JP6314791B2 - Ca−Si−F系化合物、複合材料、半導体、及び電池 - Google Patents

Ca−Si−F系化合物、複合材料、半導体、及び電池 Download PDF

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Description

本発明は、Ca−Si−F系化合物、複合材料、半導体、及び電池に関し、さらに詳しくは、新規なCaSi2x化合物を含むCa−Si−F系化合物、並びに、このようなCa−Si−F系化合物を用いた複合材料、半導体及び電池に関する。
Caを含む化合物として、種々の化合物が知られている。Caを含む化合物は、その結晶構造や組成に応じて様々な電気的特性や光学的特性を示すことから、これらの特性を利用して、種々の用途に用いられ、あるいは、用いることが検討されている。
例えば、CaSi2は、CaとSiとが交互に積層した結晶構造を持つ化合物であり、金属的性質を示す。このCaSi2結晶を塩酸処理し、CaSi2結晶からCaを抜くことによって、Siナノシートを合成できることが知られている。得られたSiナノシートは、ポリシラン(Si22)nやシロキセン(Si2HOH)nを製造するための出発原料として用いられている。
また、例えば、CaF2は、蛍石型の結晶構造を持つ化合物であり、絶縁体的性質を示す。このCaF2の絶縁体としての性質を用いた例として、特許文献1には、Si井戸層とCaF2障壁層とを積層した超格子熱電材料が開示されている。
同文献には、
(a)Si(111)基板上に分子線エピタキシー法(MBE法)又は有機金属気相成長法(MOCVD法)を用いてCaF2層とSi層とを交互に成長させることにより、このような超格子熱電材料が得られる点、及び、
(b)(111)配向Si/CaF2系超格子において、Si層の厚みが0.75nmであって、CaF2層の厚みが1.25nm(=4ML(モノ・レイヤー))である場合に、ZT値が最大に近づく点、
が記載されている。
特許文献1以外にも、Si(111)基板上にCaF2をエピタキシャル成長させた報告例は多数存在する(例えば、非特許文献1〜3参照)。いずれの報告例においても、Si(111)基板上へCaF2をエピタキシャル成長させると、Si(111)面直上にはCaが来ると報告されている。
しかしながら、Ca、Si、及びFを含むCa−Si−F系化合物(特に、Si面とF面とが対峙している構造を備えた化合物)が合成された例は、従来にはない。
特開2004−193200号公報
R. M. Tromp and M. C. Reuter, Phys. Rev. Lett., 61, 1756 (1988) E. Rothenberg and J. D. Denlinger, Phys. Rev. B, 50, 11052 (1994) C. Deiter, et al., Phys. Rev. B, 085449 (2010)
本発明が解決しようとする課題は、新規なCaSi2x化合物を含むCa−Si−F系化合物を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このようなCa−Si−F系化合物を用いた複合材料、半導体及び電池を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るCa−Si−F系化合物は、組成式:CaSi2x(1.1<x≦2.5)で表される組成を有する化合物(CaSi2x化合物)を含むことを要旨とする。
本発明に係る複合材料は、
Si(111)基板と、
前記Si(111)基板上に合成された、本発明に係るCa−Si−F系化合物と
を備えていることを要旨とする。
本発明に係る半導体は、本発明に係るCa−Si−F系化合物、又は本発明に係る複合材料を用いたことを要旨とする。
さらに、本発明に係る電池は、本発明に係るCa−Si−F系化合物を用いたこと要旨とをする。
CaSi2にフッ素を拡散させると、CaSi2の全部又は一部が新規な化合物(CaSi2x化合物)に変態する。この時、反応条件に応じて、フッ素濃度の異なる種々のCaSi2x化合物が生成する。これらのCaSi2x化合物は、いずれも1〜5原子層のSi層と、1〜5原子層のCaF2層とが交互に積層した構造を備えている。また、これらのCaSi2x化合物において、Si層とCaF2層との界面は、Si面とF面とが対峙した新規な構造を備えている。さらに、CaF2層で挟まれた2原子層のSi層は、バルクSiとは異なる構造を備えている。そのため、本発明に係るCa−Si−F系化合物は、フッ素濃度を制御することにより、種々の特性を示す。
260℃−90hの熱処理により得られたCaSi2x結晶粒の反射電子像である。 図1に示すCaSi2x結晶粒のEPMA定量線分析結果である。測定方向は、図1中の矢印で示した方向である。 260℃−130hの熱処理により得られたCaSi2x結晶粒のEPMA定量線分析結果である。
