[第1発明の実施形態]
図1において、X線撮影システム2は、放射線としてX線を使用した放射線撮影システムであり、移動型放射線発生装置11と電子カセッテ12とを備える。ここで、移動型放射線発生装置11は、特許請求の範囲に記載の移動型放射線発生装置に相当する。電子カセッテ12は、可搬型のX線画像検出器(放射線画像検出器に相当)であり、被写体(患者)Hを透過したX線を検出してX線画像を出力する。電子カセッテ12は、電子カセッテ12を制御する撮影制御装置(図示せず)や、X線画像の保存や表示処理を担うコンソール(図示せず)と、無線または有線で通信可能に接続される。電子カセッテ12は、例えば、被写体Hを撮影するために寝台13上に載置される。撮影部位によっては、電子カセッテ12を被写体Hに抱えさせるなどして、撮影部位に応じたポジショニングが行われる。
移動型放射線発生装置11は、X線撮影用のX線を発生する。移動型放射線発生装置11は、走行可能な台車部14を有しており、医師や診療放射線技師などの医療スタッフSTは、移動型放射線発生装置11を手で押して移動させることが可能である。移動型放射線発生装置11は、病棟内の各病室を回りながらの撮影に使用される。また、手術室に運んで手術の際に使用することも可能である。
移動型放射線発生装置11は、X線照射部(放射線照射部に相当する)15、本体部16、アーム部17、支柱18、ハンドル19、及び操作パネル21を備えている。これらは、台車部14に搭載される。
(X線照射部)
X線照射部15は、X線を発生するX線管15Cを有する線源部15Aを有している。線源部15Aには、X線管15Cから発生されたX線の被写体Hへの照射野を限定する照射野限定器(コリメータともいう)15Bが取り付けられる。X線管15Cには、フィラメント、ターゲット、グリッド電極など(いずれも図示せず)が設けられている。陰極であるフィラメントと陽極であるターゲットの間には電圧(管電圧)が印加される。フィラメントはこの管電圧に応じた熱電子を生成する。生成された熱電子はターゲットに向けて放出される。ターゲットはフィラメントからの熱電子が衝突してX線を放射する。グリッド電極はフィラメントとターゲットの間に配置されており、印加される電圧に応じてフィラメントからターゲットに向かう熱電子の流量(管電流)を変更する。
照射野限定器15Bは、例えば、X線を遮蔽する4枚の遮蔽板(例えば鉛板)を四角形の各辺上に配置し、X線を透過させる四角形の出射開口が中央部に形成される。各遮蔽板の位置が変わることで出射開口の大きさが変化し、これによりX線の照射野が変更される。
本体部16には、X線照射部15を制御する線源制御装置や、電力を供給する充電可能なバッテリなどが設けられている。線源制御装置は、管電圧およびグリッド電極に印加する電圧を発生する電圧発生部と、この電圧発生部の動作を制御して、管電圧、管電流、およびX線の照射時間を制御する制御部とを有する。線源制御装置とX線照射部15との間は、電圧供給と制御信号を送信するためのケーブルで接続されている。
(本体部)
本体部16は、小型化及び軽量化が図れており、特に、図2及び図3に示すように、幅方向(Y軸方向)の長さに対して、前後方向(X軸方向)の長さが短い薄型である。薄型とすることで、病室内の狭いスペースにも進入可能としている。本体部16の前後方向(X軸方向)の長さは、例えば、台車部14の前後方向の長さの約2/3程度である。台車部14において、本体部16の搭載位置は後方にオフセットされており、台車部14の前側部分は、本体部16の前方に突出する。しかし、台車部14の高さは、寝台13の脚部の高さよりも低いため、台車部14の寝台13の下のスペースに進入させることが可能である。このため、台車部14の前側部分を、寝台13の天板下の隙間空間に進入させれば、本体部16の前面と寝台13とを接近させることができる。
本体部16には、操作パネル21が設けられている。操作パネル21は、X線照射部15を操作するための操作部と、電子カセッテ12で検出されたX線画像を表示する画像表示部とを有している。医療スタッフSTは、操作部を通じて、X線の照射条件(管電圧、管電流、照射時間など)を入力する。また、本体部16内の線源制御装置には、X線照射部15に対してX線の照射開始を指示するための照射スイッチ23が接続されている。
照射スイッチ23は例えば2段押下型である。照射スイッチ23は、1段目まで押された(半押しされた)ときウォームアップ指示信号を発生し、2段目まで押された(全押しされた)とき照射開始指示信号を発生する。
線源制御装置は、ウォームアップ指示信号が入力された場合、フィラメントを予熱し、同時にターゲットの回転を開始させる。フィラメントの予熱が完了し、ターゲットが規定の回転数となったときにウォームアップが終了する。照射開始指示信号が入力されると、電圧を発生させてX線照射部15によるX線の照射を開始させる。照射条件で設定された照射時間が経過すると、X線の照射を停止させる。
(支柱及びアーム部)
図2〜図4に示すように、アーム部17は、自由端となる一端にX線照射部15が取り付けられており、自由端と反対側の基端は、支柱18に取り付けられている。支柱18は、台車部14に立設される。図2に示すように、支柱18は、台車部14の幅方向(Y軸方向)の中央に配置される。図3に示すように、支柱18は、台車部14の前後方向(X軸方向)において、前輪36Fと後輪36Rの間に配置される。
支柱18は、鉛直方向において下方に位置する第1支柱部18Aと、上方に位置する第2支柱部18Bで構成される。第1支柱部18Aは、台車部14の上面から上方に向かって垂直に延びている。第1支柱部18Aの長手方向は、Z軸方向と平行である。Z軸は、台車部14が置かれる載置面24が水平である場合において、鉛直方向と一致する。第1支柱部18Aは、本体部16の前面に形成された凹部に一部埋め込まれており、外観上、本体部16の一部となっている。第1支柱部18Aの下端は、台車部14に固定されており、上端に第2支柱部18Bが取り付けられている。
図3に示すように、第2支柱部18Bは、鉛直方向(Z軸方向)に対して、移動型放射線発生装置11の前方に向かって傾斜している。アーム部17は第2支柱部18Bに取り付けられている。アーム部17の基端は、第2支柱部18Bの上端に支持される。
図4に示すように、第2支柱部18Bの基端は、第1支柱部18Aの上端において、Z軸方向に延びる回転軸AX1を中心に回転自在である。第2支柱部18Bの回転範囲は、例えば、第2支柱部18Bの長手方向が、移動型放射線発生装置11の前後方向(X軸方向)と平行になる初期位置(実線で示す)を基準に、左右位置(二点鎖線で示す)に約15°程度、合計30°の範囲である。第2支柱部18Bの回転角度は、回転範囲内において、任意の角度に調節することが可能である。第2支柱部18Bの前面には、第2支柱部18Bを回転させる際に把持される把持部18Cが設けられている。
第1支柱部18Aは、台車部14に固定されているため、第2支柱部18Bは、台車部14に対して、Z軸方向に延びる回転軸AX1を中心に回転する。そして、アーム部17は、基端が第2支柱部18Bに取り付けられている。そのため、アーム部17は、アーム部17の基端側を基点として台車部14に対して回転軸AX1を中心に回転する。
図5及び図6に示すように、アーム部17は、その基端が、Y軸方向に延びる回転軸AX2を中心に回転自在であり、本体部16の前面とX線照射部15が対向する収納位置に折りたためるようになっている。アーム部17の回転範囲は、図5及び図6に示す収納位置と、図3に示す上端位置との間の範囲であり、アーム部17の回転角度は、回転範囲内において、任意の角度に調節することが可能である。
(アームロック機構の解除操作部)
アーム部17と第2支柱部18Bの連結部分には、アーム部17を収納位置で、アーム部17の移動をロックするアームロック機構(図示せず)が内蔵されている。収納位置では、アーム部17は、X線照射部15が取り付けられる自由端が鉛直方向において下方に位置し、支柱18に支持される基端が上方に位置する。アーム部17は収納位置でロックされるため、撮影に使用しない間、アーム部17が不用意に回転することがない。アーム部17において、X線照射部15の付け根部分には、アームロック機構のロックを解除する解除操作部26が設けられている。
