JP6352929B2 - メタン源からの酸化性の双改質を介した効率的で自己充足的なメタノールの製造 - Google Patents

メタン源からの酸化性の双改質を介した効率的で自己充足的なメタノールの製造 Download PDF

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Description

化石燃料は、いまだ広範な用途及び高い需要を有するが、これらの有限な蓄えに起因して、これらには制限がある。また、化石燃料の燃焼は、地球温暖化に寄与する二酸化炭素を生成する。
世界各地における種々の大量の天然(シェール)ガス源の開発により、また他のメタン源、例えば炭層メタン、メタンハイドレート等の存在により、広範囲にわたるメタン埋蔵量の利用可能性が、少なくとも今世紀にわたって保証されている。天然(シェール)ガスの液体への、優先的に輸送燃料、及び種々の主要な化学物質の原料のために用いられるメタノールへの転化は、大きな実用的な意義があるものである(非特許文献1)。現在広く用いられている、メタンの水蒸気改質法は、CO及びHの合成ガスをCO:H比1:3で製造する。更に、二酸化炭素による乾式改質は、CO及びHをCO:H比1:1で製造する。水蒸気改質に必要とされるエネルギー所要量(吸熱量)を管理するため、チューブラー法を含む幾つかのプロセスが、部分的な燃焼を用いるオートサーマル改質(ATR)と並んで開発され、種々の合成ガス組成物を製造するために広く用いられている(非特許文献2)。ATRにおいては、酸素によるメタンの部分的な酸化が、同一の反応器において水蒸気改質と組み合わせられる。しかしながら、これらのプロセスは、必要とされる合成ガスの比を調節するための複数の工程を含んでおり、分離する必要があるか又は処分する必要がある有意な量の二酸化炭素又は他の酸化性の副生成物をも生成する。1:2のCO:H比は、ATRプロセスによっても、任意の他の改質プロセスによっても、単一の工程では生み出されない。
Beyond Oil and Gas:The Methanol Economy, G.A.Olah,A.Goeppert and G.K.S.Prakash,2ndEdition,Wiley−VCH,Weinheim,2009 Concepts in Syngas Manufacture,J.Rostrup−Nielson and L.J.Christiansen,Imperial Collage Press,London,2011
本発明は、「メタノールエコノミー(Methanol Economy)」の脈絡で用いるべきメタノール及び誘導体を製造するためのメタン源又は天然(シェール)ガス源を利用する新たな方法を開示するものである。化石燃料源、例えば石油、天然ガス及び石炭は、本発明者らの特許出願において開示されているプロセスを含む公知のプロセスにより、それらの燃焼用途の最終生成物である二酸化炭素の化学的な再利用を含む双改質(bi−reforming)によって、メタノール及びジメチルエーテルへと転化させることができる。メタノール及びジメチルエーテルは、現存するエンジン及び燃料系に幾らか必要な変更を施した内燃機関(ICE)を動力とする車両におけるガソリン及びディーゼル油の代用品としての輸送燃料、並びに燃料電池における輸送燃料として用いることができる。メタノールの貯蔵及び使用は、水素と比較すると、新たなインフラストラクチャ、例えば高価な加圧器及び液化器を必要としない。メタノールは液体であるため、車両中で扱うこと、保管すること、分配すること、及び使用することが容易にできる。メタノールは、改質器を用いる燃料電池用の理想的な水素のキャリヤであり、直接酸化メタノール燃料電池(DMFC)において用いることができる。ジメチルエーテルは、室温で気体であるが、適度な圧力下で容易に保存することができ、かつディーゼル油、液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、及び家庭用ガスの代用品として効果的に用いることができる。
