<全体構成>
図1は、アンテナ駆動装置を搭載した車両の全体構成を示すブロック図である。本構成例の車両1は、アンテナ駆動装置10と、送信アンテナ部20と、マイコン30と、バッテリ40と、を有する。
アンテナ駆動装置10は、バッテリ40から入力電圧VB(例えば12V)の供給を受けて動作し、マイコン30からの指示に応じて送信アンテナ部20を駆動する半導体集積回路装置(いわゆるアンテナドライバIC)である。なお、アンテナ駆動装置10には、その主要回路として、アンテナ駆動回路100と、スイッチング電源回路200と、ロジック回路300が集積化されている。
アンテナ駆動回路100は、スイッチング電源回路200から出力電圧VS(例えば20〜30V)の供給を受けて動作し、ロジック回路300からの指示に応じて送信アンテナ部20の駆動電流I1〜I6を生成する。アンテナ駆動回路100の構成及び動作については、後ほど詳細に説明する。
スイッチング電源回路200は、入力電圧VBから出力電圧VSを生成してアンテナ駆動回路100に供給する。スイッチング電源回路200の構成及び動作については、後ほど詳細に説明する。
ロジック回路300は、マイコン30からの指示に応じてアンテナ駆動回路100とスイッチング電源回路200の各々を制御する。なお、ロジック回路300は、シリアル通信バス(本構成例では、チップセレクト信号SCSB、クロック信号SCK、入力データ信号SDI、及び、出力データ信号SDOを用いる4線式のSPI[serial peripheral interface]バス)を介してマイコン30からの指示(各種コマンドを含む)を受け付ける。また、アンテナ駆動装置10は、シリアル通信用のインタフェイス端子以外にも種々のデータ入力端子を備えており、ロジック回路300は、上記のシリアル通信バスを介さずにマイコン30からの送信データ信号DIN1及びDIN2を受け付ける。
送信アンテナ部20は、アンテナ駆動装置10によって駆動される負荷であり、6チャンネルの送信アンテナ21〜26(LF[Low Frequency]帯域(例えば125kHz)の共振周波数fを持つLCアンテナやRLCアンテナなど)を含む。ただし、送信アンテナ部20のチャンネル数については、何ら上記に限定されるものではなく、チャンネル数の増減は任意である。
マイコン30は、アンテナ駆動装置10の制御主体であり、例えばECU[electronic control unit]がこれに相当する。
バッテリ40は、車両1の各部(アンテナ駆動装置10やマイコン30を含む)に電力を供給する。なお、バッテリ40としては、鉛蓄電池などを好適に用いることができる。
図2は、アンテナ設置ポイントと電波到達範囲の一例を示す模式平面図である。本構成例の車両1は、運転者(または同乗者、以下同様)の携帯するリモコンキー(不図示)との間で交わされる双方向通信の成否に応じてドアロック機構(不図示)の施錠/解錠などを行うスマートエントリーシステムを搭載しており、送信アンテナ21〜26は、スマートエントリーシステムの一構成要素(リモコンキーにリクエスト信号を送信するための手段)として、車両1のドア(運転席ドアノブ、助手席ドアノブ、トランクドアノブ)及びキャビン(前方、後方、トランク内)に設けられている。
また、車両1には、スマートエントリーシステムに含まれるその他の構成要素として、リモコンキーからのレスポンス信号を受信してマイコン30に伝達する受信アンテナ、ドアノブの把持を検知してマイコン30に通知する接触センサ、ドアロック機構を施錠する際に押下される施錠ボタン、及び、エンジンやモータを始動する際に押下される始動ボタンなど(いずれも不図示)が設けられている。
例えば、ドアロック機構が施錠された車両1において、ドアノブの把持が接触センサで検知されると、マイコン30は、送信アンテナ部20からリモコンキーへのリクエスト信号を送信するようにアンテナ駆動装置10を制御する。その際、把持が検出されたドアの送信アンテナのみを駆動してもよいし、或いは、全ての送信アンテナ21〜26を駆動してもよい。
このとき、リモコンキーを携帯した運転者が車両1の近傍(送信アンテナ部20の電波到達範囲内)に存在すれば、リクエスト信号を受信したリモコンキーからレスポンス信号が返信される。一方、リモコンキーを携帯した運転者が車両1の近傍に存在しなければ、レスポンス信号が返信されることはない。そこで、マイコン30は、リクエスト信号を送信してから所定時間内にレスポンス信号が返信されたときにドアロック機構を解錠し、レスポンス信号が返信されなかったときにはドアロック機構の施錠状態を維持する。
リモコンキーとの双方向通信(リモコンキーの有無確認)は、ドアロック機構を解錠するときだけでなく、ドアロック機構が解錠された後も定期的に行われるほか、車両1を始動するときやドアロック機構を施錠するときにも適宜行われる。このようなスマートエントリーシステムの諸動作については、周知の技術を適用すれば足りるので、これ以上の詳細な説明は割愛する。
なお、車両1のドアに設けられた送信アンテナ21〜23については、車外に存在するリモコンキーとの通信を確実に行うべく、各々の電波到達範囲a1〜a3をある程度広げておくことが望ましい。一方、車両1のキャビンに設けられた送信アンテナ24〜26については、車外への電波漏れ等を防止すべく、その電波到達範囲a4〜a6をキャビン内に限定しておくことが望ましい。電波到達範囲a1〜a6は、例えば、送信アンテナ21〜26に直列接続される抵抗Ra1〜Ra6(後出の図3を参照)の抵抗値を適宜選択して駆動電流I1〜I6を調整することにより、任意に設定することが可能である。
<アンテナ駆動回路>
図3は、アンテナ駆動回路100の一構成例を示す回路ブロック図である。本構成例のアンテナ駆動回路100は、デジタル/アナログ変換部110と、アンテナ駆動部120−1〜120−6と、ジャミング駆動部130と、を含む。
デジタル/アナログ変換部110は、ロジック回路300から入力されるデジタルの正弦波データSDをアナログの正弦波信号SAに変換してアンテナ駆動部120−1〜120−6に各々出力する。このように、デジタル/アナログ変換部110は、6チャンネルのアンテナ駆動部120−1〜120−6(延いては、6チャンネルの送信アンテナ21〜26)に対して共通に設けられている。
