<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態による電動工具について図1乃至図11に基づき説明する。図1に示される電動工具である電動丸鋸1は、鋸刃8を回転可能に支持するハウジング2と、ベース3とを備えており、ベース3を被加工材に摺動させて鋸刃8の回転により被加工材を切断する工具である。説明の便宜のため、図1において、図中に示す前を前方向、後を後方向、上を上方向、下を下方向と定義し、後方向から見て右を右方向と定義し、左を左方向と定義する(図1の紙面手前が右方向、紙面奥が左方向)。
図1に示すように、ハウジング2は、ベース3に対して左右に傾動可能に設けられている。ベース3は、例えばアルミ等の金属製の板形状の部材である。ベース3には上下方向に貫通し前後方向に延びる図示せぬ孔が形成されており、図示せぬ孔は鋸刃8の進入を許容している。ベース3の長手方向(前後方向)は切断方向と一致する。
ハウジング2は、本体ハウジング21と、ハンドル部22と、ソーカバー23と、モータハウジング24(図2)とを備えている。図2に示すように、ソーカバー23は、本体ハウジング21の右側に設けられ、モータハウジング24は、本体ハウジング21より左側に突出している。本体ハウジング21は、例えば樹脂製であり、鋸刃8を回転可能に支持している。モータハウジング24はモータ4と、制御基板6とを収容している。
図1に示すように鋸刃8は、円板形状をなし、本体ハウジング21の右側において回転可能に設けられており、モータ4の回転により回転駆動される。
図1、3に示すように、ハンドル部22は、ユーザが電動丸鋸1を使用する際に把持する部分であり、モータハウジング24の上方において前後方向に延びている。またハンドル部22には、モータ4の駆動を制御するためのトリガ22Aが設けられている。トリガ22Aは、ハウジング2内部において制御基板6と電気的に接続されており、ユーザがトリガ22Aを上方に押し込むことによってモータ4を始動させる始動信号を制御基板6に出力する。
図1に示すように、ソーカバー23は、例えば金属製であり、鋸刃8の外縁に沿う側面視円弧形状をなしており、本体ハウジング21の右側に設けられて鋸刃8の上側の略半分を覆っている。またソーカバー23は、保護カバー23Aを備えている。保護カバー23Aは、例えば樹脂製であり、鋸刃8の外縁に沿って回動可能に設けられている。切断作業を行っていない状態では、保護カバー23Aは鋸刃8の前方の一部を除いた周端の下側半分(ベース3から下方に突出する部分)を覆っている。
図2は、電動丸鋸1の平面図であり、本体ハウジング21の一部と、モータハウジング24の一部とを省略し、ハウジング2の内部構造を示している。モータハウジング24は、例えば樹脂製であり、内部にはモータ4を収容するモータ収容室21bと、制御基板6を収容する制御基板収容室21cと、ファン43Aを収容する収容室21aが画成されている。より詳細には、モータハウジング24は、底壁24B(図3)と、吸気口31aと排気口31bとが形成された左壁24Lと、備えている。モータハウジング24の内部には、内壁27と、仕切壁28とが設けられている。内壁27は、鋸刃8の右側において前後方向に延び、その後端部において左側に延びて左壁24Lと接続している。仕切壁28は、前後方向において、吸気口31aと、排気口31bとの間に設けられている。仕切壁28は、左壁24Lに接続され、左壁24Lから内壁27の左側の所定の位置まで右方向に延出している。つまり、仕切壁28は内壁27から左右方向に間隔を設けて配置されている。モータハウジング24と、内壁27と、仕切壁28とによって、本体ハウジングに各収容室(収容室21a、モータ収容室21b、制御基板収容室21c)が画成されている。制御基板6は供給回路の一例である。
モータ4と、ファン43Aとは、仕切壁28の前方に配置され、基板ケース71は、仕切壁28の後方に配置されている。基板ケース71は制御基板6を収容しており、制御基板収容室21cに配置されている。図2の矢印で示されるように、モータハウジング24と、内壁27と仕切壁28とによって、吸気口31aから排気口31bに至る風路P1が形成されている。吸気口31aはモータ収容室21bと外部とを連通するように設けられ、排気口31bは制御基板収容室21cと外部とを連通するように設けられる。ここで、ファン43Aは遠心ファンである。ファン43Aが回転することにより、冷却風が吸気口31aから排気口31bに向かって流れる。具体的には、風路P1は、略コ字形状であり、吸気口31aからファン43Aまでは右方向に延び、ファン43Aから基板ケース71(制御基板6)までは後方向に延び、基板ケース71(制御基板6)から排気口31bまでは左方向に延びている。言い換えれば、風路P1上には、冷却風の流れる方向の上流から下流に向かって、モータ4、ファン43A、基板ケース71(制御基板6)が、この順序で配置されている。吸気口31aと排気口31bとは、ファン43Aの上下方向の高さと一致する。即ち、吸気口31aと排気口31bとは、ファン43Aと上下方向に関して重なる領域を有している。風路P1は、風路または第1風路の一例である。
