この発明に係る眼科観察装置の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。この発明に係る眼科観察装置は、OCTを用いて被検眼の断層像や3次元画像を形成する。この明細書では、OCTによって取得される画像をOCT画像と総称することがある。また、OCT画像を形成するための計測動作をOCT計測と呼ぶことがある。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
以下の実施形態では、フーリエドメインタイプのOCTを適用した構成について詳しく説明する。実施形態に係る眼科観察装置は、スペクトラルドメインOCTの手法を用いて眼底のOCT画像を取得可能であり、かつ眼底像や前眼部像を取得可能である。なお、スペクトラルドメイン以外のタイプ、たとえばスウェプトソースOCTやインファスOCTの手法を用いる眼科観察装置に対して、この発明に係る構成を適用することも可能である。
また、この実施形態ではOCT装置と眼底カメラとを組み合わせた装置について説明するが、眼底カメラ以外の眼科撮影装置、たとえばSLOやスリットランプや眼科手術用顕微鏡などを、OCT装置に組み合わせることが可能である。また、この実施形態に係る構成を、単体のOCT装置に組み込むことも可能である。
[構成]
図1および図2に示すように、眼科観察装置1は、眼底カメラユニット2、OCTユニット100および演算制御ユニット200を含んで構成される。眼底カメラユニット2は、従来の眼底カメラとほぼ同様の光学系を有する。OCTユニット100には、眼底のOCT画像を取得するための光学系が設けられている。演算制御ユニット200は、各種の演算処理や制御処理等を実行するコンピュータを具備している。
〔眼底カメラユニット〕
図1に示す眼底カメラユニット2には、被検眼Eの眼底Efの表面形態を表す2次元画像(眼底像)を取得するための光学系が設けられている。眼底像には、観察画像や撮影画像などが含まれる。観察画像は、たとえば、近赤外光を用いて所定のフレームレートで形成されるモノクロの動画像である。なお、被検眼Eの前眼部Eaに光学系のピントが合っている場合、眼底カメラユニット2は前眼部Eaの観察画像を取得することができる。撮影画像は、たとえば、可視光をフラッシュ発光して得られるカラー画像、または近赤外光若しくは可視光を照明光として用いたモノクロの静止画像であってもよい。眼底カメラユニット2は、これら以外の画像、たとえばフルオレセイン蛍光画像やインドシアニングリーン蛍光画像や自発蛍光画像などを取得可能に構成されていてもよい。
眼底カメラユニット2には、被検者の顔を支持するための顎受けと額当てが設けられている。顎受けおよび額当ては、図4Aおよび図4Bに示す支持部440に相当する。なお、図4Aおよび図4Bにおいて、符号410は、光学系駆動部700等の駆動系や演算制御回路が格納されたベースを示す。また、符号420は、ベース410上に設けられた、光学系が格納された筐体を示す。また、符号430は、筐体420の前面に突出して設けられた、対物レンズ22が収容されたレンズ収容部を示す。
眼底カメラユニット2には、照明光学系10と撮影光学系30が設けられている。照明光学系10は眼底Efに照明光を照射する。撮影光学系30は、この照明光の眼底反射光を撮像装置(CCDイメージセンサ(単にCCDと呼ぶことがある)35、38。)に導く。また、撮影光学系30は、OCTユニット100からの信号光を眼底Efに導くとともに、眼底Efを経由した信号光をOCTユニット100に導く。
照明光学系10の観察光源11は、たとえばハロゲンランプにより構成される。観察光源11から出力された光(観察照明光)は、曲面状の反射面を有する反射ミラー12により反射され、集光レンズ13を経由し、可視カットフィルタ14を透過して近赤外光となる。さらに、観察照明光は、撮影光源15の近傍にて一旦集束し、ミラー16により反射され、リレーレンズ17、18、絞り19およびリレーレンズ20を経由する。そして、観察照明光は、孔開きミラー21の周辺部(孔部の周囲の領域)にて反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efを照明する。なお、観察光源としてLED(Light Emitting Diode)を用いることも可能である。
観察照明光の眼底反射光は、対物レンズ22により屈折され、ダイクロイックミラー46を透過し、孔開きミラー21の中心領域に形成された孔部を通過し、ダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を経由し、ミラー32により反射される。さらに、この眼底反射光は、ハーフミラー39Aを透過し、ダイクロイックミラー33により反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に結像される。CCDイメージセンサ35は、たとえば所定のフレームレートで眼底反射光を検出する。表示装置3には、CCDイメージセンサ35により検出された眼底反射光に基づく画像(観察画像)が表示される。なお、撮影光学系30のピントが前眼部Eaに合わせられている場合、被検眼Eの前眼部Eaの観察画像が表示される。
撮影光源15は、たとえばキセノンランプにより構成される。撮影光源15から出力された光(撮影照明光)は、観察照明光と同様の経路を通って眼底Efに照射される。撮影照明光の眼底反射光は、観察照明光のそれと同様の経路を通ってダイクロイックミラー33まで導かれ、ダイクロイックミラー33を透過し、ミラー36により反射され、集光レンズ37によりCCDイメージセンサ38の受光面に結像される。表示装置3には、CCDイメージセンサ38により検出された眼底反射光に基づく画像(撮影画像)が表示される。なお、観察画像を表示する表示装置3と撮影画像を表示する表示装置3は、同一のものであってもよいし、異なるものであってもよい。また、被検眼Eを赤外光で照明して同様の撮影を行う場合には、赤外の撮影画像が表示される。また、撮影光源としてLEDを用いることも可能である。
照明光学系10は、光路に対して挿脱可能な小瞳孔絞りを有する。小瞳孔絞りは、被検眼Eが小瞳孔眼である場合に光路に挿入される。小瞳孔絞りは、たとえば絞り19として光路に配置される。なお、被検眼Eの瞳孔径が通常である場合には、通常瞳孔径の被検眼Eの撮影に適用される絞り(通常瞳孔絞り)が絞り19として光路に配置される。すなわち、絞り19は、択一的に光路に配置可能な通常瞳孔絞りと小瞳孔絞りとを含む。
LCD(Liquid Crystal Display)39は、固視標や視力測定用指標を表示する。固視標は被検眼Eを固視させるための指標であり、眼底撮影時やOCT計測時などに使用される。
LCD39から出力された光は、その一部がハーフミラー39Aにて反射され、ミラー32に反射され、合焦レンズ31およびダイクロイックミラー55を経由し、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
LCD39の画面上における固視標の表示位置を変更することにより、被検眼Eの固視位置を変更できる。被検眼Eの固視位置としては、たとえば従来の眼底カメラと同様に、眼底Efの黄斑部を中心とする画像を取得するための位置や、視神経乳頭を中心とする画像を取得するための位置や、黄斑部と視神経乳頭との間の眼底中心を中心とする画像を取得するための位置などがある。また、固視標の表示位置を任意に変更することも可能である。
さらに、眼底カメラユニット2には、従来の眼底カメラと同様にアライメント光学系50とフォーカス光学系60が設けられている。アライメント光学系50は、被検眼Eに対する装置光学系の位置合わせ(アライメント)を行うための指標(アライメント指標)を生成する。アライメント光学系50は「第1の投影光学系」の一例であり、アライメント指標は「第1の指標」の一例である。フォーカス光学系60は、眼底Efに対してフォーカスを合わせるための指標(スプリット指標)を生成する。フォーカス光学系60は「第2の投影光学系」の一例であり、スプリット指標は「第2の指標」の一例である。
アライメント光学系50のLED51から出力された光(アライメント光)は、絞り52、53およびリレーレンズ54を経由してダイクロイックミラー55により反射され、孔開きミラー21の孔部を通過し、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により被検眼Eの角膜に投影される。
アライメント光の角膜反射光は、対物レンズ22、ダイクロイックミラー46および上記孔部を経由し、その一部がダイクロイックミラー55を透過し、合焦レンズ31を通過し、ミラー32により反射され、ハーフミラー39Aを透過し、ダイクロイックミラー33に反射され、集光レンズ34によりCCDイメージセンサ35の受光面に投影される。CCDイメージセンサ35による受光像(アライメント指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。ユーザは、アライメント指標を視認しつつ手動でアライメントを行うことができる。また、詳細は後述するが、演算制御ユニット200がアライメント指標の位置を解析して光学系を移動させることによりアライメントを行うことができる(オートアライメント機能)。なお、この実施形態では、後述の前眼部カメラ300を用いてオートアライメントを実行することができるので、アライメント指標を用いたオートアライメントが可能なことは必須な事項ではない。ただし、前眼部カメラ300を用いたオートアライメントが成功しなかったときにアライメント指標を用いたオートアライメントを行えるように構成したり、前眼部カメラ300を用いたオートアライメントとアライメント指標を用いたオートアライメントとを選択的に使用できるように構成したりすることも可能である。
フォーカス調整を行う際には、照明光学系10の光路上に反射棒67の反射面が斜設される。フォーカス光学系60のLED61から出力された光(フォーカス光)は、リレーレンズ62を通過し、スプリット指標板63により2つの光束に分離され、二孔絞り64を通過し、ミラー65に反射され、集光レンズ66により反射棒67の反射面に一旦結像されて反射される。さらに、フォーカス光は、リレーレンズ20を経由し、孔開きミラー21に反射され、ダイクロイックミラー46を透過し、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに投影される。
フォーカス光の眼底反射光は、アライメント光の角膜反射光と同様の経路を通ってCCDイメージセンサ35により検出される。CCDイメージセンサ35による受光像(スプリット指標)は、観察画像とともに表示装置3に表示される。ユーザは、従来の眼底カメラと同様に、スプリット指標を視認しつつ手動でフォーカス調整を行うことができる。また、詳細は後述するが、演算制御ユニット200がスプリット指標の位置を解析して合焦レンズ31およびフォーカス光学系60を移動させることによりフォーカス調整を行なうことができる(オートフォーカス機能)。
