理汚泥は均一、かつ、高濃度で供給する方が効率の良い脱水処理ができるので、脱水処理に掛ける前に予め濃度を高めて、変動幅を抑制することが望ましい。
また、最近では、脱水処理する前に汚泥を嫌気雰囲気に維持できる槽に移送し、嫌気性の細菌の活動を利用して、汚泥を減容させる処理を行なうこともある(嫌気性消化槽)。沈殿汚泥に含まれる有機成分は、嫌気性細菌によって消費され、炭酸ガスやメタンガスとして排出された分、汚泥の容積は小さくなる。一方、余剰汚泥は、元々は好気性条件で活動していた細菌や微生物であるが、長期間嫌気性の雰囲気下に置かれることで死滅・変質し、嫌気性細菌の餌となって消費され、汚泥の容積は小さくなる。
嫌気性細菌はこうして摂取した有機物を代謝し、炭酸ガスやメタンガスを排出する。嫌気性細菌の増殖速度は遅く、汚泥減容の妨げにはならない。また、嫌気性微生物の有機物分解速度はあまり速くなく、このような嫌気性消化槽では、被処理汚泥の消化槽内での滞留時間を通常、10日以上という長期間保持する必要があるが、濃度の低い汚泥を供給する場合には、反応タンクの容積を大きくしなければならない。一方、設計した時よりも低い濃度で供給すれば、滞留時間が短くなるため未分解の有機物が流出し、汚泥の減容率は低くなる。さらに、発生したメタンガスを資源として利用する場合には、そのエネルギー(カロリー)が少なくなる。
このため、被処理汚泥は均一かつ高濃度で供給する方が、消化槽での滞留時間を長く取ることができ、効率良く汚泥減容でき、消化ガスを得られることになる。そこで、消化工程の前段に、予め濃度を高め、均一化するための重力式濃縮槽(沈澱池)や、汚泥貯槽が設けられる。
ところが、沈殿汚泥や余剰汚泥には、嫌気性又は好気性の細菌や微生物が多数含まれている。このため、重力式濃縮槽において細菌や微生物の活動が起きて、ガスを発生して濃縮を妨げたり、汚泥が浮上・流出し水処理系に返送されたりすることがあった。
このような汚泥は、水処理系に返送されると、沈降性が悪いため、そのまま流出し、処理水質を悪化させたり、好気性生物槽(活性汚泥)への負荷となり、曝気に係わる動力(電力)コストが増大する。また、活動の活発な細菌や微生物が返送されると、排水中に含まれる懸濁物質を固液分離する沈殿槽(又は沈澱池)において活動し、固液分離障害を引き起こす。
そのため、重力式濃縮槽での固液分離障害は、汚泥処理(脱水機、嫌気性消化槽)にも、水処理(固液分離、生物処理)にも、悪影響を及ぼすことから、この重力式濃縮槽での固液分離管理や、微生物の活動を抑えて濃縮障害や浮上流出を起こさせないことが重要になっている。
嫌気性細菌の代謝によって排出された炭酸ガスの気泡が付着することにより、汚泥フロック、汚泥塊、汚泥層の浮上が起こる。嫌気性細菌は段階的に有機物を分解し、分解途中で吐き出された有機酸によってpHが低下して酸性雰囲気となる。このため、炭酸ガスの水への溶解度が低下し、気泡として発現する量が多くなり、より浮上の起きやすくなる状態となる。
このとき同時に硫化水素ガスが発生することもあるが、その発生量は炭酸ガスと比較して1桁以上、通常は2桁程度違うものである。これは、発生源となる基質の(保持)量が違うことに起因する。
嫌気性細菌には通性のものと偏性のものがあり、通性嫌気性細菌が活動する環境を「無酸素状態/無酸素雰囲気」、偏性嫌気性細菌が活動する環境を「(絶対)嫌気性状態/(絶対)嫌気性雰囲気)」と呼ぶ。「無酸素状態」とは、酸化還元電位がマイナス(還元側)にあり、分子状酸素や硝酸、亜硝酸などのイオンが存在し、酸素を利用できる環境であり、(絶対)嫌気性状態とは、こうしたものがない状態である。「酸化還元電位」でこうした状態を区別するとすれば、おおまかに、0〜−200mVの状態が無酸素状態、−200以下の状態が(絶対)無酸素状態と分けることができる。
硫化水素ガスは通常、偏性嫌気性細菌により排出される。前述のように、(絶対)嫌気性状態は、無酸素状態を経て分子状、イオン状の酸素が消費されて後に至る環境である。したがって、偏性嫌気性細菌により硫化水素ガスが生成される前に、まず通性嫌気性細菌の活動が起こり、炭酸ガスの吐き出しが始まる。こうした理由によって、沈澱池や汚泥貯槽での沈殿汚泥の浮上は、炭酸ガスによるものがほとんどである。