メタノール、ジメチルエーテル及びそれらの誘導体は、燃料としての使用に加え、有意な使用用途を有する。それらは、種々の化学物質の出発原料である。それらは、触媒的にエチレン及びプロピレンを主とするオレフィン、並びにそれらのポリマーへと転化させことができる。従って、それらは合成炭化水素、及び更に油に取って代わるそれらの生成物の有用な出発原料である。
メタノールはまた、単細胞タンパク質(single cell protein:SCP)の源として用いることができる。SCPは、微生物により生み出される、エネルギーを得つつ炭化水素基質を低減するたんぱく質を意味するものである。このたんぱく質の含有物は、微生物、例えばバクテリア、イースト、糸状菌等の種類に依存する。SCPは、食品及び動物飼料としての用途を含む種々の用途を有する。
メタノール及びジメチルエーテルの広範な用途を考慮すると、それらを製造する改善されかつ効果的な新しい方法を提供することが明らかに望ましい。
本発明は、酸化及び双改質によりメタガス(metgas:すなわち、CO及びHのモル比が約2:1である特定の合成ガス)のみを製造するための、急速に発達している広範なメタン、天然(シェール)ガス、及び他のメタン源の、効率的で、自己充足的で、環境に優しいカーボンニュートラルで、エネルギーニュートラルで、かつ経済的な転化を開示している。このメタガスは、次いで燃料、エネルギー貯蔵、並びにメタノール及びその誘導体から製造される種々の合成炭化水素及び化学製品用の出発物質として用いるための、メタノール及びその誘導体のみへと転化される。
具体的には、本発明は、メタン源からメタノールを製造する方法に関し、これは、メタン源からの1当量のメタンと、大気からの酸素とを、完全燃焼をもたらすのに十分な条件の下で反応させて、二酸化炭素及び水の混合物を約1:2のモル比で製造し、かつ方法においてその後に使用するための熱を生み出すこと;燃焼により製造された二酸化炭素及び水と、メタン源からの3当量のメタンとを組み合わせて、3:1:2のモル比を有するメタン:二酸化炭素:水の混合物を製造すること;メタン:二酸化炭素:水の混合物を用い、かつ完全燃焼から生じた熱を用いて、単一工程の双改質反応を行って、下記のように一酸化炭素及び水素のみを生成して:
3CH+CO+2HO→4CO+8H
水素及び一酸化炭素の混合物をモル比2:1と2.1:1との間で有するメタガス(metgas)のみを製造すること;並びにメタガスを、メタノールのみを生成するのに十分な条件の下で下記のように転化させることによる。
4CO+8H→4CHOH
好ましくは、方法のための反応体は、メタン源からのメタン及び大気からの酸素のみである。メタンの燃焼熱は、その後の双改質反応を行うために必要なエネルギーの大部分又は全部を提供する。
この方法においては、二酸化炭素及び水と組み合わせるためのメタンを提供するために必要なメタン源は、好ましくは天然(シェール)ガスから得られ、従って天然(シェール)ガス及び大気からの酸素のみを燃焼のための反応体として使用し、そして方法を実施する。メタン源は、炭層メタン、メタンハイドレート、バイオガスから誘導されるメタン、又はメタンを含有している任意の他の工業的な若しくは天然の源を含むことができ、これらは単独で又は天然(シェール)ガスとの組合せを含む任意の組合せで使用される。
代替的には、方法は、メタンを天然(シェール)ガス又は他のメタン源の他の成分から分離して燃焼のためのメタンを提供すること、及び酸素を、方法における用途のために大気から分離することを更に含む。天然又はシェールガスを用いる場合、供給材料は求められる比へと容易に調節することができ、かつ必要に応じて任意の源からの追加の水を加えることができる。この供給材料は、必要に応じ、HS、過剰なCO、及び/又は他の不純物から精製してもよい。
