以下、本発明の好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、車両用シート10の全体斜視図である。なお、以下の説明において、車両用シート10又はその構成要素に関し、「左右方向」、「左右」又は「シート12幅方向」とは、車両幅方向を意味するものとし、左方向を矢印Lで示し、右方向を矢印Rで示す。また、車両用シート10又はその構成要素に関し、前方、後方、上方、下方をそれぞれ矢印Fr、Rr、Up、Lwで示す。
この車両用シート10は、ワゴン車等における運転席よりも後方側のシート12(例えば、2列目シート又は3列目シート)であり、折り畳んで車両のフロアFに収納可能に構成された折り畳み式シート(チップアップシートあるいはダイブダウンシート)である。また、この車両用シート10は、シート幅方向に6対4の分割可倒式に構成されており、相対的に幅広のシート12(中央部を含む左側のシート12)と、相対的に幅狭のシート13(右側のシート13)とを有する。以下、代表的に幅広のシート12の具体的構成を説明するが、本発明は、シート13にも適用可能であることは勿論である。
図2Aに示すように、シート12は、乗員の臀部及び大腿部を支持するためのシートクッション14(シート本体)と、シートクッション14の下面に折り畳み可能に設けられたフット部16と、乗員の背面を支持するための前倒し可能なシートバック18(シート本体)とを備える。
シートバック18は、下部側がブラケット19を介して車体のフロア上段部F2に軸支されることで前倒し可能となっている。シートクッション14の後部側から後方へ斜め上方に延びる湾曲した連結アーム20が、シートバック18に回転可能に連結されており、シートクッション14をフット部16と一緒に跳ね上げ可能となっている。フロア下段部F1には、シートクッション14から展開したフット部16の下辺部43を保持可能なロック装置21が設置される。
シートバック18の幅方向片側寄りの背部には解除可能なチャック22が設けられ、車体のサイドパネルには図示しない止め環が設けられ、止め環をチャック22で挟持することにより、立て付け設置可能に構成されている。シートクッション14の底面には、シート用カバー24が取り付けられる。
このシート12をフロアFに収納するためには、ロック装置21を解除することによってフット部16をロック装置21から解放してから、シートクッション14を上方に跳ね上げ、次に、フット部16をシートクッション14の底面に向けて折り畳むことで、シートバック18、シートクッション14及びフット部16を重ねた状態とする。そして、チャック22を解除し、シートバック18、シートクッション14及びフット部16を重ねた状態のシート12をブラケット19の支持軸を中心に回転させて前方に倒す。これにより、図2Bに示すように、シート12を折り畳んだ状態でフロアF(フロア下段部F1)に収納することができる。なお、ダイブダウンシートの場合、ロック装置21でフット部16をロックした状態のまま、シートバック18を前方に倒すと、シートバック18、シートクッション14及びフット部16が重なり、この状態でフロアFに収納することができる。図3は、シートクッション14、シート用カバー24及び折り畳まれたフット部16をシートクッション14の底面側から見た図であり、シートバック18の図示は省略している。
シートクッション14は、骨格を構成するシートクッションフレーム26(以下、「フレーム26」と略称する)を、弾性変形可能な素材(例えば、軟質ポリウレタンフォーム)からなりシートクッション形状を作り出す図示しないクッションパッドで覆い、さらにクッションパッドを表皮材で覆ってなるものである。
図4は、フレーム26、フット部16及びシート用カバー24の斜視図であり、図5は、フレーム26、フット部16、シート用カバー24の分解斜視図であり、図6は、フレーム26、フット部16、シート用カバー24の平面図である。
フレーム26は、シートバック18の下部側に回動可能に連結された左右の連結アーム20と、左右の連結アーム20の前側に連結され左右の連結アーム20間に架け渡された前部フレーム28と、前部フレーム28の後方で左右の連結アーム20間に架け渡された後部フレーム30と、後部フレーム30と前部フレーム28との間に架け渡された中間フレーム31と、中間フレーム31の左右両側で、後部フレーム30と前部フレーム28との間にそれぞれ架け渡された乗員支持プレート32、34と、前側のワイヤ部材36(被係合部)と、後側のワイヤ部材38とを有する。