ダイクロイックミラー46は、眼底撮影用の光路からOCT計測用の光路を分岐させている。ダイクロイックミラー46は、OCT計測に用いられる波長帯の光を反射し、眼底撮影用の光を透過させる。このOCT計測用の光路には、OCTユニット100側から順に、コリメータレンズユニット40と、光路長変更部41と、ガルバノスキャナ42と、合焦レンズ43と、ミラー44と、リレーレンズ45とが設けられている。
光路長変更部41は、光軸方向(図1に示す矢印の方向)に移動可能とされ、OCT計測用の光路(信号光路)の光路長を変更する。信号光路の光路長を変更することにより、信号光路の光路長と参照光路の光路長との差(光路長差)が変更される。光路長差の変更は、被検眼Eの眼軸長に応じた光路長の補正や、干渉状態の調整などに利用される。また、この実施形態では、光学系の移動(アライメント)に応じて光路長差が変更される。光路長変更部41は、たとえばコーナーキューブと、これを移動する駆動機構とを含んで構成される。
光路長差変更部の構成はこれに限定されない。たとえば、上記と同様のコーナーキューブを参照光路の途中に設けるとともに、これを移動させる駆動機構を設けることが可能である。また、参照光路の末端に反射ミラー(参照ミラー)を配置し、この参照ミラーを参照光の進行方向に移動させることで、参照光路の光路長を変更することができる。また、OCT計測に寄与する光学系(計測光学系)自体を被検眼に対して移動させることにより信号光路の光路長を変更することができる。一般に、光路長差変更部は、信号光路および/または参照光路の光路長を変更可能な任意の構成を有する。
ガルバノスキャナ42は、OCT計測用の光路を通過する光(信号光)の進行方向を変更する。それにより、眼底Efを信号光で走査することができる。ガルバノスキャナ42は、たとえば、信号光をx方向に走査するガルバノミラーと、y方向に走査するガルバノミラーと、これらを独立に駆動する機構とを含んで構成される。それにより、信号光をxy平面上の任意の方向に走査することができる。
眼底カメラユニット2には前眼部カメラ300が設けられている。前眼部カメラ300は、前眼部Eaを異なる方向から実質的に同時に撮影する。この実施形態では、眼底カメラユニット2の被検者側の面に2台のカメラが設けられている(図4Aに示す前眼部カメラ300A、300Bを参照)。また、前眼部カメラ300Aおよび300Bはそれぞれ、図1および図4Aに示すように、照明光学系10の光路および撮影光学系30の光路から外れた位置に設けられている。以下、2台の前眼部カメラ300Aおよび300Bをまとめて符号300で表すことがある。
この実施形態では、2台の前眼部カメラ300Aおよび300Bが設けられているが、この発明における前眼部カメラの個数は2以上の任意の個数である。しかし、後述の演算処理を考慮すると、異なる2方向から実質的に同時に前眼部を撮影可能な構成であれば十分である。また、この実施形態では、照明光学系10および撮影光学系30とは別個に前眼部カメラ300を設けているが、少なくとも撮影光学系30を用いて同様の前眼部撮影を行うことができる。つまり、2以上の前眼部カメラのうちの1つを撮影光学系30を含む構成によって担うようにしてもよい。いずれにしても、この実施形態は、異なる2(以上の)方向から実質的に同時に前眼部を撮影可能に構成されていればよい。
なお、「実質的に同時」とは、2以上の前眼部カメラによる撮影において、眼球運動を無視できる程度の撮影タイミングのズレを許容することを示す。それにより、被検眼Eが実質的に同じ位置(向き)にあるときの画像を2以上の前眼部カメラによって取得することができる。
また、2以上の前眼部カメラによる撮影は動画撮影でも静止画撮影でもよいが、この実施形態では動画撮影を行う場合について特に詳しく説明する。動画撮影の場合、撮影開始タイミングを合わせるよう制御したり、フレームレートや各フレームの撮影タイミングを制御したりすることにより、上記した実質的に同時の前眼部撮影を実現することができる。一方、静止画撮影の場合、撮影タイミングを合わせるよう制御することにより、これを実現することができる。
〔OCTユニット〕
図2を参照しつつOCTユニット100の構成の一例を説明する。OCTユニット100には、眼底EfのOCT画像を取得するための光学系が設けられている。この光学系は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様の構成を有する。すなわち、この光学系は、低コヒーレンス光を参照光と信号光に分割し、眼底Efを経由した信号光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光のスペクトル成分を検出するように構成されている。この検出結果(検出信号)は演算制御ユニット200に送られる。
なお、スウェプトソースタイプのOCT装置の場合には、低コヒーレンス光源を出力する光源の代わりに波長掃引光源が設けられるとともに、干渉光をスペクトル分解する光学部材が設けられない。一般に、OCTユニット100の構成については、光コヒーレンストモグラフィのタイプに応じた公知の技術を任意に適用することができる。
光源ユニット101は広帯域の低コヒーレンス光L0を出力する。低コヒーレンス光L0は、たとえば、近赤外領域の波長帯(約800nm〜900nm程度)を含み、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する。なお、人眼では視認できない波長帯、たとえば1040〜1060nm程度の中心波長を有する近赤外光を低コヒーレンス光L0として用いてもよい。
光源ユニット101は、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode:SLD)や、LEDや、SOA(Semiconductor Optical Amplifier)等の光出力デバイスを含んで構成される。
光源ユニット101から出力された低コヒーレンス光L0は、光ファイバ102によりファイバカプラ103に導かれて信号光LSと参照光LRに分割される。
参照光LRは、光ファイバ104により導かれて光減衰器(アッテネータ)105に到達する。光減衰器105は、公知の技術を用いて、演算制御ユニット200の制御の下、光ファイバ104に導かれる参照光LRの光量を自動で調整する。光減衰器105により光量が調整された参照光LRは、光ファイバ104により導かれて偏波調整器(偏波コントローラ)106に到達する。
偏波調整器106は、たとえば、ループ状にされた光ファイバ104に対して外部から応力を与えることで、光ファイバ104内を導かれる参照光LRの偏光状態を調整する装置である。なお、偏波調整器106の構成はこれに限定されるものではなく、任意の公知技術を用いることが可能である。偏波調整器106により偏光状態が調整された参照光LRは、ファイバカプラ109に到達する。
信号光LSの偏光状態を調整する偏波調整器を設けることも可能である。一般に、信号光LSおよび/または参照光LRの偏光状態を変更するように構成することができる。それにより、信号光LSの偏光状態と参照光LRの偏光状態とが一致されて干渉効率が向上する。
ファイバカプラ103により生成された信号光LSは、光ファイバ107により導かれ、コリメータレンズユニット40により平行光束とされる。さらに、信号光LSは、光路長変更部41、ガルバノスキャナ42、合焦レンズ43、ミラー44、およびリレーレンズ45を経由してダイクロイックミラー46に到達する。そして、信号光LSは、ダイクロイックミラー46により反射され、対物レンズ22により屈折されて眼底Efに照射される。信号光LSは、眼底Efの様々な深さ位置において散乱(反射を含む)される。眼底Efによる信号光LSの後方散乱光は、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ103に導かれ、光ファイバ108を経由してファイバカプラ109に到達する。
ファイバカプラ109は、信号光LSの後方散乱光と、光ファイバ104を経由した参照光LRとを干渉させる。これにより生成された干渉光LCは、光ファイバ110により導かれて出射端111から出射される。さらに、干渉光LCは、コリメータレンズ112により平行光束とされ、回折格子113により分光(スペクトル分解)され、集光レンズ114により集光されてCCDイメージセンサ115の受光面に投影される。なお、図2に示す回折格子113は透過型であるが、たとえば反射型の回折格子など、他の形態の分光素子を用いることも可能である。
CCDイメージセンサ115は、たとえばラインセンサであり、分光された干渉光LCの各スペクトル成分を検出して電荷に変換する。CCDイメージセンサ115は、この電荷を蓄積して検出信号を生成し、これを演算制御ユニット200に送る。
この実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用しているが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜に採用することが可能である。また、CCDイメージセンサに代えて、他の形態のイメージセンサ、たとえばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどを用いることが可能である。また、スウェプトソースタイプのOCTを適用する場合には、回折格子113は不要であり、かつCCDイメージセンサ115の代わりにバランスドフォトダイオードなどが設けられる。
〔演算制御ユニット〕
演算制御ユニット200の構成について説明する。演算制御ユニット200は、CCDイメージセンサ115から入力される検出信号を解析して眼底EfのOCT画像を形成する。そのための演算処理は、従来のスペクトラルドメインタイプのOCT装置と同様である。
また、演算制御ユニット200は、眼底カメラユニット2、表示装置3およびOCTユニット100の各部を制御する。たとえば演算制御ユニット200は、眼底EfのOCT画像を表示装置3に表示させる。
また、眼底カメラユニット2の制御として、演算制御ユニット200は、観察光源11、撮影光源15およびLED51、61の動作制御、LCD39の動作制御、合焦レンズ31、43の移動制御、反射棒67の移動制御、フォーカス光学系60の移動制御、光路長変更部41の移動制御、ガルバノスキャナ42の動作制御、前眼部カメラ300の動作制御などを行う。
また、OCTユニット100の制御として、演算制御ユニット200は、光源ユニット101の動作制御、光減衰器105の動作制御、偏波調整器106の動作制御、CCDイメージセンサ115の動作制御などを行う。
演算制御ユニット200は、たとえば、従来のコンピュータと同様に、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイスなどを含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、眼科観察装置1を制御するためのコンピュータプログラムが記憶されている。演算制御ユニット200は、各種の回路基板、たとえばOCT画像を形成するための回路基板を備えていてもよい。また、演算制御ユニット200は、キーボードやマウス等の操作デバイス(入力デバイス)や、LCD等の表示デバイスを備えていてもよい。
