以下、図面を参照して本発明にかかる計算機合成ホログラムからなる拡散板によって構成されるプロジェクタ用スクリーン10について説明する。
図1は、本実施形態に係る実施例1のプロジェクタ用スクリーンを示す。図2は、本実施形態に係る実施例1のプロジェクタ用スクリーンの要素ホログラム群を示す。
本実施形態のプロジェクタ用スクリーン10(以下、単に「スクリーン」という)は、図1に示すように、複数の要素ホログラム群11を2次元的な平面に配列して形成される。また、要素ホログラム群11は、図2に示すように、複数の要素ホログラム1を2次元的な平面に配列して形成される。すなわち、スクリーン10は、分割された複数の要素ホログラム群11の集合からなり、要素ホログラム群11は、分割された複数の要素ホログラム1の集合からなる。要素ホログラム1は、等方散乱するよりも拡散角度が狭くなるように設定されている。したがって、その集合体であるスクリーン10も等方散乱するよりも拡散角度が狭くなっている。2次元的な平面は、第1方向Xと第1方向Xに直交する第2方向Yによって構成されることが好ましい。本実施形態では、横方向を第1方向Xとし、縦方向を第2方向Yとする。
要素ホログラム1は、要素ホログラム群11を形成する計算機合成ホログラムから構成される。1つの要素ホログラム群11は、図2(b)に示すように、縦3×横3に並べられた要素ホログラム1によって形成される。また、実施例1の1つの要素ホログラム1の形状は、正方形からなり、1つの要素ホログラム群11の形状は、正方形からなる。また、スクリーン10は、横長の長方形となる。
実施例1のスクリーン10は、2次元的に縦4×横6に並べられた要素ホログラム群11によって形成される。実施例1の要素ホログラム群11は、第1の方向としての横方向に同じ仕様の要素ホログラム群11を並べている。例えば、図1において、最上段には第1横ブロック12Aとして6つの第1要素ホログラム群11Aを並べ、2段目には第2横ブロック12Bとして6つの第2要素ホログラム群11Bを並べ、3段目には第3横ブロック12Cとして6つの第3要素ホログラム群11Cを並べ、4段目には第4横ブロック12Dとして6つの第4要素ホログラム群11Dを並べる。各ブロック12A,12B,12C,12Dは、縦方向Yに並列に配置される。
なお、要素ホログラム1の形状は正方形に限らず、他の形状でもよい。例えば、長方形、三角形等でもよい。また、隣り合う要素ホログラム1は、必ずしも密着する必要はなく、実質上接近して配置された状態であれば、所定の隙間が空いていてもよい。さらに、要素ホログラム群11は、要素ホログラム1の形状に対応して形成してもよい。また、要素ホログラム群11を形成する要素ホログラム1の数、スクリーン10を形成する要素ホログラム群11の数は、それぞれいくつでもよい。
図3は、本実施形態に係る実施例2のプロジェクタ用スクリーンを示す。
実施例2の1つの要素ホログラム1の形状は、正方形からなり、1つの要素ホログラム群11の形状は、正方形からなる。また、スクリーン10は、正方形からなる。
実施例2のスクリーン10は、2次元的に縦4×横4に並べられた要素ホログラム群11によって形成される。実施例2の要素ホログラム群11は、第2の方向としての縦方向Yに同じ仕様の要素ホログラム群11を並べている。例えば、図3において、最も左には第1縦ブロック13Aとして4つの第1要素ホログラム群11Aを並べ、左から2番目には第2縦ブロック13Bとして4つの第2要素ホログラム群11Bを並べ、左から3番目には第3縦ブロック13Cとして4つの第3要素ホログラム群11Cを並べ、最も右には第4縦ブロック13Dとして4つの第4要素ホログラム群11Dを並べる。各ブロック13A,13B,13C,13Dは、横方向Xに並列に配置される。
なお、要素ホログラム1の形状は正方形に限らず、他の形状でもよい。例えば、長方形、三角形等でもよい。また、隣り合う要素ホログラム1は、必ずしも密着する必要はなく、実質上接近して配置された状態であれば、所定の隙間が空いていてもよい。さらに、要素ホログラム群11は、要素ホログラム1の形状に対応して形成してもよい。また、要素ホログラム群11を形成する要素ホログラム1の数、スクリーン10を形成する要素ホログラム群11の数は、それぞれいくつでもよい。
本実施形態の計算機合成ホログラムは、図1に示した実施例1及び図3に示した実施例2のように、各ブロック毎に同様の要素ホログラム1で構成され、横方向又は縦方向に同じ仕様の要素ホログラム群11を並べているので、小さな原版から多面付けをすることができ、容易に大型化することが可能となる。例えば、実施例1では、第1の方向としての横方向に多面付け可能であり、実施例2では、第2の方向としての縦方向に多面付け可能である。ここで、計算機合成ホログラムの仕様とは、形状、厚み、及び格子間隔等の寸法、材質等である。
以下の説明では、容易に理解できるように透過型の要素ホログラム1について説明するが、本実施形態のような反射型の要素ホログラム1についても同様に適用可能である。
図4は、本実施形態のプロジェクタ用スクリーンに用いる計算機合成ホログラムの位相分布の一例を示す。
計算機合成ホログラムからなる要素ホログラム1は、2次元的にアレー状に配置された微小なセルの集合体からなるもので、各セルは各々が反射光もしくは入射光に対して独自の位相を与える光路長を有しており、かつ、垂直に入射する光束を所定の観察域内に実質的に回折し、その観察域外には実質的には回折しないような第1の位相分布と、斜めから所定の入射角で入射する光束を垂直に出射するような第2の位相分布とを加算して得られる位相分布を有しているものである。
ここで、第1の位相分布は、ホログラム面に垂直に平行光で照明した場合に所定の観察域へのみ光を回折する計算機合成ホログラムの位相分布であり、図4(a)に例示したような位相分布φHOLOのものである。
