以下に、本発明の偏光板のセットを、図1を参照しながら説明する。本発明の偏光板のセットは、第1の偏光板P1と、第2の偏光板P2を有する。本発明の偏光板のセットは、液晶セルの両面に適用されて、液晶パネルを形成する。例えば、図1では、液晶セルCの一方の面に第1の偏光板P1が配置され、他方の面に第2の偏光板P2が配置される。図1の液晶パネルでは、第1の偏光板P1は粘着剤層A1を介して、第2の偏光板P2は粘着剤層A2を介して、液晶セルCに配置されている。
第1の偏光板P1および第2の偏光板P2は、いずれも偏光子の両面に、偏光子の両面に、ラジカル重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤に活性エネルギー線を照射することにより形成された接着剤層を介して、低透湿度の透明保護フィルムが貼り合わされている。詳しくは、図1の第1の偏光板P1では、偏光子p1の両面に、前記接着剤層a11、a12を介して、低透湿度の透明保護フィルムt11、t12が貼り合わされている。第1の偏光板P1は、透明保護フィルムt11の側が、粘着剤層A1を介して、液晶セルCに貼り合わされている。第2の偏光板P2では、偏光子p2の両面に、前記接着剤層a21、a22を介して、低透湿度の透明保護フィルムt21、t22が貼り合わされている。第2の偏光板P2は、透明保護フィルムt21の側が、粘着剤層A2を介して、液晶セルCに貼り合わされている。
<偏光子>
第1および第2の偏光板に用いる偏光子は、特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性材料を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フィルムなどが挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これら偏光子の厚みは特に制限されないが、一般的に80μm程度以下である。偏光子の厚みは、通常、15〜35μmであるのが好ましい。第1および第2の偏光板に用いる偏光子は同じであってもよく、異なっていてもよいが、パネルの反りの観点から同じ偏光子で、同じ厚みのものを用いるのが好ましい。
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸してもよし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
本発明で偏光子は、水分率が好ましくは10〜25重量%であるのが好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。水分率を前記範囲に制御することは、光学特性や外観欠点が少ない観点から好ましい。偏光子の水分率が低すぎると、透明保護フィルムとのラミネートの際にダメージを受けやすく、気泡などの外観欠点が発生するおそれがある。また、偏光子の水分率が高すぎると、光学特性が悪くなる傾向がある。
前記偏光子の水分率は、任意の適切な方法で調整すればよい。例えば偏光子の製造工程における乾燥工程の条件を調整することにより制御する方法があげられる。
偏光子の水分率は、以下の方法により測定される。すなわち、偏光子を、100×100mmの大きさに切り出して、このサンプルの初期重量を測定した。続いて、このサンプルを120℃で2時間乾燥し、乾燥重量を測定して、下記式により水分率を測定した。水分率(重量%)={(初期重量−乾燥重量)/初期重量}×100。重量の測定はそれぞれ3回ずつ行い、その平均値を用いた。
また偏光子としては厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることができる。薄型化の観点から言えば当該厚みは1〜7μmであるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため耐久性に優れ、さらには偏光板としての厚みも薄型化が図れる点が好ましい。
薄型の偏光子としては、代表的には、特開昭51−069644号公報や特開2000−338329号公報や、WO2010/100917号パンフレット、PCT/JP2010/001460の明細書、または特願2010−269002号明細書や特願2010−263692号明細書に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
<透明保護フィルム>
第1および第2の偏光板に用いる透明保護フィルムは、透湿度が150g/m2/24h以下の低透湿度のものを用いる。前記透湿度は、140g/m2/24h以下が好ましく、さらには120g/m2/24h以下が好ましい。透湿度は、実施例に記載の方法により求められる。
透明保護フィルムの厚みは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性などの作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度であり、1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。さらには20〜200μmが好ましく、30〜80μmが好ましい。
前記低透湿度を満足する透明保護フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂;アリレート系樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有する環状オレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、またはこれらの混合体を用いることができる。前記樹脂のなかでも、ポリカーボネート系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、特に、(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
環状ポリオレフィン樹脂の具体例としては、好ましくはノルボルネン系樹脂である。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂があげられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとその共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、ならびに、それらの水素化物などがあげられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーがあげられる。
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR株式会社製の商品名「アートン」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学株式会社製の商品名「APEL」があげられる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、Tg(ガラス転移温度)が好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、特に好ましくは130℃以上である。Tgが115℃以上であることにより、偏光板の耐久性に優れたものとなりうる。上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は特に限定きれないが、成形性等の観点から、好ましくは170℃以下である。(メタ)アクリル系樹脂からは、面内位相差(Re)、厚み方向位相差(Rth)がほぼゼロのフィルムを得ることができる。