双改質反応は、高度に吸熱性である。好ましくは、1当量のメタンと酸素との燃焼熱は、この双改質反応を行うために必要な全てのエネルギーを提供する。必要に応じ、提供されたエネルギーを、発熱のメタノール合成工程からのエネルギーと組み合わせて、全体のプロセスを発熱又は熱的中性付近とすることができる。所望により、双改質反応のための追加のエネルギーは、1つ又は複数の代替的なエネルギー源又はグリーンエネルギー源から供給してもよい。
双改質反応は、典型的には触媒上で、約800℃と約1100℃との間の温度で、5〜40barの圧力で実施され、この触媒は、大きな表面積の適切な支持体上に堆積されている単一の金属触媒の形態、単一の金属酸化物触媒の形態、金属及び金属酸化物の混合触媒の形態で、V、Ti、Ga、Mg、Cu、Ni、Mo、Bi、Fe、Mn、Co、Nb、Zr、La若しくはSn、又はこれらの酸化物を含有しており、この支持体はシリカ、アルミナ又はこれらの組合せを含有しており、かつこの触媒は水素下で熱的に活性化されている。
天然(シェール)ガスの燃焼は、発電プラント、又は他のプラントで生じることができ、二酸化炭素及び水(蒸気)の混合物である混合熱排気が、その後にメタガスの製造に利用される。所望により、メタン源から得られたメタンを、双改質反応のためのメタガス混合物の提供のために発電プラントの排気に単に加えることができる。
別の実施態様においては、方法は更に、メタノールの全部又は一部をジメチルエーテルへと脱水すること、及び必要に応じて脱水からの水を双改質反応に再利用することを含む。
本発明は、より一般的には、反応体としてのメタン及び大気(空気)の酸素のみからメタノールのみを製造する方法であって、この方法は、メタンの燃焼をもたらすのに十分な条件下でメタンと酸素とを反応させて、二酸化炭素及び水蒸気の混合物を約1:2のモル比で製造し、かつ熱を生み出すこと; 燃焼により製造した二酸化炭素及び水と、十分な追加量のメタンとを組み合わせて、3:1:2のモル比を有するメタン:二酸化炭素:水(蒸気)の混合物を製造すること;メタン:二酸化炭素:水の混合物、及び燃焼により生じた熱を用いて双改質反応を行って、一酸化炭素及び水素のみを生成すること;双改質反応により製造された一酸化炭素及び水素を組み合わせて、モル比2:1〜2.1:1を有する水素及び一酸化炭素の混合物を製造すること;並びに、水素及び一酸化炭素の混合物を、メタノールのみを生成するのに十分な条件の下で転化させることを含む。方法のための反応体は、任意の源からのメタン、及び大気(空気)の酸素のみであり、かつメタンの燃焼熱は、双改質反応を行うために必要なエネルギーを提供する。
有意には、本発明は、廃棄物も副生成物もなしにメタノールを製造するための反応体としてのメタン及び大気(空気)の酸素のみの排他的な全体の反応に関する。
本発明は、好ましくはメタン又は天然(シェール)ガスのメタノール及び/又はジメチルエーテルへの転化に関する。このように製造されたメタノール及びジメチルエーテルは、今日でいう「メタノールエコノミー」における多くの用途、例えば燃料、エネルギー貯蔵、並びにこれらから製造される種々の合成炭化水素及び生成物用の出発物質において用いられる。具体的には、本発明は、メタン、又は天然(シェール)ガス若しくは他のメタン源を、メタガス(モル比が約2:1のCO及びH)を製造して、メタノールを製造することで、選択的にメタノールへと転化させるための、新規で自己充足的でかつ経済的な方法を提供する。
天然ガスは、場所に応じ、メタンを主に含み、高頻度で二酸化炭素及び有害なHSガスを伴っている種々の組成物を有する。頁岩構造に同族体とともに閉じ込められている天然ガスは、シェールガスと呼ばれている。シェールガスは、ドライ・シェールガス及びウェット・シェールガスに分類することができる。前者は、実質的に純粋なメタン(98%超)であり、本発明の方法に直接用いることができる。後者は、約70%のメタン、並びに30%のより高級な同族体、例えばエタン及びプロパンを含有している。エタン及びプロパンは、メタンから分離された後に、エチレン及びプロピレンへと脱水素化することができる。シェールガスの液体は、他の目的、例えばガソリン範囲の炭化水素及び他の生成物の製造のために用いることもできる。
