JP6352900B2 - ニトリルゴムの水素化 - Google Patents

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Description

本発明は、特定の錯体触媒の存在下にニトリルゴムを選択的に水素化させるための新規な方法に関する。
「アクリロニトリル−ブタジエンゴム」または「ニトリルゴム」(略して、「NBR」とも呼ばれる)という用語は、広く解釈されるべきであって、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエン、および所望により1種または複数のさらなる共重合性モノマーのコポリマーまたはターポリマーであるゴムを指している。
水素化NBR(略して、「HNBR」とも呼ばれる)は、NBRを水素化することによって商業的に製造されている。したがって、ジエンベースのポリマー中の炭素−炭素二重結合の選択的水素化は、そのポリマー鎖の中のニトリル基およびその他の官能基(たとえば、そのポリマー鎖中に他の共重合性モノマーが導入された場合のカルボキシル基)に悪影響が出ないように実施しなければならない。
HNBRは特殊ゴムであって、極めて良好な耐熱性、優れた耐オゾン性および耐薬品性、さらには優れた耐油性を有する。上述のHNBRの物理的および化学的性質が、極めて良好な機械的性質、特に高い耐摩耗性と組み合わさっている。この理由から、HNBRは、各種の用途において幅広く使用されてきた。HNBRは、たとえば、自動車分野におけるシーリング材、ホース、ベルトおよび緩衝要素、さらには原油探索分野におけるステーター、油井シール材およびバルブシール材、ならびに、飛行機産業、電子産業、機械工学および造船における多くの部品に使用されている。水素化の転化率が95%を超える、すなわち残存二重結合(RDB)含量が5%未満で、水素化反応の間に架橋することなく、そして得られるHNBRの中のゲルレベルが約2.5%未満であるということが、HNBRが前記の高性能な応用を確保し、最終製品の優れた加工性を保証するための限界値である。
HNBRの中の共重合させたジエン単位の水素化度は、50〜100%の範囲で変化させることができるが、望まれる水素化度は、約80〜100%、好ましくは約90〜約99.9%である。HNBRの市販グレードは、典型的には、18%未満の不飽和度が残り、アクリロニトリルの含量がおよそで、約50%までである。
均一系または不均一系いずれかの水素化触媒を使用して、NBRの水素化を実施することができる。使用される触媒は通常は、ロジウム、ルテニウムまたはパラジウムをベースとするものであるが、白金、イリジウム、レニウム、オスミウム、コバルト、または銅を金属としてか、または好ましくは金属化合物の形態として使用することも可能である(たとえば、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、および(特許文献9)を参照されたい)。均一相における水素化のために好適な触媒および溶媒は、(特許文献10)および(特許文献11)からも公知である。
商業的な目的では、NBRの水素化は、多くの場合ロジウムまたはパラジウムをベースとする不均一系または均一系のいずれかの遷移金属触媒を使用することにより、有機溶媒の中で実施される。そのようなプロセスでは、たとえば、触媒金属が高価であり、そして触媒金属の除去/リサイクルに含まれるコストがかかるといった欠点がある。この理由から、より安価な貴金属たとえばオスミウムおよびルテニウムをベースとする代替え触媒の研究開発が行われてきた。
代替えのNBR水素化プロセスは、Osベースの触媒を使用して実施することができる。NBRの水素化に十分に適している一つの触媒は、(非特許文献1)に記載されている、OsHCl(CO)(O)(Pcyである。この触媒を使用した水素化の速度は、検討した全反応条件領域にわたって、Wilkinsonの触媒(RhCl(PPh)によって製造したものよりは優れている。
Ru(X)Cl(CO)L(ここでXは、HまたはCH=CHPhを意味している)のタイプのRuベースの錯体もまた、ポリマーの水素化には好適な触媒であり、Ru金属の価格はより安価である。RuHCl(CO)L(ここでLは、バルキーなホスフィンである)触媒系は、(非特許文献2)に開示されているように、NBRの定量的水素化を与える。そのような水素化の際には、触媒活性を維持するための、遊離ホスフィン配位子を添加する必要はない。しかしながら、GPCの結果から、それらの触媒が水素化の際にある程度の架橋を起こし、そのようにして得られるHNBRが、ゲルを生成する傾向があるということが示唆されている。
(特許文献5)においては、ニトリルゴムを水素化させるためにルテニウム錯体が使用されているが、ゲルの生成を回避するために、各種の添加剤または配位子、たとえばホスフィンまたはカルボン酸を添加しなければならない。
(特許文献12)においては、ニトリルゴムを水素化させるための、RuXY(CO)ZL(ここで、X、Y、ZおよびLは、ハライド、CO、カルボキシレート、またはホスフィンである)のタイプのルテニウムベースの錯体が記載されているが、水素化の際に分子量が過度に高くなるのを防ぐために、水およびある種の添加剤を添加する必要がある。しかしながら、このことは、満足のいくものではないが、その理由は、水を導入することが、工業スケールの装置を腐食させる原因となり、またそれらの添加剤が、典型的には、最終的なゴム製品の中の混入物としては望ましくないからである。使用される触媒の量は、約500ppm、すなわちゴム100重量部あたり触媒0.05重量部であると記載されている。
同様に、(特許文献13)および(特許文献14)では、同じ目的のために、無機添加剤たとえば、塩ならびに硫酸およびリン酸のような酸を、微量の水と共に用いているが、水は、極めて腐食性が高いと考えておかねばならず、そのため、必要とされる水素化設備のすべてにおいて、高価な合金を使用することになる。必要とされる触媒の量は、(特許文献14)においては、ゴムに対してRu金属基準で923〜1013ppmの範囲、また(特許文献13)においては、約100ppmのRu金属である。
(特許文献15)においては、MEK溶液中でのニトリルゴムの水素化のために、触媒のRuCl(PPhおよびRuHCl(CO)(PCyが使用されている。しかしながら、かなり多量の(約5phr)アスコルビン酸を添加しない限り、得られた反応生成物がゲル化する。さらなる実施例において、各種の有機酸または二塩基酸を添加することが記載されているが、これらの添加剤で起こりうる最終的な反応生成物の汚染についての解決策がまったく提示されていない。使用される触媒の量は、ゴム100重量部あたり229〜1052ppmのRu金属であるとの記載がある。
(特許文献16)には、Ru−触媒に関わる一般的な問題、すなわち、水素化の際の粘度の上昇についての記載がある。この問題は、使用される溶媒に依存する傾向があり、1種または複数のポリマー分子の相互作用に関連づけられてはいるが、具体的な反応機構はまだ立証されていない。触媒の使用量が多いほど、より高粘度になり、さらにはゲル化を起こす傾向がある。水素化プロセスの際に、0.1〜0.3phrのレベルでアミンを添加すると、粘度の上昇を回避することが可能であるということが見いだされた。しかしながら、大規模な商業的プロセスの観点からは、それらの添加剤が、必要な溶媒リサイクルプロセスの間に蓄積したり、反応生成物の中に取り込まれたりする可能性を考慮しなければならない。ペルオキシド硬化ゴム物品にHNBRを使用する場合には特に、その硬化系との間の相互作用が、重大な欠陥をもたらす可能性がある。たとえば(特許文献16)において有効性が見いだされたような、一級アミンは、硬化状態を低下させ、その結果、たとえば、重要な圧縮永久歪みを悪化させる可能性がある。
HNBRのいくつかの用途では、たとえば工業的用途のための添加剤の存在の影響を受けにくいということもあり得るが、政府の健康および安全の規制に関わる用途も存在し、その場合、一般的には、よりクリーンなポリマー、または添加剤の含量がより少ないポリマーが好まれる傾向がある。実務的な理由から、一つのプラントにおいてすべての等級の製品に対して同一の触媒系で実施するのが極めて望ましく、また、添加剤を含まない、より単純な触媒系を用いれば、工業的用途および規制のある用途の両方のための製品を製造することが可能となるであろう。したがって、添加剤を伴う必要がない触媒系が、プロセスからも、そのゴムのユーザーの観点からも、はるかに望ましいであろう。水素化の際に分子量を良好に調節し、再現性がありかつ十分に熱安定性の高いポリマーを与えるような触媒であることが望ましい。さらに、パラジウム、ロジウム、イリジウム、白金およびルテニウムのような貴金属は高価であるので、より高い触媒効率も望ましい。
ニトリルゴムのメタセシス、さらには水素化の両方で使用できる、各種のルテニウム触媒組成物が提案されてきた。
(特許文献17)においては、低分子量で、当業界で公知のものよりも狭い分子量分布を有するHNBRの調製を、ニトリルゴムを、メタセシス反応および水素化反応に同時にかけることによって実施している。その反応は、ルテニウムまたはオスミウムをベースとする五配位の錯体触媒、特に1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン)(トリシクロヘキシル−ホスフィン)ルテニウム(フェニルメチレン)ジクロリド(Grubbs第二世代触媒とも呼ばれている)の存在下に実施している。しかしながら、(特許文献17)は、どのようにしてその二つの同時に起きる反応、すなわちメタセシスおよび水素化に影響を与えるか、あるいは、この点に関してそれぞれの触媒の活性をどのように制御するかについては、何の開示または教示を与えていない。これらの触媒が、水素化プロセスにおいて、メタセシス活性を制御または抑制して使用することが可能、したがって分子量の低下を制御または抑制することが可能であるとしても、それでもなお、それらはかなり複雑な構造を有する。特に、置換されたベンジリデン配位子を存在させるということで、触媒製造においてさらなる合成工程が加わり、そのために製造コストが上がる。
さらに(特許文献18)にも、ニトリルゴムを、水素の存在下で、特別に定義された五配位のルテニウムベースまたはオスミウムベースの触媒の存在下に、メタセシスを水素化と組み合わせた同時反応にかけて、低分子量および狭い分子量分布を有する水素化ニトリルゴムを調製するためのプロセスが開示されている。特に、後に示すいわゆるHoveyda触媒およびArlt触媒が使用されていて、典型的なニトリル水素化実験においては、それぞれ0.041phrおよび0.045phrのレベルで効果があることがわかっている。
Figure 0006352900
それでもなお、これらの触媒には、カルベン錯体のように、Ru原子に結合された二つの比較的複雑な錯体カルベン配位子、すなわちベンジリデン配位子、および非置換もしくは置換のイミダゾリジニル配位子が含まれている。難易度の高い合成手順は別にしても、水素化の際に触媒がメタセシス活性を有しているのは、どのような場合でも望ましくない。
さらに、(特許文献19)にも、ニトリルゴムを、水素の存在下で、特別に定義された六配位のルテニウムベースまたはオスミウムベースの触媒の存在下に、メタセシスを水素化と組み合わせた同時反応にかけて、当業界で公知のものよりも、より低い分子量およびより狭い分子量分布を有するHNBRを調製するためのプロセスが開示されている。そのようなプロセスは、一般式(I)〜(III)の触媒を使用して実施される。
Figure 0006352900
[式中、
Mは、ルテニウムまたはオスミウムであり、
およびXは、同一であっても異なっていてもよい配位子、好ましくはアニオン性配位子であり、
およびZは、同一であるかまたは異なっていて、中性の電子供与体配位子であり、
およびRはそれぞれ独立して、Hであるか、または、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボキシレート、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリール−オキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、およびアルキル−スルフィニル残基(これらはそれぞれ、場合によっては、1個または複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリールまたはヘテロアリール残基によって置換されていてもよい)からなる群から選択される置換基であり、ならびに
