JP6309872B2 - 繊維束の拡幅方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の単繊維より形成される被処理繊維束を拡幅する繊維束の拡幅方法に関する。
炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維は、優れた比強度及び比弾性率を有し、軽量性に優れるため、熱硬化性及び熱可塑性樹脂の強化繊維として、従来のスポーツ・一般産業用途だけでなく、航空・宇宙用途、自動車用途など広く利用されている。利用用途が拡大されるにつれ、繊維強化樹脂複合材料(以下コンポジットと称する)には、さらに高い性能が求められている。
一般的に、コンポジットを製造する際、強化繊維には、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などのマトリクス樹脂との親和性や繊維束の集束性の改善、または繊維束の機能化を目的に、改質剤やサイジング剤などの各種繊維処理剤が付与される。そして、これらの繊維処理剤が付与された繊維束にマトリクス樹脂を含浸し、または、繊維束を一定長に裁断しチョップドストランドなどとしてマトリクス樹脂中に分散し、強化繊維とマトリクス樹脂を一体化してコンポジットを製造する。
上記のように、強化繊維に繊維処理剤を付与する際、または、強化繊維とマトリクス樹脂を一体化する際に、繊維束が集束しすぎていると、繊維処理剤やマトリクス樹脂が繊維束内部に入り込みにくく、処理斑が生じ、コンポジットの欠陥要因となってしまう。そのため、これらの処理に先んじて、繊維処理剤やマトリクス樹脂が繊維束内部に浸透しやすくするため、繊維束を拡幅する処理が行われる。
繊維束を拡幅する方法として、例えば特許文献1には、空気開繊により繊維束を拡幅する方法が開示されている。しかし、空気による拡幅処理では、繊維束に繊維長方向の割れが生じやすく、幅方向に均一に拡幅しにくいという問題がある。
一方、特許文献2には、繊維束を上下に振動するロールに擦過させ拡幅する方法が提案されている。しかし、このような方法では、繊維束を傷つけ毛羽や欠陥を生じさせやすい上、炭素繊維束の拡幅の程度も満足できるものではなかった。
そのため、繊維束を十分に拡幅することのできる拡幅方法が求められている。
特開平11−172562号公報 特開2014−005580号公報
本発明の目的は、繊維束を十分に拡幅することのできる繊維束の拡幅方法を提供することにある。
上記課題を解決する本発明の繊維束の拡幅方法は、複数の単繊維より形成される被処理繊維束を幅方向に拡幅させる繊維束の拡幅方法であって、被処理繊維束を、少なくとも1本の正逆方向に回転方向の変化を繰り返すロールに接触させる繊維束の拡幅方法である。本発明においては、被処理繊維束を、2本以上の回転方向の変化を繰り返すロールに接触させることが好ましい。また、回転方向の変化を繰り返すロールの正逆回転を変更する回数に対する、被処理繊維束の進行距離で表される正逆回転の変更頻度が、下記式(1)を満たすことが好ましく、正方向への回転速度に対する逆方向への回転速度が0.1〜10倍であることが好ましい。
正逆回転の変更頻度 (mm/回) < π×ロール直径(mm)×(ロールと被処理繊維束の接触角(°)/360(°))・・・(1)
本発明の繊維束の拡幅方法は、炭素繊維に対して特に好ましく適応できる。本発明は、本発明の繊維束の拡幅方法により被処理繊維束を拡幅する工程を有する繊維束の製造方法、本発明の繊維束の拡幅方法により被処理繊維束を拡幅した後、拡幅された被処理繊維束に樹脂を含浸させる樹脂含浸繊維束の製造方法、本発明の繊維束の拡幅方法により被処理繊維束を拡幅した後、被処理繊維束を所定の長さに切断するチョップドストランドの製造方法を包含する。また、本発明の繊維束の拡幅方法は、複数の単繊維より形成される繊維束の集合体からなる繊維基材の製造方法において、繊維束単体または繊維束の集合体を拡幅する工程に用いることもできる。
本発明の繊維束の拡幅方法を用いると、繊維束を均一にかつ、十分に拡幅することができる。
本発明の繊維束の拡幅方法は、複数の単繊維より形成される被処理繊維束を幅方向に拡幅させる繊維束の拡幅方法であって、被処理繊維束を、少なくとも1本の正逆方向に回転方向の変化を繰り返すロールに接触させる繊維束の拡幅方法である。正逆方向に回転方向の変化を繰り返すロールに接触させることで、繊維束を均一にかつ、十分に拡幅することができる。本発明において、被処理繊維束は連続繊維束であることが好ましく、また、ロールに接触する際、被処理繊維束が一定方向に進行していることが好ましい。
本発明において、ロールの回転が正方向であるとは、被処理繊維束の接触箇所において、ロールが当該ロールに接触する被処理繊維束の進行方向と同一の方向に回転している場合をいい、ロールの回転が逆方向であるとは、ロールが当該ロールに接触する繊維束の進行方向と逆の方向に回転している場合をいう。