一方、生物反応槽の系内水の一部を直接排出したり、系内水の一部、又は、全量を沈殿槽等に移送して静置沈殿し予め濃度を高めて排出される余剰汚泥が、沈澱池や汚泥貯槽で浮上流出する原因は、沈殿汚泥のそれとは異なる。余剰汚泥は元々、曝気槽において活動している活性汚泥であり、好気性雰囲気で有機物の分解を終えているため、スラリー内には分解・代謝可能な有機物がほとんど残っていない。また、好気性細菌であることから、無酸素状態での有機物摂取も分解もほとんど起きない。とはいえ、いわゆる“内性呼吸”は続いており、無酸素状態においても炭酸の吐き出しはあるものの、有機物を分解したときに吐き出される量に比べれば明らかに少ない。また、嫌気性細菌のような、複数段階の有機物分解工程を経て有機酸を吐き出すこともないので、沈殿池や汚泥貯槽での有機物分解に伴うpHの低下は僅かである。このため、濃度が高められて細菌数が多くなった条件で内性呼吸に伴う炭酸の吐き出しがあったとしても、溶解炭酸(HCO3 −,H2CO3)の形態となり、炭酸ガスとして出現しないため、これによる汚泥浮上はほとんど起こらない。
また、曝気槽に窒素成分が流入すると、硝化菌によって酸化され、NO2 −やNO3 −が発生する。汚泥の中に脱窒菌が存在すると、無酸素条件下においてNO2 −やNO3 −を摂取し、窒素(N2)を吐き出す。この微生物活動による現象は脱窒と呼ばれる。窒素の水への溶解度は僅かであり、発生した窒素は窒素ガスとして出現し、汚泥に浮力を与える。こうしたことはよく起こり、水処理系の沈殿槽でも起こることがあるだけでなく、この作用を積極的に利用して、水処理系で曝気−無酸素状態の槽を直列に配置し、水中の窒素成分を低減することが行われている。このような系で、脱窒がうまく行われないときに、沈殿槽で汚泥が浮上したり、余剰汚泥にまでNO3 −ないしNO2 −が持ち込まれることがある。前述のように、沈澱池や汚泥貯槽は無酸素状態となっていることが多い。沈澱池や汚泥貯槽で発生する余剰汚泥の浮上の原因は、余剰汚泥スラリーに同伴して持ち込まれたNO3 −(乃至はNO2 −)であり、無酸素条件下で脱窒が起きて放出された窒素ガスによる浮上である。
なお、水温が低いなどの環境条件で細菌の活性が低下し、炭酸ガスや窒素ガスの吐き出しがなく、汚泥浮上が起こらないケースもある。また、沈殿汚泥単体では汚泥浮上が起こらないが、NO3 −乃至はNO2 −を含む余剰汚泥を混合したことで脱窒によって沈殿汚泥も一緒に浮上することもあるし、沈殿汚泥単体では汚泥浮上が起きてしまうが、NO3 −やNO2 −を含まない余剰汚泥を混合したことで希釈効果により浮上が収まるケースもある。
また、余剰汚泥スラリー中にNO3 −やNO2 −を含んでいても、脱窒菌が少ない又は存在しない場合や、脱窒菌が十分存在しても、環境(温度、pH、ORP)が合わずに脱窒菌の活動が低下していて生物処理槽〜沈殿槽や貯留槽において余剰汚泥単独で存在している場合においては汚泥浮上が起きないケースでも、沈殿汚泥と混合したことで環境変化が起き、脱窒が起きることもある。
上記特許文献2のように、静菌剤を重力濃縮槽に添加しても、汚泥浮上が抑制できずに越流し、最初沈澱池へ返送されてしまうことがある。例えば、余剰汚泥が流入し、標準法においてエアタンク(曝気槽)の過曝気によって生じた亜硝酸や硝酸が、汚泥スラリーと共に流入して、重力濃縮槽において無酸素状態となったときに脱窒が起きて汚泥浮上する場合や、水処理系が窒素処理を行なう高度処理のとき、硝化−脱窒工程において不完全な処理となり亜硝酸や硝酸が残存し、汚泥スラリーと共に流入して重力濃縮槽で脱窒が起きて汚泥浮上する場合がある。このような時には、特許文献1に記載の亜硝酸による微生物の活動抑制効果よりも脱窒による亜硝酸の消費が優先的に起きて、むしろ汚泥浮上が激しくなってしまう。
また、最初沈澱池から引き抜かれ流入する初沈汚泥に油分が多く付着している場合には、余剰汚泥と混合してスラリーの比重が軽くなったときに浮上することがある。この状態は微生物の活動による気泡によって浮上するものではないため、特許文献1〜3による方法では、抑えることはできない。
さらに、流入水量が多い場合に上昇水に乗って汚泥が重力濃縮槽から越流してしまうこともある。例えば、余剰汚泥が流入しているときに初沈汚泥が流入してしまった場合である。
