JP6340148B1 - 鋳鉄製円筒部材および複合構造体 - Google Patents
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Abstract
鋳鉄製円筒部材の外周面が、鋳肌面からなると共に鋳肌面と一体的に形成された複数の突起Pを有し、A)突起Pの高さHが0.20mm以上0.50mm未満、B)外周面の1cm2当たりの突起数Nが61個以上180個以下、C)突起Pには括れた形状を有する突起Pnが含まれ、D)突起Pに対する括れた形状を有する突起Pnの比率が50%以上、E)下式1に示す接合強度指数Sが310以上であり、F)鋳鉄製円筒部材の外周面がアルミニウム合金により鋳ぐるまれた際の接合強度F(Al)が下式2に示す境界接合強度を超える複合構造体。
・式(1) S=H2×N×NP
・式(2) Fb=1.325×H2×N−0.75
Description
第一の本発明の鋳鉄製円筒部材は、鋳鉄製の円筒部材であって、円筒部材の外周面が、鋳肌面からなると共に前記鋳肌面と一体的に形成された複数の突起Pを有し、(A)前記突起Pの平均高さが、0.20mm以上0.50mm未満であり、(B)外周面の1cm2当たりの前記突起Pの総数が、61個以上180個以下であり、(C)突起Pには、括れた形状を有する突起Pnが含まれ、(D)外周面に存在する突起Pの数に対する括れた形状を有する突起Pnの数の比率が、50%以上であり、(E)下式(1)に示す値Sが、310以上であり、かつ、(F1)円筒部材の外周面がアルミニウム合金により鋳ぐるまれた際の接合強度F(Al(lはLの子文字))が、下式(2)に示す値Fbを超えることを特徴とする。
・式(1) S=H2×N×NP
・式(2) Fb=1.325×H2×N−0.75
〔式(1)および式(2)中、Sは、接合強度指数を表し、Hは、突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、外周面の1cm2当たりの突起Pの総数(個/cm2)を表し、NPは、外周面に存在する突起Pの数に対する括れた形状を有する突起Pnの数の比率(%)を表し、Fbは、境界接合強度(MPa)を表す。〕
・式(1) S=H2×N×NP
〔式(1)中、Sは、接合強度指数を表し、Hは、突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、外周面の1cm2当たりの突起Pの総数(個/cm2)を表し、NPは、外周面に存在する突起Pの数に対する括れた形状を有する突起Pnの数の比率(%)を表す。〕
・式(2) Fb=1.325×H 2 ×N−0.75
〔前記式(2)中、Fbは、境界接合強度(MPa)を表し、Hは、前記突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、前記外周面の1cm 2 当たりの前記突起Pの総数(個/cm 2 )を表す。〕
・式(1) S=H2×N×NP
・式(2) Fb=1.325×H2×N−0.75
〔式(1)および式(2)中、Sは、接合強度指数を表し、Hは、突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、外周面の1cm2当たりの突起Pの総数(個/cm2)を表し、NPは、外周面に存在する突起Pの数に対する括れた形状を有する突起Pnの数の比率(%)を表し、Fbは、境界接合強度(MPa)を表す。〕
・式(1) S=H2×N×NP
〔式(1)中、Sは、接合強度指数を表し、Hは、突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、外周面の1cm2当たりの突起Pの総数(個/cm2)を表し、NPは、外周面に存在する突起Pの数に対する括れた形状を有する突起Pnの数の比率(%)を表す。〕
・式(2) Fb=1.325×H 2 ×N−0.75
〔前記式(2)中、Fbは、境界接合強度(MPa)を表し、Hは、前記突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、前記外周面の1cm 2 当たりの前記突起Pの総数(個/cm 2 )を表す。〕
(A)突起Pの平均高さ(以下、単に「突起Pの高さ」と略す)が、0.20mm以上0.50mm未満である。
(B)外周面の1cm2当たりの突起Pの総数が、61個以上180個以下である。
(C)突起Pには、括れた形状を有する突起Pnが含まれる。
