JP2018047872A - 車両用内装パネルとその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両用内装パネルの剛性を高め、振動に起因する車両用内装パネルのバタつきやビビリ音の発生を防止する。【解決手段】単体での断面形状が弓状に湾曲している化粧パネル12の凸面側に対して、テンション部材14が一体に固定された積層体であり、テンション部材14の部材端が化粧パネル12と密着し、化粧パネル12とテンション部材14とが一体に固定されることで、テンション部材14から化粧パネル12に対して、化粧パネル12が湾曲状態を維持しようとすることに対抗する引張力が作用する。この引っ張り力は、積層体が全体として平坦をなすために必要な力、即ち、化粧パネル12が全体として平坦に矯正されるために必要な力となる。テンション部材14により化粧パネル12に対し引張力が付与されることで、化粧パネル12に面外曲げモーメントが負荷された状態で、全体として平坦な積層体としての、鉄道車両用内装パネル10が構成される。【選択図】図2

Description

本発明は、車両用内装パネルとその製造方法に関するものである。
鉄道車両を一例とする車両の内装材として用いられる部材として、天井や壁等に用いられる内装パネルは、走行中の振動に起因するバタつきやいわゆるビビリ音の発生を防止し、車内環境の悪化を防ぐことが求められる。このため、車体側の取付構造部に対する内装パネルの取付剛性を十分に確保すべく、従来は内装パネルの固定ピッチを密に構成し、もしくは、取付用の補強材を追加するなどして、内装パネル自体の剛性を高める等の対策を施している(例えば、特許文献1、2参照)。
特開2001−171516号公報 特開2016−117442号公報
しかしながら、車体側の取付構造部に対する内装パネルの固定ピッチを密にすると、釘鋲等の固定手段の固定作業の工数の増加を来すこととなる。又、補強部材の追加は、内装パネルの重量を増大させ、取付作業時のハンドリングが悪化して、作業者への負担の増大を招くことにもなる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両用内装パネルの固定ピッチを密にする手法や、補強部材を追加する手法を採用することなく、車両用内装パネルの剛性を高め、振動に起因する車両用内装パネルのバタつきやビビリ音の発生を防止することにある。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
(1)化粧パネルとテンション部材とを含み、前記化粧パネルは単体での断面形状が全体として弓状に湾曲し、前記テンション部材は単体での断面形状が全体として直線状をなしており、前記テンション部材の少なくとも部材端が前記化粧パネルの凸面側に密着した状態で、前記化粧パネルと前記テンション部材とが一体に固定され、全体として平坦な積層体をなしている車両用内装パネル(請求項1)。
本項に記載の車両用内装パネルは、化粧パネルとテンション部材とが一体に固定された積層体である。そして、化粧パネルは単体での断面形状が全体として弓状に湾曲しているのに対して、テンション部材は単体での断面形状が全体として直線状をなしている。この化粧パネルの凸面側に対して、テンション部材の少なくとも部材端が密着し、化粧パネルとテンション部材とが一体に固定されると、テンション部材から化粧パネルに対して、化粧パネルが湾曲状態を維持しようとすることに対抗する引張力が作用する。この引っ張り力は、積層体が全体として平坦をなすために必要な力、即ち、化粧パネルが全体として平坦に矯正されるために必要な力である。又、この引張力は、テンション部材の少なくとも部材端が化粧パネルの凸面側に密着した状態で両者が固定されていることによって、テンション部材の全体により担持されるものとなる。そして、テンション部材により化粧パネルに対し引張力が付与されることで、化粧パネルに面外曲げモーメントが負荷された状態で、全体として平坦な積層体が構成されるものである。その結果、化粧パネルの単体時と比較してその固有振動数が増加し、本車両用内装パネルの剛性が向上することとなる。
又、テンション部材の少なくとも部材端が化粧パネルの凸面側に密着した状態で両者が固定されていることで、上記作用が得られるが、適宜、テンション部材の部材端以外の部位においても、化粧パネルの凸面側に密着した状態で化粧パネルとテンション部材とが固定されていても良い。
なお、「断面形状が全体として弓状に湾曲し」、「断面形状が全体として直線状をなし」、及び、」「全体として平坦な」とは、後述するように、パネルを平面視して窓状の切り欠きが形成されているような場合、テンション部材が化粧パネルの外形に沿った枠状をなす場合、棒状部材を複数組み合わせて構成されるような場合、化粧パネルに意匠的な凹凸形状が形成されている場合等、部分的な形状変化部位が含まれているとしても、各構成要素の断面形状が「全体」として、弓状、直線状又は平坦に構成されていることを意味するものである。
