以下に、本願の開示する縮約モデル決定装置、縮約モデル決定方法及び縮約モデル決定プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例により本願の開示する縮約モデル決定装置、縮約モデル決定方法及び縮約モデル決定プログラムが限定されるものではない。
図1は、安定度解析の対象とする電力系統の一例を示す図である。図1に示すように、電力系統は、着目系統1、外部系統2、及び着目系統1と外部系統2とを接続する連系線3を有している。
着目系統1は、縮約モデル決定装置を操作する操作者が管理する電力系統であり、主系統とも呼ばれる。そして、着目系統1は、系統構成、発電機、負荷の大きさ及び位置などといった系統諸量のデータの詳細が明らかである。
外部系統2は、操作者の管理から外れる電力系統であり、系統諸量のデータの詳細は不明である。
例えば、A社が着目系統1を運用し、B社が外部系統2を運用する場合を用いて説明する。この場合、A社は、自社が運用する電力系統である着目系統1についての詳細な情報を保持する一方、自社が運用する電力系統ではない外部系統2について、詳細な情報や正確な情報が得られないことがある。ここで、広域安定度を解析する場合には、自社が運用する電力系統以外の電力系統についても考慮する必要がある。例えば、A社が着目系統1について広域安定度を解析する場合には、外部系統2についても考慮する必要がある。
本実施例に係る縮約モデル決定装置は、図1に示す電力系統における外部系統2の縮約モデルを決定する。本実施例に係る縮約モデル決定装置は、外部系統2の詳細が不明でも、後述する一連の処理を実行することで、外部系統2の縮約モデルを決定することができる。この結果、着目系統1を運用する管理者は、外部系統2の詳細が不明であったとしても、外部系統2の縮約モデルを決定し、決定した外部系統2の縮約モデルを用いて安定度解析を実行することが可能である。
次に、図2を参照して、本実施例に係る縮約モデル決定装置について説明する。図2は、縮約モデル決定装置のブロック図である。図2に示すように、縮約モデル決定装置100は、入力部101、出力部102、記憶部103及び制御部104を有する。
以下では、縮約モデル決定装置100が、着目系統1と連系線3で接続された外部系統2の縮約モデルを決定する場合を説明する。そして、着目系統1における異なる場所で事故が起こった複数の事故ケースを想定する。
入力部101は、例えば、キーボード及びマウスなどである。入力部101は、情報や指示を操作者から受け付け、受け付けた情報や指示を記憶部103や制御部104へ出力する。
入力部101は、着目系統1の系統諸量の詳細なデータの入力を操作者から受け付ける。また、入力部101は、外部系統2の短絡容量(SC)、外部系統2の需要総量(PL)、連系線潮流(Ptie)、送電損失(Ploss)、及び外部系統2の発電機の過渡リアクタンスの入力を操作者から受け付ける。さらに、入力部101は、事故が発生した場合の連系線3における動揺波形である連系線動揺波形の入力を操作者から受け付ける。操作者は、例えば、実際の事故が発生した場合の連系線動揺波形を測定することで連系線動揺波形を取得できる。ここで、本実施例では、異なる事故が発生した場合について考慮するため、入力部101は、事故ケース毎に連系線動揺波形の入力を受け付ける。
そして、入力部101は、着目系統1の系統諸量の詳細なデータ、外部系統2の短絡容量及び需要総量、連系線潮流、送電損失、外部系統2の発電機の過渡リアクタンス、並びに、事故ケース毎の連系線動揺波形を記憶部103へ記憶させる。
さらに、入力部101は、操作者からの縮約モデル決定処理の実行指示の入力を受け付ける。そして、入力部101は、制御部104に縮約モデル決定処理の実行を指示する。
記憶部103は、例えば、Random Access Memory(RAM)、Read Only Memory(ROM)、もしくはフラッシュメモリなどの半導体メモリ素子、又は、ハードディスクや光ディスクなどである。記憶部103は、入力部101から入力されたデータを記憶する。
ここで、本実施例では、記憶部103が連系線動揺波形を記憶する場合で説明するが、これに限らず、連系線動揺波形をフーリエ変換することで得られるパワースペクトル密度波形を記憶してもよい。
制御部104は、ネットワーク・需要パラメータ設定部110、励磁系パラメータ調整部120及び縮約モデル決定部130を有している。制御部104は、縮約モデル決定処理の実行の指示を入力部101から受信して以下に説明する処理を開始する。
ネットワーク・需要パラメータ設定部110は、短絡容量パラメータ設定部111、差分算出部112、位相角パラメータ設定部113及び選択部114を有している。
短絡容量パラメータ設定部111は、縮約モデル決定処理が開始されると、外部系統2を縮約した電力系統モデルの短絡容量を決定するためのパラメータを生成する。以下では、外部系統2を縮約した電力系統モデルを単に「縮約モデル」という。
ここで縮約モデルについて説明する。縮約モデルは、本実施例では、図3に示すモデルとして表される。図3は、2機2負荷モデルの一例の図である。2機2負荷モデルとは、発電機が2つあり、負荷が2つある電力系統モデルである。
図3に示すように、本実施例における縮約モデル20は、発電機21及び22を有する。また、縮約モデル20は、ノード23〜25を有している。また、縮約モデル20は、ノード23とノード24との間にネットワークインピーダンス26を有する。また、縮約モデル20は、ノード24とノード25との間にネットワークインピーダンス27を有する。さらに、縮約モデル20は、負荷28及び29を有する。負荷28は、発電機21が属するノードと同じノード23に接続される負荷である。また、負荷29は、発電機22が属するノードと同じノード24に接続される負荷である。
そして、発電機21及び22の発電量は、それぞれ「PG1」及び「PG2」である。また、ネットワークインピーダンス26及び27の値は、それぞれ「Z1」及び「Z2」である。また、負荷28及び29の値は、それぞれ「PL1」及び「PL2」である。
縮約モデル20は、PG1,PG2,Z1,Z2,PL1,及びPL2に加えて、ネットワークインピーダンス26及び27のインピーダンス比率αと、発電機21及び22の発電機容量比率βと、負荷28及び29の負荷比率γが決定されると完成する。ここで、インピーダンス比率α及び発電機容量比率βは、縮約モデルの短絡容量を決定するためのパラメータである。また、負荷比率γは、縮約モデルの位相角を決定するためのパラメータである。
インピーダンス比率αは、Z1のインピーダンス値であり、Z1=α、Z2=1・SC−(Z1+ZG1)×ZG2/(Z1+ZG1+ZG2)を満たす。ここで、ZG1は、発電機21の過渡リアクタンスである。また、ZG2は、発電機22の過渡リアクタンスである。
また、発電機容量比率βは、総発電量に対するPG1の比率であり、PG1=PG×β、PG2=PG−PG1、PG=PL−Ptie+Plossを満たす。
また、負荷比率γは、2地点の負荷配分量であり、PL1=PG1+γ、PL2=PL−PL1を満たす。
短絡容量パラメータ設定部111は、短絡容量を決定するためのパラメータであるインピーダンス比率α及び発電機容量比率βの組合せを生成する。
本実施例では、短絡容量パラメータ設定部111は、インピーダンス比率αを、0.01から始まり、0.01刻みで0.1まで変化させる。
また、本実施例では、短絡容量パラメータ設定部111は、発電機容量比率βを、10から始まり、10%刻みで90%まで変化させる。
このように、短絡容量パラメータ設定部111は、インピーダンス比率α及び発電機容量比率βの各値を変更しながら、異なるαとβとの組を作成していく。言い換えれば、短絡容量パラメータ設定部111は、異なる値のインピーダンス比率α及び発電機容量比率βの組合せを複数作成する。例えば、短絡容量パラメータ設定部111は、インピーダンス比率α及び発電機容量比率βとして設定され得る値を総当りで用いて値の組合せを全て生成する。この結果、短絡容量パラメータ設定部111は、αとβとの組合せの数だけ、電力系統モデルに対応するα及びβの組を生成する。
ここで、インピーダンス比率α及び発電機容量比率βとして設定される値は、予め操作者によって設定された値の範囲及び刻み幅を用いてもよいし、入力された外部系統2についての情報に基づいて範囲及び刻み幅を決定してもよい。