前部フレーム28は、前後方向に延在する左右のサイド部40と、左右のサイド部40の先端部同士を連結する前辺部41とを有しており、全体として平面視でU字状に形成されている。前辺部41は、正面視で、左右方向の途中部分で屈曲した形状をしており、上段部41aと、下段部41bと、その間の傾斜部41cとを有する。
後部フレーム30も、正面視で、左右方向の途中部分で屈曲した形状をしており、上段部30aと、下段部30bと、その間の傾斜部30cとを有する。
中間フレーム31は、前部フレーム28の傾斜部41cと後部フレーム30の傾斜部30cとに架け渡されている。本実施形態において、前部フレーム28及び後部フレーム30の各々は、パイプ状部材により構成され、中間フレーム31は板状部材により構成されている。
一方の乗員支持プレート32は、車両用シート10の左側に乗る乗員を支持するためのプレートであり、前部フレーム28の下段部41bと後部フレーム30の下段部30bとの間に架け渡されて前後方向に延在する。
他方の乗員支持プレート34は、車両用シート10の左右中央に乗る乗員を支持するためのプレートであり、前部フレーム28の上段部41aと後部フレーム30の上段部30aとの間に架け渡されて前後方向に延在する。
前後のワイヤ部材36、38は、シートクッション14(具体的には、フレーム26)に対してカバー部材48を組み付けるために設けられる棒状部材である。本実施形態において、前側のワイヤ部材36は、前部フレーム28(具体的には、前辺部41の下段部41b)に固定される。
図5に示すように、ワイヤ部材36は、前部フレーム28から下方に延びる短尺な左右の縦軸部36aと、左右の縦軸部36aの下端部同士を連結して左右方向に水平に延びる長尺な横軸部36bとを有する。横軸部36bと前部フレーム28との間には左右に延びる隙間が形成される。
本実施形態において、後側のワイヤ部材38は、左側の連結アーム20と中間フレーム31との間に架け渡される。ワイヤ部材38の左端部は、左側の連結アーム20に連結される。ワイヤ部材38の右端部は、乗員支持プレート34に連結される。
図6に示すように、フット部16は、根元部がフレーム26に対して回転可能に支持された左右のサイドフット42L、42Rと、左右のサイドフット42L、42Rの自由端部(回転支持される側とは反対側の端部)を連結し水平方向に延びる下辺部43とを有し、全体として概ねU字状に形成される。図において左側のサイドフット42Lは、途中で屈曲しているが、右側のサイドフット42Rのように直線状に形成されてもよい。
フット部16は、左右のフット支持部材44(ブラケット)を介してフレーム26に回動可能に支持される。フット部16は、シートクッション14の底面に向けて、シートクッション14の後方側に回動して折り畳み可能である。フット部16は、展開状態で、シートクッション14の底面に対して略垂直に延在し(図2A参照)、折り畳み状態(収納状態)で、シートクッション14の底面に近接又は当接する(図2B参照)。
本実施形態において具体的には、フレーム26の左側のサイド部40に一方のフット支持部材44が固定され、中間フレーム31に他方のフット支持部材44が固定される。フット支持部材44の各々は、下方に開放した断面逆U字状の部材であり、下端部近傍に設けられた支持軸45で、フット部16の左右のサイドフット42L、42Rの根元部を回動可能に支持する。
なお、フレーム26を構成する各部材の構成材料としては、荷重を受けたときに大きく変形しないように十分な剛性をもつ材料、例えば、鋼材やアルミニウム合金等の金属材料が挙げられる。フレーム26を構成する各部材同士の接合手段は溶接である。なお、接合手段としては、ボルト、接着剤等による接合を併用してもよい。
シート用カバー24は、シートクッション14の底面を部分的に覆うカバー部材48と、カバー部材48に形成された開口部83を覆うキャップ部材50とを有する。カバー部材48及びキャップ部材50は、例えば、硬質の樹脂材料からなる。