アンテナ駆動部120−1〜120−6は、アンテナ駆動装置10に接続される送信アンテナ21〜26に対して個別に設けられており、それぞれ、リニアアンプ121と、ゲートドライバ122及び123と、Pチャネル型MOS[metal oxide semiconductor]電界効果トランジスタ124と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ125と、を含む。なお、図3では、アンテナ駆動部120−1の内部構成のみを描写したが、他のアンテナ駆動部120−2〜120−6についても、各々の内部構成は同一である。以下では、説明の便宜上、アンテナ駆動部120−1に着目して詳細な説明を行う。
リニアアンプ121は、送信アンテナ21を正弦波駆動するための手段であり、非反転入力端(+)に印加される正弦波信号SAと、反転入力端(−)に印加される出力信号OUT1とが一致するように、トランジスタ124及び125の各ゲート電圧をリニアに変化させる。より具体的に述べると、リニアアンプ121は、出力信号OUT1が正弦波信号SAよりも低いほど、トランジスタ124の導通度を上げてトランジスタ125の導通度を下げるように、トランジスタ124及び125の各ゲート電圧を変化させる。逆に、リニアアンプ121は、出力信号OUT1が正弦波信号SAよりも高いほど、トランジスタ124の導通度を下げてトランジスタ125の導通度を上げるように、トランジスタ124及び125の各ゲート電圧を変化させる。
ゲートドライバ122及び123は、いずれも送信アンテナ21を矩形波駆動するための手段であり、それぞれ、ロジック回路300から入力される矩形波信号S1H及びS1Lに応じてトランジスタ124及び125の各ゲート電圧をパルス的に変化させる。より具体的に述べると、ゲートドライバ122及び123は、出力信号OUT1をハイレベルとする際、トランジスタ124をオンさせてトランジスタ125をオフさせるように、トランジスタ124及び125の各ゲート電圧をいずれもローレベルとする。逆に、ゲートドライバ122及び123は、出力信号OUT1をローレベルとする際、トランジスタ124をオフさせてトランジスタ125をオンさせるように、トランジスタ124及び125の各ゲート電圧をいずれもハイレベルとする。
トランジスタ124は、出力信号OUT1の印加端と出力電圧VSの印加端(第1電圧端)との間を導通/遮断する上側スイッチである。トランジスタ124のソースは、出力電圧VSの印加端に接続されている。トランジスタ124のドレインは、出力信号OUT1の印加端に接続されている。トランジスタ124のゲートは、リニアアンプ121の第1出力端とゲートドライバ122の出力端に接続されている。
トランジスタ125は、出力信号OUT1の印加端と接地端(第2電圧端)との間を導通/遮断する下側スイッチである。トランジスタ125のソースは、接地端に接続されている。トランジスタ125のドレインは、出力信号OUT1の印加端に接続されている。トランジスタ125のゲートは、リニアアンプ121の第2出力端とゲートドライバ123の出力端に接続されている。
なお、アンテナ駆動装置10の外部において、出力信号OUT1〜OUT6の各印加端と接地端との間には、それぞれ、抵抗Ra1〜Ra6と送信アンテナ21〜26(コイルL21〜L26とコンデンサC21〜C26から成るLC共振回路)が直列に接続されている。送信アンテナ21〜26には、各々の共振周波数f(=1/(2π√LC))で正弦波駆動または矩形波駆動される駆動電流I1〜I6が流される。
ジャミング駆動部130は、ロジック回路300から入力される疑似ノイズ信号JO1〜JO6を非通信状態の送信アンテナに出力する。このようなジャミング駆動部130を設けることにより、例えば、通信状態の送信アンテナから非通信状態の送信アンテナに電波が回り込み、当該非通信状態の送信アンテナから不要な電波を出力してしまった場合でも、その出力電波に意図的なノイズ成分を重畳することができるので、誤った通信の成立を阻害することが可能となる。
なお、ジャミングの強度(重畳されるノイズ成分の大きさ)は、疑似ノイズ信号JO1〜JO6の印加端と送信アンテナ21〜26との間に接続された抵抗Rb1〜Rb6の抵抗値を適宜選択することにより、任意に設定することが可能である。
また、本構成例のアンテナ駆動装置10では、ジャミング駆動部130を用いず、アンテナ駆動部120−1〜120−6を用いて、上記と同様のジャミング動作を行うことも可能である。なお、ジャミング動作を行うに際して、ジャミング駆動部130とアンテナ駆動部120−1〜120−6のいずれを用いるかについては、ロジック回路300へのコマンド入力により、任意に設定することが可能である。
図4は、ロジック回路300によるアンテナ駆動方式の切替機能を説明するためのテーブルである。本構成例のアンテナ駆動装置10において、ロジック回路300は、マイコン30から入力されるSPIコマンドに応じて、リニアアンプ121とゲートドライバ122及び123のいずれか一方のみを動作させるようにアンテナ駆動部120−1〜120−6を制御することにより、出力信号OUT*(ただし、*=1、2、…、6のいずれか、以下も同様)を正弦波駆動するか矩形波駆動するかを切り替える機能を備えている。
より具体的に述べると、出力信号OUT*を正弦波駆動する際には、リニアアンプ121が動作状態(○)とされて、ゲートドライバ122及び123が非動作状態(×)とされる。このとき、ゲートドライバ122及び123は、いずれも出力ハイインピーダンス状態となり、トランジスタ124及び125のゲートから切り離される。
一方、出力信号OUT*を矩形波駆動する際には、ゲートドライバ122及び123が動作状態(○)とされて、リニアアンプ121が非動作状態(×)とされる。このとき、リニアアンプ121は、出力ハイインピーダンス状態となり、トランジスタ124及び125のゲートから切り離される。
