以下、本発明の患者位置決めシステムの複数の実施例について、図を用いて説明する。各実施例の図における同一符号は、同一物または相当物を示す。
本実施例では、治療台天板高さを低減できる患者位置決めシステムの例を説明する。図1は粒子線固定照射室治療システムに用いる患者位置決めシステムの構成図である。治療台5と、治療台5を制御する治療台制御部3と、治療台制御部3に制御信号を入出力する治療台操作装置2と、床昇降機構6と、床昇降機構6を制御する床昇降機構制御部4と、治療台制御部3及び床昇降機構制御部4に制御信号を入出力するシステム制御部1を有する。治療台操作装置2は、操作者の入力操作により治療台制御部3に制御信号を入力し、治療台5を任意の位置に移動させると共に治療台5の位置を表示するためのものである。
図2は、治療台5及び床昇降機構6の概念図である。治療台5は、床置き型の多関節ロボットであり、天板11に患者を乗せて照射ノズル12から照射される放射線の照射位置に患者の患部を位置決めできるように構成され、治療室の床に掘られたピット13に固定される。治療台の近傍にCT(Computerized Tomography)装置20を設置して、治療台5をアームによりCT装置内に差し込み、患部位置の確認から治療までの一連の作業を行うこともできる。
治療台5は、患者を乗せる天板11と、天板11を支持するアーム部17と、アーム部17を支持する円柱状の昇降部18を有し、昇降部18は治療台昇降機構14を介してピット壁面に固定される。天板11とアーム部17の間には手首部19が設けられており、ピッチ角φとロール角ψとヨー角θの3自由度に天板11の傾きを調整することができる。アーム部17は縦に積まれた2つのリンクにより構成され、2つのリンクの間の関節と、アーム部17と昇降部18の間の関節は、それぞれヨー角θに回転可能である。手首部19と2つの関節と治療台昇降機構14により、治療台5は全体として6自由度を有する。なお、アーム部17の各リンクには、手首部19や関節を駆動するアクチュエータを内蔵するため、一定の厚みが必要となる。アーム部17に機器配置上求められる厚み以上に天板の高さを床面15に近付けるために、本実施例の治療台5のアーム部17の一部が床面より下まで降下することができる。
天板11及びアーム部17は昇降部18の昇降に伴い上下し、その可動範囲は、アーム部17の一部が床面15の下に降下する位置から、アーム部17の全体が床面15の上に現れ、昇降部18の円柱上部が床面15の上までせり上がった所定の位置までである。図2は、アーム部17の上下2つのリンクの内、上側リンクの中ほどまで床面15の下に下降した状態を示している。なお、昇降部18はピット13壁面に沿って床面に対して垂直に設置されたレールの上を駆動機構により上下する。
床昇降機構6は、治療台5の治療台昇降機構14と独立した駆動機構を持ち、床面15の一部であって床面15に設けられた穴を塞ぐように設置された床面16を昇降することができる。床昇降機構6は、その一方で床面16を支持し、他方で駆動機構を介してピット13壁面に固定されている。ピット13壁面に沿って床面に対して垂直に設置されたレールの上を駆動機構により上下する。通常、アーム部17が床面15の上に出ているときは、床昇降機構の床面16は他の床面15と同じ高さになるように構成されている。
また、治療台5の治療台昇降機構14及び床昇降機構6はリミットスイッチを備え、治療台5及び床昇降機構6の制御において安全を担保する。治療台5のリミットスイッチは、治療台5が、予め設定された最も高い治療位置より上昇したとき、及び患者乗降位置より下降したとき、及び床昇降機構6が下降する前に患者乗降位置上空の設定位置より下降したときに作動し、治療台5を停止させる。床昇降機構6のリミットスイッチは、床昇降機構6が、患者乗降位置より下降したとき、及び床昇降機構の床面16が他の床15の高さより上昇したとき、及び治療台5が上昇する前に患者乗降位置より上昇したときに作動し、床昇降機構6を停止させる。これにより、可動範囲を超えて駆動機構が動作するのを抑制することができる。また、治療台昇降機構14がアーム部17を床下に降下させる前に床昇降機構6が床面16を退避し始めることを確認したり、逆に床昇降機構6を上昇させる際に治療台昇降機構14も上昇を開始することを確認することで、誤作動によるアーム部17と床面16の干渉を抑制するためである。