300℃−15hの熱処理により得られたCaSi2x結晶粒のEPMA定量線分析結果である。 300℃−15hの熱処理により得られたCaSi2x結晶粒であって、図4に示す結晶粒とは異なる結晶粒のEPMA定量線分析結果である。 各温度で10h熱処理することにより得られたCaSi2xの粉末XRDパターンである。
CaSi21.75組成のサンプルの高角度散乱暗視野−走査型透過電子顕微鏡(HAADF−STEM)像である。 CaSi22組成のサンプルのHAADF−STEM像である。 CaSi22.25組成のサンプルのHAADF−STEM像である。 CaSi22組成のサンプルの3層Siと2層Siの混合積層エリアの、(a)HAADF−STEM像、(b)SiのEDSマッピング、(c)CaのEDSマッピング、(d)FのEDSマッピング、及び(e)ラインプロファイル、である。
2層Si(DL−Si)モデルのユニットセル(図11(a))、及び各方位から投影した2層Siモデル(図11(b))である。 図12(a)は、原料のCaSi2における[100]入射([010]DL-Si、[110]DL-Si入射、[1−10]Si and CaF2入射)によるHAADF−STEM像、シミュレーション結果(左側の挿入図)、及びモデル(右側の挿入図)である。図12(b)及び図12(c)は、CaSi2における[120]入射([−100]DL-Si、[−130]DL-Si入射、[11−2]Si and CaF2)によるHAADF−STEM像、シミュレーション結果(左側の挿入図)、及びモデルである。 [100]及び[010]方位と垂直な方向から投影した2層Siモデル、及び2層Siと接しているCaSi2との原子位置関係を示す図である。 2層Siの構造モデルである。
CaSi22組成のサンプルの[110]bulk Si入射のHAADF−STEM像、HAADFイメージシミュレーション結果(左側の挿入図)、及び格子モデル(右側の挿入図)である。 (a)3層SiとCaF2の界面のHAADF−STEM像、及び(b)2層SiとCaF2の界面のHAADF−STEM像である。 粒径5〜50μmのCaSi2の充放電曲線である。 CaSi2x化合物の充放電曲線である。 CaSi2x化合物の充放電前後でのXRDパターンである。
以下に本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. Ca−Si−F系化合物]
本発明に係るCa−Si−F系化合物は、組成式:CaSi2x(1.1<x≦2.5)で表される組成を有する化合物(CaSi2x化合物)を含む。
Ca−Si−F系化合物は、
(a)CaSi2x化合物のみからなる場合と、
(b)CaSi2x化合物に加えて、他の化合物を含む場合と、
がある。他の化合物については、後述する。
[1.1. CaSi2x化合物]
[1.1.1. 組成]
「CaSi2x化合物」とは、Ca、Si、及びFを所定の比率で含む化合物をいう。
CaSi2x化合物は、製造条件に応じて、
(a)結晶質となる場合と、
(b)アモルファス又はアモルファスに近い状態(以下、これらを総称して「アモルファス状」という)となる場合と、
がある。
本発明において、単に「CaSi2x化合物」というときは、結晶質、又はアモルファス状のいずれも含まれる。
CaSi2x化合物のSi/Ca比(原子比)は、形式的には2.0である。しかしながら、本発明において「CaSi2x化合物」というときは、化学量論組成の化合物だけでなく、CaSi2x化合物と同視できる限りにおいて、化学量論組成から若干ずれている組成を持つ化合物も含まれる。
化学量論組成からのずれの程度は、フッ素の含有量、空孔の含有量、CaSi2からCaSi2x化合物への変態の進行程度などにより異なる。後述する方法を用いた場合、Si/Ca比は、2.0±0.15程度となる。
CaSi2x化合物のF/Ca比(x)(原子比)は、製造条件に応じて、1.1<x≦2.5の範囲で変化する。後述するように、CaSi2x化合物は、1〜5原子層のSi層と1〜5原子層のCaF2層とが交互に積層した構造を有している。x値の変化は、主として、積層周期の変化に起因していると考えられる。
また、微視的に見ると、CaSi2x化合物中のフッ素濃度は、連続的に変化するのではなく、段階的に変化する。現在、確認されている組成物は、以下の5種類である。
(a)x=1.75である化合物(以下、「CaSi21.75組成」ともいう)。
(b)x=2.00である化合物(以下、「CaSi22組成」ともいう)。
(c)x=2.25である化合物(以下、「CaSi22.25組成」ともいう)。
(d)x=2.33である化合物(以下、「CaSi22.33組成」ともいう)。
(e)x=2.50である化合物(以下、「CaSi22.5組成」ともいう)。
なお、本発明において、「x=1.75」又は「CaSi21.75組成」というときは、x値が完全に1.75に等しい化合物だけでなく、CaSi21.75組成と同視できる限りにおいて、x値が若干ずれている組成を持つ化合物も含まれる。
所定のx値からのずれの程度は、製造条件により異なる。後述する方法を用いた場合、CaSi21.75組成のx値は、1.75±0.10程度となる。この点は、上述した残りの組成物も同様である。
