以下、本発明に係る移動情報出力装置、移動情報出力システム及び移動情報出力プログラムについて、実施形態を示して詳しく説明する。なお、以下の説明では、移動を伴う動作の一例として、ユーザがマラソン競技に参加する場合について説明する。
<第1の実施形態>
(移動情報出力装置、移動情報出力システム)
図1は、本発明に係る移動情報出力装置を含む移動情報出力システムの一実施形態を示す概略構成図である。図2は、本実施形態に係る移動情報出力装置に適用されるチェスト機器の一構成例を示すブロック図であり、図3は、本実施形態に係る移動情報出力装置に適用されるリスト機器の一構成例を示すブロック図である。また、図4は、本実施形態に係る移動情報出力装置に適用される情報処理端末の一構成例を示すブロック図である。
本実施形態に係る移動情報出力装置を含む移動情報出力システムは、図1(a)〜(b)に示すように、概略、ユーザUSが装着するチェスト機器10及びリスト機器20と、情報処理端末30と、を有している。
(チェスト機器10)
チェスト機器10は、図1(a)に示すように、ユーザUSの胸部に装着する形態を有するセンサ機器であって、少なくともユーザUSの心拍数等の生体情報や運動中の動作状態を検出する機能を備えている。チェスト機器10は、具体的には、例えば図2に示すように、心拍検出回路11と、加速度センサ12と、角速度センサ(ジャイロセンサ)13と、操作スイッチ14と、メモリ15と、通信回路16と、演算装置(以下、CPUと記す)17と、計時回路18と、動作電源19と、を備えている。
心拍検出回路11は、例えばチェスト機器10をユーザUSの胸部に装着するためのベルト部材の内面側に設けられ、ユーザUSの胸部に直接密着するように配置された一対の電極(図示を省略)に接続されている。心拍検出回路11は、当該電極から出力される心電位信号の変化から心拍を検出する。検出された心拍数は、例えばメモリ15の心拍データ記憶領域に保存される。
加速度センサ12は、ユーザUSの運動中の動作速度の変化の割合(加速度)を計測する。また、角速度センサ13は、ユーザUSの運動中の動作方向の変化を計測する。この加速度センサ12により測定された加速度データ、及び、角速度センサ13により測定された角速度データは、上記の心拍検出回路11により検出された心拍データと関連付けられて、メモリ15の加速度データ記憶領域及び角速度データ記憶領域にそれぞれ保存される。ここで、加速度センサ12及び角速度センサ13は、ユーザUSの動作速度及び動作方向をより正確に把握するために、上半身の体幹に装着されていることが望ましい。なお、加速度データ及び角速度データは、後述するリスト機器20に設けられるGPS受信回路21において、GPS衛星からの電波の受信状態が不良又は受信不可の場合に、ユーザUSの位置を検出するための補完データとしても利用される。
操作スイッチ14は、少なくとも電源スイッチを有し、動作電源19から供給される電源電圧を各構成に供給又は遮断して、チェスト機器10の電源のオン、オフを制御する。メモリ15は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを有し、上述した心拍検出回路11により検出された心拍データや、加速度センサ12により測定された加速度データ、角速度センサ13により測定された角速度データが相互に関連付けられて保存される。また、メモリ15は、ROM(読み出し専用メモリ)を有し、心拍検出回路11や加速度センサ12、角速度センサ13、メモリ15、通信回路16における各動作を実行するための制御プログラムが保存される。また、メモリ15は、RAM(ランダムアクセスメモリ)を有し、上記制御プログラムを実行する際に使用する各種データが一時的に保存される。なお、メモリ15は、その一部又は全部が、例えばメモリカード等のリムーバブル記憶媒体としての形態を有し、チェスト機器10に対して着脱可能に構成されているものであってもよい。
通信回路16は、心拍検出回路11により検出された現時点の心拍データや、加速度センサ12により測定された現時点の加速度データ、角速度センサ13により測定された現時点の角速度データ、あるいは、メモリ15に保存された上記心拍データや加速度データ、角速度データを、リスト機器20に伝送する際のインターフェースとして機能する。ここで、通信回路16を介してリスト機器20に心拍データや加速度データ、角速度データを伝送する手法としては、例えば各種の無線通信方式や、通信ケーブルを介した有線による通信方式等を適用することができる。
無線通信方式により上記データを伝送する場合には、例えばデジタル機器用の近距離無線通信規格であるブルートゥース(Bluetooth(登録商標))や、この通信規格において低消費電力型の通信規格として策定されたブルートゥースローエナジー(Bluetooth(登録商標) low energy(LE))、又は、これらと同等の通信方式を良好に適用することができる。このような無線通信方式によれば、後述する動作電源19として、例えばコイン型電池やボタン型電池、あるいは、後述する環境発電(エナジーハーベスト)技術等を用いて生成された小電力であっても良好にデータ伝送を行うことができる。
CPU17は、計時回路18において生成される基本クロックに基づいて、メモリ15に保存された制御プログラムに従って処理を行うことにより、心拍検出回路11や加速度センサ12、角速度センサ13、メモリ15、通信回路16における各動作を制御する。なお、CPU17において実行される制御プログラムは、予めCPU17の内部に組み込まれているものであってもよい。計時回路18は、リスト機器20から送信される同期信号に基づいて基本クロックを生成し、当該基本クロックに基づいて、チェスト機器10の各構成の動作タイミングを規定する動作クロックを生成する。これにより、チェスト機器10はリスト機器20との時間データの同期が図られる。このような同期動作は、リスト機器20との間で、例えば一定の時間間隔で、又は、常時実行される。また、計時回路18は、上記の心拍データや加速度データ、角速度データの取得タイミングを計時して時間データとして出力する。この時間データは、上述した心拍データ、加速度データ、角速度データと関連付けられて、メモリ15の所定の記憶領域に保存される。
動作電源19は、チェスト機器10の各構成に駆動用電力を供給する。動作電源19は、例えば市販のコイン型電池やボタン型電池等の一次電池や、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池を適用することができる。また、動作電源19は、これらの電池のほか、振動や光、熱、電磁波等のエネルギーにより発電する環境発電技術による電源等を適用することもできる。
(リスト機器20)
リスト機器20は、図1(a)に示すように、ユーザUSの手首に装着する形態を有する電子機器であって、少なくともユーザUSの位置を検出するとともに、所定の情報やデータを表示する機能を備えている。リスト機器20は、具体的には、例えば図3に示すように、GPS受信回路21と、情報提供部(区間別予想移動時間出力手段)22、操作スイッチ23と、メモリ24と、通信回路25と、CPU26と、計時回路27と、動作電源28と、を備えている。