図3は、本システムでの任意の位置から、患者が治療台5の天板11に乗り降りしやすい患者乗降位置へ天板11を移動させる動作に関するフローチャートである。任意の位置とは、例えば粒子線治療用のノズル12正面の照射用の位置や、CT装置20の中に差し込まれた状態の位置である。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置に移動させる」S1では、治療台制御部3は治療台操作装置2から制御信号を入力され、制御信号を治療台5に出力し、治療台5を任意の治療位置から患者乗降位置上空の設定位置に移動させる。患者乗降位置上空の設定位置とは、例えば、本実施例では図2のように、天板11とアーム部17の2つのリンクが上下3段にちょうど重なり、リンク同士や天板との間の関節角度がほぼゼロになる位置であって、床面16のすぐ上の空間で、そのまま患者乗降位置まで天板11を降下させることができるような位置のことを指す。なお、天板11とアーム部17の2つのリンクのうち2つ以上がちょうど重なる位置は、制御上特異点になっているため、空間座標の位置情報を治療台5に出力して治療台5を移動させることはできない。そこで、空間座標の位置情報を治療台5に出力して患者乗降位置上空の設定位置近くの特異点ではない位置に治療台5を移動させた後、治療台5の機械回転軸を動かして、天板11とアーム部17の2つのリンクがちょうど重なる位置に治療台5を移動させる。本実施例では、システム制御部1で制御してこの一連の動作を自動的に実施してもよい。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる」S2では、天板11やアーム部17の位置をセンサーで取得する治療台制御部3が制御信号を治療台5に出力し、治療台5を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる。
「床昇降機構制御部は床昇降機構を患者乗降位置に下降させる」S3では、システム制御部1は制御信号を床昇降機構制御部4に出力する。床昇降機構制御部4は制御信号を床昇降機構6に出力し、床昇降機構6を床高さから患者乗降位置に下降させる。
「床昇降機構制御部は床昇降機構を患者乗降位置で停止させる」S4では、システム制御部1は制御信号を床昇降機構制御部4に出力する。床昇降機構制御部4は制御信号を床昇降機構6に出力し、床昇降機構6を患者乗降位置で停止させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置に下降させる」S5では、治療台制御部3は制御信号を治療台5に出力し、治療台5を患者乗降位置上空の設定位置から患者乗降位置に下降させる。患者乗降位置とは、例えば図2のように、天板11とアーム部17の2つのリンクが上下3段に床面16のすぐ上の空間で重なり、アーム部17の中ほどまでが床面15より下に下降し、患者が乗り降りしやすい高さに天板11がある状態の治療台5の位置である。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置で停止させる」S6では、治療台制御部3は制御信号を治療台に出力し、治療台5を患者乗降位置で停止させる。
床昇降機構6の下降を最初に開始し、下降位置に停止後に、治療台5を下降させる制御手順でも実現可能であるが、本実施例では、治療台5の下降の動きを床昇降機構6に衝突しないように、床昇降機構6の下降の動きに同期して動作するように制御する。この同期動作により、下降完了までの時間が短縮できる効果がある。この同期動作を実現するために、床昇降機構6にその下降位置または下降速度を検出するセンサを装着し、その位置または速度データと治療台5の位置または速度データをシステム制御部1に入力して、両者の偏差が下降開始時の状態から小さくならないように自動制御する衝突防止制御機能を有する。この衝突防止制御機能には、前記の偏差が、これらの装置に何らかの異常が発生して、あらかじめ決められた値より小さくなった場合に異常と判定し、治療台5及び床昇降機構6を安全に停止させる機能を有する。尚、床昇降機構の位置または速度検出センサを装備しないで、衝突防止制御機能を省略し、床昇降機構6の下降速度をあらかじめ測定しておき、治療台5の下降速度を測定された昇降機構の速度以下になるように自動制御することで、システム制御部1の処理負荷を低減しても良い。また、この制御機能をシステム制御部1を介さずに、治療台制御部3と床昇降機構制御部4の間で信号を取り交わして実現しても良い。尚、床昇降機構6は、制御が比較的容易なためモータ制御で実施するが、空圧制御もしくは油圧制御で実施しても良く、制御方式を限定するものではない。
図4は、本システムでの患者乗降位置から任意の位置への動作に関するフローチャートである。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置に上昇させる」S10では、治療台制御部3は治療台操作装置2から制御信号を入力され、制御信号を治療台5に出力し、治療台5を患者乗降位置から患者乗降位置上空の設定位置に上昇させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる」S11では、治療台制御部3は制御信号を治療台5に出力し、治療台5を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる。