カバー部材48は、概ねフレーム26の外周部の形状に沿った形状を有する。従って、カバー部材48は、相対的に低い上段カバー部48aと、相対的に低い下段カバー部48bと、上段カバー部48aと下段カバー部48bとの間を構成する傾斜カバー部48cとを有する。カバー部材48の上面(フレーム26側の面)には、略全面に亘って、左右方向及び前後方向の多数のリブ51、52が格子状に形成される。
カバー部材48は、フレーム26に対して取り付けられる。本実施形態において、カバー部材48の右部側(上段カバー部48a)は、中間フレーム31に対して適宜の締結部品47(ネジ等;図6参照)により固定される。カバー部材48の左部側の後部側では、カバー部材48に設けられたフック部54が、後側のワイヤ部材38に係合する(引っ掛かる)ことで、フレーム26に取り付けられる。カバー部材48の左部側の前部側では、カバー部材48に設けられた係合部56が、前側のワイヤ部材36に係合する(引っ掛かる)ことで、フレーム26に取り付けられる。
カバー部材48においてフック部54は複数(図示例では、2つ)設けられる。複数のフック部54は左右方向に間隔をおいて配置される。本実施形態では、フレーム26に対してカバー部材48が組み付けられた状態(以下、「カバー部材48の組付状態」という)で、フック部54の間に乗員支持プレート32が配置される。フック部54は、カバー部材48のカバー本体部49(シートクッション14の底面を覆う壁を構成する部分)に一体的に形成されており、カバー本体部49の上面から上方に突出するとともに、上端部が後方に屈曲している。なお、カバー部材48において、フック部54は1つだけ設けられてもよい。
図6及び図7に示すように、本実施形態において、左右方向に間隔をおいて複数(図示例では、2つ)の係合部56が設けられる。カバー部材48の組立状態で、複数の係合部56は乗員支持プレート32を避けた位置に配置されおり、係合部56の間に乗員支持プレート32が配置される。なお、カバー部材48において、係合部56は1つだけ設けられてもよい。
図7のA部拡大図である図8Aに示すように、各係合部56は、カバー本体部49の上面から突出し、互いに対向した一対の係合片58を有する。各係合片58は、カバー本体部49に一体的に形成される。係合片58は、カバー本体部49の上面から突出した弾性変形可能な板状部60と、板状部60の一方の面から突出した爪部62とを有する。
一対の係合片58は、板状部60が互いに対向し、一方の爪部62が他方の板状部60に向けて突出し、他方の爪部62が一方の板状部60に向けて突出するように、前後方向に間隔をおいて配置される。一対の係合片58は、爪部62同士が左右方向にずれて互い違いに配置される。
上記のように係合部56が構成されているので、シート12の組立工程において、シートクッション14(フレーム26)の底面にカバー部材48を取り付ける際、一対の係合片58間にワイヤ部材36が挿入されることに伴って、一対の係合片58が開く方向に弾性変形する。そして、ワイヤ部材36が爪部62を乗り越えると、一対の係合片58が弾性的に復元することで、図9(図6におけるIX−IX線に沿った断面図)に示すように、爪部62がワイヤ部材36に係合する。これにより、ワイヤ部材36と係合部56との分離が阻止される。
また、板状部60の爪部62とは反対側の面には補強リブ64が設けられる。補強リブ64は、板状部60に対して垂直に設けられる。補強リブ64は、爪部62の背面側を避けた位置に設けられる。補強リブ64は、カバー部材48に設けられた左右方向に延びるリブ52に連結される。補強リブ64とリブ52とは、垂直に交差する。係合片58の爪部62の背面側は、リブ52とは連結されていない。このため、板状部60は爪部62が設けられた箇所において変形しやすい。
ところで、ワイヤ部材36にカバー部材48の係合部56が係合している状態で、ワイヤ部材36と、カバー本体部49との間に空間が存在すると、カバー部材48がフレーム26(シートクッション14)に対して厚さ方向(シートクッション14が寝ている状態での上下方向)に動くことが可能となり、カバー部材48のガタツキが発生してしまう。そこで、本実施形態では、カバー部材48の組付状態でシート12に対するカバー部材48の移動を規制する移動規制機構70を有する。以下、移動規制機構70について説明する。