このような汚泥流出を防止するために、凝集剤を使用することでフロック径を大きくし終末沈降速度を高め、汚泥流出を抑えようという試みや、夫々の流入が重ならないように時間差を設けたり、流入停止の後に汚泥が沈殿する時間を確保して巻き上がりが起こらないように制御する試みが提案されている。しかしながら、下水処理場は複数の処理系列を持ち、初沈汚泥と余剰汚泥の流入制御だけでなく複数系列との調整が必要であり、この調整が困難であったり、1日のトータル流入時間が24時間を超えてしまい、どうしても流入の重なりを生じせざるを得ない場合もある。
重力濃縮槽から流出した汚泥は、通常、最初沈澱池、もしくは、その前方ないし前段に位置する沈殿池に返送されるが、沈降できなかった汚泥粒子は、再び重力濃縮槽へ戻ってきたときにも流出する可能性が多い。また、最初沈澱池の水面積負荷は、最終沈澱池の水面積負荷よりも高く設計・運用されることが多い。このため、余剰汚泥が重力濃縮槽から流出した場合には、本来は流入しない最初沈澱池で固液分離ができずにエアタンク(曝気槽)にまで返送されてエアタンクの汚泥濃度(MLSS濃度)管理が難しくなることがある。
仮に最初沈澱池で沈殿できたとしても、汚泥が無酸素・嫌気状態に長くさら晒されることになり、腐敗が生じる。腐敗は、単に好気性の細菌が死滅するだけでなく、汚泥フロック内に共存していた嫌気性の細菌が活発になり、汚水として下水処理場に流入して最初沈澱池で沈殿した有機性の固形物を分解し、重力濃縮槽に送られたときに固液分離が困難な状態に陥ることもある。
こうして最初沈澱池と重力濃縮槽との間で汚泥の循環が起きてしまうと、固形分の粒子径が小さくなって次第に最初沈澱池でも沈降・沈殿が困難となり、エアタンクへ流入して好気性細菌の負荷(BOD負荷)が高まり、曝気動力(電気)を余計に消費したり、汚泥フロックに吸収/吸着できずに最終沈澱池から流出して処理水を悪化させることがある。
また、前記汚泥の循環液中に腐敗によって発生した硫化水素が多量に含まれるようになると、この液が最初沈殿池からの流出側に混入してエアタンクに流入した際に、気散した硫化水素による異臭が出たり、または酸素と反応することで曝気動力の消費量を増やしたり、この反応によって生成した硫黄成分のため最終沈澱池からの処理水が白濁したりする問題を引き起こすことがある。
こうしたことから、重力濃縮槽から流出する汚泥の循環をいち早く収束させる方法が要求されてきたが、従来の方法では、重力濃縮槽からの汚泥の流出を十分に解決できなかったり、非効率な運転管理が要求されるなどの課題があった。
以上のように、様々な条件・状態において、汚泥浮上が発生する原理・機構は異なり、それぞれに応じた対策が求められている。
本発明は、沈殿汚泥と余剰汚泥を濃縮する重力濃縮槽での汚泥の浮上を防止するのではなく、重力濃縮槽から流出した汚泥を回収することにより、汚泥処理効率を向上させた汚泥濃縮方法を提供することを目的とする。
第1発明の汚泥濃縮方法は、最初沈澱池からの初沈汚泥と最終沈殿池からの余剰汚泥とを重力濃縮槽に導入し、該重力濃縮槽からの上澄水(越流・流出水)を該最初沈澱池に返送する汚泥濃縮方法において、該最初沈澱池に返送する上澄水に、凝集剤、静菌剤、殺菌剤、溶菌剤及び酸化剤から選ばれる1以上の薬剤を添加することを特徴とするものである。上記の上澄水は、固液分離したときの上澄水に当たり、汚泥が沈降堆積したスラリーと区別するために用いている。仮に濁質や汚泥塊が含まれていても変わりなく、清澄度を示しているものではない。以下、上澄水と統一して記載する。
第2発明の汚泥濃縮方法は、最初沈澱池からの初沈汚泥と最終沈殿池からの余剰汚泥とを重力濃縮槽に導入し、該重力濃縮槽からの上澄水を該最初沈澱池に返送する汚泥濃縮方法において、該上澄水の少なくとも一部を該重力濃縮槽に返送する工程を有し、該重力濃縮槽に返送する上澄水に、凝集剤、静菌剤、殺菌剤、溶菌剤及び酸化剤から選ばれる1以上の薬剤を添加することを特徴とするものである。このとき、該上澄水の少なくとも一部を重力濃縮槽に返送する工程に、貯槽又は反応槽を設けることもできる。
本発明では、重力濃縮槽への汚泥の流入がないときにおける該重力濃縮槽内の汚泥界面レベルが所定レベルとなるように、該重力濃縮槽から汚泥を引き抜いてもよい。
本発明では、重力濃縮槽から流出する上澄水の濁度、SS濃度、透視度、粒子径及び粒度分布の少なくとも1つを測定し、その測定結果に基づいて薬剤の添加を制御してもよい。
本発明では、重力濃縮槽内の監視を行い、この監視結果に基づいて薬剤の添加を制御してもよい。
本発明では、重力濃縮槽又は該重力濃縮槽に供給される汚泥に対し、凝集剤、静菌剤、殺菌剤、溶菌剤及び酸化剤から選ばれる1以上の薬剤を添加してもよい。
