発明の詳細な説明
I.定義
本明細書中で使用されるとき、用語「処置する」は、処置されている疾患、状態または障害に関連する1つまたはそれを超える症候または副作用を阻害すること、緩和すること、予防することまたは排除することを含む。
用語「減少させる」、「阻害する」、「緩和する」または「低下する」は、コントロールに対して使用される。当業者は、各実験に対して使用する適切なコントロールを容易に同定するだろう。例えば、ある化合物で処置された被験体または細胞における応答の低下は、その化合物で処置されていない被験体または細胞における応答と比較される。
本明細書中で使用されるとき、用語「有効量」または「治療有効量」は、処置されている疾患状況の1つまたはそれを超える症候を処置するか、阻害するかもしくは緩和するのに十分な投与量、または他の方法で所望の薬理学的および/もしくは生理学的効果をもたらすのに十分な投与量を意味する。正確な投与量は、種々の因子、例えば、被験体に依存する変数(例えば、年齢、免疫系の健康状態など)、疾患または障害、および施される処置に従って変動する。有効量の効果は、コントロールと比較したものであってよい。そのようなコントロールは、当該分野で公知であり、本明細書中に論じられ、例えば、その薬物もしくは薬物併用の投与前またはその投与の非存在下の被験体の状態であり得るか、あるいは薬物併用の場合は、その併用の効果は、それらの薬物のうちの1つだけの投与の効果と比較され得る。
本明細書中で使用されるとき、用語「併用療法」とは、疾患もしくはその症候の処置、または所望の生理学的変化を達成するための方法(疾患もしくはその症候を処置するため、またはその生理学的変化をもたらすために、有効量の2つまたはそれを超える化学的作用物質または化学的成分を投与することを含む)のことを指し、ここで、その化学的作用物質または化学的成分は、例えば、同じ組成物の一部として、共に投与されるか、または別々に独立して、同時にもしくは別の時点において投与される(すなわち、各作用物質または成分の投与は、互いと有限の期間だけ離れている)。
本明細書中で使用されるとき、用語「投与レジメン」とは、製剤、投与経路、薬物用量、投与間隔および処置期間に関する薬物投与のことを指す。
本明細書中で使用されるとき、用語「ポリペプチド」は、タンパク質およびそのフラグメントを含む。ポリペプチドは、アミノ酸残基配列として本明細書中に開示される。それらの配列は、左から右に向かって、アミノ末端からカルボキシ末端の方向で記載される。標準的な命名法に従って、アミノ酸残基配列は、以下のとおり示されるような3文字コードまたは1文字コードのいずれかによって命名される:アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)およびバリン(Val、V)。
本明細書中で使用されるとき、用語「バリアント」とは、参照ポリペプチドまたは参照ポリヌクレオチドと異なるが本質的な特徴を保持している、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドのことを指す。ポリペプチドの代表的なバリアントは、別の参照ポリペプチドとアミノ酸配列が異なる。一般に、差は限られており、参照ポリペプチドの配列とバリアントの配列とは、全体的によく似ており、多くの領域において同一である。バリアントと参照ポリペプチドとは、1つまたはそれを超える改変(例えば、置換、付加および/または欠失)によって、アミノ酸配列が異なり得る。置換されたまたは挿入されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされるものであってもよいし、そうでなくてもよい。ポリペプチドのバリアントは、対立遺伝子バリアントなどの天然に存在するものであってよいか、または天然に存在すると知られてないバリアントであってよい。
改変および変更は、本開示のポリペプチドの構造において行うことができ、そのポリペプチドと同様の特性を有する分子をなおももたらす(例えば、保存的アミノ酸置換)。例えば、ある特定のアミノ酸は、かなりの活性喪失を伴わずに、ある配列において、他のアミノ酸の代わりに用いることができる。ポリペプチドの相互作用能および性質こそが、そのポリペプチドの生物学的機能活性を定義するので、ある特定のアミノ酸配列の置換を、あるポリペプチド配列において行うことができるが、それにもかかわらず、同様の特徴を有するポリペプチドがもたらされる。
そのような変更を行う際、アミノ酸の疎水性親水性指標(hydropathic index)が考慮され得る。相互作用的生物学的機能をポリペプチドに付与する際のアミノ酸の疎水性親水性指標の重要性は、当該分野において広く理解されている。ある特定のアミノ酸は、類似の疎水性親水性指標または疎水性親水性スコアを有する他のアミノ酸の代わりに用いることができ、なおも類似の生物学的活性を有するポリペプチドがもたらされることが知られている。各アミノ酸には、その疎水性および電荷の特性に基づいて疎水性親水性指標が割り当てられている。それらの指標は、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)である。
アミノ酸の相対的な疎水性親水性の性質は、生じるポリペプチドの二次構造を決定し、そしてそれがそのポリペプチドと他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、抗体および抗原)との相互作用を定義すると考えられている。あるアミノ酸は、類似の疎水性親水性指標を有する別のアミノ酸によって置換され、なおも機能的に等価なポリペプチドをもたらし得ることが当該分野で公知である。そのような変更において、疎水性親水性指標が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のアミノ酸の置換が特に好ましく、±0.5以内のアミノ酸の置換がなおもより特に好ましい。
類似のアミノ酸の置換は、親水性に基づいても行うことができる。以下の親水性値が、アミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(glutamnine)(+0.2);グリシン(0);プロリン(−0.5±1);トレオニン(−0.4);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。あるアミノ酸は、類似の親水性値を有する別のアミノ酸の代わりに用いることができ、なおも生物学的に等価なポリペプチド、特に、免疫学的に等価なポリペプチドをもたらし得ると理解される。そのような変更において、親水性値が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のアミノ酸の置換が特に好ましく、±0.5以内のアミノ酸の置換がなおもより特に好ましい。
上で概要を述べたように、アミノ酸の置換は、一般に、アミノ酸側鎖の置換基、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、およびサイズなどの相対的な類似性に基づく。前述の様々な特性を考慮した例示的な置換は、当業者に周知であり、それらとしては、以下が挙げられる(元の残基:例示的な置換):(Ala:Gly、Ser)、(Arg:Lys)、(Asn:Gln、His)、(Asp:Glu、Cys、Ser)、(Gln:Asn)、(Glu:Asp)、(Gly:Ala)、(His:Asn、Gln)、(Ile:Leu、Val)、(Leu:Ile、Val)、(Lys:Arg)、(Met:Leu、Tyr)、(Ser:Thr)、(Thr:Ser)、(Tip:Tyr)、(Tyr:Trp、Phe)および(Val:Ile、Leu)。特に、上記ポリペプチドの実施形態は、目的のポリペプチドと約50%、60%、70%、80%、90%および95%の配列同一性を有するバリアントを含み得る。
「同一性」は、当該分野で公知であるように、配列を比較することによって決定される、2つまたはそれを超えるポリペプチド配列間の関係性である。当該分野において、「同一性」は、そのような配列の一続きの部分の間の一致によって決定される、ポリペプチド間の配列の関連性の程度のことも意味する。「同一性」は、参照ポリペプチドの完全長と比較してのポリペプチドの配列の関連性の程度のことも意味し得る。「同一性」および「類似性」は、公知の方法によって容易に算出することができ、その方法としては、(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,Ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,Ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,Eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;およびSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,Eds.,M Stockton Press,New York,1991;およびCarillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J Applied Math.,48:1073(1988)に記載されている方法が挙げられるが、これらに限定されない。
同一性を決定する好ましい方法は、試験される配列間の最も大きな一致が得られるようにデザインされる。同一性および類似性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにおいて体系化されている。2つの配列間の同一性パーセントは、NeedelmanおよびWunsch(J.Mol.Biol.,48:443−453,1970)アルゴリズム(例えば、NBLASTおよびXBLAST)を組み込んでいる解析ソフトウェア(すなわち、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group,Madison Wis.)を用いることによって決定され得る。デフォルトのパラメータを用いることにより、本開示のポリペプチドに対する同一性が決定される。
例として、あるポリペプチド配列は、参照配列と同一、すなわち、100%同一であり得るか、または参照配列と比べて、ある特定の整数までのアミノ酸の変更を含み得、%同一性は、100%未満である。そのような変更は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的置換および非保存的置換を含む)または挿入から選択され、ここで、前記変更は、参照ポリペプチド配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端の位置、またはそれらの末端の位置の間の任意の箇所において生じ得、その任意の箇所は、参照配列におけるアミノ酸の間に個別に点在するか、または参照配列内の1つもしくはそれを超える連続した群に点在する。所与の%同一性に対するアミノ酸の変更の数は、参照ポリペプチドにおけるアミノ酸の総数とそれぞれの同一性パーセントのパーセント数値(100で除算したもの)とを乗算し、次いで、その積を参照ポリペプチドにおける前記アミノ酸の総数から減算することによって決定される。
本明細書中で使用されるとき、用語「作動可能に連結された」とは、成分がそれらの通常の機能を発揮するように配置される並置のことを指す。例えば、コード配列に作動可能に連結された調節配列またはプロモーターは、そのコード配列の発現をもたらすことが可能であり、タンパク質に作動可能に連結された細胞小器官局在化配列は、連結されたタンパク質が特定の細胞小器官に局在化することを補助する。
本明細書中で使用されるとき、用語「細胞型」は、当該分野における細胞のグループ化または分類の様式である。細胞型という用語は、ポリペプチド、ヌクレオチドまたは代謝産物の一般的な生物学的機能、位置、形態、構造、発現を通じて部分的に決定されるそれらの生物学的性質に基づく細胞のグループ化のことを指す。
本明細書中で使用されるとき、用語「細胞状況(cell state)」とは、細胞型の状態のことを指す。細胞は、生涯を通じて動的であり、様々な状況の分化、機能、形態および構造を達成することができる。本明細書中で使用されるとき、細胞状況とは、その生涯にわたる特定の細胞型のことを指す。
本明細書中で使用されるとき、用語「細胞表面マーカー」とは、その細胞をタイプまたは状況のいずれかがユニークなものとして同定するのに十分な細胞の表面上または細胞の近傍に提示される、部分、ペプチド、タンパク質、炭水化物、核酸、抗体、抗原および/または代謝産物などの任意の分子のことを指す。
II.肝臓および膵臓の疾患を処置するための組成物
アゴニスティックTRAILレセプターのリガンドおよびアゴニスト
アゴニスティックTRAILレセプターのリガンドおよびアゴニストは、そのリガンドが、線維症および/または線維症関連合併症を処置するために有効であるように製剤化され得ることが発見された。
好ましい実施形態において、上記リガンドまたはアゴニストは、有効であるために、粒子またはマトリックスなどの送達ビヒクルを必要としない。例えば、粒子および他の送達ビヒクルを含む製剤が提供されるが、いくつかの実施形態において、そのリガンドは、循環中において安定しており、徐放マトリックス、粒子または他の徐放もしくは分解性キャリアの助けなしに、少なくとも1日間、好ましくは、少なくとも2日間、有効である。
上記リガンドおよびアゴニストは、代表的には、TRAILコンジュゲートであり、そのTRAILコンジュゲートは、TRAILペプチド、模倣物を含むか、またはそのコンジュゲート分子の非存在下のTRAILフラグメント、バリアントもしくは融合物と比べたとき、TRAILコンジュゲートのインビボ半減期を延長するコンジュゲート分子に連結された模倣物、好ましくは、TRAILまたはそのフラグメント、バリアントもしくは融合物を含む。
TRAILコンジュゲート製剤および投与レジメンは、線維形成に関与する、線維症を誘導する活性化された肝星細胞(HSC)および膵星細胞(PSC)といった起源物質を標的化し、排除することができ、静止状態の星細胞を標的化せず、排除しない。そのような起源細胞を排除することによって、星細胞の活性化によって分泌されるかまたは誘導される複数の線維症関連分子が、同時に阻害され得るかまたはダウンレギュレートされ得る。例えば、PEG−TRAILの全身投与は、活性化されたHSCまたはPSCの集団を除去し、α−SMA、コラーゲン1、コラーゲン3、PDGFR、TGFβ、MMP−2、MMP−3、TIMP−1、TIMP−3、BMP−7を含む高度にアップレギュレートされた線維形成分子をタンパク質レベルおよびmRNAレベルにおいて減少および/または標準化した。下記でさらに詳細に論じられるように、開示される組成物は、それを必要とする被験体に、代表的には、線維症の起源細胞を標的化および排除するのに有効な量で、および1つまたはそれを超える線維症関連分子を同時に減少させるのに有効な量で、投与される。
A.TRAILペプチドおよびアナログ
TRAILコンジュゲートは、TRAILドメインを含み、そのドメインは、通常、コンジュゲート分子に連結されたTRAILペプチド、アナログまたは模倣物、好ましくは、TRAILまたはそのフラグメント、バリアントもしくは融合物である。
TRAIL
公知のTNFスーパーファミリーリガンドに対して相同性を有する遺伝子についてのESTデータベースの検索において、最初にTRAIL/Apo2L(TNFSF10)が同定された(Benedictら、J.Exp.Med.,209(11):1903−1906(2012))。ヒトにおいて、TRAILは、2つのアポトーシス促進性デスレセプター(DR)であるTRAIL−R1およびTRAIL−R2(TNFRSF10Aおよび10B)、ならびに死を誘導せず、代わりにデスシグナル伝達に対するデコイとして作用し得る2つの他の膜レセプターに結合する。TRAILとその同族のDRとの結合によって、細胞死を誘導するシグナル伝達複合体の形成が誘導され、最終的には、カスパーゼの活性化およびアポトーシスの開始に至る(Benedictら、J.Exp.Med.,209(11):1903−1906(2012))。
いくつかの実施形態において、TRAILコンジュゲートは、TRAILペプチド、またはそのアゴニスティックTRAILレセプター結合フラグメントまたはバリアントを含む。
ヒトTRAILに対する核酸配列およびアミノ酸配列は、当該分野で公知である。例えば、ヒトTRAILについてのアミノ酸配列は、MAMMEVQGGPSLGQTCVLIVIFTVLLQSLCVAVTYVYFTNELKQMQDKYSKSGIACFLKEDDSYWDPNDEESMNSPCWQVKWQLRQLVRKMILRTSEETISTVQEKQQNISPLVRERGPQRVAAHITGTRGRSNTLSSPNSKNEKALGRKINSWESSRSGHSFLSNLHLRNGELVIHEKGFYYIYSQTYFRFQEEIKENTKNDKQMVQYIYKYTSYPDPILLMKSARNSCWSKDAEYGLYSIYQGGIFELKENDRIFVSVTNEHLIDMDHEASFFGAFLVG(配列番号1,(UniProtKBデータベースアクセッション番号P50591(TNF10_HUMAN))である。いくつかの実施形態において、TRAILコンジュゲートは、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたは有するTRAILペプチドを含む。
好ましくは、TRAILは、可溶性TRAILである。内因性の完全長TRAILは、細胞質ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインを含む。通常、可溶性TRAILは、完全長TRAILのフラグメントであり、細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインを有しない。ゆえに、可溶性TRAILは、TRAILの細胞外ドメイン(例えば、配列番号1の細胞外ドメイン)またはその機能的フラグメントであってよい。配列番号1のTRAILについてのコンセンサス細胞外ドメインは、配列番号1のアミノ酸39〜281である。ゆえに、いくつかの実施形態において、TRAILコンジュゲートは、配列番号1のアミノ酸39〜281、41〜281、91〜281、92〜281、95〜281および114〜281を含むかもしくは有するTRAILペプチドまたはその機能的フラグメントもしくはバリアントを含む。
