JP6308736B2 - コンクリート製重量物の接合方法 - Google Patents
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Description
このようなインサートの一例として特許文献1に記載のものが知られている。このインサートは、筒状本体の先端を開口し後端を閉塞し、内周面に雌ねじを形成したものである。また、筒状本体の外周面後端側には、後側に向かって傘状に広がる傘状部を一体形成している。このようなインサートはコンクリート製の重量物に、その先端を開口するようにして埋設しておき、当該重量物を吊り下げる際に、雄ねじを有する吊り治具の当該雄ねじをインサートの雌ねじに螺合したうえで、当該吊り治具を介して重量物を吊り下げている。また、インサートの外周面後端側に傘状部が形成されているので、これによって、インサートの重量物からの抜出しを防止している。
前記のようなインサートは、鋼製インサート、セラミックスインサート、プラスチックインサートなどがある。
また、専用のカップラーとアンカーを備えた構造のものもある。
このような場合、インサートに位置決めピンを挿入することも考えられるが、当該インサートに形成されている雌ねじは、一般的に並目ねじであるため、この並目ねじのねじ山部分に重量物の吊り下げ等の場合に、せん断方向に応力がかかると当該山部分に変形が生じ易い。このように、ねじ山部に変形が生じた場合、位置決めピンの位置精度が低下して、位置決め機能が著しく低下するおそれがあるとともに、せん断力伝達機能も低下するおそれがある。
前記コンクリート製重量物に埋設され、かつ先端開口が前記コンクリート製重量物の表面に開口する円筒状の本体部と、前記コンクリート製重量物に埋設され、前記本体部に係合して当該本体部の前記コンクリート製重量物からの抜け出を防止する抜け出防止部材とを備え、
前記本体部の内周面の少なくとも一部に、台形雌ねじが形成されていることを特徴とする。
この場合、複合機能型インサートの台形雌ねじに、吊り治具の台形雄ねじを螺合しているので、台形雌ねじに作用する応力は比較的分散される。このため、台形雌ねじに変形が生じるのを防止できる。また、ねじ込みに要する時間も短時間ですむ。
また、このようにして吊り下げられたコンクリート製重量物を所定の場所に設置した後、当該コンクリート製重量物上に次(後行)のコンクリート製重量物を吊り下げて接合する場合、先(先行)のコンクリート製重量物の複合機能型インサートの本体部から吊り下げ治具を取り外したうえで、当該本体部に位置決めピンを挿入する。その後、次(後行)のコンクリート製重量物を吊り下げたうえで、先(先行)のコンクリート製重量物に接合するとともに、当該後行のコンクリート製重量物の接合面に形成された位置決め孔に、前記位置決めピンを挿入することによって、後行のコンクリート製重量物の位置決めを容易に行うことができる。また、この位置決めピンはせん断力の伝達機能を果たす。
このように、本発明に係る複合機能型インサートは、コンクリート製重量物の吊り下げ機能、位置決め機能、およびせん断力伝達機能を兼ね備えているので、コンクリート製重量物の表面が比較的狭くても、複合機能型インサートを埋設するだけで済み、その配置に苦慮することがない。
また、複合機能型インサートに形成されている雌ねじが、台形雌ねじであるので、当該台形雌ねじに作用する応力は比較的分散される。このため、台形雌ねじに変形が生じるのを防止でき、この結果、位置決めピンの位置精度やせん断力伝達機能の低下も防止できる。
前記先行のコンクリート製重量物の表面の一つである接合面に開口している複合機能型インサートの本体部にその先端開口から位置決めピンを前記先行のコンクリート製重量物の接合面から突出させた状態で挿入する一方で、
前記後行のコンクリート製重量物の接合面以外の表面に開口している前記複合機能型インサートの本体部にその先端開口から台形雄ねじを有する吊り治具をその台形雄ねじを前記本体部の台形雌ねじに螺合しておき、
前記吊り治具によって前記後行のコンクリート製重量物を吊り下げたうえで、当該後行のコンクリート製重量物を前記先行のコンクリート製重量物の接合面に接合するとともに、前記先行のコンクリート製重量物の接合面から突出している位置決めピンを、前記後行のコンクリート製重量物の接合面に設けられた位置決め孔に挿入することを特徴とする。