後述するように、CaSi2x化合物は、CaSi2にFを拡散させることにより製造される。例えば、原料としてCaSi2単結晶を用いた場合、表面から内部に向かってF濃度が段階的に変化する。そのため、得られたサンプルから表層部分の内、特定の組成を有する領域のみを抽出することができる。
また、原料として所定の粒径を有するCaSi2粉末を用いた場合、製造条件を最適化することによって、粒子全体を特定の組成にすることもできる。
[1.1.2. 結晶構造]
[A. 原子層数]
結晶質のCaSi2x化合物は、1〜5原子層のSi層と、1〜5原子層のCaF2層とが交互に積層した積層構造を備えている。CaSi22化合物は、3原子層のSi層と、3原子層のCaF2層とが交互に積層した構造が主な構造であるが、両層とも製造条件に応じて1〜5原子層の範囲で原子層数が変化する。
これらの内、CaF2層は、原子層数によらず、バルクのCaF2(111)と同一の原子配列を持つ。
一方、Si層は、原子層数に応じて、原子配列が異なっている。1原子層のSi層、3原子層のSi層(以下、これを「3層Si」ともいう)又は4〜5原子層のSi層は、バルクのSi(111)と同一の原子配列を持つ。一方、2原子層のSi層(以下、これを「2層Si」ともいう)は、バルクのSi構造とは異なる特異な構造であって、2層の端面(エッジ面)が四員環と五員環で構成される構造を持つ。2層Siは、バルクSiとは異なる構造であるため、特異な特性の発現が期待される。
[B. 界面構造]
Si(111)基板上にCaF2をエピタキシャル成長させた場合、Si層とCaF2層の界面は、Si(111)面とCa面が対峙した構造となる。この場合、界面に存在するSi原子及びCa原子は、CaSi2と同じスタッキングとなるため、界面のSi−Ca間にはイオン結合が形成され、界面Siにはダングリングボンドが形成されない。
これに対し、本発明に係るCaSi2x化合物において、Si層とCaF2層との界面は、Si面とF面とが対峙した構造となる。この構造は、従来の超高真空下でのエピタキシャル成長では形成不可能である。
Si面とF面とが対峙している場合、界面に存在するSiにはダングリングボンドが形成される。その結果、CaSi2x化合物中のF濃度に応じて、Si層の構造及び界面に存在するSiのダングリングボンド密度が変化する。また、これによってCaSi2x化合物のバンド構造が変化する。
[1.2. 他の化合物]
後述するように、フッ素が共存する環境下においてCaSi2を熱処理すると、CaSi2中にフッ素が拡散する。そのため、熱処理条件を最適化すると、理想的には、CaSi2のすべてをCaSi2x化合物に変態させることができる。
一方、熱処理条件を最適化すると、CaSi2x化合物以外の他の化合物を含むCa−Si−F系化合物が得られる場合がある。
例えば、基板上にCaSi2薄膜を形成し、フッ素が共存する環境下において基板を適度に熱処理すると、CaSi2薄膜の表層部分のみがCaSi2x化合物に変態する。CaSi2は、金属的性質を持つのに対し、CaSi2x化合物は、半導体的性質を持つ。そのため、このようなCaSi2層/CaSi2x化合物層からなる接合体は、ショットキー結合として機能する。
原料のCaSi2の状態や熱処理条件などの製造条件によっては、CaSi2x化合物の構造の変化を引き起こす場合がある。例えば、過度の熱処理を行った場合、あるいは、出発原料として粉末を用いた場合には、周期的な積層構造に乱れが生じたり、あるいは、アモルファス状に変化することがある。
[2. Ca−Si−F系化合物の製造方法]
本発明に係るCa−Si−F系化合物は、
(a)CaSi2を含む原料を準備し、
(b)CaSi2にフッ素を拡散させる
ことにより製造することができる。
[2.1. 原料準備工程]
まず、CaSi2を含む原料を準備する(原料準備工程)。原料は、CaSi2を含むものであれば良い。CaSi2へのフッ素の拡散が可能な限りにおいて、原料の結晶構造、大きさ、形状等は、特に限定されない。
CaSi2を含む原料としては、例えば、
(a)CaSi2の多結晶、単結晶、又はアモルファスからなるバルク又は粉末、
(b)Si基板などの基板上に形成されたCaSi2薄膜、
などがある。
[2.2. 拡散工程]
次に、CaSi2にフッ素を拡散させ、本発明に係るCa−Si−F系化合物を合成する(拡散工程)。CaSi2へのフッ素の拡散方法は、特に限定されるものではなく、原料の種類や目的に応じて、最適な方法を選択することができる。
フッ素の拡散方法は、特に、フッ素を含有する液相中において、原料を熱処理する方法が好ましい。このような方法により、容易にCa−Si−F系化合物を合成することができる。
[2.2.1. 液相]
フッ素を含有する液相としては、例えば、
(a)フッ素ガスを溶媒に溶解させた溶液、
(b)フッ素を含有する化合物を溶媒に溶解させた溶液、
(c)フッ素を含有する化合物の融液
などがある。
フッ素を含有する液相は、溶液又は融液の状態でCaSi2へのフッ素の拡散が可能なものであればよい。このような液相としては、例えば、[BMIM][BF4]、[EMIM][BF4]、[BMIM][PF6]などのイオン液体がある。