Lは、配位子である]
下に示すGrubbs III触媒が好適な触媒として使用されるが、それには、ベンジリデン配位子と、NHCタイプのカルベン配位子の両方が含まれているので、これらの触媒に、望み通りにアクセスすること容易でない。
Figure 0006352900
(特許文献20)には、その一般的構造を以下に示す、広く各種の触媒が開示されている。
Figure 0006352900
そのような触媒を使用して、解重合によって変性したニトリルブタジエンゴム(NBR)またはスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を得ることができると記述されている。さらに、1種または複数のそれらの触媒を添加することによってまずNBRの解重合を実施させ、それに続けて水素化のために、その反応器の中に高圧で水素を添加することによって、解重合させたHNBRまたはSBRを製造する方法において、それらの触媒を使用することができるとも記述されている。また別の実施態様においては、まず水素を高圧で添加し、次いでそれに続けて1種または複数の上記の触媒を添加することによって、HNBRを調製することが開示されている。しかしながら、(特許文献20)は、解重合(メタセシス)および水素化のための触媒の異なった触媒活性にどのようにして影響を与えるかについては、何の開示も教示も与えていない。水素化を同時に起こさせると、メタセシスによる分子量の低下が制御できないと考えられている。
さらなる多くの文献に、まず開環メタセシス重合(ROMP)から出発し、次いで水素化反応をさせる、2工程反応(いわゆる「タンデム重合/水素化反応」)においてメタセシス触媒を使用することが記載されている。
(非特許文献3)によれば、メタセシス触媒のGrubbs I触媒、すなわちRuCl(PCy−ベンジリデンをシクロオクテンまたはノルボルネン誘導体のROMPにまず使用し、次いで、それに続けてポリマーの水素化を実施することができる。トリエチルアミンのような塩基を添加することによって、水素化反応における触媒活性が向上すると報告されている。したがって、この触媒はやはり、添加剤を必要とするという欠点を有しており、一般的にこの触媒は、全般的に活性が低すぎる第一世代のGrubbs触媒である。
(非特許文献4)もまた、官能化させたノルボルネンモノマーから出発するタンデムROMP−水素化反応に関し、そのようなタンデム反応における、3種のルテニウムベースの触媒、すなわち、Grubbs I、Grubbs II、およびGrubbs III触媒の使用を比較している。ポリマー骨格の末端の上のルテニウムベースの触媒が遊離されて、H、トリエチルアミンのような塩基およびメタノールと反応することによって、水素化−活性化学種に転換されると記述されている。したがって、その反応は、(非特許文献3)に開示されているのと同じような欠点を有している。
(非特許文献5)でも、タンデムROMP重合/水素化反応を検討し、ルテニウム−ベースのメタセシス触媒Grubbs Iの水素化分解反応の機構に焦点を当てている。そのような触媒は、水素化化学に相当する条件下では、二水素化物、二水素および水素化物の化学種に転換されることが示されている。しかしながら、不飽和ポリマーの水素化については、何の開示もない。
上記のことをまとめると、次のようになる:
(1)今日までのところ、ニトリルゴムの選択的水素化に極めて活性の高い水素化触媒は公知であって、RhおよびPdベースの触媒が工業的な水素化プロセスにおいてすでに使用されている;しかしながら、より安価なRuベースの水素化触媒は、NBRの水素化に使用すると、依然としてゲル化の問題に直面する。
(2)メタセシス反応における高活性を目的に設計された、いくつかのルテニウムベースの錯体は、まずメタセシスによるニトリルゴムの分解を可能とし、次いで、その分解されたニトリルゴムが水素化されて、水素化ニトリルゴムが得られるが、メタセシスのためおよび水素化のために同一の触媒を使用すると、そのような触媒は、NBRのメタセシスには高活性であるが、それに対して、同時のNBR水素化にはそれほど活性が高くない;そして
(3)両方の、すなわちメタセシスおよび水素化のための触媒活性を有する触媒はこれまで、制御された状態で使用することができなかった。
同一の出願人からの、未公開の4件の特許出願には、もともとタセシス活性および水素化活性の両方を有している錯体触媒を別の助触媒と接触させることによって得られ、それによって、ニトリルゴムを選択的に水素化させるために、メタセシス活性を調節するか、さらには抹殺することが可能な、ルテニウムをベースとする新規な触媒組成物が記載されている。しかしながら、そのような触媒組成物の調製には、さらなる調製工程が含まれるので、低い触媒濃度でニトリルゴムを選択的に水素化できるような、さらに改良され、しかも十分に単純な触媒が提供されることが必要とされている。
(特許文献5)には、たとえばGrubbs IIもしくはGrubbs III触媒またはGrubbs−Hoveyda触媒の中に存在しているような、いわゆるN−複素環カルベン配位子を有する、単純な触媒構造が開示されている。
最初に、(非特許文献6)によって、下記の式で表されるルテニウム錯体が調製され、1−ヘキセンの水素化で試験されたが、そのRuHCl(CO)IMes(PCy)触媒は、より単純なRuHCl(CO)(PCy(ここで、Cyはシクロヘキシルを意味している)よりも活性が低いことが見いだされた。しかしながら、この参考文献では、そのような錯体が、ポリマー、特にニトリルゴムの水素化にも使用できるかどうか、そして、RuHCl(CO)(PCyを触媒として使用することと比べて、RuHCl(CO)IMes(PCy)を触媒として使用すると、それによって得られる各種水素化ニトリルゴムの物理的性質に何らかの効果または利点があるかどうかについては、何の開示、ヒント、教示も与えていない。
(非特許文献7)は、前駆体のRuHCl(CO)(PPhをそれぞれのNHC−配位子と反応させることによって、錯体のRuHCl(CO)(PPh)NHC(ここで、NHC=IMesまたはSIMes)を調製した。
Figure 0006352900
シクロオクテンを用いた水素化の実験で、NHC=IMes(IMesはN,N’−ビス(メシチル)イミダゾル−2−イリデンである)であるこの触媒では良好な水素化効率が得られることがわかったが、副反応として約20%のROMP−ポリマーも見いだされた。このことは、この触媒または誘導された活性種がメタセシス活性を有しているということを示唆している。このことは、ひいては、ジエン−ポリマーの水素化には、分子量の低下を伴うであろうということも意味しているが、その理由はこのプロセスが、メタセシスの過程を経過して進行するからである。このことは、より低分子量のゴムを生じさせるという目的では都合がよいが、その一方で、多くの高級ゴム部品では必要とされる、分子量を低下させずに水素化ポリマーを管理して製造するためには、深刻な欠点である。これに対して、水素化させる基質としてシクロドデセンを用いると、ROMP−重合はまったく観察されなかった。このように基質に応じて異なった挙動をすることは、当業者であっても、それらの触媒の挙動について、いかなる結論やいかなる予測を引き出すこともできない。しかしながら、(非特許文献7)は、そのような錯体のRuHCl(CO)(PPh)NHCを、ポリマー、特にニトリルゴムを水素化するために使用できるかどうか、そして、触媒としてそれを使用したら、それによって得られる水素化ニトリルゴムの物理的性質に何らかの影響またはメリットがあるかどうか、については、何の開示、ヒントまたは教示も与えていない。
NHC−配位子を有するルテニウム触媒が、一般的に非常に活性が高いということは見いだされているものの、それらを直接水素化に使用することには限度があるが、その理由は、金属とNHC配位子の炭素原子との間の結合が、還元性の条件下では還元的な脱離を起こしやすいということも見いだされているからである(非特許文献8)。著者らはさらに、金属の配位球(coordinating sphere)からNHC基が脱離するのを防止するために、半安定化させることが可能な、さらなるキレート基を含むNHC−配位子についての報告もしている。このアプローチ方法は、スチレンの水素化ではいくつかの場合で効果があったが、不飽和ポリマーの水素化で試験されたことはない。キレート基としてのオレフィンが、実際のところ、水素化の初期の段階で水素化されて、NHC−配位子をふたたび単座配位の配位子として残し、最終的にはそれがイミダゾリウム塩としてその錯体から完全に分離し、その金属錯体が反応の最後には黒色の固形物になってしまうということも見いだされた。
したがって、入手可能な学術文献からは、実際のところ、条件の難しい水素化プロセスのために、単座配位で結合されたNHC−配位子を有するルテニウム触媒を使用する気にはなれない。
(非特許文献9)においてはさらに、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸溶融塩の中に固定された、触媒としての、RuHCl(CO)(PCyを使用した、2相条件下で、ニトリルゴムを水素化することができることを開示している。
(非特許文献10)は、各種の基質たとえば、スチレンおよびアリル−ベンゼン、さらにはノルボルネンおよびその誘導体のROMPによって得られるポリマーについて、式RuHCl(H)(PCy)(L)およびRuHCl(CO)(PCy)(L)(ここで、L=P(Cy)(ここでCyは、シクロヘキシルである)またはL=IMes(ここでIMesは、N,N’−ビス(メシチル)イミダゾル−2−イリデンである))の触媒の水素化性能の試験をした。NHC−配位子を有するルテニウム錯体とNHC−配位子を有さないルテニウム錯体とを比較しても、NHC−配位子を有するそれが明らかに優れているということを見いだすことはできない。その試験は、たとえば室温や55℃まで、比較的に高い触媒使用量といった穏やかな条件で実施された。高分子量の基質の水素化は、小さい分子の水素化に比較すると、条件がはるかに難しく、高い/より高い触媒使用量とし、反応時間を増やす必要があったにも関わらず、ターンオーバー頻度、転化率ともに、実質的に低い結果となる。それらの反応条件下では、上述のNHC−配位子の副反応が、さらにより起こりやすいようである。
(非特許文献11)ではさらに、NHC−配位子およびクメン配位子を有するルテニウム錯体は、ニトリル基を、極めて望ましくない反応であって、ゲル化の原因となりうるような水素化をする傾向があるということを見いだした。
米国特許第A−3,700,637号明細書 欧州特許出願公開第A−0 134 023号明細書 独国特許出願公開第A−35 41 689号明細書 独国特許出願公開第A−35 40 918号明細書 欧州特許出願公開第A−0 298 386号明細書 独国特許出願公開第A−35 29 252号明細書 独国特許出願公開第A−34 33 392号明細書 米国特許第A−4,464,515号明細書 米国特許第A−4,503,196号明細書 独国特許出願公開第A−25 39 132号明細書 欧州特許出願公開第A−0 471 250号明細書 欧州特許出願公開第A−0 588 099号明細書 欧州特許出願公開第A−0 588 098号明細書 欧州特許出願公開第A−0 588 096号明細書 欧州特許出願公開第A−0 588 097号明細書 欧州特許出願公開第A−0 490 134号明細書 国際公開第A−2005/080456号パンフレット 国際公開第A−2011/029732号パンフレット 国際公開第A−2011/023788号パンフレット 国際公開第A−2011/079799号パンフレット
