以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の第一実施形態に係るキッチン用水栓が、キッチンのシンクに取り付けられた状態を示す斜視図である。シンクSKは、平坦且つ水平な面である上面SKSを有している。上面SKSの略中央における部分は凹状に窪んでおり、空間SKDが形成されている。キッチン用水栓KFからの水は空間SKDに向けて吐出され、不図示の排水口から下水配管へと排出される。
キッチン用水栓KFは、上面SKSのうち空間SKDよりも奥側の部分に対し、その下端が固定されている。キッチン用水栓KFは、基部10と、スパウト部40と、操作部70と、切り替えボタン80とを備えている。
基部10は、キッチン用水栓KFのうち下方側の部分であって、その下端がシンクSKの上面SKSに対して固定されている。基部10は、上面SKSから上方に向かって延びるような略円柱形状となっており、その中心軸が上面SKSに対して略垂直となっている。
スパウト部40は、キッチン用水栓KFのうち上方側の部分であって、基部10の上端から更に上方に向かって延びるように延設されている。スパウト部40も基部10と同様に略円柱形状であるが、図1に示したように、その中心軸は使用者側に向かって傾斜している。スパウト部40のうち使用者側の側面(前方側の外側面)には、整流吐水部410と、シャワー吐水部420とが設けられており、これらが、キッチン用水栓KFから吐出される水の出口となっている。
整流吐水部410は、スパウト部40の上端部近傍であって、シャワー吐水部420よりも上方側(使用者側)となる位置に配置されている。整流吐水部410は、単一の吐水孔から水を吐出することによって、当該水が(シャワー状ではなく)単一のまとまった水流となるように構成されている。
シャワー吐水部420は、整流吐水部410よりも下方側(使用者から見て奥側)の部分に配置されている。シャワー吐水部420は、スパウト部40の延設方向に沿った縦長の領域の略全体に複数の吐水孔が形成されたものである。これら複数の吐水孔から水を吐出することによって、当該水がシャワー状の水流となるように構成されている。
整流吐水部410から水が吐出される方向、及びシャワー吐水部420から水が吐出される方向は、いずれも、スパウト部40の中心軸に対して垂直な方向である。すなわち、上面SKSに対して傾斜した方向であって、スパウト部40から下方側且つ前方側(使用者側)に向かう方向である。
このように、本実施形態に係るキッチン用水栓KFは、スパウト部40が使用者側に向かって傾斜しており、当該スパウト部40から下方側且つ前方側(使用者側)に向かって水を吐出する構成となっている。このため、一般的なキッチン用水栓KFのように鉛直下方に向かって水を吐出するような構成と比較すれば、スパウト部40の下方の空間が広く確保されており、食器、調理器具、食材等を洗う作業(洗浄作業)が行いやすくなっている。
操作部70は、整流吐水部410やシャワー吐水部420から吐出される水の流量を調整するために、使用者が操作する部分である。図1に示したように、操作部70は基部10の側面に配置されており、操作レバー71を有している。使用者が操作レバー71を掴んで操作部70を回転させると、その回転角度に応じた流量の水が、整流吐水部410やシャワー吐水部420から吐出される構成となっている。具体的には、基部10の内部には不図示の流量調整弁が配置されており、当該流量調整弁の開度が、操作部70の回転角度(操作量)に伴って変化する構成となっている。
切り替えボタン80は、整流吐水部410から水が吐出される状態と、シャワー吐水部420から水が吐出される状態とを切り換えるために、使用者が操作するものである。切り替えボタン80はスパウト部40の上端に配置されており、スパウト部40の中心軸に沿って進退する。
キッチン用水栓KFは、整流吐水部410及びシャワー吐水部420の両方から同時に水を吐出することはできず、いずれか一方のみから水が吐出する構成となっている。整流吐水部410のみから水が吐出される状態において、使用者が切り替えボタン80を一度押すと、シャワー吐水部420のみから水が吐出される状態に切り替わる。使用者が切り替えボタン80を再度押すと、整流吐水部410のみから水が吐出される状態に戻る。
例えば、コップ等の容器に水を汲むような作業(水汲み作業)を行う際には、整流吐水部410のみから水が吐出される状態とするのが便利である。また、洗浄作業を行う際には、シャワー吐水部420のみから水が吐出される状態とするのが便利である。
図2を参照しながら、スパウト部40の構成について説明する。図2は、キッチン用水栓KFのうちスパウト部40の構成を模式的に示す図である。このうち、図2(A)は、スパウト部40を前方側正面から(水が吐出される方向に沿って)見た図である。また、図2(B)は、スパウト部40の縦断面図である。すなわち、水が吐出される方向に沿ってスパウト部40を切断した場合における断面を示す図である。尚、図2(B)は、シャワー吐水部420の全体から水が吐出されている状態におけるスパウト部40の断面を示している。
スパウト部40の内部には、水道管から基部10を経由して流入した水を受け入れて、整流吐水部410やシャワー吐水部420に導くための流路が形成されている。当該流路は、第一流路450と、第二流路451と、圧力室460と、整流用流路452とからなる。
第一流路450は、基部10からスパウト部40に流入する水を受け入れる部分である。第二流路451は、第一流路450の下流側に形成された流路であって、シャワー吐水部420とは反対側の面に沿って形成された細い流路である。基部10からスパウト部40に流入した水は、第一流路450、第二流路451を順に通った後、後述の圧力室460又は整流用流路452に流入する。
整流用流路452は、第二流路451の下流側端部と整流吐水部410とを繋ぐ流路である。また、圧力室460は、シャワー吐水部420と第二流路451との間に形成された空間であって、第二流路451の下流側端部とシャワー吐水部420とを繋ぐ流路となっている。つまり、第二流路451よりも下流側は二つの流路(整流用流路452、圧力室460)に分岐しており、第一流路450及び第二流路451を通過した水が、整流吐水部410又はシャワー吐水部420に到達し得る構成となっている。
第二流路451の下流側には弁体81が配置されている。弁体81は、使用者が切り替えボタン80を押すのに伴って図2(B)における上下方向に移動して、整流用流路452の入口を塞いだ状態、又は圧力室460の入口を塞いだ状態のいずれかとなるものである。
このため、キッチン用水栓KFは、図2(B)のように第二流路451から整流用流路452に水が流入する経路が弁体81で塞がれた状態(シャワー吐水部420のみから水が吐出される状態)、又は第二流路451から圧力室460に水が流入する経路が弁体81で塞がれた状態(整流吐水部410のみから水が吐出される状態)のいずれかとなる。
シャワー吐水部420は、複数の吐水孔422が穿設された散水板421によって構成されている。散水板421は、圧力室460を使用者側から塞ぐように配置された板であって、スパウト部40の外側面の一部をなしている。第二流路451から圧力室460に流入した水が、それぞれの吐水孔422を通って外部に吐出されることにより、シャワー状の水流が形成される。