本発明では、重力濃縮槽又は該重力濃縮槽に供給される汚泥に対し、亜硝酸及び/又は亜硝酸塩を添加してもよい。
前述の通り、重力濃縮槽での固液分離によって重力濃縮槽からの汚泥流出を防止しようとすることは、効果が不完全であったり、実施が困難であったり、効率が悪い。そこで、本発明は、沈殿汚泥と余剰汚泥とを濃縮する重力濃縮槽での汚泥の浮上を防止するのではなく、重力濃縮槽から上澄水と共に流出した汚泥を、薬剤(凝集剤、静菌剤、殺菌剤、溶菌剤又は酸化剤)を上澄水に添加することによって回収するようにしたものである。
本発明では、重力濃縮槽から排出された上澄水に、凝集剤(無機凝結剤、有機凝結剤、有機凝集剤)、静菌剤、殺菌剤、溶菌剤、酸化剤、消泡剤の、いずれか1つ以上を同時に、乃至は、順番に注入する。
重力濃縮槽から汚泥が流出する原因が、重力濃縮槽への流量負荷(水面積負荷)が高過ぎる場合、または、油分付着による軽質化による場合には、凝集剤の添加が効果的である。フロック粒子径を大きくすることで、返送された最初沈澱池において再沈殿を確実にし、かつ、再び重力濃縮槽に戻ってきたときに終末沈降速度が前回の流入時よりも改善されているため、流出する割合を顕著に低減することができ、SS回収率を高めると共に、汚泥循環を防止できる。
重力濃縮槽からの汚泥流出の原因が、微生物の活動により発生したガスによる浮上であった場合には、静菌剤又は殺菌剤の添加が効果的である。
浮上汚泥から付着気泡が外れない場合には、消泡剤の添加によって解消を図ることもできる。
汚泥流出の原因が糸状性の細菌によるもので、フロックの断面積(投影面積)が大きくなったことで舞い上がったり、立体障害が起きて汚泥堆積層が膨化して汚泥界面がフィードウェルの下端よりも上方に至るまで堆積してしまったときには、溶菌剤の添加によって解消することができる。
汚泥流出の原因が、繊維状の異物(紙、毛髪、植物繊維、プラスチック)などを含んでいることでフロック断面積(投影面積)が大きくなり、水流を受けて舞い上がったり、立体障害が起き汚泥堆積層が膨化してフィードウェルの下端よりも上方位置まで堆積層が広がってしまったときには、酸化剤の添加によって解消することができる。
汚泥流出の原因が複数の要因である場合には、上記薬剤の中から効果的な薬剤を選定して、同時、または、順番に添加して解消することができる。
重力濃縮槽から排出された上澄水は、最初沈澱池、または、その前段へ返送されるのが一般的である。本発明方法により汚泥流出原因を解消した場合、汚泥は、重力濃縮槽において沈降分離することが可能な状態となっている。そこで、上記薬剤を添加した水の一部、または、全量を、重力濃縮槽へ再流入させるようにすれば、迅速にSS回収を終えることが可能となる。また、最終沈澱池での汚泥の腐敗などを防ぐことができるので、より効果的な運転管理が可能になる。
これを実施するためには、上澄水をそのまま重力濃縮槽に戻す流路を設けることで実施できるし、貯槽を設けて一時的に収容して各薬品との反応時間を確保したり、重力濃縮槽への再流入が他の初沈汚泥や余剰汚泥の流入と重ならないように再流入のタイミングを調整するのが、より好ましい。特に、初沈汚泥の流出水に対して添加した薬品が、余剰汚泥に対しては逆効果を示すような場合、例えば亜硝酸塩の場合には、余剰汚泥と混合させないためにも、このような貯槽又は反応槽を設けて実施するのが好ましい。各薬剤同士を混合させると互いに反応して薬剤添加効果を損ねるような場合、例えば、塩素系の殺菌剤と酸素系の酸化剤の組み合わせとなった場合には、この貯槽において先に添加した薬剤の効果を失活させてから、第二の薬剤を添加したり、措置後のpH調整を行なうこともできる。
但し、せっかく上記のような措置を施して沈降分離できる状態にしても、重力濃縮槽においてフィードウェルの下端と汚泥堆積層の間に上澄水の層(フリーボード)が存在しないと、汚泥堆積層を巻き上げて越流させたり、流入した汚泥がまた流出したりする。そこで、このような手段を講じる際には、フリーボードを形成できるよう汚泥界面を計測して、予め重力濃縮槽から汚泥の一部を引き抜いて十分な高さのフリーボードを形成しておくのが好ましい。
汚泥界面を計測する手段としては特に制約はないが、例えば、超音波パルス反射式の界面レベル計は、汚泥界面の変化を連続して計測できるため、これを採用することができる。