又、「断面形状」は、例えば、化粧パネルが平面視で長方形をなしている場合等、縦横寸法が異なるような場合において、長手方向と平行な方向の断面形状が、上述のごとく構成されていることが、本発明をより効果的にするうえで望ましい。
(2)上記(1)項において、前記化粧パネルの外形と前記テンション部材の外形とが一致している車両用内装パネル(請求項2)。
本項に記載の車両用内装パネルは、化粧パネルの外形とテンション部材の外形とが一致していることから、化粧パネルの部材端とテンション部材の部材端とが密着した状態で、化粧パネルとテンション部材とが一体に固定されたものである。このため、テンション部材により化粧パネルの全体に対し引張力が付与されることで、化粧パネルの全体に面外曲げモーメントが負荷された状態で、全体として平坦な積層体が構成されるものである。又、化粧パネルの外形とテンション部材の外形とが一致していることから、積層体の外形に沿って、内装パネルとテンション部材との段差が生じることもない。
(3)上記(1)(2)項において、前記テンション部材がパネル状をなしている車両用内装パネル(請求項3)。
本項に記載の車両用内装パネルは、テンション部材についても、内装パネルと同様にパネル状の部材であることにより、二層のパネル部材によって、全体として平坦な積層体が構成され、上記作用が得られるものである。
(4)上記(1)から(3)項において、前記化粧パネルの部材端を除いた少なくとも一部に、前記テンション部材に対する非接触部が構成されている車両用内装パネル(請求項4)。
本項に記載の車両用内装パネルは、化粧パネルの部材端を除いた少なくとも一部に、テンション部材に対する非接触部が構成された態様であっても、上記作用が得られるものである。例えば、テンション部材がパネル状をなす場合において、パネルを平面視して窓状の切り欠き部が形成されているような場合には、切り欠き部はテンション部材が存在せず化粧パネル一層のみの構成となる。この切り欠き部に対応する部位が、テンション部材に対する非接触部となる。又、テンション部材が化粧パネルの外形に沿った枠状をなす場合や棒状部材により構成されるような場合も、枠状又は棒状のテンション部材と重ならない部位が、テンション部材に対する非接触部となる。更には、化粧パネルの少なくとも一部に、意匠的な凹凸形状が形成されているような場合において、テンション部材は必ずしもその凹凸形状と相補的な凹凸形状を備えている必要はなく、上記機能を発揮する限りにおいて単純な平坦状であってもよい。この場合には、化粧パネルの凹凸形状部がテンション部材と密着しない非接触部となる。
(5)断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネルの凸面側に、断面形状が全体として直線状のテンション部材の少なくとも部材端を密着させた状態で、前記化粧パネルと前記テンション部材とを一体に固定し、全体として平坦な積層体を構成することを特徴とする車両用内装パネルの製造方法(請求項5)。
本項に記載の車両用内装パネルの製造方法は、化粧パネルとテンション部材とを一体に固定して積層体を構成するものである。そして、化粧パネルは単体での断面形状が全体として弓状に湾曲したものを用いるのに対して、テンション部材は単体での断面形状が全体として直線状をなしたものを用いる。この化粧パネルの凸面側に対して、テンション部材の少なくとも部材端を密着させた状態で、化粧パネルとテンション部材とを一体に固定することで、テンション部材から化粧パネルに対して、化粧パネルが湾曲状態を維持しようとすることに対抗する引張力を作用させる。この引っ張り力は、積層体が全体として平坦をなすために必要な力、即ち、化粧パネルが全体として平坦に矯正されるために必要な力である。又、この引張力は、テンション部材の少なくとも部材端を化粧パネルの凸面側に密着させた状態で両者を固定することによって、テンション部材の全体により担持するものである。そして、テンション部材により化粧パネルに対し引張力を付与することで、化粧パネルに面外曲げモーメントが負荷された状態で、全体として平坦な積層体を構成するものである。その結果、化粧パネルの単体時と比較してその固有振動数を増加させ、本車両用内装パネルの剛性を向上させることとなる。
又、テンション部材の少なくとも部材端を化粧パネルの凸面側に密着させた状態で両者を固定することで、上記作用が得られるが、適宜、テンション部材の部材端以外の部位においても、化粧パネルの凸面側に密着させ化粧パネルとテンション部材とを固定しても良い。
(6)上記(5)項において、全体として平坦な化粧パネルを塑性変形させて断面形状が全体として弓状となるように湾曲させた後、その断面形状が全体として直線状となるように弾性変形させた状態で、前記テンション部材の部材端を前記化粧パネルに密着させる車両用内装パネルの製造方法(請求項6)。
