JP6312225B2 - タンパク質に対するペプチドバインダーの系統的探索、成熟化、および伸長 - Google Patents

タンパク質に対するペプチドバインダーの系統的探索、成熟化、および伸長 Download PDF

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Description

発明の背景
タンパク質-タンパク質相互作用の解明は、基礎研究のほか、さまざまな生物医学的用途および他の実用的用途のためにも重要である。この種の例には、ペプチド断片またはエピトープと抗体との結合、タンパク質と他のタンパク質の短い断片、例えば、MDM2とp53トランス活性化ドメイン、Bcl-xLとBakペプチドとの間等の相互作用、ならびにアプタマーと称されるペプチドとその標的タンパク質との結合が含まれる。タンパク質に対するペプチドバインダー(peptide binder)を同定する簡単で信頼性の高い方法の開発は、タンパク質-タンパク質相互作用の機序を解明して、新薬探索のための新たな可能性を開くために役立つと考えられる。
現行の最新技術によるインシリコペプチド探索は、X線結晶構造を道しるべとし、既存の構造情報に依拠している。そのような方法をペプチドバインダーのデノボ探索に適用することには制約がある。現在までのところ、複数の実験方法がペプチド探索のための最も有効なアプローチとなっている。よく用いられる方法は、ペプチドがそれらをコードするDNA分子またはRNA分子と関連づけられているコンビナトリアルペプチドライブラリーに依拠している。固定化された標的タンパク質に対するライブラリーのパニングにより、最も特異的で強固に結合するペプチドが同定される。選択手順を数ラウンド実施し、各ラウンドの後に選択されたペプチドを、コードされている核酸配列のPCR増幅によって同定する。このアプローチの種々の変形版が開発され、ペプチド探索に首尾良く適用されている;最もよく用いられているのは、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、およびmRNAディスプレイ法である。これらの方法がペプチドバインダーの同定に成果を上げていることは疑いないものの、それらは費用がかかる上に時間もかかり、混入も起こりやすい。その上、既存の方法は、上位に選択されたペプチドバインダーが本当に最も優れたバインダーであることや、それらが改良可能であることを保証しない。現時点では、この問題に対する系統的アプローチは存在せず、手間のかかる試行錯誤による最適化手法が用いられている。
ペプチド-タンパク質相互作用を研究するためのもう1つの強力な実験方法は、ペプチドアレイである。ペプチドアレイは、固相ペプチド合成を用いて合成され、続いて固体支持体上に固定化されたペプチドから作製することができ、またはインサイチュー合成法によって直接調製することもできる。ペプチドアレイは市販されているが、それらの適用は、密度が比較的低く、製造コストが高いことが制約となっている。これらの問題はいずれも、マスクなし光指定技術(maskless light-directed technology)によって対処することができる。(Pellois, Zhou et al. (2002) Individually addressable parallel peptide synthesis on microchips(非特許文献1))および米国特許第6,375,903号(特許文献1)を参照のこと。
MAS計測器を用いる場合、マイクロアレイ上に構築する核酸またはペプチド配列の選択はソフトウェア制御下にあり、その結果として、研究者の具体的な要望に基づいて、個別にカスタマイズされたアレイを作り出すことが今では可能である。一般に、MASに基づくマイクロアレイ合成技術により、数百万個もの多数の一意的なオリゴヌクレオチドまたはペプチドフィーチャーの並行的合成を、標準的な顕微鏡用スライドの非常に小さい面積内で行うことが可能になる。マイクロアレイは一般に、アレイ上の特定の場所にあるどのオリゴヌクレオチドまたはペプチドが合成されるのかを指定するために光を用いて合成され、これらの場所はフィーチャーと呼ばれる。
特異的ペプチドバインダーの用途の1つは、医学的診断である。前立腺癌は、50歳以上の米国人男性で最も高い頻度で診断される種類の癌である。現在、前立腺癌の検出のための標準的手法には、前立腺特異的抗原(PSA)のレベルに関する血液のスクリーニング、直腸内診、および前立腺の針生検が挙げられる。しかし、PSAレベルは、良性前立腺組織によって産生されるPSAの量のばらつきによる悪影響を受けることがある(例えば、Brawer MK, CA Cancer J Clin 49:264-281 (1999)(非特許文献2))。このため、現行のPSAアッセイ(およびPSAのみ)では、前立腺癌を同定するため(かつそれを良性肥大症と鑑別するため)には万全でない。したがって、診断精度を向上させるために、PSAおよび可能性のあるさらなるバイオマーカーをより特異的に標的とする手段を突きとめる必要がある。
上述したように、関心対象の試料内にある生物学的に意義のある分子の高精度での検出および同定は、新薬探索の分野でも重要である。既存の標的、および現時点では「新薬の開発につながらない(undruggable)」と考えられている標的を含む、可能性のある新たな標的に対する治療薬候補を同定する、より効率的でかつ好首尾な方法に対しては、まだ満たされていない需要が存在する。
米国特許第6,375,903号
Pellois, Zhou et al. (2002) Individually addressable parallel peptide synthesis on microchips Brawer MK, CA Cancer J Clin 49:264-281 (1999)
本開示は、タンパク質標的に対する新規ペプチドバインダーを同定するためのシステムおよび方法を提供する。いくつかの態様によれば、本明細書に開示されるシステムおよび方法は、マイクロアレイ上に固定化されたペプチドの網羅的集団を構成する小型ペプチドに対する標的タンパク質の重複している結合の同定を通じてペプチドバインダーを同定し、続いて単離されたコアヒットペプチドバインダーの徹底的なペプチド成熟化を行い、その後にN末端およびC末端の伸長手順を行う。いくつかの態様において、伸長型成熟コアヒットペプチドを、さらなる成熟化プロセスならびに新たな一連のN末端およびC末端伸長プロセスに供してもよい。
他の態様において、本発明は、前立腺特異的抗原(PSA)に対する新規ペプチドバインダー、ならびにPSAに対する新規ペプチドバインダーをヒトにおける前立腺癌の診断、治療およびモニタリングに用いるシステム、キットおよび方法を提供する。
さらにもう1つの例において、本発明は、ストレプトアビジンに対する新規ペプチドバインダー、ならびに、ストレプトアビジンが用いられるかまたはその検出、定量化もしくは局在が望まれる任意のインビトロ手順またはインビボ手順において、ストレプトアビジンに対する新規ペプチドバインダーを用いる、システム、キットおよび方法を提供する。
1つの態様において、本発明は、反応性表面を有する固体支持体;および、該反応性表面に対して固定化されたペプチド集団であって、該ペプチド集団の各ペプチドが関心対象のアミノ酸配列を含むペプチド集団を含むペプチドマイクロアレイである。いくつかの態様において、固体支持体は、プラスチック、ガラスおよびカーボン複合材から選択される。いくつかの態様において、反応性表面は活性化アミンを含む。いくつかの態様において、ペプチド集団の各ペプチドの関心対象のアミノ酸配列は、同数のアミノ酸、例えば、5個のアミノ酸を含む。いくつかの態様において、関心対象のアミノ酸配列は、メチオニンおよび/もしくはシステインのアミノ酸を全く含まず、かつ/または同じアミノ酸のアミノ酸反復物を全く含まず、かつ/またはヒスチジン(H)-プロリン(P)-グルタミン(Q)配列からなるアミノ酸モチーフを全く含まない。いくつかの態様において、ペプチド集団の各ペプチドは、N末端およびC末端のゆらぎ(wobble)合成オリゴペプチドのうちの少なくとも1つをさらに含む。いくつかの態様においては、N末端およびC末端のゆらぎ合成オリゴペプチドの一方または両方が、同数のアミノ酸、例えば、5個、または5個を上回る、または5個未満のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、各ペプチドのC末端およびN末端のゆらぎ合成オリゴペプチドの一方または両方は、20種のアミノ酸のそれぞれをおよそ等しい濃度で有するアミノ酸混合物、またはアミノ酸のグリシン(G)、セリン(S)、アデニン(A)、バリン(V)、アスパラギン酸(D)、プロリン(P)、グルタミン酸(E)、ロイシン(L)、トレオニン(T)をおよそ等しい濃度で有するアミノ酸混合物、またはアミノ酸ロイシン(L)、アデニン(A)、アスパラギン酸(D)、リジン(K)、トレオニン(T)、グルタミン(Q)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、バリン(V)、チロシン(Y)をおよそ等しい濃度で有するアミノ酸混合物、またはアミノ酸のグリシン(G)およびセリン(S)をおよそ3(G)対1(S)の濃度で有するアミノ酸混合物にランダムに由来する。いくつかの態様において、ペプチド集団の各ペプチドのC末端のゆらぎ合成オリゴペプチドは、同数のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、各ペプチドのC末端のゆらぎ合成オリゴペプチドは、20種のアミノ酸のそれぞれをおよそ等しい濃度で有するアミノ酸混合物、アミノ酸のグリシン(G)、セリン(S)、アデニン(A)、バリン(V)、アスパラギン酸(D)、プロリン(P)、グルタミン酸(E)、ロイシン(L)、トレオニン(T)をおよそ等しい濃度で有するアミノ酸混合物、またはアミノ酸ロイシン(L)、アデニン(A)、アスパラギン酸(D)、リジン(K)、トレオニン(T)、グルタミン(Q)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、バリン(V)、チロシン(Y)をおよそ等しい濃度で有するアミノ酸混合物、またはアミノ酸のグリシン(G)およびセリン(S)をおよそ3(G)対1(S)の濃度で有するアミノ酸混合物にランダムに由来する。
もう1つの態様において、本発明は、ペプチドバインダーを同定する方法であって、関心対象のタンパク質標的をペプチドバインダーの第1の集団を含むアレイに曝露させ、それによって該タンパク質標的を、該集団を構成する少なくとも1種類のペプチドバインダーと結合させる段階;該関心対象のタンパク質標的と結合する集団を構成するペプチドバインダー配列における重複部を同定し、それによってコアバインダー配列を同定する段階;コアバインダー配列を構成するアミノ酸の、単一アミノ酸置換、二重アミノ酸置換、アミノ酸欠失およびアミノ酸挿入から選択される少なくとも1つの変更を実施し、それによってコアバインダー配列の第2の集団を作製する段階;第2の集団を該タンパク質標的に曝露させ、それによって該タンパク質標的を該第2の集団の少なくとも1つのペプチド配列と結合させる段階;該タンパク質標的に対する強い結合特性を示す、該第2の集団の1つまたは複数の配列を同定し、それによって成熟コアバインダー配列を特定する段階;段階eで特定された成熟コアバインダー配列の、N末端およびC末端の伸長のうちの少なくとも1つを実施し、それによって成熟伸長型ペプチドバインダーの集団を作製する段階;該関心対象のタンパク質標的を、段階fで生成された成熟ペプチドバインダーの集団を含むアレイに曝露させる段階;および、成熟ペプチドバインダーの集団を構成するペプチドのN末端またはC末端のペプチドバインダー配列における重複部を同定し、それによって伸長型の成熟コアペプチドバインダー配列を特定する段階を含む方法である。この態様の変形形態においては、伸長型の成熟コアペプチドバインダー配列の、無標識での親和性分析の少なくとも1つが行われる。いくつかの態様において、タンパク質標的は酵素、例えば、ソルターゼ、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、BirAビオチン化酵素、リガーゼ、リパーゼ、ホスホジエステラーゼ、コラゲナーゼ、ヒドロラーゼ、およびエステラーゼである。
この態様の変形形態において、アレイは、ガラス、プラスチックおよびカーボン複合材のうちの少なくとも1つを含む。この態様のいくつかの変形形態において、第1の集団のペプチドバインダーは同数のアミノ酸を含む。この態様の他の変形形態において、第1の集団のペプチドバインダーは、アミノ酸のシステインもメチオニンも、ヒスチジン-プロリン-グルタミンモチーフも、2個またはそれを上回るアミノ酸のアミノ酸反復物も含まない。この態様のさらなる変形形態において、成熟伸長型ペプチドバインダー集団のペプチドバインダーは、N末端およびC末端のゆらぎ合成のうちの少なくとも1つを含む。この態様の他の変形形態において、コアバインダー配列は、ペプチドバインダーの第1の集団を構成するペプチドのそれぞれに関するアミノ酸数よりも多い数のアミノ酸を含む。この態様の他の変形形態において、ペプチドは、一定の原則に基づくクラスター化分析を介して同定される。
他の態様において、本発明は、ペプチドバインダーを用いて前立腺癌を診断する方法である。いくつかの態様によれば、患者の試料を、本明細書に開示された1つまたは複数のペプチドバインダーに曝露させる。いくつかの態様において、ペプチドバインダーは、例えば、免疫組織化学、インサイチューハイブリダイゼーション、PCRまたはクロマトグラフィーによって検出可能な標識を含む。この態様の変形形態においては、本明細書に開示された1つまたは複数のペプチドバインダーを含むクロマトグラフィーカラムが使用され、PSAを含有する試料が該カラムに通される。
もう1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択される配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列からなる、前立腺特異的抗原(PSA)に対する特異的親和性を有する人工ポリペプチドである。
もう1つの態様において、本発明は、対象における前立腺癌を診断する方法であって、対象由来の試料を、SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含みかつ検出可能な標識を有するペプチドバインダーと接触させる段階;試料中のPSAの量に比例する標識由来のシグナルを検出し、それによって試料中のPSAの濃度を算出する段階;試料中のPSAの濃度を基準値と比較する段階;および試料中のPSAの濃度がPSA基準値を上回る場合に対象における前立腺癌の診断を下す段階を含む方法である。
