本実施形態に係る電力変換装置1は、図1に示すように、第1変換回路11と第2変換回路12とを備え、さらに第1の双方向スイッチ13と第2の双方向スイッチ14と制御部6とを備えている。
第1変換回路11と第2変換回路12とは、直流電源100の高電位側となる第1入力点101と直流電源100の低電位側となる第2入力点102との間に、電気的に並列に接続されている。
第1変換回路11は、第1〜4のスイッチング素子Q1〜Q4と、第1キャパシタC1とを有している。ここで、第1変換回路11は、第2のスイッチング素子Q2と第3のスイッチング素子Q3との接続点を第1出力点103とする。
第1〜4のスイッチング素子Q1〜Q4は、第1入力点101と第2入力点102との間において、電気的に直列に接続されている。第1〜4のスイッチング素子Q1〜Q4は、第1入力点101側から第1のスイッチング素子Q1、第2のスイッチング素子Q2、第3のスイッチング素子Q3、第4のスイッチング素子Q4の順で、直列に接続されている。第1キャパシタC1は、第2のスイッチング素子Q2および第3のスイッチング素子Q3の直列回路と、電気的に並列に接続されている。
第2変換回路12は、第5〜8のスイッチング素子Q5〜Q8と、第2キャパシタC2とを有している。ここで、第2変換回路12は、第6のスイッチング素子Q6と第7のスイッチング素子Q7との接続点を第2出力点104とする。
第5〜8のスイッチング素子Q5〜Q8は、第1入力点101と第2入力点102との間において、電気的に直列に接続されている。第5〜8のスイッチング素子Q5〜Q8は、第1入力点101側から第5のスイッチング素子Q5、第6のスイッチング素子Q6、第7のスイッチング素子Q7、第8のスイッチング素子Q8の順で、直列に接続されている。第2キャパシタC2は、第6のスイッチング素子Q6および第7のスイッチング素子Q7の直列回路と、電気的に並列に接続されている。
第1の双方向スイッチ13は、第1のスイッチング素子Q1および第2のスイッチング素子Q2の接続点である第1接続点201と第7のスイッチング素子Q7および第8のスイッチング素子Q8の接続点である第2接続点202との間に電気的に接続されている。
第2の双方向スイッチ14は、第3のスイッチング素子Q3および第4のスイッチング素子Q4の接続点である第3接続点203と第5のスイッチング素子Q5および第6のスイッチング素子Q6の接続点である第4接続点204との間に電気的に接続されている。
制御部6は、第1〜8のスイッチング素子Q1〜Q8および第1,2の双方向スイッチ13,14を制御することにより、第1出力点103および第2出力点104に対する直流電源100と第1キャパシタC1と第2キャパシタC2との接続状態を切り替える。これにより、制御部6は、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる出力電圧の大きさを複数段階に変化させる。
さらに、制御部6は、第1キャパシタC1の電圧V1と第2キャパシタC2の電圧V2との差が所定の閾値を超えたときに、片側放電モードとなるように、第1〜8のスイッチング素子Q1〜Q8および第1,2の双方向スイッチ13,14を制御する。詳しくは後述するが、ここでいう片側放電モードは、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち電圧が高い方のキャパシタのみが放電されるモードである。
この構成によれば、電力変換装置1は、第1キャパシタC1の電圧V1と第2キャパシタC2の電圧V2との差が所定の閾値を超えたときに、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち電圧が高い方のキャパシタのみが放電されるモードで動作する。すなわち、電力変換装置1は、一対のキャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)の電圧のアンバランス(不均衡)が生じても、電圧が高い方のキャパシタのみ放電を行うことで、一対のキャパシタの電圧のバランスをとることが可能である。したがって、電力変換装置1は、一対のキャパシタの電圧のバランスをとることで、キャパシタに要求される耐圧を下げることができる、という利点がある。
しかも、この電力変換装置1は、一対のキャパシタの電圧のアンバランスが生じた際に、片方のキャパシタを放電することにより、一対のキャパシタの電圧のバランスをとる。つまり、電力変換装置1は、片方のキャパシタのみを充電するのではなく放電するように構成されているので、電圧のアンバランスが生じた際、直流電源100から第1キャパシタC1および第2キャパシタC2が電気的に切り離された状態で動作する。したがって、電力変換装置1は、一対のキャパシタの電圧のアンバランスに起因した漏洩電流の発生を防止することができる。
以下、本実施形態に係る電力変換装置1、およびそれを用いたパワーコンディショナ20(図7参照)について詳しく説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
本実施形態では、パワーコンディショナ20が、直流電源100としての太陽光発電装置に電気的に接続して使用される住宅用のパワーコンディショナである場合を例示するが、パワーコンディショナ20の用途を限定する趣旨ではない。パワーコンディショナ20は、たとえば家庭用燃料電池、蓄電装置など、太陽光発電装置以外の直流電源100に電気的に接続して使用されてもよく、また、たとえば店舗、工場、事務所など非住宅に用いられてもよい。さらに、電力変換装置1についても、その用途をパワーコンディショナ20に限定する趣旨ではなく、電力変換装置1は、パワーコンディショナ20以外に用いられてもよい。
<電力変換装置の構成>
本実施形態の電力変換装置1は、図1に示すように、直流電源100に電気的に接続される。ここでは直流電源100は太陽光発電装置からなるので、電力変換装置1は接続箱を介して直流電源100に接続されることになる。
本実施形態の電力変換装置1は、変換回路10および制御部6に加えて、フィルタ回路5と第1検出部21と第2検出部22とをさらに備えている。なお、変換回路10は、第1変換回路11および第2変換回路12と、第1の双方向スイッチ13および第2の双方向スイッチ14とで構成されている。
第1入力点101および第2入力点102は電力変換装置1における一対の入力端子となり、一対の入力端子(第1入力点101および第2入力点102)間には直流電源100が電気的に接続される。
また、第1変換回路11の第1出力点103および第2変換回路12の第2出力点104は、それぞれフィルタ回路5を介して第3出力点105および第4出力点106に電気的に接続されている。本実施形態では、これら第3出力点105および第4出力点106が電力変換装置1における一対の出力端子となる。
本実施形態において、電力変換装置1の出力電圧は交流電圧であり、第3出力点105および第4出力点106は、系統電源(商用電力系統)7に電気的に接続される。さらに、第3出力点105および第4出力点106には、交流電力の供給を受けて動作する負荷8が電気的に接続される。
具体的には、電力変換装置1の一対の出力端子は、分電盤に設けられた連系ブレーカに電気的に接続されることにより、負荷8および系統電源7に接続される。すなわち、電力変換装置1は、直流電源100から入力される直流電力を交流電力に変換し、該交流電力を一対の出力端子(第3出力点105および第4出力点106)から負荷8および系統電源7へ出力する。なお、図1において、系統電源7はU相、W相を持つ単相3線式であるが、この例に限らず系統電源7は単相2線式であってもよい。
次に、電力変換装置1の各部の構成について詳しく説明する。
電力変換装置1は、直流電源100に接続された一対の入力端子のうち、直流電源100の高電位(正極)側の入力端子を第1入力点101とし、直流電源100の低電位(負極)側の入力端子を第2入力点102とする。そのため、第1入力点101と第2入力点102との間には、直流電源100から出力される直流電圧が、入力電圧として印加されることになる。
ここで、直流電源100の低電位側の入力端子(第2入力点102)は、電力変換装置1の回路グランドであって、その電位は0〔V〕であると仮定する。そうすると、直流電源100の出力する直流電圧E〔V〕を用いて、第1入力点101の電位はE〔V〕で表されることになる。
第1変換回路11は、上述したように第1入力点101と第2入力点102との間に直列に接続された第1〜4のスイッチング素子Q1〜Q4と、第1キャパシタC1とを有している。第1〜4の各スイッチング素子Q1〜Q4は、ここでは一例としてデプレッション型のnチャネルMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられている。
第1のスイッチング素子Q1のドレインは第1入力点101に電気的に接続されている。第2のスイッチング素子Q2のドレインは第1のスイッチング素子Q1のソースに電気的に接続されている。第3のスイッチング素子Q3のドレインは第2のスイッチング素子Q2のソースに電気的に接続されている。第4のスイッチング素子Q4のドレインは第3のスイッチング素子Q3のソースに電気的に接続されている。さらに第4のスイッチング素子Q4のソースは、第2入力点102に電気的に接続されている。
ここで、第2のスイッチング素子Q2のソース(第3のスイッチング素子Q3のドレイン)は第1出力点103となる。さらに、第1のスイッチング素子Q1のソース(第2のスイッチング素子Q2のドレイン)は第1接続点201となり、第3のスイッチング素子Q3のソース(第4のスイッチング素子Q4のドレイン)は第3接続点203となる。
第1キャパシタC1は、一端が第2のスイッチング素子Q2のドレイン(第1接続点201)に電気的に接続され、他端が第3のスイッチング素子Q3のソース(第3接続点203)に電気的に接続されている。言い換えれば、第1キャパシタC1は、一端が第1のスイッチング素子Q1を介して第1入力点101に電気的に接続され、他端が第4のスイッチング素子Q4を介して第2入力点102に電気的に接続されている。
第2変換回路12は、上述したように第1入力点101と第2入力点102との間に直列に接続された第5〜8のスイッチング素子Q5〜Q8と、第2キャパシタC2とを有している。ここで、第2変換回路12は、基本的には第1変換回路11と同様の構成であって、第5〜8のスイッチング素子Q5〜Q8が第1〜4のスイッチング素子Q1〜Q4に相当し、第2キャパシタC2が第1キャパシタC1に相当する。ここで、第5〜8の各スイッチング素子Q5〜Q8は、第1〜4の各スイッチング素子Q1〜Q4と同様にデプレッション型のnチャネルMOSFETが用いられている。