さらに、重力濃縮槽からの排出ラインに排水された水の濁度、SS濃度、透視度、又は粒子径/粒度分布を測定する手段を設置し、計測された数値、情報に応じて添加する薬品、または、その組み合わせと、その添加率/添加量を制御してもよい。計測した濁度、SS濃度、透視度、又は粒子径/粒度分布が、予め設定した範囲を逸脱したときに添加率/添加量を調整することができる。
さらに、計測した濁度、SS濃度、透視度、又は粒子径/粒度分布が、予め設けた閾値よりも高かったときに、流入水の系列と初沈汚泥/余剰汚泥の区別をして記憶しておき、次回の流入タイミングが来たときに前回と同じ薬注制御(使用する剤×添加率/添加量)からスタートすれば、遅延なく対策を施すことができる。
また、重力濃縮槽に槽内監視機能を持った汚泥界面レベル計を設置し、得られた情報や指標に基づいて、添加する薬品、または、その組み合わせと、その添加率/添加量とを決定した上で、薬注制御、乃至は、堆積汚泥の引抜き管理を行うことができる。
例えば、汚泥流入がないときに汚泥堆積層から気泡が放出されたり、汚泥塊や汚泥層の浮上が見られた場合には、汚泥の滞留時間を短くするために堆積汚泥を引き抜いたり、汚泥堆積層の圧密性低下が見られたときには、糸状性細菌や糸状物質の含有と判断し、溶菌剤や酸化剤の添加と引抜き制御を併用することで効果的に措置を講じることができる。
流入停止時に粒子が槽内を浮遊し、それらが気泡を含んでいる場合には、その前の流入が初沈汚泥であった場合には腐敗と判断し、余剰汚泥であった場合には脱窒と判断して、添加する薬剤を選ぶことができる。
重力濃縮槽からの排出ラインに設置した濁度、SS濃度、透視度、又は粒子径/粒度分布を測定する手段によって計測された数値、情報と合わせて状態を判断・制御することもできる。また、余剰汚泥に脱窒が起きているようであれば、水処理側に異常があるとして警報を出すこともできる。
本発明は、従来技術と合わせて実施することもできる。例えば、嫌気性微生物の活動によって汚泥が腐敗・浮上する場合には、流出経路と重力濃縮槽の間で汚泥循環が起きてしまうなど、効率が悪い。このような場合には、重力濃縮槽での浮上、流出に対策を行った上で、それでも上澄水に汚泥が流出する場合に本発明を適用するのが効率的である。
特に、重力濃縮槽に流入する汚泥スラリーに亜硝酸、亜硝酸塩、亜硝酸を含む薬剤、又は亜硝酸塩を含む薬剤を添加して、汚泥浮上を抑制しようとしたときに、温度や還元状態(ORP)などの環境条件、流入する菌種の変化(脱窒菌の有無)によって、想定とは異なって汚泥浮上が起きてしまうことがある。従って、このような制御を行なっている施設において本方法を適用することで、想定外の浮上が起きた時にも対処することが可能となり、安定した水処理と汚泥処理とが可能となる。
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る汚泥処理方法のフローを示しており、ここでは代表的な例として下水処理設備のフローを取り上げ、説明する。原水は、最初沈澱池1に導入され、初沈汚泥が沈降分離される。最初沈澱池1の上澄水は、曝気槽2に導入され、散気管2aからの空気曝気により好気性処理される。曝気槽2内の液は、最終沈澱池3に導入され、沈降汚泥と上澄水とに分離され、上澄水は処理水として系外に取り出される。
最終沈澱池3で沈降した汚泥の一部は、余剰汚泥として汚泥ポンプ4及び配管5によって重力濃縮槽7に送られ、残部の汚泥は、配管5から分岐した汚泥返送用配管6を介して返送汚泥として曝気槽2に返送される。なお、配管6を配管5から分岐させる代りに、最終沈澱池3で沈降した汚泥の一部を返送専用の配管で直接に曝気槽2に返送するようにしてもよい。
重力濃縮槽7には、最初沈澱池1で沈降した初沈汚泥も配管8を介して導入可能とされている。
重力濃縮槽7で汚泥は重力により上澄水と濃縮汚泥とに分離される。上澄水は配管15及び送水ポンプ16を介して最初沈澱池1に返送される。重力濃縮槽7からの上澄水に薬剤が薬注装置20によって添加可能とされている。
濃縮汚泥は、重力濃縮槽7の底部から抜き出され、配管9を介して嫌気性消化槽10に導入される。
この実施の形態では、嫌気性消化槽10は、1次タンク10aと2次タンク10bとを備えており、濃縮汚泥は1次タンク10aで嫌気性消化された後、2次タンク10bに導入され、さらに嫌気性消化されるよう構成されている。タンク10a,10b内の嫌気性消化により生じた消化ガスは、配管11により系外に取り出される。