いくつかの実施形態において、TRAILコンジュゲートは、TRAIL−R1および/またはTRAIL−R2を通じてシグナル伝達を作動(agonize)し得る配列番号1の機能的フラグメントまたはバリアントを含む。配列番号1のフラグメントまたはバリアントは、配列番号1と50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99%または99%超の配列同一性を有し得る。
好ましくは、その機能的フラグメントまたはバリアントは、配列番号1の細胞外ドメインまたはその機能的フラグメントを含む。TRAILのC末端の150アミノ酸は、レセプター結合ドメインを含むと考えられている。ゆえに、いくつかの実施形態において、機能的フラグメントは、配列番号1のアミノ酸132〜281を含む。他の特定の実施形態において、そのフラグメントは、配列番号1のアミノ酸95〜281またはアミノ酸114〜281である。
バリアントは、配列番号1に対して1つまたはそれを超える置換、欠失もしくは付加またはそれらの任意の組み合わせを有し得る。いくつかの実施形態において、バリアントは、天然に存在する代替配列、スプライスバリアントまたは置換、付加もしくは欠失バリアント、あるいは細胞外ドメインまたはその機能フラグメントまたは代替配列、スプライスバリアントまたは置換、付加もしくは欠失バリアントである。天然に存在する代替配列およびバリアントは、UniProtKBデータベースアクセッション番号P50591(TNF10_HUMAN),バージョン140(最終更新日2014年1月22日)に開示されている。
TRAILアナログ
TRAILは、三量体としてそのレセプターと相互作用し得る。ゆえに、いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法において使用されるリガンドまたはアゴニストは、多量体、好ましくは、三量体であるか、またはそれらを形成し得る。その三量体は、ホモ三量体またはヘテロ三量体であり得る。
本明細書中に記載されるすべてのTRAILタンパク質が、天然のタンパク質または組換えタンパク質を単離するための標準的な技法を用いて作製され得、本明細書中に記載されるように化学的に改変され得る。
TRAILコンジュゲートは、TRAILアナログまたはそのアゴニスティックTRAILレセプター結合フラグメントもしくはバリアントを含み得る。TRAILアナログは、当該分野で公知である。好ましい実施形態において、それらのアナログは、野生型もしくは内因性のTRAILと比べて、1つもしくはそれを超えるアゴニスティックTRAILレセプター(例えば、TRAIL−R1(DR4)および/またはTRAIL−R2(DR5))に対して高い親和性もしくは特異性、1つもしくはそれを超える拮抗性またはデコイTRAILレセプター(例えば、レセプターDcR1およびDcR2)に対して低い親和性もしくは特異性、またはそれらの組み合わせを有する。
いくつかの実施形態において、上記アナログは、野生型TRAILのDR4選択的変異体である。DR−4選択的変異体は、当該分野で公知であり、例えば、Tur,J.Biological Chemistry,283(29):20560−8(2008)に開示されている。特定の実施形態において、そのアナログは、D218HもしくはD218Y置換を有する配列番号1のバリアント、またはその機能的フラグメント(例えば、細胞外ドメイン)である。
いくつかの実施形態において、上記アナログは、野生型TRAILのDR5選択的変異体である。特定のDR−5選択的変異体は、D269H、D269H/E195RまたはD269H/T214Rを有する配列番号1のバリアントおよびその機能的フラグメント(例えば、細胞外ドメイン)を含む。そのようなバリアントは、van der Sloot,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 103(23):8634−9(2006)に記載されている。
TRAIL融合タンパク質
TRAILコンジュゲートは、TRAIL融合タンパク質であってよい。TRAIL融合ポリペプチドは、第1の融合パートナーを有し、その第1の融合パートナーは、(i)第2のポリペプチドに直接融合されているか、または(ii)第2のポリペプチドに融合されたリンカーペプチド配列に必要に応じて融合されている、TRAILタンパク質の細胞外ドメインの全部または一部を含む。それらの融合タンパク質は、必要に応じて、2つまたはそれを超える融合タンパク質を二量体化するかまたは多量体化するように機能するドメインを含む。そのペプチド/ポリペプチドリンカードメインは、別個のドメインであり得るか、あるいは融合タンパク質の他方のドメイン(TRAILポリペプチドまたは第2のポリペプチド)のうちの1つの内部に含められ得る。同様に、融合タンパク質を二量体化するかまたは多量体化するように機能するドメインは、別個のドメインであり得るか、あるいはその融合タンパク質の他方のドメイン(TRAILポリペプチド、第2のポリペプチドまたはペプチド/ポリペプチドリンカードメイン)のうちの1つの内部に含められ得る。1つの実施形態において、二量体化/多量体化ドメインおよびペプチド/ポリペプチドリンカードメインは、同じである。
本明細書中に開示される融合タンパク質は、式I:
N−R1−R2−R3−C
であり得、式中、「N」は、融合タンパク質のN末端を表し、「C」は、融合タンパク質のC末端を表し、「R1」は、TRAILポリペプチドであり、「R2」は、任意選択のペプチド/ポリペプチドリンカードメインであり、「R3」は、第2のポリペプチドである。あるいは、R3が、TRAILポリペプチドであってもよく、R1が、第2のポリペプチドであってもよい。
融合タンパク質は、二量体化され得るかまたは多量体化され得る。二量体化または多量体化は、二量体化ドメインまたは多量体化ドメインを通じて2つまたはそれを超える融合タンパク質間またはそれらの中で生じ得る。あるいは、融合タンパク質の二量体化または多量体化は、化学的架橋によって生じ得る。形成される二量体または多量体は、ホモ二量体/ホモ多量体またはヘテロ二量体/ヘテロ多量体であり得る。
第2のポリペプチドの存在は、TRAIL融合ポリペプチドの溶解度、安定性、親和性および/または結合価を変更し得る。本明細書中で使用されるとき、「結合価」とは、1分子あたりに利用可能な結合部位の数のことを指す。いくつかの実施形態において、第2のポリペプチドは、好ましくは、ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、CH2およびCH3領域またはマウス免疫グロブリンCγ2a鎖のヒンジ、CH2およびCH3領域に対応するアミノ酸配列を有する、免疫グロブリン重鎖定常領域の1つまたはそれを超えるドメインを含む。特定の二量体の融合タンパク質において、その二量体は、二量体化した通常のIg重鎖においてジスルフィド連結される同じCys残基である、2本のIg重鎖のヒンジ領域におけるCys残基の共有結合によって生じる。
特定の実施形態において、TRAIL融合タンパク質は、Gieffers,Molecular Cancer Therapeutics,12(12):273547(2013)に記載されているように、一本鎖TRAILレセプター結合ドメイン(scTRAIL−RBD)と呼ばれる1つのポリペプチド鎖において組み合わされた3つのTRAILプロトマー部分配列を含むTRAIL模倣物である。各々3つのレセプター結合部位を有する2つのいわゆるscTRAIL−RBDは、近接することにより、6価の結合モードで多量体の融合タンパク質をもたらし得る。いくつかの実施形態において、多量体化は、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)−ムテインのFc部分のC末端にscTRAIL−RBDポリペプチドを融合することによって達成され、それにより、1薬物分子あたり6つのレセプター結合部位が作製される。
主に二量体から構成される標的化されるscTRAIL(DbscTRAIL)に対して、scFvリンカーの改変に基づいてscFv−scTRAILの二量体化を強制することにより、いくつかの標的細胞型に対して、標的化されていないscTRAILの活性をおよそ100倍上回る(Siegemund,上掲)。Db−scTRAILの活性の増加は、標的陰性細胞に対しても実証されたことから、標的化に加えて、標準的なTRAILの少なくとも二量体のアセンブリと等価なオリゴマー化が、それ自体アポトーシスシグナル伝達を増強することが示された。ゆえに、好ましい実施形態において、TRAIL融合タンパク質は、例えば、二量体、三量体または六量体の分子をもたらし得る多量体化ドメイン、例えば、二量体化ドメインもしくは三量体化ドメインまたはそれらの組み合わせを有する。
三量体の形成を促進する別の融合タンパク質は、TRAILのレセプター結合フラグメントのアミノ末端に三量体化ロイシンジッパードメインまたは三量体化イソロイシンジッパードメインが融合したものを含む。
TRAIL融合タンパク質および機能性アッセイにおいてその融合タンパク質を使用した結果もまた、Wahl,Hepatology,57(2):625−36(2013)に記載されている。
ポリペプチドを生成するための方法
開示されるTRAILポリペプチド、そのフラグメント、バリアントおよび融合物は、当該分野で公知の従来の技法を用いて製造され得る。単離されたポリペプチドは、例えば、化学合成または宿主細胞における組換え生成によって得ることができる。ポリペプチドを組換え的に生成するために、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を使用することにより、細菌または真核生物の宿主細胞(例えば、昆虫細胞、酵母細胞,または哺乳動物細胞)を形質転換、形質導入またはトランスフェクトすることができる。一般に、核酸構築物は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された制御配列を含む。制御配列(本明細書中において発現調節配列とも称される)は、通常、遺伝子産物をコードせず、代わりに、その制御配列に作動可能に連結された核酸配列の発現をもたらす。
ポリペプチドを発現させるためおよび生成するために有用な原核生物系および真核生物系は、当該分野で周知であり、それらとしては、例えば、BL−21などの大腸菌株およびCHO細胞などの哺乳動物培養細胞が挙げられる。
真核生物の宿主細胞では、ポリペプチドを発現させるために、いくつかのウイルスに基づく発現系が使用され得る。ウイルスに基づく発現系は、当該分野で周知であり、それらとしては、バキュロウイルス、SV40、レトロウイルスまたはワクシニアに基づくウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。
ポリペプチドを安定に発現する哺乳動物細胞株は、適切な調節エレメントおよび選択マーカーを有する発現ベクターを用いて産生され得る。例えば、真核生物の発現ベクターpCR3.1(Invitrogen Life Technologies)およびp91023(B)(Wongら(1985)Science 228:810−815を参照のこと)は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS−1細胞、ヒト胎児腎293細胞、NIH3T3細胞、BHK21細胞、MDCK細胞およびヒト血管内皮細胞(HUVEC)におけるバリアントポリペプチドの発現に適している。さらなる好適な発現系としては、Lonza Group Ltdを通じて入手可能なGS Gene Expression System(商標)が挙げられる。
エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAEデキストランまたは他の好適なトランスフェクション方法によって発現ベクターを導入した後、安定した細胞株が選択され得る(例えば、代謝選択またはG418、カナマイシンもしくはハイグロマイシンに対する抗生物質耐性によって)。トランスフェクトされた細胞は、目的のポリペプチドが発現されるように培養され得、そのポリペプチドは、例えば、細胞培養上清または溶解された細胞から回収され得る。あるいは、融合タンパク質は、(a)増幅された配列をpcDNA3(Invitrogen Life Technologies)などの哺乳動物の発現ベクターにライゲートし、(b)コムギ胚芽抽出物またはウサギ網状赤血球溶解産物を用いてインビトロにおいて転写して翻訳することによって、生成され得る。
ポリペプチドは、例えば、クロマトグラフィー法、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、DEAEイオン交換、ゲル濾過およびヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーを用いて、単離され得る。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、そのポリペプチドが親和性マトリックス上に捕捉されるのを可能にするアミノ酸配列を含むさらなるドメインを含むように操作され得る。例えば、細胞培養上清中または細胞質抽出物中のFc融合ポリペプチドは、プロテインAカラムを用いて単離され得る。さらに、ポリペプチド精製を助けるために、c−myc、赤血球凝集素、ポリヒスチジンまたはFlag(商標)(Kodak)などのタグを用いることができる。そのようなタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端を含むそのポリペプチド内の任意の箇所に挿入され得る。有用であり得る他の融合物としては、そのポリペプチドの検出を助ける酵素、例えば、アルカリホスファターゼが挙げられる。イムノアフィニティークロマトグラフィーもまた、ポリペプチドを精製するために用いることができる。ポリペプチドはさらに、そのポリペプチドを産生する細胞によるそのポリペプチドの分泌を引き起こす分泌シグナルを含むように操作され得る(既に存在する分泌シグナルが無い場合)。次いで、分泌されたポリペプチドは、細胞培地から都合良く単離され得る。
B.抗体組成物および製造方法
精製されたTRAILレセプターポリペプチド、フラグメント、融合物または抗原もしくはそのエピトープは、TRAILレセプターに特異的に結合する抗体を調製するために使用され得る。抗体は、当該分野で公知の任意の好適な方法を用いて調製され得る。その後、それらの抗体は、当該分野で公知の方法を用いて機能活性(例えば、アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性)についてスクリーニングされ得る。
抗体は、細胞培養物、ファージまたは様々な動物において生成され得る。1つの実施形態において、抗体は、哺乳動物の抗体である。最初の抗体を単離するため、または特異性もしくはアビディティー特性が変更されたバリアントを生成するために、ファージ法を用いることができる。そのような技法は、日常的なものであり、当該分野で周知である。1つの実施形態において、抗体は、当該分野で公知の組換え手段によって作製される。例えば、組換え抗体は、その抗体をコードするDNA配列を含むベクターで宿主細胞をトランスフェクトすることによって産生され得る。宿主細胞において少なくとも1つのVL領域および1つのVH領域を発現するDNA配列をトランスフェクトするために、1つまたはそれを超えるベクターが使用され得る。抗体の生成および産生の組換え手段に関する例示的な説明としては、Delves,Antibody Production:Essential Techniques(Wiley,1997);Shephardら、Monoclonal Antibodies(Oxford University Press,2000);Goding,Monoclonal Antibodies:Principles And Practice(Academic Press,1993);Current Protocols In Immunology(John Wiley & Sons,最新版)が挙げられる。
開示される抗体は、所望の機能を媒介する際の抗体のより高い有効性を高める組換え手段によって改変され得る。抗体は、組換え手段を用いて、置換によって改変され得る。通常、置換は、保存的置換であり得る。例えば、抗体の定常領域における少なくとも1つのアミノ酸が、異なる残基で置き換えられ得る。例えば、米国特許第5,624,821号、米国特許第6,194,551号、WO9958572;およびAngalら、Mol.Immunol.30:105−08(1993)を参照のこと。アミノ酸の改変には、アミノ酸の欠失、付加および置換が含まれる。場合によっては、そのような変更は、望まれない活性、例えば、補体依存性細胞傷害を減少させるために行われる。しばしば、抗体は、検出可能なシグナルを提供する物質を共有結合的または非共有結合的につなぎ合わせることによって標識される。多種多様の標識およびコンジュゲートの技法が知られており、科学文献と特許文献の両方において広く報告されている。これらの抗体は、TRAILレセプターへの結合についてスクリーニングされ得る。例えば、Antibody Engineering:A Practical Approach(Oxford University Press,1996)を参照のこと。
所望の生物学的活性を有する好適な抗体は、増殖、遊走、接着、軟寒天成長、血管新生、細胞間コミュニケーション、アポトーシス、輸送、シグナル伝達を含むがこれらに限定されないインビトロアッセイ、および腫瘍成長の阻害などの以下のインビボアッセイによって同定され得る。
開示される組成物および方法において使用され得る抗体には、任意のクラスの免疫グロブリン全体(すなわち、インタクトな抗体)、そのフラグメント、および少なくとも抗体の抗原結合可変ドメインを含む合成タンパク質が含まれる。それらの可変ドメインは、抗体の間で配列が異なり、特定の抗原に対する特定の各抗体の結合および特異性において用いられる。しかしながら、可変性は、通常、抗体の可変ドメインに均等に分布していない。可変性は、通常、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方における相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々、大部分がベータシート配置をとる4つのFR領域を含み、それらのFR領域は、3つのCDRによって接続されており、それらのCDRは、そのベータシート構造を接続している、場合によってはそのベータシート構造の一部を形成している、ループを形成している。各鎖におけるCDRは、FR領域によって近接して共に保持され、他の鎖のCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。
