以下、一例として、本発明を適用した実施の形態の複合機(MFP:Multifunction Peripheral)を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、MFPは、例えば印刷機能、複写機能、スキャナ機能、およびファクシミリ機能のうち、1つまたは2つ以上の機能を有する電子機器である。
(概要)
MFP等の画像の読み取りを行う電子機器において、読み取り光学系の主走査位置毎の光量分布のばらつき、およびセンサチップ画素毎の感度のばらつきを補正するために、シェーディング補正が行われる。具体的には、所定の白色を有する濃度基準部材の読み取り結果(シェーディングデータ)を「SD」、入力データを「Din」とし、以下の数1式の演算を行うことで、入力データに対してシェーディング補正を施した結果である「Dout」を得るようになっている。
Dout=Din/SD・・・(数1式)
ここで、シェーディング補正に用いるシェーディングデータの生成時に、濃度基準部材に汚れが付着していると、汚れが付着している箇所のシェーディングデータの値は、正確なシェーディング補正が困難な値となる。これは、例えばライン状のイメージセンサ等の読み取り光学系の主走査方向(画素が並べられている方向)に沿って、濃度基準部材に付着している汚れが付着している箇所に対応する画素の画素データが正確にシェーディング補正されないことを意味している。このため、主走査方向に対して2次元方向に直交する副走査方向に読み取り光学系を走査して生成される1枚の画像上に、濃度基準部材に汚れが付着していた箇所に対応するスジ状のノイズが現れる不都合を生ずる。
具体的には、濃度基準部材に黒い汚れが付着していた場合、黒い汚れにより、読み取り光が吸収され、また、乱反射することで、黒い汚れの付着箇所に対応する画素に対する入射光が、他の箇所よりも少なくなり、生成されるシェーディングデータの値に落ち込みが生ずる。この落ち込みが生じたシェーディングデータをシェーディング補正に用いると、上述の数1式の分母の値が小さくなるため、シェーディング補正結果が大きな値となり、白スジが発生する(シェーディング補正不足)。同様に、濃度基準部材に白い汚れが付着していた場合、白い汚れにより、読み取り光の反射量が多くなる。このため、白い汚れの付着箇所に対応する画素に対する入射光が、他の箇所よりも多くなり、生成されるシェーディングデータの値が大きな値となる。この大きな値となったシェーディングデータをシェーディング補正に用いると、上述の数1式の分母の値が大きくなるため、シェーディング補正結果が小さな値となり、黒スジが発生する(シェーディング補正過多)。
このようなスジ状のノイズの発生を防止するために、シェーディングデータの生成時に、画像読取部のイメージセンサと濃度基準部材との相対的な位置を、可動機構で変更することで、濃度基準部材の汚れおよびキズ等の影響を低減することが考えられる。すなわち、副走査方向にイメージセンサを移動させながら濃度基準部材の複数箇所の読み取りを行う。そして、読み取りを行った複数箇所に対応する各シェーディングデータを平均化する。これにより、汚れおよびキズ等の影響を低減したシェーディングデータを生成できる。または、回転ローラで形成した濃度基準部材を回転させながら複数箇所の読み取りを行う。これにより、汚れおよびキズ等の影響を低減したシェーディングデータを生成できる。
しかし、原稿の裏面を読み取るための密着型イメージセンサ(CIS:Comtact Image Sensor)等の読み取りモジュールは、ADF(Auto Document Feeder)装置内の小スペースに固定して設けられることが多い。このため、濃度基準部材および可動機構をADF装置内に設けると、ADF装置の複雑化、大型化およびコスト高を招く。
ここで、以下の手法により、可動機構を設けなくても濃度基準部材の汚れやキズの影響を低減できる。すなわち、不揮発性メモリに、予め清浄な濃度基準部材で取得した初期のシェーディングデータを格納しておく。初期のシェーディングデータと、原稿を読み取る直前に取得したシェーディングデータを対比する。対比結果が所定以上の画素位置のデータを、汚れまたはキズ等の影響を受けたデータとして判定する。そして、汚れの影響を受けたデータを、汚れの無い初期のシェーディングデータに光量比を補正して置き換えて補間する。なお、光量比は、初期のシェーディングデータと原稿を読み取る直前に取得したシェーディングデータとの主走査全域、または主走査の特定エリア平均値の比である。これにより、可動機構を設けなくても濃度基準部材の汚れやキズの影響を低減できる。
しかし、このような手法においても、汚れを検知して初期のシェーディングデータに置き換えた箇所において、原稿を読み取る直前に取得したシェーディングデータと初期のシェーディングデータのロッドレンズ間隔で発生するリップルムラの振幅差に起因する縦スジが発生する。
一般的に、不揮発性メモリに予め清浄な濃度基準部材で取得した初期のシェーディングデータと、原稿を読み取る直前に取得したシェーディングデータとでは、熱の影響でレンズ間隔にズレが生ずるおそれがある。このレンズ間隔のズレは、不揮発性メモリにシェーディングデータを格納する場所、または、製品が使用される場所等による温度環境の違いが原因で発生する。また、レンズ間隔のズレは、多くの原稿を連続的に読み取った際に(連続スキャン)、LED等の光源部およびASIC等の集積回路の発熱により発生する。LEDは、「Light Emitting Diode」の略記である。ASICは、「Application Specific Integrated Circuit」の略記である。以下、連続スキャン時の熱上昇の影響で、ロットレンズ間隔のリップルムラにより、原稿にスジが発生するメカニズムを説明する。
図1に読み取りモジュール(CIS)の模式図を示す。図1の(a)の符号を付した図は、読み取りモジュールの要部の分解斜視図である。図1の(b)の符号を付した図は、読み取りモジュールの、要部の拡大図である。図1の(c)の符号を付した図は、読み取りモジュールの各ロッドレンズに対応する出力波形を示す図である。
読み取りモジュールは、光源部2から発光された光を、導光体1を介して原稿または濃度基準部材に照射し、図1の(b)の符号を付した図に示す複数のロッドレンズ4aを列状に配置して形成されたロッドレンズアレイ4を介して、反射光をイメージセンサ3の画素3aに集光している。ロッドレンズ4aを用いて反射光を集光していることから、図1の(c)の符号を付した図に示すように、ロッドレンズ4aの中心付近では反射光を集光し易く、出力が高い。しかし、ロッドレンズ4aの端部においては、出力が低下する。このため、ロッドレンズ4aの配置による周期で、出力の高い位置と低い位置が周期的に発生する。