本発明において、回転方向の変化を繰り返すロールの正逆回転を変更する回数に対する被処理繊維束の進行距離で表される正逆回転の変更頻度が、下記式(1)を満たすことが好ましい。この範囲にすることで、毛羽立ちを抑制しつつ、より高い拡幅効果を得ることができる。
正逆回転の変更頻度 (mm/回) < π×ロール直径(mm)×(ロールと被処理繊維束の接触角(°)/360(°))・・・(1)
本発明においては、回転方向の変化を繰り返すロールの正逆回転の変更頻度を、回転方向を変更した後、次に回転方向を変更するまでに、被処理繊維束が進行する距離によって定義する。すなわち、正逆回転の変更頻度Xmm/回とは、正方向から逆方向、または、逆方向から正方向に回転方向を変更した後、被処理繊維束がXmm進んだ時点で、逆方向から正方向、または、正方向から逆方向への回転方向の変更を行う場合をいう。
本発明において、ロールと被処理繊維束のなす接触角は、30〜270°であることが好ましく、60〜180°であることがより好ましい。本発明において、接触角とは、ロール外周のうち繊維束がロールに接触している部分を円弧とし、ロールの中心を中心点とする扇型の中心角をいう。また、ロールと被処理繊維束の接触距離は、用いるロールの数にもよるが、すべての回転方向の変化を繰り返すロールに対する被処理繊維束の接触距離の合計が20mm以上であることが好ましい。
また、本発明において、毛羽立ちを抑制しつつ、より高い拡幅効果を得るために、正方向への回転速度に対する逆方向への回転速度が0.1〜10倍であることも好ましい。
本発明において、被処理繊維束が、2本以上の回転方向の変化を繰り返すロールと接触することが好ましい。2本以上の回転方向の変化を繰り返すロールに接触させることで、繊維束の拡幅幅をより広くすることができる。
回転方向の変化を繰り返すロールを2本以上用いる場合、隣り合う2本の回転方向の変化を繰り返すロールは、その被処理繊維束に対する回転方向が異なっていることが好ましい。すなわち、片方のロールが被処理繊維束の進行方向と同じ方向に回転している場合、隣り合うもう一方のロールは、被処理繊維束の進行方向と逆方向に回転していることが好ましい。隣り合う2本の回転方向の変化を繰り返すロールの被処理繊維束に対する回転方向が異なっていることで、被処理繊維束中の単繊維により大きな動きを与えられ、効率的に拡幅することができる。
また、2本以上のロールの回転方向が切り替わるタイミングは、一致していることが好ましいが、異なっていても良い。回転方向が切り替わるタイミングが異なる場合、1分間に10秒以上2本のロールの回転方向が異なっている時間があることが好ましく、30秒以上あることがより好ましい。回転方向が切り替わるタイミングがかかる範囲であると、より高い拡幅効果が得られるとともに、繊維束の拡幅後の幅のバラつきを抑えることができる。
本発明において回転方向の変化を繰り返すロールを設置するに際しては、回転方向の変化を繰り返すロールの前に搬送ロール(駆動ロール)を設置することが好ましく、かかる搬送ロールを離れてから回転方向の変化を繰り返すロールに被処理繊維束が接触するまでにかかる移動時間を10〜50秒となるよう調整することが、より高い拡幅効果を得るために好ましい。
また、本発明において回転方向の変化を繰り返すロールに接触する際の被処理繊維束の張力は、5g/tex以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜3g/texである。処理する繊維束に応じて最適な張力は異なるが、かかる範囲内で張力を調整することで毛羽立ちを抑制してより高い拡幅効果が得られる。張力が高すぎると繊維束の毛羽立ちが起こりやすくなる傾向がある。
本発明で用いるロールとしては、円筒状のロールであることが好ましく、その直径は100〜500mmであることが好ましい。本発明に用いられるロールの材質は特に限定しないが、ステンレス、鉄、銅等の金属や、ガラスやアルミナ、ジルコニア等のセラミックスが好ましい。金属には梨地加工や磨き加工、クロムメッキ等の表面処理、セラミックスにはフッ素樹脂等の合成樹脂をコーティングしておくこともできる。もっとも好ましくは、ステンレス鋼に梨地加工を施したものである。
本発明においては、拡幅処理に先んじて、被処理繊維束を加熱することが、拡幅効果をより向上させることができるため好ましい。被処理繊維束を加熱する場合、加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、加熱ロールに接触させる方法やヒーターや熱風乾燥機などで加熱する方法等を用いることができる。加熱温度は特に限定はないが、50〜300℃の範囲が、繊維表面の官能基や付与された処理剤の分解を抑制しつつ、拡幅効果をより向上させることができるため好ましい。本発明においては、拡幅処理に先んじて被処理繊維束の水分率が0〜10%となるよう加熱処理することが好ましく、水分率が0〜5%となるよう加熱処理することがより好ましい。