散水板421は略長方形状の板であり、その長辺がスパウト部40の長手方向(延設方向)に沿うように配置されている。また、散水板421は、その幅方向(短辺方向)における中央部が水の吐出方向に向けて凸状となるよう湾曲している。
散水板421に穿設された複数の吐水孔422は、図2(A)に示したように3つのグループ(第一グループ423、第二グループ424、第三グループ425)に分かれている。それぞれのグループにおいては、48個の吐水孔422が8行×6列に整列しており、その全体が矩形状となっている。第一グループ423は最も上方側(使用者側)に形成されたグループであり、第三グループ425は最も下方側(基部10側)に形成されたグループである。第二グループ424は、第一グループ423と第三グループ425の間となる位置に形成されたグループである。つまり、第一グループ423、第二グループ424、第三グループ425は、スパウト部40の長手方向に沿って上方から順に並んでいる。尚、本実施形態においては、全ての吐水孔422は互いに同一の形状となっている。
圧力室460のうちシャワー吐水部420側の部分は、散水板421に対して垂直に配置された仕切板427と、散水板421に対して平行に配置された隔壁428とによって、3つの空間(第一空間461、第二空間462、第三空間463)に分割されている。これらは、上記の第一グループ423、第二グループ424、第三グループ425に対応している。つまり、第一グループ423に属する吐水孔422は全て第一空間461と外部空間とを連通させるものとなっており、第二グループ424に属する吐水孔422は全て第二空間462と外部空間とを連通させるものとなっており、第三グループ425に属する吐水孔422は全て第三空間463と外部空間とを連通させるものとなっている。尚、以下の説明においては、圧力室460のうち隔壁428よりも内側(散水板421とは反対側)の部分を「第0空間464」称することとする。
隔壁428には、第一空間461と第0空間464とを連通させる貫通孔HL1が形成されている。また、隔壁428のうち散水板421側の面には、貫通孔HL1を外側から囲むように環状の弁座441が形成されている。
第一空間461の内部には、平板状の弁体471が収納されている。弁体471は、隔壁428と平行に配置されており、隔壁428に垂直な方向に沿って移動可能な状態となっている。弁体471は、その外周の全体が第一空間461の内面に接しており、図2(B)に示したように、第一空間461が弁体471によって二つの空間に分けられている。ただし、弁体471には貫通孔477が形成されているため、これら二つの空間は貫通孔477によって連通している。
弁体471のうち隔壁428側の面には、円板状のパッキン474が固定されている。パッキン474は、弁体471のうち貫通孔477よりも内側の部分に固定されているが、その外形は弁座441よりも大きい。このため、弁体471が隔壁428側に移動すると、パッキン474が弁座441の全体に押し付けられた状態となり、弁体471によって貫通孔HL1が塞がれた状態となる。
弁体471の中心には、隔壁428側に向かって延びる円柱状のロッド481が固定されている。ロッド481は、その中心軸が隔壁428に対して垂直である。ロッド481は、その中心軸に沿って弁体471と共に移動可能となるように、隔壁428を貫くように形成された摺動ガイド484によって保持(案内)されている。
ロッド481のうち、弁体471が固定されている方とは反対側の端部は、第0空間464の内部に配置されている。当該端部の近傍には、ロッド481の中心軸に対して垂直な円板であるストッパ487が固定されている。また、ストッパ487と隔壁428との間にはコイルばね491が配置されており、ロッド481がコイルばね491の中央を貫いた状態となっている。コイルばね491により、ストッパ487が隔壁428から離れる方向に付勢されている。換言すれば、弁体471が隔壁428に近づく方向に付勢されている。
キッチン用水栓KFから水が吐出されていない状態においては、コイルばね491によってパッキン474が弁座441の全体に押し付けられて、弁体471によって貫通孔HL1が塞がれた状態となっている。つまり、第0空間464内の水が第一空間461及びシャワー吐水部420へと流出することができない状態となっている。
水道管(給水源)から基部10を経由してスパウト部40に水が流入すると、第0空間464内の水圧が上昇して、図2(B)に示したように弁体471は当該水圧によって散水板421側に押し下げられる。弁体471が弁座441から離れて、貫通孔HL1が塞がれていない状態となるため、第0空間464内の水が貫通孔HL1を通じて第一空間461に流入する。当該水は、貫通孔477を通過して弁体471と散水板421との間の空間に流入した後、吐水孔422を通って外部へ吐出される。
尚、弁体471が散水板421側に押し下げられて行った場合においては、弁体471が散水板421に当接するよりも前に、摺動ガイド484の端面にストッパ487が当接するような構成となっている。このように、弁体471が散水板421に接触して吐水孔422を塞いでしまうことが抑制されている。
尚、以上においては、第一空間461及びその内部に収納された弁体471等の構造を具体的に説明したが、第二空間462及びその内部に収納された弁体472等の構造、及び、第三空間463及びその内部に収納された弁体473等の構造についても、以上に説明したものと同様の構成となっている。
従って、キッチン用水栓KFから水が吐出されていない状態においては、コイルばね492によってパッキン475が弁座442の全体に押し付けられており、第二空間462と第0空間464とを連通させる貫通孔HL2が、弁体472によって塞がれた状態となっている。同様に、コイルばね493によってパッキン476が弁座443の全体に押し付けられており、第三空間463と第0空間464とを連通させる貫通孔HL3が、弁体473によって塞がれた状態となっている。
但し、コイルばね491のばね定数は、コイルばね492のばね定数よりも小さくなっている。また、コイルばね492のばね定数は、コイルばね493のばね定数よりも小さくなっている。このため、弁体471のパッキン474が弁座441に押し付けられる力は最も弱くなっており、弁体473のパッキン476が弁座443に押し付けられる力は最も強くなっている。
コイルばね491、492、493のそれぞれのばね定数は、上記のように互いに異なっている。このため、第0空間464内の水圧を次第に上昇させて行った場合(操作部70を回転させて流量調整弁を開いて行った場合)には、まず弁体471が弁座441から離れた状態となり、続いて、弁体472が弁座442から離れた状態となり、最後に、弁体473が弁座443から離れた状態となる。その結果、シャワー吐水部420から水が吐出される際においては、全ての吐水孔422から同時に水が吐出され始めるのではなく、先ず、第一グループ423に属する吐水孔422のみから水が吐出され始める。
シャワー吐水部420からの水の吐出について、更に詳しく説明する。図3はキッチン用水栓KFの動作を説明するための図である。図3(A)乃至(D)のそれぞれの上段には、スパウト部40の縦断面を示している。