図2の(a)の符号を付した図に、0分時(LED点灯直後)の主走査分布(実線のグラフ)とX分後の主走査分布(点線のグラフ)を示す。この図2の(a)の符号を付した図に示すように、LEDの連続点灯による発熱で、光量の低下が発生すると共に、出力の高い位置と低い位置が経時でシフトする。このような主走査分布のシフトは、ロッドレンズ4aが熱膨張して、径の大きさが変化し、ロッドレンズ4aとイメージセンサ3の位置関係が経時でずれることで発生する。また、主走査分布のシフトは、センサ基板の熱膨張により、主走査方向(画素3aが並べられている方向)に基板が伸び、ロッドレンズ4aとイメージセンサ3の位置関係が経時でずれることで発生する。ロッドレンズ4aとイメージセンサ3の基板の熱膨張率が等しければ、主走査分布のシフトは発生しない。しかし、一般的には、ロッドレンズ4aの熱膨張率よりも、イメージセンサ3の基板の熱膨張率の方が高い。このため、主走査分布のシフトが発生してしまう。
図2の(b)の符号を付した図に、X分後と0分時の出力変化率を示す。なお、図中の出力変化率は、以下の数2式で算出される。
出力変化率=X分後の出力/0分時の出力・・・(数2式)
この図2の(b)の符号を付した図において、X分後の出力のピーク位置は、0分時の出力との差が小さい為、変化率が高くなっている。また、X分後の出力のボトム位置は、0分時の出力との差が大きいため、変化率が低くなっている。また、0分時の出力のピーク位置は、X分後の出力との差が大きい為、変化率が低くなっている。そして、0分時の出力のボトム位置は、X分後の出力との差が小さいため、変化率が高くなっている。このような4つの位置以外の位置では、0分時からX分後まで出力低下量が略々等しいため、均一に変化率が減少する。
仮に、原稿読取時のデータ(0分時)と不揮発性メモリに格納したデータのリップルムラが合っていても、連続スキャン時においてはリップルムラがずれる。このため、不揮発性メモリに格納したデータをシェーディングデータとし、X分後の原稿読み取り時の原稿データに対してシェーディング補正を実施すると、図2の(c)の符号を付した図に示すように、リップルムラがずれている(レンズ集光率がずれている)ことにより、原稿にスジが発生する。すなわち、出力変化率の高い位置と低い位置とで、シェーディング補正後の画像データに明るいスジおよび暗いスジが発生する。このような現象は、不揮発性メモリにシェーディングデータを格納する場所、およびMFPが使用される場所での環境の違いでも同様に発生する現象である。
(第1の実施の形態)
実施の形態のMFPは、以下に説明するように、原稿を読取る直前に取得した汚れのついているシェーディングデータを、汚れの無い初期のシェーディングデータで置き換える際に、初期のシェーディングデータを、原稿読取り前に取得したシェーディングデータのリップルムラと位相が合うように補正する。これにより、濃度基準部材に汚れやキズを検出した際に、原稿を読み取る直前に取得したシェーディングデータのリップルムラと合うように補正した初期のシェーディングデータを用いて、汚れやキズを検出した位置を補間する。このため、出力原稿または出力データに明るいスジ、または、暗いスジが発生する不都合を防止し、正確なシェーディング補正を可能とすることができる。
図3に、実施の形態のMFPの断面図を示す。この図3に示すように、実施の形態のMFPは、自動原稿搬送機構(ADF:Auto Document Feeder)10と、給紙部20と、画像形成部30とを備えている。給紙部20は、用紙サイズの異なる記録紙を収納する給紙カセット21,22を有している。また、給紙部20は、給紙カセット21,22に収納された記録紙を画像形成部30の画像形成位置まで搬送する各種ローラを備えた給紙機構23を有している。
画像形成部30は、露光装置31と、感光体ドラム32と、現像装置33と、転写ベルト34と、定着装置35とを備えている。画像形成部30は、ADF10内部の画像読取部で読み取られた原稿の画像データに基づいて、露光装置31により感光体ドラム32を露光して感光体ドラム32に潜像を形成する。また、画像形成部30は、現像装置33により、感光体ドラム32に異なる色のトナーを供給して現像する。そして、画像形成部30は、転写ベルト34により、感光体ドラム32に現像された像を給紙部20から供給された記録紙に転写した後、定着装置35により記録紙に転写されたトナー画像のトナーを溶融して、記録紙にカラー画像を定着させる。
図4は、ADF10の断面の拡大図である。また、図5は、ADF10を制御するコントローラ11、および、コントローラ11の周辺回路のブロック図である。ADF10は、固定された読取装置部に読取原稿を搬送し、所定の速度で搬送しながら画像の読み取りを行う。ADF10は、原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、第1読取搬送部E、第2読取搬送部F、排紙部G、および、スタック部Hを有する。原稿セット部Aは、読取原稿束をセットする。分離給送部Bは、セットされた原稿束から一枚毎に原稿を分離して給送する。レジスト部Cは、給送された原稿を一次突当整合する働きと、整合後の原稿を引き出し搬送する働きを有する。ターン部Dは、搬送される原稿をターンさせて、原稿面を読取り側(下方)に向けて搬送する。第1読取搬送部Eは、原稿の表面画像を、コンタクトガラスの下方より読取を行わせる。第2読取搬送部Fは、読取後の原稿の裏面画像を読み取る。排紙部Gは、表裏の読取が完了した原稿を機外に排出する。スタック部Hは、読取完了後の原稿を積載保持する。
読み取りを行う原稿束130は、可動原稿テーブル131を含む原稿テーブル132上に、原稿面を上向きの状態でセットする。さらに、原稿束130の幅方向を、図示しないサイドガイドによって、搬送方向と直行する方向に位置決めする。原稿のセットは、セットフィラー133、原稿セットセンサ100により検知され、I/F114により本体制御部122に送信される。
さらに、原稿テーブル面に設けられた原稿長さ検知センサ134または135(反射型センサ、または、原稿1枚も検知可能なアクチュエータータイプのセンサが用いられる)により、原稿の搬送方向長さの概略が判定される。
可動原稿テーブル131は、底板上昇モータ112により、図4中矢印で示すa方向およびb方向に動作可能(上下動可能)な構成となっている。可動原稿テーブル131は、原稿のセットを、セットフィラー133および原稿セットセンサ100で検知すると、底板上昇モータ112を正転させて原稿束130の最上面がピックアップローラ148と接触するように可動原稿テーブル131を上昇させる。ピックアップローラ148は、ピックアップモータ108を駆動源とするカム機構により、図4中矢印で示すc方向およびd方向に動作する。また、ピックアップローラ148は、可動原稿テーブル131が上昇し、可動原稿テーブル131上の原稿上面により押されてc方向に上がり、給紙適正位置センサ102により上限を検知可能となっている。