また、第2の位相分布は、背後から入射角θで入射した光を正面方向へ回折する位相回折格子の位相分布であり、図4(b)中、破線で示すような位相分布を、デジタルな階段状の関数に近似した位相分布φGRATである。
これら二つの位相分布φHOLO、およびφGRATを加算したものが、図4(c)に示すような特許文献3に記載の計算機合成ホログラムの位相分布φであり、この位相分布φを有する計算機合成ホログラムは、背後から斜めに入射角θで入射した光を所定の前方の観察域へ回折する計算機合成ホログラムである。
なお、一般に計算機合成ホログラムを求めるには、次のようにする。今、あるホログラムを想定し、それからの再生距離がホログラムの大きさにくらべて十分大きく、ホログラム面に垂直に平行光で照明した場合、再生像面で得られる回折光は、ホログラム面での振幅分布、および位相分布のフーリエ変換で表される(フラウンホーファー回折)。
そこで、従来、再生像面に所定の回折光を与えるために、ホログラム面と再生像面との間で束縛条件を加えながら、フーリエ変換と逆フーリエ変換を交互に繰り返しながら、ホログラム面に配置する計算機合成ホログラムを求める方法が、Gerchberg−Saxton反復計算法として知られている。
ここで、ホログラム面での光の分布をh(x,y)、再生像面での光の分布をf(u,v)とすると、各々は次の式(1)、および(2)で書ける。
h(x,y)=AHOLO(x,y)exp(iφHOLO(x,y)) (1)
f(u,v)=AIMG (u,v)exp(iφIMG (u,v)) (2)
上記において、AHOLO(x,y)はホログラム面での振幅分布、φHOLO(x,y)はホログラム面での位相分布であり、AIMG (u,v)は再生像面での振幅分布、φIMG u,v)は再生像面での位相分布である。
上記のフーリエ変換、および逆フーリエ変換は次の式(3)、および(4)のようになる。
ここで、今後の議論を分かりやすくするため、ホログラム面での振幅分布AHOLO(x,y)をAHOLO、ホログラム面での位相分布φHOLO(x,y)をφHOLO 、再生像面での振幅分布AIMG (u,v)をAIMG 、再生像面での位相分布φIMG (u,v)をφIMG で表現する。
図5は、本実施形態のプロジェクタ用スクリーンに用いる計算機合成ホログラムの演算ステップのフローを示す。図6は、本実施形態のプロジェクタ用スクリーンに用いる計算機合成ホログラムの入射光に対する出射光の範囲を示す。
図5は、このためのフローチャートであり、ステップ1で、図6中のホログラム面領域x0 ≦x≦x1 、y0 ≦y≦y1で、ホログラムの振幅AHOLOを1に、ホログラムの位相φHOLOをランダムな値に初期化して、ステップ2で、その初期化した値に上記式(3)のフーリエ変換を施す。ステップ3で、フーリエ変換で得られた再生像面での振幅AIMG が所定の領域、例えばu0 ≦u≦u1 、v0 ≦v≦v1 内でほぼ一定値になり、その所定領域外でほぼ0になったと判断された場合は、ステップ1で初期化した振幅と位相が所望の計算機合成ホログラムとなる。
ステップ 3でこのような条件が満足されないと判断された場合は、ステップ4で束縛条件が付与される。具体的には、上記の所定領域内では再生像面での振幅AIMG は例えば1にされ、その外では0にされ、再生像面での位相φIMG はそのままに維持される。そのような束縛条件が付与された後、ステップ5で、上記式(4)のフーリエ逆変換が施される。そのフーリエ逆変換で得られたホログラム面での値は、ステップ6で束縛条件が付与され、振幅AHOLOは1にされ、位相φHOLOは多値化(元の関数をデジタルな階段状の関数に近似(量子化))される。なお、位相φHOLOが連続的な値を持ってもよい場合は、この多値化は必ずしも必要ない。
そして、ステップ2でその値にフーリエ変換が施され、ステップ3で、フーリエ変換で得られた再生像面での振幅AIMG が所定の領域、例えばu0 ≦u≦u1、v0 ≦v≦v1 内でほぼ一定値になり、その所定領域外でほぼ0になったと判断された場合は、ステップ6で束縛条件が付与された振幅と位相が所望の計算機合成ホログラムとなる。ステップ3でこのような条件が満足されないと判断された場合は、ステップ4→5→6→2→3のループがステップ3の条件が満足されるまで(収束するまで)繰り返され、最終的な所望の計算機合成ホログラムが得られる。
ここで、ステップ3で、再生像面で振幅A
IMG がほぼ所定の値に収束したと判断する評価関数としては、例えば次のような式(5)を用いる。ただし、u,vに関するΣ(和)は、u0 ≦u≦u1 、v0 ≦v≦v1 内のホログラムのセルにおける値の和を取ることを意味し、〈A
IMG (u,v)〉はそのセル内における理想的な振幅である。この(評価関数)が例えば0.01以下になることをもって収束したと判断する。この他、評価関数としては、計算ループの反復の前回の振幅の値と今回の値の差を用いた次のような式(6)を用いることもできる。ここで、A
IMG i-1は前回の振幅の値、A
IMG iは今回の振幅の値である。
このようにして求めた位相分布から、実際のホログラムの深さ分布を求める。深さ分布の求め方は、ホログラムを反射型で用いるときと、透過型で用いるときとで異なり、反射型の場合には、式(7a)により、また、透過型の場合には、式(7b)によって,図3(c)のφ(下記式中ではφ(x,y))を、計算機合成ホログラムの深さD(下記式中ではD(x,y))に変換を行なう。
D(x,y)=λφ(x,y)/(4πn) (7a)
D(x,y)=λφ(x,y)/{2π(n1−n0)} (7b)
ここで、(x,y)はホログラム面における位置を示す座標、λは基準波長、nは反射層に至るまでの材料の屈折率、n1およびn0は、透過型のホログラムを構成する二つの材質の屈折率であって、二つの屈折率のうち、大きい方がn1であり、小さい方がn0である。