もう1つの態様において、本発明は、前立腺癌を治療する方法であって、SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含むペプチドバインダーを含む化合物の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む方法である。
もう1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含む少なくとも1種類のペプチドバインダーを含むキットである。
もう1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:13〜27からなる群より選択される配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列からなる、ストレプトアビジンに対する特異的親和性を有する人工ポリペプチドである。
いくつかの態様において、本発明は、試料中のストレプトアビジンの存在を検出する方法であって、試料を、SEQ ID NO:13〜27からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含みかつ検出可能な標識を有するペプチドバインダーと接触させる段階;試料中のストレプトアビジンの存在または量を示す標識由来のシグナルを検出する段階を含む方法である。いくつかの態様において、試料中のストレプトアビジンは、ストレプトアビジン-ビオチン複合体に含まれて存在する。他の態様において、試料中のストレプトアビジンは、ストレプトアビジン断片の形態で存在する。
もう1つの態様において、本発明は、SEQ ID NO:13〜27からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含む少なくとも1種類のペプチドバインダーを含むキットである。
[本発明1001]
反応性表面を有する固体支持体;および
該反応性表面に対して固定化されたペプチド集団であって、該ペプチド集団の各ペプチドが関心対象のアミノ酸配列を含む、ペプチド集団
を含み、
ペプチド集団の各ペプチドが、N末端およびC末端のゆらぎ(wobble)合成オリゴペプチドのうちの少なくとも1つをさらに含む、
ペプチドマイクロアレイ。
[本発明1002]
ペプチド集団の各ペプチドの一端または両端のゆらぎ合成オリゴペプチドが、同数のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む、本発明1001のペプチドマイクロアレイ。
[本発明1003]
各ペプチドの一端または両端のゆらぎ合成オリゴペプチドが、20種の天然アミノ酸または20種の天然アミノ酸のサブセットのそれぞれをおよそ等しい濃度で有するアミノ酸混合物にランダムに由来する、本発明1001〜1002のいずれかのペプチドマイクロアレイ。
[本発明1004]
各ペプチドの一端または両端のゆらぎ合成オリゴペプチドが、アミノ酸のグリシン(G)およびセリン(S)をおよそ3(G)対1(S)の濃度で有するアミノ酸混合物にランダムに由来する、本発明1001〜1003のいずれかのペプチドマイクロアレイ。
[本発明1005]
C末端およびN末端のゆらぎ合成オリゴペプチドの両方が、5個またはそれを上回る同数のアミノ酸を含む、本発明1001〜1004のいずれかのペプチドマイクロアレイ。
[本発明1006]
ペプチドバインダー(peptide binder)を同定する方法であって、
a)関心対象のタンパク質標的をペプチドバインダーの第1の集団を含むアレイに曝露させ、それによって該タンパク質標的を、該集団を構成する少なくとも1種類のペプチドバインダーと結合させる段階;
b)該関心対象のタンパク質標的と結合する集団を構成するペプチドバインダー配列における重複部を同定し、それによってコアバインダー配列を同定する段階;
c)コアバインダー配列を構成するアミノ酸の、単一アミノ酸置換、二重アミノ酸置換、アミノ酸欠失およびアミノ酸挿入から選択される少なくとも1つの変更を実施し、それによってコアバインダー配列の第2の集団を作製する段階;
d)該第2の集団をタンパク質標的に曝露させ、それによって該タンパク質標的を該第2の集団の少なくとも1つのペプチド配列と結合させる段階;
e)該タンパク質標的に対する強い結合特性を示す、該第2の集団の1つまたは複数の配列を同定し、それによって成熟コアバインダー配列を特定する段階;
f)段階eで特定された成熟コアバインダー配列の、N末端およびC末端の伸長のうちの少なくとも1つを実施し、それによって成熟伸長型ペプチドバインダーの集団を作製する段階;
g)該関心対象のタンパク質標的を、段階fで生成された成熟ペプチドバインダーの集団を含むアレイに曝露させる段階;および
h)成熟ペプチドバインダーの集団を構成するペプチドのN末端またはC末端のペプチドバインダー配列における重複部を同定し、それによって伸長型の成熟コアペプチドバインダー配列を特定する段階
を含む方法。
[本発明1007]
段階c)およびf)の順序を入れ換えた、本発明1006の方法。
[本発明1008]
第1の集団のペプチドバインダーが、アミノ酸のシステインもメチオニンも、ヒスチジン-プロリン-グルタミンモチーフも、2個またはそれを上回るアミノ酸のアミノ酸反復物も含まない、本発明1006〜1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
成熟伸長型ペプチドバインダー集団のペプチドバインダーが、N末端およびC末端のゆらぎ合成のうちの少なくとも1つを含む、本発明1006〜1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
コアバインダー配列が、ペプチドバインダーの第1の集団を構成するペプチドのそれぞれに関するアミノ酸数よりも多い数のアミノ酸を含む、本発明1006〜1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
段階c)〜h)が、伸長型の成熟コアペプチドバインダー配列に対して繰り返される、本発明1006〜1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択される配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列からなる、前立腺特異的抗原(PSA)に対する特異的親和性を有する人工ポリペプチド。
[本発明1013]
対象における前立腺癌を診断する方法であって、
対象由来の試料を、SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含みかつ検出可能な標識を有するペプチドバインダーと接触させる段階;
試料中のPSAの量に比例する標識由来のシグナルを検出し、それによって試料中のPSAの濃度を算出する段階;
試料中のPSAの濃度を基準値と比較する段階;および
試料中のPSAの濃度がPSA基準値を上回る場合に対象における前立腺癌の診断を下す段階
を含む方法。
[本発明1014]
SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含む少なくとも1種類のペプチドバインダーを含むキット。
[本発明1015]
SEQ ID NO:13〜27からなる群より選択される配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列からなる、ストレプトアビジンに対する特異的親和性を有する人工ポリペプチド。
[本発明1016]
試料中のストレプトアビジンの存在を検出する方法であって、
試料を、SEQ ID NO:13〜27からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含みかつ検出可能な標識を有するペプチドバインダーと接触させる段階;
試料中のストレプトアビジンの存在または量を示す標識由来のシグナルを検出する段階
を含む方法。
[本発明1017]
SEQ ID NO:13〜27からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含む少なくとも1種類のペプチドバインダーを含むキット。
フォトリソグラフィーマスクを利用するフォトリソグラフィー手法を介する、アレイ合成のためのマイクロアレイシステムの概略図である(先行技術)。 マスクなしフォトリソグラフィーを利用するフォトリソグラフィー手法を介する、アレイ合成のためのマイクロアレイシステムの概略図である(先行技術)。 本開示によるペプチドプローブをその上に含むアレイを説明している概略図である。 本開示のプロセスの1つの態様の略図である。 本開示によるペプチドプローブをその上に含むアレイのもう1つの態様を説明している概略図である。 図4のプロセスの1つの態様を描写している概略図である。 ストレプトアビジン(SA)バインダーに関するコンセンサスモチーフのPCAプロットである(実施例1)。 ストレプトアビジン(SA)バインダーに関するコンセンサスモチーフのPEPLIB分析である(実施例1)。 最適化されたストレプトアビジン(SA)バインダー(実施例2〜3)に関するコンセンサスモチーフのPCAプロットである。 3段階アプローチを通じて生成された前立腺特異的抗原(PSA)バインダーペプチドの結合親和性を示している(実施例4)。 3段階アプローチを通じて生成された前立腺特異的抗原(PSA)バインダーのPCAプロットである(実施例4)。 3段階アプローチを通じて生成された前立腺特異的抗原(PSA)バインダーに関するコンセンサスモチーフのLOGOプロットである(実施例4)。
発明の詳細な説明
本発明は、反応性表面を有する固体支持体;および、該反応性表面に対して固定化されたペプチド集団であって、該ペプチド集団の各ペプチドが関心対象のアミノ酸配列を含むペプチド集団を含むペプチドマイクロアレイである。固体支持体は、プラスチック、ガラスおよびカーボン複合材からなる材料の群から選択されうる。反応性表面は活性化アミンを含む。ペプチド集団の各ペプチドの関心対象のアミノ酸配列は同数のアミノ酸を含んでよく、かつ/または5個のアミノ酸を含んでよい。前記関心対象のアミノ酸配列は、メチオニンアミノ酸を全く含まなくてよく、かつ/またはシステインアミノ酸を全く含まなくてよく、かつ/または同じアミノ酸のアミノ酸反復物を全く含まなくてよく、かつ/またはヒスチジン-プロリン-グルタミン(HPQ)配列からなるアミノ酸モチーフを全く含まなくてよい。
ペプチドマイクロアレイのペプチド集団の各ペプチドは、N末端およびC末端のゆらぎ合成オリゴペプチドの少なくとも1つをさらに含んでよい。ペプチド集団の各ペプチドの一端または両端のゆらぎ合成オリゴペプチドは、同数のアミノ酸を有するアミノ酸配列を含んでよい。前記ペプチドは、20種の天然アミノ酸または20種の天然アミノ酸のサブセットのそれぞれをおよそ等しい濃度で有するアミノ酸混合物にランダムに由来してよい。1つの態様において、各ペプチドの一端または両端のゆらぎ合成オリゴペプチドは、アミノ酸のグリシン(G)およびセリン(S)をおよそ3(G)対1(S)の濃度で有するアミノ酸混合物にランダムに由来する。C末端およびN末端のゆらぎ合成オリゴペプチドの両方が、5個またはそれを上回る同数のアミノ酸を含んでもよい。
本発明はまた、ペプチドバインダーを同定する方法であって、
a.関心対象のタンパク質標的をペプチドバインダーの第1の集団を含むアレイに曝露させ、それによって該タンパク質標的を、該集団を構成する少なくとも1種類のペプチドバインダーと結合させる段階;
b.関心対象のタンパク質標的と結合する集団を構成するペプチドバインダー配列における重複部を同定し、それによってコアバインダー配列を同定する段階;
c.コアバインダー配列を構成するアミノ酸の、単一アミノ酸置換、二重アミノ酸置換、アミノ酸欠失およびアミノ酸挿入から選択される少なくとも1つの変更を実施し、それによってコアバインダー配列の第2の集団を作製する段階;
d.第2の集団を該タンパク質標的に曝露させ、それによって該タンパク質標的を該第2の集団の少なくとも1つのペプチド配列と結合させる段階;
e.該タンパク質標的に対する強い結合特性を示す、該第2の集団の1つまたは複数の配列を同定し、それによって成熟コアバインダー配列を特定する段階;
f.段階eで特定された成熟コアバインダー配列の、N末端およびC末端の伸長のうちの少なくとも1つを実施し、それによって成熟伸長型ペプチドバインダーの集団を作製する段階;
g.該関心対象のタンパク質標的を、段階fで生成された成熟ペプチドバインダーの集団を含むアレイに曝露させる段階;および
h.成熟ペプチドバインダーの集団を構成するペプチドのN末端またはC末端のペプチドバインダー配列における重複部を同定し、それによって伸長型の成熟コアペプチドバインダー配列を特定する段階
を含む方法も提供する。
段階c.およびf.の順序は入れ換えることができる。同じく、伸長型の成熟コアペプチドバインダー配列の、無標識での親和性分析の少なくとも1つを行うこともできる。
この方法に関して、アレイは、ガラス、プラスチックおよびカーボン複合材のうちの少なくとも1つを含む。第1の集団のペプチドバインダーは同数のアミノ酸を含んでよい。第1の集団のペプチドバインダーは、アミノ酸のシステインもメチオニンも、かつ/またはヒスチジン-プロリン-グルタミンモチーフも、かつ/または2個もしくはそれを上回るアミノ酸のアミノ酸反復物も含まなくてよい。成熟伸長型ペプチドバインダー集団のペプチドバインダーは、N末端およびC末端のゆらぎ合成のうちの少なくとも1つを含んでよい。コアバインダー配列は、ペプチドバインダーの第1の集団を構成するペプチドのそれぞれに関するアミノ酸数よりも多い数のアミノ酸を含んでよい。開示された方法の段階e.およびh.は、一定の原則に基づくクラスター化分析を含んでよい。段階c.〜h.を、伸長型の成熟コアペプチドバインダー配列に対して繰り返してもよい。タンパク質標的は、ソルターゼ、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、BirAビオチン化酵素、リガーゼ、リパーゼ、ホスホジエステラーゼ、コラゲナーゼ、ヒドロラーゼ、およびエステラーゼからなる群より選択されうる酵素であってよい。