本実施形態では、移動規制機構70は、カバー部材48に設けられた規制突出部72(図7〜図9参照)と、規制凸状部74(図5、図6、図7、図10参照)とを有する。規制突出部72は、カバー部材48からフレーム26側(シートクッション14側)に向けて突出する。図9に示すように、カバー部材48の組付状態において、規制突出部72はワイヤ部材36に当接し、これにより、規制突出部72と係合部56(具体的には、爪部62)との間に、ワイヤ部材36が挟まれて保持される。
図7に示すように、本実施形態では、規制突出部72は、右側の係合部56よりも右側、すなわち複数の係合部56の右側に設けられる。従って、規制突出部72は、複数の係合部56の外側に設けられる。また、係合部56及び規制突出部72は、カバー部材48と一体成形される。図8Aに示すように、係合部56と規制突出部72とは、若干の隙間73を介して隣接配置される。規制突出部72は、少なくとも、板状部60の根元部間に跨る長さL1(幅;一対の板状部60の離間方向の寸法)を有するとよい。すなわち、規制突出部72の長さL1は、板状部60の根元部の間隔L2以上であるのがよい。
図9に示すように、規制突出部72には、ワイヤ部材36を係合部56(爪部62)に押し付ける付勢部76が設けられるとよい。本実施形態の場合、付勢部76は、規制突出部72の側方で開口する孔77により構成されており、これにより、規制突出部72の突出端部(上端部)が弾性変形可能であり、ワイヤ部材36に対する弾性的な付勢力が発生する。なお、付勢部76は、規制突出部72の突出端部に設けられる弾性体(ゴム等)であってもよい。あるいは、付勢部76は、規制突出部72の突出端部にて片持ち支持された弾性片部であってもよい。
一方、規制凸状部74は、図6におけるX−X線に沿った断面図である図10に示すように、カバー部材48からシートクッション14側(フレーム26側)に突出し、カバー部材48の組付状態において、フレーム26に当接する。具体的には、フレーム26の前部フレーム28(の左角部内側)にはプレート部材78が設けられ、カバー部材48の組付状態で、規制凸状部74はプレート部材78の下面に当接する。図7に示すように、本実施形態では、規制凸状部74は、カバー部材48の左前隅部近傍に設けられる。従って、規制凸状部74は、複数の係合部56の外側(左右方向外側)に設けられる。
本実施形態において、規制凸状部74は、平面視で、コ字形状(角部が直角のU字形状)に形成される。規制凸状部74は、縦方向及び横方向のリブ51、52に連結するとよい。なお、規制凸状部74は、平面視で、角部が丸いコ字形状(U字形状)に形成されてもよい。規制凸状部74は、その他の形状に形成されてもよく、例えば、平面視で、I形状(H形状)、L字形状、四角形状、その他の多角形状等に形成されてもよい。
本実施形態の場合、上記のように構成された移動規制機構70を備えるため、シート12に対するカバー部材48の移動が規制される。これにより、組付状態でのカバー部材48の厚さ方向のガタツキを抑制することができる。
また、移動規制機構70は、カバー部材48からシートクッション14側に突出する規制突出部72を有し、カバー部材48の組付状態において、規制突出部72はワイヤ部材36に当接するので、係合部56と規制突出部72との間にワイヤ部材36が保持される。よって、カバー部材48の厚さ方向のガタツキを効果的に抑制することができる。
規制突出部72には、ワイヤ部材36を係合部56に押し付ける付勢部76(図9参照)が設けられるため、組立工程においてワイヤ部材36を係合部56に組み付けやすいとともに、組付状態におけるカバー部材48の厚さ方向のガタツキを効果的に抑制することができる。
本実施形態の場合、係合部56及び規制突出部72は、カバー部材48と一体成形されており、係合部56と規制突出部72とは、隙間73を介して隣接配置されるので(図8A参照)、隙間73の存在によって係合部56が撓みやすい。このため、ワイヤ部材36を係合部56に組み付けやすいとともに、係合部56の近傍に配置された規制突出部72の移動規制機能によりカバー部材48の厚さ方向のガタツキを効果的に抑制できる。
