JP6356540B2 - 排水処理装置および排水処理方法 - Google Patents
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Description
この場合、溶融した炉心の冷却には、大量の海水を原子炉建屋に撒布する方法がある。
この方法を用いると、機械油などの油脂成分および放射性核種を含む大量の海水が原子炉建屋の地下に溜まることになる。
放射性核種を含まない排水に対する不純物の除去方法は、様々なものが提案されている。
また、放射性核種の除去については、ゼオライトなどの吸着剤を充填した吸着塔に汚染水を通水させる方法が効果的である。
吸着塔の内部に残留した油脂成分は、吸着塔の放射性核種の吸着能力を低下させる。
つまり、吸着塔に油脂成分が残留することにより、排水から放射性核種が十分に除去されず、通水後の排水の放射能を基準値以下にすることができない恐れがある。
また、残留した油脂成分は、吸着塔の放射性核種の吸着能力の低下速度を速め、吸着剤の交換までの期間をも短くする。
放射性廃棄物となった粉末活性炭は、放射性核種を含まない一般的な活性炭と異なり、再利用や容易な処分ができない。
また、例えば、この粉末活性炭を濃縮・減容する場合も、放射線が有機物を劣化させてしまうため、有機物からなる中空糸膜などを用いることができない。
よって、排水から放射性核種を除去する場合、除去に用いた吸着剤などの放射性廃棄物の保存方法および処理方法についても考慮する必要がある。
図1は、第1実施形態にかかる排水処理装置10の概略構成図である。
また、吸着槽13の供給口に接続されて油脂層11a(11)および水層11b(11)が形成された排水11から油脂層11aを除去する除去部22を備える。
排水収集管h0は、排水11の流量を調整する排水収集弁V0を備えて、排水処理装置10の除去部22に接続される。
また、排水11に界面活性剤が混入しているなどで層を形成していなくても、界面活性剤などを取り除くことで容易に層にすることができる。
排水11を容易に層状にすることができる場合、除去部22において、この排水11から油脂層11aが除去される。
そして、デカントライン22aは油脂保管部52に接続される。
デカントライン22aで除去部22から抜き取られた油脂層11aの油脂成分は、油脂保管部52に保管される。
また、デカントライン22aは、油脂層11aを抜き取るものでも水層11bを抜き取るものでもよい。
つまり、水層11bの油脂成分の濃度が5000ppm程度以下となれば、油脂層11aが僅かに残留し、または油脂成分が水層11bに溶け込んでいてもよい。
水層11bを排出する除去部22の排出口は、水層弁V1を備える水層管h1によって吸着槽13に接続される。
なお、油脂成分が微量なため油脂成分の容易な除去ができない場合、除去部22における油脂成分の除去作業は省略することができる。
除去作業を省略する場合、排水収集管h0は、直接吸着槽13の供給口に接続される。
水層11bが吸着槽13に供給されると、第1供給弁V2が開放されて吸着剤添加部20から吸着槽13に吸着剤12が添加される。
吸着剤12は、例えば粉末活性炭またはゼオライトなど、排水11から放射性核種および油脂成分を吸着させるものである。
特に、排水処理装置10で生成された固化体29は焼却によって最終処分されることを予定しているので、吸着剤12にはより燃焼が容易な粉末活性炭を用いるのがよい。
よって、吸着剤12の添加量は、水層11bにおける吸着剤12の濃度が5000ppm以下となるようにするのが望ましい。
よって、吸着剤12の添加量は水層11bにおける吸着剤12の濃度が300ppm以上であることが必要である。
これらの条件を考慮すると、吸着剤12の添加量は、水層11bにおける吸着剤12の濃度が1000ppm程度とするのが望ましい。
油脂成分のみを吸着するものと放射性核種のみを吸着させるものを組み合わせて吸着剤として使用してもよい。
貯留時間は、水層11bにおける油脂成分および放射性核種の濃度が5000ppm程度以下となるように設定される。
貯留時間は、吸着槽13に水層11bが供給された時点における油脂成分および放射性核種の濃度に合わせて自由に変更できる。
後述する実施例1では、撹拌時間を15分とすることで、油脂成分を十分吸着されたことが確認された。
このように、吸着剤12および排水11の混合水11cを吸着槽13に一定時間貯留することで、油脂成分および放射性核種が吸着剤12に吸着される。
吸着槽13は、回収弁V3が設けられた回収管h3を介して混練部19に接続される。
分離部16には、フィルタ、クラッドセパレータ、フィルタプレス、遠心分離器またはデカンタなどが用いられる。