(D)外周面に存在する突起Pの数に対する括れた形状を有する突起Pnの数の比率が、50%以上である。
(E)下式(1)に示す値Sが、310以上である。
(F1)円筒部材の外周面がアルミニウム合金により鋳ぐるまれた際の接合強度F(Al)が、下式(2)に示す値Fbを超える。
・式(2) Fb=1.325×H2×N−0.75
ここで、式(1)および式(2)中、Sは、接合強度指数を表し、Hは、突起Pの高さ(mm)を表し、Nは、外周面の1cm2当たりの突起Pの総数(個/cm2)を表し、NPは、外周面に存在する突起Pの数に対する括れた形状を有する突起Pnの数の比率(%)を表し、Fbは、境界接合強度(MPa)を表す。
(F2)外周面に存在する括れた形状を有する突起Pnの数に対する、括れた形状を有する突起Pnの高さに対する最も括れた位置の高さの比率が0.65以下である括れた形状を有する突起Pnの数の比率が40%以上である。
突起Pの高さHは0.20mm以上0.50mm未満である。突起Pの高さHを0.50mm未満とすることにより、鋳鉄製円筒部材の総厚みTを薄くすることが極めて容易となる。これに加えて、総厚みTを薄くするために、鋳鉄製円筒部材本体部の厚みTbを薄くする必要も無いため、鋳鉄製円筒部材本体部の厚みTbを薄くすることによる鋳鉄製円筒部材の強度低下を回避することもできる。一方、突起Pの高さHを0.20mm以上とすることにより外周側部材との接合強度の向上に効果的な括れた形状の突起Pnを形成することが容易となる。このため、十分な接合強度を確保することが容易になる。
外周面の1cm2当たりの突起Pの総数N(密度N)(以下、「突起数N」と略す場合がある)は、61個以上180個以下である。突起数Nを61個以上とすることにより、十分な接合強度を確保することが容易になる。また、突起数Nを180個以下とすることにより、括れた形状を有する突起Pnの成形性が向上し、十分な接合強度を確保することが極めて容易になる。これに加えて、外周側部材を形成する際に用いる液状あるいは粉末状の外周側部材形成用原料を鋳鉄製円筒部材の外周面(鋳肌面)に付与するプロセスを経て、外周側部材を形成すると共に、本実施形態の鋳鉄製円筒部材と、外周側部材とを一体化する場合、隣り合う突起Pの間にも外周側部材形成用原料をスムーズに充填できる。このため、一体化された後の鋳鉄製円筒部材と外周側部材との接合界面に空隙が形成されるのを抑制し、十分な密着性を確保できる。なお、突起数Nは、70個〜160個の範囲内がより好ましく、75個〜145個の範囲内がさらに好ましく、80個〜140個の範囲内が特に好ましい。
外周面に設けられる突起Pには、括れた形状を有する突起Pnが含まれる。以下に図面を用いて、突起Pおよび括れた形状を有する突起Pnについて説明する。
・式(3) PT0−PM0>0
・式(4) PT1≧PM1
・式(5) PT2≧PM2
外周面に存在する突起Pの数に対する括れた形状を有する突起Pnの数の比率NP(以下、「括れ比率NP」と略す場合がある)は、50%以上であり、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。括れた形状を有する突起Pnは中間部20Mが括れているため、本実施形態の鋳鉄製円筒部材10と、外周側部材とが強固に噛み合うことができる。このため、括れ比率NPを50%以上とすることにより、十分な接合強度を確保することが容易になる。また、括れた形状を有する突起Pnの比率の平均値NPは、個々の括れた形状を有する突起Pnの比率の平均値である。括れた形状を有する突起Pnの比率の平均値NPの具体的な測定方法については後述する。
式(1)に示される接合強度指数Sは310以上であり、350以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましい。接合強度指数Sを310以上とすることにより、十分な接合強度を確保することができる。
第一の本実施形態の鋳鉄製円筒部材の外周面がアルミニウム合金により鋳ぐるまれた際の接合強度F(Al)は、下式(2)に示す境界接合強度Fb以上である。
・式(2) Fb=1.325×H2×N−0.75
第二の本実施形態の鋳鉄製円筒部材では、外周面に存在する括れた形状を有する突起Pnの数に対する、括れた形状を有する突起Pnの高さh1に対する最も括れた位置の高さhwの比率(hw/h1)が0.65以下である括れた形状を有する突起Pnの数の比率NP2が40%以上である。比率NP2は、45%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。なお、比率NPの上限は特に限定されないが、100%に近いほど好ましい。