基板ケース71は、金属などの熱伝導率の高い物質で構成されている。図4(A)、4(B)に示すように、基板ケース71は、上方が解放された箱状に形成されており、固定壁71F(図3)と、固定壁71Fの外周に設けられた側壁71Sとを備えている。図3に示すように、基板ケース71は、内部に制御基板6を収容している。基板ケース71は、モータハウジング24の内側において、リブ72を介して当該モータハウジング24(制御基板収容室21c)の底壁24Bに固定されている。即ち、固定壁71Fは、モータハウジング24の底壁24Bと間隔を隔てて配置されている。これにより、冷却風が基板ケース71とモータハウジング24との間を通過することができ、基板ケース71の上下を冷却風が通る構成とすることで効率よく冷却することができる。
図2に示すように、電動丸鋸1は、一例として100V、50Hzの商用交流電源に接続可能な電源コード30を備えている。電源コード30は、モータハウジング24の後部左側から後方に延出している。電源コード30は、商用交流電源500に接続可能に構成されている。電源コード30は、制御基板6に電気的に接続されており、商用交流電源500の電力は電源コード30及び制御基板6を介してモータ4に供給される。
図5に示すようにモータ4は、ステータ41と、ロータ42とを備える3相ブラシレスDCモータである。ステータ41はスター結線された3相のコイルU、V、Wを備えている。コイルU、V、Wはそれぞれ制御基板6に接続されている。ロータ42はN極、S極を1組とした永久磁石を2組備えている。永久磁石に対向する位置にはホール素子42Aが配置されている。ホール素子42Aは、ロータ42の位置信号を制御基板6に出力している。
図2に示す回転軸43は、ロータ42の回転中心に接続されており、ロータ42と一体に回転する。回転軸43は、左右方向に延びており、モータハウジング24に回転可能に支持されている。また、回転軸43は、ファン43Aの回転中心と接続されている。従って、ファン43Aは、モータ4と同軸に回転可能である。回転軸43が回転駆動されることで、ファン43Aが回転して、冷却風が発生する。冷却風が、モータ4及び制御基板6の近傍を通過することにより、モータ4及び制御基板6を冷却する。上述のようにファン43Aは遠心ファンである。回転軸43は図示せぬ減速機構を介して鋸刃8に接続されている。鋸刃8は、回転軸43の回転駆動によって回転する。
図5に示すように制御基板6は、整流平滑部61と、スイッチング部62と、電流検出抵抗91と、制御部64とを備えている。整流平滑部61は、ダイオードブリッジ61Aと、並列接続された2つの平滑コンデンサ61B(以下、単にコンデンサ61Bと示す)とを備え、商用交流電源500及びスイッチング部62のそれぞれに接続されている。ダイオードブリッジ61A、スイッチング部62は、それぞれ、整流回路、スイッチング回路の一例である。なお、コンデンサ61Bは電解コンデンサである。
図3に示すように、ダイオードブリッジ61Aと、2つのコンデンサ61Bとは、制御基板6の表の面(上側)に搭載され、スイッチング部62は、制御基板6の裏面(下側)に搭載されている。図4(A)、4(B)に示すように、コンデンサ61Bと制御基板6との間に充填剤81が充填されている。コンデンサ61Bは、充填剤81により制御基板6および基板ケース71に対して位置決めされている。ダイオードブリッジ61Aは、前部に長方形のヒートシンクを有しており、ダイオードブリッジ61Aで発生した熱はヒートシンクによって放熱される。スイッチング部62は、ヒートシンク63の下方に配置され、ヒートシンク63と固定壁71Fに接触している。これにより、スイッチング部62で発生した熱がヒートシンク63と基板ケース71に伝導する。上述のように、冷却風は、基板ケース71とモータハウジング24との間を通過することができるため、基板ケース71は冷却風によって効率よく冷却される。尚、制御部64は、例えば、ヒートシンク63と、制御基板6との間に、ヒートシンク63と接触して設けられている。このような構成によれば、制御部64で発生した熱もヒートシンク63により放熱される。