典型的な一実施態様においては、本発明の方法は、1当量のメタン供給材料を酸素と完全燃焼させて、二酸化炭素及び水を製造することを伴う。酸素は、不活性ガス、例えば窒素をそれ自体に含有している空気から得ることができる。この燃焼は、高度に発熱性の反応であり、その後に熱を生み出す。このような燃焼は、天然ガスを燃焼させる発電プラント、他の産業、及び家庭において一般に実施されている:
CH+2O(例えば空気から)→CO+2H
1モル当量のメタン又は天然(シェール)ガスの完全燃焼の高熱のCO+2HO排気は、次いでその後の双改質工程における使用のために必要な3モル当量のメタン又は天然(シェール)ガスと組み合わせられて、本発明者らの米国特許第7906559号明細書及び同8138380号明細書で開示されているように専らメタガス(モル比が約1:2のCO及びH)を製造する。従って、この反応は、以下のとおりである。
3CH+CO+2HO→4CO+8H
必要な量のメタン又は天然(シェール)ガスを提供して、本発明の方法の反応を実施するために必要な化学量論量を満足するための設備又はプロセス流を構成する方法は、当業者にとって明らかである。供給材料は、必要に応じて過剰なCO及びHS並びに他の不純物から精製することもできる。
双改質プロセスは、水蒸気(HO)及び乾式(CO)改質の特定の組合せを単一工程において利用する。双改質プロセスは、メタン又は天然(シェール)ガス、水蒸気及び二酸化炭素を、特定のモル比3:2:1で、触媒、例えば金属−金属酸化物の混合触媒の上で、約800℃と1100℃との間、好ましくは約800℃〜約850℃の温度で、かつ5〜40barの圧力で反応させることにより行うことができ、これらの条件は、メタガス、すなわち約2:1、好ましくは2:1と2.1:1との間、最も好ましくは約2.05:1のモル比の一酸化炭素/水素(CO/H)の合成ガス混合物を製造するのに十分であり、かつその後にそのようなH及びCOの混合物をメタノールのみへと転化させるのに十分である。有利には、反応体の混合物は、いかなる副生成物も伴わずにその後に全ての反応体を、メチルアルコールへと転化させるため、その成分を分離することなく扱われる。好ましくは、未反応の出発生成物又は中間生成物は回収され、その後の反応工程において再利用される。この全体のプロセスは、メタノールにおける高い選択性を、実用的に適用可能な高収率で達する。
双改質工程を実施するため、1種の触媒又は複数の触媒の組合せを用いることができる。これらの触媒は、任意の適切な金属又は金属酸化物を含み、金属又は金属酸化物としては、限定されないが、金属、例えばV、Ti、Ga、Mg、Cu、Ni、Mo、Bi、Fe、Mn、Co、Nb、Zr、La又はSn、及びこのような金属の対応する酸化物が挙げられる。これらの触媒は、適切な支持体、例えば高表面積のナノ構造の酸化物支持体、例えばヒュームドシリカ又はヒュームドアルミナ上に支持されている単一の金属、又は金属及び金属酸化物の組合せ、又は複数の金属酸化物の組合せとして用いることができる。触媒は、使用のために水素下で熱的に活性化されている。例として、NiO、金属−金属酸化物、例えばNi−V、(M−V)、及びNiO:V、並びに混合酸化物、例えばNi及びNiを用いることができる。当業者は、複数の他の関連する金属触媒及び金属酸化物触媒、並びにそれらの組合せも用いることができることを認識しよう。酸化性の双改質のための適切な反応器は、単一の又は別の反応器、例えば高圧の連続的な流通反応器において、適切な温度及び圧力における適切な反応条件下で最初の完全燃焼をその後の双改質反応から分離することができる。そのような反応器は、改質技術に関する反応器でよく知られている。