本実施形態の鋳鉄製円筒部材10は、上述した(A)〜(E)および(F1)に示す条件、あるいは、(A)〜(E)および(F2)に示す条件を少なくとも満たしていればよいが、さらに面積率S1が15%〜50%であることが好ましく、20%〜50%であることがより好ましい。面積率S1を15%以上とすることにより、突起Pの基底部20Bが太くなり、突起Pが折損し難くなるため、十分な接合強度を確保することがより容易となる。また、面積率S1を50%以下とすることにより、突起Pの基底部20Bおよびその周囲の鋳肌面が粗くなるのを抑制できる。このため、外周側部材の形成に用いる溶湯等の外周側部材形成用原料により外周面10Sが覆われる際に、外周側部材と鋳鉄製円筒部材10との間に空隙が形成されるのを抑制でき、十分な密着性を確保することがより容易となる。
本実施形態の鋳鉄製円筒部材10の用途は特に限定されるものではないが、通常、外周面10Sの少なくとも一部が、外周側部材(他の部材)により覆われることにより、鋳鉄製円筒部材10と外周側部材とが一体化した状態で用いられることが特に好ましい。この場合、本実施形態の鋳鉄製円筒部材10と、本実施形態の鋳鉄製円筒部材10の外周面10Sの少なくとも一部を覆う外周側部材とを有し、鋳鉄製円筒部材10Sと外周側部材とが一体化している複合構造体を得ることができる。この複合構造体は、外周側部材が、アルミニウム合金、マグネシウム合金あるいは鉄合金などの金属製外周側部材であり、鋳鉄製円筒部材の外周面の少なくとも一部が、金属製外周側部材により鋳包まれた鋳包構造体であることが好ましい。なお、鋳鉄製円筒部材10と外周側部材とを一体化する前後において、鋳鉄製円筒部材10の内周面に対して切削等の加工が施されていてもよい。
なお、本実施形態の鋳鉄製円筒部材10の用途は特に限定されるものではないが、たとえば、シリンダライナあるいはブレーキドラムとして利用することが特に好ましい。
次に、本実施形態の鋳鉄製円筒部材の製造方法について説明する。まず、本実施形態の鋳鉄製円筒部材の素材となる鋳鉄の組成は、特に限定されるものではなく、本実施形態の鋳鉄製円筒部材の使用用途に応じて適宜選択することができる。たとえば、耐摩耗生、耐焼き付き性および加工性を考慮したJIS FC250相当の片状黒鉛鋳鉄の組成として、以下に示す組成を例示できる。
C :3.0 〜 3.7 質量%
Si :2.0 〜 2.8 質量%
Mn :0.5 〜 1.0 質量%
P :0.25 質量%以下
S :0.15 質量%以下
Cr :0.5 質量%以下
残部Feおよび不可避的不純物
工程Aでは、耐火基材、粘結剤、及び水を所定の比率で配合して懸濁液を作製する。
耐火基材の配合量 :25質量%〜35質量%
粘結剤の配合量 :3質量%〜9質量%
水の配合量 :62質量%〜66質量%
耐火基材の平均粒径:0.002mm以上0.010mm以下
耐火基材の配合量を25質量%以上に設定することにより、塗型剤の断熱効果を十分に確保できるため、所望の鋳鉄基地組織を有する鋳鉄製円筒部材10を得ることが容易になる。また、配合量を35質量%以下に設定することにより、塗型剤の流動性を低下させず金型の内周面へ塗型剤を均一に塗布することが容易になるため、鋳鉄製円筒部材10の外径精度を確保することが容易となる。なお、耐火基材としては珪藻土を用いることができる。
耐火基材の平均粒径を、0.002mm以上とすることにより十分な数の括れた形状を有する突起Pnを形成することが容易になる。この結果、接合強度の確保も容易になる。また、平均粒径を0.010mm以下とすることにより、塗型剤により形成された塗型層の内周面が必要以上に粗面化するのを防止できる。この結果、突起Pの周囲に広がる外周基底面10Sbを平滑化することが容易になり、外周基底面10Sbと外周側部材との密着性が向上すると共に、両者の界面に空隙が生じるのを抑制することが容易となる。
粘結剤の配合量を3質量%以上とすることにより、塗型剤の結合強度を大きくできるため、形成される突起Pの高さが必要以上に高くなることを抑制できる。また、粘結剤の配合量を9質量%以下とすることにより、突起Pが必要以上に多く形成されることを抑制できる。このため、一定値以下の高さを有する突起Pが十分に形成できるため、十分な接合強度を確保することが容易になる。なお、粘結剤としてはベントナイトを用いることができる。