(メタ)アクリル系樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)があげられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルがあげられる。より好ましくはメタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂があげられる。
(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、例えば、三菱レイヨン株式会社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂があげられる。
(メタ)アクリル系樹脂として、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることもできる。高い耐熱性、高い透明性、二軸延伸することにより高い機械的強度を有するからである。
ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2002−120326号公報、特開2002−254544号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂があげられる。
なお、偏光子の両面に設けられる、前記低透湿度の透明保護フィルムは、その表裏で同じポリマー材料からなる透明保護フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる透明保護フィルムを用いてもよい。
図1に示すように、本発明の偏光板のセットでは、前記第1および第2の偏光板に用いられる透明保護フィルムは全部で4つあるが、これら全てが同じ形成材料であって、かつ透明保護フィルムの厚みの差が10μm以下であることが好ましい。前記第1および第2の偏光板に用いられる透明保護フィルムの厚みの差は、前記4つのなかで、最も厚い透明保護フィルムと最も薄い透明保護フィルムの厚みの差であり、当該厚みの差は8μm以下が好ましく、さらには5μm以下が好ましい。前記第1および第2の偏光板に用いられる透明保護フィルムを前記のように制御することにより、第1および第2の偏光板を液晶セルに適用した液晶パネルにおける耐久性による収縮バランスが良くなり、液晶パネルの反り、液晶パネルのムラを抑えるうえで好ましい。
前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることができる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
位相差板としては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
なお、前記位相差を有するフィルムは、位相差を有しない透明保護フィルムに、別途、貼り合せて上記機能を付与することができる。
上記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
<活性エネルギー線硬化型接着剤>
本発明の第1および第2の偏光板において、偏光子と低透湿度の透明保護フィルムの接着には、ラジカル重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型接着剤が用いられる。活性エネルギー線硬化型接着剤に活性エネルギー線を照射することにより形成された接着剤層(硬化物層)は水系接着剤層に比べて、耐久性が高い。本発明の第1および第2の偏光板における、接着剤層は、Tgが60℃以上であることが好ましい。本発明の第1および第2の偏光板において、接着剤層が60℃以上の高Tgになる、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いるとともに、接着剤層の厚みを上記範囲に制御した場合、高湿下および高温下の過酷な環境下における耐久性を満足させることができる。
上記のとおり、活性エネルギー線硬化型接着剤に用いるラジカル重合性化合物は、これにより形成される接着剤層のTgが60℃以上になるように選択されることが好ましく、さらには70℃以上であることが好ましく、さらには75℃以上、さらには100℃以上、さらには120℃以上であることが好ましい。一方、接着剤層のTgが高くなりすぎると偏光板の屈曲性が低下することから、接着剤層のTgは300℃以下、さらには240℃以下、さらには180℃以下にすることが好ましい。
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物があげられる。これらラジカル重合性化合物は、単官能または二官能以上のいずれも用いることができる。これらラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好適である。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、N−置換アミド系モノマーが好適に用いられる。これらモノマーは、接着性の点で好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味する。本発明では(メタ)は前記同様の意味である。
N−置換アミド系モノマーは、一般式(1):CH2=C(R1)−CONR2(R3)(R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は水素原子または水酸基、メルカプト基、アミノ基もしくは第4級アンモニウム基を有してもよい炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、R3は水素原子または炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基を示す。但し、R2、R3が同時に水素原子の場合を除く。または、R2、R3は、結合して、酸素原子を含んでもよい5員環または6員環を形成したものである。)で表わされる。前記一般式(1)中のR2またはR3における炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等があげられ、水酸基を有するアルキル基としてはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等があげられ、アミノ基を有するアルキル基としてはアミノメチル基、アミノエチル基等があげられる。また、R2、R3が、結合して、酸素原子を含んでもよい5員環または6員環を形成する場合には、窒素を有する複素環を有する。当該複素環としては、モルホリン環、ピペリジン環、ピロリジン環、ピペラジン環等があげられる。
前記N−置換アミド系モノマーの具体例としては、例えば、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール−N−プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミドなどがあげられる。また、複素環を有する複素環含有モノマーとしては、例えば、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン等があげられる。これらN−置換アミド系モノマーは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記N−置換アミド系モノマーとしては、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、およびN−アクリロイルモルホリンが好適である。N−置換アミド系モノマーは、低水分率の偏光子や、透湿度の低い材料を用いた透明保護フィルムに対しても、良好な接着性を示すが、前記例示のモノマーは、特に、良好な接着性を示す。なかでも、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドが好適である。
