JP6339734B2 - 荷電粒子線応用装置、及び、収差補正器 - Google Patents

荷電粒子線応用装置、及び、収差補正器 Download PDF

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Description

本発明は荷電粒子線応用装置に関する。
半導体製造プロセスにおいて、半導体デバイスの寸法や形状の計測又は検査には、電子線等の荷電粒子線を利用する荷電粒子線応用装置が使用されている。また、半導体デバイス以外の対象物を観察するために汎用の荷電粒子線応用装置が使われている。その一例にScanning Electron Microscope(SEM)がある。SEMは、電子源から発生させた電子線を観察したい試料に照射し、照射したことにより発生する二次電子を検出器で検出し電気信号に変換した後、電気信号から画像を生成する。
近年は半導体デバイスの微細化が進み、SEMの高分解能化が必須である。高分解能化のためには電子線を試料面で小さく絞る必要があるため、電子線が電磁レンズを通過することで発生する収差を補正する収差補正器が有効である。
特表2009−528668号(特許文献1)は、試料からの二次電子の収差を、ミラーを使用した収差補正器(ミラー収差補正器)により補正する技術を開示している。特許文献1には、以下の事項が開示されている。
「第2の磁気偏向器は、静電レンズからの第1のエネルギ分散電子回折パターンを受け取るように配置される。第2の磁気偏向器はまた、第2の磁気偏向器の第1の出射面に第2の非分散電子回折パターンを投射するように構成される。機器は、1つ又は複数の収差を補正するように構成された電子鏡も有する。電子鏡は、第2の磁気偏向器の第2の出射面に第2のエネルギ分散電子回折パターンを投射するために第2の非分散電子回折パターンを第2の磁気偏向器へ反射するように配置される。」(要約参照)。
なお、特開昭62−113350号(特許文献2)では、試料からの電子線をエネルギに応じて分離する複数のスペクトロメータを備え、エネルギフィルタ像とアンフィルタ像を切り替えて使用する電子顕微鏡において、スペクトロメータの上下対称位置にトランスファレンズを配置してエネルギフィルタ像と等しい大きさのアンフィルタ像を得る技術が開示されている(特許請求の範囲参照)。
特表2009−528668号 特開昭62−113350号
デバイスの計測又は検査では高分解能化だけではなく高速化も重要である。デバイスの計測や検査の高速化は電子線のビーム電流を増加させることによって二次電子信号量を増やすことが有効である。もしくは、試料の異なる深さの領域を観察するためには、異なる加速電圧での電子線による観察が有効である。
したがって、半導体デバイスの計測や検査用等の荷電粒子線応用装置は、異なるモードで動作できることが望ましい。例えば、電子線の大ビーム電流で観察するモードと小ビーム電流で観察するモード、若しくは高加速ビーム電流で観察するモードと低加速ビーム電流で観察するモードである。
ビーム電流が大きくなるにつれ、クーロン効果が大きくなる。クーロン効果は、電子間で働く反発する力のことであり、電子線のボケの要因となる。また、クーロン効果は電子線の飛行時間が長くなると大きくなる。
ミラー収差補正器を装置に搭載した場合には、電子線軌道の光路長が長くなることと、電子線がミラーで反射される時に減速されることによって電子線の飛行時間が長くなる。そのため、ミラー収差補正を実行しない場合に比べ、分解能が劣化する場合がある。また、ミラー収差補正器において、高加速荷電粒子をミラーに偏向し、さらにミラーによって適切に反射するためには、より大きな動作電圧が必要とされる。
したがって、ミラー収差補正器を搭載した装置は、ミラー収差補正器の使用の有無を選択できることが望ましい。さらに、ミラー収差補正の有無の切り替えが、対物レンズ光学条件を変えないことが望まれる。これは、対物レンズ光学条件が変わると、同時に二次電子に対する対物レンズの作用が変わり、二次電子が検出器に到達する条件が変わってしまうためである。
特許文献1及び特許文献2は、二次電子線のミラー収差補正器及びエネルギフィルタの制御を開示するが、対物レンズに入射する荷電粒子線の収差を補正するミラー収差補正器の制御及び当該ミラー収差補正器についての上記課題について開示していない。したがって、ミラー収差補正器を搭載した荷電粒子線応用装置において、対物レンズ光学条件を変えずにミラー収差補正の有無の切り替えを行うことができる技術が望まれる。
本発明の代表的な一例は、荷電粒子線源から発生した荷電粒子線を試料に照射する、荷電粒子線応用装置であって、荷電粒子線源と、前記荷電粒子線源よりも下流に配置された、収差補正器と、前記収差補正器よりも下流に配置された、対物レンズと、前記収差補正器を制御する、制御部と、を含み、前記収差補正器は、前記荷電粒子線源からの荷電粒子線の収差を補正する、ミラーと、前記荷電粒子線源からの荷電粒子線が入射する入口と、前記荷電粒子線が前記対物レンズに向けて出射する出口とを含み、オン状態において前記荷電粒子線を偏向することで、前記入口から前記ミラーへの入射軌道と前記ミラーから前記出口への反射軌道とを分離する、ビームセパレータと、前記ビームセパレータ内において、前記ビームセパレータがオン状態のときに前記荷電粒子線の軌道が迂回し、前記ビームセパレータがオフ状態のときに前記荷電粒子線の軌道が通過する位置に配置された、バイパス光学系と、を含み、前記バイパス光学系は、前記ミラーを経由する軌道と前記バイパス光学系を通過する軌道とにおける前記対物レンズ光学条件が一致するように前記荷電粒子線を制御する。
本発明によれば、対物レンズ光学条件を変えずにミラー収差補正の有無の切り替えを行うことができる。
実施例1に係る電子線観察装置の概略構成及び高分解能モードにおける電子線軌道を示す。 実施例1に係る電子線観察装置の概略構成及び大電流モードにおける電子線軌道を示す。 実施例1に係る電子線のビーム電流を制御する方法を示す。 実施例1に係る試料上のビーム開き角を制御する方法を示す。 実施例1に係るビームセパレータ及びバイパスレンズを示す。 実施例1に係るビームセパレータ及びバイパスレンズを示す。 実施例1に係るミラーを示す。 実施例1に係るモード設定及び試料観察手順のフローチャートを示す。 実施例1に係るモード設定画像を示す。 実施例1に係るモード設定画像を示す。 実施例2に係る電子線の軌道を制御する方法を示す。 実施例3に係る電子線の軌道を制御する方法を示す。
