JP6329826B2 - Pd膜分離装置 - Google Patents

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Description

本発明は平膜を用いたクロスフロー式膜分離法において、目詰まりを防止して安定的かつ長期的にろ過分離を行うことを目的に、溶液中の粒子に働く集軸効果と粒子の拡散力を併用するため、一次側流速、流路形状の条件を設定し、一次側と二次側に流量調整弁を設けて、膜間差圧を0.01MPa以下の低圧力条件下で膜分離を行うPD膜分離法とそれを用いたPD膜分離装置に関する。さらに同様の条件下で、粒子除去性を向上させ、平均孔径の1/2以上の粒子径の粒子を分離するPD膜分離法とそれを用いたPD膜分離装置に関する。詳しくは同様の条件下で、再生セルロース製多孔性平膜を用いて、目詰まりを防止して安定的かつ長期的にろ過分離を行うためのPD膜分離型物質分離方法とそれを用いた分離装置であり、特に化粧品および食品原料に含まれるたんぱく質やアミノ酸などの高分子化合物、生理活性物質、溶解成分の分離精製、あるいは/および有害性微粒子、感染性微生物、溶解物質等の高度な除去を実現する方法とそれを用いた装置に関する。
平膜を用いた膜分離装置(特にデッドエンド式ろ過分離装置)で最も大きな課題である目詰まりを防止するために有効な手段としてクロスフロー式ろ過(タンジェンシャルフロー式ろ過と同じとする)がある。このクロスフロー式ろ過において目詰まりをさらに効果的に防止する工夫としては、目詰まり現象自体を抑制する技術と、目詰まり物質を除去する技術の二つがある。
抑制する技術としては、例えば実開昭54-004257において一次側原液の膜表面における流速を速める技術がある。円筒型エレメントで充填物を用いて流路を狭くする技術であり、流路にはメッシュが挟まれ、流速が速くなり、その結果膜表面に生じるせん断力によって目詰まりの進行が抑制できる。曝気や振動を常時行う方法も、抑制する技術といえ、特開平05-285479などによって紹介されている。平膜エレメントの下方向や斜め下方向から様々な粒径の泡沫を発生させて、平膜表面にあてたり、目詰まり成分の粒子を大粒子化させたり、上方に浮かせたりするほうほうで目詰まりを抑制している。また、電気的反発力も目詰まり抑制技術として利用され、イオン交換膜などに適用されている。
膜分離において目詰まりに対する一般的な対策は、目詰まり物質を除去する技術である。除去技術は、科学的手法と、物理的手法の二つに大別できる。化学的手法で最も一般的な方法として、洗浄液を用いる技術が、特開平05-269355や特表平07-507007などによって紹介されている。洗浄液を膜表面に流通させるか、あるいは膜エレメントを浸漬させ、一次側に堆積した目詰まり層を剥離する。物理的手法はもっとも多くの手法が開発されている。圧力を用いた逆洗、減圧、振動、循環、逆流、噴射などである。デッドエンド式ろ過で多用される逆洗法が、目詰まりを防ぐもっともポピュラーな方法として知られ、これは平膜の二次側から一次側へ逆方向にろ液を流すことで一次側に堆積している目詰まり成分であるケーク層をはぎ取る手法である。膜分離装置の運転方法による除去も工夫されている。たとえば、間欠運転によるケーク層の剥離(特開平06-106167)、二次側を閉じた状態での循環運転による剥離(特開平07-136468)、減圧下における振動の利用(特開平08-089768)、各膜エレメントを並列につないだ状態での逆洗(特開平09-085066)、振動バルブに利用(特開平11-128702)、速い流速での逆洗(特開平11-179163)、などがある。
実開昭54-004257 特開平05-285479 特開平05-269355 特表平07-507007 特開平06-106167 特開平07-136468 特開平08-089768 特開平09-085066 特開平11-128702 特開平11-179163 特開2010-029824