前記N−置換アミド系モノマーは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができるが、2種以上を組み合わせる場合には、耐久性、接着性の点から、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドおよびN−アクリロイルモルホリンの組み合わせが好適である。また、当該組み合わせの場合、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドおよびN−アクリロイルモルホリンの合計量に対するN−ヒドロキシエチルアクリルアミドの割合は、40重量%以上であることが、良好な接着性を得るうえで好ましい。前記割合は、40〜90重量%がより好ましく、さらには、60〜90重量%であるのが好ましい。
また、上記ラジカル重合性化合物としては、上記の他に、(メタ)アクリロイル基を有する化合物として、例えば、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートや、各種の(メタ)アクリレート系モノマー等があげられる。これらのなかでも、エポキシ(メタ)アクリレート、特に、芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートが好適に用いられる。これらラジカル重合性化合物は、単独で、Tg60℃以上の接着剤層を形成できない場合には、前記N−置換アミド系モノマーと併用して用いられる。
芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートは、芳香環およびヒドロキシ基を有する、各種の単官能の(メタ)アクリレートを用いることができる。ヒドロキシ基は、芳香環の置換基として存在してもよいが、本発明では、芳香環と(メタ)アクリレートとを結合する有機基(炭化水素基、特に、アルキレン基に結合したもの)として存在するものが好ましい。
前記芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、芳香環を有する単官能のエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物があげられる。芳香環を有する単官能のエポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、t‐ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルポリエチレングリコールグリシジルエーテル等があげられる。芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートの、具体例としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルポリエチレングリコールプロピル(メタ)アクリレート等があげられる。
また、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、カルボキシル基モノマーがあげられる。カルボキシル基モノマーも接着性の点で好ましい。カルボキシル基モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、などがあげられる。これらのなかでもアクリル酸が好ましい。
上記の他、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素数は1〜12のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの燐酸基含有モノマーなどがあげられる。また、(メタ)アクリルアミド;マレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル、3−(3−ピリニジル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマーなどの窒素含有モノマーがあげられる。
上記の通り、活性エネルギー線硬化型接着剤における、ラジカル重合性化合物としては、N−置換アミド系モノマーを単独で用いるか、または、N−置換アミド系モノマーと芳香環およびヒドロキシ基を有する単官能の(メタ)アクリレートを併用することが好ましい。これらを併用する場合には、N−置換アミド系モノマーの割合を、40重量%以上、さらには50重量%以上、さらには60重量%以上、さらには70重量%以上、さらには80重量%以上とするのが好ましい。
上記ラジカル重合性化合物としては、二官能以上のラジカル重合性化合物を用いることができる。二官能以上のラジカル重合性化合物としては、二官能以上の(メタ)アクリレート、特に二官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。二官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートは、多官能のエポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により得られる。多官能のエポキシ化合物は、各種のものを例示できる。多官能のエポキシ化合物としては、例えば、芳香族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂があげられる。
芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂のようなノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ樹脂などがあげられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、前記芳香族エポキシ樹脂の水添物、シクロヘキサン系、シクロヘキシルメチルエステル系、シクロヘキシルメチルエーテル系、スピロ系、トリシクロデカン系等のエポキシ樹脂があげられる。
脂肪族エポキシ樹脂としては、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルがあげられる。これらの例としては、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコールやプロピレングリコール、グリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどがあげられる。
前記エポキシ樹脂の、エポキシ当量は、通常30〜3000g/当量、好ましくは50〜1500g/当量の範囲である。
前記二官能以上のエポキシ(メタ)アクリレートは、脂肪族エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレートが好ましい、特に、二官能の脂肪族エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。
本発明の第1および第2の偏光板に用いる活性エネルギー線硬化型接着剤は、ラジカル重合性化合物として、組成物全量を100重量%としたとき、SP値が29.0(MJ/m3)1/2以上32.0以下(MJ/m3)1/2であるラジカル重合性化合物(A)を20〜60重量%、SP値が18.0(MJ/m3)1/2以上21.0(MJ/m3)1/2未満であるラジカル重合性化合物(B)を10〜30重量%、およびSP値が21.0(MJ/m3)1/2以上23.0(MJ/m3)1/2以下であるラジカル重合性化合物(C)を20〜60重量%含有するものが好ましい。なお、本発明において、「組成物全量」とは、ラジカル重合性化合物に加えて、各種開始剤や添加剤を含む全量を意味するものとする。