[2.2.2. 熱処理条件]
液相を用いてフッ素を拡散させる場合、熱処理は、原料を液相中に浸漬した状態で行う。熱処理条件は、所定量のフッ素を効率よく拡散させることが可能な条件であれば良い。
フッ素源の種類によっては、フッ素の拡散は、室温近傍においても生ずる。すなわち、本発明において「熱処理」というときは、室温近傍での保持も含まれる。
一般に、熱処理温度が高くなるほど、フッ素の拡散速度が速くなる。最適な温度は、フッ素源により異なる。一方、イオン液体の場合、熱処理温度が高くなりすぎると、イオン液体が分解するおそれがある。従って、熱処理温度は、100℃〜300℃が好ましく、さらに好ましくは、200℃〜300℃である。
熱処理時間は、熱処理温度に応じて最適な時間を選択する。一般に、熱処理時間が長くなるほど、フッ素の拡散量が増大する。
一方、CaSi2へのフッ素の拡散量には限界がある。そのため、フッ素濃度の上昇という点において、必要以上の熱処理には実益がない。また、過度の熱処理は、Ca−Si−F系化合物の構造の変化を引き起こす場合もある。
最適な熱処理時間は、Ca−Si−F系化合物の用途や熱処理温度にもよるが、通常、10〜200時間程度である。
[2.3. 後処理]
得られたCa−Si−F系化合物は、そのまま各種の用途に用いても良い。あるいは、合成物から目的とする組成物のみを抽出し、これを各種の用途に用いても良い。
[3. 複合材料]
本発明に係る複合材料は、
Si(111)基板と、
前記Si(111)基板上に合成された、本発明に係るCa−Si−F系化合物と
を備えている。
上述したように、Si(111)基板上にCaSi2薄膜を形成し、上記の条件下で熱処理を行うと、CaSi2薄膜の一部又は全部をCa−Si−F系化合物に変態させることができる。得られた複合材料は、そのままの状態で各種の用途に用いることができる。
あるいは、Ca−Si−F系化合物は、製造条件によっては、表面から内部に向かってフッ素濃度が段階的に変化している場合がある。この場合、熱処理直後の複合材料の表層部分のみを選択的に除去し、目的とする組成を有するCaSi2x化合物を表面に露出させた状態で、各種の用途に用いることもできる。
[4. 半導体]
本発明に係るCa−Si−F系化合物又は複合材料は、半導体として用いることができる。
例えば、CaSi2層/CaSi2x化合物層からなる接合体は、ショットキー結合として機能する。そのため、Ca−Si−F系化合物は、ショットキーバリアダイオード、金属−半導体電界効果トランジスタなどに利用することができる。
[5. 電池]
本発明に係るCa−Si−F系化合物は、電池の正極又は負極に用いることができる。
CaSi2x系化合物は、界面Siのダングリングボンドが多数ある構造を有するため、リチウムイオンを置換可能なサイトが多い。そのため、Ca−Si−F系化合物は、高容量のリチウムイオン電池の電極として有効である。
[6. 作用]
CaSi2にフッ素を拡散させると、CaSi2の全部又は一部が新規な化合物(CaSi2x化合物)に変態する。この時、反応条件に応じて、フッ素濃度の異なる種々のCaSi2x化合物が生成する。これらのCaSi2x化合物は、いずれも1〜5原子層のSi層と、1〜5原子層のCaF2層とが交互に積層した構造を備えている。また、これらのCaSi2x化合物において、Si層とCaF2層の界面は、Si面とF面とが対峙した新規な構造を備えている。さらに、CaF2層で挟まれた2原子層のSi層は、バルクSiとは異なる構造を備えている。そのため、本発明に係るCa−Si−F系化合物は、フッ素濃度を制御することにより、種々の特性を示す。
例えば、CaSi2x化合物は、F濃度によって、Si層の構造、及び界面に存在するSiのダングリングボンド密度が変化する。特に、3層Siと3層CaF2の積層構造の場合は、界面のSiにダングリングボンドが形成されるため、金属的挙動を示す。そのため、Ca−Si−F系化合物中のF濃度を制御することにより、バンド構造を制御することが可能となる。また、これによって、種々の半導体デバイスを作製することが可能となる。特に、2層Siを含むCa−Si−F系化合物を用いてデバイスを作製した場合には、特異な特性の発現が期待される。
また、Si層とCaF2層の積層構造(超格子構造)を利用し、Ca−Si−F系化合物を熱電材料として利用することも可能である。
また、界面に存在するSiのダングリングボンドは、Liとの結合が容易である。そのため、本発明に係るCa−Si−F系化合物は、リチウムイオン電池の正極又は負極として利用可能である。
また、Si基板上にCaSi2層をエピタキシャル成長させ、CaSi2層にFを拡散させることにより、Si基板上に種々の特性を有するデバイスを作製することができる。
さらに、CaSi2x化合物は、Ca及びFの濃度によって、金属、半導体、絶縁体へと変化する。そのため、オーミック接合やショットキー接合の形成技術となりうる。
(実施例1: CaSi2xの合成)
[1. 試料の作製]