以下、図面を用いて実施例を説明する。なお、実施例を説明するための全図において、同一の要素には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、電子線を使用した試料の観察装置の実施例を示すが、イオンビームを使用する場合、また、計測装置や検査装置等の他の装置においても本実施形態の効果は失わない。
図1は、実施例1に係る電子線観察装置の概略構成を示す。電子線は荷電粒子線であり、電子線観察装置は荷電粒子線応用装置である。電子源101から引き出された電子線102の軌道上には第一コンデンサレンズ103、ビーム電流調整用の絞り104、第二コンデンサレンズ106、ビームセパレータ107、ミラー108、及び対物レンズ110が備えられている。
ビームセパレータ107内にはバイパス光学系が備えられている。ビームセパレータ107、ミラー108及びバイパス光学系は、ミラー収差補正器を構成する。ミラー108は、電子線軌道を反射させることによって収差の補正を行う。ビームセパレータ107は、ミラー108に入射する電子線とミラー108から出射する電子線の軌道の分離を行う。
本実施例において、ミラー収差補正器より上流の電子源101及び第二コンデンサレンズ106と下流の対物レンズ110とは、直線上に配置されている。バイパス光学系は、電子線を発散又は集束(発散/集束)させる光学素子であり、電子線の発散/集束角を変化させる。本実施例において、バイパス光学系は一段のバイパスレンズ109であるが、複数のレンズの複合でもよい。また、電子線の軸調整用に、アライナ、スティグメータ、走査用の偏向器等も付加されている(図示せず)。なお本明細書においては、電子源、レンズ、アライナ、検出器等の荷電粒子線に作用を及ぼす素子を総称する場合には光学素子と呼ぶ。
本実施例における第一コンデンサレンズ103、第二コンデンサレンズ106、対物レンズ110には、コイルへの励磁電流によって焦点距離を制御する磁界レンズであり、バイパスレンズは、レンズ電極への印加電圧によって焦点距離を制御する静電レンズである。全てのレンズは、磁界レンズと静電レンズのどちらであっても、あるいはその複合であってもよい。これらの光学素子は、システム制御部114によって制御される。ユーザは、ユーザターミナル115を用いて、各光学素子の設定を確認及び変更することが可能である。
システム制御部114は、例えば、制御プログラムに従って動作するプロセッサ、制御プログラム及び設定データを格納するメモリ、電子線観察装置の光学素子を制御するためのインタフェース、及びユーザターミナル115と通信するためのインタフェースを含む。プロセッサは、ユーザターミナル115と通信して、電子線観察装置を制御するための指示及びパラメータを受信し、さらに、当該指示及びパラメータに従って電子線観察装置の光学素子を制御する。
ユーザターミナル115は、例えば、典型的な計算機構成を有する。ユーザターミナル115は、プロセッサ、メモリ、及びシステム制御部114と通信するためのインタフェースを含むと共に、ユーザが操作するための入力デバイス及び出力デバイスを含む。
以下において、本装置構成を用いた画像取得の方法を説明する。本装置は複数の観察モードを有する。本実施例では、このうちの高分解能モードと大電流モードについて説明する。高分解能モードは分解能を重視する観察を行う場合に有効であり、大電流モードより小さいビーム電流の電子線を使用する小電流モードである。大電流モードは使用する電子線のビーム電流を大きくし、高速に観察を行う場合に有効である。
図1を用いて高分解能モードにおける画像取得方法を説明する。電子源101から放出された電子線102は第一コンデンサレンズ103を通り、第一コンデンサレンズ103と絞り104の間で集束点116Aにて集束した後、絞り104を通る。電子線102が絞り104を通る際に、電子線の一部が遮断され、試料に照射される電子線105になる。この際、絞り104を通る電子線105のビーム電流は集束点116Aと絞り104との距離によって制御可能である。
これを、図3を用いて説明する。図3は、図1における電子源101から絞り104までの光学系の拡大図を示す。図3の(A)はビーム電流を小さくする場合の例を示し、図3の(B)はビーム電流を大きくする場合の例を示している。図3の(A)において、集束点116Aが絞り104から遠くにあるため、電子線102の大部分のビーム電流が絞り104によって遮断される。
これに対して図3の(B)において、集束点201Aは集束点116Aより絞り104の近くにあるため、電子線102の大部分のビーム電流が絞り104に遮断されずに通過する。このようにして電子線105のビーム電流を調整する。高分解能モードは図3の(A)に相当し、クーロン効果等のビームボケを抑制するため、集束点116Aを絞り104から遠い位置に設定することで電子線105のビーム電流を小電流にする。
例えば、ビーム電流が10pAに調整された電子線105は、絞り104を通った後、第二コンデンサレンズ106を通り、ビームセパレータ107の入口117Aで集束点116Bにて集束する。電子線105が集束した後に90度偏向されるように、システム制御部114はビームセパレータ107を制御する。電子線105はビームセパレータ107で90度偏向され、ビームセパレータ107の出入口117Bで再び集束点116Cにて集束する。
その後、電子線105はミラー108に反射されることによって球面収差と色収差が補正された後、同じ軌道を逆向きに通り、ビームセパレータ107の出入口117Bで再び集束点116Dにて集束する。その後、電子線105は再びビームセパレータ107に入る。なお、図1においては、ビームセパレータ107とミラー108の間の詳細な電子線軌道の記載は省略されている。
電子線105はビームセパレータ107を再度通ることで再び90度偏向され、ビームセパレータ107の出口117Cで再び集束点116Eにて集束する。この出口117Cでの集束点116Eは、ビームセパレータ107に入射する前の電子線105の中心軌道の延長線上に位置している。集束点116Eは、対物レンズ110の物点である。電子線105はビームセパレータ107を二度通った後、対物レンズ110を通り、試料111上で集束する。
