JP2012148240A - 平膜を利用した膜分離装置および分離方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】温和な条件下で物質を分離精製する方法として、分子および粒子の拡散を利用した膜分離方法およびそれを可能にする取り扱いが簡便で組み立て再利用が可能な装置を提供する。
【解決手段】分子および粒子の拡散速度の差を主に利用した物質の分離方法において、多層構造を持つ多孔性平膜1と段ボール状の波型あるいは格子型流路スペーサー2を、流路方向が互いに交差状になるように交互に積層させた膜カートリッジを用いることで、一次側流路に流した流体の溶媒や溶質の一部が平膜を通して分離精製され、一次側流体とは対角方向を向く二次側流路へ排出される。膜カートリッジの側面全体が流路の入口出口となるため、分離装置が簡素化される。温和な低圧力条件下で行う分離方法であるため、膜と流路スペーサーの積層に要する面圧、あるいは接着力が小さくて済み、膜カートリッジの組立、分解、再利用が可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】分子および粒子の拡散速度の差を主に利用した物質の分離方法において、多層構造を持つ多孔性平膜1と段ボール状の波型あるいは格子型流路スペーサー2を、流路方向が互いに交差状になるように交互に積層させた膜カートリッジを用いることで、一次側流路に流した流体の溶媒や溶質の一部が平膜を通して分離精製され、一次側流体とは対角方向を向く二次側流路へ排出される。膜カートリッジの側面全体が流路の入口出口となるため、分離装置が簡素化される。温和な低圧力条件下で行う分離方法であるため、膜と流路スペーサーの積層に要する面圧、あるいは接着力が小さくて済み、膜カートリッジの組立、分解、再利用が可能となる。
【選択図】図1
Description
本発明は平膜を利用した温和な低圧力条件下で行うろ過分離法、または分子および粒子の拡散の速度差を主に利用した物質の孔拡散による分離法、および該分離法に膜間差圧によるろ過を併用した孔拡散ろ過による分離法および該分離法を実現した膜分離装置に関する。詳しくは多層構造を持つ多孔性平膜を用いたろ過分離方法、あるいは多孔性平膜中の孔を介した物質の拡散現象を利用した物質分離精製方法であり、特定の粒径を持つ分子あるいは粒子、たとえば有用な高分子、生理活性物質、ガス成分の分離精製および、有害性微粒子、感染性微生物等の高度な除去を実現する方法、およびその分離装置に関する。
平膜を利用した分離技術および分離装置としては主なものとして逆浸透膜を使用したろ過分離技術および限外ろ過膜を使用したろ過膜モジュールがある。逆浸透膜の利用される膜の平均孔径は約0.5nmであり、膜間差圧は30気圧以下でろ過する。そのためたとえば平板型のろ過膜モジュールとしては膜を硬質の支持体に設置し、ろ過液を集水する流路を持った次のような装置がある。特開平11-216341平板型膜モジュール、および特開平10-180052 膜分離装置。また、流路を支持体に組み合わせ、トンネル状に連結させたものとしては次のような装置がある。特開2007-268388 膜カートリッジおよび浸漬型膜分離装置、および特開平07-096148 分離膜装置。これらは流路を流れる溶液に圧力をかけてろ過する、いわゆる加圧式ろ過膜モジュールである。平膜を用いた加圧式ろ過膜モジュールに負荷される膜間差圧は2気圧以上である。
平膜を用い、かつ分子および粒子の拡散の速度差を主に利用した物質の膜分離技術に関しては次のような方法および装置がある。特開2008-260001大きさが15nm以下の微粒子の膜隔離膜除去および膜濃縮方法、および特開2005-349268多孔性平膜の拡散現象を利用した物質分離精製方法。