2次タンク10bから取り出される消化汚泥は、配管12によって脱水機13に送られ、脱水処理され、生じた脱水ケーキは系外に取り出される。脱水濾液は配管14を介して最初沈澱池1に返送される。
上澄水に薬注装置20によって添加される薬剤としては、凝集剤(無機凝結剤、有機凝結剤、有機凝集剤のいずれでもよく、またこれらの組み合わせでもよい。)、静菌剤、殺菌剤、溶菌剤及び酸化剤の1種又は2種以上が挙げられる。
重力濃縮槽7は、この実施の形態では、図1(b)の通り、槽体7aの中央部の上部にフィードウェル7bを配置し、槽体7aの上部の周縁部に上澄水の流出用トラフ7cを配置した構造を有している。槽体7aの下部は下方に向って窄まるテーパ状となっており、最下部に汚泥抜出用配管9が接続されている。トラフ7cへの越流水が上澄水として上澄水用配管15に流出する。
薬剤の添加位置は、図1(b)の符号20Aにて示すようにトラフ7cであってもよく、符号20B,20Cで示すように送水ポンプ16の上流側又は下流側であってもよい。また、20Aで示す位置で薬剤Aを添加し、20Bで示す位置で薬剤Bを添加し、20Cで示す位置で薬剤Cを添加してもよい。
流入する汚泥は、その処理施設や、流入する時間帯、季節によって変化し、その汚泥に効果的に作用する薬剤も変わるので、そのときどきに選定するのが好ましい。
薬剤の種類及び添加量は、机上試験等で予め決めるのが好ましい。
無機凝結剤としては、例えば、塩化アルミ、ポリ塩化アルミ(PAC)、塩化第二鉄、ポリ鉄、塩化カルシウム、ケイ素化合物などが用いられる。有機凝集剤としては、例えば、カチオン性の高分子凝集剤、アニオン性の高分子凝集剤、ノニオン性の高分子凝集剤、両性の高分子凝集剤などを用いることができる。
なお、無機成分主体の凝集剤は、汚泥量を増やすので、大量に使用すると脱水ケーキの発生量が増加する。また、無機成分主体の凝集剤で、アルミを含むものは、濃縮汚泥を嫌気性消化槽に導く場合に、活性を低下させることがある。鉄を含むものは、嫌気性細菌の活動を活発化させ、重力濃縮槽でガスの発生を増やしてしまうことがあるので、使用する施設によっては注意を要する。
有機成分主体の凝集剤は、形成したフロックの中で気泡が発生すると、その気泡がフロック外に出にくく、汚泥浮上を招くことがある。特に、カチオン性の高分子凝集剤は、分子量が大きくカチオン度が高いと、電荷的に気泡を引き付け易く、汚泥が浮上しやすくなるので注意が必要である。
静菌剤とは、細菌の発育あるいは増殖を阻止する薬剤である。本発明方法においては、一般に殺菌剤と称されている薬剤も、低濃度で用いることにより静菌作用を発現させ、静菌剤として使用することができる。本発明方法に用いる静菌剤としては、例えば、亜硝酸塩、次亜塩素酸塩、第四級アンモニウム塩、エタノール、ホルムアルデヒド、ピリチオン又はその誘導体、ソルビン酸などを挙げることができる。これらの中で、亜硝酸塩及びピリチオン又はその誘導体を好適に用いることができる。亜硝酸塩としては、例えば、亜硝酸アンモニウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ルビジウム、亜硝酸セシウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸ニッケル、亜硝酸亜鉛、亜硝酸タリウムなどを挙げることができる。ピリチオン又はその誘導体としては、例えば、ピリチオン、ナトリウムピリチオン、亜鉛ピリチオン、ジピリチオンなどを挙げることができる。
この実施の形態では、重力濃縮槽7から排出された上澄水に、凝集剤(無機凝結剤、有機凝結剤、有機凝集剤)、静菌剤、殺菌剤、溶菌剤、酸化剤、消泡剤の、いずれか1つ以上を同時に、乃至は、順番に注入する。
重力濃縮槽7から汚泥が流出する原因が、重力濃縮槽への流量負荷(水面積負荷)が高過ぎる場合、または、油分付着による軽質化による場合には、凝集剤の添加が効果的である。フロック粒子径を大きくすることで、返送された最初沈澱池において再沈殿を確実にし、かつ、再び重力濃縮槽に戻ってきたときに終末沈降速度が前回の流入時よりも改善されているため、流出する割合を顕著に低減することができ、SS回収率を高めると共に、汚泥循環を防止できる。
重力濃縮槽7からの汚泥流出の原因が、微生物の活動により発生したガスによる浮上であった場合には、静菌剤又は殺菌剤の添加が効果的である。