生物活性を有する抗体のフラグメントも開示される。それらのフラグメントは、そのフラグメントの活性が、改変されていない抗体または抗体フラグメントと比べて有意に変更されないかまたは損なわれないことを条件に、他の配列に結合しているかまたはしていないかに関係なく、特定の領域または特異的アミノ酸残基の挿入、欠失、置換または他の選択された改変を含む。
本開示の抗原性タンパク質に特異的な一本鎖抗体の産生のためにも技法が適合され得る。一本鎖抗体を産生するための方法は、当業者に周知である。一本鎖抗体は、短いペプチドリンカーを用いて重鎖および軽鎖の可変ドメインを共に融合することによって、作製され得、それにより、単一分子上に抗原結合部位が再構成される。一方の可変ドメインのC末端が、15〜25アミノ酸のペプチドまたはリンカーを介して他方の可変ドメインのN末端に繋ぎ止められている一本鎖抗体可変フラグメント(scFv)が、抗原結合性または結合の特異性を有意に乱すことなく、開発された。そのリンカーは、重鎖および軽鎖が、適切な立体構造的配向で互いに結合することを可能にするように選択される。
二価の一本鎖可変フラグメント(ジscFv)は、2つのscFvを連結することによって操作され得る。これは、2つのVH領域および2つのVL領域を有する単一のペプチド鎖を産生して、タンデム型のscFvを得ることによって、行うことができる。ScFvは、それらの2つの可変領域が一緒に折り畳まれるには短すぎてscFvが二量体化せざるを得ないリンカーペプチド(約5アミノ酸)を有するようにもデザインされ得る。このタイプは、ダイアボディとして知られている。ダイアボディは、対応するscFvよりも最大40倍低い解離定数を有すると示されており、これは、それらのダイアボディがそれらの標的に対してかなり高い親和性を有することを意味する。さらにより短いリンカー(1または2アミノ酸)は、三量体(トリアボディ(triabody)またはトリボディ(tribody))の形成をもたらす。テトラボディ(Tetrabody)も産生された。それらは、それらの標的に対して、ダイアボディよりもさらに高い親和性を示す。
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体集団から得られ、すなわち、その集団内の個々の抗体は、それらの抗体分子の小サブセットに存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いては、同一である。モノクローナル抗体には、その抗体が所望のアンタゴニスト活性を示す限り、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である一方で、その鎖(複数可)の残りの部分が別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体ならびにそのような抗体のフラグメントが含まれる。
モノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を産生する任意の手順を用いて作製され得る。ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物が、通常、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生するかまたは産生することができるリンパ球を誘導する免疫剤で免疫される。あるいは、リンパ球が、インビトロにおいて免疫され得る。
抗体は、組換えDNA法によっても作製され得る。開示される抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)、容易に単離され得、配列決定され得る。抗体または活性な抗体フラグメントのライブラリーもまた、作製され得、ファージディスプレイ法を用いてスクリーニングされ得る。
ヒト抗体およびヒト化抗体
多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラットまたはウサギに由来する抗体)は、ヒトにおいて天然に抗原性であり、ゆえに、ヒトに投与されたとき、望ましくない免疫応答を生じ得る。ゆえに、上記方法におけるヒト抗体またはヒト化抗体の使用は、ヒトに投与された抗体が望ましくない免疫応答を惹起する機会を低下させるのに役立つ。
免疫されたとき内因性の免疫グロブリン産生の非存在下においてヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用することができる。例えば、キメラマウスおよび生殖細胞系列変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(J(H))遺伝子のホモ接合性の欠失は、内因性の抗体産生の完全な阻害をもたらすと記載されている。そのような生殖細胞系列変異体マウスにヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイを移すと、抗原チャレンジにおいてヒト抗体が産生される。必要に応じて、抗体は、他の種において生成され、ヒトにおける投与のために「ヒト化」される。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合部分配列)である。ヒト化抗体には、レシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラットまたはウサギのCDRからの残基によって置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されるCDR配列またはフレームワーク配列にも見られない残基も含み得る。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である、少なくとも1つの可変ドメイン、および代表的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、代表的には、ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域も含む。
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該分野で周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそのヒト化抗体に導入された1つまたはそれを超えるアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と称されることが多く、それらは、代表的には「移入」可変ドメインから選び取られる。抗体のヒト化の技法は、一般に、抗体分子の1つまたはそれを超えるポリペプチド鎖をコードするDNA配列を操作する組換えDNA技術の使用を含む。ヒト化は、本質的には、げっ歯類のCDRまたはCDR配列を、ヒト抗体の対応する配列の代わりに用いることによって行うことができる。したがって、非ヒト抗体(またはそのフラグメント)のヒト化型は、キメラ抗体またはフラグメントであり、ここで、実質的にインタクト未満のヒト可変ドメインが、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は、通常、いくつかのCDR残基およびおそらくいくつかのFR残基がげっ歯類抗体における類似の部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
ヒト化抗体を作製する際に使用される軽鎖と重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低下させるために非常に重要である。「ベストフィット」法によると、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列は、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。次いで、げっ歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体に対するヒトフレームワーク(FR)として受け入れられる。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを用いる。同じフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体に対して用いてもよい。
抗原に対する高親和性および他の好ましい生物学的特徴を保持する抗体がヒト化されることがさらに重要である。この目標を達成するために、ヒト化抗体は、好ましくは、親配列およびヒト化配列の3次元モデルを用いて親配列および様々な概念的なヒト化産物の解析プロセスによって調製される。3次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の有望な3次元立体配座構造を図示し、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列が機能する際のそれらの残基の見込みのある役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の解析が可能になる。このようにして、FR残基が、選択され得、コンセンサス移入配列から組み合わされ得、所望の抗体特性(例えば、標的抗原(複数可)に対する親和性の増加)が達成される。一般に、CDR残基は、抗原結合への影響に直接かつ最も実質的に関与する。
一本鎖抗体
一本鎖抗体を産生するための方法は、当業者に周知である。一本鎖抗体は、短いペプチドリンカーを用いて重鎖および軽鎖の可変ドメインを共に融合することによって作製され、それにより、単一分子上に抗原結合部位が再構成される。一方の可変ドメインのC末端が、15〜25アミノ酸のペプチドまたはリンカーを介して他方の可変ドメインのN末端に繋ぎ止められている一本鎖抗体可変フラグメント(scFv)が、抗原結合性または結合の特異性を有意に乱すことなく、開発された。そのリンカーは、重鎖および軽鎖が、適切な立体構造的配向で互いに結合することを可能にするように選択される。これらのFvは、天然の抗体の重鎖および軽鎖に存在する定常領域(Fc)を欠く。
一価抗体
インビトロ法も、一価抗体を調製するために適している。抗体のフラグメント、特に、Fabフラグメントを産生する抗体の消化は、当該分野で公知の日常的な技法を用いて達成され得る。例えば、消化は、パパインを用いて行うことができる。抗体のパパイン消化は、通常、Fabフラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント(その各々が単一の抗原結合部位を有する)および残りのFcフラグメントを産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、なおも抗原を架橋することができるF(ab’)2フラグメントと呼ばれるフラグメントをもたらす。
抗体消化において生成されるFabフラグメントは、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメインも含む。Fab’フラグメントは、抗体ヒンジ領域由来の1つまたはそれを超えるシステインを含む重鎖ドメインのカルボキシ末端にいくつかの残基が付加されていることによって、Fabフラグメントとは異なる。F(ab’)2フラグメントは、ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋によって連結された2つのFab’フラグメントを含む二価のフラグメントである。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’に対する本明細書中での呼称である。抗体フラグメントは、元来、Fab’フラグメントの間にヒンジシステインを有するFab’フラグメントの対として産生された。抗体フラグメントの他の化学的結合物(chemical coupling)も知られている。
ハイブリッド抗体
抗体は、ハイブリッド抗体であってよい。ハイブリッド抗体では、一方の重鎖と軽鎖との対が、1つのエピトープに対して生じた抗体に見られるものと相同であり、他方の重鎖と軽鎖との対が、別のエピトープに対して生じた抗体に見られる対に相同である。これにより、多官能性の結合価の特徴がもたらされ、すなわち、二価の抗体が、少なくとも2つの異なるエピトープに同時に結合する能力を有する。そのようなハイブリッドは、それぞれの成分の抗体を産生するハイブリドーマの融合、または組換え法によって形成され得る。そのようなハイブリッドは、当然のことながら、キメラ鎖を用いても形成され得る。
タンパク質化学を用いて抗体を作製する方法
抗体を含むタンパク質を生成する方法の1つは、2つまたはそれを超えるペプチドまたはポリペプチドを、タンパク質化学の技法によって互いに連結することである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドが、Fmoc(9フルオレニルメチルオキシカルボニル)またはBoc(tert−ブチルオキシカルボノイル)化学を用いる現在利用可能な実験装置(Applied Biosystems,Inc.,Foster City,CA)を使用して化学的に合成され得る。抗体に対応するペプチドまたはポリペプチドが、例えば、標準的な化学反応によって合成され得ることを当業者は容易に認識できる。例えば、あるペプチドまたはポリペプチドが、合成されて、その合成樹脂から切断され得ないのに対して、抗体の他のフラグメントが、合成された後、その樹脂から切断され得、それにより、その他方のフラグメント上の機能的にブロックされた末端基が露出される。これらの2つのフラグメントは、ペプチド縮合反応によって、それぞれそれらのカルボキシル末端およびアミノ末端においてペプチド結合を介して共有結合的につなぎ合わされることにより、抗体またはそのフラグメントが形成され得る。あるいは、ペプチドまたはポリペプチドは、上に記載されたようにインビボにおいて独立して合成される。いったん単離されると、これらの独立したペプチドまたはポリペプチドは、同様のペプチド縮合反応を介して、連結されて、抗体またはその抗原(anitgen)結合フラグメントを形成し得る。
例えば、クローン化されたまたは合成のペプチドセグメントの酵素ライゲーションによって、比較的短いペプチドフラグメントをつなぎ合わせることが可能になり、それにより、より大きなペプチドフラグメント、ポリペプチドまたはタンパク質全体のドメインが生成される。あるいは、合成ペプチドの天然の化学的ライゲーションを用いることにより、より短いペプチドフラグメントから大きなペプチドまたはポリペプチドを合成的に構築することができる。この方法は、2工程の化学反応からなる。第1の工程は、保護されていない合成ペプチド−アルファ−チオエステルと、アミノ末端のCys残基を含む別の保護されていないペプチドセグメントとの化学選択的反応であり、それにより、最初の共有結合性産物(covalent product)として、チオエステル連結型の中間体がもたらされる。反応条件の変更無しで、この中間体は、自発的で迅速な分子内反応を起こして、ライゲーション部位に天然のペプチド結合を形成する。
C.コンジュゲートおよび複合体
開示されるTRAILコンジュゲートは、TRAILドメイン、またはTRAILレセプターに結合しない抗体部分に連結された第2のコンジュゲート分子も含む。
PEGなどのポリアルキレンオキシド
ポリアルキレンオキシドなどの親水性ポリマーまたはその共重合体(例えば、BASFが販売するPLURONIC(登録商標))の使用は、TRAILの薬物動態学的および薬力学的プロファイルを改善するために分子に共有結合的に結合され得る(Kimら、Bioconjugate Chem.,22(8),pp 1631−1637(2011))。研究から、PEGを用いて誘導体化されたTRAILアナログが、血漿中でのより高い代謝的安定性、延長された薬物動態学的プロファイルおよびより長い循環半減期も示しつつ、抗がん活性を維持することが示される(Chaeら、Molecular cancer therapeutics 9(6):1719−29(2010);Kimら、Bioconjugate chemistry,22(8):1631−7(2011);Kimら、Journal of pharmaceutical sciences 100(2):482−91(2011);Kimら、Journal of controlled release:official journal of the Controlled Release Society 150(1):63−9(2011))。
ゆえに、いくつかの実施形態において、TRAILドメインは、1つもしくはそれを超えるエチレングリコール(EG)単位、より好ましくは、2つもしくはそれを超えるEG単位(すなわち、ポリエチレングリコール(PEG))またはその誘導体を用いて誘導体化される。PEGの誘導体としては、メトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルプロピオネート、メトキシポリエチレングリコールN−ヒドロキシスクシンイミド、メトキシポリエチレングリコールアルデヒド、メトキシポリエチレングリコールマレイミドおよび多分枝ポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
EGまたは誘導体単位の正確な数は、所望の活性、血漿安定性および薬物動態学的プロファイルに依存する。例えば、Kimら(上掲)は、TRAILの場合の1.1時間に対して、2、5、10、20および30K−PEG−TRAILが、マウスにおいてそれぞれ3.9、5.3、6.2、12.3および17.7時間というより長い循環半減期をもたらすことを報告した。いくつかの実施形態において、PEGの分子量は、約1〜100kDa、好ましくは、約1〜50kDaである。例えば、PEGは、「N」kDaという分子量を有し得、ここで、Nは、1〜100の任意の整数である。PEGは、「N」Daという分子量を有し得、ここで、Nは、1,000〜1,000,000の任意の整数である。特定の実施形態において、PEGの分子量は、「N」Daであり、ここで、「N」は、1,000〜50,000、またはより好ましくは、5,000〜50,000である。