水の配合量を62質量%以上では、塗型剤の流動性を低下させず金型の内周面へ塗型剤を均一に塗布することになり、鋳鉄製円筒部材10の外径精度を確保する。また、水の配合量を66質量%以下では、塗型剤の必要な結合強度を確保し、突起Pの形成が容易になる。
工程Bでは、工程Aで調製した懸濁液に所定量の界面活性剤を添加して塗型剤を作製する。
界面活性剤は、懸濁液質量100質量部に対して0.005質量部〜0.04質量部の範囲で添加されることが好ましい。界面活性剤の添加量を0.005質量部以上とすることにより、塗型層内における界面活性剤の発泡作用が十分に発揮されるため、突起Pの形成が容易になる。このため、結果的に十分な接合強度を確保することも容易になる。また、界面活性剤の添加量を0.04質量部以下とすることにより、界面活性剤の発泡作用が過多となることを防ぎ、括れた形状を有する突起Pnを形成することが容易になる。このため、結果的に十分な接合強度を確保することも容易になる。また、形成される突起Pの総数が必要以上に増大しないため、外周側部材の形成に際して外周面10S上において隣り合う複数の突起P間に、外周側部材形成用原料を隙間なく充填することも容易になる。このため、接合界面における空隙の発生を防いで、密着性を確保することも容易になる。
工程Cでは、図8(A)に示すように、180℃〜240℃の温度に加熱された回転状態にある円筒状金型50(鋳型)の内周面50Sに塗型剤を噴霧塗布する。このとき、塗型剤の層(塗型層52)が内周面50S全周にわたって略均一の厚さに形成されるように塗型剤が塗布される。
工程Dでは、塗型層52が乾燥した後、回転状態にある円筒状金型50内へ鋳鉄を鋳込む。このとき、塗型層52の凹穴54C1、54C2内にも溶湯が充填されることで、鋳鉄製円筒部材10の突起P部分が形成される。なお、図8に示す例では、凹穴54C1が図2に示す括れた形状を有する突起Pnに対応し、凹穴54C2が図3に示すその他の形状を有する突起Paに対応する。
工程Eでは、溶湯が固化して鋳鉄製円筒部材10が形成された後、塗型層52とともに鋳鉄製円筒部材10を円筒状金型50から取り出す。円筒状金型50の温度はこの時点が最高の温度になる。
工程Fでは、ブラスト処理装置により塗型層52を鋳鉄製円筒部材10の外周面10Sから除去する。
1.鉄製製円筒部材の作製
同一組成の溶湯を用いて遠心鋳造により各実施例および比較例の鋳鉄製円筒部材を作製した。鋳造された鋳鉄製円筒部材の組成は、C:3.4質量%、Si:2.4質量%、Mn:0.7質量%、P:0.12質量%、S:0.035質量%、Cr:0.25質量%、残部Feおよび不可避的不純物(JIS FC250相当)である。また、遠心鋳造に際しては、下記表1に示す塗型剤を用いた。
次に、各実施例および比較例の鋳鉄製円筒部材について、以下の[a]〜[f]を測定した。以下に、これらの測定方法を説明する。
[a]突起Pの高さH
[b]突起数N
[c]括れ比率NP
[d]面積率S1
[e]空隙率G
[f]接合強度F(接合強度F(Al))
各実施例および比較例の鋳鉄製円筒部材の外周面に形成された突起Pの高さh(外周基底面10Sbから突起Pの頂面10Stのうち最も高い部分までの距離)を、ダイヤルデプスゲージ(最小単位が0.01mm)により測定した。ダイヤルデプスゲージは、測定子が針状であり、測定物と接触して測定基準面となるベース面の幅が16.0mm(面取り部分を除くと14.5mm)である。測定に際しては、ダイヤルデプスゲージ・ベース面の幅方向が鋳鉄製円筒部材の中心軸方向と平行を成すようにし、測定子が鋳鉄製円筒部材の外周面に対して垂直になるようにして測定した。測定は、各実施例および各比較例の鋳鉄製円筒部材の軸方向の両端側部分で実施した。この際、一方の端では直径方向に対向する2カ所を測定し、他方の端でも直径方向に対向する2カ所(但し、一方の端の測定箇所から周方向に90度回転した位置)を測定した。そして、これら4か所で得られた突起Pの高さhの平均値を突起Pの高さHとした。
突起数Nは、非接触式3次元レーザ測定器を用いて各実施例および比較例の鋳鉄製円筒部材の外周面を測定することで縦1cm×横1cmの等高線図を得た後、この等高線図中の高さ200μmの等高線で囲まれた領域の数をカウントして求めた。以下に具体的な測定方法を説明する。
(2)但し、上記(1)の例外として、図10に例示したような200μm等高線図中において、黒色で示される1つの閉じた領域の輪郭形状が、扁平形状または瓢箪形状である場合は、カウント対象外とする。ここで、カウント対象外とする「扁平形状または瓢箪形状」の1つの閉じた領域とは、この1つの閉じた領域の輪郭形状の短径に対する長径の比率(長径/短径)が、2以上のものを言う。
