JP6367349B2 - 経頭蓋磁気刺激システム - Google Patents

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Description

本発明は、磁場の変化によって脳内のニューロンを刺激する経頭蓋磁気刺激治療(TMS)に利用される経頭蓋磁気刺激システムに関する。
特許文献1には、経頭蓋磁気刺激システムが開示されている。このシステムは、TMS治療の間、患者の頭部を経頭蓋磁気刺激コイルに対して適切な位置に保持するヘッドサポート及びコイル位置合わせ部を有する。
特許文献2には、構成部品または器具を位置決めおよび移動するためのロボット化された装置およびそのような装置を含む治療装置が開示されている。このシステムでは、経頭蓋磁気刺激装置の可動部位が全てロボット化されており、患者頭部の刺激位置をあらかじめ装置に認識させておくことで、経頭蓋磁気刺激コイルアッセンブリを自動で前記刺激位置に位置決めすることを可能にしている。
特許第5453325号公報 WO2008/001003
しかしながら、特許文献1のヘッドサポート及びコイル位置合わせ部は、その名称が意味するとおり、患者の頭部を保持するものであって、患者の頭部が適切な位置からずれたときにそれを検出するものでないし、その状態を患者に知らせるものでもない。したがって、コイルが治療に最適な位置からずれた状態で治療が継続される可能性があり、そのために本来の治療効果が得られない可能性がある。
特許文献2のシステムでは、赤外線ステレオカメラを用いて患者の頭部位置を認識し、MRI画像とマッチングさせて、ロボットデバイスにより、経頭蓋磁気刺激コイルアッセンブリを自動で指定した位置までナビゲートする。この赤外線ステレオカメラとロボットデバイスは、いずれも非常に高価であり、一般的な治療用途に導入し難い。
そこで、本発明は、治療に最適な姿勢に患者を誘導する経頭蓋磁気刺激システムを提供することを課題とする。
この課題を解決するため、本発明に係る経頭蓋磁気刺激システム(1)は、
患者の頭部に光スポット(805)を照射するとともに前記光スポット(805)の反射光を検出する光デバイス(502)と、
患者に付されたマーキング(800)と患者に照射された光スポット(805)が重なり合った状態で前記光デバイス(502)が検出した前記反射光に含まれる情報を基準情報として記憶する記憶手段(71)と、
前記記憶手段(71)に前記基準情報が記憶されている状態で、患者に照射された前記光スポット(805)の反射光に含まれる比較情報と、前記記憶手段に記憶されている基準情報をもとに、前記マーキング(800)と前記比較情報に対応する前記光スポット(805)との重なり率を計算する手段(ステップ#2)と、
前記重なり率を表示する手段(ステップ#5、504)を備えていることを特徴とする。
本発明の他の形態は、前記基準情報と前記比較情報が、前記反射光に含まれる複数の光成分の比率であることを特徴とする。
本発明の他の形態は、前記基準情報と前記比較情報が、前記反射光の光量であることを特徴とする。
本発明の他の形態は、
前記患者に照射された光スポット(805)を前記マーキング(800)と共に撮影するカメラ(503)と、
前記カメラ(503)で撮影された画像を表示する手段(504)を備えていることを特徴とする。
本発明の他の形態は、前記重なり率が予め決められた所定値未満の場合、警告を発する手段(ステップ#4、802)を備えていることを特徴とする。
本発明の他の形態は、前記経頭蓋磁気刺激システムが磁気刺激コイルを備えており、
前記重なり率が予め決められた所定値未満の場合、前記磁気刺激コイルへの電力の供給を停止する手段(ステップ#6、802)を備えていることを特徴とする。
本発明の他の形態は、
患者の頭部を支持する頭部支持機構と、
患者の頭部が前記頭部支持機構に接触していることを検出する頭部検出機構とを備えていることを特徴とする。
本発明の他の形態は、前記頭部支持機構がヘッドレスト(601)を備えていることを特徴とする。
本発明の他の形態は、前記ヘッドレスト(601)が、該ヘッドレスト(601)の背後に設置された基板(618)に対して、前方に付勢されていることを特徴とする。
本発明の他の形態は、前記ヘッドレスト(601)が前方に向けて付勢された状態であることを検出する検出機構を有し、前記ヘッドレスト(601)が付勢によって一定以上前方位置にあるときは、警告を発する警告手段を有することを特徴とする。
本発明の他の形態は、前記頭部検出機構によって、患者の頭部が接触していないことを検出した場合には、警告を発する警告手段を備えていることを特徴とする。
本発明の他の形態は、前記頭部支持機構が、接触する患者頭部の凹凸に沿った形状を有することを特徴とする。
本発明の他の形態は、患者の顎を支持するチンレスト(703)を有することを特徴とする。
このように構成された本発明の経頭蓋磁気刺激システムによれば、マーキングと光スポットの重なり率が表示されるため、治療開始時又は治療中において、治療に最適な姿勢に対して頭部がどれだけずれているか容易に判断できる。また、重なり率を参考にすることで、患者は自分自身でその頭部を最適位置に移動させる又は戻すことができる。 また、本発明の他の形態は、警告を発するため、頭部のずれを容易に判断でき、さらに他の形態ではヘッドレストによってもずれを検知できるため、治療開始時又は治療中においても常時、容易にずれを判断でき、最適な位置に移動させる又は戻すことができる。
本発明に係る経頭蓋磁気刺激システムの斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの側面図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムに組み込まれたコイル装置の一部を切除した斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの部分斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの筐体と昇降機構の斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの装着ユニットを示す斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムのローリング機構を示す斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムのローリング機構を示す斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムのローリング機構を示す側面図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムのピッチング機構を示す斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムのピッチング機構を示す側面図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムのピッチング機構を示す斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムのヨーイング・進退機構を示す斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムのヨーイング・進退機構を示す斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの第1位置決め機構を示す斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの第1位置決め機構を示す平面図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの第1位置決め機構を示す側面図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの第2位置決め機構を示す斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの第2位置決め機構を示す斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの第2位置決め機構を示す斜視図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの第3位置決め機構を示す斜視図。 患者に付したマーキングとそれに向けて照射された光スポットを示す図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの制御ブロック図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムの制御フローを示す図。 図1に示す経頭蓋磁気刺激システムのディスプレイ表示を示す図。
以下、添付図面を参照して、本発明に係る経頭蓋磁気刺激システム(以下、単に「システム」という。)の具体的な実施形態を説明する。なお、本発明はこれらの実施形態によっていかなる意味においても制限されるものではない。