眼底カメラユニット2、表示装置3、OCTユニット100および演算制御ユニット200は、一体的に(つまり単一の筺体内に)構成されていてもよいし、2つ以上の筐体に別れて構成されていてもよい。
〔制御系〕
眼科観察装置1の制御系の構成について図3Aおよび図3Bを参照しつつ説明する。
(制御部)
眼科観察装置1の制御系は、制御部210を中心に構成される。制御部210は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、通信インターフェイス等を含んで構成される。制御部210には、主制御部211と、記憶部212と、光学系位置取得部213とが設けられている。
(主制御部)
主制御部211は前述の各種制御を行う。特に、主制御部211は、眼底カメラユニット2の光路長変更部41、ガルバノスキャナ42、合焦レンズ31およびフォーカス光学系60(撮影合焦駆動部500)、合焦レンズ43(OCT合焦駆動部600)、光学系全体(光学系駆動部700)などを制御する。さらに、主制御部211は、OCTユニット100の光源ユニット101、光減衰器105、偏波調整器106などを制御する。
撮影合焦駆動部500は、撮影光学系30の光軸方向に合焦レンズ31を移動させるとともに、照明光学系10の光軸方向にフォーカス光学系60を移動させる。それにより、撮影光学系300の合焦位置が変更される。撮影合焦駆動部500は、合焦レンズ31を移動させる機構と、フォーカス光学系60を移動させる機構とを個別に有していてよい。撮影合焦駆動部500は、フォーカス調整を行なうときなどに制御される。
OCT合焦駆動部600は、信号光路の光軸方向に合焦レンズ43を移動させる。それにより、信号光LSの合焦位置が変更される。信号光LSの合焦位置は、信号光LSのビームウェストの深さ位置(z位置)に相当する。
光学系駆動部700は、眼底カメラユニット2に設けられた光学系を3次元的に移動させる。この制御は、アライメントやトラッキングにおいて用いられる。トラッキングとは、被検眼Eの眼球運動に合わせて装置光学系を移動させるものである。トラッキングを行う場合には、事前にアライメントとフォーカス調整が実行される。トラッキングは、装置光学系の位置を眼球運動に追従させることにより、アライメントやピント、信号光LSのビームウェストの深さ位置などが合った好適な位置関係を維持する機能である。
また、この実施形態の前眼部カメラ300は眼底カメラユニット2の筐体に設けられているので、光学系駆動部700を制御することにより前眼部カメラ300を移動させることができる。また、2以上の前眼部カメラ300をそれぞれ独立に移動させることが可能な撮影移動部を設けることができる。具体的には、撮影移動部は、各前眼部カメラ300に対して設けた駆動機構(アクチュエータ、動力伝達機構等)を含む構成であってもよい。また、撮影移動部は、単一のアクチュエータにより発生された動力を前眼部カメラ300ごとに設けられた動力伝達機構によって伝達することにより、2以上の前眼部カメラ300を移動させるように構成されていてもよい。
主制御部211は、記憶部212にデータを書き込む処理や、記憶部212からデータを読み出す処理を行う。
(記憶部)
記憶部212は、各種のデータを記憶する。記憶部212に記憶されるデータとしては、たとえば、OCT画像の画像データ、眼底像の画像データ、被検眼情報などがある。被検眼情報は、患者IDや氏名などの被検者に関する情報や、左眼/右眼の識別情報などの被検眼に関する情報を含む。また、記憶部212には、眼科観察装置1を動作させるための各種プログラムやデータが記憶されている。
図示は省略するが、記憶部212には、OCT計測を行なう前に複数の予備動作を実行するための情報(動作条件情報)があらかじめ記憶されている。予備動作としては、アライメント、フォーカス調整(フォーカス粗調整)、小瞳孔判定、光路長差調整、偏光調整、フォーカス調整(フォーカス微調整)、再度のアライメント(および光路長差調整)などがある。複数の予備動作は、所定の順序で実行される。この実施形態では上記順序で実行されるものとする。ただし、予備動作の種別や順序はこれに限定されるものではなく、任意である。
ここで、フォーカス粗調整は、前述のスプリット指標を用いたフォーカス調整である。なお、あらかじめ取得された眼屈折力と合焦レンズ43の位置とを関連付けた情報と、被検眼の屈折力の測定値とに基づいて合焦レンズ43の位置を決定することにより、フォーカス粗調整を行なうこともできる。一方、フォーカス微調整は、OCT計測の干渉感度に基づいて行われるものである。たとえば、被検眼EのOCT計測を行なって干渉信号を取得して干渉強度(干渉感度)をモニタすることにより、干渉強度が最大となるような合焦レンズ43の位置を求め、その位置に合焦レンズ43を移動させることにより、フォーカス微調整を実行することができる。
動作条件情報には、一の予備動作から次の予備動作へ移行するための移行条件が含まれる。アライメントについては、後述のように、被検眼Eの正面画像(前眼部Eaの観察画像)を解析することで計測光学系の移動量が取得されるので、この移動量の閾値が移行条件として記録されている。フォーカス粗調整については、後述のように、被検眼Eの正面画像(眼底Efの観察画像)を解析することで合焦レンズ43の移動量が取得されるので、この移動量の閾値が移行条件として記録されている。光路長差調整については、後述のように、計測光学系による干渉光LCの検出結果を解析することで信号光路と参照光路との光路長差の変更量が取得されるので、この変更量の閾値が移行条件として記録されている。偏光調整については、後述のように、計測光学系による干渉光LCの検出結果を解析することで信号光LSおよび/または参照光LRの偏光状態の変更量が取得されるので、この変更量の閾値が移行条件として記録されている。小瞳孔判定については、ほぼ瞬時に実行される処理であり、また閾値判定も特に必要ないので、移行情報を設ける必要はない。ただし、小瞳孔判定は、被検眼Eの正面画像(前眼部像)の取得、判定処理、絞り19の制御などの段階的な動作を含むので、たとえば、途中の動作のいずれかの完了を移行条件とすることが可能である。フォーカス微調整については、たとえば、干渉強度の閾値を移行条件とすることが可能である。
図示は省略するが、記憶部212には収差情報があらかじめ記憶されている。収差情報には、各前眼部カメラ300について、それに搭載された光学系の影響により撮影画像に発生する歪曲収差に関する情報が記録されている。ここで、前眼部カメラ300に搭載された光学系には、たとえばレンズ等の歪曲収差を発生させる光学素子が含まれている。収差情報は、これらの光学素子が撮影画像に与える歪みを定量化したパラメータと言える。
収差情報の生成方法の例を説明する。前眼部カメラ300の器差(歪曲収差の差異)を考慮して各前眼部カメラ300について次のような測定が行われる。作業者は、所定の基準点を準備する。基準点とは、歪曲収差の検出に用いられる撮影ターゲットである。作業者は、基準点と前眼部カメラ300との相対位置を変更しつつ複数回の撮影を行う。それにより、異なる方向から撮影された基準点の複数の撮影画像が得られる。作業者は、取得された複数の撮影画像をコンピュータで解析することにより、この前眼部カメラ300の収差情報を生成する。なお、この解析処理を行うコンピュータは、データ処理部230であってもよいし、それ以外の任意のコンピュータ(製品出荷前の検査用コンピュータ、メンテナンス用コンピュータ等)のであってもよい。
収差情報を生成するための解析処理には、たとえば以下の工程が含まれる:
各撮影画像から基準点に相当する画像領域を抽出する抽出工程;
各撮影画像における基準点に相当する画像領域の分布状態(座標)を算出する分布状態算出工程;
得られた分布状態に基づいて歪曲収差を表すパラメータを算出する歪曲収差算出工程;
得られたパラメータに基づいて歪曲収差を補正するための係数を算出する補正係数算出工程。
なお、光学系が画像に与える歪曲収差に関連するパラメータとしては、主点距離、主点位置(縦方向、横方向)、レンズのディストーション(放射方向、接線方向)などがある。収差情報は、各前眼部カメラ300の識別情報と、これに対応する補正係数とを関連付けた情報(たとえばテーブル情報)として構成される。このようにして生成された収差情報は、主制御部211によって記憶部212に格納される。このような収差情報の生成およびこれに基づく収差補正は、カメラのキャリブレーション(Calibration)などと呼ばれる。
(光学系位置取得部)
光学系位置取得部213は、眼科観察装置1に搭載された検査用光学系の現在位置を取得する。検査用光学系とは、被検眼Eを光学的に検査するために用いられる光学系である。この実施形態の眼科観察装置1(眼底カメラとOCT装置の複合機)における検査用光学系は、被検眼の画像を得るための光学系である。検査用光学系は、OCT計測に供される「計測光学系」を含んでいる。
光学系位置取得部213は、たとえば、主制御部211による光学系駆動部700の移動制御の内容を表す情報を受けて、光学系駆動部700により移動される検査用光学系の現在位置を取得する。この処理の具体例を説明する。主制御部211は、所定のタイミング(装置起動時、患者情報入力時など)で光学系駆動部700を制御して、検査用光学系を所定の初期位置に移動させる。それ以降、主制御部211は、光学系駆動部700が制御される度に、その制御内容を記録する。それにより、制御内容の履歴が得られる。光学系位置取得部213は、この履歴を参照して現在までの制御内容を取得し、この制御内容に基づいて検査用光学系の現在位置を求める。
また、主制御部211が光学系駆動部700を制御する度にその制御内容を光学系位置取得部213に送信し、光学系位置取得部213が当該制御内容を受ける度に検査用光学系の現在位置を逐次求めるようにしてもよい。
他の構成例として、検査用光学系の位置を検知する位置センサを光学系位置取得部213に設けるようにしてもよい。
以上のようにして光学系位置取得部213により検査用光学系の現在位置が取得された場合、主制御部211は、取得された現在位置と、後述の解析部235により求められた被検眼Eの3次元位置とに基づいて、光学系駆動部700に検査用光学系を移動させることができる。具体的には、主制御部211は、光学系位置取得部213による取得結果によって検査用光学系の現在位置を認識し、解析部235による解析結果によって被検眼Eの3次元位置を認識する。そして、主制御部211は、被検眼Eの3次元位置に対する検査用光学系の位置が所定の位置関係になるように、検査用光学系の現在位置を起点としてその位置を変更する。この所定の位置関係は、x方向およびy方向の位置がそれぞれ一致し、かつ、z方向の距離が所定の作動距離になるようなものである。
(画像形成部)
画像形成部220は、CCDイメージセンサ115からの検出信号に基づいて、眼底Efの断層像の画像データを形成する。この処理には、従来のスペクトラルドメインタイプの光コヒーレンストモグラフィと同様に、ノイズ除去(ノイズ低減)、フィルタ処理、分散補償、FFT(Fast Fourier Transform)などの処理が含まれている。他のタイプのOCT装置の場合、画像形成部220は、そのタイプに応じた公知の処理を実行する。