「床昇降機構制御部は床昇降機構を床高さに上昇させる」S12では、治療台制御部3は制御信号をシステム制御部1に出力し、システム制御部1は制御信号を床昇降機構制御部4に出力する。床昇降機構制御部4は制御信号を床昇降機構6に出力し、床昇降機構6を患者乗降位置から床高さに上昇させる。
「床昇降機構制御部は床昇降機構を床高さで停止させる」S13では、治療台制御部3は制御信号をシステム制御部1に出力し、システム制御部1は制御信号を床昇降機構制御部4に出力する。床昇降機構制御部4は制御信号を床昇降機構6に出力し、床昇降機構6を床高さで停止させ、床面16は周囲の床面15と外観上一体となる。この後S14で治療台5は床面16の上の空間から移動し、床面16の上の空間は外部に露出することになるが、露出する際にはすでに床面16と床面15は段差のない平らな床面となっているため、物がピットに落下したり、アーム部17を床下に降下させる機構が患者や操作者の移動の障害になる可能性を最大限抑制できる。
なお、床昇降機構6と治療台5の上昇の動きの動作制御は、下降時のそれと同じ同期機能が働くが、詳細は省略する。
「治療台制御部は治療台を任意の治療位置に移動させる」S14では、治療台制御部3は制御信号を治療台5に出力し、治療台5を患者乗降位置上空の設定位置から任意の治療位置に移動させる。
「治療台制御部は治療台を任意の治療位置で停止させる」S15では、治療台制御部3は制御信号を治療台5に出力し、治療台5を任意の治療位置で停止させる。このとき、アーム部17や天板11は床面16の真上の空間とは異なる位置に移動しており、床面16は外部に露出しているが、床面16は床面15と段差のない平らな床面を形成しているため、操作者の移動の障害になったり、ピット内に物が落下する可能性を抑制される。
図5は、患者が治療室で治療台に乗り降りする治療手順に関するフローチャートである。
「治療室の治療台が任意の治療位置から患者乗降位置に移動する」S20では、図3の手順で、治療室の治療台5が任意の治療位置から患者乗降位置に移動する。
「患者が治療室で治療台に乗る」S21では、患者が自力であるいは治療スタッフの補助を受けて治療室で治療台5に乗る。患者は治療台5の上で固定される。
「治療室の治療台が患者乗降位置から任意の治療位置に移動する」S22では、図4の手順で、治療室の治療台が患者乗降位置から任意の治療位置に移動する。
「患者が放射線治療を受ける」S23では、患者は放射線治療装置により放射線治療を受ける。
本実施例においては、アーム部17と干渉する床を退避させる機構は床を昇降させる機構により実現したが、例えば床面を観音開きにする構造や、引きこみ戸のようなシャッター構造により実現にしても本実施例の効果が得られる。
また、本実施例においては、1つの床昇降機構6を用いているが、治療のスループット向上の観点から複数の床昇降機構6を用いてもよい。複数の床昇降機構6を用いるときは、治療位置あるいは治療手順により、使用する床昇降機構6を選択する。
また、本実施例においては、治療台5は天板と、昇降部と、2つのリンクを有するアーム部と、複数の関節により構成されているが、リンクが一つしかなく天板位置がもともと低い場合や、3つ以上のリンク及び多くの関節により6以上の自由度を有しアームの動作のみで有る程度の天板高さ低減が可能な場合であっても、本実施例と同様の効果は得られる。例えば、昇降部と一つのリンクと天板を有し、それぞれ間に関節が設けられている場合でも、アーム部の床下降下による天板の高さ低減効果は得られる。
本実施例の治療台及び位置決めシステムを用いれば、治療台天板が治療室の床に比較的近いところまで下降することができ、特に若年の患者や、治療台への乗り降りに治療スタッフの介助が必要な患者が乗り降りしやすくなる。
本実施例によれば、放射線治療装置の患者位置決めシステムにおいて、床の一部が下降することで床と治療台の干渉を回避でき、天板を降下させるためにアームの可動範囲や自由度を向上させると増大してしまう天板とアームの干渉領域を現状のままにして、治療台天板高さを低減できる。(実施例2〜6形態)
次に、本発明の実施例2〜6について図7〜図20を用いて説明する。この実施例2〜6は、以下に述べる点で実施例1と相違し、その他の点については実施例1と基本的には同一である。
本実施例では、実施例1とは異なり床昇降機構が独立した駆動機構を有さず、治療台5と連動して下降するシステムを説明する。
図7は、本実施例の患者位置決めシステムの構成図である。連動して昇降する床昇降機構61を備えた治療台51と、床昇降機構の制御を含む、治療台51を制御する治療台制御部3と、治療台制御部3に制御信号を入力する治療台操作装置2と、治療台制御部3の制御信号を入出力するシステム制御部1を有する。