拡散とは分子および粒子のブラウン運動の結果として濃度勾配を駆動力とした物質移動を意味し、孔拡散とは多孔膜中の孔を介した拡散が主である拡散を意味する。従来の膜中での物質の拡散は膜を構成する素材の基質部を介した拡散で、一般に溶解拡散と定義されている拡散である。孔拡散と溶解拡散との区別は拡散の見掛けの活性化エネルギーを測定すればよい。前者の拡散の場合、該エネルギーは0〜4kcal/mol、後者は8〜50kcal/molの値を示す。また孔拡散ろ過とは、孔拡散による分離行程において対象とする分子(または粒子)の拡散速度以下のろ過速度となる。一般的にはわずかな(たとえば0.15気圧以下)の膜間差圧が生じるように溶液に静圧をかけ、大きな目詰まりが生じないように孔拡散とろ過を組み合わせた分離法である。孔拡散が実現するには孔の大きさが孔拡散対象とする分子の分子径の5倍以上であることが必要である。
従来から利用されている膜中の拡散は、膜の素材である高分子基質内に物質が溶解し、溶解後膜中を拡散するいわゆる溶解拡散機構での移動である。この機構での低分子の拡散係数は約10-10cm2/秒である。そのため産業的には利用しにくいほど遅い物質移動速度である。これに対して孔拡散では拡散係数は約10-6cm2/秒であり、膜間差圧が1気圧で、濃度差が10重量%であれば、拡散速度は濾過速度のほぼ1/10以上であり、産業的に利用可能な値となる。
定常孔拡散法とは膜中の孔を介した拡散において、膜表面と膜裏面との物質の濃度の差が時間的にほぼ一定に保たれる拡散を意味する。従来より透析等で利用される拡散ではこの濃度差の時間変化が起こり拡散速度は経時的に減少し定常状態は達成できない。定常状態を保つためには、原液および拡散液を平膜平面に沿って平行に、かつ一定速度で流す必要がある。この際、濾過による物質移動を起こりにくくするために、流す方向は両者同一方向の設定することが望ましい。被拡散液の膜表面におけるひずみ速度は1秒-1以上であれば膜表面における物質の堆積を防止できる。ひずみ速度の極端な増加は被拡散液中の生理活性物質の不活化をもたらすのでひずみ速度は被拡散液の組成に依存した最適値が存在する。定常孔拡散は孔拡散法の典型的な特性を知るために不可欠な条件ではあるが、実用的な孔拡散法では必ずしも定常的である必要はない。定常孔拡散を現実的に実現させるには(1)ろ過が起こらない工夫と、(2)原液と拡散液との両者が一定速度で流れ、かつ膜モジュールでの原液の入口側と出口側の濃度変化が10%以内であることが必要である。
段ボール状の流路スペーサーを積層させた膜カートリッジとしては、特許3546574熱交換機がある。ただし本技術は熱交換機に関するものであり、利用されている素材も伝熱板である。本発明中の「段ボール状の流路スペーサー」とは、波型あるいは格子型など、一定の間隔で流路を区分ける加工を施したスペーサーであり、その流路スペーサーの流路断面の形状は、波型の場合、振幅の波長λと波高αで、また格子型の場合、格子周期bと高さtで表現される。なお格子周期とは、波型の場合の波長λに対応し、格子断面における格子2つ分の幅を意味する。
平膜による分離は一般に膜間差圧を駆動力としたろ過によって実施される。濾過速度は膜間差圧と正の相関性があるため膜間差圧を大きくしてろ過分離が行われる。しかし膜間差圧を高めると膜表面に次第に分離対象物質が堆積し、目詰まりが起り、濾過速度の減少と回収率の低下が起きる。さらに分離すべき分子の大きさが小さくなると、平膜の平均孔径は小さくなり、それに伴ってろ過速度、濾過量が平均孔径の2乗あるいは4乗に反比例して小さくなる課題があった。
