以下、本発明の一実施形態および変形例を図面に基づいて説明する。なお、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は適宜変更し得る。また、図1から図5および図7から図9の各図には、第1出力取出電極8aの延在方向に垂直な方向(図1の図面視右方向)を+X方向とする右手系のXYZ座標系が付されている。また、断面図である図3から図5の各図においては、簡単のため一部にのみハッチングを入れている。
<太陽電池素子の基本構成>
まず、本実施形態の太陽電池素子の基本構成について説明する。図1から図3に示すように、太陽電池素子10は、第1主面10a、第2主面10bおよび側面10cを有している。第2主面10bは、主に入射光を受光する面(受光面)である。また、第1主面10aは、太陽電池素子10の第2主面10bの反対側に位置する面(例えば非受光面)である。側面10cは、第1主面10aと第2主面10bとを接続する面である。図3では、第2主面10bが太陽電池素子10の+Z方向側の上面として描かれており、第1主面10aが太陽電池素子10の−Z方向側の下面として描かれている。
また、太陽電池素子10は、半導体基板1、第1パッシベーション層5、第2パッシベーション層6、反射防止層7、第1電極8および第2電極9を備えている。ただし、第2パッシベーション層6は無くてもよい。
また、半導体基板1は、図3に示すように、p型半導体領域である第1半導体領域2とn型半導体領域である第2半導体領域3とが積み重ねられている構成を有している。ここでは、第1半導体領域2は、半導体基板1の最も第1主面1a(図中の−Z方向側の面)側に位置している。また、第2半導体領域3は、半導体基板1の最も第2主面1b(図中の+Z方向側の面)側に位置している。第1半導体領域2は、p型の導電型の半導体領域であり、第2半導体領域3は、n型の導電型の半導体領域である。そして、第1半導体領域2と第2半導体領域3とがpn接合領域を形成している。なお、半導体基板1は、pn接合領域以外に、例えば第1半導体領域2と第2半導体領域3との間にi型半導体領域等の他の半導体領域が介在して、半導体接合領域を備えていてもよい。
さらに、第1パッシベーション層5は、例えば図4に示すように、第1半導体領域2の上(図中の−Z方向側)に配置されている第1酸化物層51の上に、少なくとも第2酸化物層52および第3酸化物層53がこの順で積層されている。ここで、第1酸化物層51と第2酸化物層52との間には第1界面層54を有していてもよい。また、第2酸化物層52と第3酸化物層53との間には第2界面層55を有していてもよい。
また、例えば図5に示すように、第2パッシベーション層6を設ける場合は、図4に示
す積層構造を上下逆にしたような構造を有していてもよい。すなわち、第2半導体領域3の上(図5の+Z方向側)に配置された第4酸化物層61の上に、少なくとも第5酸化物層62および第6酸化物層63がこの順で積層されていてもよい。ここで、第4酸化物層61と第5酸化物層63との間には第3界面層64を有していてもよい。また、第5酸化物層62と第6酸化物層63との間には第4界面層65を有していてもよい。
第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6のパッシベーション効果としては、内蔵電界(パッシベーション層の存在によって界面付近に電界が形成されること)によるパッシベーション効果(電界効果パッシベーション)と、界面のダングリングボンドを終端することによるパッシベーション効果(ケミカルパッシベーション)とがある。ここで、電界効果パッシベーションとは、パッシベーション層の固定電荷密度が大きいほど効果を奏することを意味するものであり、例えば、p型シリコンに対しては、パッシベーション層は負の固定電荷密度が大きいほどよい。また、ケミカルパッシベーションとは、界面準位密度が小さいほど効果を奏することを意味するものである。
第1パッシベーション層5における第1酸化物層51および第3酸化物層53、ならびに、第2パッシベーション層6における第4酸化物層61および第6酸化物層63は、いずれも主として酸化アルミニウムを含む。また、第1パッシベーション層5における第2酸化物層52および第2パッシベーション層5における第5酸化物層62は、いずれも主としてジルコニウム酸化物およびハフニウム酸化物のうち少なくとも1種を含む。さらに、第3酸化物層53は第1酸化物層51および第2酸化物層52のいずれよりも厚く、第6酸化物層63は第4酸化物層61および第5酸化物層62のいずれよりも厚い。
このような構成によれば、半導体基板1に近い第1酸化物層51および第4酸化物層61によって、ケミカルパッシベーションの効果を期待することができる。また、第2酸化物層52および第4酸化物層61の存在によって、第1酸化物層51および第4酸化物層61の電界効果パッシベーションの効果をさらに高めることができる。さらに、第3酸化物層53および第6酸化物層63の存在によって、第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6の全体の厚みを適度にすることができて、パッシベーションの効果をさらに高めることができる。
第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6は以下の構成であると、さらによい。まず、第2酸化物層52は第1酸化物層51よりも薄いとよい。同様に、第5酸化物層62は第4酸化物層61よりも薄いとよい。なぜなら、第2酸化物層52および第5酸化物層62の存在によって、第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6の固定電荷を適度に増やすことができるからである。
第3酸化物層53は第1酸化物層51および第2酸化物層52の合計の厚みよりも厚いとよい。同様に、第6酸化物層63は第4酸化物層61および第5酸化物層62の合計の厚みよりも厚いとよい。なぜなら、第3酸化物層53および第6酸化物層63の厚みが適度であることによって、有効ライフタイムを長くすることができるからである。
また、第1酸化物層51および第3酸化物層53がいずれも酸化アルミニウム層であり、第2酸化物層52が特に酸化ハフニウム層であるとよい。同様に、第4酸化物層61および第6酸化物層63がいずれも酸化アルミニウム層であり、第5酸化物層62が特に酸化ハフニウム層であるとよい。なぜなら、主に有効ライフタイムを長くすることに寄与する酸化アルミニウム層を主体とすることができて、酸化アルミニウム層よりも固定電荷を増大することが可能な酸化ハフニウム層とすることで最適な第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6を実現することができるからである。
また、第1酸化物層51の厚みが2nm以上5nm未満であるとよい。同様に、第4酸化物層61の厚みが2nm以上5nm未満であるとよい。なぜなら、第1酸化物層51および第4酸化物層61の厚みがいずれも2nm以上5nm未満であると、この範囲内で有効ライフタイムが最長になることがわかったからである。
第1パッシベーション層5の上(図3では図示されている第1パッシベーション層の下)には例えば窒化シリコンなどからなる第1保護層20が配置されていて、第2パッシベーション層6の上には第1保護層20と同様な材料からなる第2保護層30が配置されている。
<太陽電池素子の具体的構成>
次に、太陽電池素子10の具体例について説明する。第1半導体領域2の半導体としては、例えば、単結晶シリコンおよび多結晶シリコン等といった結晶シリコン(c−Si)、または非晶質シリコン(a−Si)が採用され得る。ここでは、p型のドーパントとして、例えば、ボロン(B)およびガリウム(Ga)のうちの少なくとも一方が用いられることで、第1半導体領域2がp型の導電型を有する。第1半導体領域2の厚さは、例えば250μm以下であり、さらには150μm以下であってもよい。第1半導体領域2の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、平面視した状態で四角形状であれば、第1半導体領域2の製作が容易である。