前記活性エネルギー線硬化型接着剤中、ラジカル重合性化合物(A)のSP値は29.0(MJ/m3)1/2以上32.0以下(MJ/m3)1/2であり、組成物全量を100重量%としたとき、その組成比率は20〜60重量%であることが好ましい。かかるラジカル重合性化合物(A)はSP値が高く、例えばPVA系偏光子(例えばSP値32.8)と、接着剤層との接着性向上に大きく寄与する。その一方で、ラジカル重合性化合物(A)はSP値が水(SP値47.9)と相対的に近いため、組成物中のラジカル重合性化合物(A)の組成比率が多すぎると、接着剤層の耐水性の悪化が懸念される。したがって、偏光子との接着性と耐水性とを考慮した場合、ラジカル重合性化合物(A)の組成比率を、20〜60重量%とすることが好ましい。接着性を考慮した場合、ラジカル重合性化合物(A)の組成比率は25重量%以上が好ましく、30重量%以上であることがより好ましい。また、耐水性を考慮した場合、ラジカル重合性化合物(A)の組成比率は55重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましい。
ラジカル重合性化合物(B)のSP値は18.0(MJ/m3)1/2以上21.0(MJ/m3)1/2未満であり、その組成比率は10〜30重量%であることが好ましい。かかるラジカル重合性化合物(B)はSP値が低く、水(SP値47.9)とSP値が大きく離れており、接着剤層の耐水性向上に大きく寄与する。また、ラジカル重合性化合物(B)のSP値は、例えば透明保護フィルムとしての低透湿度の環状ポリオレフィン樹脂(例えば、日本ゼオン株式会社製の商品名「ゼオノア」)のSP値(例えばSP値18.6)と近いため、かかる低透湿度の透明保護フィルムとの接着性向上に寄与する。接着剤層の耐水性をさらに向上するためには、ラジカル重合性化合物(B)のSP値を20.0(MJ/m3)1/2未満とすることが好ましい。その一方で、ラジカル重合性化合物(B)はラジカル重合性化合物(A)とのSP値が大きく離れているため、その組成比率が多すぎると、ラジカル重合性化合物同士の相溶性のバランスが崩れ、相分離の進行に伴い、接着剤層の透明性の悪化が懸念される。したがって、耐水性と接着剤層の透明性とを考慮した場合、ラジカル重合性化合物(B)の組成比率を、10〜30重量%とすることが肝要である。耐水性を考慮した場合、ラジカル重合性化合物(B)の組成比率は10重量%以上が好ましく、15重量%以上であることがより好ましい。また、接着剤層の透明性を考慮した場合、ラジカル重合性化合物(B)の組成比率は25重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、そのSP値は19.0(MJ/m3)1/2以上であることが好ましい。
ラジカル重合性化合物(C)のSP値は21.0(MJ/m3)1/2以上23.0(MJ/m3)1/2未満であり、その組成比率は20〜60重量%であることが好ましい。上述のとおり、ラジカル重合性化合物(A)とラジカル重合性化合物(B)とは、SP値が大きく離れており、これら同士は相溶性が悪い。しかしながら、ラジカル重合性化合物(C)のSP値は、ラジカル重合性化合物(A)のSP値とラジカル重合性化合物(B)のSP値との間に位置するため、ラジカル重合性化合物(A)とラジカル重合性化合物(B)とに加えて、ラジカル重合性化合物(C)を併用することにより、組成物全体としての相溶性がバランス良く向上する。さらに、ラジカル重合性化合物(C)のSP値は、例えば透明保護フィルムとしての低透湿度のアクリルフィルムのSP値(例えば22.2)と近いため、これらの低透湿度の透明保護フィルムとの接着性向上に寄与する。したがって、耐水性および接着性をバランス良く向上するためには、ラジカル重合性化合物(C)の組成比率を、20〜60重量%とすることが好ましい。組成物全体としての相溶性と低透湿度の透明保護フィルムとの接着性とを考慮した場合、ラジカル重合性化合物(C)の組成比率は25重量%以上が好ましく、29重量%以上であることがより好ましい。また、耐水性を考慮した場合、ラジカル重合性化合物(C)の組成比率は55重量%以下であることが好ましく、50重量%以下であることがより好ましい。
また、ラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)それぞれのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)がいずれも60℃以上であることが好ましく、耐久性が特に優れたものとなり、ヒートショッククラックの発生を防止することができる。ここで、「ヒートショッククラック」とは、例えば偏光子が収縮する際、延伸方向に裂ける現象を意味し、これを防止するためには、ヒートショック温度範囲(−40℃〜60℃)で偏光子の膨張・収縮を抑制することが重要である。上記のとおりラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)それぞれのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)がいずれも60℃以上である場合には、接着剤層を形成した際、そのTgも高くなる。これにより、ヒートショック温度範囲での接着剤層の急激な弾性率変化を抑制し、偏光子に作用する膨張・収縮力を低減することができるため、ヒートショッククラックの発生を防止することができる。
ここで、本発明におけるSP値(溶解性パラメータ)の算出法について、以下に説明する。
(溶解度パラメーター(SP値)の算出法)
本発明において、ラジカル重合性化合物や偏光子、各種透明保護フィルムなどの溶解度パラメーター(SP値)は、Fedorsの算出法[「ポリマー・エンジニアリング・アンド・サイエンス(Polymer Eng.& Sci.)」,第14巻,第2号(1974),第148〜154ページ参照]すなわち、
(ただしΔeiは原子または基に帰属する25℃における蒸発エネルギー、Δviは25℃におけるモル体積である)にて計算して求めることができる。
上記の数式中のΔeiおよびΔviに、主な分子中のi個の原子および基に与えられた一定の数値を示す。また、原子または基に対して与えられたΔeおよびΔvの数値の代表例を、以下の表1に示す。
ラジカル重合性化合物(A)は、(メタ)アクリレート基などのラジカル重合性基を有し、かつSP値が29.0(MJ/m3)1/2以上32.0以下(MJ/m3)1/2である化合物であれば限定なく使用することができる。ラジカル重合性化合物(A)の具体例としては、例えば、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(SP値29.6)、N−メチロールアクリルアミド(SP値31.5)などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物(B)は、(メタ)アクリレート基などのラジカル重合性基を有し、かつSP値が18.0(MJ/m3)1/2以上21.0(MJ/m3)1/2未満である化合物であれば限定なく使用することができる。ラジカル重合性化合物(B)の具体例としては、例えば、トリプロピレングリコールジアクリレート(SP値19.0)、1,9−ノナンジオールジアクリレート(SP値19.2)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(SP値20.3)、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(SP値19.1)、ジオキサングリコールジアクリレート(SP値19.4)、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート(SP値20.9)などが挙げられる。なお、ラジカル重合性化合物(B)としては市販品も好適に使用可能であり、例えばアロニックスM−220(東亞合成社製、SP値19.0)、ライトアクリレート1,9ND−A(共栄社化学社製、SP値19.2)、ライトアクリレートDGE−4A(共栄社化学社製、SP値20.9)、ライトアクリレートDCP−A(共栄社化学社製、SP値20.3)、SR−531(Sartomer社製、SP値19.1)、CD−536(Sartomer社製、SP値19.4)などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物(C)は、(メタ)アクリレート基などのラジカル重合性基を有し、かつSP値が21.0(MJ/m3)1/2以上23.0(MJ/m3)1/2以下である化合物であれば限定なく使用することができる。ラジカル重合性化合物(C)の具体例としては、例えば、アクリロイルモルホリン(SP値22.9)、N−メトキシメチルアクリルアミド(SP値22.9)、N−エトキシメチルアクリルアミド(SP値22.3)などが挙げられる。なお、ラジカル重合性化合物(C)としては市販品も好適に使用可能であり、例えばACMO(興人社製、SP値22.9)、ワスマー2MA(笠野興産社製、SP値22.9)、ワスマーEMA(笠野興産社製、SP値22.3)、ワスマー3MA(笠野興産社製、SP値22.4)などが挙げられる。
ラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)それぞれのホモポリマーのガラス転移温度(Tg)がいずれも60℃以上であると、接着剤層のTgも高くなり、耐久性が特に優れたものとなる。その結果、例えば偏光子と低透湿度の透明保護フィルムとの接着剤層としたとき、偏光子のヒートショッククラックの発生を防止することができる。ここで、ラジカル重合性化合物のホモポリマーのTgとは、ラジカル重合性化合物を単独で硬化(重合)させたときのTgを意味する。Tgの測定方法については後述する。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型接着剤は、ラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)を合計で85〜100重量部含有し、さらにSP値が23.0(MJ/m3)1/2を超えて29.0(MJ/m3)1/2未満であるラジカル重合性化合物(D)を0〜15重量部含有しても良い。ラジカル重合性化合物(D)の具体例としては、例えば、4−ヒドロキシブチルアクリレート(SP値23.8)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(SP値25.5)、N−ビニルカプロラクタム(商品名V−CAP、ISP社製、SP値23.4)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(SP値24.5)などが挙げられる。
かかる構成によれば、接着剤組成物中のラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)の割合が十分に確保できるため、接着剤層の接着性を向上し、かつ耐久性および耐水性をより向上することができる。接着性、耐久性および耐水性をさらにバランス良く向上するためには、ラジカル重合性化合物(A)、(B)および(C)を合計で90〜100重量部含有することが好ましく、95〜100重量部含有することがより好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型接着剤を電子線硬化型で用いる場合、組成物中に光重合開始剤を含有させることは特に必要ではないが、紫外線硬化型で用いる場合には、光重合開始剤を用いることが好ましく、特に380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を用いることが好ましい。380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤については後述する。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型接着剤では、光重合開始剤として、下記一般式(1)で表される化合物;
(式中、R1およびR2は−H、−CH2CH3、−iPrまたはClを示し、R1およびR2は同一または異なっても良い)を単独で使用するか、あるいは一般式(1)で表される化合物と後述する380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤とを併用することが好ましい。一般式(1)で表される化合物を使用した場合、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を単独で使用した場合に比べて接着性に優れる。一般式(1)で表される化合物の中でも、R1およびR2が−CH2CH3であるジエチルチオキサントンが特に好ましい。組成物中の一般式(1)で表される化合物の組成比率は、組成物全量を100重量%としたとき、0.1〜5.0重量%であることが好ましく、0.5〜4.0重量%であることがより好ましく、0.9〜3.0重量%であることがさらに好ましい。
一般式(1)の光重合開始剤は、UV吸収能を有する透明保護フィルムを透過する長波長の光によって重合を開始することができるため、UV吸収性フィルム越しでも接着剤を硬化できる。具体的には例えば、偏光子の両面にUV吸収能を有する低透湿度の透明保護フィルムを積層する場合でも、一般式(1)の光重合開始剤を含有する場合、接着剤組成物の硬化が可能である。
また、必要に応じて重合開始助剤を添加することが好ましい。重合開始助剤としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなどが挙げられ、4−ジメチルアミノ安息香酸エチルが特に好ましい。重合開始助剤を使用する場合、その添加量は、組成物全量を100重量%としたとき、通常0〜5重量%、好ましくは0〜4重量%、最も好ましくは0〜3重量%である。
また、必要に応じて公知の光重合開始剤を併用することができる。UV吸収能を有する透明保護フィルムは、380nm以下の光を透過しないため、光重合開始剤としては、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を使用することが好ましい。具体的には、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
特に、光重合開始剤として、一般式(1)の光重合開始剤に加えて、さらに下記一般式(2)で表される化合物;
(式中、R3、R4およびR5は−H、−CH3、−CH2CH3、−iPrまたはClを示し、R3、R4およびR5は同一または異なっても良い)を使用することが好ましい。一般式(2)で表される化合物としては、市販品でもある2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名:IRGACURE907 メーカー:BASF)が好適に使用可能である。その他、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名:IRGACURE369 メーカー:BASF)、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(商品名:IRGACURE379 メーカー:BASF)が感度が高いため好ましい。
また、本発明に係る活性エネルギー線硬化型接着剤には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマーなどのポリマーあるいはオリゴマー;フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールなどの重合禁止剤;重合開始助剤;レベリング剤;濡れ性改良剤;界面活性剤;可塑剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;無機充填剤;顔料;染料などを挙げることができる。