1つの特定の態様において、本発明は、SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択される配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列からなる、前立腺特異的抗原(PSA)に対する特異的親和性を有する人工ポリペプチドを提供する。前記ポリペプチドは、対象における前立腺癌を診断する方法であって、対象由来の試料を、SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含みかつ検出可能な標識を有するペプチドバインダーと接触させる段階;試料中のPSAの量に比例する標識由来のシグナルを検出し、それによって試料中のPSAの濃度を算出する段階;試料中のPSAの濃度を基準値と比較する段階;および試料中のPSAの濃度がPSA基準値を上回る場合に対象における前立腺癌の診断を下す段階を含む方法のために用いることができる。また、前記ポリペプチドを、前立腺癌を治療する方法であって、SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含むペプチドバインダーを含む化合物の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む方法のために用いることもできる。また、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含む少なくとも1種類のペプチドバインダーを含むキットの一部であってもよい。
もう1つの特定の態様において、本発明は、SEQ ID NO:13〜27からなる群より選択される配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列からなる、ストレプトアビジンに対する特異的親和性を有する人工ポリペプチドを提供する。前記ポリペプチドは、試料を、SEQ ID NO:13〜27からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含みかつ検出可能な標識を有するペプチドバインダーと接触させる段階;試料中のストレプトアビジンの存在または量を示す標識由来のシグナルを検出する段階を含む方法のために用いることができる。試料中のストレプトアビジンは、ストレプトアビジン-ビオチン複合体に含まれて存在してもよく、またはストレプトアビジン断片の形態で存在してもよい。また、前記ポリペプチドは、SEQ ID NO:13〜27からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%相同なアミノ酸配列を含む少なくとも1種類のペプチドバインダーを含むキットの一部であってもよい。
本開示は、タンパク質に対する新規ペプチドバインダーを合成し、最適化し、かつ同定することのできる、システムおよび方法を提供する。本開示の諸態様にはまた、本明細書に開示されたシステムの新規構成成分およびキット、ならびにそのような構成成分が生成されて利用される新規方法も含まれる。
I. ペプチド:
本開示のさまざまな諸態様により、新規ペプチドが開示される。本明細書において開示および記載されるペプチドは、生命科学および医療の分野において極めて多数の用途を有する、ある分子クラスを構成する。本明細書において開示および記載されるように、本明細書において提示されるペプチド(または「ペプチドバインダー」)は、線状、環状または拘束性(大環状)形態のいずれであってもよい。
本明細書で用いる場合、「ペプチド」、「オリゴペプチド」または「ペプチドバインダー」という用語は、アミノ酸で構成された有機化合物のことを指し、それは線状鎖(隣接するアミノ酸残基のカルボキシル基とアミノ基との間のペプチド結合によって1つに連結されている)、環状形態、または拘束性(例えば、「大環状」形態)の状態で配列しうる。「ペプチド」または「オリゴペプチド」という用語はまた、より短いポリペプチド、すなわち、50個未満のアミノ酸残基で構成される有機化合物も意味する。大環状(または拘束性ペプチド)は、本明細書で用いる場合、約500ダルトン〜約2,000ダルトンのペプチドなどの環状小分子を記述するために、その慣習的な意味で用いられる。
「天然アミノ酸」とは、タンパク質中に一般的に見いだされ、かつタンパク質生合成のために用いられる20種のアミノ酸、ならびに翻訳時にタンパク質中に組み入れられる可能性のある他のアミノ酸(ピロリジンおよびセレノシステインを含む)のうちの1つを意味する。20種の天然アミノ酸には、ヒスチジン、アラニン、バリン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、グルタミン、アスパラギン、トレオニン、アルギニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニンおよびリジンが含まれる。
「非天然アミノ酸」とは、標準的な遺伝暗号によってコードされるものに含まれない、または翻訳時にタンパク質中に組み入れられない有機化合物のことを指す。したがって、非天然アミノ酸には、アミノ酸またはアミノ酸の類似体が含まれ、それにはアミノ酸のD-イソ立体異性体、アミノ酸のβ-アミノ類似体、シトルリン、ホモシトルリン、ホモアルギニン、ヒドロキシプロリン、ホモプロリン、オルニチン、4-アミノ-フェニルアラニン、シクロヘキシルアラニン、α-アミノイソ酪酸、N-メチル-アラニン、N-メチル-グリシン、ノルロイシン、N-メチル-グルタミン酸、tert-ブチルグリシン、α-アミノ酪酸、tert-ブチルアラニン、2-アミノイソ酪酸、α-アミノイソ酪酸、2-アミノインダン-2-カルボン酸、セレノメチオニン、デヒドロアラニン、ランチオニン、γ-アミノ酪酸、および、アミン窒素がモノ-またはジ-アルキル化されているそれらの誘導体が非限定的に含まれる。
本開示の諸態様により、支持体表面(例えば、マイクロアレイ)上に固定化された新規ペプチドバインダーが提示される。以下にさらに詳細に記載されるように、ペプチドバインダーは、抗体のプロファイリング、エピトープ同定、試料プロファイリング、抗体単離、タンパク質同定ならびに診断の用途といった探索手法を可能にする。その上、可能性のある新薬候補を調製するために、ペプチドバインダーの諸態様を伸長させ、成熟させる(例えば、非天然アミノ酸を有する環状ペプチドへと)こともできる。
本開示のいくつかの態様は、本明細書に提示されたペプチドの新規合成方法を含む。ペプチド、例えば大環状のものなどを合成する現行の方法には、化学的手段、またはリボソーム翻訳系の利用(インビボまたはインビトロで)が含まれる。本開示の他の態様には、最大で290万種の一意的ペプチドの超高密度合成を可能にするマスクなしアレイ合成を介するものを含む、さまざまな方法によるアレイの合成が含まれる。
II.マイクロアレイ:
本開示の諸態様によれば、研究および医療に用いうるオリゴペプチドマイクロアレイが提示される。例えば、本オリゴペプチドアレイの諸態様を、生物活性モチーフの同定に利用することができる(例えば、対応する受容体に対する結合のスクリーニングのために、リガンドの活性モチーフの可能性のあるものをオリゴペプチドマイクロアレイで模倣することができる)。その上、本明細書に開示されたオリゴペプチドマイクロアレイに、疾患関連抗原の特定の配列を反映させる(そしてそのようにして、診断またはモニタリングのために、例えば、ある特定の炎症性疾患および感染症の存在が示唆される患者試料から抗体を検出するために利用する)こともできると考えられる。オリゴペプチドマイクロアレイのもう1つの用途は、アレイ上に固定化されたオリゴペプチドプローブに対するタンパク質またはDNAの結合を含む、生化学的相互作用の探索である。本明細書において開示および記載される他の数多くの機能に加えて、オリゴペプチドマイクロアレイを、細胞活性、酵素活性、細胞接着などのプロファイリングのためにさらに用いることもできる。
オリゴペプチドマイクロアレイの作製のためのさまざまな方法が当技術分野において公知である。例えば、膜上での、前もって作られたペプチドのスポッティング、またはスポッティング試薬によるインサイチュー合成は、公知の方法を例示するものである。より高密度のペプチドアレイを作製するために用いられる他の公知の方法には、いわゆるフォトリソグラフィー手法があり、この場合には、所望の生体高分子の合成デザインが、光などの電磁放射線に曝露されると各々の次の構成要素(アミノ酸、オリゴヌクレオチド)のための結合部位を解放する適した光解離性保護基(PLPG)によって制御される(Fodor et al., (1993) Nature 364:555-556;Fodor et al., (1991) Science 251 :767-773)。現行の最新技術水準では、2通りのフォトリソグラフィー手法が公知である。第1のものはフォトリソグラフィーマスクであり、これは合成表面の特定領域に光を向かわせて、PLPGの限局的脱保護を生じさせるために用いられる(例えば、図1参照)。「マスクあり(masked)」法は、マウント(例えば、「マスク」)を利用する重合体の合成を含み、このマウントは基板を取り付けるとともに、基板とマウントとの間に反応器空間をもたらす。そのような「マスクあり」アレイ合成の例示的な態様は、例えば、米国特許第5,143,854号および第5,445,934号に記載されており、それらの開示内容は参照により本明細書に組み入れられる。しかし、この手法の欠点として考えられるものには、多数のマスキング段階が必要であり、その結果として相対的に全収率が低くコストが高くなること、例えば、長さがわずか6アミノ酸のみのペプチドの合成のためにも100を上回るマスクが必要になる可能性があることが挙げられる。第2のフォトリソグラフィー手法は、いわゆるマスクなしフォトリソグラフィーであり、この場合には、マイクロミラーデバイスなどのデジタル投射技術によって光を合成表面の特定領域に向かわせて、PLPGの限局的脱保護を生じさせる(Singh-Gasson et al., Nature Biotechn. 17 (1999) 974-978)。このため、そのような「マスクなし」アレイ合成では、時間がかかる上に費用もかかる曝露用マスクの作製の必要性がない。本明細書に開示されるシステムおよび方法の諸態様は、上記のさまざまなアレイ合成手法の任意のものを含んでもよく、または利用してもよいことが理解される必要がある。
フォトリソグラフィーに基づくオリゴペプチドマイクロアレイの合成の基盤となるPLPG(光解離性保護基)の使用は、当技術分野において周知である。フォトリソグラフィーに基づく生体高分子合成のために一般的に用いられるPLPGには、例えば、α-メチル-6-ニトロピペロニル-オキシカルボニル(MeNPOC)(Pease et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1994) 91:5022-5026)、2-(2-ニトロフェニル)-プロポキシカルボニル(NPPOC)(Hasan et al. (1997) Tetrahedron 53: 4247-4264)、ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)(Fodor et al. (1991) Science 251:767-773)および2-ニトロベンジルオキシカルボニル(NBOC)(Patchornik et al. (1970) 21:6333-6335)がある。
オリゴペプチドマイクロアレイのフォトリソグラフィー固相ペプチド合成にはアミノ酸が導入されており、それらは光解離性アミノ保護基としてのNPPOCによって保護され、そこではスライドガラスが支持体として用いられた(米国特許出願公開第2005/0101763 A1号)。NPPOCで保護されたアミノ酸を用いる方法には、ある特定の条件下では、保護されたアミノ酸の(1つを除く)すべてで、光照射後の半減期がおよそ2〜3分間の範囲内にあるという短所がある。対照的に、同じ条件下で、NPPOCで保護されたチロシンはほぼ10分間という半減期を示す。合成プロセス全体の速度は最も遅い下位プロセスによって左右されるため、この現象は合成プロセスの時間を3〜4倍に増大させる。同時に、成長中のオリゴマーに対する光生成ラジカルイオンによる損傷の度合いも、光線量の要求値が増加および過度になるにつれて大きくなる。
本明細書で用いる場合、「マイクロアレイ」または「オリゴペプチドマイクロアレイ」という用語は、固体または半固体支持体の表面上のフィーチャーの二次元配列物のことを指す。単一のマイクロアレイ、または場合によっては、複数のマイクロアレイ(例えば、3個、4個、5個、またはそれを上回るマイクロアレイ)を1つの固体支持体上に配置することができる。マイクロアレイのサイズは、1つの固体支持体上のマイクロアレイの数に依存する。固体支持体当たりのマイクロアレイの数が多いほど、より小型のアレイを固体支持体上に適合させる必要がある。アレイはあらゆる形状に設計することができるが、それらを正方形または長方形として設計することが好ましい。使用準備済みの製品は、固体または半固体支持体(マイクロアレイスライド)上にあるオリゴペプチドマイクロアレイである。
「ペプチドマイクロアレイ」(またはペプチドチップもしくはペプチドエピトープマイクロアレイ)という用語は、固体表面、例えばガラス、カーボン複合材またはプラスチックアレイ、スライドまたはチップの上に提示されたペプチド集団または集成物を含む。ペプチドマイクロアレイの例示的な用途には、結合特性、官能性およびタンパク質-タンパク質相互作用の速度論の試験を含む、生物学、医学および薬理学の分野が含まれる。基礎研究の用途には、酵素(例えば、キナーゼ、ホスファターゼ、プロテアーゼ、アセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ)のプロファイリング、およびタンパク質結合のための重要残基を見いだすための抗体エピトープのマッピングが含まれうる。他の用途には、血清マーカーの探索、個々の患者の疾患進行時点での体液性免疫応答の変化のプロファイリング、治療的介入のモニタリング、患者層別化、ならびに診断ツールおよびワクチンの開発が含まれる。
「フィーチャー」という用語は、マイクロアレイの表面上の規定領域のことを指す。フィーチャーは、ペプチド、核酸、糖質などの生体分子を含む。1つのフィーチャーは、他のフィーチャーと比較して異なる特性、例えば異なる配列または配向などを有する生体分子を含有しうる。フィーチャーのサイズは、次の2つの要因によって決定される:i)アレイ上のフィーチャーの数、アレイ上のフィーチャーの数が多いほど単一の各フィーチャーの数は少なくなる、ii)1つのフィーチャーの照射のために用いられる、個別にアドレス指定可能なアルミニウム製ミラーデバイスの数。1つのフィーチャーの照射のために用いられるミラーデバイスの数が多いほど単一の各フィーチャーは大きくなる。アレイ上のフィーチャーの数は、マイクロミラーデバイスに存在するミラーデバイス(ピクセル)の数によって限定されることがある。例えば、Texas Instruments, Inc.製の最新式マイクロミラーデバイスは現在、420万個のミラーデバイス(ピクセル)を含有しており、このため、そのような例示的なマイクロアレイ内のフィーチャーの数はそれ故にこの数によって限定される。しかし、Texas Instruments, Inc.製のマイクロミラーデバイスは例示を目的として提示しているに過ぎず、より高密度のアレイも可能であることが理解される必要がある。