第2半導体領域3は、p型の結晶シリコンの基板(以下、結晶シリコン基板という)における第2主面1b側の領域に、n型のドーパントとなる元素が拡散されることで、この結晶シリコン基板において第2主面1b側の表層内に形成される。このとき、結晶シリコン基板における第2半導体領域3以外の部分が第1半導体領域2となり得る。なお、n型のドーパントは、例えばリン(P)等であればよい。
また、図3に示すように、半導体基板1の第2主面1bにおいて、凹凸部11が配されている。ここで、凹凸部11における凸部の高さは、例えば、0.1μm以上で且つ10μm以下であればよく、凸部の幅は、例えば、1μm以上で且つ20μm以下程度であればよい。また、凹凸部11の凹部の面形状は、例えば、略球面状であればよい。なお、ここでいう凸部の高さは、凹部の底面を通り且つ第1主面10aに平行な面(基準面)を基準とし、この基準面の法線方向における、この基準面から凸部の頂面までの距離を意味する。また、ここでいう凸部の幅は、上記基準面に平行な方向における、隣接する凹部の底面間の距離を意味する。
第1パッシベーション層5は、半導体基板1の第1主面1a側に配されている。つまり、第1パッシベーション層5は、第1半導体領域2の第1主面1a側に配されている。第1パッシベーション層5の材料としては、酸化アルミニウムが主体であればよい。太陽電池素子10に第1パッシベーション層5が存在している場合、パッシベーション効果によって、半導体基板1の第1主面1aにおける少数キャリアの再結合が低減される。これにより、太陽電池素子10の開放電圧および短絡電流が高まるため、太陽電池素子10の出力特性が向上する。なお、第1パッシベーション層5の厚さの平均値は、例えば、20nm以上で且つ100nm以下程度であればよい。なお、第1半導体領域2と第1パッシベーション層5との間に、さらにパッシベーションとして機能する層が介在してもよい。例えば、第1パッシベーション層が酸化アルミニウムであれば、第1半導体領域2と第1パッシベーション層5との間に、酸化シリコンなどのシリコンを含みパッシベーションとして機能する酸化物層が介在してもよい。
第1パッシベーション層5では、主たる材料である酸化アルミニウムが負の固定電荷密度を有していれば、第1半導体領域2において第1パッシベーション層5との界面近傍に
おいて少数キャリアである電子が減少する方向に、エネルギーバンドが曲がる。具体的には、第1半導体領域2においては、第1パッシベーション層5との界面に近づけば近づく程、電子電位が増大するように、エネルギーバンドが曲がる。これにより、いわゆる内蔵電界によるパッシベーション効果が増大する。さらに、この第1パッシベーション層5については、組成等が適宜調整されることで、内蔵電界によるパッシベーション効果およびダングリングボンドの終端によるパッシベーション効果が増大し得る。
第2パッシベーション層6は、半導体基板1の第2主面1b側に配されている。つまり、第2パッシベーション層6は、第2半導体領域3の第2主面1b側に配されている。この第2パッシベーション層6が存在している場合、いわゆるダングリングボンドの終端によるパッシベーション効果によって、半導体基板1の第2主面1b側における少数キャリアの再結合が低減される。これにより、太陽電池素子10の開放電圧および短絡電流が高まるため、太陽電池素子10の出力特性が向上する。なお、第2パッシベーション層6の厚さの平均値も、第1パッシベーション層と同様に、例えば、20nm以上で且つ100nm以下程度であればよい。
ここで、第2パッシベーション層6の材料として、主に酸化アルミニウムが採用される場合は、例えば、第2パッシベーション層6の上に、正の界面固定電荷密度を有する例えば窒化シリコンリなどからなる反射防止層7が、第2パッシベーション層6よりも厚く配されればよい。このような構成が採用されれば、第2半導体領域3において第2パッシベーション層6との界面近傍において、第2パッシベーション層6が負の界面固定電荷密度を有しても、少数キャリアである正孔が増加する方向にエネルギーバンドが曲がる不具合が低減される。その結果、半導体基板1の第2主面1b側における少数キャリアの再結合の増大による特性劣化が抑制される。
第1パッシベーション層5における第1酸化物層51および第3酸化物層53、ならびに、第2パッシベーション層6における第4酸化物層61および第6酸化物層63は、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層蒸着)法を用いることによって容易に形成でき
る。ALD法を採用する場合、例えば、アルミニウム供給用としてのトリメチルアルミニウム(TMA)またはトリエチルアルミニウム(TEA)などアルミニウム(Al)を含んだ有機金属ガスと、アルミニウムを酸化させるためのオゾン(O3)または水(H2O)など酸素(O)を含んだガスとを原料とする。
また、第1パッシベーション層5における第2酸化物層52、および、第2パッシベーション層6における第5酸化物層62は、上述したように、ALD法を用いることによって容易に形成できる。ALD法を採用する場合、第2酸化物層52および第5酸化物層62が例えばジルコニウムを含む場合、ジルコニウム供給用として、例えばTEMAZ(化学式:Zr[N(CH3)CH2CH3]4)またはTDMAZ(化学式:[Zr(N(CH3)2)4]2)などのジルコニウム(Zr)を含んだ有機金属ガスと、ジルコニウムを酸化させるためのオゾン(O3)または水(H2O)など酸素(O)を含んだガスとを原料とする。また、第2酸化物層52および第5酸化物層62が例えばハフニウムを含む場合、ハフニウム供給用として、例えばTEMAH(化学式:Hf[N(CH3)CH2CH3]4)またはTDMAH(化学式:[Hf(N(CH3)2)4]2)などのハフニウム(Hf)を含んだ有機金属ガスと、ハフニウムを酸化させるためのオゾン(O3)または水(H2O)など酸素(O)を含んだガスとを原料とする。
また、第1パッシベーション層5における第1界面層54および第2界面層55、ならびに、第2パッシベーション層6における第3界面層64および第4界面層65は、自然に形成し得る複合酸化膜からなる界面層であり、厚みが1nm以下である。
第1パッシベーション層5の上(図3に示す第1パッシベーション層5の−Z方向側)には、例えば、厚さが60nm程度の窒化シリコン等からなる第1保護層20が配置されている。太陽電池素子10に第1保護層20が存在することによって、外部からの透湿を抑制してパッシベーション効果を損なわないようにすることができて、太陽電池素子10の電気的特性等を損なわずに、信頼性等を向上させることができる。第1保護層20は、例えば成膜法によって形成する場合には、ALD法、スパッタリング法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法またはP−CVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法等によって容易に形成される。
第1界面層54、第2界面層55、第3界面層64および第4界面層65は、例えばジルコニウムおよびハフニウムのうち少なくとも1種を含む酸化物を有している。これらの層がジルコニウムを含む酸化物である場合は、例えば、ZrxAlyO1−x−y、ZrxMgyO1−x−y、ZrxCayO1−x−yまたはZrxYyO1−x−y等を有している。また、これらの層がハフニウムを含む酸化物である場合は、例えば、HfxAlyO1−x−y、HfxMgyO1−x−y、HfxCayO1−x−yまたはHfxYyO1−x−y等を有している。なお、上記のxおよびyは、0<y<1、0<x<1、x+y<1の関係を満足する。これらの酸化物は、いずれも透湿の抑制および熱安定性等の点で優れている。また、このような複合酸化物層の存在は、太陽電池素子10の熱安定性および非透湿性が向上するので好ましい。