すなわち、第5のスイッチング素子Q5のドレインは第1入力点101に電気的に接続されている。第6のスイッチング素子Q6のドレインは第5のスイッチング素子Q5のソースに電気的に接続されている。第7のスイッチング素子Q7のドレインは第6のスイッチング素子Q6のソースに電気的に接続されている。第8のスイッチング素子Q8のドレインは第7のスイッチング素子Q7のソースに電気的に接続されている。さらに第8のスイッチング素子Q8のソースは、第2入力点102に電気的に接続されている。
ここで、第6のスイッチング素子Q6のソース(第7のスイッチング素子Q7のドレイン)は第2出力点104となる。さらに、第5のスイッチング素子Q5のソース(第6のスイッチング素子Q6のドレイン)は第4接続点204となり、第7のスイッチング素子Q7のソース(第8のスイッチング素子Q8のドレイン)は第2接続点202となる。
第2キャパシタC2は、一端が第6のスイッチング素子Q6のドレイン(第4接続点204)に電気的に接続され、他端が第7のスイッチング素子Q7のソース(第2接続点202)に電気的に接続されている。言い換えれば、第2キャパシタC2は、一端が第5のスイッチング素子Q5を介して第1入力点101に電気的に接続され、他端が第8のスイッチング素子Q8を介して第2入力点102に電気的に接続されている。
第2キャパシタC2の回路定数(キャパシタンス)と第1キャパシタC1の回路定数(キャパシタンス)とは同値である。
また、図1において、第1〜8のスイッチング素子Q1〜Q8の各々には第1〜8のダイオードD1〜D8がそれぞれ逆並列に接続されている。これら第1〜8のダイオードD1〜D8は、それぞれ第1〜8の各スイッチング素子Q1〜Q8の寄生ダイオードである。つまり、第1のスイッチング素子Q1の寄生ダイオードは第1のダイオードD1を構成し、同様に、第2,3…の各スイッチング素子Q2,Q3…の寄生ダイオードはそれぞれ第2,3…のダイオードD2,D3…を構成する。たとえば第1のダイオードD1は、第1のスイッチング素子Q1のドレイン側をカソード、ソース側をアノードとする向きに接続されている。
このように構成される第1変換回路11と第2変換回路12とは、第1入力点101と第2入力点102との間において、電気的に並列に接続されている。つまり、第1変換回路11と第2変換回路12とは、直流電源100の両端間に並列に接続されている。
第1の双方向スイッチ13は、第1接続点201と第2接続点202との間に電気的に接続されている。つまり、第1変換回路11の第1接続点201は、第1の双方向スイッチ13を介して第2変換回路12の第2接続点202に電気的に接続されている。ここでは、第1の双方向スイッチ13は、第1接続点201と第2接続点202との間において、電気的に直列に接続された第9のスイッチング素子Q9と第10のスイッチング素子Q10とを有している。第1の双方向スイッチ13は、第1接続点201側から第9のスイッチング素子Q9、第10のスイッチング素子Q10の順に接続されている。
具体的に説明すると、第9,10の各スイッチング素子Q9,Q10は、第1〜8の各スイッチング素子Q1〜Q8と同様にデプレッション型のnチャネルMOSFETが用いられている。第9のスイッチング素子Q9のソースは第1接続点201に接続され、第9のスイッチング素子Q9のドレインは第10のスイッチング素子Q10のドレインに接続されている。第10のスイッチング素子Q10のソースは第2接続点202に接続されている。要するに、第9のスイッチング素子Q9と第10のスイッチング素子Q10とは、ドレイン同士が互いに接続されるように、第1接続点201と第2接続点202との間において逆直列に接続されている。
第2の双方向スイッチ14は、第3接続点203と第4接続点204との間に電気的に接続されている。つまり、第1変換回路11の第3接続点203は、第2の双方向スイッチ14を介して第2変換回路12の第4接続点204に電気的に接続されている。ここでは、第2の双方向スイッチ14は、第3接続点203と第4接続点204との間において、電気的に直列に接続された第12のスイッチング素子Q12と第11のスイッチング素子Q11とを有している。第2の双方向スイッチ14は、第3接続点203側から第12のスイッチング素子Q12、第11のスイッチング素子Q11の順に接続されている。
具体的に説明すると、第11,12の各スイッチング素子Q11,Q12は、第1〜8の各スイッチング素子Q1〜Q8と同様にデプレッション型のnチャネルMOSFETが用いられている。第11のスイッチング素子Q11のソースは第4接続点204に接続され、第11のスイッチング素子Q11のドレインは第12のスイッチング素子Q12のドレインに接続されている。第12のスイッチング素子Q12のソースは第3接続点203に接続されている。要するに、第11のスイッチング素子Q11と第12のスイッチング素子Q12とは、ドレイン同士が互いに接続されるように、第3接続点203と第4接続点204との間において逆直列に接続されている。
また、第9〜12のスイッチング素子Q9〜Q12の各々には第9〜12のダイオードD9〜D12がそれぞれ逆並列に接続されている。これら第9〜12のダイオードD9〜D12は、それぞれ第9〜12の各スイッチング素子Q9〜Q12の寄生ダイオードである。つまり、第9のスイッチング素子Q9の寄生ダイオードは第9のダイオードD9を構成し、同様に、第10,11,12の各スイッチング素子Q10,Q11,Q12の寄生ダイオードはそれぞれ第10,11,12のダイオードD10,D11,D12を構成する。たとえば第9のダイオードD9は、第9のスイッチング素子Q9のドレイン側をカソード、ソース側をアノードとする向きに接続されている。
本実施形態においては、第1の双方向スイッチ13は、全オフ状態と全オン状態とを含む動作状態を切替可能に構成されている。第1の双方向スイッチ13の全オフ状態は、第1接続点201と第2接続点202との間で双方向の電流を遮断する状態である。第1の双方向スイッチ13の全オン状態は、第1接続点201と第2接続点202との間で双方向の電流を通過させる状態である。第2の双方向スイッチ14も同様に、全オフ状態と全オン状態とを含む動作状態を切替可能に構成されている。第2の双方向スイッチ14の全オフ状態は、第3接続点203と第4接続点204との間で双方向の電流を遮断する状態である。第2の双方向スイッチ14の全オン状態は、第3接続点203と第4接続点204との間で双方向の電流を通過させる状態である。
さらに、本実施形態では、第1の双方向スイッチ13の動作状態は、第2接続点202から第1接続点201へ流れる電流を遮断し、且つ第1接続点201から第2接続点202へ流れる電流を通過させる半オン状態をさらに含んでいる。また、第2の双方向スイッチ14の動作状態は、第3接続点203から第4接続点204へ流れる電流を遮断し、且つ第4接続点204から第3接続点203へ流れる電流を通過させる半オン状態をさらに含んでいる。
そのため、本実施形態の電力変換装置1は、第1の双方向スイッチ13を全オン状態とすることにより、第1接続点201と第2接続点202との間を双方向の電流が通過可能な状態を作り出すことができる。また、本実施形態の電力変換装置1は、第2の双方向スイッチ14を全オン状態とすることにより、第3接続点203と第4接続点204との間を双方向の電流が通過可能な状態を作り出すことができる。
すなわち、第1の双方向スイッチ13は、第9,10のスイッチング素子Q9,Q10がいずれもオフの状態で全オフ状態となり、第9,10のスイッチング素子Q9,Q10がいずれもオンの状態で全オン状態となる。さらに、第1の双方向スイッチ13は、第10のスイッチング素子Q10がオンで且つ第9のスイッチング素子Q9がオフの状態には、第9のダイオードD9によって電流の向きが一方向に制限される半オン状態となる。
また、第2の双方向スイッチ14は、第11,12のスイッチング素子Q11,Q12がいずれもオフの状態で全オフ状態となり、第11,12のスイッチング素子Q11,Q12がいずれもオンの状態で全オン状態となる。さらに、第2の双方向スイッチ14は、第12のスイッチング素子Q12がオンで且つ第11のスイッチング素子Q11がオフの状態には、第11のダイオードD11によって電流の向きが一方向に制限される半オン状態となる。
このように、本実施形態における双方向スイッチ(第1の双方向スイッチ13および第2の双方向スイッチ14のそれぞれ)は、全オフ状態、全オン状態、および半オン状態からなる3つの動作状態を切替可能である。
上記構成を言い換えれば、第1の双方向スイッチ13は、第1キャパシタC1の正極側の端子と第2キャパシタC2の負極側の端子との間に電気的に接続されている。第2の双方向スイッチ14は、第1キャパシタC1の負極側の端子と第2キャパシタC2の正極側の端子との間に電気的に接続されている。つまり、第1変換回路11の第1キャパシタC1と第2変換回路12の第2キャパシタC2とは、第1の双方向スイッチ13および第2の双方向スイッチ14を介して、たすき掛け状に接続されている。
さらに、第1〜8のスイッチング素子Q1〜Q8、並びに第9〜12のスイッチング素子Q9〜Q12のゲートは、それぞれ制御部6に電気的に接続されている。制御部6は、第1〜4のスイッチング素子Q1〜Q4のオン/オフを個別に切り替え可能であって、これにより第1変換回路11を制御する。また、制御部6は、第5〜8のスイッチング素子Q5〜Q8のオン/オフを個別に切り替え可能であって、これにより第2変換回路12を制御する。また、制御部6は、第9,10のスイッチング素子Q9,Q10のオン/オフを個別に切り替え可能であって、これにより第1の双方向スイッチ13を制御する。また、制御部6は、第11,12のスイッチング素子Q11,Q12のオン/オフを個別に切り替え可能であって、これにより第2の双方向スイッチ14を制御する。
なお、制御部6は、第1変換回路11、第2変換回路12、第1の双方向スイッチ13、第2の双方向スイッチ14のそれぞれについて個別に設けられていてもよい。
本実施形態では、制御部6は、第1〜12のスイッチング素子Q1〜Q12に駆動信号を与えるドライブ回路61と、ドライブ回路61に信号を与えるマイコン(マイクロコンピュータ)62とを有している。