GPS受信回路21は、複数のGPS衛星からの電波を受信することにより、緯度経度からなる地理的な位置、及び、その位置の高度(又は標高)を検出する。また、GPS受信回路21は、GPS衛星からの電波のドップラーシフト効果を利用して、ユーザUSの移動速度(走行速度)を検出する。検出された位置及び高度(地形データ)、移動速度等からなるGPSデータは、例えばメモリ24のGPSデータ記憶領域に保存される。
情報提供部22は、例えば表示部と、音響部と、を備えている。表示部は、例えばカラーやモノクロ表示が可能な液晶方式や、有機EL素子等の発光素子方式の表示パネルを有している。表示部は、少なくともユーザUSの移動中には、後述する移動情報出力処理において生成される予測移動時間を含む各種の運動支援情報を表示する。また、表示部は、ユーザUSの移動中に、時刻情報やGPSデータ、上述したチェスト機器10から伝送された心拍データ、あるいは、加速度データや角速度データに基づいて算出される各種の情報、例えば加速度データとユーザUSの体重データから算出される消費カロリー等を表示するものであってもよい。これらの情報は、文字情報や画像情報を有し、表示部に複数の情報が同時に表示されるものであってもよいし、操作スイッチ23を操作することにより、1乃至複数の情報が順次表示されるものであってもよい。また、音響部は、例えばブザーやスピーカ等の音響機器を有している。音響部は、音声メッセージや所定の音色、音パターン(アラーム音)等の音情報を発生することにより、上記の表示部において表示される文字情報や画像情報に対応する各種の情報を、聴覚を通してユーザUSに提供(報知)する。なお、情報提供部22は、表示部と音響部の双方を備えているものであってもよいし、表示部又は音響部のうち、いずれか一方を備えた構成を有しているものであってもよい。
操作スイッチ23は、例えば機器本体の前面(視野側)や側面に設けられた操作ボタンや、情報提供部である表示部の前面側に設けられたタッチパネル、リスト機器20に有線や無線通信により接続されるキーボード等の入力手段を有し、少なくともモード切換機能と表示切替機能を備えている。モード切換機能においては、操作スイッチ23を操作することにより、例えばユーザの移動中に、現在時刻や移動経過時間、移動距離、心拍データや消費カロリー等の生体情報を表示するモードと、後述する移動情報出力処理において生成される各種の運動支援情報を表示するモードと、リスト機器の各種設定メニューを表示するモードと、が切替制御される。また、表示切替機能においては、操作スイッチ23を操作することにより、上記の各モードにおける画面表示が切り替えられる。なお、操作スイッチ23は、操作ボタンやタッチパネル、キーボード等の各種の入力手段のうち、いずれか1つを備えているものであってもよいし、複数の入力手段を有しているものであってもよい。なお、複数の入力手段を有している場合には、それらにより実現される機能は、同一又は同等のものであってもよいし、各入力手段に特有の機能を有しているものであってもよい。
メモリ24は、不揮発性メモリを有し、上述したチェスト機器10から伝送された心拍データや加速度データ、角速度データ、及び、GPS受信回路21により検出されたGPSデータが相互に関連付けられて保存される。なお、これらの心拍データ、加速度データ、角速度データ、GPSデータを、「センサデータ」と総称する。また、メモリ24は、ROMを有し、GPS受信回路21や情報提供部22、メモリ24、通信回路25における各動作を実行するための制御プログラムが保存される。また、メモリ24は、RAMを有し、上記制御プログラムを実行する際に使用する各種データが一時的に保存される。なお、メモリ24は、その一部又は全部が、例えばメモリカード等のリムーバブル記憶媒体としての形態を有し、リスト機器20に対して着脱可能に構成されているものであってもよい。
通信回路25は、チェスト機器10との間、及び、情報処理端末30との間で、移動中に取得した各種のデータや、後述する移動情報出力処理において生成される各種の運動支援情報を伝送する際のインターフェースとして機能する。通信回路25は、上述した各種の無線通信方式や有線通信方式を用いて、チェスト機器10から心拍データや加速度データ、角速度データを受信するとともに、計時回路27において生成された基本クロックに基づく同期信号をチェスト機器10に送信する。また、通信回路25は、チェスト機器10から伝送され、メモリ24に保存された各種のセンサデータを情報処理端末30に伝送する。また、通信回路25は、情報処理端末30から伝送された運動支援情報を受信する。ここで、通信回路25を介して情報処理端末30との間で、各種のセンサデータや運動支援情報を伝送する手法としては、例えば各種の無線通信方式や有線通信方式、メモリカードを介したデータ転送方式等を適用することができる。
情報処理端末30との間で、無線通信方式を用いて各種のセンサデータや運動支援情報を伝送する場合には、例えばブルートゥース(登録商標)による通信や赤外線通信等を良好に適用することができる。また、有線通信方式を用いる場合には、リスト機器20と情報処理端末30を直接通信ケーブルで接続するものであってもよいし、情報処理端末30にケーブル接続されたデータ転送用ドックやパッドに、リスト機器20を装着あるいは載置してデータの伝送を行うものであってもよい。ここで、データ転送用ドックやパッドは、リスト機器20と電極同士が直接接触することにより電気的に接続される接触型のデータ転送方式を適用するものであってもよいし、電極同士が直接接触することなく電気的に接続される非接触型のデータ転送方式を適用するものであってもよい。なお、有線通信方式を用いる場合には、リスト機器20が通信ケーブルを介して、あるいは、データ転送用ドックやパッドを介して、情報処理端末30に接続されることにより、情報処理端末30から電力が供給されて、リスト機器20の動作電源28が充電されることが望ましい。
CPU26は、計時回路27において生成される基本クロックに基づいて、メモリ24に保存された制御プログラムに従って処理を行うことにより、GPS受信回路21や情報提供部22、メモリ24、通信回路25における各動作を制御する。なお、CPU26において実行される制御プログラムは、予めCPU26の内部に組み込まれているものであってもよい。計時回路27は、基本クロックを生成する発振器を有し、当該基本クロックに基づいて、リスト機器20の各構成の動作タイミングを規定する動作クロックを生成するとともに、チェスト機器10との時間データの同期をとるための同期信号を生成する。また、計時回路27は、上記のGPSデータの取得タイミングを計時して時間データとして出力する。この時間データは、上述したチェスト機器10から伝送された心拍データ、加速度データ、角速度データに関連付けられた時間データと対応付けて、メモリ24の所定の記憶領域に保存される。
動作電源28は、リスト機器20の各構成に駆動用電力を供給する。動作電源28は、上述したチェスト機器10の動作電源19と同様に、一次電池や二次電池を適用することができるほか、環境発電技術による電源等を適用することもできる。なお、上述したように、リスト機器20を情報処理端末30に接続することにより、動作電源28が充電される構成を有している場合には、動作電源28として二次電池が適用されていることはいうまでもない。
(情報処理端末30)