本項に記載の車両用内装パネルの製造方法は、積層体を構成した状態における外形を、全体として平坦な化粧パネルの外形によって定めるものである。そして、この平坦な化粧パネルを塑性変形させて、断面形状が全体として弓状となるように湾曲させることで、この湾曲状態における化粧パネルの内部応力を除去する。その後、その断面形状が全体として直線状となるように弾性変形させた状態で、テンション部材の部材端を化粧パネルの、弾性変形前では凸面であった側に密着させて固定することで、上記(5)項の作用が得られるものである。
(7)上記(6)項において、前記断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネルの部材端に対し、その断面形状が全体として直線状となるように矯正させる方向の外力を付与した状態で、前記テンション部材の部材端を、前記化粧パネルに密着させる車両用内装パネルの製造方法(請求項7)。
本項に記載の車両用内装パネルの製造方法は、断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネルの部材端に対し、その断面形状が全体として直線状となるように矯正させる方向の外力を付与することで、化粧パネル単体での断面形状を全体として直線状に変形させるものである。この状態で、断面形状が全体として直線状のテンション部材の少なくとも部材端を、化粧パネルの弾性変形前では凸面であった側に密着させるものである。そして、テンション部材の部材端を、前記化粧パネルに固定することで、上記(6)項の作用が得られるものである。
(8)上記(6)(7)項において、前記断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネルと、前記テンション部材とを重ねてプレスマシンにセットし、該プレスマシンにより前記化粧パネルと前記テンション部材とが密着する方向の圧力を付与する車両用内装パネルの製造方法(請求項8)
本項に記載の車両用内装パネルの製造方法は、断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネルの凸面側に、テンション部材を重ねてプレスマシンにセットする。そして、プレスマシンにより化粧パネルとテンション部材とが密着する方向の圧力を付与することで、化粧パネルをテンション部材に押付けてテンション部材に倣った平坦な状態へと変形させるものである。これにより、面形状が全体として直線状のテンション部材の少なくとも部材端を、化粧パネルの弾性変形前では凸面であった側に密着させるものである。そして、テンション部材の部材端を、前記化粧パネルに固定することで、上記(6)(7)項の作用が得られるものである。
本発明はこのように構成したので、車両用内装パネルの固定ピッチを密にする手法や、補強部材を追加する手法を採用することなく、車両用内装パネルの剛性を高め、振動に起因する車両用内装パネルのバタつきやビビリ音の発生を防止することが可能となる。
本発明の実施の形態に係る鉄道車両用内装パネルを示す立体図であり、(a)は化粧パネル側から見た斜視図、(b)はテンション部材側から見た斜視図である。 本発明の実施の形態に係る鉄道車両用内装パネルの製造手順を示す説明図であり(a)(b)(c)(d)は第1例の手順を、(a)(b)(e)(f)は第2例の手順を示し、(g)は鉄道車両用内装パネルの完成状態を示すものである。 本発明の実施の形態に係る鉄道車両用内装パネルの鉄道車両への設置例を示すものであり、(a)は車体の妻面と平行な方向の断面図、(b)は車体の妻面近傍部分における車体の長手方向の縦断面図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは、相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
図1に示されるように、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用内装パネル10は、化粧パネル12とテンション部材14とを含み、化粧パネル12とテンション部材14とが一体に固定され、全体として平坦な積層体をなしているものである。
化粧パネル12は鉄道車両の内装パネルに求められる機能、例えば、耐久性、耐火性等に優れた材質で構成され、なおかつ、壁面や天井の表面として車室内に露出することから、必要な質感を備えるように表面処理や形状設定がなされたパネル部材である。一例としては、アルミ合金、耐熱ファイバー、さらにはこれらの素材からなるパネル表面に耐熱被覆材のコーティングを施したもの等が用いられる。一方、テンション部材14についても、耐久性、耐火性優れた材質で構成されているが、車室内には露出しないことから、質感については特に考慮する必要はない。テンション部材14に用いられる材質の一例としては、アルミ合金、ステンレス合金、耐熱ファイバー等が用いられる。
又、図示の例では、テンション部材14についても、化粧パネル12と同様にパネル状をなしており、なおかつ、化粧パネル12の外形とテンション部材14の外形とが一致している。又、テンション部材14を平面視して、窓状の切り欠き14aが形成されている。このため、化粧パネル12の部材端を除いた一部、具体的にはテンション部材14の切り欠き部14aに対応する部位に、テンション部材14に対する非接触部12aが構成されている。