また、図3(A)乃至(D)のそれぞれの下段は、スパウト部40が各上段に示した状態となっている際において、シャワー吐水部420からどのように水が吐出されるかを示す図である。当該図において、吐水孔422のうち黒色に塗りつぶされた円として描かれたものは、水が吐出されている吐水孔422を示している。塗りつぶされていない円として描かれたものは、水が吐出されていない吐水孔422を示している。
図3(A)は、基部10の内部に配置された流量調整弁が完全に閉じられているときの、スパウト部40の状態等を示している。スパウト部40には水道管からの水が供給されず、シャワー吐水部420から吐出される水の流量は0となっている。
また、このときにおける圧力室460(第0空間464)内の水圧は低く、当該水圧によって弁体471が受ける力は小さい。このため、コイルばね491の付勢力によってパッキン474が弁座441の全体に押し付けられた状態となっており、弁体471によって貫通孔HL1が塞がれた状態となっている。同様に、弁体472によって貫通孔HL2が塞がれており、弁体473によって貫通孔HL3も塞がれている。
圧力室460(第0空間464)は、スパウト部40の長手方向に沿って細長く形成された空間であるから、重力の影響により、その上方部分における水圧が下方部分における水圧よりも低くなっている。このため、図3(A)に示した状態から水が吐出され始めたとき(吐出される水の流量が小さいとき)には、このような水圧の分布に起因して、シャワー吐水部420のうち上方部分から吐出される水の流速が著しく低くなってしまうことが考えられる。そこで、キッチン用水栓KFでは、スパウト部40内の機構によって第0空間464内の水圧を上昇させ、吐出される水の流速が速くなるように構成されている。換言すれば、第0空間464内のうち上部における水圧が低いことに起因して流速の低い水が吐出されてしまうことを抑制するような機構(低流速吐出抑制手段)を、スパウト部40内に備えている。以下、詳しく説明する。
図3(A)に示した状態から、使用者が操作レバー71を掴んで操作部70を回転させる(但し、その回転角度は小さいものとする)と、基部10の内部で流量調整弁が開いて、スパウト部40の第一流路450内に水が流入し始める。このとき、貫通孔HL1、HL2、HL3が全て塞がれているため、水の流入に伴って第0空間464内の水圧が上昇し始める。
当該水圧によって、弁体471には散水板421側に向かう方向の力が加えられる。しかし、流量調整弁の開度が小さく(操作部70の操作量が小さく)、且つ第0空間464内の水圧が上昇し始めた直後の状態においては、水圧によって弁体471に加えられる力よりも、コイルばね491の付勢力の方が依然として大きい。このため、弁体471は水圧から受ける力によっては移動せず、貫通孔HL1は弁体471によって塞がれたままである。また、弁体472及び弁体473にも水圧によって力が加えられるが、コイルばね492、493の付勢力は、いずれもコイルばね491の付勢力よりも大きい。このため、弁体472及び弁体473も、水圧から受ける力によっては移動しない。
このように、操作部70を回転させ始めても、その時点では弁体471、472、473は移動しない。スパウト部40は図3(A)に示した状態のままであり、シャワー吐水部420から水は吐出されない状態のままである。このように、圧力室460(第0空間464)の水圧(特に上方部分の水圧)が低いまま、流速の低い水が吐出されてしまうことが抑制されている。
その後、水の流入によって第0空間464内の水圧が更に上昇すると、水圧によって弁体471に加えられる力がコイルばね491の付勢力よりも大きくなる。弁体471は当該水圧によって散水板421側に押し下げられて、第0空間464から第一空間461に水が流入し始める。その結果、第一グループ423に属する吐水孔422から水が吐出され始める。図3(B)はこのときの状態を示している。
この時点では、水圧によって弁体472に加えられる力はコイルばね492の付勢力よりも小さい。また、水圧によって弁体473に加えられる力はコイルばね493の付勢力よりも小さい。このため、弁体472及び弁体473は、水圧から受ける力によっては未だ移動しない。貫通孔HL2は弁体472によって塞がれたままであり、貫通孔HL3は弁体473によって塞がれたままである。従って、図3(B)に示したように、第一グループ423に属する吐水孔422のみから水が吐出され、第二グループ424、第三グループ425に属する吐水孔422からは水は吐出されない。
シャワー吐水部420から水が吐出され始めた後は、スパウト部40内の水圧は定常的となる。つまり、使用者の操作によって操作部70の回転角度が変化しない限り、圧力室460内の水圧は上昇せず一定のままであるため、図3(B)に示した状態が継続される。
図3(B)に示した状態から、使用者が操作部70を更に回転させると、スパウト部40の第一流路450内に流入する水の流量が大きくなる。圧力室460(第0空間464)内の水圧は更に上昇し、当該水圧によって弁体472に加えられる力が、コイルばね492の付勢力よりも大きくなる。弁体472は当該水圧によって散水板421側に押し下げられて、第0空間464から第二空間462にも水が流入し始める。その結果、第一グループ423に属する吐水孔422に加えて、第二グループ424に属する吐水孔422からも水が吐出され始める。図3(C)はこのときの状態を示している。
この時点では、水圧によって弁体473に加えられる力はコイルばね493の付勢力よりも小さい。このため、弁体473は、水圧から受ける力によっては未だ移動しない。貫通孔HL3は弁体473によって塞がれたままである。従って、図3(C)に示したように、第三グループ425に属する吐水孔422からは水は吐出されない。
図3(C)においても、スパウト部40内の水圧は定常的となっている。つまり、使用者の操作によって操作部70の回転角度が変化しない限り、圧力室460内の水圧は上昇せず一定のままであるため、図3(C)に示した状態が継続される。
図3(C)に示した状態から、使用者が操作部70を更に回転させると、スパウト部40の第一流路450内に流入する水の流量が更に大きくなる。圧力室460(第0空間464)内の水圧は更に上昇し、当該水圧によって弁体473に加えられる力が、コイルばね493の付勢力よりも大きくなる。弁体473は当該水圧によって散水板421側に押し下げられて、第0空間464から第三空間463にも水が流入し始める。その結果、第三グループ425に属する吐水孔422からも水が吐出され始める。即ち、散水板421に穿設された全ての吐水孔422から水が吐出されている状態となる。図3(D)はこのときの状態を示している。
洗浄作業が終了して、使用者が操作部70を逆方向に回転させると、シャワー吐水部420からの水の吐出は停止する。キッチン用水栓KFは、図3(D)に示した状態から図3(A)に示した状態に戻る。
このとき、圧力室460内は水で満たされた状態となっているが、弁体471、472、473によって貫通孔HL1、HL2、HL3がそれぞれ塞がれた状態となっているため、圧力室460内の水がシャワー吐水部420から外部に流出してしまうことがない。すなわち、水の吐出を停止するような操作がなされたにも拘わらず、その後もシャワー吐水部420から水が流出するような現象(水だれ)が生じてしまうことがない。
以上のように、本実施形態に係るキッチン用水栓KFでは、シャワー吐水部420から吐出される水の流量が小さい場合には、シャワー吐水部420のうち狭い範囲から水が吐出される。一方、シャワー吐水部420から吐出される水の流量が大きい場合には、シャワー吐水部420のうち広い範囲から水が吐出される。また、このような吐出領域の広さの変更は、吐出される水の流量に応じて(操作部70の操作量に応じて)自動的に行われる。
