JP6327168B2 - 内装部材の設計方法 - Google Patents

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本発明は、発泡成形体により形成された基材の両側に補強層が貼着された複合材料によって形成される内装部材の設計方法に関する。
特許文献1には、車両用天井部材が開示されている。特許文献1に記載の天井部材は、ウレタンフォームにより形成された基材と、ガラス繊維により形成され、同基材の意匠面側及び裏面側にそれぞれ貼着された補強層とを有している。また、意匠面側の補強層には、不織布などによって形成された表皮材が貼着されており、この表皮材が車室内の天井面を形成する。また、裏面側の補強層には、裏面材が貼着されている。
特開2014―118032号公報
ところで、こうした天井部材は、ランプやダクト、アシストグリップなどの機能部品が組み付けられた状態で治具に載置され、治具と共に、車両のフロントウィンドウの開口を通じてルーフパネルの直下に移動され、ルーフパネルに組付けられる。また、近年、車両の軽量化やコスト低減などの目的から、天井部材の厚さが薄くされ、そのことに起因して天井部材の剛性が低くされる傾向がある。そのため、天井部材の搬送の際や、上記機能部品の組み付けの際、あるいはルーフパネルへの組み付けの際に、天井部材に荷重が印加されることによって折れが生じるおそれがある。
なお、こうした問題は、天井部材に限られるものではなく、他の内装部材についても同様にして生じ得る。
本発明の目的は、内装部材の重量の増加を抑制しつつ、折れにくい内装部材を設計することができる内装部材の設計方法を提供することにある。
上記目的を達成するための内装部材の設計方法は、発泡成形体により形成された基材と、同基材の意匠面側に貼着された第1補強層と、同基材の裏面側に貼着された第2補強層とを含む複合材料によって形成される内装部材を設計する方法であって、前記内装部材の折れ限界荷重をFcとし、前記内装部材の厚さをTとし、前記第1補強層の目付をW1とし、前記内装部材が支持される支持点間の距離ΔDの1/2の値を支持ピッチとし、T、W1、及びΔDの補正係数をそれぞれ正の値であるK1、正の値であるK2、及び負の値であるK3とするとし、定数項をC1とき、Fcと、T、W1、ΔD、及びC1との間に成立する回帰式(1)に基づいて、前記折れ限界荷重未満になるように、前記内装部材の厚さ、前記第1補強層の目付、及び前記支持ピッチの少なくとも1つを設定する。

Fc = K1×T + K2×W1 + K3×ΔD + C1 ・・・(1)

回帰式(1)における補正係数K1〜K3に基づいて、内装部材の折れ限界荷重Fcにおいて内装部材の厚さT、第1補強層の目付W1、及び内装部材の支持ピッチの項(ΔDの項)が支配的であることや、これらの項の寄与度合を把握することができる。したがって、上記方法によれば、この回帰式(1)に基づいて、内装部材の厚さ、第1補強層の目付、及び支持ピッチの少なくとも1つを適宜設定することにより、内装部材の重量の増加を抑制しつつ、内装部材の折れを抑制することができる。
上記回帰式(1)によれば、第1補強層の目付を大きくするほど、内装部材の折れ限界荷重が大きくなる、すなわち内装部材が折れにくくなるといえる。一方、内装部材の折れ限界荷重に対しては、第2補強層の目付はほとんど寄与しないといえる。
上記構成によれば、第1補強層の目付が第2補強層の目付よりも大きくされている。このため、両補強層の目付の総和を大きくすることなく、内装部材の折れ限界荷重を好適に向上させることができる。
本発明によれば、内装部材の重量の増加を抑制しつつ、折れにくい内装部材を設計することができる。
一実施形態に係る天井部材についてアシストグリップなどが組み付けられた状態の平面図。 上記天井部材の断面図。 天井部材の剛性評価用の試験機の概略図。 天井部材を押し治具により押圧した際の同押し治具の変位量と同押し治具から天井部材に印加される荷重との関係を示すグラフ。 モデル化された天井部材の断面図であって、(a)は、荷重が作用していない状態の断面図、(b)は折れが生じた状態の断面図。
以下、図1〜図5を参照して、一実施形態について説明する。本実施形態では、内装部材の一例として、車両のルーフパネルの下面に取り付けられる天井部材10及びその設計方法について説明する。
図1に示すように、天井部材10は、図示しない車両のルーフパネルの下面に組み付けられるものであり、同下面に沿った略平板状をなしている。天井部材10は部位によって厚さの異なるものである。天井部材10には、車室内の照明用のランプ21やアシストグリップ22、サンバイザー23などの機能部品が組み付けられている。
次に、天井部材10の断面構造について説明する。
図2に示すように、天井部材10は、発泡成形体であるウレタンフォームにより形成された基材11を有している。
基材11の意匠面側(同図の下側)には、ガラスマットにより形成された第1補強層12が図示しない接着剤により接着されている。また、第1補強層12の意匠面側には、不織布によって形成された表皮材13が図示しない接着剤により接着されている。ガラスマットは、ガラス繊維をシート状に形成したものである。
基材11の裏面側(同図の上側)には、ガラスマットにより形成された第2補強層14が図示しない接着剤により接着されている。また、第2補強層14の裏面側には、不織布によって形成された裏面材15が図示しない接着剤により接着されている。
なお、本実施形態では、ウレタン樹脂系の接着剤が用いられている。
ここで、本実施形態の天井部材10においては、第1補強層12の目付W1が第2補強層14の目付W2よりも大きくされている(W1>W2)。具体的には、第1補強層12の目付W1が第2補強層14の目付W2の約2倍に設定されている。