各コンデンサ61Bは、母線が長手方向となる略円筒形状を有している。図2に示すように、コンデンサ61Bは、その長手方向が左右方向に延びるように配置されている。言い換えれば、コンデンサ61Bは、その長手方向が冷却風の流れる方向の上流から下流にかけて延出している。コンデンサ61Bは、制御基板6における冷却風の流れる方向の端部に隣接して設けられており、長手方向に沿った冷却風によって効率的に冷却される。
図5に示すように、ダイオードブリッジ61Aは、商用交流電源500から入力された交流電圧を全波整流している。コンデンサ61Bは、全波整流された電圧を平滑化してスイッチング部62に出力している。
2つのコンデンサ61Bは、商用交流電源500の入力線と出力線との間に並列に接続されている。尚、コンデンサ61Bの数は2つに限定されず、並列に接続されたコンデンサ61Bの静電容量の総和が、後述の所定の静電容量(例えば1050マイクロファラッド)以上であれば、3つ以上でもよい。あるいは、単一のコンデンサ61Bの静電容量が、当該所定の静電容量以上であれば、コンデンサ61Bは1つだけでもよい。但し、複数のコンデンサ61Bが設けられている場合には、単一のコンデンサ61Bが設けられている場合よりも、1つのコンデンサの大きさを小さくすることができる。これにより、複数の小さいスペースに、それぞれのコンデンサ61Bを配列することができる。以下では、静電容量を単に容量と表現する。
スイッチング部62は、6個のFETQ1〜Q6が組み込まれたスイッチング回路である。6個のFETQ1〜Q6は、3相ブリッジ形式に接続されている。6個のFETQ1〜Q6の各ゲートは制御部64に接続され、6個のFETQ1〜Q6の各ドレイン又は各ソースは、スター結線されたコイルU、V、Wに接続されている。6個のFETQ1〜Q6は、制御部64から入力された駆動信号によってオン/オフを繰り返すスイッチング動作を行い、整流平滑部61によって全波整流された直流電圧を3相電圧としてコイルU、V、Wに供給する。FETQ1〜Q6はスイッチング回路に相当する。スイッチング部62は、FETQ1〜Q6の代わりに、6個の絶縁ゲートバイポーラトランジスタが用いられても良い。スイッチング部62は、駆動電圧をモータ4へ印加する。
電流検出抵抗91は、モータ4に流れる電流を検出するための抵抗であり、整流平滑部61とスイッチング部62との間に接続されている。
制御部64は、電流検出回路64Aと、回転子位置検出回路64Bと、駆動信号出力部64Dと、演算部64Eとを備えている。電流検出回路64Aは、電流検出抵抗91の電圧降下値を取り込んで演算部64Eに出力している。回転子位置検出回路64Bは、モータ4のホール素子42Aから入力されたロータ42の位置信号を演算部64Eに出力している。駆動信号出力部64Dは、6個のFETQ1〜Q6の各ゲートに接続され、演算部64Eから入力される駆動信号に基づいて6個のFETQ1〜Q6の各ゲートに電圧を印加している。6個のFETQ1〜Q6のうち、ゲートに電圧が印加されたFETはオン状態となりモータ4への通電を許容し、ゲートに電圧が印加されていないFETはオフ状態となりモータ4への通電を遮断する。
演算部64Eは、処理プログラムとデータに基づいて駆動信号を出力するための図示せぬ中央処理装置(CPU)と、処理プログラム、制御データ、各種閾値等を記憶するための図示せぬROMと、データを一時記憶するための図示せぬRAMと、を備えている。また演算部64Eは、回転子位置検出回路64Bから入力されたロータ42の位置信号に基づいて、所定のFETQ1〜Q6を交互にスイッチングするための制御信号を生成し、その制御信号を駆動信号出力部64Dに出力する。これによってコイルU、V、Wのうちの所定のコイルに交互に通電し、ロータ42を所定の回転方向に回転させる。この場合、負電源側に接続されているFETQ4〜Q6に出力する駆動信号は、パルス幅変調信号(PWM信号)として出力される。
制御部64は、デューティ比を設定し、設定したデューティ比のPWM信号をFETQ4〜Q6に出力して、FETQ4〜Q6を高速でオン/オフさせている。このように、FETQ4〜Q6をオン/オフさせることにより、制御部64は、モータ4への電力供給量(より具体的には駆動電圧がモータ4に印加されている期間)を調整し、モータ4の回転数(回転速度)を制御する。PWM信号は、スイッチング周期(所定時間)におけるFETをオンさせる期間、即ち、信号出力時間(パルス幅)を変更することができる信号である。デューティ比は、スイッチング周期(所定時間)における信号出力時間の占める割合である。制御部64は、デューティ比を変化させ、FETQ4〜Q6のスイッチング周期におけるオン時間を変化させることで、モータ4への電力供給量を変化させる。言い換えれば、制御部64は、デューティ比を変化させることで、駆動電圧がモータ4へ印加される期間を調整している。演算部64Eは、トリガ22Aからの始動信号に基づいてモータ4の起動/停止を制御している。