上述のように、ビームセパレータ107は、内部磁場の影響により、入口117Aからミラー108への入射軌道と、ミラー108から出入口117Bへの反射軌道とを、入射軌道と反射軌道とにおける電子線を異なる方向へ偏向することで分離する。ビームセパレータ107内において、電子線105の軌道は、バイパスレンズ109を迂回する。バイパスレンズ109は入口117Aと出口117Cの中点を含む位置に配置されており、高分解能モードにおける電子線105が迂回しやすく、ミラー収差補正器の設計をより容易とする。
ミラー108は、球面収差と色収差とを補正する。試料111上でのビーム開き角を大きく設定されているため、回折収差も抑制される。なお、ミラー108は、球面収差と色収差の一方のみを補正してもよく、例えば、色収差のみを補正してもよい。試料111上のビーム径は観察したい試料の寸法に対して十分小さく、例えば、1nmである。試料111に照射された電子線105は、表面付近の物質と相互に作用し、試料の形状や材料に応じて二次電子や反射電子等が発生し、取得すべき信号となる。
以下、本実施例ではこれらの電子をまとめて二次電子112と呼ぶ。これら二次電子112は検出器113によって検出される。走査用の偏向器(図示せず)を用いて電子線105を試料111上で走査すると、ビーム照射位置に応じて検出信号量が変わる。これを明るさで画像化することでSEM(Scanning Electron Microscope)画像を取得する。取得したSEM画像はユーザターミナル115に映し出される。
上述のように、電子線105はビームセパレータ107をまず1度通過し、ビームセパレータ107から出射した後ミラー108で反射され、同じ軌道を逆向きに通り、再度ビームセパレータ107に入射する。すなわち、電子線105はミラー108での反射の前後でビームセパレータ107を2度通る。
電子線105がビームセパレータを1度目に通過する時のビームセパレータ107から出射する位置と、2度目に通る時のビームセパレータ107へ入射する位置は同じである。ビームセパレータ107は、内部磁場の影響により1度目と2度目とでは電子線105の軌道を異なる方向へ曲げる事によって電子線105の軌道を分離する。
ビームセパレータ107を2度通過した電子線105は試料111の方向へと出射される。ミラー収差補正器を使用することによって、試料上111上のビーム径を小さくすることができ、試料111を高分解能に計測又は検査できる。
続いて、大電流モードにおける画像取得方法について説明する。図2は本実施例の装置構成の概略と大電流モードにおける電子線軌道を示す。装置構成に関しては図1に示した構成と同一である。ここでは図1と異なる部分についてのみ詳細に説明する。
大電流モードでも上述した高分解能モードと同様に、電子源101から放出された電子線102は、第一コンデンサレンズ103を通り、集束点201Aで集束し、絞り104によってビーム電流量が調整されて電子線105となり、第二コンデンサレンズ106を通った後、集束点201Bにて集束する。
大電流モードは、高分解能モードと比べて検出器113に到達する信号量を増やすため、試料111に照射するビーム電流を大きくする。図3を参照して説明したとおり、ビーム電流を大きくするには、図3の(B)に示したように、集束点201Aを高分解能モードでの集束点116A(図3の(A))より絞り104の近くに設定することで達成できる。ビーム電流は、例えば、100pAである。
大電流に調整された電子線105は、第二コンデンサレンズ106を通った後集束点201Bにて集束し、ビームセパレータ107に入射する。大電流モードではクーロン効果を抑制することが重要である。このため、システム制御部114は、大電流モードでは高分解能モードと違い、ビームセパレータ107を動作させない。電子線105は偏向されずに、真っすぐビームセパレータ107を通る。これにより、ビームセパレータ107及びミラー108による電子線光路長の延長及び電子線の減速によるクーロン効果の影響を避ける。
入口117A、バイパスレンズ109及び出口117Cは直線上に配置されている。大電流モードでは、電子線105はビームセパレータ107による偏向作用は受けず、バイパスレンズ109に入射する。バイパスレンズ109がビームセパレータ107内に配置されているため、ビームセパレータの上流又は下流に配置される構成よりも、電子線軌道の長さを短くできる。
電子線105はバイパスレンズ109を通り、そのレンズ作用により集束点201Cにて集束し、対物レンズ110を通った後、試料111上で集束する。集束点201Cは対物レンズ110の物点である。電子線105が試料111に照射されてからSEM画像取得までの動作は高分解能モードと同様である。
高分解能モードと大電流モードにおける対物レンズ110の光学条件を同じにするため、それぞれの物点、つまり、集束点116Eと集束点201Cを同じ位置に設定する。大電流モードでは球面収差と色収差が補正されないため、試料111上での電子線105のビーム径を小さくするには、それらの収差が抑制されるように試料111上でのビーム開き角を小さくすることが好ましい。
大電流モードにおけるバイパスレンズ109の効果、すなわちバイパスレンズ109を使用した試料111上での電子線105のビーム開き角の制御方法を、図4を用いて説明する。図4は、絞り104から試料111までの光学系を拡大した図を示す。
図4の(A)は、バイパスレンズ109を搭載していない場合を示す。図4の(B)は、バイパスレンズ109が搭載されており、かつ試料111上でのビーム開き角が小さい場合を示す。図4の(C)は、バイパスレンズ109が搭載されており、かつ試料111上でのビーム開き角が大きい場合を示す。試料111上でのビーム開き角は、θで示されている。
図4の(A)において、電子線105は第二コンデンサレンズ106により集束点201Cで集束し、対物レンズ110を通り試料111上で集束する。試料111上でのビーム開き角θは一意に決まり制御できない。この問題を解決するため、バイパスレンズ109を導入する。図4の(B)及び(C)を参照して、バイパスレンズ109による試料111上でのビーム開き角の制御を説明する。