上記の添加剤の中でも、シランカップリング剤は偏光子表面に作用し、更なる耐水性を付与することができる。シランカップリング剤を使用する場合、その添加量は、組成物全量を100重量%としたとき、通常0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%、最も好ましくは0〜3重量%である。
シランカップリング剤は、活性エネルギー線硬化性の化合物を使用することが好ましいが、活性エネルギー線硬化性でなくても同様の耐水性を付与することができる。
シランカップリング剤の具体例としては、活性エネルギー線硬化性の化合物としてビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性ではないシランカップリング剤の具体例としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリルーN−(1,3−ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。
好ましくは、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。
電子線硬化型において、電子線の照射条件は、上記活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV〜300kVであり、さらに好ましくは10kV〜250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて、透明保護フィルムや偏光子にダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5〜100kGy、さらに好ましくは10〜75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、透明保護フィルムや偏光子にダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。透明保護フィルムの材料によるが、酸素を適宜導入することによって、最初に電子線があたる透明保護フィルム面にあえて酸素阻害を生じさせ、透明保護フィルムへのダメージを防ぐことができ、接着剤にのみ効率的に電子線を照射させることができる。
一方、紫外線硬化型において、紫外線吸収能を付与した透明保護フィルムを使用する場合、およそ380nmより短波長の光を吸収するため、380nmより短波長の光は活性エネルギー線硬化型接着剤に到達しないため、その重合反応に寄与しない。さらに、低透湿度の透明保護フィルムによって吸収された380nmより短波長の光は熱に変換され、透明保護フィルム自体が発熱し、偏光板のカール・シワなど不良の原因となる。そのため、本発明において紫外線硬化型を採用する場合、紫外線発生装置として380nmより短波長の光を発光しない装置を使用することが好ましく、より具体的には、波長範囲380〜440nmの積算照度と波長範囲250〜370nmの積算照度との比が100:0〜100:50であることが好ましく、100:0〜100:40であることがより好ましい。このような積算照度の関係を満たす紫外線としては、ガリウム封入メタルハライドランプ、波長範囲380〜440nmを発光するLED光源が好ましい。あるいは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザーまたは太陽光を光源とし、バンドパスフィルターを用いて380nmより短波長の光を遮断して用いることもできる。
紫外線硬化型において、紫外線を照射する前に活性エネルギー線硬化型接着剤を加温すること(照射前加温)が好ましく、その場合40℃以上に加温することが好ましく、50℃以上に加温することがより好ましい。また、紫外線を照射後に活性エネルギー線硬化型接着剤を加温すること(照射後加温)も好ましく、その場合40℃以上に加温することが好ましく、50℃以上に加温することがより好ましい。
本発明に係る活性エネルギー線硬化型接着剤は、特に偏光子と波長365nmの光線透過率が5%未満である透明保護フィルムとを接着する接着剤層を形成する場合に好適に使用可能である。ここで、本発明に係る活性エネルギー線硬化型接着剤は、上述した一般式(1)の光重合開始剤を含有することによって、UV吸収能を有する透明保護フィルム越しに紫外線を照射して、接着剤層を硬化形成することができる。よって、偏光子の両面にUV吸収能を有する透明保護フィルムを積層した偏光板においても、接着剤層を硬化させることができる。ただし、当然ながら、UV吸収能を有さない低透湿度の透明保護フィルムを積層した偏光板においても、接着剤層を硬化させることができる。なお、UV吸収能を有する透明保護フィルムとは、380nmの光に対する透過率が10%未満である透明保護フィルムを意味する。
透明保護フィルムへのUV吸収能の付与方法としては、透明保護フィルム中に紫外線吸収剤を含有させる方法や、透明保護フィルム表面に紫外線吸収剤を含有する表面処理層を積層させる方法が挙げられる。
紫外線吸収剤の具体例としては、例えば、従来公知のオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
<第1および第2の偏光板>
本発明の第1および第2の偏光板は、偏光子の接着剤層を形成する面および/または透明保護フィルムの接着剤層を形成する面に活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工した後、偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせ、次いで、活性エネルギー線照射によって活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化して接着剤層を形成することにより製造することができる。
偏光子、透明保護フィルムは、上記活性エネルギー線硬化型接着剤を塗工する前に、表面改質処理を行ってもよい。具体的な処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、ケン化処理による処理などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化型接着剤の塗工方式は、組成物の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーターなどが挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
また、活性エネルギー線硬化型接着剤の塗工は、接着剤層の厚みが0.01〜7μmになるように行うこと好ましい。接着剤層の厚みは、より好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.01〜2μm、最も好ましくは0.01〜1μmである。接着剤層の厚みは、接着力自体が凝集力を得て、接着強度を得らる観点から0.01μm以上とするのが好ましい。一方、偏光板が耐久性の観点から接着剤層の厚みは7μm以下が好ましい。
上記のように塗工した接着剤を介して、偏光子と透明保護フィルムとを貼り合わせる。偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせは、ロールラミネーターなどにより行う事ができる。
偏光子と透明保護フィルムを貼り合わせた後に、活性エネルギー線(電子線、紫外線など)を照射し、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化して接着剤層を形成する。活性エネルギー線(電子線、紫外線など)の照射方向は、任意の適切な方向から照射することができる。好ましくは、透明保護フィルム側から照射する。偏光子側から照射すると、偏光子が活性エネルギー線(電子線、紫外線など)によって劣化するおそれがある。