「固体または半固体支持体」とは、共有結合または特定の官能基を通じた複合体形成などのように、有機分子を結合形成を通じて結びつけること、または電子的相互作用もしくは静的相互作用を通じて吸収させることのできる表面領域を有する、あらゆる固体材料のことを指す。支持体は、ガラスにプラスチックを上乗せしたもの(plastic on glass)、ガラスにカーボンを上乗せしたもの(carbon on glass)といった材料の組み合わせであってもよい。官能表面は単純な有機分子であってもよいが、共重合体、デンドリマー、分子ブラシなどを含むこともできる。
「プラスチック」という用語は、官能基を通じた結合形成などのように、有機分子を結合形成を通じて結びつけること、または電子的相互作用もしくは静的相互作用を通じて吸収させることのできるような官能化表面を備える有機構成単位(単量体)のホモ-またはヘテロ-共重合体といった合成材料のことを指す。好ましくは、「プラスチック」という用語はポリオレフィンのことを指し、これはオレフィンの重合によって得られる重合体である(例えば、エチレンプロピレンジエン単量体重合体、ポリイソブチレン)。最も好ましくは、プラスチックは、TOP AS(登録商標)またはZEONOR/EX(登録商標)のように、所定の光学特性を有するポリオレフィンである。
「官能基」という用語は、化学分子の一部を形成し、それ自体が特徴的な反応を受け、かつ分子の残りの部分の反応性に影響を及ぼす、原子の数多くの組み合わせの任意のもののことを指す。典型的な官能基には、ヒドロキシル、カルボキシル、アルデヒド、カルボニル、アミノ、アジド、アルキニル、チオールおよびニトリルが非限定的に含まれる。潜在的反応性官能基には、例えば、アミン、カルボン酸、アルコール、二重結合などが含まれる。好ましい官能基は、アミノ酸の潜在的反応性官能基、例えばアミノ基またはカルボキシル基などである。
当業者には理解されるであろうが、ペプチドマイクロアレイは、数千(または本開示の場合には、数百万)のペプチド(いくつかの態様においては複数のコピーとして提示される)が、固体支持体(いくつかの態様においては、ガラス、カーボン複合材またはプラスチックチップまたはスライドを含む)の表面に結びつけられるかまたは固定化される、アッセイ原理を含む。本開示の諸態様によれば、ペプチドマイクロアレイは、精製された酵素または抗体、患者または動物の血清、細胞溶解物などを含む、多種多様な生物試料とインキュベートすることができる。特に、受容体のリガンドまたは酵素の基質を同定することができる。例えば、ソルターゼ、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、BirAビオチン化酵素、リガーゼ、リパーゼ、ホスホジエステラーゼ、コラゲナーゼ、ヒドロラーゼ、およびエステラーゼの基質を、本発明の方法を用いて同定することができる。
いくつかの態様において、ペプチドマイクロアレイは、関心対象の試料とのインキュベーション後に1回または複数回の洗浄段階を受け、続いて所望の特異性を有する二次抗体(例えば、抗IgGヒト/マウスまたは抗ホスホチロシンまたは抗myc)に曝露される。通常、二次抗体には、蛍光スキャナーによって検出しうる蛍光標識によるタグ標識が行われている。他の検出方法には、化学発光、比色法またはオートラジオグラフィーがある。
マイクロアレイスライドのスキャニングの後に、スキャナーにより、20ビット、16ビットまたは8ビットの数値画像がタグ付き画像ファイルフォーマット(*.tif)で記録される。このtif画像により、スキャニングしたマイクロアレイスライド上の各蛍光スポットの解釈および定量化が可能になる。この定量的データは、マイクロアレイスライド上で測定された結合イベントまたはペプチド修飾に関して統計分析を行うための基盤となる。検出されたシグナルの評価および解釈のためには、ペプチドスポット(画像内で視認しうる)および対応するペプチド配列の割り当てを行う必要がある。
ペプチドマイクロアレイは、その上にペプチドがスポッティングされているかまたはインサイチュー合成によって表面上で直接的に組み立てられているスライドである。ペプチドは理想的には、相互作用プロファイリング用に同じ配向を有するペプチドがもたらされるように、化学選択的結合を通じて共有結合により結びつけられている。代替的な手順には、非特異的共有結合および接着固定化が含まれる。
図1および2を参照すると、さまざまなアレイ合成装置(それぞれ、マスクありおよびマスクなしフォトリソグラフィー手法の両方に利用される)の態様が提示されている。ここで図1を具体的に参照すると、マスクありフォトリソグラフィー手法(米国特許第5,445,934号に教示されているものなど)を行うための例示的なシステム100が示されており、システム本体102をその表面に画定された空洞104とともに図示している。その底面108に沿って光除去可能な(photoremovable)保護基(例えば、介在性リンカー分子を伴うかまたは伴わないNVOCなど)を有する基板(固体支持体)106が、空洞104の上方に取り付けられている。例えば、基板106は幅広いスペクトルの光に対して透過性であってもよく、またはいくつかの態様においては、保護基が除去されうる波長のみに対して透過性があってもよい(例えば、NVOCの場合のUVのように)。基板(固体支持体)106および本体102は、空洞104を封止しており(入口ポートおよび出口ポートを除く)、例えば、ガスケットまたは陰圧を介して接合されていてもよい。
レンズ118、およびいくつかの態様においては、反射ミラー116が、光源112(Xe(Hg)光源など)からの光を集束させて基板106に向かわせるために用意される。図1に説明されている態様では、レンズ118と組み合わせてマスク像を基板上に投射するため(別名「投射プリンティング」)の第2のレンズ114が示されている(および、いくつかの態様において設けられ得る)。(光源112からの)光は、基板106と接触する前にマスク110と接触し、それによってそのような光は基板106上の選択された場所にのみ到達することが可能となる。マスク110は、例えば、表面にクロムがエッチングされたスライドガラスであってよい。いくつかの態様において、マスク110に、例えば、透明な場所および不透明な場所のグリッドを設けてもよい。当業者には理解されるであろうが、マスクありアレイ合成では、光はマスク110の「透明」領域を自由に通過するが、マスク110の他の(例えば「不透明」)領域では反射するかまたは吸収される。このため、基板106の選択された領域のみが光に曝露される。
また、(LCDの)光弁を従来のマスクの代わりに用いてもよい(基板の領域を選択的に曝露させるため);光ファイバーフェースプレートを用いてもよい(マスクのコントラスト増強のため、または光が適用される領域を制限する唯一の手段として);および、フライアイレンズ、テーパー付き光ファイバーフェースプレートなどをコントラスト増強のために用いてもよい。また、光の波長よりも小さい領域の照明を、当技術分野において公知のより精緻な手法によって実現しうることも理解される必要がある(例えば、マイクロピペットなどの先端にある分子微結晶を介して光を基板に向かわせる)。例示的なデバイスは、Lieberman et al., "A Light Source Smaller than the Optical Wavelength," Science (1990) 247:59-61に開示されている。
ここで、図2を特に参照すると、本開示に従って利用しうる例示的な「マスクなし」アレイシステム(例えば、米国特許第6,375,903号に記載)が、「マスクなし」でのDNA、ペプチドまたは類似物のアレイ合成を説明するために提示されている。200として全体的に示されているこの説明的なシステムは、二次元アレイ像形成器202、およびアレイ像が投射される基板204を含めて描写されている。図2に提示された説明的な態様において、基板は、露出された入射表面206、およびペプチド配列プローブ210の二次元アレイをその上で製作する反対側の活性表面208を有する。しかし、いくつかの態様においては、基板204が、像形成器202側に面し、透明ウィンドウ(光が活性表面208上に投射されることを可能にする)を有する反応チャンバーフローセルの内部に封入された活性表面208を有してもよい。諸態様が、不透明なまたは多孔性の基板204を含んでもよい。
この開示によるマスクなしマイクロアレイのいくつかの態様において、像形成器202は、光源212(例えば、水銀灯ランプなどの紫外光源または近紫外光源)、光学フィルター214(光源212からの出力ビーム216を受け取って、所望の波長のみ、例えば、365nm Hg線を選択的に通過させるため)、および集光レンズ218(平行ビーム220を形成させるため)を含んでもよい。光源光のフィルタリングまたは単色化のための他のデバイス、例えば、回折格子、ダイクロイックミラー、およびプリズムなどを透過フィルターの代わりに用いてもよく、これらは本明細書において「フィルター」と総称される。
示されているように、少なくとも2方向のうちの1方向に傾きを調節するためにアレイデバイス224に供給される制御シグナル(コンピュータ制御装置228によって提供される)にそれぞれが反応する個々のマイクロミラー226の二次元アレイを有する二次元マイクロミラーアレイデバイス224に、ビーム220が投射される。いくつかの態様において、マイクロミラー226は、A)第1の位置で、個々のマイクロミラー226に当たるビーム220は、ビーム220に対して斜めの方向に曲げられる(矢印230によって示されているように);かつB)第2の位置で、そのようなミラーに当たるビーム220は、矢印232によって示されているように、逆方向に反射してビーム220と平行になるように構築される。理解されるであろうが、ミラー226のそれぞれから反射された光は、個々のビーム232となる。ビーム232は、投射用光学素子234(例えば、レンズ236、238および調節可能な絞り240を含む)に対して投じられる。投射用光学素子234は、基板204の活性表面208上に、個々のビーム232(およびこれらのビームの間の暗部領域)によって表されるマイクロミラーアレイ224のパターンの像を形成する働きをする。上記および本開示の全体を通じて記載されるように、基板支持体204は透明であってよく、例えば、そこに投射された光(線242によって図示されている)が実質的に減弱も拡散もせずに基板204を通過するように、溶融シリカまたはソーダ石灰ガラスまたは石英で形成されていてよい。
本開示による例示的なマイクロミラーアレイ224は、アレイ内のマイクロミラーに電子的にアドレス指定することによってパターン化された光ビームを形成することができるデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)(Texas Instruments, Inc.から販売されている)を含む。そのようなアレイは、例えば、Larry J. Hornbeck, "Digital Light Processing and MEMs: Reflecting the Digital Display Needs of the Networked Society," SPIE/EOS European Symposium on Lasers, Optics, and Vision for Productivity and Manufacturing I, Besancon, France, Jun. 10-14, 1996ならびに米国特許第5,096,279号、第5,535,047号、第5,583,688号、第5,600,383号および第6,375,903号において考察されている。そのようなデバイスのマイクロミラー226は、ミラー自体への損傷を伴わない効率的な様式で、紫外光および近紫外光を含む使用可能な通常の波長の光を反射することができる。
いくつかのマイクロアレイ態様において、投射用光学素子234は標準的なデザインのものであってよい。レンズ236、238は、ビーム232の光(調節可能な絞り240を通過したもの)を、基板204の活性表面208上に集束させる。絞り240は、有効開口数を制御して、望まれない光(特に、軸を外れたビーム230)が基板204に伝わらない事を確実にする一助となる。そのような光学素子システムによって、わずか1ミクロンの寸法での分解能が得られる。当技術分野において公知のさまざまな代替的構成(例えば、製造用途に好ましいものなど)を、本出願に従って利用することもできる。
本明細書では例示的な態様を提示しているが、基板204上でのペプチドバインダープローブ210の製作にはさまざまなアプローチが利用されうることが理解されるべきであり、これにはマイクロリソグラフィー手法の適合化が含まれる。例えば、「直接フォトファブリケーションアプローチ」では、基板204を、アミノ酸と結合しうる化学物質(例えば、アミン)の層によってコーティングして、それを例えば、光と反応させて除去することができる化学基によって保護することができる。このようにして、光を投射システム202によって適用し、基板204上のアミン基を脱保護させて、それらがアミノ酸との結合に利用されるようにすることができる(その後に、通常の化学反応を用いて選択された部位と結合させるために、アミノ酸を基板204の活性表面208上に流す)。このプロセスを複数回繰り返し、それによって別のアミノ酸を異なる場所のセットと結合させる。このプロセスは簡単であり、コンビナトリアルアプローチを用いると、順列の数は指数関数的に増加する。