解除操作部26は、アーム部17の外周を覆うように被せられる円筒状の部材であり、アーム部17の長手軸に沿ってスライド自在に取り付けられている。アーム部17が収納位置にある場合において、解除操作部26を、図6に示す矢印方向に、アーム部17の基端側に向けてスライドさせると、アーム部17のロックが解除される。これにより、アーム部17を収納位置から上端位置に向けて回転させることが可能となる。
ロックを解除する際の解除操作部26のスライド方向は、アーム部17が収納位置にある場合には、鉛直方向において上方に向かう方向である。撮影に際しては、アーム部17は、収納位置において解除操作部26がスライド操作されてロックが解除されると、その後、アーム部17を展開するために、アーム部17が上端位置に向けて持ち上げられる。この際に、アーム部17を持ち上げる方向と、解除操作部26のスライド方向とが一致するので、解除操作部26を把持した状態で、把持位置を変更することなく、アーム部17を展開することが可能となる。そのため、操作性がよい。
アーム部17は、回転軸AX2を中心に上端位置と収納位置の間の任意の位置で停止させることができる。任意の位置におけるアーム部17の停止は、アーム部17の基端と第2支柱部18Bの連結部分の摩擦力の働きで実現する。またアーム部17が展開された状態から、再び収納位置に移動されると、アームロック機構が自動的に作動して移動がロックされる。
(ハンドル)
図7に示すように、ハンドル19は、本体部16の上方位置に配置されている。ハンドル19は、台車部14を移動させる際に把持される。ハンドル19は、例えば、断面が略円形の円柱バーで構成されるバーハンドルである。もちろん、バーハンドルの断面形状は多角形でもよく、握りやすい形状が適宜選択される。
ハンドル19は、前方バー部19A、後方バー部19B、左右の側方バー部19C及び側方バー部19Dで構成されており、各部の位置は、本体部16の前面16A、背面16B、左右の側面16C及び側面16Dにそれぞれ対応する。
前方バー部19A及び後方バー部19Bは、本体部16の前後方向(X軸方向)と直交する幅方向(Y軸方向)に延びている。側方バー部19C及び側方バー部19Dは、本体部16の前後方向(X軸方向)に延びている。ハンドル19の後方バー部19Bは、支柱18の後方に配置され、側方バー部19C及び19Dは、支柱18の側方に配置される。ここで、支柱18の後方は、台車部14の後方に対応する位置であり、支柱18の側方は、台車部14の側方に対応する位置である。前方バー部19Aは、前後方向の位置は支柱18とほぼ一致しており、支柱18の両側において幅方向に延びている。
このように、ハンドル19は、本体部16のほぼ全周に渡って設けられているため、移動型放射線発生装置11の前後左右のどこからでもアクセスすることができるようになっている。後述するように、移動型放射線発生装置11は前方又は側方からも操作されることがあるため、このようなハンドル19は利便性が高い。
(カセッテ収納部)
図8に示すように、本体部16の背面16Bには、電子カセッテ12を収納するカセッテ収納部(収納部に相当する)28が設けられている。電子カセッテ12は、検出面の平面形状が矩形状で扁平な形態をしている。カセッテ収納部28は、電子カセッテ12を、検出面が背面16Bと平行となる姿勢で収納する。カセッテ収納部28は、電子カセッテ12の縦横のサイズと厚みに合わせた大きさを有する薄型のボックスタイプである。
電子カセッテ12は、検出面の大きさに応じて複数のサイズがある。カセッテ収納部28は、最大サイズとして、縦横のサイズが17インチ×17インチのサイズの電子カセッテ12Aまで収納できる大きさを備えている。また、電子カセッテ12Aよりも小型の12インチ×10インチのサイズの電子カセッテ12B、又は17インチ×14インチのサイズの電子カセッテ12Cなどの他のサイズを収納することも可能である。
カセッテ収納部28は、図9に示す収納位置と図10に示す取り出し位置の間で可動自在である。背面16Bは前方に傾斜しており、図9に示す収納位置ではカセッテ収納部28も背面16Bの傾斜角に合わせて前方に傾斜した姿勢となる。このため、収納位置では、電子カセッテ12も背面16Bの傾斜に合わせて傾斜した姿勢となる。収納位置を前方に傾斜させることで、電子カセッテ12を背面16Bにもたせかけることができる。そのため、垂直な姿勢で収納する場合と比べて、ふらつきが少なく安定した状態で収納することができる。
カセッテ収納部28を、図9に示す収納位置から下端部を基点にして後方に回転させると、図10に示す取り出し位置に移動する。取り出し位置では、カセッテ収納部28は、後方に傾斜した姿勢となり、電子カセッテ12も後方に向けた傾斜した姿勢となる。このため、電子カセッテ12の上方部分において、背面16Bとの間の間隔が空くため、電子カセッテ12の上方部分を把持しやすく、取り出しやすい。また、このように間隔が空くため、図11に示すように、取り出し位置において、電子カセッテ12をカセッテ収納部28から取り出すことなく、抗菌用の袋29を被せたり、袋29を交換したりすることも可能となる。
また、図12及び13に示すように、カセッテ収納部28の内部には、底部に充電コネクタ31が設けられている。充電コネクタ31は、電子カセッテ12のバッテリを充電するためのコネクタである。カセッテ収納部28内に充電コネクタ31を設けることで、電子カセッテ12がカセッテ収納部28内に収納されている間に、バッテリへの充電を行うことができる。
図13に示すように、充電コネクタ31の位置は、移動型放射線発生装置11の幅方向(Y軸方向)において、後方から見て中心位置から左側にオフセットされている。これは、電子カセッテ12A〜12Cにおいて、充電コネクタ31と接続される充電端子の位置が、後方から見て左側にオフセットされていることに対応している。
各電子カセッテ12A、12Bは、サイズが異なっても、各電子カセッテ12A、12Bの図13における左端から充電端子までの距離は同一である。また、カセッテ収納部28において、図13の左端の内壁から充電コネクタ31までの距離は、電子カセッテ12A、12Bの充電端子までの距離と同一である。このため、電子カセッテ12のサイズによらず、カセッテ収納部28の左端の内壁に電子カセッテ12の左端を突き当てることで、充電コネクタ31の位置を充電端子の位置に合わせることができる。
(回転ロック機構、旋回ロック機構及び前後ペダル)
図14に示すように、台車部14は、前輪36F及び後輪36Rを有しており、前輪36F及び後輪36Rがそれぞれの車軸C1を中心に回転して走行する。前輪36F及び後輪36Rは、それぞれが車軸C1と直交する鉛直方向(Z軸方向)に延びる軸を中心に独立に旋回するキャスターで構成されている。ここで、キャスターの旋回中心となる軸を旋回軸C2と呼ぶ。前輪36F及び後輪36Rは、それぞれ2つのキャスターで構成されており、台車部14は、前輪36F及び後輪36Rの合計で4つのキャスターを有している。後輪36Rを構成する2つのキャスターもそれぞれが独立に旋回可能であり、前輪36Fを構成する2つのキャスターもそれぞれが独立に旋回可能である。なお、前輪36F及び後輪36Rは、それぞれ3つ以上のキャスターで構成されていてもよい。
前輪36F及び後輪36Rは、台車部14のフレーム14Aの下面に取り付けられる。フレーム14Aは、前輪側が、左右の二つに分岐したY字形状となっており、フレーム14Aの左右の各分岐部分の前端に、前輪36Fが1つずつ設けられている。このようにフレーム14Aの前輪側をY字形状とすることで、寝台13の天板下の隙間空間への進入を容易にしている。例えば、寝台13の下に、台車部14を進入させる場合、例えばフレームの形状が平板状である場合を考えると、フレームの幅に対応する隙間空間が必要になる。フレーム14Aのように、Y字形状であれば、左右の分岐部分の幅が狭いため、フレームが平板状である場合と比較して、必要な隙間空間が狭くて済む。