アポトーシス促進物質は、線状または分枝状のPEGにコンジュゲートされ得る。いくつかの研究から、分枝状PEGを用いて誘導体化されたタンパク質が、線状PEG−タンパク質と比べて延長されたインビボ循環半減期を有することが示され、これは、分枝状PEG−タンパク質のより大きな水力学的体積に部分的に起因すると考えられる。Feeら、Biotechnol Bioeng.,98(4):725−3(2007)。
ペプチドリガンドは、当該分野で公知の方法を用いて、C末端または好ましくはN末端において誘導体化され得る。
TRAIL−PEGコンジュゲートは、以下の式:
X−L−(PEG)n
によって表され得、式中、
Xは、TRAILタンパク質を表し、
Lは、リンカーを表し、
PEGは、分枝状ポリ(エチレングリコール)鎖を表し、
nは、2、3、4、5、6、7または8から選択される整数である。
ある特定の実施形態において、nは、2である。
ポリアルキレンオキシドは、リンカーによってタンパク質に結合される。そのリンカーは、ポリアルキレン(polyakylene)オキシドであり得、好ましくは、2つのポリアルキレンオキシドポリマーをタンパク質に接続する。
特定の実施形態において、TRAILコンジュゲートは、ヒトTRAILのトランケート型、例えば、ヒトTRAILの完全長型(1−281)のアルギニン−114からグリシン−281までを含むTRAILドメイン、および1,000〜100,000ダルトン、好ましくは、5,000〜50,000ダルトンの分子量を有するPEGを含むPEGコンジュゲートである。
N末端が改変されたPEG−TRAILコンジュゲートは、還元剤の存在下においてTRAILドメインのN末端のアミンをPEGのアルデヒド基と反応させることによって得ることができる。PEGおよびTRAILは、2〜10または好ましくは、5〜7.5というモル比(PEG/TRAIL)で反応され得る。
好ましい実施形態において、TRAILコンジュゲートは、3つのTRAILコンジュゲートモノマーの間で三量体形成を可能にするジッパーアミノ酸モチーフ、例えば、イソロイシンジッパーモチーフを含む。
PEG鎖は、好ましくは、等しい分子量であるが、必ずしもそうではない。各PEG鎖に対する例示的な分子量の範囲は、約10kDa〜60kDa、好ましくは、約20kDa〜40kDaである。PEG40は、40kDa:20+20kDa(各PEG鎖)の分子量を有する合成された分枝状PEG部分である。
三量体PEG部分は、リンカーアームに結合された分枝状PEG鎖からなり得る。三量体PEG部分の視覚的な記載が、この直下に提供される。
以下の三量体PEGを合成した:YPEG42、YPEG43.5、YPEG45、YPEG50およびYPEG60。
・YPEG42は、42kDa:(20+20kDa)(分枝状PEG)+2kDa(リンカーアーム)の分子量を有する三量体PEG部分である。
・YPEG43.5は、43.5kDa:(20+20kDa)(分枝状PEG)+3.5kDa(リンカーアーム)の分子量を有する三量体PEG部分である。
・YPEG45は、45kDa:(20+20kDa)(分枝状PEG)+5kDa(リンカーアーム)の分子量を有する三量体PEG部分である。
・YPEG50は、50kDa:(20+20kDa)(分枝状PEG)+10kDa(リンカーアーム)の分子量を有する三量体PEG部分である。
・YPEG60は、60kDa:(20+20kDa)(分枝状PEG)+20kDa(リンカーアーム)の分子量を有する三量体PEG部分である。
リンカー部分
上記タンパク質またはペプチドは、リンカーを介して分枝状PEG部分に共有結合的につなぎ合わされる。そのリンカーは、ポリマーであり、通常、少なくとも800オングストロームの原子長を有する。代表的には、そのリンカーは、約800〜約2,000オングストローム、約800〜約1,500オングストローム、約800〜約1,000オングストロームまたは約900〜約1,000オングストロームの原子長を有する。上に列挙された原子距離は、完全に延長されたポリマーに対して言及していること、およびそのリンカーは、固体状態または溶液中にあるとき、分枝状PEGとタンパク質またはペプチドとの間の実際の距離が、上に列挙された原子長未満であるように折り畳まれ得るかまたは丸まり得ることが認識されるべきである。
ある特定の実施形態において、リンカーは、約1kDa〜30kDa、好ましくは、約2kDa〜20kDaの分子量を有するポリ(エチレングリコール)誘導体である。リンカーは、少なくとも80単位の長さの天然または非天然のアミノ酸であってもよい。
リンカーに対するPEG代替物には、合成または天然の水溶性の生体適合性ポリマー、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、タンパク質、例えば、ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸、セルロース、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールならびにポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。
タンパク質およびペプチドは、従来の化学反応を用いてリンカーに共有結合的に結合され得る。N末端またはリジン残基に見られるような第1級アミン基は、還元条件下においてアルデヒドおよびそれらの等価物と反応して、アミンを生じる(Molineux,Current pharmaceutical design,10(11):1235−1244(2004))。システイン残基に見られるようなメルカプト(−SH)基は、アクリル酸誘導体およびメタクリル酸誘導体ならびにマレイミドを含む種々のMichaelアクセプターとコンジュゲート付加を起こし得る(Gongら、British Journal of Pharmacology,163(2):399−412(2011))。ペプチドおよびタンパク質に見られる他の好適な求核基としては、ジスルフィド結合(Brocchiniら、Nature protocols,1:2241−2252(2006))およびヒスチジン残基(Congら、Bioconjugate Chemistry,23(2):248−263(2012))が挙げられる。
リンカーは、従来の化学反応を用いてタンパク質またはペプチドに共有結合的につなぎ合わされ得る。例えば、リンカーポリマーは、一方の末端において、求電子基、例えば、アルデヒド、エポキシド、ハロゲン(塩素、臭化物、ヨウ素)、スルホネートエステル(トシレート、メシレート)、Michaelアクセプターまたは活性化されたカルボキシレートを用いて誘導体化され得、次いで、そのタンパク質またはペプチドにおける求核性のアミンまたはチオール基と反応し得る。好適なMichaelアクセプターとしては、アクリル(acylic)酸誘導体およびメタクリル酸誘導体、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリレートおよびメタクリレート、ならびにマレイミドが挙げられる。好適な活性化されたカルボキシレートとしては、ニトロフェニルカーボネートおよびNHS(N−ヒドロキシスクシネート)エステルが挙げられる。他の実施形態において、アルギニン残基を含むペプチドおよびタンパク質は、反応性1,3ジケトン官能基を含むリンカーを用いて共有結合的につなぎ合わされ得る。
上記コンジュゲートは、まず、リンカーをペプチドまたはタンパク質につなぎ合わせた後、そのリンカーを分枝状ポリ(エチレングリコール)につなぎ合わせるか、またはまず、リンカーを分枝状ポリ(エチレングリコール)につなぎ合わせた後、そのリンカーをペプチドまたはタンパク質につなぎ合わせることによって、調製され得る。結合形成の最適な順序は、関与する具体的な化学変換によって決定される。
高分子
他の実施形態において、TRAILは、生体高分子またはポリペプチドを用いて、報告されている方法によって;例えば、以下に限定されないが、化学的にコンジュゲートしたヒアルロン酸(Yangら、Biomaterials 32(33);8722−8729(2011)、デポー形成ポリペプチド(Amiramら、Proc Natl Acad Sci USA,110(8);2792−2792(2013)、米国出願公開番号US2013−0178416A1)および延長された組換えポリペプチドに連結されたTRAIL(米国出願公開番号US2010−0239554A1)を用いて、延長された半減期を有する長時間作用型TRAILとして誘導体化され得る。
複合体
TRAILドメインは、負に帯電した部分と複合体化され得る。いくつかの実施形態において、負に帯電した部分は、長時間送達、持続送達または徐放送達のためにリガンドまたはアゴニストをナノ粒子に充填するのを容易にし得る。いくつかの実施形態において、負に帯電した部分自体が、リガンドまたはアゴニストの長時間送達、持続送達または徐放送達を媒介する。好ましくは、負に帯電した部分は、リガンドまたはアゴニストが、免疫細胞または滑膜細胞においてアポトーシスを誘導するかまたは増強する能力を実質的に減少させない。
正に帯電したTRAILと負に帯電したコンドロイチン硫酸(CS)との間の複合体(CS/TRAIL)の形成が開発され、それは、TRAILの活性を損なわずに、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)ミクロスフェア(MS)におけるTRAILの充填を容易にすると示された(Kimら、Journal of Pharmacy and Pharmacology,65(1):11−21(2013)。およそ200nmのナノ複合体が、pH5.0において、2TRAIL対CS(TC2)という重量比で形成された。その複合体は、天然のTRAILの充填効率よりも、マルチエマルジョン法によって調製されたPLGA MSにおいて>95%高い充填効率を有した。ゆえに、いくつかの実施形態において、リガンドまたはアゴニスト、特に、TRAILペプチド、ならびにそのバリアント、機能的フラグメントおよび融合タンパク質、またはそれらのコンジュゲート、例えば、PEGコンジュゲートは、コンドロイチン硫酸と複合体化され、必要に応じて、微粒子またはナノ粒子、例えば、PLGAベースの粒子に充填される。
他の実施形態において、リガンドまたはアゴニスト、特に、TRAILペプチド、ならびにそのバリアント、機能的フラグメントおよび融合タンパク質、またはそれらのコンジュゲート、例えば、PEGコンジュゲートは、ヒアルロン酸(HA)と複合体化される。正に帯電したPEG−TRAILと負に帯電したHAとを混合することによって調製されたPEG−TRAILおよびHAのナノ複合体は、PEG−TRAILと比べて、無視できる生物活性の損失を伴って、インビボにおいて持続送達を有することが示された(Kimら、Biomaterials,31(34):9057−64(2010))。送達は、1%HAを含む溶液中の上記ナノ粒子を投与することによって、さらに増強された。
D.標的化部分
TRAILコンジュゲート、TRAILコンジュゲート剤を含む組成物、およびTRAILコンジュゲート剤用の送達ビヒクルは、標的化部分を含み得る。いくつかの実施形態において、標的化部分は、目的の器官もしくは標的細胞へのアポトーシス促進物質の標的化または蓄積を増加させる。
好ましい実施形態において、標的化部分は、肝臓および膵臓、より好ましくは、肝星細胞および膵星細胞へのアポトーシス促進物質の標的化または蓄積を増加させる。肝臓標的化のための組成物および方法は、当該分野で公知であり、例えば、肝細胞を標的化するための組成物および方法を記載している米国出願公開番号2013/0078216、および各肝疾患に対する標的細胞を同定し、これらの細胞に薬物を送達するためのストラテジーを概説しているPoelstraら、J.Control Release,161(2):188−97(2012)を参照のこと。タンパク質、ウイルス、ポリマーおよびリポソームの使用はすべて、肝臓、またはより好ましくは、肝星細胞への標的化を増強するために使用され得る。いくつかの実施形態において、肝臓標的化分子は、アポトーシス促進物質自体、またはアポトーシス促進物質を含む組成物、またはアポトーシス促進物質を有する送達ビヒクル(例えば、微粒子またはナノ粒子、リポソームなどのキャリア)と融合されるかまたはコンジュゲートされる。
上記分子は、肝臓または膵臓、あるいは好ましくは、肝星細胞もしくは膵星細胞の表面上または肝星細胞もしくは膵星細胞の周囲の微小環境において発現されるタンパク質を標的化し得る。その標的部分は、肝星細胞または膵星細胞を同定するために当該分野において使用されるタンパク質を標的化し得る。好ましくは、アポトーシス促進物質、その組成物、ならびに肝疾患および肝線維症を処置するためにそれらを送達するためのビヒクルは、(1)活性化されたHSCに特異的に標的化され、好ましくは、他の組織または静止状態のHSCに存在する筋線維芽細胞には結合せず;(2)線維形成が活性な領域に到達することができ;(3)免疫系による耐容性がよく、細網内皮系によって非特異的に取り込まれない。
例示的な標的化ストラテジーとしては、マンノース−6−リン酸/インスリン様成長因子IIレセプターに結合する、ヒト血清アルブミンに結合されたマンノース−6−リン酸(M6P−HAS)、およびVI型コラーゲンレセプターを認識する、HASに結合された環状ペプチド(pCVI−HAS)(Beljaars,Hepatology,29:1486−1493(1999)およびBeljaarsら、J Biol Chem.,275:12743−12751(2000))が挙げられる。これらのタンパク質の構造は、さらなる化学的実体の結合を可能にし、それにより、HSCへの抗線維化剤の選択的送達が実行可能になる。別の特定の実施形態において、標的は、肝星細胞によって発現され、それらを他の筋線維芽細胞と区別するために組織学的に使用される、大きな分泌型の細胞外マトリックス糖タンパク質であるリーリンである。
標的化部分は、例えば、抗体または抗体フラグメント、例えば、肝臓、またはより好ましくは、肝臓細胞の表面上または肝星細胞の周囲の微小環境において発現される抗原に結合する免疫グロブリン(抗体)単一可変ドメイン(dAb)であり得る。抗体またはその抗原結合フラグメントは、ある細胞型または細胞状態にコンジュゲートを向かわせるために有用である。1つの実施形態において、リガンドもしくはアゴニスト、リガンドもしくはアゴニストを含む組成物、または送達ビヒクルは、抗体結合ドメイン、例えば、抗体に結合すると知られているタンパク質、例えば、Staphylococcus aureus由来のプロテインAおよびプロテインG由来の抗体結合ドメインを有する。抗体に結合すると知られている他のドメインも当該分野で公知であり、置換され得る。抗体結合ドメインは、標的化抗体とリガンドもしくはアゴニスト、またはリガンドもしくはアゴニストを含む組成物、または送達ビヒクルとの結合を容易にし得る。ある特定の実施形態において、抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、線状抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体またはそれらのフラグメントである。代表的な抗体フラグメントは、非ウイルスベクターの抗体結合部分に結合するフラグメントであり、その抗体フラグメントには、当該分野で公知である、Fab、Fab’、F(ab’)、Fvダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体および二重特異性抗体が含まれる。好ましい実施形態において、標的化抗体またはそのフラグメントは、肝星細胞表面マーカーに特異的であり、当該分野で公知であるように、ヒト宿主に対する潜在的な免疫原性を低下させるように産生される。例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子クラスター全体を含むトランスジェニックマウスは、「ヒト」抗体を産生することができ、使用され得る。1つの実施形態において、そのようなヒト抗体のフラグメントは、標的化シグナルとして使用される。好ましい実施形態において、ヒト抗体においてモデル化された一本鎖抗体は、原核生物培養物において調製される。
E.小分子およびペプチド分子
いくつかの実施形態において、アポトーシス促進物質は、TRAIL−R1および/またはR2を認識する小分子またはペプチド分子である。例示的な小分子は、当該分野で公知であり、Wangら、Nature Chemical Biology,9:84−89(2013)において論じられている。その活性は、アポトーシスタンパク質の阻害剤に対するアンタゴニストであるSmacの小分子模倣物と組み合わせて細胞死を促進する化合物に対するハイスループット化学的スクリーニングによって最初に発見された。構造活性相関研究から、DR5のクラスター化および凝集を誘導してアポトーシスをもたらすように単剤として作用し得るbioymifiと呼ばれるより強力なアナログが得られた。
一価、二価および三価のTRAIL模倣ペプチドが、Pavetら、Cancer Research,70:1101−1110,(2010)に記載されている。ゆえに、いくつかの実施形態において、アゴニスティックTRAILレセプターのリガンドまたはアゴニストは、1つまたはそれを超えるそれらの模倣物である。
投与量は、上に記載された化合物と同じ範囲内であると予想される。
F.リガンドコンジュゲート
代替の実施形態において、生体高分子または多糖が、上記リガンドまたはアゴニストにコンジュゲートされ得る。例えば、Yangら、Biomaterials,32(33):8722−9(2011)におけるように、HAがリガンドまたはアゴニストにコンジュゲートされる。Yangは、アルデヒドによって改変されたHAとIFNαのN末端基との間のカップリング反応を記載し、この反応は、HAを本明細書中に開示されるアポトーシス促進物質と結合するために使用され得る。そのIFNα含有量は、95%を超えるバイオコンジュゲーション(bioconjugation)効率で、1本のHA鎖あたり2〜9分子の範囲内で制御され得る。それらのコンジュゲートは、改善された活性およびインビボ半減期、ならびに肝臓におけるHAレセプターである過剰発現されたCD44を標的化することによって肝臓へのIFNαの高い送達を示す。HAは、アポトーシス促進(pro−apopotic)物質に結合された後に肝疾患および活性化されたHSCを標的化するリガンドとして使用され得る(Kimら、ACS Nano,4(6):3005−14(2010))。