天然(シェール)ガスからのメタンの完全燃焼から生み出された熱は、高度な吸熱の双改質反応のためのプロセスエネルギーを提供し、全体のプロセスを発熱としている(機構−1)。
Figure 0006352929
酸化性の双改質プロセスの方法は、好ましくは二重壁式管型流通反応器又は熱交換器内で行われ、外側の管で燃焼が行われて熱を生み出し、そして内側の管に追加量のメタンが提供され、そこで双改質が行われる(外側及び内側の管の配置は、反応のために逆にすることもできる。)。既に述べたように、全体のプロセスを実施するために必要な反応体は、適切な源、典型的には天然(シェール)ガス、炭層メタン、メタンハイドレート、バイオガスから誘導されたメタン等からのメタン、及び空気(大気)から分離することにより好ましくは得られる酸素のみである。そのような分離工程は、概して当業者に知られており(例えば米国特許第7459590号明細書を参照されたい)、本明細書で更に説明することは不要である。
従って、メタノール合成が更なるエネルギーを提供する一方で、最初の燃焼工程は、双改質工程のために十分なエネルギーを提供すべきである。しかし、必要に応じ、本発明の双改質工程のために必要な任意の追加のエネルギーは、任意の他の適切なエネルギー源、限定されないが例えば、任意の代替的なエネルギー源、例えば太陽エネルギー、風力エネルギー、又は原子力エネルギー等に由来するものであることもできる。
双改質プロセスは、通常はCu−ZnO又は関連する触媒上でのその後の工程におけるメタノールの高い全収率での合成のため、メタガス、すなわち1モルの一酸化炭素に対して約2モルの水素であるモル比のH及びCOのみを製造する。
メタン又は天然(シェール)ガスをメタノールへと転化させる本発明のプロセスの有意な利点は、供給材料の実質的に全てが転化されて、2:1付近のモル比の水素及び一酸化炭素のメタガスを与えることであり、このことはその後のメタノールの製造に理想的に適している。所望により、本発明の方法により製造されたメタノールは、その脱水によりジメチルエーテルへと転化される。脱水は、種々の触媒、例えば乾式シリカ触媒又はペルフルオロアルカンスルホン酸重合体触媒の上で、約100℃〜200℃の範囲の温度で行うことができる。そのような触媒の例としては、Nafion−Hである。
本発明のこの実施態様は、次のように示すことができる:
2CHOH→CHOCH+H
更なる実施態様において、ジメチルエーテルの製造は、脱水工程で生成された水を双改質反応へと再利用することによって実施することもできる。この実施態様においては、メタノールの脱水の間に生成された水は、必要に応じて全て再使用することができる。
本発明のプロセスの有意な利点は、それが、発熱の全反応で空気(大気)からの酸素のみを用いる酸化及び双改質により、任意の源のメタンからメタノールを合成するための単純な自己支持的な方法であることである。本発明のプロセスは、単一の酸素原子をメタン又はその源、例えばシェールガス若しくは天然ガスへと組み入れることにより、副生成物も廃棄物もなしに、高度に経済的で、効率的でかつ自己充足的な発熱のプロセスにおいて、メタンをメタノールに転化させるという、長く待ち望まれていたものの実現することができなかった目的を達するものである。
CH+1/2O→CHOH ΔH298K=−30.1kcal/mol
本発明のプロセスの有意な一特徴は、実質的にカーボンニュートラルかつエネルギーニュートラルであり、仮にカーボンフットプリントがあったとしても殆どないことである。従って、本発明の更なる利点は、二酸化炭素が大気に放出、又は捕捉されるのではなく、そのメタノールへの転化によって再利用されることである。例えば、発電プラントにおいて、天然(シェール)ガス中のメタンが完全に燃焼した後、結果生じた二酸化炭素及び水蒸気は回収され、そしてメタノールの製造のための双改質反応において用いられる。また、この方法は、殆どの場合、更には遠隔地においても導入可能な実質的にエネルギーニュートラルである。