このような構成とすることにより、送信アンテナ21〜26の使用状況に応じて、適切なアンテナ駆動を行うことが可能となる。例えば、車両1の解錠前(運転者の搭乗前)には、アンテナ駆動時に発生する高調波ノイズが車載機器などに与える影響を考慮する必要性が乏しい。従って、このような使用状況下では、送信アンテナ21〜26を矩形波駆動することにより、消費電力や発熱の低減を優先することが可能となる。
一方、車両1の解錠後(運転者の搭乗後)には、アンテナ駆動時に発生する高調波ノイズが車載機器などに与える影響を無視することができなくなる。従って、このような使用状況下では、送信アンテナ21〜26を正弦波駆動することにより、高調波ノイズの低減を優先することが可能となる。
また、ロジック回路300は、送信アンテナ21〜26を同時駆動または時分割駆動するようにアンテナ駆動部120−1〜120−6を制御する機能も備えている。例えば、送信アンテナ21〜26を矩形波駆動する場合には、アンテナ駆動に伴う発熱を小さく抑えることができるので、多チャンネル同時駆動を行うことも可能となる。一方、送信アンテナ21〜26を正弦波駆動する場合には、アンテナ駆動に伴う発熱が大きくなるので、一つのチャンネルのみを単独駆動するか、或いは、複数のチャンネルを時分割で順次駆動することが望ましい。
なお、ロジック回路300は、マイコン30から入力される送信データ信号DIN1がハイレベルであるときに正弦波データSDまたは矩形波信号S*H及びS*Lを出力し、送信データ信号DIN1がローレベルであるときには、正弦波データSDと矩形波信号S*H及びS*Lの出力を停止する。従って、出力信号OUT*は、送信データ信号DIN1がハイレベルであるときにのみ、送信アンテナ21〜26の共振周波数fで正弦波駆動または矩形波駆動される。
ただし、送信アンテナ21〜26の矩形波駆動時には、送信アンテナ21〜26の共振周波数fで矩形波駆動される送信データ信号DIN2をマイコン30からロジック回路300に入力し、これを矩形波信号S*H及びS*Lとしてロジック回路300から送信アンテナ21〜26にスルー出力することも可能である。なお、送信データ信号DIN1及びDIN2のいずれを用いるかについては、ロジック回路300へのコマンド入力によって、任意に設定することが可能である。
<スイッチング電源回路(第1構成例)>
図5は、スイッチング電源回路200の第1構成例を示す回路ブロック図である。本構成例のスイッチング電源回路200は、入力電圧VBを昇圧して出力電圧VSを生成する昇圧型DC/DCコンバータである。アンテナ駆動装置10には、スイッチング電源回路200と装置外部との電気的な接続を確立するために、外部端子T1〜T4、及び、外部端子T5(1)〜(6)が設けられており、スイッチング電源回路200を構成するディスクリート素子として、コイルL1と、コンデンサC1〜C3と、ダイオードD1と、抵抗R1及びRs1〜Rs6が外付けされている。
アンテナ駆動装置10の外部において、外部端子T1は、コイルL1の第1端とダイオードD1のアノードに接続されている。コイルL1の第2端は、入力電圧VBの印加端に接続されている。ダイオードD1のカソードは、コンデンサC1の第1端に接続されている。コンデンサC1の第2端は、接地端に接続されている。外部端子T2は、コンデンサC1の第1端(出力電圧VSの印加端に相当)に接続されている。外部端子T3と接地端との間には、位相補償用の抵抗R1及びコンデンサC2が直列接続されている。外部端子T4と接地端との間には、ソフトスタート用のコンデンサC3が接続されている。送信アンテナ部20と接地端との間には、駆動電流I1〜I6に応じた電流帰還信号CS1〜CS6(電圧信号)を各々生成する電流センス用の抵抗Rs1〜Rs6が接続されている。外部端子T5(1)〜T5(6)は、抵抗Rs1〜Rs6の高電位端(電流帰還信号CS1〜CS6の印加端に相当)に各々接続されている。
また、スイッチング電源回路200は、アンテナ駆動装置10に集積化された半導体素子及び半導体回路部として、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ201と、ゲートドライバ202と、PWMコンパレータ203と、スロープ信号生成部204と、エラーアンプ205と、基準電圧生成部206と、デジタル/アナログ変換部207と、セレクタ208と、マルチプレクサ209と、サンプル/ホールド部210と、コンパレータ211と、充放電制御部212と、アナログスイッチ213及び214と、バッファ215と、抵抗216及び217と、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ218を含む。なお、スイッチング電源回路200には、上記した各種回路部のほか、異常保護回路などを適宜組み込んでも構わない。
トランジスタ201は、コイルL1、ダイオードD1、及び、コンデンサC1と共に、スイッチ駆動信号Sgに応じて駆動されるスイッチング駆動段を形成する。トランジスタ201のドレインは、外部端子T1に接続されている。トランジスタ201のソースは、接地端に接続されている。トランジスタ201のゲートは、ゲートドライバ202の出力端に接続されている。
ゲートドライバ202は、PWM信号Spの電流能力を高めたスイッチ駆動信号Sgを生成し、これをトランジスタ201のゲートに出力する。
PWMコンパレータ203は、非反転入力端(+)に印加される誤差信号ERRと反転入力端(−)に印加されるスロープ信号SLPとを比較してPWM信号Spを生成する。PWM信号Spは、誤差信号ERRがスロープ信号SLPよりも高いときにハイレベルとなり、誤差信号ERRがスロープ信号SLPよりも低いときにローレベルとなる。
スロープ信号生成部204は、三角波状(ないしは鋸波状)のスロープ信号SLPを生成する。スロープ信号生成部204は、ロジック回路300からの指示に応じてスロープ信号SLPの発振周波数(スイッチング周波数)を任意に設定することが可能である。
なお、上記したトランジスタ201、ゲートドライバ202、PWMコンパレータ203、及び、スロープ信号生成部204は、いずれも、誤差信号ERRに応じて入力電圧VBから出力電圧VSを生成する出力電圧生成部の一構成要素として機能する。