流速を速めて目詰まりを抑制する技術は必要な基本構造として安定的に流通できる流路が必要であるが、実開昭54-004257では一次側に流路スペーサーとしてメッシュを内蔵するなど、流れを妨げる構造となっており、特に原液に繊維など夾雑物が混在する場合は一次側のメッシュに繊維が堆積する課題がある。結果として一次側に目詰まりが生じ、流速が落ちる。
曝気や振動を用いた装置は、そのランニングコストの大部分をエアレーションやバイブレーションへの動力が占めており、コスト高になることが課題である。
電気的反発力を利用した手法はイオンなど超微粒子に対して効果的であるが、帯電した粒子にしか適用できない。
洗浄液を用いた手法の場合、洗浄液が膜端部(シール部位)に残留し、しかも残留した洗浄液は除去が困難で、残留した洗浄液が処理液に混入する恐れがある。
逆洗は膜表面ケークの除去のみに有効であり、膜内部の目詰まりは徐々に堆積し、回復不可能な状態となる。
膜分離装置の運転方法による様々な工夫、いわゆる間欠運転によるケーク層の剥離(特開平06-106167)、二次側を閉じた状態での循環運転による剥離(特開平07-136468)、減圧下における振動の利用(特開平08-089768)、各膜エレメントを並列につないだ状態での逆洗(特開平09-085066)、振動バルブに利用(特開平11-128702)、速い流速での逆洗(特開平11-179163)、なども、目詰まりの急速な進行を防ぐ点で有効であるが、目詰まり機構を根本的に解決しているわけではなく、進行を遅らせる手法であり、長期的な観点では膜内部の目詰まりが徐々に進行してしまうことが課題である。
また以上の工夫はいずれも平膜の孔径のみに頼る膜分離方法に適用される方法であり、目詰まりを抑制すること以外の効果を期待するものではない。特に平膜の孔径のみに依存した膜分離方法における粒子除去性は、場合によっては平膜表面に堆積し、成長するケーク層に起因して生ずる粒子除去性を期待することもあり、この場合はケーク層の剥離に伴って粒子除去性も低下する。しかも平膜の孔径のみに依存した粒子除去性は、除去対象粒子の最大径に近づくほど、粒子除去性が著しく低下し、ケーク層の剥離によって除去性能が低下したり、あるいは処理量を確保するために孔径を大きくした場合に、除去対象粒子の最大径近傍の感染性粒子の漏えいの危険性が著しく増す結果にもつながる。
できるだけ目詰まりを進行させずに、緩慢な速度でろ過分離する技術が特開2010-029824において紹介されているが、この技術も平膜の孔径だけに依存した技術であり、ろ過液中の粒子分布は大粒子側に偏るため、処理量を優先して孔径を大きくした場合、除去対象粒子の最大径付近あるいは以上の感染性粒子が流出する危険性が大きい点が課題である。
発明者らは、従来のクロスフローろ過に比べ大幅に目詰まりを抑制する膜分離法を開発するにあたり、特に分離対象物質濃度が高いケースに絞り、目詰まり機構そのものを防ぐための多種多様な技術開発に取り組んだ。開発の中で一つの条件として取り組んだ親水性の高い再生セルロース製平膜を用いた実験において、一次側流速を速め、膜間差圧を小さくすることによって目詰まりが抑制されることについて、理論的および実験的両面から有効性に関する知見を得た。理論的には一次側流速を速めることで生じる集軸効果と、膜間差圧を小さくすることによって生じる拡散現象を併用することで、目詰まりを抑制できる可能性が高いことを予測した。しかもこれら二つの効果と現象は、平膜の孔径だけに依存しない膜分離機構を示唆し、目詰まりを起こす条件を緩和しつつ、すなわち目詰まりを根本的に解決しつつ、さらに粒子の除去性も向上させることが可能であることを推測し、多種多様な技術開発に取り組んだ。
集軸効果は血管内の血流においてみられる現象であり、高速で流れる血流内では、血管内の血液の流速が放物線状となり、回転して流れる赤血球に揚力が生じ、血管中心に集まる。その結果、血管内壁付近には血漿が集まり、血流の見かけの粘性が下がることが知られている。同様に、一次側膜表面流速を速めることで分離対象物質である大きな粒子には揚力が生じ、膜表面から離れる。その状態で緩やかな圧力を膜表面にかけると、膜表面付近の溶媒あるいは溶解物質あるいはたんぱく質などの小粒子がろ過分離される。ろ過速度が十分に小さければ、大粒子は膜表面から離れた状態を維持することができ、結果として目詰まりを防ぐことができる。