こうした加圧によるろ過分離の場合、大きな膜間差圧に耐えるために膜形状を中空糸膜にし、膜厚を内径の5%以上にしたり、膜素材を疎水性にするか、あるいは平膜の場合には支持体を用いることが多い。平膜の場合、高い内圧に耐えるため、膜の支持体は頑強でなければならず、その構造も複雑になるという課題があった。例えば特開2007-268388公報「膜カートリッジおよび浸漬型膜分離装置」では流路としてトンネル構造を支持体に設けているが、支持体を厚くすることで該トンネル構造を可能にしている。また、特開平07-096148公報「分離膜装置」では円筒型にすることである程度の小型化を達成しているが、構造が複雑で分解できない課題が残っている。特開平01-107804公報「フィルターカートリッジ」においても加圧に耐えるために複雑な形状となっている。膜モジュールや膜カートリッジの複雑な形状は膜モジュールの膜やハウジングの再利用を困難にする。再利用が不可能となれば、膜処理コストが上昇する。
支持体(特に支持表面積)のサイズを大きくした場合は、内圧による影響から支持体に加わる荷重も大きくなり、工業的規模ではほとんど用いられていなかった。また流量を確保するためにも加圧エネルギーが必要で、内圧を分散させ、流れを円滑に行うためには流路の深さを十分にとる必要があり、これらの結果、処理容量に比較して装置が大きくなってしまう課題があった。
大きな加圧力を前提とした膜分離装置の場合、平膜を挟んだ支持体からの液漏れも大きな課題であり、支持体の形状が複雑にならざるをえなかった。液漏れを防止するため、装置はそれぞれの部材が接着あるいは一体化されている、もしくは簡単に分解することのできない複雑な形状になっており、運搬、設置、支持体や液流入出口コネクタの洗浄、消耗部品や平膜の取替えが容易ではなく、サニタリー性の確保が困難であった。例えば、特開平11-216341公報「平板型膜モジュール」は加圧による液漏れを防ぐために樹脂で硬い支持体を固めている。また、特開平10-180052 公報「膜分離装置」では、流路用部品は組み立て式であるが、平膜と支持体はやはり接着されている。
そのため食品分野では平膜を利用した分離装置の実用化は不可能と考えられた。
大きな加圧力をかけるためには、流路断面関を大きくする必要があった。流路断面関を小さくすると入口付近での圧力損失が大きく、出口付近における圧力が小さくなるためである。しかし処理液の平膜への接触機会を増やす観点からは、できるだけ流路断面関は小さく、特に流路深さは浅くしなければならず、こうした構造的課題も抱えていた。
平膜の場合、処理面積の確保が困難である課題も有している。また、膜モジュールにおいては膜面積当たりの充填液量が大きくなりがちである。処理量を大きくするためには平膜を積層させて使用する以外にないが、従来、平膜状のモジュールでは装置の単位容積当たりに得られる膜面積が少なく、その構造が複雑な支持体を必要とするという問題があった。
本発明の最大の特徴は、分離用平膜に生じる目詰まりを解決するため、孔拡散法あるいは孔拡散ろ過法を採用する点にある。この孔拡散あるいは孔拡散ろ過は次のような特徴を持つ。すなわち(1)平膜の目詰まりが起こりにくい,(2)拡散速度の差に基づき孔径より小さな物質の分離精製が可能,(3)孔内での体積流がないことによる分離処理中での力学的孔破壊がない,(4)ろ過で中心となるふるい効果がほぼそのまま起こる、(5)湿潤状態で膨張する。以上のような特徴を保持しつつ、拡散のもつ欠点すなわち物質移動速度が遅い、及び拡散液中の物質濃度が低い欠点も解消できる。従来から利用されている拡散は、膜の素材である高分子基質内に物質が溶解し、溶解後膜中を拡散するいわゆる溶解拡散機構での移動である。この機構での拡散係数は約10-10 cm2/秒である。そのため産業的には利用しにくいほど遅い速度である。これに対して孔拡散では拡散係数は約10-6 cm2/秒であり、濃度勾配が0.1重量%/ミクロンの条件下での拡散速度はろ過速度のほぼ1/10であり、産業的に利用可能な値となる。
上記孔拡散法あるいは孔拡散ろ過法を採用することで、膜への大きな加圧が不要となり、減圧下、あるいは低圧下で分離を行うことができる。そのため、膜の支持体は必要以上に頑強である必要はなく、また場合によっては平膜平面自体を支える支持体は一切不要となり、たとえば膜の周辺を支えるだけの額縁状の支持枠だけでもよい。特に分離対象流体が気体の場合には拡散速度が大きいため、額縁状の支持枠が望ましい。また支持体あるいは支持枠の形状も必要以上に複雑にする必要はなく、1乃至2種類の単純な構造にすることができる。