特に、図1で例示しているクロスフローろ過器16a(16)は、ろ過効率を長期間維持することができて好適に用いることができる。
一方、クロスフローろ過器16aの流出口と吸着槽13とは、復路弁V5が設けられた復路管h5によって接続される。
そして、クロスフローろ過器16aは、水層11bから浄化水14を分離して吸着剤12が濃縮された吸着剤濃縮泥15を生成する。
そして、浄水槽24において水質分析で安全性が確認されてから、放出弁V7が開放されて放出管h7から自然環境に放出される。
混練部19には、第3供給弁V9を備える第3供給管h9によって、融解した助燃固化剤17を供給する助燃剤供給部25が接続される。
混練部19は、吸着剤濃縮泥15をこの融解した助燃固化剤17とともに混練して、混練体18を生成する。
これらの助燃固化剤17は、いずれも炭素数が12〜30の直鎖脂肪族系の炭素化合物で、65〜70℃の融点を有するものである。
よって、これらの助燃固化剤17は、加熱によって融解するとともに常温で固化する性質を有する。
特に、入手の容易性の観点から、助燃固化剤17として、パラフィンワックスが好適に用いられる。
なお、助燃固化剤17として、助燃作用のある助燃剤と固化作用のある固化剤とで別個のものをそれぞれ添加してもよい。
リン酸エステルが吸着された吸着剤12を焼却すると、リンがリン酸となって揮発して、焼却炉33の内部に拡散してしまうからである。
拡散したリン酸は、焼却炉33の内部の金属や耐火物を腐食させる。
そこで、上述のCa元素を含む長鎖脂肪酸を助燃固化剤17として用い、リンとカルシウムを反応させてリンによる腐食を防止する。
この場合、混練部19は、第4供給弁V12が設けられた第4供給管h12でCa投与部53に接続されて、このCa投与部53からCa含有物54の供給を受ける。
吸着剤濃縮泥15および助燃固化剤17は、加熱部23で加熱されながら混練機28で混練される。
混練された吸着剤濃縮泥15および助燃固化剤17は、エマルジョン状の混練体18となる。
そこで、必要に応じて、混練部19に吸水剤投与部26を設置して、吸着剤濃縮泥15に吸水剤27を投与する。
吸水剤27としては、例えばアクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物などの高分子ポリマーが好適に使用できる。
吸水剤27は、水分量、粒子径または混合時間など混練体18の状態に合わせて適宜選択すればよい。
吸着剤濃縮泥15と同様に、油脂層11aも最終処分が必要な放射性廃棄物であるからである。
ただし、油脂層11aは、吸着剤濃縮泥15とは別系統で独立して助燃固化剤17が添加されて、固化体29とは異なる成分の固化体にされてもよい。
成型部21は、助燃固化剤17を固化させて混練体18を成型する。
エマルジョン状の混練体18は、この鋳型の成型部21に流し込まれて一定の期間常温で静置される。
この固化体29は、吸水剤27によって乾燥されているとともに助燃固化剤17が混合されているので、単体での焼却が可能である。
また、この固化体29は、積み上げが可能であるので、すぐに焼却しない場合でも、例えば、ドラム缶31などに積み上げて収容して貯蔵することもできる。
押出し成型の場合、成型部21は、例えば、混練部19に設けられる口金、口金から連続的に排出される角材状の混練体18を載せるベルトコンベアおよび混練体18を切断する切断刃などである。
図2は、クロスフローろ過器16aの概略断面図である。
また、図3(A)はクロスフローろ過器16aを構成するクロスフローフィルタ16a1の一例を示す断面斜視図、図3(B)は図3(A)で示されるクロスフローフィルタ16a1の変形例を示す断面斜視図である。
デッドエンドろ過方式では、ろ過が進むにつれてフィルタ表面に不透過成分が堆積して、ろ過率が低下するとともに、フィルタの目詰まりが発生しやすい。
一方、クロスフローろ過方式では、図2に示されるように、中空柱で複数の流水路46を形成するクロスフローフィルタ16a1を備えるクロスフローろ過器16aが用いられる。
ここで、排水処理装置10が処理する排水11は放射性核種を含むので、頻繁に排水処理装置10の近傍に立ち入ることは好ましくない。
そこで、排水処理装置10で使用する分離部16には、目詰まり、ろ過率の低下またはこれらに関する点検などの頻度を抑制することができるクロスフローろ過器16aを用いるのが好ましい。
クロスフローろ過器16aは、内部に、これらのクロスフローフィルタ16a1が数本〜数百本並置されて構成される。
クロスフローフィルタ16a1は、セラミック、カーボンまたはプラスチックなどの素材からなり、数μm程度の無数の微細孔を有する。
この流水路46に、吸着剤12を含む排水11を通流させて、微細粒子のみを壁面の微細孔に浸透させることで、浄化水14を外部へ湧出させる。