操作部121よりプリントキーが押下され、本体制御部122からI/F114を介してコントローラ11に原稿給紙信号が送信されると、ピックアップローラ148が、給紙モータ109の正転により回転駆動され、原稿テーブル132上の数枚(理想的には1枚)の原稿をピックアップする。回転方向は、最上位の原稿を給紙口に搬送する方向である。
給紙ベルト136は、給紙モータ109の正転により給紙方向に駆動される。リバースローラ137は、給紙モータ109の正転により、給紙方向と逆方向に回転駆動され、最上位の原稿とその下の原稿を分離して、最上位の原稿のみを給紙する構成となっている。さらに詳しく説明すると、リバースローラ137は、給紙ベルト136と所定圧で接する。リバースローラ137は、給紙ベルト136と直接接している際、または原稿1枚を介して接している状態では、給紙ベルト136の回転につられて反時計方向に回転する。また、リバースローラ137は、給紙ベルト136とリバースローラ137との間に、2枚以上の原稿が侵入した時は、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなるように設定されている。この場合、リバースローラ137は、本来の駆動方向である時計回り方向に回転し、余分な原稿を押し戻す働きをする。これにより、原稿の重送を防止できる。
給紙ベルト136とリバースローラ137との作用により、1枚に分離された原稿は、給紙ベルト136によって更に送られ、突き当てセンサ105によって先端が検知され更に進んで停止しているプルアウトローラ138に突き当たる。その後、原稿は、突き当てセンサ105の検知から所定量定められた距離分、搬送され、プルアウトローラ138に所定量撓みを持って押し当てられる。この状態で、給紙モータ109が停止され、給紙ベルト136の駆動が停止する。この時、ピックアップモータ108を回転させ、ピックアップローラ148を原稿上面から退避させ、原稿を給紙ベルト136の搬送力のみで送る。これにより、原稿の先端部は、プルアウトローラ138の上下ローラ対のニップに進入し、先端部の整合(スキュー補正)が行われる。
プルアウトローラ138は、スキュー補正機能を有する。また、プルアウトローラ138は、分離後にスキュー補正された原稿を中間ローラ139まで搬送するためのローラで、給紙モータ109の逆転により駆動される。またこの時(給紙モータ109逆転時)、プルアウトローラ138と中間ローラ139は駆動されるが、ピックアップローラ148と給紙ベルト136は駆動されない。
原稿幅センサ104は、奥行き方向に複数個並べられ、プルアウトローラ138により搬送された原稿の搬送方向に直行する幅方向のサイズを検知する。また、原稿の搬送方向の長さは、原稿の先端および後端を突き当てセンサ105で読み取ることで生成されるモータパルスを用いて検知される。
プルアウトローラ138および中間ローラ139の駆動により、レジスト部Cからターン部Dに原稿が搬送される際には、レジスト部Cでの搬送速度が、第1読取搬送部Eでの搬送速度よりも高速に設定される。これにより、原稿を読み取り部へ送り込む処理時間の短縮化が図られている。原稿の先端が読取入口センサ103により検出されると、読取入口ローラ140の上下ローラ対のニップに原稿先端が進入する前に、原稿搬送速度を、読取搬送速度と同速にするために減速を開始する。これと同時に、読取モータ110を正転駆動し、読取入口ローラ140、読取出口ローラ141、およびCIS出口ローラ142を駆動する。レジストセンサ107で原稿の先端が検知されると、所定の搬送距離をかけて減速し、読取位置143の手前で一時停止すると共に、本体制御部122にI/F114を介してレジスト停止信号を送信する。
続いて、本体制御部122より読取り開始信号を受信すると、レジスト停止していた原稿は、読取位置143に原稿先端が到達するまでに所定の搬送速度に立ち上がるように増速されて搬送される。読取モータ110のパルスカウントにより検出された原稿先端が読取部に到達するタイミングで、本体制御部122に対して第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が、第1読取部を原稿後端が抜けるまで送信される。
片面原稿読取りの場合には、第1読取搬送部Eを通過した原稿は第二読取り部を経て排紙部Gへ搬送される。この際、排紙センサ106により原稿の先端が検知されると、排紙モータ111が正転駆動され、排紙ローラ144が、反時計回り方向に回転する。また、排紙センサ106による原稿の先端検知からの排紙モータパルスカウントにより、原稿後端が排紙ローラ144の上下ローラ対のニップから抜ける直前に、排紙モータ駆動速度が減速される。これにより、排紙トレイ145上に排出される原稿が、排紙トレイ145から飛び出る不都合を防止している。
両面原稿読取りの場合には、排紙センサ106にて原稿先端を検知してから読取モータ110のパルスカウントにより第2読取部113に原稿先端が到達するタイミングで、第2読取部113に対してコントローラ11から副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が第2読取部113を原稿後端が抜けるまで送信される。第2読取ローラ146は、第2読取部113における原稿の浮きを抑える。また、第2読取ローラ146は、第2読取部113でシェーディングデータを取得するための基準白部(濃度基準部材)を兼ねている。
図6は、第2読取部113の電気回路の要部のブロック図である。図6に示すように、第2読取部113は、LED、蛍光灯、又は冷陰極管などからなる光源部2を有する。なお、光源部2は、図示しない導光体などと共に光を主走査方向に照射する照射部を構成する。
また、第2読取部113は、主走査方向(原稿幅方向に対応する方向)に並ぶ複数の画素(光電変換素子)3a、各画素3aにそれぞれ接続された複数のアンプ回路202、各アンプ回路202にそれぞれ接続された複数のA/D変換部203も有している。A/D変換部203の出力信号には、信号成分以外に黒レベルオフセット成分が含まれている。第2読取部113は、黒レベルオフセット成分を除去する黒補正部204を有している。
白補正部205は、黒補正部204の出力信号に対して白補正処理を施すことで、光源部2のムラおよび各画素3aの不均一な感度による画像データへの悪影響を除去する。また、詳しくは後述するが、白補正部205は、原稿を読み取る直前に濃度基準部材を読み取ることで取得した、汚れのついている原稿読取時シェーディングデータを、汚れのない初期シェーディングデータで置き換える際に、初期シェーディングデータを、原稿読取時シェーディングデータのリップルムラと振幅が合うように位相を補正する。これにより、出力原稿または出力データに明るいスジ、または、暗いスジが発生する不都合を防止している。