図4の(B)及び(C)の光学系は同じ構成であり、いずれも電子線105が第二コンデンサレンズ106によりバイパスレンズ109の手前で集束する。これらの集束点は、図4の(B)では集束点201Bと示し、図4の(C)では集束点201Dと示した。その後電子線105は、バイパスレンズ109によって集束点201Cで集束し、対物レンズ110により試料111上で集束する。
図4の(B)における集束点201Bは、図4の(C)における集束点201Dと比較して、バイパスレンズ109に対して近い位置にある。この結果、試料111上でのビーム開き角θを小さくすることができる。
このように、第二コンデンサレンズ106によって第二コンデンサレンズ106とバイパスレンズ109との間の集束点の位置を制御すれば、対物レンズ110の光学条件を変えずに、試料111上でのビーム開き角θを制御できる。バイパスレンズ109を使用してビーム開き角θを小さくすることで、大電流モードでの分解能を、バイパスレンズ109を含まない構成よりも、高めることができる。例えば、バイパスレンズ109は、大電流モードでの分解能の値を、4nmから3nmに減少させることができる。
なお、本実施例は、高分解能モードにおいてはバイパスレンズ109をオフ状態に設定し、大電流モードにおいてはミラー108をオフ状態に設定する。電子線105の軌道に影響を及ぼさない場合、これらをオン状態に設定してもよく、本願の思想の範囲内であれば必ずしも大電流モードのときにオフにする必要はない。これらの制御は、観察モードの切り替えの際にシステム制御部114によって行われる。
また、上記構成は、対物レンズ光学条件として、対物レンズ110の光学条件を例示している。対物レンズ光学条件は、上記例に限らない。荷電粒子線の加速を制御するリターディング電圧やブースティング電圧も、対物レンズ光学条件の例として挙げられる。これらを変化させることで、集束点の位置を変えることができるからである。すなわち、対物レンズ光学条件は、ビームセパレータよりも下流の光学素子の駆動電圧又は電流であるとも言い換えることができる。
また、「対物レンズ光学条件が変わらない」とは、ミラーを経由する軌道とバイパス光学系を通過する軌道とにおける対物レンズの物点が一致する、又は取得画像の倍率が一致するとも言える。このとき「変わらない」や「一致する」という表現は、本願の解決しようとする課題の範囲内に収まるように一定の範囲内にて一致すればよく、厳格に一致すると解釈する必要はない。
本実施例は、ビーム電流量を変えるために第一コンデンサレンズ103と第二コンデンサレンズ106の光学条件を変え、絞り104を通る電子線105のビーム電流を調整する。これと異なり、上記光学条件を変えずに、例えば、絞り104の光軸上の位置又は開口径を変えることによってビーム電流を調整してもよい。また、本実施例において、集束点201Aは絞り104より上流に位置するが、絞り104より下流にあっても、本実施例に示した方法と同じ方法でビーム電流を調整可能である。
また、上記高分解能モードの例において、図1のように、電子線105がビームセパレータ107の入口117A、出入口117B、出口117Cのみで集束する。システム制御部114は、電子線105がビームセパレータ107内でも集束するように光学素子を制御してもよい。ビームセパレータ107内の電子線105の軌道や結像点の位置は、バイパスレンズ109の構成や効果に影響しない。
本実施例におけるビームセパレータ107とバイパスレンズ109の構成を、図5A及び図5Bを用いて説明する。図5Aは、ビームセパレータ107を、図2の紙面手前側から見た正面図を示す。図5Bは、図5Aの正面図のBB切断線での断面図を示す。
本実施例におけるビームセパレータ107は、平行に配置された対向する二枚の磁性体平板300A、300Bを含む。図5Aに示すように、ビームセパレータ107は開口301を有する。開口301内には、三枚の非磁性の電極302、303、及び304が配置されている。図5Bの断面図に示すように、電極302、303、304は、電子線105が通る同心円状の開口を有している。
電極302、303、304の間には絶縁体が挿入されている、又はそれらの間は真空である。本実施例において、バイパスレンズ109はアインツェルレンズであり、外側の電極302と電極304は接地され、中心の電極303には電圧源306からレンズ電圧が印加されている。
電極302と電極304をビームセパレータ107に直接取り付けて磁性体平板300A、300Bと導通を取り、ビームセパレータ107を接地しても、同じ効果が得られる。なお、電子線を加速するために鏡筒を接地せず電圧を印加する場合には、電極302と電極304も、同様に接地せずに電圧を印加する。
磁性体平板300A及び300Bのそれぞれの内側には、溝307A及び307Bが形成されている。磁性体平板300A及び300Bの対向面に形成された溝307A及び300Bは、それぞれ、一つのループ状の溝である。溝307A及び307Bには、それぞれ、電子線105を90度偏向する磁界を発生するためのコイル305A及び305Bが埋め込まれている。コイル305A及び305Bは、それぞれ、一つのループ状のコイルである。
システム制御部114は、コイル305A、305Bに、高分解能モードでのみ励磁電流を流し、ビームセパレータ107をオンにする。ビームセパレータ107のオン・オフ切替を行う場合、コイル305A、305Bの励磁電流を切替時に変化させて、その後、元の値に戻してもビームセパレータ107が発生する磁界が再現しないこともある。
これは、ビームセパレータ107の磁性材に生じる磁気履歴の影響による。磁気履歴の影響を抑制するための光学素子の制御をデガウスと呼ぶ。デガウスは、例えば、ビームセパレータ107のオン・オフの切替の際に、コイル305A、305Bに逆符号の励磁電流を流した後、所望の励磁電流に設定する。
なお、図5A、図5Bは、一対の溝307A、307Bと、一対のコイル305A、305Bを有するビームセパレータ107の構成例を示すが、溝とコイルの数、具体的な位置は、装置に要求される仕様に依存する。