ドライブ回路61は、第1〜12の各スイッチング素子Q1〜Q12の制御端子(ゲート)に対して駆動信号を与えることにより、各素子を個別に駆動(制御)するように構成されている。マイコン62は、ドライブ回路61にPWM(Pulse Width Modulation)信号を与えることにより、ドライブ回路61を制御するように構成されている。すなわち、制御部6は、マイコン62からの指示に応じてドライブ回路61が生成する駆動信号によって、第1〜12のスイッチング素子Q1〜Q12を個別に制御する。
ここにおいて、ドライブ回路61は、2つ以上のスイッチング素子が同時にオンして、短絡電流が流れることを防止する短絡防止回路としての機能を兼ね備えていることが好ましい。すなわち、特定の組み合わせのスイッチング素子が同時にオンすると、たとえば第1入力点101と第2入力点102との間が短絡し、直流電源100からの電流が短絡電流となってスイッチング素子に流れる可能性がある。そこで、ドライブ回路61は、このような特定の組み合わせのスイッチング素子が同時にオンしないように構成されることが好ましい。たとえば、ドライブ回路61は、特定の組み合わせのスイッチング素子のゲートに入力される駆動信号が同時にHレベルになると、駆動信号を強制的にLレベルに落とすことにより、特定の組み合わせのスイッチング素子を同時にオンさせないように構成される。
フィルタ回路5は、図1に示すように、一対のインダクタL1,L2と、第3キャパシタC3とを有している。一方のインダクタL1は、第1出力点103と第3出力点105との間に電気的に接続されている。他方のインダクタL2は、第2出力点104と第4出力点106との間に電気的に接続されている。ただし、インダクタL1,L2は、第1出力点103および第2出力点104の少なくとも一方と出力端子(第3出力点105、第4出力点106)との間に電気的に接続されていればよく、インダクタL1,L2のいずれかは省略されていてもよい。
第3キャパシタC3は、第3出力点105と第4出力点106との間に電気的に接続されている。言い換えれば、フィルタ回路5は、第1出力点103と第2出力点104との間に電気的に接続された、インダクタL1、第3キャパシタC3、インダクタL2の直列回路である。
第1検出部21は、第1キャパシタC1の電圧を検出するように構成されている。ここでは、第1検出部21は、第1キャパシタC1の両端に発生する電圧V1の大きさを、第1接続点201側を正極として検出する。第1検出部21は、たとえば第1接続点201と第3接続点203との間に直列に接続された一対の分圧抵抗で構成される。ただし、第1検出部21の構成はこれに限らず、第1キャパシタC1の両端に発生する電圧(両端電圧)V1の値(大きさ)を検出可能な構成であればよい。第1検出部21は、検出結果である電圧V1の値を、制御部6のマイコン62へ出力する。
第2検出部22は、第2キャパシタC2の電圧を検出するように構成されている。ここでは、第2検出部22は、第2キャパシタC2の両端に発生する電圧V2の大きさを、第4接続点204側を正極として検出する。第2検出部22は、たとえば第4接続点204と第2接続点202との間に直列に接続された一対の分圧抵抗で構成される。ただし、第2検出部22の構成はこれに限らず、第2キャパシタC2の両端に発生する電圧(両端電圧)V2の値(大きさ)を検出可能な構成であればよい。第2検出部22は、検出結果である電圧V2の値を、制御部6のマイコン62へ出力する。
第1検出部21および第2検出部22の検出結果を用いた制御部6の動作については後述する。
<電力変換装置の基本動作>
上述した構成の電力変換装置1の基本動作について、図2A,2B,3A,3B,4A,4B,5A,5Bを参照して簡単に説明する。なお、図中、太線矢印は電流経路を表し、点線の丸印が付されたスイッチング素子はオン状態の素子を表している。
ここでいう電力変換装置1の基本動作とは、直流電源100より電力の供給が開始してから第1キャパシタC1および第2キャパシタC2が基準電圧に充電されるまでの期間(以下、「始動期間」という)の経過後の電力変換装置1の動作である。つまり、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2が基準電圧に充電された状態からの電力変換装置1の動作を、電力変換装置1の基本動作とする。
第1キャパシタC1についての基準電圧は、直流電源100から第1入力点101と第2入力点102との間に印加される印加電圧の1/4の大きさの電圧である。第2キャパシタC2についての基準電圧も、同様に直流電源100から第1入力点101と第2入力点102との間に印加される印加電圧の1/4の大きさの電圧である。
以下では、直流電源100の出力電圧がE〔V〕であって、第1入力点101の電位はE〔V〕、第2入力点102の電位は0〔V〕であると仮定する。ここで、基準電圧に充電された第1キャパシタC1と第2キャパシタC2との各々の両端電圧はE/4〔V〕となる。以下では、第1出力点103と第2出力点104との電位差、つまり第1出力点103−第2出力点104間に生じる電圧を、電力変換装置1の出力電圧として説明する。
なお、第3出力点105および第4出力点106は系統電源7に電気的に接続されているため、第3出力点105と第4出力点106との電位差、つまり第3出力点105−第4出力点106間に生じる電圧は、系統電源7の出力電圧に等しくなる。第1出力点103と第3出力点105との電位差、並びに第2出力点104と第4出力点106との間の電位差は、フィルタ回路5にて吸収されることになる。
電力変換装置1は、第1変換回路11、第2変換回路12、第1の双方向スイッチ13、第2の双方向スイッチ14を第1〜8の計8つのモードに切り替える。これにより、電力変換装置1は、第1入力点101と第2入力点102との間に印加される直流電圧(E〔V〕)を交流電圧に変換して、第1出力点103と第2出力点104との間に出力電圧を発生する。なお、以下の説明では、第1〜12のスイッチング素子Q1〜Q12に関し、それぞれオン/オフの状態について言及していない場合には「オフ」の状態にあることとする。また、第1〜12のスイッチング素子Q1〜Q12での電圧降下、および第1〜12のダイオードD1〜D12での電圧降下は無視できる程度と仮定する。
ここにおいて、制御部6は、以下の2つの条件に従って、第1〜12のスイッチング素子Q1〜Q12を制御する。ただし、これらの条件は、第1〜8のモードに適用される条件であって、後述する片側放電モードには適用されない。
1つ目の条件としては、第1変換回路11の第1〜4のスイッチング素子Q1〜Q4と、第2変換回路12の第5〜8のスイッチング素子Q5〜Q8とで一対一のペアを設定し、ペアごとにオン/オフが切り替わるようにする。ここでは、第1,8のスイッチング素子Q1,Q8がペアとなり、第2,7のスイッチング素子Q2,Q7がペアとなり、第3,6のスイッチング素子Q3,Q6がペアとなり、第4,5のスイッチング素子Q4,Q5がペアとなる。
2つ目の条件としては、第2のスイッチング素子Q2と第3のスイッチング素子Q3とが、同時にオンまたはオフにならないようにする。さらに、第1〜4のモードにおいては第1のスイッチング素子Q1と第11のスイッチング素子Q11とが、また、第5〜8のモードにおいては第4のスイッチング素子Q4と第9のスイッチング素子Q9とが、それぞれ同時にオンまたはオフにならないようにする。
まず、図2Aに示す第1のモードでは、第1変換回路11の第1,2のスイッチング素子Q1,Q2と、第2変換回路12の第7,8のスイッチング素子Q7,Q8と、第2の双方向スイッチ14の第12のスイッチング素子Q12とがそれぞれオンの状態にある。つまり、第2の双方向スイッチ14は半オン状態にある。この状態では、図2Aに示すように、第1入力点101は、第1のスイッチング素子Q1、第2のスイッチング素子Q2を介して第1出力点103に電気的に接続される。また、第2入力点102は、第8のスイッチング素子Q8、第7のスイッチング素子Q7を介して第2出力点104に電気的に接続される。このとき、半導体素子(スイッチング素子、ダイオード)のうち電流が流れる素子は第1,2,7,8のスイッチング素子Q1,Q2,Q7,Q8の計4つであって、第12のスイッチング素子Q12には電流は流れない。
したがって、第1出力点103は第1入力点101と同電位(E〔V〕)になり、第2出力点104は第2入力点102と同電位(0〔V〕)になる。そのため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、E(=E−0)〔V〕になる。さらにこのとき、第3出力点105の電位は、第1出力点103の電位からインダクタL1の両端電圧を差し引いた電位となり、第4出力点106の電位は、第2出力点104の電位にインダクタL2の両端電圧を加えた電位となる。
次に、図2Bに示す第2のモードでは、第1変換回路11の第1,3のスイッチング素子Q1,Q3と、第2変換回路12の第6,8のスイッチング素子Q6,Q8と、第2の双方向スイッチ14の第12のスイッチング素子Q12とがそれぞれオンの状態にある。つまり、第2の双方向スイッチ14は半オン状態にある。この状態では、図2Bに示すように、第1入力点101は、第1のスイッチング素子Q1、第1キャパシタC1、第3のスイッチング素子Q3を介して第1出力点103に電気的に接続される。また、第2入力点102は、第8のスイッチング素子Q8、第2キャパシタC2、第6のスイッチング素子Q6を介して第2出力点104に電気的に接続される。このとき、半導体素子(スイッチング素子、ダイオード)のうち電流が流れる素子は第1,3,6,8のスイッチング素子Q1,Q3,Q6,Q8の計4つであって、第12のスイッチング素子Q12には電流は流れない。
したがって、第1出力点103の電位は、第1入力点101の電位(E〔V〕)より第1キャパシタC1の両端電圧(E/4〔V〕)分だけ低い電位、つまり3E/4(=E−E/4)〔V〕となる。また、第2出力点104の電位は、第2入力点102の電位(0〔V〕)より第2キャパシタC2の両端電圧(E/4〔V〕)分だけ高い電位、つまりE/4(=0+E/4)〔V〕となる。そのため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、E/2(=3E/4−E/4)〔V〕になる。さらにこのとき、第3出力点105の電位は、第1出力点103の電位からインダクタL1の両端電圧を差し引いた電位となり、第4出力点106の電位は、第2出力点104の電位にインダクタL2の両端電圧を加えた電位となる。