また、第2読取部113は、画像処理部206、フレームメモリ207、出力制御回路208、I/F回路209等も有している。
このような第2読取部113で読み取りが行われる読取位置に対する原稿の搬送に先立って、コントローラ11から光源部2に点灯をON制御するための点灯信号が供給される。これにより、光源部2が点灯し、図示しない原稿に光が照射され、反射光が発生する。この原稿からの反射光は、ロッドレンズ4aにより各画素3aに集光され受光される。各画素3aは、受光した反射光に対応する電気信号である読み取り信号を生成する。読み取り信号は、アンプ回路202で増幅された後、A/D変換部203によって、読み取りデータにデジタル化される。例えば、読み取りデータが8bitの場合、黒レベルが「0」となり、白レベルが「255」となる。
読み取りデータには、黒補正部204によりオフセット成分の除去処理が施され、白補正部205により、後述するシェーディング補正が施される。また、読み取りデータは、画像処理部206によりライン間補正処理等が施された後、フレームメモリ207に一時記憶される。その後、読み取りデータは、出力制御回路208によって本体制御部122でデータ処理可能なデータ形式に変換された後、I/F回路209を介して、本体制御部122に供給される。なお、コントローラ11から第2読取部113に対しては、上述の光源部2の点灯信号の他、原稿の先端が第2読取部113による読取位置に到達するタイミング(そのタイミング以降の画像データが有効データとして扱われる)を知らせるためのタイミング信号、および、電源等が供給される。
次に、白補正部205におけるシェーディング補正動作を説明する。図7は、白補正部205の機能ブロック図である。この図7に示すように、白補正部205は、記憶部251、高周波成分抽出部252、高周波成分位相補正部253、データ補正部254、および、シェーディング補正部312を有している。
一例ではあるが、高周波成分抽出部252、高周波成分位相補正部253、データ補正部254、および、シェーディング補正部312は、コントローラ11が、図5に示すように、例えばハードディスクドライブ装置、ROMまたはRAM等の記憶部101に記憶されているシェーディング補正プログラムを実行することで、ソフトウェア的に実現する機能となっている。ROMは、「Read Only Memory」の略記である。RAMは、「Random Access Memory」の略記である。
なお、この例では、白補正部205の高周波成分抽出部252、高周波成分位相補正部253、データ補正部254、および、シェーディング補正部312は、ソフトウェア的に実現することとして説明を進める。しかし、高周波成分抽出部252、高周波成分位相補正部253、データ補正部254、および、シェーディング補正部312のうち、一部または全部をハードウェアで実現してもよい。
また、シェーディング補正プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。また、CD−R、DVD、ブルーレイディスク(登録商標)、半導体メモリなどのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。DVDは、「Digital Versatile Disk」の略記である。また、シェーディング補正プログラムは、インターネットなどのネットワーク経由でインストールするかたちで提供してもよい。また、シェーディング補正プログラムは、機器内のROM等に予め組み込んで提供してもよい。
記憶部251は、実施の形態のMFPの工場出荷時等の初期時に、汚れていない濃度基準部材(この例の場合は、上述の第2読取ローラ146)を読取った入力データを第1記憶部301に格納する。また、第1記憶部301に格納したデータを、不揮発性メモリ等で構成される第2記憶部302に格納する。以下、第2記憶部302に格納されたデータを初期シェーディングデータまたは初期データと呼ぶ。また、原稿読取時において、原稿を読み取る直前に濃度基準部材を読み取った入力データは、第1記憶部301に格納される。以下、第1記憶部301に格納されたデータを原稿読取時シェーディングデータまたは現在データと呼ぶ。
高周波成分抽出部252は、第1の平滑化部の一例である平滑化部303において、図8の(a)の符号を付した図に示すように所定周波数の交流波形となっている第2記憶部302に格納された初期シェーディングデータ(初期データ)から、読み取りモジュールのロッドレンズアレイ4のレンズピッチに対応した周期的な変動成分等を除去する。これにより、初期データの所定周波数の交流波形を、図8の(b)の符号を付した図に示すように平滑化された波形に整形する。また、高周波成分抽出部252は、第1の高周波成分抽出部の一例である高周波成分抽出部305において、平滑化部303で周期的な変動成分等が除去された初期データと第2記憶部302に格納されている初期データとの差分を検出する。これにより、高周波成分抽出部305は、図8の(c)の符号を付した図に示すような、初期データの高周波成分のみを抽出する。
同様に、高周波成分抽出部252は、第2の平滑化部の一例である平滑化部304において、図8の(a)の符号を付した図に示すように所定周波数の交流波形となっている第1記憶部301に格納された原稿読取時シェーディングデータ(現在データ)から、読み取りモジュールのロッドレンズアレイ4のレンズピッチに対応した周期的な変動成分等を除去する。これにより、現在データの所定周波数の交流波形を、図8の(b)の符号を付した図に示すように平滑化された波形に整形する。また、高周波成分抽出部252は、第2の高周波成分抽出部の一例である高周波成分抽出部306において、平滑化部304で周期的な変動成分等が除去された初期データと第2記憶部302に格納されている初期データとの差分を検出する。これにより、高周波成分抽出部306は、図8の(c)の符号を付した図に示すような、初期データの高周波成分のみを抽出する。
次に、高周波成分位相補正部253は、第1〜第nの位相シフト部を備えた位相シフトブロック307、第1〜第nの相違度算出部を備えた相違度算出ブロック308、および、相違度比較部309を有している。なお、「n」は、2以上の自然数である。