台車部14は、後輪36Rに対して、車軸C1を中心とする回転をロックする回転ロック機構と、旋回軸C2を中心とする旋回をロックする旋回ロック機構が設けられている。前輪36Fに対する回転ロック機構及び旋回ロック機構は設けられておらず、前輪36Fは、常時ロックが掛かっていないフリーの状態になっている。
図14に加えて、図15及び図16にも示すとおり、台車部14には、支柱18よりも前輪36F側に配置された前ペダル38と、支柱18よりも後輪36R側に配置された後ペダル39とが設けられている。台車部14の前後方向において、前輪36Fと後輪36Rの間には支柱18の基端部分である第1支柱部18Aが立設されている。より具体的には、前ペダル38は、第1支柱部18Aよりも前輪36F側に配置されており、後ペダル39は第1支柱部18Aよりも後輪36R側に配置されている。前ペダル38は、台車部14の前方に突き出した形態で配置されており、後ペダル39は、台車部14の後方に突き出した形態で配置されている。後ペダル39に加えて前ペダル38を設けることで、前方及び/又は斜め前方側からのロック操作が可能となる。
後ペダル39は、両輪連動機構41が設けられているため、2つの後輪36Rに対して同時にロック操作及びロックの解除操作が可能である。また、前ペダル38と後ペダル39は、前後ペダル連動機構42が作用する結果、連動しており、前ペダル38及び後ペダル39のどちらからでも同じ操作が可能である。
図17に示すように、前ペダル38は、初期位置と、初期位置よりも鉛直方向において上方の上位置と、初期位置よりも鉛直方向において下方の下位置の3つの位置に選択的に操作可能である。この3つのペダル位置のいずれかを選択することで、後輪36Rのロックモードである、第1ロックモード及び第2ロックモードの2つモードと、ロックが解除されたロック解除状態との合計3つのモードを選択的に切り替えることが可能となっている。後ペダル39は前ペダル38と同じ機能を有している。また、前ペダル38と後ペダル39は連動するため、前ペダル38が上位置に移動すると、後ペダル39も上位置に、前ペダル38が下位置に移動すると後ペダル39も下位置に移動する。
図18及び図19に示すように、ペダル位置が初期位置では、ロックモードがニュートラル、つまり、回転ロックも旋回ロックも解除された状態(オフ)であり、図19に示すように、後輪36Rは、車軸C1回りの回転も、旋回軸C2回りの旋回も可能な状態である。このため、台車部14を、前後方向だけでなく、斜め方向、及び/又は横方向にスライドさせることも可能である他、所定の位置において方向転換させることも可能である。
図18及び図20に示すように、ペダル位置が下位置では第1ロックモードとなる。第1ロックモードでは、後輪36Rの回転ロック機構と、旋回ロック機構の両方を同時に作動(オン)する。
以下、便宜上、回転ロック機構を作動(オン)させることを、単に回転をロックする、あるいは、回転ロックが作動(オン)するともいい、また、回転ロック機構のロックを解除することを、単に回転ロックを解除するともいう。同様に、旋回ロック機構を作動(オン)させることを、単に旋回をロックする、あるいは、旋回ロックが作動(オン)するともいい、また、旋回ロック機構のロックを解除することを、単に旋回ロックを解除するともいう。
図20に示すように、前ペダル38及び後ペダル39のペダル位置が下位置(D)の第1ロックモードでは、後輪36Rに対して、車軸C1回りの回転と旋回軸C2回りの旋回もともにロックされているため、台車部14を移動させることができない。また、第1ロックモードでは回転のみをロックさせる場合と比べて、旋回ロックも同時に行うことで、台車部14に回転力が加わった場合でも、台車部14のふらつきが抑制される。
図18及び図21に示すように、ペダル位置が上位置では、第2ロックモードとなる。第2ロックモードでは、後輪36Rの回転ロック機構を作動(オン)させることなく、旋回ロック機構のみを作動(オン)させる。つまり、回転ロックは解除(オフ)されたままで、旋回ロックのみが作動(オン)する。
図21に示すように、後輪36Rは、車軸C1回りの回転が可能なであるため、台車部14を走行させることが可能である。後輪36Rの旋回軸C2回りの旋回のみをロックすることで、次のようなメリットがある。例えば、ハンドル19を押して、台車部14を走行させる場合において、コーナーを曲がりやすい。後輪36Rの旋回がロックされていれば、台車部14の後輪36Rが遠心力の作用によってコーナーの外側に滑ってしまうことを抑制できるためである。また、台車部14を定位置で方向転換させる場合も、後輪36Rの旋回のみがロックされていれば、後輪36Rの回転は行われるため、後輪36Rを基点にした方向転換もしやすい。
図22に示すように、両輪連動機構41は、例えば、両輪連結ロッド41Aで構成される。両輪連結ロッド41Aは、2つの後輪36Rを連結して、後述する各後輪36Rに内蔵される回転ロック機構と旋回ロック機構を連動させる。両輪連結ロッド41Aは長手方向が幅方向(Y軸方向)に延びており、そのほぼ中央に後ペダル39が取り付けられている。前ペダル38は支持金具43を用いてフレーム14Aに取り付けられる。前ペダル38も、後ペダル39と同様に、台車部14の幅方向(Y軸方向)のほぼ中央に配置されている。
後ペダル39は、両輪連結ロッド41Aの長手軸と一致する軸AX4回りに回転自在である。後ペダル39を初期位置から上位置に移動すると、両輪連結ロッド41Aが軸AX4を中心に時計方向に回転し、反対に、後ペダル39を初期位置から下位置に移動すると、両輪連結ロッド41Aが反時計方向に回転する。後ペダル39の操作力が、両輪連結ロッド41Aを通じて2つの後輪36Rに伝達される。支持金具41Bは、フレーム14Aに取り付けられて、両輪連結ロッド41A及び後ペダル39を回転自在に支持する。
前後ペダル連動機構42は、例えば、前後連動ロッド42Aで構成される。図23〜図25にも示すように、前後連動ロッド42Aは、台車部14の前後方向(X軸方向)に延びており、後端部42Cが後ペダル39に、前端部42Bが前ペダル38に取り付けられている。前後連動ロッド42Aは、後ペダル39の軸AX4回りの回転に連動して、前ペダル38を軸AX3回りに回転させる。後ペダル39において、前後連動ロッド42Aの取り付け位置は、軸AX4から下方にオフセットされている。そのため、後ペダル39が軸AX4回りに回転すると、前後連動ロッド42Aは、前後方向(X軸方向)に移動する。
前ペダル38においても、前後連動ロッド42Aの取り付け位置は、軸AX3から上方にオフセットされている。そのため、前後連動ロッド42Aが前後方向に移動すると、前ペダル38に対して軸AX3回りの回転力が働く。これにより、後ペダル39の動きに前ペダル38が連動する。
また、前ペダル38においては、前後連動ロッド42Aの前端部42Bの取り付け位置が、前ペダル38が回転する軸AX3よりも上方にオフセットされている。これに対して、後ペダル39において、前後連動ロッド42Aの後端部42Cの取り付け位置が、後ペダル39が回転する軸AX4よりも下方にオフセットされている。そのため、前後連動ロッド42Aの前後方向の一方に移動すると、前ペダル38と後ペダル39が互いに逆方向に回転する。
図24に示すように、例えば、前ペダル38が初期位置から下位置に押し下げられると、前ペダル38は、軸AX3回りに時計方向に回転する。この回転の結果、前後連動ロッド42Aが前方に移動するため、後ペダル39は、軸AX4回りに反時計方向に回転する。反対に、図25に示すように、前ペダル38が初期位置から上位置に押し上げられると、前ペダル38は、軸AX3回りに反時計方向に回転する。この回転の結果、前後連動ロッド42Aが後方に移動するため、後ペダル39は、軸AX4回りに時計方向に回転する。
