JP6345158B2 - 溶接装置 - Google Patents

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本発明は、溶接装置に関するものである。
従来、被溶接物の溶接部に沿って溶接トーチを移動させアーク溶接を行う溶接装置として、例えば特許文献1に記載のものが知られている。このアーク溶接を行う際には、被溶接物の溶接線の開先上に被覆剤(フラックス)が散布され、溶接ノズルが取付けられた溶接トーチに所定の電圧が供給され、アークを発生させて溶融プールを形成し、この溶融プールにワイヤリールから溶接ワイヤが送給されて溶接が行われている。ここで、被覆剤がアークを安定化させるとともにガス及びスラグを発生させて、溶融金属部分を大気から遮断し、酸素、窒素等の侵入を防ぐ役割を果たすことにより、溶融プールの酸化を防止し、正確な溶接を行うことができるようになっている。
特開2007−190611号公報
しかしながら、上記従来の溶接装置では、装置が複雑となり、大型化していた。また、フラックスを散布させており、溶接欠陥が生ずる恐れもあった。また、溶接トーチは固定式で、容易に取り外せないので、何かと不自由であった。さらに、従来の装置では被溶接物が大型であり、軽量小型の多品種少量生産には向いていないなど、多くの問題点があった。
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、空気中の酸素を巻き込むことなく良質な溶接を行うことができる溶接装置を提供することを目的とする。
(1)本発明の溶接装置は、基台に水平に設けられたガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動可能な台と、前記台に着脱自在に保持され、溶接用の電極と、前記電極の周囲から不活性ガスを噴出する不活性ガス噴出部とを先端に有した溶接トーチと、前記台の被溶接物側の溶接端部に配置され、被溶接物との間で溶接用空間を形成可能なチャンバー部と、を備え、前記溶接用空間内で溶接を行う際、前記不活性ガス噴出部から前記溶接用空間内に不活性ガスを供給し、前記基台に、前記ガイドレール両端部外側から挟みこむように一対の側部が設けられており、前記一対の側部のそれぞれには、前記一対の側部間において棒状部材を架設することが可能な架設用係止部が複数設けられており、前記側部間において前記棒状部材を複数架設することによって、前記棒状部材で前記被溶接物を支持可能にすることを特徴とする。
上記(1)の構成によれば、被覆剤の散布装置もなくなり、装置の小型化且つシンプルな構造となり、被溶接物の溶接部に沿って溶接トーチを移動させて溶接を行うことができる。また、被溶接物の溶接部とチャンバー部とに取り囲まれた部分は、不活性ガスが充満している状態となり、小型でシンプルな構造で溶接欠陥を防止して、高品質な溶接が可能となる。また、側部間において、容易に様々なパターンで棒状部材を複数架設することが可能であることから、前記棒状部材で様々な形状の被溶接物を支持することが可能となる。したがって、様々な被溶接物について溶接を容易に行うことが可能である。
(2) 上記(1)の溶接装置においては、前記チャンバー部に先端部が当接された状態で前記溶接トーチが前記台に固定されるように、前記台に固定される際の前記溶接トーチ側にV字溝を有した第1の固定部と、前記第1の固定部のV字溝と反対向きに設けたV字溝を有した第2の固定部と、が、前記台に固定される際の前記溶接トーチの長さ方向に沿って順に並設されていることが好ましい。
上記(2)の構成によれば、容易に溶接トーチを着脱することができるので、溶接トーチを外して補修、点検が容易となる。また、溶接トーチを従来どおり使うこともできるので、被溶接物の溶接の手直し又は他の被溶接物に対しても容易に対処でき、溶接装置の稼働率を上げることができる。
(3)上記(1)又は(2)の溶接装置においては、前記側部の少なくとも一方に、前記溶接トーチの前記電極を下方として固定可能なトーチホルダーが設けられており、前記トーチホルダーの下部には、上下に調節可能なボルトが設けられており、前記溶接トーチの電極を上下に摺動可能とし、前記電極の先端をボルトに当接させた後、電極を溶接トーチに締付固定することにより、前記溶接トーチ先端部からの電極出代を一定に固定可能になっていることが好ましい。