高周波成分抽出部305で抽出された初期データの高周波成分は、位相シフトブロック307の第1〜第nの位相シフト部に、それぞれ供給される。位相シフトブロック307の各位相シフト部の位相のシフト量は、図9に示すようにそれぞれ異なるシフト量に設定されている。図9の例は、位相シフトブロック307が、第1〜第31の位相シフト部の、計31個の位相シフト部を有する例である。この例の場合、一例として1/32画素の分解能のシフト量となるように、第1〜第nの位相シフト部の位相シフト量が設定されている。
すなわち、第1の位相シフト部〜第15の位相シフト部に対しては、「−15/32,−14/32,−13/32・・・−2/32,−1/32」等のように、マイナス側で1画素ずつ異なるシフト量が設定されている。また、この例の場合、第16の位相シフト部には、0/32のシフト量が設定されている。また、この例の場合、第17の位相シフト部〜第31の位相シフト部に対しては、「+1/32,+2/32,+3/32・・・+14/32,+15/32」等のように、プラス側で1画素ずつ異なるシフト量が設定されている。この例の場合、第16の位相シフト部を中心に±15/32画素まで位相をシフトさせる。なお、第16の位相シフト部のシフト量は0である。このため、初期データの位相は、シフトしない。
位相シフトブロック307は、各位相シフト部において、いわゆるキュービック補間処理を行うことで、1画素未満の分解能で初期データの高周波成分の位相をシフトさせ、相違度算出ブロック308の第1〜第nの相違度算出部、および、データ補正部254の出力選択部310に供給する。
相違度算出ブロック308の第1〜第nの相違度算出部には、高周波抽出部306から、現在データから抽出された高周波成分も供給されている。相違度算出ブロック308は、各相違度算出部において、位相シフト補正された各データと現在データの高周波成分との絶対値の差分を、読み取りモジュールの主走査方向を任意の画素数で分割したブロック毎に加算する(差分絶対値和:SAD:Sum of Absolute Difference)。相違度比較部309は、第1〜第nの相違度算出部からの差分絶対値和のうち、最も低い差分絶対値和に対応する位相シフト部の番号(位相シフト部番号)を示す相違度比較出力を出力選択部310に供給する。
具体的に説明すると、図10の(a)〜(c)の符号を付した各図において、実線の波形が初期データの波形である。また、図10の(a)〜(c)の符号を付した各図において、点線の波形が、第1の位相シフト部、第25の位相シフト部、または、第31の位相シフト部の出力波形である。この図10の(a)〜(c)の符号を付した各図からわかるように、第1の位相シフト部に入力された初期データは、図9を用いて説明した−15/32のシフト量で位相がシフトされ、第1の相違度算出部に供給される。また、第25の位相シフト部に入力された初期データは、図9を用いて説明した+9/32のシフト量で位相がシフトされ、第25の相違度算出部に供給される。また、第31の位相シフト部に入力された初期データは、図9を用いて説明した+15/32のシフト量で位相がシフトされ、第31の相違度算出部に供給される。
図10の(d)〜(f)の符号を付した図は、第1の相違度算出部、第25の相違度算出部、および、第31の相違度算出部における、位相シフトされた初期データ(点線の波形)と、現在データ(実線の波形)との位相差を示している。図10の(d)の符号を付した図に示す第1の相違度算出部の場合、位相シフトされた初期データ(点線の波形)と、現在データ(実線の波形)との間に大きな位相差がある。また、図10の(f)の符号を付した図に示す第31の相違度算出部の場合、位相シフトされた初期データ(点線の波形)と、現在データ(実線の波形)との間に小さな位相差がある。これに対して、図10の(e)の符号を付した図に示す第25の相違度算出部の場合、位相シフトされた初期データ(点線の波形)と、現在データ(実線の波形)との間の位相差は、略々ゼロとなっている。
図11は、相違度比較部309から出力選択部310に供給される相違度比較出力を説明するための図である。図11の例の場合、読み取りモジュールのライン基準信号間の有効画素領域に対応する画素を、所定数の画素毎のブロックである、第1〜第10の計10個のブロック(第1のブロック〜第10のブロック)に分割した例である。この例の場合、第1の相違度算出部は、図10の(d)の符号を付した図および図11に示すように、ブロック毎に、位相シフトされた初期データと現在データとの間の位相差を算出し、ブロック毎の差分絶対値和「sad_1_1」,「sad_1_2」・・・「sad_1_10」を生成する。同様に、第25の相違度算出部は、図10の(e)の符号を付した図および図11に示すように、ブロック毎に、位相シフトされた初期データと現在データとの間の位相差を算出し、ブロック毎の差分絶対値和「sad_25_1」,「sad_25_2」・・・「sad_25_10」を生成する。同様に、第31の相違度算出部は、図10の(f)の符号を付した図および図11に示すように、ブロック毎に、位相シフトされた初期データと現在データとの間の位相差を算出し、ブロック毎の差分絶対値和「sad_31_1」,「sad_31_2」・・・「sad_31_10」を生成する。
具体的には、相違度算出ブロック308は、主走査方向のブロック毎に、位相シフト補正された各データと現在データの高周波成分との絶対値の差分の合計値を、以下の数3式および数4式の演算を行うことで算出する。
αm_n(x)=ABS(Dpre(x)−Dinit_m(x))・・・(数3式)
sad_m_n=Σαm・・・(数4式)
なお、数3式および数4式において、「m」は、各位相シフト部の番号(1〜31)である。「n」は、主走査方向のブロック番号(1〜10)である。「Dpre(x)」は、x画素目の現在データの値である。「Dinit_m(x)」は、x画素目の位相シフト部mのデータ出力値である。「αm(x)」は、x画素目のDpre(x)とDinit_m(x)の差分絶対値である。「sad_m_n」は、nブロック目の全αmの加算値(差分絶対値和)である。
相違度比較部309は、第1〜第31の相違度算出部からの差分絶対値和のうち、最も低い差分絶対値和に対応する位相シフト部の番号(位相シフト部番号)を示す相違度比較出力を出力選択部310に供給する。図11の例の場合、第1のブロックにおいては、第17の位相シフト部に対応する差分絶対値和の値が、一番低い値であったことを示している。同様に、図11の例の場合、第8のブロックにおいては、第16の位相シフト部に対応する差分絶対値和の値が、一番低い値であったことを示している。同様に、図11の例の場合、第10のブロックにおいては、第17の位相シフト部に対応する差分絶対値和の値が、一番低い値であったことを示している。出力選択部310には、一番低い差分絶対値和に対応する位相シフト部の、例えば「17」、「16」等の、位相シフト部番号を示す相違度比較出力が供給される。