モータ4に供給される電力は、回転子位置検出回路64Bから入力されるロータ42の位置信号から算出されたモータ4の回転数と目標回転数とを比較した結果に基づいて決定され、モータ4の回転数が目標回転数となるように調整される。本実施例の場合、減速機構によって減速された鋸刃8の回転数が4100rpmとなるように調整される。このように、制御部64はモータ4の回転数が目標回転数となる定回転数制御を実行可能である。
本実施の形態では、演算部64Eは、所定の範囲内でデューティ比を変更する。本実施の形態では、所定の範囲は10%〜100%である。所定の範囲はこれに限定されず、例えば5%〜90%などであってもよい。演算部64Eは、駆動信号出力部64Dが設定したデューティ比のPWM信号を対応するFETQ4〜Q6に出力するように制御を行い、モータ4が目標回転数で回転するように制御する定回転数制御を実行する。鋸刃8に所定以上の負荷がかかると、デューティ比を上限値(本実施の形態では100%)に設定してもモータ4を目標回転数に維持することができず、回転数が低下する。この場合には、演算部64Eは、デューティ比を上限値に固定し続ける動作を実行する。尚、鋸刃8にかかる負荷が増加すると、モータ4の誘起電圧が低下するため、モータ4に流れる電流が増加する。本実施の形態では、モータ4に流れる実効電流が6Aまでは定回転数制御を行う。鋸刃8にかかる負荷の増加に従ってモータ4に流れる電流が6Aを超えると、所定の範囲におけるデューティ比の最大値を維持しながら、モータ4の回転数が低下する。演算部64Eは、電流検出回路64Aの検出結果に基づいて、モータ4に流れる電流量を監視している。モータ4に流れる電流が過電流閾値(本実施の形態では18A)以上になると、演算部64Eは、FETQ4〜Q6をオフにして、スイッチング部62がモータ4に駆動電圧を印加するのを停止させる。
図6(A)は、鋸刃8にかかる負荷(あるいはモータ4にかかる負荷、以下同じ)が一定で、かつ、定回転数制御を行っている場合の本願のモータ4に印加される駆動電圧V1を示したグラフである。図6(A)の横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。また、整流平滑部61にコンデンサ61Bが設けられていない場合の仮想的な駆動電圧V2(以下仮想電圧V2)を点線で示し、モータ4が目標回転数で回転しているときのモータ4の誘起電圧V3を一点鎖線で示している。
仮想電圧V2は、交流電圧を全波整流した電圧に略等しく、所定の周期で電圧値が0になる。仮に、モータ4が目標回転数で回転している状態で仮想電圧V2がモータ4に印加された場合には、期間T1において、仮想電圧V2が誘起電圧V3以下になり、モータ4へ電流が流れない。このため、モータ4の回転を目標回転数に維持できなくなり、鋸刃8の回転も一定に維持できなくなる。この状態で、被加工材を切断した場合には、切断面の切れ肌が不均一になってしまう。以下の説明では、仮想電圧V2の期間T1のように、駆動電圧が誘起電圧より低くなりモータ4に電流が流れない印加されない期間を無通電期間と呼ぶ。
図6(B)は、容量の小さい平滑コンデンサを搭載した比較例の電動丸鋸の駆動電圧Vc1を示している。平滑コンデンサによって駆動電圧Vc1の最小電圧は0以上になるが、平滑コンデンサの容量が小さいため、期間T2は駆動電圧V1が誘起電圧V3以下になる無通電期間となる。無通電期間T2は、無通電期間T1より短くなるものの、依然として存在している。
本実施の形態では、コンデンサ61Bの総容量を十分に大きい量にしている。そのため図6(A)に示すように、駆動電圧V1は常に誘起電圧V3以上となり、無通電期間は駆動電圧V1に存在しない。即ち、本実施の形態の電動丸鋸1は、駆動電圧V1が、常に誘起電圧V3以上になるような総容量のコンデンサ61Bを備えている。言い換えれば、総容量は、駆動電圧V1が常に誘起電圧V3以上になるような所定の容量に設定されている。本実施の形態では所定の容量は1050マイクロファラッド以上の値に設定される。
図6(A)は鋸刃8にかかる負荷が一定の場合(なおかつ定回転数制御を行っている場合)について説明した。次に、図7を用いて、鋸刃にかかる負荷が変化する場合における説明する。図7は、モータ4に流れる実効電流(A)(横軸)に対する、モータで発生するトルク(縦軸)と、モータ4の回転数(縦軸)と、モータ4で発生する誘起電圧(縦軸)との関係を示している。尚、図7のグラフは、モータで発生するトルクと、モータの回転数と、モータで発生する誘起電圧とを説明するものである。尚、実際には、コンデンサ61Bの総容量を変化させると、トルクと、回転数と、誘起電圧とは図7に示すグラフから変動する。しかし、ここでは、トルクと、回転数と、誘起電圧との傾向を説明することが目的であるため、これらの変動については詳細を記載していない。尚、以下では実効電流を単に電流と呼ぶ。