本実施形態の場合、規制突出部72は、少なくとも、板状部60の根元部間に跨る長さL1を有するので、板状部60の開く方向への撓みやすさの確保と、板状部60自体の適度な剛性の確保とを、うまくバランスさせることができる。
また、本実施形態の場合、移動規制機構70は、カバー部材48からシートクッション14側に突出する規制凸状部74を有し、カバー部材48の組付状態において、規制凸状部74はフレーム26に当接する(図10参照)。プレート部材78に当接した規制凸状部74は、フレーム26に対する移動が制限される。よって、カバー部材48の厚さ方向のガタツキを効果的に一層抑制することができる。
特に、カバー部材48の組付状態で、規制凸状部74は、フレーム26に設けられたプレート部材78に当接する。これにより、比較的剛性の高いフレーム26のプレート部材78に規制凸状部74が当接するので、カバー部材48の厚さ方向のガタツキを一層効果的に抑制できる。なお、規制凸状部74は、プレート部材78以外のフレーム26、例えば、前部フレーム28自体に当接してもよく、この場合、プレート部材78は設けられなくてもよい。
さらに、本実施形態の場合、移動規制機構70(規制突出部72及び規制凸状部74)は、複数の係合部56の外側に配置される(図7参照)。このように規制効果を発揮しやすい位置に移動規制機構70が配置されるため、組付状態におけるカバー部材48のガタツキを一層効果的に抑制することができる。
本実施形態の場合、係合部56は、向かい合う板状部60と、各板状部60から突出する爪部62を有し、爪部62は互い違いに配置されていて、爪部62の裏側を避けた位置に補強リブ64が設けられる(図8A参照)。この構成により、補強リブ64によって、板状部60自体の剛性を確保しつつ、爪部62は開く方向に撓みやすいので、ワイヤ部材36を組み付けやすい。
また、カバー部材48において係合部56は複数個所に設けられており、複数の係合部56に設けられた補強リブ64は、第2の補強リブ(横方向のリブ52)に連結されているが、爪部62の側には連結されていない。これにより、補強リブ64によって、板状部60自体の剛性を確保しつつ、爪部62は開く方向に撓みやすいので、ワイヤ部材36を組み付けやすい。
上述したように、カバー部材48は、シートクッション14の底面を覆うカバー部材48であり、シートクッション14には乗員を支持するための乗員支持プレート32が設けられ、カバー部材48の係合部56は、平面視で乗員支持プレート32を避けた位置に設けられる(図6参照)。この構成により、係合部56と乗員支持プレート32との干渉を抑制することができる。
特に、本実施形態の場合、カバー部材48の係合部56は2箇所にあり、2箇所の係合部56の間に乗員支持プレート32が配置されるので、係合部56と乗員支持プレート32との干渉を一層好適に抑制することができる。
なお、移動規制機構70は、上述した規制凸状部74及びプレート部材78に代わる構成として、図5において仮想線で示すように、カバー部材48の組付状態でカバー部材48に当接する規制部材80を有してもよい。この場合、規制部材80は、フレーム26の前部フレーム28に溶接等により固着され、複数の係合部56よりも左側、すなわち複数の係合部56の外側に位置してよい。規制部材80は、例えば、プレート状に形成され得る。
このような規制部材80によっても、上述した規制凸状部74及びプレート部材78(図10参照)と同等の機能を発揮することができる。すなわち、規制部材80は、カバー部材48の組付状態でカバー部材48に当接するので、カバー部材48の上下方向(厚さ方向)のガタツキを抑制することができる。
このように、本実施形態に係るシート12は、上述したフレーム26に設けられたワイヤ部材36と、カバー部材48に設けられた係合部56と、カバー部材48の移動を規制する移動規制機構70とを有するカバー部材取付構造を備えるものである。
次に、カバー部材48の剛性を向上させるための構造について説明する。
図5に示すように、カバー部材48には、フット部16を通すための左右方向に延在する開口部83が設けられる。図示例の開口部83は、左右方向に長軸を有する略長方形状である。また、図3に示すように、カバー部材48には、左右のサイドフット42L、42Rをそれぞれ収容可能な左右の収容凹部84(84L、84R)が設けられる。