情報処理端末30は、図1(b)に示すように、例えばノートブック型やデスクトップ型、タブレット型のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置であって、少なくとも後述する移動情報出力処理(移動情報出力方法)を実行するために必要なデータベースを構築する機能や、運動支援情報を生成する機能を備えている。情報処理端末30は、具体的には、例えば図4に示すように、入力操作部31と、表示部32と、メモリ33と、データベース(移動履歴記憶手段、対象経路高度記憶手段)34と、通信回路35と、CPU36(傾斜度別区間分割手段、予想移動時間算出手段)と、計時回路37と、動作電源38と、を備えている。
入力操作部31は、キーボードやマウス、タッチパッド、タッチパネル等の入力手段を有し、ユーザUSの操作により、表示部32に表示される任意のアイコンやメニューが選択されたり、任意の情報が入力されたりする。表示部32は、例えばカラーやモノクロ表示が可能な液晶方式や、有機EL素子等の発光素子方式の表示パネルを有し、上述したチェスト機器10やリスト機器20により取得された各種のセンサデータに基づく移動履歴に関する情報(移動履歴情報)や、後述する移動情報出力方法において生成される予測移動時間を含む運動支援情報を、数値やアイコン、文字等を用いた表(チャート)形式で表示する。なお、表示部32に表示される移動履歴情報や運動支援情報については、詳しく後述する。
メモリ33は、不揮発性メモリを有し、上述したリスト機器20から伝送されたセンサデータが相互に関連付けられて保存される。また、メモリ33は、ROMを有し、表示部32やメモリ33、データベース34、通信回路35における各動作を実行するための制御プログラムが保存される。また、メモリ33は、チェスト機器10やリスト機器20により取得されたセンサデータに基づいて生成された移動履歴情報を用いて、マラソン競技のコースにおける予測移動時間を算出する、一連の移動情報出力処理を実行するためのアルゴリズムプログラムが保存される。また、メモリ33は、RAMを有し、上記制御プログラムを実行する際に使用する各種データが一時的に保存される。
データベース34は、ユーザUSがマラソン競技に先立って行った日常のトレーニングや事前の試走、あるいは、過去のマラソン競技の際に、上述したチェスト機器10やリスト機器20により取得された各種のセンサデータや、当該センサデータに基づいて、後述する移動情報出力方法により生成される傾斜度ごとの移動履歴情報や、予測移動時間を含む運動支援情報が所定の保存形式で保存、蓄積されている。そして、データベース34は、後述する移動情報出力方法において、蓄積された移動履歴情報から、マラソン競技のコース(予測移動時間を算出する対象となる経路;対象経路)を傾斜度に基づいて所定の距離ごとに分割した各コース区間における傾斜度に対応する移動履歴情報が抽出される。ここで、データベース34は、図4に示すように、情報処理端末30に内蔵されているものであってもよいし、図1(b)に示すように、情報処理端末30の外部に設けられ、接続ケーブルを介して接続されているものであってもよい。なお、データベース34については、詳しく後述する。
通信回路35は、リスト機器20との間で、各種のセンサデータや移動情報出力処理により生成される運動支援情報を伝送する際のインターフェースとして機能する。通信回路35は、図1(a)、(b)に示すように、各種の無線通信方式や有線通信方式、メモリカードを介したデータ転送方式等を用いて、リスト機器20から各種のセンサデータを受信する。また、通信回路35は、図1(a)、(b)に示すように、情報処理端末30における移動情報出力処理により生成された運動支援情報を、上述した通信方式や転送方式を用いて、リスト機器20に送信する。
CPU36は、計時回路37において生成される基本クロックに基づいて、メモリ33に保存された制御プログラムに従って処理を行うことにより、表示部32やメモリ33、データベース34、通信回路35における各動作を制御する。また、CPU36は、メモリ33に保存されたアルゴリズムプログラムに従って処理を行うことにより、チェスト機器10やリスト機器20により取得されたセンサデータに基づいて、移動履歴情報を生成してデータベース34に蓄積するとともに、当該移動履歴情報に基づいて、マラソン競技のコース(対象経路)を対象とした予測移動時間を算出し、当該予測移動時間を含む運動支援情報を、リスト機器20を介してユーザUSに提供する、一連の移動情報出力処理(移動情報出力方法)を実行する。なお、CPU36において実行される制御プログラムやアルゴリズムプログラムは、予めCPU36の内部に組み込まれているものであってもよい。計時回路37は、基本クロックを生成する発振器を有し、当該基本クロックに基づいて、情報処理端末30の各構成の動作タイミングを規定する動作クロックを生成する。
動作電源38は、情報処理端末30が例えばノートブック型やタブレット型のパーソナルコンピュータである場合には、リチウムイオン電池等の二次電池や、商用交流電源が適用される。また、情報処理端末30が例えばデスクトップ型のパーソナルコンピュータである場合には、商用交流電源が適用される。
(移動情報出力方法)
次に、上述した移動情報出力システムにおける移動情報出力方法について説明する。
本実施形態に係る移動情報出力システムにおける移動情報出力方法は、大別して、トレーニング中にユーザUSの走行履歴(移動履歴)に関するデータベースを構築する段階であるデータベース構築方法と、競技コース等における予測走行時間(予測移動時間)を算出する段階である予測移動時間算出方法と、競技コースの走行中に運動支援情報をユーザUSに提供する段階である運動支援情報提供方法と、を有している。
データベース構築方法は、日常行うトレーニング等において、ユーザUSが装着したチェスト機器10及びリスト機器20により取得された各種のセンサデータを収集して、傾斜度ごとの移動履歴情報を所定の保存形式で蓄積することによりデータベース34を構築する。また、予測移動時間算出方法は、マラソン競技等が行われるコースを、傾斜度ごとに複数の区間に分割し、各コース区間の傾斜度に基づいて、データベース34から一致又は近似する移動履歴情報を抽出して、各コース区間における予想走行時間を算出する処理を行う。そして、運動支援情報提供方法は、予測移動時間算出方法により算出された予想走行時間を含む各種の運動支援情報をリスト機器20に送信し、当該競技中に運動支援を行う。
以下、移動情報出力方法の各段階の方法について具体的に説明する。
(データベース構築方法)
図5は、本実施形態に係る移動情報出力方法におけるデータベース構築方法を示すフローチャートである。また、図6は、本実施形態に係るデータベース構築方法において収集されるセンサデータの一例を示す概略図である。図7は、本実施形態に係るデータベース構築方法により取得される移動履歴情報の一例を示す図である。
本実施形態に適用されるデータベース構築方法は、図5のフローチャートに示すように、まず、トレーニングコース(実測経路)を走行中のユーザUSの生体情報や運動状態を示す各種のセンサデータを収集する(S101)。具体的には、図1(a)、図2に示すように、ユーザUSが装着したチェスト機器10により、トレーニング中の心拍データや加速度データ、角速度データが収集されて、時間データに関連付けてメモリ15に保存される。これらの心拍データや加速度データ、角速度データは、通信回路16を介して、例えば無線通信方式により、常時、又は、一定の時間間隔でリスト機器20に伝送される。また、図1(a)、図3に示すように、ユーザUSが装着したリスト機器20により、トレーニング中の位置(緯度経度)や高度、移動速度データ等からなるGPSデータが収集されて、時間データに関連付けてメモリ24に保存される。