上記(3)の構成によれば、溶接によって電極が消耗した場合、容易に電極の長さを元の長さに調整することができる。
(4)上記(1)〜(3)の溶接装置においては、前記被溶接物の溶接部を前記チャンバー部と対向する位置に位置決めする開口部を有した位置決め部材が、前記基台上に設けられていることが好ましい。
上記(4)の構成によれば、被溶接物の溶接部をチャンバー部と対向する位置に位置決めすることができるので、溶接空間を確実なものとして不活性ガスの漏れを防止し、且つ溶接する際のアーク光を遮蔽し、溶接による作業者の目の障害を防止できる。
本発明の実施の形態に係る溶接装置の斜視図である。 図1の溶接装置の一部を上方側から見た斜視図であって、一部切り欠き図である。 図1の溶接装置の側断面図である。 図1の溶接装置のデッキ上の一部を示す斜視図である。 図1の溶接装置のトーチホルダーを示す斜視拡大図である。
以下、本発明の実施の形態について図1〜図5に基づいて説明する。
図1に示したように、本発明の実施の形態に係る溶接装置100は、ティグ溶接法を採用した溶接トーチ2と、基台6の駆動装置3によって移動可能な台4と、被溶接物(軽量小型タンク)1を支持する支持棒5と、を備えている。
ここで、ティグ溶接法は、溶接トーチ2の先端部に設けられたタングステン電極17を用いる方法で、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを、溶接トーチ2のタングステン電極17の周囲から被溶接物1に吹き付けながら、このタングステン電極17と被溶接物1との間にアークを発生させて被溶接物1の母材を溶かし、接合部を溶着させるものである。
図1及び図3に示すように、溶接装置100の基台6の前面には、台4の駆動装置3が設けられている。駆動装置3は、ガイドレール21と、このガイドレール21に沿って移動可能なL字フレーム22と、ボールねじ7と、このボールねじ7の支持部24と、減速機付のモータ25と、ボールねじ7の端部23とモータ25の出力軸とを連結するカップリング26と、を備え、モータ25を駆動することにより台4を左右方向に移動させることができる。なお、30はカバーであり、駆動装置3の摺動部を覆っているほか、カバー30に設けた2列の長穴27により、台4と基台6に設けた連結材28の移動ができるようにしている。
図3に示すように、台4の上部には、後ろ下がりに傾斜した平板状のデッキ9が形成されている。また、図4に示したように、デッキ9上面には、溶接トーチ2を取付けるためのV字溝10aを有した固定部10(第1の固定部)と、V字溝11bを一部に有した菱型の孔11aを有する取付部11(第2の固定部)と、が設けられている。さらに、取付部11の基台6側には、挿通孔12aを有するチャンバー部12が設けられている。このチャンバー部12のアングル材12bの前面の挿通孔12aに溶接トーチ2の先端を押し当てることにより、また固定部10、取付部11のV字溝に当てることにより、溶接トーチ2に作用する右回りのモーメントと相俟って何ら特別な固定具を設けず、後ろ下がりに傾斜したデッキ9よりずり落ちることもなく、溶接トーチ2を正確な位置に固定保持することができる。
このチャンバー部12は、図2及び図3に示したように、溶接トーチ2の先端外周より大きな挿通孔18a有したスペーサ18を介して取付部11の奥側に設けられたものであり、アングル材12bと、この左右両側に、被溶接物1の角部に干渉しない形状の側部12c一対を有している。また、基台6上には、チャンバー部12とともに溶接用空間の一部を形成することが可能であるとともに、被溶接物1の溶接部の位置決めを行うことが可能な開口部40aを有した位置決め部材40が設けられている。アングル材12bの上一端と位置決め部材40の上部折れ曲り部40bとは僅かな隙間を設けており、またアングル材12bの他端と位置決め部材40、垂直部40cともわずかの隙間を設けており、チャンバー部12は被溶接物1及び位置決め部材40に干渉せずに、左右に移動することができる。