画像形成部220は、たとえば、前述の回路基板を含んで構成される。なお、この明細書では、「画像データ」と、それに基づく「画像」とを同一視することがある。
(データ処理部)
データ処理部230は、被検眼Eの撮影やOCT計測により取得されたデータを処理する。たとえば、データ処理部230は、画像形成部220により形成された画像に対して各種の画像処理や解析処理を施す。たとえば、データ処理部230は、画像の輝度補正等の各種補正処理を実行する。また、データ処理部230は、眼底カメラユニット2により得られた画像(眼底像、前眼部像等)に対して各種の画像処理や解析処理を施す。
データ処理部230は、断層像の間の画素を補間する補間処理などの公知の画像処理を実行して、眼底Efの3次元画像の画像データを形成する。なお、3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータ或いはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、データ処理部230は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施して、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成する。表示部240A等の表示デバイスには、この擬似的な3次元画像が表示される。
また、3次元画像の画像データとして、複数の断層像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数の走査線に沿って得られた複数の断層像を、走査線の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断層像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。
データ処理部230は、光学系移動量取得部231と、レンズ移動量取得部232と、光路長差変更量取得部233と、偏光状態変更量取得部234とを有する。なお、光学系移動量取得部231はアライメントに関し、レンズ移動量取得部232はフォーカス粗調整に関し、光路長差変更量取得部233は光路長差調整に関し、偏光状態変更量取得部234は偏光状態調整に関する。これら機能部位の全てがデータ処理部230に設けられている必要はなく、実施形態に係る処理の実行対象となる予備動作に関する機能部位が設けられていれば十分である。また、これら以外の予備動作について実施形態に係る処理を実行する場合には、その予備動作に関する機能部位が設けられる。
(光学系移動量取得部)
光学系移動量取得部231について説明する。アライメントを行なうときに、眼科観察装置1は、アライメント指標が投影されている状態の被検眼E(前眼部Ea)を撮影して正面画像を取得する。この正面画像は、所定のフレームレートの動画像である。光学系移動量取得部231は、この正面画像(のフレーム)を解析することで、適正なアライメント状態を達成するために必要な計測光学系の移動量を取得する。
なお、光学系移動量取得部231により取得される情報は、計測光学系の移動量そのものには限定されない。たとえば、光学系駆動部700の制御内容(送信パルス数など)や、この移動量を取得する処理の途中で得られる情報(アライメントのずれ量など)のように、計測光学系の移動量と実質的に同値な(等価な)情報であればよい。
光学系移動量取得部231が実行する処理の例を説明する。光学系移動量取得部231に入力される正面画像には、アライメント指標が描出されている。アライメント指標の描出態様の例を図5Aおよび図5Bに示す。図5Aおよび図5Bにおいて、被検眼Eの像は省略されている。
図5Aに示す被検眼Eの正面画像G1には、アライメント指標の2つの像(アライメント指標像)A1およびA2が輝点として描出されている。また、主制御部211は、正面画像G1の中心位置に、アライメントの目標位置を示す括弧形状のターゲット像Tを重畳表示させる。
被検眼Eに対するxy方向のアライメントがずれている場合、アライメント指標像A1およびA2は、ターゲット像Tから離れた位置に描出される。また、z方向のアライメントがずれている場合、2つのアライメント指標像A1およびA2は、異なる位置に描出される。xyz方向全てのアライメントが適正である場合、図5Bに示すように、アライメント指標像A1およびA2は、互いに重なった状態でターゲット像Tの内部に描出される。
ターゲット像Tに対するアライメント指標像A1およびA2の変位(変位量、変位方向)は、xy方向におけるアライメントのずれ(ずれ量、ずれ方向)を示す。2つのアライメント指標像A1およびA2の変位(変位量、変位方向)は、z方向におけるアライメントのずれ(ずれ量、ずれ方向)を示す。
光学系移動量取得部231は、正面画像G1を解析することでアライメントのずれを求め、このずれを打ち消すような光学系の移動量を取得する。この処理はたとえば次のようにして実行される。まず、光学系移動量取得部231は、正面画像G1の画素情報(輝度値等)に基づいて、アライメント指標像A1およびA2に相当する画像領域を特定する。次に、光学系移動量取得部231は、特定された各画像領域の特徴位置(中心、重心等)を特定する。続いて、光学系移動量取得部231は、ターゲット像Tの中心位置に対する各画像領域の特徴位置の変位を求める。そして、光学系移動量取得部231は、求められた変位に基づいてアライメントのずれを求め、このアライメントのずれを打ち消すような光学系の移動量を取得する。なお、光学系移動量取得部231は、正面画像の座標系で定義されるアライメント指標像の変位と、実空間の座標系で定義されるアライメントのずれとを対応付けた情報をあらかじめ記憶しておき、この対応情報を参照してアライメントのずれを求めることができる。
(レンズ移動量取得部)
レンズ移動量取得部232について説明する。フォーカス粗調整を行なうときに、眼科観察装置1は、スプリット指標(合焦指標)が投影されている状態の眼底Efを撮影して正面画像を取得する。この正面画像は、所定のフレームレートの動画像である。レンズ移動量取得部232は、この正面画像(のフレーム)を解析することで、適正なフォーカス状態を達成するために必要な合焦レンズ43の移動量を取得する。
なお、レンズ移動量取得部232により取得される情報は、合焦レンズ43の移動量そのものには限定されない。たとえば、OCT合焦駆動部600の制御内容(送信パルス数など)や、この移動量を取得する処理の途中で得られる情報(フォーカスのずれ量など)のように、合焦レンズ43の移動量と実質的に同値な情報であればよい。
レンズ移動量取得部232が実行する処理の例を説明する。レンズ移動量取得部232に入力される正面画像には、スプリット指標が描出されている。スプリット指標の描出態様の例を図6Aおよび図6Bに示す。図6Aおよび図6Bにおいて、眼底Efの像は省略されている。
図6Aに示す眼底Efの正面画像G2には反射棒67の影が映り込んでおり、この影の領域には、スプリット指標の2つの像(スプリット指標像)B1およびB2が輝線として描出される。各スプリット指標像B1およびB2の形状は略長方形状である。
フォーカス位置が(z方向に)ずれている場合、スプリット指標像B1およびB2は、横方向に変位して描出される。その変位方向はフォーカス位置のずれ方向(+z方向または−z方向)を示し、変位量はフォーカス位置のずれの大きさを示す。フォーカス位置が適正である場合、図6Bに示すように、スプリット指標像B1およびB2は縦方向に揃った位置に描出される。
レンズ移動量取得部232は、正面画像G2を解析することでフォーカス位置のずれを求め、このずれを打ち消すような合焦レンズ43の移動量を取得する。この処理はたとえば次のようにして実行される。まず、レンズ移動量取得部232は、正面画像G2の画素情報(輝度値等)に基づいて、スプリット指標像B1およびB2に相当する画像領域を特定する。次に、レンズ移動量取得部232は、特定された各画像領域の特徴位置(中心、重心、軸線等)を特定する。続いて、レンズ移動量取得部232は、スプリット指標像B1およびB2に相当する2つの画像領域の特徴位置の、横方向における変位を求める。そして、レンズ移動量取得部232は、求められた変位に基づいてフォーカス位置のずれを求め、このフォーカス位置のずれを打ち消すような合焦レンズ43の移動量を取得する。ここで、レンズ移動量取得部232は、正面画像の座標系で定義されるスプリット指標像の変位と、実空間の座標系で定義されるフォーカス位置のずれとを対応付けた情報をあらかじめ記憶しておき、この対応情報を参照してフォーカス位置のずれを求めることができる。
また、レンズ移動量取得部232は、撮影光学系30の合焦レンズ31の移動量も取得する。この処理は、たとえば、上記と同様の対応情報を参照することにより、または2つの合焦レンズ31おおよび43の間のフォーカス位置を対応付ける情報を参照することにより、実行される。
(光路長差変更量取得部)
光路長差変更量取得部233について説明する。信号光路と参照光路との間の光路長差調整を行なうとき、眼科観察装置1は、計測光学系を制御して眼底EfのOCT計測を実行する。このOCT計測は、たとえば、眼底Efの同じ断面を所定の周波数で反復スキャンすることにより行われる。光路長差変更量取得部233は、このOCT計測により得られた干渉光LCの検出結果を解析することで、眼底Efの所望の深さ位置(z位置)の画像を取得するための光路長差の変更量を取得する。
なお、光路長差変更量取得部233により取得される情報は、光路長差の変更量そのものには限定されない。たとえば、光路長変更部41の制御内容(送信パルス数など)や、この変更量を取得する処理の途中で得られる情報(フレーム内における画像のz方向の位置のずれ量など)のように、光路長差の変更量と実質的に同値な情報であればよい。
光路長差変更量取得部233が実行する処理の例を説明する。光路長差変更量取得部233には、たとえば画像形成部220により形成された、スキャン断面の断層像が入力される。光路長差変更量取得部233は、この断層像の画素情報(輝度値等)を解析することで、フレーム内における眼底Efの所定部位のz方向の位置を求める。この処理の例として、光路長差変更量取得部233は、眼底Efの表面(網膜と硝子体との境界)に相当する画像領域を特定し、この画像領域の特徴部位(中心窩、視神経乳頭の開口など)のz座標を求める。次に、光路長差変更量取得部233は、あらかじめ決められた基準z座標(フレームにおけるz方向の中心位置)に対する特徴部位のz座標の変位を求め、この変位を打ち消すような光路長差の変更量を取得する。ここで、光路長差変更量取得部233は、断層像の座標系で定義されるz方向の変位と、実空間の座標系で定義される光路長差のずれとを対応付けた情報をあらかじめ記憶しておき、この対応情報を参照して光路長差のずれを求めることができる。
(偏光状態変更量取得部)
偏光状態変更量取得部234について説明する。信号光LSおよび/または参照光LRの偏光状態の調整を行なうとき、眼科観察装置1は、信号光LSおよび参照光LRのそれぞれの偏光状態(偏光方向)の検出を行なう。この検出処理は、たとえば、信号光路を遮断して参照光LRの偏光状態を検出する処理と、参照光路を遮断して信号光LSの偏光状態を検出する処理とを含む。信号光路の遮断は、たとえばガルバノスキャナ42を制御することで行われる。参照光路の遮断は、たとえば光減衰器105を制御することで行われる。