1.概略構成
図1、2は、システム(全体を符号10で示す。)の全体を示す。図示するように、システム10は、患者頭部の所望位置に磁気刺激を与えるコイル装置20を含む。実施形態では、コイル装置20は、図3に示すように、コイルケーシング21を有し、該コイルケーシング21の中に8の字コイル22を内蔵している。図1、2に戻り、システム10はまた、治療中の患者を支持する椅子(支持機構)30と、椅子30に座った患者に対してコイル装置を繰り返し適正位置に設定するために、調整機構(後述する)と患者頭部の位置決め機構(後述する)を備えている。実施形態では、支持機構として椅子を採用しているが、支持機構は患者を治療姿勢のままで安定に支持できる機能を備えていればよく、例えばベッドのようなものであってもよい。
2.椅子
実施形態では、図1、2に示すように、椅子30は、一般的な椅子と同様に、座部31、脚部32、背もたれ部33、及び左右の肘掛34を含む。ただし、肘掛34は省略することもできる。実施形態では、背もたれ部33は、所定角度(例えば、垂直面に対して約35度、水平面に対して約55度)傾斜させ、患者がリラックスした状態で座ることができるようにしてある。なお、以下の説明では、図面に表された部材等の位置等を説明するうえで、椅子30に座った患者を基準に、患者の左手側及び右手側をそれぞれシステム10の左側及び右側という。また、椅子30に座った患者に近い側を「前部」又は「前方」といい、椅子30に座った患者から離れている側を「後部」又は「後方」という。
3.筐体
図1、2、4、5に示すように、システム10の筐体(ハウジング)40は、全体の骨格を形成するフレーム41(図5参照)と、フレーム41を覆う複数のパネル42(図1、2、4参照)を有する。図示しないが、パネル42によって囲まれた空間の中には、コイルに電力を供給する電源80(図23参照)と、電源80を制御してコイル22に加える電流を制御するコントローラ70(図23参照)が収容されている。実施形態では、図示するように、椅子30の背もたれ部33の傾斜に合わせて、前フレーム部分43(図5参照)が後方に向かって傾斜している。
4.調整機構
調整機構は、椅子30に座った患者に対して、コイル装置20の高さ・左右方向の位置・前後方向の位置・コイル中心軸(ヨーイング軸)90(図13参照)周りのコイルの角度・椅子に座った患者頭部とコイルとの距離を調整するもので、例えば、昇降機構(第5の機構)100、ローリング機構(第1の機構)200、ピッチング機構(第2の機構)300、ヨーイング・進退機構(第3の機構と第4の機構)400を備えている。
昇降機構100(第5の機構)は、コイル装置20を昇降して患者に対するコイル装置20の高さを調整する機構である。図1、2では、昇降機構100は背もたれ部33のほぼ傾斜方向(図1、2に示す矢印1000方向)に沿ってコイル装置の高さを調整する機構である。ローリング機構200(第1の機構)は、図2に示すように、後方から前方に向かって斜め上方に伸びる軸(ローリング軸)220を中心に左右方向(矢印2000方向)にコイル装置20を揺動(ローリング)し、患者頭表面に沿ってコイル装置20を患者の左右方向に移動させる機構である。ピッチング機構300(第2の機構)は、図1、2に示すように、ローリング軸220に直交して左右方向に伸びる軸(ピッチング軸)320(図11参照)を中心に前後方向(矢印3000方向)にコイル装置20を揺動(ピッチング)し、患者頭表面に沿ってコイル装置20を患者の前後方向に移動させる機構である。ヨーイング・進退機構400(第3の機構と第4の機構)は、図2に示すように、ピッチング軸320から放射方向に伸びるヨーイング軸90を中心にコイル装置20を矢印4001方向に回転(ヨーイング)して患者頭部に対するコイル装置20の方向(ヨーイング角)を調整するとともに(ヨーイング機構)、ヨーイング軸90の方向に沿ってコイル装置20を矢印4002方向に移動してコイル装置20と患者頭部との距離を調整する機構(進退機構)である。第1〜第5の機構は、それぞれ、コイル装置の移動を停止するブレーキ機構と、コイル装置の位置を固定するロック機構を有することが好ましい。ブレーキ機構によってコイル装置の位置調整が容易になり、ロック機構によって治療時に確実にコイル位置を維持できる。また、第1〜第5の機構はコイル装置の位置を示す位置表示機構を有することが好ましい。位置表示機構により、コイル装置の位置を確認でき、コイル装置の位置の再現が容易となる。
実施形態では、後に説明するように、昇降機構100に装着ユニット50(図1、2、4、6参照)が連結されており、コイル装着ユニット50にローリング機構200が支持され、ローリング機構200にピッチング機構300が支持され、さらに、ピッチング機構300にヨーイング・進退機構400が支持されている。以下、それぞれの機構を説明する。
4−1.昇降機構100(第5の機構)
図5を参照すると、昇降機構100は、システム筐体40の前フレーム部分43に固定されたガイド又はガイドレール101を有する。ガイドレール101は、椅子30に座った患者の正中線と平行又はほぼ平行な方向に向けて配置されている。実施形態では、一対のガイドレール101が、前フレーム部分43の傾斜に合わせて、左右方向に所定の間隔をあけて平行に固定されている。ガイドレール101は、ガイドレール101に沿って上下に移動する2つのキャリッジ−下段キャリッジ102(第1のキャリッジ)と上段キャリッジ103(第2のキャリッジ)−を支持している。
下段キャリッジ102は、オペレータの手動操作に基づいて該下段キャリッジ102を上下させる移動機構104に連結されている。例えば、移動機構104は、ガイドレール101の間に該ガイドレール101と平行に配置されたねじ軸(外ねじ部材)105と、前フレーム部分43の上部と下部に固定され、ねじ軸105の上部と下部に形成した非ねじ部を回転自在に支持する軸受106、107と、ねじ軸105の上端に固定されたハンドル108を有する。一方、下段キャリッジ102にはナット(図示せず)が固定されており、このナットにねじ軸105が挿入されている。したがって、ハンドル108をもってねじ軸105を回転することにより、下段キャリッジ102がガイドレール101に沿って昇降する。下段キャリッジ102の動きを止めるために、例えば、ハンドル108の近くにロック機構110を設け、このロック機構110によってねじ軸105の回転を禁止できるようにすることが好ましい。
下段キャリッジ102の位置又は高さを示す機能を設けることが好ましい。実施形態では、ハンドル108の近傍にインジケータ111が設けてあり、これにより、コイル装置20の高さを確認し又設定できるようにしてある。
上段キャリッジ103は、装着ユニット50(図1、2、4、6参照)を支持している。昇降機構においては、コイル装着ユニットの昇降負荷を軽減する機構を有することが好ましい。実施形態では、図5に示すように、上段キャリッジ103が、この上段キャリッジ103を昇降する負荷を軽減するばね機構130に連結されている。このばね機構130は、一端が上段キャリッジ103に連結されたワイヤ(図示せず)を有する。ワイヤは、ガイドレール101の背後の上部に配置された1つ又は複数のプーリ112を介して定荷重ばね113に連結されている。定荷重ばね113は、上段キャリッジ103に連結された装着ユニット50をオペレータが一定の弱い力でスムーズに昇降できる性能のものが選択される。したがって、上段キャリッジ103は、装着ユニット50とともに、軽い力で昇降できる。
実施形態では、下段キャリッジ102と上段キャリッジ103には、上段キャリッジ103が下段キャリッジ102に最も接近した下降位置で上段キャリッジ103を下段キャリッジ102に着脱可能に固定するロック機構114が設けてある。ロック機構114は、例えば、一方のキャリッジに設けたばね付勢式係合部(例えば、爪部)115と他方のキャリッジに設けた被係合部116によって構成できる。
ロック機構114は、下段キャリッジ102と上段キャリッジ103の相対移動を禁止するものであって、両者が一体になって昇降することを禁止するものではない。したがって、下段キャリッジ102に上段キャリッジ103がロックされた状態でハンドル10をもってねじ軸105を回転すれば、下段キャリッジ102と上段キャリッジ103が一緒に昇降する。
実施形態では、上段キャリッジ103とこれに支持されたコイル装着ユニット50を昇降する際にオペレータが握る取っ手120(図1,2,4参照)が設けてある。したがって、必要に応じて、オペレータは、ロック機構114を解除することにより上段キャリッジ103を下段キャリッジ102から分離し、片手で取っ手120を持って、上段キャリッジ103とこれに取り付けた装着ユニット50を上昇させることができる。これにより、治療中にトラブルや緊急事態等が発生した場合(例えば、治療中に患者が不快感を感じた場合)、オペレータが装着ユニット50及びこれに支持されたコイル装置20を患者から上方に素早く退避させることができる。