図7のトルクは、鋸刃8にかかる負荷(あるいは、モータ4にかかる負荷)の増加とともに増加する。図7に示すように、定回転数制御は、モータ4に流れる実効電流が6A以下で行われている。定回転数制御を行っているとき、鋸刃8にかかる負荷が増加すると、制御部はデューティ比を増加させる。これにより、モータ4に流れる電流が増加する。モータ4に流れる電流が増加するとトルクが増加する。尚、定回転数制御において、モータ4で発生する誘起電圧は略一定である。このように、定回転数制御において、モータ4に流れる電流量は、鋸刃8にかかる負荷(モータ4が発生するトルク)に応じて変化する。
図7における電流が6Aよりも大きい範囲では、モータ4の回転数が徐々に低下している。即ち、この範囲では定回転数制御が行われていない。即ち、この範囲において、デューティ比は最大値(本実施の形態では100パーセント)に設定されているが、鋸刃8にかかる負荷が増加しているため、モータ4の回転数が低下する。このように回転数が低下すると、誘起電圧も低下する。誘起電圧が低下すると、モータ4に流れる電流が増加する。このように、定回転数制御が維持できない範囲(図7において電流が6Aより大きい範囲)においてモータ4の回転数が低下すると、モータ4に流れる電流量が増加する。
以上より、総容量を決定する際には、鋸刃8にかかる負荷(言い換えれば、モータ4が発生するトルク、あるいは、モータ4に流れる電流量)が一定のときの無通電期間の有無について調べるだけでは足りず、当該負荷を変化させたときの無通電期間の有無について調べる必要がある。そのため、本実施の形態のコンデンサ61Bは、以下の2つの条件を満たすように決定される。第1の条件は、定回転数制御が実行されているとき、駆動電圧が常にモータ4で発生した誘起電圧以上になるような総容量を有することである。第2の条件は、定回転数制御が維持できない範囲において、コンデンサ61Bは、モータ4に流れる電流が過電流閾値(最大許容電流値)以下のとき、駆動電圧が常に誘起電圧以上になるような総容量を有することである。
具体的には、総容量は以下のような実験に基づいて決定される。まず、複数の電動丸鋸を用意する。各電動丸鋸は、上記の電動丸鋸1と同じ構成であり、コンデンサの総容量が互いに異なる。ここでは、5つの電動丸鋸についての例を説明する。5つの電動丸鋸に搭載されるコンデンサの総容量は、それぞれ、400、500、600、1050、1400マイクロファラッドである。この5つの電動丸鋸の鋸刃に負荷をかけていき、それぞれの負荷での駆動電圧を測定する。図8〜11は、測定した駆動電圧を示しており、それぞれ、モータに流れる電流が4A、6A、12A、18Aのときの結果を示している。モータに流れる電流が、4A、6A、12A、18Aの順で鋸刃8にかかる負荷が増加している。図8〜11において、縦軸は電圧(V)を示し、横軸は時間(s)を示している。図8〜11では、商用交流電源500を全波整流したときの電圧、および、モータ4で発生する誘起電圧も記載している。
図8は、モータに流れる電流が4Aのときの定回転数制御における駆動電圧を示している。この場合には、総容量が300マイクロファラッド以上であれば、無通電期間は存在しない。従って、5つの電動丸鋸の駆動電圧は、何れも常に誘起電圧以上になる。言い換えれば、総容量が、400、500、600、1050、1400マイクロファラッドの何れの場合でも、駆動電圧は常にモータの誘起電圧以上になる。
図9は、モータに流れる電流が6Aの時の定回転数制御における駆動電圧を示している。ここで、6Aは、定回転数制御においてモータに流れる電流の最大値であり、鋸刃にかかる負荷が、定回転数制御の範囲において最大のときの電流量である。この場合には、総容量が500マイクロファラッド以上であれば、駆動電圧は、常に誘起電圧以上である。従って、総容量が400マイクロファラッドの場合には、無通電期間が存在しているが、総容量が、500、600、1050、1400マイクロファラッドであれば駆動電圧は常にモータの誘起電圧以上になる。
図10は、モータに流れる電流が12Aの時の駆動電圧を記載している。図7に示すように、モータに流れる電流が12Aのとき、デューティ比は最大値(100パーセント)に設定されているが、モータは、目標回転数を維持できず、目標回転数未満で回転する。モータの回転数の低下に伴い誘起電圧が、定回転数制御のときより低下している。この場合には、総容量が400、500、600マイクロファラッドの場合には無通電期間が存在するが、総容量が、1050、1400マイクロファラッドであれば駆動電圧は常にモータの誘起電圧以上になる。