収容凹部84の各々は、シートクッション14の底面側(フレーム26側)に向けて凹む溝形状であり、開口部83よりも後方側に設けられる。収容凹部84の各々は、延在方向の一端(前端)が開口部83に臨む。収容凹部84の各々は、後方に向かうに従って溝深さが浅くなっている。なお、左側の収容凹部84Lは、フット部16の左側のサイドフット42Lの屈曲形状に合わせて屈曲している。
図5、図7及び図11に示すように、カバー部材48には、さらに、左右の収容凹部84(84L、84R)を連結する補強部86が設けられる。本実施形態では、補強部86は、開口部83の近傍で、開口部83の長軸方向(左右方向)に沿って直線状に延在し、一端部が、左側の収容凹部84Lの右側壁84Laの前方端部近傍に連結し、他端部が、右側の収容凹部84Rの左側壁84Raの前方端部近傍に連結する。本実施形態の場合、補強部86は、シートクッション14の底面側に突出する断面コ字形状(U字形状)の凸部87である。
このように、本実施形態では、カバー部材48に左右の収容凹部84が設けられるため剛性を向上させることができる。また、カバー部材48には左右の収容凹部84を連結する補強部86が設けられるため、左右の収容凹部84による剛性向上に加え、補強部86によっても剛性を向上させることができる。よって、シート用カバー24の剛性を向上させることができる。
また、補強部86は、シートクッション14の底面側に突出する断面コ字形状の凸部87であるため、補強部86と連結した収容凹部84の剛性を効果的に向上させつつ、カバー部材48の大型化を抑制することができる。
次に、カバー部材48に対するキャップ部材50の取付けに関する構造について説明する。
キャップ部材50は、カバー部材48に設けられた開口部83の形状に適合するように形成されており、全体として、長軸が左右方向を向いた略長方形状である。図7及び図11に示すように、カバー部材48には、キャップ部材50に設けられた複数の突片90が取り付けられる複数の取付部92が、開口部83の周囲に間隔をおいて配置される。具体的には、開口部83の前方、後方及び左右に、それぞれ取付部92が配置される。これらの取付部92のうち、左右の収容凹部84の間に配置される取付部92(孔部94a)は、補強部86と並んで配置される。
本実施形態の場合、取付部92は孔部94である。キャップ部材50の外周部に間隔をおいて設けられた突片90が、それぞれ孔部94に挿入されて、各突片90と各孔部94とが係合する。複数の孔部94のうち左右の収容凹部84の間に設けられた孔部94aは、補強部86(凸部87)の延在方向(左右方向)に沿って延びる長孔状に形成される。孔部94aは、補強部86の延在方向に沿って間隔をおいて複数(図示例では、3つ)配置される。また、孔部94aは、補強部86よりも後方に配置される。
図11に示すように、少なくとも1つの孔部94aの左右両側で、当該孔部94aよりも補強部86側には、下方(カバー部材48の外面側;キャップ部材50側)に突出する突起部96が設けられるとよい。図11では、3つの孔部94aのうち、右側及び左側の孔部94aの左右両側に突起部96が設けられる。なお、開口部83の前辺側に設けられた少なくとも1つの孔部94の左右両側で、孔部94よりも開口部83側にも、下方に突出する突起部96が設けられるとよい。
図13に示すように、キャップ部材50の外周部のうち前辺に設けられた突片90aは、前方に突出する。一方、キャップ部材50の外周部のうち側辺に設けられた突片90bと、後辺に設けられた突片90cは、いずれも上方に突出するとともに、係合爪91を有する。
図7に示すように、カバー部材48に対してキャップ部材50を取り付けた状態で、突片90aは、開口部83の前側に設けられた孔部94に挿入され、突片90bは、開口部83の左右両側に設けられた孔部94に挿入され、突片90cは、開口部83の後側(左右の収容凹部84の間)に設けられた孔部94aに挿入される。この場合、突片90bと突片90cが係合爪91によって孔部94に係合することによって、カバー部材48からキャップ部材50が外れることが抑制される。