すなわち、この処理S101において収集されるセンサデータは、例えば図6(a)に示すように、トレーニングコースRTxを図中の矢印方向に走行した場合に、例えば図6(b)に示すように、心拍数や消費カロリー、高度等の各数値が、時間データ(経過時間)に関連付けられている。なお、トレーニング中に収集された心拍データや加速度データ、角速度データ、GPSデータ、あるいは、これらのデータに基づいて算出される各種情報は、リスト機器20の情報提供部22を介して、任意の表示形式(例えば数値情報や、グラフ化された状態)で表示、又は、音声メッセージ等で報知される。
そして、トレーニング終了後、収集した各種のセンサデータは、通信回路25を介して、無線通信方式や有線通信方式、メモリカードによるデータ転送方式等により、パーソナルコンピュータ等の情報処理端末30に伝送される。これらのセンサデータは、時間データに関連付けて情報処理端末30のメモリ33に一時保存される。
次いで、図1(b)、図4に示すように、CPU36は、収集したセンサデータに含まれるGPSデータの位置(緯度経度)や高度からなるトレーニング時のコースデータと、当該トレーニング時の走行時間とを関連付けてデータベース34に保存する(S102)。
次いで、CPU36は、データベース34に保存されたトレーニング時のコースデータを、傾斜度ごとの区間データに分割する(S103)。具体的には、CPU36は、データベース34から読み出したコースデータに含まれる位置情報及び高度情報に基づいて、トレーニングコースの傾斜状態が登りであるか下りであるかに応じて、当該コースデータを複数の区間データに分割する。そして、CPU36は、分割された各区間データに含まれる位置情報及び高度情報に基づいて傾斜度を算出するとともに、位置情報及び走行時間情報に基づいて走行距離及びペース(走行速度)を算出する。CPU36は、算出した傾斜度をペース(走行速度)と関連付けて、移動履歴情報としてデータベース34に保存する。なお、データベース34に保存される移動履歴情報は、少なくとも傾斜度とペース(走行速度)が対応付けられているものであればよく、傾斜度と走行距離と走行時間が対応付けられているものであってもよい。
このような処理S103により生成される移動履歴情報は、例えば図7に示すようなリスト形式を有し、ユーザUSが情報処理端末30を操作することにより表示部32に表示される。図7において、例えばA区間では走行距離(区間距離)が0.65km、標高差が25.1mの傾斜度3.9%の登りコースであり、このときのペースが0:05:04、ラップが0:03:17である場合を示している。また、例えばB区間では走行距離が0.54km、標高差が−37mの傾斜度−6.8%の下りコースであり、このときのペースが0:04:10、ラップが0:02:15である場合を示している。
次いで、ユーザUSにより移動履歴情報の傾斜度ごとの各区間(傾斜区間)に感想マークや感想コメントが入力される(S104)。具体的には、CPU36は、上記の移動履歴情報を図7に示すようなリスト形式で表示部32に表示し、ユーザUSは、表示された移動履歴情報を閲覧して、入力操作部31を操作することにより、各傾斜区間におけるトレーニング時の状況や感想、疲労感、体調の良し悪し等の主観的なコメントを、感想マークや感想コメントとして入力する。例えば図7において、例えばN区間では走行距離(区間距離)が0.44km、標高差が−28mの傾斜度−6.4%の下りコースであり、このときのペースが0:03:58、ラップが0:01:44であって、このとき(トレーニング時)の感想コメントとして「急な下り坂、注意。」と入力し、対応する感想マークを登録した場合を示している。なお、感想マークや感想コメントの入力は任意であり、無記入であってもよい。入力された感想マークや感想コメントは、各傾斜区間の傾斜度に対応付けられて、移動履歴情報としてデータベース34に保存される。
このような一連の処理S101〜S104を、異なる地形条件(傾斜度)を有するトレーニングコースに対して繰り返し実行することにより、様々な傾斜度を有する傾斜区間に対してペースやラップ、感想コメント等が関連付けられてデータベース34に蓄積される(S105)。ここで、トレーニング時の各傾斜区間の傾斜度に関連付ける情報は、上述したペースやラップ等の情報に限定されるものではない。例えば、これらの情報に加えて、センサデータに基づいて取得される心拍データや消費カロリー等の生体情報を関連付けるものであってもよいし、さらに、トレーニング時の気温や湿度、風向等の天候情報等の客観的なコメントを、各傾斜区間の傾斜度に関連付けるものであってもよい。なお、上述した天候情報については、情報処理端末30の入力操作部31を操作して、ユーザUSが直接入力するものであってもよいし、例えばインターネット上で公開されている、トレーニングコースを含む地域の天気情報を取り込んで関連付けるものであってもよい。
(予測移動時間算出方法)
図8は、本実施形態に係る移動情報出力方法における予測移動時間算出方法を示すフローチャートである。また、図9は、本実施形態に係る予測移動時間算出方法の対象となる競技コースとその地形データの一例を示す概略図である。また、図10は、本実施形態に係る予測移動時間算出方法において取得される傾斜度ごとの競技コースの分割例を示す概略図である。図11、図12は、本実施形態に係る予測移動時間算出方法における競技コースとその分割区間における地形データの一例を示す概略図である。図13は、本実施形態に係る予測移動時間算出方法により取得される対象コース予測時間情報の一例を示す図である。なお、情報処理端末30のCPU36は、移動時間算出部として、以下に説明する一連の処理を実行する。
本実施形態に適用される予測移動時間算出方法は、図8のフローチャートに示すように、まず、ユーザUSが参加するマラソン競技のコース情報(予測移動時間を算出する対象となる経路の情報)を取得する(S111)。具体的には、情報処理端末30により、マラソン競技の主催者等が開設しているインターネット等のネットワーク40上のウェブサイトに掲載されたコース情報や、主催者等から印刷物やDVD等の形態で提供されるコース情報を取り込む。ここで、一般に主催者等から提供されるコース情報は、例えば図9(a)に示すように、地図上にマラソン競技のコースRTが重ね合わせて表示されているものに過ぎない。そこで、まず、ユーザUSは入手したコース情報に基づいて、競技コースRTを例えば1kmの単位距離ごとの複数の単位区間に分割する。そして、情報処理端末30により、インターネット等のネットワーク40上で提供されている地図サイトの地形データベースや、DVD等の形態で提供されている地図等で、各単位区間のコースの軌跡をプロットすることにより、当該単位区間の緯度経度及び高度に関するデータ(地形データ)を取得する。なお、地形データを提供する地図サイトとしては、例えばアメリカ合衆国のソフトウェア会社Google(登録商標)社がインターネット上で提供するGoogle Maps地図サービス等を利用することができる。