(3)測定エリア内の突起Pの総数n(個/cm2)は、下式(6)に基づいて求める。
・式(6) n=n20+nb20/2
ここで、式(6)中、n20は、200μm等高線図内において、カウント対象とされたZ軸高さ0.20mmの等高線のみによって囲まれた領域の総数(個/cm2)を表し、nb20は、200μm等高線図内において、カウント対象とされたZ軸高さ0.20mmの等高線と200μm等高線図の境界線とによって囲まれた領域の総数(個/cm2)を表す。また、式(6)中、nb20/2の値が整数でない場合は四捨五入して整数値とした後、突起Pの総数nを計算する。
括れ比率NPは以下の手順にて求めた。まず、図11に示すように、水平なテーブル200の上に設置された断面形状が略V字状のVブロック台210上に、評価用サンプル110を配置した。また、評価用サンプル110の斜め上方には、テレビモニタ(図中、不図示)に接続されたマイクロスコープ220(株式会社ハイロックス製デジタルマイクロスコープKH−1300)を、マイクロスコープ220の光軸MがZ軸方向(鉛直方向)と平行を成すように配置した。なお、このマイクロスコープ220は、評価用サンプル110の中心軸Aと直交するZ軸方向の上方側を0度とした際に、評価用サンプル110の周方向Pにおいて、評価用サンプル110の外周面110Sの約60度の位置を観察できるように配置される。これにより、マイクロスコープ220により観察される測定エリア部分の外周面110Sにおける接線TNと、マイクロスコープ220の光軸Mとは約30度の角度を成すように設定される。また、マイクロスコープ220の接眼レンズの倍率は40倍とした。なお、図11中、X軸方向は、評価用サンプル110の中心軸Aと平行を成す方向であり、Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の双方と直交する方向である。
・式(7) 括れ比率NP(%)
=100×4箇所の測定ポイントのq1の合計値/(4箇所の測定ポイントのq0の合計値+4箇所の測定ポイントのq1の合計値)
面積率S1は、突起数Nを測定する際に得た4箇所の測定ポイントにおける補正後の座標データ(X,Y,Z)に基づいて、表計算ソフトを使用し演算により計算し、4箇所の測定ポイントの面積率sの平均値として求めた。表計算ソフトから描画される等高線画像中に確認される外周基底面10SbのZ軸高さを基準値(0mm)に設定した際に、Z軸高さが0.15mm未満の等高線を非表示とすることにより、測定エリアをZ軸高さ0.15mmでスライスした等高線図(150μm等高線図)を得た。参考までに、図14に、実施例8の評価用サンプルの150μm等高線図の一例を示す。図14中の黒い領域が、Z軸高さ0.15mm以上の領域である。なお、図14に示す150μm等高線図は、図10に示す200μm等高線図のスライス位置を50μm低くしたものに該当する。
・式(8) 面積率s(%)=100×ps/bs
ここで、式(8)中、psは、X軸の長さおよびY軸の長さが測定エリアの1cm(10mm)に相当する150μm等高線図において、(i)Z軸高さ0.15mmの等高線のみにより囲まれた領域の面積と、(ii)Z軸高さ0.15mmの等高線と150μm等高線図の境界線とにより囲まれた領域の面積と、の合計面積(mm2、Z軸高さ0.15mmの断面面積)である。また、bsは、150μm等高線図の全面積(100mm2=10mm×10mm)である。
空隙率Gの測定のために、まず、各実施例および比較例の鋳鉄製円筒部材を用いて作製した2気筒型シリンダを作製した。図15(A)に示すように、この2気筒型シリンダ400は、評価用サンプルとして作製した2本の鋳鉄製円筒部材410(シリンダライナ)の外周面全面をアルミニウム合金を用いてダイカスト鋳造により鋳ぐるむことで作製した。この際のダイカスト条件は以下の通りである。
−ダイカスト条件−
・アルミニウム合金材質:ADC12
・鋳込み圧力:60MPa
・鋳込み速度:1.8m/s
・溶湯温度:675℃
・シリンダブロック420の肉厚:8mm
・シリンダボア430間の肉厚:15.4mm(シリンダボア430間のアルミニウム合金部分の肉厚は4.4mm)
・鋳鉄製円筒部材410(シリンダライナ)の高さ:130mm
・鋳鉄製円筒部材410(シリンダライナ)の肉厚:5.5mm
(a)2つのボア中心軸B1、B2を結ぶ直線M1と境界部BSとが交差する箇所(小計4箇所)