短絡容量パラメータ設定部111は、生成したα及びβの組を順次差分算出部112へ順次出力する。
位相角パラメータ設定部113は、位相角を決定するためのパラメータである負荷比率γを生成する。
本実施例では、位相角パラメータ設定部113は、負荷比率γを、−20から始まり、2刻みで20まで変化させる。
このように、位相角パラメータ設定部113は、負荷比率γの値を変更しながら、異なるγの値を生成していく。言い換えれば、位相角パラメータ設定部113は、異なる値の負荷比率γを複数作成する。位相角パラメータ設定部113は、負荷比率γとして設定され得る値を全て生成する。この結果、位相角パラメータ設定部113は、負荷比率γの数だけ、電力系統モデルに対応するγを生成する。
ここで、負荷比率γとして設定される値は、予め操作者によって設定された値の範囲及び刻み幅を用いてもよいし、入力された外部系統2についての情報に基づいて範囲及び刻み幅を決定してもよい。
位相角パラメータ設定部113は、生成したγの値を順次差分算出部112へ順次出力する。
差分算出部112は、外部系統2の短絡容量、外部系統2の需要総量、連系線潮流、送電損失、及び外部系統2の発電機の過渡リアクタンスを記憶部103から取得する。また、差分算出部112は、着目系統1における系統諸量の詳細なデータを記憶部103から取得する。さらに、差分算出部112は、事故ケース毎の連系線動揺波形を記憶部103から取得する。以下では、差分算出部112が記憶部103から取得した連系線動揺波形を、「基準連系線動揺波形」という。
さらに、差分算出部112は、インピーダンス比率α及び発電機容量比率βの組の入力をネットワーク・需要パラメータ設定部110から受ける。また、差分算出部112は、予め決められた負荷比率γの固定値を記憶している。ここで、負荷比率γは、短絡容量への影響は小さいため、固定値を用いてもインピーダンス比率α及び発電機容量比率βの設定への影響は少ない。ただし、大規模系統の縮約の場合、1箇所あたりの発電量・負荷量が大きいため、パラメータ設定条件によって不安定な断面ができ易い。そこで、インピーダンス比率α及び発電機容量比率βを設定する場合は、縮約発電機G1及びG2と同一ノードにPG1=PL1、PG2=PL2となるように負荷を設定し、位相角は開かない状態で調整することが好ましい。
そして、差分算出部112は、外部系統2の短絡容量及び需要総量、連系線潮流、送電損失、外部系統2の発電機の過渡リアクタンス、インピーダンス比率α、発電機容量比率β、並びに、負荷比率γの固定値を用いて、縮約モデル20を生成する。差分算出部112は、ネットワーク・需要パラメータ設定部110から入力されたαとβとの組合せの数の縮約モデル20を生成することになる。
次に、差分算出部112は、着目系統1における系統諸量の詳細なデータを用いて、生成した縮約モデル毎に、縮約モデルが着目系統1と連系線3で接続された場合における擬似的な連系線動揺波形を求める。以下では、ネットワーク・需要パラメータ設定部110が求めた擬似的な連系線動揺波形を「擬似連系線動揺波形」という。ここで、本実施例では、異なる事故が発生した場合を対象としているので、差分算出部112は、事故ケース毎に擬似連系線動揺波形を求めていく。すなわち、差分算出部112は、事故ケース毎に、縮約モデル毎の擬似連系線動揺波形を求める。
縮約モデル20が連系線3で着目系統1に接続された場合における擬似連系線動揺波形の算出方法としては、任意の手法を用いて良い。例えば、差分算出部112は、パラメータα、β及びγを設定した縮約モデル20と、着目系統1についての詳細データを入力して、任意の解析プログラムを実行することで擬似連系線動揺波形を求める。任意の解析プログラムとは、例えば、財団法人電力中央研究所により作成された「Y法」とも称される電力系統安定度解析プログラムなどである。
そして、差分算出部112は、基準連系線動揺波形と擬似連系線動揺波形との差分を算出する。
例えば、差分算出部112は、基準連系線動揺波形及び擬似連系線動揺波形をフーリエ変換して、それぞれのパワースペクトル密度波形を算出する。そして、差分算出部112は、パワースペクトル密度波形を比較することで、基準連系線動揺波形及び擬似連系線動揺波形の差分を求める。
すなわち、差分算出部112は、連系線動揺波形をそのまま用いて差分を算出するのではなく、横軸が周波数となり、縦軸が連系線位相角のパワースペクトル密度(PSD:Power Spectral Density)となるパワースペクトル密度波形を用いて差分を算出する。
ここで、差分算出部112による基準連系線動揺波形及び擬似連系線動揺波形の差分算出処理の一例について説明する。
図4は、基準連系線動揺波形及び擬似連系線動揺波形の一例を示す図である。また、図5は、基準連系線動揺波形及び擬似連系線動揺波形のパワースペクトル密度波形の一例を示す図である。図4は、縦軸で連系線における位相角を示し、横軸で時間を示している。図5は、縦軸で連系線位相角のパワースペクトル密度を示し、横軸で周波数を示している。
差分算出部112は、図4に示される基準連系線動揺波形31を記憶部103から取得する。また、差分算出部112は、Y法などを用いて図4に示される擬似連系線動揺波形32を求める。
次に、差分算出部112は、基準連系線動揺波形31をフーリエ変換することで、図5に示されるパワースペクトル密度波形41を求める。また、差分算出部112は、擬似連系線動揺波形32をフーリエ変換することで、図5に示されるパワースペクトル密度波形42を求める。
そして、差分算出部112は、パワースペクトル密度波形41及び42において、例えば、0Hz〜0.4Hzの区間の振動成分、及び、0.41Hz〜1.0Hzの区間の振動成分を検出する。そして、差分算出部112は、検出した0Hz〜0.4Hzの区間の振動成分、及び、0.41Hz〜 1.0Hzの区間の振動成分のそれぞれについて、パワースペクトル密度波形41とパワースペクトル密度波形42との差分を、次の(数1)を用いて算出する。
「g(fa,fb)」は、差分を示し、g(fa,fb)が大きければ大きいほど、差分が大きいことを示し、2つのパワースペクトル密度波形の合致度が低いことを示す。また、g(fa,fb)が小さければ小さいほど、差分が小さいことを示し、2つのパワースペクトル密度波形の合致度が大きいことを示す。「f」は、周波数を示す。また、「fa」及び「fb」は、評価周波数範囲である。また、「基準連系線動揺波形のPSD(f)」は、パワースペクトル密度波形41を示す。また、「擬似連系線動揺波形のPSD(f)」は、パワースペクトル密度波形42を示す。
本実施例では、差分算出部112は、周波数がfaからfbの間にある周波数それぞれについて、パワースペクトル密度波形41と、パワースペクトル密度波形42との差分の絶対値を算出し、算出した差分の累積値を算出することで、g(fa,fb)を算出する。ここで、上述したように、0Hz〜0.4Hzと、0.41Hz〜1.0Hzとについて、それぞれ差分を算出する場合には、差分算出部112は、(数1)において、fa=0及びfb=0.4として値を算出し、さらに、fa=0.41及びfb=1.0として値を算出する。
ここで、パワースペクトル密度(PSD)の特徴について考えると、PSDの大きさは動揺波形の大きさの2乗に比例する。そのため、事故条件が厳しいほどPSDの連系線位相角の幅は大きくなる。そのため、複数の事故を考慮する評価関数を単純な線形和とすると、ほとんど厳しい事故条件の合致度に評価関数が左右されてしまい、他の事故に対する合致精度を得ることが難しい。そこで、パワースペクトルが事故の厳しさに影響しないように、スペクトルの面積差及びスペクトルのピークの大きさを対象としている事故ケースの連系線動揺波形のPSDのピーク値であるPSDMAXで規格化した評価関数を用いることで、各事故ケースを同様に扱う。具体的には、差分算出部112は、次の(数2)の評価関数を用いて事故ケース毎に規格化した差分を求める。
ここで、「j」は、考慮する事故ケースである。そして、「F’ j」は、事故jに対する評価関数である。また、「i」は、評価区間である。ここでは、評価区間は、0Hz〜0.4Hzと、0.41Hz〜1.0Hzの2区間である。また、「PSDMAXj」は、基準連系線動揺波形に対応するパワースペクトル密度波形(PSD)の最大値である。また、「Wx,Wyi,Wzi」は、重み係数である。また、「Δf」は、PSD周波数偏差であり、図5では区間43で表される。また、「ΔPSD」は、PSDのピーク偏差であり、図5では区間44で表される。さらに、f1は、fa=0の場合のfaである。f2は、fb=0.4の場合のfbである。f3は、fa=0.41の場合のfaである。f4は、fb=1.0の場合のfbである。さらに、デフォルト値として、Wx=1.0、Wy1=5.0、Wy2=10.0、Wz1=5.0、Wz2=10.0を用いている。