このため、前ペダル38及び後ペダル39の一方を、初期位置、上位置、下位置の各位置のいずれかに移動させると、一方に連動して他方を同じ位置に移動させることができる。具体的には、図24に示すように、一方が下位置に移動すれば、他方も下位置に移動し、図25に示すように、一方が上位置に移動すれば、他方も上位置に移動する。これにより、ユーザから見ると、前ペダル38と後ペダル39のどちらを操作する場合も、同じ感覚で行えるため、操作性がよい。
図23に示すように、後輪36Rは、例えば、キャスターフレーム44、車輪部46、支持部47及びカバー金具48で構成される。キャスターフレーム44は、本体部44Aと、本体部44Aの下端後方に設けられる車輪取り付け部44Bとで構成される。車輪取り付け部44Bは、略円筒形状をしており、車輪取り付け部44Bには、Y軸方向の両側に車輪部46が車軸C1回りに回転自在に取り付けられる。車輪部46は、例えばゴム製又は樹脂製のタイヤである。
支持部47は、フレーム14Aに固定されている。キャスターフレーム44は、支持部47に対して、旋回軸C2に回転自在に支持されている。カバー金具48は、キャスターフレーム44の上端に形成されたフランジを下方から覆って、キャスターフレーム44を支持部47に取り付けるための金具である。カバー金具48と支持部47の間には、キャスターフレーム44のフランジの厚み分のスペーサ49が配置されている。
車輪取り付け部44Bの内部には、車輪部46と一緒に回転する回転体51が設けられている。回転体51は、円筒形状をしており、外周の近傍にブレーキレバー52が配置されている。ブレーキレバー52は、回転体51の外周と当接して、回転方向に対向する摩擦力を発生させることで、車輪部46の回転をロックする。
ブレーキレバー52は、軸AX5を中心に揺動自在に設けられている。本体部44A内には、鉛直方向(Z軸方向)に延びるプッシュロッド53が設けられている。プッシュロッド53は図示しないバネなどの付勢手段によって上方側に付勢されている。プッシュロッド53が上方からの押圧力を受けて、付勢力に抗して下方に押し下げられると、プッシュロッド53の下端がブレーキレバー52の一端と当接してブレーキレバー52を時計方向に揺動させる。これにより、ブレーキレバー52の他端が回転体51と当接して回転ロックが掛かる。
支持部47の内部には、両輪連結ロッド41Aの端部に連結されるギヤ54と、ギヤ54と係合して回転するカム55とが設けられている。ギヤ54は、両輪連結ロッド41Aの回転に伴って軸AX4回りに回転する。カム55は、軸AX4と同様にY軸方向に延びる軸AX5回りに回転自在に設けられている。カム55は、ギヤ54の回転に連動して、ギヤ54の回転方向と反対方向に回転する。
図24に示すように、ペダル位置が初期位置から下位置に移動すると、ギヤ54が反時計方向に回転し、カム55は時計方向に回転する。カム55が時計方向に回転すると、カム55が、プッシュロッド53の上端を押圧する。プッシュロッド53はこの押圧力を受けて下方に移動して、ブレーキレバー52を揺動させる。これにより回転がロックする。
また、カム55は、キャスターフレーム44の本体部44Aの上端面と当接する。カム55と本体部44Aとの摩擦力によってキャスターフレーム44の旋回軸C2回りに旋回がロックされる。ペダル位置が下位置から初期位置に移動すると、カム55が反時計方向に回転する。カム55が初期位置に戻ると、プッシュロッド53に作用していた押圧力が解除される。押圧力が解除されると、付勢力が作用してプッシュロッド53が上方に移動する。これにより、回転ロックが解除される。カム55が初期位置に移動すると、カム55と本体部44Aとの当接も解除されるため、旋回ロックも解除される。
図25に示すように、ペダル位置が初期位置から上位置に移動すると、ギヤ54が時計方向に回転し、カム55は反時計方向に回転する。カム55が反時計方向に回転すると、カム55は、図24の場合と反対側の端部が、キャスターフレーム44の本体部44Aの上端面と当接する。カム55と本体部44Aとの摩擦力によってキャスターフレーム44の旋回軸C2回りに旋回がロックされる。また、カム55が反時計方向に回転した場合には、カム55の下端面に形成された切り欠き内にプッシュロッド53の上端が逃げ込む。そのため、図24の場合と異なり、プッシュロッド53に対する押圧力は働かず、回転はロックされない。
以上説明したとおり、本例においては、ギヤ54、カム55、プッシュロッド53、ブレーキレバー52、及び回転体51が回転ロック機構を構成する。また、ギヤ54、カム55、本体部44Aが旋回ロック機構を構成する。前ペダル38及び後ペダル39は、回転ロック機構及び旋回ロック機構のロック操作及び解除操作を行う操作部材である。
(作用)
以下、上記構成による作用を説明する。医療スタッフSTは、撮影を行う場合には、移動型放射線発生装置11の後方からハンドル19を把持して台車部14を走行させて、病室を巡回する。病室への移動の際には、例えば、後ペダル39を上位置に移動して第2ロックモードを選択する。こうすれば、後輪36Rの旋回がロックされるため、コーナーにおいても後輪36Rが横滑りすることなく安定した姿勢で移動型放射線発生装置11を走行させることができる。
図26及び図27に示すように、病室内においては、移動型放射線発生装置11及び/又はX線照射部15を移動させて、X線照射部15の位置合わせを行う。まず、寝台13上の被写体H(図1参照)の撮影部位に応じて電子カセッテ12の位置を決める。この後、電子カセッテ12とX線照射部15が対向するように、X線照射部15の位置合わせを行う。
移動型放射線発生装置11は、本体部16が小型軽量であり、しかも、前輪36F及び後輪36Rがそれぞれ独立に旋回可能なキャスターであるため、台車部14の機動性が高い。さらに、後輪36Rを構成する2つのキャスターも、常時同位相に変化するわけではなく、それぞれ独立に変化するため、機動性が特に高い。そのため、X線照射部15の大まかな位置合わせは、台車部14を移動させたり、向きを変えたりしながら、行うことができる。図28に示すように、台車部14の前後方向だけでなく、横方向又は斜め方向にスライドさせるといったことも可能である。
このような移動を行う場合には、ペダル位置を初期位置にして、ロック解除状態にする。ロック解除状態では、後輪36Rの回転ロック機構と旋回ロック機構がともに解除されるので、前輪36Fに加えて後輪36Rも自在に回転できる。そのため、台車部14は、スライド移動、又は定位置での方向転換など様々な動きをすることができる。
こうしたX線照射部15の位置合わせにおいて、医療スタッフSTは、寝台13と移動型放射線発生装置11の間に立って行うことが多い。X線照射部15が移動型放射線発生装置11の前方に配置されていること、さらに、医療スタッフSTは、寝台13上の被写体、及び/又は電子カセッテ12の位置を微調整する必要があるなどの理由からである。移動型放射線発生装置11には、前ペダル38が設けられているため、前方側から、後輪36Rのロック又はロックの解除を行いやすい。
図29に示すように、前輪36Fは旋回可能なキャスターであるため、台車部14の後方部分を基点にして台車部14の向きを変更することも可能である。この場合には、ペダル位置を上位置にして第2ロックモードを選択して、後輪36Rの旋回をロックする。こうすると、台車部14の後方部分のふらつきが抑えられるため、スムーズに台車部14を回転させて、X線照射部15の位置を変更することが可能である。
また、本体部16は薄型であり、台車部14の前端部分の高さは低いため、寝台13の下の隙間空間に台車部14を進入させることで、本体部16を寝台13に接近させることができる。このため、本体部16の支柱18に支持されるX線照射部15を、寝台13の上方において奥まで到達させることができる。