CaSi2の結晶粒をイオン液体[BMIM][BF4]に浸し、240〜300℃において、10〜130hの熱処理を行った。
[2. 試験方法及び結果]
[2.1. CaSi2x結晶粒の組成変化]
260℃−90hの熱処理により得られたCaSi2x結晶粒を、原料のCaSi2のc面と垂直に切断した。図1に、CaSi2x結晶粒の切断面の反射電子像を示す。図2に、図1に示すCaSi2x結晶のEPMA定量線分析結果を示す。測定方向は、図1中に矢印で示した方向である。
結晶端から結晶内部へフッ素が拡散するため、熱処理後は、F濃度が結晶端から増加した。260℃−90h熱処理では、端から200μmの範囲の組成は、CaSi22となっていた。
図3に、260℃−130hの熱処理により得られたCaSi2x結晶粒のEPMA定量線分析結果を示す。
260℃−130hで熱処理すると、図3に示すように、結晶端と内部の組成がCaSi22.25〜CaSi22.5の範囲内でほぼ一定になっていた。
図4に、300℃−15hの熱処理により得られたCaSi2x結晶粒のEPMA定量線分析結果を示す。図5に、300℃−15hの熱処理により得られたCaSi2x結晶粒であって、図4に示す結晶粒とは異なる結晶粒のEPMA定量線分析結果を示す。
図4に示すように、300℃の熱処理では、CaSi2結晶粒の大きさ、形状などによってばらつきはあるものの、ある一つの結晶粒において、結晶端からCaSi22.25、CaSi22、CaSi21.75と、段階的に組成が変化していた。また、図5に示すように、CaSi22で組成が一定となる結晶粒も存在していた。
以上の結果から、
(a)安定相として、CaSi21.75、CaSi22、CaSi22.25が存在すること、及び、
(b)更にフッ素が拡散すると、約CaSi22.5付近までF濃度が増加すること、
が確認された。
また、260℃、300℃熱処理ともに、組成がCaSi21.1まではF濃度が上昇した後は、F濃度変化はなだらかになっている。よって、CaSi2xの安定相の組成範囲は、CaSi2x(1.1<x≦2.5)である。
[2.2. CaSi2x結晶粒の構造変化]
[2.2.1. XRD分析]
原料のCaSi2を[BMIM][BF4]中において、240℃、260℃、280℃、又は300℃で各10時間熱処理した。得られた約φ0.5〜2mmのCaSi2x結晶粒を粉砕し、粉末XRD測定を行った。図6に、各温度で10h熱処理することにより得られたCaSi2xの粉末XRDパターンを示す。
原料であるCaSi2には存在しなかった2.8Å(0.28nm)付近と3.2Å(0.32nm)付近の2箇所に、ブロードなピークが検出された。260℃以上の熱処理では、2.8Å付近のピークがほとんど検出されないのに対し、3.2Å付近のピークは強くなった。さらに、熱処理温度が高温になるほど、3.25Å(0.325nm)(240℃)→3.15Å(0.315nm)(300℃)と、面間隔が狭くなる傾向が見られた。
[2.2.2. HAADF−STEM観察及びEDS分析]
図4に示す結晶粒から、集束イオンビーム(FIB)で3種類のサンプルを切り出した。サンプルは、それぞれ、組成がCaSi21.75、CaSi22、又はCaSi22.25である箇所から切り出した。原料のCaSi2における[100]方位から、各サンプルに含まれるCaSi2xの高角度散乱暗視野−走査型透過電子顕微鏡(HAADF−STEM)観察を行った。HAADF−STEM像のコントラストは、重い元素の方が明るくなるため、原子像のコントラストは、F、Si、Caの順に明るくなる。
図7に、CaSi21.75組成から切り出したサンプルのHAADF−STEM像を示す。図7では、CaFx層とSi層とが、それぞれ、2原子層〜4原子層の積層構造を形成していた。
図8に、CaSi22組成から切り出したサンプルのHAADF−STEM像を示す。この組成もCaF2層とSi層が、それぞれ、2原子層〜4原子層の積層構造を形成していたが、図8に示すように、3原子層ずつの積層が主な構造であった。また、HAADF−STEM像は、原料のCaSi2では[100]方位であり、バルクSi及びCaF2の構造では[110]である方位から観察した像である。そのため、Siには、Siダンベルが確認された。よって、この積層構造は、バルクSiの(111)3層と、CaF2の(111)3層が積層した構造であることがわかる。
図9に、CaSi22.25組成から切り出したサンプルのHAADF−STEM像を示す。CaF2層とSi層とが、それぞれ、2原子層〜4原子層の積層構造を形成していた。
図10に、CaSi22組成のサンプルの3層Siと2層Siの混合積層エリアの、(a)HAADF−STEM像、(b)SiのEDSマッピング、(c)CaのEDSマッピング、(d)FのEDSマッピング、及び(e)ラインプロファイル、を示す。2原子層、及び3原子層のSi層、並びにCaF2層のいずれも、単相であることが確認された。
[2.2.3. 2層Siの構造モデル及びHAADFイメージシミュレーション]
