JP6307943B2 - 印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、印刷装置の制御プログラム - Google Patents

印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、印刷装置の制御プログラム Download PDF

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    • D06P5/30Ink jet printing

Description

本発明は、印刷装置、印刷装置の制御方法、及び、印刷装置の制御プログラムに関する。
印刷装置として、ヘッド部に設けられた複数のノズルの各々から、紙媒体に対してインクを吐出することで、紙媒体に画像を形成するインクジェットプリンター(以下、「紙媒体印刷用インクジェットプリンター」と称する)が広く用いられている(特許文献1参照)。
また、近年のインクジェットプリンターの発達に伴い、従来は紙媒体に対する印刷に用いられていたインクジェットプリンターを、絹布、綿布、ナイロン等の布地媒体(「布地」とも称する)に対する印刷に応用した捺染印刷用インクジェットプリンターが開発されている(例えば、特許文献2)。
特開2000−225717号公報 特許第4322968号公報
従来、紙媒体印刷用インクジェットプリンターと、捺染印刷用インクジェットプリンターとは別個に開発されていた。よって、紙媒体への印刷と、布地への印刷の双方を行うユーザーにとっては、紙媒体印刷用インクジェットプリンターと捺染印刷用インクジェットプリンターとを、使い分けなければならず、印刷装置の購入や維持に係るコストの増大や、利便性の低下を招いていた。このような状況の下、紙媒体印刷用インクジェットプリンターと、捺染印刷用インクジェットプリンターとを共通化するというニーズが存在していた。
紙媒体印刷用インクジェットプリンターが印刷の対象とする紙媒体は、インクや墨汁などの液体は勿論のこと、トナーやジェルなどの個体を紙媒体上に付着、定着または浸透させ文字や画像として視認するために開発された媒体である。このため、紙媒体には、合成シリカ等を含んで構成されたインクを受容するためのインク受容層が特別に設けられることが多い。また、紙媒体にインク受容層が設けられない場合であっても、紙媒体の主要な構成要素であるセルロース繊維等からなるベースペーパー層が、インクを受容する役割を担うことができ、インク受容層を代替することができる。
このように、紙媒体は、インクを受容するために特別に設けられたインク受容層や、インク受容層の代わりにインクを受容する役割を担うベースペーパー層を備えるため、良好な印刷画質を確保することができる。
一方、捺染印刷用インクジェットプリンターが印刷の対象とする布地は、衣類への加工等を目的として開発、生産されるものであり、衣類としての着心地や肌触り等が重視される。このような布地は、通常、インクを受容するためのインク受容層を備えない。そこで、布地に対する印刷においては、インクの受容を想定していない布地の繊維が、インク受容層の代替としての、インクを受容する役割を担うことになる。
このため、布地に対する印刷においては、例えば、以下に挙げるような問題が生じることが多い。
まず、布地のうち、インクを吸収しやすい絹布、綿布、ウール等の天然繊維に対して印刷を行う場合、インクが布地の裏側近傍まで深く浸透してしまい、インクに含まれる色材を布地の表面近傍に留めることができないことがある。この場合、色再現性に優れた鮮やかな色の画像を形成できないという問題が生じる。
また、布地のうち、インクを吸収しにくいナイロン、アクリル等の化学繊維に対して印刷を行う場合、インクが長時間にわたって布地の表面に留まるため、布地の表面に留まっているインク滴同士が結合して凝縮するという問題が生じる。
また、布地に対してインクが着弾すると、インクは布地の繊維に沿って拡散する。しかし、布地の繊維は印刷を意識した態様(例えば、インクが均等に拡散するような態様)で設けられたものではないため、インクの色材が繊維の延在する方向に拡散すると、インクの滲みの問題が生じる。