エラーアンプ205は、2つの非反転入力端(+)に各々印加される基準電圧REF及びソフトスタート電圧SSのより低い方と、反転入力端(−)に印加される帰還電圧FBとの差分に応じた誤差信号ERRを生成する。なお、エラーアンプ205の出力端には、外部端子T3を介して位相補償用の抵抗R1及びコンデンサC2が接続されている。
基準電圧生成部206は、所定の基準電圧REF0(例えば1.28V)を生成する。
デジタル/アナログ変換部207は、基準電圧REF0の供給を受けて動作し、ロジック回路300から入力されるデジタルの基準電圧データSVをアナログの基準電圧REF1(例えば40mV〜1V)に変換する。
セレクタ208は、ロジック回路300からの指示に応じて、基準電圧REF0及びREF1のいずれか一方を選択し、これを基準電圧REFとして出力する。
マルチプレクサ209は、ロジック回路300からの指示に応じて、送信アンテナ21〜26毎に得られる電流帰還信号CS1〜CS6のいずれか一つを選択し、これを電流帰還信号CS0としてサンプル/ホールド部210に出力する。
サンプル/ホールド部210は、ロジック回路300からの指示に応じて、電流帰還信号CS0のピーク値(最高値)をサンプル/ホールドすることにより、ピーク信号SHOを生成する。なお、電流帰還信号CS0のホールドタイミングについては、例えば、電流帰還信号CS0のゼロクロスから所定時間(例えば2μs)の経過時点とすればよい。
コンパレータ211は、非反転入力端(+)に印加される基準電圧REF1と反転入力端(−)に印加されるピーク信号SHOとを比較して充放電制御信号Scを生成する。充放電制御信号Scは、ピーク信号SHOが基準電圧REF1よりも高いときにローレベルとなり、ピーク信号SHOが基準電圧REF1よりも低いときにハイレベルとなる。
充放電制御部212は、充放電制御信号Scに応じてコンデンサC3の充放電を行うことによりソフトスタート電圧SSを生成する。より具体的に述べると、充放電制御部212は、充放電制御信号ScがハイレベルであるときにコンデンサC3を充電してソフトスタート電圧SSを上昇させ、逆に、充放電制御信号ScがローレベルであるときにコンデンサC3を放電してソフトスタート電圧SSを低下させる。
アナログスイッチ213は、ロジック回路300からの指示に応じて、充放電制御部212とコンデンサC3との間を導通/遮断する第1スイッチとして機能する。
アナログスイッチ214は、ロジック回路300からの指示に応じて、バッファ215の出力端(帰還電圧FBの印加端に相当)とコンデンサC3との間を導通/遮断する第2スイッチとして機能する。
バッファ215は、帰還電圧FBをバッファして後段に出力する。
抵抗216及び217は、外部端子T2(出力電圧VSの印加端に相当)と接地端との間に直列接続されており、出力電圧VSを所定の分圧比α(例えばα=1/40)で分圧して帰還電圧FB(例えば225mV〜1V)を生成する。なお、抵抗216と抵抗217との接続ノードは、帰還電圧FBの印加端として、エラーアンプ205とバッファ215の各入力端に接続されている。
トランジスタ218は、アンテナ駆動装置10のイネーブル信号ENに応じて、外部端子T2と抵抗216との間を導通/遮断する第3スイッチとして機能する。トランジスタ218は、イネーブル信号ENがローレベル(アンテナ駆動装置10を動作状態とするときの論理レベル)であるときにオンとなり、イネーブル信号ENがハイレベル(アンテナ駆動装置10を非動作状態とするときの論理レベル)であるときにオフとなる。このような構成とすることにより、アンテナ駆動装置10の非動作時には、入力電圧VBの印加端から、コイルL1、ダイオードD1、外部端子T2、トランジスタ218、並びに、抵抗216及び217を介して接地端に至る電流経路を遮断することができるので、アンテナ駆動装置10の待機電流を削減することが可能となる。
なお、上記した抵抗216及び217は、出力電圧VSに応じた第1電圧(帰還電圧FB)を生成する第1電圧生成部の一構成要素として機能する。
また、上記した基準電圧生成部206、デジタル/アナログ変換部207、マルチプレクサ209、サンプル/ホールド部210、コンパレータ211、及び、充放電制御部212は、いずれも、駆動電流I*のピーク値と基準値との比較結果に応じた第2電圧(ソフトスタート電圧SS)を生成する第2電圧生成部の一構成要素として機能する。
上記構成から成るスイッチング電源回路200の基本動作(出力電圧VSの生成動作)について説明する。トランジスタ201がオンされると、コイルL1にはトランジスタ201を介して接地端に向けたスイッチ電流が流れ、その電気エネルギが蓄えられる。このとき、外部端子T1の電位は、トランジスタ201を介してほぼ接地電位まで低下するので、ダイオードD1が逆バイアス状態となり、コンデンサC1からトランジスタ201に向けて電流が流れ込むことはない。一方、トランジスタ201がオフされると、コイルL1に生じた逆起電圧によって、そこに蓄積されていた電気エネルギが放出される。このとき、ダイオードD1は順バイアス状態となるので、ダイオードD1を介して流れる電流がコンデンサC1を充電することになる。上記の動作が繰り返されることにより、外部端子T2には、入力電圧VBを昇圧した出力電圧VSが生成される。
次に、スイッチング電源回路200の出力帰還制御について説明する。スイッチング電源回路200は、出力電圧VSを一定値に維持する電圧帰還制御と、駆動電流I1〜I6を一定値に維持する電流帰還制御のいずれか一方を行うように、ロジック回路300からの指示に応じて出力帰還方式を切り替える機能を備えている。
スイッチング電源回路200の出力帰還方式を切り替える際、ロジック回路300は、マイコン30から設定されるレジスタ値DCONを参照し、DCON=1のときには電圧帰還制御を行うようにスイッチング電源回路200を制御する一方、DCON=0のときには電流帰還制御を行うようにスイッチング電源回路200を制御する。