図8は、治療台51の概念図である。治療台51は、床昇降機構61を備えている。本実施例の床昇降機構61は、その一方で床面16を支持し、他方は治療台51の昇降部18に接続部62を介して接続されている。
図9は、治療台51と床昇降機構61の接続部62を横から見た図である。治療台51下降時に治療台51が一定高さより低くなると、治療台51の昇降部18がピット13の壁面に設けられたレール181上を移動する途中で、昇降部18と床昇降機構61が接続部62で固定され、それ以降は床昇降機構61に付属する床面16が治療台51とともに下降する。治療台51が床面16と干渉しないよう制御するためであり、ここで一定の高さとは、アーム部17の下面が床面16と接する高さ、若しくは、接する高さに対して予め定められた一定のマージンを取った高さである。治療台51上昇時に一定高さより高くなると、昇降部18と床昇降機構61の接続部62における固定が分離され、床昇降機構61に付属する床面16は停止し、周囲の床面15と外観上一体となり、開口部の無い床面を形成する。
図10は、本システムでの任意の位置から患者乗降位置への動作に関するフローチャートである。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置に移動させる」S40では、治療台制御部3は治療台操作装置2から制御信号を入力され、制御信号を治療台51に出力し、治療台51を任意の治療位置から患者乗降位置上空の設定位置に移動させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる」S41では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる。
「治療台制御部は治療台、及び治療台と連動した床昇降機構を患者乗降位置に下降させる」S42では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51を患者乗降位置上空の設定位置から患者乗降位置に下降させ、治療台51と連動した床昇降機構61を床高さから患者乗降位置に下降させる。
「治療台制御部は治療台、及び治療台と連動した床昇降機構を患者乗降位置で停止させる」S43では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51及び治療台51と連動した床昇降機構61を患者乗降位置で停止させる。
図11は、本システムでの患者乗降位置から任意の位置への動作に関するフローチャートである。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置に上昇させ、治療台と連動した床昇降機構を床高さに上昇させる」S50では、治療台制御部3は治療台操作装置2から制御信号を入力され、制御信号を治療台51に出力し、治療台51を患者乗降位置から患者乗降位置上空の設定位置に移動させ、治療台51と連動した床昇降機構61を患者乗降位置から床高さに上昇させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置で停止させ、治療台と連動した床昇降機構を床高さで停止させる」S51では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51を患者乗降位置上空の設定位置で停止させ、治療台51と連動した床昇降機構61を床高さで停止させる。
「治療台制御部は治療台を任意の治療位置に移動させる」S52では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51を患者乗降位置上空の設定位置から任意の治療位置に移動させる。
「治療台制御部は治療台を任意の治療位置で停止させる」S53では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51を任意の治療位置で停止させる。
本実施例によれば、床昇降機構61と治療台51をシステム制御1で同期させることなく連動して動かせるため、システム制御1の処理負荷が低減される。また、床昇降機構61を動かす独立した駆動装置を設ける必要がないため、制御と設置が容易となる。
実施例1及び実施例2において、床下に降下するアーム部17の水平断面形状が下側リンクから上側リンクまで同一ではない場合には、床昇降機構6が患者乗降位置に降下する途中若しくは降下した後に、アーム部17側壁と床面15の間にわずかな開口部が床面に生じ、治療スタッフが開口部を含む床面に脚を踏み入れる可能性がある。わずかな開口部を含む確かな安定性が確保し辛い床面領域に脚を踏み入れる可能性を回避するために、わずかな開口部を覆う床面を形成する機構を別途設けることが有効となる。本実施例では、実施例1のシステムに床形成機構が備わったシステムを説明する。