本開示のいくつかの態様によれば、マスクなしアレイ合成を、基板204上でのペプチドバインダープローブ210の製作に利用する。そのような態様によれば、使用されるマスクなしアレイ合成により、最大で290万種の一意的ペプチドが合成される超高密度ペプチド合成が可能になる。最大で107個の反応性部位を有する290万個の合成フィーチャー/領域のそれぞれで、完全長ペプチドを生じさせることが可能と考えられる。また、より小規模なアレイを設計することもできる。例えば、システインを除くすべての天然アミノ酸を用いることで考えられるすべての5-merペプチドの網羅的リストに相当するアレイは、2,476,099個のペプチドを有すると考えられる。システインおよびメチオニンを除く18種の天然アミノ酸のすべての組み合わせを用いることによる5-merペプチドのアレイを用いることもできる。加えて、他のアミノ酸またはアミノ酸二量体をアレイから除外することもできる。例えば、上記に例示した18-merアレイを、同じアミノ酸のあらゆる二量体およびより長い反復物、ならびにHR、RH、HK、KH、RK、KR、HPおよびPQ配列を含有するあらゆるペプチドを除外するように設計して、1,360,732種の一意的ペプチドのライブラリーを作ることができる。アレイデータから導き出される結論の信頼度を高めるために、より小規模なアレイが、同一のアレイ上に各ペプチドの複製物を有するようにしてもよい。
さまざまな態様において、本明細書に記載のペプチドアレイは、ペプチドアレイの固体支持体に結びつけられた少なくとも1.6×105個のペプチド、少なくとも2.0×105個のペプチド、少なくとも3.0×105個のペプチド、少なくとも4.0×105個のペプチド、少なくとも5.0×105個のペプチド、少なくとも6.0×105個のペプチド、少なくとも7.0×105個のペプチド、少なくとも8.0×105個のペプチド、少なくとも9.0×105個のペプチド、少なくとも1.0×106個のペプチド、少なくとも1.2×106個のペプチド、少なくとも1.4×106個のペプチド、少なくとも1.6×106個のペプチド、少なくとも1.8×106個のペプチド、少なくとも1.0×107個のペプチド、または少なくとも1.0×108個のペプチドを有しうる。他の態様において、本明細書に記載のペプチドアレイは、ペプチドアレイの固体支持体に結びつけられた約1.6×105個のペプチド、約2.0×105個のペプチド、約3.0×105個のペプチド、約4.0×105個のペプチド、約5.0×105個のペプチド、約6.0×105個のペプチド、約7.0×105個のペプチド、約8.0×105個のペプチド、約9.0×105個のペプチド、約1.0×106個のペプチド、約1.2×106個のペプチド、約1.4×106個のペプチド、約1.6×106個のペプチド、約1.8×106個のペプチド、約1.0×107個のペプチド、または約1.0×108個のペプチドを有しうる。本明細書に記載されている通り、特定数のペプチドを含むペプチドアレイは、単一の固体支持体上の単一のペプチドアレイを意味してもよく、またはペプチドを分割して複数の固体支持体に結びつけて、本明細書に記載のペプチド数が得られるようにしてもよい。
そのような態様に従って合成されるアレイを、線状または環状の形態(本明細書に述べている通り)として、N-メチルまたは他のPTMなどの修飾を伴うかまたは伴わずに、ペプチドバインダーの探索のために設計することができる。また、可能性のあるヒットのN末端およびC末端に対して反復スクリーニングを行うことによるブロックアプローチを用いて(本明細書でさらに説明するように)、可能性のあるバインダーのさらなる伸長を目的とするアレイも設計される。理想的な親和性を有するヒットがひとたび発見されれば、天然性および非天然性の両方のさまざまなアミノ酸のコンビナトリアル挿入、欠失および置き換え分析を可能にする成熟アレイの組み合わせを用いて、それをさらに成熟させることができる(本明細書でさらに説明する)。
本開示のペプチドアレイは、モノクローナル抗体の交差反応性プロファイリング、ポリクローナル血清のプロファイリング、(関心対象の抗体の)エピトープの同定、ループス免疫反応性プロファイリング、消化管プロファイリング;癌バイオマーカーのプロファイリング、(ポリクローナル抗体の分離物からの)擬似モノクローナル抗体の単離、ペプチド-タンパク質相互作用の特性決定、アフィニィー精製、診断用途での特異的かつ高感度な結合分析に用いることができる。加えて、(本明細書に開示されたプロセスを通じて)本明細書において同定および開示されたペプチドバインダーを、環状ペプチド(非天然アミノ酸を含む)へと成熟させることで、そのようなバインダーを可能性のある新薬候補にすることもできる。
III.ペプチドバインダーの探索:
新規バインダーの探索(例えば、図4を参照。本方法は全体として400として表示されている)を、本開示に従って実現することができる。本明細書において説明されているように、そのような新規バインダーは、治療薬、診断用途および一般的な研究室用途を非限定的に含む、数多くの用途に利用することができる。本開示のいくつかの具体的な態様によれば、集百個、数千個、数万個、数十万個、およびさらには数百万個のペプチド集団を含むペプチドアレイを設計することができる。図3を参照すると、いくつかの態様において、ペプチドが関心対象のタンパク質、遺伝子、染色体、分子の全体、またはさらに生物体(例えば、ヒト)の全体に相当するように、ペプチド集団310を構成することができる。加えて、ペプチドを特定の基準に従って構成し、それによって特定のアミノ酸またはモチーフが除外されるようにすることもできる。その上、各ペプチドが同一の長さを含むようにペプチドを構成することもできる。例えば、いくつかの態様において、アレイ312上に固定化されたペプチド集団310はすべて、3-mer、4-mer、5-mer、6-mer、7-mer、8-mer、9-mer、10-mer、11-merまたはさらには12-mer、またはそれを上回るものから構成されうる。いくつかの態様において、ペプチドがそれぞれN末端またはC末端配列(例えば、306および306')を含み、各ペプチドが特定かつ同一の長さ(例えば、3-mer、4-mer、5-mer、6-mer、7-merまたはさらには8-mer、またはそれを上回るペプチド)のN末端およびC末端ペプチド配列の両方を含んでもよい。
いくつかの態様によれば、290万個のペプチドがゲノムの考えられるすべての5-merペプチド308の網羅的リストに相当するよう構成された、最大で290万個のペプチドの集団310をアレイ312上に固定化された形で含む、ペプチドアレイ300が設計される。いくつかのそのような態様において、5-merペプチド308(アレイの290万個のペプチドを構成する)から、アミノ酸のシステイン(C)を除外すること(ペプチドの異常なフォールディングを抑える一助とする目的で);またはアミノ酸のメチオニン(M)を除外すること(Mはプロテオーム中では希少なアミノ酸と考えられるため);および/または同じアミノ酸の2つもしくはそれを上回るすべてのアミノ酸反復物を除外すること(電荷相互作用および疎水性相互作用などの非特異的相互作用を抑える一助とする目的で);またはヒスチジン(H)-プロリン(P)-グルタミン(Q)配列からなるアミノ酸モチーフ(公知のストレプトアビジン結合モチーフの1つである)を除外することもできる。図3に提示されているような、いくつかの説明的な態様において、5-merペプチド308から、以上に列記した除外物のうちの1つまたは複数を除外してもよい。本発明の1つの態様は、ヒト全ゲノムに相当する最大で290万個の5-merペプチドの集団310を含むペプチドアレイであって、5-merペプチド308がアミノ酸CおよびMをいずれも含まず、2個またはそれを上回るアミノ酸のアミノ酸反復物を含まず、かつアミノ酸モチーフHPQを含まないペプチドアレイを含む。本発明のもう1つの態様は、ヒト全ゲノムによってコードされるタンパク質内容に相当する最大で290万個の5-merペプチドを含むペプチドアレイであって、5-merペプチドがアミノ酸CおよびMをいずれも含まず、2個またはそれを上回るアミノ酸のアミノ酸反復物も含まないペプチドアレイを含む。アレイ上の特定の場所にあるペプチドの配列は既知であることが理解される必要がある。
さらなる態様によれば、アレイ300の最大で290万個のペプチドの集団310を構成する各5-merペプチド308は、N末端およびC末端のそれぞれにおいて5サイクルのゆらぎ合成によって合成されうる(例えば、図3の306および306')。本明細書で用いる場合、「ゆらぎ合成」とは、関心対象の5-merペプチド308のN末端またはC末端に位置するペプチドの配列の(本明細書に開示された手段のいずれかを通じての)(一定のまたはランダムな)合成のことを指す。図3における説明では、N末端またはC末端のいずれかに位置するゆらぎ合成を含む特定のアミノ酸は「Z」によって表されている。さまざまな態様によれば、ゆらぎ合成は、任意の数のペプチド、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれを上回る、さらに例えば15個または20個のペプチドを、N末端またはC末端に含みうる。その上、ゆらぎ合成は、同数または異なる数のゆらぎ合成ペプチドを有するN末端およびC末端を含んでもよい。
さまざまな態様によれば、ゆらぎオリゴペプチド組成物306、306'は、アミノ酸組成の点およびアミノ酸の比/濃度の点で柔軟性がある。例えば、ゆらぎオリゴペプチド組成物は、2個またはそれを上回るアミノ酸の混合物を含みうる。そのような柔軟性のあるゆらぎ混合物の説明的な態様には、グリシン(G)およびセリン(S)が3:1の比にあるゆらぎオリゴペプチド組成物306、306'が含まれる。柔軟性のあるゆらぎ混合物の他の例には、等濃度(例えば、等しい比)のアミノ酸G、S、アデニン(A)、バリン(V)、アスパラギン酸(D)、プロリン(P)、グルタミン酸(E)、ロイシン(L)、トレオニン(T)および/または等濃度(例えば、等しい比)のアミノ酸L、A、D、リジン(K)、T、グルタミン(Q)、P、F、V、チロシン(Y)が含まれる。他の例には、20種の公知のアミノ酸の任意のものを等濃度で含むゆらぎオリゴペプチド組成物306、306'が含まれる。
本明細書に開示された通り、さまざまな態様のゆらぎオリゴペプチド合成により、ランダム合成アミノ酸と指定合成アミノ酸の組み合わせを有するペプチドをアレイ上に作製することが可能になる。例えば、アレイ上のオリゴペプチドプローブは、以下の形式:ZZZZZ-5mer-ZZZZZにあるペプチド配列を有する、組み合わされた15merペプチドを含むことができ、ここでZは特定のゆらぎオリゴペプチド混合物由来のアミノ酸である。
いくつかの態様において、フィーチャーは107個のペプチドを含みうる。いくつかのそのような態様において、各フィーチャーに関する集団複雑度は、ゆらぎ混合物の複雑度に応じてさまざまであってよい。本明細書に開示された通り、半指定合成によるゆらぎ合成を用いてそのような複雑度を作り出すことにより、アレイ当たり最大で1012種の多様性を有するペプチドを用いて、アレイ上でのバインダーのスクリーニングを行うことが可能になる。ストレプトアビジンおよびPSAに関するバインダースクリーニングの例を、以下に示す(そのほかのタンパク質標的、例えば、uPAまたはTNFについても、示された方法およびシステムに従って可能である)。
具体的には、図3を参照すると、ペプチド集団310(ヒト全プロテオームに相当する5-merの集団など)が固定化された、反応性表面304(例えば、反応性アミン層など)を有する固体支持体302を含むアレイ300が提示されている。そのような態様によるペプチド集団310を含む例示的な5-merペプチドは、アミノ酸CおよびMをいずれも含まず、2個またはそれを上回るアミノ酸のアミノ酸反復物を含まず、かつアミノ酸モチーフHPQを含まない。そのような説明的な態様によれば、ヒト全プロテオームに相当するそのようなペプチド集団310は、集団310を構成する1,360,732種の個々のペプチドを含む。いくつかの態様において、複製物または反復物を同一のアレイ上に配置してもよい。例えば、単一の複製物を含む集団310は、2,721,464種の個々のペプチドを含むと考えられる。加えて、ペプチド集団310はそれぞれ、N末端およびC末端のゆらぎ合成オリゴペプチド306、306'を含み、これは例えば、3:1の比にあるアミノ酸のグリシンおよびセリンからそれぞれがなる5個のアミノ酸からなる。
ここで図4のプロセス400の段階402を全体的に参照すると、使用時に、例示的なアレイ300(図3)を、濃縮して精製した関心対象のタンパク質に曝露させ(標準的なマイクロアレイの実地使用時と同じように)、それによって、タンパク質をペプチド集団310のいずれかと、集団310を構成する他のペプチドとは独立に結合させることができる。関心対象のタンパク質に対する曝露の後に、ペプチドバインダーに対する関心対象のタンパク質の結合を、例えば、集団310の個々のペプチドとタンパク質の複合体を、報告可能な標識(例えば、ペルオキシダーゼ)が結びつけられた抗体(タンパク質に対して特異的)に曝露させることによってアッセイする。アレイ上の各場所での各5-merのペプチド配列は判明しているので、特定の5-merペプチド配列に対するタンパク質の結合の配列(および結合強度)を図表化すること/定量化すること/比較すること/対比することが可能である。集団310を構成するペプチドに対するタンパク質結合を比較するそのような方法の1つは、結合を、一定の原則に基づく分析による分布に基づくクラスター化(principled analysis distribution-based clustering)、例えば、Standardizing and Simplifying Analysis of Peptide Library Data, Andrew D White et al, J Chem Inf Model, 2013, 53(2), pp 493-499に記載され、本明細書において説明されているものなどで精査することである。本明細書において例示されているように、タンパク質-5-mer結合(別名、「ヒット」)のクラスター化(一定の原則に基づく分析による分布に基づくクラスター化で示される)により、重複性ペプチド配列を有する5-merが示される。以下にさらに詳細に実証されているように、(各クラスターの)重複性ペプチド配列から、「コアヒット」ペプチド配列(例えば、アレイの顕著なタンパク質-ペプチド結合イベントが共通して有するペプチド配列)を同定すること、または少なくとも仮定してさらなる評価のために構築することができる(本明細書において例示されるように、アレイによって複数の「コアヒット」ペプチド配列が同定されうることが理解される必要があることに留意されたい。さらに、一定の原則に基づく分析による分布に基づくクラスター化の際に重複性配列および隣接配列が同定される可能性があるため、「コアヒット」ペプチド配列が、例えば、ペプチド集団を構成する5-merペプチドバインダーよりも多くのアミノ酸を含む可能性があることも理解される必要がある)。
IV.ペプチド成熟化:
ここで図4に図式的に記載されたプロセス400の段階404を参照すると、(本明細書において開示され、記載され、かつ例示されたペプチドバインダーの探索のプロセス402を通じて)コアヒットペプチド配列が同定されると、適正なコアヒット配列をさらに最適化する/検証する目的で、コアヒットペプチドの各位置でコアヒットペプチド配列が(アミノ酸置換、欠失および挿入を通じて)さまざまな様式で変更される、「ペプチド成熟化」404のプロセスが行われる。例えば、いくつかの態様によれば(例えば、コアヒットペプチド配列が所与の数、例えば7個などのアミノ酸を含む場合)、成熟アレイが作製される。本開示によれば、成熟アレイはそれに固定化されたコアヒットペプチドの集団を含み、コアヒットペプチド内の各アミノ酸は各位置でアミノ酸置換を受けている。
ヒット成熟化404のプロセスをさらに説明する目的で、例示的/仮想的コアヒットペプチドを、アミノ酸配列-M1M2M3M4M5-を有する5-merペプチドとして記載する。本開示によれば、ヒット成熟化404は、位置1、2、3、4および5に、アミノ酸置換、欠失および挿入のいずれか、またはそれらのいずれかもしくはすべての組み合わせを含みうる。例えば、仮想的コアヒットペプチド-M1M2M3M4M5-に関して、本開示の諸態様は、位置1のアミノ酸Mが他の19種のアミノ酸のそれぞれによって置換されたものを含みうる(例えば、A1M2M3M4M5-、P1M2M3M4M5-、V1M2M3M4M5-、Q1M2M3M4M5-など)。各位置(2、3、4および5)もまた、アミノ酸Mが他の19種のアミノ酸のそれぞれによって置換されたものを有すると考えられる(例えば、位置2の場合、置換物はM1A2M3M4M5-、M1Q2M3M4M5-、M1P2M3M4M5-、M1N2M3M4M5-などに類似すると考えられる)。置換および/または欠失および/または挿入を受けたコアヒットペプチドの配列を含むペプチド(アレイ上に固定化された)が作り出されることが理解される必要がある。
本開示によるヒット成熟化404のいくつかの態様において、二重アミノ酸置換を行うこともできる。二重アミノ酸置換は、ある所与の位置にあるアミノ酸を変更し(例えば、例えば位置1でのM→P置換)、続いて位置2のアミノ酸を、位置2にある他の19種のアミノ酸のそれぞれによって置換することを含む。このプロセスを、位置1および2の考えられるすべての組み合わせが組み合わされるまで繰り返す。一例として、アミノ酸配列が-M1M2M3M4M5-である5-merペプチドを有する仮想的コアヒットペプチドを振り返って参照すると、位置1および2に関する二重アミノ酸置換は、例えば、位置1でのM→P置換に続く、位置2での20種のすべてのアミノ酸による置換(例えば、-P1A2M3M4M5-、-P1F2M3M4M5-、-P1V2M3M4M5-、-P1E2M3M4M5-など)、位置1でのM→V置換に続く、位置2での20種のすべてのアミノ酸による置換(例えば、-V1A2M3M4M5-、-V1F2M3M4M5-、-P1V2M3M4M5-、-V1E2M3M4M5-など)、位置1でのM→A置換に続く、位置2での20種のすべてのアミノ酸による置換(例えば、-A1A2M3M4M5-、-A1F2M3M4M5-、-A1V2M3M4M5-、-A1E2M3M4M5-など)を含みうる。
本開示によるヒット成熟化404のいくつかの態様において、コアヒットペプチドの各アミノ酸位置に関するアミノ酸欠失を行うこともできる。アミノ酸欠失は、コアヒットペプチド配列由来の単一のアミノ酸が欠失しているコアヒットペプチド配列を含むペプチドを調製すること(その結果、各ペプチドでそのアミノ酸が欠失しているペプチドが作り出されるように)を含む。一例として、アミノ酸配列が-M1M2M3M4M5-である5-merペプチドを有する仮想的コアヒットペプチドを振り返って参照すると、アミノ酸欠失は、以下の配列-M2M3M4M5-;-M1M3M4M5-;-M1M2M4M5-;-M1M2M3M5-;および-M1M2M3M4-を有する一連のペプチドを調製することを含むと考えられる。仮想的5-merのアミノ酸欠失の後には、5種の新たな4-merが作り出されることに留意される必要がある。本開示のいくつかの態様によれば、アミノ酸置換または二重アミノ酸置換スキャンを、生成された新たな各4-merに関して行うことができる。
以上に考察したアミノ酸欠失スキャンと同様に、本明細書に開示されたヒット成熟化404のいくつかの態様はアミノ酸挿入スキャンを含んでよく、それによってコアヒットペプチドのあらゆる位置の前および後に20種のアミノ酸のそれぞれが挿入される。一例として、アミノ酸配列が-M1M2M3M4M5-である5-merペプチドを有する仮想的コアヒットペプチドを振り返って参照すると、アミノ酸挿入スキャンは以下の配列、-XM1M2M3M4M5-;-M1XM2M3M4M5-;-M1M2XM3M4M5-;-M1M2M3XM4M5-;-M1M2M3M4XM5-;および-M1M2M3M4M5X-を含むと考えられる(ここでXは20種の公知のアミノ酸またはアミノ酸の特定の所定のサブセットから選択される個々のアミノを表しており、それによって20種のアミノ酸またはアミノ酸の所定のサブセットのそれぞれに関してペプチド複製物が作り出されると考えられる)。
また、上記のアミノ酸置換ペプチド、二重アミノ酸置換ペプチド、アミノ酸欠失スキャンペプチドおよびアミノ酸挿入スキャンペプチドが、N末端およびC末端のゆらぎアミノ酸配列(例えば、図3の306、306'に記載されたのと同様のもの)の一方または両方を含んでもよいことも理解される必要がある。図3に記載されたN末端およびC末端のゆらぎアミノ酸配列の場合と同じく、このN末端およびC末端のゆらぎアミノ酸配列は、わずか1個のアミノ酸、または15個もしくは20個ものアミノ酸を含んでよく、N末端のゆらぎアミノ酸配列はC末端のゆらぎアミノ酸配列と同じ長さでも、それよりも長くても、またはそれよりも短くてもよい。さらに、N末端およびC末端のゆらぎアミノ酸配列は、任意の所定のアミノ酸の群を任意の所与の比で(例えば、グリシンおよびセリンを3:1の比で)含んでよい。
下記のヒット成熟化404の1つの具体的な例示的態様において、7アミノ酸(例えば、7-mer)のコアヒットペプチドは徹底的な単一および二重アミノ酸スクリーニングを受け、かつ3個のアミノ酸(すべてがグリシン)を含むN末端およびC末端のゆらぎアミノ酸配列の両方を含む。
コアヒットペプチドのさまざまな置換、欠失および挿入変異体がひとたび調製されれば(例えば、マイクロアレイなどの固体支持体上に固定化された様式で)、精製して濃縮した標的タンパク質の結合の強度がアッセイされる(図11)。以下に提示した実施例に示されているように、ヒット成熟化のプロセスにより、コアヒットペプチドを、標的タンパク質と最も高い親和性で結合することに関して最も好ましいアミノ酸配列を示すアミノ酸配列へと精緻化することが可能になる。
V.ペプチド伸長(N末端およびC末端):
5-merアレイ実験において同定されるモチーフは、最適なタンパク質バインダーの短いバージョンに過ぎないという可能性がある。本発明者らは、5-merアレイ実験から選択された配列を、N末端およびC末端の一方または両方から1つまたは複数のアミノ酸だけ伸長させることによって、より長いモチーフを同定する戦略を開発した。選択されたペプチドから出発し、各末端に1つまたは複数のアミノ酸を付加することにより、さらなる選択のための伸長ライブラリーを作り出すことができる。例えば、単一のペプチドから出発し、20種のすべての天然アミノ酸を用いて、160,000種の一意的ペプチドの伸長ライブラリーを作り出すことができる。いくつかの態様において、伸長型ペプチドのそれぞれは複製物として合成される。
ここで図4に図式的に記載されたプロセス400の段階406を参照すると、(標的タンパク質との結合に関してより最適なコアヒットペプチドのアミノ酸配列が同定されるような)コアヒットペプチドの成熟化の後に、N末端および/またはC末端位置が伸長段階を受け、それによって、成熟コアヒットペプチド512の長さは、標的ペプチドに対する特異性および親和性が高まるようにさらに伸長される。
本開示のN末端伸長のさまざまな態様によれば、図5を参照すると、ひとたび成熟コアヒットペプチド配列512が成熟化プロセス(図4の404)を通じて同定されれば、ペプチドバインダー探索段階(図3、302)による集団(図3の5-merの集団308として表される)の各特異的ペプチドプローブを、成熟コアヒットペプチド512のN末端に付加する(またはそれに対して合成する)。このようにして、図3に5-merの集団として例示された(集団の)各ペプチド配列308の最もC末端側のアミノ酸が、成熟コアヒットペプチド512の最もN末端側のアミノ酸に直接隣接して付加される(または合成される)。
同様に、本開示のC末端伸長のさまざまな態様によれば、図5を参照すると、ひとたび成熟コアヒットペプチド配列512が成熟化プロセス(図4の404)を通じて同定されれば、ペプチドバインダー探索段階(図3、302)による集団(図3の5-merの集団308として表される)の各特異的ペプチドプローブを、成熟コアヒットペプチド512のC末端に付加する(またはそれに対して合成する)。このようにして、図3に5-merの集団として例示された(集団の)各ペプチド配列308の最もN末端側のアミノ酸が、成熟コアヒットペプチド512の最もC末端側のアミノ酸に直接隣接して付加される(または合成される)。
本開示のいくつかの態様によれば(図5)、C末端伸長およびN末端伸長に用いた成熟コアヒットペプチドの一方または両方が、N末端およびC末端のゆらぎアミノ酸配列(図3の306、306'に記載されたのと同様のもの)の一方または両方を含んでもよい。図3に記載されたN末端およびC末端のゆらぎアミノ酸配列の場合と同じく、このN末端およびC末端のゆらぎアミノ酸配列は、わずか1個のアミノ酸、または15個もしくは20個もの(もしくはそれを上回る)アミノ酸を含んでよく、N末端のゆらぎアミノ酸配列はC末端のゆらぎアミノ酸配列と同じ長さでも、それよりも長くても、またはそれよりも短くてもよい。さらに、N末端およびC末端のゆらぎアミノ酸配列は、任意の所定のアミノ酸の群を任意の所与の比で(例えば、グリシンおよびセリンを3:1の比で)含んでよい。
一例として、図5では、N末端伸長用のペプチド集団514およびC末端伸長用のペプチド集団516を有するペプチド伸長アレイ500が示されている。ペプチドの各集団514、516は、(ペプチドバインダー探索の段階404に用いられる)ペプチドアレイ300からのペプチド集団310の全体を含みうる。さらに説明されているように、ペプチド集団514、516の両方の各ペプチドは、同じ成熟コアペプチド512を、それぞれ(図3のペプチドバインダー探索の段階302によるプローブの集団の)異なるペプチドプローブ508とともに含む。同じく図5に示されているが、各ペプチド集団514、516は、N末端およびC末端のゆらぎアミノ酸配列を含む。
使用時には、伸長アレイ500(集団514および516を含む)を、濃縮して精製した関心対象のタンパク質に曝露させ(ペプチドバインダーの探索、プロセス400の段階401と同じように)、それによって、タンパク質を、いずれかの集団514、516のいずれかのペプチドと、集団514、516を構成する他のペプチドとは独立に結合させることができる。関心対象のタンパク質に対する曝露の後に、集団514、516に対する関心対象のタンパク質の結合を、例えば、報告可能な標識(例えば、ペルオキシダーゼ)が結びつけられた抗体(該タンパク質に対して特異的)に対して集団514、516の個々のペプチドとタンパク質との複合体を曝露させることによってアッセイする(関心対象のタンパク質をレポーター分子によって直接標識してもよいことも理解される必要がある)。アレイ上の各場所について(各5-merの)ペプチドプローブ配列508は判明しているので、各々のペプチドプローブ508を有する成熟コアヒットペプチド512を含む特定のプローブに対するタンパク質の結合の配列(および結合強度)を図表化すること/定量化すること/比較すること/対比することが可能である。成熟コアヒットペプチド512-ペプチドプローブ508の組み合わせ(集団514または516のいずれかを構成する)に対する(関心対象の)タンパク質の結合を比較する例示的な方法の1つは、結合強度を、一定の原則に基づく分析による分布に基づくクラスター化、例えば、Standardizing and Simplifying Analysis of Peptide Library Data, Andrew D White et al, J Chem Inf Model, 2013, 53(2), pp 493-499に記載され、本明細書において説明されている(例えば、グラフ3および4)ものなどで精査することである。本明細書において例示されているように、一定の原則に基づく分析による分布に基づくクラスター化で示される、(集団514、516の)各々のプローブに対するタンパク質結合のクラスター化により、重複性ペプチド配列を有する5-mer 508が示される。以下にさらに詳細に実証されているように、(各クラスターの)重複性ペプチド配列から、伸長型の成熟コアヒットペプチド配列を同定すること、または少なくとも仮定してさらなる評価のために構築することができる。本出願のいくつかの態様において、伸長型の成熟コアヒットペプチドは、成熟化プロセス(本明細書において記載および例示され、および図4の段階404に説明されているような)を受ける。
本明細書に開示されたN末端およびC末端の伸長プロセスにより、驚くべき予想外の結果が実証されている。N末端およびC末端の伸長プロセスは、単に(ペプチドバインダー探索段階402による)コアヒットペプチド配列の「反復」を示すのではなく、その代わり、関心対象のタンパク質に対する成熟コアヒットの長さ、特異性および親和性を増大させることに寄与する、特異的かつ均一なN末端およびC末端アミノ酸接合部配列を示す。特定の理論に拘束されることはないが、本発明者らは、N末端およびC末端伸長プロセスである段階406の驚くべき予想外の結果が、成熟コアヒットペプチド512とペプチドバインダー508との接合部での高度に特異的なアミノ酸相互作用に起因する可能性があると提唱する。
伸長型ペプチドバインダーにさらに数ラウンドの最適化を行うことも可能である。例えば、3ラウンド目のバインダー最適化は、グリシン(G)アミノ酸による伸長アレイ実験で同定された配列の伸長を含みうる。他の最適化には、参照基準配列の考えられるすべての単一および二重の置換/欠失変異体、すなわち、以前の段階のいずれかにおいて最適化および選択が行われたペプチドバインダーを含む、二重置換/欠失ライブラリーを作り出すことが含まれうる。
VI.伸長型の成熟コアヒットペプチドバインダーの特異性分析:
伸長型の成熟コアヒットペプチドの同定後に、当技術分野において利用可能な、ペプチド親和性および特異性を測定する任意の方法によって、特異性分析を行うことができる。特異性分析の一例には、標的に対して特異的な分子相互作用、(「オン」結合、および「オフ」解離の)反応速度、ならびに親和性(結合強度)に関して分子を特徴づける、「Biacore(商標)」システム分析が含まれる。Biacore(商標)はGeneral Electric Companyの商標であり、同社のウェブサイトを経由して利用可能である。
図6は、新規ペプチドバインダーの同定の方法(例えば、図4のプロセス400)の簡単な図式的概観である。示されているように、ペプチドバインダーの探索602を、アレイ601上にペプチド集団を調製すること(例えば、マスクなしアレイ合成を通じて)によって行う。図示されているように、各ペプチドは、5「サイクル」のN末端のゆらぎ合成606'およびC末端のゆらぎ合成606を含む(例えばN末端およびC末端のゆらぎ合成の両方が5個のアミノ酸を含む)。C末端およびN末端のゆらぎ合成は、上述したように任意の組成を含みうることが理解される必要がある(例えば、アミノ酸GおよびSのみを3:1 [G:S]の比で含む)。各ペプチドは、上述したように、ヒト全プロテオームに相当するように最大で290万種の異なるペプチド配列を含みうる、5-merペプチドバインダー604を含むものとしても示されている。さらに、特定の「規則」(例えば、CおよびMアミノ酸を含まず、同じアミノ酸の連続した順序での反復物を含まず、かつHPQアミノ酸モチーフを含まない)に従って、異なるペプチドバインダー604を合成しうることにも留意される必要がある。上記のように、関心対象のタンパク質標的(例えば、精製されて濃縮された形態にある)を、ペプチドバインダー604に曝露させ、結合をスコア化し(例えば、一定の原則に基づくクラスター化分析を介して)、それによって、「コアヒットペプチド」配列を重複性結合モチーフに基づいて同定する。
コアヒットペプチド配列が同定されれば、徹底的な成熟化プロセス620に着手することができる。いくつかの態様においては、コアヒットペプチド(7-mer、624として例示されている)を、N末端およびC末端のゆらぎの両方を伴ってアレイ601上で合成する(段階620にGアミノ酸のみの3サイクルのN末端およびC末端のゆらぎとして示されているが、上述したようにゆらぎアミノ酸は異なってもよい)。徹底的な成熟化のいくつかの態様においては、ペプチドを、コアヒットペプチド624のあらゆるアミノ酸位置が他の19種のアミノ酸のそれぞれによって置換されるようにアレイ601上で合成するか、または二重アミノ酸置換(上記の通り)をアレイ601上で合成するか、またはアミノ酸欠失スキャンをアレイ601上で合成するか、またはアミノ酸挿入スキャンをアレイ601上で合成する。場合によっては、上記の成熟化プロセスのすべてを行う(さらに、アミノ酸欠失スキャンおよび挿入スキャンの結果として生成された新たなペプチドに関して上記の通りに繰り返す)。さまざまなペプチド(本明細書に記載された置換、欠失および挿入を含む)を含む成熟アレイ620の合成後に、標的タンパク質を、成熟アレイ620上で合成された改変コアヒットペプチド624に曝露させて、結合の強度をアッセイし、それによって「成熟コアヒットペプチド」配列を同定する。
「成熟コアヒットペプチド」配列の同定後に、N末端およびC末端伸長の一方または両方を行うことができる(N末端伸長632およびC末端伸長631の両方を含むものとして630に示されている)。N末端およびC末端の伸長は、それぞれN末端またはC末端で合成された(例えば、5-merの)ペプチドバインダーの集団604を有する成熟コアヒットペプチドの合成を含む。631に示されているように、C末端伸長は5ラウンドのゆらぎ合成(上記の通り)636、および成熟コアヒットペプチド638のC末端側に合成された5-merペプチドバインダーの集団634を含み、続いてさらに5サイクルのゆらぎ合成636'がN末端側で行われる。同様に、632に示されているように、N末端伸長は、成熟コアヒットペプチド638のC末端側に合成された5ラウンドのゆらぎ合成(上記の通り)636、続いて(成熟コアヒットペプチド638の)N末端側に合成された5-merペプチドバインダー集団634およびさらなる5サイクルのゆらぎ合成636'を含む。さまざまな伸長ペプチド(C末端およびN末端伸長ペプチドを含む)を含む伸長アレイ630の合成後に、標的タンパク質を、伸長アレイ630上で合成されたC末端およびN末端の伸長ペプチド集団631、632に曝露させて、結合をスコア化し(例えば、一定の原則に基づくクラスター化分析を介して)、それによってC末端、N末端伸長型の成熟コアヒットペプチド配列を同定する。矢印640によって表されているように、いくつかの態様によれば、伸長型の成熟コアヒットペプチドが同定された後に、伸長型成熟コアヒットペプチドに対して成熟化プロセス620を繰り返し(上記の任意のやり方で)、続いてその結果得られた任意の改変ペプチド配列に対して伸長プロセスを繰り返すことができる。
VII.前立腺特異的抗原(PSA)バインダーペプチド
PSAに対して特異的なペプチドバインダーを、以下に(および表2にも)列記する。
Figure 0006312225
PSAに対して特異的なこれらの新規ペプチドバインダーは、マイクロアレイ、免疫組織化学、クロマトグラフィー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、インサイチュー-ハイブリダイゼーション、および新規ペプチドバインダーと連結された1つまたは複数のヌクレオチドが組み入れられるアッセイを非限定的に含む、さまざまな任意の診断アッセイに用いうることが理解される必要がある。そのため、本明細書に開示された新規ペプチドバインダーは、患者における前立腺癌を診断するために用いることができる。
さらに、本明細書に開示された各新規ペプチドバインダーを、1つまたは複数の別のペプチドバインダーと組み合わせて、例えば、一団のペプチドバインダーを形成させることもできる(例えば、多重化診断アッセイにおけるように)。そのような一団は、前立腺癌を診断する上で、または前立腺癌と良性肥大症とを鑑別する上で一助となりうる。
いくつかの態様において、本発明は、被験試料を入手し、本明細書に開示された新規ペプチドバインダーの1つまたは複数を用いて試料をPSAに関してアッセイすることによって、対象を前立腺癌に関して診断的に評価する方法である。いくつかの態様においては、前立腺癌の存在を判定するために、対象の被験試料中のPSAを定量化する。被験試料には、体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、前立腺組織および前立腺液(すなわち、前立腺のすぐ周囲にある流体)が含まれる。被験試料には、例えば生検によって得られる固形組織試料または臓器試料がさらに含まれる。分離された細胞は、遠心分離または細胞分取法などの分離手法によって、体液または組織または臓器から得ることができる。試料は凍結してもよく、新鮮なものでもよく、固定(例えば、ホルマリン固定)してもよく、または包埋(例えば、パラフィン包埋)してもよい。試料は、試料中のマーカーの量を評価する前に、種々の周知の収集後の調製手法および貯蔵手法に供することができる。
ハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析、RNアーゼ保護アッセイを用いて、またはアレイハイブリダイゼーション、例えば、DNAマイクロアレイスナップショットを含む市販のDNA SNPチップマイクロアレイを用いて、ペプチドバインダーの使用を、関心対象の遺伝的バイオマーカー由来のmRNAまたはDNAのアッセイと組み合わせることもできる。ポリペプチドに対して特異的な物理特性または化学特性、例えばその正確な分子質量またはNMRスペクトルなどを、例えば、バイオセンサー、イムノアッセイと接続された光学デバイス、バイオチップ、分析用デバイス、例えば質量分析計、NMR分析装置またはクロマトグラフィーデバイス、マイクロプレートELISAリーダー、完全自動化または自動装置によるイムノアッセイ(例えば、ECLESYS(商標)分析装置)、コバルト結合アッセイおよびラテックス凝集アッセイ(例えば、Roche-Hitachi分析装置で利用可能)などを用いて測定することによって、別のバイオマーカーを検出することもできる。
本明細書に開示された新規ペプチドバインダーによるPSAの検出のためには、広範囲にわたるイムノアッセイ手法が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号、第4,424,279号および第4,018,653号を参照されたい。これらには、非競合型の単一部位および2部位または「サンドイッチ」アッセイ、ならびに従来の競合結合アッセイの両方が含まれる。そのようなアッセイのいくつかには、標的バイオマーカーに対する標識抗体の直接結合も含まれうる。結合は、電気化学発光を測定すること(Richter, M.M., Chem. Rev. 104 (2004) 3003-3036を参照)、磁気共鳴(NMR)分光法、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)およびさまざまな形態のHPLCによって検出することができる。
本明細書で用いる場合、対象には、前立腺病態の徴候、症状もしくは他の指標をきたしている任意のヒト対象、または前立腺癌スクリーニングが推奨される対象が含まれる。
1つの態様において、本発明は、対象由来の被験試料中のPSAの量または存在を決定することによって、対象における前立腺癌を診断するための方法である。いくつかの態様は、試料中のPSAの量が参照基準濃度を上回る場合に前立腺癌の診断を下すことを含む。
本開示の他の態様によれば、対象において、前立腺癌を治療するか、または前立腺癌の発症を予防するかもしくは遅延させる方法が提供される。いくつかのそのような態様は、PSAと結合するかまたはその機能を変更することができる本明細書に開示されたペプチドバインダーを含む化合物を投与することを含む。そのような化合物のペプチドバインダーは、SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:1〜12のうちの1つに対して少なくとも80%の配列相同性を有する、1つまたは複数のペプチドバインダーを含む。
いくつかの態様において、本開示は、前立腺癌の治療または予防のための薬物の製造のための、新規ペプチドバインダーの使用に関する。
他の態様において、本開示は、ある薬剤が前立腺癌の治療において治療効果を有する可能性を判定する方法であって、被験対象を前記薬剤に曝露させる前および後に対象の被験試料中のPSAの量を検出または定量化するために、本明細書に開示された1つまたは複数の新規ペプチドバインダーを用いる段階を含む方法に関する。
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に開示された1つまたは複数の新規ペプチドバインダーを含むキットを提供する。そのようなキットは、SEQ ID NO:1〜12からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:1〜12のうちの1つに対して少なくとも80%の配列相同性を有するペプチドバインダー、および任意で別のペプチドバインダーを含むことができる。
VIII.ストレプトアビジンバインダーペプチド
ストレプトアビジンに対して特異的なペプチドバインダーを、以下に(および表1にも)列記する。
Figure 0006312225
ストレプトアビジンに対して特異的なこれらの新規ペプチドバインダーは、ストレプトアビジン、ストレプトアビジンの断片に相当するタグ、またはストレプトアビジン-ビオチン複合体の検出もしくは捕捉が必要とされる、あらゆる用途に用いることができる。アッセイには、マイクロアレイ、免疫組織化学、クロマトグラフィー;酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、インサイチュー-ハイブリダイゼーション、および新規ペプチドバインダーと連結された1つまたは複数のヌクレオチドが組み入れられるアッセイが含まれる。
例えば、本発明のストレプトアビジン結合ペプチドは、Strep-tag II配列を含む標的分子のアフィニティー捕捉のために用いることができる。David S Wilson et al, (2001) The use of mRNA display to select high-affinity protein-binding peptides PNAS vol. 98, no. 7, 3750-3755を参照されたい。
いくつかの態様において、本開示は、本明細書に開示されたストレプトアビジンに対して特異的な1つまたは複数の新規ペプチドバインダーを含むキットを提供する。そのようなキットは、SEQ ID NO:13〜27からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:13〜27のうちの1つに対して少なくとも80%の配列相同性を有するペプチドバインダー、および任意で別のペプチドバインダーを含むことができる。
実施例1
網羅的な5-merペプチドアレイを用いたストレプトアビジンバインダーの探索
アレイの設計および合成:
2,476,099個のペプチド(システインを除くすべての考えられる5-merペプチドの網羅的リストに相当する)を有するアレイを設計した。本発明者らはまた、システインおよびメチオニン、同じアミノ酸のあらゆる二量体またはより長い反復物、ならびにHR、RH、HK、KH、RK、KR、HPおよびPQ配列を含有するあらゆるペプチドを除外した、18種の天然アミノ酸のすべての組み合わせを用いることによって、5-merペプチドのより小規模なアレイも設計し、1,360,732種の一意的ペプチドのライブラリーを作り出した。このライブラリーには、アレイデータから導き出される結論の信頼度を高めるために、同一のアレイ上に各ペプチドの2つの複製物を用いているという利点があった。
各5-merペプチドを合成し、N末端およびC末端に5サイクルのゆらぎ合成を行う。ゆらぎ混合物組成物は2種またはそれを上回るアミノ酸の混合物であると考えられ、例えば、柔軟性のあるゆらぎ混合物は以下を含みうる:G:S混合物(3:1比)、等量のGAVDPSELT(SEQ ID NO:28)または等量のLADKTQPFVY(SEQ ID NO:29)。ゆらぎ合成は実質的に、組み合わされた15-merペプチドを生じさせる、ランダム合成と指定合成の組み合わせを可能にする。ペプチド配列は以下の形式:ZZZZZ-5mer-ZZZZZの状態にあると考えられ、ここでZは特定のゆらぎ混合物由来のアミノ酸である。各ペプチド合成フィーチャーは最大で107個のペプチドを含むため、フィーチャー当たりの各ペプチドの集団はさまざまであると考えられ、ゆらぎ混合物の複雑度に比例すると考えられる。半指定合成によるゆらぎ合成を用いてそのような複雑度を作り出すことにより、アレイ当たり最大で1012種の多様性を有するペプチドを用いて、アレイ上でのバインダーのスクリーニングを行うことが可能になる。