ここの位置決め部材40の開口部40aの周囲部分とチャンバー部12とで、タングステン電極17と被溶接物1の溶接部付近とを取り囲むことによって溶接用空間を形成している。よって、溶接トーチ2の先端部をチャンバー部12の挿通孔12aに押し当て、溶接トーチ2がデッキ9上に固定保持され、被溶接物1の溶接部とともに形成した溶接用空間内に不活性ガスを供給することができるようになっている。なお、チャンバー部12、被溶接物1と位置決め部材40とは、接触しないように隙間が設けられており、溶接トーチ2からの不活性ガスを、溶接用空間内に供給すれば、該隙間から若干不活性ガスが漏れ出るようになっているが、溶接時には不活性ガスが溶接用空間内に十分に確保されているので、溶接欠陥を防止できる。
図1及び図3に示すように、溶接装置100の基台6の上部には、左右一対の側壁13が設けられている。側壁13には、所定の径を有する貫通孔14が複数形成され、複数の支持棒5が貫通孔14(架設用係止部)を貫通して架設可能となっており、位置決め部材40の開口部40aに当接された被溶接物1を支持できるようになっている。なお、被溶接物1の形状に応じて支持棒5の組み合わせを適宜設定することができる。したがって、図3に示したように、被溶接物1に突起部(配管)1aがあったとしても、突起部1aが邪魔にならずに溶接することが可能である。また、図3において二点鎖線で示したように、被溶接物1の位置を変えることも可能である。
図5に示すように、一方の側壁13の外側には、トーチホルダー15が設けられ、タングステン電極17を下方として溶接トーチ2を取り付けることができるようになっており、溶接トーチ2のタングステン電極17を一定の長さに調整できるようにしている。このトーチホルダー15は、溶接トーチ2を固定保持する固定部15a、15bと、ボルト16を取り付け可能なナット20が設けられている調節部15cと、を有している。固定部15a、15bは、断面が略L字型の板部材からなり、溶接トーチ2を取り付ける側にV字溝それぞれが設けられており、さらに固定部15bの下方には溶接トーチ2の先端を支持するプレート15dが設けられており、溶接トーチ2が図5に示したように、固定できるようになっている。また、調節部15cは、断面が略L字型の板部材からなり、側壁13から突出している部分には、溶接トーチ2が固定部15a、15bに取り付けられた際のタングステン電極17と対応する位置において貫通孔が設けられており、この貫通孔の位置に合わせてナット20が固設されている。なお、図5に示した状態から、ボルト16を回すことにより、ボルト先端の出代を調節することができる。溶接トーチ2のタングステン電極17は、使用するたびに消耗し、数日のうちにタングステン電極の出代を元の状態に設定する必要がある。そこで、溶接トーチ2の先端部のタングステン電極17は、溶接トーチ2の後端部を図5の矢印の左回りに回すことで出し入れ自在となり、ボルト16の先端に当接するので、タングステン電極17の突き出し長さを容易に一定の長さに設定可能である。その後、溶接トーチ2の後端部を図5の矢印の右回りに回すことで、タングステン電極17の出し入れはできなくなり、タングステン電極17は溶接トーチ2に確実に固定される。
上記構成の溶接装置100では、ガイドレール21に沿って移動可能な台4のデッキ9上に溶接トーチ2を固定保持し、被溶接物1の溶接部に沿って溶接トーチ2を移動させ、確実かつ安定して溶接を行うことができる。また、この溶接時には、被溶接物1の溶接部とチャンバー部12に取り囲まれた部分は、不活性ガスが充満している状態となり、空気中の酸素の巻き込みを防止し、溶融プールの酸化を防止できる。また、タングステン電極17が空気中の酸素を巻き込んで過度の消耗をしないようになり、タングステン電極17の交換回数を減少させることができる。よって、従来よりも良質な溶接を行うことができるようになる。
また、被溶接物1の形状に応じて支持棒5の位置を適宜変更できるので、被溶接物1に突起部1aなどがあったとしても、突起部1aが邪魔にならずに溶接することが可能である。