排水11は、ろ過ポンプ32の動力でクロスフローろ過器16aおよび吸着槽13を連続的に循環して徐々に吸着剤濃縮泥15が濃縮されていく。
収集した排水11は、除去部22に一定期間静置することで、油脂層11aと水層11bとに分離する。
そこで、油脂層11aと水層11bとに分離した排水11から、油脂層11aを除去する(除去ステップS12)。
水層11bに残留した微量の油脂層11aおよび溶け込んだ油脂成分の全体の油脂成分の濃度は、5000ppm程度以下とするのが望ましい。
そして、第1供給弁V2を開放して吸着剤添加部20から吸着剤12を水層11bに供給する(供給ステップS13)。
そして、油脂成分の濃度が5000ppm程度となるように算出された一定時間の間吸着槽13において貯留される(吸着ステップS14)。
また、撹拌によって、油脂成分の濃度のムラの発生を防止することができる。
さらに、吸着剤12の吸着機能が低下してきた場合、この低下に合わせて貯留時間を長くすることで排水11の浄化機能を長期間にわたり高く維持させることができる。
分離ステップ(S15〜S20)では、まず、水層弁V1および第1供給弁V2を閉止し、往路弁V4および復路弁V5を開放して、ろ過ポンプ32を起動させる。
ろ過ポンプ32は、排水11を吸着槽13と分離部16とで繰り返し循環させて吸着剤濃縮泥15へと濃縮させる(S15)。
回収された浄化水14は、水質分析によって安全が確認されてから(S18)、例えば、自然環境へ放出される(S19)。
十分な吸着剤濃縮泥15が生成されたら、ろ過ポンプ32を停止させて、往路弁V4および復路弁V5を閉止する。
残留した吸着剤濃縮泥15は、回収管h3に設けられた回収弁V3を開放して混練部19へ流下させる。
また、油脂回収弁V11を開放して、混練部19に排水11から除去された油脂層11aの油脂成分を流下させる。
このとき、添加される吸水剤27は、吸着剤濃縮泥15の質量に対して0.01〜0.05程度が望ましい。
また、油脂成分がリン酸エステルである場合は、Ca投与部53からCa含有物54を供給する。
混練体18は、一定時間静置されて冷却され、固化して、固化体29となる(成型ステップS24)。
そして、固化体29は、焼却炉33で焼却されて最終処分がなされる(S25)。
なお、油脂層11aは、混練ステップS22で吸着剤濃縮泥15に供給されずに、吸着剤濃縮泥15とは別個に固化されてもよい。
また、発生した放射性廃棄物を固化体29にすることで、吸着した吸着剤12を焼却による最終処分までの間に取り扱いやすい形態にすることができる。
図4は、第2実施形態にかかる排水処理装置10の概略構成図である。
なお、図4において図1で示したCa投与部53は省略している。
例えば、水層11bの油脂成分または放射性核種の濃度が高い場合、吸着剤12の供給量を多くする必要がある。
分離部16は、排水処理装置10の構成部材のうちで高価であるとともに比較的高い頻度でメンテナンスが必要となる部材である。
よって、分離部16で吸着剤12と浄化水14とを分離する前に、水層11bに含まれる吸着剤12の分量をできるだけ少なくする必要がある。
予備分離部57は、例えば、図4に示されるように、深底形状の沈降分離槽57a(57)である。
吸着槽13の排出口は、移送ポンプ61を備える予備分離管h13で予備分離部57に接続される。
沈降分離槽57aにおいて、水層11bが所定時間静置されることで、吸着剤12が沈降分離する。
吸着剤12の沈降分離を促進するために、沈降分離槽57aに凝集剤37を付加して水層11bに浮遊する吸着剤12を凝集させる。
吸着剤12の沈殿物58は、例えばデカンティングなどによって上澄水62と分離される。
吸着剤12の濃度が低い上澄水62は、第1実施形態における混合水11cと同様の手順で分離部16によって吸着剤濃縮泥15が分離される。
すなわち、吸着槽13を沈降分離に十分な深底形状とするとともに、この吸着槽13に凝集剤37を付加することで吸着槽13において吸着剤12の一部を沈降分離させることができる。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
(実施例1)
図6は、実施例1の試験条件および試験結果を示す図である。
実施例1では、まず、第1の水槽に油脂成分を5500ppmの濃度で含む排水を収容してよく撹拌した。
油脂成分が浮上分離して、排水は油脂層および水層の層を形成した。
そこで、水層を第2の水槽に引き抜くことで排水から油脂層を除去した。
このとき、第2の水槽に引き抜かれた水槽成分における油脂成分の濃度は、284ppmとなった。
水層から粉末活性炭を除去後、水層の油脂成分濃度を測定した。
測定の結果、油脂成分濃度は0ppmとなり、油脂成分が完全に除去されたことが確認された。