次に、図3Aに示す第3のモードでは、第1変換回路11の第2のスイッチング素子Q2と、第2変換回路12の第7のスイッチング素子Q7と、第2の双方向スイッチ14の第11,12のスイッチング素子Q11,Q12とがそれぞれオンの状態にある。つまり、第2の双方向スイッチ14は全オン状態にある。この状態では、第2出力点104は、第7のスイッチング素子Q7、第2キャパシタC2、第11のスイッチング素子Q11、第12のスイッチング素子Q12、第1キャパシタC1、第2のスイッチング素子Q2を介して第1出力点103に電気的に接続される。このとき、半導体素子(スイッチング素子、ダイオード)のうち電流が流れる素子は第2,7,11,12のスイッチング素子Q2,Q7,Q11,Q12の計4つである。
したがって、第1出力点103の電位は、第2出力点104の電位より、第1キャパシタC1の両端電圧(E/4〔V〕)と第2キャパシタC2の両端電圧(E/4〔V〕)との和の分だけ高い電位となる。そのため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、E/2(=E/4+E/4)〔V〕になる。さらにこのとき、第3出力点105の電位は、第1出力点103の電位からインダクタL1の両端電圧を差し引いた電位となり、第4出力点106の電位は、第2出力点104の電位にインダクタL2の両端電圧を加えた電位となる。また、この状態においては、第2の双方向スイッチ14が全オン状態にあるため、変換回路10は、第1出力点103と第2出力点104との間に双方向の電流を流すことができる。
次に、図3Bに示す第4のモードでは、第1変換回路11の第3のスイッチング素子Q3と、第2変換回路12の第6のスイッチング素子Q6と、第2の双方向スイッチ14の第11,12のスイッチング素子Q11,Q12とがそれぞれオンの状態にある。つまり、第2の双方向スイッチ14は全オン状態にある。この状態では、第2出力点104は、第6のスイッチング素子Q6、第11のスイッチング素子Q11、第12のスイッチング素子Q12、第3のスイッチング素子Q3を介して第1出力点103に電気的に接続される。このとき、半導体素子(スイッチング素子、ダイオード)のうち電流が流れる素子は第3,6,11,12のスイッチング素子Q3,Q6,Q11,Q12の計4つである。
したがって、第1出力点103の電位は第2出力点104と同電位になる。そのため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、0〔V〕になる。さらにこのとき、第3出力点105の電位は、第1出力点103の電位からインダクタL1の両端電圧を差し引いた電位となり、第4出力点106の電位は、第2出力点104の電位にインダクタL2の両端電圧を加えた電位となる。また、この状態においては、第2の双方向スイッチ14が全オン状態にあるため、変換回路10は、第1出力点103と第2出力点104との間に双方向の電流を流すことができる。
一方、第5〜8のモードにおいては、電力変換装置1は、上記第1〜4のモードを基準にして、第1変換回路11と第2変換回路12とで動作を入れ替え、且つ第1の双方向スイッチ13と第2の双方向スイッチ14とで動作を入れ替えたような動作を行う。つまり、第5〜8のモードと第1〜4のモードとでは、変換回路10の動作は、第1変換回路11および第1の双方向スイッチ13と、第2変換回路12および第2の双方向スイッチ14とが入れ替わった対称な動作となる。
すなわち、図4Aに示す第5のモードでは、変換回路10の動作は、上記第4のモードと対称な動作となる。そのため、第5のモードでは、第1変換回路11の第2のスイッチング素子Q2と、第2変換回路12の第7のスイッチング素子Q7と、第1の双方向スイッチ13の第9,10のスイッチング素子Q9,Q10とがそれぞれオンの状態にある。つまり、第1の双方向スイッチ13は全オン状態にある。この状態では、図4Aに示すように、第1出力点103は、第2のスイッチング素子Q2、第9のスイッチング素子Q9、第10のスイッチング素子Q10、第7のスイッチング素子Q7を介して第2出力点104に電気的に接続される。このとき、半導体素子(スイッチング素子、ダイオード)のうち電流が流れる素子は第2,7,9,10のスイッチング素子Q2,Q7,Q9,Q10の計4つである。
したがって、第1出力点103の電位は第2出力点104と同電位になる。そのため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、0〔V〕になる。さらにこのとき、第3出力点105の電位は、第1出力点103の電位にインダクタL1の両端電圧を加えた電位となり、第4出力点106の電位は、第2出力点104の電位からインダクタL2の両端電圧を差し引いた電位となる。また、この状態においては、第1の双方向スイッチ13が全オン状態にあるため、変換回路10は、第1出力点103と第2出力点104との間に双方向の電流を流すことができる。
次に、図4Bに示す第6のモードでは、変換回路10の動作は、上記第3のモードと対称な動作となる。そのため、第6のモードでは、第1変換回路11の第3のスイッチング素子Q3と、第2変換回路12の第6のスイッチング素子Q6と、第1の双方向スイッチ13の第9,10のスイッチング素子Q9,Q10とがそれぞれオンの状態にある。つまり、第1の双方向スイッチ13は全オン状態にある。この状態では、第1出力点103は、第3のスイッチング素子Q3、第1キャパシタC1、第9のスイッチング素子Q9、第10のスイッチング素子Q10、第2キャパシタC2、第6のスイッチング素子Q6を介して第2出力点104に電気的に接続される。このとき、半導体素子(スイッチング素子、ダイオード)のうち電流が流れる素子は第3,6,9,10のスイッチング素子Q3,Q6,Q9,Q10の計4つである。
したがって、第1出力点103の電位は、第2出力点104の電位より、第1キャパシタC1の両端電圧(E/4〔V〕)と第2キャパシタC2の両端電圧(E/4〔V〕)との和の分だけ低い電位となる。そのため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、−E/2(=−E/4−E/4)〔V〕になる。さらにこのとき、第3出力点105の電位は、第1出力点103の電位にインダクタL1の両端電圧を加えた電位となり、第4出力点106の電位は、第2出力点104の電位からインダクタL2の両端電圧を差し引いた電位となる。また、この状態においては、第1の双方向スイッチ13が全オン状態にあるため、変換回路10は、第1出力点103と第2出力点104との間に双方向の電流を流すことができる。
次に、図5Aに示す第7のモードでは、変換回路10の動作は、上記第2のモードと対称な動作となる。そのため、第7のモードでは、第1変換回路11の第2,4のスイッチング素子Q2,Q4と、第2変換回路12の第5,7のスイッチング素子Q5,Q7と、第1の双方向スイッチ13の第10のスイッチング素子Q10とがそれぞれオンの状態にある。つまり、第1の双方向スイッチ13は半オン状態にある。この状態では、図5Aに示すように、第1入力点101は、第5のスイッチング素子Q5、第2キャパシタC2、第7のスイッチング素子Q7を介して第2出力点104に電気的に接続される。また、第2入力点102は、第4のスイッチング素子Q4、第1キャパシタC1、第2のスイッチング素子Q2を介して第1出力点103に電気的に接続される。このとき、半導体素子(スイッチング素子、ダイオード)のうち電流が流れる素子は第2,4,5,7のスイッチング素子Q2,Q4,Q5,Q7の計4つであって、第10のスイッチング素子Q10には電流は流れない。
したがって、第1出力点103の電位は、第2入力点102の電位(0〔V〕)より第1キャパシタC1の両端電圧(E/4〔V〕)分だけ高い電位、つまりE/4(=0+E/4)〔V〕となる。また、第2出力点104の電位は、第1入力点101の電位(E〔V〕)より第2キャパシタC2の両端電圧(E/4〔V〕)分だけ低い電位、つまり3E/4(=E−E/4)〔V〕となる。そのため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、−E/2(=E/4−3E/4)〔V〕になる。さらにこのとき、第3出力点105の電位は、第1出力点103の電位にインダクタL1の両端電圧を加えた電位となり、第4出力点106の電位は、第2出力点104の電位からインダクタL2の両端電圧を差し引いた電位となる。
次に、図5Bに示す第8のモードでは、変換回路10の動作は、上記第1のモードと対称な動作となる。そのため、第8のモードでは、第1変換回路11の第3,4のスイッチング素子Q3,Q4と、第2変換回路12の第5,6のスイッチング素子Q5,Q6と、第1の双方向スイッチ13の第10のスイッチング素子Q10とがそれぞれオンの状態にある。つまり、第1の双方向スイッチ13は半オン状態にある。この状態では、図5Bに示すように、第1入力点101は、第5のスイッチング素子Q5、第6のスイッチング素子Q6を介して第2出力点104に電気的に接続される。また、第2入力点102は、第4のスイッチング素子Q4、第3のスイッチング素子Q3を介して第1出力点103に電気的に接続される。このとき、半導体素子(スイッチング素子、ダイオード)のうち電流が流れる素子は第3,4,5,6のスイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6の計4つであって、第10のスイッチング素子Q10には電流は流れない。
したがって、第1出力点103は第2入力点102と同電位(0〔V〕)になり、第2出力点104は第1入力点101と同電位(E〔V〕)になる。そのため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、−E(=0−E)〔V〕になる。さらにこのとき、第3出力点105の電位は、第1出力点103の電位にインダクタL1の両端電圧を加えた電位となり、第4出力点106の電位は、第2出力点104の電位からインダクタL2の両端電圧を差し引いた電位となる。
要するに、電力変換装置1は、上記第1〜8のモードを切り替えることにより、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる出力電圧の大きさを、複数段階に変化させる。
