JP6347410B2 - ディスク状素材の熱間鍛造方法 - Google Patents
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上述した問題に対して、例えば、特開2003−19534号公報(特許文献1)には、外面形状が円形の被鍛造材を開放型の上下型を用いてその軸方向に圧下して外面形状が円形の円形材に鍛造している。その鍛造を行う際に、特定の関係式を満足する直径dのリング工具をその軸心を前記金型の軸心に一致させて設け、この状態で鍛造中の材料を前記リング工具の内面に接触させ、その後、リング工具を取り除いて鍛造する円形材の鍛造方法の発明が提案されている。
本発明の目的は、特別なリング工具を必須としなくとも、確実に被鍛造材と下型の中心を一致させ、偏肉等の寸法不良を防止することが可能な熱間鍛造方法を提供することである。
すなわち本発明は、
被鍛造材を下型に載置して、上型と下型とによって被鍛造材を熱間鍛造するディスク状素材の熱間鍛造方法において、
前記下型の中心部には、被鍛造材の位置を固定する位置決め部材を配置し、前記位置決め部材は、前記下型に嵌合う第1嵌合わせ部と、前記被鍛造材に設けられた位置決め部と嵌合う第2嵌合わせ部とを有し、
前記下型に配置した位置決め部材を前記被鍛造材に設けられた位置決め部に嵌合わせて前記上型と下型とで被鍛造材を熱間鍛造するディスク状素材の熱間鍛造方法である。
前記位置決め部材の前記第2嵌合わせ部は、前記被鍛造材と一体に変形させることが好ましい。
好ましくは、前記位置決め部材は、前記第1嵌合わせ部及び前記第2嵌合わせ部が共に円錐台状である。
更に好ましくは、前記位置決め部材が配置してある箇所の圧下は、前記第2嵌合わせ部の高さ以下まで前記上型で前記被鍛造材を圧下する。
更に好ましくは、前記位置決め部材の材質は、炭素鋼である。
本発明の最大の特徴は、図1に示すように、被鍛造材1を下型2に載置して、上型3と下型2とによって被鍛造材1を熱間鍛造するディスク状素材の熱間鍛造方法において、被鍛造材1の位置決めを位置決め部材4を用いて行うものである。前記位置決め部材は下型3とは別な部品であり、下型3に脱着可能となる。
位置決め部材4は被鍛造材1の中心と、下型2の中心とを確実に一致させるものであるため、下型2の中心部に配置する。
前述の前記位置決め部材4は図2に示すように、前記下型2と嵌合い可能な第1嵌合わせ部5と、前記被鍛造材に設けられた位置決め部6に嵌合わせ可能な第2嵌合わせ部7とを有する。位置決め部材4は下型2とは別の部品であり、熱間鍛造前に下型2の中心部に配置し、熱間鍛造後には鍛造材とともに下型から取り除かれるものである。従って、この位置決め部材4は、所謂“使い捨て”の部品である。この位置決め部材の好ましい形態については後述する。
そして、前記下型2に設けた位置決め部材4を前記被鍛造材1に設けられた位置決め部6に嵌合わせて前記上型3で被鍛造材を圧下することで、被鍛造材の中心と、下型の中心とを確実に一致させることが可能であることから、偏肉等の形状不良を確実に防止することができるものである。
前記位置決め部材4の前記第2嵌合わせ部7は、前記被鍛造材と一体に変形させるのが好ましい。熱間鍛造時に位置決め部材4を被鍛造材1と一体に変形させることで、位置決め部6の肉が流れ、それに伴って被鍛造材の肉が外周方向に流れることにより、より確実に欠肉等の欠陥を防止することができる。
そのためには、被鍛造材1に設けられた位置決め部6に位置決め部材の第2嵌合わせ部7を嵌め合させたとき、できるだけ隙間が生じないような形状とするのが好ましい。また、被鍛造材1に設けられた位置決め部6の深さと、位置決め部材の第2嵌合わせ部7の高さもできるだけ同じとするのが好ましい。これは、もし、第2嵌合わせ部7の高さが位置決め部6の深さよりも低すぎると、前述のように隙間(空隙)があいてしまう。一方、もし、第2嵌合わせ部7の高さが位置決め部6の深さよりも高すぎると、被鍛造材と下型の間に隙間が生じて、熱間鍛造したときにその隙間に位置決め部6の肉が流れて前述の欠肉防止効果が低減されることになるためである。
なお、前述の第1及び第2嵌合わせ部の加工については、機械加工により形成するのが最も簡便である。
円錐台状とするのは、実際に位置合わせ部材を下型に配置するときや、被鍛造材1に設けられた位置決め部6に位置決め部材の第2嵌合わせ部7を嵌め合させるときの作業を容易にするためである。例えば、マニピュレータで被鍛造材を下型にセットする際、おおよその場所に被鍛造材を載置すれば、円錐台のテーパに沿って所望の場所にセットすることができるためである。また、熱間鍛造後に被鍛造材と共に位置合わせ部材を除去する際も、除去が容易となる。この場合は、被鍛造材に設けられた位置決め部6と下型に設けられた位置決め部材配置部8の形状をすり鉢状にすることが好ましい。