図11(a)に、2層Si(DL−Si)モデルのユニットセルを、図11(b)に、各方位から投影した2層Siモデルを示す。また、図12(a)に、原料のCaSi2における[100]入射([010]DL-Si、[110]DL-Si入射、[1−10]Si and CaF2入射)によるHAADF−STEM像(左側の挿入図)、シミュレーション結果(右側の挿入図)、及びモデルを示す。図12(b)及び(c)に、CaSi2における[120]入射([−100]DL-Si、[−130]DL-Si入射、[11−2]Si and CaF2)によるHAADF−STEM像、シミュレーション結果(左側の挿入図)、及びモデルを示す。尚、図12(b)、及び図12(c)のHAADF−STEM像は、スキャン中のドリフトによって像の歪みが生じている。
原料であるCaSi2は、c面に垂直に3回対称軸を有し、2層Siを挟んでいるCaF2層の(111)面も垂直に3回対称軸を有している。よって、図12のように、原料のCaSi2における[100]方位([1−10]CaF2)から2種類の2層Si像が観察されるのは、[1−10]CaF2、[01−1]CaF2、[−101]CaF2と[010]DL-Siが平行になるように、2層SiはCaF2層間に形成することが可能であるためと考えられる。
図13に、[100]及び[010]方位と垂直な方向から投影した2層Siモデル、及び2層Siと接しているCaSi2との原子位置関係を示す。原料である三方晶のCaSi2と、フッ素拡散後の立方晶のバルクSi及びバルクCaSi2、並びに単斜晶のDL−Siとの方位関係は、以下のようになる。
[001]CaSi2||[111]Si and CaF2
[100]CaSi2||[1−10]Si and CaF2||[010]DL-Si or [−110]DL-Si
[120]CaSi2||[11−2]Si and CaF2||[−100]DL-Si or [−130]DL-Si
[100]CaSi2⊥[120]CaSi2
2層Siは、2D構造体であるため、本来は3次元の空間群で表記されないが、便宜上、2層Siの(001)面を、CaF2層と2層Siの界面のF面と五員環頂点Siとの中心距離の面とする。空間群はP2/mで表される。誤差範囲を3σとすると、格子定数は、6.57Å(0.657nm)≦a≦6.66Å(0.666nm)、3.75Å(0.375nm)≦b≦3.90Å(0.390nm)、6.18Å(0.618nm)≦c≦6.78Å(0.678nm)、α=90°、68.8≦β≦76.6°、γ=90°となる。尚、2層SiとCaF2層との間が空いている場合があるため、格子定数cのばらつきは特に大きい。
表1に、α=6.612Å(0.6612nm)、b=3.824Å(0.3824nm)、c=6.53Å(0.653nm)、α=90°、β=72.7°、γ=90°の場合のDL−Siモデルの原子座標を示す。
Figure 0006314791
2層Siは、図14に示すように2D構造体である。2D構造の表面である(001)面は、変形チェア型(図14中の枠1)とボート型(図14中の枠2)の六員環で構成される。エッジ面である(010)面は、四員環と五員環(図14中の枠3)で構成されたSiネットワークである。
CaSi22組成の3層のSiは、バルクSiの(111)が3層積層した構造である。CaF2も同様に、バルクCaF2(111)の積層構造である。HAADF−STEM像撮影の条件下で、バルクSi及びCaF2の[110]方位のHAADF像のシミュレーションをMac TempasXを用いて行った。
図15に、CaSi22組成の[110]bulk Si入射のHAADF−STEM像、HAADFイメージシミュレーション結果(左側の挿入図)、及び格子モデル(右側の挿入図)を示す。図15のHAADF像中の左側の挿入図が、シミュレーションにより得られた像である。シミュレーション像は、撮影したHAADF−STEM像とほぼ同じコントラストとなった。
以上の結果から、
(a)CaSi2にFを拡散させて合成したSi層とCaF2層は、それぞれ単相であること、及び、
(b)CaSi22組成の構造は、バルクSi(111)3層とCaF2(111)3層の積層構造であること、
が判明した。
CaSi22.25、CaSi22.33、及びCaSi22.5は、いずれも、バルクSi(111)層からなるSi層と、CaF2(111)層からなるCaF2層の積層構造であった。大部分は3〜4原子層であるが、ばらつきがあり、1〜5原子層構造を取りうる。
[2.3. Si層とCaF2層の界面に関して]
図16に、(a)3層SiとCaF2の界面のHAADF−STEM像、及び(b)2層SiとCaF2の界面のHAADF−STEM像を示す。エピタキシャル成長させたSi層とCaF2層の界面は、Si面とCa面が対峙している。これに対し、本発明に係る方法で合成した3層Si構造の場合は、図16(a)のように、Si面とCaF2のF面が対峙している。