台車部14を移動して大まかな位置決めが終了すると、台車部14の位置及び姿勢が動かないように、ペダル位置を下位置にして第1ロックモードで後輪36Rをロックする。移動型放射線発生装置11は、第2支柱部18Bが台車部14に対して回転軸AX1回りに回転するため、図30に示すように、台車部14の位置及び向きを固定した状態で、X線照射部15の位置を微調整することができる。この場合において、第1ロックモードでは、後輪36Rの回転ロックに加えて、旋回もロックされるため、回転のみをロックする場合と比べて、台車部14のふらつきを抑えることができる。
特に、第2支柱部18Bを回転させる際には、台車部14に対して、Z軸方向に延びる回転軸AX1回りの回転力が作用する。後輪36Rの旋回は、Z軸方向に延びる旋回軸C2回りに行われるため、後輪36Rの旋回がロックされていないと、台車部14がふらついてしまう。第1ロックモードを使用すると、後輪36Rの回転ロックと旋回ロックの両方が行えるため、従来と比べて、台車部14のふらつきを抑えることができる。そのため、安定した姿勢で第2支柱部18Bを回転させることができる。
また、第1ロックモードは、前ペダル38又は後ペダル39を下位置に移動するという1回の操作で選択することができる。つまり、1回の操作で回転ロックと旋回ロックの両方を同時に作動(オン)させることができる。このため、別々の操作で2種類のロックを行う場合と比べて、操作性がよい。また、本例では、前ペダル38と後ペダル39に同じ機能を割り当てているため、前方からでも後方からでも全く同じ操作を行うことができる。
また、前ペダル38だけでなく、後ペダル39も設けられているため、従来と同様、後方の位置からのロック操作を行うことも可能である。第1ロックモード又は第2ロックモードは、台車部14を走行中でも選択することができる。そのため、コーナーを曲がる際に走行しながら第2ロックモードを選択したり、急停止が必要な場合に第1ロックモードを選択するといった操作も可能である。
上記例において、前ペダル38と後ペダル39に同じ機能を割り当てた例で説明したが、一部が共通しているだけでもよい。例えば、前ペダル38は第1ロックモードと第2ロックモードの両方を選択できるが、後ペダル39は第1ロックモードと第2ロックモードの一方のみを選択できるようにする、といったことが考えられる。
「第2発明の実施形態」
第2発明は、本体部16に設けられた操作パネル21に関する。台車部14等、移動型放射線発生装置11の基本的な構成は、上記第1発明と同様である。同一の部位、同一の部材については同じ符号を用い、説明も省略する。
図31及び図32に示すように、操作パネル21は、取り付けアーム56を介して、本体部16の上面16Eに取り付けられている。取り付けアーム56は、縦支柱部56A、横アーム部56B及び取り付け部56Cで構成される。縦支柱部56Aは、鉛直方向と平行なZ軸方向に延びる支柱であり、本体部16の上面16Eに立設される。縦支柱部56Aの上端部には、横アーム部56Bの一端が取り付けられる。横アーム部56Bは、一端が縦支柱部56Aに取り付けられ、他端側に操作パネル21が取り付けられる。横アーム部56Bは、縦支柱部56Aを基準にZ軸方向と直交する水平方向に長手軸が延びるアームである。
本例において、縦支柱部56Aは、長手軸が直線的な形態であるが、鉛直方向の長さを有する形態であれば、必ずしも直線的な支柱でなくてもよく、途中で屈曲している形態でもよいし、途中で傾斜している形態でもよい。鉛直方向に延びるとは、このような形態も含む概念である。同様に、横アーム部56Bも、本例では、長手軸が直線的な形態であるが、水平方向の長さを有する形態であれば、途中で屈曲している形態でもよいし、途中で傾斜している形態でもよい。水平方向に延びるとは、このような形態も含む概念である。
操作パネル21の鉛直方向の高さは、ハンドル19よりも高い。操作パネル21を高い位置に配置することで操作パネル21の視認性を向上している。
取り付け部56Cは操作パネル21の表面となる操作面21Aと反対側の裏面21Bに取り付けられる。取り付け部56Cは横アーム部56Bに取り付けられている。横アーム部56Bは、縦支柱部56Aに対してZ軸方向に延びる軸AX6を中心に回転自在に設けられている。また、取り付け部56Cは横アーム部56Bに対してZ軸方向に延びる軸AX7を中心に回転自在に設けられている。つまり、取り付けアーム56は、それぞれZ軸方向に延びる軸AX6及び軸AX7を中心に回転する2つの関節を有しており、操作パネル21は、台車部14に対してZ軸方向に延びる軸回りに回転自在に設けられている。
図33〜図37に示すように、操作パネル21は、図33、図34に示すように、台車部14の後方に操作面21Aを向ける後方位置から、図35〜図37に示すように、台車部14の側方に操作面21Aを向ける側方位置までの可動域を少なくとも有している。側方位置まで操作パネル21を移動することで、例えば、図26に示したように、医療スタッフSTが支柱18の斜め前方に立って、そこから操作パネル21を操作することが可能となる。
図33に示すように、操作パネル21の初期位置は、操作面21Aが後方に向く後方位置であり、後方位置においては裏面21Bが支柱18と対面する。また、初期位置では、横アーム部56Bが本体部16の幅方向(Y軸方向)に延びた状態であり、操作パネル21は、水平方向においてハンドル19の内側に収まっている。病棟内の移動など移動型放射線発生装置11を走行させる際には、後方からハンドル19が把持される。この際に、初期位置に示すように操作パネル21をハンドル19の内側に収めることができるため、ハンドル19を把持する際に操作パネル21が邪魔にならないため、移動型放射線発生装置11を走行させやすい。
また、図34に示すように、取り付けアーム56の横アーム部56Bを初期位置から軸AX6を中心に反時計方向に90°後方に向けて回転させると、操作パネル21をハンドル19よりも外側に移動することができる。
図35及び図36に示すように、横アーム部56Bを、軸AX6を中心に図36の位置からさらに反時計方向に回転させると、操作パネル21の操作面21Aを側方に向けることができる。図35では、操作面21Aがほぼ側方に向いている状態であり、図36では、操作面21Aがほぼ斜め前方を向いている状態である。こうした側方位置では、操作パネル21は、水平方向において、ハンドル19の外側に張り出している。
側方位置において操作パネル21がハンドル19の外側に張り出すと、操作パネル21の操作性が向上するというメリットがある。例えば、図26に示したように、医療スタッフSTが支柱18の前方に立ってX線照射部15の位置合わせを行う際に、併せて、照射条件の設定を行う場合は操作パネル21が操作される。この場合において、図35及び図36に示すように、ハンドル19よりも外側に操作パネル21が張り出していれば、前方に立つ医療スタッフSTから見ると、操作パネル21がハンドル19よりも手前に位置する。このため、ハンドル19が操作パネル21の操作の邪魔にならず、操作性がよい。
また、図37に示すように、横アーム部56Bを初期位置(図33)と同じ状態にしたまま、取り付け部56Cだけ軸AX7を中心に時計方向に回転させれば、図35及び図36とは反対側の側方位置に操作パネル21を移動することができる。
このように、操作パネル21は、Z軸方向に延びる軸回りに回転自在に設けられている。医療スタッフSTは、自身の位置に応じて、操作パネル21をZ軸方向に延びる軸回りに回転させて、操作パネル21の向きを変更することができる。しかし、操作パネル21を回転させる場合、上記第1発明で説明したアーム部17を回転させる場合と同様に、台車部14に対して、Z軸方向に延びる軸回りに回転力が働くため、台車部14がふらついて安定しないという問題が生じる。