また、図13に示すように、キャップ部材50には、左右方向に延在し且つ互いに対向するリブ98の組が設けられる。カバー部材48に対してキャップ部材50を取り付けた状態では、当該リブ98間に、カバー部材48に設けられた上述した突起部96(図11参照)が配置される。本実施形態の場合、対向するリブ98の組は、キャップ部材50の前辺部と後辺部とにそれぞれ設けられており、前側のリブ98の組における前側のリブ98に上述した突片90aが設けられ、後側のリブ98の組における後側のリブ98に上述した突片90cが設けられる。
上述したように、本実施形態では、取付部92が補強部86と並んで、補強部86の近傍に配置されるため、取付部92の剛性を向上させることができ、カバー部材48に対してキャップ部材50を安定して取り付けることができる。
また、本実施形態の場合、孔部94aの左右両側で孔部94aよりも補強部86側には、突起部96が設けられるので、孔部94aと補強部86の両方の剛性向上に寄与する。さらに、キャップ部材50においてカバー部材48の取付部92に対向する部分に設けられた互いに対向するリブ98間に、突起部96が配置されるので、キャップ部材50の取付状態でのガタツキを抑制することができる。本実施形態の場合、対向するリブ98の組は、キャップ部材50の前辺部と後辺部とにそれぞれ設けられるので、キャップ部材50の取付状態でのガタツキを一層抑制することができる。
図11に示すように、収容凹部84には、キャップ部材50の一部(後述するフット用凹部122の側壁部)を収容する収容溝100が設けられる。具体的には、各収容凹部84において、内側の側壁(収容凹部84Lの右側壁84La、収容凹部84Rの左側壁84Ra)の前方端部に収容溝100がそれぞれ設けられ、収容溝100に補強部86が連結する。すなわち、補強部86の一端(左端)が、左側の収容凹部84Lにおける右側壁84Laに設けられた収容溝100に連結し、補強部86の他端(右端)が、右側の収容凹部84Rにおける左側壁84Raに設けられた収容溝100に連結する。
このように、本実施形態の場合、収容凹部84には、キャップ部材50の一部を収容する収容溝100が設けられ、収容溝100に補強部86が連結するので、収容溝100の剛性を向上させることができる。
図5、図7、図11に示すように、カバー部材48には、下方に突出する支持凸部102が、補強部86から一体的に設けられる。支持凸部102は、シート12の折り畳み状態で、後述するフレーム26のフロア受け部106とともに、シートクッション14側からの荷重を受ける部分である。具体的には、支持凸部102は、左右方向に間隔をおいて2つ設けられる。2つの支持凸部102は、平面視で開口部83内に位置する。
支持凸部102は、全体としてカバー部材48から下方に突出する形状を有しており、本実施形態では、断面L字形状の側壁103と、側壁103の下端に連なる平板状の底板部104を有する。なお、側壁103の断面形状は、コ字形状(U字形状)、I字形状(H形状)、四角形状等の多角形状であってもよい。
このように、カバー部材48において、支持凸部102は補強部86から一体的に設けられるため、支持凸部102の剛性を効果的に向上させることができる。
次に、フレーム26、カバー部材48及びキャップ部材50の相互固定構造について説明する。
図5及び図6に示すように、フレーム26は、さらに、シートクッション14の底面側から突出するフロア受け部106を有する。本実施形態では、左右方向に間隔をおいて2つのフロア受け部106が設けられる。左右のフロア受け部106は、左右のフット支持部材44における互いに対向する側にそれぞれ連結される。従って、フロア受け部106は、左右のサイドフット42L、42Rの内側に配置される。
図14に示すように、フロア受け部106の底部107には、位置決め孔109(第1位置決めメス部)が設けられる。また、フロア受け部106の底部107には、締結部品(ネジ等)が挿入される固定用孔110が設けられる。
一方、カバー部材48における上述した支持凸部102の底板部104には、上方に突出する位置決めピン111(第1位置決めオス部)と、位置決め孔112(第2位置決めメス部)とが設けられる。
図13及び図14に示すように、キャップ部材50のうち、フレーム26のフロア受け部106を覆う部分は、表側(下方)に向けて突出する中空構造の凸形状部114となっている。凸形状部114の底部115には、上方に突出する位置決め凸部116(第2位置決めオス部)が設けられる。