さらに、差分算出部112は、事故ケース毎に規格化した評価関数で求めた差分を次の(数3)を用いて足し合わせる。
これにより、差分算出部112は、各事故ケースを考慮した縮約モデル毎の基準連系線動揺波形と擬似連系線動揺波形との差分を求めることができる。以下では、各事故ケースを考慮した縮約モデル毎の基準連系線動揺波形と擬似連系線動揺波形との差分を、単に「差分」という。
そして、差分算出部112は、インピーダンス比率α及び発電機容量比率βを変化させた場合の、縮約モデル毎に求めた差分を選択部114へ出力する。
その後、差分算出部112は、差分を最小にするインピーダンス比率α及び発電機容量比率βの値の入力を選択部114から受ける。
さらに、差分算出部112は、負荷比率γの入力を位相角パラメータ設定部113から受ける。
そして、差分算出部112は、差分を最小にするα及びβ、外部系統2の短絡容量及び需要総量、連系線潮流、送電損失、外部系統2の発電機の過渡リアクタンス、並びに、受信した負荷比率γを用いて、縮約モデル20を生成する。差分算出部112は、位相角パラメータ設定部113から入力されたγの数の縮約モデル20を生成することになる。
次に、差分算出部112は、着目系統1における系統諸量の詳細なデータを用いて、生成した縮約モデル毎に擬似連系線動揺波形を求める。ここで、差分算出部112は、事故ケース毎に擬似連系線動揺波形を求めていく。すなわち、差分算出部112は、事故ケース毎に、縮約モデル毎の擬似連系線動揺波形を求める。
そして、差分算出部112は、負荷比率γを変化させた場合の基準連系線動揺波形と擬似連系線動揺波形との差分を算出する。
この場合も、インピーダンス比率α及び発電機容量比率βを変化させた場合と同様に、差分算出部112は、それぞれのパワースペクトル密度波形を求め、(数1)、(数2)及び(数3)を用いて、各事故ケースを考慮した縮約モデル毎の基準連系線動揺波形と擬似連系線動揺波形との差分を求める。
そして、差分算出部112は、負荷比率γを変化させた場合の、縮約モデル毎に求めた差分を選択部114へ出力する。
先ず、選択部114は、インピーダンス比率α及び発電機容量比率βを変化させた場合の、縮約モデル毎の差分の入力を差分算出部112から受ける。
ここで、差分が小さいことの意味について簡単に説明する。差分が小さいとは、基準連系線動揺波形と擬似連系線動揺波形との合致度が高いことを示し、インピーダンス比率α及び発電機容量比率βが設定された縮約モデルが、実際の外部系統と近似していることを示す。
そこで、選択部114は、受信した差分の中から最も小さい値の差分に対応する縮約モデルを特定し、特定した縮約モデルの生成に用いたインピーダンス比率α及び発電機容量比率βを選択する。
そして、選択部114は、選択したインピーダンス比率α及び発電機容量比率βを差分算出部112へ出力する。
その後、選択部114は、負荷比率γを変化させた場合の、縮約モデル毎の差分の入力を差分算出部112から受ける。
選択部114は、受信した差分の中から最も小さい値の差分に対応する縮約モデルを特定し、特定した縮約モデルの生成に用いた負荷比率γを選択する。
そして、選択部114は、選択したインピーダンス比率α、発電機容量比率β及び負荷比率γの値を差分算出部122へ出力する。
励磁系パラメータ調整部120は、励磁系パラメータ設定部121、差分算出部122、感度係数算出部123を有している。
励磁系パラメータ設定部121は、発電機の定数及び励磁系パラメータとして、慣性定数(MG)、Automatic Voltage Regulator(AVR:自動電圧調整装置)定数及びPower System Stabilizer(PSS:電力系統安定化装置)定数を用いる。慣性定数は、発電機における電磁石の回転のしやすさを示す。また、励磁系パラメータ設定部121は、AVR定数として、AVRゲイン(G)、AVR進み時定数(TL)及びAVR遅れ時定数(TD)を用いる。また、励磁系パラメータ設定部121は、PSS定数として、PSSゲイン(G)、PSS進み時定数(TL)及びPSS遅れ時定数(TD)を用いる。
励磁系パラメータ設定部121は、図6に示すテーブル50で示すように、各励磁系パラメータの初期値、下限及び上限を記憶している。図6は、励磁系パラメータの設定条件の例を表す図である。
まず、励磁系パラメータ設定部121は、各パラメータの初期値をベースケースのパラメータとする。そして、励磁系パラメータ設定部121は、ベースケースのパラメータを差分算出部122へ出力する。その後、励磁系パラメータ設定部121は、ベースケースのパラメータを用いて生成した縮約モデルと着目系統1とを連系線3で接続した場合の評価関数の入力を差分算出部122から受ける。
また、励磁系パラメータ設定部121は、各パラメータを1つずつ初期値から所定量変化させた値を差分算出部122へ出力する。本実施例では、励磁系パラメータ設定部121は、1%変化させる場合で説明する。言い換えれば、励磁系パラメータ設定部121は、上述した7つのパラメータのうち1つ選択し、その値を1%変化させた上で、各パラメータの値を差分算出部122へ出力することを、それぞれのパラメータに対して行う。その後、励磁系パラメータ設定部121は、各パラメータを初期値から1%変化させた値を用いて生成した縮約モデルと着目系統1とを連系線3で接続した場合の評価関数の入力を差分算出部122から受ける。本実施例ではパラメータは7つあるので、励磁系パラメータ設定部121は、7つの評価関数の入力を受ける。
そして、励磁系パラメータ設定部121は、初期値を用いた場合の評価関数をベースケースの場合の評価関数として感度係数算出部123へ出力する。また、励磁系パラメータ設定部121は、各パラメータをそれぞれ1%変化させた値を用いた場合の7つの評価関数を感度係数算出部123へ出力する。励磁系パラメータ設定部121は、各事故ケースについて、ベースケースの場合の評価関数及び各パラメータをそれぞれ1%変化させた値を用いた場合の評価関数を感度係数算出部123へ出力する。
その後、励磁系パラメータ設定部121は、事故ケース毎の各パラメータの感度係数の入力を感度係数算出部123から受ける。ここで、感度係数とは、そのパラメータを変化させた場合にどのくらいの変化が発生するかを表す指標である。感度係数が大きいパラメータほど、そのパラメータを変化させた場合に評価関数に与える影響が大きい。感度係数については、後で詳細に説明する。
そして、励磁系パラメータ設定部121は、パラメータ毎に各事故ケースにおける感度係数を合計し、複数の事故ケースを考慮した各パラメータの感度係数を求める。以下では、複数の事故ケースを考慮した各パラメータの感度係数を、単に「感度係数」という。
次に、励磁系パラメータ設定部121は、求めた感度係数が閾値以上であるパラメータを変更対象のパラメータとする。本実施例では、励磁系パラメータ設定部121は、感度係数が1%以上のパラメータを変更対象のパラメータとする。
ここで、励磁系パラメータ設定部121は、全体に対する変更の割合である変更幅(dtp)の初期値及び変更幅の変更量を記憶している。本実施例では、変更幅の初期値は20%である。また、変更幅の変更量は、変更幅を変更する場合、その変更幅を半分にするものとする。
そして、励磁系パラメータ設定部121は、変更対象のパラメータの感度に応じて、変更幅を線形按分して対象変更の各パラメータの変更割合を決定し、決定した変更割合に応じてパラメータを調整する。例えば、励磁系パラメータ設定部121は、次の(数4)を用いて、変更対象の各パラメータの変更割合を決定する。
ここで、「i」は、パラメータの種類を表す。また、「dtpi」は、パラメータiの変更割合を示す。また、「NLT」は、変更対象とするパラメータの個数である。さらに、「KANDi」は、感度係数算出部123から受信したパラメータiの感度係数である。「KANDi」については、後で詳細に説明する。
例えば、感度係数が1%を超えたパラメータが3つあり、それぞれの感度係数が5、3、2である場合、励磁系パラメータ設定部121は、それぞれのパラメータの値を10%、6%、4%変更してパラメータの調整を行う。