本発明の第1および第2の偏光板を連続ラインで製造する場合、ライン速度は、接着剤の硬化時間によるが、好ましくは1〜500m/min、より好ましくは5〜300m/min、さらに好ましくは10〜100m/minである。ライン速度が小さすぎる場合は、生産性が乏しい、または透明保護フィルムへのダメージが大きすぎ、耐久性試験などに耐えうる偏光板が作製できない。ライン速度が大きすぎる場合は、接着剤の硬化が不十分となり、目的とする接着性が得られない場合がある。
なお、本発明の第1および第2の偏光板は、偏光子と透明保護フィルムが、上記活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層により形成された接着剤層を介して貼り合されるが、透明保護フィルムと接着剤層の間には、易接着層を設けることができる。易接着層は、例えば、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、シリコーン系、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリビニルアルコール骨格などを有する各種樹脂により形成することができる。これらポリマー樹脂は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また易接着層の形成には他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらには粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤などを用いてもよい。
易接着層は、通常、透明保護フィルムに予め設けておき、当該透明保護フィルムの易接着層側と偏光子とを接着剤層により貼り合わせる。易接着層の形成は、易接着層の形成材を透明保護フィルム上に、公知の技術により塗工、乾燥することにより行われる。易接着層の形成材は、乾燥後の厚み、塗工の円滑性などを考慮して適当な濃度に希釈した溶液として、通常調整される。易接着層は乾燥後の厚みは、好ましくは0.01〜5μm、さらに好ましくは0.02〜2μm、さらに好ましくは0.05〜1μmである。なお、易接着層は複数層設けることができるが、この場合にも、易接着層の総厚みは上記範囲になるようにするのが好ましい。
本発明の第1および第2の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4などの波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置などの形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の第1および第2の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
偏光板に上記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置などの製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業などに優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層などの適宜な接着手段を用いうる。上記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セルなどの他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
粘着層は、異なる組成または種類などのものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面または両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚みなどの粘着層とすることもできる。粘着層の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、1〜200μmが好ましく、特に1〜100μmが好ましい。
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止などを目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚み条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体などの適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデンなどの適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
本発明の第1および第2の偏光板、または第1および第2の偏光板を有する光学フィルムはセットとして、液晶パネル、液晶表示装置などの各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと第1および第2の偏光板または第1および第2の偏光板を有する光学フィルム、および必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による第1および第2の偏光板または第1および第2の偏光板を有する光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
液晶セルの両側に第1および第2の偏光板または第1および第2の偏光板を有する光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
<偏光子の作製>
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム((株)クラレ製:VF−PS7500,幅1000mm)を用いて、30℃の純水中に60秒間浸漬しながら延伸倍率2.5倍まで延伸した。次いで、30℃のヨウ素水溶液(重量比:純水/ヨウ素(I)/ヨウ化カリウム(KI)=100/0.01/1)中で45秒間染色した。その後、4重量%ホウ酸水溶液中で延伸倍率が5.8倍になるように延伸した。延伸後に、純水中に10秒間浸漬した後、フィルムの張力を保ったまま50℃で3分間乾燥して偏光子を得た。この偏光子(SP値32.8)の厚さは25μm、水分率は14重量%であった。
<透明保護フィルム>
・厚み60μm、透湿度30g/m2/24hのアクリル系樹脂フィルム(SP値22.2)。
・厚み40μm、透湿度60g/m2/24hのアクリル系樹脂フィルム(SP値22.2)。
・厚み30μm、透湿度100g/m2/24hのアクリル系樹脂フィルム(SP値22.2)。
・厚み40μm、透湿度800g/m2/24hのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(SP値23.3)。
≪透明保護フィルムの透湿度≫
透湿度の測定は、JIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて測定した。直径60mmに切断したサンプルを約15gの塩化カルシウムを入れた透湿カップにセットし、温度40℃、湿度90%R.H.の恒温機に入れ、24時間放置した前後の塩化カルシウムの重量増加を測定することで透湿度(g/m2/24h)を求めた。
<活性エネルギー線>
活性エネルギー線として、紫外線(ガリウム封入メタルハライドランプ) 照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製Light HAMMER10 バルブ:Vバルブ ピーク照度:1600mW/cm2、積算照射量1000/mJ/cm2(波長380〜440nm)を使用した。なお、紫外線の照度は、Solatell社製Sola−Checkシステムを使用して測定した。
<活性エネルギー線硬化型接着剤の調製>