図12、本実施例の患者位置決めシステムの構成図である。実施例1の構成に加えて、床形成機構8と、システム制御部1から制御信号に基づき床形成機構8を制御する床形成機構制御部7を備える。
図13は、治療台5及び床昇降機構6及び床形成機構8の概念図である。治療台5の床に掘られたピット13に床形成機構8を備えており、床昇降機構6及び治療台5が下降しているとき、下降停止あるいは下降中に床形成機構8が床面21を形成する。床面21形成により、床面16下降後の床面15のわずかな開口部が生じる領域に治療スタッフが脚を踏み入れることを防止する。床形成機構8は、治療台5の治療台昇降機構14と独立した駆動機構を持ち、床面15の一部であって床面15に設けられた開口部の一部を塞ぐように設置された床面21を左右に水平に移動させることができる。床昇降機構6は、その一方で床面16を支持し、他方で駆動機構を介してピット13壁面に固定されている。ピット13壁面に沿って床面に対して水平に設置されたレールの上を駆動機構により左右に水平移動する。
本実施例では、アーム部17の上下あるリンクの内、上側リンクの水平断面積が下側リンクの水平断面積よりも小さい構造となっている。そのため、床面15に形成される開口部は、下側リンクがちょうど通過できるような形状であり、アーム部17が降下している途中は、下側リンク側壁と床面15の開口部縁の隙間がほぼ無い状態となる。しかし、下側リンクがすべて床面15の下まで下降し、上側リンク側壁と開口部縁が近接する状態となると、下側リンクと上側リンクの体積差分だけ、上側リンク側壁と床面15の開口部縁の間にわずかな開口部が生じる。通常、アーム部17が床面15の上に出ているときは、床面16が床面15の開口部を覆い、床面21は床面15の下に退避した状態となるが、アーム部17の下側リンクが床面15下に降下した後は、隙間を低減させるように床形成機構8が床面21を移動させる。さらに、床面15と床面21の高さの差を低減するように床面21を昇降する機構を床形成機構8が備えていてもよい。
本実施例においては、アーム部17の上側リンクが下側リンクより小さい場合について説明したが、上側リンクが下側リンクより大きい場合であっても、下側リンク側壁と開口部縁の隙間を低減するように床形成機構8を適宜出し入れすることで同様の効果を奏する。
図14は、本システムでの任意の位置から患者乗降位置への動作に関するフローチャートである。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置に移動させる」S60では、治療台制御部3は治療台操作装置2から制御信号を入力され、制御信号を治療台5に出力し、治療台5を任意の治療位置から患者乗降位置上空の設定位置に移動させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる」S61では、治療台制御部3は制御信号を治療台5に出力し、治療台5を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる。
「床昇降機構制御部は床昇降機構を患者乗降位置に下降させる」S62では、システム制御部1は制御信号を床昇降機構制御部4に出力する。床昇降機構制御部4は制御信号を床昇降機構6に出力し、床昇降機構を床高さから患者乗降位置に下降させる。
「床昇降機構制御部は床昇降機構を患者乗降位置で停止させる」S63では、システム制御部1は制御信号を床昇降機構制御部4に出力する。床昇降機構制御部4は制御信号を床昇降機構6に出力し、床昇降機構6を患者乗降位置で停止させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置に下降させる」S64では、治療台制御部3は制御信号を治療台5に出力し、治療台5を患者乗降位置上空の設定位置から患者乗降位置に下降させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置で停止させる」S65では、治療台制御部3は制御信号を治療台5に出力し、治療台5を患者乗降位置で停止させる。
「床形成機構制御部は床形成機構を床開口部に移動させる」S66では、システム制御部1は制御信号を床形成機構制御部7に出力する。ただちに、床形成機構制御部7は制御信号を床形成機構8に出力し、床形成機構8を退避位置から床開口部に移動させる。
なお、床昇降機構6の下降の動きと、治療台5の下降の動きと、床形成機構8の移動の動きを連動させても良い。
図15は、本システムでの患者乗降位置から任意の位置への動作に関するフローチャートである。