次に、データ補正部254の出力選択部310は選択部の一例であり、相違度比較部309から供給された相違度比較出力で示される位相シフト部番号の、位相シフトされた初期データを選択し、補正データ生成部311に供給する。具体的には、出力選択部310は、位相シフト部番号を用いて、例えば図12の(a)の符号を付した図に示すような位相シフトされた初期データを選択して、補正データ生成部311に供給する。
補正データ生成部311は、図12の(b)の符号を付した図に示す、平滑化部303により平滑化された初期データと、出力選択部310により選択された、位相シフトされた初期データとを加算処理する。これにより、補正データ生成部311は、図12の(c)の符号を付した図に示すような、現在データのリップルムラと振幅が合うように位相を補正したシェーディングデータを生成することができる。シェーディング補正部312は、現在データのリップルムラと振幅が合うように位相が補正されたシェーディングデータを用いて、入力データのシェーディング補正を行う。
以上の説明から明らかなように、第1の実施の形態のMFPは、例えば図13に示すように、現在データが濃度基準部材の汚れまたはキズの影響を受けた場合でも、清浄な濃度基準部材から取得した初期データに置き換えてシェーディング補正を行うため、濃度基準部材の汚れやキズによる縦スジを抑制できる。
また、現在データを初期データに置き換える際に、初期データのレンズピッチムラを、現在データのレンズピッチムラの位相に合うように補正している。このため、経時のレンズピッチムラのずれによる縦スジも抑制することができる。従って、実施の形態のMFPは、正確なシェーディング補正を行うことができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態となるMFPの説明をする。この第2の実施の形態のMFPは、濃度基準部材の汚れが検知された位置に対応するブロックの位相シフト部番号を、汚れが検知されていない前後のブロックより線形補間して書換えるものである。以下、第1の実施の形態と第2の実施の形態の差異の説明のみ行い、重複説明は省略する。
図14は、第2の実施の形態のMFPに設けられている白補正部205の機能ブロック図である。この図14に示す各機能ブロックのうち、汚れ検知部351、シフト量メモリ352、位相シフト量決定部353、および、出力選択部354の各機能ブロックが、上述の第1の実施の形態との差異となっている。
このような第2の実施の形態のMFPの場合、図14に示す汚れ検知部351に、第1記憶部301に格納された現在データ、および、第2記憶部302に格納された初期データが供給される。汚れ検知部351は、各データを比較することで、濃度基準部材の汚れている位置を検出する。このような汚れ検知部351としては、例えば特開2010−011297号公報等で開示されている技術を用いることができる。
具体的に説明すると、汚れ検知部351は、図15の(a)の符号を付した図に示すような初期データと現在データの比β(初期データ/現在データ)を算出する。そして、汚れ検知部351は、図15の(b)の符号を付した図に示すように、予め設定している最大閾値および最小閾値と、算出した比βとを比較する。図15の(a)の符号を付した図に示すように、濃度基準部材に汚れが生じている箇所に対応する比βの値は、図15の(b)の符号を付した図に示すように、最大閾値以上となり、または、最小閾値以下となる。このため、汚れ検知部351は、比βが最大閾値を越えた場合、または、比βが最小閾値を下回った場合に、濃度基準部材に汚れが付着しているものと判断する。
なお、比βに対して初期データと現在データの全画素、または、特定広範囲のエリアの平均値の比γ(比γ=現在データ_ave/初期データ_ave)を乗算し光量を補正することで、比βのゴミのない部分の出力比を1.0にすることができ、最大閾値と最小閾値を、1.0を基準に設定することができる。
図16に汚れ検知部351の検知出力の一例を示す。図16の例は、(a)および(b)の符号を付した図に示すように、読み取りモジュールのライン基準信号間の有効画素領域に対応する画素を、所定数の画素毎のブロックである、第1〜第10の計10個のブロック(第1のブロック〜第10のブロック)に分割した例である。汚れ検知部351は、比βの値が最大閾値を超えた場合、または、最小閾値を下回った場合、図16の(c)の符号を付した図に示すように、「H(ハイレベル)」の検知信号を位相シフト量決定部353、および、出力選択部354に供給する。また、汚れ検知部351は、比βの値が、最大閾値を超えない場合、または、最小閾値を上回っている場合は、図16の(c)の符号を付した図に示すように、「L(ローレベル)」の検知信号を位相シフト量決定部353、および、出力選択部354に供給する。
一方、上述のように、第2記憶部302から出力された初期データは、高周波成分が抽出される。位相シフトブロック307の各位相シフト部は、1画素未満の分解能で、初期データの高周波成分の位相をシフト処理する。各位相シフト部は、それぞれシフト量が異なっている。また、相違度算出ブロック308の各相違度算出部は、位相シフトされた各初期データの高周波成分と、第1記憶部301の現在データの高周波成分との差分を、読み取りモジュールの主走査方向を任意の画素数で分割したブロック毎に合計する。相違度比較部309は、最も低い差分絶対値和を算出した相違度算出部に対応する位相シフト部番号を、シフト量メモリ352に供給する。
シフト量メモリ352には、主走査方向のブロック毎の位相シフト部番号が記憶される。位相シフト量決定部353は、汚れ検知部351から供給された検知信号が「H」の場合(濃度基準部材が汚れている場合)、以下の数5式の演算を行う。位相シフト量決定部353は、シフト量メモリ352に記憶されている、汚れ検知された位置の主走査方向のブロックの位相シフト部番号を、汚れ検知されていない前後の主走査方向のブロック番号で線形補間処理して書き換える。
これにより、汚れ検知された異常ブロックの初期データの高周波成分を、異常ブロックに近接している、汚れが検知されていない正常ブロックの初期データの高周波成分で線形補間処理した近似値で補間処理することができる。線形補間処理に用いる正常ブロックとしては、例えば異常ブロックの前後の正常ブロックを用いることができる。または、異常ブロックの一つ前および二つ前の正常ブロックを用いてもよいし、異常ブロックの一つ後および二つ後の正常ブロックを用いてもよい。また、このような近接する2つの正常ブロックのみならず、3つ以上の正常ブロックを用いてもよい。また、異常ブロックを、異常ブロックの一つ前または一つ後の正常ブロックと差し替えてもよい。