本発明の繊維束の拡幅方法は、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維など、公知の繊維を制限無く拡幅処理することができる。中でも、炭素繊維の拡幅処理に好ましく用いることができる。本発明では、PAN系、ピッチ系など、公知の炭素繊維を制限なく拡幅処理することができる。本発明の繊維束の拡幅方法は、PAN系の炭素繊維の拡幅処理に特に好ましく用いることができる。
本発明で拡幅処理を行う繊維束の繊度は、特に制限されるものではないが、単繊維繊度が好ましくは0.1〜50dtex、より好ましくは0.5〜2.0dtexであり、繊維束の総繊度が10〜500000texであることが好ましく、より好ましくは150〜10000texである。本発明で拡幅処理を行う繊維束のフィラメント数は、好ましくは1000〜100000本、より好ましくは3000〜50000本である。また、製造効率の面からは、12000本以上がより好ましく、24000本以上がさらに好ましい。
上記のような本発明の繊維束の拡幅方法を用いると、繊維束を均一にかつ、十分に拡幅することができる。本発明の繊維束の拡幅方法により拡幅された繊維束は、繊維処理剤やマトリクス樹脂が繊維束内部に浸透しやすくなる。そのため本発明の繊維束の拡幅方法は、強化繊維に繊維処理剤を付与する際、または、強化繊維とマトリクス樹脂を一体化する際の前処理として、好ましく用いることができる。
本発明のもう一つの態様である繊維束の製造方法は、上記の本発明の繊維束の拡幅方法により被処理繊維束を拡幅する工程を有する製造方法である。本発明の繊維束の製造方法を用いると、均一かつ、十分な繊維幅に拡幅された繊維束を製造することができる。
本発明の繊維束の製造方法においては、被処理繊維束を拡幅する工程の後、拡幅された被処理繊維束に繊維処理剤を付着させる工程を有することが好ましい。本発明の繊維束の拡幅方法により拡幅された繊維束は、繊維処理剤が繊維束内部に浸透しやすいため、本発明の繊維束の拡幅方法により被処理繊維束を拡幅する工程の後、拡幅された被処理繊維束に繊維処理剤を付着させると、繊維処理剤が繊維束内部に浸透し、繊維束に均一に繊維処理剤を付着させることができる。本発明の製造方法において、付与できる繊維処理剤は、繊維束に付与される繊維処理剤であれば、表面改質剤、カップリング剤、サイジング剤など、特に制限はない。中でも、本発明の製造方法は、サイジング剤を付与した繊維束の製造方法として特に好ましく用いることができる。
繊維処理剤がサイジング剤である場合、処理剤の主成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、サイジング剤の主成分はマトリックス樹脂に合わせて適宜選択することができる。
本発明の製造方法において、被処理繊維束への繊維処理剤の付与方法は、特に限定されないが、キスタッチロール法、ロール浸漬法、スプレー法およびその他公知の方法を用いることができる。中でも、一束あたりの単繊維数が多い繊維束についても、繊維処理剤を均一に付与しやすい、ロール浸漬法が好ましく用いられる。
また、本発明の繊維束の製造方法では、被処理繊維束として、繊維処理剤の付着した繊維束を用いることもできる。繊維処理剤の付着した繊維束を用いる場合、拡幅処理に先んじて、被処理繊維束を加熱することが、拡幅効果をより向上させることができるため好ましい。被処理繊維束を加熱する場合、加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、加熱ロールに接触させる方法やヒーターや熱風乾燥機などで加熱する方法等を用いることができる。加熱温度は特に限定はないが、50〜300℃の範囲が、繊維表面の官能基や付与された処理剤の分解を抑制しつつ、拡幅効果をより向上させることができるため好ましい。
このようにして得られる繊維束は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの強化繊維として、スポーツ用途、レジャー用途、一般産業用途、航空・宇宙用途、自動車用途などに広く利用できる。
本発明の繊維束の製造方法により得られた繊維束を用い、マトリックス樹脂と組み合わせ、例えば、オートクレーブ成形、プレス成形、樹脂トランスファー成形、フィラメントワインディング成形など、公知の手段・方法により複合材料が得られる。