図4に示すように、実施形態では、システム筐体40の前面には、下段キャリッジ102と上段キャリッジ103が昇降する領域には開口117が形成されている。開口117は、図示するように、下段キャリッジ102と上段キャリッジ103にそれぞれ連結され、下段キャリッジ102と上段キャリッジ103の昇降に応じて伸縮又は進退するシャッタ118、119又は蛇腹式カバーによって覆われている。
4−2:ローリング機構200(第1の機構)
図6〜図9に示すように、ローリング機構200は、ブラケット201(図9参照)を介して上段キャリッジ103に固定された固定フレーム202を有する。固定フレーム202は、ローリング軸(第1の軸)220(図9参照)に沿って伸びるローリングシャフト203を、ローリング軸220を中心に回転可能に支持している。ローリングシャフト203を回転させることにより、後述するロールプレート等を介して支持されているコイル22は、ローリング軸220を中心とする仮想曲面(第1の仮想曲面)上を左右に揺動することになる。このとき、仮想曲面は、真円状であっても楕円状であってもよい。図示するように、ローリングシャフト203は、後方から前方に斜め上方に向けられている。垂直軸(図示せず)とローリングシャフト203のなす角度は、コイル装着ユニット50に装着されたコイル22が、所定範囲に亘って患者の頭部表面を走査できる角度であればよく、例えば約75度である。実施形態では、固定フレーム202は、固定フレーム202に対してローリングシャフト203を回転不能にロックするロック機構204(図9参照)を備えている。
ローリングシャフト203は、前ロールプレート205を固定支持している。実施形態では、前ロールプレート205は、略六角形のフレームで構成されている。前ロールプレート205の背後には、前ロールプレート205と同様に略六角形の略相似形をした後ロールプレート206が配置されている。前ロールプレート205と後ロールプレート206の上端には、前ハンドル207と後ハンドル208がそれぞれ取り付けてある。
後ロールプレート206は、前ロールプレート205の左右中段部分から後方に伸びる一対のブラケット209に、ローリングシャフト203と直交する左右方向に配置された連結シャフト210を介して回転可能に保持されており、前ロールプレート205と後ロールプレート206がローリングシャフト203と共に回転するようにしてある。
ローリング角度の非調整時、ローリングシャフト203に対する前ロールプレート205及びそれに支持されるコイル装置等のローリングにブレーキをかける又はローリングを禁止するために、連結シャフト210の下方では、前ロールプレート205と後ロールプレート206が左右の引張コイルばね211(図9参照)によって互いに接近するように連結され、後ロールプレート206の下部と固定フレーム202の下部との間に摩擦部材であるフリクションプレート212が配置されている。したがって、通常(非ローリング時)、引張コイルばね211の付勢力に基づいて、後ロールプレート206と固定フレーム202との間にフリクションプレート212が挟まれる。その結果、後ロールプレート206及びこれに連結された前ロールプレート205は固定フレーム202に対して回転できない。ローリング角度を調整する場合、オペレータは前ロールプレート205と後ロールプレート206の前ハンドル207と後ハンドル208を片手で握り寄せ、後ロールプレート206又は固定フレーム202をフリクションプレート212から分離させる。これにより、前ロールプレート205と後ロールプレート206がローリングシャフト203と共に回転できる。なお、フリクションプレート212は、固定フレーム202に固定してもよいし、後ロールプレート206に固定してもよい。
上述のように、前ロールプレート205と後ロールプレート206を回転するためには、後ロールプレート206又は固定フレーム202とフリクションプレート212との接触を解除できればよく、そのために必要な後ロールプレート206の移動量(前ロールプレート205に向かう移動量)は僅かでよい。そのため、実施形態では、連結シャフト210の上方に位置する前ロールプレート上部に、後ロールプレート206に向けて突出する突起部213を設け、これら突起部213に後ロールプレート206が接触した位置を超えて更に後ロールプレート206が回転又は移動しないようにしてある。
実施形態では、コイル装置20を左右に揺動する際にハンドル207、208にかかる負荷を軽減するために、図7、8に示すばね機構(負荷軽減機構)214が設けてある。負荷軽減機構は、コイル装置を左右に揺動する際の負荷を軽減できればよく、ばね機構に限定されない。負荷軽減機構によって、ユーザーは容易かつ精度良くコイル装置を移動させることができる。ばね機構214は、ローリングシャフト203に固定された回転板215と、回転板215を挟んでその左右両側で固定フレーム202に設けられたコイルばね216を有する。各コイルばね216は、その一端(回転板215から離れた端部)が固定フレーム202に連結され、他端が紐又はワイヤ217を介して回転板215の円周面に連結されている。したがって、固定フレーム202に対してローリングシャフト203が図8の時計回り方向に回転すると、対応する右側のワイヤ217が回転板215の外周に巻き付きながら引っ張られ、これにより図8の右側のコイルばね216が伸び、ローリングシャフト203を逆方向(反時計回り方向)に付勢する力が発生する。逆に、固定フレーム202に対してローリングシャフト203が図8の反時計回り方向に回転すると、図8の左側のコイルばね216が伸び、ローリングシャフト203を逆方向に付勢する力が発生する。このように、オペレータがハンドル207、208を持ってコイル装置20を患者の左側又は右側に揺動すればそれに逆行する力がコイルばねに発生し、ハンドル207、208にかかる負荷を減らす。なお、ローリングシャフト203の回転によりワイヤ217が確実に回転板215の外周面に巻き付くように、回転板215の外周面には溝219を形成し、そこにワイヤ217が収まるようにすることが好ましい。
ローリングシャフト203の回転量(ローリング量)を表示する機能を設けることが好ましい。実施形態では、後ロールプレート206の後方にインジケータ218が設けてあり、これにより、コイル装置20のローリング量を確認し又設定できるようにしてある。
4−3:ピッチング機構300(第2の機構)
図10、11、12に示すように、ピッチング機構300は、前ロールプレート205の左右端部から前方に向けて円弧状に且つ平行に伸びる一対のアーム301を有する。図11に示すように、アーム301はその下方に位置するピッチング軸(第2の軸)320を中心とする円弧に沿って伸びている。実施形態では、ピッチング軸320は、ローリングシャフト203のローリング軸(第1の軸)220と直交している。ローリング軸220とピッチング軸320が「直交」するとは、ローリング220を中心とする放射方向(矢印350方向)から該ローリング軸220を見たとき、該ローリング軸220にピッチング軸320が直交又はほぼ直交しているという意味である。したがって、本発明は、図11に示すようにローリング軸220とピッチング軸320が互いに交差する形態だけでなく、図11の矢印350方向にローリング軸220とピッチング軸320が離れて交差しない形態も含む。
各アーム301は、アーム301に沿って、ピッチング軸320を中心に円弧状に伸びるガイドレール302を有し、実施形態においては他方のアーム301に対向する内側面に設けてある。なお、ガイドレール302はコイルを前後に移動させる時の負荷を軽減させる機構を有していることが望ましく、例えばボール循環式のガイドレールを使用することが好ましい。ガイドレール302は、ガイドレール302に沿って前後方向に移動するように、ピッチングフレーム(ピッチングプレート)303(図12参照)を支持している。ピッチングフレーム303の前後方向の移動範囲を規定するために、ガイドレール302の前部と後部にはそれぞれストッパ304が設けてある。また、アーム301の先端が連結部材317によって連結されている。
ピッチングフレーム303は、ピッチングフレーム303の上面に沿って左右方向に移動可能に支持された一対のブレーキプレート305、306を有する。左右のブレーキプレート305、306は、対応するコイルばね307、308によってそれぞれ左側と右側(外側)にそれぞれ付勢されており、左右のブレーキプレート305、306の外側端面に取り付けたブレーキパッド309、310が対応する左右のアーム301の内側面に圧接されるようになっており、この状態でピッチングフレーム303はアーム301に対して前後方向に移動不能に固定される。図示するように、左右のブレーキプレート305、306にはブレーキ解除ハンドル311、312が固定されており、これらの左右のブレーキ解除ハンドル311、312をオペレータが片手で握り寄せることによって、左右のブレーキパッド309、310とアーム301との接触が解除され、ピッチングフレーム303及びコイル装置20を前後方向に揺動できるようにしてある。また、アーム301に対してピッチングフレーム303をロックするために、ピッチングフレーム303の左右にはアーム301にそれぞれ対応してロック機構313、314(図10参照)が設けてある。