次に、ミラー108による収差補正を説明する。図6は、ミラー108の詳細構成を示す。ミラー108は4枚の電極402〜405を含む。電極402は接地されており、それ以外の電極403〜405には電圧を印加するための電圧源406〜408がそれぞれ接続されている。電子線401は、ミラー108に照射された後、4枚の電極402〜405により発生した電界によって、概垂直に反射される。
電子線401の反射は、電圧源408により電極405に印加する電圧の絶対値が加速電圧の以上の負電位であるときに実施される。例えば、加速電圧が3kVである場合、電圧源408は、電極405に−3.2kVを印加する。電極402は接地される。システム制御部114は、残り三枚の電極403〜405に印加する電圧により、球面収差と色収差の補正及びミラー108の焦点距離の制御を行う。
これにより、高分解能モードにおいて球面収差と色収差を補正し、試料111上でのビーム径を十分小さくすることができる。なお、電子線を加速するために鏡筒が接地されておらず電圧を印加する場合には、電極402は接地されずに同様の電圧が印加される。
次に、本実施例でのモード設定及び試料観察手順の例を説明する。図7は、モード設定及び試料観察のフローチャートを示す。図8A及び図8Bは、モード設定画像の例を示す。具体的には、図8Aは高分解能モードを選択した場合の設定画像の例を示し、図8Bは大電流モードを選択した場合の設定画像の例を示す。ユーザターミナル115は、表示デバイスにおいて設定画像を表示し、また、入力デバイスを介するユーザからの入力を受け付ける。
ユーザはユーザターミナル115を介して試料観察を開始する(S501)。試料観察開始の指示を受けたユーザターミナル115は、表示デバイスの画面において、モード設定画像を表示する。ユーザが、保存されている制御パラメータを参照する場合、ユーザターミナル115は、システム制御部114から、プリセットデータを読み出す(S502)。
具体的には、ユーザは、図8A及び図8Bに示す設定画像における設定ファイル選択枠601において、保存されている制御パラメータ指定する。ユーザターミナル115は、システム制御部114に、指定されたデータの送信を指示する。システム制御部114は、指示されたデータをユーザターミナル115に送信する。ユーザターミナル115は、受信したデータを設定画像において表示する。
次に、ユーザは、設定画像内のモード選択枠602において、高分解能モードと大電流モードのモード選択を行う(S503)。ユーザターミナル115は、ユーザによるモード選択入力を受信すると、システム制御部114に選択されたモードを通知する。
モードが選択されると、システム制御部114は、両方の観察のモードで共用されない光学素子において、選択されたモードにおいて必要な光学素子をオンにし、不要な光学素子をオフにする。具体的には、高分解能モードが選択された場合(S503:高分解能)、システム制御部114は、ビームセパレータ107をオンにし(S504A)、バイパスレンズ109をオフにし(S505A)、ミラー108をオンにする(S506A)。
大電流モードを選択された場合は(S503:大電流)、システム制御部114は、ビームセパレータ107をオフにし(S504B)、バイパスレンズ109をオンにし(S505B)、ミラー108をオフにする(S506B)。ステップ504Aと504Bのいずれでも磁気履歴の影響がある場合、システム制御部114は、ビームセパレータ107のコイル305A〜305Dに電流を励磁する前に、上述のデガウスを行う。
観察のモードを選択した後、ユーザは、その観察のモードに応じた光学条件の設定を制御パラメータ枠603に入力する(S507A、S507B)。例えば、図3を参照して説明した電子線105のビーム電流の調整は、制御パラメータ枠603の「コンデンサレンズ1」と「コンデンサレンズ2」の数値を設定することで行われる。
光学条件が入力されると、ユーザターミナル115は、当該数値をシステム制御部114に送信する。システム制御部114は、ビーム電流を測定し、その測定値をユーザターミナル115に送信する。ユーザターミナル115は、受信した数値を、モード設定画像内のビーム電流枠605において表示する。
図8Aに示すように高分解能モードが選択されている場合、ユーザターミナル115は、設定画像において、バイパスレンズ109等の使用しない光学素子の設定欄へのユーザによる記入を禁止する。同様に、図8Bに示すように大電流モードを選択が選択されている場合、ユーザターミナル115は、設定画像において、ミラー108やビームセパレータ107等の使用しない光学素子の設定欄へのユーザによる記入を禁止する。なお、ステップS504〜S507は順不同である。
ユーザは、光学条件決定後のパラメータ値を、保存枠604を使用して必要に応じて保存する(S508)。保存ボタンが選択されると、ユーザターミナル115は、システム制御部114に、パラメータ値と共に保存指示を送信する。システム制御部114は、保存を指定されたパラメータ値を内部メモリに保存する。
パラメータ値を保存した後、ユーザターミナル115を介したユーザからの指示に従って、システム制御部114は、光軸調整を行い(S509)、さらに、試料観察を行う(S510)。光軸調整及び試料観察の画像は省略した。なお、モード設定画像は、図8A、8Bに示した例に限定されることなく、色々な変形を取りうることは言うまでもない。
以上のように、本実施例によれば、ミラー収差補正器を搭載した電子線観察装置において、高分解能モードによる高分解能で高感度な観察と大電流モードによる高効率な観察を実現できる。さらに、高分解能モードと大電流モードの切替を、対物レンズ光学条件を変えずに実現することができる。
実施例1は、高分解能モードにおいて電子線105がビームセパレータ107の入口117Aと出口117Cで集束する場合について説明した。しかし、電子線105がビームセパレータの入口117Aと出口117Cとで集束しなくても、入口117Aを出口117Cに写像する対称面の上で電子線105が集束すると、ビームセパレータ107内で発生する収差を抑制できる。
そこで、本実施例は、高分解能モードでは電子線105がビームセパレータ107の入口117Aと出口117Cで集束せず、上記対称面で電子線105が集束する構成について説明する。すなわち、電子線105がビームセパレータ107に入射する時に平行ビームあるいは集束ビームとなっている場合について説明する。