また、溶接によってタングステン電極17が消耗した場合でも、トーチホルダー15によって、容易に電極の長さを調整することができる。
また、被溶接物1の溶接部をチャンバー部12と対向する位置に位置決めする開口部40aを有した位置決め部材40が、基台6上に設けられているので、溶接をより精度よく行うことができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、例えば、ミグ溶接又はCO溶接を利用した溶接装置にも転用可能であり、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
例えば、側壁13の代わりに、支持棒5を係止して架設さえできればよい係止部(貫通孔14の代わりになる部分。例えば、フックなど。)を長さ方向に複数設けた棒状部材を用いてもよい。
また、上記実施の形態においては、モータ25を使って台4を移動させたが、手動で台4を移動させてもよい。
1 被溶接物
1a 突起部
2 溶接トーチ
3 駆動装置
4 台
5 支持棒
6 基台
7 ボールねじ
9 デッキ
10、15a、15b 固定部
10a、11b V字溝
11 取付部
11a 孔
12 チャンバー部
12a、18a 挿通孔
12b アングル材
12c 側部
13 側壁
14 貫通孔
15 トーチホルダー
15c 調節部
15d プレート
16 ボルト
17 タングステン電極
18 スペーサ
20 ナット
21 ガイドレール
22 L字フレーム
23 端部
24 支持部
25 モータ
26 カップリング
27 長穴
28 連結材
30 カバー
40 位置決め部材
40a 開口部
40b 上部折れ曲り部
40c 垂直部
100 溶接装置

Claims (4)

  1. 基台に水平に設けられたガイドレールと、
    前記ガイドレールに沿って移動可能な台と、
    前記台に着脱自在に保持され、溶接用の電極と、前記電極の周囲から不活性ガスを噴出する不活性ガス噴出部とを先端に有した溶接トーチと、
    前記台の被溶接物側の溶接端部に配置され、被溶接物との間で溶接用空間を形成可能なチャンバー部と、を備え、
    前記溶接用空間内で溶接を行う際、前記不活性ガス噴出部から前記溶接用空間内に不活性ガスを供給し、
    前記基台に、前記ガイドレール両端部外側から挟みこむように一対の側部が設けられており、
    前記一対の側部のそれぞれには、前記一対の側部間において棒状部材を架設することが可能な架設用係止部が複数設けられており、
    前記側部間において前記棒状部材を複数架設することによって、前記棒状部材で前記被溶接物を支持可能にすることを特徴とする溶接装置。
  2. 前記チャンバー部に先端部が当接された状態で前記溶接トーチが前記台に固定されるように、前記台に固定される際の前記溶接トーチ側にV字溝を有した第1の固定部と、前記第1の固定部のV字溝と反対向きに設けたV字溝を有した第2の固定部と、が、前記台に固定される際の前記溶接トーチの長さ方向に沿って順に並設されていることを特徴とする請求項1に記載の溶接装置。
  3. 前記側部の少なくとも一方に、前記溶接トーチの前記電極を下方として固定可能なトーチホルダーが設けられており、
    前記トーチホルダーの下部には、上下に調節可能なボルトが設けられており、
    前記溶接トーチの電極を上下に摺動可能とし、前記電極の先端をボルトに当接させた後、電極を溶接トーチに締付固定することにより、前記溶接トーチ先端部からの電極出代を一定に固定可能になっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶接装置。
  4. 前記被溶接物の溶接部を前記チャンバー部と対向する位置に位置決めする開口部を有した位置決め部材が、前記基台上に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶接装置。
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