フレーム26のフロア受け部106、カバー部材48の支持凸部102及びキャップ部材50の凸形状部114は、上記のように構成されており、これらの組付状態において、カバー部材48は、フロア受け部106の底部107と凸形状部114の底部115との間に挟まれる。
また、組付状態において、カバー部材48に設けられた位置決めピン111は、フロア受け部106に設けられた位置決め孔109に挿入され、キャップ部材50に設けられた位置決め凸部116は、カバー部材48に設けられた位置決め孔112に挿入される。さらに、キャップ部材50の凸形状部114に設けられた貫通孔117を介して、フロア受け部106の底部107に設けられた固定用孔110に締結部品が挿入されることで、凸形状部114の底部115とフロア受け部106の底部107とが相互固定される。
このように、本実施形態では、フロア受け部106の底部107とキャップ部材50との間にカバー部材48が挟まれることによって、カバー部材48が安定的に固定される。従って、カバー部材48の取付剛性(シートクッション14に対するカバー部材48の固定強度)を向上させることができる。
また、本実施形態の場合、フロア受け部106の底部107は、カバー部材48に設けられた位置決めピン111が挿入される位置決め孔109を有するので、フロア受け部106に対してカバー部材48を位置決めしやすくなり、組立作業性を向上させることができる。
さらに、本実施形態の場合、カバー部材48は、キャップ部材50に設けられた位置決め凸部116が挿入される位置決め孔112を有するので、組立時に、カバー部材48に対してキャップ部材50を位置決めしやすくなり、組立作業性を向上させることができる。
本実施形態の場合、キャップ部材50の位置決め凸部116において、キャップ部材50とフロア受け部106とが固定されるので、剛性の高い箇所で、キャップ部材50とフロア受け部106とを固定することができる。
本実施形態の場合、フット部16を支持するフット支持部材44にフロア受け部106が設けられるため(図5参照)、フット部16とフロア受け部106の互いの剛性を向上させ、シート12を一層安定してフロアFに収容することができる。
特に、本実施形態の場合、左右のサイドフット42L、42Rの内側にフロア受け部106が配置されるので、フロア受け部106が効率よく配置される。従って、フロア受け部106を設けることによるシート12の大型化を抑制することができる。
また、キャップ部材50は、フロア受け部106の底部107に対して固定される。この構成によれば、シート12底部とフロアFとの当接時に、フロア受け部106とキャップ部材50とのガタツキを抑制することができる。
本実施形態の場合、図5及び図13に示すように、凸形状部114の側部に、フット部16(具体的には、サイドフット42L、42R)を受け入れ可能な左右のフット用凹部122が一体的に設けられる。これにより、剛性の高い箇所にフット用凹部122が設けられるため、フット用凹部122を設けることによるキャップ部材50の剛性低下を効果的に抑制することができる。フット用凹部122は、左右の凸形状部114の外側に2つ設けられる。
具体的に、フット用凹部122は、キャップ部材50を上下方向に貫通し、前後方向に延在し、且つ後方に開口した切欠状に形成される。左右のフット用凹部122の外側の側壁122aの外面には爪123が設けられる。一方、図11に示すように、カバー部材48の収容凹部84の外側の側壁(収容凹部84Lの左側壁84Lb及び収容凹部84Rの右側壁84Rb)には係合孔124が設けられる。キャップ部材50に設けられた爪123が、当該係合孔124に係合する。これにより、カバー部材48に対するキャップ部材50の取付剛性を向上させることができる。
上述した実施形態では、シートクッション14の底面に取り付けられるシート用カバー24(カバー部材48)を例示したが、シートバック18の背面に取り付けられるシート用カバー24(カバー部材48)として構成されてもよい。また、本発明は、車両用シート10(シート12、13)以外の乗物用シート、例えば、船舶や航空機等で使用されるシートに適用することもできる。
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。