図示は省略するが、偏光状態を検出するための検出光学系を設けることができる。この検出光学系は、たとえば、図2に示すファイバカプラ109の出射端側に一端が接続された光ファイバと、この光ファイバの他端の後段に設けられた偏光板と、この偏光板の後段に設けられた検出素子(フォトダイオード等)とを含む。偏光板は、特定方向に偏光した光のみを透過させる偏光子であり、図示しないアクチュエータ(パルスモータ等)により回転される。偏光板の回転位置を変えることにより、検出素子により検出される光の強度が変化する。検出される光の強度が最大となる偏光方向が、その光の偏光方向となる。なお、光ファイバ110の出射端111とCCDイメージセンサ115との間の任意の位置に、上記と同様の回転可能な偏光子を設けるようにしてもよい。
偏光状態変更量取得部234には、上記のようにして取得された信号光LSの偏光方向を示す情報と、参照光LRの偏光方向を示す情報とが入力される。偏光状態変更量取得部234は、信号光LSの偏光方向と参照光LRの偏光方向との変位を求める。この変位は、回転方向の変位(角度)である。さらに、偏光状態変更量取得部234は、この変位を打ち消すような偏光状態の変更量を取得する。
(解析部)
解析部235は、2以上の前眼部カメラ300により実質的に同時に得られた2以上の撮影画像を解析することで、被検眼Eの3次元位置を求める。この処理を実行するための構成の一例として、解析部235には、画像補正部2351と、特徴点特定部2352と、3次元位置算出部2353が設けられている。
(画像補正部)
画像補正部2351は、前眼部カメラ300により得られた各撮影画像の歪みを、記憶部212に記憶されている収差情報に基づいて補正する。この処理は、たとえば、歪曲収差を補正するための補正係数に基づく公知の画像処理技術によって実行される。なお、前眼部カメラ300の光学系が撮影画像に与える歪曲収差が十分に小さい場合などには、収差情報および画像補正部2351を設けなくてもよい。
(特徴点特定部)
特徴点特定部2352は、(画像補正部2351により歪曲収差が補正された)各撮影画像を解析することで、前眼部Eaの所定の特徴点に相当する画像位置(特徴位置と呼ぶ)を特定する。以下、特徴点として瞳孔中心が用いられる場合について説明する。
まず、特徴点特定部2352は、撮影画像の画素値(輝度値など)の分布に基づいて、被検眼Eの瞳孔に相当する画像領域(瞳孔領域)を特定する。一般に瞳孔は他の部位よりも低い輝度で描画されるので、低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定することができる。このとき、瞳孔の形状を考慮して瞳孔領域を特定するようにしてもよい。つまり、略円形かつ低輝度の画像領域を探索することによって瞳孔領域を特定するように構成することができる。
次に、特徴点特定部2352は、特定された瞳孔領域の中心位置を特定する。上記のように瞳孔は略円形であるので、瞳孔領域の輪郭を特定し、この輪郭(の近似円または近似楕円)の中心位置を特定し、これを瞳孔中心とすることができる。また、瞳孔領域の重心を求め、この重心位置を瞳孔中心としてもよい。
なお、他の特徴点に対応する特徴位置を特定する場合であっても、上記と同様に撮影画像の画素値の分布に基づいて当該特徴位置を特定することが可能である。
(3次元位置算出部)
3次元位置算出部2353は、2以上の前眼部カメラ300の位置と、特徴点特定部2352により特定された2以上の撮影画像中の特徴位置とに基づいて、被検眼Eの特徴点の3次元位置を算出する。この処理について図7Aおよび図7Bを参照しつつ説明する。
図7Aは、被検眼Eと前眼部カメラ300Aおよび300Bとの間の位置関係を示す上面図である。図7Bは、被検眼Eと前眼部カメラ300Aおよび300Bとの間の位置関係を示す側面図である。2つの前眼部カメラ300Aおよび300Bの間の距離(基線長)を「B」で表す。2つの前眼部カメラ300Aおよび300Bの基線と、被検眼Eの特徴点Pとの間の距離(撮影距離)を「H」で表す。各前眼部カメラ300Aおよび300Bと、その画面平面との間の距離(画面距離)を「f」で表す。
このような配置状態において、前眼部カメラ300Aおよび300Bによる撮影画像の分解能は次式で表される。ここで、Δpは画素分解能を表す。
xy方向の分解能(平面分解能):Δxy=H×Δp/f
z方向の分解能(奥行き分解能):Δz=H×H×Δp/(B×f)
3次元位置算出部2353は、2つの前眼部カメラ300Aおよび300Bの位置(既知である)と、2つの撮影画像において特徴点Pに相当する特徴位置とに対して、図7Aおよび図7Bに示す配置関係を考慮した公知の三角法を適用することにより、特徴点Pの3次元位置、つまり被検眼Eの3次元位置を算出する。
3次元位置算出部2353により算出された被検眼Eの3次元位置は制御部210に送られる。制御部210は、この3次元位置の算出結果に基づいて、検査用光学系の光軸を被検眼Eの軸に合わせるように、かつ、被検眼Eに対する検査用光学系の距離が所定の作動距離になるように光学系駆動部700を制御する。ここで、作動距離とは、ワーキングディスタンスとも呼ばれる既定値であり、検査用光学系を用いた検査時における被検眼Eと検査用光学系との間の距離を意味する。
また、前眼部カメラ300が前眼部Eaを異なる方向から並行して動画撮影する場合、たとえば次のような処理(1)および(2)を行うことにより、被検眼Eの動きに対する検査用光学系のトラッキングを実行することが可能である。
(1)解析部235が、2以上の前眼部カメラ300による動画撮影において実質的に同時に得られた2以上のフレームを逐次に解析することで、被検眼Eの3次元位置を逐次に求める。
(2)制御部210が、解析部235により逐次に求められる被検眼Eの3次元位置に基づき光学系駆動部700を逐次に制御することにより、検査用光学系の位置を被検眼Eの動きに追従させる。
以上のように機能するデータ処理部230は、たとえば、前述のマイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ、回路基板等を含んで構成される。ハードディスクドライブ等の記憶装置には、上記機能をマイクロプロセッサに実行させるコンピュータプログラムが予め格納されている。
(ユーザインターフェイス)
ユーザインターフェイス240には、表示部240Aと操作部240Bとが含まれる。表示部240Aは、前述した演算制御ユニット200の表示デバイスや表示装置3を含んで構成される。操作部240Bは、前述した演算制御ユニット200の操作デバイスを含んで構成される。操作部240Bには、眼科観察装置1の筐体や外部に設けられた各種のボタンやキーが含まれていてもよい。たとえば眼底カメラユニット2が従来の眼底カメラと同様の筺体を有する場合、操作部240Bは、この筺体に設けられたジョイスティックや操作パネル等を含んでいてもよい。また、表示部240Aは、眼底カメラユニット2の筺体に設けられたタッチパネルなどの各種表示デバイスを含んでいてもよい。
なお、表示部240Aと操作部240Bは、それぞれ個別のデバイスとして構成される必要はない。たとえばタッチパネルのように、表示機能と操作機能とが一体化されたデバイスを用いることも可能である。その場合、操作部240Bは、このタッチパネルとコンピュータプログラムとを含んで構成される。操作部240Bに対する操作内容は、電気信号として制御部210に入力される。また、表示部240Aに表示されたグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)と、操作部240Bとを用いて、操作や情報入力を行うようにしてもよい。
〔信号光の走査およびOCT画像について〕
ここで、信号光LSの走査およびOCT画像について説明しておく。
眼科観察装置1による信号光LSの走査態様としては、たとえば、水平スキャン、垂直スキャン、十字スキャン、放射スキャン、円スキャン、同心円スキャン、螺旋(渦巻)スキャンなどがある。これらの走査態様は、眼底の観察部位、解析対象(網膜厚など)、走査に要する時間、走査の精密さなどを考慮して適宜に選択的に使用される。
水平スキャンは、信号光LSを水平方向(x方向)に走査させるものである。水平スキャンには、垂直方向(y方向)に配列された複数の水平方向に延びる走査線に沿って信号光LSを走査させる態様も含まれる。この態様においては、走査線の間隔を任意に設定することが可能である。また、隣接する走査線の間隔を十分に狭くすることにより、前述の3次元画像を形成することができる(3次元スキャン)。垂直スキャンについても同様である。
十字スキャンは、互いに直交する2本の直線状の軌跡(直線軌跡)からなる十字型の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。放射スキャンは、所定の角度を介して配列された複数の直線軌跡からなる放射状の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。なお、十字スキャンは放射スキャンの一例である。
円スキャンは、円形状の軌跡に沿って信号光LSを走査させるものである。同心円スキャンは、所定の中心位置の周りに同心円状に配列された複数の円形状の軌跡に沿って信号光LSを走査させるものである。円スキャンは同心円スキャンの一例である。螺旋スキャンは、回転半径を次第に小さく(または大きく)させながら螺旋状(渦巻状)の軌跡に沿って信号光LSを走査するものである。
ガルバノスキャナ42は、互いに直交する方向に信号光LSを走査するように構成されているので、信号光LSをx方向およびy方向にそれぞれ独立に走査できる。さらに、ガルバノスキャナ42に含まれる2つのガルバノミラーの向きを同時に制御することで、xy面上の任意の軌跡に沿って信号光LSを走査することが可能である。それにより、上記のような各種の走査態様を実現できる。
上記のような態様で信号光LSを走査することにより、走査線(走査軌跡)に沿う方向と眼底深度方向(z方向)とにより張られる面における断層像を取得することができる。また、特に走査線の間隔が狭い場合には、前述の3次元画像を取得することができる。
上記のような信号光LSの走査対象となる眼底Ef上の領域、つまりOCT計測の対象となる眼底Ef上の領域を走査領域と呼ぶ。3次元スキャンにおける走査領域は、複数の水平スキャンが配列された矩形の領域である。また、同心円スキャンにおける走査領域は、最大径の円スキャンの軌跡により囲まれる円盤状の領域である。また、放射スキャンにおける走査領域は、各スキャンラインの両端位置を結んだ円盤状(或いは多角形状)の領域である。
[動作]
眼科観察装置1の動作について説明する。以下、図8および図9に示す2つの動作例を説明する。
(第1動作例:図8)
(S1:前眼部像の取得を開始)
まず、予備動作を開始させるための所定の操作を受けて、主制御部211は、観察光源11を点灯する。それにより、被検眼Eの前眼部Eaの正面画像(近赤外動画像)の取得が開始される。この正面画像は、観察光源11が消灯されるまでリアルタイムで得られる。主制御部211は、この正面画像を表示部240Aにリアルタイムで動画表示させる。