上述したとおり、移動型放射線発生装置11は、後輪36Rの回転ロック機構と旋回ロック機構を同時に作動させる第1ロックモードを備えている。第1発明と同様に、第1ロックモードを使用することで、上記問題を解決することができる。すなわち、第1ロックモードを使用すると、後輪36Rの回転ロックと旋回ロックが行われるため、台車部14のふらつきを確実に防止できる。しかも、第1ロックモードは、前ペダル38又は後ペダル39を操作すると選択できるため、操作も簡単である。また、前ペダル38を備えているため、操作パネル21を支柱18の前方から操作する医療スタッフSTが、前方から前ペダル38を操作して第1ロックモードを選択できる。そのため、操作パネル21の位置調整がしやすい。
「第3発明の実施形態」
図38〜図44に示す第3発明は、第2発明と同様に、本体部16に設けられた操作パネル21に関する。第3発明は、取り付けアーム56とハンドル19との相対的な関係に関する。移動型放射線発生装置11の各部の基本的な構成は、上記第1発明と同様であり、取り付けアーム56、ハンドル19、操作パネル21の構成も上記第2発明と同様である。同一の部位、同一の部材については同じ符号を用い、説明も省略する。
図38に示すように、取り付けアーム56の縦支柱部56Aは、移動型放射線発生装置11の前方から見て、右側の一方の側方バー部19Dよりも、左側の他方の側方バー部19Cに近い位置に配置されている。つまり、縦支柱部56Aの位置は、本体部16の幅方向の中心位置BCよりも、前方から見て右側にオフセットされている。縦支柱部56Aと、縦支柱部56Aに近い側方バー部19Cまでの距離をD1とすると、横アーム部56Bは、縦支柱部56Aに取り付けられる一端から操作パネル21が取り付けられる他端までの長さD2が、距離D1よりも長い。
横アーム部56Bは、図38に示す初期位置において、軸AX6を基準とすると、縦支柱部56Aからの距離が遠い側方バー部19D側に延びている。この状態では、横アーム部56Bは、ハンドル19内に収まっている。そして、初期位置から軸AX6回りに180°反時計方向に回転させると、図39に示すように、横アーム部56Bは、縦支柱部56Aからの距離が近い側方バー部19C側に延びた状態となる。横アーム部56Bの長さD2は、距離D1よりも長いため、横アーム部56Bにおいて操作パネル21が取り付けられる端部がハンドル19の外側に張り出すことになる。上述のとおり、操作パネル21がハンドル19よりも外側に張り出すと、ハンドル19が邪魔にならないため、操作性がよい。
また、縦支柱部56Aは、一方の側方バー部19C側にオフセットされているため、側方バー部19Cから外側に張り出すために必要な横アーム部56Bの長さD2は短くて済む。このため、初期位置のように操作パネル21の操作面21Aを後方に向けた状態で、操作パネル21をハンドル19の内側に収めやすい。
この内容について、図40及び図41に示す比較例と対比して詳述する。比較例は、取り付けアーム56に代えて取り付けアーム156が設けられている点が異なり、他の点は上記実施形態と同一である。取り付けアーム156は、縦支柱部156Aが本体部16の中心位置BCに配置されており、幅方向の片側にオフセットされていない。そのため、図41に示すように、操作パネル21を側方位置においてハンドル19の外側に張り出す位置に配置するためには、図39の上記実施形態と比較して、横アーム部156Bの長さD2を長くする必要がある。
しかし、長さD2を長くすると、図40に示すように、操作パネル21を後方位置にした場合にも、ハンドル19よりも張り出してしまい、ハンドル19内に収めることができない。上述したとおり、移動型放射線発生装置11を走行させる際には、後方からハンドル19が把持されるため、操作パネル21が後方に張り出していると、ハンドル19を把持しづらい。そのため、図38及び39に示すような取り付けアーム56の構成が好ましい。
このような問題は、本体部16の前後方向のサイズを薄型にした場合に特に生じる。というのも、図40のような取り付けアーム156であっても、本体部16が薄型でなければ、操作パネル21が後方に張り出すこともないからである。本体部16の背面にはカセッテ収納部28が設けられている。カセッテ収納部28は、電子カセッテ12を検出面が平行になる姿勢で収納するため、本体部16の幅方向のサイズは、電子カセッテ12の幅方向のサイズ以上にする必要がある。そうすると、本体部16を小型化する場合は、前後方向の厚みを薄くする方向になり、上記のような問題が生じることになる。したがって、第3発明は、カセッテ収納部28が背面16Bに設けられた薄型の本体部16を持つ場合に特に有効である。
また、図42に示すように、縦支柱部56Aの取り付け位置を移動可能にしてもよい。図42においては、縦支柱部56Aの取り付け位置は、前方から見て右側にあり、図38に示す位置と反対側にオフセットされている。このように縦支柱部56Aの取り付け位置を、一方の側方バー部19Cに近い位置と他方の側方バー部19Dに近い位置との間で移動可能にすることで、操作パネル21の位置、及び/又は向きの変更の自由度が広がる。
図43に示すように、本体部16の上面16Eに幅方向にスライド溝57が形成される。このスライド溝57に、縦支柱部56Aの基端を取り付ける取り付け台58が、幅方向に移動自在に設けられる。取り付け台58はスライド溝57内の任意の位置に移動できる。また、図44のように、本体部16の上面16Eに縦支柱部56Aの取り付け穴59を二箇所設けて、二箇所の取り付け穴59のいずれかで取り付け位置を移動できるようにしてもよい。縦支柱部56Aの取り付け位置を移動可能にする形態としては、図43及び図44の両方の形態を含む。
「第4発明の実施形態」
第4発明は操作パネル21の機能及び形態に関する。移動型放射線発生装置11の各部の基本的な構成は、上記第1発明等と同様であり、同一の部位、同一の部材については同じ符号を用い、説明も省略する。
図45に示すように、操作パネル21は、操作面21Aに、第1操作部61と第2操作部62とが設けられている。第1操作部61は、X線照射部15を操作する操作部である。第2操作部62は、電子カセッテ12を操作する操作部であり、かつ、電子カセッテ12が検出したX線画像を表示する画像表示部としても機能する。
第1操作部61は、メカニカルスイッチで構成される。図45Bに示すように、第1操作部61は、内部にメカニカルスイッチを構成する複数のスイッチ61Aを有している。複数のスイッチ61Aは、第1操作部61の全域に広がる1枚のシート61Bによって覆われている。そのため、操作面21Aにおいては、第1操作部61の表面には、複数のスイッチ61Aの間に生じる溝、及び/又は穴が無い。
第2操作部62は、タッチパネル62Aで構成されており、タッチパネル62Aも第2操作部62の全域に広がるシート62Bによって覆われている。このように、第1操作部61及び第2操作部62は、それぞれの表面の全域が1枚のシート61B、62Bで覆われている。しかも、シート61B、62Bの表面の高さはほぼ同じである。ここでほぼ同じとは、数ミリの段差を許容する概念である。このように操作面21Aは、段差がほとんど無い形態であるため、拭き取り掃除などがしやすく、操作パネル21の衛生状態を良好に保ちやすい。
「第5発明の実施形態」
図46〜図49に示す第5発明は、支柱18の形態に関する。移動型放射線発生装置11の各部の基本的な構成は、上記第1発明等と同様であり、同一の部位、同一の部材については同じ符号を用い、説明も省略する。
図46に示すように、支柱18は、支柱18の上方部分の一部である第2支柱部18Bが前方に向けて角度αだけ傾斜している。角度(傾斜角度)αは鉛直方向に対する第2支柱部18Bの長手軸の角度である。第2支柱部18Bは、上端においてアーム部17を回転軸AX2回りに回転自在に支持する。第2支柱部18Bは、台車部14に対してZ軸方向に延びる回転軸AX1回りには回転するが、アーム部17の回転軸AX2と平行な軸回りには回転せず、第2支柱部18Bの前方に対して傾斜する角度αは固定である。第2支柱部18Bを前方に傾斜させることで、アーム部17の構造を複雑化することなく、X線照射部15の水平方向の到達距離を伸ばすことができる。