このような、布地に対する印刷において生じる各種問題に対応するため、従来の捺染印刷用インクジェットプリンターでは、布地に対する印刷に特有の各種処理を実行していた。
具体的には、従来の捺染印刷用インクジェットプリンターでは、布地にインクを吐出する前に行う前処理として、インクの滲みを防止するための滲み防止剤を塗布したり、布地にインクを吐出した後に行う後処理として、着弾したインクを布地に安定的に定着させるために布地を加熱する等、紙媒体印刷用インクジェットプリンターでは想定していない各種処理を実行していた。また、紙媒体とは別個に、布地の特性に合わせてインクを開発し、布地毎に専用のインクを用いた印刷が行われていた。
従って、このような捺染印刷用インクジェットプリンターを、紙媒体印刷用インクジェットプリンターと共通化するためには、第1に、滲み防止剤を塗布する等の布地に対する印刷に特有の各種処理を実行するための構成を、紙媒体印刷用インクジェットプリンターに付与することが考えられる。しかし、この場合、インクジェットプリンターの製造コストが高くなり、紙媒体に対する印刷と布地に対する印刷とを共通のインクジェットプリンターで実行することで、印刷に係るコストを低減させるというメリットが少なくなる。コスト低減というメリットが少なるなる点については、布地毎に専用のインクを用いた印刷を行う場合においても同様にあてはまる。
また、第2に、上述した、インクの凝縮やインクの滲み等、布地に対する印刷において生じる各種問題を許容し、布地に対する印刷における画質の大幅な劣化を許容することも考えられる。しかし、布地に対する印刷は、衣服等のデザイン性の向上を目的として行われることが多く、画質が重視されることが多い。よって、布地に対する印刷における画質の大幅な劣化は、紙媒体に対する印刷と布地に対する印刷との双方において良好な画質を確保するという、紙媒体印刷用インクジェットプリンターと捺染印刷用インクジェットプリンターとを共通化することの趣旨を没却するものである。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、布地に対する印刷において生じる上述した問題の少なくとも一つに対応し、布地と紙媒体との双方に対して良好な画質の印刷が可能なインクジェットプリンター等の印刷装置を提供することである。
以上の課題を解決するために、本発明に係る印刷装置は、紙媒体に対して印刷を実行するための紙媒体印刷モードと、布地媒体に対して印刷を実行するための捺染印刷モードと、を有し、前記捺染印刷モードにおける印刷速度は、前記紙媒体印刷モードにおける印刷速度よりも遅い、ことを特徴とする。
この発明によれば、布地媒体に対して印刷するときの印刷速度を、紙媒体に対して印刷するときの印刷速度よりも遅くするため、布地媒体に印刷される画像の一の画素に対応するドットが形成されてから、当該一の画素に隣り合う他の画素に対応するドットが形成されるまでの時間長を、紙媒体に対して印刷する場合と比較して長くすることができる。
このため、布地媒体に対する印刷において、インクが広く拡散して隣り合うドットのインク同士が混ざり合うことで生じる滲みや、隣り合うドットのインク滴同士が結合して生じる凝縮等、画質の劣化の原因となる事象の発生を防止することができる。
この結果、布地に対して印刷される画像の画質が、紙媒体に対して印刷される画像の画質と比べて大きく劣ることを防止することができ、布地と紙媒体との双方に対して良好な画質の印刷が可能となる。
また、上述した印刷装置において、前記捺染印刷モードにおける主走査速度は、前記紙媒体印刷モードにおける主走査速度よりも遅い、ことを特徴とすることが好ましい。
この態様によれば、布地媒体に一の画素に対応するドットが形成されてから、一の画素に主走査方向に隣り合う他の画素に対応するドットが形成されるまでの時間長を、紙媒体に対して印刷する場合と比較して長くすることができる。このため、布地媒体に対する印刷において、主走査方向に隣り合うドットのインク同士が混ざり合うことで生じる滲みや、主走査方向に隣り合うインク滴同士が結合して生じる凝縮等の発生を防止することができる。
また、上述した印刷装置において、前記捺染印刷モードにおける副走査速度は、前記紙媒体印刷モードにおける副走査速度よりも遅い、ことを特徴とすることが好ましい。