これにより、緯度経度に基づいて規定される競技コース上の任意の位置(スタート地点から任意の距離位置)における高度情報が数値で取得されてデータベース34に保存される。また、取得した数値に基づいて、例えば図9(b)に示すように、地形データがグラフ化された状態で表示部32に表示される。なお、主催者等から提供されるコース情報に、コース全体の緯度経度と高度に関する地形データが付与されている場合には、当該地形データに基づいて、地形データをグラフ化された状態で表示することができる。
次いで、取得したマラソン競技のコースを、傾斜度ごとに複数のコース区間(分割区間)に分割する(S112)。具体的には、CPU36は、取得した競技コースのコース情報及び地形データに含まれる位置情報(距離情報)及び高度情報に基づいて、競技コースの傾斜度を算出し、当該傾斜度に応じて競技コースを複数のコース区間に分割する。ここで、コース区間は、傾斜度が変化するポイントごとに分割設定される。また、コース区間は、傾斜度に応じて例えば1〜数kmの比較的短い不定長に設定される。したがって、各コース区間の距離は一定ではなく、また、例えば連続する登り坂であっても、傾斜度が変化している場合には別のコース区間として設定される。そして、CPU36は、各コース区間について、算出された傾斜度及び走行距離(区間距離)を関連付けてメモリ33に保存する。
このような処理S112により規定される各コース区間は、例えば図10〜図12に示すように、各区間(区間1、2、・・・)が傾斜度ごとに、不定長で分割されている。図10において、例えば区間1では走行距離(区間距離)が2.61km、標高差が62.8mの傾斜度2.4%の登りコースであり、例えば区間2では走行距離が2.83km、標高差が−65.5mの傾斜度−2.3%の下りコースである場合を示している。また、例えば区間5では走行距離が1.70km、標高差が74.6mの傾斜度4.4%の登りコースである場合を示している。また、図11(a)、図12(a)は、それぞれ競技コースにおける区間1、区間2を示す地図であり、図11(b)、図12(b)は、当該区間に対応する地形データを示したものである。
次いで、競技コースのコース区間ごとに、当該コース区間の傾斜度に最も近い傾斜度を有する移動履歴情報をデータベース34から検索して、当該移動履歴情報に含まれるペースを用いて、各コース区間の区間走行予想時間(ラップ)を算出し、予測ペースチャート(予測移動時間)を含む対象コース予測時間情報を生成する(S113)。具体的には、CPU36は、分割された競技コースの各コース区間について、当該コース区間の傾斜度に基づいて、データベース34に保存された移動履歴情報を参照し、コース区間の傾斜度に一致又は近似する傾斜度を有する移動履歴情報を抽出する。そして、CPU36は、抽出された移動履歴情報に含まれるペースデータ(すなわち、トレーニング時に取得した傾斜度に関連付けて保存されたペース)と、当該コース区間の走行距離(区間距離)とに基づいて、区間走行予想時間を算出する。CPU36は、各コース区間について算出された区間走行予想時間を、当該コース区間の傾斜度や走行距離に関連付けて、対象コース予測時間情報としてデータベース34に保存する。
このような分割された競技コースの各コース区間における区間走行予想時間の算出処理、及び、データベース34への保存、蓄積処理を、全てのコース区間について実行することにより、予測ペースチャートを含む対象コース予測時間情報が生成される。対象コース予測時間情報は、図13の左側半分に示すようなリスト形式を有し、ユーザUSが情報処理端末30を操作することにより表示部32に表示される。図13において、例えばコース区間1では走行距離(区間距離)が2.61km、標高差が62.8mの傾斜度2.4%の登りコースであり、このときの傾斜度は、上述した移動履歴情報(図7参照)におけるM区間の傾斜度に相当する。このM区間におけるトレーニング時のペースは0:04:50であるので、このペースを用いて走行した場合のコース区間1(走行距離2.61km)の区間走行予想時間(ラップ)は0:12:37である場合を示している。また、例えばコース区間2では走行距離が2.83km、標高差が−65.5mの傾斜度−2.3%の下りコースであり、このときの傾斜度は、移動履歴情報(図7参照)におけるP区間の傾斜度に相当する。このP区間におけるトレーニング時のペースは0:04:20であるので、このペースを用いて走行した場合のコース区間2(走行距離2.83km)の区間走行予想時間は0:12:15である場合を示している。また、各コース区間の区間走行予想時間を合計することにより、競技コース全体の予想所要時間(総合タイム)は1:36:48であることを示している。ここで、予測ペースチャートは、図13に示すように、各コース区間の傾斜度に基づいてデータベース34に保存された移動履歴情報から抽出されたペースと、各コース区間を当該ペースで走行したときの区間走行予想時間(ラップ)と、を各コース区間に対応付けた走行予想表(チャート)である。
次いで、ユーザUSは、予測移動時間算出の対象となっている競技コースを事前に実際に走り(試走し)、その実走データをデータベース34に登録する(S114)。具体的には、ユーザUSがチェスト機器10及びリスト機器20を装着した状態で競技コースを試走することにより、上述したトレーニング時と同様に、試走中のユーザUSの生体情報や運動状態を示す各種のセンサデータが収集される。そして、競技コースの試走後に、リスト機器20を無線や有線通信により情報処理端末30に接続することにより、各種のセンサデータが情報処理端末30に伝送され、時間データに関連付けてメモリ33に一時保存される。次いで、CPU36は、少なくとも、収集したセンサデータに含まれるGPSデータの試走時の位置(緯度経度)と走行時間とに基づいて、上述した対象コース予測時間情報に設定された各コース区間におけるペースや区間走行時間(ラップ)を算出し、コース区間に関連付けてデータベース34に保存、蓄積する。
次いで、上述した処理S113において生成した対象コース予測時間情報と、処理S114により取得した試走時の実走データとを対応付けて、表示部32に表示する(S115)。具体的には、CPU36は、データベース34に保存された対象コース予測時間情報と、実走データとを読み出し、それぞれに関連付けられたコース区間情報を対応付けて、例えば図13に示すように、リスト形式で表示部32に表示する。図13において、例えばコース区間1では試走時のペースは0:04:35であり、区間走行時間(ラップ)は0:11:59である場合を示している。また、例えばコース区間2では試走時のペースは0:04:03であり、区間走行時間は0:11:26である場合を示している。また、各コース区間の区間走行時間を合計することにより、競技コース全体の所要時間(試走タイム)は1:35:33であったことを示している。