コイル装置20の前後方向の位置を表示する機能を設けることが好ましい。実施形態では、図11に示すように、アーム301の外側面に目盛315(インジケータの一部)を設けるとともに、ピッチングフレーム303のロック機構313、314に目盛指示板316(インジケータの一部)を設け、目盛指示板316に指示された目盛315の値を読むことによってコイル装置20の前後方向の位置、すなわち、ピッチング量を確認できるようにしてある。したがって、実施形態では、目盛315と目盛指示板316で構成されるインジケータを利用し、目盛指示板316に指示された目盛315の値を読むことで、コイル装置20のピッチング量を確認し又設定できる。
アーム301に沿ってコイルが前後に揺動すると、コイルはピッチング軸320を中心とする仮想曲面(第2の仮想曲面)上を前後に揺動する。このとき、仮想曲面は、アーム301の曲率によって調整することが可能である。例えば、アーム301の曲率は、ピッチング軸320を中心に前後に揺動するコイルケーシング21(正確には、コイルケーシング21の患者頭部に対向するケーシング面(頭部接触面)23(図3参照))の軌跡の曲率が、真円状であっても楕円状であってもよいが、平均的な成人頭部(正確には頭部表面)の正中面の曲率に近い値に設定することが好ましい。また、アーム301の高さ(ローリング軸220からの距離)は、ローリング軸220を中心に左右に揺動するケーシング面23の軌跡の曲率が、平均的な成人頭部(正確には頭部表面)の前頭面の曲率に近い値に設定することが好ましい。
4−4:ヨーイング・進退機構400(第3の機構と第4の機構)
図13、14に示すように、ヨーイング・進退機構400は位置決めプレート401を有する。位置決めプレート401はピッチングフレーム303に固定されている。位置決めプレート401の上には、ヨーイングブロック402が位置決めプレート401に対してヨーイング軸90を中心に回転可能に且つ位置決めプレート401に対してヨーイング軸90の方向に移動不能に設けてある。ヨーイングシャフト403は、ヨーイング軸90(第3の軸)に沿って配置され、位置決めプレート401とヨーイングブロック402を垂直に貫通しており、位置決めプレート401に対してヨーイング軸90を中心に回転可能に且つヨーリングシャフト403と共にヨーイング軸90を中心に回転可能に設けてある。
実施形態では、図11に示すように、ヨーイング軸90(第3の軸)は、ピッチング軸320(第2の軸)と直角又はほぼ直角にほぼ交差している。また、ヨーイング軸90は、ピッチング機構300における2つのアーム301の中間に位置しており、ローリング軸220(第1の軸)と交差又はほぼ交差している。
ヨーイングブロック402の上には、ヨーイングシャフト403に外装された円筒形の目盛支持ブロック404が固定されている。目盛支持ブロック404はヨーイング角を表示する目盛板405(インジケータの一部)を支持している。目盛板405に対応して、ヨーイングブロック402には目盛指示部406(インジケータの一部)が設けてある。したがって、実施形態では、目盛板405と目盛指示部406で構成されるインジケータを利用し、目盛指示部406に指示された目盛板405の値を読み取ることで、ピッチングフレーム303に対するヨーイングブロック402の角度、すなわちコイル装置20のヨーイング角を確認し又設定できる。
ピッチングフレーム303に対するヨーイングブロック402及びコイル装置20のヨーイング角を所定角度ごとに規制できるように、位置決めプレート401の上面にはヨーイングシャフト403を中心とする円周上に一定の間隔(例えば、15度)をあけて穴407が形成されている。また、ヨーイングブロック402には、図示しないばねによって下方に付勢され、複数の穴407のいずれか1つに嵌合可能なシャフト(図示せず)を有するインデックスプランジャ408が設けてある。したがって、インデックスプランジャ408をいずれかの穴407に嵌合することで、ヨーイングブロック402及びコイル装置20のヨーイングを禁止できる。すなわち、インデックスプランジャ408と穴407は、ヨーイング機構のブレーキ機構とロック機構を兼ねる。なお、実施形態では、穴407の横断面は、ヨーイング軸90を中心とする放射方向に長軸を有し、ヨーイング軸90を中心とする周方向に短軸を有する楕円形としているが、その断面形は円、多角形のいずれであってもよい。なお、実施例には示していないが、ヨーイング軸に加え、ヨーイング軸とほぼ直交する独立した2軸の回転機構を設けることで、コイルの姿勢を任意に調整できるような構造としてもよい。
図14に示すように、ヨーイングブロック402は、ヨーイングシャフト403から離れる方向に伸びる上突出部410を有する。また、ヨーイングブロック402には、上突出部410の下方に、上突出部410と平行に伸びる下突出部411と、上突出部410と下突出部411を連結する垂直ガイド部412が設けてある。そして、上突出部410がコイル装置20の支持ブロック413を支持している。
支持ブロック413は、ピッチングプレート303の下方で、該ピッチングプレート303を貫通したヨーイングシャフト403の下端部に回転可能に連結された水平連結部415と、水平連結部415と上突出部410を連結するねじ軸416とを有する。ねじ軸416は、該ねじ軸416に螺合したナット(図示せず)を含む被ガイド部417に連結されている。図示するように、被ガイド部417は、ヨーイングブロック402の下突出部411によって案内される垂直面418と、垂直面418の上端と下端からヨーイングブロック402に向けて突出する上突出部419と下突出部420を有する。実施形態では、ヨーイングブロック402における上突出部410と下突出部411の間の距離は、被ガイド部417における上突出部419と下突出部420の間の距離と等しく決められている。したがって、支持ブロック413及びコイル装置20は、上突出部410、419と下突出部411、420の間の距離だけ、ヨーイングシャフト403に沿って昇降し、これにより、コイル装置20をヨーイング軸90に沿った方向に移動し、コイル装置20と患者頭部との距離を調整できるようにしてある。
支持ブロック413と水平連結部415を繋ぐねじ軸416は、ねじ軸とこれに螺合するナットを含むねじ軸機構(図示せず)を備えている。また、ねじ軸機構のねじ軸は、上突出部410に設けた摘まみ422に連結されている。そして、摘まみ422を回転することによってねじ軸416を回転し、ヨーイングブロック402に対して支持ブロック413が昇降するように構成されている。詳細な図面は省略するが、このねじ軸機構では、ねじ軸416の上部には中心軸に沿って伸び且つねじ軸416を横断方向に貫通するスロットが形成されている。一方、摘まみ422にはスロットに沿って移動可能に組み合わされる係合部が設けてあり、摘まみ422を回転するとその回転は係合部を介してねじ軸に伝達される一方、ねじ軸は係合部に対して軸方向に移動するように構成されている。
コイル装置20の患者頭部に対する高さを示すために、摘まみ422はインジケータ423に連結されている。したがって、インジケータ423の指標を確認することで、コイル装置20を患者頭部に対して所望の高さに設定できる。また、コイル装置20の高さを固定するために、摘まみ422及びねじ軸の回転を規制するロック機構424を設けることが好ましい。さらに、コイル装置20(ヨーイングブロック402に対する支持ブロック413)のヨーイング範囲を規制するために、例えば、ピッチングフレーム303に一対のストッパ425を設けてもよい。
5.患者位置決め機構
本実施形態のシステムは、3つの患者位置決め機構−第1位置決め機構500、第2位置決め機構600、第3位置決め機構700を有する。第1位置決め機構500は、患者の皮膚に設けたマークを利用して患者を適正な姿勢に誘導するものである。第2位置決め機構600は、椅子に座った患者の頭部をその背後から支持して位置決めするものである。第3位置決め機構700は、椅子に座った患者のあごをその下から支持するものである。第1〜第3位置決め機構はそれぞれ、機構内の移動部材の位置を固定するロック機構、また、その位置を示す位置表示機構を有することが好ましい。ロック機構により治療時に確実に患者の位置を維持するための助けとなり、また位置表示機構により患者の位置再現が容易となる。さらに、部材の移動を停止させるブレーキ機構を有していてもよい。
5.1:第1位置決め機構500
図15〜図17を参照すると、第1位置決め機構500は、固定フレーム202の左右両側にそれぞれ固定されている。各第1位置決め機構500は、患者頭部の側面、例えば、対応する左側又は右側の耳たぶの後方に付けたマーキング(特定部)800(図22参照)に向けて光を送る発光部(発光素子)と該マーキングで反射した光を受ける受光部(受光素子)を含む光デバイスからなるセンサ502と、マーキングとマーキングに当たった光を撮影するカメラ503(図16参照)を含む。なお、図15〜17において位置決め機構500は固定フレーム202に連結されているが、これは実施形態の一つであって、後述する第2位置決め機構(600)の水平方向および垂直方向の可動部に連結してもよい。