また、スパウト部40内に配置された複数の弁体(471、472、473)の動作によって、圧力室460内のうち上部における水圧が低い状態のまま水が吐出されてしまうことが抑制されている。つまり、スパウト部40内の上部の水圧が低いことに起因して流速の低い水が吐出されてしまうことが抑制されている。その結果、シャワー吐水部420から吐出される水が縮流となってしまうことがない。
弁体471が弁座441から離れた状態となった時点における第0空間464内の水圧を、弁体471の開放水圧と定義する。同様に、弁体472が弁座442から離れた状態となった時点における第0空間464内の水圧を、弁体472の開放水圧と定義する。弁体473が弁座441から離れた状態となった時点における第0空間464内の水圧を、弁体473の開放水圧と定義する。上記の説明で明らかなように、これら3つの開放水圧は互いに異なる高さとなっている。キッチン用水栓KFでは、開放水圧の異なる複数の弁体(開閉弁)を配置するという構成によって、シャワー吐水部420のうち水を吐出している領域の広さを段階的に増加させることを可能としている。
また、シャワー吐水部の420うちシャワー状に水を吐出している領域の形状は、スパウト部40の延設方向に沿った長さにおいて変化する。すなわち、使用者側から見て水流の奥行き方向の寸法が変化するように、シャワー吐水部420のうちシャワー状に水を吐出している領域の形状が変化する。
このような構成により、吐出される水の流量が小さいときには、水流の奥行き方向の寸法が短くなる。つまり、キッチン用水栓KFから吐出された水の掛かる範囲が、縦長ではなくなる方向に変化する。その結果、より狭い範囲に水を掛けることが可能な状態となるため、箸等の小型品を洗浄する際における無駄水の発生を更に抑制することができる。
本実施形態では、吐出される水の流量に基づく吐出領域の広さの変更を、コイルばね491、492、493のそれぞれのばね定数を互いに異ならせることによって実現している。しかし、本発明の実施態様はこのようなものに限られない。例えば、全てのコイルばね491、492、493のばね定数を全て同一とした上で、各パッキン474、475、476の受圧面積の大きさを互いに異ならせてもよい。このような構成においては、第0空間464内の水圧によって各弁体471、472、473が受ける力の大きさが互いに異なるものとなるので、それぞれが異なるタイミングで移動することとなる。このような構成でも、吐出される水の流量(操作部70の操作量)に基づいて吐出領域の広さが自動的に変更される。
本実施形態に係るキッチン用水栓KFでは、弁体471、472、473やコイルばね491、492、493等からなる機構が、スパウト部40の内部に配置されている。当該機構は、シャワー吐水部420から吐出される水の流量が小さいとき(操作部70の操作量が小さいとき)には、第0空間464から外部に通じる流路の全部又は一部を塞ぐことによって第0空間464内の水圧を上昇させ、これにより吐出される水の流速を速くする。すなわち、当該機構は、本発明における低流速吐水抑制手段として機能するものである。
シャワー吐水部420から吐出される水の流量が小さいときには、二つの弁体(472、473)によって流路が塞がれた状態となるため、水の出口が比較的小さく、吐出される水の流量変化に対する第0空間464内の水圧変化は大きい。また、シャワー吐水部420から吐出される水の流量が大きくなると、一つの弁体473によって流路が塞がれた状態となるため、水の出口が比較的大きく、吐出される水の流量変化に対する第0空間464内の水圧変化は小さい。このように、キッチン用水栓KFは、シャワー吐水部420から吐出される水の流量が小さいときには、操作部70の操作によって流量を僅かに増加させたたけで、第0空間464内の水圧が大きく上昇するように構成されている。
図4は、キッチン用水栓KFから吐出される水流の形態を説明するための図であって、キッチンにおいて洗浄作業が行われている様子を模式的に示している。このうち、図4(A)は、箸等の小型品が洗浄されている様子を示している。
図4(A)のように被洗浄物OBが小さい場合には、キッチン用水栓KFから吐出される水の流量が小さくなるよう、使用者によって操作部70が操作される。その結果、図4(A)では、スパウト部40は図3(B)に示した状態となっており、第一グループ423に属する吐水孔422のみから水が吐出されている。
図4(A)においては、シャワー状に吐出される一群の水流の全体が細くなっているため、キッチン用水栓KFから吐出された水の大部分は被洗浄物OBに当たり、汚れの除去に寄与している。すなわち、被洗浄物OBに当たることなくシンクSKに到達し排出されるような無駄水の発生が抑制されている。また、キッチン用水栓KFから吐出される水の流量は小さくなっているが、シャワー吐水部420のうち狭い範囲からのみ水が吐出されるため(換言すれば、スパウト部40内の機構によって第0空間464内の水圧が上昇しているため)、吐出される水の流速は速くなっており、洗浄性能が向上している。このため、小流量の吐水であっても、被洗浄物OBに付着している汚れが確実に洗い落とされる。
また、シャワー吐水部420から吐出される水の流量は小さいが、シャワー吐水部420から吐出された水は、スパウト部40から鉛直下方に向けて流下するのではなく、スパウト部40の使用者側先端の位置よりも更に使用者側にまで到達するように流れる。換言すれば、このような流れが形成される程度に第0空間464内の水圧を上昇させている。
図4(B)は、皿等の中型品が洗浄されている様子を示している。図4(B)のように、箸等よりも大きな被洗浄物OBを洗浄する場合には、キッチン用水栓KFから吐出される水の流量が大きくなるように、使用者によって操作部70が操作される。その結果、図4(B)では、スパウト部40が図3(C)に示した状態となっており、第一グループ423に属する吐水孔422に加えて第二グループ424に属する吐水孔422からも水が吐出されている。
図4(B)においては、シャワー状に吐出される一群の水流の全体が、図4(A)に示した状態よりも太くなっている。このため、中型品である被洗浄物OBの全体を、短時間で一気に洗うことが可能となっている。ただし、散水板421に穿設された全ての吐水孔422から水が吐出されているわけではないため、被洗浄物OBに当たることなくシンクSKに到達し排出されるような無駄水の発生は、やはり抑制されている。
図4(C)は、鍋等の大型品が洗浄されている様子を示している。図4(C)のように被洗浄物OBが大きい場合には、キッチン用水栓KFから吐出される水の流量が更に大きくなるように、使用者によって操作部70が操作される。その結果、図4(C)では、スパウト部40が図3(D)に示した状態となっており、第三グループ425に属する吐水孔422からも水が吐出されている。即ち、散水板421に穿設された全ての吐水孔422から水が吐出されている。
図4(C)においては、シャワー状に吐出される一群の水流の全体が、図4(B)に示した状態よりも更に太くなっている。このため、大型品である被洗浄物OBの全体を、短時間で一気に洗うことが可能となっている。