後にも説明するように、上記の式(7a)、および(7b)により、縦横のサイズがΔの微小セル毎に求めた深さD(x,y)のレリーフパターンをホログラム形成用の樹脂層の表面に形成し、所定の反射性層を積層することにより、効果を高めたホログラムとして使用することができる。このΔは、例えば、パターン露光光の送りピッチに相当する。
以上における計算機合成ホログラム1の位相分布の計算自体は、知られた手法を用いて行なうもので、上記のほかにも、例えば、特開昭47−6591号公報に記載の手法を用いることが出来る。また、位相分布を最適化する手法を必要に応じて適用してもよく、遺伝的アルゴリズム、もしくはシミュレーテッド・アニーリング法(焼きなまし法)等を適用できる。
次に、所望の観察領域で白色に観察可能な計算機合成ホログラムについて説明する。所望の観察領域で白色に観察可能な計算機合成ホログラムとは、所定の入射角で入射した所定の基準波長の入射光を所定の角度範囲に拡散し、前記入射角で入射した0次透過光または0次反射光に対して、前記基準波長を含み加法混色した場合に見える波長範囲の最短波長の前記入射角の入射光の最大回折角が、その波長範囲の最長波長の前記入射光の最小回折角よりも大きくなるよう構成されているものである。
以下の説明では、容易に理解できるように透過型の計算機合成ホログラムについて説明するが、本実施形態のような反射型の計算機合成ホログラム1についても同様である。
図7に、観察領域が狭く設定されている場合の、計算機合成ホログラム1の波長による観察領域の変化の様子を概念的に示す。
照明光の基準波長λSTDが最短波長λMINと最長波長λMAXとの間にあるものとし、その基準波長λSTDについて計算機合成ホログラム1が設計されている。図7(a)に示すように、基準波長λSTDにて、ある斜めの角度θ(角度は、ホログラム1の法線からの角度で、左回りの角度を正とする。)で入射した照明光3が正面付近の角度範囲β1STD〜β2STD(添字1は最小回折角、添字2は最大回折角とする。なお、最小回折角は、0次透過光に対して最小の角度をなす回折光の回折角、最大回折角は、0次透過光に対して最大の角度をなす回折光の回折角である。)内に回折光5STDとして広がるように設定されている場合、同じ斜めの入射角θで最短波長λMINの照明光3を入射すると、計算機合成ホログラム1は位相回折格子の集合と考えられるので、図7(b)に示すように、回折光5MINが入射する観察領域(角度範囲β1MIN〜β2MIN)は基準波長λSTDの場合よりも下側(0次透過光)にずれる。また、同じ斜めの入射角θで最長波長λMAXの照明光3を入射すると、図7(c)に示すように、回折光5MAXが入射する観察領域(角度範囲β1MAX〜β2MAX)は基準波長λSTDの場合よりも上側(0次透過光側とは反対側)にずれる。
なお、上記のように回折光の分布をするのは、計算機合成ホログラム1の法線と照明光3が含まれる平面内であり、計算機合成ホログラム1の法線を含みその平面に直交する面内では、照明光3の両側に回折光が分布する場合を考えている。
さて、このとき、図8に示すように、各回折光5MIN、5STD、および5MAXの全てが重なる部分がないため、すべての波長を同時に観察可能で波長範囲λMIN〜λSTD〜λMAXが可視光域の場合には、白色に観察できる領域は存在せず、観察位置(角度)によって観察される色が変わってしまう。
図9に、観察領域が広く設定されている場合の、計算機合成ホログラム1の波長による観察領域の変化の様子を概念的に示す。
この場合も、図7に示す観察領域が狭い場合と同様、最短波長λMINや最長波長λMAXを入射した場合、(図9(b)、図9(c))、観察領域(角度範囲β1MIN〜β2MIN、β1MAX〜β2MAX)は基準波長λSTDの場合とくらべ、それぞれ下側、上側にずれる。しかし、観察範囲が広いので、図10に示すように、回折光5MIN、5STD、および5MAXの全てが重なる正面付近6(角度範囲β1MAX〜β2MIN)で観察した場合、すべての波長を同時に観察することが可能である。従って、このような領域内を観察者が移動する限り、観察される色の変化はほとんど感じられない。
このように想定したすべての波長が観察可能な領域6が存在するための条件は、図10から明らかなように、想定した波長範囲の最短波長λMINの最大回折角β2MINが最長波長λMAXの最小回折角β1MAXよりも大きいことである。0次透過光に対して回折光5MIN、5STD、および5MAXが図7〜図10のとは反対側に分布する場合は、この関係は逆転するので、0次透過光を基準にすると、0次透過光に対してなす最短波長λMINの最大回折角β2MINが最長波長λMAXの最小回折角β1MAXよりも大きいことと言うことが言える。
すべての波長が重なって白色に観察可能なためには、λMIN=450nm、λMAX=650nmとすれば十分である。従って、少なくとも最短波長λMIN=450nmの最大回折角度β2MINが最長波長λMAX=650nmの最小回折角β1MAXよりも大きい計算機合成ホログラム1においては、領域6内で観察する限り、色の変化がなく白色に観察可能である。
以上から、ある観察領域で、所望の全ての波長を観察したい場合、以下の手順で基準波長λSTDの観察領域β1STD〜β2STDを決定すればよいことが分かる。
(ア)再生用の照明光3の入射角θを決める。
(イ)白色に見える所望の観察角度範囲6を決める。すなわち、最小回折角γ1(=β1MAX)〜最大回折角γ2(=β2MIN)を決める。
ここで、最小回折角γ1、最大回折角γ2は、0次透過光に対してなす最小、最大の角度をなす回折角であり、図7〜図10の分布の場合には、θ<γ1≦γ2の関係にあり、図7〜図10のとは反対に光が分布する場合には、θ>γ1≧γ2の関係にある。
(ウ)所望の観察波長を決める(最短波長λMIN〜最長波長λMAX)。
(エ)基準波長λSTDをλMIN≦λSTD≦λMAXの範囲で決める。