また、低圧下の分離であれば、過大な接着による装置の組み立てや一体化も不要となり、簡単な流路スペーサーと平膜を積層し、小さな面圧力や少量の接着剤による簡便な組み立てで膜カートリッジが作製できる。孔拡散法や孔拡散ろ過法を採用することにより、支持体形状が任意に設計可能となる。すなわち支持体に関しては膜の負荷圧力による変形を防止する役割は低減し、流路確保の役割が大きくなっている。そのため分離装置の流路スペーサーは流路の確保のほかに、積層して流路スペーサーと平膜の組み合わせを並列結合にしたり、直列結合も可能となる。
孔拡散法あるいは孔拡散ろ過法は平均孔径と膜間差圧との関係で実現される。平均孔径より大きな流体中の成分の内、その存在量が最も大きい成分が明らかであれば、該成分のブラウン運動の速度が膜間差圧で生じつ流体の流れ速度よりも大きくなるように膜間差圧を定める。該成分が特定できない場合、膜の平均孔径が20nm〜80nmの際には膜間差圧を0.15気圧以下に設定する。平均孔径が80nmを超える場合、膜間差圧を0.10気圧以下に設定する。平均孔径が20nm未満であれば、膜間差圧を0.20気圧以下に設定する。
流路スペーサーの流路方向が互いに交差状になるように交互に積層することで、膜カートリッジの向かい合う2側面の全面が一次側流路入口出口となり、残りの対角面の2面が二次側の流路入口出口となる。その結果、膜カートリッジの側面全面に流体を流すことができ、該流れのすべてが膜平面に平行となり、しかも流れを層流化しやすくなる。そのため分離装置内の流路設計が簡素化される。
本発明の第2の特徴は流路スペーサーの断面形状が波型のほぼ正弦波である点である。波型であるために層流としての流路が確保され、波の背部で膜の支持体の役割を果たす。孔拡散ろ過法を採用した際に支持体として機能するためには、波型の波長λと波高αとの間に、α/λが0.1以上2以下であり、λが3mm以上30mm以下であることが必要である。また格子型の場合も同様に、流路が四角柱状であるため、層流としての流路が確保される。孔拡散ろ過法を採用した際に支持体として機能するためには、格子型の格子周期bと高さtとの間に、t/bが0.1以上2以下であり、bが3mm以上30mm以下であることが必要である。
本分離技術においては、流体を一定速度以上の流速(ひずみ速度において20秒-1以上)で流す場合においてもっとも分離効果を発揮できるが、その場合においても膜カートリッジの側面全面が流路入口であれば、流体をスムーズに導入することができる。膜としては多層構造を持つ平膜で、層の数が20以上が望ましい。層の数を大きくすれば粒子の除去性能が優れ、同時に膜表面の汚染に対して耐久性が増す。膜素材として親水性の大きい再生セルロースが耐汚染性で優れる。
本発明を採用することにより、有用な高分子、生理活性物質、有害性微粒子、感染性微生物等を分離、除去あるいは精製することが可能となる。熱的、力学的、化学的に不安定な物質の分離精製には膜分離が最適であると考えられていたが、工業的には膜分離には前述のような多くの障害がある。本発明では拡散の持つ最大の欠点であった分離速度の小さい点と処理容量を大きくする点を改善し、孔拡散を利用することにより、広い分子量範囲(粒子径範囲)での分離回収が可能となる。かつ、複雑になりがちであった分離装置も、孔拡散法あるいは孔拡散ろ過法に適した、かつ単純で操作が簡便な装置を発明することで、膜の再生が容易であり、目詰まりがなく繰り返し使用できるようになる。