さらに詳しく説明すると、第1変換回路11は、第1キャパシタC1をフライングキャパシタとして用い、第1〜4,9〜12のスイッチング素子Q1〜Q4,Q9〜Q12のオン/オフを切り替えることにより、第1出力点103の電位を切り替える。なお、第1キャパシタC1は、原則、第2,7のモードで充電され、第3,6のモードで放電されるが、比較的高い周波数で第1〜8のモードを切り替えれば、基本動作時における第1キャパシタC1の両端電圧は略一定(E/4〔V〕)とみなすことができる。
また、第2変換回路12は、第2キャパシタC2をフライングキャパシタとして用い、第5〜12のスイッチング素子Q5〜Q12のオン/オフを切り替えることにより、第2出力点104の電位を切り替える。なお、第2キャパシタC2は、原則、第2,7のモードで充電され、第3,6のモードで放電されるが、比較的高い周波数で第1〜8のモードを切り替えれば、基本動作時における第2キャパシタC2の両端電圧は略一定(E/4〔V〕)とみなすことができる。
要するに、制御部6は、出力電圧の大きさが同じであって且つキャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)を流れる電流の向きが逆になる一対のモードを切り替えることにより、キャパシタの充電と放電とを切り替えている。
具体的には、制御部6は、出力電圧をE/2〔V〕とする場合には、第2のモードと第3のモードとを一対のモードとして切り替えることにより、キャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)の充電と放電とを切り替える。また、制御部6は、出力電圧を−E/2〔V〕とする場合には、第7のモードと第6のモードとを一対のモードとして切り替えることにより、キャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)の充電と放電とを切り替える。
ここで、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2が充電されるのは、原則、第2,7のモードであるから、以下では第2のモードおよび第7のモードを「充電モード」とも呼ぶ。第1キャパシタC1および第2キャパシタC2が放電されるのは、原則、第3,6のモードであるから、以下では第3のモードおよび第6のモードを「放電モード」とも呼ぶ。また、以下では、制御部6は、充電モードを選択するときに「充電指令」を出力することとし、放電モードを選択するときには「放電指令」を出力することとする。
すなわち、制御部6は、出力電圧をE/2〔V〕とする場合において、キャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)を充電するときには、充電指令を出力し、充電モードである第2のモードを選択する。制御部6は、出力電圧をE/2〔V〕とする場合において、キャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)を放電するときには、放電指令を出力し、放電モードである第3のモードを選択する。
同様に、制御部6は、出力電圧を−E/2〔V〕とする場合において、キャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)を充電するときには、充電指令を出力し、充電モードである第7のモードを選択する。制御部6は、出力電圧を−E/2〔V〕とする場合において、キャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)を放電するときには、放電指令を出力し、放電モードである第6のモードを選択する。
このように、制御部6は、出力電圧の大きさが同じであって且つキャパシタを流れる電流の向きが逆になる充電モードと放電モードとを、一対のモードとして切り替えることにより、キャパシタの充電と放電とを切り替える。ただし、充電モードでキャパシタが充電され、放電モードでキャパシタが放電されるのは、変換回路10に後述する順方向電流が流れている状態に限られる。変換回路10に後述する逆方向電流が流れている状態では、充電モードでキャパシタが放電され、放電モードでキャパシタが充電される。この点については後述する。以下、とくに断りがない限り、変換回路10を流れる電流は順方向電流であると仮定して説明する。
以上説明したように、上記第1〜8のモードにおいては、電力変換装置1は、第1出力点103を高電位側、第2出力点104を低電位側とする電圧を出力電圧として出力することになる。そして、電力変換装置1は、第1〜4のモードにおいて、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる出力電圧を、E〔V〕(第1のモード)、E/2〔V〕(第2,3のモード)、0〔V〕(第4のモード)の3段階で切り替えることになる。第5〜8のモードにおいては、電力変換装置1は、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる出力電圧を、0〔V〕(第5のモード)、−E/2〔V〕(第6,7のモード)、−E〔V〕(第8のモード)の3段階で切り替えることになる。
したがって、電力変換装置1は、上記第1〜8の計8つのモードを切り替えることにより、出力電圧をE〔V〕、E/2〔V〕、0〔V〕、−E/2〔V〕、−E〔V〕の5段階で切り替えることができる。電力変換装置1は、これら5段階の出力電圧を適宜切り替えることにより、第3出力点105と第4出力点106との間に交流電圧(以下、「最終出力電圧」という)を発生する。
ここで、最終出力電圧は、系統電源7の出力電圧に等しく、図6に示すように正弦波状の波形となる。図6では、横軸が時間軸、縦軸が電圧値を表している。ここで、最終出力電圧が0〔V〕〜E〔V〕の範囲で変動する期間(つまり正弦波における正極性側の半波に相当する期間)T1〜T3においては、電力変換装置1は、第1〜4のモードを切り替えることで動作する。最終出力電圧が0〔V〕〜−E〔V〕の範囲で変動する期間(つまり正弦波における負極性側の半波に相当する期間)T4〜T6においては、電力変換装置1は、第5〜8のモードを切り替えることで動作する。
以上説明した第1〜8のモードをまとめると、表1のようになる。
ここにおいて、制御部6は、PWM信号により、第1〜12のスイッチング素子Q1〜Q12のオン/オフを切り替え、上記第1〜8のモードを実現する。
さらに詳しく説明すると、図6において最終出力電圧が0〔V〕〜E/2〔V〕の範囲で変動する期間T1,T3には、制御部6は、表1に示すように第2〜4のモードを切り替える動作を繰り返す。ここで、制御部6は、第2のモードと第3のモードとで時間長さを調整することで、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2の放電、充電のバランスをとる。
さらに、図6において最終出力電圧がE/2〔V〕〜E〔V〕の範囲で変動する期間T2には、制御部6は、表1に示すように第1〜3のモードを切り替える動作を繰り返す。ここで、制御部6は、第2のモードと第3のモードとで時間長さを調整することで、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2の放電、充電のバランスをとる。
また、図6において最終出力電圧が0〔V〕〜−E/2〔V〕の範囲で変動する期間T4,T6には、制御部6は、表1に示すように第5〜7のモードを切り替える動作を繰り返す。ここで、制御部6は、第6のモードと第7のモードとで時間長さを調整することで、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2の放電、充電のバランスをとる。
さらに、図6において最終出力電圧が−E/2〔V〕〜−E〔V〕の範囲で変動する期間T5には、制御部6は、表1に示すように第6〜8のモードを切り替える動作を繰り返す。ここで、制御部6は、第6のモードと第7のモードとで時間長さを調整することで、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2の放電、充電のバランスをとる。
本実施形態において、制御部6は、PWM信号のデューティ比を変化させながら上述した第1〜8のモードの切り替えを行うことで、最終出力電圧の波形が正弦波に近似するように、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる出力電圧を制御する。要するに、電力変換装置1は、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる出力電圧の大きさを制御部6にて5段階で変化させることにより、正弦波状の交流電圧を第3出力点105と第4出力点106との間に発生する。
なお、第4のモードと第5のモードとは、いずれも出力電圧が0〔V〕であって、且つ第1キャパシタC1および第2キャパシタC2の放電および充電には寄与しないモードである。そのため、第4のモードと第5のモードとのいずれか一方を省略することも考えられるが、最終出力電圧の正・負のバランスを考慮すれば、電力変換装置1は、第4のモードと第5のモードとを分けた方が、スイッチングロスを小さくできて効率がよくなる。
本実施形態の電力変換装置1によれば、半導体素子(スイッチング素子、ダイオード)のうち電流が流れる素子の数(以下、「通過素子数」という)は、上述したように第1〜8のいずれのモードにおいても「4」以下である。
とくに、第2の双方向スイッチ14が全オン状態となる第3,4のモードにおいては、第11のスイッチング素子Q11と第12のスイッチング素子Q12とを別素子として数えても通過素子数は「4」である。同様に、第1の双方向スイッチ13が全オン状態となる第5,6のモードにおいては、第9のスイッチング素子Q9と第10のスイッチング素子Q10とを別素子として数えても通過素子数は「4」である。したがって、第1,2の双方向スイッチ13,14がそれぞれ1素子で構成されている場合には、第3〜6のモードにおける通過素子数は「3」になる。
ところで、制御部6は、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2を充電するか放電するかを、第1検出部21および第2検出部22の検出結果に応じて決定することが好ましい。本実施形態では、第1検出部21の検出結果(第1キャパシタC1の電圧V1)および第2検出部22の検出結果(第2キャパシタC2の電圧V2)はマイコン62に出力されている。マイコン62は、このようにして個別に取得した第1キャパシタC1の電圧V1と第2キャパシタC2の電圧V2との平均値Vcを求める。マイコン62は、キャパシタを充電するか放電するかを、平均値Vcに応じて選択するように構成されている。なお、平均値Vcは、Vc=(V1+V2)/2で表される。