図23に示すように、センサ502とカメラ503は、コントローラ70と電気的に接続されている。また、コントローラ70は、椅子30に固定されたディスプレイ504と電気的に接続されており、センサ502で受光した光の情報とカメラ503が撮影した画像の情報がディスプレイ504に表示されるようにしてある。
センサ502は、3つの光成分(RGB)を発する発光素子と、発光素子から出射された光を所定方向に向けて出射とともに該所定方向からの反射光を受光素子に案内する光学系と、受光素子で受光した3色の比率を検出し出力するカラーセンサであってもよいし、一つの受光素子と、発光素子から出射された光を所定方向に向けて出射とともに該所定方向からの反射光を受光素子に案内する光学系と、受光素子で受光した光の受光量を検出する光量センサのいずれであってもよい。
図15、16に戻ると、センサ502とカメラ503は、それらの光軸を患者に向けてケーシング505に収容されている。センサ502とカメラ503の光軸は平行でなくてもよい。ケーシング505は、図示するように、センサ502とカメラ503が、椅子30に座った患者の頭部マーキングに対向するように配置される。また、図1を参照すると明らかなように、センサ502とカメラ503は、これらセンサ502とカメラ503を、後方から前方に向かって斜め上方に例えば約15度傾いた略水平(前後方向)方向と、この略水平(前後)方向に垂直な略垂直方向に移動させる2つの移動機構506、507に支持されている。これら略水平(前後)方向と略垂直方向は真の水平方向と垂直方向ではないが、説明の便宜上、第1位置決め機構500に関連した説明では、これら略水平(前後)方向と略垂直方向をそれぞれ「水平方向」と「垂直方向」といい、水平方向と垂直方向の移動機構をそれぞれ「水平移動機構」と「垂直移動機構」という。
垂直移動機構506は、垂直方向に細長い基板510と、基板510上に配置された後述する機構を保護するカバー511を有する。基板背面(患者とは反対側の面)の上部と下部にはそれぞれプーリ512(下部プーリは図示せず)が配置されており、それらのプーリ512に無端ベルト513が掛けてある。下部プーリ(図示せず)を支持するシャフトは歯車514を支持している。この歯車514は、隣接して配置された1つ又は複数の歯車515を介して操作摘まみ516に連結されており、操作摘まみ516を正逆回転することによって、ベルト513が回転移動するようになっている。基板510はまた、ベルト513と平行に伸びるガイド部517と、ガイド部517に沿って垂直方向に往復移動する連結部材518を支持しており、この連結部材518がベルト513に連結されている。
連結部材518の他端は、水平移動機構507を支持している。水平移動機構507は、水平方向に細長い基板520と、基板520上に配置された後述する機構を保護するカバー521を有する。基板520は、垂直移動機構506に近い後方の一端が連結部材518に連結されている。基板背面の前部と後部にはそれぞれプーリ522(後部プーリは図示せず)が配置されており、それらのプーリ522に無端ベルト523が掛けてある。後部プーリ(図示せず)を支持するシャフトは歯車524を支持している。この歯車524は、隣接して配置された1つ又は複数の歯車525を介して操作摘まみ526に連結されており、操作摘まみ526を正逆回転することによって、ベルト523が回転移動するようになっている。基板520はまた、ベルト523と平行に伸びるガイド部527と、ガイド部527に沿って水平方向に往復移動するキャリッジ528を支持している。また、基板520には水平方向に伸びる開口529が形成されており、この開口529を介して、キャリッジ528の一部が基板表面(患者側表面)側に突出し、そこにケーシング505が固定されている。
したがって、水平移動機構507の摘まみ526を回転すればケーシング505が水平(前後)方向(前方から後方又はその逆に)移動し、垂直移動機構506の摘まみ516を回転すればケーシング505が垂直方向(上方から下方又はその逆に)移動する。
ケーシング505の垂直方向と水平方向の位置を確認し又再現するために、垂直移動機構506と水平移動機構507には、摘まみ516、526の回転量を表示するインジケータ531、532を設けることが好ましい。また、設定されたケーシング505を固定するために、垂直移動機構506と水平移動機構507には、摘まみ516、526又は歯車514、515、524、525の回転を禁止するロック機構533、534を設けることが好ましい。
また、センサ502は、頭幅の個体差によって、センサとマーキングとの距離が検出範囲を超えてしまい、センサ502を動かさなければ検出できない場合が生じることを防ぐため、頭幅の個体差によって生じる距離よりも広い検出範囲を有することが好ましい。
5.2:第2位置決め機構600
図18〜図20に示すように、第2位置決め機構600は、2つの第1位置決め機構500の間で固定フレーム202に支持されており、椅子に座った患者の後頭部を支持するヘッドレスト601と、後方から前方に向けて所定角度(例えば、約15度)斜め上方に傾斜した方向とこれに直交する方向(以下、これらの方向は正確な意味で水平、垂直方向ではないが、説明の便宜上、第2位置決め機構600に関連した説明では「水平方向(前後方向)」、「垂直方向」という。)にヘッドレスト601を移動させる2つの移動機構610、611を備えている。以下、水平方向(前後方向)の移動機構を「水平移動機構」、垂直方向の移動機構を「垂直移動機構」という。
水平移動機構610は、固定フレーム202に固定されたブラケット612と、ブラケット612に固定された固定ブロック613を有する。固定ブロック613は、水平方向に移動可能に、水平移動ブロック614を支持している。固定ブロック613と、水平移動ブロック614は、水平(前後)方向に伸びるねじ軸615によって連結されており、水平方向のねじ軸615の回転に基づいて、固定ブロック613に対して、水平移動ブロック614が、水平(前後)方向に往復移動するようにしてある。水平移動ブロック614は、垂直方向のねじ軸616を介して昇降ブロック617に連結されている。昇降ブロック617は、ヘッドレスト601の背後に配置された基板618を支持している。したがって、水平(前後)方向のねじ軸615又はこれに固定された摘まみ619を回転することにより、ヘッドレスト601が水平(前後)方向に往復移動する。また、垂直方向のねじ軸616又はこれに固定された摘まみ620を回転することにより、ヘッドレスト601が垂直方向に往復移動する。
ヘッドレスト601は、支持機構によって前進位置と後退位置との間を所定角度揺動(ピボット回転)できるように連結されている。本実施形態では、支持機構は、基板618の下部に設けた左右方向の水平シャフト621(図18、19参照)を備えており、この水平シャフト621によってヘッドレスト601が揺動可能に支持されている。また、本実施形態では、ヘッドレスト601は、ヘッドレスト601と基板618の間に設けた付勢機構(例えば、ばね)640(図19参照)によって、前方に付勢されている。さらに、基板618には患者頭部がヘッドレスト601に接触して後退位置にあるか否かを検出する頭部検出機構650を有する。
実施形態では、頭部検出機構650は、検出手段として例えばスイッチ622を備えており、スイッチ622の出力をもとに、ヘッドレスト601がばね640に付勢されて前進位置にあるか、それとも、ヘッドレスト601が付勢力に抗して後退位置にあるかを検出するようにしてある。頭部検出機構は、スイッチに限らず、ヘッドレスト601が前進位置又は後退位置のいずれにあることを検出できればよい。また、ヘッドレスト601がばねに付勢されて前進位置にあるか、それとも、付勢力に抗して後退位置にあるかを検出する機構ではなく、スイッチ又は光センサ、圧力センサ等をヘッドレスト601に設置して、患者の後頭部がヘッドレスト601に接触していることを検出する機構であってもよい。また、頭部検出機構は、ヘッドレスト以外の頭部支持機構に備えてもよい。例えば、患者の顎を支持する機構(例えば、チンレスト703を含む機構)でもよいし、患者の額を支持する機構に備えてもよい。
頭部支持機構は、それぞれの機構を所定の位置に設定したときに、患者の頭部を支持する機構をいい、本発明においては、ヘッドレスト601、チンレスト703、コイルケーシング21の患者頭部に接する部分等が挙げられ、その他にも患者の額を支持する機構であってもよい。この頭部支持機構によって、治療位置において患者の頭部をより固定することが可能となる。頭部支持機構は、患者の頭部を支持しやすいように、接触する患者頭部の曲面に近い形状を有することが好ましい。例えば、ヘッドレスト601は、患者の後頭部が嵌り、支持しやすいよう、後頭部の曲面に近い窪みを持たせることが好ましい。また、患者ごとの頭部の形に合わせた頭部支持機構を形成してもよい。なお、頭部支持機構は、その機能を有することのできる部材に常に備えさせる必要はなく、実施態様によって変更させることが可能であり、ヘッドレスト601だけに備えさせたりすることも可能である。