そして、励磁系パラメータ設定部121は、調整した各パラメータを差分算出部122へ出力する。
その後、励磁系パラメータ設定部121は、感度に応じて値を調整したパラメータを用いた縮約モデルと着目系統1とを連系線3で接続した場合の評価関数と、ベースケースの縮約モデルと着目系統1とを連系線3で接続した場合の評価関数との差分の入力を差分算出部122から受ける。以下では、感度に応じて値を調整したパラメータを用いた縮約モデルと着目系統1とを連系線3で接続した場合の評価関数を「調整したパラメータを用いた評価関数」という。また、ベースケースの縮約モデルと着目系統1とを連系線3で接続した場合の評価関数を「ベースケースの場合の評価関数」という。
受信した差分が、調整したパラメータを用いた評価関数の方がベースケースの場合の評価関数よりも小さいことを示す場合、励磁系パラメータ設定部121は、調整したパラメータを次のベースケースのパラメータとする。その後、励磁系パラメータ設定部121は、新たなベースケースにおける各パラメータの感度係数を感度係数算出部123から取得し、感度係数に合わせて変更幅を各パラメータに按分し、次のパラメータの調整を行う。そして、励磁系パラメータ設定部121は、新たに調整した各パラメータを差分算出部122へ出力する。励磁系パラメータ設定部121は、このように評価関数を小さくしていくようにパラメータを調整していく。
一方、受信した差分が、調整したパラメータを用いた評価関数がベースケースの場合の評価関数以上の場合、励磁系パラメータ設定部121は、変更幅を半分にする。そして、励磁系パラメータ設定部121は、再度変更対象のパラメータの感度に応じて新しい変更幅を按分し、パラメータを調整する。励磁系パラメータ設定部121は、新たに調整したパラメータを差分算出部122へ出力する。
ただし、励磁系パラメータ設定部121は、変更幅を半分にした場合に予め決められた変更幅の閾値を下回った場合、パラメータの調整を終了し、その時点でのベースケースのパラメータの値を縮約モデル決定部130へ通知する。
感度係数算出部123は、ある事故ケースにおけるベースケースの場合の評価関数及び1つのパラメータを1%変化させた値を用いた場合のパラメータ毎の評価関数の入力を励磁系パラメータ設定部121から受ける。そして、感度係数算出部123は、次の(数5)を用いて、1つの事故ケースにおける各パラメータの感度係数を算出する。
ここで、「i」は、パラメータの種類を表す。「ΔPi」は、パラメータiの1%変化分である。また、「Fi」は、ベースケースからパラメータiを1%変化させたパラメータを用いた場合の評価関数である。また、「F0」は、ベースケースの場合の評価関数である。ここで、評価関数Fとしては、例えば、(数1)のg(fa,fb)を用いる。そして、「KANDi」は、パラメータiの感度係数を表し、この値が大きいほど感度がよいパラメータである。
そして、感度係数算出部123は、求めた各パラメータの感度係数を励磁系パラメータ設定部121へ出力する。感度係数算出部123は、全ての事故ケースに対して各パラメータの感度係数の算出を行う。
差分算出部122は、外部系統2の短絡容量、外部系統2の需要総量、連系線潮流、送電損失、及び外部系統2の発電機の過渡リアクタンスを記憶部103から取得する。また、差分算出部122は、着目系統1における系統諸量の詳細なデータを記憶部103から取得する。また、差分算出部122は、事故ケース毎の連系線動揺波形を記憶部103から取得する。さらに、差分算出部122は、複数の事故ケースを考慮した評価関数を最小にするインピーダンス比率α、発電機容量比率β及び負荷比率γの値の入力を選択部114から受ける。
また、差分算出部122は、ベースケースの各パラメータである、慣性定数、AVRゲイン、AVR進み時定数、AVR遅れ時定数、PSSゲイン、PSS進み時定数及びPSS遅れ時定数の入力を励磁系パラメータ設定部121から受ける。
そして、差分算出部122は、外部系統2の短絡容量、需要総量及び発電機の過渡リアクタンス、連系線潮流、送電損失、α、β、γ、並びに、各励磁系パラメータを用いて、ベースケースの場合の評価関数を求める。その後、差分算出部122は、ベースケースの場合の評価関数を励磁系パラメータ設定部121へ出力する。
また、差分算出部122は、ベースケースからパラメータの1つを1%変化させた場合の各パラメータの入力を、パラメータ毎に励磁系パラメータ設定部121から受ける。
そして、差分算出部122は、パラメータの1つを1%変化させた場合のパラメータを用いた場合の評価関数を求める。その後、差分算出部122は、パラメータの1つを1%変化させた場合のパラメータを用いた場合の評価関数を励磁系パラメータ設定部121へ出力する。
さらに、差分算出部122は、感度によって調整したパラメータの入力を励磁系パラメータ設定部121から受ける。そして、調整したパラメータを用いた評価関数を求める。
そして、差分算出部122は、ベースケースの場合の評価関数と調整したパラメータを用いた評価関数との差分を求める。その後、差分算出部122は、求めた差分を励磁系パラメータ設定部121へ出力する。
励磁系パラメータ調整部120の励磁系パラメータ設定部121、差分算出部122及び感度係数算出部123は、以上の励磁系パラメータの調整処理を縮約モデルに含まれる発電機全てに対して行う。
縮約モデル決定部130は、複数の事故ケースを考慮した評価関数を最小にするインピーダンス比率α、発電機容量比率β及び負荷比率γの値の入力を選択部114から受ける。
また、縮約モデル決定部130は、評価関数を最小にする慣性定数、AVRゲイン、AVR進み時定数、AVR遅れ時定数、PSSゲイン、PSS進み時定数及びPSS遅れ時定数の入力を励磁系パラメータ設定部121から受ける。
そして、縮約モデル決定部130は、受信したインピーダンス比率α、発電機容量比率β、負荷比率γ、慣性定数、AVRゲイン、AVR進み時定数、AVR遅れ時定数、PSSゲイン、PSS進み時定数及びPSS遅れ時定数を用いて縮約モデルを決定する。
その後、縮約モデル決定部130は、決定した縮約モデルを出力部102に表示させる。
出力部102は、例えば、モニタや各種の情報出力端子などである。出力部102は、縮約モデル決定部130が決定した縮約モデルの情報を受信する。そして、出力部102は、受信した縮約モデルの情報を出力する。
次に、図7を参照して、本実施例に係る縮約モデル決定装置100による縮約モデル決定処理の全体的な流れについて説明する。図7は、実施例1に係る縮約モデル決定装置による縮約モデル決定処理の概要を表すフローチャートである。
制御部104は、縮約モデル決定処理の実行の指示を操作者から受ける。この時、制御部104は、縮約モデルとしてどのようなモデルを使用するかの指示を操作者から受け、使用する縮約モデルを決定する(ステップS1)。本実施例では、2機2負荷モデルを縮約モデルとして決定する。
次に、ネットワーク・需要パラメータ設定部110は、縮約モデルに用いるインピーダンス比率α、発電機容量比率β及び負荷比率γを含む外部系統2のネットワーク・需要パラメータを設定する(ステップS2)。
次に、励磁系パラメータ調整部120は、慣性定数、AVRゲイン、AVR進み時定数、AVR遅れ時定数、PSSゲイン、PSS進み時定数及びPSS遅れ時定数を含む励磁系パラメータの調整を行う(ステップS3)。
縮約モデル決定部130は、ネットワーク・需要パラメータ設定部110で設定されたネットワーク・需要パラメータと、励磁系パラメータ調整部120が調整した励磁系パラメータを取得し、縮約モデルを決定する。そして、縮約モデル決定部130は、出力部102に縮約モデルの情報を出力させる(ステップS4)。
次に、図8を参照して、本実施例に係る縮約モデル決定装置によるネットワーク・需要パラメータの決定処理について説明する。図8は、実施例1に係る縮約モデル決定装置によるネットワーク・需要パラメータの決定処理のフローチャートである。図8のフローは、図7のステップS2で行われる処理の詳細にあたる。
入力部101は、着目系統1の系統諸量の詳細なデータ、外部系統2の短絡容量及び需要総量、連系線潮流、送電損失、外部系統2の発電機の過渡リアクタンス、並びに、事故ケース毎の連系線動揺波形などのデータの入力を操作者から受ける(ステップS101)。そして、入力部101は、受信したデータを記憶部103に記憶させる。