本発明で使用する平膜1は、孔拡散あるいは孔拡散ろ過分離が可能な孔特性を持つ分離膜のことであって、平均孔径5nm以上1.5μm以下、望ましくは平均孔径10nm〜200nmで、空孔率40%以上90%以下、膜厚1μm以上1mm未満の親水性高分子である再生セルロース膜で、膜の再生の容易さと、目詰まりの起こりにくさが特徴である。平均孔径が2nm未満であれば溶解・拡散機構による寄与が大きく、拡散係数が小さくなりすぎる。空孔率の上限は90%以下であり、これを超えると膜の力学的性質の低下が著しく、ピンホールなど欠陥の発生確率も高くなる。膜厚は望ましくは30μm以上で、膜厚を厚くすることで膜の強度、取り扱いやすさが増し、ピンホールの発生が減少する点から微生物除去にも効果的である。
平均孔径は「粘度・膜厚・濾過速度/膜間差圧・空孔率」の平方根で与えられる。ここで濾過速度は一平方メートル当りの純水の濾過速度でml/minの単位で測定され、膜厚はミクロン単位、粘度はセンチポイズ、膜間差圧はmmHg単位で、空孔率は無次元単位である。この際の平均孔径はnm単位となる。空孔率は「1−膜の密度/素材高分子の密度」で与えられる。膜の密度は「膜の重量/膜の面積*膜の厚さ」で算出される。素材高分子の密度は空孔率0%の時の膜の密度で、これはすでに文献で与えられている。多層構造膜とは膜の断面方向から電子顕微鏡で観察すると10〜1000nmの厚さの層が認められ、膜の表面からの観察では網目状または粒子間の隙間が孔として、また粒子相互は融着した様子が観察される膜である
多層構造を持つ多孔性平膜とは、フィールドエミッション型走査型電子顕微鏡によって膜中に孔の存在が認められる膜で平均孔径2nm以上、空孔率が40%以上で、厚さ約0.2μmの層が10層以上に積層された膜を意味する。
原液とは分離対象分子あるいは粒子を含む溶液であり、拡散液とは、該分離対象分子あるいは粒子を拡散させる溶液のことであり、孔拡散ろ過の場合にはろ過が拡散液の役割を果たす場合もある。
本発明で使用する平膜1は親水性素材で製膜法として湿式または乾式のミクロ相分離法で作製される。例えば銅安法再生セルロース平膜は親水性素材として最適であるが膜厚を100μm以上にまた平均孔径を100nm以上にするのが難しい。該膜の製法は特公昭62−044019号及び特公昭62−044017号と特公昭62−044018号に与えられている。再生セルロース製の平膜の製法として多孔性アセテート膜を作成しこれを0.1規定の苛性ソーダでケン化処理することによって作製できる。アセテート膜の製法は上出健二,真鍋征一,松井敏彦,坂本富男,梶田修司,高分子論文集,34巻3号205頁〜216頁(1977年)に与えられている。この方法により0.01〜数ミクロンの平均孔径を持つ多孔性膜が得られ、膜厚は20μm〜数mmまで可能である。
得られた多孔性平膜1を図1に示すような流路スペーサー2で挟み、固定する。平膜を固定する際に、厚さ0.5mm〜1mm程度の薄いプラスチック板を用いてあらかじめ挟んでおいてもよい。その後、膜を流路スペーサーで挟む。1対の膜と流路スペーサーを重ねた膜セット4を作製しておいて、該膜セット4を積層してもよい。該平膜は複数の多層構造膜を重ね合わせた膜がピンホール発生を防止するためには望ましい。
流路スペーサー2は、平膜1を境に、段ボール状の一次側流路用スペーサーと二次側流路用スペーサーとが、流路方向が互いに交差状になるように交互に積層する。段ボール状の流路スペーサーは、流路スペーサー全体が段ボール状でも良いが、流路の入り口だけが段ボール状になっている額縁状のものでもよい。また、図2に示す通り、段ボール状とは、スペーサーの形状を限定するものではなく、波板3がスペーサーとなっているものでも良く、また、格子型になっているものでもよい。
以上のように平膜1と流路スペーサー2を積層することで膜カートリッジ5が作製でき、この膜カートリッジ5の側面全体がそれぞれ一次側入口6、一次側出口7、二次側入口8、二次側出口9となる。この膜カートリッジ5に流体の導入口10と排出口11を連結したものが分離装置12となる。
分離装置12には、流体を循環させるためのポンプ13と循環流路14があり、一定のひずみ速度以上で流体が膜カートリッジ5と分離装置内を循環する。流路スペーサーの流路幅と、分離装置内の流路とポンプは、一定のひずみ速度で流体が流すことができるように、流体の粘度、流路の圧力損失から算出される。