以上のように、キッチン用水栓KFでは、箸等の小型品を洗浄する場合には水の流量が小さくされ、鍋等の大型品を洗浄する場合には水の流量が大きくされることをうまく利用しており、水が吐出される領域の広さを流量に応じて変化させることで、被洗浄物OBに合わせた適切な水流を吐出し得る構成となっている。
また、シャワー吐水部420から吐出される水の流量に応じて第0空間464内の水圧を上昇させるように構成されているため、第0空間464のうち上部における水圧が低いことに起因して流速の低い水が吐出されてしまうことが抑制される。吐出される水の流速が速くなる結果、縮流の発生が抑制され、シャワー状の水流が確実に形成されるため、洗浄性能の低下が抑制される。また、シャワー吐水部420から吐出された水は、スパウト部40から鉛直下方に向けて流下するのではなく、スパウト部40から使用者側(前方側)に向かって流れる。このため、吐出される流量が大きい場合と同様に、使用者は楽な姿勢で洗浄作業を行うことができる。
続いて、図5を参照しながら、シャワー吐水部420から吐出される水の流量と流速の関係について説明する。図5は、当該関係を示すグラフであって、吐出される水の流量を横軸に示しており、吐出される水の流速を縦軸に示している。
使用者による操作部70の操作量が小さく(基部10の内部に配置された流量調整弁の開度が小さく)、シャワー吐水部420から吐出される水の流量が小さい場合には、既に説明したように、第一グループ423に属する吐水孔422からのみ水が吐出される。図5では、第一グループ423に属する吐水孔422のみから水が吐出されるような流量の範囲を、流量範囲AR1として示している。
シャワー吐水部420から吐出される水の流量が大きくなり、流量範囲AR1を超えた場合には、第二グループ424に属する吐水孔422からも水が吐出され始める。図5では、このように第一グループ423に属する吐水孔422、及び第二グループ424に属する吐水孔422から水が吐出されるような(但し、第三グループ425に属する吐水孔422からは水が吐出されない)流量の範囲を、流量範囲AR2として示している。
シャワー吐水部420から吐出される水の流量が更に大きくなり、流量範囲AR2を超えた場合には、第三グループ425に属する吐水孔422からも水が吐出され始める。図5では、このように全ての吐水孔422から水が吐出されるような流量の範囲を、流量範囲AR3として示している。
ここで、シャワー吐水部420のうち、第一グループ423に属する吐水孔422が形成されている領域を第一吐水領域J1と定義する。同様に、第二グループ424に属する吐水孔422が形成されている領域を第二吐水領域J2と定義し、第三グループ425に属する吐水孔422が形成されている領域を第三吐水領域J3と定義する。つまり、図2(A)に示したように、シャワー吐水部420を三つの吐水領域(第一吐水領域J1、第二吐水領域J2、第三吐水領域J3)に区分する。
図5に示したように、シャワー吐水部420から吐出される水の流量が流量範囲AR1内で変化する限りにおいては、操作部70の操作量に応じて水の流量及び流速が変化するが、水を吐出している吐水孔422の数は変わらない。つまり、第一吐水領域J1からのみ水を吐出しており、水を吐出している吐水領域の数は流量によらず1のままである。
また、シャワー吐水部420から吐出される水の流量が流量範囲AR1を超えると、第二吐水領域J2からも水を吐出し始めるため、水を吐出している吐水領域の数は1から2に変化する。その後、シャワー吐水部420から吐出される水の流量が流量範囲AR2内で変化する限りにおいては、操作部70の操作量に応じて水の流量及び流速が変化するが、水を吐出している吐水孔422の数は変わらない。つまり、第一吐水領域J1と第二吐水領域J2とからのみ(第三吐水領域J3以外から)水を吐出しており、水を吐出している吐水領域の数は流量によらず2のままである。
また、シャワー吐水部420から吐出される水の流量が流量範囲AR2を超えると、第三吐水領域J3からも水を吐出し始めるため、水を吐出している吐水領域の数は2から3に変化する。その後、シャワー吐水部420から吐出される水の流量が流量範囲AR3内で変化する限りにおいては、操作部70の操作量に応じて水の流量及び流速が変化するが、水を吐出している吐水孔422の数は変わらない。つまり、全ての吐水領域から水を吐出しており、水を吐出している吐水領域の数は流量によらず3のままである。
このように、キッチン用水栓KFは、水を吐出している吐水領域の数が、シャワー吐水部420から吐出される水の流量に応じて段階的に変化するように構成されている。換言すれば、シャワー吐水部420のうち水を吐出している領域の広さ(シャワー状に吐出される一群の水流の太さ)が連続的に変化するのではなく、複数に区分されてなる個々の領域(吐水領域)の広さを単位として段階的に(離散的に)変化するように構成されている。
このような構成により、シャワー吐水部420のうち水を吐出している領域の広さを変化させずに、当該吐水領域から吐出される水の流量(及び流速)だけを変化させることが可能となっている。例えば、(小型品である)箸の汚れが著しい場合には、流量範囲AR1を超えない範囲において流量を調整することにより、シャワー状に吐出される一群の水流の太さを変化させることなく(無駄水を生じさせることなく)水の流量(及び流速)だけを増加させ、洗浄性能を高めた状態で箸の洗浄を行うことが可能となっている。
同様に、第一吐水領域J1と第二吐水領域J2とからのみ水を吐出している状態のまま水の流量を増加させることも可能であり、全ての吐水領域から水を吐出している状態のまま水の流量を増加させることも可能である。
尚、図5に示した点線DL1は、シャワー吐水部420から吐出された水がシャワー状の水流を形成するために、最低限必要となる水の流速を示している。吐出された水の流速が点線DL1を下回った場合には、互いに隣り合う吐水孔422から吐出された水同士が一体化してしまい、(シャワー状の水流ではなくなって)縮流となって流下する。その結果、洗浄性能は著しく低下してしまう。
また、図5に示した点線DL2は、仮に、常にシャワー吐水部420の全体から(全ての吐水孔422から)水を吐出するような構成とした場合における、水の流量と流速の関係を示している。このような構成では、吐出される水の流量と流速がほぼ比例するため、(小型品を洗浄するために)吐出される水の流量を小さくした場合には、確実に水の流速が点線DL1を下回り、洗浄性能が低下してしまうこととなる。従って、洗浄性能を高くした状態で小型品を洗浄するためには、(吐出された水の大部分が被洗浄物に当たらないにも拘らず)流量を大きくする必要があり、多量の無駄水が生じてしまうこととなる。
そこで、キッチン用水栓KFでは、吐出される水の流量をどのような大きさとした場合であっても、水の流速が点線DL1を下回ることなく確実にシャワー状の水流が形成されるように、コイルばね491、492、493のそれぞれのばね定数や、吐水孔422の孔径等が設計されている。その結果、小型品を洗浄するために吐出される水の流量を小さくした際においても、流速が所定以上となって確実にシャワー状の水流が形成されるため、高い洗浄性能が維持される。
既に述べたように、流量調整弁の開度が小さく(操作部70の操作量が小さく)、且つ第0空間464内の水圧が上昇し始めた直後の状態においては、弁体471、472、473は水圧から受ける力によっては移動せず、シャワー吐水部420から水は吐出されない状態のままとなっている。すなわち、第0空間464内の水圧が所定圧力を下回っている場合には、水を吐出している吐水領域の数が0となるように構成されている。