この態様によれば、布地媒体に一の画素に対応するドットが形成されてから、一の画素に副走査方向に隣り合う他の画素に対応するドットが形成されるまでの時間長を、紙媒体に対して印刷する場合と比較して長くすることができる。このため、布地媒体に対する印刷において、副走査方向に隣り合うドットのインク同士が混ざり合うことで生じる滲みや、副走査方向に隣り合うインク滴同士が結合して生じる凝縮等の発生を防止することができる。
また、上述した印刷装置において、前記捺染印刷モードにおいて使用されるインクの種類は、前記紙媒体印刷モードにおいて使用されるインクの種類よりも多い、ことを特徴とすることが好ましい。
一般的に、複数種類のインクを用いて布地媒体に対する印刷を実行する場合、当該複数種類のインクを用いて紙媒体に対する印刷を実行する場合と比較して、当該複数種類のインクの表す色とは異なる色のインクを再現することが難しい。
また、ある色を再現するために、当該ある色を表現可能な一のインクと、当該ある色を表現可能なインクであって前記一のインクに含まれる溶媒の重量比を大きくした他のインク(つまり、一のインクに対応する淡色インク)との両方を使用する場合、他のインク(淡色インク)を使用しない場合と比較して、インクデューティーが高くなり、単位面積あたりに吐出されるインク量が増加する。このため、紙媒体に比べて受容可能なインク量が少ない布地媒体に対する印刷では、一般的に淡色インクの使用を控えることが好ましい。更に、淡色インクを使用する場合には、インクに含まれる溶媒の重量比が大きく異なる複数種類のインクを用いることになるため、インク種類毎に乾燥条件及び定着条件を異なることとなる。このため、仮に、従来の捺染印刷のように、印刷処理の前後の工程(布地媒体の加熱等の後工程や、滲み防止剤の塗布等の前工程等)を実行する場合には、インク種類毎に乾燥条件及び定着条件を調整する必要が生じ、印刷装置の制御が煩雑になる。このような観点からも、布地媒体に対する印刷では、淡色インクの使用を控えることが好ましい。
しかし、淡色インクを使用しない場合には、表現可能な階調数が減少し、良好な画質の画像の印刷が困難となる場合がある。
この態様によれば、布地媒体に対する印刷において、紙媒体に対する印刷よりも多くの種類のインクを使用する。このため、布地媒体に対する印刷において、淡色インクを使用することなく、色空間上で表現できる色域(ガマット)を広げることが可能となるのは勿論のこと、再現できる階調数を増加させることが可能となる。これにより、布地媒体に対する印刷においても、紙媒体に対する印刷と同様に、良好な画質の画像を印刷することができる。
また、上述した印刷装置において、前記捺染印刷モードでは使用されず前記紙媒体印刷モードで使用されるインクに含まれる溶媒のインク全体に占める重量比は、前記捺染印刷モード及び前記紙媒体印刷モードで使用されるインクに含まれる溶媒のインク全体に占める重量比よりも大きい、ことを特徴とすることが好ましい。
この態様によれば、布地媒体に対する印刷において、溶媒の占める重量比の大きい所謂淡色インクの使用を制限するため、布地媒体に対する印刷において淡色インクを使用する場合に生じる可能性の高いインクの滲みやインクの凝縮等を防止することができる。
また、上述した印刷装置において、前記捺染印刷モードにおける印刷解像度は、前記紙媒体印刷モードにおける印刷解像度よりも低い、ことを特徴とすることが好ましい。
この態様によれば、布地媒体に印刷される画像の一の画素に対応するドットと、一の画素に隣り合う他の画素に対応するドットとの間の間隔を、紙媒体に対して印刷する場合と比較して大きくすることができる。このため、布地媒体に対する印刷において、隣り合うドットのインク同士が混ざり合うことで生じる滲みや、隣り合うインク滴同士が結合して生じる凝縮等の発生を防止することができる。
また、上述した印刷装置において、前記捺染印刷モードにおいて最大ドットを形成するために要するインク重量は、前記紙媒体印刷モードにおいて最大ドットを形成するために要するインク重量よりも小さい、ことを特徴とすることが好ましい。