前記先行のコンクリート製重量物の表面である上面に開口している前記複合機能型インサートの本体部にその先端開口から位置決めピンを前記コンクリート製重量物の上面から突出させた状態で挿入する一方で、
前記後行のコンクリート構造物の表面である上面に開口している前記複合機能型インサートの本体部にその先端開口から台形雄ねじを有する吊り治具をその台形雄ねじを前記本体部の台形雌ねじに螺合しておき、
前記吊り治具によって前記後行のコンクリート製重量物を吊り下げたうえで、当該後行のコンクリート製重量物を前記先行のコンクリート重量構造物の上面に設置して接合するとともに、前記先行のコンクリート製重量物の表面から突出している位置決めピンを、前記後行のコンクリート重量物の下面に設けられた位置決め孔に挿入することを特徴とする。
また、複合機能型インサートに形成されている雌ねじが、台形雌ねじであるので、当該台形雌ねじに作用する応力は比較的分散されので、台形雌ねじに変形が生じるのを防止でき、この結果、位置決めピンの位置精度やせん断力伝達機能の低下も防止できる。
(第1の実施の形態)
図1および図2は、本発明に係る複合機能型インサートをそれが埋設されたコンクリート製重量物とともに示すもので、図1は平面図、図2は断面図である。
図1および図2において、符号1はコンクリート製重量物(以下、重量物と略称する。)、符号2は複合機能型インサートを示す。
また、本体部3の内周面には台形雌ねじ5が形成されている。この台形雌ねじ5は本体部3の上端から所定の位置(後端より所定長さだけ軸方向先端側に入った位置)まで形成されている。つまり、台形雌ねじ5は本体部3の軸方向全域に形成されているわけではなく、本体部3の先端(上端)から下端側に向けて所定長さの分だけ形成されている。
また、重量物1には、PC鋼棒を挿通するための挿通ダクト6がその上下端を重量物1の上下面に開口して埋設されている。挿通ダクト6は本実施の形態では、3本設けられており、隣り合う複合機能型インサート2,2の間および各複合機能型インサート2の一方の側に設けられている。
吊り治具10は、図3(a)に示すように、軸部10aと、この軸部10aの上端部に形成された頭部10bとから構成されている。軸部10aの外周面には前記台形雌ねじ5に螺合可能な台形雄ねじ10cが形成され、頭部10bに重量物1を吊り下げる際にクレーンのワイヤ等を通すための吊下げ穴10dが形成されている。頭部10bは板状に形成されており、作業者等が手で把持して軸回りに回せるようになっている。
このような吊り治具10は、図3(b)に示すように、ワッシャ11を挟んで本体部3に挿入されたうえで回転されることで、台形雄ねじ10cが複合機能型インサート2の台形雌ねじ5に螺合され、これによって、複合機能型インサート2に取り付けられるようになっている。
位置決めピン12は、図4に(a)に示すように、丸棒状のものであり、円柱状のピン本体12aと、このピン本体12aの基端部(下端部)に一体的に形成され、かつピン本体12aより小径の小径部12bとを有しており、ピン本体12aの先端部(上端部)は先細りする切頭円錐状の形状となっている。
ピン本体12aの直径は、大径雌ねじ5の山部分の内径とほぼ等しい長さに設定されている。また、小径部12bの直径は、前記本体部3の内径より若干短い長さに設定されている。また、小径部12bの軸方向の長さは、本体部3の台形雌ねじ5が設けられていない基端部3bの軸方向の長さとほぼ等しいか若干長い長さに設定されている。
位置決めピン12を本体部3に挿入した後、本体部3にその上端開口から樹脂やモルタル等の充填材を充填する際に、位置決めピン12と本体部3の内周面との間に台形雌ねじ5の谷部による空間が存在するので、この空間に充填材が入り込み易くなり、充填性がよくなる。したがって、充填作業が容易となるとともに、位置決めピン12を本体部3に、より確実に固定できる。
この他の重量物1に埋設された複合機能型インサート2の本体部3に、図4(c)に示すように、前記突出した位置決めピン12の上端部を挿入するとによって、下方の重量物1に対する上方の重量物1の位置決めを行うことができる。
図5は第1変形例を示す。図5においては、複合機能型インサート2は、図4に示すものと同様の構造であるが、位置決めピンの構成が異なる。なお、複合機能型インサート2については、前記と同一符号を付してその説明を省略する。
位置決めピン12Aは、丸棒状のものであり、その下端部には、前記台形雌ねじ5と螺合可能な台形雄ねじ12cが形成されている。この台形雄ねじ12cの軸方向の長さは、台形雌ねじ5の軸方向の長さの略半分程度の長さとなっている。