現在、メタノールの業務用の製造は、ATRを含む合成ガスに基づくプロセスを用いるものである。ATRは、反応熱を提供するために内部部分酸化を用いるものであるが、合成ガス組成物をCO−2Hへと調節することが必要であり、かつCOを含む望ましくない副生成物を生み出すことから、注意深く調節された条件とともに、追加の費用が掛かる工程を必要とする。従って、現代のメタノールプラントは、年間百万トン超の容量を有する場合にのみ経済的で適したものとなり、これは何十億ドルもの投資に相当する。単純で効率的な本発明のプロセスは、極めて有意なコスト削減を達するので、より小さいプラント(年間50000トンまでの容量)を操業することが可能であり、このプラントは、年間1メガトン超のメガプラントまで拡大することができる。本発明のプロセスは、多くの外部のエネルギー入力、又はCO若しくは水の精製を必要としないので、それは内部で自己充足的であり、かつ場所に対する大きな適応性を伴って用いることができる。更に、天然(シェール)ガスからメタガスを生み出してメタノールを製造する本発明のプロセスは、天然(シェール)ガス又は石炭又は油を燃焼させる発電プラントの、二酸化炭素及び水蒸気を含む排気から、メタノールを製造するのにも適応することができる。
本発明のプロセスの個々の反応、すなわち、メタン又は天然(シェール)ガスの、空気からの酸素による完全燃焼、CO及びHOを用いるメタンの双改質反応、並びにメタガス(CO−2H)からのメタノールの合成は、別個に知られており、十分に検証されている。メタンの部分的な酸化から生み出された熱を、改質プロセスのために適用することも知られている。例えば、国際公開第2007/014487号パンフレットは、メタンの部分的な酸化(POM)を、湿式改質及び/又は乾式改質反応と単一の工程で組み合わせることを開示している。そのような「熱的に中性な三重改質(thermoneutral tri−reforming)」反応は、発熱のメタンの部分的な酸化において生じた熱を吸熱の水蒸気及び乾式改質反応において用いることを可能とするが、この部分的な酸化は、生成物の混合物を生み出すので、メタノールを製造するためのCO及びHを1:2のモル比で有する合成ガスを得るためには、更なるコストのかかる分離プロセス及び調節が必要となる。本発明のプロセスは、まずメタンの一部の完全燃焼を行い、完全燃焼させた生成物、すなわちモル比1:2のCO及びHOをその後のメタン又は天然(シェール)ガスとの双改質反応のために用いて、生成物の分離も外部の源からのエネルギーの追加も必要とすることなく、その後にメタノールのみを製造するために用いられるメタガスを製造することにより、メタン又は天然(シェール)ガスをメタノールのみへと転化させるための、単純で、経済的でかつ環境に優しい解決策を提供するものである。
本発明のプロセスは、全体として、廃棄物及び副生成物を伴わずに選択的かつメタノールのみを製造するための、新しく、経済的で、環境的にカーボンニュートラルであり、かつ実現可能な方法を提供する。この方法はまた、任意の局所条件及び利用可能な供給材料へと調節する適応性を有する。従って、本発明のプロセスは、メタン又は天然(シェール)ガスの、メタノール及び/又はジメチルエーテル、並びにそれらの誘導体への、効率的で、環境に優しく、かつ経済的な処理を可能とする。
次の実施例は、本発明の好ましい実施態様をこれらに限定することなく例示する。
〈実施例1〉
1当量のメタンを完全に酸化させ、次いで適切な二重壁式流通反応器中で、金属/金属酸化物の触媒、例えばNiO上で、約800℃〜1100℃、好ましくは800℃と850℃との間の温度で、3当量のメタンを加えてこの排気の双改質プロセスを行う。適切な触媒はまた、種々の金属及び金属酸化物、例えば単一の金属、金属酸化物又はそれらの組合せで用いられるV、Ti、Ga、Mg、Cu、Ni、Mo、Bi、Fe、Mn、Co、Nb、Zr又はSnを含む。それらは、適切な支持体、好ましくは適切な広いナノ構造表面を有する適切な支持体、例えばヒュームドシリカ又はアルミナ上に支持されていてもよく、かつ水素下で熱的に活性化されている。好ましい触媒は、溶融アルミナ支持体上のNiOである。このプロセスは、メタガス、すなわちCO及びHの所望の混合物を提供する。