2層SiとCaF2の界面も、3層Siと同様に、Si面とCaF2のF面とが対峙している。しかし、五員環の頂点のSiサイトに近いFサイトは空孔(V)となり、2層Siに対峙しているF面のFサイトは、2個に1個の割合で空孔となる(図16(b))。界面のFサイトが2個に1個の割合で空孔である2層CaF2と2層Siの積層構造は、組成がCaSi21.5のとき最も安定である。よって、図7に示すように、組成がCaSi21.75のエリアでは、CaSi21.5組成の2層積層構造とCaSi22組成の3層積層構造が混在している。但し、F面の空孔が[100]方位に2倍周期でオーダリングしている可能性もある。
一方、CaSi22.25、CaSi22.33、及びCaSi22.5組成では、Si−Fの結合エネルギーは5.6eVと比較的大きいので、SiとCaF2の界面のSiにFが終端する。
(実施例2: リチウムイオン電池の負極としての性能評価)
原料であるCaSi2は、Liイオン電池の負極活物質としての容量が310mAh/g(10サイクル)であると報告されている(J. Wolfenstine, J. Power Sources 124 (2003) 241(以下、「参考文献1」という)参照)。これに対し、CaSi2x化合物は、CaSi2よりも更に反応が容易であることが期待される。そこで、本実施例では、合成したCaSi2x化合物の用途探索の一貫として、Liイオン電池の負極活物質としての特性評価を行った。
[1. 実験方法]
CaSi2及びCaSi2x(0≦x≦2)を負極活物質とする電極を作製した。その電極を用いてセルを組み、充放電評価を行った。
[1.1. CaSi2x(0≦x≦2)化合物の合成]
CaSi2結晶粒をφ5〜50μmに粉砕した。粉砕粉をAr雰囲気下において、イオン液体[BMIM][BF4]中で280℃−10h熱処理し、CaSi2x(0≦x≦2)化合物を合成した。
[1.2. 電極の作製]
粒径が5〜50μmであるCaSi2、及び粒径が5〜30μmであるCaSi2xを負極活物質とし、活物質:88%、アセチレンブラック(HS100;電気化学工業製):6%、ポリフッ化ビニリデン:6%の重量比で混練した。この混練体を厚さ10μmの圧延Cu箔に100μmの厚さに均一に塗布した。これを真空雰囲気下で一晩、120℃で熱処理し、乾燥させた。その後、φ16mmに切り出し、電極とした。
[1.3. セルの充放電評価]
日本トムセル製二極式セルを用い、作用極に上記で作製した電極を、対極に金属リチウム箔を用いた。電解液には、1M LiPF6(炭酸エステル(EC):炭酸ジエチル(DEC)=1:1v/v%;キシダ化学株式会社製)を、セパレータにはポリプロピレン微多孔膜を用いて、セル組みを行った。その後、セルを電池充放電装置(HJR−1010SM8;北斗電工株式会社製)にセットし、電圧範囲:0〜3V又は0〜1.5V、電流密度:0.15mA/cm2の測定条件で充放電を5サイクル繰り返し、充放電特性評価を行った。
[2. 結果]
[2.1. CaSi2の充放電特性]
図17に、粒径5〜50μmのCaSi2の充放電曲線を示す。充放電は起こるものの、5サイクル後の放電容量は15mAh/gであった。Wolfenstineは、Liイオン電池の負極活物質としてのCaSi2の性能評価を行い、310mAh/gの容量を報告した(参考文献1参照)。一方、本実施例での容量は、文献値と比較すると非常に低い値を示した。
CaSi2の反応機構に関して、Wolfenstineは、CaSi2とLiの反応式は式(1)で表されるが(A. Anani, R. A. Huggins, J. Power Sources 38 (1992) 351参照)、実際に容量として機能するのは、Siが合金化したLi4.4Siであり、Li2Caは機能しないと報告している(参考文献1参照)。
10.8Li+CaSi2 → Li2Ca+2Li4.4Si ・・・(1)
表2に、参考文献1で報告されているCaSi2の容量を示す。参考文献1で報告されているCaSi2の容量(310mAh/g)は、表2に示すように、粒径が25〜30μmであるCaSi2の10サイクル目の容量である。同文献には、更に結晶粒をボールミルで粉砕し、アモルファス化したCaSi2は、400mAh/gの容量を示すと報告されている。
なお、電極作製条件は、活物質:85%、アセチレンブラック:5%、ポリフッ化ビニリデン:10%の重量比であり、測定条件は、電圧範囲:0.005〜1.5V、電流密度:20μA/cm2であった。
Figure 0006314791
結晶化Siを負極活物質として充放電すると、
(a)まず、初回の放電電圧:−0.05VまでにSiが非晶質LixSiへと変化し、
(b)〜0VでLi15Si4へ変化し、
(c)その後の充放電ではSiに戻ることなく、非晶質LixSiとLi14Siとの間で可逆的に変化する、
と報告されている(M. N. Obrovac and L. Christensen, Electrochem Solid State Lett, 7(5)(2004)A93参照)。
また、初回の放電で観察されるプラトーの電位は、約0.1〜0.05Vであるのに対し、その後の充放電ではプラトーは観察されない。
