JP6368252B2 - 構造物の構築方法、及び、岩盤の保護方法 - Google Patents
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Description
一方、特許文献1には、アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属シリコネートを含有する薬剤を用いて、粘土質又は砂利質の土壌物質を固化及び疎水化することが開示されている。
また、除去された吹付モルタルについては、六価クロム等の溶出が懸念されるため、盛土等の構築に利用することが難しく、それゆえ、産業廃棄物となることが多かった。
また、岩盤面を吹付モルタルで覆う場合には、岩盤面の亀裂から間欠的に湧き出る湧水の逃げ場が吹付モルタルによって制限される。それゆえ、湧水により岩盤面の風化が促進され岩盤面の亀裂が大きくなり、ひいては、岩盤面が劣化するおそれがあった。
本発明の第2態様では、構造物の構築方法として、アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属シリコネートを含有する薬剤を、外部に露出した岩盤面に塗布する工程と、薬剤が塗布された岩盤面上に構造物を構築する工程と、を含む。
本発明の第3態様では、岩盤の保護方法として、アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属シリコネートを含有する薬剤を、外部に露出した岩盤面に塗布する工程を含む。
尚、本実施形態では、本発明に係る構造物の構築方法としてダム堤体の構築方法を例に挙げて以下説明するが、本発明に係る構造物はダム堤体に限らない。
また、本実施形態では、ダム堤体がコンクリート製である(すなわち、ダム堤体が、コンクリートダムの堤体である)として以下説明するが、ダム堤体の構成はこれに限らない。
ダム堤体は、その基礎地盤となる岩盤の掘削後に、岩盤上に構築される。
粗掘削では、地盤が硬岩である場合には火薬を用いた爆破掘削工法が採用され、表土や軟岩、風化岩等である場合にはブルドーザ、リッパ等を用いた機械掘削方法が採用される。
本実施形態で使用され得るアルカリ金属珪酸塩は、SiO2対アルカリ金属酸化物、殊にNa2O又はK2Oの重量比2.3〜3.5、密度1240〜1535kg/m3及び粘度5〜850mPa・s(20℃)を有するのが有利である。
本実施形態では、薬剤中の珪酸塩成分からのシリカゲル形成と、第1の掘削面1の乾燥とにより、第1の掘削面1が固化し得る。
Ra(R1O)b(M+O−)cSiO(4−a−b−c)/2 (I)
[式中、Rは同一又は異なるものであってよく、1価のSiC−結合有機基を表し、R1は同一又は異なるものであってよく、1価の置換又は非置換の炭化水素基を表し、M+は同一又は異なるものであってよく、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオン、殊にNa+又はK+を表し、aは0、1、2又は3、好ましくは1であり、bは0、1、2又は3、好ましくは1又は2であり、cは0、1、2又は3、好ましくは1である(但し、a、b及びcの合計は3以下であり、分子1個当たり少なくとも1個の基(M+O−)が存在することを前提とする)]の単位からのものである。
基R1の例としては、上述の基Rの例を挙げることができる。ここで、基R1としては水素、炭素原子数1〜6を有する炭化水素基、特に水素原子、メチル−及びエチル基、殊に水素原子が有利である。
本実施形態で使用され得るアルカリ金属シリコネートはカリウムアルキルシリコネートの水溶液が特に有利である。カリウムアルキルシリコネートは、第1の掘削面1(岩盤面)に疎水性(撥水性)を付与する機能を有する。第1の掘削面1に疎水性が付与されると、岩盤での水の吸収が抑制されるので、岩盤に長期的な耐荷重性、安定性、耐凍結性が付与される。尚、図3には、カリウムアルキルシリコネートの一例として、カリウムメチルシリコネートが示されている。
図3は、カリウムメチルシリコネートと二酸化炭素との反応を示す。
カリウムメチルシリコネートを第1の掘削面1に塗布すると、カリウムメチルシリコネートは、第1の掘削面1の周辺の空気中の二酸化炭素と反応して、この結果、メチルシリコーンレジンと炭酸カリウムとが生成される。これにより、第1の掘削面1上及びその内部には、メチルシリコーンレジンによる架橋性ネットワークが形成される。この架橋性ネットワークを構成するメチル基が傘のように並ぶことで、第1の掘削面1に疎水性が付与される。