また、図5に示すように、第2パッシベーション層6の上には、例えば、厚さが60nm程度の第1保護層20と同様な組成の第2保護層30が配置されていてもよい。この第2保護層30も、第1保護層20と同様な作用効果を有する。第2保護層30は、例えば成膜法によって形成する場合には、ALD法、スパッタリング法、MOCVD法またはP−CVD法等によって形成されて配置される。太陽電池素子10に第2保護層30が存在することによって、外部からの透湿を抑制してパッシベーション効果を損なわないようにすることができて、太陽電池素子10の電気的特性等を損なわずに、信頼性等を向上させることができる。なお、第2保護層30は第2パッシベーション層6と反射防止層7との反応によって、自然に形成された層でもよい。つまり、反射防止層7が後述するように窒化シリコン(Si3N4等)または酸化シリコンであれば、反射防止層7と隣り合う第6酸化物層63との間には、アルミニウムおよびシリコンを含む酸化物からなる層が、厚み1nm程度またはそれよりも薄く自然に形成され得る。
反射防止層7は、太陽電池素子10における光の吸収の効率を向上させるための層である。反射防止層7は、第2パッシベーション層6の第2主面10b側に配されている。反射防止層7の材料は、例えば、窒化シリコンまたは酸化シリコン等であればよい。反射防止層7の厚さは、半導体基板1および反射防止層7の材料に応じて適宜設定されればよい。
ここで、第1パッシベーション層5における第1界面層54および第2界面層55、ならびに、第2パッシベーション層6における第3界面層64および第4界面層65を構成する元素の存在は、例えば、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry),TEM(Transmission Electron Microscope)、EELS(Electron Energy-Loss Spectroscopy)、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)またはRBS(Rutherford Backscattering Spectrometry)等の分析法によって確認することができる。
このように、太陽電池素子10が反射防止層7を有していることによって、太陽電池素子10において、特定波長領域の光に対して反射され難い条件が実現される。ここで、特定波長領域の光とは、太陽光の照射強度のピーク波長の前後における波長領域を指すものとする。なお、半導体基板1が結晶シリコン基板である場合には、反射防止層7の屈折率
は、例えば、1.8以上で且つ2.3以下程度であればよく、反射防止層7の厚さの平均値は、例えば、20nm以上で且つ120nm以下程度であればよい。
なお、反射防止層7は半導体基板1の側面10c側に設けられてもよい。この場合には、反射防止層7は、これを特にALD法で形成すると緻密になるので、半導体基板1の側面10cにおいてもピンホール等の微小な開口部が形成されることが大幅に低減されて、リーク電流の発生による特性劣化を避けることができる。
第3半導体領域4は、半導体基板1の第1主面1a側に配されている。第3半導体領域4は、第1半導体領域2と同一のp型の導電型を有している。そして、第3半導体領域4におけるドーパントの濃度は、第1半導体領域2におけるドーパントの濃度よりも高い。第3半導体領域4は、第1半導体領域2を形成するために半導体基板1にドープされるp型のドーパントよりも高い濃度でp型のドーパントが半導体基板1にドープされることによって形成される。
第3半導体領域4は、半導体基板1の第1主面1a側において内蔵電界を生じさせて、半導体基板1の第1主面1a側の領域における少数キャリアの再結合を低減する役割を有している。このため、第3半導体領域4の存在によって、太陽電池素子10における変換効率をより高めることができる。なお、第3半導体領域4は、例えば、半導体基板1の第1主面1a側にボロンまたはアルミニウム等のドーパントとなる元素をドーピングさせることによって形成される。
第1電極8は、半導体基板1の第1主面10a側に配されている。図2に示すように、第1電極8には、例えば、Y方向に延在する複数の第1出力取出電極8aと、X方向に延在する多数の線状の第1集電電極8bとが含まれている。ここで、第1出力取出電極8aの少なくとも一部は、複数の線状の第1集電電極8bと交差することで、これら複数の第1集電電極8bと電気的に接続されている。
第1集電電極8bの短手方向における幅は、例えば、50μm以上で且つ300μm以下程度であればよい。第1出力取出電極8aの短手方向における幅は、例えば、1.3mm以上で且つ3mm以下程度であればよい。つまり、第1集電電極8bの短手方向の幅は、第1出力取出電極8aの短手方向の幅よりも小さければよい。また、複数の第1集電電極8bのうちの隣り合う第1集電電極8b同士の間隔は、1.5mm以上で且つ3mm以下程度であればよい。さらに、第1電極8の厚さは、例えば、10μm以上で且つ40μm以下程度であればよい。なお、第1電極8は、例えば、銀を主成分として含有する導電性ペースト(銀ペースト)が、スクリーン印刷等によって半導体基板1の第1主面1a上に所望のパターンで塗布された後に焼成されることで、形成される。また、第1集電電極8bの材料に主にアルミニウムが使用され、第1出力取出電極8aの材料に主に銀が使用されてもよい。
第2電極9は、半導体基板1の第2主面10b側に配されている。図1に示すように、第2電極9には、例えば、Y方向に延在する複数の第2出力取出電極9aと、X方向に延在する多数の線状の第2集電電極9bとが含まれている。ここで、第2出力取出電極9aの少なくとも一部は、複数の線状の第2集電電極9bと交差することで、これら複数の第2集電電極9bと電気的に接続されている。
第2集電電極9bの短手方向における幅は、例えば、50μm以上で且つ200μm以下程度であればよい。第2出力取出電極9aの短手方向における幅は、例えば、1.3mm以上で且つ2.5mm以下程度であればよい。つまり、第2集電電極9bの短手方向の幅は、第2出力取出電極9aの短手方向の幅よりも小さければよい。また、複数の第2集
電電極9bのうちの隣り合う第2集電電極9b同士の間隔は、1.5mm以上で且つ3mm以下程度であればよい。さらに、第2電極9の厚さは、例えば、10μm以上で且つ40μm以下程度であればよい。なお、第2電極9は、例えば、銀ペーストがスクリーン印刷等によって半導体基板1の第2主面10b上に所望のパターンで塗布された後に焼成されることで、形成される。
<パッシベーション効果>
通常、酸化アルミニウムは、酸素(O)の原子密度を基準としたアルミニウム(Al)の原子密度の比率(第1比率)RAl/Oが2/3であるAl2O3の化学量論組成を有する。ここで、原子密度は、単位体積当たりの原子数を意味し、例えば、1cm3当たりの原子数(単位がatoms/cm3)で示される。しかし、第1比率RAl/Oが、2/3未満、具体的にはアルミニウムの原子密度を酸素の原子密度で除した第1比率が0.667未満であれば、Alが欠損している部分が存在し得る。本実施形態の第1パッシベーション層5,第2パッシベーション層6の主たる成分である酸化アルミニウムは、Alの組成的な欠損に起因して、負の固定電荷密度を生じるものと考えられる。この場合、酸化アルミニウムは、非化学量論組成を有し、γアルミナに近いアモルファス構造を有しているものと推定される。このことは、TEMまたはEELS等によって確認されている。