さらに詳しく説明すると、たとえば最終出力電圧が0〔V〕〜E〔V〕の範囲で変動する期間T1〜T3には、制御部6は、表1に示すように第1〜4のモードを切り替える動作を繰り返している。これらの場合(期間T1〜T3)において、マイコン62は、第2のモード(充電モード)と第3のモード(放電モード)とのいずれを選択するかを、第1検出部21および第2検出部22の検出結果に応じて決定する。つまり、マイコン62は、第1検出部21および第2検出部22の検出結果から求めた平均値Vcと目標電圧とを比較し、比較結果によって第2のモード(充電モード)と第3のモード(放電モード)とのいずれかを選択する。マイコン62は、平均値Vcが目標電圧よりも大きければ、放電モードである第3のモードを選択し、平均値Vcが目標電圧よりも小さければ、充電モードである第2のモードを選択する。ここで、目標電圧は基準電圧(E/4〔V〕)である。
同様に、最終出力電圧が0〔V〕〜−E〔V〕の範囲で変動する期間T4〜T6には、制御部6は、表1に示すように第5〜8のモードを切り替える動作を繰り返す。これらの場合(期間T4〜T6)において、マイコン62は、第6のモード(放電モード)と第7のモード(充電モード)とのいずれを選択するかを、第1検出部21および第2検出部22の検出結果に応じて決定する。つまり、マイコン62は、第1検出部21および第2検出部22の検出結果から求めた平均値Vcと目標電圧(E/4〔V〕)とを比較し、比較結果によって第7のモード(充電モード)と第6のモード(放電モード)とのいずれかを選択する。マイコン62は、平均値Vcが目標電圧よりも大きければ、放電モードである第6のモードを選択し、平均値Vcが目標電圧よりも小さければ、充電モードである第7のモードを選択する。
これにより、基本動作時における第1キャパシタC1の両端電圧および第2キャパシタC2の両端電圧は、それぞれ目標電圧である基準電圧(E/4〔V〕)に維持される。ただし、上述した制御部6の動作は、第1キャパシタC1の電圧V1と第2キャパシタC2の電圧V2とが均衡している場合の動作であって、両電圧V1,V2のアンバランス(不均衡)が生じている場合の動作については、「片側放電モード」の欄で説明する。
また、制御部6は、所定のスイッチング周期でキャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)の充電と放電とを切り替えることが好ましい。ここでいうスイッチング周期は、たとえばPWM信号の周期に合わせて設定される。
ところで、本実施形態の電力変換装置1は、上述のように第3,4のモードにおいて第2の双方向スイッチ14が全オン状態であり、第5,6のモードにおいて第1の双方向スイッチ13が全オン状態である。つまり、第1〜8のいずれのモードにおいても、半導体素子(スイッチング素子、ダイオード)のうち電流が流れる素子は第1〜12のスイッチング素子Q1〜Q12のいずれかであって、ダイオード(第1〜12のダイオードD1〜D12)に電流は流れない。そのため、電力変換装置1は、第1〜8のいずれのモードにおいても、第1出力点103と第2出力点104との間に双方向の電流を流すことができる。
以下では、図2A,2B,3A,3B,4A,4B,5A,5Bに太線矢印で示す向きに変換回路10を流れる電流を「順方向電流」と呼び、順方向電流とは逆向きに変換回路10を流れる電流を「逆方向電流」と呼ぶ。すなわち、最終出力電圧が0〔V〕〜E〔V〕の範囲で変動する第1〜4のモードにおいては、第1出力点103から第3出力点105へ向かう電流が順方向電流となる。最終出力電圧が0〔V〕〜−E〔V〕の範囲で変動する第5〜8のモードにおいては、第2出力点104から第4出力点106へ向かう電流が順方向電流となる。
電力変換装置1は、このように変換回路10が双方向の電流に対応していることにより、第1出力点103および第2出力点104間に流す出力電流と、第1出力点103および第2出力点104間に生じる出力電圧との間に位相差を設定できる。要するに、出力電流と出力電圧との間に位相差があると、出力電流が出力電圧と異符号(たとえば出力電圧が正で出力電流が負など)になる期間が生じる。
ここで、出力電流と出力電圧とが同符号の期間には、変換回路10を流れる電流は順方向電流であるが、出力電流と出力電圧とが異符号の期間には、変換回路10を流れる電流は逆方向電流となる。そのため、電力変換装置1は、出力電流と出力電圧との間に位相差を設定する場合、変換回路10が双方向の電流に対応している必要がある。本実施形態の電力変換装置1は、変換回路10が双方向の電流に対応しているため、出力電流と出力電圧との間に位相差を設定することが可能である。
とくに、太陽光発電装置用のパワーコンディショナ20(図7参照)に電力変換装置1が用いられる場合には、単独運転の検出や、系統電源7の電圧上昇を抑制する目的で、電力変換装置1は、出力電流と出力電圧との間に位相差を設定する場合がある。また、蓄電装置用のパワーコンディショナに電力変換装置1が用いられる場合には、出力電流と出力電圧との間に位相差を設定することで、電力変換装置1は、電力が供給される向きを制御し、蓄電装置の充電と放電とを切り替える。本実施形態の電力変換装置1は、変換回路10を双方向の電流が通過可能な状態を作り出すことで、このような用途に対応できる。
<パワーコンディショナの構成>
本実施形態に係るパワーコンディショナ20は、図7に示すように、上記の電力変換装置1と、解列器9とを備えている。解列器9は、第1出力点103(図1参照)および第2出力点104(図1参照)と、系統電源7との間に電気的に接続されている。図7の例では、解列器9は、第3出力点105および第4出力点106と、系統電源7との間に電気的に接続されている。言い換えれば、解列器9は、フィルタ回路5(図1参照)を介して第1出力点103および第2出力点104に接続されている。つまり、解列器9は、第1出力点103および第2出力点104と、系統電源7との間にあればよく、第1出力点103および第2出力点104に直接接続されていることは必須でなく、本実施形態のようにフィルタ回路5の後段に接続されていてもよい。
ここで、解列器9は、第3出力点105と系統電源7との間に電気的に接続された第1接点部91と、第4出力点106と系統電源7との間に電気的に接続された第2接点部92とを有している。ただし、解列器9は、第3出力点105および第4出力点106の少なくとも一方と系統電源7との間に電気的に接続されていればよく、第1接点部91および第2接点部92のいずれかは省略されていてもよい。
このパワーコンディショナ20は、定常時、系統連系運転を行い、直流電源100から入力される直流電力を電力変換装置1で交流電力に変換し、系統電源7および負荷8へ出力する。詳しい説明は省略するが、パワーコンディショナ20は、系統電源7の停電等の異常時には、解列器9を開放し、系統電源7から解列された状態で交流電力を出力する自立運転を行うように構成されている。
このパワーコンディショナ20によれば、解列器9を開放(解列)することにより、第1変換回路11および第2変換回路12と系統電源7との間を電気的に切り離すことができる。そのため、パワーコンディショナ20は、電源投入後、電力変換装置1が上述した基本動作を開始する前の始動期間に、解列器9を開放することで、第1出力点103と第2出力点104との間に、フィルタ回路5を含む電流経路を構成することができる。
ここでいう電流経路は、フィルタ回路5を構成するインダクタL1、第3キャパシタC3、およびインダクタL2を含む電流経路である。電力変換装置1は、この電流経路を充電用の経路として用いることにより、第3出力点105と第4出力点106との間が電気的に絶縁されていても第1キャパシタC1および第2キャパシタC2を充電できる。
したがって、電力変換装置1は、第3出力点105および第4出力点106が系統電源7に接続されていなくても、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2を充電することが可能である。言い換えれば、電力変換装置1は、一対の出力端子(第3出力点105、第4出力点106)間に何の負荷も接続されていない状態(無負荷状態)であっても、定常動作に必要なキャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)を充電できる。なお、ここでいう定常動作とは、始動期間の経過後、つまり第1キャパシタC1および第2キャパシタC2が基準電圧(E/4〔V〕)に充電された後の電力変換装置1の動作であって、上述した基本動作と同義である。
<片側放電モード>
以下に、第1キャパシタC1の電圧V1と第2キャパシタC2の電圧V2との間にアンバランス(不均衡)が生じている場合の電力変換装置1の動作について、図8A,8B,9A,9Bを参照して詳しく説明する。なお、図中、太線矢印は電流経路を表し、点線の丸印が付されたスイッチング素子はオン状態の素子を表している。
本実施形態では、制御部6は、第1キャパシタC1の電圧V1と第2キャパシタC2の電圧V2との差が所定の閾値を超えたときに、片側放電モードとなるように、第1〜8のスイッチング素子Q1〜Q8および第1,2の双方向スイッチ13,14を制御する。ここで、第1キャパシタC1の電圧V1は第1検出部21で検出され、第2キャパシタC2の電圧V2は第2検出部22で検出される。
具体的には、たとえば最終出力電圧が0〔V〕〜E〔V〕の範囲で変動する期間T1〜T3においては、通常、マイコン62は、第2のモード(充電モード)と第3のモード(放電モード)とを切り替えて、電圧V1,V2を規定電圧に維持している。この状態で、第1キャパシタC1の電圧V1と第2キャパシタC2の電圧V2との差が閾値V0を超えると、マイコン62は、通常の放電モードである第3のモードに代えて、片側放電モードを選択する。
たとえば第1キャパシタC1の電圧V1が第2キャパシタC2の電圧V2よりも高く、且つ両電圧V1,V2の差(V1−V2)が閾値V0よりも大きい場合には、マイコン62は、第1キャパシタC1のみが放電されるように図8Aの片側放電モードを選択する。この片側放電モードでは、図8Aに示すように第1変換回路11の第2のスイッチング素子Q2と、第2変換回路12の第6のスイッチング素子Q6と、第2の双方向スイッチ14の第11,12のスイッチング素子Q11,Q12とがそれぞれオンの状態にある。