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂が用いられる。熱硬化性マトリックス樹脂の具体例として、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂、ビスマレイミド樹脂、アセチレン末端を有するポリイミド樹脂及びポリイソイミド樹脂、ナジック酸末端を有するポリイミド樹脂等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の混合物として用いることもできる。中でも、耐熱性、弾性率、耐薬品性に優れたエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂が、特に好ましい。これらの熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤以外に、通常用いられる着色剤や各種添加剤等が含まれていてもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンオキシド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール等が挙げられる。
複合材料中に占める樹脂組成物の含有率は、10〜90重量%、好ましくは20〜60重量%、更に好ましくは25〜45重量%である。
本発明の樹脂含浸繊維束の製造方法は、上記の本発明の繊維束の拡幅方法により被処理繊維束を拡幅した後、拡幅された被処理繊維束に樹脂を含浸させる樹脂含浸繊維束の製造方法である。
樹脂を含浸させる被処理繊維束としては、あらかじめサイジング剤が付着された繊維束であることが好ましい。サイジング剤の付着量としては、繊維100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。またサイジング剤としては、後に繊維が補強する対象となるマトリクス樹脂と同じ樹脂系のサイジング剤であることが好ましい。本発明の樹脂含浸繊維束の製造方法によれば、このようなサイジング剤の付着した拡幅しにくい繊維束でも、効果的に樹脂を含浸させることができる。
本発明のチョップドストランドの製造方法は、上記の本発明の繊維束の拡幅方法により被処理繊維束を拡幅した後、被処理繊維束を所定の長さに切断するチョップドストランドの製造方法である。本発明においては、被処理繊維束を拡幅した後、拡幅された被処理繊維束に繊維処理剤もしくは樹脂を含浸させ、次いで、被処理繊維束を所定の長さに切断することが好ましい。
本発明の更なる様態である繊維基材の製造方法は、複数の単繊維より形成される繊維束の集合体からなる繊維基材の製造方法であって、上記本発明の繊維束の拡幅方法により、繊維束単体または繊維束の集合体を拡幅する工程を有する繊維基材の製造方法である。
繊維基材の形態としては、多数本の繊維束を一方向に引き揃えたシート状物や、平織や綾織などの二方向織物、多軸織物、不織布、マット、ニット、組紐、強化繊維を抄紙した紙などが例示される。本発明の繊維基材の製造方法においては、繊維束を繊維基材の形態とする前の繊維束単体の状態で拡幅処理を行っても良いし、多数本の繊維束の集合体である繊維基材の形態とした後、拡幅処理を行っても良い。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。各実施例及び比較例における各繊維の物性の評価方法は以下の方法によった。
<ストランド幅の比>
拡幅直前の被処理繊維束のストランド幅(W1)及び、拡幅後の被処理繊維束のストランド幅(W2)を、ノギスを用いて計測し、下式(1)にて拡幅前後でのストランド幅の比を求めた。
拡幅前後の被処理繊維束のストランド幅の比 = W2/W1 ・・・式(1)
<繊維束の品位>
本発明において、繊維束の品位は、拡幅処理後の繊維束に発生した毛羽立ちを目視にて観察し、以下の基準で評価した。
◎:毛羽立ちなし
○:少量の毛羽立ち
△:中程度の毛羽立ち
×:使用困難な大量の毛羽立ち
[実施例1]
前駆体繊維であるポリアクリロニトリル系繊維(単繊維繊度0.7dtex、フィラメント数24000)を、空気中250℃で、繊維比重1.35になるまで耐炎化処理を行い、次いで窒素ガス雰囲気下、最高温度650℃で低温炭素化させた。その後、窒素雰囲気下1300℃で高温炭素化させて製造した炭素繊維束を、10.0質量%の硫酸アンモニウム水溶液を用い、電解酸化により表面処理を行った後、180℃の熱風乾燥機で5分間加熱処理を行い、水分率2%の炭素繊維束(引張強度4000MPa、引張弾性率240GPa、フィラメント数24000本、単繊維直径7μm、繊度1600Tex)を得た。