この段階で、またはステップ8以前の任意のタイミングで、主制御部211は、2以上の前眼部カメラ300を制御して前眼部Eaの撮影を開始させる。
(S2:アライメント)
主制御部211は、アライメント光学系50を制御して、被検眼Eにアライメント指標を投影させる。このとき、被検眼Eには、LCD39による固視標も投影される。光学系移動量取得部231は、所定の時間間隔で取得されるフレーム(たとえば全てのフレーム)をそれぞれ解析し、計測光学系の移動量を取得する。主制御部211は、光学系駆動部700を制御し、計測光学系を当該移動量だけ移動させる。主制御部211は、この処理を繰り返し実行させる。
(S3:フォーカス粗調整)
アライメントが完了したら、主制御部211は、フォーカス粗調整を開始する。具体的には、主制御部211は、眼底Efの正面画像の取得を開始させ、フォーカス光学系60を制御して眼底Efにスプリット指標を投影させる。レンズ移動量取得部232は、所定の時間間隔で取得されるフレーム(たとえば全てのフレーム)をそれぞれ解析し、合焦レンズ31および合焦レンズ43の移動量を取得する。主制御部211は、撮影合焦駆動部500を制御して合焦レンズ31を当該移動量だけ移動させるとともに、OCT合焦駆動部600を制御して合焦レンズ43を当該移動量だけ移動させる。主制御部211は、この処理を繰り返し実行させる。
(S4:小瞳孔判定)
フォーカス粗調整が完了したら、主制御部211は、小瞳孔判定を実行させる。小瞳孔判定は、たとえば、被検眼Eの正面画像(前眼部像)の取得、判定処理、絞り19の制御を含む。なお、解析対象の正面画像は、ステップ1等で取得されたものでもよい。
(S5:光路長差調整)
小瞳孔判定が終了したら、主制御部211は、光路長差調整を開始させる。具体的には、主制御部211は、計測光学系を制御して干渉光LCを検出させる。光路長差変更量取得部233は、所定の時間間隔で収集される干渉光LC(たとえば1フレーム相当分)をそれぞれ解析することで、信号光路と参照光路との間の光路長差の変更量を取得する。主制御部211は、光路長変更部41を制御し、信号光路の光路長を当該変更量だけ変化させる。それにより、信号光路と参照光路との間の光路長差が当該変更量だけ変化する。主制御部211は、この処理を繰り返し実行させる。
(S6:偏光調整)
光路長差調整が完了したら、主制御部211は、偏光調整を開始する。具体的には、主制御部211は、計測光学系および検出光学系を制御し、信号光LSの偏光方向と、参照光LRの偏光方向とを検出させる。偏光状態変更量取得部234は、所定の時間間隔で収集される干渉光LC(たとえば1フレーム相当分またはAライン相当分)をそれぞれ解析することで、偏光方向の変更量を取得する。主制御部211は、偏波調整器106を制御し、参照光LRの偏光方向を当該変更量だけ変化させる。それにより、信号光LSと参照光LRとの間の相対的な偏光方向が当該変更量だけ変化する。主制御部211は、この処理を繰り返し実行させる。
(S7:フォーカス微調整)
偏光調整が完了したら、主制御部211は、フォーカス微調整を開始する。フォーカス微調整は、たとえば、被検眼EのOCT計測を行なって干渉信号を取得して干渉強度(干渉感度)をモニタすることにより、干渉強度が最大となるような合焦レンズ43の位置を求め、その位置に合焦レンズ43を移動させることにより実行される。
(S8:前眼部カメラにより撮影画像を取得)
前述のように、この段階にて、またはそれ以前の段階において、2以上の前眼部カメラ300による前眼部Eaの撮影が開始される。この撮影は、たとえば、前眼部Eaを撮影対象とする動画撮影である。各前眼部カメラ300Aおよび300Bは所定のフレームレートで動画撮影を行う。ここで、前眼部カメラ300Aおよび300Bによる撮影タイミングが主制御部211によって同期されていてもよい。各前眼部カメラ300Aおよび300Bは、取得されたフレームをリアルタイムで順次に主制御部211に送る。主制御部211は、双方の前眼部カメラ300Aおよび300Bにより得られたフレームを、撮影タイミングに応じて対応付ける。つまり、主制御部211は、双方の前眼部カメラ300Aおよび300Bにより実質的に同時に取得されたフレーム同士を対応付ける。この対応付けは、たとえば、上記の同期制御に基づいて、または、前眼部カメラ300Aおよび300Bからのフレームの入力タイミングに基づいて実行される。主制御部211は、対応付けられた一対のフレームを解析部235に送る。
(S9:被検眼の位置の取得)
画像補正部2351は、主制御部211から送られた各フレームの歪みを、記憶部212に記憶されている収差情報に基づいて補正する。この補正処理は前述の要領で実行される。歪みが補正された一対のフレームは、特徴点特定部2352に送られる。
特徴点特定部2352は、画像補正部2351から送られた一対のフレームを解析することで、前眼部Eaの瞳孔中心に相当する当該フレーム中の特徴位置を特定する。
なお、瞳孔中心に相当する特徴位置の特定に失敗する場合も考えられる。その場合、前眼部カメラ300を支持部440から離れる方向および/または支持部440の外側方向に移動させて、前眼部Eaの撮影を再度行うことができる。また、前眼部Eaに相当する画像がフレームの端部に位置している場合についても、前眼部Eaがフレームの中央領域に配置されるように前眼部カメラ300を移動させることが可能である。
3次元位置算出部2353は、前眼部カメラ300Aおよび300Bの位置と、ステップ5で特定された瞳孔中心の画像位置(特徴位置)とに基づいて、被検眼Eの瞳孔中心の3次元位置を算出する。この処理は前述の要領で実行される。算出された3次元位置のxyz座標系における座標を(x,y,z)とする。
(S10:光学系の移動)
主制御部211は、ステップ9で取得された瞳孔中心の3次元位置に基づき光学系駆動部700を制御することで、OCT計測用の計測光学系の少なくとも一部を含む光学系を移動する。この処理により、計測光学系の光軸が被検眼Eの軸に一致され、被検眼Eに対する検査用光学系の距離が所定の作動距離に一致される。すなわち、光学系は次のような位置に移動される:xy方向については、光学系の光軸のxy座標が(x,y)となるように、光学系が移動される;z方向については、対物レンズ22の面頂のz座標が、被検眼E(角膜前面等)から所定の作動距離WDだけ−z方向に位置するように、光学系が移動される。
(S11:光路長変更)
主制御部211は、ステップ10における光学系の移動内容に基づき光路長変更部41を制御することで、信号光LSの光路長を変更する。光学系の移動内容には、z方向への移動内容が含まれる。z方向への移動内容には、移動方向および移動距離が含まれる。移動方向は、+z方向または−z方向を示す。移動距離は、実空間における距離Dzを示す。
移動内容は、ステップ10における主制御部211による制御内容に基づき取得される。たとえば、主制御部211から光学系駆動部700に送られた制御信号に基づき移動内容を取得することができる。また、この制御信号を生成するための処理において得られる情報に基づき移動内容を取得することができる。また、光学系位置取得部213により得られる光学系の位置情報に基づき移動内容を取得することができる。
主制御部211は、取得された移動内容に基づいて、信号光路の光路長の変更内容、すなわち光路長変更部41の制御内容を取得する。この処理は、たとえば、あらかじめ作成されて記憶部212に記憶された、光学系の移動内容と光路長の変更内容とが対応付けられた対応情報を参照して実行される。光路長の変更内容には、光路長の変更方向(増加または減少)と、変更距離とが含まれる。この変更距離は、たとえば光学的距離として設定される。対応情報は、たとえば、光軸方向(±z方向)への移動距離と、これに実質的に等しい光学的距離とを対応付けるものとして作成される。この「実質的に」とは、許容可能な誤差を含むことを意味する。なお、光学的距離は、実空間における距離に屈折率を乗算した物理量である。この屈折率としては、たとえばグルストランド模型眼の値(1.38)など、標準的な値が用いられる。具体例として、対応情報は、OCT画像のフレームのz方向の範囲が組織内(実空間)において2.3mmである場合、光学系を実空間において2.3×1.38mmだけ移動させると、フレームに描出される断層像が組織内において2.3mm移動されるように、光学系の移動距離と、光学的距離(光路長の変更距離)とを対応付けている。
主制御部211は、光学系の移動内容および対応情報に基づき取得された制御内容に基づいて光路長変更部41を制御することで、光軸方向への移動距離と実質的に等しい光学的距離だけ信号光路の光路長を変更する。このとき、光路長の変更方向は、信号光路の光路長と参照光路の光路長との関係が当該変更によって変化しない方向である。たとえば、光学系が+z方向に移動された場合、被検眼Eと光学系(対物レンズ22の前面)との間の距離が短くなるので、光路長の変更方向は光路長を増加させる方向となる。逆に、光学系が−z方向に移動された場合、被検眼Eと光学系との間の距離が長くなるので、光路長の変更方向は光路長を減少させる方向となる。
なお、参照光路の光路長を変更する構成が適用される場合については、光学系が+z方向に移動された場合の光路長の変更方向は光路長を減少させる方向であり、光学系が−z方向に移動された場合の光路長の変更方向は光路長を増加させる方向である。また、信号光路および参照光路の双方の光路長を変更する場合、信号光路の光路長と参照光路の光路長との関係が当該変更によって変化しないように、信号光路の光路長の変更方向と、参照光路の光路長の変更方向とが、それぞれ任意に設定される。
(S12:OCT計測(本計測))
光学系の移動(S10)および光路長変更(S11)が完了したら予備動作は終了となる。主制御部211は、所定のトリガを受けて、眼底EfのOCT計測(本計測)を実行させる。このトリガとしては、光路長変更の完了、光学系の移動および光路長変更の終了の指示操作、本計測の開始操作などがある。以上で、本動作例の説明を終了する。
(第2動作例:図9)
第1動作例では、光学系の移動(S10)を自動で行っている。この動作例では、光学系の移動をユーザが行う場合について説明する。この動作例が適用される場合(つまり第1動作例が適用されない場合)、眼科観察装置1は前眼部カメラ300や解析部235を有している必要はない。
この動作例において、ステップ1〜ステップ7は第1動作例と同様に実行される。また、ステップ20以前の任意のタイミングで、主制御部211は、眼科観察装置1の操作(特にステップ20の「光学系の移動操作」)を行うための操作画面を、表示部240Aに表示させる。なお、レバー等を用いて光学系の移動操作を行うことも可能であり、その場合には上記操作画面を表示させる必要はない。
(S20:光学系の移動操作)
ステップ7のフォーカス微調整が完了したら、ユーザは光学系の移動操作を行う。この操作は、被検眼Eに対する光学系の位置を手動で調整するものである。この処理は、たとえば、ステップ1で取得が開始された前眼部像の表示画像を参照しつつ行われる。また、被検眼Eに対する光学系の位置ずれを検知する機能を眼科観察装置1が有する場合には、検知された位置ずれを報知(表示、音声出力等)することが可能であり、ユーザはこの報知情報を参照しつつ操作を行うことが可能である。この位置ずれ検知機能としては、アライメント指標に基づくものや、前眼部カメラ300を用いるものがある。