この態様によれば、布地媒体に最大ドットを形成するためのインク重量を、紙媒体に最大ドットを形成するためのインク重量よりも小さくするため、紙媒体に最大ドットを形成するためのインク重量と等しくする場合と比較して、布地媒体に付着したインク滴の乾燥の速度を速めたり、媒体内部等でインクが拡散する範囲を狭くしたりすることができる。このため、布地媒体に対する印刷において、インク滴同士が結合することで生じる凝縮や、拡散したインクが混ざることで生じるインクの滲み等を防止することができる。
また、この態様によれば、布地媒体に印刷される画像の一の画素に対応するドットと、一の画素に隣り合う他の画素に対応するドットとの間の間隔を、紙媒体に対して印刷する場合と比較して大きくすることができるため、布地媒体に対する印刷において、インクの滲みやインク滴の凝縮等を防止することができる。
また、上述した印刷装置において、前記捺染印刷モードにおいてインクを吐出するノズルのメニスカス位置と前記布地媒体との間の距離は、前記紙媒体印刷モードにおいてインクを吐出するノズルのメニスカス位置と前記紙媒体との間の距離よりも長い、ことを特徴とすることが好ましい。
この態様によれば、表面の粗い布地媒体に対する印刷におけるメニスカス位置を、表面が滑らかな紙媒体に対する印刷におけるメニスカス位置と比較して、媒体からの距離が離れるようにするため、布地媒体の繊維がノズル内のインクに接触することに起因する布地媒体の汚染を防止することができる。
また、本発明に係る印刷装置の制御方法は、紙媒体に対して印刷を実行するための紙媒体印刷モードと、布地媒体に対して印刷を実行するための捺染印刷モードと、を有する印刷装置の制御方法であって、前記捺染印刷モードにおける印刷速度を、前記紙媒体印刷モードにおける印刷速度よりも遅くする、ことを特徴とする。
この発明によれば、布地媒体に一の画素に対応するドットが形成されてから、一の画素に隣り合う他の画素に対応するドットが形成されるまでの時間長を、紙媒体に対して印刷する場合と比較して長くすることができるため、布地媒体に対する印刷において、インクが広く拡散して隣り合うドットのインク同士が混ざり合うことで生じる滲みや、隣り合うインク滴同士が結合して生じる凝縮等、画質の劣化の原因となる事象の発生を防止することができる。
また、本発明に係る印刷装置の制御プログラムは、紙媒体に対して印刷を実行するための紙媒体印刷モードと、布地媒体に対して印刷を実行するための捺染印刷モードと、を有し、コンピュータを具備する印刷装置の制御プログラムであって、前記捺染印刷モードにおける印刷速度は、前記紙媒体印刷モードにおける印刷速度よりも遅い、ことを特徴とする印刷を、前記コンピュータによって実現させることを特徴とする。
この発明によれば、布地媒体に一の画素に対応するドットが形成されてから、一の画素に隣り合う他の画素に対応するドットが形成されるまでの時間長を、紙媒体に対して印刷する場合と比較して長くすることができるため、布地媒体に対する印刷において、インクが広く拡散して隣り合うドットのインク同士が混ざり合うことで生じる滲みや、隣り合うインク滴同士が結合して生じる凝縮等、画質の劣化の原因となる事象の発生を防止することができる。
本発明の第1実施形態に係る印刷装置1の構成を示すブロック図である。 インクジェットプリンター10の概略的な要部断面図である。 インクジェットプリンター10の構成を示すブロック図である。 ヘッド部30の概略的な要部断面図である。 ノズルNの配置を示す説明図である。 駆動信号Vinの供給時における吐出部Dの断面形状の変化を説明するための説明図である。 メニスカスMs及びメニスカス位置dZを説明するための説明図である。 印刷条件指定画面の一例を示す説明図である。 印刷条件指定画面の一例を示す説明図である。 印刷モードを構成する5種類の設定モード各々の設定内容を表す説明図である。 媒体種類テーブルTBL11のデータ構造の一例を示す説明図である。 カラーモードテーブルTBL12のデータ構造の一例を示す説明図である。 モード番号を説明するための説明図である。 モード評価テーブルTBL13のデータ構造の一例を示す説明図である。 写真用紙の一例であるコート紙の断面を撮影した顕微鏡写真である。 写真用紙におけるドットの形成を説明するための説明図である。 普通用紙の一例である普通紙の断面を撮影した顕微鏡写真である。 布地におけるインクの滲みの発生を説明するための説明図である。 