図6は、出力帰還方式の切替機能を説明するためのテーブルであり、レジスタ値DCONに応じたセレクタ208及びマルチプレクサ209の動作状態が示されている。
電圧帰還制御時(DCON=1)には、マルチプレクサ209が出力ハイインピーダンス状態となる。このとき、サンプル/ホールド部210では電流帰還信号CS0のピーク値が検出されなくなるので、ピーク信号SHOが常に基準電圧REF1を下回っている状態となり、充電制御信号Scが常にハイレベル(充電時の論理レベル)となる。従って、コンデンサC3は、駆動電流I1〜I6の変動に依らず常に充電状態に維持されるので、ソフトスタート電圧SSは、アンテナ駆動装置10の起動後緩やかに上昇していき、最終的には基準電圧REF1よりも高い電圧値に維持される。
また、電圧帰還制御時(DCON=1)には、セレクタ208が基準電圧REF1を選択出力する状態となる。従って、アンテナ駆動装置10が起動した後、所定のソフトスタート期間T1(例えば500μs)が経過してソフトスタート電圧SSが基準電圧REF1よりも高くなると、エラーアンプ205では、基準電圧REF1と帰還電圧FBとの差分に応じた誤差信号ERRが生成され、後段の出力電圧生成部(201〜204)では、この誤差信号ERRに応じてトランジスタ201のPWM駆動(デューティ制御)が行われる。このような出力帰還ループの形成により、スイッチング電源回路200では、出力電圧VSが基準電圧REF1に応じた一定値に維持される。
一方、電流帰還制御時(DCON=0)には、マルチプレクサ209が電流帰還信号CS1〜CS6のいずれか一つを電流帰還信号CS0として選択出力する状態となる。このとき、サンプル/ホールド部210で生成されるピーク信号SHOは、電流帰還信号CS0のピーク値(延いては監視対象とされた駆動電流I*のピーク値)に応じて変動する。従って、充電制御信号Scの論理レベル(コンデンサC3の充放電状態)は、ピーク信号SHOが基準電圧REF1よりも高いか低いかに応じて切り替わる。
より具体的に述べると、監視対象とされた駆動電流I*が目標値よりも小さく、ピーク信号SHOが基準電圧REF1よりも低いときには、充電制御信号Scがハイレベルとなり、コンデンサC3が充電状態となるので、ソフトスタート電圧SSが引き上げられる。逆に、監視対象とされた駆動電流I*が目標値よりも大きく、ピーク信号SHOが基準電圧REF1よりも高いときには、充電制御信号Scがローレベルとなり、コンデンサC3が放電状態となるので、ソフトスタート電圧SSが引き下げられる。
このように、電流帰還制御時(DCON=0)には、ソフトスタート電圧SSが監視対象とされた駆動電流I*に応じて可変制御される。
また、電流帰還制御時(DCON=0)には、セレクタ208が基準電圧REF0を選択出力する状態となる。なお、基準電圧REF0は、ソフトスタート電圧SSの変動上限値よりも高い電圧値に設定されている。従って、エラーアンプ205では、常にソフトスタート電圧SSと帰還電圧FBとの差分に応じた誤差信号ERRが生成され、後段の出力電圧生成部(201〜204)では、この誤差信号ERRに応じてトランジスタ201のPWM駆動(デューティ制御)が行われる。このような出力帰還ループの形成により、スイッチング電源回路200では、監視対象とされた駆動電流I*が基準電圧REF1に応じた一定値となるように、出力電圧VSの可変制御が行われる。
なお、送信アンテナ21〜26の電波送信範囲は、駆動電流I1〜I6の大きさで決まる。従って、ピーク信号SHOと比較される基準電圧REF1を調整することにより、送信アンテナ21〜26の電波送信範囲を任意に設定することが可能となる。
上記したように、本構成例のスイッチング電源回路200は、出力電圧VSを一定値に維持する電圧帰還制御と、駆動電流I1〜I6を一定値に維持する電流帰還制御のいずれか一方を行うように、ロジック回路300からの指示に応じて出力帰還方式を切り替える機能を備えている。このような構成とすることにより、送信アンテナ21〜26の使用状況(電波の送信頻度や送信間隔など)ないしはシステムの仕様に応じて、適切な出力帰還方式を選択することが可能となる。
例えば、アンテナ駆動装置10の起動時には、スイッチング電源回路200を電圧帰還制御方式に切り替えることにより、その起動時間の短縮を優先することが可能となる。一方、アンテナ駆動装置10の起動完了後には、スイッチング電源回路200を電流帰還制御方式に切り替えることにより、電波送信範囲の精度向上を優先することが可能となる。
なお、本構成例のスイッチング電源回路200は、電流帰還制御時(DCON=0)にソフトスタート電圧SSを可変制御する構成とされているが、可変制御対象はこれに限定されるものではなく、駆動電流I*に応じて基準電圧REFや帰還電圧FBを可変制御する構成としても構わない。
図7は、スイッチング電源回路200の一動作例(電流帰還制御時)を示すタイミングチャートであり、紙面の上側から順に、送信データ信号DIN1、出力電圧VS、出力信号OUT*、電流帰還信号CS*、及び、ピーク信号SHOが描写されている。
本図で示したように、送信データ信号DIN1のハイレベル期間中には、出力信号OUT*を送信アンテナ21〜26の共振周波数fで正弦波駆動(または矩形波駆動)することにより、電波が出力される。一方、送信データ信号DIN1のローレベル期間中には、出力信号OUT*が非駆動状態とされて電波の出力が停止される。従って、送信データ信号DIN1のハイレベル/ローレベルを切り替えて電波出力をオン/オフさせることにより、リモコンキーにデータ送信を行うことが可能となる。
なお、アンテナ駆動装置10の起動後、時刻t11において、送信データ信号DIN1が初めてハイレベルに立ち上げられたときには、スイッチング電源回路200のソフトスタート動作が行われ、出力電圧VSがソフトスタート期間T1(時刻t11〜t13)をかけて緩やかに立ち上げられる。このとき、出力信号OUT*や電流帰還信号CS*のピーク値も出力電圧VSに伴って緩やかに大きくなる。なお、電流帰還信号CS*のサンプル/ホールド動作は、ソフトスタート期間T1中(時刻t12)に開始される。