このステップの操作は、たとえば、光学系の移動操作を行うためのインターフェイスを用いて行われる。このインターフェイスの例として、タッチパネルディスプレイに表示されるGUIがある。このGUIには、光学系の移動操作を受け付けるソフトウェアキーが少なくとも設けられている。ユーザは、このソフトウェアキーを用いて所望の操作を行う。この操作は、少なくともz方向に光学系を移動させるための操作を含み、たとえば光学系を3次元的に移動させるための操作を含む。
インターフェイスの他の例としてハードウェアキー(操作部240B)がある。このハードウェアキーは、たとえば、レバー、ボタン、ノブなどである。
(S21:光路長変更)
主制御部211は、ステップ20においてインターフェイスを用いて行われた操作の内容に基づき光路長変更部41を制御することで、信号光LSの光路長を変更する。第1動作例における光学系の移動内容と同様に、この操作内容には、z方向への移動内容が含まれる。また、操作内容に基づく光路長変更制御は、たとえば第1動作例と同様に対応情報を参照して実行される。
(S22:OCT計測(本計測))
光学系の移動操作(S20)および光路長変更(S21)が完了したら予備動作は終了となる。主制御部211は、所定のトリガを受けて、眼底EfのOCT計測(本計測)を実行させる。以上で、本動作例の説明を終了する。
(表示画面の例)
この実施形態で用いられる表示画面の例を説明する。
第1動作例(図8)のステップ8の段階における表示画面の例を図10に示す。この表示画面1000には、各種のソフトウェアキーや表示領域が設けられている。右眼ボタン1001Rは、被検眼Eが右眼である場合に明示される。左眼ボタン1001Lは、被検眼Eが左眼である場合に明示される。
表示画面1000の上部に左右方向に配列されたボタン1002〜1005は、表示画面1000を用いたワークフローのフェーズに応じて配列されており、現在のフェーズに対応するボタンが強調表示されるようになっている。所望のフェーズに移行するために、ユーザは、対応するボタンを操作する。なお、本例では、現在のフェーズより先のフェーズに移行するためにボタン1002〜1005を操作することはできない。メニューボタン1002は、OCT計測における信号光LSの走査態様を設定するための画面(図示せず)に移行するためのソフトウェアキーである。アライメントボタン1003は、アライメントを行うための画面(図示せず)に移行するためのソフトウェアキーである。キャプチャボタン1004は、画像のキャプチャを行うための画面(図10に示す画面)に移行するためのソフトウェアキーである。画像のキャプチャモードを切り替えるためのソフトウェアキーである。ビューボタン1005は、走査態様の設定、アライメントおよびキャプチャの終了後に表示される画面が表示されていることを示すソフトウェアキーである。この画面には、前段階のフェーズで取得・設定された内容、被検眼Eの現在の画像などが呈示される。
キャプチャボタン1006は、キャプチャの開始/停止を指示するためのソフトウェアキーである。図10に示すように文字列「キャプチャ停止」が呈示されたキャプチャボタン1006を操作(タッチ操作、クリック操作等)すると、オート撮影画像表示モードからライブ画像表示モードに切り替えられる。ライブ画像表示モードでは、眼底像や断層像のリアルタイム動画像が呈示される。
患者ID表示部1010には、当該被検者の患者IDが呈示される。眼底像表示部1020には、リアルタイムで取得されている眼底Efの動画像が呈示される。また、眼底像表示部1020には、フォーカス状態を示すスプリット指標1021も呈示される。
前眼部像表示部1030には、前眼部カメラ300の1つによりリアルタイムで取得されている前眼部Eaの動画像や、任意のタイミングで取得された前眼部Eaの静止画像が呈示される。
OCT画像表示部1040には、眼底Efの断層像が呈示される。この断層像は、眼底Efの同一断面を反復してスキャンして得られる動画像、または任意のタイミングで取得された静止画像である。OCT画像表示部1040の横位置には、OCT計測用の光学系の光路長を調整・維持するための目標位置を示す計測深度マーカ1041が呈示されている。被検眼Eに対する光学系の位置がアライメントなどにより変化すると、OCT画像表示部1040に表示される組織の深さ位置(z位置)が変化する。光路長の調整や維持は、あらかじめ設定された対象組織を計測深度マーカ1041の位置に描画させるようにして実行される。
画質呈示部1050は、OCT画像表示部1040に表示されている断層像の画質を呈示する。画質呈示部1050には、画質を直感的に呈示するインディケータと、画質の数値とが呈示される。
タイマー呈示部1060は、所定時間を計時するタイマーの経過時間を示すインディケータである。
主制御部211は、所定のタイミングで計時を開始する。この計時開始タイミングは、たとえば、ステップ7に示すフォーカス微調整が完了したタイミングである。解析部235は、前眼部カメラ300により取得される撮影画像に基づいて被検眼Eの位置をリアルタイムで監視し(ステップ9)、被検眼Eの位置の変化に応じて光学系を移動させる(ステップ10:オートアライメント)。さらに、主制御部211は、オートアライメントにおける光学系の移動内容に基づき光路長変更部41を制御することで、信号光LSの光路長を変更する。以上の処理は、タイマーが所定時間の計時を完了するまで継続される。所定時間の計時が完了すると、主制御部211は、OCT計測(本計測)を実行させる(ステップ11)。
第2動作例(図9)で用いられる表示画面(操作画面)の例を図11に示す。この表示画面1000は、図10に示す表示画面1000においてキャプチャボタン1006が操作されたことに対応する画面展開によって呈示される。
眼底像表示部1020の枠の近傍における上下左右の各中心位置には、撮影位置を2次元的に移動させるためのボタン1022、1023、1024および1025がそれぞれ設けられている。これらボタン1022、1023、1024および1025が操作されると、主制御部211は、光学系駆動部700を制御して光学系を上下左右方向(xy方向)に移動させる。さらに、眼底像表示部1020に信号光LSの走査位置を示す画像が呈示されている場合、これらボタン1022、1023、1024および1025を用いて走査位置を移動させることができる。主制御部211は、移動後の走査位置に基づいてガルバノスキャナ42を制御することで、移動後の走査位置に対するOCT計測を実行させる。また、眼底像表示部1020には、画像の中央位置を示すマーカ1026と、OCT画像表示部1040に表示されている断層像のスキャン位置(断面位置)を示すマーカ1027とが呈示される。また、撮影条件(アライメント、フォーカス状態、トラッキング状態等)が良好なときには、その旨を示す情報が眼底像表示部1020に呈示される。この情報は、たとえば図11に示す文字列情報「OK」である。なお、図示は省略するが、図10に示すスプリット指標1021を図11の眼底像表示部1020に呈示することも可能である。
OCT画像表示部1040の横位置の計測深度マーカ1041の上下位置には、計測深度マーカ1041を上下(−z方向および+z方向)に移動させるためのマーカ移動ボタン1042および1043がそれぞれ設けられている。なお、計測深度マーカ1041の移動は、所望の深さ位置をタッチ操作またはクリック操作することによっても行うことが可能である。また、OCT計測用の光学系の光路長を調整するモードにおいては、光路長の延長または短縮を指示するためにマーカ移動ボタン1042および1043を用いることができる。このとき、マーカ移動ボタン1042および1043は、光路長を変更可能な範囲(たとえば実空間において26mm)の両端を示し、計測深度マーカ1041は光路長の現在の設定値を示す。また、OCT画像表示部1040には、画質最適化処理(自動処理)を実行させるための最適化ボタン1044と、画質最適化を手動で行うための手動ボタン1045とが設けられている。画質最適化処理は、たとえばステップ5で説明した光路長差調整である。手動での画像最適化は、たとえば、OCT画像表示部1040に表示される断層像を確認しながらマーカ移動ボタン1042および1043を操作することによって行われる。
眼底像表示部1020の左下位置には、各種操作を行うためのソフトウェアキー1200が設けられている。ソフトウェアキー1200には、LCD39により眼底Efに投影される内部固視標をデフォルト位置に移動させるための中央ボタン1201と、内部固視標の投影位置を上下左右に移動させるための上下左右ボタンが含まれる。
眼底像表示部1020の横位置には、光学系を前後(z方向)に移動させるための前後移動ボタン1101および1102が設けられている。前移動ボタン1101が操作されると、主制御部211は、光学系駆動部700を制御して、光学系を前方向(+z方向)に移動させる。後移動ボタン1102が操作されると、主制御部211は、光学系駆動部700を制御して、光学系を後方向(−z方向)に移動させる。つまり、前後移動ボタン1101および1102を操作することで、被検眼Eに対して光学系が近づけたり遠ざけたりすることができる。なお、前後移動ボタン1101および1102を一度操作(タッチ操作、クリック操作)した場合の光学系の移動量はあらかじめ設定されている。また、前後移動ボタン1101および1102を長押し操作する場合、単位時間ごとに所定の移動量だけ光学系が移動される。
また、眼底像表示部1020の横位置には、フォーカスボタン1103が設けられている。フォーカスボタン1103は、フォーカス調整を行うためのモードに移行するためのソフトウェアキーである。
眼底像表示部1020の下方位置には、各種ソフトウェアキーが設けられている。固視形状切替ボタン1301は、被検眼Eに呈示される固視標の種別を切り替えるために用いられる。外部固視ボタン1302は、図示しない外部固視灯を点灯/消灯させるために用いられる。外部固視灯の移動は、たとえば手動で行われる。小瞳孔ボタン1303は、被検眼Eが小瞳孔眼である場合に、または小瞳孔判定の結果を表示させる場合などに操作される。前者の場合、主制御部211は絞り19として小瞳孔絞りを配置させる。後者の場合、被検眼Eが小瞳孔眼か否かに応じて小瞳孔ボタン1303の呈示態様が切り替えられる(たとえば小瞳孔眼である場合、小瞳孔ボタン1303が点滅表示される)。主制御部211はステップ4と同様にして小瞳孔判定処理を実行させる。アライメントボタン1304は、アライメントモードの切り替えや、オートアライメントの開始/停止などに用いられる。
ユーザは、前後移動ボタン1101および1102を操作することにより、光学系を前後方向(z方向)に移動させる(S20)。主制御部211は、この操作の内容に基づき光路長変更部41を制御することで、信号光LSの光路長を変更する(S21)。手動アライメントおよび光路長変更の終了を受けて、主制御部211は、OCT計測(本計測)を実行させる(ステップ22)。