Ind.Eng.Chem.Res.,1998,37(11),4253〜4261 Journal of Molecular Catalysis A:Chemical,1997,126(2〜3),115〜131 Organometallics,2001,20(26),5495〜5497 J.Am.Chem.Soc.,2007,129,4168〜9 Inorg.Chem.,2000,39,5412〜14 Nolanら、Organometallics,2001、20、794 Foggら、Organometallics,2005,24,1056〜1058 Albrechtら、Organometallics,2009,28,5112〜5121 Macromolecular Rapid Communications,19,409〜411 Foggら、Organometallics,2009,28,441〜447 Albrechtら、European Journal of Inorganic Chemistry(2011),2011(18),2863〜2868)
これらの障害を鑑みると、さらなる添加剤を必要としない単純なルテニウムベースの錯体を用いた、改良されたニトリルゴムの水素化が依然として必要とされていた。そのようなプロセスは、制御された方式で、すなわち、メタセシス反応が原因の分子量の低下が同時に起きないようにして進行させるべきである。そのようなプロセスはさらに、特に、中分子量〜高分子量であって、60〜130ムーニー単位のムーニー粘度(ML1+4@100℃)の範囲を有する水素化ニトリルゴムが提供されるようにするべきであり、また、効率的であって、短い反応時間の間に少量の触媒で必要とされる高い転化率が得られるようにするべきである。従来技術においては、今までのところ、水素化の後に、不当に高い残存触媒含量を除去するために、触媒除去工程またはリサイクル工程が必要である。したがって、提供される新規な方法は、リーブ・イン触媒(leave−in−catalyst)技術を代表するものであるのが好ましい。
驚くべきことには、上記の目的は、以下の一般式(I)の触媒の存在下にニトリルゴムを水素と接触させることによって解決されたが、その触媒には、少なくとも1個のN−複素環カルベン配位子およびCO配位子が必須成分として含まれ、それによって、ニトリルゴムのポリマー骨格中のC=C二重結合が選択的に水素化される。
したがって、本発明は、部分的もしくは全面的に水素化されたニトリルゴムを調製するための新規な方法に関するが、それが特徴としているのは、一般式(I)を有する少なくとも1種の錯体触媒の存在下に、ニトリルゴムを水素化にかけることである。
Ru(CO)(H)(X)(L)(L) (I)
[式中、
は、アニオン性配位子であり、ならびに
およびLは、同一であるかまたは異なった配位子であるが、ここでLおよびLのうちの少なくとも一方は、N−複素環カルベン配位子を表す]
本発明はさらに、ニトリルゴムを部分的もしくは全面的に水素化するための触媒としての、一般式(I)を有する錯体の使用にも関する。
Ru(CO)(H)(X)(L)(L) (I)
[式中、
は、アニオン性配位子であり、ならびに
およびLは、同一であるかまたは異なった配位子であるが、ここでLおよびLのうちの少なくとも一方は、N−複素環カルベン配位子を表す]
本発明はさらに、そのような新規な方法によって得ることが可能な水素化ニトリルゴムにも関する。特に、本発明は、100ppm未満、より好ましくは95ppm未満、さらにより好ましくは90ppm未満のベンゼン含量を有する水素化ニトリルゴムにも関する。
本発明の態様、特徴、および利点は、以下のものを示す添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
比較例CEx.1および実施例1〜6について、RDBすなわち残存二重結合対水素化時間をプロットした図である。 比較例CEx.3および実施例8〜10について、RDBすなわち残存二重結合対水素化時間をプロットした図である。 比較例CEx.1およびCEx.2ならびに実施例3および実施例15〜17について、RDBすなわち残存二重結合対水素化時間をプロットした図である。 実施例12〜14について、RDBすなわち残存二重結合対水素化時間をプロットした図である。
一般式(I)に従う錯体触媒を使用すると、有利なことには、ニトリルゴムのメタセシス分解を同時に起こさせることなく、ニトリルゴムの水素化反応を実施することが可能となる。このことは、そのような触媒を使用したニトリルゴムの水素化は、制御された方式で、すなわち、調節可能な中分子量〜高分子量を有する水素化ニトリルゴムが生成するように実施することができるということを意味している。それらの触媒は、メタセシス反応が同時に起きたり、水素化反応と競争反応したりすることを促進しない。したがって、そのニトリルゴムの分子量は、水素化の間に、実質的に低下することも、あるいは顕著に増大したりすることもない。一般式(I)に従う触媒は、ニトリルゴムの前記水素化において高い活性を有する、すなわち低い触媒濃度で十分に短い反応時間の間に、高度の水素化を達成することができる。したがって、水素化の後で錯体触媒を除去したり、リサイクルしたりする必要はない。本発明の方法は、必須であるN−複素環カルベン配位子を含まない錯体触媒を使用する従来技術による他のプロセスの欠陥を有していない。一般式(I)に従う触媒を、本発明による水素化プロセスにおいて使用すれば、水素化ニトリルゴム中でのゲルの生成が最小限となり、加熱エージングによるムーニー粘度の上昇も、従来公知の、特に最新の従来技術触媒、すなわちRu(CO)HCl(PCyを使用した水素化プロセスに比較しても、実質的に低い。先に論評したいくつかの他の従来技術のルテニウム触媒に固有の構造的な複雑さを有していない、一般式(I)の触媒を使用したときに、物理的性質に関連したそれらの好ましい結果が達成されるとは、従来技術文献または当業者によって予見することができなかった。
驚くべきことには、本発明の方法をモノクロロベンゼン中で実施すると、極めて低いベンゼン濃度を有する水素化ニトリルゴムが得られ、そのため、単離した後では、極めて低いベンゼン濃度を有する水素化ニトリルゴムが得られる。このことは、注目すべきことであるが、その理由は、NBRの水素化のためにWilkinsonの触媒、すなわちクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)を使用すると、モノクロロベンゼンが分解してHClおよびベンゼンが生成することは公知だからである。腐食作用が知られているHClおよび発がん物質であるベンゼンのいずれもが、望ましくない副反応生成物であり、本発明の方法は、100ppm未満のベンゼン、好ましくは95ppm未満、より好ましくは90ppm未満のベンゼンしか含まないHNBR溶液、従って、100ppm未満のベンゼン、好ましくは95ppm未満、より好ましくは90ppm未満のベンゼンしか含まない単離されたHNBRを提供することが可能である。そのようなHNBRは、以下において定義される有機溶媒、特にモノクロロベンゼン中で実施した本発明の方法によって得ることができる。ある種の用途では、そのように低いベンゼン量がたいそう望まれている。
本特許出願の目的で使用される「置換される(substituted)」という用語は、指示された基または原子の上の水素原子が、それぞれの場合において指示された基の一つによって置き換えられているということを意味しているが、ただし、指示された原子の原子価が高すぎることがなく、その置換で安定な化合物が生じる必要がある。
本特許出願および本発明の目的のためには、前記および後記において、一般的な項目または好ましい範囲として与えられた残基、パラメーター、または説明は、いかなる方法でも相互に組み合わせることが可能であり、そのように、すなわち、それぞれの範囲と好ましい範囲の組合せが含まれて開示されていると考えるべきである。
錯体触媒の定義:
本発明において使用される触媒は、一般式(I)を有している。
Ru(CO)(H)(X)(L)(L) (I)
[式中、
は、アニオン性配位子であり、ならびに
およびLは、同一であるかまたは異なった配位子であるが、ここでLおよびLのうちの少なくとも一方は、N−複素環カルベン配位子を表す]
一般式(I)に従う触媒は、下記の幾何学的配置、すなわち、正四面体角錐形幾何学的配置をとることができる。
Figure 0006352900
多くの触媒がこの正四面体角錐形幾何学的配置をとることができるが、配位子球を変動させることによって、その幾何学的配置からの偏りもまた可能であり、それらもまた本発明の範囲内と考えるべきである。
およびLの定義:
一般式(I)において、LおよびLは、同一であるかまたは異なった配位子であり、それらのうちの少なくとも一方は、N−複素環カルベン配位子を表す。
一つの実施態様において、
が、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスフォナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホネート、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、チオエーテル、ニトリル、およびイソシアニドからなる群から選択される配位子を表し、そして
が、N−複素環カルベン配位子を表す。
また別な実施態様においては、LおよびLの両方の配位子が、同一であるかまたは異なったN−複素環カルベン配位子を表す。
が、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスフォナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホネート、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン−ベースの配位子、またはチオエーテルを表しているならば、典型的には、以下の配位子を使用することができる:
・ 「ホスフィナイト」という用語には、たとえば、フェニルジフェニルホスフィナイト、シクロヘキシルジシクロヘキシルホスフィナイト、イソプロピルジイソプロピルホスフィナイト、およびメチルジフェニルホスフィナイトが含まれる。
・ 「ホスファイト」という用語には、たとえば、トリフェニルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ−tert−ブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、およびメチルジフェニルホスファイトが含まれる。
・ 「スチビン」という用語には、たとえば、トリフェニルスチビン、トリシクロヘキシルスチビン、およびトリメチルスチビンが含まれる。
・ 「スルホネート」という用語には、たとえば、トリフルオロメタンスルホネート、トシレート、およびメシレートが含まれる。
・ 「スルホキシド」という用語には、たとえば、(CHS(=O)および(CS=Oが含まれる。
・ 「チオエーテル」という用語には、たとえば、CHSCH、CSCH、CHOCHCHSCH、およびテトラヒドロチオフェンが含まれる。
・ 本発明の用途の目的においては、「ピリジン−ベースの配位子」という用語は、たとえば、国際公開第A−03/011455号パンフレットに記載されているような、すべてのピリジン−ベースの配位子またはそれらの誘導体のための集合名として使用される。したがって、「ピリジン−ベースの配位子」という用語には、ピリジンそのもの、ピコリン(たとえばα−、β−、およびγ−ピコリン)、ルチジン(たとえば、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、および3,5−ルチジン)、コリジン(すなわち、2,4,6−トリメチルピリジン)、トリフルオロメチルピリジン、フェニルピリジン、4(ジメチルアミノ)−ピリジン、クロロピリジン、ブロモピリジン、ニトロピリジン、キノリン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、およびフェニルイミダゾールが含まれる。
一般式(I)の中の電子供与性配位子として、Lがホスフィンを表しているのならば、そのようなホスフィンは、好ましくは一般式(IIf)を有している。
Figure 0006352900