次いで、ユーザUSにより、実走データが対応付けられた対象コース予測時間情報の各コース区間に、試走時のコメントが入力される(S116)。具体的には、表示部32に上記の対象コース予測時間情報と実走データとが対応付けて表示された状態で、ユーザUSは、表示された予測ペースチャートや実走データを閲覧、比較しつつ、入力操作部31を操作することにより、各コース区間における試走時の状況や感想、疲労感、体調の良し悪し等の主観的なコメントを入力する。例えば図13において、例えばコース区間3では予測ペースチャートのペースが0:04:40、ラップが0:08:57であるのに対して、実測データのペースが0:04:55、ラップが0:09:27であり、このとき(試走時)のコメントとして「想定タイムより遅い。このペースダウンは、結構意外だった。最初の400以外はきつくないのに。」と入力した場合を示している。ここで入力されるコメントは、競技コースを実際に走った(試走した)後の主観が含まれているので、後日マラソン競技において競技コースを走る際の、極めて有効な支援情報となる。なお、コメントの入力は任意であり、無記入であってもよい。入力されたコメントは、各コース区間に対応付けられて、対象コース予測時間情報としてデータベース34に更新保存される。
次いで、試走時の実走データの傾斜度ごとの区間データに含まれるペースを用いて、各コース区間の区間走行予想時間(ラップ)を再度算出し、予測ペースチャートを含む対象コース予測時間情報を再度生成する(S117)。具体的には、CPU36は、各コース区間について、データベース34に保存された対象コース予測時間情報に含まれる対応するコース区間の走行距離を抽出し、試走時に取得した実走データに基づいて算出されるペースを用いて、当該コース区間の区間走行予想時間を算出する。そして、CPU36は、抽出された移動履歴情報に含まれるペースデータ(すなわち、トレーニング時に取得した傾斜度に関連付けて保存されたペース)と、当該コース区間の走行距離(区間距離)とに基づいて、区間走行予想時間を算出する。CPU36は、各コース区間について算出された区間走行予想時間を、当該コース区間に関連付けて、対象コース予測時間情報としてデータベース34に更新保存する。
(運動支援情報提供方法)
図14は、本実施形態に係る移動情報出力方法における運動支援情報提供方法を示すフローチャートである。また、図15は、本実施形態に係る運動支援情報提供方法により提供される運動支援情報の一例を示す図である。
本実施形態に適用される運動支援情報提供方法は、まず、上述した予測移動時間算出方法において生成された予測ペースチャートを含む対象コース予測時間情報を、データベース34から読み出して、情報処理端末30に無線や有線通信により接続されたリスト機器20に伝送される。リスト機器20において、CPU26は、受信した対象コース予測時間情報をメモリ24に保存する。ここで、リスト機器20に伝送される対象コース予測時間情報は、少なくとも、各コース区間の位置情報、傾斜度、ペース及び区間走行予想時間(ラップ)、並びに、コメントを含んでいる。
次いで、図14のフローチャートに示すように、マラソン競技当日、ユーザUSがチェスト機器10及びリスト機器20を装着した状態で競技コースを走ることにより(S121)、上述したトレーニング時や試走時と同様に、走行中のユーザUSの生体情報や運動状態を示す各種のセンサデータが収集される。CPU26は、収集したセンサデータに含まれるGPSデータに基づいて、ユーザUSの競技コース上の現在位置情報を取得し(S122)、対象コース予測時間情報に含まれる各コース区間の位置情報を参照することにより、現在位置に対応するコース区間番号を決定する(S123)。
次いで、CPU26は、上記の処理S123において決定されたコース区間番号に基づいて、対象コース予測時間情報(図13参照)を参照して、ユーザUSの現在位置に対応するコース区間の傾斜度、ペース及び区間走行予想時間(ラップ)を読み出し、運動支援情報として、情報提供部22の表示部に所定の表示形式で表示、又は、音響部により所定の音声メッセージ等で報知する(S124)。
次いで、CPU26は、対象コース予測時間情報(図13参照)を参照して、ユーザUSの現在位置に対応するコース区間に試走時のコメントが登録されているか否かを判定する(S125)。コメントが登録されている場合には、CPU26は、当該コメントを読み出して、運動支援情報として情報提供部22に表示、又は、音声メッセージ等で報知する(S126)。一方、コメントが登録されていない場合には、CPU26は、対象コース予測時間情報(図13参照)を参照して、ユーザUSの現在位置に対応するコース区間のペース参照箇所、すなわち、トレーニング時に取得した移動履歴情報(図7参照)の対応する区間に、登録されている感想マーク及び感想コメントを読み出して、運動支援情報として情報提供部22に表示、又は、音声メッセージ等で報知する(S127)。
上述したような処理S124、S126、S127により提供される運動支援情報は、例えば図15に示すように、情報提供部22の表示部に表示される。例えばユーザUSがコース区間1を走行している場合には、例えば図15(a)に示すように、上述した予測移動時間算出方法により生成された対象コース予測時間情報(図13参照)に基づいて、当該コース区間1の傾斜度が2.4%の登りコースであり、予測ペースチャートにおけるペースが0:04:50であり、ラップが0:12:37であることが表示部に表示されるとともに、「入りは、抑えて入った割にはペースが速い。昨年より前なので走りやすい。」のコメントが表示される。また、例えばユーザUSがコース区間2を走行している場合には、例えば図15(b)に示すように、上述した対象コース予測時間情報(図13参照)に基づいて、当該コース区間2の傾斜度が2.3%の下りコースであり、予測ペースチャートにおけるペースが0:04:20であり、ラップが0:12:15であることが表示部に表示されるとともに、このときのコメントは対象コース予測時間情報(図13参照)に登録されていないため、移動履歴情報(図7参照)に入力したトレーニング時の感想マーク及び感想コメント「下り坂で、加速しよう!」が表示される。
なお、上記の処理S124、S126、S127において提供される運動支援情報は、上述した各コース区間における傾斜度、ペース及び区間走行予想時間(ラップ)、コメントに限定されるものではなく、これらに加えて、現在までの走行時間(経過時間)や走行距離、あるいは、ピッチ、心拍数等を提供するものであってもよい。また、現時点におけるペースやピッチ、心拍数等の数値と、事前に試走したときのそれらの数値とを比較して、その比較結果を提供するものであってもよい。さらに、現在位置から特定の目標地点や、傾斜度が変化する地点(例えば登りから下りへの変曲点)等までの距離を算出して、必要に応じて例えば「あと100mがんばれ!」等のメッセージをユーザUSに提供するものであってもよい。
また、上記の運動支援情報の提供方法は、情報提供部22の表示部における表示と、音響部における音声の発生とを併用するものであってもよいし、いずれか一方のみを適用するものであってもよい。また、運動支援情報の提供方法は、ユーザUSが操作スイッチ23を操作することにより、任意に切り換え設定ができるものであってもよい。
そして、上述した一連の処理S122〜S127を、ユーザUSが競技コースを走行中、繰り返し実行することにより、ユーザUSは現在位置の競技コースに関する傾斜度、ペース及び区間走行予想時間(ラップ)、コメント等を含む運動支援情報を常時取得することができる。この運動支援情報提供処理は、ユーザUSが競技コースを走り終わるまで、又は、操作スイッチ23を操作して、処理動作を終了させるまで継続される(ステップS128)。