(オ)回折格子の基本式(8)に基づいて、以下の式(9)を用いて、最小回折角γ1、最長波長λMAXから、基準波長λSTDにおける最小回折角β1STDを求める。
sinθd−sinθi=mλ/d (8)
ただし、mは回折次数、dは回折格子のピッチ、λは波長、θiは入射角、θdは回折角である。
(sinγ1−sinθ)/λMAX=(sinβ1STD−sinθ)/λSTD
sinβ1STD=sinθ+(sinγ1−sinθ)×λSTD/λMAX (9)
(カ)同様に、回折格子の基本式(8)に基づいて、以下の式(10)を用いて、最大回折角γ2、最短波長λMINから、基準波長λSTDにおける最大回折角β2STDを求める。
(sinγ2−sinθ)/λMIN=(sinβ2STD−sinθ)/λSTD
sinβ2STD=sinθ+(sinγ2−sinθ)×λSTD/λMIN (10)
そして、照明光の入射角θ、基準波長λSTDにおいて、最小回折角β1STDと最大回折角β2STDとなるように、計算機合成ホログラム1を作製することにより、再生用の照明光3の入射角θに対して、観察角γ1〜γ2の範囲で波長λMIN〜λMAXが観測可能で白色に見える拡散ホログラムが得られる。
以上は、照明光の所望の入射角θ、回折範囲γ1〜γ2、波長範囲λMIN〜λMAXを与えたときの、計算に用いる回折角度範囲β1STD〜β2STDの求めかたである。
一方、基準波長λSTD、照明光の入射角θに対して、最小回折角β1STD、最大回折角β2STDが与えられたときに、波長範囲λMIN〜λMAXの光を同時に観察可能で白色に見える領域が存在するための条件は、最長波長λMAXの最小回折角β1MAX=γ1と、最短波長λMINの最大回折角β2MIN=γ2とを用いて、以下のように与えられる。
(1)回折光が0次透過光に対して正の側に存在する場合(図7〜図10)、
γ2≧γ1
sinγ2≧sinγ1
式(9)と式(10)を用いると、
sinθ+(sinβ2STD−sinθ)×λMIN/λSTD
≧sinθ+(sinβ1STD−sinθ)×λMAX/λSTD
(sinβ2STD−sinθ)×λMIN ≧(sinβ1STD−sinθ)×λMAX
sinβ2STD>sinθであるから、
λMIN/λMAX≧(sinβ1STD−sinθ)/(sinβ2STD−sinθ) (11)
(2)回折光が0次透過光に対して負の側に存在する場合(図7〜図10のとは反対)、
γ2≦γ1
sinγ2≦sinγ1
式(9)と式(10)を用いると、
sinθ+(sinβ2STD−sinθ)×λMIN/λSTD
≦sinθ+(sinβ1STD−sinθ)×λMAX/λSTD
(sinβ2STD−sinθ)/λMIN ≦(sinβ1STD−sinθ)×λMAX
sinβ2STD<sinθであるから、
λMIN/λMAX≧(sinβ1STD−sinθ)/(sinβ2STD−sinθ) (11)
従って、式(11)は回折光が正の側、負の側のいずれのときも成り立つ式である。
この式(11)は、照明光の入射角θ、所望の観察波長範囲λMIN〜λMAXを設定したときに、ある基準波長λSTDにおける回折角度範囲β1STD〜β2STDをこの式(11)を満足するように設定すれば、所望の観察波長範囲λMIN〜λMAX全てを同時に観察可能な範囲γ1〜γ2が存在することを意味している。
また、式(11)を変形すると、
sinθ≧λMAXsinβ1STD−λMINsinβ2STD)/(λMAX−λMIN) (12)
となる。
この式(12)は、所望の観察波長範囲λMIN〜λMAX、ある基準波長λSTDにおける回折角度範囲β1STD〜β2STDを与えたときに、この式(12)を満足するような照明光の入射角θを設定した場合にのみ、所望の観察波長範囲λMIN〜λMAX全てを同時に観察可能な範囲γ1〜γ2が存在することを意味している。
なお、以上では、要素ホログラム1の法線と照明光3が含まれる平面内についてのみ考えたが、要素ホログラム1の法線を含みその平面に直交する面内では、照明光の両側に回折光が分布することを前提にしているので、この面内の方向においては、最短波長λMINでの分布範囲が白色に観察できる領域であり、その範囲は基準波長λSTDでの観察領域を上記と同様に変換することにより求められる。
次に、本実施形態に係る実施例1のスクリーン10を用いた投影光学系20(以下、投影システムともいう。)について説明する。本実施形態の投影システムは、プロジェクタPと、スクリーン10と、を備える。また、観察者が白色観察することが可能な領域を白色観察域Eとする。
座標系は、スクリーン10をxy平面とし、スクリーン10のプロジェクタ側の法線方向にz軸をとることとする。そして、スクリーン10は、x = -50mm 〜 x = 50mm、y = -40mm 〜 y = 40mm、z = 0mmとする。また、プロジェクタPは、x = 0mm、y = 160.76mm、z = 600mmからスクリーン10に映像を投影するものとする。さらに、観察者の白色観察域Eを、x = -50mm 〜 x = 50mm、y = -25mm 〜 y = 25mm、z = 600mmとする。白色光の波長は、λmin = 450nm 〜 λmax = 615nmとする。すなわち、白色光は、可視光帯域の周波数成分を万遍なく含んだ光線で、どの波長も強さが一様の光をいう。
まず、本実施形態に係る実施例1のスクリーン10を用いた投影光学系20の上下方向の設計角度について説明する。
図11は、本実施形態に係る実施例1のスクリーンを用いた投影光学系の上下方向の設計角度を示す。
ここでは、図1に示したように、スクリーンの上端(y = 40mm)から下端(y = -40mm)までを4つの横ブロックに分割し、それぞれの横ブロック内では同じ光学設計の要素ホログラム1を敷き詰めた要素ホログラム群11で形成する場合を考える。