また、本実施形態の第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6における酸化アルミニウムは、Alの組成的な欠損が多い方が、負の固定電荷密度が高まり得る。ただし、第1パッシベーション層5の酸化アルミニウムを含む層である第1酸化物層51および第3酸化物層53、ならびに、第2パッシベーション層6の酸化アルミニウムを含む層である第4酸化物層61および第6酸化物層63を製造する上では、非化学量論組成の酸化アルミニウムとして、Al1.9O3.1程度の組成を有するものまでがAlの組成的欠損の下限である。このようにAl欠損を抑えることによって、酸化アルミニウムの膜密度(緻密性)が低くなり過ぎることがなく、膜品質を劣化させにくい。すなわち電気的なリークが起こりにくく、耐湿性が低下しにくい。このため、酸化アルミニウムの膜品質を良好にすることができ、ひいては太陽電池素子の特性および長期信頼性を維持することができる。そして、このAl1.9O3.1では、第1比率RAl/Oが約0.613(≒1.9/3.1)となる。従って、第1比率RAl/Oが、0.613以上で且つ0.667未満であれば、酸化アルミニウムが大きな負の固定電荷密度を有し得る。
また、酸化アルミニウムに水素(H)、CHn(nは自然数)等が含有されていれば、第1パッシベーション層5と第1半導体領域2との界面において、第1半導体領域2におけるシリコン(Si)の未結合手(ダングリングボンド)がH、OH、CHn(nは自然数)、O等によって終端される。すなわち、界面準位密度が低減することによって、パッシベーションの効果が増大する。
ところで、酸化アルミニウムでは、単純にAlが欠損しているだけであれば、Alが欠損している部分においてOの2p軌道に電子の空席ができる。すなわち、アクセプタ準位が生じる。この場合、第1原理計算によれば、Alの欠損部分における固定電荷Qは、3価のAlの欠損によって、酸化アルミニウムが接合しているシリコンからの電子を受容して−3価となり得る。これに対し、酸化アルミニウムにHが含有されていれば、Hは、Alの欠損部分と、酸化アルミニウムの格子間に存在し得る。このため、酸化アルミニウムでは、1価であるHがAlの欠損部分においてOと結合(OH結合)し得る。このとき、Alの欠損部分における固定電荷Qは、−3価から−2価に低下するが、Alの欠損部分における不安定性がOH結合によって和らげられるものと推定される。従って、Alの欠損を有する非化学量論組成の酸化アルミニウムの安定性が高まり得る。その結果、例えば第1パッシベーション層5が形成された後に、反射防止層7、第1電極8および第2電極9が形成される際に熱処理が施されても、酸化アルミニウムにおけるAlの欠損部分が消
滅し難くなり得る。
ここで、酸化アルミニウムにおいて、Hの原子密度がAlの欠損部分の数以上である場合には、Alのほぼ全ての欠損部分においてHがOと結合し、Alの欠損部分の安定性が高まり得る。このような酸化アルミニウムでは、Oの原子密度を基準としたAlの原子密度とHの原子密度との和の比率(第2比率)R(Al+H)/Oが、2/3以上、具体的には0.667以上であれば、Alの欠損部分の安定性が高まり得る。
この場合、酸化アルミニウム側の負の固定電荷発生メカニズムは、例えば下記のようなものと考えられる。
1次反応 Si:Si/Al:O:H → Si・Si/Al:O: + ・H
2次反応 ・H + ・H → H:H
2次反応 Al:O:CH3 + ・H → Al:O:H + ・CH3
以下、他の2次反応が続く。
ここで、上記反応式において、「・」は電子を表し、「/」は界面を表すものとする。また、上記反応式において結合に与らない電子は省略している。また、上記の複数の2次反応は並行して進行する。
上記1次反応では、Si側の電子が酸化アルミニウム側に移動するので、Si側には正の電荷が発生して、酸化アルミニウム側には負の電荷が発生する。
Si側に発生した正の電荷は、Siのバンドを界面に向かって上に曲げるように作用する。すなわち、伝導帯に存在する少数キャリアたる電子にとってポテンシャルバリアが発生したことになり、電子が界面に流れ込んで再結合して消滅することが抑制される。つまり少数キャリアの有効ライフタイムが増大する効果を発現させる(電界効果パッシベーション)。
一方、酸化アルミニウム側に発生した負の電荷は、界面近傍の酸化アルミニウム中に固定される。すなわち負の固定電荷となる。この酸化アルミニウム中の負の固定電荷は極めて安定しているので、太陽電池素子の製造プロセス中(焼成などの高温プロセス中など)でも失われることはない。つまり、負の固定電荷が安定して存在することが、前記Si側の正の電荷の安定性(電界効果パッシベーションの安定性)を保障していることになる。
上記メカニズムによって、第1半導体領域2においては、第1パッシベーション層5の第1酸化物層51との界面に近づけば近づく程、電子のエネルギーが増大するように、エネルギーバンドが曲がる。これにより、いわゆる内蔵電界によるパッシベーション効果が増大し得る。さらに、この第1酸化物層51については、組成等が適宜調整されることで、内蔵電界によるパッシベーション効果がより増大し得る。ここで、第2比率R(Al+H)/Oは、Alの原子密度とHの原子密度との和をOの原子密度で除した値である。
酸化アルミニウムにおいては、Hの含有量が多い方が、Alのほぼ全ての欠損部分においてHがOと結合し易い。ただし、特に第1酸化物層51を形成する上では、非化学量論組成の酸化アルミニウムとして、(Al+H)2.2O2.8程度の組成を有するものまでがH含有量の上限である。この上限を超えないようにすることによって、酸化アルミニウムの膜密度(緻密性)が低くなり過ぎることを抑えて、膜品質を劣化させにくい。すなわち電気的なリークが起こりにくく、耐湿性が低下しにくい。これらによって、太陽電池素子の特性および長期信頼性を維持することができる。
(Al+H)2.2O2.8では、第2比率R(Al+H)/Oは約0.786(≒2
.2/2.8)となる。したがって、第2比率R(Al+H)/Oが、0.667以上で且つ0.786未満であれば、非化学量論組成の酸化アルミニウムにおけるAlの欠損部分の安定性が高まり得る。すなわち、酸化アルミニウムによるパッシベーション効果が安定して生じ得る。
以上のことから、特に第1酸化物層51の内部において、第1比率RAl/Oが0.613以上で且つ0.667未満であり、第2比率R(Al+H)/Oが0.667以上で且つ0.786未満であれば、酸化アルミニウムによるパッシベーション効果が安定して生じ得る。その結果、第1半導体領域2における少数キャリアの再結合に要する有効ライフタイムが延長され得る。すなわち、パッシベーション効果の向上によって太陽電池素子10における変換効率がさらに高められ得る。
なお、ここで、第1酸化物層51の内部とは、厚さ方向の両主面近傍を除く内側の部分であればよい。つまり、第1酸化物層51における第1半導体領域2との界面近傍は含まれない。また、第1酸化物層51の内部は、第1酸化物層51における厚さ方向の中央部であってもよい。
また、第1酸化物層51における第1半導体領域2との界面近傍における第1比率RAl/Oが、第1酸化物層51の厚さ方向の中央部における第1比率RAl/Oよりも大きければ、内蔵電界によるパッシベーション効果および界面のSiにおけるダングリングボンドの終端によるパッシベーション効果が向上し得る。すなわち、第1半導体領域2における有効ライフタイムが延長されて、太陽電池素子10における変換効率がさらに高められ得る。
また、第1酸化物層51が炭素(C)を含有していれば、パッシベーション効果が向上し得る。例えば、第1酸化物層51のうちの第1半導体領域2との界面近傍における、Hの原子密度AHとCの原子密度ACとの和(合計原子密度)AH+Cが、第1酸化物層51の厚さ方向の中央部における合計原子密度AH+Cよりも大きければよい。そして、この場合、第1酸化物層51と第1半導体領域2との界面において、第1半導体領域2の半導体材料としてのSiのダングリングボンドがメチル基によって終端されていればよい。これにより、第1酸化物層51によるパッシベーションの効果がさらに増大する。その結果、第1半導体領域2における有効ライフタイムが延長されて、太陽電池素子10における変換効率がさらに高められる。
さらに、第1酸化物層51における厚さ方向の中央部ならびに第1半導体領域2との界面近傍におけるHの原子密度AHおよびCの原子密度ACに比例して、第1半導体領域2における有効ライフタイムが延長される。