ラジカル重合性化合物(A)として、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(SP値29.6,ホモポリマーのTg123℃,興人社製)を38.3部、
ラジカル重合性化合物(B)として、トリプロピレングリコールジアクリレート(商品名:アロニックスM−220,SP値19.0,ホモポリマーのTg69℃,東亞合成社製)を19.1部、
ラジカル重合性化合物(C)として、アクリロイルモルホリン(SP値22.9,ホモポリマーのTg150℃,興人社製)を38.3部、および
光重合開始剤(商品名:KAYACURE DETX−S,ジエチルチオキサントン,日本化薬社製)1.4部を混合して50℃で1時間撹拌して活性エネルギー線硬化型接着剤を得た。
≪Tg:ガラス転移温度≫
Tgは、TAインスツルメンツ製動的粘弾性測定装置RSAIIIを用い以下の測定条件で測定した。
サンプルサイズ:幅10mm、長さ30mm、
クランプ距離20mm、
測定モード:引っ張り、周波数:1Hz、昇温速度:5℃/分
動的粘弾性の測定を行い、tanδのピークトップの温度Tgとして採用した。
実施例1
<偏光板の作製>
上記透明保護フィルム(厚み60μm,透湿度30g/m2/24hのアクリル系樹脂フィルム)上に、厚さ0.5μmのウレタン系易接着剤層を形成した後に、当該易接着剤層に、上記活性エネルギー線硬化型接着剤を、MCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:1000本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いて、接着剤層の厚みが0.5μmになるように塗工した。次いで、前記接着剤を介して、前記透明保護フィルムを、上記偏光子の両面にロール機で貼り合わせた。その後、貼り合わせた透明保護フィルムの両側から、IRヒーターを用いて50℃に加温し、上記紫外線を両面に照射して、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させた。さらに、70℃で3分間熱風乾燥して、偏光子の両面に透明保護フィルムを有する偏光板を得た。貼り合わせのライン速度は25m/minで行った。接着剤層のTgは121℃であった。
<偏光板のセット>
上記で得られた偏光板を、偏光子の延伸方向に711mm、垂直方向に405mmの長方形にカットしたものを第1の偏光板とし、偏光子の延伸方向に405mm、垂直方向に700mmの長方形にカットしたものを第2の偏光板とした。
<液晶パネル:液晶セルへの実装>
IPSモードの液晶セルを含む液晶表示装置[LGD社製の液晶テレビ:型式32LE7500の液晶パネル(画面サイズ:32インチ)]から、液晶パネルを取り出し、液晶セルの上下に配置されていた光学フィルムを全て取り除いた後、前記液晶セルのガラス面(表裏)を洗浄した。このようにして液晶セルAを作製した。上記偏光板のセットにおける第1の偏光板と第2の偏光板を、それぞれ、前記液晶セルAの視認側とその反対側(バックライト側)に、アクリル系粘着剤(厚み20μm)を介して貼り合わせて液晶パネルを作製した。視認側の第1の偏光板は、当該偏光板の吸収軸方向が、前記液晶セルAの長辺方向と実質的に平行となるようにした。一方、視認側とは反対側(バックライト側)の第2の偏光板は、当該偏光板の吸収軸方向が、前記液晶セルAの長辺方向と実質的に直交するようにした。
実施例2〜3、比較例1〜5
実施例1<偏光板の作製>において、透明保護フィルム、接着剤の種類を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして第1の偏光板および第2の偏光板を作製した。また、表2に示すように、偏光板のセットを調製した。さらに、実施例1<液晶パネル:液晶セルへの実装>において、偏光板のセットを表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして液晶パネルを作製した。なお、表2では、第1の偏光板および第2の偏光板において、液晶パネルに貼り合わせる側を内側透明保護フィルムとして、もう一方の側を外側透明保護フィルムとした。
但し、比較例1では、下記水系接着剤を用いて、下記方法にて偏光板を作製した。
<水系接着剤の調製>
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度:1200,ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100部に対し、メチロールメラミン50部を、30℃の温度条件下に、純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した水溶液を調製した。前記水溶液100部に対し、アルミナコロイド水溶液(平均粒子径15nm,固形分濃度10%,正電荷)18部を加えて接着剤水溶液を調製した。接着剤水溶液の粘度は9.6mPa・sであった。接着剤水溶液のpHは、4−4.5の範囲であった。接着剤水溶液の粘度は5mPa・sであった。接着剤水溶液のpHは、4−4.5の範囲であった。
<偏光板の作製>
上記透明保護フィルム(厚み40μm,透湿度60g/m2/24hのアクリル系樹脂フィルム)の片面に、上記水系接着剤を乾燥後の接着剤層の厚みが55nm程度となるように塗布して、接着剤付きの前記透明保護フィルムを作製し、次いで、23℃の温度条件下で偏光子の両面に、前記接着剤付きの前記透明保護フィルムをロール機で貼り合せた後、70℃で10分間乾燥させて、偏光板を作製した。
[評価]
実施例および比較例で得られた液晶パネルについて下記評価を行った。結果を表2に示す。
(偏光度の測定)
偏光板の単体透過率T、平行透過率Tp、直交透過率Tcは、紫外可視分光光度計(日本分光社製のV7100)を用いて測定した。これらの透過率は、JISZ8701の2度視野(C光源)により測定して視感度補正を行なったY値である。偏光度Pを上記の透過率を用い、次式により求めた。
偏光度P(%)={(Tp−Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
表2には単体透過率が42.8%の時の偏光度を示す。
(液晶パネルの反り量の測定)
得られた液晶パネルを、40℃、90%R.H.の環境下に120時間投入した。その後、23℃、55%R.H.の環境に取り出して2時間経過し後に、液晶パネルの反り量を測定した。測定は、液晶パネルを地面に垂直に設置し、中央部の凹み量を定規にて測定した。
(液晶パネルのムラの測定)
得られた液晶パネルを、前記液晶セルAを取り出した、IPSモードの液晶セルを含む液晶パネル[LGD社製の液晶テレビ:型式32LE7500の液晶パネル(画面サイズ:32インチ)]に実装し直した。次いで、実装した液晶パネルを、40℃、90%R.H.の環境下に120時間投入した後に、液晶パネルのムラを測定した。ムラの測定は、23℃、55%R.H.の環境に取り出し後、2時間経過した後に、液晶パネルを1時間点灯させ、ムラの発生を目視にて確認した。ムラの発生が見られるものは、「発生有り」とした。ムラの発生が見られないものは、「発生なし」とした。
(液晶パネルのコントラストの測定)
得られた液晶パネルを、前記液晶セルAを取り出した、IPSモードの液晶セルを含む液晶パネル[LGD社製の液晶テレビ:型式32LE7500の液晶パネル(画面サイズ:32インチ)]に実装し直した。次いで、実装した液晶パネルを、40℃、90%R.H.の環境下に120時間投入した後に、液晶パネルのコントラストを測定した。コントラストの測定は、23℃、55%R.H.の暗室でバックライトを点灯させてから30分経過した後、ELDIM社製製品名「EZ Contrast160D」を用いて、白画像および黒画像を表示した場合の、正面方向のXYZ表示系のY値を測定した。白画像におけるY値(YW:白輝度)と、黒画像におけるY値(YB:黒輝度)とから、正面方向のコントラスト比「YW/YB」を算出した。