〈実施例2〉
実施例1において、供給材料混合物を、天然(シェール)ガス又は他のメタン源に調節して、メタノールの製造のために適切な2:1のモル比のCO及びHの組成物(メタガス)を与える。供給材料は、必要に応じて過剰なCO、HS及び他の不純物から精製もされる。
〈実施例3〉
約2:1の比で製造した水素及び一酸化炭素のメタガス混合物を、通常の銅及び亜鉛の酸化物又は関連する触媒を使用する触媒的な反応条件の下で転化させてメタノールを製造する。
〈実施例4〉
実施例3で製造したメタノールを、固体酸触媒、例えばNafion Hを用いて100℃と200℃との間でジメチルエーテルへと脱水する。
〈実施例5〉
メタノールのジメチルエーテルへの脱水の間に生成した水を、必要に応じ、再利用して実施例1における双改質反応において使用する。
これらの実施態様は、本発明の種々の側面を例示することを意図しているので、本明細書で記載され、かつ特許請求されている本発明は、本明細書に開示されている特定の実施例の実施態様により範囲を限定されるものではない。本開示の記載から当業者に明らかであるように、任意のこれらの実施例と均等の実施形態が本発明の範囲内にあることが意図されている。このような実施形態も、添付の特許請求の範囲内に属することが意図されている。

Claims (14)

  1. メタン源からメタノールを製造する方法であって、
    メタン源からの1当量のメタンと、大気(空気)からの酸素とを、完全燃焼をもたらすのに十分な条件の下で反応させて、二酸化炭素及び水の混合物を製造し、かつ前記方法においてその後に使用するための熱を生み出すこと;
    前記燃焼により製造た二酸化炭素及び水の前記混合物と、前記メタン源からの3当量のメタンとを組み合わせて、3:1:2のモル比を有するメタン:二酸化炭素:水の混合物を製造すること;
    メタン:二酸化炭素:水の前記混合物を用い、かつ前記完全燃焼から生じた前記熱を用いて、単一工程の双改質反応を行って、下記のようにして一酸化炭素及び水素のみを生成して:
    3CH+CO+2HO→4CO+8H
    水素及び一酸化炭素の混合物をモル比2:1と2.1:1との間で有するメタガス(metgas)のみを製造すること;並びに
    前記メタガスを、メタノールのみを生成するのに十分な条件の下で下記のようにして転化させること:
    4CO+8H→4CHOH
    を含み、前記方法のための反応体が、前記メタン源からのメタン及び前記大気(空気)からの酸素のみである、
    メタノール製造方法。
  2. 酸化炭素及び水の前記混合物と組み合わせるための前記メタンを提供するために必要な前記メタン源が、天然(シェール)ガスから得られ、その結果、前記天然(シェール)ガス及び前記大気からの前記酸素のみを、燃焼のための反応体として使用し、そして前記方法を実施する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記メタンを、前記天然(シェール)ガスの他の付随的な成分、例えば過剰なCO、HS、及び他の不純物から分離して、燃焼のための前記メタンを提供すること、並びに
    前記酸素を、前記方法における用途のために前記大気(空気)から分離すること
    を更に含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記メタン源が、炭層メタン、メタンハイドレート、バイオガスから誘導されるメタン、又は任意の他の天然のメタン源を含む、請求項1のメタノール製造方法。
  5. 1当量のメタンと、前記大気(空気)の前記酸素との燃焼の前記熱が、前記双改質反応を行うために必要な全てのエネルギーを提供する、請求項1に記載の方法。