dotnum(N)={1−(N−S)/(E−S)}×dotnum(S)+(N−S)/(E−S)×dotnum(E)・・・・=dotnum(S)+(dotnum(E)−dotnum(S))/(E−S)×(N−S)・・・(数5式)
この数5式において、「dotnum」は、シフト量メモリ352に保存された、例えば図17に示すような主走査方向のブロック毎の位相シフト部番号である。数5式に示す「S」は、図17に示す補正開始ブロック番号(先頭となる異常ブロックの1つ前のブロック)である。「E」は、補正終了ブロック番号(後端の異常ブロックの1つ後のブロック)である。「N」は、注目ブロック番号を示している。
位相シフト量決定部353は、先頭ブロックに異常画素(汚れにより異常な値を示す画素)が含まれる場合、最近傍の正常ブロックの値をシフト量メモリ352に保存する。先頭ブロックから2番目の第2ブロックが正常であれば、dotnum(1)=dotnum(2)となる。また、先頭ブロック1〜最終ブロック10まで全て異常であれば、dotnum(1)=dotnum(2)=・・・=dotnum(10)=dotnum(11)となる。また、最終ブロックNに異常画素が含まれる場合、位相シフト量決定部353は、最近傍の正常ブロックの値をシフト量メモリ352に保存する。
また、ブロック(N−1)が正常であれば、dotnum(N)=dotnum(N−1)となる。また、ブロックN−9〜Nまで全て異常であれば、dotnum(N−9)=dotnum(N−8)=・・・=dotnum(N)=dotnum(N−10)となる。
また、位相シフト量決定部353は、全ブロックに異常画素が含まれる場合、および、全ブロックが正常の場合は、何もしない。
次に、位相シフト量決定部353の位相シフト量の決定動作を説明する。図18の(a)の符号を付した図は、1ラインの基準信号であるライン基準信号を示している。また、図18の(b)の符号を付した図は、濃度基準部材からのデータ取得期間(「L」の時にシェーディングデータを取得する)を示す白データ取得信号を示している。
位相シフト量決定部353における位相シフト量を決定するまでの動作タイミングに関して説明する。位相シフト量決定部353は、白データ取得した後(白データ取得信号が「H」に戻った後)、図18の(b)の符号を付した図に示す第1のラインのタイミングで、相違度比較部309からの、各ブロックの現在データの高周波成分の位相に近い位相シフト部番号をシフト量メモリ352に書き込む。なお、位相シフト量決定部353は、第1のライン以降のタイミングでは、相違度比較部309からの出力をシフト量メモリ352に書き込まない。
図18の(b)の符号を付した図に示す第2のラインにおいて、位相シフト量決定部353は、上述の線形補間を用いて、汚れを検知した位置のシフト量メモリ352の位相シフト部番号を書き換える。なお、位相シフト量決定部353は、第2のライン以降は、次の白データ取得信号がアサート/ネゲートされるまでは、シフト量メモリ352に書き込まれた位相シフト部番号の書き換えは行わない。このようなシフト量メモリ352に対する書き換えのタイミング制約を守ることにより、意図しないタイミングでシフト量メモリ352の書き換えが行われる不都合を防止している。
次に、出力選択部310は、シフト量メモリ352から読み出された位相シフト部番号に対応する、位相がシフトされた初期データの高周波成分を選択し、補正データ生成部311に供給する。補正データ生成部311は、位相がシフトされた初期データの高周波成分と、平滑化された初期データとを加算処理し、この加算出力を出力選択部354に供給する。
出力選択部354は、汚れ検知部351からの検知出力が「H」の場合は、濃度基準部材が汚れていると判断し、補正データ生成部311からの出力をシェーディングデータとして、シェーディング補正部312に供給する。また、出力選択部354は、汚れ検知部351の検知出力が「L」の場合は、現在データをシェーディングデータとしてシェーディング補正部312に供給する。なお、汚れ検知部351の検知出力が「L」の場合に、補正データ生成部311の加算出力をシェーディングデータとしてシェーディング補正部312に供給してもよい。
以上の説明から明らかなように、第2の実施の形態のMFPは、汚れを検知した領域の位相シフト量を、汚れを検知していない前後の位相シフト部番号より線形補間して生成する。これにより、汚れを検知した箇所においても、現在データの位相に近い位相シフト部番号を把握することができ、汚れのない現在データを再現し、ロットレンズ周期で発生するスジを抑制できる。また、ブロックを跨いで大きな汚れが発生した場合でも、現在データの位相に近い位相シフト部番号を把握することができ、汚れのない現在データを再現し、ロットレンズ周期で発生するスジを抑制できる他、上述の第1の実施の形態と同じ効果を得ることができる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態となるMFPの説明をする。この第3の実施の形態のMFPは、位相シフトブロック307が、複数種類のシフト量の中から、用途等に応じたシフト量を選択可能としたものである。以下、上述の各実施の形態との差異の説明のみ行い、重複説明は省略する。
すなわち、第3の実施の形態のMFPの場合、位相シフトブロック307に対して、図19に示すような複数種類のシフト量が設定されている。この図19に示す例は、第1のシフト量、第2のシフト量、および、第3のシフト量の、計3種類のシフト量が設定されている例である。
第1のシフト量は、上述した1/32画素の分解能のシフト量である。第2のシフト量は、2/32画素の分解能のシフト量である。第2のシフト量は、第16の位相シフト部のシフト量が0/32の分解能に設定されている。そして、第2のシフト量は、第16の位相シフト部のシフト量を基準として、マイナス側に−2/32画素,−4/32画素,−6/32画素・・・・−28/32画素,−30/32画素の分解能が設定されている。また、第2のシフト量は、第16の位相シフト部のシフト量を基準として、プラス側に+2/32画素,+4/32画素,+6/32画素・・・・+28/32画素,+30/32画素の分解能が設定されている。
同様に、第3のシフト量は、4/32画素の分解能のシフト量である。第3のシフト量は、第16の位相シフト部のシフト量が0/32の分解能に設定されている。そして、第3のシフト量は、第16の位相シフト部のシフト量を基準として、マイナス側に−4/32画素,−8/32画素,−12/32画素・・・・−56/32画素,−60/32画素の分解能が設定されている。また、第3のシフト量は、第16の位相シフト部のシフト量を基準として、プラス側に+4/32画素,+8/32画素,+12/32画素・・・・+56/32画素,+60/32画素の分解能が設定されている。