[式中、R、RおよびRは、同一であるかまたは異なっているが、さらにより好ましくは、同一であって、C〜C20アルキル、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、もしくはネオフェニル、C〜C−シクロアルキル、好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルもしくはシクロオクチル、C〜C20アルコキシ、置換もしくは非置換C〜C20アリール、好ましくはフェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル、トリル、2,6−ジメチルフェニル、もしくはトリフルオロメチル、C〜C20アリールオキシ、環中に少なくとも1個のヘテロ原子を有するC〜C20ヘテロアリール、環中に少なくとも1個のヘテロ原子を有するC〜C20ヘテロシクリル、またはハロゲン、好ましくはフルオロを表すことができる]
一般式(I)の中の電子供与性配位子として、Lが一般式(IIf)のホスフィンホスフィンを表しているのならば、そのようなホスフィンは好ましくは、PPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソプロピル)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、またはP(ネオフェニル)(ここで、Phはフェニルを意味し、Tolはトリルを意味している)を表している。
N−複素環カルベン配位子は、環中に存在しているヘテロ原子として少なくとも1個の窒素を有する、シクリックカルベンタイプの配位子を表している。その環は、環の原子の上で各種の置換パターンを示すことができる。この置換パターンが、ある程度の立体的な混み合いを与えているのが好ましい。
本発明の文脈においては、そのN−複素環カルベン配位子(以後においては、「NHC−配位子」と呼ぶ)は、イミダゾリンまたはイミダゾリジン残基をベースとしているのが好ましい。
NHC−配位子は、典型的には、一般式(IIa)〜(IIe)に相当する構造を有している。
Figure 0006352900
[式中、
、R、R10、およびR11は、同一であるかまたは異なっていて、水素、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C24−アリール、C〜C25−アルクアリール、C〜C20ヘテロアリール、C〜C20ヘテロシクリル、C〜C20−アルコキシ、C〜C20−アルケニルオキシ、C〜C20−アルキニルオキシ、C〜C20−アリールオキシ、C〜C20−アルコキシカルボニル、C〜C20−アルキルチオ、C〜C20−アリールチオ、−Si(R)、−O−Si(R)、−O−C(=O)R、C(=O)R、−C(=O)N(R)、−NR−C(=O)−N(R)、−SON(R)、−S(=O)R、−S(=O)R、−O−S(=O)R、ハロゲン、ニトロ、またはシアノを表すが、ここで、上述のすべての場合において、R、R、R10およびR11の意味に関連して、基Rは、同一であるかまたは異なっていて、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはヘテロアリールを表す]
これらの式(IIa)〜(IIe)において、ルテニウムの金属中心に結合している炭素原子が、形式上カルベン炭素である。
適切であるならば、R、R、R10、およびR11のうちの1個または複数が、互いに独立して、1個または複数の置換基、好ましくは直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C10−アルコキシ、C〜C24−アリール、C〜C20ヘテロアリール、C〜C20複素環、ならびにヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲンからなる群から選択される官能基によって置換されていることができるが、ここで、これら上述の置換基は、化学的に可能である限りにおいて、さらに、1個または複数の、好ましくはハロゲン、特に塩素または臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される置換基によって置換されていてもよい。
単に明瞭にするためだけに付け加えれば、本特許出願における一般式(IIa)および(IIb)で示されるNHC−配位子の構造は、それぞれ、そのようなNHC−配位子について文献においてしばしば見いだされる構造(IIa−(i))および(IIb−(i))と等価であり、NHC−配位子のカルベン的特性が強調されている。このことは、さらなる構造(IIc)〜(IIe)、さらには以下において示される関連する好ましい構造(IIIa)〜(IIIu)にも同様にあてはまる。
Figure 0006352900
一般式(I)の触媒における好ましいNHC−配位子においては、
およびRが、同一であるかまたは異なっており、水素、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、i−ブチルまたはtert−ブチルを表すか、またはそれらが結合している炭素原子と合体してシクロアルキル構造またはアリール構造を形成している。
およびRの好ましい意味およびより好ましい意味は、1個または複数のさらなる、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキルもしくはC〜C10−アルコキシ、C〜C−シクロアルキル、C〜C24−アリールからなる群から選択される置換基、ならびに、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲンからなる群から選択される官能基によって置換されていてもよいが、ここで、それらの置換基すべてで、好ましくはハロゲン、特に塩素または臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される1個または複数の置換基によってさらに置換されていてもよい。
一般式(I)の触媒におけるさらに好ましいHC−配位子においては、
10およびR11が、同一であるかまたは異なっており、好ましくは、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはi−プロピルまたはネオペンチル、C〜C10−シクロアルキル、より好ましくはアダマンチル、置換もしくは非置換のC〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、または2,4,6−トリメチルフェニル、C〜C10−アルキルスルホネート、またはC〜C10−アリールスルホネートを表している。
10およびR11のこれら好ましい意味は、1個または複数のさらなる、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキルもしくはC〜C10−アルコキシ、C〜C−シクロアルキル、C〜C24−アリールからなる群から選択される置換基、ならびに、ヒドロキシ、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カーボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カルバメート、およびハロゲンからなる群から選択される官能基によって置換されていてもよいが、ここで、それらの置換基すべてで、好ましくはハロゲン、特に塩素または臭素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される1個または複数の置換基によってさらに置換されていてもよい。
一般式(I)の触媒における好ましいNHC−配位子においては、
およびRが、同一であるかまたは異なっており、水素、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、およびi−ブチルを表すか、またはそれらが結合している炭素原子と合体してシクロアルキル構造またはアリール構造を形成しており、そして
10およびR11が、同一であるかまたは異なっており、好ましくは、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはi−プロピルまたはネオペンチル、C〜C10−シクロアルキル、より好ましくはアダマンチル、置換もしくは非置換のC〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、または2,4,6−トリメチルフェニル、C〜C10−アルキルスルホネート、またはC〜C10−アリールスルホネートを表している。
特に好ましいNHC−配位子は、以下の構造(IIIa)〜(IIIu)を有しているが、ここで、「Ph」は、それぞれの場合においてフェニルを意味し、「Bu]は、それぞれの場合においてブチル、すなわち、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルまたはtert−ブチルのいずれかを意味し、「Mes]は、それぞれの場合において2,4,6−トリメチルフェニルを表し、「Dipp」はすべての場合において2,6−ジイソプロピルフェニルを意味し、「Dimp」は、それぞれの場合において2,6−ジメチルフェニルを意味している。
Figure 0006352900
NHC−配位子が、その環の中に「N」(窒素)だけではなく「O](酸素)も含んでいる場合には、R、R、R10および/またはR11の置換パターンが、ある種の立体的な混み合いを与えているのが好ましい。
の定義
一般式(I)の触媒においては、Xがアニオン性配位子を表しているのが好ましい。
一般式(I)の触媒の一つの実施態様においては、Xは、水素、ハロゲン、プソイドハロゲン、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C20−アルコキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルキルジケトネート、C〜C24−アリールジケトネート、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルキルスルホネート、C〜C24−アリールスルホネート、C〜C20−アルキルチオール、C〜C24−アリールチオール、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニルを表している。
を意味するとして上で列挙した残基が、1種または複数のさらなる置換基、たとえばハロゲン、好ましくはフッ素、C〜C10−アルキル、C〜C10−アルコキシまたはC〜C24−アリールによって置換されていてもよく、それらの基がさらに、ハロゲン、好ましくはフッ素、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシおよびフェニルからなる群から選択される1種または複数の置換基によって置換されていてもよい。
好ましい実施態様においては、Xが、ハロゲン、特にフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素、ベンゾエート、C〜C−カルボキシレート、C〜C−アルキル、フェノキシ、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルキルチオール、C〜C14−アリールチオール、C〜C14−アリール、またはC〜C−アルキルスルホネートである。
特に好ましい実施態様においては、Xが、塩素、CFCOO、CHCOO、CFHCOO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、フェノキシ、メトキシ、エトキシ、トシレート(p−CH−C−SO)、メシレート(CHSO)、またはトリフルオロメタンスルホネート(CFSO)を表している。
一般式(I)に従うより好ましい触媒は、式(I−a)〜(I−d)の触媒である。
Figure 0006352900
[式中、Lは、一般式(IIa)または(IIb)の電子供与性配位子を表すか、
Figure 0006352900
[ここで、
およびRが、同一であるかまたは異なっており、水素、C〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、およびi−ブチルを表すか、またはそれらが結合している炭素原子と合体してシクロアルキル構造またはアリール構造を形成しており、そして