いくつかの実施形態において、アポトーシス促進物質は、精製、タグ除去を改善するため、小分子の結合を促進するため、またはそれらの組み合わせのために改変される。タンデム型で適用されるとき、エラスチン様ポリペプチドおよびソルテースA(SrtA)トランスペプチダーゼは、組換えタンパク質のクロマトグラフィー無しの精製、および小分子へのそのタンパク質の任意選択の部位特異的コンジュゲーションについての方法を提供する(Bellucciら、Angewandte Chemie International Edition,52(13):3703−3708(2013))。この系は、高収率および高純度で生理活性タンパク質を生成するための効率的な機構を提供する。
他のタグおよび標識が当該分野で公知であり、それらとしては、例えば、SUMOタグ、通常6つまたはそれを超える、通常は連続した、ヒスチジン残基を含むHisタグ;代表的には、配列DYKDDDDK(配列番号2)を含むFLAGタグ;赤血球凝集素(HA)、例えば、YPYDVP(配列番号3);MYCタグ、例えば、ILKKATAYIL(配列番号4)またはEQKLISEEDL(配列番号5)が挙げられる。タンパク質の精製を容易にするために精製タグを使用する方法は、当該分野で公知であり、その方法は、例えば、タグがクロマトグラフィー樹脂に可逆的に結合するクロマトグラフィー工程を含む。
精製タグは、融合タンパク質のN末端またはC末端に存在し得る。精製タグは、インビボにおいて(例えば、発現中に)、またはタンパク質の単離後にエキソビボにおいて、目的のポリペプチドから分離され得る。ゆえに、精製タグは、発現後に細胞溶解産物から融合タンパク質を取り出すためにも使用され得る。
融合タンパク質は、発現または溶解度を高めるアミノ酸配列も含み得る。発現または溶解度を高める例示的なアミノ酸配列としては、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン(TRX)、NUS A、ユビキチン(Ub)および小ユビキチン関連修飾因子(small ubiquitin−related modifier)(SUMO)が挙げられる。
いくつかの実施形態において、融合タンパク質は、1つまたはそれを超えるリンカーまたはスペーサーを含む。いくつかの実施形態において、リンカーまたはスペーサーは、1つまたはそれを超えるポリペプチドである。いくつかの実施形態において、リンカーは、グリシン−グルタミン酸のジアミノ酸配列を含む。リンカーは、融合タンパク質の2つのドメイン、領域または配列を連結するためまたは接続するために使用され得る。
G.製剤
ほとんどの場合、TRAILアゴニストは、全身に送達され、最も好ましくは、注射、またはインプラント、制御放出マトリックスもしくはコーティングによって送達される。
活性な作用物質(複数可)を、送達ビヒクルを伴ってまたは伴わずに含む薬学的組成物が提供される。薬学的組成物は、非経口的投与経路(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)、経腸的もしくは経粘膜的投与経路(経鼻、経膣、経直腸または舌下)によって、または生体侵食性インサートを用いて投与するためのものであり得、各投与経路にとって適切な剤形に製剤化され得る。
ある特定の実施形態において、上記組成物は、局所的に、例えば、処置される部位(例えば、肝臓)に直接注射することによって投与される。いくつかの実施形態において、上記組成物は、意図される処置部位または意図される処置部位の近く(例えば、肝臓の近く)の脈管組織の上の脈管構造に直接、注射されるかまたはその他の方法で投与される。代表的には、局所投与は、全身投与によって達成され得る濃度よりも高い組成物の局在濃度をもたらす。
活性な作用物質(複数可)およびその薬学的組成物は、水溶液として非経口的注射によって投与され得る。その製剤は、懸濁液またはエマルジョンの形態で存在することもある。一般に、有効量の活性な作用物質(複数可)を含む薬学的組成物が提供され、その薬学的組成物は、必要に応じて、薬学的に許容され得る希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、佐剤および/またはキャリアを含む。そのような組成物は、希釈剤 滅菌水、様々な緩衝剤の内容物(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pHおよびイオン強度の緩衝食塩水;および必要に応じて、添加物、例えば、界面活性剤および可溶化剤(例えば、ポリソルベート20または80とも称される、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)および保存剤(例えば、Thimersol、ベンジルアルコール)および増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)を含む。非水性溶媒または非水性ビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油およびトウモロコシ油)、ゼラチン、および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)である。上記製剤は、凍結乾燥され得、使用の直前に再溶解/再懸濁され得る。上記製剤は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過、滅菌剤を組成物に組み込むこと、組成物に照射すること、または組成物を加熱することによって滅菌され得る。
活性な作用物質は、例えば、肺虚血を処置するための、肺投与または粘膜投与のために製剤化され得る。1つの実施形態において、上記化合物は、肺送達、例えば、鼻腔内投与または経口吸入のために製剤化される。気道は、大気と血流との間のガス交換に関与する構造である。肺は、最終的に肺胞に行き着く分枝構造であり、肺胞ではガス交換が行われる。肺胞の表面積は、呼吸器系の中で最大であり、薬物吸収が生じる場所である。肺胞は、線毛または粘液表層の無い薄い上皮で覆われており、サーファクタントリン脂質を分泌する。気道は、中咽頭および喉頭を含む上気道に続いて下気道を含み、その下気道は、気管に続いて、気管支および細気管支への分岐を含む。上気道および下気道は、誘導気道と呼ばれる。次いで、終端の細気管支は、呼吸細気管支に分かれ、そして最終的な呼吸帯、肺胞または肺深部に至る。肺深部すなわち肺胞は、全身薬物送達のための吸入治療エアロゾルの主標的である。
喘息を処置するために、低分子量薬物、例えば、ベータ−アンドロゲンアンタゴニストを含む治療的組成物の肺投与が観察された。肺において活性な他の治療薬は、全身投与され、肺吸収を介して標的化される。経鼻送達は、以下の理由から、治療薬を投与するための有望な技法であると考えられている:鼻は、上皮表面が数多くの微絨毛によって覆われていることに起因して、薬物吸収に利用可能な表面積が広く、上皮下層は、高度に血管化されており、鼻からの静脈血が体循環に直接入るので、肝臓における初回通過代謝による薬物の損失が回避され、経鼻送達は、より低用量、治療的血中レベルへのより迅速な到達、薬理学的活性のより迅速な開始、より少ない副作用、1cm3あたりの高い総血流、多孔性の内皮基底膜をもたらし、容易に利用できる。
本明細書中で使用されるエアロゾルという用語は、粒子の微細な霧の任意の調製物のことを指し、それが噴射剤を用いて生成されるか否かに関係なく、溶液または懸濁液として存在し得る。エアロゾルは、超音波処理または高圧処理などの標準的な技法を用いて生成され得る。
肺製剤用のキャリアは、乾燥粉末製剤用のキャリアと溶液として投与するためのキャリアとに分けられ得る。治療薬を気道に送達するためのエアロゾルは、当該分野で公知である。上気道を介して投与する場合、その製剤は、溶液、例えば、緩衝されたもしくは緩衝されていない、水または等張食塩水、あるいは懸濁液、鼻腔内投与の場合、滴剤またはスプレーとして、製剤化され得る。好ましくは、そのような溶液または懸濁液は、鼻分泌物に対して等張性であり、例えば、約pH4.0〜約pH7.4またはpH6.0〜pH7.0の範囲の、ほぼ同じpHのものである。緩衝液は、生理的に適合性であるべきであり、単なる例として、リン酸緩衝液が挙げられる。例えば、代表的な経鼻うっ血除去薬は、約6.2のpHに緩衝されていると記載される。当業者は、経鼻投与および/または上気道投与のための無害な水溶液にとって好適な食塩水の含有量およびpHを容易に決定できる。
好ましくは、水溶液は、水、塩および/もしくは緩衝剤を含む生理的に許容され得る水溶液、例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)、または動物もしくはヒトへの投与にとって許容され得る他の任意の水溶液である。そのような溶液は、当業者に周知であり、それらとしては、蒸留水、脱イオン水、純水または超純水、食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な水性ビヒクルとしては、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。水性懸濁液は、懸濁化剤、例えば、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドンおよびトラガカントゴム、ならびに湿潤剤、例えば、レシチンを含み得る。水性懸濁液に適した保存剤としては、p−ヒドロキシ安息香酸エチルおよびp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピルが挙げられる。
別の実施形態において、低毒性有機(すなわち、非水系)クラス3残留溶媒である溶媒、例えば、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、エチルエーテルおよびプロパノールが、上記製剤のために使用され得る。その溶媒は、それが製剤を容易にエアロゾル化する能力に基づいて選択される。その溶媒は、化合物と有害に反応するべきでない。化合物を溶解するかまたは化合物の懸濁液を形成する適切な溶媒が使用されるべきである。その溶媒は、溶液または懸濁液のエアロゾルの形成を可能にするのに十分に揮発性であるべきである。さらなる溶媒またはエアロゾル化剤(例えば、フレオン)は、溶液または懸濁液の揮発性を高めるために所望のとおり加えられ得る。
1つの実施形態において、組成物は、微量のポリマー、界面活性物質または当業者に周知の他の賦形剤を含み得る。この文脈において、「微量」は、肺における化合物の取り込みに影響し得るかまたはその取り込みを媒介し得る賦形剤が存在しないこと、および存在する賦形剤が、肺における化合物の取り込みに悪影響を及ぼさない量で存在することを意味する。乾燥脂質粉末は、それらが疎水性の性質であることを理由に、エタノールに直接分散され得る。クロロホルムなどの有機溶媒中に保存された脂質の場合、所望の量の溶液がバイアルに入れられ、窒素流の下でクロロホルムが蒸発されることにより、ガラスバイアルの表面上に乾燥した薄膜が形成される。その薄膜は、エタノールで再構成されると、容易に膨潤する。その懸濁液は、超音波処理されることにより、脂質分子が有機溶媒に完全に分散される。脂質の非水懸濁液もまた、再利用可能なPARI LC Jet+噴霧器(PARI Respiratory Equipment,Monterey,CA)を用いて無水エタノール中に調製され得る。
粒径の大きな乾燥粉末製剤(「DPF」)は、改善された流動特性、例えば、より凝集しないこと、より容易なエアロゾル投与および潜在的により少ないファゴサイトーシスを有する。吸入治療のための乾燥粉末エアロゾルは、一般に、主に5ミクロン未満の範囲の平均直径で生成されるが、好ましい範囲は、1〜10ミクロンの空気力学的直径である。大きな「キャリア」粒子(薬物を含まない)は、他の可能性のある利点の中でも効率的なエアロゾル投与の達成を助ける治療的なエアロゾルと共送達されている。
III.処置方法
上記組成物は、通常、注射によって投与されるが、いくつかの実施形態において、局所的(手術中の場合)または粘膜表面(直腸に、膣に、経口でまたは肺に)に投与され得る。これらは、溶液で、インプラントもしくはゲルで、乾燥した形態の乾燥粉末として、または、再溶解もしくは再懸濁して投与され得る。
下記の実施例は、活性化された細胞(例えば、肝星細胞および膵星細胞)が、TRAIL−R1(DR4)および/またはTRAIL−R2(DR5)アゴニストによって特異的に標的化され得、殺滅され得、そしてTRAILによって誘導されるアポトーシスに至ることを例証する。重要なことには、そのような活性化された星細胞を排除することによって、高度にアップレギュレートされた線維症関連分子が、線維症インビボモデルにおいて同時にダウンレギュレートされた。これは、それらの化合物が、活性化された線維芽細胞、筋線維芽細胞性細胞(myofibroblastic cell)、筋線維芽細胞(myofibroblast)、ならびに活性化された内皮細胞および上皮細胞が、過剰量の細胞外マトリックスを産生するかまたは誘導して、望まれない線維症または瘢痕をもたらす病理学的状態を処置するために使用することができることを実証している。その瘢痕または線維症は、肝臓、膵臓、肺、心臓、腎臓、腸、皮膚または動脈におけるものであり得る。
活性化された線維芽細胞、筋線維芽細胞性細胞、筋線維芽細胞、ならびに過剰な細胞外マトリックスを産生する内皮細胞および上皮細胞を特異的に標的化し、減少させ、阻害し、および/または上記器官から除去する方法もまた提供される。
下記でより詳細に論じられるように、上記方法は、通常、代表的には、線維症、肝硬変またはそれらの合併症、例えば、腹水または疼痛の基礎をなす細胞のアポトーシスを誘導するかまたは増加させることによって線維症を減少させるために、線維症を有するかまたは線維症を発症する可能性のある被験体に、有効量のアポトーシス促進物質を投与することを含む。本明細書中で使用されるとき、「減少させる」は、サイズ、硬さ(瘢痕組織におけるとき)または当業者が理解する因子の組み合わせを減少させることであり得る。
A.肝疾患
好ましい実施形態の1つにおいて、上記組成物および方法は、肝疾患を処置するために使用される。肝線維症は、炎症反応として作用して、慢性的な肝臓の損傷に至る、過剰な細胞外マトリックスの産生、主に、I型コラーゲンの産生を特徴とする。先進工業国における肝線維症の主な原因としては、慢性C型肝炎ウイルス(HCV)への感染、アルコール乱用および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が挙げられる(Batallerら、.Clin.Inves.,115(2):209−18(2005))。進行性肝線維症は、最終的には肝硬変および脈管構造の変形(vasculature distortion)に至り、さらに、肝不全、門脈圧亢進症(PHT)、肝細胞癌(HCC)および早死に至る。PHTは、さらなる合併症、例えば、胃腸出血、腹水、脳障害(encephalophathy)および血小板レベルの低下または白血球数の減少の引き金も引き得る。肝線維症および肝硬変の処置は、より高い標準治療を提供し得、線維症カスケードに直接関係する合併症を減少させ得る。肝臓における損傷を引き起こす因子を除去した後、線維症カスケードの進行は、減速し得るかまたは退行し得る。肝星細胞(HSC)が肝臓におけるECMの過剰発現における主犯であると同定された1985年になって初めて、潜在的な治療薬を研究することができるようになった。
慢性的な肝臓の損傷または疾患において、静止状態のHSCは、活性化を起こし、ビタミンAが豊富な星形の細胞から、線維形成性の特徴を獲得する、高度に増殖している筋芽細胞様のビタミンA欠乏細胞に変換する(Batallerら、.Clin.Inves.,115(2):209−18(2005);Friedmanら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA;82(24):8681−5(1985);Senoo,Medical electron microscopy:official journal of the Clinical Electron Microscopy Society of Japan 37(1):3−15(2004))。その活性化されたHSCは、アルファ−平滑筋アクチン(アルファ−SMA)を発現し、I型コラーゲンを分泌する(Friedmanら、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America;82(24):8681−5(1985);Rockeyら、Journal of submicroscopic cytology and pathology,24(2):193−203(1992);Ramadoriら、Virchows Archiv B,Cell pathology including molecular pathology 59(6):349−57(1990))。肝臓損傷における主要な線維形成性の細胞型として、以前は脂質細胞、Ito細胞または傍類洞(preisinusoidal)細胞として知られていた、活性化されたHSCの同定は、このプロセスに関与する鍵となるサイトカインの認識とともに、抗線維化剤に対する数多くのストラテジーを提供した(Batallerら、.Clin.Invest.,115(2):209−18(2005))。