第0空間464内の水圧がある程度高くなるまでの間(弁体471の開放水圧よりも低い間)は、シャワー吐水部420からは水が吐出されないため、水の流速が図5に示した点線DL1を下回ることはない。換言すれば、第0空間464内の水圧が高くなってから水が吐出されるため、確実にシャワー状の水流が形成されて見た目にも綺麗であり、洗浄性能も確実に発揮される。尚、このような構成においては、使用者が操作部70を操作し始めてから水が吐出され始めるまでの間にタイムラグが生じる。しかし、第0空間464内の水圧が上昇するのに要する時間は非常に短いため、当該タイムラグによってキッチン用水栓KFの使用感が損なわれてしまうことはない。
キッチン用水栓KFでは、図3(A)のように水を吐出している吐水領域の数が0である状態から、第0空間464内の水圧を上昇させて行った場合、最初に第一吐水領域J1から水を吐出し始める。その後、第0空間464内の水圧の上昇に伴って、第二吐水領域J2、第三吐水領域J3の順に水を吐出し始める。
図2等に示したように、最初に水を吐出し始める領域である第一吐水領域J1は、その後に水を吐出し始める領域である第二吐水領域J2よりも、使用者側から見て近い位置(本実施形態ではスパウト部40のうち上方側)に配置されている。このため、シャワー吐水部420から水が吐出されている状態においては、吐出される水の流量の大小に拘わらず、使用者側から見て近い方の第一吐水領域J1からは常に水が吐出されている。換言すれば、吐出される水の流量が変化しても、シャワー状となっている水流の範囲が使用者側に近づくように変化することがない。このため、流量が増加するように操作部70が操作され、シャワー状となっている水流の範囲が広がっても、それにより使用者の衣服等に水が掛かってしまうことがない。また、使用者が食器や手を洗う場合に、大きく前かがみになる必要がないという利点もある。
尚、使用者側から見て最も近い位置にある第一吐水領域J1を、最初に水を吐出し始める領域とするのが上記のように望ましいのであるが、使用者側から見て最も遠い位置(本実施形態ではスパウト部40のうち下方側)にある第三吐水領域J3を、最初に水を吐出し始める領域とすることももちろん可能である。
図6は、このような態様とした場合におけるキッチン用水栓、すなわち、本発明の第二実施形態に係るキッチン用水栓KFaの動作を説明するための図である。図6では、スパウト部40aの縦断面等を図3と同様の方法にて示している。
キッチン用水栓KFaは、コイルばね491a、492a、493aのそれぞれのばね定数においてのみキッチン用水栓KFと異なっており、他の構成についてはキッチン用水栓KFと同様である。キッチン用水栓KFaでは、弁体471aを付勢するコイルばね491aのばね定数が最も大きくなっており、弁体473aを付勢するコイルばね493aのばね定数が最も小さくなっている。
このため、第0空間464a内の水圧が上昇していくと、最も下方(使用者側から見て最も遠い位置)に配置された弁体473aが最初に移動して、第0空間464aから第三空間463aに水が流入し始める。その結果、図6(B)に示したように、第三グループ425aに属する吐水孔422aから水が吐出され始める。
その後は、第0空間464a内の水圧が上昇していくのに伴って、図6(C)に示したように、第二グループ424aに属する吐水孔422aから水が吐出され始める。更にその後、図6(D)に示したように、第一グループ423aに属する吐水孔422aから水が吐出され始める。
本発明の第一実施形態に係るキッチン用水栓KFでは、図2等に示したように、第一グループ423に属する吐水孔422の個数、第二グループ424に属する吐水孔422の個数、及び第三グループ425に属する吐水孔422の個数が、全て同一(48個)となっている。その結果、第一吐水領域J1の広さ、第二吐水領域J2の広さ、及び第三吐水領域J3の広さが全て同一となっている。
しかしながら、本発明の実施態様はこのようなものに限られる必要はなく、複数の吐水領域の広さを互いに異ならせてもよい。図7は、このような態様とした場合におけるキッチン用水栓、すなわち、本発明の第三実施形態に係るキッチン用水栓KFbにおける、散水板421bの形態を示す図である。キッチン用水栓KFbは、散水板421bに穿設された吐水孔422bの配置においてキッチン用水栓KFと異なっている。また、それに伴い、スパウト部40bの内部における弁体471bの大きさ等についても、キッチン用水栓KFと異なっている。但し、第0空間464b内の水圧が低い場合には第一吐水領域J1bのみから水が吐出されること等については、キッチン用水栓KFの場合と同様となっている。
図7に示したように、散水板421bに穿設された複数の吐水孔422bは、3つのグループ(第一グループ423b、第二グループ424b、第三グループ425b)に分かれている。第一グループ423bにおいては、18個の吐水孔422bが3行×6列に整列しており、その全体が矩形状となっている。第二グループ424bにおいては、48個の吐水孔422bが8行×6列に整列しており、その全体が矩形状となっている。第三グループ425bにおいては、78個の吐水孔422bが13行×6列に整列しており、その全体が矩形状となっている。
第一グループ423bは最も上方側(使用者側)に形成されたグループであり、第三グループ425bは最も下方側(基部10b側)に形成されたグループである。第二グループ424bは、第一グループ423bと第三グループ425bの間となる位置に形成されたグループである。つまり、第一グループ423b、第二グループ424b、第三グループ425bは、スパウト部40bの長手方向に沿って上方から順に並んでいる。
このように、本実施形態においては、第0空間464b内の水圧を上昇させて行った場合において最初に水を吐出し始める吐水領域(第一吐水領域J1b)が、複数の吐水領域のうち最も狭い領域となっている。このような構成とすることにより、小流量の吐水が行われている際の水流(シャワー状をなす水流)が更に小さく(細く)なるため、箸等の小型品を洗浄する場合における無駄水の発生を更に抑制することが可能となっている。
続いて、本発明の第四実施形態に係るキッチン用水栓KFcについて説明する。図8は、キッチン用水栓KFcのうちスパウト部40cの構成を模式的に示す図である。このうち、図8(A)は、スパウト部40cを前方側正面から(水が吐出される方向に沿って)見た図である。また、図8(B)は、スパウト部40cの縦断面図である。すなわち、水が吐出される方向に沿ってスパウト部40cを切断した場合における断面を示す図である。
キッチン用水栓KFcは、圧力室460cの形状とその内部構造、及び、散水板421cに形成された吐水孔422cの形状においてキッチン用水栓KFと異なっているが、他の構成についてはキッチン用水栓KFと同様である。このため、以下ではキッチン用水栓KFとの相違点についてのみ説明し、共通する点についてはその説明を適宜省略する。
キッチン用水栓KFcでは、圧力室460cの内部に仕切板(427)や隔壁(428)が配置されていない。また、圧力室460cの内部には弁体(471、472、473)も配置されていない。このため、スパウト部40cの内部のうち散水板421cの内側全体が一つの空間となっている。第二流路451cから圧力室460cに水が供給されると、当該水はそのまま吐水孔422cを通過して外部に吐出される。