本実施例における装置構成は、図1又は図2に示す実施例1の装置構成と同様であり、また電子線105のビーム電流の調整方法や観察を実施する手順に関しても、実施例1と同様であるため、説明を割愛する。ここでは、絞り104を通過して試料111に照射されるまでの電子線105の軌道に関して記述する。
図9は、本実施例の高分解能モードと大電流モードにおける電子線の軌道を示す。図9の(A)は、高分解能モードにおいて、電子線105が平行ビームとしてビームセパレータ107の入口117Aに入射する場合の軌道を示す。図9の(B)は、図9の(A)に対応する大電流モードでの電子線105の軌道を示す。電子線105がビームセパレータ107の入口117Aと出口117Cでは平行ビームであることが、実施例1との違いである。
図9の(A)に示すように、高分解能モードでは、第二コンデンサレンズ106を通った電子線105は平行ビームとなってビームセパレータ107の入口117Aに入射し、ビームセパレータ107内で90度偏向され、出入口117Bからミラー108の方に出射する。電子線105は、ビームセパレータ107内で45度偏向された時点で、集束点701Bに集束する。
電子線105は、ビームセパレータ107の出入口117Bを通過した後、ミラー108で反射され、同じ軌道を逆向きに通り、ビームセパレータ107に出入口117Bから再度入射する。なお、図9におけるビームセパレータ107とミラー108との間において、電子線105の詳細な軌道の記載を省略した。
電子線105はビームセパレータ107によって再度90度偏向される。この時、1度目の偏向で集束点701Bが形成された時と同様に、電子線105が45度偏向された時点で集束点701Cに集束する。ビームセパレータ107を二度通った電子線105は、平行ビームとなってビームセパレータ107の出口117Cから出射し、対物レンズ110を通って試料111上で集束する。その後の画像取得方法は実施例1と同様である。
次に、図9の(B)を参照して大電流モードにおける軌道を説明する。高分解能モードにおける対物レンズ110の光学条件を変えずに、モード切替を行うため、システム制御部114は、バイパスレンズ109を通った電子線105が平行ビームとなるように、バイパスレンズ109を制御する。これにより、電子線105は平行ビームとなった状態で対物レンズ110を通り、試料111上で集束する。その後の画像取得方法は実施例1と同様である。
また、実施例1と同様に、大電流モードでは球面収差と色収差が補正されないため、試料111上での電子線105のビーム径を小さくするには、それら収差が抑制されるように試料111上でのビーム開き角を小さくすることが好ましい。大電流モードにおけるバイパスレンズ109の効果、すなわちバイパスレンズ109を使用した試料111上での電子線105のビーム開き角の制御方法は図4を参照して説明した方法を適用すればよい。
第二コンデンサレンズ106によって第二コンデンサレンズ106とバイパスレンズ109の間の集束点701Eの位置を制御すれば、対物レンズ110の光学条件を変えずに試料111上でのビーム開き角を制御することが可能である。
以上のように、電子線105がビームセパレータ107の入口117Aで平行ビームとなる場合の高分解能モードと大電流モードのモード切替を、対物レンズ110の光学条件を変えずに実現できる。なお、平行ビームが対物レンズ110に入射する場合、対物レンズ110の物点は無限遠と見なすことができる。
次に、図9の(C)及び(D)を参照して、電子線105がビームセパレータ107の入口117Aで集束ビームとなる場合、すなわち集束しながらビームセパレータ107の入口117Aに入射する場合について説明する。この場合、電子線105はビームセパレータ107の出口117Cでは発散ビーム、すなわち発散しながらビームセパレータ107の出口117Cから出射するビームとなる。
図9の(C)は、高分解能モードにおいて電子線105が集束ビームとしてビームセパレータ107の入口117Aに入射する場合の軌道を示す。図9の(D)は、図9の(C)に対応する大電流モードでの電子線105の軌道を示す。図9の(C)に示すように、高分解能モードでは、第二コンデンサレンズ106を通った電子線105は集束ビームの状態でビームセパレータ107に入射し、ビームセパレータ107内で90度偏向されて、出入口117Bから出射する。
電子線105はビームセパレータ107内で45度偏向された時点で集束点701Gに集束する。電子線105はビームセパレータ107の出入口117Bを通過した後、ミラー108で反射され、同じ軌道を逆向きに通り、ビームセパレータ107に出入口117Bから再度入射する。なお、ビームセパレータ107とミラー108の間において、電子線105の詳細な軌道の記載を省略した。
電子線105は、ビームセパレータ107によって再度90度偏向される。この時、1度目の偏向で集束点701Gが形成された時と同様に、電子線105は45度偏向された時点で集束点701Hに集束する。ビームセパレータ107を二度通った電子線105は、発散ビームの状態でビームセパレータ107から出射し、対物レンズ110を通って試料111上で集束する。
発散ビームの軌道を外挿し、軌道が集まる点を仮想集束点701Iとする。対物レンズ110の物点は、仮想集束点701Iであるかのように見える。その後の画像取得方法は実施例1と同様である。
次に、図9の(D)を参照して大電流モードにおける軌道を説明する。高分解能モードでの対物レンズ110の光学条件を変えずにモード切替を行うため、システム制御部114は、バイパスレンズ109を通った電子線105が発散ビームとなるようにバイパスレンズ109を制御する。バイパスレンズ109を通った電子線105は発散ビームであり、対物レンズ110を通った後に試料111上で集束する。その後の画像取得方法は実施例1と同様である。
対物レンズ110の光学条件を変えずに高分解能モードと大電流モードの切替を行う方法を、図9の(D)を参照して説明する。電子線105は第二コンデンサレンズ106により仮想集束点701Iとバイパスレンズ109の間にある集束点701Kに集束する。集束点701K付近での電子線軌道を図9の(D)内の拡大図(E)に示す。バイパスレンズ109を通った発散ビームの軌道を外挿し、集束点701Kの上流で軌道が集まる点を仮想集束点701Lとする。