ここでは、Hの原子密度AHの増加に伴い、酸化アルミニウムにおけるAlの欠損部分の安定化ならびに界面のSiのダングリングボンドのH、OH、CHn(nは自然数)、O等による終端が図られ、第1半導体領域2における有効ライフタイムが延長されるものと推定される。一方、Cの原子密度ACの増加に伴って第1半導体領域2における有効ライフタイムが長くなる理由については明確でない。ただし、TMAを原料としたALD法によって第1酸化物層51が形成される際に、第1酸化物層51において、Hの原子密度AHを増加させるためにCHn(nは自然数)の含有量を増加させた結果、Cの原子密度ACも増加するものと推定される。なお、CHnは、TMAによって供給されるだけでなく、例えば、メタンガス等といったその他の形態で供給されてもよい。
また、第1酸化物層51における第1半導体領域2との界面近傍におけるCの原子密度を基準としたHの原子密度の比率(Hの原子密度をCの原子密度で除した値:以下、第3
比率)RH/Cが、第1酸化物層51の厚さ方向の中央部における第3比率RH/Cよりも大きければよい。この場合、パッシベーション効果が向上し得るため、第1半導体領域2における有効ライフタイムが延長されて、太陽電池素子10における変換効率がさらに高められる。
ここで、ALD法が用いられて第1酸化物層51が形成される場合には、第1酸化物層51における第1半導体領域2との界面近傍では、第3比率RH/Cが1よりも大きくなる。このため、第1酸化物層51における第1半導体領域2との界面近傍では、Hが、主としてH(またはOH)あるいはCHn(nは自然数)の態様で存在しているものと推定される。これに対し、第1酸化物層51における厚さ方向の中央部から第1主面10aにかけた領域では、第3比率RH/Cが1未満となる。このため、第1酸化物層51における厚さ方向の中央部から第1主面10a側にかけた領域では、Hが、主としてH(またはOH)の態様で存在し、Cが主としてAlまたはOと結合した態様で存在しているものと推定される。
従って、この場合には、第1酸化物層51と第1半導体領域2との界面において、第1半導体領域2の半導体材料としてのSiのダングリングボンドがメチル基等によって終端されているものと推定される。このような構造によって、第1酸化物層51によるパッシベーションの効果がさらに増大する。その結果、第1半導体領域2における有効ライフタイムが延長され、太陽電池素子10における変換効率がさらに高められる。
<太陽電池素子の製造方法>
次に、上記構成を有する太陽電池素子10の製造プロセスの一例について説明する。図6は、太陽電池素子10の製造フローを例示するフローチャートである。図6に示すように、ステップSP1からステップSP7が順に行われることで、太陽電池素子10が製造される。
まず、ステップSP1では、p型の半導体基板1を準備する工程が行われる。半導体基板1が単結晶シリコン基板である場合は、例えばFZ(Floating Zone)法等を用いて半
導体基板1を形成する。また、半導体基板1が多結晶シリコン基板である場合は、例えば鋳造法等を用いて半導体基板1を形成する。ここで、半導体基板1としてp型の多結晶シリコン基板を用いた一例について説明する。まず、例えば、鋳造法によって半導体材料としての多結晶シリコンのインゴットを作製する。次に、そのインゴットを、例えば250μm以下の厚さで薄切りにする。その後、例えば、半導体基板1の表面に対して、NaOH、KOH、フッ酸またはフッ硝酸等の水溶液を用いたごく微量のエッチングを施すことで、半導体基板1の切断面における機械的なダメージを有する層および汚染された層を除去する。
ステップSP2では、半導体基板1の第1主面1aおよび第2主面1bのうち、少なくともこの第2主面1bに凹凸部を形成する。凹凸部の形成方法としては、例えば、NaOH等のアルカリ溶液またはフッ硝酸等の酸溶液を使用するウエットエッチング方法またはRIE(Reactive Ion Etching)等を使用するドライエッチング方法が採用される。
ステップSP3では、半導体基板1の凹凸部が形成された第2主面1bに、n型の導電型の第2半導体領域3を形成する。第2半導体領域3の厚さは、0.2μm以上で且つ2μm以下程度であればよい。また、第2半導体領域3のシート抵抗値は、40Ω/□以上で且つ200Ω/□以下程度であればよい。第2半導体領域3の形成方法としては、例えば、ペースト状にされたP2O5を半導体基板1の表面に塗布した後に熱拡散を施す塗布熱拡散法、または、ガス状態にしたPOCl3(オキシ塩化リン)を拡散源とした気相熱拡散法等が採用される。
ここで、例えば、気相熱拡散法が採用される場合には、まず、POCl3等の拡散ガスを含む雰囲気中において、600℃以上で且つ800℃以下程度の温度域で半導体基板1に対する熱処理が施される。これにより、燐ガラスが半導体基板1の第2主面1b上に形成される。この熱処理の時間は、例えば、5分以上で且つ30分以内程度であればよい。その後、アルゴンおよび窒素等の不活性ガスを主に含む雰囲気中において、800℃以上で且つ900℃以下程度の高温域で半導体基板1に対する熱処理が施される。これにより、燐ガラスから半導体基板1の第2主面1b側の領域にリンが拡散することで、第2半導体領域3が形成される。この熱処理の時間は、例えば、10分以上で且つ40分以内程度であればよい。
ところで、第2半導体領域3が形成される際に、半導体基板1の第1主面1a側にも第2半導体領域3が形成された場合には、第1主面1a側に形成された第2半導体領域3をエッチングによって除去すればよい。これにより、半導体基板1の第1主面1aにおいてp型の導電型の半導体領域2が露出される。例えば、半導体基板1の第1主面1a側のみをフッ硝酸の溶液に浸すことで、第1主面1a側に形成された第2半導体領域3が除去される。また、その後に、半導体基板1の第2主面1b側に形成された燐ガラスをエッチングによって除去すればよい。このように、半導体基板1の第2主面1b上に燐ガラスが残存した状態で第1主面1a側に形成された第2半導体領域3が除去されることで、第2主面1b側における第2半導体領域3の除去と、この第2半導体領域3に付与されるダメージとが生じ難い。このとき、半導体基板1の第2主面1b上に燐ガラスが残存した状態で半導体基板1の側面1cに形成された第2半導体領域3が併せて除去されてもよい。
また、半導体基板1の第1主面1a上に拡散マスクが予め配された状態で、気相熱拡散法等によって第2半導体領域3が形成され、その後に、拡散マスクが除去されてもよい。このようなプロセスによれば、半導体基板1の第1主面1a側には第2半導体領域3が形成されない。このため、半導体基板1の第1主面1a側に形成された第2半導体領域3を除去する工程が不要となる。
なお、第2半導体領域3の形成方法は、上記方法に限定されない。例えば、薄膜技術が用いられて、n型の水素化アモルファスシリコンの膜または微結晶シリコンの膜を含む結晶質のシリコンの膜等が形成されてもよい。さらに、第1半導体領域2と第2半導体領域3との間にi型の導電型を有するシリコンの領域が形成されてもよい。
次のステップSP4では、第1半導体領域2の第1主面1a上に第1パッシベーション層5を形成するとともに、第2半導体領域3の第2主面1b上に第2パッシベーション層6を形成する。第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6の形成方法としては、例えば、ALD法が採用され得る。これにより、半導体基板1の全周囲に同時に、第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6が形成され得る。つまり、半導体基板1の側面1cにも酸化アルミニウム層を主として含むパッシベーション層が形成され得る。
ALD法が採用された場合には、成膜装置のチャンバー内に上記ステップSP3で第2半導体領域3が形成された半導体基板1が載置され、この半導体基板1が100℃以上で且つ250℃以下の温度域で加熱された状態で、次の工程Aから工程Dが繰り返される。これにより、所望の厚さを有する第1パッシベーション層5における第1酸化物層51および第3酸化物層53、ならびに、第2パッシベーション層6における第4酸化物層61および第6酸化物層63が形成される。