浮上汚泥から付着気泡が外れない場合には、消泡剤の添加によって解消を図ることもできる。
汚泥流出の原因が糸状性の細菌によるもので、フロックの断面積(投影面積)が大きくなったことで舞い上がったり、立体障害が起きて汚泥堆積層が膨化して汚泥界面がフィードウェルの下端よりも上方に至るまで堆積してしまったときには、溶菌剤の添加によって解消することができる。
汚泥流出の原因が、繊維状の異物(紙、毛髪、植物繊維、プラスチック)などを含んでいることでフロック断面積(投影面積)が大きくなり、水流を受けて舞い上がったり、立体障害が起き汚泥堆積層が膨化してフィードウェルの下端よりも上方位置まで堆積層が広がってしまったときには、酸化剤の添加によって解消することができる。
汚泥流出の原因が複数の要因である場合には、上記薬剤の中から効果的な薬剤を選定して、同時、または、順番に添加して解消することができる。
重力濃縮槽7へは、初沈汚泥と余剰汚泥とを同時に導入してもよく、別々に導入してもよい。
重力濃縮槽7へ初沈汚泥及び余剰汚泥をそれぞれ間欠的に導入する場合、初沈汚泥の導入と余剰汚泥の導入とが重なってもよく、重ならなくてもよく、余剰汚泥の導入が一時的に初沈汚泥の導入と重なってもよい。
初沈汚泥の導入後に、初沈汚泥が十分に沈降濃縮する時間が経過してから余剰汚泥を導入し、この余剰汚泥が十分に沈降濃縮する時間が経過してから初沈汚泥を導入してもよい。十分な沈降時間については、予め調査によって時間を決めて流入をタイマー制御してもよく、界面レベルを計測して沈降終了を判断し次の流入制御してもよい。
図2(a),(b)は別の実施の形態を示すものである。
図2(a),(b)では、配管15に流出した上澄水を重力濃縮槽7に戻すことができるように、循環配管22を該配管15から分岐させている。この循環配管22にバルブ23が設けられている。また、配管15には、配管22の分岐点よりも下流側にバルブ24が設けられている。図2のその他の構成は図1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
薬剤の添加により重力濃縮槽7からの汚泥流出原因を解消した場合、汚泥は、重力濃縮槽7において沈降分離することが可能な状態となっている。そこで、上記薬剤を添加した水の一部、または、全量を、重力濃縮槽7へ再流入させるようにすれば、迅速にSS回収を終えることが可能となる。また、最終沈澱池3での汚泥の腐敗などを防ぐことができるので、より効果的な運転管理が可能になる。
図2では、薬剤を配管15(ただし、循環配管22の分岐点よりも上流側)としているが、図3のように、循環配管22の途中に貯槽又は反応槽25及びポンプ26を設け、貯槽又は反応槽25に薬剤を添加してもよい。貯槽又は反応槽25は単槽であっても複数槽であってもよい。
特に、初沈汚泥の流出水に対して添加した薬品が、余剰汚泥に対しては逆効果を示すような場合、例えば亜硝酸塩の場合には、余剰汚泥と混合させないためにも、このような貯槽25を設けて実施するのが好ましい。貯槽25は単槽で、初沈汚泥と余剰汚泥を交互に処理してもよく、複数槽を設け、別個に処理するようにしてもよい。各薬剤同士を混合させると互いに反応して薬剤添加効果を損ねるような場合、例えば、塩素系の殺菌剤と酸素系の酸化剤の組み合わせとなった場合には、この貯槽25において先に添加した薬剤の効果を失活させてから、第二の薬剤を添加したり、措置後のpH調整を行なうこともできる。
但し、せっかく上記のような措置を施して沈降分離できる状態にしても、重力濃縮槽7においてフィードウェル7bの下端と汚泥堆積層の間に上澄水の層(フリーボード)が存在しないと、汚泥堆積層を巻き上げて越流させたり、流入した汚泥がまた流出したりする。そこで、このような手段を講じる際には、フリーボードを形成できるよう汚泥界面を計測して、予め重力濃縮槽から汚泥の一部を引き抜いて十分な高さのフリーボードを形成しておくのが好ましい。
汚泥界面を計測する手段としては特に制約はないが、例えば、超音波パルス反射式の界面レベル計は、汚泥界面の変化を連続して計測できるため、これを採用することができる。
重力濃縮槽7に槽内監視機能を持った汚泥界面レベル計を設置し、得られた情報や指標に基づいて、添加する薬品、または、その組み合わせと、その添加率/添加量とを決定した上で、薬注制御、乃至は、堆積汚泥の引抜き管理を行うことができる。