また拡散現象は、PD膜分離の条件、すなわち、膜間差圧を小さくし、孔径を大きくし、かつ上記集軸効果を得られる条件下の場合に得られる。その結果、孔中での粒子の移動速度は、一次側流体速度に比べて小さくなり、各粒子は孔中において拡散力の影響を受けやすくなる。逆にたとえば従来法であるデッドエンド式ろ過法の場合、膜間差圧が大きく、かつ孔径が小さいため、孔中での流体速度が速くなり、粒子の拡散力よりも、ろ過流速が粒子に与える影響が大きくなり、結果として孔径のみに依存した分離機構となる。つまり、粒子の移動速度は、各粒子の拡散速度ではなく、孔中での流体速度が主体的になり、粒子間の移動速度に大きな差は生じない。したがって、孔径の差が主体的な分離機構となる。分離性能は粒子が大きいほど高くなるが、処理速度を得るためには孔径を大きくしなければならないジレンマが生じ、その結果、除去対象粒子の粒径ぎりぎりまで孔径を大きくし、除去対象粒子が二次側へ漏れる危険性を大きくしてしまう。PD膜分離法の条件下の場合、膜間差圧は小さく、孔径は大きくできるため、粒子の分離機構は粒径以外に、集軸効果、拡散速度の差に依存するため、そうした危険性が増大する課題を回避できる。
具体的には膜間差圧が0.01MPa以下であり、孔径が0.1〜2μmである。ここで設定する孔径は孔内部で透過成分が十分に拡散できる条件であり、孔中における透過粒子がタンパク分子(10nm、拡散係数は)の場合、孔径0.1μmは10倍であり拡散を起こすに十分な大きさである。たとえばタンパク分子(直径10nm)とバクテリア(直径1μm)の水中における拡散係数はそれぞれ、5×10-11m2/秒と5×10-13m2/秒、であり、100倍の差がある。より集軸効果の影響を受けやすいバクテリア粒子は一次側に留まる傾向が大きくなり、逆に小さな粒子であるタンパク分子は比較的集軸効果の影響を受けにくく、自身の拡散力によって二次側へ透過する。
こうした理論的推測をもとにした実験によって、経験的にも同様の結果につながるデータを得ることができた。すなわち、流路と流速、膜間差圧、平膜の孔径、平膜の表面粗さを調節できる実験装置を組み、様々な条件下で実験を試みた。設定した条件としては、集軸効果と粒子の拡散力を同時に得ることができる条件として苦心しつつ設定し、結果として流路の流通方向の長さ(L)と深さ(D)の比(L/D)を100〜300、平膜表面における流速を10〜100cm/s、膜間差圧を0.002〜0.01MPa、平膜の孔径を0.1〜2μ、表面粗さRa=10μm以下で条件を多数設定し実験を行った。その結果、目詰まりを抑制するためには適切な条件が必要であり、特にL/Dと流速、および膜間差圧の条件設定が重要であることを見出した。
L/Dはある程度大きくしなければ分離性能が安定しないという実験結果をもとに、このことは流路内の液体の流れの状態が大きく乱れていることが原因であり、L/Dを大きくすることで流路内の液体の流れの状態が層流に近づき、集軸効果が得られるとともに分離性能が安定させることができるもの推測し、一方大きすぎる場合は流路での圧力損失が大きくなり、膜間差圧を均一に保つことが難しくなる。流速は少なくとも10cm/s以上、望ましくは20cm/s以上にしなければ充分な効果が得られないことが判明したが、L/Dを大きくするためにDを小さくすると、圧力損失が生じ、膜間差圧を低く均一に保つことが困難となる。そうした相互の関係性を確認しつつ、適切な条件を見出すため、多くの条件設定による実験を繰り返した結果、流速を10〜100cm/sの範囲で保ちつつ、膜間差圧を0.002〜0.01MPaの範囲で均一に維持するには、L/Dを100〜300、特に200付近においてもっとも安定的にろ液を得られることが判明した。これは例えばD=1.5mmの場合で、流速を10cm/s以上とする場合、L/Dは200程度が最も効果が得られる条件であり、膜間差圧は0.005MPaであった。