また、参考文献1で報告されている2回目以降の充放電曲線において、25〜30μm粒径のCaSi2は、約0.16〜0.07Vでプラトーが観察される。これに対し、ボールミルでアモルファス化した1〜3μm粒径のCaSi2は、プラトーが観察されず、スロープ状の放電電位変化を示し、このスロープ状変化はアモルファス材料に典型的に見られると報告されている。
一方、本実施例のCaSi2は、結晶性が高いものの、プラトーは観察されず、スロープ状変化を示している。この原因は、Si−Li間の合金化反応がうまく起こっていないか、もしくは起こっているとしても結晶表面のみであり、内部はCaSi2のままであるため、容量も非常に低く、プラトーも観察されないと考えられる。
本実施例のCaSi2の粒径は5〜50μmであり、参考文献1の25〜30μmと比較してそれほど変化がないにもかかわらず、プラトーが観察されず、容量に20倍もの差がでている。この要因の一つは、本実施例で用いたCaSi2結晶粒は結晶性が高いのに対し、参考文献1は、ややアモルファス化しているためであると推測される。
[2.2. CaSi2x(0≦x≦2)の充放電特性]
図18に、280℃−10h熱処理により合成したCaSi2x化合物の充放電曲線を示す。CaSi2と比較すると、初回の可逆容量は500mAh/g以上と、CaSi2の30倍以上に増加した。但し、5サイクル後は約380mAh/gまで減少している。また、初回の不可逆容量は、約230mAh/gと大きな値を示している。
CaSi2xの充電曲線には、初回の充電曲線では0.05Vの非常に低いプラトーが観察され、その後の充放電でも0.2〜0.02Vにプラトーが観察された。よって、CaSi2xの充電曲線は、結晶化Siの充電曲線とは異なる傾向を示した。2回目以降の充電曲線の形状は、参考文献1の25〜30μm粒径のCaSi2の充電曲線と似ているため、CaSi2xは、SiよりもCaSi2に似た反応機構を持つことが示唆された。
初回の充電曲線の非常に低い0.05Vのプラトーにおける反応機構は不明である。しかし、初回の大きな不可逆容量の要因は、プラトーが非常に低電圧であるために、有機溶媒が還元され、SEIが形成しやすいためであると予想される。
充放電前後の電極の定性比較を行うために、ブランクのポリエチレンのみ、充放電前、1回充電後、及び5サイクル後の電極のXRD分析を行った。図19に、各サンプルの充放電前後でのXRDパターンを示す。
充放電前のCaSi2xは、CaSi2からCaSi2xへ完全には変態しておらず、CaSi2由来のピークが検出された。また、CaSi2のピークは、5サイクル後も残っていることから、やはり結晶性が高いCaSi2とLiの反応性は低いと推察される。
放電前後の変化としては、CaSi2xの{001}面の面間隔(格子定数c)は放電前が3.07Å(0.307nm)であるのに対し、1回充電後は3.16Å(0.316nm)と、矢印で示すように低角側にシフトしている。一方、c軸と平行な面である110のピーク位置は変化していないため、格子定数aは変化していないことがわかる。
また、5サイクル後の放電後サンプルでは、CaSi2x由来のピーク強度は弱くなっているものの、1回充電後のピークと同位置にピークが検出された。よって、1回充電後以降は、Li挿入(放電)後と、Li抜去(充電)後では格子定数の変化がない可能性が示された。また、図19に示す1回放電後、及び5サイクル後のXRDパターンには、Li4.4Si合金に由来するピークは存在しないため、やはりSiや原料であるCaSi2とは異なる反応機構であることが確認された。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係るCa−Si−F系化合物は、半導体、電池の電極材料などに使用することができる。

Claims (6)

  1. 以下の構成を備えたCa−Si−F化合物。
    (1)前記Ca−Si−F化合物は、
    組成式:CaSi2x(1.1<x≦2.5)で表される組成を有する化合物(CaSi2x化合物)を含む。
    (2)前記CaSi 2 x 化合物は、1〜5原子層のSi層と、1〜5原子層のCaF 2 層とが交互に積層した積層構造を備えている。
    (3)前記Si層と前記CaF 2 層との界面は、Si面とF面とが対峙した構造を備えている。
  2. 前記CaSi2x化合物は、バルクのSi構造とは異なる構造であって、端面(エッジ面)が四員環と五員環で構成される構造を有する2原子層のSi層を含む請求項1に記載のCa−Si−F系化合物。
  3. x=1.75、2.00、2.25、2.33、又は、2.50である請求項1又は2に記載のCa−Si−F系化合物。
  4. Si(111)基板と、
    前記Si(111)基板上に合成された、請求項1から3までのいずれか1項に記載のCa−Si−F系化合物と
    を備えた複合材料。
  5. 請求項1から3までのいずれか1項に記載のCa−Si−F系化合物、又は請求項4に記載の複合材料を用いた半導体。
  6. 請求項1から3までのいずれか1項に記載のCa−Si−F系化合物を用いた電池。
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