差分算出部112は、解析の対象とする複数の事故ケースの中から事故ケースを1つ選定する(ステップS102)。
短絡容量パラメータ設定部111は、短絡容量パラメータであるインピーダンス比率α及び発電機容量比率βを設定する(ステップS103)。
差分算出部112は、インピーダンス比率α及び発電機容量比率β、予め決められた負荷比率γ、並びに、記憶部103に記憶されているデータを用いて縮約モデルを生成する。そして、差分算出部112は、生成した縮約モデルと着目系統1とを連系線3で接続した場合の擬似連系線動揺波形を求める。そして、差分算出部112は、求めた擬似連系線動揺波形と基準連系線動揺波形を用いて、g(fa,fb)を計算する(ステップS104)。
そして、差分算出部112は、全てのαとβの組についてg(fa,fb)の算出が終了したか否かを判定する(ステップS105)。g(fa,fb)の算出が終わっていないαとβの組がある場合(ステップS105:否定)、ネットワーク・需要パラメータ設定部110は、ステップS103へ戻る。
これに対して、全てのαとβの組に対してg(fa,fb)の算出が終わっている場合(ステップS105:肯定)、差分算出部112は、対象とする全ての事故ケースについてg(fa,fb)の算出が終了したか否かを判定する(ステップS106)。g(fa,fb)の算出が終わっていない事故ケースがある場合(ステップS106:否定)、ネットワーク・需要パラメータ設定部110は、ステップS102へ戻る。
これに対して、対象とする全ての事故ケースに対してg(fa,fb)の算出が終わっている場合(ステップS106:肯定)、差分算出部112は、対象事故ケースを合計した評価関数を求める。選択部114は、対象事故ケースを合計した評価関数のうち、評価関数が最小となる系統状態のインピーダンス比率α及び発電機容量比率βを特定する(ステップS107)。
次に、差分算出部112は、解析の対象とする複数の事故ケースの中から事故ケースを1つ選定する(ステップS108)。
また、位相角パラメータ設定部113は、位相角パラメータである負荷比率γを設定する(ステップS109)。
差分算出部112は、特定したインピーダンス比率α及び発電機容量比率β、設定された負荷比率γ、並びに、記憶部103に記憶されているデータを用いて縮約モデルを生成する。そして、差分算出部112は、生成した縮約モデルと着目系統1とを連系線3で接続した場合の擬似連系線動揺波形を求める。そして、差分算出部112は、求めた擬似連系線動揺波形と基準連系線動揺波形を用いて、g(fa,fb)を計算する(ステップS110)。
そして、差分算出部112は、全てのγについてg(fa,fb)の算出が終了したか否かを判定する(ステップS111)。g(fa,fb)の算出が終わっていないγがある場合(ステップS111:否定)、ネットワーク・需要パラメータ設定部110は、ステップS109へ戻る。
これに対して、全てのγに対してg(fa,fb)の算出が終わっている場合(ステップS111:肯定)、差分算出部112は、対象とする全ての事故ケースについてg(fa,fb)の算出が終了したか否かを判定する(ステップS112)。g(fa,fb)の算出が終わっていない事故ケースがある場合(ステップS112:否定)、ネットワーク・需要パラメータ設定部110は、ステップS108へ戻る。
これに対して、対象とする全ての事故ケースに対してg(fa,fb)の算出が終わっている場合(ステップS112:肯定)、差分算出部112は、対象事故ケースを合計した評価関数を求める。選択部114は、対象事故ケースを合計した評価関数のうち、評価関数が最小となる系統状態の負荷比率γを特定する(ステップS113)。
そして、選択部114は、対象事故ケースを合計した評価関数のうち、評価関数が最小となるインピーダンス比率α、発電機容量比率β及び負荷比率γをネットワーク・需要パラメータとして決定する(ステップS114)。
次に、図9を参照して、本実施例に係る縮約モデル決定装置による励磁系パラメータの調整処理について説明する。図9は、実施例1に係る縮約モデル決定装置による励磁系パラメータの調整処理のフローチャートである。図9のフローは、図7のステップS3で行われる処理の詳細にあたる。
励磁系パラメータ設定部121は、縮約モデルに含まれる発電機の中から1つの発電機を選択する(ステップS201)。
次に、励磁系パラメータ設定部121は、パラメータの総変更幅(Dtmax)を設定する(ステップS202)。本実施例では、Dtmaxの初期値は20%である。
そして、励磁系パラメータ設定部121は、対象とする事故ケースの中から1つの事故ケースを選定する(ステップS203)。
次に、励磁系パラメータ設定部121は、ベースケースのパラメータを差分算出部122へ出力する。そして、差分算出部122は、ベースケースのパラメータを用いて縮約モデルを生成し、記憶部103に格納されているデータを用いてベースケースの場合の評価関数(F0)を計算する(ステップS204)。
次に、差分算出部122は、算出したベースケースの場合の評価関数(F0)と1つ前のベースケースの場合の評価関数(Fold)との差分を求める。励磁系パラメータ設定部121は、差分算出部122が求めた差分から、F0がFoldよりも小さいか否かを判定する(ステップS205)。F0がFold以上の場合(ステップS205:否定)、励磁系パラメータ設定部121は、総変更幅(Dtmax)の2分の1を新たな総変更幅(Dtmax)とする(ステップS206)。
さらに、励磁系パラメータ設定部121は、縮約モデルのデータを1ステップ前の定義に戻す(ステップS207)。
そして、励磁系パラメータ設定部121は、総変更幅(Dtmax)が総変更幅の閾値(Dtshd)より大きいか否かを判定する(ステップS208)。DtmaxがDtshd以下の場合(ステップS208:否定)、励磁系パラメータ設定部121は、ステップS216へ進む。
これに対して、DtmaxがDtshdより大きい場合(ステップS208:肯定)、励磁系パラメータ設定部121は、ステップS213へ進む。
一方、F0がFoldより小さい場合(ステップS205:肯定)、励磁系パラメータ設定部121は、パラメータ毎に、そのパラメータを1%変化させた上で、パラメータの組を差分算出部122へ出力する。差分算出部122は、パラメータ毎に、そのパラメータを1%変化させたパラメータの組を用いた評価関数を計算する。そして、差分算出部122は、パラメータ毎に、そのパラメータを1%変化させたパラメータの組を用いた評価関数を励磁系パラメータ設定部121へ出力する。励磁系パラメータ設定部121は、ベースケースの場合の評価関数及びパラメータ毎に、そのパラメータを1%変化させたパラメータの組を用いた評価関数を感度係数算出部123へ出力する。感度係数算出部123は、ベースケースの場合の評価関数及び1つのパラメータを1%変化させたパラメータの組を用いた評価関数を用いて、各パラメータの感度係数を計算する(ステップS209)。
感度係数算出部123は、全てのパラメータについて感度係数を計算し終えたか否かを判定する(ステップS210)。感度係数を計算していないパラメータがある場合(ステップS210:否定)、感度係数算出部123は、ステップS209に戻る。
全てのパラメータについて感度係数を計算し終えた場合(ステップS210:肯定)、励磁系パラメータ設定部121は、全ての事故ケースについてパラメータの感度係数を求めたか否かを判定する(ステップS211)。パラメータの感度係数を求めていない事故ケースがある場合(ステップS211:否定)、励磁系パラメータ設定部121は、ステップS203へ戻る。
これに対して、全ての事故ケースについてパラメータの感度係数を求め終わった場合(ステップS211:肯定)、励磁系パラメータ設定部121は、パラメータ毎に各事故ケースの感度係数を加算する(ステップS212)。
励磁系パラメータ設定部121は、閾値よりも感度係数が高いパラメータ、すなわち感度が高いパラメータの感度係数に応じて変更幅を按分し、感度が高いパラメータの変更割合を決定する。そして、励磁系パラメータ設定部121は、決定した変更割合を用いて感度が高いパラメータを変更する(ステップS213)。
励磁系パラメータ設定部121は、変更したパラメータを用いて、縮約モデルのデータを更新する(ステップS214)。励磁系パラメータ設定部121は、更新した縮約モデルのデータを次のベースケースのデータとする。