「床形成機構制御部は床形成機構を退避位置に移動させる」S70では、治療台制御部3は制御信号を治療台操作装置2から入力され、制御信号をシステム制御部1に出力する。ただちに、システム制御部1は制御信号を床形成機構制御部7に出力する。ただちに、床形成機構制御部7は制御信号を床形成機構8に出力し、床形成機構8を床開口部から退避位置に移動させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置に上昇させる」S71では、治療台制御部3は治療台操作装置2から制御信号を入力され、制御信号を治療台5に出力し、治療台5を患者乗降位置から患者乗降位置上空の設定位置に上昇させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる」S72では、治療台制御部3は制御信号を治療台5に出力し、治療台5を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる。
「床昇降機構制御部は床昇降機構を床高さに上昇させる」S73では、治療台制御部3は制御信号をシステム制御部1に出力し、システム制御部1は制御信号を床昇降機構制御部4に出力する。床昇降機構制御部4は制御信号を床昇降機構6に出力し、床昇降機構6を治療台5が患者乗降位置にある際の高さから床面15の高さに上昇させる。
「床昇降機構制御部は床昇降機構を床高さで停止させる」S74では、治療台制御部3は制御信号をシステム制御部1に出力し、システム制御部1は制御信号を床昇降機構制御部4に出力する。床昇降機構制御部4は制御信号を床昇降機構6に出力し、床昇降機構6を床面15の高さで停止させる。
なお、床昇降機構6の上昇の動きと、治療台5の上昇の動きと、床形成機構8の移動の動きを連動させても良い。
「治療台制御部は治療台を任意の治療位置に移動させる」S75では、治療台制御部3は制御信号を治療台5に出力し、治療台5を患者乗降位置上空の設定位置から任意の治療位置に移動させる。
「治療台制御部は治療台を任意の治療位置で停止させる」S76では、治療台制御部3は制御信号を治療台5に出力し、治療台5を任意の治療位置で停止させる。
本実施例によれば、床形成機構8があることで、治療台下側アームが下降した後に生じる床開口部を塞ぐことができ、治療スタッフがわずかな開口部を含む確かな安定性が確保し辛い床面領域に脚を踏み入れることを防止する。
本実施例では、実施例2のシステムに床形成機構が備わったシステムを説明する。
図16、本実施例の患者位置決めシステムの構成図である。実施例2の構成に、床形成機構8とその制御をする床面形成機構制御部7を備える。
図17、は治療台及び床昇降機構及び床形成機構の概念図である。治療台の床に掘られたピットに床形成機構を備えており、床昇降機構61及び治療台51が下降しているとき、下降停止あるいは下降中に床形成機構8が床面21を形成する。床形成により、床下降後の床の開口部に治療スタッフがわずかな開口部を含む確かな安定性が確保し辛い床面領域に脚を踏み入れることを防止する。
図18は、本システムでの任意の位置から患者乗降位置への動作に関するフローチャートである。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置に移動させる」S80では、治療台制御部3は治療台操作装置2から制御信号を入力され、制御信号を治療台51に出力し、治療台51を任意の治療位置から患者乗降位置上空の設定位置に移動させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる」S81では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51を患者乗降位置上空の設定位置で停止させる。
「治療台制御部は治療台、及び治療台と連動した床昇降機構を患者乗降位置に下降させる」S82では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51を患者乗降位置上空の設定位置から患者乗降位置に下降させ、治療台51と連動した床昇降機構を床高さから患者乗降位置に下降させる。
「治療台制御部は治療台、及び治療台と連動した床昇降機構を患者乗降位置で停止させる」S83では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51及び治療台51と連動した床昇降機構を患者乗降位置で停止させる。
「床形成機構制御部は床形成機構を床開口部に移動させる」S84では、システム制御部1は制御信号を床形成機構制御部7に出力する。ただちに、床形成機構制御部7は制御信号を床形成機構8に出力し、床形成機構8を退避位置から床開口部に移動させる。
図19は、本システムでの患者乗降位置から任意の位置への動作に関するフローチャートである。