[工程A]TMA等のAl原料を、ArガスまたはN2ガス等のキャリアガスとともに
半導体基板1上に供給することで、半導体基板1にAl原料が吸着する。ここで、半導体基板1の表面におけるダングリングボンドはOH基の形で終端されていることが望ましい。すなわち、Si基板の場合でいえば、Si−O−Hの形であることが望ましい。この構造は、Si基板を希フッ酸で処理する工程での純水リンス条件、その後の硝酸等の酸化性溶液による処理、またはオゾン処理などによって形成することができる。なお、TMAが供給される時間は、例えば、15m秒以上で且つ3秒以下程度であればよい。工程Aでは下記反応が生じる。
Si−O−H + Al(CH3)3 → Si−O−Al(CH3)2 + CH4↑
この反応によって半導体基板1の全周囲にAl原料が吸着する。
[工程B]N2ガスによって成膜装置のチャンバー内の浄化を行うことで、このチャンバー内のAl原料を除去するとともに、半導体基板1に物理吸着および化学吸着したAl原料のうち、原子層レベルで化学吸着した成分以外のAl原料を除去する。なお、N2ガスによってチャンバー内が浄化される時間は、例えば、1秒以上で且つ数十秒以内程度であればよい。
[工程C]水またはO3ガス等の酸化剤を、成膜装置のチャンバー内に供給することで、TMAに含まれるアルキル基としてのメチル基を除去してOH基で置換する。つまり、下記反応が生じる。
Si−O−Al−CH3 + HOH → Si−O−Al−OH +CH4↑
ここで、左辺の「Si−O−Al−CH3」は、正確には「Si−O−Al(CH3)2」と表現されるべきところであるが、表記が煩雑となるので、CH3ひとつについての反応のみを表現する上記反応式を示した。
これにより、半導体基板1の上に酸化アルミニウムの原子層が形成される。なお、酸化剤がチャンバー内に供給される時間は、好適には750m秒以上で且つ1.1秒以下程度であればよい。また、例えば、チャンバー内に酸化剤ととともにHが供給されることで、酸化アルミニウムにHがより含有され易くなる。
[工程D]N2ガスによって成膜装置のチャンバー内の浄化を行うことで、このチャンバー内の酸化剤を除去する。このとき、例えば、半導体基板1上における原子層レベルの酸化アルミニウムの形成時において反応に寄与しなかった酸化剤等が除去される。なお、N2ガスによってチャンバー内が浄化される時間は、例えば、1秒程度であればよい。
ここで再び工程Aに戻ると、次の反応が生じる。
Si−O−Al−OH + Al(CH3)3 →
Si−O−Al−O−Al(CH3)2 + CH4↑
以後、工程B→工程C→工程D→工程A→・・・のように、工程Aから工程Dの一連の工程を複数回繰り返すことで、所望の膜厚の酸化アルミニウム層が形成される。
このようにして、第1パッシベーション層5における第1酸化物層51および第3酸化物層53、ならびに、第2パッシベーション層6における第4酸化物層61および第6酸化物層63をALD法によって形成することで、半導体基板1の表面に微小な凹凸があってもその凹凸に沿って酸化アルミニウム層が均一に形成され得る。これにより、半導体基板1の表面におけるパッシベーション効果が高まり得る。
次に、第1パッシベーション層5における第2酸化物層52、および、第2パッシベーション層6における第5酸化物層62の形成方法について説明する。第2酸化物層52および第5酸化物層62の形成方法としては、例えば上述したALD法が採用され得る。これによって、酸化アルミニウムを主体とする第1酸化物層51および第4酸化物層61の
上に迅速且つ容易に第2酸化物層52および第4酸化物層62を形成することができる。また、これらの酸化物層が第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6に含まれることで、パッシベーション効果をさらに増大させることが可能となる。
第2酸化物層52および第5酸化物層62の形成方法は、上述したアルミニウムに代えて例えばジルコニウムまたはハフニウムとした同一方法で行うとよい。
ただし、上記の工程Aおよび工程Cにおいて生じる反応は、酸化ジルコニウムまたは酸化ハフニウムにおいても同様であるが、例えばZrの原材料はTEMAZ(化学式:Zr[N(CH3)CH2CH3]4)またはTDMAZ(化学式:[Zr(N(CH3)2)4]
2)を使用する場合がある。例えば、TEMAZの場合の上記工程Aの反応式は、
Si−O−H + Zr[N(CH3)CH2CH3]4 → Si−O−Zr[N(CH3)CH2CH3]3 + CH4↑ + H2↑ ・・・となる。
また、上記工程Cにおいては、下記反応式で表される、
Si−O−Zr[N(CH3)CH2CH3]3 + HOH → Si−O−Zr−OH
+CH4↑ + H2↑ ・・・の反応が生じる。
また、例えばHfの原材料を用いる場合には、TEMAH(化学式:Hf[N(CH3)
CH2CH3]4)またはTDMAH(化学式:[Hf(N(CH3)2)4]2)を使用する場合がある。例えば、TEMAHの場合の上記工程Aの反応式は、
Si−O−H + Hf[N(CH3)CH2CH3]4 → Si−O−Hf[N(CH3)CH2CH3]3 + CH4↑ + H2↑ ・・・となる。
また、上記工程Cにおいては、下記反応式で表される、
Si−O−Hf[N(CH3)CH2CH3]3 + HOH → Si−O−Hf−OH
+CH4↑ + H2↑ ・・・の反応が生じる。
そして、これら工程を繰り返し行うことによって、第1パッシベーション層5においては、第1酸化物層51の上に第2酸化物層52を形成することができて、第2パッシベーション層6においては、第4酸化物層61の上に第2酸化物層52を形成することができる。
ここで、図4に示す第1界面層54および第2界面層55、ならびに、図5に示す第3界面層64および第4界面層65は、第2酸化物層52、第3酸化物層53、第5酸化物層62および第6酸化物層63の形成の際に自然に形成され得る。
次に、ステップSP5において、図4に示す第1保護層20および図5に示す第2保護層30の製造方法の一例について説明する。
第1保護層20および第2保護層30は、例えば窒化シリコンを含む層とすることができて、その場合、後述する反射防止層7の形成の際に反射防止層7と同一方法を用いて形成することが可能である。第2保護層30は設けなくともよく、第1保護層20および反射防止層7を次に示すステップSP6で形成するようにしてもよい。
次に、ステップSP6では、半導体基板1の第2主面1b側に配された第2保護層30または第2パッシベーション層6の上に反射防止層7を形成する。反射防止層7の形成方法としては、例えば、PECVD(plasma enhanced chemical vapor deposition)法、
ALD法、蒸着法またはスパッタリング法等が採用され得る。例えば、PECVD法が採用される場合には、成膜装置において、SiH4ガスとNH3ガスとの混合ガスが、N2
ガスで希釈され、チャンバー内におけるグロー放電分解によってプラズマ化されて、第2パッシベーション層6上に窒化シリコンが堆積される。これにより、窒化シリコンを含む反射防止層7が形成され得る。なお、窒化シリコンの堆積時におけるチャンバー内の温度は、例えば、500℃程度であればよい。そして、反射防止層7がALD法以外のPECVD法、蒸着法またはスパッタリング法等によって形成されることで、所望の厚さの反射防止層7が短時間で形成される。これにより、太陽電池素子10の生産性が向上する。
次に、ステップSP7では、第3半導体領域4、第1電極8および第2電極9を形成する。