X線照射部15の水平方向の到達距離を伸ばす方法としては、アーム部を長手軸方向に伸縮自在のテレスコピック構造にする方法がある。しかし、アーム部をテレスコピック構造とすると、構造が複雑化する。アーム部17は、テレスコピック構造を持たず、長手軸方向の長さが固定されている。そこで、アーム部17の基端を支持する第2支柱部18Bを前方に傾斜させることで、X線照射部15の水平方向の到達距離を伸ばしている。
また、図47及び図48に示すように、移動型放射線発生装置11の各部の具体的な寸法は、複数の寝台13A、13Bのサイズに対応できるように設定されている。図47に示す寝台13Aは、手術室に配備される寝台である。手術室の寝台13Aは、立った状態で寝台13A上の患者と長時間向き合う医療スタッフの作業性を考慮して、天板の高さが比較的高く、幅が比較的狭い。例えば、寝台13Aのサイズとしては、高さが1000mmで、幅が1200mm程度である。
対して、図48に示す寝台13Bは、病室に配備される寝台である。病室の寝台13Bは、患者の乗り降りや寝心地を考慮して、天板の高さが比較的低く、幅が比較的広い。例えば、寝台13Bのサイズとしては、高さが1670mmで高さが500mm程度である。
どちらの寝台13を使用する場合でも、X線照射部15の水平方向の到達距離は、寝台13の天板の中央位置まで到達することが好ましい。また、どちらの寝台13の場合でも、X線照射部15のX線焦点Fと、寝台13上に載置されて、X線照射部15と対向する電子カセッテ12までの距離であるSID(Source to Image receptor Distance)として、約1000mm確保されることが好ましい。
こうした条件を考慮して、載置面24から、支柱18の上端部に位置する、アーム部17の回転軸AX2までの高さH0を、例えば、約1365mmとしている。また、角度αは、約23°であり、本体部16の最前面に位置する第1支柱部18Aの前面から、アーム部17の基端の回転軸AX2までの距離は、約210mmとしている。
図47に示すように、X線照射部15の鉛直方向の到達距離が最大になるように、アーム部17を上端位置まで回転させた姿勢では、X線焦点Fの載置面24からの高さH1は約2000mmである。これにより、高さが約1000mmの寝台13Aの場合に、SIDを約1000mm程度確保することができる。この姿勢でのX線照射部15の水平方向の到達距離は、台車部14の前端位置からX線焦点Fまでの距離L1で約600mmとなる。寝台13Aの幅は約1200mmなので、X線照射部15のX線焦点Fを寝台13Aの幅方向のほぼ中央位置まで到達させることができる。
また、本例では、台車部14の前端部の突出部分の長さ、すなわち、本体部16の前端である支柱18の前面から、台車部14の前端位置までの距離が約360mmある。そのため、この部分を寝台13Aの天板下の隙間空間に進入させることができれば、本体部16と寝台13Aの側端部をより接近させることができるため、X線焦点Fの水平方向の到達距離はその分長くなる。
また、図48に示すように、X線照射部15の水平方向の到達距離が最大になるように、アーム部17の長手軸を水平にした姿勢では、X線焦点Fの載置面24からの高さH2は約1500mmである。これにより、高さが約500mmの寝台13Bの場合に、SIDを約1000mm程度確保することができる。この姿勢でのX線照射部15の水平方向の到達距離は、台車部14の前端位置からX線焦点Fまでの距離L2で約835mmとなる。寝台13Bの幅は約1670mmなので、X線照射部15のX線焦点Fを寝台13Bの幅方向のほぼ中央位置まで到達させることができる。
また、図47の寝台13Aを使用する場合と同様に、台車部14の前端部の突出部分を寝台13Bの天板下の隙間空間に進入させることができれば、本体部16と寝台13Bの側端部をより接近させることができるため、X線焦点Fの水平方向の到達距離はその分長くなる。
また、このように、支柱18の上部である第2支柱部18Bを、前方に傾斜させることで、アーム部17を収納位置にした場合の移動型放射線発生装置11の全高を、傾斜させない場合と比べて、低くすることができる。このため、図49に示すように、医療スタッフSTが後方から移動型放射線発生装置11を押して走行させる場合に、良好な前方視界を確保することができる。
「第6発明の実施形態」
図50〜図54に示す第6発明は、電子カセッテ12の盗難防止用のカセッテロック機構に関する。移動型放射線発生装置11の各部の基本的な構成は、上記第1発明等と同様であり、同一の部位、同一の部材については同じ符号を用い、説明も省略する。
図50に示すように、移動型放射線発生装置11において、本体部16の背面16Bには、カセッテ収納部28に収納した電子カセッテ12を固定するカセッテ固定機構(固定機構に相当する)66が設けられている。カセッテ固定機構66は、カセッテ収納部28に収納した電子カセッテ12の位置及び/又は姿勢が不用意に乱れることがないように電子カセッテ12を固定する。例えば、移動型放射線発生装置11の走行中には少なからず振動が発生する。カセッテ固定機構66を使用することで、台車部14が振動しても、カセッテ収納部28において電子カセッテ12の位置及び/又は姿勢が乱れることを防止できる。また、電子カセッテ12が固定されるため、電子カセッテ12と充電コネクタ31の接触不良を防止できる。
カセッテ固定機構66は、背面16Bにおいて、鉛直方向に延びるスライド溝66Aと、スライド溝66Aにスライド自在に取り付けられる固定部66Bと、固定部66Bのスライドを鍵を用いてロックするキーロック66Cとで構成される。固定部66Bは、鉛直方向において、カセッテ収納部28の上方において、固定部66Bに対して下方に位置するカセッテ収納部28と対向する位置に配置されている。固定部66Bは、例えば、横断面形状が逆J字形状をしている。固定部66Bは、下端部分がカセッテ収納部28に収納された電子カセッテ12の上端部分と当接して、カセッテ収納部28との間で電子カセッテ12を挟み込む形で固定する。
キーロック66Cは、スライド溝66A内の任意の位置で固定部66Bの位置をロックする。キーロック66Cを使用すれば、電子カセッテ12の盗難を防止することができる。
固定部66Bは、スライド溝66A内で移動して、カセッテ収納部28との間隔が変化する方向に移動自在である。このため、カセッテ固定機構66は、例えば、17インチ×17インチのサイズの電子カセッテ12A、及び/又は12インチ×10インチのサイズの電子カセッテ12Bなどの複数のサイズの電子カセッテ12を固定することが可能となっている。
また、図13において説明したとおり、充電コネクタ31の位置は、異なるサイズの電子カセッテ12A、12Bに対応させるため、背面16Bにおいて幅方向の位置が中央位置からオフセットされている。電子カセッテ12A、12Bは、カセッテ収納部28の充電コネクタ31側に寄せて収納されるため、カセッテ固定機構66の位置も幅方向の位置が中央位置からオフセットされている。
図51及び図52は、電子カセッテ12Aを固定する例を示している。図51は、固定部66Bが初期位置にある場合を示し、図52は、固定部66Bを電子カセッテ12Aの上端と当接する位置にスライドさせた状態を示している。図53及び図54は、小型の電子カセッテ12Bを固定する例を示している。図53は、固定部66Bが初期位置にある場合を示し、図54は、固定部66Bを電子カセッテ12Bの上端と当接する位置にスライドさせた状態を示している。このように、カセッテ固定機構66は、複数のサイズの電子カセッテ12A、12Bを固定することができる。
「第7発明の実施形態」
図55及び図56に示す第7発明は、照射スイッチ23の形態に関する。移動型放射線発生装置11の各部の構成は、上記第1発明等と同様であり、同一の部位、同一の部材については同じ符号を用い、説明も省略する。
図56に示すように、照射スイッチ23にはフック23Aが設けられている。フック23Aを設けることで、図55に示すように、照射スイッチ23をハンドル19に引っ掛けることができる。ハンドル19は、水平方向に延びるバーハンドルであり、支柱18のほぼ全周に配置されている。照射スイッチ23にフック23Aを設けることで、ハンドル19が配置される支柱18回りの任意の位置に照射スイッチ23を配置しておくことが可能となる。