化粧パネル12は、単体、即ちテンション部材14と一体に固定される以前の状態では、断面形状が全体として弓状に湾曲しているものである(図2(c)参照)。この弓状に湾曲した断面形状は、図1に示されるように、化粧パネル12が平面視で長方形をなしている場合等、縦横寸法が異なるような場合においては、長手方向と平行な方向の断面形状が、弓状に湾曲するように構成されていることが望ましい。これは、長手方向の変形が短手方向の変形よりも生じやすいことから、長手方向の断面形状に上記特徴を与えることで、後述の作用効果をより効果的に得るためのものである。又、化粧パネル12に意匠的な凹凸形状が形成されている場合等、部分的な形状変化部位が含まれているとしても、化粧パネル12が「全体」として、弓状に湾曲するように構成されている。
一方、テンション部材14は、単体、即ち化粧パネル12と一体に固定される以前の状態での断面形状が、全体として直線状をなしている。この直線状の断面形状は、図1に示されるように、テンション部材14がパネル状をなしており、窓状の切り欠き14aが形成されている等の、部分的な形状変化部位が含まれている場合のみならず、テンション部材14が、化粧パネル12の外形に沿った枠状をなす場合、或いは、棒状部材を複数組み合わせて構成されるような場合等であっても、断面形状が「全体」として、直線状に構成されていることを意味するものである。又、テンション部材14がパネル状をなして窓上の切り欠き14aを備えない単純な板状である場合も、当然に含まれるものである。
又、テンション部材14は、化粧パネル12と一体に固定された状態で、積層体である鉄道車両用内装パネル10が平坦な積層体を構成することが可能なだけの強度を有している。即ち、テンション部材14の強度は、化粧パネル12の強度を上回るように構成されている。例えば、化粧パネル12にアルミ合金を用い、テンション部材14にステンレス合金を用いる等、テンション部材14により高強度の材質を用いる。又、化粧パネル12及びテンション部材14の双方アルミ合金を用いる場合には、テンション部材14に必要な強度を持たせるための、化粧パネル12よりも大きな厚みを確保する。
ここで、鉄道車両用内装パネル10の製造手順を、図2に例示する。
まず、図2(a)に示されるように、全体として平坦な化粧パネル12を用意し、図2(b)に示されるように塑性変形させて、その断面形状が全体として弓状となるように湾曲させる。化粧パネル12にアルミ合金等の金属材料を用いる場合には、図2(b)のごとく、ロール成型等を用いる。又、化粧パネル12に耐熱ファイバー等の樹脂材料を用いる場合には、加熱プレス成型するか、予め、その断面形状が全体として弓状となるように成型する。
続いて、一例として、図2(c)に示されるように、断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネル12と、断面形状が全体として直線状のテンション部材14とを重ねてプレスマシン20にセットし、プレスマシン20により化粧パネル12とテンション部材14とが密着する方向の圧力を付与する。これにより、図2(d)に示されるように、断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネル12の凸面側に、テンション部材14の部材端を密着させる。図2(c)の例では、加圧前の化粧パネル12の部材端に、予め接着剤16が塗布されていることから、化粧パネル12及びテンション部材14の部材端同士が接着剤16によって固定され、図2(g)に示されるように、化粧パネル12とテンション部材14とが一体に固定され、全体として平坦な積層体としての、鉄道車両用内装パネル10が構成される。
又、別例として、図2(e)に示されるように、断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネル12の部材端に、着脱式のブラケット22を装着し、ブラケット22同士をターンバックル24等の引っ張り具を介してワイヤ連結し、ターンバックル24を縮めることで、化粧パネル12の部材端に対し、その断面形状が全体として直線状となるように矯正させる方向の外力を付与する。そして、図2(f)に示されるように、化粧パネル12の断面形状が全体として直線状となるように矯正された状態で、テンション部材14の部材端を化粧パネルに密着させる。図2(f)の例では、テンション部材14の部材端に、予め接着剤16が塗布されていることから、化粧パネル12に対してテンション部材14の部材端が接着剤16によって固定され、図2(g)に示されるように、化粧パネル12とテンション部材14とが一体に固定され、全体として平坦な積層体としての、鉄道車両用内装パネル10が構成される。なお、図2(d)の例では、テンション部材14よりも化粧パネル12の方が大きいが、このように寸法差を設けた積層体を構成しても良く、図2(g)に示されるように、化粧パネル12の外形とテンション部材14の外形とが一致した積層体を構成してもよい。