過剰なECMを予防するために、活性化されたHSCの蓄積を減少させようとする治療が試みられ、それは、実験モデルにおいて有効であると証明された(Wynnら、Nature medicine,18(7):1028−40(2012);Cohenら、Ther.adv.gastroent.,4(6):391−417(2011);Kisselevaら、Best practice & research Clinical gastroenterology,25(2):305−17(2011))。例えば、レニンアンジオテンシン系遮断剤および抗酸化剤は、瘢痕組織の蓄積を減少させ得るが、実験モデルにおいてのみ、有効性を示した。現在、肝線維症および肝硬変の処置における多くのストラテジーが提案されている(Friedmanの表1、Bruce A Runyon ACT,ed.UpToDatecom,(2011)中)。活性化されたHSCまたはそれらの活性化、増殖および機能を標的化することが、重要な抗線維化ストラテジーである(Friedman、Bruce A Runyon ACT,ed.UpToDatecom,(2011)中;Breitkopfら、Clinical and Experimental Research,29:121S−31S(2005);Kisselevaら、Journal of Gastroenterology and Hepatology,21:S84−S87(2006))。HSCの逆転は、多くの形態の肝細胞損傷に対する動物モデルにおいて線維症の後退を促進すると示した(Kisselevaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,109(24):9448−53(2012);Troegerら、Gastroenterology,143(4):1073−83(2012))。しかしながら、HSCの活性化および線維形成が終了したとしても、逆転したHSCは、繰り返される線維形成性の刺激に対して高い応答性を有することから、これらのHSCが、静止状態に完全に戻っていないことが示される(Troegerら、Gastroenterology,143(4):1073−83(2012))。別の提案されている様式は、逆転よりもアポトーシスを好む活性化されたHSCの排除である(Batallerら、Semin Liver Dis,21(03):437−52(2001);Friedman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,109(24):9230−1(2012))。
これは、ラットにおける肝線維症からの自然回復のモデルにおいてさらに検証され、そのモデルでは、活性化されたHSCのアポトーシスは、線維症の消散にとって極めて重要な寄与をしていた(Iredaleら、J Clin Invest,102(3):538−49(1998))。このモデルにおける活性化されたHSCは、線維症のマトリックスを産生すること、ならびに組織メタロプロテイナーゼ阻害物質(TIMP)を産生することによってそのマトリックスを分解から保護することに関与すると示された。しかしながら、重要なことには、この文献は、本明細書中に開示される方法のような、肝星細胞において特異的にアポトーシスを促進する治療的アプローチが無いことを報告している。
B.肝疾患を処置する方法
処置方法は、通常、それを必要とする被験体における肝臓の望まれない瘢痕をもたらす過剰量の細胞外マトリックスを産生するかまたは誘導する、1つまたはそれを超える標的細胞タイプ、例えば、肝星細胞、線維筋芽細胞、線維筋芽細胞性細胞、活性化された内皮細胞または活性化された上皮細胞のアポトーシスを誘導するかまたは増加させるために、その被験体に、有効量のアポトーシス促進物質、例えば、アゴニスティックTRAILレセプターの1つまたはそれを超えるリガンドまたはアゴニストを投与することを含む。好ましい実施形態において、標的細胞は、肝星細胞である。
代表的には、アポトーシス促進物質は、1つまたはそれを超える標的細胞型についてのアポトーシスを増加させるのに有効な量で被験体に投与される。好ましくは、アポトーシスのレベルは、肝疾患またはその1つもしくはそれを超える症候の発生または進行を減少させるかまたは阻害するのに有効である。例えば、いくつかの実施形態において、アポトーシス促進物質は、線維症を減少させるかもしくは線維症の後退を増加させるか、瘢痕組織の蓄積を減少させるか、線維症カスケードの進行を減少させるか、細胞外マトリックスの蓄積を減少させるか、肝硬変を減少させるか、またはそれらの組み合わせに有効な量で投与される。
肝星細胞のアポトーシスおよび肝線維症の消散は、いくつかの技法を用いて被験体において評価され得る。被験体が罹患している肝疾患の全体的な改善もまた調べられ得る。被験体の状態および被験体における肝機能を評価することにより、肝疾患、特に肝線維症に関連する1つまたはそれを超える症候の重症度の任意の低下またはその全体的な消失をモニターすることができる。例えば、黄疸、体液貯留、挫傷しやすさ、鼻出血の頻度、皮膚または爪の状態に任意の変化があるかまたはないかが、評価され得る。被験体の全般的な健康状態が改善し得、これは、回復の指標として評価され得る。被験体は、食欲の増大、悪心の発生率もしくは重症度の低下、体重の増加、ならびに/または体力およびエネルギーに関する全身的な感覚を示し得る。被験体は、入院の頻度または他の医学的な配慮の必要性も低下させ得る。
被験体の肝機能は、改善され得るかまたは増大し得る。肝機能は、安定化し得る。これは、種々の方法で評価され得る。肝臓生検または血液サンプルが採取され得、肝機能のマーカーが測定され得る。調べられ得る肝機能のマーカーとしては、ヒアルロン酸、プロコラーゲンIIINペプチド、プロコラーゲンICペプチド、Undulin−コラーゲン16、7S IV型コラーゲン、MMP−2およびTIMP−1レベルが挙げられる。
被験体の肝臓は、減少した結節形成(nodulization)、ネクローシス、炎症またはそれらの組み合わせを示し得る。特に、被験体の肝臓は、肝臓における線維症の量の減少すなわち安定化を示し得る。肝臓における線維症の材料の存在は、減少し得、これは、Sirius redなどの染料を用いて肝臓生検からの切片を染色することによって決定され得る。特定の線維症の細胞外マトリックス成分、例えば、コラーゲン、特にコラーゲンIおよびIIIなどの存在および量が決定され得る。被験体におけるTIMPおよび/またはMMPのレベルならびにTIMP発現の減少を決定するために、生化学的解析も行うことができる。
肝臓における肝星細胞のアポトーシスも、肝臓生検から決定され得る。肝星細胞のアポトーシスの頻度の任意の変化、特に任意の増加が、計測され得る。アポトーシス細胞は、いくつかの周知の方法を用いて同定され得る。TUNEL染色(ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介性デオキシウリジン三リン酸ニック末端標識)などの技法を用いることにより、アポトーシス細胞を同定することができる。TUNEL染色は、アポトーシス細胞をインサイチュにおいて同定するのに使用することができるので、特に有用である。共染色を介すると、アポトーシスを起こしている細胞が肝星細胞であることを、α−平滑筋アクチンを発現している細胞に対する染色などによって、確認することができる。
アポトーシスを同定するためおよび/または定量するための他の周知の技法、例えば、アネキシンV染色、一本鎖DNAに対する抗体、カスパーゼ基質アッセイ、ライゲーション媒介性PCRおよび細胞膜透過性染色などが、使用され得る。DNAの断片化は、ゲル電気泳動によって解析され得る。染色は、アポトーシスに関連する形態学的特性、例えば、膜ブレブ形成および核の分解を決定するためにも使用され得る。アクリジンオレンジ染色を用いることにより、アポトーシス(apoptotoic)細胞を同定することができる。DNA含有量を解析するために、細胞は、ヨウ化プロピジウムで染色され得る。トリパンブルー染色などの検査を用いることにより、膜細胞(membrane cell)がインタクトであること、およびそれらがアポトーシスであってネクローシスではないことを確認することができる。
アポトーシス促進物質の投与の効果は、コントロールと比較され得る。好適なコントロールは、当該分野で公知であり、それらとしては、例えば、マッチさせた無処置の被験体または標的細胞のアポトーシスを誘導しないもしくは増加させない治療薬を投与されたマッチさせた被験体が挙げられる。
上記組成物は、上で論じられたように、局所的にまたは全身に投与され得る。特定の実施形態において、上記組成物は、肝臓への経皮注射によって被験体に投与される。その注射は、肝臓における線維症もしくは瘢痕の部位、過剰な細胞外マトリックスの蓄積の部位、活性化されたもしくは増殖しているHSCの部位、または罹患肝臓の別の生化学的、組織学的もしくは形態学的マーカーの部位に、および/あるいはそれらの部位の近くにおけるものであり得る。下記でより詳細に論じられるように、上記組成物は、単独でまたはさらなる活性な作用物質と併用して投与され得る。
IV.併用療法
本明細書中に開示される1つまたはそれを超えるアポトーシス促進物質、およびそれらの組成物は、それを必要とする被験体に、単独でまたは1つもしくはそれを超えるさらなる活性な作用物質と併用して投与され得る。いくつかの実施形態において、第2の活性な作用物質は、線維症性疾患、特に、肝臓線維症性疾患を処置するための当該分野で公知の作用物質である。いくつかの実施形態において、第2の活性な作用物質は、肝星細胞を調節する作用物質、例えば、肝星細胞の増殖を減少させるか、肝星細胞の活性化もしくは活性を減少させるか、星細胞のアポトーシスを増加させるか、細胞外マトリックスもしくはその成分、特にコラーゲンの沈着を減少させるか、細胞外マトリックスまたはその成分、特にコラーゲンの分解を増加させるか、またはそれらの任意の組み合わせを行う作用物質である。いくつかの実施形態において、第2の活性な作用物質は、有効性を高めるか、効果を増強するか、あるいはその他の方法で、リガンドもしくはアゴニストに対する細胞の性能または感受性を改善する。
いくつかの実施形態において、第2の活性な作用物質は、肝星細胞の調節に関係しない。例えば、いくつかの実施形態において、第2の作用物質は、肝臓の炎症を減少させる。いくつかの実施形態において、第2の活性な作用物質は、肝星細胞の増殖、活性、活性化またはアポトーシスに影響することなく、肝線維症の1つまたはそれを超える症候を処置するかまたは減少させる作用物質であり得る。
例示的なさらなる治療薬としては、グリチルリチン(glycyrrhizin)、ハロフギノン、肝細胞成長因子(HGF)、HOE077、インターフェロン−α、インターフェロン−γ、インターロイキン−10、マロチラート、ペントキシフィリン、ホスファチジルコリン、S−アデノシル−L−メチオニン(SAMe)、飽和脂肪酸、小柴胡湯、シリマリン(Sylimarin)、トランスフォーミング成長因子β(TGF−β)阻害剤、TNP470、トコフェロール、トリコスタチンAおよびウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター(uPA)(Batallerら、Semin Liver Dis.,21(3)(2001)が挙げられるが、これらに限定されない。
A.第2の活性な作用物質
1.抗酸化剤
第2のまたはそれに続く活性な作用物質は、抗酸化剤であり得る。例示的な抗酸化剤としては、ビタミンE(α−トコフェロール)、シリマリン(Silybum marianumから抽出されたフラボノイド抗酸化剤)、ホスファチジルコリン(PPC)、S−アデノシル−L−メチオニン(SAMe)、レチノイド(レチニルパルミテート)および天然のフェノール化合物(レスベラトロールおよびケルセチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
2.HSCの遊走または周囲の細胞外マトリックスとの相互作用を阻害する作用物質
いくつかの実施形態において、第2のまたはそれに続く活性な作用物質は、肝星細胞の遊走、またはそれらの細胞とそれらの微小環境、例えば、周囲のもしくは下層の細胞外マトリックスとの間の相互作用を減少させるかまたは阻害する作用物質である。血小板由来成長因子(PDGF)−BB、トランスフォーミング成長因子(TGF)−ベータ1および/または上皮成長因子(EGF)によるHSCの刺激は、遊走能を高め、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)−2活性をアップレギュレートする(Yangら、Gastroenterology,124(1):147−59(2003))。PDGF−BBによって誘導される遊走は、増殖の増加に関連すると考えられており、TGF−ベータ1/EGFによって誘導される遊走は、増殖とは無関係であるようである。Yangら(上掲)は、MMP−2およびMMP−9の阻害剤であるCOL−3が、PDGF−BBまたはTGF−ベータ1の直接的な活性化によって誘導されるHSCの遊走を阻害したが、直接的な接触無しでは走化性刺激物によって誘導される遊走には影響しなかったことから、PDGF−BBまたはTGF−ベータ1によって誘導される遊走の2つの異なるMMP依存的機構およびMMP非依存的機構が示されたことも報告している。
ゆえに、いくつかの実施形態において、第2の活性な作用物質は、PDGF−BBによって誘導される遊走、TGF−ベータ1によって誘導される遊走またはそれらの組み合わせを減少させるかまたは阻害する作用物質である。例示的な阻害剤は、COL−3であり、これは、臨床試験の対象になっている。第1相試験は、COL−3の用量を36mg/m2/dから漸増させて被験体に投与することを含み、最大耐量が98mg/m2/dであることおよび70mg/m2/dにおいて良好な耐容性を示すことが見出された。
PDGF−BB、TGF−ベータ1およびコラーゲンIによって誘導される遊走は、アルファ(1)−および/またはアルファ(2)−インテグリン遮断抗体、ならびに競合的RGDアンタゴニストによっても阻害され得、研究から、クルクミン(curcumine)が、MMP−2の発現および活性を減少させることによって、活性化されたHSCの遊走および浸潤を阻害することが示される(Huangら、Zhonghua Gan Zang Bing Za Zhi,17(11):835−8(2009)。他の証拠は、インターフェロン−αおよびγもまた、HSCを阻害し得るか、またはそれらのアポトーシスを増加させ得ることを示す(Wengら、J Hepatol.,59(4):738−45(2013)および(Glassnerら、Lab Invest.,92(7):967−77(2012))。
3.肝臓の炎症を阻害する作用物質
いくつかの実施形態において、第2のまたはそれに続く活性な作用物質は、肝臓の炎症を減少させるかまたは阻害する作用物質である。例示的な抗炎症薬としては、コルチコステロイド、コルヒチンおよびマロチラートが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態において、第2のまたはそれに続く活性な作用物質は、炎症促進性因子またはサイトカインの活性を減少させるかまたは阻害する作用物質である。例えば、その作用物質は、肝臓組織におけるネクローシスおよび炎症を減少させ得る、インターロイキン−1レセプターアンタゴニストまたは可溶性腫瘍壊死因子−α(TNF−α)レセプターであり得る。さらに、IL−10は、炎症促進性Th1応答をダウンレギュレートすると示された。組換えインターロイキン−10で処置された慢性HCV感染を有する患者は、肝臓の炎症の改善だけでなく、線維性瘢痕の最初の沈着の消散も示した(Louisら、Hepatology,28:1607−1615(1998))。
4.TGF−β活性を阻害する作用物質
いくつかの実施形態において、第2の活性な作用物質は、TGF−β活性を阻害する。TGF−βとそのレセプターとの結合を防止するために用いられるアプローチとしては、ドミナントネガティブII型TGF−βレセプターの使用、ヒトIgGのFc部分に融合されたII型レセプターの外部ドメインの発現、短縮型のII型レセプターの発現、および可溶性II型レセプターの構築が挙げられる。組換えタンパク質としてのまたは遺伝子治療によるHGFは、種々の実験モデルにおいて肝線維症の進行を予防することにおいても有効であり、潜在的な欠点および長期間の全身性のまたは全体的なTGF−βの阻害の危険なしに、HSCの増殖、コラーゲンの形成およびTGF−bの発現を調節するために使用することができる。
いくつかの実施形態において、第2の活性な作用物質は、マイクロRNAまたはその模倣物である。miR−17−92クラスターのメンバー(19a、19b、92a)は、活性化されたHSCにおいて有意にダウンレギュレートされる(Laknerら、Hepatology,56(1):300−10(2012))。特に、TGF−βシグナル伝達成分のmiR 19b模倣物による負の制御は、TGF−βレセプターII(TGF−βRII)およびSMAD3の発現の減少、miR 19bとTGF−βRIIの3’非翻訳領域との結合、TGF−βシグナル伝達の阻害、I型コラーゲンの発現の減少、ならびにα1(I)およびα2(I)プロコラーゲンmRNAの、TGF−βによって誘導される発現の遮断によって、実証された。miR 19bは、形態学的評価および平滑筋α−アクチンの発現の減少によって、活性化されたHSCの表現型も弱めた(blunted)。ゆえに、好ましい実施形態において、マイクロRNAは、miR 19bまたはその模倣物である。
5.化学療法剤
アゴニスティックTRAILレセプターのリガンドは、単独、および化学療法剤などの従来のがん処置との併用の両方で、がんの処置での使用について調べた。いくつかの報告は、化学療法薬が、TRAILによって誘導されるアポトーシスに対して細胞を感受性にし得ることを示しており、いくつかの結果は、それらの2つの作用物質の併用が、それらの作用物質が単独で使用されたときの効果の合計よりも有効であることを示している(Cuelloら、Gynecol Oncol.,81(3):380−90(2001)Wuら、Vitam Horm.,67:365−83(2004))。ゆえに、いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される被験体および疾患は、アゴニスティックTRAILレセプターのリガンドまたはアゴニストと化学療法剤との併用で処置される。いくつかの実施形態において、被験体は、がんを有しない。
例示的な化学療法薬としては、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、タキソールおよびその誘導体、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、エピポドフィロトキシン、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、セツキシマブおよびリツキシマブ(RITUXAN(登録商標)またはMABTHERA(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