発明者らは、この発見、すなわち集軸効果と粒子の拡散力の二つの効果と現象を併用し、かつ併用できる条件を備えた装置を用いて行う膜分離によって、長期的かつ安定的に膜分離が可能になること、さらに当該条件によって平膜の粒子除去性が向上することの発見に際し、当該条件の下で行う膜分離のことを特に「PD膜分離法」と呼ぶこととした。PD膜分離法の条件は、集軸効果と粒子の拡散力の二つの効果と現象を併用できる諸条件を備えた装置によって行う膜分離法のことであって、詳しくは、集軸効果を得るために流路内において層流と十分な流速が得られる条件、すなわち平膜表面が平滑であり、流路の深さ(D)に対して、流路の流通方向の長さ(L)が十分に大きいことであり、流路における流速が10〜100cm/s以上であること、さらには粒子の拡散力が十分に働く条件、すなわち膜間差圧が0.01MPa以下であり、孔径が0.1〜2μmであり、孔内部が親水性であり、孔内部で透過成分が十分に拡散できることが必要である。
PD膜分離法における高い除菌性能、あるいは粒子除去性の向上は、集軸効果と粒子の拡散力を併用できていることの裏付けでもある。集軸効果と粒子の拡散力を利用する場合、動植物の組織内における粒子の分離現象に近似した分離現象と推論することができる。すなわち様々な自然現象を経て形成された溶液中の粒子は正規分布を取るが、自然現象の一部である定常的な流体中で起きる集軸効果と粒子の拡散力の影響を受けた膜分離現象後の粒子分布もやはり正規分布に近くなる。人為的な膜分離においても、原液中に存在する除去対象粒子が正規分布を取るとした場合、デッドエンド式MF膜では、孔径だけに依存しているため、例えば孔径0.5μmの場合は0.5μm以上の粒子に対しては大きな除去性能を有するが、それ以下の粒子に対しては除去性能はほぼ持たない。MF膜分離特有の目詰まりによるケーク層が生じた場合には、0.5μm以下の粒子に対しても除去性能を有することもあるが、それについてもケーク層の孔径に依存するため粒子が小さいほど、除去性能は急激に低下する。
これに対してPD膜分離法は、その除去性能が集軸効果と孔径の二つの効果に依存するため、原液中の粒子も、自身の一次側における膜表面からの距離と、拡散速度の二つの影響を受けつつ、二次側に流出していくため、二次側の粒子も正規分布に近い粒径分布を有することになる。この点に着目した多くの条件設定による実験が本発明の起点となっている。正規分布を取っている原液側粒子のうち、大きな粒子ほど、集軸効果によって膜表面からの距離が大きくなり、一次側に滞留しつつ循環する。小さな粒子ほど膜表面に近づき、自身の拡散力によって二次側へ流出するが、流出する粒子の中でも大きな粒子は拡散力が小さいうえに、一次側において発生する揚力を受けて流出しにくくなる。その結果、流出する粒子も粒径分布をある程度保ったまま二次側へ流出するため、平均孔径0.5μmを使用したPD膜分離において、0.5μm以下の粒子についても一定の除去性を有する。実際に、PD膜分離法では最高値で9桁の除菌性能を確認しており、一般的に除菌用途として使用されるデッドエンド式MF膜の平均孔径が0.2μm程度であることから、細菌の粒子の大きさは小さいもので0.2μm程度であると断定でき、PD膜分離法では、平膜の平均孔径の1/2以上の粒子径の粒子に対し除去性を有することが確認できた。なおかつ平膜が有する欠点(ピンホールなど)の影響もデッドエンドろ過に比較して小さい。逆に表現をすれば正規分布に近い原液中の粒子分布を、処理液中にも保つような膜分離法は結果的に平膜の孔径近傍の粒子の除去性能が高くなり、動植物にとっては感染性粒子から自己を防衛するには合理的な膜分離法といえる。
また再生セルロース製平膜を使用し、表面粗さを規定することで、これまで必要以上に大きなひずみ速度や物理的力をかけていた目詰まり成分の除去が、10cm/s以上の流速を保つだけで定常的に目詰まりを抑制できることが分かった。再生セルロース製平膜は、セルロースが持つ水酸基によって生じる水素結合によって常に膜表面に水の層を形成し、一定以上の流速によって目詰まりが定常的に進みにくくなることを見出した。これは再生セルロース製多層構造膜と再生セルロース製不織布の両方について言えることであり、不織布の場合は、表面粗さを10μm以下に規定する必要がある。しかも再生セルロース製平膜は膜内部においても水の層を形成するため親水性の高い成分の回収率が非常に高い特徴を持つ。