この状態では、第2出力点104は、第6のスイッチング素子Q6、第11のスイッチング素子Q11、第12のスイッチング素子Q12、第1キャパシタC1、第2のスイッチング素子Q2を介して第1出力点103に電気的に接続される。したがって、図8Aの状態では、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち電圧が高い第1キャパシタC1のみが放電されることになり、第1キャパシタC1の電圧V1が低下する。なお、この状態において、第1出力点103の電位は第2出力点104の電位より、第1キャパシタC1の両端電圧(E/4〔V〕)の分だけ高くなるため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、E/4〔V〕になる。
また、第2キャパシタC2の電圧V2が第1キャパシタC1の電圧V1よりも高く、且つ両電圧V1,V2の差(V2−V1)が閾値V0よりも大きい場合には、マイコン62は、第2キャパシタC2のみが放電されるように図8Bの片側放電モードを選択する。この片側放電モードでは、図8Bに示すように第1変換回路11の第3のスイッチング素子Q3と、第2変換回路12の第7のスイッチング素子Q7と、第2の双方向スイッチ14の第11,12のスイッチング素子Q11,Q12とがそれぞれオンの状態にある。
この状態では、第2出力点104は、第7のスイッチング素子Q7、第2キャパシタC2、第11のスイッチング素子Q11、第12のスイッチング素子Q12、第3のスイッチング素子Q3を介して第1出力点103に電気的に接続される。したがって、図8Bの状態では、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち電圧が高い第2キャパシタC2のみが放電されることになり、第2キャパシタC2の電圧V2が低下する。なお、この状態において、第1出力点103の電位は第2出力点104の電位より、第2キャパシタC2の両端電圧(E/4〔V〕)の分だけ高くなるため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、E/4〔V〕になる。
一方、最終出力電圧が0〔V〕〜−E〔V〕の範囲で変動する期間T4〜T6においては、通常、マイコン62は、第7のモード(充電モード)と第6のモード(放電モード)とを切り替えて、電圧V1,V2を規定電圧に維持している。この状態で、第1キャパシタC1の電圧V1と第2キャパシタC2の電圧V2との差が閾値V0を超えると、マイコン62は、通常の放電モードである第6のモードに代えて、片側放電モードを選択する。
たとえば第1キャパシタC1の電圧V1が第2キャパシタC2の電圧V2よりも高く、且つ両電圧V1,V2の差(V1−V2)が閾値V0よりも大きい場合には、マイコン62は、第1キャパシタC1のみが放電されるように図9Aの片側放電モードを選択する。この片側放電モードでは、図9Aに示すように第1変換回路11の第3のスイッチング素子Q3と、第2変換回路12の第7のスイッチング素子Q7と、第1の双方向スイッチ13の第9,10のスイッチング素子Q9,Q10とがそれぞれオンの状態にある。
この状態では、第1出力点103は、第3のスイッチング素子Q3、第1キャパシタC1、第9のスイッチング素子Q9、第10のスイッチング素子Q10、第7のスイッチング素子Q7を介して第2出力点104に電気的に接続される。したがって、図9Aの状態では、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち電圧が高い第1キャパシタC1のみが放電されることになり、第1キャパシタC1の電圧V1が低下する。なお、この状態において、第1出力点103の電位は第2出力点104の電位より、第1キャパシタC1の両端電圧(E/4〔V〕)の分だけ低くなるため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、−E/4〔V〕になる。
また、第2キャパシタC2の電圧V2が第1キャパシタC1の電圧V1よりも高く、且つ両電圧V1,V2の差(V2−V1)が閾値V0よりも大きい場合には、マイコン62は、第2キャパシタC2のみが放電されるように図9Bの片側放電モードを選択する。この片側放電モードでは、図9Bに示すように第1変換回路11の第2のスイッチング素子Q2と、第2変換回路12の第6のスイッチング素子Q6と、第1の双方向スイッチ13の第9,10のスイッチング素子Q9,Q10とがそれぞれオンの状態にある。
この状態では、第1出力点103は、第2のスイッチング素子Q2、第9のスイッチング素子Q9、第10のスイッチング素子Q10、第2キャパシタC2、第6のスイッチング素子Q6を介して第2出力点104に電気的に接続される。したがって、図9Bの状態では、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち電圧が高い第2キャパシタC2のみが放電されることになり、第2キャパシタC2の電圧V2が低下する。なお、この状態において、第1出力点103の電位は第2出力点104の電位より、第2キャパシタC2の両端電圧(E/4〔V〕)の分だけ低くなるため、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる電力変換装置1の出力電圧は、−E/4〔V〕になる。
変換回路10は、上述したような片側放電モードで動作することにより、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち電圧が高い方のキャパシタのみが放電されることになる。そのため、変換回路10は、上述した片側放電モードを1ないし複数回繰り返すことによって、第2キャパシタC2の電圧V2と第1キャパシタC1の電圧V1との差(V2−V1)が小さくなり、閾値V0以下に収まることになる。その結果、電力変換装置1は、一対のキャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)の電圧のアンバランス(不均衡)が生じても、一対のキャパシタの電圧のバランスをとることが可能である。
以上説明した本実施形態の制御部6は、たとえば図10に示すフローチャートに従って動作する。
制御部6はまず、第1キャパシタC1の電圧V1と第2キャパシタC2の電圧V2との平均値Vcと基準電圧(E/4〔V〕)とを比較する(S1)。このとき、平均値Vcが基準電圧以上であれば(S1:Yes)、制御部6は、第2キャパシタC2の電圧V2から第1キャパシタC1の電圧V1を減算した差分値(V2−V1)と、閾値V0とを比較する(S2)。差分値(V2−V1)が閾値V0以下であれば(S2:Yes)、制御部6は、第1キャパシタC1の電圧V1から第2キャパシタC2の電圧V2を減算した差分値(V1−V2)と、閾値V0とを比較する(S3)。差分値(V1−V2)が閾値V0以下であれば(S3:Yes)、制御部6は、放電指令を出力して、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2との両方を放電する通常の放電モード(第3のモードあるいは第6のモード)を選択する(S4)。つまり、電圧V1,V2の均衡がとれている状態にあれば、制御部6は、通常の放電モードを選択する。
一方、処理S3において、差分値(V1−V2)が閾値V0を超えていれば(S3:No)、制御部6は、電圧が高い第1キャパシタC1のみを放電する片側放電モードを選択する(S5)。また、処理S2において、差分値(V2−V1)が閾値V0を超えていれば(S2:No)、制御部6は、電圧が高い第2キャパシタC2のみを放電する片側放電モードを選択する(S6)。
一方、平均値Vcが基準電圧未満であれば(S1:No)、制御部6は、充電指令を出力して、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2との両方を充電する通常の充電モード(第2のモードあるいは第7のモード)を選択する(S7)。
制御部6は、これらS1〜S7の処理を繰り返し行うことにより、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2の電圧を基準電圧に維持しつつ、両電圧V1,V2のバランスをとる。
<効果>
以上説明した本実施形態の電力変換装置1は、第1キャパシタC1の電圧V1と第2キャパシタC2の電圧V2との差が所定の閾値を超えたときに、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち電圧が高い方のキャパシタのみが放電されるモードで動作する。すなわち、電力変換装置1は、一対のキャパシタ(第1キャパシタC1および第2キャパシタC2)の電圧のアンバランス(不均衡)が生じても、電圧が高い方のキャパシタのみ放電を行うことで、一対のキャパシタの電圧のバランスをとることが可能である。したがって、本実施形態の電力変換装置1は、一対のキャパシタの電圧のバランスをとることで、キャパシタに要求される耐圧を下げることができる、という利点がある。
要するに、従来の電力変換装置では、一対のキャパシタの電圧のアンバランスが生じると、一方のキャパシタの電圧が規定電圧を大幅に超過する可能性があるので、一対のキャパシタには規定電圧に比較して高耐圧のキャパシタを用いる必要がある。これに対して、本実施形態の電力変換装置1は、一対のキャパシタの電圧のバランスをとることで、一方のキャパシタの電圧が規定電圧を大幅に超過することを抑制でき、結果的に、一対のキャパシタには比較的低耐圧のキャパシタを用いることができる。したがって、本実施形態の電力変換装置1は、一対のキャパシタの小型化を図ることができる。
しかも、この電力変換装置1は、一対のキャパシタの電圧のアンバランスが生じた際に、片方のキャパシタを放電することにより、一対のキャパシタの電圧のバランスをとる。つまり、電力変換装置1は、片方のキャパシタのみを充電するのではなく放電するように構成されているので、電圧のアンバランスが生じた際、直流電源100から第1キャパシタC1および第2キャパシタC2が電気的に切り離された状態で動作する。したがって、電力変換装置1は、一対のキャパシタの電圧のアンバランスに起因した漏洩電流の発生を防止することができる。