B.併用療法についての投与量および処置レジメン
本明細書中に開示される処置方法は、通常、疾患もしくはその症候の処置、または所望の生理学的変化を達成するための方法を含み、その方法は、肝疾患またはその症候を処置するためまたは生理学的変化をもたらすために、動物(例えば、哺乳動物、特に人間)に有効量のアポトーシス促進物質を投与することを含む。いくつかの実施形態において、アポトーシス促進物質は、さらなる活性な作用物質と併用される。そのアポトーシス促進物質およびさらなる活性な作用物質は、同じ組成物の一部としてなど一緒に投与され得るか、または同時にもしくは異なる時点において別々におよび独立して投与され得る(すなわち、そのリガンドまたはアゴニストの投与と第2の活性な作用物質の投与とは、互いと有限の期間だけ離れている)。ゆえに、用語「併用」または「併用される」は、リガンドまたはアゴニストと第2の活性な作用物質との共同(concomitant)投与、同時(simultaneous)投与または逐次投与のいずれかのことを指すために使用される。それらの組み合わせは、共同して(例えば、混合物として)、別々であるが同時に(例えば、同じ被験体への別個の静脈内ラインを介して;一方の作用物質は、経口的に投与され、他方の作用物質は、注入または注射によって投与されるなど)または順次投与され得る(例えば、1つの作用物質がまず投与された後、第2の作用物質が投与される)。
好ましい実施形態において、第2の活性な作用物質と併用されるアポトーシス促進物質の投与は、そのアポトーシス促進物質および第2の活性な作用物質が単独でまたは孤立して投与されるときよりも高い結果を達成する(すなわち、その併用によって達成される結果は、個々の成分によって単独で達成される結果を足し合わせたものよりも高い)。いくつかの実施形態において、併用して使用される一方または両方の作用物質の有効量は、別々に投与されたときの各作用物質の有効量よりも少ない。いくつかの実施形態において、併用療法において使用されるときの一方または両方の作用物質の量は、単独で使用されるときの治療量以下である。
併用療法の処置レジメンは、リガンドまたはアゴニストの1回または複数回の投与を含み得る。併用療法の処置レジメンは、第2の活性な作用物質の1回または複数回の投与を含み得る。
いくつかの実施形態において、アポトーシス促進物質は、第2の活性な作用物質の1回目の投与の前に投与される。他の実施形態において、リガンドまたはアゴニストは、第2の活性な作用物質の1回目の投与の後に投与される。
リガンドまたはアゴニストは、第2の活性な作用物質の投与の少なくとも1、2、3、5、10、15、20、24もしくは30時間前または少なくとも1、2、3、5、10、15、20、24もしくは30日前、あるいは少なくとも1、2、3、5、10、15、20、24もしくは30時間後または少なくとも1、2、3、5、10、15、20、24もしくは30日後に投与され得る。
作用物質の投与レジメンまたは投与サイクルは、完全にもしくは部分的に重複し得るか、または逐次的であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、アポトーシス促進物質のそのような投与(複数可)のすべては、第2の活性な作用物質の投与前または投与後に行われる。あるいは、アポトーシス促進物質の1もしくはそれ超の用量の投与は、一様のまたは一様でない処置過程を形成するために、第2の治療薬の投与と時間的にずらされ得、それにより、1もしくはそれ超の用量のアポトーシス促進物質が投与された後、1もしくはそれ超の用量の第2の活性な作用物質が投与され、その後、1もしくはそれ超の用量のアポトーシス促進物質が投与されるか;または1もしくはそれ超の用量の第2の活性な作用物質が投与された後、1もしくはそれ超の用量のアポトーシス促進物質が投与され、その後、1もしくはそれ超の用量の第2の活性な作用物質が投与される;などであり、スケジュールが何であれ研究者または治療を施す臨床医が選択するかまたは望むすべてに従う。
有効量の各作用物質が、単一の単位投与量(例えば、投薬単位として)としてまたは有限の時間間隔にわたって投与される治療用量以下の用量として投与され得る。そのような単位用量は、有限の期間(例えば、最大3日間または最大5日間または最大7日間または最大10日間または最大15日間または最大20日間または最大25日間)にわたって、毎日、投与され得る。
V.キット
医学的キットも開示される。医学的キットは、例えば、アポトーシス促進物質の投薬供給品、好ましくは、アゴニスティックTRAILレセプターに対するリガンドまたはアゴニストを単独でまたは第2の治療薬と組み合わせて含み得る。第2の治療薬を組み合わせるとき、それらの活性な作用物質は、単独で供給され得るか(例えば、凍結乾燥されたもの)、または薬学的組成物(例えば、混合物)中に供給され得る。活性な作用物質は、単位投与量として、または投与前に希釈されるべき原液として、存在し得る。いくつかの実施形態において、キットは、薬学的に許容され得るキャリアの供給を含む。キットは、活性な作用物質または組成物を投与するためのデバイス、例えば、注射器も含み得る。キットは、上に記載されたような使用において化合物を投与するための印刷された指示を含み得る。
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによって、さらに理解される。
実施例1:活性化されたヒト初代肝星細胞(HSC)および膵星細胞(PSC)によるTRAIL−R1/DR4およびTRAIL−R2/DR5の発現
材料および方法
ヒト初代星細胞
ヒト初代HSC、PSCおよび星細胞培地(SteCM)は、ScienCell Research Laboratories(Carlsbad,CA)から入手した。細胞を、ポリ−l−リジンがコーティングされたプレート内の、2%のFBS、1%の星細胞成長サプリメントおよび1%のペニシリン/ストレプトマイシン溶液が補充されたSteCM培地中で培養した。初代星細胞を活性化するために、次いで、細胞を6ウェルプラスチック培養プレートにおいて1、4、7および14日間培養し、回収した。培養された星細胞におけるDR−4、DR−5およびα−SMAの発現を、ウエスタンブロット解析およびリアルタイムPCRによって決定した。
比較定量的リアルタイムRT−PCR
培養された細胞由来の全RNAを、TRIzol試薬(Life Technologies,Grand Island,NY)を用いて抽出し、Reverse Transcription System(Life Technologies,Grand Island,NY)を用いてcDNAに逆転写した。比較定量的リアルタイムPCRを、SYBR Green Master Mix(Life Technologies,Grand Island,NY)を製造者の指示に従って使用し、StepOnePlus Real−Time PCR System(Life Technologies,Grand Island,NY)を用いて、各サンプルに対して2つ組で行った。標的遺伝子の発現レベルを、GAPDHの発現に対して正規化し、比較サイクル閾値Ct法(2−ΔΔCt)に基づいて算出した。コラーゲン1およびα−SMA、TGF−β、Timp−1、TRAILR1/DR−4およびTRAILR2/DR−5プライマーをそのPCRのために使用した。
ウエスタンブロット解析
培養された細胞を、氷冷PBSで3回洗浄し、プロテアーゼ阻害剤(Santa Cruz Biotechnology,Dallas,TX)を含む冷溶解緩衝液中に回収した。次いで、細胞を超音波処理し、遠心分離し、上清をタンパク質濃度について計測した。抗α−SMA(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)、抗TGF−β(Cell signaling,Beverly,MA)、抗DR−4(Santa Cruz Biotechnology,Dallas,TX)および抗DR−5(Abcam,Cambridge,MA)を、活性化された星細胞および肝線維症のマーカーのために使用した。抗切断型PARP−1(Cell signaling)を、アポトーシスに対するマーカーとして使用した。抗β−アクチン抗体(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を、タンパク質ローディングコントロールのために使用した。
結果
ヒト初代HSCおよびPSCは、まいたときから徐々に活性化し、次第にDR4およびDR5を発現する。TRAIL−R1/DR4およびTRAIL−R2/DR5の遺伝子発現を確かめるために、培養された細胞においてリアルタイムPCRを行った。DR4およびDR5の遺伝子発現は、HSCおよびPSCの活性化とともに徐々に増加した。mRNAの発現を、リアルタイムPCRを用いて評価した。リアルタイムPCR解析に基づくと、星細胞活性化のマーカーであるα−SMA、コラーゲン1、TGF−β、ならびにMMP−2、9、13およびTimp−1は、活性化された初期の星細胞(4日目)および完全に活性化された星細胞(7および14日目)においてアップレギュレートされたが、細胞が静止段階の間には検出されなかった。ウエスタンブロット解析によって確認されたTRAIL−R1/DR4およびR2/DR5のタンパク質レベルもまた、高度に活性化された星細胞において誘導されたが、静止状態の細胞においては誘導されなかった。同様に、アルファSMA(α−SMA)は、培養された細胞における0日目には検出されなかったが、細胞を培養後4および7日目では、強く増強された。β−アクチンコントロールは、0、4および7日目において等しく存在した。HSCの活性化中に、DR5およびα−SMAの発現は確認された(データ示さず)。この結果は、HSCおよびPSCが、デスレセプターの発現を開始し、活性化プロセスの間に既存のデスレセプターを過剰発現することを実証している。
実施例2:活性化されたヒト初代HSCおよびPSCは、TRAILアゴニストによって誘導されるアポトーシスに対して感度の増強を明らかに示す
材料および方法
アポトーシスの免疫蛍光染色
細胞を、35mm培養皿(MatTek corporation,Ashland,MA)におけるカバーガラス上にまき、1、4、7および14日間成長させた。次いで、細胞を、それらの日において、1マイクログラム/ml(μg/ml)のTRAIL、PEG−TRAILまたは50ng/mlの抗DR5抗体(R&D systems,Minneapolis,MN)を含むTRAILアゴニスト有りまたは無しで3時間処理した。細胞を冷PBSで2回洗浄し、PBS中の4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定した。アポトーシスを検出するために、TdT In Situ Apoptosis Detection Kit(TUNEL)−Fluorescein(R&D systems,Gaithersburg,MD)を、製造者の指示に従って使用した。簡潔には、細胞をプロテイナーゼKとともに室温において15分間インキュベートし、次いで、DWで2回洗浄し、TdT標識緩衝液に浸漬し、次いで、TdT標識反応混合物とともに37℃において1時間インキュベートした。次に、細胞をTdT停止緩衝液で処理することにより、標識反応を停止し、DWで2回洗浄した。最後に、Step−Fluor溶液を加え、細胞をRTにおいて20分間インキュベートし、PBSで2回洗浄した。DAPI入り蛍光封入剤(Fluorescence Mounting Medium with DAPI)(Vector Laboratories,Burlingame,CA)をそれらのサンプルに適用した。アポトーシスに対しては495nmフィルターおよびDAPIに対しては358nmフィルターを用いて蛍光顕微鏡下でサンプルを調べた。
ウエスタンブロット解析
培養された細胞を氷冷PBSで3回洗浄し、プロテアーゼ阻害剤(Santa Cruz Biotechnology,Dallas,TX)を含む冷溶解緩衝液中に回収した。次いで、細胞を超音波処理し、遠心分離し、上清のタンパク質濃度を計測した。抗切断型PARP−1(Cell signaling)を、アポトーシスに対するマーカーとして使用した。抗β−アクチン抗体(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)をタンパク質ローディングコントロールのために使用した。
細胞生存率(MTTアッセイ)
HSCおよびPSCを48ウェル平底プレートにまき、1、4、7および14日間培養した。1、4、7、14日目に、それらの細胞を、TRAIL、PEG−TRAILおよびTRAILアゴニスティック抗体である抗DR5抗体とともに37℃において3時間インキュベートした。示された時点において、5μg/mlという最終濃度のMTT溶液を1時間にわたって各ウェルに加えた。培地を除去した後、200mlのDMSOを各ウェルに加えることにより、ホルマザン結晶を溶解した。590nmにおける吸光度を、マイクロプレートリーダー(Bio−Tek Instruments,Inc,Winooski,VT)を用いて決定した。各条件に対して3つ組のウェルをアッセイした。
結果
活性化されたヒト初代HSCおよびPSCは、TRAILによって誘導されるアポトーシスに対して感度の増強を示した。HSCおよびPSCを、培地中での培養の1、4、7および14日後に、それぞれTRAIL、PEG−TRAILおよびTRAILアゴニスティック抗体である抗DR5抗体とともに3時間インキュベートした。明視野顕微鏡(Nikon metrology,Brighton,MI)を用いて細胞培養プレートから直接写真撮影することによって、7および14日後のTRAILで処理された細胞において、コントロール細胞ならびにアポトーシス細胞と比べてTUNEL蛍光の増加が観察されたことによって示されるように、高度に活性化されたHSCおよびPSC(7および14日目)は、より活性化されていないHSCおよびPSC(1および4日目)よりも感受性である。さらに、アポトーシスマーカーである切断型PARP−1のタンパク質レベルは、ウエスタンブロット解析によって確認された。7および14日目の活性化されたHSCおよびPSCをTRAILアゴニストで処理したとき、活性化された星細胞において、アポトーシスマーカーである切断型PARP−1の発現が、TRAILによって誘導されるアポトーシスの証拠として明らかに観察された。
TRAILアゴニストに対する活性化されたHSCおよびPSCのTRAIL感度を定量的に解析するために、3時間のインキュベーション後のMTTアッセイによって計測される、無処理の細胞と比較したときのパーセンテージとして算出される、誘導された細胞死(%)として、TRAILの感度を表現した。TRAIL、PEG−TRAILおよびTRAILアゴニスティック抗体は、7および14日目の活性化されたHSCおよびPSCにおいて、強いTRAIL媒介性アポトーシスを誘導した(それらの時点において高度に活性化されたことが実施例1において示された)が、1日目の静止状態の細胞では、最低の作用(marginal effect)を示した。HSCでは、活性化の7日目および14日目においてTRAILアゴニストで処理したとき、TRAIL、PEG−TRAILおよび抗DR5抗体は、1日目において処理された細胞の細胞死と比較して、4.5、4.1、4.4倍および7.5、6.2、5.2倍の細胞死の増加を誘導した(図1)。同様に、PSCでは、TRAIL、PEG−TRAILおよび抗DR5抗体は、1日目から14日目まで、5.5、4.7、5倍の細胞死の増加を誘導した。これらの結果は、肝臓および膵臓の線維症性疾患の起源物質である活性化されたHSCおよびPSCが、特異的に標的化され得、それらをTRAILアゴニストで処理することによって除去し得ることを明らかに示している。
実施例3:TRAILによる処理は肝線維症を予防する
材料および方法
ラットにおけるCCl4によって誘導される肝線維症(群1)
6〜8週齢のSDラット(Hanlim Experimental Animal Laboratory,Seoul,Korea)を、3つの群に分けた(1群あたり8〜10匹のラット);i)ビヒクル(オリーブ油)、ii)オリーブ油中20%CCl4、およびiii)オリーブ油中CCl4およびTRAIL(群1,図2)。ラットに、4週間にわたって、CCl4(オリーブ油中20%CCl4,2ml/kg)を腹腔内注射によって1週間に3回投与するか、またはオリーブ油をコントロールとして投与し、同時に、静脈内投与される4mg/kgのTRAILで3日ごとに処置するか、またはコントロール群については同じ量の食塩水で処置した(群1,図2)。
肝線維症の肝臓の組織学的検査および免疫組織化学的検査
処置の後、動物を屠殺し、回収した肝臓組織を10%緩衝ホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋し、4μm厚の切片に切断した。次いで、それらの切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。活性化されたHSCを検出するためにα−SMA(DakoCytomation,Carpinteria,CA)抗体を用いて、免疫組織化学的検査を行った。Histostain−Plus Kit(Life Technology)を、免疫組織化学的検査のすべての手順に対して使用した。簡潔には、肝臓の切片を脱パラフィンし、水和し、3%の過酸化水素溶液中でクエンチし、スライド上で洗浄した。スライドにブロッキング溶液を適用し、順次、α−SMA1次抗体およびビオチン化された2次抗体に続いて、酵素をコンジュゲートした試薬を適用した。肝臓の切片のスライドを、色素原/基質キット(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を介して3,3’ジアミノベンジジン(DAB)によって発色させた。コラーゲンの沈着を検出するために、肝臓の切片を、Sirius red染色液(Sigma,St.Louis,MO)で染色し、5%酢酸水中で洗浄した。染色された肝臓組織を、光学顕微鏡法(Olympus America)下で可視化した。
線維症の肝臓におけるHSCのアポトーシスの免疫蛍光解析