仕上げ掘削では、火薬等を使わずに人力やブレーカー等による丁寧な掘削が行われる。
仕上げ掘削にて発生する掘削ズリは、吹付モルタル5のように六価クロム等の溶出が懸念されることがないので、盛土等の構築に利用することができる。
このようにして、ダム堤体の構築が行われる。
図4は、従来のダム堤体の構築方法の一例を示すフローチャートである。図5は、掘削計画面とカバーロックと吹付モルタルとを示す図である。
図4に示す従来のダム堤体の構築方法の一例では、前述のステップS2に代えて、ステップS11を含んでいる。また、前述のステップS3とステップS4との間に、ステップS12を含んでいる。
ステップS3では前述と同様に基礎処理が行われ、この基礎処理が完了した後に、ステップS12に進む。
ステップS12では、吹付モルタル5の除去が行われる。
この点、本実施形態によれば、吹付モルタル5の除去作業が不要であるので、ダム堤体の構築を効率的に行うことができる。
この点、本実施形態によれば、仕上げ掘削にて発生する、薬剤が塗布された岩塊等を含み得る掘削ズリは、吹付モルタル5のように六価クロム等の溶出が懸念されることがないので、盛土等の構築に利用することができる。
この点、本実施形態によれば、薬剤の塗布前に第1の掘削面1に形成された亀裂については、その表面に薬剤が付着して疎水性が付与され得るが、亀裂自体が薬剤によって塞がる可能性は低い。それゆえ、第1の掘削面1の亀裂から間欠的に湧き出る湧水については、第1の掘削面1から外部に排出され得るので、第1の掘削面1の劣化を抑制することができる。
図1〜図3に示す第1実施形態と異なる点について説明する。
図6に示すステップS21では、地盤の掘削を行う。この掘削により、岩盤面(基礎地盤の表面)である第1の掘削面1’(図7参照)が外部に露出する。すなわち、第1の掘削面1’は、地盤を掘削して形成されたものである。ここで、第1の掘削面1’は、掘削計画面αに対応するものである。
このようにして、ダム堤体の構築が行われる。
尚、以下の説明では、本発明に係る、アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属シリコネートを含有する薬剤の一例として、「WACKER BS (登録商標) Drysoil」(ワッカーケミー社製:ドイツ)を用いている。また、以下の説明において、濃度が1.0である薬剤とは、「WACKER BS (登録商標) Drysoil」の原液を意味する。また、濃度が0.5である薬剤とは、「WACKER BS (登録商標) Drysoil」を水で1/2希釈(体積比)したものを意味する。また、濃度が0.1である薬剤とは、「WACKER BS (登録商標) Drysoil」を水で1/10希釈(体積比)したものを意味する。
次に、吸水率が4.0%である複数の岩塊のうちの3つの岩塊に、それぞれ、濃度が1.0、0.5、0.1である薬剤を含浸させ、各岩塊を完全に乾燥させた後、各岩塊における薬剤の浸透深さを測定した。
また、吸水率が4.0%である複数の岩塊のうちの別の3つの岩塊に、それぞれ、濃度が1.0、0.5、0.1である薬剤を含浸させ、各岩塊を完全に乾燥させた後、各岩塊のスレーキング率を測定した。
また、吸水率が4.0%である複数の岩塊のうちの更に別の1つの岩塊については、その表面に薬剤を塗布することなく、その岩塊のスレーキング率のみを測定した。
これら測定の結果が図8に示されている。
岩塊(試料)における薬剤の浸透深さdの測定では、まず、図9(A)に示すように、容器10内に注がれた、濃度が1.0、0.5、又は0.1である薬剤11に、試料である岩塊12を所定時間(例えば5秒程度)漬けることで、薬剤11を岩塊12に含浸させる。この後、岩塊12を容器10内から取り出し、完全に乾燥させる。
次に、図9(B)に示すように、乾燥させた岩塊12をハンマー15等で叩くことで、岩塊12を割る。
次に、図9(C)に示すように、岩塊12の破砕面に水を接触させて、撥水する箇所の表面から垂直方向の距離を複数点(例えば4点)測定し、その平均値を、岩塊12における薬剤11の浸透深さdとする。このようにして、岩塊(試料)における薬剤の浸透深さdを測定する。