たとえば細胞や繊維を多く含む胎盤抽出液50Lを、タンパク分子の採取と胎盤抽出液中の細菌除去を目的に当該条件にてPD膜分離したところ、孔径0.5μm、処理速度1L/時間/平米において2日間に渡りろ過を持続し、約45Lの処理液を得、原液は10倍に濃縮された。デッドエンド式MF膜分離(孔径0.4μm)の場合は処理後数分後に目詰まりし、ろ液は全くでなくなった。実験の結果、PD膜分離法においては菌数検査において6桁以上の除菌性能が確認された。これはデッドエンド式MF膜分離(孔径0.4μm)に比べはるかに高い除菌率である。
本発明を採用することにより、クロスフローろ過において目詰まりを抑制し、安定的に長期的に膜分離を行うことができる。また、平膜の孔径の1/2以上の粒子径の粒子に対しても除去性を発揮できる。その結果、化粧品および食品原料に含まれるたんぱく質やアミノ酸などの高分子化合物、生理活性物質、溶解成分の分離精製、あるいは/および有害性微粒子、感染性微生物、溶解物質等の高度な除去を実現できる。特に繊維など夾雑物を多く含む化粧品および食品原料を安定的に長期的に膜分離することができ、たんぱく質やアミノ酸などの高分子化合物、生理活性物質などを温和な雰囲気で成分の変性を生じさせることなく、分離、抽出することができる。感染性微生物の除去性能は同程度の平均孔径の平膜を用いた膜分離(たとえばMF膜分離)に比較して2桁以上高くすることができる。また0.01MPa以下の低圧力での膜分離操作であり、かつ装置を単純化することができ、使用後には平膜を再生して使用することも可能であるため、膜分離操作の簡略化、低コスト化、低価格化の効果もある。様々な成分が混ざり合った液体、生活排水や工業排水、塩水に対して本発明方法を適用することにより有用な水質に変換させることが可能になる。
一次側支持体平面図 二次側支持体平面図 ハウジング平面図 PD膜分離モジュール(積層時)側面図 PD膜分離モジュール(積層時)立体図 PD膜分離装置図
本発明では、長期的かつ安定的に目詰まりを抑制しつつ高度な粒子除去性を達成できるPD膜分離法を実現するために、集軸効果と粒子の拡散力の二つの効果と現象を併用し、かつ併用できる条件を備えた装置を用いて分離操作を行わなくてはならない。まず集軸効果を得るためには、流路内において層流あるいは層流に近いと十分な流速が得られる条件が不可欠であり、すなわち平膜表面が平滑であり、流路の深さ(D)に対して、流路の流通方向の長さ(L)が十分に大きくなければならない。流路の流通方向の長さ(L)と深さ(D)の比(L/D)を100以上で、望ましくは100〜300の範囲内にし、200付近においてもっとも安定的にろ液を得られる。これは例えばD=1.5mmの場合で、流速を10cm/s以上とする場合、L/Dは200程度が最も効果が得られる条件である。
流路における流速は10cm/秒以上とし、望ましくは20〜100cm/sの範囲内とする。流速を生じさせる手段はポンプの吐出力を利用する。膜間差圧は0.01MPa以下であり、望ましくは0.002〜0.01MPaの範囲に設定する。
使用する平膜は孔内部を親水性に保つ必要があるため、親水性の素材を選択し、望ましくは再生セルロース製平膜を用いる。流路内における流れを層流に近づけるために平膜の表面は、平滑でなければならず、平滑度は表面粗さにおいてRa=10μm以下とする。孔径は、孔中で透過粒子が拡散できる大きさとし、0.1〜2μmの範囲で、かつ孔径を通過する粒子径の5倍以上、望ましくは2倍以上とする。膜内の構造は多層構造が望ましく、多層構造を持つ多孔性平膜とは、平膜の平面に対して垂直方向の断面に、平膜の構成最小単位である再生セルロース粒子あるいは再生セルロース繊維が、層状に重なって構成される平膜を指す。層状とは、再生セルロース粒子あるいは再生セルロース繊維が、平膜の水平方向に連結あるいは連続して連なり、1層をなし、当該1層の水平方向に粒子間の空孔あるいは繊維間の空隙が細孔の分布を形成し、当該層が複数重なっている様を指す。