結合アッセイ:
Cy5で標識したストレプトアビジンを、1%アルカリ可溶性カゼインを含む1×TE結合緩衝液中にて、25℃で1時間インキュベートした。アレイを1×TE緩衝液で3回洗浄し、最後に0.1×TE緩衝液で洗浄した上で、2マイクロメートルスキャナーを用いてスキャニングを行った。
画像処理:
画像分析およびシグナル抽出は、NimbleGen DEVAソフトウェアを用いて行った。2,476,099個の5-merペプチドのライブラリーに関しては、データを収集して3枚のアレイスライドからの平均を求め、1,360,732種の5-merペプチドのライブラリーに関しては2枚のスライドをデータ分析のために用いた。
データ分析および結果:
非常に高い平均強度を有し、かつ変動係数(CV)値が15%未満である424個の配列が、2,476,099個のペプチドのアレイから選択された。これらの配列を、Rパッケージ「PEPLIB」に実装されている標準的なBLOSUM 62置換行列を用いた距離に基づいてクラスター化した(Standardizing and Simplifying Analysis of Peptide Library Data, Andrew D White et al, J Chem Inf Model, 2013, 53(2), pp 493-499を参照)。5-merペプチドの距離は、PCAプロットの最初の2つの成分に関してプロットされる。各クラスターに関するコンセンサスモチーフを図7に報告している。3つの高密度クラスターは、配列HPQA(SEQ ID NO:30)、YHPQ(SEQ ID NO:31)およびHPQ[NF]を有するストレプトアビジンバインダーを示している。これらの結果は、ストレプトアビジンバインダーの探索のためにmRNAディスプレイを利用した、以前に発表された知見と一致している(David S Wilson et al, (2001) The use of mRNA display to select high-affinity protein-binding peptides PNAS vol. 98, no. 7, 3750-3755を参照)。
可能性のある二次ストレプトアビジンバインダーを同定するために、主なHPQモチーフ(SEQ ID NO:13)を有するペプチドを計画的に含めなかった1,360,732種のペプチドのアレイから、平均強度が非常に高い24種の配列を選択した。(図8)に示されているように、Rパッケージ「PEPLIB」を用いた距離に基づいて配列をクラスター化した。この分析により、可能性のある4種の二次ストレプトアビジンバインダー、LAEYH(SEQ ID NO:14)、RPGWK(SEQ ID NO:15)、PAWAH(SEQ ID NO:16)およびFDEWL(SEQ ID NO:17)を、次ラウンドのバインダー最適化のために選択した。
実施例2
伸長ペプチドアレイを用いたストレプトアビジンバインダーの最適化
アレイの設計:
5-merアレイ実験において同定されるモチーフは、最適なストレプトアビジンバインダーの短いバージョンに過ぎないという可能性がある。本発明者らは、5-merアレイ実験から選択された配列を、表1にXによって示されている20種のすべての天然アミノ酸を用いてN末端およびC末端の両方から2アミノ酸伸長させることによって、より長いモチーフを同定する戦略を開発した。伸長ライブラリーのそれぞれは、5つずつの複製物として合成された160,000種の一意的ペプチドを含む。ストレプトアビジン結合アッセイおよび画像処理は、実施例1に記載された通りに行った。
Figure 0006312225
データ分析および結果:
平均強度が非常に高い配列を、さらなる分析のために選択した。各ライブラリーからの上位の配列を表1に列記している。
実施例3
二重置換/欠失ペプチドアレイを用いたストレプトアビジンバインダーの最適化
アレイの設計:
3ラウンド目のバインダー最適化には、伸長アレイ実験において同定された配列をグリシン(G)アミノ酸によって伸長させてそれらを表1に示されているような11-merペプチドにした後に、参照基準配列の考えられるすべての単一および二重の置換/欠失変異体を含む二重置換/欠失ライブラリーを設計することを含めた。置換/欠失アレイに関するストレプトアビジン結合アッセイおよび画像処理は、実施例1に記載された通りに行った。
データ分析および結果:
データをまず、標準的なアラニンスキャンに類似しているが20種のすべてのアミノ酸の置換を含む単一置換プロットによって分析し、その後にバインダー最適化を用いる二重置換分析を行った。この分析の一例を、GGPAPAWAHGG配列(SEQ ID NO:35)に関して図9に示している。
図9のパネルAは、5-merアレイから当初選択されたPAWAHモチーフ(SEQ ID NO:16)およびその伸長型PAPAWAHGG(SEQ ID NO:21)バージョンが、位置3〜11での最も特異的なアミノ酸であることを示している。位置2でのアミノ酸スキャンからは、G→D置換が結合シグナルを劇的に増大させると考えられることが示唆される。このライブラリーに含まれる二重置換の利点は、位置2にDを有するペプチドに関する置換プロットを示している図9のパネルBに実証されている。事実、位置2でのGのDへの置換は、モチーフ中の他のアミノ酸の特異性を変化させることなく、シグナル強度をほぼ3倍に増大させた。5種のストレプトアビジンモチーフのすべてに関する二重置換分析によって選択された上位の配列を、表1に示している。
実施例4
系統的な3段階アプローチを用いた前立腺特異的抗原(PSA)バインダーの探索および最適化
1)5-merアレイ、2)伸長アレイ、および3)二重置換/欠失アレイという3種のペプチドアレイの逐次的適用からなる系統的なバインダー探索アプローチについて検討するために、本発明者らは標的としてヒト前立腺特異的抗原(PSA)を選択した。
アレイの設計:
システインおよびメチオニン、同じアミノ酸のあらゆる二量体またはより長い反復物、ならびにHR、RH、HK、KH、RK、KR、HPおよびPQ配列を含有するあらゆるペプチドを除外した、18種の天然アミノ酸のすべての組み合わせを用いることによって、5-merアレイを設計し、1,360,732種の一意的ペプチドのライブラリーを作り出した。伸長アレイは、5-merアレイ実験から選択された配列を、20種のすべての天然アミノ酸を用いてN末端およびC末端の両方から2アミノ酸伸長させることによって設計した。二重置換/欠失アレイは、伸長アレイ実験において同定された配列をグリシン(G)アミノ酸によって伸長させてそれらを11-merペプチドにした後に、元の配列の考えられるすべての単一および二重の置換/欠失変異体を含むライブラリーを作り出すことによって設計した。
アレイの合成:
各5-merペプチドのN末端およびC末端における、それぞれ3:1比であるGおよびSアミノ酸の混合物を用いた5サイクルの合成によって、5-merアレイを合成した。伸長および二重置換/欠失アレイは、隣接するゆらぎ合成を用いずに直接的に合成した。
結合アッセイ:
EZ-Link NHS-PEG4-ビオチン化キット(Thermo Fisher Sci., Inc. Rockford、Ill.)を用いてビオチンで標識したPSAを、SecureSealハイブリダイゼーション用チャンバー(Grace Bio-Labs, Bend, Ore.)内で、1%アルカリ可溶性カゼインを含む1×TE結合緩衝液中にて、濃度100ng/mlで25℃で12時間インキュベートした。アレイを1×TE緩衝液で3回洗浄し、1%アルカリ可溶性カゼインを含む1×結合緩衝液中でストレプトアビジンCy5により25℃で1時間かけて染色して、1×TE緩衝液で3回洗浄し、最後に0.1X TE緩衝液で洗浄した上で、2マイクロメートルMS200スキャナー(Roche/Nimblegen, Madison, Wisc)を用いてスキャニングを行った。
データ分析:
NimbleGen DEVAソフトウェアを用いて画像分析およびシグナル抽出を行って、蛍光シグナルを有するペプチドを同定する。結合ペプチドに関して5-mer配列を同定し、Rパッケージ「PEPLIB」に実装されている標準的なBLOSUM 62置換行列を用いた距離に基づいてクラスター化する(上記に引用されているWhite et al., 2013を参照)。5-merペプチドの距離は、PCAプロットの最初の2つの成分に関してプロットされる。各クラスターに関するコンセンサスモチーフをグラフ中に報告している。
結果:
5-merアレイ実験から、平均シグナル強度が非常に高い405種の配列が同定された。データは図10に示されている。主要な2つのクラスター、W[QET]V[YH][LAVI]および[FLY][QET]VY[LIAV]は極めて類似したモチーフを示し、405種の配列の大半である393種に含まれた。さらなる分析のために、本発明者らは、これらのクラスターから3種の配列、FEVYL(SEQ ID NO:1)、WTVYA(SEQ ID NO:2)およびWEVHL(SEQ ID NO:3)を選択したが、これらはそれぞれPSAに対する結合シグナルの点で順位が1位、3位および28位であった。このようにした理由は、複数のクラスターから多様性の高い配列を選択し、次のアレイデザインでそれらの進化および結合特性を追跡するためであった。
上記のうちの2つの主なF[QET]VY[LI]およびW[QET]V[YH][LAV]クラスターは、位置1に類似のアミノ酸FまたはWを、位置3にVを有することによって関連づけられた。考えられる他のバインダーモチーフを見いだすために、本発明者らはこれらのフィーチャーを有する配列を5-merアレイデータから除外し、図11に示されているように残りのデータセットからの上位32種の配列を用いてPEPLIB分析を行った。クラスターの1つであるRS[KI]LY(SEQ ID NO:41)は、元のデータセットにおいて同定された2つの主なクラスターから有意に隔たっていた。405種の配列の元のリストで順位が307位であった配列RSILY(SEQ ID NO:4)を、次のバインダー最適化の段階のために選択した。
5-merアレイから選択した4種の配列、FEVYL(SEQ ID NO:1)、WTVYA(SEQ ID NO:2)、WEVHL(SEQ ID NO:3)、およびRSILY(SEQ ID NO:4)を、N末端およびC末端の両方で、20種のすべての天然アミノ酸(X)を用いた考えられるすべての二量体によって伸長させて、それぞれが5つの複製物として合成された160,000種の要素からなる伸長アレイを設計した(表2)。PSA結合のシグナル強度によって選択された各ライブラリーに関する上位の12種の配列を用いて、図12に示されたLogoプロットを作成した。図12は、コア5-mer配列が最も高いPSA結合シグナルを得るには、隣接領域に特定のアミノ酸が選ばれることを実証している。例えば、FEVYLモチーフ(SEQ ID NO:1)はC末端にPのみが選ばれ、WTVYAモチーフ(SEQ ID NO:2)はN末端にDまたはEのいずれかである酸性アミノ酸が、C末端にGが選ばれ、一方、RSILYモチーフ(SEQ ID NO:4)はC末端に、5-merアレイには存在しなかったアミノ酸であるCが選ばれる。
Figure 0006312225
伸長アレイから選択された上位の配列(表2、欄3)を用いて、表2の欄4に示されている二重置換/欠失アレイを設計した。実施例3に記載された通りの単一および二重置換スキャンを用いてPSAバインダーを最適化したところ、最も高いシグナル強度が達成され、モチーフ配列中の各アミノ酸の特異性が確かめられた(表2、欄5)。

Claims (5)

  1. ペプチドバインダー(peptide binder)を同定する方法であって、
    a)関心対象のタンパク質標的をペプチドバインダーの第1の集団を含むアレイに曝露させ、それによって該タンパク質標的を、該集団を構成する少なくとも1種類のペプチドバインダーと結合させる段階;
    b)該関心対象のタンパク質標的と結合する集団を構成するペプチドバインダー配列同定し、それによってコアバインダー配列を同定する段階;
    c)コアバインダー配列を構成するアミノ酸の、単一アミノ酸置換、二重アミノ酸置換、アミノ酸欠失およびアミノ酸挿入から選択される少なくとも1つの変更を実施し、それによってコアバインダー配列の第2の集団を作製する段階;
    d)該第2の集団をタンパク質標的に曝露させ、それによって該タンパク質標的を該第2の集団の少なくとも1つのペプチド配列と結合させる段階;
    e)該タンパク質標的に対する強い結合特性を示す、該第2の集団の1つまたは複数の配列を同定し、それによって成熟コアバインダー配列を特定する段階;
    f)段階eで特定された成熟コアバインダー配列の、N末端およびC末端の伸長のうちの少なくとも1つを実施し、それによって成熟伸長型ペプチドバインダーの集団を作製する段階;
    g)該関心対象のタンパク質標的を、段階fで生成された成熟伸長型ペプチドバインダーの集団を含むアレイに曝露させる段階;および
    h)該タンパク質標的に対する強い結合特性を示す、成熟伸長型ペプチドバインダーの配列を同定し、それによって成熟伸長型コアペプチドバインダー配列を特定する段階
    を含む方法であって、成熟伸長型ペプチドバインダーの集団のペプチドバインダーが、N末端およびC末端のゆらぎ合成のうちの少なくとも1つを含む、方法。
  2. 段階c)およびf)の順序を入れ換えた、請求項1記載の方法。
  3. 第1の集団のペプチドバインダーが、アミノ酸のシステインもメチオニンも、ヒスチジン-プロリン-グルタミンモチーフも、2個またはそれを上回るアミノ酸のアミノ酸反復物も含まない、請求項1〜2のいずれか一項記載の方法。
  4. コアバインダー配列が、ペプチドバインダーの第1の集団を構成するペプチドのそれぞれに関するアミノ酸数よりも多い数のアミノ酸を含む、請求項1〜3 のいずれか一項記載の方法。
  5. 段階c)〜h)が、成熟伸長型コアペプチドバインダー配列に対して繰り返される、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
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