肝臓の切片を、1次抗体であるα−SMA抗体(Dakocytomation)およびカスパーゼ−3抗体(Cell signaling)、ならびに二次抗体である抗マウスAlexa Fluor488および抗ウサギAlexa Fluor546によって免疫染色し、DAPI入り蛍光封入剤(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を用いてマウントした。切片を蛍光顕微鏡下で調べ、像を記録した。
結果
コントロール、CCl4、CCl4およびTRAILからの肝臓組織におけるα−SMAおよびSirius red染色(コラーゲン沈着のマーカー)のH&E解析および免疫組織化学的解析は、TRAILの処置が、肝線維症を有意に予防し、阻害することを示した。TRAILなしのCCl4で処置されたラットからの肝臓組織は、α−SMAおよびSirius redの強いシグナルを示したことから、肝臓における線維形成の徴候が示された。対照的に、CCl4およびTRAILで同時に処置されたラットは、肝臓におけるα−SMAおよびコラーゲンの減少によって証明されるように、線維症の有意な減少を示した(データ示さず)。この結果は、TRAILのようなTRAILアゴニストが、インビボにおいて肝線維症の誘導を効果的に予防することを示す。
そのような予防効果が、活性化されたHSCにおける、TRAILによって誘導されるアポトーシスによって誘導されるのかを確かめるために、CCl4および食塩水、CCl4およびTRAIL、ならびにコントロール群で処置されたラットからの肝臓組織において、α−SMA、カスパーゼ−3(アポトーシスマーカー)およびDAPI(核)に対する免疫蛍光解析を行った。α−SMA(Alexa Fluor 488,緑色)が、CCl4および食塩水の群と、CCl4およびTRAILの処置群との両方において検出されたのに対して、カスパーゼ−3(Alexa Fluor 546,赤色)は、TRAILで処置された正常な肝臓組織およびCCl4で処置された線維症の肝臓組織では検出されなかった。対照的に、線維症の肝臓組織をTRAILで処置したとき、カスパーゼ−3からの強いアポトーシスシグナルが観察された。特に、発現されたカスパーゼ−3は、活性化されたHSCのマーカーであるα−SMAと共局在し、TRAILが、活性化されたHSCにおいてアポトーシスを特異的に誘導することが確認される。
実施例4:PEG化されたTRAILの処置は肝線維症を逆転させる
材料および方法
ラットにおいてCCl4によって誘導される肝線維症(群2)
6〜8週齢のSDラット(Hanlim Experimental Animal Laboratory)を、3つの群に分けた(1群あたり8〜10匹のラット);i)ビヒクル(オリーブ油)、ii)オリーブ油中20%CCl4、およびiii)オリーブ油中CCl4およびPEG−TRAIL。ラットに、4週間にわたって、CCl4(2ml/kg)を腹腔内注射によって1週間に3回投与するか、またはオリーブ油をコントロール群として投与した。合計4週間にわたって肝線維症を誘導した後、CCl4またはオリーブ油の注射を続けながら、ラットを2週間にわたって1日おきに静脈内投与される4mg/kgのPEG−TRAILで処置した(群2,図2)。
ウエスタンブロット解析
急速凍結した肝臓組織を磁器製乳鉢および乳棒に置き、液体窒素温度のまま、微粉に粉砕した。次いで、その微粉を、超音波処理によって手短に氷冷PBS緩衝液(1mM PMSFならびに各1μg/mlのアプロチニン、ロイペプチンおよびペプスタチンA)中に溶解した。細胞溶解産物を、4℃、14,000rpmでの遠心分離によって清澄化した。タンパク質の濃度を、Bradford溶液(Bio−Rad,Hercules,CA)によって計測した。同じ量のタンパク質をSDS−PAGEによって分離し、ゲル上のタンパク質を、セミドライブロッター(Bio−Rad)を用いてニトロセルロース(Bio−Rad,Hercules,CA)に移した。その膜を、TBST(10mM Tris−Cl,pH8.0、150mM NaCl、0.5%Tween−20)中の3%BSAでブロッキングし、1次抗体とともに4℃において一晩インキュベートした。抗DR4(Abcam,Cambridge,MA)、抗DR5(Abcam)、抗カスパーゼ−8(Cell Signaling Technology,Danvers,MA)、抗切断型PARP−1(Cell Signaling Technology)、抗切断型カスパーゼ−3(Cell Signaling Technology)、抗切断型カスパーゼ−9(Cell Signaling Technology)、抗アルファSMA(Sigma)、抗MMP−2(Santa Cruz Biotechnology)、抗コラーゲン1(Cell Signaling Technology)、抗TGF−β(Abcam)、抗TIMP−1(Millipore,Billerica,Ma)、抗PDGFR−β(Santa Cruz Biotechnology)、抗GAPDH(Santa Cruz Biotechnology)および抗β−アクチン(Santa Cruz Biotechnology)を、ウエスタンブロット解析において使用した。免疫ブロットを、高感度化学発光法によって可視化した。
定量的リアルタイムPCR(qPCR)
培養された細胞およびラット肝臓組織からの全RNAを、TRIzol試薬(Life Technologies,Grand Island,NY)を当該企業が提供する指示に従って用いて抽出した。RNA濃度を、NanoDrop2000(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を使用することによって分光測光で計測した。1〜2μgの全RNAを、High−Capacity cDNA Reverse Transcription System(Life Technologies)を用いてcDNAに逆転写した。qPCRを、fast SYBR Green Master Mix(Life Technologies)およびStepOnePlus Real−Time PCR System(Life Technologies)を用いて各サンプルに対して2つ組または3つ組で行った。標的遺伝子の発現レベルをGAPDHの発現に対して正規化し、比較サイクル閾値Ct法(2−ΔΔCt)に基づいて算出した。ラット肝臓サンプルに対するqPCRを、RT2 qPCRプライマーセット(Qiagen,Valencia,CA);Col1a2(PPR56530A)、Acta2(PPR59337B)、Mmp3(PPR48487B)、Col3a1(PPR43017A)、Mmp9(PPR44728C)、Mmp13(PPR45162A)、Timp1(PPR48051C)、Timp3(PPR06533A)、Gapdh(PPR06557B)、Tgfb1(PPR06430B)、Tgfb3(PPR06467C)、Tgfbr2(PPR06488E)およびBmp7(PPR46571A)(RT2 qPCR Primer Assay,SABiosciences,Quiagen)を用いて行った。
他の生物学的マーカー解析
肝臓組織を用いた、肝臓におけるコラーゲン(collage)沈着のマーカー(maker)であるヒドロキシプロリンのアッセイを、製造者の指示に従ってHydroxyproline Assay Kit(Sigma,MAK008−1KT)によって計測した。ラットの血液を心臓穿刺により回収し、室温において2時間放置し、3000rpmで20分間遠心分離した。血清において解析される通例の肝機能検査としては、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、総タンパク質、アルブミン、アルカリホスファターゼ(ALP) 総ビリルビンおよび直接ビリルビンが挙げられる。
肝線維症に関する肝臓の組織学的検査および免疫組織化学的検査
肝臓組織を、10%緩衝ホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋し、4μm厚の切片に切断した。次いで、それらの切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびに免疫組織化学で染色した。行われた免疫組織化学的染色には、HSCの活性化を検出するためのα−SMA(DakoCytomation,Carpinteria,CA)およびコラーゲンの沈着を検出するためのSirius red染色が含まれていた。染色された肝臓組織を光学顕微鏡法(Olympus America)下で画像化し、α−SMAまたはSirius redが陽性の面積を、ImageJソフトウェア(NIH)を用いて各サンプルの20個の視野において定量した。アポトーシスを検出するために、TUNEL−Fluorescein(R&D systems,Gaithersburg,MD)を、上に記載されたような肝臓の切片に対して製造者の指示に従って使用した。
結果
ウエスタンブロット解析は、TRAIL−R(ラットにおけるTRAILレセプター)が、CCl4で処置された群と、PEG−TRAILと併用されるCCl4で処置された群の両方においてアップレギュレートされたが、しかしながら、線維症のマーカーであるPAI−1およびアルファ−SMA(α−SMA)の発現は、CCl4群およびコントロール群のそれと比べてPEG−TRAIL群において有意に減少したことを示した(図3)。アルファ−SMAおよびSirius redの免疫組織化学的解析は、PEG−TRAILで処置されたラットが、PEG−TRAILなしのCCl4で処置されたラットと比べて線維症の有意な減少を示したことを実証した(p<0.05)。解析された像を、1視野あたりの陽性の面積(%)として定量した(図4Aおよび4B)。アルファ−SMA(α−SMA)およびコラーゲンの減少が、活性化されたHSCにおける、TRAILによって誘導されるアポトーシスに起因するかを検証するために、肝臓組織をTUNELアッセイによって解析した。TUNEL陽性細胞は、CCl4とPEG−TRAILとの併用群においてのみ強く検出されたが、他のコントロール群、オリーブ油、食塩水およびCCl4で処置された群では検出されなかった。PEG−TRAILで処置された肝臓組織から得られたmRNAのqPCRは、TRAIL−R、α−SMA、コラーゲン1、コラーゲン3、TGF−β1、MMP−2、MMP−3、PDGFR、TIMP−1、TIMP−3およびBMP−7を含む、活性化されたHSCに関連する複数の高度にアップレギュレートされる線維症関連遺伝子の明白な減少を明らかにした(PEG−TRAIL処置なしのCCl4群に対してp<0.05)。ウエスタンブロット解析によって、PEG−TRAIL処置群において、これらの遺伝子のタンパク質レベルでの発現レベルの低下が確かめられた。
さらに、ヒドロキシプロリンのレベルは、非処置群よりもPEG−TRAIL処置群において低く、これらの結果は、より低レベルの肝臓重量−体重(LW/BW)比、アルカリホスファターゼおよび総ビリルビンと一致した(PEG−TRAIL処置なしのCCl4群に対してp<0.05)。全体的に見て、これらのインビボの結果は、線維症の肝臓をTRAILおよびそのアゴニストで処置することによって、活性化されたHSCを排除し、複数の線維症関連分子を同時に減少させることによって、肝線維形成が逆転および/または阻害され得ることを明らかに実証している。
実施例5:PEG化されたTRAILの処置は、肝硬変を軽減し、腹水の発生率および体積を減少させる
材料および方法
ラットにおいてCCl4によって誘導される肝硬変(群3)
6〜8週齢のSDラット(Hanlim Experimental Animal Laboratory)を、3つの群に分けた(1群あたり8〜10匹のラット);i)ビヒクル(オリーブ油)、ii)オリーブ油中20%CCl4、およびiii)オリーブ油中CCl4およびPEG−TRAIL。まず、ラットに8週間にわたって、CCl4(2ml/kg)を腹腔内注射によって1週間に3回投与するかまたはコントロール群としてオリーブ油を投与した。8週の時点において、CCl4またはオリーブ油の処置を続けながら、ラットを、静脈内投与される4mg/kgのPEG−TRAILで2週間にわたって1日おきに処置するか、またはコントロール群については同じ量の食塩水で処置した(群3,図2)。
ウエスタンブロット解析およびqPCR
単離された肝臓組織におけるタンパク質レベルおよびmRNAレベルでの、上に列挙されたTRAIL−R、α−SMAおよび線維症関連分子の制御パターンを、上に記載されたように、ウエスタンブロッティングおよびqPCRによって解析した。
肝線維症に関する肝臓の組織学的検査および免疫組織化学的検査
肝臓組織を10%緩衝ホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋し、4μm厚の切片に切断した。次いで、それらの切片をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびに免疫組織化学で染色した。免疫組織化学的染色は、HSCの活性化を検出するためのα−SMA(DakoCytomation,Carpinteria,CA)およびコラーゲンの沈着を検出するためのSirius red染色を含んだ。染色された肝臓組織を光学顕微鏡法(Olympus America)下で画像化し、α−SMAまたはSirius redが陽性の面積を、ImageJソフトウェア(NIH)を用いて各サンプルの20個の視野において定量した。
腹水の回収および計測
処置中に腹水が生じたら、ラットを安楽死させ、滅菌した注射器によってラットの腹膜から腹水を回収した。腹水の体積、細胞数、総タンパク質およびアルブミン濃度を計測することにより、前向き研究において腹水をカテゴリー分類することが証明されている血清−腹水アルブミン勾配(SAAG)を決定した。
結果
CCl4処置のみの10週間後に、すべてのラットが、孤立性の炎症の徴候を有する小結節性肝硬変を示した。6匹のラットにおいて、4〜65mlの範囲の体積の腹水が見られた。単離された肝臓は、明らかな形態学的損傷を示した。Sirus red染色によって、6週間だけCCl4で処置されたラットと比べて、コラーゲン沈着の強い徴候が肝臓組織に見られた。対照的に、CCl4およびPEG−TRAILで処置されたラットは、CCl4のみで処置されたラットの肝臓と比べて、形態学的に正常な肝臓を示した。さらに、PEG−TRAILで処置された肝臓組織は、免疫組織化学的検査によって明らかにされたように、より低い線維症マーカー、すなわち、α−SMAおよびコラーゲンの傾向を明らかに示した。さらに、PEG−TRAIL処置は、PEG−TRAILとともにCCl4で処置されたラットと比べて、肝臓組織においてビリルビンおよびヒドロキシプロリン(hydroxproline)レベルを有意に低下させつつ(PEG−TRAIL処置なしのCCl4群に対してp<0.05)、総タンパク質およびアルブミンの血清レベルを上昇させた。肝線維症モデルにおいて実証されたように、PEG−TRAIL処置は、線維形成に関連する分子をタンパク質レベルおよびmRNAレベルにおいて実質的にダウンレギュレートした。PEG−TRAIL処置群からの、TRAIL−R、α−SMA、コラーゲン1、コラーゲン3、TGF−β1、MMP−2、MMP−3、PDGFR、TIMP−1、TIMP−3を含む複数の発現の相対的な変化倍率は、PEG−TRAIL処置なしのCCl4群の発現の相対的な変化倍率よりも有意に低かった(PEG−TRAIL処置なしの群に対してp<0.05)。腹水は、肝硬変における主な合併症の1つである。8〜10週間にわたってCCl4で処置されたラットの60%(10匹中6匹)が、腹水を発症した。対照的に、PEG−TRAILとともにCCl4で処置されたラットは、たった30%(10匹中3匹)という低発生率の腹水を明らかに示した。特に、腹水の体積は、PEG−TRAILなしのCCl4群と比べて、PEG−TRAIL処置群において有意に減少した(図5)。まとめると、PEG−TRAILの処置は、硬変した肝疾患を有するラットにおいて腹水発生率を低下させつつ、肝硬変の進行を逆転させ、阻害する。
実施例6:PEG化されたTRAILの処置は、アルコール誘発性慢性膵炎ラットモデルにおいて膵線維症を逆転させる
材料および方法
ラットにおいてエタノール/セルレイン/LD流動食によって誘導される慢性膵炎(CP)
6〜8週齢のSDラット(Hanlim Experimental Animal Laboratory)を、3つの群に分けた(1群あたり8〜10匹のラット);i)ビヒクル(PBS)、ii)ビヒクルで処置されたCPラット、iii)TRAILで処置されたCPラット。実験的アルコール誘発性CPのモデルを、他で報告されているように(Deng,X.ら、Am.J.Pathol.166(1):93−106(2005))、ラットにおいて誘導した。ラットの3つの群に、7日間にわたってエタノール濃度を0%から36%に徐々に上げたLD流動食を与え、次いで、36%エタノールを3週間にわたって与えた。28日目まで1週間に1回、ラットの腹腔内に、20マイクログラム/kg(μg/kg)のセルレイン(Sigma)の1時間ごとに4回の注射を行った。それらのラットを、23〜28日目の6日間にわたって毎日、PEG−TRAIL(4mg/kg)またはPBSで静脈内処置した。コントロール群をPBSで処置した。処置後、膵臓検体を免疫組織化学的検査およびウエスタンブロッティングによって解析した。膵臓の組織をH&Eおよびマッソントリクローム染料(コラーゲン)で染色し、α−SMA、PDGFRβ、切断型カスパーゼ−8、COX−2を含む生物学的マーカーの制御について解析した。
結果
CPモデルでは、H&E染色および高度に発現されたコラーゲンによって、膵線維形成が明らかに観察された。さらに、α−SMA(活性化されたPSCのマーカー)および線維形成性マーカー、例えば、PDGFRβが、高度にアップレギュレートされた(それぞれビヒクルに対して6倍および4倍,p<0.05)(図6)。PEG−TRAIL処置は、コラーゲンの沈着を有意に減少させ、α−SMAおよびPDGFβ(それぞれビヒクルに対して1倍および2倍)、ならびにウエスタンブロット解析によって証明されたCOX−2を含む他の炎症性マーカー(PEG−TRAIL処置なしのCP群に対してp<0.05)をダウンレギュレートした。切断型カスパーゼ−8が、PEG−TRAIL処置CPにおいてのみ有意にアップレギュレートされた(ビヒクルに対して13倍,p<0.05)ことから、活性化されたPSCの根絶が、TRAIL媒介性のアポトーシスに起因することが示された。