いずれの例においても、全体として平坦な化粧パネル12を塑性変形させて(図2(a))、断面形状が全体として弓状となるように湾曲させた後(図2(b))、その断面形状が全体として直線状となるように弾性変形させた状態で、前記テンション部材の部材端を前記化粧パネルに密着させる(図2(d)、図2(f))。なお、化粧パネル12に耐熱ファイバー等の樹脂材料を用いる場合には、予めその断面形状が全体として弓状となるように成型し、図2(a)(b)の塑性変形工程を省略してもよい。
又、化粧パネル12の外形とテンション部材14との固定には、接着剤16のみならず、ボルトやリベット等の結合部材を用い、又は、溶接によって両者を接合することとしてもよい。この場合、図2(c)(d)に示されるようにプレスマシン20を用いる場合には、プレス型の外側に化粧パネル12及びテンション部材14の部材端が露出するように形状設定することで、加圧状態において、化粧パネル12及びテンション部材14の結合代がプレス型の外部に露出し、上述の結合作業を行うことが可能となる。
図3には、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用内装パネル10が採用された鉄道車両30の部分断面図を示している。図3では、鉄道車両用内装パネル10をグレースケールで示している。このように、鉄道車両用内装パネル10は、鉄道車両30の客室32や車端デッキ34の天井、壁面、荷棚等、室内に露出する様々な壁面を構成する内装パネルとして用いられるものである。又、製造の容易性や鉄道車両30への取付時の作業性を考慮して、適切に分割された複数の鉄道車両用内装パネル10を組み合わせて、広範囲に渡り装着されるものである。更に、図示は省略するが、床材として使用することも可能である。
さて、上記構成を有する本発明の実施の形態によれば、以下のような作用効果を得ることが可能である。
本発明の実施の形態に係る鉄道車両用内装パネル10は、単体での断面形状が全体として弓状に湾曲している化粧パネル12の凸面側に対して、単体での断面形状が全体として直線状をなしているテンション部材14が一体に固定された積層体である。そして、テンション部材14の少なくとも部材端が化粧パネル12と密着し、化粧パネル12とテンション部材14とが一体に固定されることで、テンション部材14から化粧パネル12に対して、化粧パネル12が湾曲状態を維持しようとすることに対抗する引張力が作用する。この引っ張り力は、積層体が全体として平坦をなすために必要な力、即ち、化粧パネル12が全体として平坦に矯正されるために必要な力となる。又、この引張力は、テンション部材14の少なくとも部材端が化粧パネル12の凸面側に密着した状態で両者が固定されていることによって、テンション部材14の全体により担持されることとなる。そして、テンション部材14により化粧パネル12に対し引張力が付与されることで、化粧パネル12に面外曲げモーメントが負荷された状態で、全体として平坦な積層体としての、鉄道車両用内装パネル10が構成されるものである。その結果、化粧パネル12の単体時と比較してその固有振動数が増加し、鉄道車両用内装パネル10の剛性が向上することとなる。
なお、テンション部材14の少なくとも部材端が化粧パネル12の凸面側に密着した状態で両者が固定されていることで、上記作用効果が得られるが、必要に応じ、テンション部材の部材端以外の部位においても、化粧パネル12とテンション部材14とが固定されていても良い。
又、図1、図2(g)に例示された鉄道車両用内装パネル10は、化粧パネル14の外形とテンション部材12の外形とが一致していることから、化粧パネル14の部材端とテンション部材12の部材端とが密着した状態で、化粧パネル12とテンション部材14とが一体に固定されたものである。このため、テンション部材14により化粧パネル12の全体に対し引張力が付与されることで、化粧パネル12の全体に面外曲げモーメントが負荷された状態で、全体として平坦な積層体としての、鉄道車両用内装パネル10が構成されるものである。又、化粧パネル12の外形とテンション部材14の外形とが一致していることから、積層体の外形に沿って、内装パネル12とテンション部材14との段差が生じることもない。
しかしながら、適宜、図2(f)に例示されるように、テンション部材14よりも化粧パネル12の方が大きくなるように寸法差を設けた積層体を構成しても良い。
なお、図1に例示される鉄道車両用内装パネル10は、テンション部材14についても、内装パネル12と同様にパネル状の部材であることにより、二層のパネル部材によって、全体として平坦な積層体が構成され、上記作用効果が得られるものである。
又、図1(b)に示されるように、化粧パネル12の部材端を除いた少なくとも一部に、テンション部材14に対する非接触部が構成された態様であっても、上記作用が得られるものである。即ち、テンション部材14の上記機能が発揮される限りにおいて、テンション部材14と化粧パネル12とは、平面視での形状が一致している必要はない。