(b)直線M1と直交しかつボア中心軸B1を通る直線M2と境界部BSとが交差する箇所(小計2箇所)
(c)直線M1と直交しかつボア中心軸B2を通る直線M3と境界部BSとが交差する箇所(小計2箇所)
・式(9) g=GA/SA×100
空隙率Gの評価に用いた第一試験片402から、以下の(a)〜(c)に示す部分(第二試験片A)、および、以下の(d)に示す部分(第二試験片B)を切り出した。
(a)第一試験片402の長手方向の両端側において、第一試験片402と直線M1とが交差する部分を中心にして、第一試験片402を周方向に沿って20mm幅で切り出した部分。(小計2箇所)
(b)第一試験片402の短手方向の両端側において、第一試験片402と直線M2とが交差する部分を中心にして、第一試験片402を周方向に沿って20mm幅で切り出した部分。(小計2箇所)
(c)第一試験片402の短手方向の両端側において、第一試験片402と直線M3とが交差する部分を中心にして、第一試験片402を周方向に沿って20mm幅で切り出した部分。(小計2箇所)
(d)第一試験片402の長手方向の中央部(シリンダボア430間に相当する部分)において、第一試験片402を短手方向に沿って20mm幅で切り出した部分。
(小計1箇所)
A:突起Pの高さHが0.2mm以上0.45mm未満。
B:突起Pの高さHが0.45mm以上0.5mm未満。
C:突起Pの高さHが0.5mm以上。
A:空隙率Gが0.5%以下。
B:空隙率Gが0.5%を超え1.0%以下。
C:空隙率Gが1.0%を超える。
A:接合強度Fが10.0MPa以上。
B:接合強度Fが6.0MPa以上10.0MPa未満。
C:接合強度Fが6.0MPa未満。
表4に示す条件にて塗型剤と、工程Cにおける円筒状金型50の温度と、塗型層52とを組み合わせた以外は、第一の実験と同様にして各実施例および比較例の鋳鉄製円筒部材を得た。各実施例および比較例の鋳鉄製円筒部材について、第一の実験と同様にして各種の測定および評価を行った結果を表4および表5に示す。また、表6に、括れた形状を有する突起Pnの高さh1に対する最も括れた位置の高さhwの比率(hw/h1)を、0<hw/h1≦0.35、0.35<hw/h1≦0.65、および、0.65<hw/h1<1.0の範囲で区分した際の各区分毎の突起Pnの比率A、B、Cを示す。なお、表6中には、比率NP2および円筒状金型50の温度についても示した。
表6に示す比率A、B、Cは以下の手順にて求めた。まず、各実施例および比較例の鋳鉄製円筒部材の両端部から20mm〜30mmの位置を、軸方向に直交する断面が露出するように切断した。次に、切断面を、研磨紙を用いて、研磨紙の粗さを、中目、細目、極細目(#1000以上)の順に変更しながら研磨した。この研磨処理を3本の鋳鉄製円筒部材について実施することで、研磨後切断面を有する厚さが20mm〜30mmの測定用サンプルを6つ作製した。
図16に、H2×N(横軸)に対して接合強度F(接合強度F(Al))(縦軸)をプロットしたグラフを示す。但し、図16に示すグラフは突起Pの高さHが0.2mm以上0.5mm未満の場合について示したものである。また、図16中には、参考として、特許文献3の表1に開示された試験例(実施例1、4−6、8−9および比較例1−2、4)についてもプロットしてある。
なお、参考までに、比較例6の評価用サンプルの150μm等高線図を図20に示す。
10S :外周面
10Sb :外周基底面
10St :頂面
20 :内燃機関
20T :頂部
20M :中間部
20B :基底部
20C :連結部
30 :シリンダライナ
32 :シリンダブロック
34 :シリンダボア
36 :冷却液流路
40 :ホイール
42 :ドラム部
42S :内周面
44 :ブレーキドラム
44S :内周面
46 :ブレーキシュー
50 :円筒状金型
50S :内周面
52 :塗型層
54A :気泡
54A1 :大きい気泡
54A2 :小さい気泡
54B :凹穴
54C1 :凹穴
54C2 :凹穴
100 :XYテーブル
102 :測定台
110 :評価用サンプル
110S :外周面
120 :非接触式3次元レーザ測定器
122 :レーザ照射部
200 :テーブル
210 :Vブロック台
220 :マイクロスコープ
230 :補助光源
300A :カーソル線
300B :カーソル線
400 :2気筒型シリンダ
402 :第一試験片
410 :鋳鉄製円筒部材(シリンダライナ)
420 :シリンダブロック
430 :シリンダボア