1番上の第1横ブロック12Aは、第1要素ホログラム1Aが敷き詰められ、上端y = 40mm、下端y = 20mmとなる。プロジェクタから第1横ブロック12Aの上端(y = 40mm)に入射した白色光は、スクリーン10によって反射及び拡散されるが、白色光に含まれる最短波長(λmin = 450nm)から最長波長(λmax = 615nm)までの全ての波長が、白色観察域Eの上端(y = 25mm)から下端(y = -25mm)の範囲に到達する必要がある。
また、プロジェクタPから第1横ブロック12Aの下端(y = 20mm)に入射した白色光は、スクリーン10によって反射及び拡散されるが、白色光に含まれる最短波長(λmin = 450nm)から最長波長(λmax = 615nm)までの全ての波長が、白色観察域Eの上端(y = 25mm)から下端(y = -25mm)の範囲に到達する必要がある。
プロジェクタPから第1横ブロック12Aの上端への入射角は、光がスクリーン10で反射することを考慮するとθ1in = -11.38°となる。一方、第1横ブロック12Aの上端から白色観察域Eの上端への角度は、θ1out1 = -1.43°、第1横ブロック12Aの上端から白色観察域Eの下端への角度はθ1out2 = -6.18°となる。
また、プロジェクタPから第1横ブロック12Aの下端への入射角は、光がスクリーン10で反射することを考慮するとθ2in = -13.20°となる。一方、第1横ブロック12Aの下端から白色観察域Eの上端への角度は、θ2out1 = 0.48°、第1横ブロック12Aの下端から白色観察域の下端への角度はθ2out2 = -4.29°となる。
最短波長λmin = 450nm及び最長波長λmax = 615nmのそれぞれの光に関し、プロジェクタPから第1横ブロック12Aの上端及び下端のそれぞれに入射した白色光が、白色観察域Eの上端から下端の範囲に到達する条件をそれぞれ d = λ / (sinθout − sinθin) の式で計算すると、スクリーン10の第1横ブロック12Aが、格子間隔1901nmから6862nmまでの回折格子群で形成されている必要がある。
図12は、本実施形態に係る実施例1のスクリーンを用いた投影光学系の第1横ブロックにおける上下方向の回折範囲を示す。
これらの回折格子群で形成された第1要素ホログラム1Aをスクリーン10に用いた場合、第1横ブロック12Aの上端において、白色光の最短波長は-7.57°から2.26°まで9.83°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-6.18°から7.25°まで13.43°の範囲に拡散する。
また、第1横ブロック12Aの下端において、白色光の最短波長は-9.37°から0.48°まで9.85°の範囲に拡散反射し、白色光の最長波長は、-7.98°から5.46°まで13.44°の範囲に拡散する。
図13は、本実施形態に係る実施例1のスクリーンを用いた投影光学系の第2横ブロックにおける上下方向の回折範囲を示す。
第2横ブロック12Bは、上端y = 20mm、下端y = 0mmとなり、第2横ブロック12Bの上端から下端まで、1種類の光学仕様の第2要素ホログラム1Bを敷き詰めて形成する場合、格子間隔1498nmから4003nmまでの回折格子群で形成されている必要がある。
このとき、第2横ブロック12Bの上端において、白色光の最短波長は-6.66°から4.13°まで10.79°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-4.29°から10.50°まで14.79°の範囲に拡散する。また、第2横ブロック12Bの下端において、白色光の最短波長は-8.42°から2.39°まで10.80°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-6.04°から8.73°まで14.77°の範囲に拡散する。
図14は、本実施形態に係る実施例1のスクリーンを用いた投影光学系の第3横ブロックにおける上下方向の回折範囲を示す。
第3横ブロック12Cは、上端y = 0mm、下端y = -20mmとなり、第3横ブロック12Cの上端から下端まで、1種類の光学仕様の第3要素ホログラム1Cを敷き詰めて形成する場合、格子間隔1239nmから2832nmまでの回折格子群で形成されている必要がある。
このとき、第3横ブロック12Cの上端において、白色光の最短波長は-5.73°から6.00°まで11.73°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-2.39°から13.75°まで16.13°の範囲に拡散する。また、第3横ブロック12Cの下端において、白色光の最短波長は-7.44°から4.29°まで11.73°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-4.09°から12.00°まで16.09°の範囲に拡散する。
図15は、本実施形態に係る実施例1のスクリーンを用いた投影光学系の第4横ブロックにおける上下方向の回折範囲を示す。
第4横ブロック12Dは、上端y = -20mm、下端y = -40mmとなり、第4横ブロック12Dの上端から下端まで、1種類の光学仕様の第4要素ホログラム1Dを敷き詰めて形成する場合、格子間隔1059nmから2195nmまでの回折格子群で形成されている必要がある。
このとき、第4横ブロック12Dの上端において、白色光の最短波長は-4.79°から7.85°まで12.64°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-0.48°から17.00°まで17.48°の範囲に拡散する。また、第4横ブロック12Dの下端において、白色光の最短波長は-6.45°から6.18°まで12.63°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-2.13°から15.28°まで17.41°の範囲に拡散する。