「床形成機構制御部は床形成機構を退避位置に移動させる」S90では、治療台制御部3は制御信号を治療台操作装置2から入力され、制御信号をシステム制御部1に出力する。ただちに、システム制御部1は制御信号を床形成機構制御部7に出力する。ただちに、床形成機構制御部7は制御信号を床形成機構8に出力し、床形成機構8を床開口部から退避位置に移動させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置に上昇させ、治療台と連動した床昇降機構を床高さに上昇させる」S91では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51を患者乗降位置から患者乗降位置上空の設定位置に移動させ、治療台51と連動した床昇降機構を患者乗降位置から床高さに上昇させる。
「治療台制御部は治療台を患者乗降位置上空の設定位置で停止させ、治療台と連動した床昇降機構を床高さで停止させる」S92では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51を患者乗降位置上空の設定位置で停止させ、治療台51と連動した床昇降機構を床高さで停止させる。
「治療台制御部は治療台を任意の治療位置に移動させる」S93では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51を患者乗降位置上空の設定位置から任意の治療位置に移動させる。
「治療台制御部は治療台を任意の治療位置で停止させる」S94では、治療台制御部3は制御信号を治療台51に出力し、治療台51を任意の治療位置で停止させる。
本実施例によれば、床昇降機構と治療台51をシステム制御1で同期させることなく連動して動かせる。また、床形成機構8があることで、治療台下側アームが下降した後に生じる床開口部を塞ぐことができ、治療スタッフがわずかな開口部を含む確かな安定性が確保し辛い床面領域に脚を踏み入れることを防止する。
本実施例では、実施例1〜4のシステムで、床昇降機構が2段階で動作するシステムを説明する。
図20に本実施例の患者位置決めシステムの構成図を示す。本実施例のシステムにおいて床昇降機構は2つあり、そのうち第一床昇降機構6はシステムの元となる実施例1と機能がほぼ等しい。新たに第二床昇降機構9が設けられ、床昇降機構制御部4からの制御信号に基づき動作する。
図21、は治療台5及び床昇降機構の概念図である。床昇降機構は2つの駆動軸を持ち、それぞれ異なる床面を昇降させる。つまり、第一床昇降機構6は床面16を昇降させ、第二床昇降機構9は床面22を昇降させる。
本実施例における治療台5の患者乗降位置は、実施例1のような天板11とアーム部17のリンクが三段に重なるポジションとは異なり、アーム部17の下側リンク17bと上側リンク17aが間の関節により一定の角度をもって重なるポジションに設定される。そのため、それぞれのリンクに対応するように、下側リンク17bを床下に降下させるために降下・退避する床面16とは別個に、アーム部17の上側リンク17aを下側リンク17bとは異なる位置で床下に降下させる際に降下・退避する床面22が設けられている。これにより本実施例における患者乗降位置は、ピット13の設置位置により制約がある治療台5の昇降部18真上の領域、つまりアーム部17のリンクが重なったホームポジションに限られず、患者が乗降する位置を柔軟に設定することができる。
本システムでの任意の位置から患者乗降位置への動作、及び患者乗降位置から任意の位置への動作に関するフローチャートは、基本的にはシステムの元となる実施例1〜4のフローチャートに等しい。ただし、床昇降機構制御部4が制御信号を各床昇降機構に出力し、各床昇降機構を昇降させるとき、まず第一の床昇降機構6を動作させ、下側リンク17bを受け入れる目標位置に向かって降下させた後に、上側リンク17aの下面が床面15の高さに到達することを確認した後に、ただちに、制御信号を床昇降機構に出力し、第二の床昇降機9を動作させ、目標位置で停止させる。
本実施例によれば、治療台5の2つのリンクに対して2つの異なる床面が昇降することで、患者乗降位置を治療位置であるノズル等の近くに設定することができるため、治療位置と患者乗降位置の間を治療台5が短い時間で移動でき、治療時間を短縮できる。
以上、本発明の実施例として粒子線固定照射室治療システムに使用する治療台について説明したが、同回転照射室において実施しても同様の効果がある。同様にX線及び中性子線などの照射室について実施しても良い。同様にセッティング室に実施しても良い。 詳述したように、本発明によれば、床の一部が下降することで床と治療台の干渉を回避でき、天板を降下させるためにアームの可動範囲や自由度を向上させると増大してしまう天板とアームの干渉領域を現状のままにして、治療台天板高さを低減できる。その結果、患者が治療台に乗り降りしやすくなる。