図11は、モータに流れる電流が過電流閾値に一致する18Aの時の駆動電圧を記載している。この場合には、デューティ比が最大値(100パーセント)に設定されているが、モータは、目標回転数未満であって、図10のときの回転数より低い回転数で回転する。モータの回転数の低下に伴い誘起電圧がさらに低下し、モータに流れる電流が増加している。この場合には、総容量が1050マイクロファラッド以上であれば、駆動電圧は常に誘起電圧以上である。従って、総容量が600マイクロファラッド以下の場合には、無通電期間が存在するが、総容量が、1050、1400マイクロファラッドであれば駆動電圧は常にモータの誘起電圧以上になる。尚、図11では、総容量が400、および、500マイクロファラッドの電動丸鋸の駆動電圧については記載していない。
図12は、以上の実験結果をまとめたグラフである。図12において実線で示す5つの曲線は、それぞれ、上記の5つの電動丸鋸に関する駆動電圧に関するものである。詳細には、図12の実線で示す5本の曲線は、それぞれの総容量について、図8〜11の実験の結果における最小の駆動電圧(駆動電圧最小値)、つまり放電後の電圧を示している。例えば、図12の総容量400マイクロファラッドのコンデンサに関する駆動電圧において、電流量が4Aのときの駆動電圧最小値は、約70Vであり、図8の400マイクロファラッドのコンデンサにおける時刻約0.007秒の時の電圧値を示している。尚、図12には、参考のためにモータ4の回転数、モータ4で発生する誘起電圧、モータ4が発生するトルクについても記載している。但し、モータ4の回転数、モータ4が発生するトルクの数値については記載せず、電流に対する傾向のみを示している。
以上の実験結果より、まず、図12に示すように、定回転数制御が行われているとき(電流量が6A以下のとき)、何れの駆動電圧の曲線も、電流量の増加に伴って低下していることがわかる。言い換えれば、必要とされるコンデンサ61Bの総容量は、鋸刃8にかかる負荷の増加(即ち、トルクの増加、あるいは、モータに流れる電流量の増加)に伴って増加する。そのため、モータに流れる電流が6Aの時の結果から、500マイクロファラッドが、定回転数制御が実行されているとき、駆動電圧が常にモータで発生する誘起電圧以上になるような総容量として決定される。言い換えれば、定回転数制御における最大電流(6A)のとき駆動電圧が常にモータで発生する駆動電圧以上になるような総容量を決定すれば、定回転数制御が実行されているとき、駆動電圧が常にモータで発生する誘起電圧以上になるような総容量となる。
上述のように電流量が6A以上の区間では定回転数制御が行われていない。図12に示すように、この区間においても、何れの駆動電圧の曲線も電流量の増加に伴って低下していることがわかる。言い換えれば、必要とされるコンデンサ61Bの総容量は、鋸刃8にかかる負荷の増加(即ち、トルクの増加、あるいは、モータに流れる電流量の増加)に伴って増加する。そのため、モータに流れる電流が過電流閾値(最大許容電流値)以下のとき、駆動電圧が常に誘起電圧以上になるような総容量を決定するためには、モータに流れる電流が過電流閾値(最大許容電流値)のときの結果を用いればよい。言い換えれば、モータに流れる電流が過電流閾値のとき、駆動電圧が常に誘起電圧以上になるような総容量を決定すれば、その総容量は、過電流閾値(最大許容電流値)以下のとき、駆動電圧が常に誘起電圧以上になるような総容量である。即ち、1050マイクロファラッドが、モータに流れる電流が過電流閾値(最大許容電流値)以下のとき、駆動電圧が常に誘起電圧以上になるような総容量として決定される。
以上より、電動丸鋸1に搭載するコンデンサ61Bの総容量は、本実施の形態では、1050マイクロファラッドとしたが、それ以上でも良い。
本実施の形態における電動丸鋸1によれば、コンデンサ61Bは、定回転数制御が実行されているとき、駆動電圧が常にモータ4で発生した誘起電圧以上になるような総容量を有している。定回転数制御において、駆動電圧が誘起電圧未満になると、モータ4の回転数を一定にすることができなくなり、モータ4の回転数が不安定になる。回転数が不安定な状態のモータ4を用いて被加工材を切断すると、被加工材の切断面に切れ肌が不均一になる。本実施の形態の電動丸鋸1は、駆動電圧が常に誘起電圧以上であるため、モータ4の回転数が安定しており、従って、切断面の切れ肌が不均一になることを抑制することができる。
また、本実施の形態における電動丸鋸1によれば、コンデンサ61Bは、モータ4に流れる電流が最大許容電流値以下のとき、駆動電圧が常に誘起電圧以上になるような容量を有している。このため、鋸刃8にかかる負荷が増加してもモータ4の回転数が不安定になる。そのため、被加工材を切断するあらゆる状況で切断面の切れ肌が不均一になるのを抑制することができる。