なお、油脂成分の濃度測定には、HORIBA(登録商標)製のOCMA305を使用した。
粉末活性炭10gに対してパラフィンを15g添加し、混練して混練体を作製した。
作製した混練体について、JIS Z 7302−2の規定に準じて発熱量を測定した。
測定の結果、混練体の発熱量は9000kcal/kg以上となり、自燃可能な熱量となることが確認された。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
Claims (12)
- 放射性核種および油脂成分を含む排水を保持する除去部と、
油脂層および水層が形成された前記除去部内の前記排水から前記油脂層を除去する前記除去部に設けられたデカントラインと、
前記除去部内の前記水層を前記除去部から排出し前記除去部の前記デカントラインよりも下方に設けられた水層管と、
放射性核種および油脂成分を吸着する吸着剤と前記水層管から供給された前記水層との混合水を一定時間貯留する吸着槽と、前記吸着剤を保持し前記吸着剤を前記吸着槽に添加する吸着剤添加部と、
前記吸着槽に接続されて前記混合水から浄化水を分離して前記吸着剤が濃縮された吸着剤濃縮泥を生成する分離部と、
融解した助燃固化剤、前記吸着剤濃縮泥および前記デカントラインによって前記除去部から除去された前記油脂層を混練して混練体を生成する混練部と、
前記助燃固化剤を固化させて前記混練体を成型する成型部と、を備えることを特徴とする排水処理装置。 - 前記吸着槽は、深底形状であることを特徴とする請求項1に記載の排水処理装置。
- 前記吸着槽の排出口および前記混練部の供給口に接続されて前記混合水から前記吸着剤の一部を分離する予備分離部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排水処理装置。
- 前記吸着剤は、活性炭であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の排水処理装置。
- 前記助燃固化剤は、炭素数が12〜30の直鎖脂肪族系の炭素化合物であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の排水処理装置。
- 前記吸着剤濃縮泥にCa元素を含む物質を投与するCa投与部を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の排水処理装置。
- 前記排水に吸水剤を投与する吸水剤投与部を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の排水処理装置。
- 前記助燃固化剤は、炭素数が12〜30でCa元素を含む長鎖脂肪酸であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の排水処理装置。
- 前記吸着槽の排出口および前記混練部の供給口に接続されて前記混合水から前記吸着剤の一部を分離する予備分離部および前記分離部の少なくとも一方は、ろ過器、沈降分離槽、クラッドセパレータ、フィルタプレスおよび遠心分離器から少なくとも1つ選択されるものであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の排水処理装置。
- 前記吸着槽の排出口および前記混練部の供給口に接続されて前記混合水から前記吸着剤の一部を分離する予備分離部および前記吸着槽の少なくとも一方は、前記排水に浮遊する前記吸着剤を凝集させる凝集剤を付加する凝集剤付加部を備えることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の排水処理装置。
- 放射性核種および油脂成分を含む排水に吸着剤を供給する供給ステップと、
前記吸着剤および前記排水の混合水を一定時間貯留する吸着ステップと、
前記混合水から浄化水を分離して前記吸着剤が濃縮された吸着剤濃縮泥を生成する分離ステップと、
前記吸着剤濃縮泥を融解した助燃固化剤とともに混練して混練体を生成する混練ステップと、
前記助燃固化剤を固化させて前記混練体を成型する成型ステップと、前記供給ステップの前段に、油脂層および水層からなる前記排水から前記油脂層を除去する除去ステップと、を含み、
前記混練ステップにおいて、前記除去ステップで除去した前記油脂層を前記吸着剤濃縮泥に混合して混練することを特徴とする排水処理方法。 - 前記吸着ステップの後段に、前記放射性核種および前記油脂成分を吸着した前記吸着剤を沈降分離させる沈降分離ステップを含むことを特徴とする請求項11に記載の排水処理方法。
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