ここで、第3半導体領域4および第1電極8の形成方法について説明する。まず、ガラスフリットおよびアルミニウムの粒子を含有しているアルミニウムペーストが、第1パッシベーション層5上の所定領域に塗布される。次に、最高温度が600℃以上で且つ800℃以下の高温域における熱処理が行われるファイヤースルー法によって、アルミニウムペーストの成分が、第1パッシベーション層5を透過して、半導体基板1の第1主面1a側に第3半導体領域4が形成される。このとき、第3半導体領域4の第1主面1a上にアルミニウムの層が形成される。なお、このアルミニウムの層は、第1電極8の一部としての第1集電電極8bとして使用され得る。ここで、第3半導体領域4が形成される領域は、図7に示すように、例えば、半導体基板1の第1主面1aにおいて、第1集電電極8bと第1出力取出電極8aの一部が形成される破線80に沿った領域であればよい。
そして、第1出力取出電極8aは、例えば、主として銀(Ag)等を含む金属粉末、有機ビヒクルおよびガラスフリットを含有する銀ペーストを用いて作製する。具体的には、銀ペーストを、第1パッシベーション層5上に塗布する。その後、銀ペーストを焼成することで、第1出力取出電極8aが形成される。ここで、焼成における最高温度は、例えば、600℃以上で且つ800℃以下であればよい。また、焼成を行う時間については、例えば、ピーク温度に向けて昇温させて、ピーク温度付近で一定時間保持した後に降温させるが、ピーク温度付近では数秒以内であればよい。銀ペーストを塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法等を採用すればよい。この銀ペーストの塗布を行った後、所定の温度で銀ペーストを乾燥することで、この銀ペースト中の溶剤を蒸散させてもよい。ここでは、第1出力取出電極8aが、アルミニウムの層と接触することで第1集電電極8bと電気的に接続される。
なお、第1出力取出電極8aを形成した後に、第1集電電極8bを形成してもよい。また、第1出力取出電極8aは、半導体基板1と直接接触しなくてもよく、第1出力取出電極8aと半導体基板1との間に第1パッシベーション層5が存在していても構わない。また、第3半導体領域4の上に形成されたアルミニウムの層は除去してもよい。また、同一の銀ペーストを用いて、第1出力取出電極8aと第1集電電極8bとを形成してもよい。
次に、第2電極9の形成方法について説明する。第2電極9は、例えば、主としてAg等を含む金属粉末、有機ビヒクルおよびガラスフリットを含有する銀ペーストを用いて作製する。具体的には、銀ペーストを、半導体基板1の第2パッシベーション層6上に塗布する。その後、銀ペーストを焼成することで、第2電極9を形成する。ここで、焼成における最高温度は、例えば、600℃以上で且つ800℃以下であればよい。また、焼成を行う時間については、例えば、焼成ピーク温度においては数秒以内程度であればよい。銀ペーストを塗布する方法としては、例えば、スクリーン印刷法等を採用すればよい。この銀ペーストの塗布を行った後、所定の温度で銀ペーストを乾燥することで、この銀ペースト中の溶剤を蒸散させてもよい。なお、第2電極9には、第2出力取出電極9aおよび第2集電電極9bが含まれるが、スクリーン印刷法が採用されることで、第2出力取出電極9aおよび第2集電電極9bは、1つの工程で同時に形成され得る。
ところで、第1電極8および第2電極9については、各々のペーストを塗布した後に、同時に焼成を行うことで、同時に形成してもよい。なお、上記の例では、印刷および焼成によって第1電極8および第2電極9を形成する形態を例示したが、これに限られない。例えば、第1電極8および第2電極9は、蒸着法またはスパッタリング法等といったその他の薄膜形成方法、あるいはメッキ法によって形成してもよい。
また、第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6を形成した後に、各工程における熱処理の最高温度を800℃以下とすることで、第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6によるパッシベーションの効果が増大し得る。例えば、第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6を形成した後における各工程において、300℃以上で且つ500℃以下の温度域における熱処理を行う時間が、例えば、3分以上であり且つ30分以内であればよい。
<太陽電池モジュールの構成例>
一実施形態に係る太陽電池モジュール100は、1つ以上の太陽電池素子10を備えている。例えば、太陽電池モジュール100は、電気的に接続されている複数の太陽電池素子10を備えていればよい。このような太陽電池モジュール100は、単独の太陽電池素子10の電気出力が小さな場合に、複数の太陽電池素子10が例えば直列および並列に接続されることで形成される。そして、例えば、複数の太陽電池モジュール100が組み合わされることで、実用的な電気出力が取り出される。以下では、太陽電池モジュール100が、複数の太陽電池素子10を備えている一例を挙げて説明する。
図8に示すように、太陽電池モジュール100は、例えば、透明部材104、表側充填材102、複数の太陽電池素子10、配線部材101、裏側充填材103および裏面保護材105が積層された積層体を備えている。ここで、透明部材104は、太陽電池モジュール100において太陽光を受光する受光面を保護するための部材である。この透明部材104は、例えば、透明な平板状の部材であればよい。透明部材104の材料としては、例えばガラス等が採用される。表側充填材102および裏側充填材103は、例えば、透明な充填剤であればよい。表側充填材102および裏側充填材103の材料としては、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等が採用される。裏面保護材105は、太陽電池モジュール100を裏面から保護するための部材である。裏面保護材105の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリフッ化ビニル樹脂(PVF)等が採用される。なお、裏面保護材105は、単層構造を有していても積層構造を有していてもよい。
配線部材101は、複数の太陽電池素子10を電気的に接続する部材(接続部材)である。太陽電池モジュール100に含まれる複数の太陽電池素子10のうちのY方向に隣り合う太陽電池素子10同士は、一方の太陽電池素子10の第1電極8と他方の太陽電池素子10の第2電極9とが配線部材101によって接続されている。これにより、複数の太陽電池素子10が電気的に直列に接続されている。ここで、配線部材101の厚さは、例えば、0.1mm以上で且つ0.2mm以下程度であればよい。配線部材101の幅は、例えば、約2mm程度であればよい。そして、配線部材101としては、例えば、銅箔の全面に半田が被覆された部材等が採用される。
また、電気的に直列に接続されている複数の太陽電池素子10のうち、最初の太陽電池素子10の電極の一端と最後の太陽電池素子10の電極の一端は、出力取出配線106によって、それぞれ出力取出部としての端子ボックス107に電気的に接続されている。また、図8では図示を省略しているが、図9に示すように、太陽電池モジュール100は、上記積層体を周囲から保持する枠体108を備えていてもよい。枠体108の材料として
は、例えば、耐食性と強度とを併せ持つアルミニウム等が採用される。
なお、表側充填材102の材料としてEVAが採用される場合には、EVAは、酢酸ビニルを含むため、高温時における湿気または水等の透過によって、経時的に加水分解を生じて酢酸を発生させる場合がある。これに対して、本実施形態では、第2パッシベーション層6の上に反射防止層7が設けられることで、酢酸によって太陽電池素子10に与えられるダメージが低減され得る。その結果、太陽電池モジュール100の信頼性が長期間に渡って確保され得る。
また、表側充填材102および裏側充填材103の少なくとも一方の材料として、EVAが採用される場合には、このEVAに水酸化マグネシウムまたは水酸化カルシウム等を含む受酸剤が添加されてもよい。これにより、EVAからの酢酸の発生が低減されるため、太陽電池モジュール100の耐久性が向上し、酢酸によって第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6に与えられるダメージがさらに低減される。その結果、太陽電池モジュール100の信頼性が長期間に渡って確保される。