また、電力変換装置1は、本実施形態のように、変換回路10が、第1変換回路11および第2変換回路12と、第1の双方向スイッチ13および第2の双方向スイッチ14とを備えていることが好ましい。この電力変換装置1は、直流電源100の両端間に並列接続された第1変換回路11および第2変換回路12を有し、第1変換回路11と第2変換回路12との間を第1の双方向スイッチ13および第2の双方向スイッチ14で接続している。ここで、第1変換回路11は、4つのスイッチング素子(第1〜4のスイッチング素子Q1〜Q4)および1つのキャパシタ(第1キャパシタC1)を有している。同様に、第2変換回路12は、4つのスイッチング素子(第5〜8のスイッチング素子Q5〜Q8)および1つのキャパシタ(第2キャパシタC2)を有している。
この構成において、直流電源100から電力変換装置1に入力される電流は、10個のスイッチング素子(第1〜8のスイッチング素子Q1〜Q8および第1,2の双方向スイッチ13,14)のうち多くても4個の素子を通過するだけである。したがって、この電力変換装置1では、スイッチング素子の導通損失(ロス)の和が比較的小さく、電力変換効率のさらなる向上を図ることができる、という利点がある。
さらに、電力変換装置1は、一般的に、導通損失が大きくなるほど発熱量が増えるため大型の放熱装置(ヒートシンクやファン等の空冷装置)が必要になる。本実施形態の電力変換装置1は、導通損失を小さく抑えることで放熱装置の小型化も期待できる。
また、特許文献1に記載の構成と比較すると、本実施形態の電力変換装置1は、分圧用のキャパシタが必要ない分だけ、装置全体の小型化を図ることができるという利点もある。すなわち、特許文献1に記載の電力変換装置は、2個の直流キャパシタの直列回路に直流電圧Eを印加することで、直流電圧EをE/2ずつに分圧しているので、2個の直流キャパシタは必須の構成である。これに対して、本実施形態の電力変換装置1は、分圧用のキャパシタが必要ないので、その分、装置全体の小型化を図ることが可能である。
また、この場合、本実施形態のように、直流電源100から第1入力点101と第2入力点102との間に印加される電圧の1/4の大きさの電圧を基準電圧とすることが好ましい。この場合、制御部6は、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2がそれぞれ上記基準電圧を中心に充電と放電とを繰り返すように、第1〜8のスイッチング素子Q1〜Q8および第1,2の双方向スイッチ13,14を制御することが好ましい。
この構成によれば、電力変換装置1は、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる出力電圧を、上述したように第1〜4のモードにおいてE〔V〕、E/2〔V〕、0〔V〕の3段階で切り替えることができる。第5〜8のモードにおいては、電力変換装置1は、第1出力点103と第2出力点104との間に生じる出力電圧を、0〔V〕、−E/2〔V〕、−E〔V〕の3段階で切り替えることになる。その結果、電力変換装置1は、上記第1〜8のモードを切り替えることにより、出力電圧をE〔V〕、E/2〔V〕、0〔V〕、−E/2〔V〕、−E〔V〕の5段階で切り替えることができる。
要するに、本実施形態に係る電力変換装置1は、出力電圧を5段階で切り替える5レベルインバータでありながらも、動作としては3レベルインバータと同様であるから、通過素子数を3レベルインバータと同等の「4」以下とすることができる。したがって、この電力変換装置1は、一般的な5レベルインバータの通過素子数「6」に比べて、通過素子数を少なく抑えることができ、その結果、電力変換効率のさらなる向上を図ることができる。
また、電力変換装置1は、本実施形態のように、第1キャパシタC1の電圧V1を検出する第1検出部21と、第2キャパシタC2の電圧V2を検出する第2検出部22とをさらに備えることが好ましい。この場合、制御部6は、第1検出部21の検出結果と第2検出部22の検出結果との平均値Vcが基準電圧となるように、第1キャパシタC1および第2キャパシタC2の充電と放電とを切り替えることが好ましい。さらに、この場合、制御部6は、第1検出部21の検出結果と第2検出部22の検出結果との差が閾値V0を超えると、片側放電モードとなるように、第1〜8のスイッチング素子Q1〜Q8および第1,2の双方向スイッチ13,14を制御することが好ましい。ここでいう片側放電モードは、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち電圧が高い方のキャパシタのみが放電されるモードである。
この構成によれば、制御部6は、第1検出部21の検出結果(電圧V1)と第2検出部22の検出結果(電圧V2)とに基づいて、両電圧V1,V2を基準電圧に維持しつつ、両電圧V1,V2の差を閾値V0以下に抑えることが可能である。したがって、電力変換装置1は、両電圧V1,V2を基準電圧に維持する制御と、両電圧V1,V2の差を閾値V0以下に抑える制御とのそれぞれについて、個別の検出部を用いる場合に比べて、検出部の必要数を抑えることができる。
また、制御部6は、本実施形態のように、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち第1キャパシタC1のみを放電する際には、第2,6のスイッチング素子Q2,Q6および第2の双方向スイッチ14の組み合わせをオンにすることが好ましい。あるいは、制御部6は、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち第1キャパシタC1のみを放電する際、第3,7のスイッチング素子Q3,Q7および第1の双方向スイッチ13の組み合わせをオンにしてもよい。また、制御部6は、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち第2キャパシタC2のみを放電する際には、第3,7のスイッチング素子Q3,Q7および第2の双方向スイッチ14の組み合わせをオンにすることが好ましい。あるいは、制御部6は、第1キャパシタC1と第2キャパシタC2とのうち第2キャパシタC2のみを放電する際、第2,6のスイッチング素子Q2,Q6および第1の双方向スイッチ13の組み合わせをオンにしてもよい。
この構成によれば、片方のキャパシタのみ放電する片側放電モードにおいても、直流電源100から電力変換装置1に入力される電流は、第1〜12のスイッチング素子Q1〜Q12のうち多くても4個の素子を通過するだけである。したがって、この電力変換装置1では、スイッチング素子の導通損失(ロス)の和が比較的小さく、電力変換効率のさらなる向上を図ることができる、という利点がある。
また、本実施形態に係るパワーコンディショナ20によれば、解列器9を開放(解列)することにより、第1変換回路11および第2変換回路12と系統電源7との間を電気的に切り離すことができる。したがって、パワーコンディショナ20は、定常時、系統連系運転を行い、系統電源7の停電等の異常時には、解列器9を開放し、系統電源7から解列された状態で交流電力を出力する自立運転を行うことができる。
また、本実施形態のように、第1の双方向スイッチ13の動作状態は、第2接続点202から第1接続点201へ流れる電流を遮断し、且つ第1接続点201から第2接続点202へ流れる電流を通過させる半オン状態をさらに含んでいることが好ましい。この場合、第2の双方向スイッチ14の動作状態は、第3接続点203から第4接続点204へ流れる電流を遮断し、且つ第4接続点204から第3接続点203へ流れる電流を通過させる半オン状態をさらに含んでいることが好ましい。
この構成によれば、第7,8のモードのように、第1接続点201から第2接続点202へ流れる電流を遮断する必要がないモードにおいては、第1の双方向スイッチ13は半オン状態でよい。したがって、制御部6は、第5〜7のモード、あるいは第6〜8のモードを切り替える動作を繰り返す期間(期間T4〜T6)においては、第10のスイッチング素子Q10をオンし続けることができる。つまり、第5,6のモードでは第1の双方向スイッチ13は全オン状態であるので、第7,8のモードに切り替わる度に第10のスイッチング素子Q10がオフすると、第10のスイッチング素子Q10でスイッチングロスが生じる可能性がある。本実施形態の電力変換装置1は、第5〜7のモード、あるいは第6〜8のモードが切り替わる際に、第10のスイッチング素子Q10がオンし続けることで、第1の双方向スイッチ13で生じるスイッチングロスを低減できる。
同様に、第1,2のモードのように、第4接続点204から第3接続点203へ流れる電流を遮断する必要がないモードにおいては、第2の双方向スイッチ14は半オン状態でよい。したがって、本実施形態の電力変換装置1は、第1〜3のモード、あるいは第2〜4のモードが切り替わる際に、第12のスイッチング素子Q12がオンし続けることで、第2の双方向スイッチ14で生じるスイッチングロスを低減できる。
さらに、制御部6は、第1の双方向スイッチ13に電流が流れている状態で第1の双方向スイッチ13を半オン状態から全オン状態に移行するようにすれば、第1の双方向スイッチ13で生じるスイッチングロスを一層低減できる。すなわち、たとえば第7のモードから第6のモードへの切り替え時、制御部6は、第9のダイオードD9がオンしている状態で第9のスイッチング素子Q9をオンすることで、第9のスイッチング素子Q9のゼロボルトスイッチングを実現できる。同様に、制御部6は、第2の双方向スイッチ14に電流が流れている状態で第2の双方向スイッチ14を半オン状態から全オン状態に移行するようにすれば、第2の双方向スイッチ14で生じるスイッチングロスを一層低減できる。
なお、電力変換装置1は、上述したように変換回路10が第1変換回路11および第2変換回路12と、第1の双方向スイッチ13および第2の双方向スイッチ14とを備えた構成に限らず、適宜変更可能である。スイッチング素子の数についても、第1〜12のスイッチング素子Q1〜Q12の12個に限らず、適宜変更可能である。
また、第1〜8のスイッチング素子Q1〜Q8、および第9〜12のスイッチング素子Q9〜Q12としては、デプレッション型のnチャネルMOSFETに限らず、その他の半導体スイッチが用いられていてもよい。たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)や、GaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップの半導体材料を用いたパワー半導体デバイスが用いられる。
また、双方向スイッチ(第1の双方向スイッチ13および第2の双方向スイッチ14のそれぞれ)の具体的な構成についても、上述した構成に限らない。双方向スイッチは、たとえばGaN(窒化ガリウム)などのワイドバンドギャップの半導体材料を用いたダブルゲート(デュアルゲート)構造の双方向スイッチであってもよい。