なお、本発明で言う円錐台状とは、例えば円錐台の底辺側までテーパを形成せず、テーパの途中から直径がほぼ同じストレート部分が形成されているものも含むものとする。
なお、例えば、最終製品がコーンシャフトなどの異形リング等である場合、熱間鍛造後の鍛造材の中央部は除去される。位置決め部材の第2嵌合わせ部7は、熱間鍛造時に肉を広げることが可能なため、位置決め部材の第2嵌合わせ部7の体積を大きくした方が投入する被鍛造材の重量を減じる効果が大きいため有利である。
このとき、除去された鍛造材の除去部は再利用することが可能なように、位置決め部材の材質を炭素鋼とすればよい。炭素鋼は安価なうえ、更に炭素鋼を用いれば、再利用可能な材質であり且つ、被鍛造材の材質として用いることが多い、ステンレス鋼やFeを含むNi基超耐熱合金の再利用原料として用いることができ、経済的に有利である。
以上、説明する本発明のディスク状素材の熱間鍛造方法によれば、被鍛造材の中心と、下型の中心とを確実に一致させることが可能であり、偏肉等の形状不良をより確実に防止することができるとともに、欠肉等の欠陥も併せて防止することができる。
なお、本発明で言う、「熱間鍛造」には、熱間プレス、恒温鍛造及びホットダイ鍛造も含むものとする。
次に図2に示すような位置決め部材4を機械加工で作製した。材質は再利用に有利な低炭素鋼とした。位置決め部材は円錐台状の第1嵌合わせ部5及び円錐台状の第2嵌合わせ部7を有するものである。なお、円錐台状の第2嵌合わせ部7の寸法は、ステンレス系ビレット据込材の熱膨張を考慮して底面側直径が160mm、上面側直径が150mm、高さ(T)が80mmのものとし、位置決め部材4の円錐台状の第2嵌合わせ部7と被鍛造材1に機械加工した位置決め部6との形状をほぼ同一として、互いの隙間(空隙)を無くした。また、第1嵌合わせ部5の寸法は、底面側直径が75mm、上面側直径が98mm、高さが40mmのものとした。
図1に示すように、用いた下型2の中心部には位置決め部材配置部8が設けてあり、その形状は鉢状の嵌め合せ穴、寸法底面側直径が75mm、上面側直径が98mm、高さが40mmである。そのため、位置決め部材4と下型2とは特に隙間を生じることはなかった。
続いて、上型3を降下させて上型3と下型2とで被鍛造材1を熱間鍛造(プレス)した。熱間鍛造時の圧下は、位置決め部材が配置してある箇所では、前記第2嵌合わせ部の高さ以下まで圧下した。(図3(b))
熱間鍛造を終了した鍛造材を下型から除去した際、被鍛造材と一体に変形した位置決め部材も一緒に除去が可能であった。熱間鍛造後の熱間鍛造材に製品不良の有無を目視で確認したところ、偏肉や欠肉といった不良は確認できなかった。
熱間鍛造後の熱間鍛造材の形状は外径720mm、高さ170mmであり、偏肉を3次元形状測定器で測定したところ、偏肉は最大で5mm以下となっており、偏肉が殆ど無いことが確認された。
以上の結果から、被鍛造材の中心と、下型の中心とを確実に一致させることが可能であったことも確認できた。
なお、熱間鍛造後の鍛造材の中央部は除去し、再利用の原料としてリサイクルした。
2 下型
3 上型
4 位置決め部材
5 第1嵌合わせ部
6 位置決め部
7 第2嵌合わせ部
8 位置決め部材配置部
Claims (5)
- 被鍛造材を下型に載置して、上型と下型とによって被鍛造材を熱間鍛造するディスク状素材の熱間鍛造方法において、
前記下型の中心部には、被鍛造材の位置を固定する位置決め部材を配置し、前記位置決め部材は、前記下型に嵌合う第1嵌合わせ部と、前記被鍛造材に設けられた位置決め部と嵌合う第2嵌合わせ部とを有し、
前記下型に配置した位置決め部材を前記被鍛造材に設けられた位置決め部に嵌合わせて前記上型と下型とで被鍛造材を熱間鍛造することを特徴とするディスク状素材の熱間鍛造方法。 - 前記位置決め部材の前記第2嵌合わせ部は、前記被鍛造材と一体に変形させることを特徴とする請求項1に記載のディスク状素材の熱間鍛造方法。
- 前記位置決め部材は、前記第1嵌合わせ部及び前記第2嵌合わせ部が共に円錐台状であることを特徴とする請求項1または2に記載のディスク状素材の熱間鍛造方法。
- 前記位置決め部材が配置してある箇所では、前記第2嵌合わせ部の圧下開始前の高さ以下まで前記上型で前記被鍛造材を圧下することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のディスク状素材の熱間鍛造方法。
- 前記位置決め部材の材質は、炭素鋼であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のディスク状素材の熱間鍛造方法。
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