<変形例>
なお、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、上記一実施形態では、太陽電池素子10の非受光面側に第1パッシベーション層5が配されていたが、これに限られない。例えば、半導体基板1において、非受光面側にn型の半導体領域が配され、受光面側にp型の半導体領域が配されている場合には、太陽電池素子10の受光面側に第1パッシベーション層5が配されればよい。
また、太陽電池素子10は、例えば、第2出力取出電極9aが第1主面10a側に配されたメタル・ラップ・スルー構造のバックコンタクトタイプの太陽電池素子であってもよい。
さらに、第1パッシベーション層5および第2パッシベーション層6を作製する際にはALD法に限らず、CVD法を適用することもできる。ただし、第1パッシベーション層5、第2パッシベーション層6、第1保護層20および第2保護層30を全てALD法を用いて作製することによって、工程が簡略化できて、太陽電池素子10を迅速に作製することができる。
以下に、実施例について説明する。なお、参照図面は図1から図4である。
<試料の作製>
まず、半導体基板1として、平面視して正方形の1辺が約156mm、厚さが約200μmの多結晶シリコン基板を多数枚用意した。これらの多結晶シリコン基板は、ボロンをドープしたものであって、比抵抗1.5Ω・cm程度のp型の多結晶シリコン基板(シリコン基板)を用いた。これらシリコン基板の表面をNaOH水溶液でエッチングして、その後、洗浄を行った。このようにして用意した各シリコン基板に対して、以下の処理を行った。
まず、シリコン基板の表面側に、RIE法を用いて、テクスチャ(凹凸構造)を形成した。
次に、シリコン基板に、オキシ塩化リン(POCl3)を拡散源とした気相熱拡散法に
よって、リンを拡散させて、シート抵抗が90Ω/□程度となるn型の逆導電型層をシリコン基板の表面に形成した。なお、シリコン基板の側面および裏面側に形成された逆導電型層はフッ硝酸溶液で除去して、その後、残留したリンガラスをフッ酸溶液で除去した。
次に、シリコン基板の全面にALD法によって、図4に示すように、酸化アルミニウム層および酸化ハフニウム層から成る、第1パッシベーション層5を以下に示す方法で形成した。
第1パッシベーション層5における第1酸化物層51および第3酸化物層52は、上述したALD法の工程Aから工程Dの一連の工程を繰り返し行って形成した。ただし、第1パッシベーション層5の第3酸化物層52は後述する第2酸化物層52を形成した後に、これらの上に形成した。
工程Aでは、N2ガスをキャリアガスとして用いた。この際、チャンバー内に導入されるN2ガスの流量を約100sccmとした。また、チャンバー内にTMAが供給される時間は約1秒とした。
また、工程Bでは、チャンバー内へのTMAの供給の終了時から工程Cの開始時までの時間を、チャンバー内が浄化される時間とした。そして、この置換時間は約15秒とした。この際、チャンバー内に導入されるN2ガスの流量は約100sccmとした。
また、工程Cでは、O3ガスを酸化剤として用いた。また、チャンバー内にO3ガスが供給される時間は約750m秒とした。
さらに、工程Dでは、チャンバー内へのO3ガスの供給の終了時から次工程の開始時までの時間を、チャンバー内が浄化される時間とした。そして、この置換時間を15秒とした。この際、チャンバー内に導入されるN2ガスの流量を約100sccmとした。
また、第1パッシベーション層5の第2酸化物層52は、第1酸化物層51を形成した後に、上述したALD法と同様にして下記の工程Aから工程Dの一連の工程を繰り返し行って形成した。
工程Aでは、N2ガスがキャリアガスとして採用された。この際、チャンバー内に導入されるN2ガスの流量を約100sccmとした。また、チャンバー内にハフニウムを含んだ有機金属ガスのTEMAHを供給して、その供給時間を約2秒とした。
工程Bでは、チャンバー内へのTEMAHの供給の終了時から工程Cの開始時までの時間を、チャンバー内が浄化される時間とした。そして、この置換時間を約40秒とした。この際、チャンバー内に導入されるN2ガスの流量を約100sccmとした。
工程Cでは、O3ガスを酸化剤として用いた。また、チャンバー内にO3ガスが供給される時間を約750m秒とした。
工程Dでは、チャンバー内へのO3ガスの供給の終了時から次工程の開始時までの時間をチャンバー内が浄化される時間とした。そして、この置換時間は約15秒とした。この際、チャンバー内に導入されるN2ガスの流量を約100sccmとした。
また、第1パッシベーション層5に対する熱処理については、N2ガス中のシリコン基板に対して約450℃で15分間のアニールを行った。
以上のようにして、第1パッシベーション層5の全体の厚みおよび第2酸化物層52の厚みをほぼ一定にして、第1酸化物層51および第3酸化物層53の厚みを変えた試料S1からS4を作製した(ただし、試料S1は比較例1である)。さらに、比較例2として第2酸化物層52が無い試料S5を作製した。
<酸化物層の厚さ>
第2酸化物層の平均厚みd2は、どの試料も0.4nmに設定した。また、第1酸化物層51の平均厚みd1および第3酸化物層53の平均厚みd3は、試料S1では、d1=0.3nm、d3=29.3nmとした。また、試料S2では、d1=2.0nm、d3=27.6nmとした。また、試料S3では、d1=3.7nm、d3=25.9nmとした。さらに、試料S4では、d1=4.9nm、d3=24.7nmとした。また、試料S5の第1パッシベーション層5の厚みは30nmとした。なお、これら平均の厚みはTEM等で測定が可能であり、設定厚み通りであることを確認した。
また、第1酸化物層51および第3酸化物層53の第1比率RAl/Oが0.69以上0.72以下であることを、第2比率R(Al+H)/Oが0.61以上0.67以下であることをRBSによって確認した。また、第2酸化物が酸化ハフニウムであることをSIMSによって確認した。
さらに、図4に示す第1界面層54および第2界面層55には酸化物層が自然に形成されていたことを確認した。さらに、これらの酸化物層は、TEM(TITAN80-300(FET社製))によって厚さが1nm未満の薄いHfxAlyO1−x−yであることが推定された。
<有効ライフタイムの測定>
マイクロ波光導電減衰法(Microwave Photo Conductivity Decay:μ−PCD法)によって、各試料の半導体基板1の有効ライフタイムを測定した。その結果、比較例2の試料S5の有効ライフタイムは1217μ秒であった。また、第1酸化物層51よりも第2酸化物層52の方が厚い比較例1の試料S1の有効ライフタイムは、比較例2の試料S5よりも短い579μ秒であった。また、試料S2の有効ライフタイムは試料S5よりも長く1219μ秒であった。試料S3の有効ライフタイムは最も長い1494μ秒であった。また、試料S4の有効ライフタイムは試料S5よりも少し短い1098μ秒であった。
以上により、良好な有効ライフタイムを得るには、第1パッシベーション層5において、第2酸化物層52が必要であることがわかった。また、第2酸化物層52は第1酸化物層51よりも薄いとよく、第2酸化物層52の存在によって、第1パッシベーション層5の固定電荷を適度に増やすことがわかった。さらに、試料S2から試料S4のように、第1酸化物層51の厚みが2nm以上5nm未満であるとよく、この範囲内で有効ライフタイムが最長になることがわかった。
したがって、本実施例のように良好な有効ライフタイムの半導体基板およびパッシベーション層を備えている太陽電池素子では変換効率が向上し得る。
なお、本実施例では第1パッシベーション層5を形成した実施例を示したが、第2パッシベーション層6を形成した場合はさらに特性の向上が期待できて、このような半導体基板およびパッシベーション層を備えている太陽電池素子では変換効率がさらに向上し得る。