尚、上述のように本実施の形態において、1050マイクロファラッドが、上記第1の条件および第2の条件を満たす総容量の下限値として決定された。従って、コンデンサ61Bの総容量を1050マイクロファラッド以上の任意の容量に設定することが可能であるが、総容量が大きくなりすぎるとコンデンサ61Bのサイズが大きくなる。コンデンサ61Bのサイズが大きくなればなるほど、電動丸鋸1にコンデンサ61Bを収納することが難しくなる。本実施の形態では、上記のように必要となる総容量の下限値を特定し、その下限値もしくは下限値近傍の値に総容量を決定することで、コンデンサ61Bの総容量を過剰に大きくすることを抑制することができる。そのため、コンデンサ61Bのサイズをいたずらに大きくすることを抑制することができる。
本実施の形態におけるコンデンサ61Bの容量は大きいため、コンデンサ61Bの冷却を十分に行う必要がある。本実施の形態では、コンデンサ61Bは、その長手方向が冷却風の流れる方向の上流から下流にかけて延出している。このため、コンデンサ61Bを効果的に冷却することができる。
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の電動丸鋸101は、基板ケース71の配置を除き第1の実施の形態の電動丸鋸1と同じである。よって、基板ケース71の配置についてのみ説明する。
図13に示すように、モータハウジング24は、前方向に上方に傾斜して延出する傾斜壁24Tを有している。傾斜壁24Tは底壁24Bの上側に設けられている。基板ケース71は、リブ72を介して、固定壁71Fが傾斜壁24Tに沿うように傾斜壁24Tの上側に固定されている。基板ケース71の固定壁71Fは制御基板6と平行である。従って、制御基板6も傾斜壁24Tに沿って配置されている。
上述のように、ファン43Aは遠心ファンである。ファン43Aは、モータ4の回転軸43と同軸に回転可能である。制御基板6は、回転軸43を中心とした径方向に延出している。詳細には、制御基板6は、回転軸43を中心とした径方向であって、当該制御基板6が設けられた位置の径方向に略平行に配置されている。言い換えれば、制御基板6と回転軸43とは略一直線上に並んでいる。制御基板6と基板ケース71の底面とは平行である。従って、基板ケース71も、回転軸43を中心とした径方向であって、当該基板ケース71が設けられた位置の径方向に略平行に配置されている。また、基板ケース71と回転軸43とは略一直線上に並んでいる。
コンデンサ61Bは、その長手方向が左右方向に延びるように配置されている。言い換えれば、コンデンサ61Bは、その長手方向が冷却風の流れる方向の上流から下流にかけて延出している。コンデンサ61Bは、制御基板6における冷却風の流れる方向の端部に隣接して設けられている。
第2の実施の形態の電動丸鋸101の構成によれば、回転軸43を中心とした径方向であって、当該制御基板6が設けられた位置の径方向に略平行に配置されている。このため、遠心ファン43Aによって発生した冷却風が、制御基板6の上側および下側を円滑に通過することが可能になる。コンデンサ61Bは、制御基板6に関してスイッチング部62と反対側に設けられている。即ち、コンデンサ61Bは、制御基板6の上側に配置され、スイッチング部62は制御基板6の下側に配置されている。コンデンサ61Bとスイッチング部62とは共に熱を発生する素子である。上記のように冷却風は、円滑に制御基板6の上側および下側を通過することが可能であるため、コンデンサ61Bと、スイッチング部62とを効率よく冷却することができる。
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態の電動丸鋸201は、基板ケース71の配置を除き第1の実施の形態の電動丸鋸1と同じである。よって、基板ケース71の配置についてのみ説明し、他の構成についてはその説明を省略する。
図14に示すように、基板ケース71の固定壁71Fは、コンデンサ61Bがファン43Aに対向するように上下方向に延出している。コンデンサ61Bは、固定壁71Fおよび制御基板6に対してファン43A側に設けられている。また、側壁71Sは、底壁24Bに接触して固定されている。従って、第3の実施の形態ではリブ72は設けられていない。
コンデンサ61Bは、その長手方向が左右方向に延びるように配置されている。言い換えれば、コンデンサ61Bは、その長手方向が冷却風の流れる方向の上流から下流にかけて延出している。コンデンサ61Bは、制御基板6における冷却風の流れる方向の端部に隣接して設けられている。