複合機能型インサート2Aは、円筒状の本体部3Aと、抜け出防止部材4Aとを備えている。本体部3Aは、厚肉の鋼管によって形成されており、その上下端は開口している。また、本体部3Aの内周面には台形雌ねじ5が本体部3Aの軸方向全域にわたって形成されている。
位置決めピン12Bは前記本体部3Aに上端開口から挿入され、当接部12dが前記台形雄ねじ42の先端部に当接するようになっている。
また、抜け出防止部材4Aはその台形雄ねじ42を本体部3Aの台形雌ねじ5に螺合するだけで、本体部3Aに取り付けることができ、溶接等の手間がかからないという利点がある。
また、複合機能型インサート2の本体部3にその上端開口から位置決めピン12Aを挿入して、台形雄ねじ12cを台形雌ねじ5に螺合することによって、位置決めピン12Aの複合機能型インサート2の本体部3からの突出長さを調整できるとともに、位置決めピン12が本体部3から抜け出ることを防止できる。
また、位置決めピン12,12A,12Bの外周面に軸方向に延在する縦型の溝を周方向に所定間隔で複数形成してもよい。このようにすれば、位置決めピン12,12A,12Bを複合機能型インサート2の本体部3に挿入した後、樹脂やモルタル等の充填材を充填する際に縦型の溝を通って充填されるので、充填性が良くなるという利点がある。
なお、本例ではコンクリート製重量物によって、断面矩形環状の構造物を施工する場合を例にとって説明する。
また、底版ブロック20を吊り下げる場合、吊り下げ用の鋼材21を底版ブロック20の立上り側壁20aに載置して、底版ブロック20に挿通したPC鋼棒22の上端部を鋼材21に固定したうえで、鋼材21をクレーンのワイヤ23によって吊り下げることによって行う。
なお、この鋼材21を使用することなく、底版ブロック20に埋設された複合機能型インサート2に前記吊り治具10を螺合して取り付け、この吊り治具10を吊り下げることによって底版ブロック20を吊り下げてもよい。
この場合、予め側壁ブロック25の上部と下部にそれぞれ前記複合機能型インサート2を埋設しておく。
側壁ブロック25の上部においては、複合機能型インサート2は、その本体部3の上端開口(先端開口)を側壁ブロック25の上面に開口させるようにして、埋設する。
また、側壁ブロック25の下部においては、複合機能型インサート2は、前記上部の複合機能型インサート2と向きを逆にし(図4(b)参照)、本体部3の下端開口を側壁ブロック25の下面に開口させるようにして、埋設する。
一方、立上り側壁20aに埋設された複合機能型インサート2の本体部3に、位置決めピン12を挿入しておく。位置決めピン12を挿入することによって、当該位置決めピン12の上端部が立上り側壁20aの上面から突出する。
また、側壁ブロック25にはシース管が上下に貫通するようにして埋設されており、このシース管にPC鋼棒が26が挿通されている。このPC鋼棒26を側壁ブロック25の下面から所定長さだけ突出させたうえで、当該側壁ブロック25を前記底版ブロック20の上方に吊り下げ、PC鋼棒26を底版ブロック20に設けられている前記PC鋼棒22にカップリング接続する。
この場合、予め頂版ブロック30の下面部に前記複合機能型インサート2を埋設しておく。
頂版ブロック30の下面部においては、複合機能型インサート2は、複合機能型インサート2と向きを逆にし、本体部3の下端開口を頂版ブロック30の下面に開口させるようにして、埋設する。
なお、頂版ブロック30の上面部に複合機能型インサート2を埋設しておき、その本体部3に吊り治具10を取り付け、この吊り治具10をワイヤ23によって吊り下げてもよい。
次に、この突出しているPC鋼棒26に油圧ジャッキで所定に緊張力を導入した後、シース管内にPCグラウト材を注入するとともに、PC鋼棒26の緊張端部(上端部)に仕上げ処理を行う。このようにして、底版ブロック20、側壁ブロック25および頂版ブロック30を強固に結合して一体化して、断面矩形環状の構造物Kを構築する。
最後に、この構造物Kを吊り下げて、所定の位置までクレーンによって移送する。
この埋設された複合機能型インサート2の本体部3の内周面の少なくとも一部には、台形雌ねじ5が形成されているので、この台形雌ねじ5に、台形雄ねじ10cを有する吊り治具10の当該台形雄ねじ10cを螺合することによって、当該吊り治具10を介して底版ブロック20、側壁ブロック25および頂版ブロック30を容易かつ確実に吊り下げることができる。