10およびR11が、同一であるかまたは異なっており、好ましくは、直鎖状もしくは分岐状のC〜C10−アルキル、より好ましくはi−プロピルまたはネオペンチル、C〜C10−シクロアルキル、より好ましくはアダマンチル、置換もしくは非置換のC〜C24−アリール、より好ましくはフェニル、2,6−ジイソプロピルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、または2,4,6−トリメチルフェニル、C〜C10−アルキルスルホネート、またはC〜C10−アリールスルホネートを表している]、
または
が、好ましくは、先に挙げた一般式(IIIa)〜(IIIu)の電子供与性配位子を表す]
一般式(I)に従うさらにより好ましい触媒は、式(I−a(1))、(I−b(1))、(I−c(1))および(I−d(1))の触媒である。
Figure 0006352900
支持体物質上の触媒:
さらに別な実施態様においては、すべての一般式(I)に従う触媒を、固定された形態で使用することもできる。固定化は、支持体物質の表面へ、錯体触媒の化学結合を介して起こさせるのが好ましい。好適なのは、たとえば、次に示す一般式(Support−Ie)および(Support−If)を有する錯体触媒であるが、ここで、L、LおよびXは、本明細書において一般式(I)について、一般的、好ましい、より好ましい、特に好ましい、最も好ましい意味を有していてよく、また、「supp」は支持体物質を表している。その支持体物質が、高分子量物質または無機物質たとえば、シリカゲルを表しているのが好ましい。高分子物質としては、合成ポリマーまたは樹脂を使用することが出来るが、ポリエチレングリコール、ポリスチレンもしくは架橋ポリスチレン(たとえば、ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)コポリマー(PS−DVB))がより好ましい。そのような支持体物質は、その表面上に官能基を有していて、それが、配位子LまたはLの一つと共有結合を形成することができる。
Figure 0006352900
一般式(Support−Ie)または(Support−If)の固定された錯体触媒においては、「supp」は、より好ましくは、その表面の上に1個または複数の、上の式で示した配位子の一つと共有結合を形成することが可能な、官能基「X」を有する、高分子量支持体、樹脂、ポリエチレングリコール、またはシリカゲルを表している。
それらの表面の上の好適な官能基「X」は、ヒドロキシル、アミノ、チオール、カルボキシル、C〜C20アルコキシ、C〜C20アルキルチオ、−Si(R)、−O−Si(R)、C〜C14アリールオキシ、C〜C14複素環、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)N(R)、−SON(R)、−S(=O)R、または−S(=O)Rであるが、上記Xの中にあるRはすべて、同一であるかまたは異なっていて、H、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルキニル、フェニル、イミダゾリル、トリアゾリル、またはピリジニル残基を意味しているものとする。
ポリスチレンまたは架橋ポリスチレンが好ましい支持体物質であるが、その表面上にヒドロキシル基を有していて、触媒に対して容易にカップリングできるのがさらにより好ましい。
式(I)に従う触媒の合成:
NHC−配位子の合成:
NHC−配位子を合成するには、文献記載のいくつかの手順を使用することができるが、それらは、これまでに最適化されてきている。
Hintermann(Beilstein Journal of Organic Chemistry,2007,3,No.,22)では、安価な塩基性化合物をベースとする3種の異なったイミダゾリウム塩のための合成手順が与えられている。それらの塩は、強い塩基を作用させることによって、それぞれ遊離のカルベンに容易に転化させることができる。特に、イミダゾル−窒素原子に結合した基に関連する置換パターンは、適切なアミンを採用することによって、容易に改良することができる。今日においては、多種の脂肪族アミンおよびさらに多種の芳香族アミンが入手可能であることを考慮すると、有機合成に関連する当業者ならば、最適化された触媒組成物を得ることが比較的簡単であると理解するであろう。
最近のKuhnおよびGrubbs(Org.Lett.,2008 May 15;10(10):2075〜2077)の研究によって、イミダゾリン−ベースのNHC−カルベンの合成もまた最適化された。彼らの提案する反応シーケンスでは、多種のホルムアミジンを容易に調製することからはじめて、1工程反応での閉環により、イミダゾリニウム塩を得る。注目に値するのは、非対称のNHC−配位子を調製することが可能であることで、それによって、かなり多数の構造的な変化を得ることが可能となる。
最後に、Strassberger(Appl.Organometal.Chem.,2010,24,142〜146)が、比較的安価な有機化合物を使用して、多反応剤ワンポットルート(multi−reactant one−pot routes)で置換イミダゾリニウム塩を合成することに成功したが、このことは、4位および5位のC原子の上での置換が可能となり、それによって、NHC−配位子の嵩高さをさらに微細に調節することが可能となり、各種の基を導入することで、NHC−配位子の電子的特性を変化させることが可能となった、という点で特に価値が高い。
上に挙げたプロセスは、広く各種のNHC配位子に転用できる。
一般式(I)の錯体触媒を調製するためのプロセス
一般式(I)に従う触媒錯体は、Foggら(Organometallics,2005,24,1056〜1058)に記載されているようにして、カルベン配位子を使用した簡単な配位子交換反応によって調製することが可能であって、たとえば、次に示す反応経路を用いる。
RuHCl(CO)(PPh + IMes −−> RuHCl(CO)(PPh)(IMes) + 2PPh
類似の手順が、Nolanら(Organometallics,2001,20,794)にも見いだされる。この反応が可能である理由は、NHCタイプのカルベンが、多くのホスフィン配位子に比較して、より強い結合性を有する、比較的電子リッチなカルベンであるからである。
また別な方法では、Foggら(Adv.Synth.Catal.,2008,350,773〜777)に記載されているようにして、RuHCl(CO)(NHC)(PPh)のような錯体を合成し、次いでPCyを用いた配位子交換反応を行わせる。この反応では、導入したいホスフィン配位子が、たとえばPPhに比較して、ルテニウムに対してより強く結合するようならば、各種のホスフィン錯体を得ることが可能となる。
検討されたまた別な合成方法としては、すでにNHC−配位子を担持しているルテニウム錯体と、アルキリデン配位子との反応が挙げられる。その例は、Molら、Eur.J.Inorg.Chem.,2003,2827〜2833に見いだすことができるが、そこでは、アルコールを用いて処理することによって、ベンジリデン配位子の解離とカルボニル錯体の生成が導かれる。しかしながら、この反応経路は、アルキリデン配位子の導入がかなり簡単である場合に限って好適である。
ほとんどのNHC−配位子はかなり安定であって、そのため、単離して、上述の配位子交換反応によって触媒の中に導入することができる。
しかしながら、他のNHC−配位子の典型的な前駆体は、それぞれの塩、たとえばイミダゾリウム塩またはイミダゾリニウム塩である。たとえばArduengoら(J.Am.Chem.Soc.,1991,113,361〜363)およびそれに続く研究の文献から公知であるように、これらの塩は、強塩基を用いて脱プロトン化して遊離のカルベンを生成させることができる。驚くべきことには、NHCタイプのカルベンの多くのものが安定であるにも関わらず、ルテニウム錯体を用いて実施しようとする反応の前にそれらを単離することが、常に実際的である訳ではない。そのような場合においては、事前の試験で、NHC塩のカルベンへの転化率が十分に高いことが確認できているのならば、配位子交換反応に、カルベンを含む反応混合物を直接使用することができる。
ニトリルゴムを水素化するためのプロセス:
ニトリルゴムの水素化は、ニトリルゴムを水素の存在下に、一般式(I)の新規な錯体触媒と接触させることによって実施することができる。
水素化は、60℃〜200℃、好ましくは80℃〜180℃、最も好ましくは100℃〜160℃の範囲の温度と、0.5MPa〜35MPa、より好ましくは3.0MPa〜10MPaの範囲の水素圧力とで実施するのが好ましい。
好ましくは、ニトリルゴムの水素化時間は、10分間〜24時間、好ましくは15分間〜20時間、より好ましくは30分間〜4時間、さらにより好ましくは1時間〜8時間、最も好ましくは1時間〜3時間である。
ニトリルゴムに対する錯体触媒の量は、その触媒の性質および触媒活性に依存する。採用される触媒の量は、典型的には、使用されるニトリルゴムを基準にして貴金属が、1〜1000ppm、好ましくは2〜500ppm、特には5〜250ppmの範囲で選択される。
最初に、適切な溶媒の中のニトリルゴムの溶液を調製する。水素化反応におけるニトリルゴムの濃度は、厳密なものではないが、当然のことながら、その反応に、反応混合物の粘度が過度に高くそれに伴って混合の問題がおきるような、悪影響を与えないようにするべきである。反応混合物中のNBRの濃度は、全反応混合物を基準にして、好ましくは1〜25重量%の範囲、特に好ましくは5〜20重量%の範囲である。
水素化反応は、典型的には、使用される触媒を失活させることなく、さらには何か別なことでその反応に悪影響を与えることがない、適切な溶媒の中で実施する。好適な溶媒としては、ジクロロメタン、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、およびシクロヘキサンなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。特に好適な溶媒はクロロベンゼンである。
次いで、ニトリルゴムのそのような溶液を、上述の圧力の水素の存在下に一般式(I)に従う触媒と接触させる。反応混合物は、典型的には、撹拌するかまたは、各種のタイプの剪断力を加えて、溶液と水素相とが十分に接触できるようにする。
本発明の一つの大きな利点は、使用する錯体触媒が極めて高活性であることであって、そのため、最終的なHNBR製品の中に残存する触媒が十分に低く、触媒金属を除去またはリサイクルする工程を軽減するか、さらには必要としないようにすることができる。しかしながら、所望の程度によって、本発明の方法において使用した触媒を除去してもよい。そのような除去は、たとえば、欧州特許出願公開第A−2 072 532A1号明細書および欧州特許出願公開第A−2 072 533A1号明細書に記載されているようにして、イオン交換樹脂を使用することによって実施することができる。水素化反応が完了した後に得られる反応混合物を取り出して、イオン交換樹脂を用い、たとえば、窒素下で100℃で48時間処理することも可能であり、それによって、触媒の樹脂への結合が導かれるが、それでもなお、その反応混合物は、通常の仕上げ方法で仕上げることができる。
次いで、たとえばスチーム凝固法、溶媒蒸発法、または沈殿法のような公知の仕上げ手順によって、その溶液からゴムを得ることが可能であり、そして典型的なゴム加工方法で使用できるような程度にまで乾燥させる。
本発明の目的においては、水素化とは、出発ニトリルゴムの中に存在している二重結合を、少なくとも50%、好ましくは70〜100%、より好ましくは80〜100%、さらにより好ましくは90〜100%、最も好ましくは95〜100%反応させることである。
本発明による水素化が完了した後では、1〜130、好ましくは10〜100の範囲の、ASTM標準D 1646に従って測定したムーニー粘度(ML1+4@100℃)を有する水素化ニトリルゴムが得られる。これは、2,000〜400,000g/molの範囲、好ましくは20,000〜200,000の範囲の重量平均分子量Mwに相当する。さらに、そのようにして得られた水素化ニトリルゴムは、1〜5の範囲、好ましくは2〜4の範囲の多分散性PDI=Mw/Mn(ここでMwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量である)を有している。
ニトリルゴム:
本発明の方法において使用されるニトリルゴムは、少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエン、および所望により、1種または複数のさらなる共重合性モノマーのコポリマーまたはターポリマーである。
共役ジエンは各種のタイプのものであってよい。好ましくは(C〜C)共役ジエン、より好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレンおよびそれらの混合物からなる群から選択される共役ジエンを使用する。1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはそれらの混合物が極めて特に好ましい。特に好ましいのは1,3−ブタジエンである。
α,β−不飽和ニトリルとしては、公知のα,β−不飽和ニトリル、好ましくは(C〜C)α,β−不飽和ニトリル、より好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルおよびそれらの混合物からなる群から選択される不飽和ニトリルを使用することができる。特に好ましいのは、アクリロニトリルである。
したがって、本発明の方法において使用される特に好ましいニトリルゴムは、アクリロニトリルおよび1,3−ブタジエンから誘導される繰り返し単位を有するコポリマーである。
共役ジエンおよびα,β−不飽和ニトリルとは別に、水素化ニトリルゴムには、当業界で公知の1種または複数のさらなる共重合性モノマーの繰り返し単位を含んでいてもよいが、そのようなものとしてはたとえば、α,β−不飽和(好ましくはモノ不飽和)モノカルボン酸、それらのエステルおよびアミド、α,β−不飽和(好ましくはモノ不飽和)ジカルボン酸、それらのモノエステルまたはジエステル、さらには前記α,β−不飽和ジカルボン酸に対応する無水物またはアミドなどが挙げられる。
α,β−不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸およびメタクリル酸を使用するのが好ましい。
α,β−不飽和モノカルボン酸のエステル、特にアルキルエステル、アルコキシアルキルエステル、アリールエステル、シクロアルキルエステル、シアノアルキルエステル、ヒドロキシアルキルエステル、およびフルオロアルキルエステルを使用することもできる。
アルキルエステルとしては、好ましくはα,β−不飽和モノカルボン酸のC〜C18アルキルエステル、より好ましくはアクリル酸またはメタクリル酸のC〜C18アルキルエステル、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert.−ブチルアクリレート、2−エチル−ヘキシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert.−ブチルメタクリレート、および2−エチルヘキシル−メタクリレートが使用される。
アルコキシアルキルエステルとしては、好ましくはα,β−不飽和モノカルボン酸のC〜C18アルコキシアルキルエステル、より好ましくはアクリル酸またはメタクリル酸のアルコキシアルキルエステル、たとえばメトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、およびメトキシエチル(メタ)アクリレートが使用される。
アリールエステル、好ましくはC〜C14−アリールエステル、より好ましくはC〜C10−アリールエステル、最も好ましくは上述のアクリレートおよびメタクリレートのアリールエステルを使用することもまた可能である。
また別な実施態様においては、シクロアルキルエステル、好ましくはC〜C12−、より好ましくはC〜C12−シクロアルキル、最も好ましくは上述のシクロアルキルアクリレートおよびメタクリレートが使用される。
シアノアルキルエステル、シアノアルキル基の中に2〜12個のC原子を有する特にアクリル酸シアノアルキルまたはメタクリル酸シアノアルキル、好ましくはアクリル酸α−シアノエチル、アクリル酸β−シアノエチル、またはメタクリル酸シアノブチルを使用することもまた可能である。
別な実施態様においては、ヒドロキシアルキルエステル、特に、ヒドロキシルアルキル基の中に1〜12個のC原子を有する、アクリル酸ヒドロキシアルキルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキル、好ましくはアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、またはアクリル酸3−ヒドロキシプロピルも使用される。
フルオロベンジルエステル、特にアクリル酸フルオロベンジルまたはメタクリル酸フルオロベンジル、好ましくはアクリル酸トリフルオロエチルおよびメタクリル酸テトラフルオロプロピルを使用することも可能である。たとえばアクリル酸ジメチルアミノメチル、およびアクリル酸ジエチルアミノエチルのような、置換されたアミノ基を含むアクリレートおよびメタクリレートを使用してもよい。
α,β−不飽和カルボン酸のその他各種のエステルを使用することもできるが、そのようなものとしては、たとえば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシメチル)アクリルアミド、またはウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
上述のα,β−不飽和カルボン酸のエステルすべての混合物も使用することができる。
さらに、α,β−不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびメサコン酸を使用してもよい。
また別な実施態様においては、α,β−不飽和ジカルボン酸の無水物、好ましくは無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、および無水メサコン酸が使用される。
さらなる実施態様においては、α,β−不飽和ジカルボン酸のモノエステルまたはジエステルを使用することもできる。好適なアルキルエステルは、たとえば、C〜C10−アルキル、好ましくはエチル−、n−プロピル−、iso−プロピル、n−ブチル−、tert.−ブチル、n−ペンチル−、またはn−ヘキシルのモノエステルまたはジエステルである。好適なアルコキシアルキルエステルは、たとえば、C〜C12アルコキシアルキル、好ましくはC〜C−アルコキシアルキルのモノエステルまたはジエステルである。好適なヒドロキシアルキルエステルは、たとえば、C〜C12ヒドロキシアルキル、好ましくはC〜C−ヒドロキシアルキルのモノエステルまたはジエステルである。好適なシクロアルキルエステルは、たとえば、C〜C12−シクロアルキル、好ましくはC〜C12−シクロアルキルのモノエステルまたはジエステルである。好適なアルキルシクロアルキルエステルは、たとえば、C〜C12−アルキルシクロアルキル、好ましくはC〜C10−アルキルシクロアルキルのモノエステルまたはジエステルである。好適なアリールエステルは、たとえば、C〜C14−アリール、好ましくはC〜C10−アリールのモノエステルまたはジエステルである。
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステルモノマーの明白な例としては、以下のものが挙げられる:
・ マレイン酸モノアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、およびマレイン酸モノ−n−ブチル;
・ マレイン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、およびマレイン酸モノシクロヘプチル;
・ マレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル、およびマレイン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ マレイン酸モノアリールエステル、好ましくはマレイン酸モノフェニル;
・ マレイン酸モノベンジルエステル、好ましくはマレイン酸モノベンジル;
・ フマル酸モノアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、およびフマル酸モノ−n−ブチル;
・ フマル酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、およびフマル酸モノシクロヘプチル;
・ フマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはフマル酸モノメチルシクロペンチル、およびフマル酸モノエチルシクロヘキシル;
・ フマル酸モノアリールエステル、好ましくはフマル酸モノフェニル;
・ フマル酸モノベンジルエステル、好ましくはフマル酸モノベンジル;
・ シトラコン酸モノアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、およびシトラコン酸モノ−n−ブチル;
・ シトラコン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、およびシトラコン酸モノシクロヘプチル;
・ シトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはシトラコン酸モノメチルシクロペンチル、およびシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ シトラコン酸モノアリールエステル、好ましくはシトラコン酸モノフェニル;
・ シトラコン酸モノベンジルエステル、好ましくはシトラコン酸モノベンジル;
・ イタコン酸モノアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、およびイタコン酸モノ−n−ブチル;
・ イタコン酸モノシクロアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、およびイタコン酸モノシクロヘプチル;
・ イタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、好ましくはイタコン酸モノメチルシクロペンチル、およびイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ イタコン酸モノアリールエステル、好ましくはイタコン酸モノフェニル;
・ イタコン酸モノベンジルエステル、好ましくはイタコン酸モノベンジル。
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルモノマーとしては、上に明記したモノエステルモノマーをベースとした類似のジエステルを使用してもよいが、しかしながら、酸素原子を介してC=O基に結合される二つの有機基は同一であっても、異なっていてもよい。
さらなるターモノマーとしては、ビニル芳香族モノマーたとえば、スチロール、α−メチルスチロール、およびビニルピリジン、さらには非共役ジエンたとえば、4−シアノシクロヘキセンおよび4−ビニルシクロヘキセン、さらにはアルキンたとえば、1−もしくは2−ブチンを使用してもよい。
特に好ましいのは、以下に示す式から選択されるターモノマーである:
Figure 0006352900
[式中、
は、水素またはメチル基であり、ならびに
、R、R、Rは、同一であるかまたは異なっていて、H、C〜C12アルキル、C〜Cシクロアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、エポキシアルキル、アリール、またはヘテロアリールを表していてよい]
使用されるNBRポリマーの中での共役ジエンとα,β−不飽和ニトリルとの比率は、広い範囲で変化させることができる。単一の共役ジエン、または共役ジエンを合計したものの比率は、全ポリマーを基準にして、通常は40〜90重量%の範囲、好ましくは60〜85重量%の範囲である。単一のα,β−不飽和ニトリル、またはα,β−不飽和ニトリルを合計したものの比率は、全ポリマーを基準にして、通常は10〜60重量%、好ましくは15〜40重量%である。いずれの場合においても、モノマーの比率を合計したものが100重量%となる。追加のモノマーは、全ポリマーを基準にして、0〜40重量%、好ましくは0.1〜40重量%、特に好ましくは1〜30重量%の量で存在させることができる。この場合、単一もしくは複数の共役ジエンおよび/または単一もしくは複数のα,β−不飽和ニトリルの相当する比率を、追加のモノマーの比率で置き換えるが、それぞれの場合において、全部のモノマーの比率を合計して100重量%とする。