図9は、キッチン用水栓KFcの散水板421cの形態を示す図である。図9に示したように、散水板421cに穿設された複数の吐水孔422cは3つのグループ(第一グループ423c、第二グループ424c、第三グループ425c)に分かれている。それぞれのグループにおいては、48個の吐水孔422cが8行×6列に整列しており、その全体が矩形状となっている。第一グループ423cは最も上方側(使用者側)に形成されたグループであり、第三グループ425cは最も下方側(基部10c側)に形成されたグループである。第二グループ424cは、第一グループ423cと第三グループ425cの間となる位置に形成されたグループである。つまり、第一グループ423c、第二グループ424c、第三グループ425cは、スパウト部40cの長手方向に沿って上方から順に並んでいる。
散水板421cにおけるそれぞれの吐水孔422cの位置は、散水板421におけるそれぞれの吐水孔422と同じ位置となっている。ただし、本実施形態においては、全ての吐水孔422cが互いに同一の形状となっているのではなく、第二グループ424cに属する吐水孔422cの直径、及び第三グループ425cに属する吐水孔422cの直径が、いずれも、キッチン用水栓KFにおける吐水孔422の直径よりも小さくなっている。一方、第一グループ423cに属する吐水孔422cの直径は、キッチン用水栓KFにおける吐水孔422の直径と等しくなっている。
その結果、シャワー吐水部420cのうち下方部分(第二吐水領域J2c、第三吐水領域J3c)を通過する水が受ける抵抗が、シャワー吐水部420cのうち上方部分(第一吐水領域J1c)を通過する水が受ける抵抗よりも大きくなっている。
従って、シャワー吐水部420cから水が吐出される際においては、シャワー吐水部420cのうち下方部分からの水の吐出量が抑制される。その結果、外部(水道管)からスパウト部40cに供給された水は、圧力室460c内のうち上方側にまで到達しやすくなるため、シャワー吐水部420cのうち上方部分(第一吐水領域J1c)から吐出される水の流速は速くなる。その結果、シャワー吐水部420cから吐出される水が縮流となってしまうことが抑制される。
このように、本実施形態では、シャワー吐水部420cに形成された複数の吐水孔422cの形状を工夫しており、これにより吐出される水の流速を速くしている。すなわち、散水板421cの形態が、本発明の低流速吐水抑制手段として機能している。低流速吐水抑制手段として、スパウト部40cの内部に複雑な機構を配置する必要がないため、スパウト部40cの大型化が抑制されている。
尚、シャワー吐水部420cを通過する水が受ける抵抗を上下で異ならせる態様としては、本実施形態のように吐水孔422cの直径を一部縮小するような態様としてもよいが、吐水孔422cの密度を部分的に小さくする態様としてもよい。例えば、全ての吐水孔422cを同一形状(同一の直径)とした上で、第二吐水領域J2c及び第三吐水領域J3cに形成された吐水孔422cの密度が小さくなるように(粗となるように)散水板421cを形成してもよい。このような態様であっても、シャワー吐水部420cのうち上方部分(第一吐水領域J1c)から吐出される水の流速を速くして、縮流の形成を抑制することができる。
ところで、本実施形態では、隣り合う吐水孔422c間における隙間が、第二吐水領域J2c及び第三吐水領域J3cにおいては広くなっている一方で、第一吐水領域J1cにおいては(相対的に)狭くなっている。その結果、シャワー吐水部420cから吐出された水が被洗浄物やシンクSKの底面に到達した後に、飛散して使用者に到達してしまう現象(水跳ね)を抑制することが可能となっている。これについて、図10を参照しながら説明する。
図10は、キッチン用水栓KFcのシャワー吐水部420cから水が吐出されている状態を模式的に示す図である。図10では、第一吐水領域J1cの吐水孔422cから吐出された水の流れを、水流FL1として描いている。また、第二吐水領域J2c及び第三吐水領域J3cの吐水孔422cから吐出された水の流れを、水流FL2として描いている。
第二吐水領域J2c及び第三吐水領域J3cの吐水孔422cから吐出された水は、シンクSKに形成された空間SKDの底面SKBに到達した後、水滴となって使用者側に飛散する。図10では、このような水滴の軌跡を矢印SPで示している。
本実施形態では、第一吐水領域J1cの吐水孔422cの直径が相対的に大きくなっているため、水流FL1間の隙間が、水流FL2間の隙間よりも狭くなっている。このため、底面SKBから矢印SPに沿って使用者側に飛散する水滴は、高い確率で水流FL1に当たって当該水流FL1に取り込まれるため、使用者にまでは到達しにくくなっている。このように、本実施形態では、上記のように縮流の形成が抑制されることに加えて、水跳ねも抑制される。
続いて、本発明の第五実施形態に係るキッチン用水栓KFdについて説明する。図11は、キッチン用水栓KFdのうちスパウト部40dの構成を模式的に示す図である。このうち、図11(A)は、スパウト部40dを前方側正面から(水が吐出される方向に沿って)見た図である。また、図11(B)は、スパウト部40dの縦断面図である。すなわち、水が吐出される方向に沿ってスパウト部40dを切断した場合における断面を示す図である。
キッチン用水栓KFdは、切り替えボタン(80)の代わりに駆動機構90dを備えている点、第二流路451dの内部に流量センサ95dを備えている点、及び、散水板421dに形成された吐水孔422dの形状や配置において上記のキッチン用水栓KFcと異なっているが、他の構成についてはキッチン用水栓KFcと同様である。このため、以下ではキッチン用水栓KFcとの相違点についてのみ説明し、共通する点についてはその説明を適宜省略する。
キッチン用水栓KFdは、スパウト部40dの上端に切り替えボタン(80)を備えておらず、代わりに駆動機構90dを備えている。駆動機構90dは、弁体81dに駆動力を加えて移動させることにより、シャワー吐水部420dのみから水が吐出される状態と、整流吐水部410dのみから水が吐出される状態とを切り換えるものである。このような駆動機構90dの動作は、図示しない制御装置によって制御される。
第二流路451dの内部には流量センサ95dが配置されている。流量センサ95dは、第二流路451dを流れる水の流量、すなわち、外部(水道管)から供給されてキッチン用水栓KFdから吐出される水の流量を測定するためのセンサである。流量センサ95dは、第二流路451dを流れる水の流量を定期的(例えば1秒周期)に測定し、当該測定値(流量)を制御装置に伝達する。
散水版421dに穿設された複数の吐水孔422dは、キッチン用水栓KFcの場合とは異なり3つのグループに分かれておらず、24行×6列となるよう等間隔に整列した単一のグループとなっている。尚、本実施形態においては、全ての吐水孔422dは互いに同一の形状となっている。
キッチン用水栓KFdの動作について、図11及び図12を参照しながら説明する。図12は、キッチン用水栓KFdから水が吐出されている状態を模式的に示す図である。
図12(A)のように被洗浄物OBが比較的大きく、キッチン用水栓KFdから吐出される水の流量が大きくなるように操作部70dが操作されると、第二流路451dを流れる水の流量は大きくなる。流量センサ95dはこれを検知し、当該流量を制御装置に伝達する。