ヘッドレスト601の水平(前後)方向と垂直方向の位置を確認し又再設定できるように、水平(前後)方向と垂直方向のねじ軸615、616にはそれぞれインジケータ625、626を連結することが好ましい。また、ヘッドレスト601の水平(前後)方向と垂直方向の位置を固定するために、水平(前後)移動機構610と垂直移動機構611には、摘まみ619、620又はねじ軸615、616の回転を禁止するロック機構627、628を設けることが好ましい。
5.3:第3位置決め機構700
図21に示すように、第3位置決め機構700は、椅子30に座った患者のあごを支持するもので、椅子30に固定されたポスト(柱)701と、ポスト701に連結された水平アーム702と、水平アーム702の先端に取り付けたチンレスト703を有する。なお、水平アーム702は2本のアームを回転可能に且つ固定可能に連結して構成されているが、1本のアームで構成してもよいし、3本以上のアームで構成してもよい。また、水平アーム702及びこれに支持されたチンレスト703は、ロック機構704等によって、ポスト701に対して固定できるようにしてもよい。このように構成された第3位置決め機構700を利用すれば、椅子30に座った患者の頭を、ヘッドレスト601、チンレスト703、コイル装置20によってそれぞれ別々の方向(背後、下方、上方)から支持することで、患者の頭ができるだけ動かないように規制できる。

6.操作
以上の構成からなるシステム10の操作を説明する。
6.1:最適刺激位置の決定
患者の治療に最も適したシステム10の条件(例えば、患者に対するコイル装置の高さ、左右方向の位置(ローリング量)と前後方向の位置(ピッチング量)、ヨーイング角、距離)を決定する。このシステム条件決定作業は、椅子に座った患者に対してコイル装置20を移動及び回転し、最も効果的な磁気刺激を目標部位に与えることができる条件を決定するものである。
具体的に、システム条件決定作業では、昇降機構100の下段キャリッジ102を、予想される高さ又はそれよりも多少高い位置に固定しておく。この作業時、必要であれば、装着ユニット50を支持する上段キャリッジ103を下段キャリッジ102から分離して上昇させてもよい。また、ポスト701に連結されたディスプレイ504と第3位置決め機構700及びそのチンレスト703を、患者が椅子30に接近する領域の外に移動させておく。この状態で、患者を椅子30に座らせる。
次に、各調整機構を調整する。調整する機構の順序は任意であるが、例えば、まず、昇降機構100を操作し、装着ユニット50の高さを調整する。次に、第2位置決め機構600を調整し、ヘッドレスト601の高さと前後の位置を決める。また、ローリング機構200、ピッチング機構300、ヨーイング・進退機構400を操作してコイル装置20の位置を調整する。この状態で、通常は、コイル装置20においてコイル21を収容したケーシングの患者に対向する面は、患者頭表面にほぼ接触している。したがって、患者頭部には、その後方からヘッドレスト601が当てられ、また、その上方からコイル装置20が当てられ、姿勢が安定する。このコイル装置20とヘッドレスト601の作り出す空間によって、特定の形状かつ姿勢にある頭部の受容への助けとなり、患者の頭部刺激部に対する位置決めがより安定する。この場合、このコイル装置20とヘッドレスト601が頭部支持機構の役割も有する。必要であれば、第3位置決め機構700を使って、患者のあごをその下方からチンレスト703で支持し、ヘッドレスト601、コイル装置20、チンレスト703の3点で支持してもよい。この場合、患者の姿勢がさらに安定する。
以上のようにして準備作業が終了すると、実際にコイル装置20を駆動して患者に磁気刺激を与える。このとき、昇降機構100、ローリング機構200、ピッチング機構300、ヨーイング・進退機構400、及び/又は、第2位置決め機構600を操作して、患者に対するコイル装置の高さ、左右方向の位置(ローリング量)と前後方向の位置(ピッチング量)、ヨーイング角、距離を調整しながら、目標部位に最も効果的に磁気刺激を与えることができる最適条件を決定する。必要であれば、第3位置決め機構700を使って、患者のあごをチンレストで支持してもよい。目標部位における最適位置の探索は、コイル装置20を目標部位周辺で走査しながら、患者の生理反応、例えばtwitch反応などを観察することで行い、生理反応が顕著に見られる位置に最適位置を決定できる。その場合には、赤外線ステレオカメラ等の3次元計測システムを使用する必要はない。twitch反応が観察できない場合には、筋電計や3次元計測システム等を使用してもよい。
この調整作業中、コイル装置20は、患者に対して、ローリング軸220を中心に前後左右に移動され、また、ピッチング軸320を中心に前後に移動され、さらに、ヨーイング軸90を中心に回転できるし、ヨーイング軸90に沿って患者の頭表面に向けて進退できるため、患者に対してより適切な条件を決定できる。このとき、コイル装置20は患者頭部に対向するケーシング面23が平均的な成人頭部の正中面と前頭面に沿って揺動するため、揺動に伴ってコイルが患者から大きく離れていくということがない又は殆どない。そのため、ローリング量またはピッチング量を調整しても、コイル装置のヨーイング角や高さを再調整する必要は最小限に抑えられる。
また、実施形態では、コイル22の動きを規定する3つの軸(図11に示すローリング軸220、ピッチング軸320、ヨーイング軸90)が一定の関係に配置されているので、コイルの最適位置を容易に決めることができる。以上のようにして決定された最適条件及び最適位置は、インジケータをもって記録される。なお、インジケータの値はそれが取り付けられた機構における移動部材又は回転部材の位置を示すものであるが、それらの値は同時にコイルの位置を示すことに他ならない。したがって、インジケータの値を頼りに移動部材又は回転部材を移動又は回転する行為は、コイルを移動又は回転することに相当する。したがって、その後の治療では、インジケータの値が最適値に一致するように各機構を調整するだけで、システム10を最適条件に再現でき、治療の都度に最適条件を時間をかけて探索する作業を要しない。また、一人の患者に対して得られたインジケータ最適値を利用することにより、他の患者に対する最適値を短時間で且つ簡単に得ることができる。さらに、同一機種のシステムについては同じ最適値を共通に利用できるので、例えば、病院のシステムで得られた最適値を別の病院又は家庭に設置したシステムでも利用することで、別の場所に設置されたシステムでも簡単に最適コイル条件を再現できる。
最適条件の再現性をさらに確実にするために、第1位置決め機構500を利用することにより、最適条件に設定されたシステム10に対して常に同じ状態に患者を誘導することが好ましい。そのために、準備作業として、システム10の昇降機構100、ローリング機構200、ピッチング機構300、ヨーイング・進退機構400、及び第2位置決め機構600が最適条件に設定されている状態で、第1位置決め機構500のセンサ502から出力される光を、椅子30に座っている患者に当てる。光を当てる部位は、患者の顔の表皮の動きによっても移動しにくい位置、例えば図22に示すように、患者の左右の耳たぶの背後が好ましい。次に、光が当たっている位置に形成された光スポット805と同じ又は異なる大きさ及び形状のマーキング800を、光スポット805と重なるように付ける。マーキング800は、マーキング用ペンで患者の皮膚に描いてもよいし、アートメークを施したり、適当なパッチ等を貼り付けてもよい。マーキング800の完了後、センサ502を起動し、患者のマーキングをめがけてセンサ502から光を当てるとともに、マーキング800と光スポット805が最も重なり合ったときの反射光をセンサ502で検出し、その反射光に含まれる情報(基準情報)を記憶する。基準情報は、マーキング800と光スポット805が最も重なり合ったときの情報に限らず、治療に支障がない程度に一定の割合以上の重なりを示す情報であってもよい。センサ502がカラーセンサの場合、記憶される基準情報はRGBの光成分比率である。また、センサ502が光量センサの場合、記憶される基準情報は受光量である。実施形態では、基準情報は、後に説明するコントローラ70の記憶部(記憶手段)71(図23参照)に記憶され、後に説明する誘導制御の中で基準値(基準RGB比率、基準受光量)として利用される。また、第1位置決め機構500のインジケータ531、532の値を読み取って記録する。なお、センサ502が記憶部を有する場合、基本情報は該センサ502の記憶部に記憶してもよい。
マーキング800は、左右どちらか一方又は両方を、患者頭部を側面から見た状態で頭部のほぼ中心から離れた位置に付することが、より精確な位置で患者頭部の位置を再現できるようになるため、好ましい。また、マーキング800は、左右それぞれ1つずつに限らず、複数設けても良い。複数設けることにより、位置合わせは複雑になるが、精度を上げるときに、患者頭部をより正確な位置に位置合わせすることが可能となる。