このような第3の実施の形態のMFPは、コントローラ11が、例えば読み取りモジュールの構成、または、使用環境等の用途に応じて、位相シフトブロック307で用いる現在データと初期データの位相のシフト量を変更制御(選択制御)する。これにより、回路規模を大きくすることなく、用途に応じて初期データの位相シフト量を変更できる他、上述の各実施の形態と同じ効果を得ることができる。
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態となるMFPの説明をする。この第4の実施の形態のMFPは、高周波成分と共にオフセット成分の補正を行うことで、オフセット成分に起因する画像の濃淡も抑制可能としたものである。以下、上述の各実施の形態との差異の説明のみ行い、重複説明は省略する。
図20は、第4の実施の形態のMFPに設けられている白補正部205の機能ブロック図である。この図20に示す各機能ブロックのうち、出力比率算出部362の機能ブロックが、上述の各実施の形態との差異となっている。
このような第4の実施の形態のMFPにおいて、出力比率算出部362は、ロッドレンズアレイ4のレンズピッチに対応した周期的な変動成分等を除去するために平滑化した初期データと平滑化した現在データとの比率を画素毎に算出する。図21の(a)の符号を付した図において、点線の波形のデータは、平滑化した現在データを示しており、実線の波形のデータは、平滑化した初期データを示している。出力比率算出部362は、平滑化した現在データおよび平滑化した初期データの比率を算出することで、図21の(b)の符号を付した図に示すような、画素毎の比率を示す比率データを生成し、補正データ生成部311に供給する。
出力選択部310は、相違度比較ブロック308から供給された相違度比較出力で示される位相シフト部番号の、位相シフトされた初期データを選択し、補正データ生成部311に供給する。補正データ生成部311は、汚れ検知部351から供給された検知信号が「H(濃度基準部材が汚れている)」である場合、出力比率算出部362から供給された比率データを、汚れ検知されていない前後の比率から線形補間処理して書き換える。
なお、線形補間処理を行うために、出力比率算出部362から出力された比率は、補正データ生成部311内にあるメモリに一度記憶される。また、線形補間処理に関しては、上述の第3の実施の形態で説明した位相シフト量決定時と同様である。第3の実施の形態と第4の実施の形態との違いは、主走査方向のブロック単位で行っていた線形補間処理を画素単位で行う点である。また、書換えるタイミングも、図18を用いて説明した第1のラインで実施する。第1のライン以降は、比率の線形補間処理は実施しない。
出力比率算出部362から出力された比の線形補間処理が終わった後、補正データ生成部311は、出力選択部310から入力された位相シフト後の高周波成分と、第2記憶部302から供給された初期データの平滑化後のデータを加算したデータに、出力比率算出部362から出力された比率を乗算処理したデータを出力選択部354に供給する。
すなわち、補正データ生成部311に供給されるデータは、図22の(a)の符号を付した図に例示する出力選択部310で選択されたデータ、図22の(b)の符号を付した図に例示する平滑化部303により平滑化された初期データである。また、補正データ生成部311に供給されるデータは、図22の(c)の符号を付した図に例示する、出力比率算出部362により線形補間処理された比率データである。
出力選択部310で選択されたデータは、初期データを位相シフトさせたデータであり、高周波成分位相補正部253の処理により現在データと位相が合ったデータである。すなわち、出力選択部310で選択されたデータは、現在データの高周波成分と等価なデータである。また、平滑化部303により平滑化されたデータは、初期データのオフセット成分と等価である(現在データのオフセット成分とは等価ではない)。さらに、出力比率算出部362からの比率データは、初期データと現在データのオフセット成分の比である。
図22の(d)の符号を付した図に、出力選択部310で選択されたデータと、平滑化部303により平滑化されたデータとを加算処理した加算データを示す。出力選択部310で選択されたデータは、現在データの高周波成分と等価であるが、平滑化部303により平滑化されたデータは、初期データのオフセット成分である。このため、両者の加算データは、現在データと比較して、オフセット成分が異なるため、オフセット成分の違いによる濃度差が発生する恐れがある。図21に示したように、現在データと初期データの主走査分布に違いが発生している場合、主走査方向の中央付近では、現在データに対して初期データの出力が高いため、最終的なシェーディングデータとして差異が発生することがある。
このため、第4の実施の形態のMFPの場合、上述の加算データに、初期データと現在データのオフセット成分の比である、出力比率算出部362からの比率データを乗算処理する。図22の(e)の符号を付した図における実線の波形が、上述の加算データに比率データを乗算処理したデータの波形である。これにより、高周波成分と共に、オフセット成分も補正した、現在データと等価なシェーディングデータを生成できる。
次に、出力選択部354には、第1記憶部301からの現在データ、および、高周波成分と共にオフセット成分も補正されたシェーディングデータとが供給されている。出力選択部354は、汚れ検知部351から「H(濃度基準部材が汚れている)」の検知信号が供給されている間、上述の補正されたシェーディングデータを選択してシェーディング補正部312に供給する。また、出力選択部354は、汚れ検知部351から「L(濃度基準部材が汚れていない)」の検知信号が供給されている間、第1記憶部301からの現在データをシェーディングデータとして選択してシェーディング補正部312に供給する。シェーディング補正部312は、現在データまたは上述の補正されたシェーディングデータを用いてシェーディング補正を行う。
以上の説明から明らかなように、第4の実施の形態のMFPは、高周波成分と共にオフセット成分の補正を行ったシェーディングデータを生成してシェーディング補正を行う。これにより、オフセット成分に起因する画像の濃淡も抑制できる他、上述の各実施の形態と同じ効果を得ることができる。
上述の各実施の形態は、例として説明したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な各実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。各実施の形態および各実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。