続いて、2本の搬送ロール(駆動ロール)の中間に、表面を梨地加工された正逆方向に回転方向の変化を繰り返す直径35mmのロール(拡幅ロール)2本を、2つの回転方向の変化を繰り返すロールの被処理繊維束に対する回転方向が異なるように配置して、前記炭素繊維束を接触させ、拡幅処理を行った。繊維束と回転方向の変化を繰り返すロールの接触角は90°とし、すべての回転方向の変化を繰り返すロールに対する繊維束の接触距離の合計は55mmとした。正逆回転方向変更頻度は11mm/回、逆方向への回転速度は正回転の1倍、工程張力1.0g/tex、回転方向の変化を繰り返すロールの前に設置した搬送ロールから、回転方向の変化を繰り返すロールに被処理繊維束が接触するまでにかかる移動時間は22秒となるよう調整した。
実施例1での拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は2.5で、工程での毛羽立ちはほとんどみられなかった。
拡幅処理後の炭素繊維束に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするサイズ剤でサイズ剤付着量が1.0wt%となるようサイズ剤浴の濃度を調節してサイジング処理、乾燥を行ない、炭素繊維束を得た。
[実施例2]
正逆回転方向変更頻度は50mm/回に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は1.7で、ロール上での毛羽立ちはほとんどみられなかった。
[実施例3]
正逆回転方向変更頻度は2mm/回に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は2.6で、ロール上での毛羽立ちは少量であった。
[実施例4]
正方向回転速度に対する逆方向回転速度を0.05倍に変更した以外は実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は1.5で、ロール上での毛羽立ちはほとんどみられなかった。
[実施例5]
正方向回転速度に対する逆方向回転速度を10倍に変更した以外は実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は2.0で、ロール上での毛羽立ちは少量であった。
[実施例6]
回転方向の変化を繰り返すロールの数を2本から1本に変更した以外は実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は1.5で、ロール上での毛羽立ちはほとんどみられなかった。
[実施例7]
回転方向の変化を繰り返すロールの数を2本から3本に変更した以外は実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は2.8で、ロール上での毛羽立ちはほとんどみられなかった。
Figure 0006309872
[実施例8]
2つの回転方向の変化を繰り返すロールの被処理繊維束に対する回転方向を同じ方向に変更した以外は実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は2.0で、ロール上での毛羽立ちはほとんどみられなかった。
[実施例9]
回転方向の変化を繰り返すロールをロール表面が鏡面加工されたロールに変更した以外は実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。ロール上での毛羽立ち、単糸切れが多少見られたものの十分に実用に耐えるものであり、拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は2.2と良好なものであった。
[実施例10]
工程張力を0.5g/texに変更したこと以外は実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は2.5であり、ロール上での毛羽立ちはほとんどみられなかった。
[実施例11]
工程張力を6.0g/texに変更した以外は実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。ロール上での毛羽立ち、単糸切れが多少見られたものの十分に実用に耐えるものであり、拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は1.8と良好なものであった。
[実施例12]
搬送ロールと回転方向の変化を繰り返すロールの間の距離を調節し、回転方向の変化を繰り返すロールに被処理繊維束が接触するまでにかかる移動時間を54秒に変更した以外は実施例6と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は1.9であり、ロール上での毛羽立ちはほとんどみられなかった。
[実施例13]