時刻t14において、送信データ信号DIN1がローレベルに立ち下げられると、出力信号OUT*の正弦波駆動が停止されて、電流帰還信号CS*がゼロ値となる。ここで、送信データ信号DIN1がローレベルに立ち下げられてから、出力信号OUT*の正弦波駆動が停止されるまでに要する駆動停止期間T2(時刻t14〜t15)は、できる限り短い方が望ましい(例えば最大16μs)。
なお、送信データ信号DIN1のローレベル期間には、アナログスイッチ213がオフされて充放電制御部212によるコンデンサC3の充放電制御が禁止される。このような構成とすることにより、次に送信データ信号DIN1がハイレベルに立ち上げられるまでソフトスタート電圧SSをオフ直前の状態に保持することができるので、出力電圧VSを目標値に維持することが可能となる。
時刻t16において、送信データ信号DINが再びハイレベルに立ち上げられると、出力信号OUT*の正弦波駆動が再開されると共に、アナログスイッチ213がオンされて充放電制御部212によるコンデンサC3の充放電制御(電流帰還制御)が再開される。なお、送信データ信号DIN1がハイレベルに立ち上げられてから、電流帰還信号CS*のピーク値が安定するまでに要するピーク安定期間T3(時刻t16〜t17)は、先出のソフトスタート期間T1よりも短いものとなる。
図8は、アナログスイッチ214を用いたソフトスタート電圧SSの初期立上げ機能を説明するためのタイミングチャートであり、帰還電圧FB(実線を参照)とソフトスタート電圧SS(破線を参照)の挙動が示されている。なお、(a)欄では初期立上げ機能を備えていない場合の挙動が描写されており、(b)欄では初期立上げ機能を備えている場合の挙動が描写されている。
ソフトスタート電圧SSの初期立上げ機能とは、アンテナ駆動装置10の起動時にアナログスイッチ214を短期間だけオンとし、ソフトスタート電圧SSの印加端と帰還電圧FBの印加端との間をショートさせることにより、ソフトスタート電圧SSを帰還電圧FBと同電圧まで一気に引き上げる機能を言う。
昇圧型のスイッチング電源回路200では、そのスイッチング動作が開始されていない状態であっても、入力電圧VBに近い出力電圧VSが出力されるので、エラーアンプ205に入力される帰還電圧FB(=α×VS)の初期値もゼロ値とはならない。
(a)欄で示したように、ソフトスタート電圧SSの初期立上げ機能を備えていない場合には、時刻t21におけるアンテナ駆動装置10の起動後、ソフトスタート電圧SSがゼロ値(GND)から緩やかに立ち上がる。しかし、ソフトスタート電圧SSが帰還電圧FBを上回るまでは、誤差信号ERRがローレベルに張り付いた状態となるので、トランジスタ201のスイッチング駆動が開始されない。その後、時刻t22においてソフトスタート電圧SSが帰還電圧FBを上回ると、ようやくトランジスタ201のスイッチング駆動が開始され、出力電圧VS(延いては帰還電圧FB)がソフトスタート電圧SSに追従して緩やかに上昇し始める。このように、ソフトスタート電圧SSの初期立上げ機能を備えていない場合には、スイッチング電源回路200の起動が期間Td(時刻t21〜t22)だけ遅れてしまう。
一方、(b)欄で示したように、ソフトスタート電圧SSの初期立上げ機能を備えている場合には、時刻t21におけるアンテナ駆動装置10の起動時にアナログスイッチ214が短期間だけオンされて、ソフトスタート電圧SSが帰還電圧FBと同電圧まで一気に引き上げられる。従って、出力電圧VS(延いては帰還電圧FB)は、アンテナ駆動装置10の起動直後からソフトスタート電圧SSに追従して緩やかに上昇し始めるので、スイッチング電源回路200の起動遅延を解消することが可能となる。
<スイッチング電源回路(第2構成例)>
図9は、スイッチング電源回路200の第2構成例を示す回路ブロック図である。本構成例のスイッチング電源回路200は、基本的に第1構成例(図5)と同様であるが、セレクタ208、アナログスイッチ213及び214、並びに、バッファ215が省略されている。
すなわち、本構成例のスイッチング電源回路200は、先に説明した第1構成例から、出力帰還方式の切替機能、ソフトスタート電圧SSの保持機能、及び、帰還電圧FBとソフトスタート電圧SSとの短絡機能をいずれも割愛した構成とされている。
これまでの説明では、安定かつ通信可能な速度で送信アンテナ部20の間欠駆動を行うために、アンテナ駆動時(送信アンテナ部20への通電時)だけでなく、アンテナ停止時(送信アンテナ部20への非通電時)にも、スイッチング電源回路200やアンテナ駆動回路100の出力動作を継続することを前提としてきた。しかしながら、このような制御では、アンテナ駆動時だけでなくアンテナ停止時にも電流を消費してしまうので、さらなる改善の余地があった。
図10は、アンテナ停止時の電流消費を示すタイミングチャートであり、上から順に、送信データ信号DIN1、スイッチ電圧Vsw、コイル電流IL、及び、駆動電流I*が描写されている。スイッチ電圧Vswは、外部端子T1に現れる矩形波状の電圧であり、コイル電流ILは、コイルL1に流れる電流である。本図から明らかなように、送信アンテナ部20の間欠駆動に際しては、アンテナ駆動時だけでなくアンテナ停止時にもコイル電流ILが流れていることが分かる。
なお、アンテナ停止時の低消費電流化を実現するためには、アンテナ停止時にスイッチング電源回路200やアンテナ駆動回路100の出力動作を停止すればよいが、その背反として、アンテナ再駆動時の安定性が損なわれるので、出力帰還制御の見直しが必要となる。以下では、その理由について詳細に説明する。
図11は、アンテナ再駆動時における駆動電流I*のオーバーシュートを示すタイミングチャートであり、上から順に、送信データ信号DIN1、出力電圧VS、及び、駆動電流I*が描写されている。
送信データ信号DIN1がローレベルとなるアンテナ停止期間(時刻t21〜t22)において、ロジック回路300がスイッチング電源回路200及びアンテナ駆動回路100の出力動作を停止させると、送信アンテナ部20には駆動電流I*が流れなくなる。一方、コンデンサC1に蓄えられている出力電圧VSは、アンテナ駆動回路100を介した放電経路が遮断されることにより、アンテナ停止直前の電圧値にほぼ維持されている。