表面粗さRaは、粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さで割った値(中心線平均粗さ)をマイクロメートル(μm)で表わす。また孔径(平均孔径)は「粘度・膜厚・濾過速度/膜間差圧・空孔率」の平方根で与えられる。ここで濾過速度は一平方メートル当りの純水の濾過速度でml/minの単位で測定され、膜厚はミクロン単位、粘度はセンチポイズ、膜間差圧はmmHg単位で、空孔率は無次元単位である。この際の平均孔径はnm単位となる。空孔率は「1−膜の密度/素材高分子の密度」で与えられる。膜の密度は「膜の重量/膜の面積*膜の厚さ」で算出される。
本発明で使用する平膜は親水性素材で製膜法として湿式または乾式のミクロ相分離法で作製される。例えば銅安法再生セルロース平膜は親水性素材として最適であるが膜厚を100μm以上にまた平均孔径を100nm以上にするのが難しい。該膜の製法は特公昭62−044019号及び特公昭62−044017号と特公昭62−044018号に与えられている。再生セルロース製の平膜の製法として多孔性アセテート膜を作成しこれを0.1規定の苛性ソーダでケン化処理することによって作製できる。アセテート膜の製法は上出健二,真鍋征一,松井敏彦,坂本富男,梶田修司,高分子論文集,34巻3号205頁〜216頁(1977年)に与えられている。この方法により0.01〜数ミクロンの平均孔径を持つ多層構造多孔性平膜が得られ、膜厚は20〜数mmまで可能である。
得られた多孔性平膜をパッキンで挟み、さらに図に示すような平板支持体で挟み、 固定する。平板支持体は両面をパッキンを介して平膜と挟まれてパッキンの厚みの流路が形成される。この流路に液体が流入出するように一次側および二次側の平板支持体に開口を設けており、このうち一次側の平板支持体の開口すなわち一次側流入出口の断面積がS2であり、液体の流通方向の長さがL、パッキンの厚みすなわち流路の深さがDであり、Dと平膜上の流路の幅すなわち液体の流通方向の断面積がS1である。流路の深さDは0.5〜4mmであり、望ましくは1〜2mmとし、一次側の平膜表面における適切な流速を確保するためのS2/S1を0.5以上とする。
以上の条件を備え、PD膜分離を達成することができるPD膜分離装置は、設定された条件を満足する一次側支持体1と、パッキン11・パッキン12、および一次側支持体1と平膜13とパッキン11・パッキン12を積層した状態で挟んで固定するハウジング8・10および固定器具9(たとえばネジ、バンドなどの器具、あるいは躯体)および原液と処理液の配管を接続するための接続器具7(へルール、タケノコ、カプラーなど)からなる。一次側支持体1と二次側支持体6はそれぞれ両端に4つの孔を持ち、そのうち二つずつが原液および処理液の出入り口となる。出入り口となる孔は、流路につながるトンネル孔を有した一次側スペーサー3および二次側スペーサー5を設けることで、平板支持体とパッキンを積層した場合に、平板支持体の液体流入出口部のシール性を確保している。この液体流入出口がそれぞれ原液の循環用一次側連結流路2および処理液の排出用二次側連結流路4となる。
以上の部材でPD膜分離モジュールを形成する場合は、パッキン11・12で多孔性平膜13を挟み、支持体に固定する。これを一つの構成要素として繰り返し積層することで処理量を増やすことができる。積層する際には、パッキンのみによるシールでもよいし、接着してもよい。望ましくは接着せずに、すべてパッキンで挟み、積層した支持体を両側からハウジング8・10および固定器具9で挟み、固定する。接着しない方が分解、洗浄、平膜の交換などが簡便に行うことができる。支持体はパッキンと密着性のよい平滑なものがよく、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ナイロン、フッ素系樹脂などの樹脂製か、あるいは金属製などが使用され、パッキンにはシール性のある弾性のあるゴムシートがよく、シリコーン、ウレタンなどを主成分とするゴムシートを使用する。