前述したように、天井部材10の搬送時や、ランプ21などの機能部品の組み付けの際、あるいはルーフパネルへの組み付けの際に、天井部材10に対して同天井部材10の折れ限界荷重Fc以上の荷重が作用する場合がある。
そこで、天井部材10に対してランプ21などの機能部品を組み付ける際に同天井部材10に作用する荷重や、天井部材10をルーフパネルに組み付ける際などに同天井部材10の各部位に作用する荷重よりも、当該部位の折れ限界荷重Fcが大きくなるように天井部材10の各部位の厚さなどを設計する。このようにすれば、天井部材10の折れの発生を好適に抑制することができると考えられる。
なお、組み付け等の際に天井部材10に対して作用し得る荷重の分布についてはCAE(Computer Aided Engineering)による周知の解析を通じて把握することが可能である。
次に、天井部材10の剛性の評価方法について説明する。
図3に示すように、試験機31は、水平面上において互いに離間して配置された一対の支持治具32と、各支持治具32上に支持された天井部材10の試験片35に対して同一対の支持治具32の間の中央位置にて上方から荷重を印加可能な押し治具33とを備えている。
押し治具33により天井部材10が押圧されると、図4に示すように、押し治具33による押圧量、すなわち押し治具33の変位量が大きくなるほど、同天井部材10に作用する荷重は大きくなる。ただし、天井部材10に作用する荷重が同天井部材10の折れ限界荷重Fcに達すると、天井部材10に折れが生じる。
本願発明者は、試験機31を用いて、複数の制御因子を異ならせた複数の測定条件において天井部材10の折れ限界荷重Fcを測定した。
すなわち、制御因子である天井部材10の厚さT、第1補強層12の目付W1、天井部材10の支持ピッチ、天井部材10の潰しの有無C、第1補強層12の枚数N1、第2補強層14の目付W2、及び第2補強層14の枚数N2をそれぞれ異ならせた複数の測定条件において天井部材10の折れ限界荷重Fcを測定した。支持ピッチは、一方の支持治具32から押し治具33までの距離であり、一対の支持治具32により天井部材10を支持する支持点間の距離ΔDの1/2の値である(図3参照)。また、成形の都合などにより天井部材10が厚さ方向に潰されている場合に、潰しが有りとされる。
なお、補強層12,14の原反であるガラスマットとしては、所定の目付(例えば70g/m2,100g/m2,135g/m2)のものがある。したがって、これら原反を複数枚重ねることにより、様々な種類の目付のガラスマットを形成することができる。例えば200g/m2の目付のガラスマットの場合、100g/m2の目付のガラスマットを2枚重ねればよい。また、270g/m2の目付のガラスマットの場合、135/m2の目付のガラスマットを2枚重ねればよい。
そして、天井部材10の折れ限界荷重Fcの複数の測定条件における測定結果に基づいて重回帰分析を行なうことにより、目的変数Fcと、制御因子T、W1、ΔD、C、N1、W2、N2、及びΔDとの間に成立する回帰式(2)を導出した。

Fc = K1×T + K2×W1 + K3×ΔD + K4×C + K5×N1 + K6×W2 + K7×N2 + C2 ・・・(2)