Claims (12)
- 鋳鉄製の円筒部材であって、
前記円筒部材の外周面が、鋳肌面からなると共に前記鋳肌面と一体的に形成された複数の突起Pを有し、
(A)前記突起Pの平均高さが、0.20mm以上0.50mm未満であり、
(B)前記外周面の1cm2当たりの前記突起Pの総数が、61個以上180個以下であり、
(C)前記突起Pには、括れた形状を有する突起Pnが含まれ、
(D)前記外周面に存在する前記突起Pの数に対する前記括れた形状を有する突起Pnの数の比率が、50%以上であり、
(E)下式(1)に示す値Sが、310以上であり、かつ、
(F1)前記円筒部材の外周面がアルミニウム合金により鋳ぐるまれた際の接合強度F(Al)が、下式(2)に示す値Fbを超えることを特徴とする鋳鉄製円筒部材。
・式(1) S=H2×N×NP
・式(2) Fb=1.325×H2×N−0.75
〔前記式(1)および前記式(2)中、Sは、接合強度指数を表し、Hは、前記突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、前記外周面の1cm2当たりの前記突起Pの総数(個/cm2)を表し、NPは、前記外周面存在する前記突起Pの数に対する前記括れた形状を有する突起Pnの数の比率(%)を表し、Fbは、境界接合強度(MPa)を表す。〕 - 鋳鉄製の円筒部材であって、
前記円筒部材の外周面が、鋳肌面からなると共に前記鋳肌面と一体的に形成された複数の突起Pを有し、
(A)前記突起Pの平均高さが、0.20mm以上0.50mm未満であり、
(B)前記外周面の1cm2当たりの前記突起Pの総数が、61個以上180個以下であり、
(C)前記突起Pには、括れた形状を有する突起Pnが含まれ、
(D)前記外周面に存在する前記突起Pの数に対する前記括れた形状を有する突起Pnの数の比率が、50%以上であり、
(E)下式(1)に示す値Sが、310以上であり、かつ、
(F2)前記外周面に存在する前記括れた形状を有する突起Pnの数に対する、前記括れた形状を有する突起Pnの高さに対する最も括れた位置の高さの比率が0.65以下である括れた形状を有する突起Pnの数の比率が40%以上であることを特徴とする鋳鉄製円筒部材。
・式(1) S=H2×N×NP
〔前記式(1)中、Sは、接合強度指数を表し、Hは、前記突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、前記外周面の1cm2当たりの前記突起Pの総数(個/cm2)を表し、NPは、前記外周面に存在する前記突起Pの数に対する前記括れた形状を有する突起Pnの数の比率(%)を表す。〕 - 前記(A)〜(E)に示す条件と、
(F1)前記円筒部材の外周面がアルミニウム合金により鋳ぐるまれた際の接合強度F(Al)が、下式(2)に示す値Fbを超えることと、および、
(F2)前記外周面に存在する前記括れた形状を有する突起Pnの数に対する、前記括れた形状を有する突起Pnの高さに対する最も括れた位置の高さの比率が0.65以下である括れた形状を有する突起Pnの数の比率が40%以上であることと、を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の鋳鉄製円筒部材。
・式(2) Fb=1.325×H 2 ×N−0.75
〔前記式(2)中、Fbは、境界接合強度(MPa)を表し、Hは、前記突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、前記外周面の1cm 2 当たりの前記突起Pの総数(個/cm 2 )を表す。〕 - 非接触式三次元レーザ測定器を用いて、前記外周面に対してレーザ光を照射することで、前記外周面の1cm2当たりを測定して得られる等高線図において、測定高さ0.15mmの等高線により囲まれる領域の面積率をS1としたとき、前記面積率S1が15%〜50%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の鋳鉄製円筒部材。
- 前記接合強度指数Sが500以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の鋳鉄製円筒部材。
- 前記円筒部材と他の部材とが一体化されるように、前記円筒部材の外周面の少なくとも一部が、前記他の部材により覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の鋳鉄製円筒部材。