なお、上述した運動支援情報提供方法においては、移動履歴情報に基づいて生成された対象コース予測時間情報(図13参照)から、本番のマラソン競技の走行中に、ユーザUSの現在位置に対応するコース区間の傾斜度、ペース及び区間走行予想時間(ラップ)、コメント等を読み出して、運動支援情報としてリスト機器20を介してユーザUSに提供する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上述した予測移動時間算出方法において、ユーザUSがマラソン競技と同じコースを、競技の本番に先立って実際に走る(試走する)場合にも、上記と同様の運動支援情報をリスト機器20を介してユーザUSに提供するものであってもよい。
以上説明したように、本実施形態においては、過去のトレーニング時に取得した傾斜度別の移動履歴情報をデータベースに蓄積し、マラソン競技等の予測移動時間算出対象のコースを傾斜度別に複数のコース区間に分割し、傾斜度別の移動履歴情報に基づいて、各コース区間についての予測移動時間を算出する。そして、実際のマラソン競技等において、競技コースの走行中に上記コース区間ごとに、傾斜度、ペース及び区間走行予想時間(ラップ)、トレーニング時や試走時のコメント等の運動支援情報がユーザUSに提供される。
これによれば、日常のトレーニング等において任意の経路(トレーニングコース)を移動することにより取得した傾斜度ごとの移動履歴情報に基づいて、競技等において特定の経路(競技コース)の傾斜度ごとの各コース区間を移動する際に要する予想移動時間を算出することができる。したがって、トレーニング時の実力相応で、かつ、競技コースの地形的特徴も加味した、無理のない適切な目標ペースチャートを作成することができる。また、競技中にリスト機器20を介して、ユーザUSの現在位置の地形的特徴やユーザUSの主観的なコメントを含む運動支援情報を適切に提供することができるので、ユーザUSの走りを適切な状態に誘導することができる。
<第2の実施形態>
次に本発明に係る移動情報出力装置を含む移動情報出力システムにおける移動情報出力方法の第2の実施形態について説明する。
図16は、第2の実施形態に係る移動情報出力方法における予測移動時間算出方法を示すフローチャートである。ここで、上述した第1の実施形態に示した予測移動時間算出方法と同等の処理については、その説明を簡略化する。
上述した第1の実施形態に適用される予測移動時間算出方法においては、マラソン競技等のコースを、傾斜度ごとに複数のコース区間に分割し、各コース区間の傾斜度に基づいて、データベース34から一致又は近似する移動履歴情報を抽出して、各コース区間における予想走行時間を算出する手法を示した。第2の実施形態においては、複数のコース区間に分割された各コース区間の傾斜度に対して、データベース34に傾斜度が一致又は近似する移動履歴情報が保存されていない場合に対応した手法を有している。
本実施形態に適用される予測移動時間算出方法は、図16のフローチャートに示すように、まず、上述した第1の実施形態に示した処理111と同様に、ユーザUSが参加するマラソン競技のコース情報(各距離ごとの高度情報を含む)を取得する(S111)。次いで、取得したマラソン競技のコースを、傾斜度ごとに複数のコース区間に分割する(S112)。
次いで、CPU36は、移動履歴情報に含まれる傾斜度とペースの関係から、傾斜度とペース(走行速度)との対応式を算出する(S213)。具体的には、一般に、マラソン等の走行データにおいては、特定の傾斜度における走行速度が判明している場合には、最小二乗法によりxとyの関係を比較して、一次関数又は二次関数にフィットさせた(対応付けた)相関式を用いることにより、他の傾斜度における走行速度を算出することができる。
次いで、上記の対応式を用いて、競技コースのコース区間ごとに、当該コース区間の傾斜度に対応する走行速度を算出し、予測ペースチャート(予測移動時間)を含む対象コース予測時間情報を生成する(S214)。
次いで、上述した第1の実施形態と同様に、ユーザUSは、予測移動時間算出の対象となっている競技コースを事前に試走し、その実走データをデータベース34に登録する(S215)。CPU36は、処理S214において生成した対象コース予測時間情報と、処理S215により取得した試走時の実走データとを対応付けて、表示部32に表示する。
次いで、ユーザUSにより、予測ペースチャートや実走データが閲覧、比較され、実走データが対応付けられた対象コース予測時間情報の各コース区間に、試走時のコメントが入力される(S216)。
このように、本実施形態においては、トレーニング時に取得した移動履歴情報が少なかったり、トレーニングコースの地形が単調であったりして、コース区間の傾斜度に一致又は類似する移動履歴情報が存在しない場合であっても、傾斜度と走行速度の相関式に基づいて、コース区間の傾斜度からペースを算出して、予測ペースチャートを含む対象コース予測時間情報を簡易な演算処理で生成することができる。
<変形例>
上述した実施形態においては、情報処理端末30として、データベース34が内蔵又は接続ケーブルを介して接続されたパーソナルコンピュータを適用し、データベース構築方法及び予測移動時間算出方法を当該情報処理端末30により実行して、予測移動時間を含む運動支援情報をリスト機器20に転送して表示させる、いわゆるスタンドアロン型のシステムを示した。
本発明はこれに限定されるものではなく、いわゆるクラウドコンピューティング型のシステムを有しているものであってもよい。具体的には、変形例に係る移動情報出力システムは、例えば図1に示すように、上述した実施形態における情報処理端末30に加えて、ネットワーク40と、サーバ50と、データベース60と、を有している。
ここで、情報処理端末30は、例えば図1(b)、(c)に示すように、少なくともインターネット等のネットワーク40への接続機能を備えたパーソナルコンピュータや携帯電話機、高機能携帯電話機(いわゆるスマートフォン)、携帯情報端末(タブレット、PDA)、専用端末等が適用される。また、情報処理端末30には、上述した実施形態に示したデータベース34が内蔵又は接続されていない。また、情報処理端末30は、少なくとも、リスト機器20から送信された各種のセンサデータを、ネットワーク40を介してサーバ50に転送する機能、及び、サーバ50において生成された運動支援情報を、ネットワーク40を介して受信し、リスト機器20に転送する機能と、を有している。このような情報処理端末30におけるネットワーク40への接続方法としては、例えば光ファイバー回線網やADSL(非対称デジタル加入者)回線網等を経由してネットワーク40に接続する有線接続方式や、公衆の携帯電話回線網や高速データ通信回線網等を経由して接続する無線接続方式を適用することができる。
ネットワーク40は、インターネットであってもよいし、無線LAN(Local Area