このように、患者位置決め機構(500、600、700)は、装着ユニット50に対して適正な位置に患者を誘導するもので、これにより、コイルに対して適正な位置に患者を位置決めできる。
6.2:磁気刺激治療
2回目以降の磁気刺激治療に際しては、まず上述のシステム条件決定作業(1回目の治療)で決定された最適条件にシステム10を設定する。最適条件の設定は、インジケータの値がそれぞれの最適値になるように、昇降機構100、ローリング機構200、ピッチング機構300、ヨーイング・進退機構400、第1位置決め機構500及び第2位置決め機構600を調整する。このように、位置表示機構(インジケータ)を有することによって、最適刺激位置に容易かつ再現性良く、コイルを再設定できる。したがって、筋電計や3次元計測システム等を使用する必要はない。
調整する機構の順序は任意であるが、最初に調整機構100、200、300、400を調整してシステム条件決定作業で決定された最適条件にコイルの位置を調整し、次に患者位置決め機構500、600、700を調整して患者を着座させ、最後に患者の位置を調整することが好ましい。
患者を適正位置に誘導するための、第1位置決め機構500では、図22に示すように、第1位置決め機構500のセンサ502から出射された光を患者に当てる。このとき、患者の姿勢が基準RGB比率又は基準受光量を決めたときの患者の姿勢と違う場合、例えば、患者が左右いずれの方向又は上下いずれかの方向に頭を傾けていれば、患者に当たった光スポット805はマーキング800に完全に又はほぼ重なることがなく、そのためにセンサ502が出力するRGB比率又は受光量が基準値とは相当違った値になる。
そこで、図24に示すように、センサ502は、患者からの反射光を受光し、受光した光に含まれる情報(比較情報)、すなわちRGB比率または受光量を検出し、それに相当する信号をコントローラ70に送信する(ステップ#1)。コントローラ70は、該コントローラ70の演算部72で、センサ502から受信した信号(比較情報)をもとに、マーキング800と光スポット805の重なり率を計算する(ステップ#2)。重なり率は、基準RGB比率または基準受光量(基準値)に対する、受光した光のRGB比率または受光量(比較値)の割合で表すことができる。なお、センサ502が演算部を有する場合、該センサの演算部で重なり率を計算してもよい。次に、コントローラ70は、重なり率が所定値(閾値)未満(所定値以下でもよい)、すなわち、光がマーキングに十分に重なっていなければ、図25に示すように、ディスプレイ504に重なり率が不十分である警告802を表示する(ステップ#3、4)。また、警告802を表示すると同時に、又は警告802を表示してから所定時間後(例えば、数秒後)に、コイル22に対する電源80からの電力供給を遮断してもよい(ステップ#5)。さらに、重なり率801を表示してもよい(ステップ#6)。
マーキング800から反射する光の量は、マーキングの材料に応じて異なる。具体的には、マーキングの反射率が患者の皮膚の反射率よりも高い場合、マーキング800に対する光スポット805の重なり率が低くなれば、受光量が減少する。逆に、マーキングの反射率が患者の皮膚の反射率よりも低い場合、マーキング800に対する光スポット805の重なり率が低くなれば、受光量が上昇する。そのため、皮膚よりも反射率が高い材料をマーキングに使用する場合、重なり率が高くなると受光量が上昇する。逆に、皮膚よりも反射率が低い材料をマーキングに使用する場合、重なり率が高くなると受光量が減少する。したがって、光量センサの出力を用いて重なり率を計算する場合、この重なり率と受光量の関係を考慮することが望ましい。
警告802は、文字による警告であってもよいし、特定の画像を点滅等させてもよい。ディスプレイ504に表示するだけでなく、または、ディスプレイ504に警告802を表示する代わりに、音声による警告や、振動によって行ってもよい。一方、重なり率が所定値以上、すなわち、光がほぼマーキングに一致している場合、警告が表示されることはなく、重なり率801をディスプレイ504に表示させてもよいし、特定の画像を点灯等させてもよく、また警告とは異なる音声等によって患者及び/又は操作者に知らせてもよい(ステップ#4)。
ディスプレイ504には、カメラ503が撮影する左右の画像803を同時に表示することが好ましい。これにより、患者は、ディスプレイ504に表示されたマーキング800と光スポット805を見ながら両者が重なるように頭を左右又は上下に動かすことによって、自分自身で頭を適正位置に位置させることができる。
以上のようにして、患者はシステムに対して、繰り返し最適治療位置に設定できる。また、治療中に患者が頭を動かして重なり率が所定値未満になると、そのことがディスプレイ504の表示又は音声等によって警告される。その場合、患者は、ディスプレイ504の表示を見ながら頭を動かすことによって自分自身で最適治療位置に復帰できる。したがって、治療開始時点で重なり率が所定値未満の場合、コイル21に対する通電を禁止できるだけでなく、治療中に患者が動いて重なり率が所定値未満になった場合でも、コイルへの通電を禁止できる。また、患者が動いたときは、移動後の状態がディスプレイに表示されるため、ディスプレイの表示を参考にして患者は自分自身で重なり率を適正状態に戻すことができる。
また、患者の頭がヘッドレスト601から離れた場合、ヘッドレスト601が前方に回転し、ヘッドレスト601の背後に設けたスイッチ622の状態が切り替わる。したがって、スイッチ622の出力を利用して、ヘッドレスト601が一定以上前方に位置すること、つまり患者の頭部がヘッドレスト601への適切な位置から離れたときを検出でき、このときコントローラ70はコイル装置20への電力の供給を遮断し、磁気刺激を中断できる。また、この際に患者に頭部がヘッドレストから離れたことを知らせるための、音や振動、発光、表示等を利用した警告手段(例えば、ディスプレイ504に「頭部非接触」等の文字810を表示する。)を有してもよい。なお、ヘッドレスト601に患者の頭が接触しているか否かの検出は、装着ユニット50の適当な箇所に光センサ又は圧力センサ等の適宜検出器を設け、その出力を利用して行ってもよい。
さらに、本発明の好適な実施形態は、昇降機構100において装着ユニット50を素早く上方に退避させることができ、その他の機構においては患者が動けなくなるような固定をしていないので、治療中のトラブル時や緊急時には、容易に素早く患者を本装置から退避させることが可能である。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、各機構におけるインジケータは、デジタル式またはアナログ式のいずれのインジケータであってもよい。例えば、実施形態のような目盛や、角度計、ポジションインジケータ、リニアエンコーダやポテンショメータ等の位置を表示する機構が挙げられる。また、インジケータは、コイル装置の最適位置を表示するために利用されるものであるため、その目的に叶うものであればどのような構成であってもよい。特に手動でシステム全体の可動機構の位置を再現する時に、可動機構の精確な位置を即座に確認できるインジケータを利用することが有用である。さらに、本発明は、可動機構を手動で操作して治療を行えるため、ロボットデバイスに比べて、複雑な制御は必要なく、より簡易的な構成となっている。ただし、使用者の要望に応じて、手動による可動機構の一部又は全体を電動化、あるいは自動制御化してもよい。
7.他の実施形態
上記実施形態は種々改変可能ある。
以上の説明では、重なり率が一つの所定値(閾値)を比較し、その比較結果に応じてシステムの状態を切り替えるものとしたが、二つまたはそれ以上の所定値(低閾値と高閾値)を設け、重なり率が低閾値以上で高閾値未満のときは警告のみを表示し、重なり率が低閾値未満のときは警告を発するとともに所定時間後または即座にコイルへの通電を停止するようにしてもよいし、または、重なり率が低閾値以上で高閾値未満のときは警告を表示するとともに所定時間後にコイルへの通電を停止し、重なり率が低閾値未満のときは警告を発するとともに即座にコイルへの通電を停止するようにしてもよい。
また、上記実施形態では第1位置決め機構500と第2位置決め機構600は筐体40に取り付けたが、これらのいずれか一方又は両方を椅子30に取り付けてもよい。この場合、まず患者を椅子に対して位置決めしたうえで、その後、このように位置決めされた患者に対してコイルを位置決めできる。
さらに、上記実施形態では、椅子に座った患者に対してコイルを位置決めしたが、患者を支持する機構は椅子に限るものでなく、例えばベッドのようなものであってもよい。
さらにまた、上記実施形態では、システムはコイルの位置調整機構(100、200、300、400)と患者位置決め機構(500、600、700)の両方を組み入れているが、別のコイルの位置調整機構、又は別の患者位置決め機構と適宜組み合わせて使用することも可能であるし、コイル位置調整機構又は患者位置決め機構における各機構を別の同様な作用を有する機構に置換してもよいし、コイルを患者頭部の最適位置に設定できる範囲で省略して使用することも可能である。