時刻t22において、送信データ信号DIN1がハイレベルに立ち上げられると、これを受けたロジック回路300がスイッチング電源回路200及びアンテナ駆動回路100の出力動作を再開させる。ただし、送信アンテナ部20はLC負荷なので、R負荷やL負荷と比べて駆動電流I*の立ち上がりに時間が掛かる。このように立ち上がりの鈍い駆動電流I*に応じた電流帰還制御を行うと、出力電圧VSが不要に上昇して駆動電流I*にオーバーシュートが生じてしまう。
図12は、オーバーシュートの発生原理を説明するためのタイミングチャートであり、上から順に、送信データ信号DIN1、基準電圧REF1、電流帰還信号CS0、ピーク信号SHO、及び、出力電圧VSが描写されている。
本図に示すように、時刻t31において、送信データ信号DIN1がハイレベルに立ち上げられ、これを受けたロジック回路300がスイッチング電源回路200及びアンテナ駆動回路100の出力動作を再開させると、電流帰還信号CS0がゼロから緩やかに立ち上がるので、ピーク信号SHOと基準電圧REF1との間に電位差ΔVが発生する。従って、電位差ΔVの分だけ駆動電流I*を増やすように電流帰還制御が掛かるので、出力電圧VSが不要に上昇してしまい、結果として駆動電流I*のオーバーシュートが生じる。
図13は、オーバーシュートの第1改善策を示すタイミングチャートであり、上から順に、送信データ信号DIN1、出力電圧VS、及び、駆動電流I*が描写されている。
本図の第1改善策では、時刻t41において、送信データ信号DIN1がローレベルに立ち下げられたときに出力電圧VSが一旦放電される。その結果、時刻t42において、送信データ信号DIN1が再びハイレベルに立ち上げられたときには、出力電圧VSのソフトスタートが改めて行われるので、駆動電流I*のオーバーシュートを解消することが可能となる(時刻t42〜t43を参照)。
すなわち、第1改善策では、アンテナ駆動装置10の初回起動時(電源投入時)だけでなく、送信アンテナ部20の間欠駆動中にも送信アンテナ部20を再駆動する毎に出力電圧VSのソフトスタートが繰り返される。しかしながら、このような構成では、送信アンテナ部20を再駆動する毎に長い時間をかけて出力電圧VS及び駆動電流I*を立ち上げ直すことになる。従って、第1改善策では、システムの規格で定められた通信速度を満足することができない恐れがあり、さらなる検討の余地を残していた。
図14は、オーバーシュートの第2改善策を示すタイミングチャートであり、上から順に、送信データ信号DIN1、基準電圧REF1、電流帰還信号CS0、ピーク信号SHO、及び、出力電圧VSが描写されている。
本図の第2改善策では、時刻t51において、送信データ信号DIN1がハイレベルに立ち上げられたとき、これを受けたロジック回路300がスイッチング電源回路200及びアンテナ駆動回路100の出力動作を再開させるとともに、基準電圧REF1を駆動電流I*の立ち上がり(延いてはピーク信号SHOの立ち上がり)に合わせて緩やかに上昇させるように、基準電圧データSVを可変制御する(時刻t51〜52を参照)。このような構成であれば、基準電圧REF1とピーク信号SHOとの電位差がなくなるので、駆動電流I*のオーバーシュートを解消することが可能となる。
ただし、駆動電流I*の立ち上がり挙動は、送信アンテナ部20の特性毎に千差万別である。従って、上記の第2改善策を採用する場合には、駆動対象として接続することのできる送信アンテナ部20を予め限定しておくか、若しくは、駆動対象として接続された送信アンテナ部20に最適化された基準電圧データSVの外部入力を受ける必要がある。
<スイッチング電源回路(第3構成例)>
図15は、スイッチング電源回路200の第3構成例を示す回路ブロック図である。本構成例のスイッチング電源回路200は、基本的に第2構成例(図9)と同様であるが、第1構成例(図5)のアナログスイッチ213及び214、並びに、バッファ215が改めて追加されている。
すなわち、本構成例のスイッチング電源回路200は、先に説明した第2構成例に、ソフトスタート電圧SSの保持機能、及び、帰還電圧FBとソフトスタート電圧SSとの短絡機能を追加した構成とされている。言い換えれば、本構成例のスイッチング電源回路200は、先に説明した第1構成例から、出力帰還方式の切替機能のみを割愛した構成であると言うこともできる。
なお、第3構成例のスイッチング電源回路200において、充放電制御部212とコンデンサC3との間を導通/遮断するアナログスイッチ213は、ロジック回路300からの指示に応じてソフトスタート電圧SSを保持する電圧保持部の一構成要素として機能する。また、帰還電圧FBの印加端とコンデンサC3との間を導通/遮断するアナログスイッチ214は、ロジック回路300からの指示に応じて帰還電圧FBとソフトスタート電圧SSとを短絡する電圧短絡部の一構成要素として機能する。
また、図15では、サンプル/ホールド部210を入力サンプリング状態と出力ホールド状態のいずれか一方に切り換えるためのサンプル/ホールド切替信号SHSWが描写されている。サンプル/ホールド切替信号SHSWは、図15で初めてその存在を明示したが、実際には、先の第1構成例(図5)や第2構成例(図9)にも存在する信号である。
図16は、アンテナ再駆動時のスイッチ切替動作を示すタイミングチャートであり、上から順に、送信データ信号DIN1、基準電圧REF1、電流帰還信号CS0、ピーク信号SHO、サンプル/ホールド部210によるピーク値検出動作のオン/オフ状態、アナログスイッチ213及び214のオン/オフ状態、ソフトスタート電圧SS、帰還電圧FB、及び、出力電圧VSが描写されている。
送信データ信号DIN1がローレベルとなるアンテナ停止期間A(時刻t61以前)には、ロジック回路300がスイッチング電源回路200及びアンテナ駆動回路100の出力動作を停止させている。従って、送信アンテナ部20に駆動電流I*は流れておらず、電流帰還信号CS0はゼロ値となっている。一方、コンデンサC1に蓄えられている出力電圧VS(及び、その分圧電圧である帰還電圧FB)は、アンテナ駆動回路100を介した放電経路が遮断されることにより、アンテナ停止直前の電圧値にほぼ維持されている。