Network)や有線LAN等の局所的なネットワークであってもよい。サーバ50は、データベース54を備えたアプリケーションサーバであって、上述した実施形態に示した情報処理端末30(図4参照)と同等の構成及び機能を有している。すなわち、サーバ50は、図1(c)に示すように、情報処理端末30からネットワーク40を経由して送信(アップロード)された各種のセンサデータを、所定の保存形式でデータベース54に保存、蓄積する。また、サーバ50は、データベース54に保存されたセンサデータに基づいて、上述した移動情報出力処理を実行して移動履歴情報生成し、所定の保存形式でデータベース54に保存するとともに、当該移動履歴情報に基づいて算出される、マラソン競技のコース等における予測移動時間を含む運動支援情報を、ネットワーク40及び情報処理端末30を経由して、ユーザUSに提供する。ここで、予測移動時間を算出する対象となるマラソン競技のコース(対象経路)等に関する情報は、例えばユーザUSが情報処理端末30を操作することにより、ネットワーク40を介してサーバ50に送信される。
このように、本変形例においては、ネットワーク40に接続されたサーバ50がデータベース54を備え、情報処理端末30としてネットワーク40への接続機能を備えた機器を用いることにより、情報処理端末30におけるデータベースの制御や、上述した一連の移動情報出力処理における処理負担を大幅に軽減することができる。
また、情報処理端末30として、携帯電話機やスマートフォン等を適用する場合には、無線接続方式によるネットワーク40への接続機能が既に備わっているので、通信可能圏内であれば場所を問わず簡易に、取得したセンサデータをネットワーク40を介してサーバ50にアップロードすることができる。また、サーバ50において生成された運動支援情報を、ネットワーク40を介してダウンロードして閲覧することができる。さらに、センサデータのアップロードや運動支援情報のダウンロード、各種情報の表示等を、パーソナルコンピュータや携帯電話機、スマートフォン等に組み込まれている一般的なウェブブラウザ上で操作が可能な形式とすることにより、これらの情報処理端末30を用いて、特別なソフトウェアを必要とすることなく、本発明の移動情報出力装置及び移動情報出力システムを簡易な構成で実現することができる。
なお、上述した変形例においては、サーバ50にデータベース54が直接接続された構成を示したが、図1(c)に示すように、サーバ50がネットワーク40に接続された、データベース54と同等の構成を有するデータベース60にアクセスして、センサデータや移動履歴情報を取得したり、予測移動時間を含む運動支援情報を保存したりするものであってもよい。
また、上述した実施形態や変形例においては、本発明の対称となる競技としてマラソン大会を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばウォーキング、自転車や登山、トレッキング等の、傾斜路における移動を伴う種々のスポーツや動作にも良好に適用することができるものである。
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
<請求項1>
任意の実測経路について取得した傾斜度別の移動履歴を記憶する移動履歴記憶手段と、
特定の対象経路の各距離ごとの高度を記憶する対象経路高度記憶手段と、
前記対象経路の各距離ごとの高度に基づいて、前記対象経路を傾斜度別の複数の分割区間に分割する傾斜度別区間分割手段と、
前記実測経路の傾斜度別の前記移動履歴に基づいて、前記各分割区間の予想移動時間を算出する予想移動時間算出手段と、
前記予想移動時間算出手段により算出された前記分割区間における前記予想移動時間を外部出力する区間別予想移動時間出力手段と、
を備えることを特徴とする移動情報出力装置。
<請求項2>
前記実測経路の傾斜度別の前記移動履歴は、前記傾斜度別の移動速度であることを特徴とする請求項1に記載の移動情報出力装置。
<請求項3>
前記実測経路の傾斜度別の前記移動履歴は、前記実測経路の区間別の傾斜度、移動距離、移動時間であることを特徴とする請求項1に記載の移動情報出力装置。
<請求項4>
前記予想移動時間算出手段は、前記実測経路の傾斜度別の前記移動履歴における最も近い傾斜度の前記移動履歴を用いて、前記分割区間における予想移動時間を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の移動情報出力装置。
<請求項5>
前記予想移動時間算出手段は、前記実測経路の傾斜度別の前記移動履歴における前記傾斜度と前記移動速度との関係式を用いて、前記分割区間における予想移動時間を算出することを特徴とする請求項2に記載の移動情報出力装置。
<請求項6>
前記実測経路の傾斜度別の前記移動履歴に、前記実測経路の移動に関する第1のコメント情報が付加されており、
前記区間別予想移動時間出力手段は、前記対象経路の前記分割区間を移動する際に、前記分割区間における予想移動時間を報知するとともに、前記実測経路の傾斜度別の前記移動履歴に付加された前記第1のコメント情報を報知することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の移動情報出力装置。
<請求項7>
前記対象経路の傾斜度別の前記各分割区間に、前記対象経路の移動に関する第2のコメント情報が付加されており、
前記区間別予想移動時間出力手段は、前記対象経路の前記分割区間を移動する際に、前記分割区間における前記予想移動時間を報知するとともに、前記対象経路の傾斜度別の前記各分割区間に付加された前記第2のコメント情報を報知することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の移動情報出力装置。
<請求項8>
任意の実測経路について取得した傾斜度別の移動履歴に基づいて、特定の対象経路を傾斜度別に複数に分割した各分割区間における移動時間を算出する移動情報出力部を備え、
前記移動情報出力部は、前記実測経路を移動する際に測位センサによって検出された前記実測経路の各位置における位置情報および高度情報から求められる前記実測経路の地形データに基づいて、前記実測経路の傾斜度別の移動履歴を生成して記憶し、前記実測経路の傾斜度別の前記移動履歴に基づいて、前記傾斜度別に複数に分割した前記対象経路の前記各分割区間における予想移動時間を算出し、前記算出された前記各分割区間における前記予想移動時間を、情報提供部を介して外部出力する、
ことを特徴とする移動情報出力システム。
<請求項9>
コンピュータに、
任意の実測経路について取得した傾斜度別の移動履歴を記憶させ、
特定の対象経路の各距離ごとの高度を記憶させ、
前記対象経路の各距離ごとの高度に基づいて、前記対象経路を傾斜度別の複数の分割区間に分割させ、
前記実測経路の傾斜度別の前記移動履歴に基づいて、前記各分割区間における予想移動時間を算出させ、
前記算出された前記分割区間における前記予想移動時間を外部出力させる、
ことを特徴とする移動情報出力プログラム。
<請求項10>
コンピュータに、
任意の実測経路について取得した傾斜度別の移動履歴に基づいて、特定の対象経路を傾斜度別に複数に分割した各分割区間における移動時間を算出させる際に、
前記実測経路を移動する際に測位センサによって検出された前記実測経路の各位置における位置情報および高度情報から求められる前記実測経路の地形データに基づいて、前記実測経路の傾斜度別の移動履歴を生成させて記憶させ、前記実測経路の傾斜度別の前記移動履歴に基づいて、前記傾斜度別に複数に分割した前記対象経路の前記各分割区間における予想移動時間を算出させ、前記算出された前記各分割区間における前記予想移動時間を、情報提供部を介して外部出力させる、
ことを特徴とする移動情報出力プログラム。