図16は、本実施形態に係る実施例1のスクリーンを用いた投影光学系の上下方向の回折範囲を示す。
白色光の最長波長の拡散範囲に関して、本実施例のように上下方向に4分割にした場合と、上下方向に分割なしの場合を比較すると、分割なしの場合、スクリーン10の上端での拡散範囲は28.74°、スクリーン10の下端での拡散範囲は28.44°であるのに対し、実施例1の場合、スクリーン10の上端(=第1横ブロック12Aの上端)での拡散範囲は13.43°、スクリーン10の下端(=第4横ブロック12Dの下端)での拡散範囲は17.41°であり、スクリーン10の上端でも下端でも、概ね半分の拡散範囲になっている。拡散範囲が狭いということは、それだけ拡散光が狭い範囲に集中して拡散するため、半分の拡散範囲であれば2倍の輝度となる。
次に、実施例1のスクリーン10を上下方向に4分割した場合と同様に、スクリーン10を上下方向に10分割した場合を考える。
図17は、本実施形態のスクリーンを上下方向に10分割した投影光学系の上下方向の回折範囲を示す。
本実施形態のスクリーンを上下方向に10分割した場合、実施例1のスクリーン10を上下方向に4分割した場合と同様に計算すると、スクリーン10の上端での拡散範囲は、白色光の最短波長で7.62°、白色光の最長波長で10.40°、スクリーン10の下端での拡散範囲は、白色光の最短波長で11.06°、白色光の最長波長で15.27°となる。したがって、4分割した場合よりもさらに拡散範囲が狭くなっている。
次に、実施例1のスクリーン10を上下方向に4分割した場合と同様に、スクリーン10を上下方向に20分割した場合を考える。
図18は、本実施形態のスクリーンを上下方向に20分割した投影光学系の上下方向の回折範囲を示す。
本実施形態のスクリーンを上下方向に10分割した場合、実施例1のスクリーン10を上下方向に4分割した場合と同様に計算すると、スクリーン10の上端での拡散範囲は、白色光の最短波長で6.88°、白色光の最長波長で9.39°、スクリーン10の下端での拡散範囲は、白色光の最短波長で10.54°、白色光の最長波長で14.56°となる。
したがって、10分割した場合よりもさらに拡散範囲が狭くなっている。分割数を増やすと拡散範囲が狭くなり輝度向上効果が高まるが、EB描画やレーザー描画用のデータ量が増え、生産性は低くなる。データ量と輝度向上効果はトレードオフとなり、10分割程度が適切な分割数と言える。
実施例1のスクリーン10によれば、各ブロックごとに、プロジェクタPから各ブロックに入射した白色光に含まれる最短波長λminから最長波長λmaxまでの全ての波長が、白色観察域Eの上端から下端の範囲に到達するように各要素ホログラムを作製しているため、各要素ホログラム1で的確に回折光を出射させることができ、等方散乱する光の拡散角度範囲よりも狭い所定の白色観察域EにおいてプロジェクタPの映像を高輝度に白色観察することが可能となる。また、各ブロック12内の各要素ホログラム1を同じ仕様とすることができ、データ量を少なくすることができる上、容易にシームレス多面付けをすることが可能となり、短期間に低コストで製造することが可能となる。
次に、本実施形態に係る実施例2のスクリーン10を用いた投影光学系20について説明する。
図19は、本実施形態に係る実施例2のスクリーンを用いた投影光学系の第1縦ブロックにおける左右方向の設計角度を示す。
ここでは、図3に示したように、スクリーンの左端(x = 50mm)から右端(x = -50mm)までを4つの縦ブロック13に分割し、それぞれの縦ブロック13内では同じ光学設計の要素ホログラム1を敷き詰めて形成する場合を考える。
1番左の第1縦ブロック13Aは、左端x = 50mm、右端x = 25mmとなる。プロジェクタから第1縦ブロック13Aの左端(x = 50mm)に入射した白色光は、スクリーンによって反射及び拡散されるが、白色光に含まれる最短波長(λmin = 450nm)から最長波長(λmax = 615nm)までの全ての波長が、白色観察域Eの左端(x = 50mm)から右端(x = -50mm)の範囲に到達する必要がある。
また、プロジェクタPから第1縦ブロック13Aの右端(x = 25mm)に入射した白色光は、スクリーン10によって反射及び拡散されるが、白色光に含まれる最短波長(λmin = 450nm)から最長波長(λmax = 615nm)までの全ての波長が、白色観察域Eの左端(x = 50mm)から右端(x = -50mm)の範囲に到達する必要がある。
プロジェクタPから第1縦ブロック13Aの左端への入射角は、光がスクリーン10で反射することを考慮するとθ1in = 4.76°となる。一方、第1縦ブロック13Aの左端から白色観察域Eの左端への角度は、θ1out1 = 0.00°、第1縦ブロック13Aの左端から白色観察域Eの右端への角度はθ1out2 = -9.46°となる。
また、プロジェクタPから第1縦ブロック13Aの右端への入射角は、光がスクリーン10で反射することを考慮するとθ2in = 2.39°となる。一方、第1縦ブロック13Aの右端から白色観察域Eの左端への角度は、θ2out1 = 2.39°、第1縦ブロック13Aの右端から白色観察域の右端への角度はθ2out2 = -7.13°となる。
最短波長λmin = 450nm及び最長波長λmax = 615nmのそれぞれの光に関し、プロジェクタPから第1縦ブロック13Aの左端及び右端のそれぞれに入射した白色光が、白色観察域Eの左端から右端の範囲に到達する条件をそれぞれ d = λ / (sinθout − sinθin)の式で計算すると、第1縦ブロック13Aの左端から右端まで、1種類の光学仕様の第1要素ホログラム1Aを敷き詰めて形成する場合、格子間隔-1819nmから-∞までの回折格子群で形成されている必要がある。なお、格子間隔∞は、格子の空間周波数が0であることを表す。