また、ユーザが、前眼部像表示部1030に呈示された撮影画像中の所定位置(たとえば瞳孔中心に相当する位置)を指定(タッチ操作、クリック操作等)すると、解析部235は、この指定位置の3次元位置を求める。主制御部211は、この3次元位置に基づいて光学系駆動部700を制御することにより、光学系のxyz方向のアライメントを行う。さらに、主制御部211は、このアライメントの内容(特にz方向への移動内容)に基づき光路長変更部41を制御することで、信号光LSの光路長を変更する(S21)。手動アライメントおよび光路長変更の終了を受けて、主制御部211は、OCT計測(本計測)を実行させる(ステップ22)。
また、ユーザが、前眼部像表示部1030に呈示された撮影画像中の所定位置(たとえば瞳孔中心に相当する位置)を指定(タッチ操作、クリック操作等)したことを契機として、主制御部211は、2以上の前眼部カメラ300による撮影画像を前述の要領で解析することによって被検眼Eの瞳孔位置を取得し、光学系のxyz位置が被検眼Eに対して好適な位置になるよう前述の要領で調整し、かつ、所定の作動距離に基づいて光学系のz方向の位置を調整する。なお、図10に示す状態ではオートアライメントが実行されているが、図11に示す状態ではオートアライメントは停止されており、撮影画像中の位置の指定を契機として光学系のアライメントを行なっている。このような手動でのアライメントは、撮影画像中の位置を指定する度に実行される。
[作用・効果]
眼科観察装置1の作用および効果について説明する。
眼科観察装置1は、計測光学系と、画像形成部と、駆動部と、制御部とを有する。
計測光学系は、OCT計測を行うための干渉光学系であり、光源(光源ユニット101)からの光を信号光LSと参照光LRとに分割し、被検眼Eを経由した信号光LSと参照光LRとの干渉光LCを生成して検出する。
画像形成部は、OCT画像を形成するための信号処理や画像処理を実行するものであり、計測光学系による干渉光LCの検出結果に基づいて画像を形成する。この実施形態では、画像形成部は、少なくとも画像形成部220を含み、データ処理部230を含んでいてもよい。
駆動部は、計測光学系を移動するための駆動機構である。この実施形態では、光学系駆動部700が駆動部に含まれる。
制御部は、駆動部により計測光学系が(少なくとも)光軸方向へ移動されたときに、その移動内容に基づいて信号光LSおよび/または参照光LRの光路長を変更する。この実施形態では、主制御部211が光路長変更部41を制御することにより信号光LSの光路長を変更している。
この実施形態の眼科観察装置1によれば、計測光学系が移動されたことに対応して、つまりアライメントが行われたことに対応して、信号光および/または参照光の光路長を自動で変更することができる。すなわち、眼科観察装置1によれば、アライメントとOCT用光学系の光路長調整とを連動させることが可能である。
計測光学系が移動されたときに、制御部(主制御部211)は、光軸方向への移動距離と実質的に等しい光学的距離だけ光路長を変更することができる。それにより、光路長の変更の前後において、信号光の光路長と参照光の光路長との関係が保持される。よって、計測光学系の移動により被検眼と計測光学系との間の距離(つまり信号光の光路長)が変化した場合でも、その変化を埋め合わせ、被検眼の目的の深さ位置を好適な画質で画像化することができる。
眼科観察装置1は、2以上の撮影部と、解析部(解析部235)とを有していてよい。2以上の撮影部は、被検眼の前眼部を異なる方向から実質的に同時に撮影するものであり、この実施形態では前眼部カメラ300がその機能を有する。解析部は、2以上の撮影部により実質的に同時に得られた2以上の撮影画像を解析することで、少なくとも計測光学系の光軸方向における被検眼の位置を取得する。制御部(主制御部211)は、解析部により取得された位置に基づき駆動部を制御することで計測光学系を移動させる。さらに、制御部は、この計測光学系の移動に応じた光路長の変更を行う。このような構成によれば、計測光学系の移動(アライメント)を自動で行うことができ、さらに、このオートアライメントに光路長の調整を連動させることができる。
指標によるアライメントおよび光路長の調整を行った後にアライメントを再度行う場合に、この再アライメントに連動させて光路長の調整を行うことが可能である。その場合、眼科観察装置1は、第1の投影光学系と、撮影光学系と、第1の移動量取得部と、変更量取得部とを有する。第1の投影光学系は、被検眼に対する計測光学系のアライメントを行なうための第1の指標(アライメント指標)を被検眼に投影するものであり、この実施形態ではアライメント光学系50がその機能を有する。撮影光学系は、第1の指標が投影されている状態の被検眼を撮影して正面画像を取得するものであり、眼底カメラユニット2に設けられた眼底撮影用の光学系がその機能を有する。第1の移動量取得部は、この正面画像を解析することで、計測光学系の移動量を取得するもので、この実施形態では光学系移動量取得部231がこれの機能を有する。変更量取得部は、計測光学系による干渉光の検出結果を解析することで光路長の変更量を取得するものであり、この実施形態では光路長差変更量取得部233がこの機能を有する。制御部(主制御部211)は、第1の移動量取得部により取得された移動量に基づき駆動部を制御することでアライメントを行う。また、制御部は、変更量取得部により取得された変更量に基づいて信号光および/または参照光の光路長を変更する。さらに、制御部は、このアライメントおよびこの光路長変更を行った後に、解析部により取得された被検眼の位置に基づく計測光学系の移動、およびそれに応じた光路長の変更を行う。このような構成によれば、先に行われたアライメントおよび光路長変更で得られた被検眼と計測光学系との関係を保持してOCT計測を行うことが可能である。
上記のアライメントおよび光路長調整に加えてフォーカス調整を行った後にアライメントを再度行う場合に、この再アライメントに連動させて光路長の調整を行うことが可能である。その場合、計測光学系には、光軸方向に移動可能な合焦レンズが設けられる。さらに、眼科観察装置1は、第2の投影光学系と、合焦駆動部と、第2の移動量取得部とを有する。第2の投影光学系は、被検眼に対する計測光学系のフォーカス調整を行なうための第2の指標(スプリット指標)を被検眼に投影するものであり、この実施形態ではフォーカス光学系60がこの機能を有する。合焦駆動部は、計測光学系の合焦レンズを移動させるものであり、この実施形態ではOCT合焦駆動部600がこの機能を有する。第2の移動量取得部は、第2の指標が投影されている状態の被検眼を撮影光学系により撮影して取得された正面画像を解析することで、計測光学系の合焦レンズの移動量を取得するものであり、この実施形態ではレンズ移動量取得部232がこの機能を有する。制御部(主制御部211)は、第1の移動量取得部により取得された移動量に基づくアライメントと、変更量取得部により取得された変更量に基づく光路長の変更とを上記と同様にして行う。また、制御部は、第2の移動量取得部により取得された移動量に基づき合焦駆動部を制御することで、計測光学系のフォーカス調整を行う。さらに、制御部は、このアライメント、この光路長変更、およびフォーカス調整を行った後に、解析部により取得された被検眼の位置に基づく計測光学系の移動、およびそれに応じた光路長の変更を行う。このような構成によれば、先に行われたアライメント、光路長変更、およびフォーカス調整で得られた被検眼と計測光学系との関係を保持してOCT計測を行うことが可能である。
解析部は、前眼部の特徴点の位置を被検眼の位置として求めることが可能である。その場合、解析部は、特徴点特定部と、3次元位置算出部とを有する。特徴点特定部は、2以上の撮影部により実質的に同時に取得された2以上の撮影画像を解析することで、瞳孔または虹彩の特徴点に相当する画像位置を特定する。この実施形態では、特徴点特定部2352がこの機能を有する。3次元位置算出部は、2以上の撮影部の位置と2以上の撮影画像中の特徴点の画像位置とに基づき、被検眼の位置として、この特徴点の3次元位置を算出する。この実施形態では、3次元位置算出部2353がこの機能を有する。このような構成によれば、被検眼の3次元位置を高確度で取得することができる。
計測光学系の移動(アライメント)を手動で行う場合に適用可能な構成として、計測光学系を移動させる操作を行うためのインターフェイスを設けることができる。その場合、制御部(主制御部211)は、このインターフェイスを用いて行われた操作の内容に基づき駆動部を制御することで、計測光学系を移動させる。さらに、制御部は、この計測光学系の移動に連動させて光路長の変更を行う。このような構成によれば、手動操作により行われた計測光学系の移動に、光路長の変更を連動させることが可能である。
手動アライメント用のインターフェイスの例として、GUIを用いることができる。その場合、眼科観察装置1は、タッチパネルディスプレイからなるユーザインターフェイス240を有する。制御部(主制御部211)は、手動アライメントのための操作を受け付けるソフトウェアキーを含むGUIをタッチパネルディスプレイに表示させる。このような構成によれば、手動アライメントをタッチ操作で容易に行うことができ、さらに、このアライメントに光路長の変更を連動させることが可能である。
信号光路長および/または参照光路長を変更するために、この実施形態の光路長変更部41と同様の構成を適用することができる。すなわち、計測光学系にコーナーキューブを設け、かつ、これを移動する駆動機構を設けることが可能である。コーナーキューブは、信号光および/または参照光の光路の途中に設けられ、これに入射した信号光および/または参照光を当該入射方向に平行な方向に反射する。このとき、入射方向と反射方向は、互いに平行であるが位置は異なる。駆動機構は、コーナーキューブに対する光の入射方向および反射方向に沿って、コーナーキューブを移動する。制御部(主制御部211)は、駆動機構を制御することにより信号光および/または参照光の光路長を変更する。
参照光路長を変更するために、計測光学系に参照ミラーを設け、かつ、これを移動する駆動機構を設けることが可能である。参照ミラーは、参照光の光路の末端に設けられ、これに入射した参照光を当該入射方向の反対方向に反射する。参照ミラーの反射面は参照光の進行方向に垂直に配置される。駆動機構は、参照ミラーに対する光の入射方向および反対方向に沿って、参照ミラーを移動する。制御部(主制御部211)は、駆動機構を制御することにより参照光の光路長を変更する。
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。
上記の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムを、コンピュータによって読み取り可能な任意の記録媒体に記憶させることができる。この記録媒体としては、たとえば、半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク(CD−ROM/DVD−RAM/DVD−ROM/MO等)、磁気記憶媒体(ハードディスク/フロッピー(登録商標)ディスク/ZIP等)などを用いることが可能である。
また、インターネットやLAN等のネットワークを通じてこのプログラムを送受信することも可能である。