ここで、補正係数K1,K2,K5〜K7はいずれも正の値であり、補正係数K3,K4は負の値である。また、C2は定数項である。また、天井部材10が潰されている場合には、Cには「1」が代入され、天井部材10が潰されていない場合には、Cには「0」が代入される。
また、上記回帰式(2)によれば、天井部材10に作用する荷重に占める各制御因子の項の割合は、以下の通りである。
天井部材10の厚さT:約32%
第1補強層12の目付W1:約25%
天井部材10の支持ピッチ(ΔD):約30%
天井部材10の潰しの有無C:約7%
第1補強層12の枚数N1:約5%
第2補強層14の目付W2:約0.1%
第2補強層14の枚数N2:約0.7%
これらのことから、第1補強層12の枚数N1、第2補強層14の目付W2、及び第2補強層14の枚数N2の項については、これらが天井部材10に作用する荷重に占める割合は、天井部材10の厚さT、第1補強層12の目付W1、及び天井部材10の支持ピッチ(ΔD)の項と比較すると、無視することができるほど小さいといえる。
また、天井部材10が潰されていない場合には、上記回帰式(2)は、以下の回帰式(1)によって表すことができる。

Fc = K1×T + K2×W1 + K3×ΔD + C1・・・(1)

ここで、C1は定数項である。すなわち、上記回帰式(1)によれば、天井部材10の厚さTを大きくするほど、第1補強層12の目付W1を大きくするほど、天井部材10の折れ限界荷重Fcが大きく、すなわち天井部材10が折れにくくなるといえる。また、天井部材10の支持ピッチ(ΔD)を大きくするほど、天井部材10の折れ限界荷重Fcが小さく、すなわち天井部材10が折れやすくなるといえる。一方、天井部材10の折れ限界荷重Fcに対しては、第2補強層14の目付W2はほとんど寄与しないといえる。
したがって、組み付け等の際に天井部材10の当該部位に作用する荷重の大きさよりも、上記回帰式(1)に基づいて算出される当該部位における折れ限界荷重Fcが大きくなるように、天井部材10の厚さT、第1補強層12の目付W1、及び支持ピッチ(ΔD)を設計する。このことにより、天井部材10の重量やコストの増加を抑制しつつ、折れにくい天井部材10を具現化することが可能となる。
なお、上記回帰式(2)の導出に際して、基材11(ウレタンフォーム)の目付やウレタンフォームの発泡率、補強層12,14(ガラス繊維)におけるガラス繊維の配向の態様や、補強層12,14と基材11とを接着する接着剤の量や接着剤の反応度合などは制御することが難しいために誤差因子とされており、制御因子には含められていない。
次に、発明者が見出した天井部材10に折れが発生するメカニズムについて説明する。なお、図5(a),(b)に示すモデル化された天井部材10の断面構造を参照して説明する。
図5(b)に示すように、天井部材10の意匠面である表皮材13に対して上方から荷重Fが作用すると、基材11には、ガラスマットにより形成されており変形しにくい第2補強層14を支点Xとして、一点鎖線にて示す中心線の両側の部位を、同中心線に向けて引き込むようなモーメント荷重が作用する(二点鎖線の矢印参照)。
このモーメント荷重によってウレタンフォームにより形成された基材11は撓もうとする。ただし、第1補強層12はガラスマットにより形成されており撓みにくいことから、上記荷重Fが天井部材10の折れ限界荷重Fcに達すると、第1補強層12が同荷重Fcに耐えることができなくなって破断する。このことにより、天井部材10が降伏する。
ここで、天井部材10の厚さTが大きくされると、意匠面(同図の上面)から支点Xまでの距離が大きくなり、支点Xに伝わる荷重が小さくなる。このため、上記モーメント荷重が小さくなることで、第1補強層12が撓もうとする力を小さくすることができ、第1補強層12の破断が抑制される。
また、第1補強層12の目付W1が大きくされると、第1補強層12の剛性が高められることで、第1補強層12の破断が抑制される。
これらのことは、上記回帰式(2)から得られた知見と整合する。
以上説明した本実施形態に係る内装部材の設計方法及び内装部材によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)天井部材10の折れ限界荷重Fcと、天井部材10の厚さT、第1補強層12の目付W1、及び天井部材10の支持ピッチ(ΔD)との間に成立する回帰式(1)に基づいて、天井部材10の厚さ、第1補強層12の目付、及び支持ピッチを設定するようにした。
回帰式(1)における補正係数K1〜K3に基づいて、天井部材10の折れ限界荷重Fcにおいて天井部材10の厚さT、第1補強層12の目付W1、及び天井部材10の支持ピッチ(ΔD)が支配的であることや、これらの項の寄与度合を把握することができる。したがって、上記方法によれば、この回帰式(1)に基づいて、天井部材10の厚さ、第1補強層12の目付、及び支持ピッチを適宜設定することにより、天井部材10の重量やコストの増加を抑制しつつ、天井部材10の折れを抑制することができる。
(2)天井部材10の当該部位に作用する荷重の大きさよりも、回帰式(1)に基づいて算出される当該部位における折れ限界荷重Fcが大きくなるように、当該部位における厚さ、第1補強層12の目付、及び支持ピッチを設定するようにした。
こうした方法によれば、天井部材10の各部位に作用する荷重よりも当該部位における折れ限界荷重Fcが大きくなるため、天井部材10の全体にわたって折れの発生を適切に抑制することができる。
(3)第1補強層12の目付W1は第2補強層14の目付W2よりも大きくされている。上記回帰式(1)によれば、第1補強層12の目付W1を大きくするほど、天井部材10の折れ限界荷重Fcが大きくなる、すなわち天井部材10が折れにくくなるといえる。一方、天井部材10の折れ限界荷重Fcに対しては、第2補強層14の目付W2はほとんど寄与しないといえる。したがって、上記構成のように第1補強層12の目付W1を第2補強層14の目付W2よりも大きく設定すれば、両補強層12,14の目付W1,W2の総和を大きくすることなく、天井部材10の折れ限界荷重Fcを好適に向上させることができる。
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1補強層12の目付W1と第2補強層14の目付W2とを同一とすることもできる(W1=W2)。また、第1補強層12の目付W1を第2補強層14の目付W2よりも小さくすることもできる(W1<W2)。
・基材11をポリプロピレンなどの他の発泡成形体によって形成することもできる。
・第1補強層12及び第2補強層14は基材11よりも変形しにくいものであればよく、ガラスマット以外の他の材料によって形成された補強層を採用することもできる。
・天井部材10は車両の天井裏面に搭載されるものに限定されず、住宅などに対して適用することもできる。また、天井以外の壁面などに対して内装部材を適用することもできる。
10…天井部材(内装部材)、11…基材、12…第1補強層、13…表皮材、14…第2補強層、15…裏面材、21…ランプ、22…アシストグリップ、23…サンバイザー、31…試験機、32…支持治具、33…押し治具、35…試験片。