そして、以上の説明では、第1〜第5の機構の特定の形態を示したが、それら第1〜第5の機構は種々改変可能である。したがって、支持機構30に支持された患者の頭部に対してその前後方向に伸びる第1の軸(ローリング軸)を中心にコイルを左右に揺動させる機構はすべて第1の機構に含まれる。また、第1の機構に支持され、支持機構に支持された患者の頭部に対してその左右方向に伸びる第2の軸(ピッチング軸)を中心にコイルを前後に揺動させる機構はすべて第2の機構に含まれる。さらに、第2の機構に支持され、第1の軸から放射方向に伸びる第3の軸を中心にコイルを回転させる機構はすべて第3の機構にふくまれる。さらにまた、コイルを第3の軸に沿って移動させる機構はすべて第4の機構に含まれる。そして、第1の機構を患者に対して接離させる機構はすべて第5の機構に含まれる。
10:システム
20:コイル装置
21:コイルケーシング
22:コイル
23:ケーシング面(頭部接触面)
30:椅子(支持機構)
31:座部
32:脚部
33:背もたれ部
34:肘掛け
40:筐体(ハウジング)
41:フレーム
42:パネル
43:前フレーム部分
50:装着ユニット
70:コントローラ
71:記憶部
72:演算部
80:電源
90:コイル中心軸(第3の軸)
100:昇降機構(第5の機構)
101:ガイドレール(ガイド)
102:下段キャリッジ
103:上段キャリッジ
104:移動機構
105:ねじ軸
106、107:軸受
108:ハンドル
109:ナット
110:ロック機構(下段キャリッジロック機構)
111:インジケータ
112:プーリ
113:定荷重ばね
114:ロック機構(上段キャリッジロック機構)
115:係合部
116:被係合部
117:開口
118、119:シャッタ
120:取っ手
130:ばね機構
200:ローリング機構(第1の機構)
201:ブラケット
202:固定フレーム
203:ローリングシャフト
204:ロック機構(ローリングシャフトロック機構)
205:前ロールプレート
206:後ロールプレート
207:前ハンドル
208:後ハンドル
209:ブラケット
210:連結シャフト
211:引張コイルばね
212:フリクションプレート
213:突起部
214:定荷重ばね機構
215:回転板
216:コイルばね
217:ワイヤ
218:インジケータ
220:第1の軸
300:ピッチング機構(第2の機構)
301:アーム
302:ガイドレール
303:ピッチングフレーム(ピッチングプレート)
304:ストッパ
305:連結部材
306:ブレーキプレート
307、308:コイルばね
309、310:ブレーキパッド
311、312:ブレーキ解除ハンドル
313、314:ロック機構
315:目盛(インジケータ)
316:目盛指示板(インジケータ)
317:連結部材
320:第2の軸
400:ヨーイング・進退機構(第3の機構、第4の機構)
401:位置決めプレート
402:ヨーイングブロック
403:ヨーイングシャフト
404:目盛支持ブロック
405:目盛板(インジケータ)
406:目盛指示部(インジケータ)
407:穴
408:インデックスプランジャ
410:上突出部
411:下突出部
412:垂直ガイド部
413:支持ブロック
415:水平連結部
416:ねじ軸
417:被ガイド部
418:垂直面
419:上突出部
420:下突出部
422:摘まみ
423:インジケータ
424:ロック機構
425:ストッパ
500:第1位置決め機構
502:センサ
503:カメラ
504:ディスプレイ
505:ケーシング
506:垂直移動機構
507:水平(前後)移動機構
510:基板
511:カバー
512:プーリ
513:ベルト
514:歯車
515:歯車
516:操作摘まみ
517:ガイド部
518:連結部材
520:基板
521:カバー
522:プーリ
523:ベルト
524:歯車
525:歯車
526:操作摘まみ
527:ガイド部
528:キャリッジ
529:開口
531、532:インジケータ
533、534:ロック機構
600:第2位置決め機構
600:第2位置決め機構
601:ヘッドレスト
610:水平(前後)移動機構
611:垂直移動機構
612:ブラケット
613:固定ブロック
614:水平(前後)移動ブロック
615:ねじ軸(水平(前後)方向)
616:ねじ軸(垂直方向)
617:昇降ブロック
618:基板
619:摘まみ
620:摘まみ
621:シャフト
622:スイッチ
625、626:インジケータ
627、628:ロック機構
700:第3位置決め機構
701:ポスト
702:水平アーム
703:チンレスト
800:マーキング(特定部)
801:重なり率
802:警告
803、804:画像
805:光スポット
810:表示

Claims (13)

  1. 経頭蓋磁気刺激システム(1)において、
    患者の頭部に光スポット(805)を照射するとともに前記光スポット(805)の反射光を検出する光デバイス(502)と、
    患者に付されたマーキング(800)と患者に照射された光スポット(805)が重なり合った状態で前記光デバイス(502)が検出した前記反射光に含まれる情報を基準情報として記憶する記憶手段(71)と、
    前記記憶手段(71)に前記基準情報が記憶されている状態で、患者に照射された前記光スポット(805)の反射光に含まれる比較情報と、前記記憶手段に記憶されている基準情報をもとに、前記マーキング(800)と前記比較情報に対応する前記光スポット(805)との重なり率を計算する手段(ステップ#2)と、
    前記重なり率を表示する手段(ステップ#5、504)を備えていることを特徴とする経頭蓋磁気刺激システム。
  2. 前記基準情報と前記比較情報は、前記反射光に含まれる単数又は複数の光成分の比率であることを特徴とする請求項1の経頭蓋磁気刺激システム。
  3. 前記基準情報と前記比較情報は、前記反射光の光量であることを特徴とする請求項1の経頭蓋磁気刺激システム。
  4. 前記患者に照射された光スポット(805)を前記マーキング(800)と共に撮影するカメラ(503)と、
    前記カメラ(503)で撮影された画像を表示する手段(504)を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの経頭蓋磁気刺激システム。
  5. 前記重なり率が予め決められた所定値未満の場合、警告を発する手段(ステップ#4、802)を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの経頭蓋磁気刺激システム。
  6. 前記経頭蓋磁気刺激システムが磁気刺激コイルを備えており、
    前記重なり率が予め決められた所定値未満の場合、前記磁気刺激コイルへの電力の供給を停止する手段(ステップ#6、802)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの経頭蓋磁気刺激システム。
  7. 前記光デバイスは、患者の左右側頭部のそれぞれに、1つまたは複数付されたマーキングを検出することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかの経頭蓋磁気刺激システム。
  8. 患者の頭部を支持する頭部支持機構と、
    患者の頭部が前記頭部支持機構に接触していることを検出する頭部検出機構とを備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの経頭蓋磁気刺激システム。
  9. 前記頭部支持機構は、患者の後頭部を支持するヘッドレスト(601)であることを特徴とする、請求項8の経頭蓋磁気刺激システム。
  10. 前記ヘッドレスト(601)を、患者の頭部に向けて前進した前進位置と該前進位置から後方に後退した後退位置との間を移動できるように支持する支持機構(621)と、
    前記ヘッドレスト(601)を前記後退位置から前記前進位置に向けて付勢する付勢機構(640)とを備えていることを特徴とする請求項9の経頭蓋磁気刺激システム。
  11. 前記頭部検出機構は、頭部が接触しているか否かを検出する検出手段(650)と、
    前記検出手段(650)が、頭部が接触していないことを検出した場合、警告を発する警告手段(810)を有する、請求項8又は9の経頭蓋磁気刺激システム。
  12. 前記ヘッドレスト(601)の患者に対向する面(630)は、接触する患者頭部の表面形状に対応した形状を備えていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかの経頭蓋磁気刺激システム。
  13. 患者の顎を支持するチンレスト(703)を有する、請求項1〜12のいずれかの経頭蓋磁気刺激システム。
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