搬送ロールから回転方向の変化を繰り返すロールに被処理繊維束が接触するまでにかかる移動時間を5秒に変更した以外は実施例6と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は1.5であり、ロール上での毛羽立ちはほとんどみられなかった。
Figure 0006309872
[実施例14]
実施例1と同様の方法にて表面処理まで行い、サイズ剤の付着していない拡幅処理前の炭素繊維束を得た。得られた炭素繊維束に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするサイズ剤でサイズ剤付着量が1.0wt%となるようサイズ剤浴の濃度を調節してサイジング処理、乾燥を行ない、サイズ剤が付与された炭素繊維束を得た。
サイズ剤付与後、2本の搬送ロール(駆動ロール)の中間に、表面を梨地加工された正逆回転を繰り返す直径35mmのロール2本を、2つの回転方向の変化を繰り返すロールの被処理繊維束に対する回転方向が異なるように配置して、前記炭素繊維束を接触させ、拡幅処理を行った。被処理繊維束とロールの接触角は90°とし、正逆回転方向変更頻度は11mm/回、逆方向への回転速度は正回転の1倍、工程張力6.0g/tex、搬送ロールから回転方向の変化を繰り返すロールに被処理繊維束が接触するまでにかかる移動時間は22秒となるよう調整した。
ロール上での毛羽立ち、単糸切れが多少見られたものの十分に実用に耐えるものであり、拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は1.5であった。
[比較例1]
回転方向の変化を繰り返すロールを正方向にのみ回転するロールに変更した以外は実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は1.1でありほとんど拡幅されなかった。
[比較例2]
回転方向の変化を繰り返すロールを回転しないバーに変更した以外は実施例1と同様の方法にて炭素繊維束の拡幅を行った。この時の拡幅前後の炭素繊維束の幅の比は2.0であったが、ロール上での毛羽立ちが非常に多く、使用困難なレベルのものであった。
Figure 0006309872

Claims (11)

  1. 複数の単繊維より形成される被処理繊維束を幅方向に拡幅させる繊維束の拡幅方法であって、
    被処理繊維束を、少なくとも1本の正逆方向に回転方向の変化を繰り返すロールに接触させることを特徴とする繊維束の拡幅方法。
  2. 被処理繊維束を、2本以上の回転方向の変化を繰り返すロールに接触させる請求項1に記載の繊維束の拡幅方法。
  3. 回転方向の変化を繰り返すロールの正逆回転を変更する回数に対する、被処理繊維束の進行距離で表される正逆回転の変更頻度が、下記式(1)を満たす請求項1または2に記載の繊維束の拡幅方法。
    正逆回転の変更頻度 (mm/回) < π×ロール直径(mm)×(ロールと被処理繊維束の接触角(°)/360(°))・・・(1)
  4. 回転方向の変化を繰り返すロールの正方向への回転速度に対する逆方向への回転速度が0.1〜10倍である請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維束の拡幅方法。
  5. 被処理繊維束が炭素繊維束である請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維束の拡幅方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維束の拡幅方法により被処理繊維束を拡幅する工程を有する繊維束の製造方法。
  7. 被処理繊維束を拡幅する工程の後、拡幅された被処理繊維束に繊維処理剤を付着させる工程を有する請求項6に記載の繊維束の製造方法。
  8. 被処理繊維束が、繊維処理剤の付着した繊維束である、請求項6に記載の繊維束の製造方法。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維束の拡幅方法により被処理繊維束を拡幅した後、拡幅された被処理繊維束に樹脂を含浸させる樹脂含浸繊維束の製造方法。
  10. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維束の拡幅方法により被処理繊維束を拡幅した後、被処理繊維束を所定の長さに切断するチョップドストランドの製造方法。
  11. 複数の単繊維より形成される繊維束の集合体からなる繊維基材の製造方法であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維束の拡幅方法により、繊維束単体または繊維束の集合体を拡幅する工程を有する繊維基材の製造方法。
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