対物レンズ110の物点は、仮想集束点701Lであるかのように見える。高分解能モードと大電流モードの物点を一致させる、つまり、仮想集束点701Lを図9の(C)の高分解能モードでの仮想集束点701Iと同じ位置に設定するようにバイパスレンズ109を制御することによって、対物レンズ110の光学条件を変えずに高分解能モードと大電流モードの切替が実現できる。
大電流モードでの試料111上での電子線105のビーム開き角を小さくする方法は、電子線105がビームセパレータ107の入口117Aで平行ビームとなる場合と同様である。なお、本実施例において、仮想集束点701Iはバイパスレンズ109の上流であるが、下流にあっても本実施例に示した方法と同じ方法でモード切替が可能である。
図9の(C)〜(E)を参照した以上の説明から、電子線105がビームセパレータ107の入口117Aで集束ビームとなる場合の高分解能モードと大電流モードのモード切替を、対物レンズ110の光学条件を変えずに実現できる。
本実施例により、ビームセパレータ107の上流と下流に電子線105の集束点を設定しなくても、対物レンズの光学条件を変えずに、収差補正器を搭載した電子線観察装置における高分解能モードと大電流モードの切替を実現できる。
実施例1は、高分解能モードと大電流モードの切替を行う際に、対物レンズ110の光学条件のみを維持し、それ以外のレンズ、すなわち第一コンデンサレンズ103、第二コンデンサレンズ106の光学条件を変える。これに対し、本実施例では、モード切替の際に、バイパスレンズ109以外の全てのレンズ、すなわち第一コンデンサレンズ103、第二コンデンサレンズ106及び対物レンズ110の光学条件を維持し、バイパスレンズ109の光学条件のみを変化させる構成について説明する。
これにより、例えば、高分解能モードでのミラー収差補正器以外の電子線105の光軸調整を、ビームセパレータ107がオフの条件で実施できる。このモードを無補正モードと呼ぶ。
本実施例における装置構成は、図1又は図2に示す実施例1の装置構成と同様であり、また電子線105のビーム電流の調整方法や観察を実施する手順に関しても実施例1と同様であるため、説明を割愛する。また、本実施例における高分解能モードの電子線105の軌道は図1で示したものと同じであるため、ここでは説明を省略し、無補正モードの電子線105の軌道について詳細に示す。
図10は、本実施例の無補正モードにおける、絞り104から試料111までの電子線105の軌道を示す。高分解能モードにおいて、図1に示すように、ビームセパレータ107の入口117Aに集束点116B、出口117Cに集束点116Eが形成される。このためバイパスレンズ109以外の全レンズの光学条件を変えずに観察モードを無補正モードに切替えるためには、電子線観察装置は、バイパスレンズ109を使って集束点116Bを集束点116Eに投影すればよい。
すなわち、図10に示すように、無補正モードでは、バイパスレンズ109はビームセパレータ107の入口117Aでの電子線105の集束点を、出口117Cに投影する。特に本実施例において、図10に示すように、ビームセパレータ107は、バイパスレンズ109に対して上半分と下半分が対称な構造を有する。この場合、バイパスレンズ109から集束点116Bまでの距離とバイパスレンズ109から集束点116Eまでの距離とが等しいことから、集束点116Bは集束点116Eに等倍で投影される。
バイパスレンズ109が集束点116Bを集束点116Eに等倍で投影するため、モード切替の時に試料111上での電子線105の開き角は変わらないというメリットがある。
図10を用いて本実施例の無補正モードにおける電子線軌道を説明する。電子線105は絞り104を通った後、第二コンデンサレンズ106を通り、ビームセパレータ107の入口117Aで集束点801Bにて集束する。システム制御部114は、集束点801Bを、高分解能モードでのビームセパレータ107の入口117Aでの集束点116Bと同じ位置に設定する。
ビームセパレータ107に入射した電子線105は、バイパスレンズ109を通り、ビームセパレータ107の出口117Cで集束点801Cにて集束する。システム制御部114は、集束点801Cが、高分解能モード時のビームセパレータ107の出口117Cでの集束点116Eと同じ位置となるように、バイパスレンズ109を制御する。この時、バイパスレンズ109の倍率は等倍になる。ビームセパレータ107の出口117Cから出射した電子線105は、対物レンズ110を通り、試料111上で集束する。その後の画像取得方法は実施例1と同様であるため、説明を割愛する。
本実施例により、ミラー収差補正器を搭載した電子線観察装置において、高分解能モードと無補正モードの切替を、バイパスレンズ109以外の全レンズの光学条件を変えずに実現できる。
実施例1〜3では試料表面の情報を取得することを主眼においている。電子線105の加速電圧は、例えば、3kV程度である。一方、加速電圧が高いと試料111の内面の情報が観察できる。そこで、本実施例では加速電圧が高い場合の高加速モードに関して説明する。
高加速モードにおいて、システム制御部114は、ミラー収差補正器を動作させない。この理由について説明する。一例として、図1に示した装置構成において、加速電圧が30kVである場合を想定する。ビームセパレータ107で電子線105を偏向するためには、コイル305に流す励磁電流は、加速電圧が3kVの例と比べて、3.2倍にする必要がある。更に、ミラー108の電極405に必要な電圧は30kV以上にする必要がある。
実装上、3kV用に設計された装置で上記条件を実現することは難しく、光学素子のサイズを大きくしなければならない。また、加速電圧が高い場合回折収差が小さくなるため、試料111上における電子線105の開き角を小さくすることができる。そのため、電子線105の試料111上でのスポット径は球面収差及び色収差の影響を受けず、収差補正器による収差補正は必要としない。
以上の二点から、加速電圧が高い場合には、ミラー収差補正器を作動させないことが好ましい。本実施例における高加速モードは、電子線105が高加速であり、ミラー収差補正器を作動させない。