その後、励磁系パラメータ設定部121は、パラメータ調整の繰り返し回数が上限に達したか否かを判定する(ステップS215)。上限に達していない場合(ステップS215:否定)、励磁系パラメータ設定部121は、ステップS203へ戻る。
これに対して、繰り返し回数の上限に達している場合(ステップS215:肯定)、励磁系パラメータ設定部121は、縮約モデルにおける全ての発電機の調整が完了したか否かを判定する(ステップS216)。調整が完了していない発電機がある場合(ステップS216:否定)、励磁系パラメータ設定部121は、ステップS201へ戻る。
これに対して、全ての発電機の調整が完了した場合(ステップS216:肯定)、励磁系パラメータ設定部121は、調整した各パラメータを縮約モデル決定部130へ出力する。そして、励磁系パラメータ調整部120は励磁系パラメータの調整処理を終了する。
次に、本実施例に係る縮約モデル決定装置100により決定された縮約モデルを用いて連系線動揺波形を求める場合の効果について説明する。
ここでは、図10に記載した電力系統を例に説明する。図10は、複数の発電機を有する場合の電力系統図である。図10の実線61で囲った部分が外部系統であり、破線62で囲った部分が着目系統(主系統)である。着目系統と外部系統とは連系線63で接続されている。
ここで、図10の点64で示されるA幹線、点65で示されるB幹線、及び点66で示されるC幹線の各位置で事故が起こった場合を各事故ケースとする。
図11は、実施例1に係る縮約モデル決定装置による複数事故に対するネットワークパラメータの調整結果を示す図である。
図11では、縮約モデルを決定するために対象とした事故ケース70に対応させて、ネットワークパラメータの調整結果71が記載されている。例えば、「A,B,C Line 6LGO,3LGO」という事故ケース70は、図10におけるA幹線、B幹線及びC幹線において、それぞれ6本の送電線が故障した場合、3本の送電線が故障した場合の6つの事故ケースを対象としていることを表す。また、ネットワークパラメータとは、インピーダンス比率α、発電機容量比率β及び負荷比率γである。
さらに、順位72は、α、β及びγを全探索し、各α、β及びγの組に対して縮約モデルを作成したうちの順位を表している。全探索した場合の各組について縮約モデルを作成するとおよそ1000ケースの縮約モデルが生成される。
順位72で示すように、本実施例に係る縮約モデル決定装置100により調整されたネットワークパラメータの値は、全探索した場合の全ケースの中で、上位3番以内に含まれる場合が多く、悪くても14番目である。つまり、縮約モデル決定装置100により調整されたネットワークパラメータの値は、全ケースの中で上位1〜2%に収まる。
この点、本実施例では、α及びβの組の中で評価関数が最小になる組を選択し、次に、選択したα及びβを用いて評価関数が最小となるγを選択しているので、ネットワークパラメータを全探索する場合に比べてパラメータ設定が効率化できている。具体的には、計算時間がおよそ10分の1に削減されている。そして、図11に示すように、本実施例のようにネットワークパラメータの設定を効率化させても、全ケース中の上位1〜2%に収まるので、ネットワークパラメータの値として適切な値が選択されていることが分かる。
図12は、縮約モデルの精度の比較を説明するための図である。図12において、縦軸は評価関数を表し、値が大きくなるほど生成される連系線動揺波形と実際の連系線動揺波形との合致度が低く、値が小さくなるほど合致度が高いことを表す。また、横軸では、事故ケースを表している。例えば、A幹線6LGOは、A幹線で6本の送電線が故障した事故を示している。
グラフ81〜83は、本実施例に係る縮約モデル決定装置100により決定された複数事故ケースを考慮した縮約モデルを用いてそれぞれの事故ケースを評価したグラフである。グラフ201〜203は、A幹線6LGOの事故が発生したという条件の基作成した縮約モデルを用いてそれぞれの事故ケースを評価したグラフである。グラフ211〜213は、B幹線6LGOの事故が発生したという条件の基作成した縮約モデルを用いてそれぞれの事故ケースを評価したグラフである。グラフ221〜223は、C幹線6LGOの事故が発生したという条件の基作成した縮約モデルを用いてそれぞれの事故ケースを評価したグラフである。
グラフ201は、A幹線6LGOに特化した縮約モデルであるので、A幹線6LGOの事故ケースでは合致度が高い。これに対して、グラフ211及び221は、他の事故に特化したモデルであるので、A幹線6LGOの事故ケースでは基準波形への合致度が低い。そして、複数事故ケースを考慮した縮約モデルの場合のグラフ81は、グラフ201より合致度は低いものの、グラフ211及び221よりかは合致度が高い。
また、グラフ212は、B幹線6LGOに特化した縮約モデルであるので、B幹線6LGOの事故ケースでは合致度が高い。これに対して、グラフ202及び222は、他の事故に特化したモデルであるので、B幹線6LGOの事故ケースでは基準波形への合致度が低い。そして、複数事故ケースを考慮した縮約モデルの場合のグラフ82は、グラフ212とほぼ同じ程度の合致度であり、グラフ211及び222と比較して合致度が非常に高い。
また、グラフ223は、C幹線6LGOに特化した縮約モデルであるので、C幹線6LGOの事故ケースでは合致度が高い。これに対して、グラフ203及び213は、他の事故に特化したモデルであるので、C幹線6LGOの事故ケースでは基準波形への合致度が低い。そして、複数事故ケースを考慮した縮約モデルの場合のグラフ83は、グラフ223とほぼ同じ程度の合致度であり、グラフ203及び213と比較して合致度が非常に高い。
すなわち、ある事故ケースに特化して作成した縮約モデルを使用した場合、生成される連系線動揺波形と実際の連系線動揺波形とを比較すると、特化した事故ケースにおいては合致度が高くなるが、それ以外の事故ケースでは合致度が非常に低くなる。
これに対して、本実施例に係る縮約モデル決定装置100により決定された縮約モデルは、複数事故を考慮しているため、その縮約モデルを用いて生成される連系線動揺波形と実際の連系線動揺波形とは、いずれの事故ケースにおいても高い合致度が得られる。
したがって、本実施例に係る縮約モデル決定装置100により決定された縮約モデルを用いることで、どのような事故が発生した場合でも、精度の高い解析結果を得ることができる。
図13は、励磁系パラメータ調整処理における計算効率について説明するための図である。図13において、縦軸は、Y法を用いた場合の評価関数の計算回数を表している。また、横軸は、事故ケースを表している。
グラフ301〜303は、変更幅を固定して単一パラメータ毎に値を変更していきながら、各パラメータを調整した場合の計算効率を表すグラフである。グラフ91〜93は、1回あたりのパラメータ変更数を1つとして、感度係数を用いてパラメータの値を調整した場合の計算効率を表すグラフである。グラフ94〜96は、1回あたりのパラメータ変更数を複数として、感度係数を用いてパラメータの値を固定の変更幅で調整した場合の計算効率を表すグラフである。グラフ97〜99は、1回あたりのパラメータ変更数を複数として、感度係数を用いてパラメータの値の変更幅を感度係数で按分して、パラメータを調整した場合の計算効率を表すグラフである。
変更幅を固定して単一パラメータ毎に値を変更していきながら、各パラメータを調整した場合、グラフ301〜303に示すように、感度係数を用いた場合と比較して非常に計算回数が多くなる。また、グラフ91〜93で示されるように1つのパラメータのみを変更していくよりも、グラフ94〜99で示されるように複数のパラメータを一度に変更した方が計算回数を抑えられる。
グラフ97〜99が、実施例1に係る縮約モデル決定装置100を用いて励磁系のパラメータ調整を行った場合を表すグラフにあたる。このように、実施例1に係る縮約モデル決定装置100を用いて励磁系のパラメータ調整を行った場合、変更幅を固定して単一パラメータ毎に値を変更していきながら、各パラメータを調整した場合に比べて5分の1程度に計算回数を軽減することができる。すなわち、本実施例に係る縮約モデル決定装置は、従来の励磁系パラメータ決定方法に比べて励磁系パラメータ決定を効率良く行うことができる。グラフ94〜95については、実施例2で説明する。