以上のような特徴を有する部材で、多孔性平膜を挟み、それぞれの流路に液体を供給、排出するためのホース、ポンプ15、流量調整弁18・19を図6のようにつなぎ、液体を流通させる。膜間差圧はポンプ15の吐出圧と、原液タンク16と膜分離モジュール14の位置によって生じる水頭圧および流量調整弁18・19によって調整する。以上の条件を備えた部材によって形成されるPD膜分離装置によってPD膜分離を行うことができる。
ミクロ相分離法によってアセテート膜を作製し、これを25℃の0.1N苛性ソーダ水溶液に48時間浸漬して再生セルロース多孔性膜(平均孔径500nm、膜厚160ミクロン)を得た。この多孔性平膜を、ポリプロピレン製支持体とシリコーン製パッキンで挟み、6層の積層型PD膜分離装置を作製した。
原液としてプラセンタ溶液(一般生菌数>1000万個/g)を使用し、該分離装置の透過性能試験を行った。分離装置内に1時間原液を循環させ、PD膜分離を行い、1時間後にろ液出口から排出されたろ液を採取した。この際の処理速度は約1L/時間/平米であった。処理後、ろ液中の菌数を測定した。測定の結果菌数は検出限界以下(<10個/g)であり、除菌率は6桁であった。
たんぱく質や生理活性物質や溶解物質など、何らかの有効性、性質を有する成分を、変性を生じることなく温和な条件下で分離、精製することが求められる産業(例えば化粧品産業、食品産業など)に本発明は利用できる。特に高い粒子除去性と長期安定性(目詰まりが起こりにくい特徴)を持つ低コストな膜分離装置として、従来の高価な膜分離技術の適用が不可能と考えられていた液体処理用として利用される。また、下水処理、排水処理などの水処理に利用することができる。また、コロイド系を取り扱う工業においてコロイド粒子を含めて特定の微粒子を精製、分離する方法として工業的プロセスに組み込むことが出来る。また、医療用、環境用、特に水処理用として、ウイルスや細菌、重金属類、COD原因物質、染料などの汚染物質、有害性微粒子の除去に用いられる。
1,一次側支持体
2,一次側連結流路
3,一次側スペーサー
4,二次側連結流路
5,二次側スペーサー
6,二次側支持体
7,接続器具
8,ハウジング
9,固定器具
10,ハウジング
11,パッキン
12,パッキン
13,平膜
14,PD膜分離モジュール
15,ポンプ
16,原液タンク
17,処理液タンク
18,一次側流量調整弁
19,二次側流量調整弁

Claims (4)

  1. 0.1〜2μmの平均孔径をもつ多孔性平膜を備えた液体用の膜分離装置を使用するにあたり、一次側および二次側に流量調整機構を設け、一次側の液体は膜表面で10cm/秒以上の流速で流し、且つ一次側の流路がL(流路長さ)/D(流路深さ)が100以上で、一次側と二次側の膜間差圧を0.01MPa以下に調整し、一次側の流速により流路内に発生する揚力と粒子の拡散力を併用し、該平膜の平均孔径の1/2以上の粒子径の粒子を分離することを特徴とする、化粧品および食品原料となる液体を加工するための膜分離装置。
  2. 請求項1の膜分離装置において、S2(流路入口断面積)/S1(流路断面積)が0.5以上で、表面粗さが10μm以下の再生セルロース製平膜を用いることを特徴とする膜分離モジュールを備えた膜分離装置。
  3. 請求項1の膜分離装置において、0.2〜0.5μmの平均孔径をもつ多孔性平膜を備え、動物性タンパク質を含む液体の膜除菌を目的とし、99.99%以上の除菌率を有する膜分離モジュールを備えた膜分離装置。
  4. 請求項1の膜分離装置において、複数枚の多孔性平膜とパッキン材および支持体で構成され、平膜、パッキン材、支持体を重ね合わせ、並行して複数枚の多孔性平膜で同時に膜処理を行うことを特徴とする膜分離モジュールを備えた膜分離装置。
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