ポンプ13によって循環流路14を流れる流体はタンク15に戻り、タンク15内の流体は一次側流体流れ17の方向に膜カートリッジ5内を一定のひずみ速度で流れる。その結果、拡散液あるいはろ過液は二次側流体流れ18の方向に流れる。
流路スペーサーは、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタラートやナイロン等の高分子複合体、さらにフッ素系樹脂やポリ塩化ビニルなどの側鎖として極性基を持つ樹脂製か、あるいは金属製の織物、編物あるいは不織布などが使用される。
流路スペーサー2は望ましくは段ボールとは異なり接着せずに積層し、面に対して垂直方向に面圧をかけて膜カートリッジ5とする。あるいは少量の接着剤、たとえばシリコン樹脂や溶剤などを用いて積層し、膜カートリッジ5とする。
膜分離処理を行った後は、装置をオートクレーブ処理などで滅菌処理したり、装置内に蒸気を通して滅菌したり、あるいは乾燥空気を通し、膜を乾燥させることができる。
積層した流路スペーサー2は分解して、洗浄、膜交換などを行うことができる。特に膜セット4は分解後、平膜を挟んだまま個別に乾燥させることができる。
以上の手順で組み立てた分離装置に、原液と拡散液との静圧の差が該平膜の平均孔径によって指定される圧力以下となるように流体(液体)を供給する。該静圧の差△Pは数式(1)で与えられる。「 △P≦kdDη/rf 2 」(1)ここでdは膜厚、Dは微粒子の拡散係数、ηは分離対象とする液体の粘度rfは平均孔径、kは膜の孔構造を反映した定数で非多層構造膜では4000、多層構造膜では2×105である。この式を満足する△Pでの孔拡散ろ過法では目詰まりがほぼ完全に防止できる。
ミクロ相分離法によって平均孔径10nm、空孔率62%、膜厚160ミクロンのアセテート膜(酢化度54.2%)を作製し、これを30℃の0.1N苛性ソーダ水溶液に48時間浸漬して再生セルロース多孔性平膜1を得た(平均孔径23nm,空孔率83%,膜厚58ミクロン)。
この多孔性平膜1を、200mm角に切り取り、ポリカーボネート製流路スペーサーで挟んだ後、30層に積層して膜カートリッジを作製した。流路スペーサーは波型(波長30mm、高さ9mm)で、幅10mmの額縁状(外寸210mm角)のものを使用した。
処理用原液として5重量%アルブミンを含む水溶液を使用し、拡散液としてRO水を使用し、該分離装置の透過性能試験を行った。膜間差圧として0.1気圧で拡散濃度は原液の10%とした。分離装置内に1時間原液および拡散液を循環させ、1時間後に拡散液出口から排出された拡散液のアルブミン濃度を測定した。アルブミン濃度分析は、吸光度測定により行い、得られた拡散液中のアルブミン濃度は処理開始時の1割から9割以上に上昇し、回収率としては100%に達した。
また原液に水酸化鉄コロイド溶液(コロイド粒径20nm)を使用し、アルブミン水溶液と同様の条件で、拡散液としてRO水を使用して、微粒子除去性能試験を行った。分離装置内に1時間原液および拡散液を循環させ、1時間後に拡散液出口9から排出された拡散液の水酸化鉄コロイド濃度を測定した。水酸化鉄コロイド濃度分析は、KSCN法により鉄(III)イオンの濃度を測定することによって行った。測定の結果、除去率は対数除去率で3.5であった。膜中に残存するわずかな水酸化鉄コロイド粒子は還元剤により系外へ除去した。
一連の試験の結果、液漏れは一切発生しなかった。試験後、オートクレーブによる滅菌処理の後、エタノールで水を置換し、乾燥空気を装置内に吹き込み、装置を乾燥させて、試験を終了した。
ミクロ相分離法によって平均孔径10nm、空孔率62%、膜厚160ミクロンのアセテート膜(酢化度54.2%)を作製し、これを30℃の0.1N苛性ソーダ水溶液に48時間浸漬して再生セルロース多孔性膜1を得た(平均孔径23nm,空孔率83%,膜厚58ミクロン)。