図22は、患者がセッティング室で治療台に乗り降りする位置決めシステムの概念図である。図6は、患者がセッティング室で治療台に乗り降りする治療手順に関するフローチャートである。図22及び図6を用いて、本発明の実施例7の位置決めシステムについて説明する。なお、上述の実施例と重複する箇所についてはその説明を省略する。
図22において、本実施例では、治療台はセッティング室102と治療室101の両方にあり、セッティング室の治療台5aにて患者をセッティングした後、搬送装置100に乗せて治療室に患者を搬送するオートドッキングシステムが使われる。搬送装置100は、患者を固定した天板ごと運搬する装置であり、セッティング室の治療台5aから手首部で分離された天板を受け入れ、治療室の治療台5bの手首部に搬送した天板に結合させるような装置である。
図6において、「セッティング室の治療台が任意の治療位置から患者乗降位置に移動する」S300では、図3の手順で、セッティング室の治療台が任意の治療位置から患者乗降位置に移動する。
「患者がセッティング室で治療台に乗る」S301では、患者が自力であるいは治療スタッフの補助を受けてセッティング室で治療台に乗り、天板に固定される。
「セッティング室の治療台が患者乗降位置から任意の治療位置に移動する」S302では、図4の手順で、セッティング室の治療台5aが患者乗降位置から任意の治療位置に移動する。このステップにおける任意の治療位置とは、CT装置20横の撮像準備位置である。
「患者の患部をCT装置で撮像する」S303では、患者を乗せた治療台5aがCT装置20に入り、患者の患部をCT装置で撮像する。この時、治療台5aのアーム部の動きにより、CT装置20の中の撮像空間に患者を搬送する天板の移動を実現する。
「セッティング室の治療台が任意の治療位置からオートドッキング位置に移動する」S304では、治療台制御部3は制御信号をセッティング室の治療台5aに出力し、セッティング室の治療台5aの天板をCT装置20横の任意の治療位置からオートドッキング位置に移動させる。
「治療台天板がオートドッキング位置でセッティング室の治療台から搬送装置に移動する」S305では、セッティング室の治療台5aに取り付けられた治療台天板が圧空カプラにより取り外され、搬送装置100に乗せられる。
「搬送装置により治療台天板をセッティング室から治療室に搬送される」S306では、治療スタッフが搬送装置100を運び、治療台天板をセッティング室102から治療室101に搬送する。
「治療室の治療台が任意の治療位置からオートドッキング位置に移動する」S307では、治療台制御部3は制御信号を治療室の治療台5bに出力し、治療室の治療台5bを任意の治療位置やその他デフォルトのポジションからオートドッキング位置に移動させる。
「治療台天板がオートドッキング位置で搬送装置から治療台に移動する」S308では、搬送装置100に乗せられた治療台天板が圧空カプラにより、治療台5bに取り付けられる。
「治療室の治療台がオートドッキング位置から任意の治療位置に移動する」S309では、治療台制御部3は制御信号を治療室の治療台5bに出力し、治療室の治療台5bをオートドッキング位置から任意の治療位置に移動させる。このステップにおける任意の治療位置とは例えば粒子線治療のノズル12正面の位置である。
「患者が放射線治療を受ける」S310では、患者は放射線治療装置により放射線治療を受ける。
本実施例によれば、放射線治療装置の患者位置決めシステムにおいて、床の一部が下降することで床と治療台の干渉を回避でき、天板とアームの干渉領域を現状のままにして、患者が天板に乗り降りするセッティング室においても、治療台天板高さを低減できる。
セッティング室にて患者をセッティングした後、搬送装置に乗せて治療室に患者を搬送するオートドッキングシステムが使われるため、患者のセッティングにより治療室を占有するはずの時間を、別の患者の治療に使うことができ、放射線治療において治療効率を向上させることができる。
セッティング室に床下降下する治療台を設置し、治療室内には床下降下しない通常の治療台を設置することも可能である。治療室は一般的に、特に粒子線治療に回転ガントリー等を採用する場合、治療台を固定するピット内は他の機器が多く設置されているため、できるだけ治療室地下スペースに入る機器を低減したいという要求がある。本実施例のように、地下のスペースに比較的余裕があるセッティング室に、床下降下する治療台を設置し患者に乗り降りしてもらうことで、治療室内の設計自由度を向上させることができる。
さらに、本実施例のアーム部が床下降下が可能な治療台により、従来より低い位置で天板を水平にできるため、搬送装置100とのオートドッキング位置を低い位置に設定でき、搬送装置100について従来よりも高さの低い装置を採用できる効果がある。高さの低い搬送装置100は安定性が高いため、搬送される患者の安全性を向上させ、また患者を搬送する治療スタッフの負担も低減できる。