「第8発明の実施形態」
図57及び図58に示す第8発明は、X線照射部15の照射野限定器15Bの調節つまみ71の機能に関する。移動型放射線発生装置11の各部の構成は、上記第1発明等と同様であり、同一の部位、同一の部材については同じ符号を用い、説明も省略する。
図57に示すように、調節つまみ71は、照射野限定器15Bの筐体の外周面に配置されている。図58に示すように、照射野限定器15Bは、例えば、X線に対する遮蔽性を有する複数枚の遮蔽板72と、遮蔽板72の位置を移動して出射開口のサイズを調節する調節機構73とを有している。照射野限定器15Bには、照射野の位置を確認するための可視光を発光するランプ76と、ランプ76を点灯する点灯回路78と、可視光を反射する反射ミラー77とを有している。
反射ミラー77は、X線の照射経路内において配置されており、ランプ76とX線のそれぞれの光軸に対して45°の角度で配置されており、出射開口を通じて可視光を照射する。可視光の照射野を確認することで、X線撮影前にX線の照射野を確認することができる。可視光の照射野を確認しながら、調節つまみ71が操作されて、出射開口のサイズが変更される。調節つまみ71は、調節機構73に加えて、点灯回路78にも接続されており、調節つまみ71を操作すると、点灯回路78が作動してランプ76が点灯するようになっている。調節つまみ71の他に、ランプ点灯スイッチを操作する必要が無いため、操作性がよい。
上記各発明の実施形態では、X線照射部15を電子カセッテと組み合わせて使用しているが、電子カセッテの代わりに、画像記録媒体としてX線フィルムを使用するフィルムカセッテとX線照射部15を組み合わせて使用することも可能である。
また、上記各発明は、X線以外のγ線などの放射線を照射する放射線照射器にも適用可能である。また、上記各発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、上記各発明及び/又は各実施形態の組み合わせなど、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。各発明及び/又は各実施形態の組み合わせは、1つの発明の全部又は一部と他の発明の全部又は一部を組み合わせることも可能である。
上記説明に基づいて、特許請求の範囲に記載の発明の他、以下の付記項に記載の発明を把握することができる。
「第1の付記項」(第3発明に関する)
[第1の付記項1]
前輪及び後輪を有する走行可能な台車部と、
前記台車部に立設され、前記放射線照射部が取り付けられるアーム部を支持する支柱であって、前記台車部の前後方向において前記前輪と前記後輪の間に配置される支柱と、
前記台車部に搭載され、前記支柱の後方側に張り出して配置される本体部であり、前記前輪側の前面、前記後輪側の背面、前記前面と前記背面を結ぶ第1及び第2の各側面、及び鉛直方向において上方に位置する上面を有する本体部と、
前記支柱の後方で、かつ、前記本体部よりも上方に配置されたハンドルであって、前記本体部の背面側に位置し、前記本体部の前後方向と直交する幅方向に延びる後方バー部と、前記第1及び第2の各側面側にそれぞれ位置し、前記本体部の前後方向に延びる第1及び第2の各側方バー部とを有するバーハンドルと、
操作部が配置される操作面を有する操作パネルと、
前記本体部の上面に設けられ、前記操作パネルを、鉛直方向に延びる回転軸回りに回転自在に支持する縦支柱部であって、前記第1の側方バー部よりも前記第2側方バー部に近い位置に配置された縦支柱部と、
一端が前記縦支柱部に取り付けられ、他端側に前記操作パネルが取り付けられるアーム部であって、前記縦支柱部を基準に前記回転軸と直交する水平方向に延びる横アーム部とを備えており、
前記横アーム部は、前記一端から前記他端までの長さが、前記縦支柱部と前記第2の側方バー部との距離よりも長い移動型放射線発生装置。
[第1の付記項2]
前記横アーム部の長手軸が前記本体部の幅方向と平行で、かつ、前記操作パネルの操作面が前記幅方向と平行な姿勢で後方に向いている初期位置においては、前記操作パネルは、前記ハンドルの内側に収まる第1の付記項1に記載の移動型放射線発生装置。
[第1の付記項3]
前記縦支柱は、前記第2の側方バー部に近い位置と、前記第1の側方バー部に近い位置との間で移動可能に設けられている第1の付記項2に記載の移動型放射線発生装置。
[第1の付記項4]
前記背面に設けられ、検出面の平面形状が矩形状で扁平な形態の放射線画像検出器を、前記検出面が前記背面と平行になる姿勢で収納する収納部を備えている第1の付記項1〜3のいずれか1項に記載の移動型放射線発生装置。
「第2の付記項」(第5発明に関する)
[第2の付記項1]
前輪及び後輪を有する台車部と、
自由端に前記放射線照射部が取り付けられるアーム部と、
前記台車部に立設され、上端部において、前記アーム部の基端を、前記台車部の前後方向と直交する幅方向と平行な回転軸を中心に回転自在に支持する支柱部とを備えており、
前記支柱部は、前記上端部を含む一部が前記台車部の前方に傾斜しており、傾斜角度は固定されている移動型放射線発生装置。
[第2の付記項2]
前記アーム部の長手軸方向の長さは固定されている第1の付記項1に記載の移動型放射線発生装置。
[第2の付記項3]
前記アーム部は、前記回転軸を中心に回転して、前記X線照射部が前記支柱の前記上端部よりも下方になる収納位置まで移動する第2の付記項2に記載の移動型放射線発生装置。
「第3の付記項」(アーム部の解除操作部に関する)
[第3の付記項1]
台車部と、
前記台車部に鉛直方向に立設され支柱部と、
自由端に前記放射線照射部が取り付けられ、基端が、前記支柱部の前記鉛直方向における上端部に支持されるアーム部であって、前記台車部の前後方向と直交する幅方向と平行な回転軸を中心に回転自在であり、前記放射線照射部が前記上端部よりも鉛直方向において下方になる収納位置に移動するアーム部と、
前記収納位置における前記アーム部の移動ロックを解除する解除操作部であって、前記アーム部において前記放射線照射部の付け根部分に配置され、前記アーム部の長手軸に沿ってスライド自在であり、前記アーム部が前記収納位置にある場合に、前記アーム部の基端側に向けてスライドされる解除操作部とを、備えている移動型放射線発生装置。
[第3の付記項2]
前記アーム部は、前記回転軸回りの任意の位置において摩擦力で停止する第3の付記項1に記載の移動型放射線発生装置。
[第3の付記項3]
前記アーム部は、前記収納位置から上方に向けて展開された後、再び収納位置に移動されると、自動的に移動がロックされる第3の付記項2に記載の移動型放射線発生装置。
「第4の付記項」(カセッテ固定機構に関する)
[第4の付記項1]
台車部と、
前記台車部に鉛直方向に立設され支柱部と、
自由端に前記放射線照射部が取り付けられ、基端が前記支柱部に支持されるアーム部と、
前記台車部に搭載された本体部と、
前記本体部の背面に設けられ、放射線画像検出器の少なくとも一部を収納する収納部と、
前記収納部に収納された前記放射線画像検出器を固定する固定機構とを備え、
前記固定機構は、前記鉛直方向の上方において前記収納部と対向する位置に配置され、前記収納部に下端部分が収納された放射線画像検出器の上端部分と当接して、固定する固定部とを有し、
前記固定部は、前記収納部との間隔が変化する方向に移動自在である移動型放射線発生装置。
[第4の付記項2]
前記固定部は、鉛直方向においてスライド自在である第4の付記項1に記載の移動型放射線発生装置。
[第4の付記項3]
前記カセッテ収納部内において、前記本体部の幅方向の中心位置からオフセットされた位置に、前記放射線画像検出器を充電する充電コネクタが配置されており、
前記固定部の前記幅方向の位置も、前記充電コネクタと対応する位置にオフセットされている第4の付記項2に記載の移動型放射線発生装置。