- 前記円筒部材の内周面をピストン及びピストンリングが往復摺動する内燃機関用シリンダライナであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の鋳鉄製円筒部材。
- 前記円筒部材の内周面でブレーキシューと摺動する内接式ドラムブレーキのブレーキドラムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の鋳鉄製円筒部材。
- 鋳鉄製の円筒部材の外周面が、鋳肌面からなると共に前記鋳肌面と一体的に形成された複数の突起Pを有し、
(A)前記突起Pの平均高さが、0.20mm以上0.50mm未満であり、
(B)前記外周面の1cm2当たりの前記突起Pの総数が、61個以上180個以下であり、
(C)前記突起Pには、括れた形状を有する突起Pnが含まれ、
(D)前記外周面に存在する前記突起Pの数に対する前記括れた形状を有する突起Pnの数の比率が、50%以上であり、
(E)下式(1)に示す値Sが、310以上であり、かつ、
(F1)前記円筒部材の外周面がアルミニウム合金により鋳ぐるまれた際の接合強度F(Al)が、下式(2)に示す値Fbを超える鋳鉄製円筒部材と、
前記鋳鉄製円筒部材の外周面の少なくとも一部を覆う外周側部材とを有し、
前記鋳鉄製円筒部材と前記外周側部材とが一体化していることを特徴とする複合構造体。
・式(1) S=H2×N×NP
・式(2) Fb=1.325×H2×N−0.75
〔前記式(1)および前記式(2)中、Sは、接合強度指数を表し、Hは、前記突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、前記外周面の1cm2当たりの前記突起Pの総数(個/cm2)を表し、NPは、前記外周面に存在する前記突起Pの数に対する前記括れた形状を有する突起Pnの数の比率(%)を表し、Fbは、境界接合強度(MPa)を表す。〕 - 鋳鉄製の円筒部材の外周面が、鋳肌面からなると共に前記鋳肌面と一体的に形成された複数の突起Pを有し、
(A)前記突起Pの平均高さが、0.20mm以上0.50mm未満であり、
(B)前記外周面の1cm2当たりの前記突起Pの総数が、61個以上180個以下であり、
(C)前記突起Pには、括れた形状を有する突起Pnが含まれ、
(D)前記外周面に存在する前記突起Pの数に対する前記括れた形状を有する突起Pnの数の比率が、50%以上であり、
(E)下式(1)に示す値Sが、310以上であり、かつ、
(F2)前記外周面に存在する前記括れた形状を有する突起Pnの数に対する、前記括れた形状を有する突起Pnの高さに対する最も括れた位置の高さの比率が0.65以下である括れた形状を有する突起Pnの数の比率が40%以上である鋳鉄製円筒部材と、
前記鋳鉄製円筒部材の外周面の少なくとも一部を覆う外周側部材とを有し、
前記鋳鉄製円筒部材と前記外周側部材とが一体化していることを特徴とする複合構造体。
・式(1) S=H2×N×NP
〔前記式(1)中、Sは、接合強度指数を表し、Hは、前記突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、前記外周面の1cm2当たりの前記突起Pの総数(個/cm2)を表し、NPは、前記外周面に存在する前記突起Pの数に対する前記括れた形状を有する突起Pnの数の比率(%)を表す。〕 - 前記(A)〜(E)に示す条件と、
(F1)前記円筒部材の外周面がアルミニウム合金により鋳ぐるまれた際の接合強度F(Al)が、下式(2)に示す値Fbを超えることと、および、
(F2)前記外周面に存在する前記括れた形状を有する突起Pnの数に対する、前記括れた形状を有する突起Pnの高さに対する最も括れた位置の高さの比率が0.65以下である括れた形状を有する突起Pnの数の比率が40%以上であることと、を満たすことを特徴とする請求項9または10に記載の複合構造体。
・式(2) Fb=1.325×H 2 ×N−0.75
〔前記式(2)中、Fbは、境界接合強度(MPa)を表し、Hは、前記突起Pの平均高さ(mm)を表し、Nは、前記外周面の1cm 2 当たりの前記突起Pの総数(個/cm 2 )を表す。〕 - 前記外周側部材が、金属製外周側部材であり、
前記鋳鉄製円筒部材の外周面の少なくとも一部が、前記金属製外周側部材により鋳包まれていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1つに記載の複合構造体。
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