上述のモノマーを重合させることによってニトリルゴムを調製することは、従来技術から、十分かつ包括的に公知である。本発明の目的のために使用することが可能なニトリルゴムは、たとえばLanxess Deutschland GmbHのPerbunan(登録商標)およびKrynac(登録商標)グレードの製品範囲からの製品として、市場で入手することも可能である。
以下の実施例によって、本発明をさらに説明するが、本発明がそれらによって限定されることは意図されておらず、実施例におけるすべての部およびパーセントは、特に断らない限り、重量基準である。
略号:
phr:ゴム100重量部あたり
rpm:回転/分
Mn:数平均分子量
Mw:重量平均分子量
PDI:多分散性指数(Mw/Mnで定義される)
PPh:トリフェニルホスフィン
MCB:モノクロロベンゼン
Rt.:室温(22±2℃)
RDB:残存二重結合(%)、RDB=(1−水素化度)*100(NBRは100%のRDBを有している)
NHC:N−複素環−カルベン
Cy:シクロヘキシル環
EtN:トリエチルアミン
IMes:N,N’−ビス(メシチル)イミダゾル−2−イリデン
SIMes:N,N’−ビス(メシチル)イミダゾリジン−2−イリデン(H2−Imesとも呼ばれる)
IPr:N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾル−2−イリデン
ItBu:N,N’−ビス(tert−ブチル)イミダゾル−2−イリデン
A.触媒の調製
A1.NHC−配位子
N,N’−ビス(メシチル)イミダゾル−2−イリデン(IMes)は、TCIから購入した。
N,N’−ビス(メシチル)イミダゾリジン−2−イリデン(SIMes)は、Stremから購入した。
N,N’−ビス(2,6−ジイソイソプロピルフェニル)イミダゾル−2−イリデン(IPr)は、TCIから購入した。
N,N’−ビス(tert−ブチル)イミダゾル−2−イリデン(ItBu)は、Stremから購入した。
以下の錯体触媒(a)〜(i)を使用したが、触媒(b)〜(i)は、以下に示す文献に見いだされるのと同様の手順で調製した:
(a)RhCl(PPh(比較例において使用)
Sigma−Aldrichから入手し、さらなる精製を行うこと無く使用した。
(b)RuHCl(CO)(PCy(比較例において使用)
この錯体は、Jamesら,Adv.in Chem.Ser.,196(1983)による手順に従い、以下のようにして調製した:RuCl・xHO(0.635g、2.5mmol)をメトキシエタノール(15mL)の中に溶解させた。5分後に、PCy(2.056g、7.5mmol)を添加した。その混合物を、リフラックスさせながら20分間加熱した。次いでEtN(2mL)を添加した。その混合物を、リフラックス下にさらに6時間加熱してから、冷却した。オレンジ色の微結晶反応生成物を濾過してから、トルエンを用いて洗浄(2回、各10mL)し、真空中で乾燥させた。黄色の結晶として得られた収量は、約1.45g(80%)であった。MCB中の飽和溶液についてのFT−IRでは、1901cm−1に単一ピーク(CO)が得られ、可能性がある副反応生成物のRuHCl(CO)(PCyが含まれていないと考えられた。
(c)RuHCl(CO)(IMes)(PCy)(本発明実施例において使用)
この錯体は、Nolanら(Organometallics,2001、20、794)における手順に従い、以下のようにしてRuHCl(CO)(PCyをIMesと反応させることによって調製した:100mLのフラスコに、RuHCl(CO)(PCy(510mg、0.7mmol)およびIMes(302mg、1.05mmol)を充填し、脱気した。次いでシリンジを用いて、20mLのトルエンを添加した。次いで、その溶液を80℃で2時間加熱し、rt.で18時間撹拌した。真空下でその溶液を除去した。20mLのエタノールの中に黄橙色の残渣を取り上げ、脱気、乾燥させた。次いでその懸濁液を濾過した。エタノール(20mL*3)を用いてその沈殿を洗浄し、真空下で乾燥させた。橙色の結晶として得られた収量は約125.7mgであり、1897cm−1に単一ピーク(CO)を有していた(文献値:1896cm−1、CHCl中)。
(d)RuHCl(CO)(SIMes)(PCy)(本発明実施例において使用)
この錯体は、Nolanら(Organometallics,2001、20、794)における手順を採用し、IMesを等モル量のSIMesに置きかえて、RuHCl(CO)(PCyをSIMesと反応させることによって調製した。錯体は、黄色の結晶として得られ、1897cm−1に単一ピーク(CO)を有していた(文献値:1896cm−1、トルエン中)。
(e)RuHCl(CO)(IMes)(PPh)(本発明実施例において使用)
この錯体は、Foggら(Organometallics,2005,24,1056〜1058)における手順に従い、以下のようにして、RuHCl(CO)(PPh(Alfar Aesarから購入)をIMesと反応させることによって調製した:8mLのトルエン中のIMes(188mg、0.62mmol)の溶液を、8mLのトルエン中のRuHCl(CO)(PPh(420mg、0.44mmol)の懸濁液に添加した。その溶液を、22℃で3時間撹拌した。次いで、その溶液を真空下で濃縮して約0.5mLとし、20mLのヘキサンを用いて処理し、冷エタノール浴を用いて−35℃に冷却した。黄橙色の微結晶沈殿物が得られたので、それを濾別し、冷ヘキサン(3回、各5mL)を用いて洗浄し、真空下で乾燥させた。得られた収量は約0.25g(77%)で、橙色の結晶の形態で、1913cm−1に単一のFTIRピーク(CO)を有していた(文献値:1913cm−1、ヌジョール中、Foggら、Organometallics,2005,24,1056〜1058)。
(f)RuHCl(CO)(SIMes)(PPh)(本発明実施例において使用)
(e)で記載したのと同じ手順を使用し、等モル量のSIMesを用いると、約0.28g(85%)の黄色の結晶が得られたが、このものは1911cm−1に単一のFTIRピーク(CO)を示した(文献値:1911cm−1、ヌジョール中、Foggら、Organometallics,2005,24,1056〜1058)。
(g)RuHCl(CO)(IPr)(PPh)(本発明実施例において使用)
(e)で記載したのと同じ手順を使用し、等モル量のIPrを用いると、約0.25g(83%)の黄色の結晶が得られた。
(h)RuHCl(CO)(IPr)(PCy)(本発明実施例において使用)
この錯体は、Nolanら(Organometallics,2001、20、794)における手順を採用し、IMesを等モル量のIPrに置きかえて、RuHCl(CO)(PCyをIPrと反応させることによって調製した。錯体は、黄色の結晶として得られ、1901cm−1に単一ピーク(CO)を有していた。
(i)RuHCl(CO)(ItBu)(PCy)(本発明実施例において使用)
この錯体は、Nolanら(Organometallics,2001、20、794)における手順を採用し、ItBuを等モル量のItBuに置きかえて、RuHCl(CO)(PCyをIPrと反応させることによって調製した。錯体は、黄色の結晶として得られ、1902cm−1に単一ピーク(CO)を有していた。
B.ニトリルブタジエンゴム
実施例において使用したニトリルブタジエンゴムは、Lanxess Deutschland GmbHから市販されており、表1に示した性質を有している。
Figure 0006352900
C.ニトリルゴムの水素化
この後のセクションEの表に示すように、触媒(a)〜(i)を、0.02〜0.05phrの範囲の量で使用した。
水素化のための条件は以下の通りであった:
・ 水素圧:8.3MPa(1200psi)
・ 撹拌:800rpm
・ 温度:可変、120〜155℃の範囲(以下の表参照)
・ 時間:可変、水素化の進行に依存(以下の表参照)
水素化の手順:
(1)ニトリルゴムを所定量のMCBに溶解させてNBR溶液を形成させた(濃度:6重量%または12.7重量%)。その溶液をオートクレーブ(容積:600mLまたは2L)の中に充填し、窒素ガスを用いて20分間バブリングして、溶存酸素を除去した。
(2)窒素保護下に、十分な量の脱気したMCB(15または38mL)の中に触媒を溶解させた。その溶液を、窒素保護下に、バルブでオートクレーブに接続されているステンレス鋼ボンベの中に、シリンジを介して移した。
(3)所望の温度にまでオートクレーブを加熱してから、水素圧をかけることによって触媒溶液をオートクレーブの中に打ち込んだ。次いで、水素を所望の値にまで上げた。
(4)間隔をあけてサンプルを抜き出し、FT−IR試験にかけてRDBのモニターをした。
(5)NBRの水素化が完了したら、その溶液を冷却して、圧力を下げた。触媒(a)を使用した場合には、チオ尿素樹脂を用いてHNBR溶液を処理して、Rh金属を除去してから、ストリッピングした。触媒(b)〜(g)を使用した場合には、樹脂処理は実施しなかった。最終的に、ストリッピングによりHNBRクラムを単離し、真空乾燥させた。
D.分析および試験
GPCによる分子量MおよびMの測定:
分子量MおよびMは、Waters 1515高性能液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 717plus オートサンプラー、PLゲル10μm混合Bカラム、およびWaters 2414RI検出器を備えた、Waters GPCシステムによって求めた。GPC試験は、40℃で、溶出液として流速1mL/分のTHFを用いて実施し、GPCカラムは、狭い分子量分布の標準PSを用いて較正した。
FT−IRによる水素化度の測定:
水素化反応の前、途中および後のニトリルゴムのスペクトルを、Perkin Elmer spectrum 100 FT−IR分光計に記録した。(水素化)ニトリルブタジエンゴムのMCB中溶液をKBrディスクの上にキャストして、乾燥させ、試験のための膜を形成させた。水素化度は、ASTM D5670−95法に従ってFT−IR分析により求めた。
ゲル含量の測定:
ある一定重量のHNBRサンプルを、20mLのメチルエチルケトンの中に溶解させた。20,000rpmで1時間かけて、その溶液を遠心分離させた。液体をデカント除去し、得られたゲルを乾燥させ、秤量してゲル含量の値を得た。
GC−MSによる、水素化後のHNBR溶液中のベンゼン含量の測定:
NBR水素化のための溶媒としてMCBを採用した場合には、それが触媒的に、ベンゼンとHClに変換されている可能性がある。後者は、水素化プロセスにおいて、金属の腐食を招くという欠点を有している。ベンゼンの存在もまた望ましくない。水素化の後にベンゼン濃度を測定することで、HClの生成についても結論を引き出すことが可能となるが、HClの測定は、他の方法では面倒で、困難である。水素化の後に得られる溶液中のベンゼンの濃度は、GC−MSによって測定した。
E.結果
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上述の実施例は、ニトリルゴムの水素化において、一般式(I)に従う触媒が、周知のWilkinson触媒Rh(PPhClや、構造的に最も近い触媒のRuHCl(CO)(PCyよりも、はるかに高い活性を有しているということを明らかに示している。このことによって、水素化プロセスを実施するためのコストが顕著に低減される。必要とされる触媒の量が少ないという観点から、触媒または触媒金属の回収プロセスが、(樹脂を用いて溶液をスクラビングすることも可能ではあるが)事実上不要であるということもわかる。ニトリルゴムを水素化させるために使用可能な他の金属、たとえばパラジウム、ロジウムおよびイリジウムに比較してルテニウムの方が長期にわたってコストが低いため、ならびに触媒の合成、調製が簡単であるために、明らかにコスト的な有利性が達成されている。