この場合、複合機能型インサート2の台形雌ねじ5に、吊り治具10の台形雄ねじ10cを螺合しているので、台形雌ねじ5に作用する応力は比較的分散される。このため、台形雌ねじ5に変形が生じるのを防止できる。また、ねじ込みに要する時間も短時間ですむ。
また、複合機能型インサート2に形成されている雌ねじが、台形雌ねじ5であるので、当該台形雌ねじ5に作用する応力は比較的分散される。このため、台形雌ねじ5に変形が生じるのを防止でき、この結果、位置決めピン12の位置精度やせん断力伝達機能の低下も防止できる。
図13は第2の実施の形態を説明するための図である。
本実施の形態では、コンクリート製重量物を吊り下げて横方向に移動させて接合している。
コンクリート製重量物40は例えば、板状のものであるが、前記構造物Kのように断面矩形環状のものでもよい。
すなわち、重量物40の表面の一つである接合面40aに、複合機能型インサート2が、その本体部3の先端開口を接合面40aに開口させるようにして埋設されている。
また、重量物40の接合面40a以外の表面である上面40bに、複合機能型インサート2が、その本体部3の先端開口を上面40bに開口させるようにして埋設されている。
まず、先行のコンクリート製重量物40の表面の一つである接合面40aに開口している複合機能型インサート2の本体部3にその先端開口から位置決めピン12を先行の重量物40の接合面40aから突出させた状態で挿入する。
なお、この位置決め孔40dは、前記複合機能型インサート2を接合面40cに本体部3の先端開口を接合面40cに開口させるようにして埋設することによって形成してもよい。
また、前記吊り治具10は先行の重量物40に後行の重量物40が接合された後、取り外す。
なお、本実施の形態では、複合機能型インサート2を重量物40の上面40bと接合面40aに埋設したが、接合面40aと、この接合面40aと直角に配置される側面40sに形成してもよい。
2,2A, 複合機能型インサート
3 本体部
4 抜け出防止部材
5 台形雌ねじ
10 吊り治具
台形雄ねじ 10c
12,12A,12B 位置決めピン
20 底版ブロック(コンクリート製重量物)
25 側壁ブロック(コンクリート製重量物)
30 頂版ブロック(コンクリート製重量物)
Claims (1)
- 複合機能型インサートが、その本体部の先端開口を、表面に開口させて埋設されているコンクリート製重量物どうしを接合するコンクリート製重量物の接合方法であって、
前記複合機能型インサートは、前記コンクリート製重量物の吊り下げ用で、かつ台形雄ねじが形成された吊り治具を取り付けるために使用されるとともに、当該コンクリート製重量物に他のコンクリート製重量物を接合する際の位置決めピンを挿入するために使用される複合機能型インサートであって、前記コンクリート製重量物に埋設され、かつ先端開口が前記コンクリート製重量物の表面に開口する円筒状の本体部と、前記コンクリート製重量物に埋設され、前記本体部に係合して当該本体部の前記コンクリート製重量物からの抜け出を防止する抜け出防止部材とを備え、前記本体部の内周面の少なくとも一部に、前記台形雌ねじが螺合する台形雌ねじが形成されおり、
後行の前記コンクリート製重量物を、先に設置されている先行のコンクリート製重量物に接合するに際し、
前記先行のコンクリート製重量物の表面である上面に開口している前記複合機能型インサートの本体部にその先端開口から位置決めピンを前記コンクリート製重量物の上面から突出させた状態で挿入する一方で、
前記後行のコンクリート製重量物の表面である上面に開口している前記複合機能型インサートの本体部にその先端開口から台形雄ねじを有する吊り治具をその台形雄ねじを前記本体部の台形雌ねじに螺合しておくとともに、前記後行のコンクリート製重量物に他の複合機能型インサートを、その本体部の先端開口を前記後行のコンクリート製重量物の表面である下面に開口させて埋設しておき、
前記吊り治具によって前記後行のコンクリート製重量物を吊り下げたうえで、当該後行のコンクリート製重量物を前記先行のコンクリート重量構造物の上面に設置して接合するとともに、前記先行のコンクリート製重量物の表面から突出している位置決めピンを、前記後行のコンクリート重量物の下面に開口している前記複合機能型インサートの本体部によって構成される位置決め孔に挿入することを特徴とするコンクリート製重量物の接合方法。
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