Claims (4)

  1. 発泡成形体により形成された基材と、同基材の意匠面側に貼着された第1補強層と、同基材の裏面側に貼着された第2補強層とを含む複合材料によって形成される内装部材を設計する方法であって、
    前記内装部材の折れ限界荷重をFcとし、
    前記内装部材の厚さをTとし、
    前記第1補強層の目付をW1とし、
    前記内装部材が支持される支持点間の距離ΔDの1/2の値を支持ピッチとし、
    T、W1、及びΔDの補正係数をそれぞれ正の値であるK1、正の値であるK2、及び負の値であるK3とし、定数項をC1とするとき、
    Fcと、T、W1、ΔD、及びC1との間に成立する回帰式(1)に基づいて、前記内装部材の厚さ、前記第1補強層の目付、及び前記支持ピッチの少なくとも1つを設定する、
    Fc = K1×T + K2×W1 + K3×ΔD + C1 ・・・(1)
    内装部材の設計方法。
  2. 前記内装部材は部位によって厚さの異なるものであり、
    当該部位に作用する荷重の大きさよりも、前記回帰式(1)に基づいて算出される当該部位における折れ限界荷重が大きくなるように、当該部位における厚さ、前記第1補強層の目付、及び前記支持ピッチの少なくとも1つを設定する、
    請求項1に記載の内装部材の設計方法。
  3. 前記発泡成形体はウレタンフォームであり、
    前記第1補強層及び前記第2補強層は共にガラス繊維によって形成されたシート状のガラスマットである、
    請求項1または請求項2に記載の内装部材の設計方法。
  4. 前記内装部材は車両の天井部材である、
    請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の内装部材の設計方法。
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