  6. 前記双改質反応のための追加のプロセスエネルギーを、必要に応じて、1つ又は複数の代替的なエネルギー源又はグリーンエネルギー源から供給することを更に含む、請求項1に記載の方法。
  7. 燃焼が、石炭又は油を燃焼させる発電プラントで行われ、熱と、二酸化炭素及び水の前記混合物を蓄え、そして前記方法において用いる、請求項1に記載の方法。
  8. 前記メタンを、二酸化炭素及び水の前記混合物と組み合わせるために、前記発電プラントの排気に加えることを更に含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記双改質反応が、触媒上で、800℃と1100℃との間の温度で、かつ5〜40barの圧力で実施され、前記触媒が、大きな表面積を有する適切な支持体上に堆積されている単一の金属触媒の形態、単一の金属酸化物触媒の形態、金属及び金属酸化物の混合触媒の形態で、V、Ti、Ga、Mg、Cu、Ni、Mo、Bi、Fe、Mn、Co、Nb、Zr、La若しくはSn、又はこれらの酸化物を含有しており、前記支持体が、シリカ、アルミナ又はこれらの組合せを含有しており、かつ前記触媒が、水素下で熱的に活性化されている、請求項1に記載の方法。
  10. 前記メタノールの全部又は一部をジメチルエーテルへと脱水すること、及び前記脱水からの水を前記双改質反応に再利用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
  11. 反応体としてのメタン源、及び大気からの酸素のみからメタノールのみを製造する方法であって、
    メタン源からの1当量のメタンと、前記大気からの酸素とを、完全燃焼をもたらすのに十分な条件の下で反応させて、二酸化炭素及び水の混合物を製造し、かつ前記方法においてその後に使用するための熱を生み出すこと;
    前記燃焼により製造した二酸化炭素及び水の前記混合物と、前記メタン源からの3当量のメタンとを組み合わせて、3:1:2のモル比を有するメタン:二酸化炭素:水の混合物を製造すること;
    メタン:二酸化炭素:水の前記混合物を用い、かつ前記完全燃焼から生じた前記熱を用いて、単一工程の双改質反応を行って、下記のようにして一酸化炭素及び水素のみを製造して:
    3CH+CO+2HO→4CO+8H
    水素及び一酸化炭素の混合物をモル比2:1と2.1:1との間で有するメタガスのみを製造すること;並びに
    前記メタガスを、メタノールのみを生成するのに十分な条件の下で下記のように転化させること
    4CO+8H→4CHOH
    を含み、前記方法のための反応体が、前記メタン源からの前記メタン及び前記大気からの前記酸素のみであり、かつ前記メタンの燃焼の前記熱が、前記双改質反応を行うために必要なエネルギーの大部分又は全部を提供する、
    メタノール製造方法。
  12. 酸化炭素及び水の前記混合物と組み合わせるための前記メタンを提供するために必要な前記メタン源が、天然(シェール)ガスから得られ、その結果、前記天然(シェール)ガス、及び前記大気からの酸素のみを、燃焼のための反応体として使用し、そして前記方法を実施する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記メタンを、前記天然(シェール)ガスの他の成分から分離及び精製して、燃焼のための前記メタンを提供すること、並びに
    前記酸素を、前記方法における用途のために前記大気から分離すること
    を更に含む、請求項12に記載の方法。
  14. 前記メタン源が、炭層メタン、メタンハイドレート、バイオガスから誘導されるメタン、又はメタンを含有している任意の他の工業的な若しくは天然の源を含む、請求項11に記載の方法。
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