格子間隔がマイナスの値となっているが、これは、入射角に対して出射角が小さいためであり、マイナス1次回折光を利用することを意味する。格子間隔がプラスの値の場合と比べ、入射光に対する回折の方向が反対になる。
図20は、本実施形態に係る実施例2のスクリーンを用いた投影光学系の第1縦ブロックにおける左右方向の回折範囲を示す。
これらの回折格子群で形成された第1要素ホログラム1Aをスクリーン10に用いた場合、第1縦ブロック13Aの左端において、白色光の最短波長は-9.46°から4.76°まで14.23°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-14.78°から4.76°まで19.54°の範囲に拡散する。
また、第1縦ブロック13Aの右端において、白色光の最短波長は-11.88°から2.39°まで14.26°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-17.25°から2.39°まで19.64°の範囲に拡散する。
図21は、本実施形態に係る実施例2のスクリーンを用いた投影光学系の第2縦ブロックにおける左右方向の回折範囲を示す。
左から2番目の第2縦ブロック13Bは、左端x = 25mm、右端x = 0mmとなり、第2縦ブロック13Bの左端から右端まで、1種類の光学仕様の第2要素ホログラム1Bを敷き詰めて形成する場合、格子間隔-2716nmから5419nmまでの回折格子群で形成されている必要がある。
以上の結果、スクリーン10の左端から右端まで、1種類の光学仕様の要素ホログラム1を敷き詰めて形成する場合、格子間隔-2716nm〜2716nmまでの回折格子群で形成されている必要がある。ここで、格子間隔がマイナスの値からプラスの値にわたっているが、この場合には、格子間隔-2716nm〜-∞および∞〜2716nmの間隔の回折格子群で形成されていることを意味する。格子間隔の範囲がプラスの値とマイナスの値を含む場合、格子間隔の逆数で考えると、必要な格子間隔の範囲が明確となる。スクリーン10の左端の格子間隔は-2716nm〜-5419nmの範囲、スクリーン10の右側の格子間隔は2716nm〜5419nmの範囲であるが、格子間隔の逆数をそれぞれ求めると、スクリーン10の左端は-1/2716〜-1/5419の範囲、スクリーン10の右端は1/2716〜1/5419の範囲であり、そのすべてを含む範囲は、-1/2716〜1/2716となる。つまり、必要な格子間隔の範囲はその逆数の、-2716nm〜-∞および∞〜2716nmとなる。以降、-∞と∞の記載は省略し、回折格子の範囲を-2716nm〜2716nmという記載にする。
このとき、第2縦ブロック13Bの左端において、白色光の最短波長は-7.13°から7.16°まで14.29°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-10.65°から8.92°まで19.57°の範囲に拡散する。また、第2縦ブロック13Bの右端において、白色光の最短波長は-9.54°から4.76°まで14.30°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-13.09°から6.52°まで19.60°の範囲に拡散する。
図22は、本実施形態に係る実施例2のスクリーンを用いた投影光学系の第3縦ブロックにおける左右方向の回折範囲を示す。
左から3番目の第3縦ブロック13Cは、左端x = 0mm、右端x = -25mmとなり、第3縦ブロック13Cの左端から右端まで、1種類の光学仕様の第3要素ホログラム1Cを敷き詰めて形成する場合、格子間隔-5419nmから2716nmまでの回折格子群で形成されている必要がある。
このとき、第3縦ブロック13Cの左端において、白色光の最短波長は-4.76°から9.54°まで14.30°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-6.52°から13.09°まで19.60°の範囲に拡散する。また、第3縦ブロック13Cの右端において、白色光の最短波長は-7.16°から7.13°まで14.29°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-8.92°から10.65°まで19.57°の範囲に拡散する。
図23は、本実施形態に係る実施例2のスクリーンを用いた投影光学系の第4縦ブロックにおける左右方向の回折範囲を示す。
左から4番目の第4縦ブロック13Dは、左端x = -25mm、右端x = -50mmとなり、第4縦ブロック13Dの左端から右端まで、1種類の光学仕様の第4要素ホログラム1Dを敷き詰めて形成する場合、格子間隔∞から1819nmまでの回折格子群で形成されている必要がある。なお、格子間隔∞は、格子の空間周波数が0であることを表す。
このとき、第4縦ブロック13Dの左端において、白色光の最短波長は-2.39°から11.88°まで14.26°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-2.39°から17.25°まで19.64°の範囲に拡散する。また、第4縦ブロック13Dの右端において、白色光の最短波長は-4.76°から9.46°まで14.23°の範囲に拡散し、白色光の最長波長は、-4.76°から14.78°まで19.54°の範囲に拡散する。
図24は、本実施形態に係る実施例2のスクリーンを用いた投影光学系の左右方向の回折範囲を示す。