以上に説明したように、本実施例に係る縮約モデル決定装置は、複数の事故を考慮した縮約モデルを決定することができ、あらゆる事故において精度のよい連系線動揺波形を生成することができる。
また、本実施例に係る縮約モデル決定装置は、ネットワーク・需要パラメータを決定する場合に、インピーダンス比率α及び発電機容量比率βの組を用いてα及びβの値を決定し、その後、γの値を決定する。これにより、本実施例に係る縮約モデル決定装置は、ネットワーク・需要パラメータを総当りで計算するよりも効率よく評価関数を決定することができる。
さらに、本実施例に係る縮約モデル決定装置は、励磁系パラメータの調整を行う場合、感度の高いパラメータを変更していくことでパラメータの調整を行っている。これにより、単一パラメータを固定しながらパラメータを調整する場合に比べて、計算効率を向上させることができる。
次に、実施例3に係る縮約モデル決定装置について説明する。例えば、需要が高くなり送電線を流れる潮流が増加することや、電力流通設備が停止し、特定の送電線が十潮流化するなどのように系統条件が厳しくなることが考えられる。その厳しくなった条件下で事故が発生した場合、電力系統が安全運転を行うことは困難である。そのような場合、発電機は同期がとれなくなり脱調するおそれがある。このとき、電力系統を安定に保つための安定化対策として脱調に至る発電機を未然に系統から切り離す処置がとられることがある。このような処置は、電源制限と呼ばれることがある。
電源制限が行われることで、加速エネルギーが系統から切り離され、電力系統は安定となる。しかし、電源制限によって発電機が切り離された分、電力系統における発電と需要がアンバランスとなり、電力系統の周波数が変化する。
電力系統では系統周波数を一定に保つことが目的とされており、電力制限によって喪失した分の電力は他の発電機によって増分出力される。このように周波数を入力として、周波数が変化したときに、周波数を一定に保つために発電機の機械出力を変化させる制御系は、ガバナ(調速機)と呼ばれる。具体的には、例えば、火力発電機ではタービンに流れる蒸気量や水力発電機では水の流量を調整する弁開度を調整することで、発電機の出力を増減させる。
このガバナによる出力の増分に関する着目系統と外部系統の分担量によって、連系線を流れる潮流が変化する。そのため、電力制限が発生する場合には、外部系統のガバナの特性についても調整することが好ましい。
この点、上述した各実施例ではガバナの特性に対する調整は行っていない。そのため、電力制限が発生した場合には、生成した擬似連系線動揺波形の精度が低下してしまう。そこで、本実施例に係る縮約モデル決定装置は、外部系統のガバナの特性を考慮して縮約モデルを決定する。
図15は、実施例3に係る縮約モデル決定装置のブロック図である。本実施例に係る縮約モデル決定装置は、実施例1の縮約モデル決定装置にガバナパラメータ調整部140が追加されている。図15において図1と同じ符号を有する各部は特に説明のない限り同じ機能を有するものであり、以下の説明では、各部の同じ機能については説明を省略する。
ガバナパラメータ調整部140は、ガバナパラメータ設定部141及び差分算出部142を有している。
ガバナパラメータ設定部141は、調停率δ、スピードリレー時定数TS及びガバナ余裕PLMのそれぞれを上限値下限値の間の予め決められた刻み幅で変更して「δ,TS,PLM」の組を生成する。以下では、調停率δ、スピードリレー時定数TS及びガバナ余裕PLMの組を、「ガバナパラメータの組」という。そして、ガバナパラメータ設定部141は、各生成したガバナパラメータの組を順次差分算出部142へ出力する。
ここで、図16は、ガバナパラメータの組の設定の一例を示す図である。ガバナパラメータ設定部141は、例えば、図16に示すように、下限を2%とし上限を10%として、1%刻みで調停率δの値を変更していく。また、ガバナパラメータ設定部141は、例えば、下限を0.2secとし上限を2.7secとして0.5sec刻みでスピードリレー時定数TSの値を変更していく。また、ガバナパラメータ設定部141は、例えば、下限を0%とし上限を5%として1%刻みでガバナ余裕PLMの値を変更していく。
図15に戻って説明を続ける。差分算出部142は、事故ケース毎の連系線動揺波形である基準連系線動揺波形を記憶部103から取得する。
さらに、差分算出部142は、複数の事故ケースを考慮した評価関数を最小にするインピーダンス比率α、発電機容量比率β及び負荷比率γの値の入力を選択部114から受ける。また、差分算出部142は、評価関数を最小にする慣性定数、AVRゲイン、AVR進み時定数、AVR遅れ時定数、PSSゲイン、PSS進み時定数及びPSS遅れ時定数の入力を励磁系パラメータ設定部121から受ける。
差分算出部142は、取得した基準連系線動揺波形の中から、1つの事故ケースの基準連系線動揺波形を選択する。
また、差分算出部142は、受信したインピーダンス比率α、発電機容量比率β、負荷比率γ、慣性定数、AVRゲイン、AVR進み時定数、AVR遅れ時定数、PSSゲイン、PSS進み時定数及びPSS遅れ時定数を用いて縮約モデルを決定する。そして、差分算出部142は、決定した縮約モデルにおける発電機と負荷とのバランスの差を表す発電機回転数偏差を求める。
次に、差分算出部142は、ガバナパラメータの組の入力をガバナパラメータ設定部141から順次受け付ける。
そして、差分算出部142は、取得した調停率δ、スピードリレー時定数TS及びガバナ余裕PLMの組、並びに、発電機回転数偏差を用いて、図17に示す演算処理を行いタービン出力を算出する。図17は、ガバナモデルの一例の図である。差分算出部142は、求めた縮約モデルのタービン出力を用いて縮約モデルが着目系統1と連系線3で接続された場合における擬似連系線動揺波形を求める。
ここで、図17を参照して、差分算出部142によるガバナモデルを用いたタービン出力の算出の一例ついて具体的に説明する。
差分算出部142は、演算処理401に示すように、発電機回転数偏差に対して調停率δを用いて演算処理を施す。これにより、差分算出部142は、発電機回転数の低下に対する増分出力を出すかを決定する。
次に、差分算出部142は、演算処理402に示すように、スピードリレー時定数TSを用いて演算処理を行う。スピードリレー時定数は、どの程度で追従して出力するかといった応答性を示す時定数である。
次に、差分算出部142は、入力403に示すように、発電量と負荷とのバランスが取れている場合の出力値の入力を受ける。そして、差分算出部142は、演算処理402の結果と入力403の値とを加算する。
次に、差分算出部142は、入力404に示すように、ガバナ余裕PLMの入力を受ける。ここで、ガバナ余裕PLMは、出力の制限値である。そして、差分算出部142は、演算処理145に示すように、演算処理402の結果と入力403の値とを加算結果と入力404の値とを比較し、低値優先で値を出力する。
さらに、差分算出部142は、演算処理405の出力に対してガバナプラント系の演算処理406を加えて、応答性を調整してタービン出力を求める。
図15に戻って説明を続ける。差分算出部142は、求めた擬似連系線動揺波形と基準連系線動揺波形との所定時刻における差を算出する。ここで、発電機における様々なパラメータの調整が電力系統の安定度に主に影響するのは、一点鎖線の枠410で囲われた領域で表される1秒から数10秒オーダーの時間領域である。図18は、電力系統の安定度に影響する時間領域を表す図である。そして、図18に示すようにガバナの特性は、事故発生からある程度時間が経過した後に影響を与える。すなわち、ガバナの特性が安定度に影響する時間領域は、10〜数10秒の時間領域といえる。そこで、本実施例では、求めた擬似連系線動揺波形と基準連系線動揺波形との差分を求める所定時刻を、例えば、20秒とする。ただし、所定時刻はこれに限らず、ガバナの特性が電力系統の安定度に影響を与える時間領域であれば他の値としてもよい。
以下では、差分算出部142が求めた擬似連系線動揺波形と基準連系線動揺波形との所定時刻における差を求めるための関数を、「ガバナ調整用評価関数」という。
差分算出部142は、上述した処理を繰り返し、ガバナパラメータ設定部141から取得した全てのガバナパラメータの組についてガバナ調整用評価関数の値を求める。
そして、差分算出部142は、選択した事故ケースにおける全てのガバナパラメータの組に対応するガバナ調整用評価関数の値を選択部143へ出力する。