この多孔性平膜1を、200mm角に切り取り、ポリカーボネート製流路スペーサーで挟んだ後、30層に積層して膜カートリッジを作製した。流路スペーサーは格子型(格子周期6mm、高さ3mm)で、幅10mmの額縁状(外寸210mm角)のものを使用した。
原液として5重量%のアルブミンを含む水溶液を使用し、拡散液としてRO水を使用し、実施例1と同様の該分離装置の透過性能試験を行った。分離装置内に1時間原液および拡散液を循環させ、1時間後に拡散液出口から排出された拡散液のアルブミン濃度を測定した。アルブミン濃度分析は、吸光度測定により行い、得られた拡散液中のアルブミン濃度は処理開始時の1割から9割以上に上昇し、回収率としては100%に達した。
また原液に水酸化鉄コロイド溶液(コロイド粒径20nm)を使用し、アルブミン水溶液と同様の条件で、拡散液としてRO水を使用して、微粒子除去性能試験を行った。分離装置内に1時間原液および拡散液を循環させ、1時間後に拡散液出口9から排出された拡散液の水酸化鉄コロイド濃度を測定した。水酸化鉄コロイド濃度分析は、KSCN法により鉄(III)イオンの濃度を測定することによって行った。測定の結果、除去率は対数除去率で3.5であった。膜中に残存するわずかな水酸化鉄コロイド粒子は還元剤により系外へ除去した。
一連の試験の結果、液漏れは一切発生しなかった。試験後、オートクレーブによる滅菌処理の後、エタノールで水を置換し、乾燥空気を装置内に吹き込み、装置を乾燥させて、試験を終了した。
温和な条件下で分離、精製が求められる産業(例、製薬産業、食品産業)、特にタンパク質などの生理活性を持つ物質の分離、精製に本発明は利用できる。また、コロイド系を取り扱う工業においてコロイド粒子を含めて特定の微粒子を精製、分離する方法として工業的プロセスに組み込むことが出来る。また医療用、環境用として、ウイルスや細菌、重金属類などの有害物質、有害性微粒子の除去にも用いられる。
1,多孔性平膜
2,流路スペーサー
3,波板あるいは格子型板
4,膜セット
5,膜カートリッジ
6,一次側入口
7,一次側出口
8,二次側入口
9, 二次側出口
10,流体導入口
11,流体排出口
12,膜分離装置
13,ポンプ
14,循環流路
15,タンク
16,ヘッド差
17,一次側流体流れ
18,二次側流体流れ
Claims (4)
- 平膜を境に、段ボールにおける波型の断面形状か、あるいは格子型の断面形状を持つ一次側流路用スペーサーと、該スペーサーと類似の波型あるいは格子型の断面形状を持つ二次側流路用スペーサーとが、流路方向が互いに交差状になるように交互に積層され、波型の波長λと波高αとの間にはα/λが0.1以上2以下であり、λが3mm以上30mm以下の関係があり、あるいは格子型の格子周期bと高さtとの間にはt/bが0.1以上2以下であり、bが3mm以上30mm以下の関係があることを特徴とする孔拡散型あるいは孔拡散ろ過型の膜カートリッジを有する平膜分離装置。
- 請求項1において、流路の入り口のみが段ボール状の額縁状をした流路用スペーサーを用いた膜カートリッジを有する平膜分離装置。
- 請求項2の平膜分離装置を用いた分離法において、各液が多孔性平膜を挟んで膜平面に対し平行に流れ、かつ一次側と二次側の静圧の差が該平膜の平均孔径によって指定される圧力以下であり、かつ平行な流れのひずみ速度において20秒-1以上であることを特徴とする分離方法
- 請求項1あるいは2の平膜分離装置を用いた分離法において、多層構造を持つ再生セルロース製の多孔質平膜の平均孔径が5nm以上1500nm以下であり、分子および粒子の孔中での拡散速度の差を主に利用した孔拡散法あるいは孔拡散ろ過法で物質を分離する分離方法。
Priority Applications (1)
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