白色光の最長波長の拡散範囲に関して、本実施例のように左右方向に4分割にした場合と、左右方向に分割なしの場合を比較すると、分割なしの場合、スクリーン10の左端での拡散範囲は39.69°、スクリーン10の右端での拡散範囲は39.69°であるのに対し、4分割の場合、スクリーン10の左端(=第1縦ブロック13Aの左端)での拡散範囲は19.54°、スクリーン10の右端(=第4縦ブロック13Dの右端)での拡散範囲は19.54°であり、スクリーン10の左端でも右端でも、概ね半分の拡散範囲になっている。拡散範囲が狭いということは、それだけ拡散光が狭い範囲に集中して拡散するため、半分の拡散範囲であれば2倍の輝度となる。
次に、実施例2のスクリーン10を左右方向に4分割した場合と同様に、スクリーン10を左右方向に10分割した場合を考える。
図25は、本実施形態のスクリーンを左右方向に10分割した投影光学系の左右方向の回折範囲を示す。
本実施形態のスクリーンを左右方向に10分割した場合、実施例2のスクリーン10を左右方向に4分割した場合と同様に計算すると、スクリーン10の左端での拡散範囲は、白色光の最短波長で12.13°、白色光の最長波長で16.68°、スクリーン10の右端での拡散範囲は、白色光の最短波長で12.13°、白色光の最長波長で16.68°となる。すなわち、4分割した場合よりもさらに拡散範囲が狭くなっている。
次に、実施例2のスクリーン10を左右方向に4分割した場合と同様に、スクリーン10を左右方向に20分割した場合を考える。
図26は、本実施形態のスクリーンを左右方向に20分割した投影光学系の左右方向の回折範囲を示す。
本実施形態のスクリーンを左右方向に10分割した場合、実施例2のスクリーン10を左右方向に4分割した場合と同様に計算すると、スクリーン10の左端での拡散範囲は、白色光の最短波長で11.43°、白色光の最長波長で15.73°、スクリーン右端での拡散範囲は、白色光の最短波長で11.43°、白色光の最長波長で15.73°となる。
したがって、10分割した場合よりもさらに拡散範囲が狭くなっている。分割数を増やすと拡散範囲が狭くなり輝度向上効果が高まるが、EB描画やレーザー描画用のデータ量が増え、生産性は低くなる。データ量と輝度向上効果はトレードオフとなり、10分割程度が適切な分割数と言える。
実施例2のスクリーン10によれば、各ブロックごとに、プロジェクタPから各ブロックに入射した白色光に含まれる最短波長λminから最長波長λmaxまでの全ての波長が、白色観察域Eの左端から右端の範囲に到達するように各要素ホログラムを作製しているため、各要素ホログラム1で的確に回折光を出射させることができ、等方散乱する光の拡散角度範囲よりも狭い所定の白色観察域EにおいてプロジェクタPの映像を高輝度に白色観察することが可能となる。また、各ブロック13内の各要素ホログラム1を同じ仕様とすることができ、データ量を少なくすることができる上、容易にシームレス多面付けをすることが可能となり、短期間に低コストで製造することが可能となる。
このように、本実施形態の計算機合成ホログラムによれば、第1の入射角で入射した入射光を特定の角度範囲に拡散する複数の第1要素ホログラム1Aを配列した第1ブロック12A,13Aと、第2の入射角で入射した入射光を特定の角度範囲に拡散する複数の第2要素ホログラム1Bを配列した第2ブロック12B,13Bと、を少なくとも有し、第1要素ホログラム1A及び前記第2要素ホログラム1Bに入射した白色光はそれぞれ拡散し、拡散した前記白色光が、白色光として所定の白色観察域に到達するので、容易に大型化及び薄型化することができ、高輝度で白色観察をすることが可能となる。
また、本実施形態の計算機合成ホログラムでは、第1ブロック12A,13Aと第2ブロック12B,13Bは、並列に配置されるので、生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態の計算機合成ホログラムでは、第1ブロック12A,13Aと第2ブロック12B,13Bは、第1方向に長辺を有し、前記第1方向に直交する第2方向に短辺を有する長方形状にそれぞれ形成され、第2方向に並列して配置されるので、単純な形状となり、さらに生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態の計算機合成ホログラムでは、第1ブロック12A,13Aは、複数の第1要素ホログラム1Aが2次元的に配列された複数の第1要素ホログラム群11Aを含み、第2ブロック12B,13Bは、複数の第2要素ホログラム1Bが2次元的に配列された複数の第2要素ホログラム群11Bを含むので、予め要素ホログラム群を形成しておくことで、さらに生産性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態の計算機合成ホログラムでは、第1要素ホログラム群11Aと第2要素ホログラム群11Bの形状は、正方形からなるので、単純な形状となり、さらに生産性を向上させることが可能となる。
さらに、本実施形態の拡散板は、前記計算機合成ホログラムを含み、複数の要素ホログラム1に入射した白色光が拡散し、拡散した白色光が、白色光として所定の白色観察域に到達するので、高輝度で白色観察をすることが可能となる。
さらに、本実施形態のプロジェクタ用スクリーン10は、前記拡散板を含み、プロジェクタが所定の角度で出射した所定の白色光を拡散するので、高輝度で白色観察をすることが可能となる。
さらに、本実施形態の投影システムは、前記プロジェクタ用スクリーンと、プロジェクタ用スクリーンに所定の角度で所定の白色光を出射するプロジェクタと、を備えるので、高輝度で白色観察をすることが可能となる。
以上、計算機合成ホログラム、拡散板、プロジェクタ用スクリーン、及び投影システムをいくつかの実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。