また、上記のアンテナ停止期間Aには、アナログスイッチ213がオフされて充放電制御部212によるコンデンサC3の充放電制御が禁止される(先出の図7における時刻t15〜t16も併せて参照)。このような構成とすることにより、送信データ信号DIN1がローレベルに立ち下げられてから、次に送信データ信号DIN1がハイレベルに立ち上げられるまで、ソフトスタート電圧SSがオフ直前の状態に保持される。また、上記のアンテナ停止期間Aには、アナログスイッチ214がオフされており、帰還電圧FBとソフトスタート電圧SSとは短絡されていない。このようなアナログスイッチ213及び214の切替制御については、先の第1構成例と同様である。また、上記のアンテナ停止期間Aには、サンプル/ホールド切替信号SHSWが出力ホールド時の論理レベルに固定される。従って、サンプル/ホールド部210による電流帰還信号CS0のピーク値検出動作はオフされるので、ピーク信号SHOはオフ直前の状態に保持される。
なお、上記のアンテナ停止期間Aにおいて、ソフトスタート電圧SS、帰還電圧FB、及び、出力電圧VSは、いずれもアンテナ停止直前の電圧値にほぼ維持されているはずであるが、完全に維持されている保証はないので、図16では破線を用いて描写している。
時刻t61において、送信データ信号DIN1がハイレベルに立ち上げられ、これを受けたロジック回路300がスイッチング電源回路200及びアンテナ駆動回路100の出力動作を再開させると、電流帰還信号CS0がゼロから緩やかに立ち上がり始める。
従って、時刻t61において、送信アンテナ部20の駆動を再開した直後から、電流帰還信号CS0に応じた電流帰還制御を行うと、駆動電流I*を増やすように電流帰還制御が掛かるので、出力電圧VSが不要に上昇してしまい、結果として駆動電流I*のオーバーシュートが発生する。
一方、第3構成例のスイッチング電源回路200において、ロジック回路300は、送信アンテナ部20の駆動を再開するときに、サンプル/ホールド部210によるピーク値検出動作のオフ(ピーク信号SHOの保持)を継続したまま、アナログスイッチ213をオンすることにより、スイッチング電源回路200及びアンテナ駆動回路100の出力動作を再開する。その後、ロジック回路300は、所定の電圧保持期間B(時刻t61〜t63)が経過した時点で、サンプル/ホールド部210によるピーク値検出動作をオンすることにより、ピーク信号SHOの保持を解除する。
すなわち、時刻t61〜63の電圧保持期間Bには、立ち上げ途中の電流帰還信号CS0に応じた電流帰還制御が行われることなく、オフ直前のピーク信号SHOに応じたソフトスタート電圧SSを基準とする電圧帰還制御が行われる。一方、時刻t63以降の通常駆動期間Cには、サンプル/ホールド部210による電流帰還信号CS0のピーク値検出動作が再開されるので、立ち上げ完了済みの電流帰還信号CS0に応じた電流帰還制御が行われる。
このように、第3構成例のスイッチング電源回路200は、送信アンテナ部20の駆動を再開するときに、電流帰還制御を一時的に無効化し、送信アンテナ部20の駆動を停止する直前の基準値(オフ直前のピーク信号SHOに応じたソフトスタート電圧SS)を用いて電圧帰還制御を行う機能を備えている。従って、アンテナ停止期間Aにスイッチング電源回路200及びアンテナ駆動回路100の出力動作を停止させても、アンテナ再駆動時のオーバーシュートを解消することができるので、アンテナ駆動の安定性を確保しつつアンテナ停止時の消費電流を大幅に削減(約90%ダウン)することが可能となる(図17を参照)。
特に、エンジン停止時にも動作するスマートエントリーシステム搭載の車両1では、バッテリ40の消耗をできる限り抑えることが重要であることから、スイッチング電源回路200の消費電流を大幅に削減し得る上記の第3構成例は、非常に有用であると言える。
なお、ロジック回路300は、装置外部からの指示に応じて電圧保持期間Bを所定範囲(数十μs〜数百μs)で可変制御する機能を備えている。このような構成とすることにより、駆動対象となる送信アンテナ毎に電圧保持期間Bを最適化することができるので、送信アンテナの特性に依ることなくアンテナ駆動の安定性確保と消費電流の低減を両立することが可能となる。
また、ロジック回路300は、送信アンテナ部20の駆動を再開する際、時刻t61〜t62の短絡期間B0(例えば数μs〜数十μs)に亘って、アナログスイッチ213をオフしたまま、アナログスイッチ214をオンすることにより、帰還電圧FBとソフトスタート電圧SSとの短絡を実行する。このような構成とすることにより、アンテナ停止期間Aにおいて帰還電圧FBとソフトスタート電圧SSとの間に電位差が生じていたとしても、電圧保持期間Bの開始直後に両者を一致させることができるので、電圧保持期間Bにおける電圧帰還制御をより安定して実施することが可能となる。
なお、第1構成例(図5)のスイッチング電源回路200は、アナログスイッチ213及び214を有しているので、上記と同様のスイッチ切替制御を行うことにより、アンテナ駆動の安定性を確保しつつアンテナ停止時の消費電流を削減することが可能である。
<その他の変形例>
なお、上記の実施形態では、車両のスマートエントリーシステムに用いられるアンテナ駆動装置を例に挙げて説明を行ったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、その他の用途に供されるアンテナ駆動装置にも広く適用することが可能である。
例えば、車両のタイヤ空気圧監視システムに用いられるアンテナ駆動装置に本発明を適用する場合、先に説明した送信アンテナは、車両のドアやキャビンではなく、タイヤまたはホイールに設けられる。
また、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、バイポーラトランジスタとMOS電界効果トランジスタとの相互置換や、各種信号の論理レベル反転は任意である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。