又、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用内装パネルの製造方法は、積層体を構成した状態における外形を、図2(a)に示されるように、全体として平坦な化粧パネル12の外形によって、容易に定めることが可能である。そして、図2(b)に示されるように、この平坦な化粧パネル12を塑性変形させて、断面形状が全体として弓状となるように湾曲させることで、この湾曲状態における化粧パネル12の内部応力を除去する。この状態で、図2(d)、図2(f)に示されるように、化粧パネル12の断面形状が全体として直線状となるように弾性変形させ、テンション部材14の部材端を化粧パネル12の、弾性変形前では凸面であった側に密着させて固定することで、上記作用効果が得られるものである。
具体的には、図2(d)、図2(f)に示されるように、断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネル12の部材端に対し、その断面形状が全体として直線状となるように矯正させる方向の外力を付与することで、化粧パネル12単体での断面形状を全体として直線状に変形させるものである。
あるいは、図2(c)に示されるように、断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネル12の凸面側に、テンション部材14を重ねてプレスマシンにセット20する。そして、図2(d)に示されるように、プレスマシン20により化粧パネル12とテンション部材14とが密着する方向の圧力を付与することで、化粧パネル12をテンション部材14に押付けてテンション部材14に倣った平坦な状態へと変形させるものである。これにより、面形状が全体として直線状のテンション部材の少なくとも部材端を、化粧パネル12の弾性変形前では凸面であった側に密着させるものである。そして、テンション部材14の部材端を、化粧パネル12に固定することで、上記作用効果が得られるものである。なお、プレスマシン20やターンバックル24は、化粧パネル12の形状を矯正するための手段を例示したものであり、同様の機能を発揮する、他の形状矯正手段を用いることとしても良い。
10:鉄道車両用内装パネル、 12:化粧パネル、 14:テンション部材、 14a:切り欠き、 16:接着剤、 20:プレスマシン、 30:鉄道車両

Claims (8)

  1. 化粧パネルとテンション部材とを含み、前記化粧パネルは単体での断面形状が全体として弓状に湾曲し、前記テンション部材は単体での断面形状が全体として直線状をなしており、
    前記テンション部材の少なくとも部材端が前記化粧パネルの凸面側に密着した状態で、前記化粧パネルと前記テンション部材とが一体に固定され、全体として平坦な積層体をなしていることを特徴とする車両用内装パネル。
  2. 前記化粧パネルの外形と前記テンション部材の外形とが一致していることを特徴とする請求項1記載の車両用内装パネル。
  3. 前記テンション部材がパネル状をなしていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用内装パネル。
  4. 前記化粧パネルの部材端を除いた少なくとも一部に、前記テンション部材に対する非接触部が構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の車両用内装パネル。
  5. 断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネルの凸面側に、断面形状が全体として直線状のテンション部材の少なくとも部材端を密着させた状態で、前記化粧パネルと前記テンション部材とを一体に固定し、全体として平坦な積層体を構成することを特徴とする車両用内装パネルの製造方法。
  6. 全体として平坦な化粧パネルを塑性変形させて断面形状が全体として弓状となるように湾曲させた後、その断面形状が全体として直線状となるように弾性変形させた状態で、前記テンション部材の部材端を前記化粧パネルに密着させることを特徴とする請求項5記載の車両用内装パネルの製造方法。
  7. 前記断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネルの部材端に対し、その断面形状が全体として直線状となるように矯正させる方向の外力を付与した状態で、前記テンション部材の部材端を、前記化粧パネルに密着させることを特徴とする請求項6記載の車両用内装パネルの製造方法。
  8. 前記断面形状が全体として弓状に湾曲した化粧パネルと、前記テンション部材とを重ねてプレスマシンにセットし、該プレスマシンにより前記化粧パネルと前記テンション部材とが密着する方向の圧力を付与することを特徴とする請求項6又は7のいずれか1項記載の車両用内装パネルの製造方法。
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