また、前述の岩塊のスレーキング率の測定では、「NEXCO 試験法 110」(岩のスレーキング率試験方法)を用いた。ここで、スレーキングとは、乾燥・水浸によって岩石(主に軟岩)に生じる泥状化あるいは細粒化等の形状が変化する現象をいう。また、岩のスレーキング率試験とは、岩石に対して複数回の乾湿繰り返しを与えることで、岩石の耐久性(スレーキング性)を評価する試験である。また、岩のスレーキング率とは、5サイクル乾湿繰り返しを行った後の9.5mmふるい通過乾燥土質量と全乾燥土質量との比を百分率で表したものである。
更に、本発明者らは、図8に示すように、薬剤無添加の岩塊に関して、吸水率が高くなるほどスレーキング率が大きくなることに着目し、岩塊のスレーキング率が大きくなるほど、当該岩塊に塗布される薬剤の濃度を高くするように薬剤の濃度を選定することで、薬剤塗布による岩塊の改良効果を最大限に発揮することができることを見出した。
図10は、岩盤の吸水率と当該岩盤に最適な薬剤の濃度との関係を示す。図11は、岩盤のスレーキング率と当該岩盤に最適な薬剤の濃度との関係を示す。
また、前述の薬剤の濃度の選定では、図11を用いて、薬剤が塗布される岩盤のスレーキング率が大きくなるほど、薬剤の濃度を高くすることで、薬剤塗布による岩盤面の改良効果を最大限に発揮することができる薬剤の濃度を簡易に選定することができる。
図8に示す結果によると、吸水率が4.0%の良質岩、吸水率が8.9%の中間岩においては、薬剤の塗布・添加によりスレーキング率がそれぞれ9倍程度、28倍程度改善するという顕著な効果がある。一方、吸水率が19.6%の不良岩においても、薬剤の塗布・添加によりスレーキング率は3倍程度改善するという効果がある。あらゆる吸水率・スレーキング率の岩に対して良好な改善効果があることは言うまでもない。
2 第2の掘削面
5 吹付モルタル
10 容器
11 薬剤
12 岩塊
15 ハンマー
d 浸透深さ
C カバーロック
α 掘削計画面
Claims (14)
- アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属シリコネートを含有する薬剤を、外部に露出した岩盤面に塗布する工程と、
前記薬剤が塗布された前記岩盤面を所定の厚さ分掘削して掘削面を形成する工程と、
前記掘削面上に構造物を構築する工程と、
を含む、構造物の構築方法。 - アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属シリコネートを含有する薬剤を、外部に露出した岩盤面に塗布する工程と、
前記薬剤が塗布された前記岩盤面上に構造物を構築する工程と、
を含む、構造物の構築方法。 - 前記岩盤面は、地盤を掘削して形成された掘削面である、請求項1又は請求項2に記載の構造物の構築方法。
- 前記構造物はコンクリート製である、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の構造物の構築方法。
- 前記構造物は水理構造物である、請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の構造物の構築方法。
- 前記水理構造物はダム堤体である、請求項5に記載の構造物の構築方法。
- 前記薬剤の濃度を、一部が前記岩盤面をなす岩盤の吸水率と、前記岩盤のスレーキング率との少なくとも一方に基づいて選定する、請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の構造物の構築方法。
- 前記薬剤の濃度の選定では、前記岩盤の吸水率が高くなるほど、前記薬剤の濃度を高くする、請求項7に記載の構造物の構築方法。
- 前記薬剤の濃度の選定では、前記岩盤のスレーキング率が大きくなるほど、前記薬剤の濃度を高くする、請求項7に記載の構造物の構築方法。
- アルカリ金属珪酸塩及びアルカリ金属シリコネートを含有する薬剤を、外部に露出した岩盤面に塗布する工程を含む、岩盤の保護方法。
- 前記岩盤面は、地盤を掘削して形成された掘削面である、請求項10に記載の岩盤の保護方法。
- 前記薬剤の濃度を、一部が前記岩盤面をなす岩盤の吸水率と、前記岩盤のスレーキング率との少なくとも一方に基づいて選定する、請求項10又は請求項11に記載の岩盤の保護方法。
- 前記薬剤の濃度の選定では、前記岩盤の吸水率が高くなるほど、前記薬剤の濃度を高くする、請求項12に記載の岩盤の保護方法。
- 前記薬剤の濃度の選定では、前記岩盤のスレーキング率が大きくなるほど、前記薬剤の濃度を高くする、請求項12に記載の岩盤の保護方法。
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