一般式(I)の範囲に入る触媒が、120〜少なくとも145℃の広い温度範囲で操作でき、そのことによって、水素化の際に発生した熱を容易に除去でき、そして溶液の粘度を制御可能な範囲に維持することができるというメリットもさらに示されている。すなわち、触媒のRuHCl(CO)(IMes)(PCy)は、少なくとも145℃で操作することができる。IMes配位子が実際には、高温では極めて安定とはいえないことが一般的に知られているイミダゾール環を含んでいるので、このことはどちらかといえば、驚くべきことである。
たとえば触媒担持量および反応温度などの反応条件を変えた水素化の後の分子量を見ると、本発明の水素化プロセスを用いて得られた結果は、比較的に似ている。出発物質のNBRゴムに比較すると、MnおよびMw値は、ちょうど約15%高くなっている。
ニトリルゴム基材に関しては、特別な条件を必要とすることなく、満足のいくレベルで水素化することができる。このことは、脂肪酸石鹸、ロジン石鹸、スルホネート、またはスルフェート乳化剤のような標準的な乳化剤系、および標準的なレドックス系によって製造された市場で入手可能なニトリルゴムのグレードが使用できるということを意味している。標準的なNBRコンパウンディング操作で使用可能であること以外では、NBR製造のためのさらなる特別な条件がなにも存在しないので、極めて広い範囲の市販のNBRゴムを水素化ニトリルゴムに容易に転化することが可能であり、このことによって、現在入手可能なグレードからより広く選択することができる。
実験セクションで採用されている触媒がすべてホスフィン配位子を含んでいるが、PPhの添加を明らかに必要としているWilkinson触媒の場合と異なって、ニトリルゴムの水素化を成功させるためにさらなる量のホスフィンを添加する必要はない。
ここで使用されたNHC−配位子が形式的にはカルベンタイプであり、そのため、多くの場合分子量の低下をもたらすメタセシス反応を起こしがちであるのにも関わらず、本件においては分子量の低下が観察されなかったというのは、驚くべきことである。メカニズムについての説明はできないが、ただし、一般式(I)の触媒の中に存在しているNHC−配位子が、背面結合能力をほとんど有さない良好な電子供与体であることは知られている。そのことによって、結合次数が2より低く1に近くなる傾向があり、メタセシス反応を起こしにくくなる。さらに、従来技術の他の触媒を用いた場合にしばしば観察される水素化反応の間の過度の粘度上昇やゲル化が、まったく起きないということも驚くべきことである。
F.物性
F.1.エージング前後のムーニー粘度
本発明による水素化プロセスの後に得られるHNBRサンプルのムーニー粘度(ML1+4@100℃)を、ASTM標準D 1646に従って測定した。それに加えて、そのようなHNBRサンプルの熱安定性も、2L反応器におけるスケールの大きい方の実施例について、それらのサンプルを140℃で4日間、空気中エージングにかけることにより調べた。
表F1は、一般式(I)に従う触媒を使用する本発明の方法では、触媒、特に従来技術(CEx.3)の触媒に最も近い触媒(b)を使用した、本発明ではない水素化をしたものに比較して、エージングによるムーニー粘度の上昇が少ないHNBRを得ることができるということを示している。
Figure 0006352900
F.2.ゲル含量
得られたHNBRサンプルにおけるゲル含量は、次の表F2に見ることができる。本発明により調製されたHNBRと比較例のHNBRとを比較すると、本発明の方法では、実質的により低い量のゲルしか有さないHNBRを得ることができるということが明らかである。
Figure 0006352900
F.3.
ベンゼン濃度
水素化の前後に、HNBR溶液中のベンゼン濃度を測定した。それらの結果は、下の表F3に見ることができる。そのような濃度は、暗黙的に、発生したHClの量を示している。本発明の方法を用いて調製したHNBR溶液は、本発明の方法に従わずに調製したHNBR溶液よりもはるかに低いベンゼン濃度を示している。したがって、腐食性のHClの発生がより少なく、単離すると、それに相当する低いベンゼン含量しか有さないHNBRを得ることができる。
Figure 0006352900

Claims (13)

  1. 部分的もしくは全面的に水素化されたニトリルゴムを調製するための方法であって、一般式(I)
    Ru(CO)(H)(X)(L)(L) (I)
    [式中、
    は、アニオン性配位子であり、ならびに
    およびLは、同一であるかまたは異なった配位子であるが、ここでLおよびLのうちの少なくとも一方は、N−複素環カルベン配位子を表す]
    を有する少なくとも1種の錯体触媒の存在下に、ニトリルゴムを水素化にかけることを特徴とし、
    前記N−複素環カルベン配位子が、一般式(IIIa)、(IIIb)、(IIIg)、(IIIh)、または、N,N’−ビス(tert−ブチル)イミダゾル−2−イリデン
    Figure 0006352900
    [式中、
    「t-Bu」は、tert-ブチルを意味し、「Mes」は、それぞれの場合において2,4,6−トリメチルフェニルを表し、「Dipp」はすべての場合において2,6−ジイソプロピルフェニルを意味している」
    に従う構造を有する、
    方法。
  2. 前記一般式(I)を有する触媒が、
    (i)触媒が、
    が、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスフェート、ホスフィナイト、ホスフォナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、スルホネート、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、チオエーテル、ニトリル、およびイソシアニドからなる群から選択される配位子を表し、
    が、N−複素環カルベン配位子を表す、
    状態で使用されるか、または
    (ii)触媒が、LおよびL両方の配位子が、同一であるかまたは異なったN−複素環カルベン配位子をあらわす状態で使用されるか、
    のいずれかで使用される、請求項1に記載の方法。
  3. が、一般式(IIf)
    Figure 0006352900
    [式中、R、RおよびRが、同一であるかまたは異なっているが、C〜C20アルキル、もしくはネオフェニル、C〜C−シクロアルキル、C〜C20アルコキシ、置換もしくは非置換C〜C20アリール、もしくはトリフルオロメチル、C〜C20アリールオキシ、その環の中に少なくとも1個のヘテロ原子を有するC〜C20ヘテロアリール、その環の中に少なくとも1個のヘテロ原子を有するC〜C20ヘテロシクリル基、またはハロゲンを表すことができる]
    を有するホスフィンを表す、請求項1または2に記載の方法。
  4. が、PPh、P(p−Tol)、P(o−Tol)、PPh(CH、P(CF、P(p−FC、P(p−CF、P(C−SONa)、P(CH−SONa)、P(イソプロピル)、P(CHCH(CHCH))、P(シクロペンチル)、P(シクロヘキシル)、P(ネオペンチル)、またはP(ネオフェニル)(ここで、Phはフェニルを意味し、Tolはトリルを意味している)からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記N−複素環カルベン配位子が、その環の中に存在するヘテロ原子として少なくとも1個の窒素を含むサイクリックカルベンタイプの配位子であり、ならびにそのようなN−複素環カルベン配位子が、置換されていなくても、あるいは1個または複数の置換基によって置換されていてもよい、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. が、水素、ハロゲン、プソイドハロゲン、直鎖状もしくは分岐状のC〜C30−アルキル、C〜C24−アリール、C〜C20−アルコキシ、C〜C24−アリールオキシ、C〜C20−アルキルジケトネート、C〜C24−アリールジケトネート、C〜C20−カルボキシレート、C〜C20−アルキルスルホネート、C〜C24−アリールスルホネート、C〜C20−アルキルチオール、C〜C24−アリールチオール、C〜C20−アルキルスルホニル、またはC〜C20−アルキルスルフィニルを表し、ならびに、
    上述のすべての残基が、置換されていないか、またはハロゲン、C〜C10−アルキル、C〜C10−アルコキシ、もしくはC〜C24−アリールから選択される1個または複数のさらなる置換基によって置換されていてもよく、
    ここでそれらの置換基が、ハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、およびフェニルからなる群から選択される1個または複数の置換基によってさらに置換されていてもよい、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  7. が、塩素、CFCOO、CHCOO、CFHCOO、(CHCO、(CF(CH)CO、(CF)(CHCO、フェノキシ、メトキシ、エトキシ、p−CH−C−SO、CHSO、またはCFSOを表している、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  8. 式(Ia)〜(I−d)
    Figure 0006352900
    [式中、L が、
    一般式(IIIa)、(IIIb)、(IIIg)、(IIIh)、または、N,N’−ビス(tert−ブチル)イミダゾル−2−イリデン
    Figure 0006352900
    (式中、「t-Buは、tert-ブチルを意味し、「Mes」は、それぞれの場合において2,4,6−トリメチルフェニルを表し、「Dipp」はすべての場合において2,6−ジイソプロピルフェニルを意味している)
    の配位子を表している]
    の触媒が使用される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 式(I−a(1))〜(I−d(1))
    Figure 0006352900
    に従う触媒が使用される、請求項1に記載の方法。
  10. 前記水素化が、60℃〜200℃の範囲の温度と、0.5MPa〜35MPaの範囲の水素圧力とで実施される、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記ニトリルゴムに対する前記錯体触媒の量が、使用される前記ニトリルゴムを基準にして、1〜1000ppmの貴金属の範囲である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 水素化にかけられる前記ニトリルゴムが、
    (i)少なくとも1種のα,β−不飽和ニトリル、
    (ii)少なくとも1種の共役ジエン、ならびに
    (iii)場合によっては、α,β−不飽和モノカルボン酸、それらのエステルおよびアミド、α,β−不飽和ジカルボン酸、それらのモノ−もしくはジエステル、および前記α,β−不飽和ジカルボン酸それぞれの無水物もしくはアミドからなる群から選択される1種または複数のさらなる共重合性モノマー、
    の繰り返し単位を含むコポリマーまたはターポリマーである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. ニトリルゴムを部分的もしくは全面的に水素化するための触媒としての、一般式(I)
    Ru(CO)(H)(X)(L)(L) (I)
    [式中、
    は、アニオン性配位子であり、ならびに
    およびLは、同一であるかまたは異なった配位子であるが、ここでLおよびLのうちの少なくとも一方は、N−複素環カルベン配位子を表す]
    を有する錯体の使用であって、
    前記N−複素環カルベン配位子が、一般式(IIIa)、(IIIb)、(IIIg)、(IIIh)、または、N,N’−ビス(tert−ブチル)イミダゾル−2−イリデン
    Figure 0006352900
    [式中、
    「t-Bu」は、tert-ブチルを意味し、「Mes」は、それぞれの場合において2,4,6−トリメチルフェニルを表し、「Dipp」はすべての場合において2,6−ジイソプロピルフェニルを意味している」
    に従う構造を有する、
    使用。
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