制御装置は、流量センサ95dから伝達された流量が、予め設定された流量閾値を超えているかどうかを判断する。流量が流量閾値を超えている場合には、制御装置は、シャワー吐水部420dのみから水が吐出される状態(第二流路451dから整流用流路452dに水が流入する経路が弁体81dで塞がれた状態)となるように駆動機構90dを動作させる。その結果、図12(A)に示したように、シャワー吐水部420dから水が吐出される。
一方、図12(B)のように被洗浄物OBが比較的小さく、キッチン用水栓KFdから吐出される水の流量が小さくなるように操作部70dが操作されると、第二流路451dを流れる水の流量は小さくなる。流量センサ95dはこれを検知し、当該流量を制御装置に伝達する。
制御装置は、流量センサ95dから伝達された流量が流量閾値以下である場合には、整流吐水部410dのみから水が吐出される状態(第二流路451dから圧力室460dに水が流入する経路が弁体81dで塞がれた状態)となるように駆動機構90dを動作させる。その結果、図12(B)に示したように、整流吐水部410dから水が吐出される。
このように、本実施形態では、吐出される水の流量が所定の流量閾値(第一流量)以下になると、シャワー吐水部420dから水が吐出される状態から、整流吐水部410dから水が吐出される状態とへと自動的に切り替わるように構成されている。すなわち、吐出される水の流量が小さくなり、これにより圧力室460内の水圧が低くなると、シャワー吐水部420dからではなく整流吐水部410dから水が吐出される状態へと切り替わる。このため、(圧力室460内の水圧低下に起因して)シャワー吐水部420dから吐出される水が縮流となってしまうことが確実に防止される。
シャワー吐水部420dから吐出された水が、仮に縮流となって流下した場合には、当該水は図12(A)の点線DL3に沿って鉛直下方に向けて流下することとなる。一方、整流吐水部410dから吐出された水(符号FL4)も、やはりスパウト部40dから鉛直下方に向けて流下する。
しかし、整流吐水部410dはシャワー吐水部420dよりも使用者側となる位置に配置されている。このため、図12(B)に示したように、整流吐水部410dから吐出された水は、点線DL3よりも使用者側に近い位置を流下する。従って、使用者は比較的楽な姿勢のままで洗浄作業を行うことができる。
続いて、本発明の第六実施形態に係るキッチン用水栓KFeについて説明する。キッチン用水栓KFeは、コイルばね491e、492e、493eのそれぞれのばね定数においてのみキッチン用水栓KFと異なっており、他の構成についてはキッチン用水栓KFと同様である。このため、以下ではキッチン用水栓KFとの相違点についてのみ説明し、共通する点についてはその説明を適宜省略する。
キッチン用水栓KFeでは、コイルばね491e、492e、493eのそれぞれのばね定数が全て互いに同一となっている。つまり、弁体471eの開放水圧、弁体472eの開放水圧、及び弁体473eの開放水圧が、全て同一の高さとなっている。従って、第0空間464e内の水圧を次第に上昇させて行くと、弁体471e、472e、473eがほぼ同一のタイミングで移動し始めて、貫通孔HL1e、HL2e、HL3eが同時に開放される。尚、このときの第0空間464e内の水圧を、以下では閾水圧P1と定義する。
図13は、第0空間464e内の水圧と、シャワー吐水部420eから吐出される水の流速との関係を示すグラフである。図13に示した点線DL4は、シャワー吐水部420eから吐出された水がシャワー状の水流を形成するために、最低限必要となる水の流速を示している。つまり、図5の点線DL1が示すものと同じ流速を示している。
基部10eの内部に配置された流量調整弁が完全に閉じられている状態から、操作部70eの操作量を次第に増加させて行くと、第0空間464e内の水圧は次第に高くなっていく。しかし、第0空間464e内が閾水圧P1以下である間は、弁体471e、472e、473eによって貫通孔HL1e、HL2e、HL3eがそれぞれ塞がれており、シャワー吐水部420eからは水が吐出されない。
第0空間464e内の水圧が更に高くなり、当該水圧が閾水圧P1を超えると、上記のように弁体471e、472e、473eがほぼ同一のタイミングで移動し始めて、シャワー吐水部420eの全体から略同時に水が吐出され始める。このとき、第0空間464e内の水圧は高くなっているため、吐出される水の流速は当初から速くなっている。また、当初から大流量の水が吐出される。
換言すれば、キッチン用水栓KFeにおいては、スパウト部40e内に配置された弁体471e、472e、473eによって小流量の水を吐出することが抑制されており、所定流量を超える流量でしか水を吐出することができない構成となっている。その結果、吐出される水の流速は常に点線DL4を超える程度に速くなっているため、操作部70eの操作量に拘わらず縮流が生じることがない。このように、本実施形態では、シャワー吐水部420eから吐出される水の流量が所定の流量以下となることを抑制する構成とし、縮流が生じ得る状態となることを抑制している。
続いて、本発明の第七実施形態に係るキッチン用水栓KFfについて説明する。キッチン用水栓KFfは、基部10fの内部に配置された流量調整弁の構成においてのみキッチン用水栓KFと異なっており、他の構成についてはキッチン用水栓KFと同様である。このため、以下ではキッチン用水栓KFとの相違点についてのみ説明し、共通する点についてはその説明を適宜省略する。
キッチン用水栓KFfでは、操作部70fの操作量(回転角度)と、吐出される水の流量との関係が、キッチン用水栓KFの場合と異なっている。換言すれば、当該関係がキッチン用水栓KFの場合と異なるものとなるように、基部10f内の流量調整弁が構成されている。
図14は、キッチン用水栓KFfにおける、操作部70fの操作量と吐出される水の流量との関係を示すグラフである。尚、点線DL5は、キッチン用水栓KFにおける、操作部70の操作量と吐出される水の流量との関係を示すグラフである。
ここで、操作部70fの操作量の変化に対する、シャワー吐水部420fから吐出される水の流量の変化の割合の絶対値、を流量変化率と定義する。すなわち、流量変化率とは、図14に示したグラフの傾きを意味する。
図14に示したように、キッチン用水栓KFfは、シャワー吐水部420fから吐出される水の流量が小さいときにおける流量変化率が、シャワー吐水部420fから吐出される水の流量が大きいときにおける流量変化率よりも大きくなるように構成されている。
換言すれば、シャワー吐水部420fから吐出される水の流量が小さいときには、操作部70fを僅かに操作しただけで、吐出される水の流量が大きく変化するように構成されている。このため、使用者が操作部70fを操作して、シャワー吐水部420fから吐出される水の流量が小さい状態とすることが困難なものとなっている。シャワー吐水部420fからは、実質的に常に大流量の水が吐出されることとなるため、縮流の発生が抑制される。
また、図14に示したように、吐出される水の流量が(縮流が防止される程度に)大きくなった後は、流量変化率が小さくなる。このため、吐出される水の流量を容易に調整することが可能となっている。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。