本実施例における装置構成は、図1又は図2に示す実施例1の装置構成と同様であり、また電子線105のビーム電流の調整方法や観察を実施する手順に関しても実施例1と同様であるため、説明を割愛する。高加速モードにおいて、システム制御部114は、電子源101において、30kV程度の電圧(加速電圧)を印加する。
本実施例の電子線観察装置において、図2及び図9の大電流モード、図10の無補正モードのいずれの電子線軌道も実現可能である。システム制御部114は、それらの軌道を形成するように光学素子を制御する。また、試料111に電子線105を照射した後の画像取得方法は実施例1と同様であるため説明を割愛する。
本実施例により、ミラー収差補正器を搭載した電子線観察装置における高分解能モードと高加速モードとを実現することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成・機能・処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。

Claims (12)

  1. 荷電粒子線源から発生した荷電粒子線を試料に照射する、荷電粒子線応用装置であって、
    荷電粒子線源と、
    前記荷電粒子線源よりも下流に配置された、収差補正器と、
    前記収差補正器よりも下流に配置された、対物レンズと、
    前記収差補正器を制御する、制御部と、を含み、
    前記収差補正器は、
    前記荷電粒子線源からの荷電粒子線の収差を補正する、ミラーと、
    前記荷電粒子線源からの荷電粒子線が入射する入口と、前記荷電粒子線が前記対物レンズに向けて出射する出口とを含み、オン状態において前記荷電粒子線を偏向することで、前記入口から前記ミラーへの入射軌道と前記ミラーから前記出口への反射軌道とを分離する、ビームセパレータと、
    前記ビームセパレータ内において、前記ビームセパレータがオン状態のときに前記荷電粒子線の軌道が迂回し、前記ビームセパレータがオフ状態のときに前記荷電粒子線の軌道が通過する位置に配置された、バイパス光学系と、を含み、
    前記バイパス光学系は、前記ミラーを経由する軌道と前記バイパス光学系を通過する軌道とにおける対物レンズ光学条件が一致するように前記荷電粒子線を制御する、荷電粒子線応用装置。
  2. 請求項1に記載の荷電粒子線応用装置であって、
    前記バイパス光学系は、上流側に形成された前記荷電粒子線の集束点を下流側に投影し、
    前記投影される集束点と前記反射軌道における集束点とが一致する、荷電粒子線応用装置。
  3. 請求項2に記載の荷電粒子線応用装置であって、
    前記バイパス光学系が前記集束点を前記ビームセパレータの下流に投影する倍率が等倍である、荷電粒子線応用装置。
  4. 請求項1に記載の荷電粒子線応用装置であって、
    前記バイパス光学系は、前記入口と前記出口の中点を含む位置に配置されている、荷電粒子線応用装置。
  5. 請求項1に記載の荷電粒子線応用装置であって、
    前記荷電粒子線の大電流モードと小電流モードとを有し、
    前記制御部は、前記小電流モードにおいて前記ビームセパレータ及び前記ミラーをオン状態に設定し、前記大電流モードにおいて前記ビームセパレータをオフ状態に、前記バイパス光学系をオン状態に設定する、荷電粒子線応用装置。
  6. 請求項1に記載の荷電粒子線応用装置であって、
    前記荷電粒子線の高加速度モードと低加速度モードとを有し、
    前記制御部は、前記低加速度モードにおいて前記ビームセパレータ及び前記ミラーをオン状態に設定し、前記高加速度モードにおいて前記ビームセパレータをオフ状態に、前記バイパス光学系をオン状態に設定する、荷電粒子線応用装置。
  7. 請求項1に記載の荷電粒子線応用装置であって、
    第一モードと第二モードとを有し、
    前記制御部は、
    前記第一モードにおいて、前記ビームセパレータ及び前記ミラーをオン状態に、前記バイパス光学系をオフ状態に設定し、
    前記第二モードにおいて、前記ビームセパレータ及び前記ミラーをオフ状態に、前記バイパス光学系をオン状態に設定する、荷電粒子線応用装置。
  8. 請求項7に記載の荷電粒子線応用装置であって、
    前記収差補正器の上流側にレンズをさらに含み、
    前記制御部は、
    前記第二モードにおいて、前記試料上の開き角が前記第一モードにおける開き角よりも小さくなるように、前記レンズ及び前記バイパス光学系を制御する、荷電粒子線応用装置。
  9. 請求項7に記載の荷電粒子線応用装置であって、
    前記対物レンズ光学条件が一致することは、前記ミラーを経由する軌道と前記バイパス光学系を通過する軌道とにおける前記対物レンズの物点が一致する、又は取得画像の倍率が一致することである、荷電粒子線応用装置。
  10. 請求項1に記載の荷電粒子線応用装置であって、
    前記対物レンズ光学条件は、ビームセパレータよりも下流の光学素子の駆動電圧又は電流である、荷電粒子線応用装置。
  11. 請求項10に記載の荷電粒子線応用装置であって、
    前記対物レンズ光学条件は、リターディング電圧、ブースティング電圧、又は対物レンズの励磁電流のいずれか1つ以上である、荷電粒子線応用装置。
  12. 荷電粒子線源から発生した荷電粒子線を試料に照射する荷電粒子線応用装置で使用される収差補正器であって、
    荷電粒子線源からの荷電粒子線の収差を補正する、ミラーと、
    前記荷電粒子線源からの荷電粒子線が入射する入口と、前記荷電粒子線が対物レンズに向かって出射する出口とを含み、オン状態において前記荷電粒子線を偏向することで、前記入口から前記ミラーへの入射軌道と前記ミラーから前記出口への反射軌道とを分離する、ビームセパレータと、
    前記ビームセパレータ内において、前記ビームセパレータがオン状態のときに前記荷電粒子線の軌道が迂回し、前記ビームセパレータがオフ状態のときに前記荷電粒子線の軌道が通過する位置に配置された、バイパス光学系と、を含み、
    前記バイパス光学系は、前記ミラーを経由する軌道と前記バイパス光学系を通過する軌道とにおける対物レンズ光学条件が一致するように前記荷電粒子線を制御する、収差補正器。
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