さらに、差分算出部142は、上述したガバナ調整用評価関数の値の算出を全ての事故ケースについて実行する。そして、差分算出部142は、算出した各事故ケースにおける各ガバナパラメータの組に対応するガバナ調整用評価関数の値を選択部143へ出力する。
選択部143は、全ての事故ケースにおける各ガバナパラメータの組に対応するガバナ調整用評価関数の値の入力を差分算出部142から受ける。次に、選択部143は、ガバナパラメータの組毎に全事故ケースのガバナ調整用評価関数の値を加算する。そして、選択部143は、ガバナパラメータの組のうち加算結果が最も小さいガバナパラメータの組を特定し、特定したガバナパラメータの組の調停率δ、スピードリレー時定数TS及びガバナ余裕PLMを縮約モデルにおけるガバナの調整に用いるパラメータとする。
選択部143は、縮約モデルにおけるガバナの調整に用いるパラメータとして決定した調停率δ、スピードリレー時定数TS及びガバナ余裕PLMを縮約モデル決定部130へ出力する。
縮約モデル決定部130は、複数の事故ケースを考慮した評価関数を最小にするインピーダンス比率α、発電機容量比率β及び負荷比率γの値の入力を選択部114から受ける。また、縮約モデル決定部130は、評価関数を最小にする慣性定数、AVRゲイン、AVR進み時定数、AVR遅れ時定数、PSSゲイン、PSS進み時定数及びPSS遅れ時定数の入力を励磁系パラメータ設定部121から受ける。
さらに、縮約モデル決定部130は、ガバナ調整用評価関数の値の全事故ケースの加算結果が最も小さくなる調停率δ、スピードリレー時定数TS及びガバナ余裕PLMの入力を選択部143から受ける。
そして、縮約モデル決定部130は、受信したインピーダンス比率α、発電機容量比率β、負荷比率γ、慣性定数、AVRゲイン、AVR進み時定数、AVR遅れ時定数、PSSゲイン、PSS進み時定数及びPSS遅れ時定数を用いて縮約モデルを決定する。
さらに、縮約モデル決定部130は、受信した調停率δ、スピードリレー時定数TS及びガバナ余裕PLMを用いて、ガバナ調整を行う場合の縮約モデルを決定する。
その後、縮約モデル決定部130は、決定した縮約モデルを出力部102に表示させる。
次に、図19を参照して、本実施例に係る縮約モデル決定装置100による縮約モデル決定処理の全体的な流れについて説明する。図19は、実施例3に係る縮約モデル決定装置による縮約モデル決定処理の概要を表すフローチャートである。
制御部104は、縮約モデル決定処理の実行の指示を操作者から受ける。この時、制御部104は、縮約モデルとしてどのようなモデルを使用するかの指示を操作者から受け、使用する縮約モデルを決定する(ステップS11)。
次に、ネットワーク・需要パラメータ設定部110は、縮約モデルに用いるインピーダンス比率α、発電機容量比率β及び負荷比率γを含む外部系統2のネットワーク・需要パラメータを設定する(ステップS12)。
次に、励磁系パラメータ調整部120は、慣性定数、AVRゲイン、AVR進み時定数、AVR遅れ時定数、PSSゲイン、PSS進み時定数及びPSS遅れ時定数を含む励磁系パラメータの調整を行う(ステップS13)。
次に、ガバナパラメータ調整部140は、調停率δ、スピードリレー時定数TS及びガバナ余裕PLMを含むガバナパラメータの調整を行う(ステップS14)。
縮約モデル決定部130は、ネットワーク・需要パラメータ設定部110で設定されたネットワーク・需要パラメータ、励磁系パラメータ調整部120が調整した励磁系パラメータ、及びガバナパラメータ調整部140が調整したガバナパラメータを取得する。その後、縮約モデル決定部130は、取得した各パラメータを用いて縮約モデルを決定する。そして、縮約モデル決定部130は、出力部102に縮約モデルの情報を出力させる(ステップS15)。
次に、図20を参照して、本実施例に係る縮約モデル決定装置によるガバナパラメータの決定処理について説明する。図20は、実施例3に係る縮約モデル決定装置によるガバナパラメータの決定処理のフローチャートである。図20のフローは、図19のステップS14で行われる処理の詳細にあたる。
入力部101は、事故ケース毎の連系線動揺波形などのデータの入力を操作者から受ける(ステップS301)。そして、入力部101は、受信したデータを記憶部103に記憶させる。ただし、このステップは、ガバナパラメータの決定処理に特有の処理ではなく、実施例1で説明した外部系統ネットワーク需要パラメータの設定などで行われる処理であり、実際には、事前に他の処理で取得されたデータを用いてもよい。
差分算出部142は、解析の対象とする複数の事故ケースの中から事故ケースを1つ選定する(ステップS302)。
ガバナパラメータ設定部141は、ガバナパラメータである調停率δ、スピードリレー時定数TS及びガバナ余裕PLMを設定する(ステップS303)。
差分算出部142は、選択部114及び励磁系パラメータ設定部121から取得したパラメータの値、並びに、調停率δ、スピードリレー時定数TS及びガバナ余裕PLMを用いて縮約モデルを生成する。そして、差分算出部142は、生成した縮約モデルと着目系統1とを連系線3で接続した場合の擬似連系線動揺波形を求める。そして、差分算出部112は、求めた擬似連系線動揺波形と基準連系線動揺波形の所定時刻の差分であるガバナ調整用評価関数の値を計算する(ステップS304)。
そして、差分算出部112は、全てのδ,TS,PLMの組についてガバナ調整用評価関数の値の算出が終了したか否かを判定する(ステップS305)。ガバナ調整用評価関数の値の算出が終わっていないδ,TS,PLMの組がある場合(ステップS305:否定)、ガバナパラメータ調整部140は、ステップS303へ戻る。
これに対して、全てのδ,T,PLMの組に対してガバナ調整用評価関数の値の算出が終わっている場合(ステップS305:肯定)、差分算出部142は、対象とする全ての事故ケースについてガバナ調整用評価関数の値の算出が終了したか否かを判定する(ステップS306)。ガバナ調整用評価関数の値の算出が終わっていない事故ケースがある場合(ステップS306:否定)、ガバナパラメータ調整部140は、ステップS302へ戻る。
これに対して、対象とする全ての事故ケースに対してガバナ調整用評価関数の値の算出が終わっている場合(ステップS306:肯定)、差分算出部142は、対象事故ケースを合計した評価関数を求める。選択部114は、対象事故ケースごとのガバナ調整用評価関数の値の合計のうち、合計値が最小となる調停率δ、スピードリレー時定数TS及びガバナ余裕PLMを特定する(ステップS307)。
次に、図21A〜21Cを参照して本実施例に係る縮約モデル決定装置を用いて連系線動揺波形の決定を行った場合の効果について説明する。図21Aは、電源制限が発生した場合にガバナ調整を行わずに縮約モデルを決定した時の連系線動揺波形を表す図である。また、図21Bは、電源制限が発生した場合に実施例3に係る縮約モデルを用いた場合の連系線動揺波形を表す図である。また、図21Cは、電源制限が発生した場合に実施例3に係る縮約モデルを用いた場合のパワースペクトル密度を表す図である。図21A及び21Bのいずれも、縦軸は連系線における潮流を表し、横軸は時間を表している。また、図21Cにおいて、縦軸はパワースペクトル密度を表し、横軸は周波数を表している。
図21Aの波形501は、基準連系線動揺波形を表している。また、波形502は、ガバナ調整を行わない場合の縮約モデルによる連系線動揺波形を表している。このように、電力制限が発生した場合、縮約モデルによる連系線動揺波形は基準連系線動揺波形から乖離してしまう。
図21Bの波形511は、基準連系線動揺波形を表している。また、波形512は、本実施例に係る縮約モデル決定装置を用いて決定した縮約モデルによる連系線動揺波形を表している。このように、縮約モデルのガバナ調整を行うことで、電力制限が発生した場合にも、縮約モデルによる連系線動揺波形を基準連系線動揺波形に精度よく近似することができる。
また、図21Cの波形521は、実際の事故ケースの各周波数におけるパワースペクトル密度を表しており、波形522は、本実施例に係る縮約モデル決定装置を用いて決定した縮約モデルによる各周波数におけるパワースペクトル密度を表している。このように、縮約モデルのガバナ調整を行った場合、パワースペクトル密度も精度よく近似することができる。
以上に説明したように、本実施例に係る縮約モデル決定装置は、ガバナパラメータを調整し、電力制限が発生した場合の縮約モデルの特性を基準モデルの特性に近づけることができる。