例えば、汚泥流入がないときに汚泥堆積層から気泡が放出されたり、汚泥塊や汚泥層の浮上が見られた場合には、汚泥の滞留時間を短くするために堆積汚泥を引き抜いたり、汚泥堆積層の圧密性低下が見られたときには、糸状性細菌や糸状物質の含有と判断し、溶菌剤や酸化剤の添加と引抜き制御を併用することで効果的に措置を講じることができる。
流入停止時に粒子が槽内を浮遊し、それらが気泡を含んでいる場合には、その前の流入が初沈汚泥であった場合には腐敗と判断し、余剰汚泥であった場合には脱窒と判断して、添加する薬剤を選ぶことができる。
図4は、図2の実施の形態においてかかる構成を具備させたものである。即ち、重力濃縮槽7の槽内監視機能をもった汚泥界面レベル計30を設けている。レベル計30の検出値は制御器31に入力され、該制御器31によって配管9の汚泥排出ポンプ32が制御される。重力濃縮槽7内の汚泥界面レベルが予め設定した設定値よりも高いときには、該重力濃縮槽7内から汚泥を引き抜き、汚泥界面レベルを調整する。
汚泥界面レベル計30は、この実施の形態では、槽内の気泡を検知する機能を有した超音波パルス反射式界面レベル計(槽内監視モニタ)である。この超音波パルス反射式界面レベル計によって検出される界面レベルが設定値となるように汚泥引き抜きを行う。また、重力濃縮槽7に汚泥が流入する際、汚泥の舞い上がりが検知できたとき、汚泥堆積層の上部の汚泥が流入水流の影響を受けないように汚泥引き抜きを行って界面レベルを下げたり、流入流量を調整する。また、超音波パルス反射式界面レベル計が槽内に気泡を検知したときには、汚泥を所定量引き抜き、汚泥界面レベルを所定量だけ低くしたり、次回に重力濃縮槽7に導入する汚泥に対する静菌剤、殺菌剤、溶菌剤又は凝集剤の薬注率又は薬注量を増加させる。
本発明では、重力濃縮槽7からの排出ラインに排水された水の濁度、SS濃度、透視度、又は粒子径/粒度分布を測定する手段を設置し、計測された数値、情報に応じて添加する薬品、または、その組み合わせと、その添加率/添加量を制御してもよい。計測した濁度、SS濃度、透視度、又は粒子径/粒度分布が、予め設定した範囲を逸脱したときに添加率/添加量を調整することができるようにしてもよい。
例えば、図4,5のように、重力濃縮槽7のトラフ7c、又は上澄水配管15(ポンプ16の上流側、下流側)の1又は2以上の任意箇所に水質等(濁度、SS濃度、透視度、粒子径/粒度分布)の検知センサ34を設けてもよい。
計測した濁度、SS濃度、透視度、又は粒子径/粒度分布が、予め設けた閾値よりも高かったときに、流入水の系列と初沈汚泥/余剰汚泥の区別をして記憶しておき、次回の流入タイミングが来たときに前回と同じ薬注制御(使用する剤×添加率/添加量)からスタートすれば、遅延なく対策を施すことができる。
図5は、図1において水質等の検知センサ34を設けたものであるが、図2,3などの実施の形態においてもかかる水質等の検知センサ34を設けてもよい。
本発明は、従来技術と合わせて実施することもできる。例えば、嫌気性微生物の活動によって汚泥が腐敗・浮上する場合には、流出経路と重力濃縮槽の間で汚泥循環が起きてしまうなど、効率が悪い。このような場合には、重力濃縮槽での浮上、流出に対策を行った上で、それでも上澄水に汚泥が流出する場合に本発明を適用するのが効率的である。
特に、重力濃縮槽7に流入する汚泥スラリーに亜硝酸、亜硝酸塩、亜硝酸を含む薬剤、又は亜硝酸塩を含む薬剤を添加して、汚泥浮上を抑制しようとしたときに、温度や還元状態(ORP)などの環境条件、流入する菌種の変化(脱窒菌の有無)によって、想定とは異なって汚泥浮上が起きてしまうことがある。従って、このような制御を行なっている施設において本方法を適用することで、想定外の浮上が起きた時にも対処することが可能となり、安定した水処理と汚泥処理とが可能となる。
図6は、図2の実施の形態において、重力濃縮槽7に亜硝酸系薬剤(亜硝酸、亜硝酸塩、亜硝酸を含む薬剤又は亜硝酸塩を含む薬剤)の添加装置36を設けたものである。同様の添加装置36は図1〜5などにおいて設置されてもよい。
図6では、亜硝酸系薬剤を重力濃縮槽7に添加しているが、配管5,8の一方又は双方に添加するようにしてもよい。
本発明方法は、重力濃縮槽7又は汚泥導入用配管5,8に凝集剤(無機・有機)、静菌剤、殺菌剤、溶菌剤、酸化剤、消泡剤のいずれか1つ以上を注入して管理している施設において実施してもよい。