以上の構成によりファン43Aで発生した冷却風が効果的にコンデンサ61Bの周辺を通過し、コンデンサ61Bを冷却することができる。尚、側壁71Sは、リブ72を介して底壁24Bに固定されていても良い。
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態の電動丸鋸301は、コンデンサ61Bの代わりにコンデンサ161Bが設けられていることと、基板ケース71の構成とが第1の実施例と異なる。それ以外の構成は第1の実施の形態の電動丸鋸1と同じである。よって、コンデンサ161Bの、および、基板ケース71の構成についてのみ説明し、他の構成についてはその説明を省略する。
図15に示すように、第4の実施の形態において、コンデンサ161Bは1つのみ設けられている。コンデンサ161Bの容量は、第1の実施の形態の2つのコンデンサ61Bの総容量と同じ容量を有する電解コンデンサである。コンデンサ161Bは、制御基板6には搭載されておらず、ハンドル部22の内部に設けられている。詳細には、ハンドル部22の内部に複数のボス22Bが設けられており、円筒形状のコンデンサ161Bの底面がボス22Bによって下方から支持されている。ハンドル部22の内部は、収容室21aと連通している。コンデンサ161Bは、遠心ファン43Aの上部に設けられている。図1に示すように、ハンドル部22は、右端壁22Rを有しており、右端壁22Rには、排気口22aが形成されている。従って、モータハウジング24とハンドル部22において、ファン43Aから排気口22aに至る風路P2が形成されている。ファン43Aで発生した冷却風は、コンデンサ161Bの近傍を通過し、排気口22aから排出される。風路P2は第2の風路の一例である。
コンデンサ161Bは、母線が長手方向となる略円筒形状を有している。コンデンサ161Bは、その長手方向が上下方向に延びるように配置されている。言い換えれば、コンデンサ161Bは、その長手方向が冷却風の流れる方向の上流から下流にかけて延出している。
尚、コンデンサ161Bの電気的な構成は図5で示した構成と同様に、ダイオードブリッジ61Aの前段であって、スイッチング部62の後段にケーブル160(図15)を介して接続されている。
基板ケース71の固定壁71Fは、上下方向に延出している。側壁71Sは、底壁24Bにリブ72を介して固定されている。スイッチング部62、および、ダイオードブリッジ61Aは、制御基板6に対して基板ケース71と反対側に設けられており、回転軸43に対向している。従って、スイッチング部62は、制御基板6と接触していない。
尚、本実施の形態では、制御基板6にコンデンサ161Bが設けられていない。そのため、第1の実施の形態と異なった方法で、制御基板6にスイッチング部62等の素子を搭載している。具体的には、スイッチング部62が制御基板6に対して、ファン43A側に配置されていて、冷却風に晒されるように配置される。
以上の構成によれば、コンデンサ161Bは、ファン43Aの上部に設けられている。ファン43Aで発生した冷却風は、コンデンサ161Bの近傍を通過して排気口22aに排出される。冷却風は、ファン43Aから、一直線上にコンデンサ161Bの近傍まで流れるため、コンデンサ161Bを効率よく冷却することができる。さらに、制御基板6の素子から発せられる熱がコンデンサ161Bに影響しないような配置とすることができる。
また、スイッチング部62はファン43Aの回転軸と対向している。このため、ファン43Aで発生した冷却風が効率よくスイッチング部62の近傍を通過し、スイッチング部62を効率よく冷却することができる。
本発明による電動工具は上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、電動工具は電動丸鋸でなくとも、電動ドリルなどの他の電動工具でもよい。
第1の実施の形態のスイッチング部62は、コイルU、V、Wに印加する駆動電圧を切替える動作と、デューティ比に基づいて、駆動電圧を印加する期間を調整する動作を実行している。これに代わって、コイルU、V、Wに印加する駆動電圧を切替える動作のみをスイッチング部62が実行し、スイッチング部62とは別に設けられたスイッチング素子で、駆動電圧を印加する期間の調整を行う動作を実行するようにしてもよい。例えば、このようなスイッチング素子を整流平滑部61と、スイッチング部62との間に設けてもよいし、スイッチング部62とモータ4との間に設けてもよい。
電動丸鋸1は、作業者が目標回転数を選択可能なスイッチを有していてもよい。この場合には、選択可能な目標回転数のうち最大の目標回転数が設定されたときを基準として、モータ4に流れることが許容される最大電流値以下のとき、駆動電圧が常に誘起電圧以上になるような総容量をコンデンサ61Bが有していればよい。