布地におけるインクの滲みの予防を説明するための説明図である。 布地におけるインクの凝縮とその予防を説明するための説明図である。 記録媒体の表面性状を説明するための説明図である。 メニスカス位置dZの引き込みを説明するための説明図である。 インクデューティとドット記録率との関係を説明するための説明図である。 動作規定情報テーブルTBL14のデータ構造の一例を示す説明図である。 印刷性能テーブルTBL15のデータ構造の一例を示す説明図である。 駆動信号生成部50の構成を示すブロック図である。 デコーダーDCのデコード内容を示す説明図である。 デコーダーDCのデコード内容を示す説明図である。 駆動信号生成部50の動作を示すタイミングチャートである。 駆動信号生成部50の動作を示すタイミングチャートである。 単位期間Tuにおけるメニスカス位置dZの変化を説明するための説明図である。 インターレース記録方式を説明するための説明図である。 オーバーラップ方式を説明するための説明図である。 ドット記録方式の第1の例を説明するための説明図である。 ドット記録方式の第2の例を説明するための説明図である。 ドット記録方式の第1の例と第2の例における各パスのドットが記録する画素を示す説明図である。 ドット記録方式の第3の例を説明するための説明図である。 ドット記録方式の第2の例と第3の例における各パスのドットが記録する画素を示す説明図である。 ドット記録方式の第4の例を説明するための説明図である。 ドット記録方式の第2の例と第4の例における各パスのドットが記録する画素を示す説明図である。 本発明の第2実施形態に係る印刷モードを構成する6種類の設定モード各々の設定内容を表す説明図である。 第2実施形態に係る動作規定情報テーブルTBL14Aのデータ構造の一例を示す説明図である。 本発明の変形例2に係るモード評価テーブルTBL13のデータ構造の一例を示す説明図である。 本発明の変形例4に係るモード評価テーブルTBL13のデータ構造の一例を示す説明図である。 本発明の変形例10に係るヘッド部30の概略的な要部断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
<A.第1実施形態>
以下、本実施形態に係る印刷装置について説明する。
<1.印刷装置の構成>
図1は、印刷装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る印刷装置1は、印刷データPDを生成する印刷データ生成部を具備するホストコンピューター9と、インクジェットプリンター10とを備える。
詳細は後述するが、インクジェットプリンター10は、紙媒体及び布地にインクを吐出して画像を形成する印刷処理を実行する印刷実行部と、印刷データPDに基づいて印刷実行部の動作を制御する印刷動作制御部と、を備える。
<1.1.ホストコンピューターの構成>
ホストコンピューター9は、ホストコンピューター9の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)を備える(図示省略)。また、図1に示すように、ホストコンピューター9は、ディスプレイ等の表示部101と、キーボードやマウス等の入力部102と、RAM(Random Access Memory)やハードディスクドライブ等を含む記憶部103を備える。
また、ホストコンピューター9は、ホストコンピューター9において動作するアプリケーションAPから出力される画像データImgを、インクジェットプリンター10による印刷処理に用いることのできるデータである印刷データPDに変換する印刷データ生成処理を実行する印刷データ生成部90を備える。
記憶部103には、オペレーティングシステム(図示省略)と、インクジェットプリンター10に対応し当該オペレーティングシステム上で動作するプリンタードライバープログラムPgDRと、文書作成ソフトや画像編集ソフト等の各種アプリケーションプログラム(図示省略)とが記憶されている。
なお、プリンタードライバープログラムPgDRは、オペレーティングシステムに予め組み込まれたものでもよいし、CD−ROM、磁気ディスク、メモリカード等のホストコンピューター9が読み取り可能な記憶媒体から取得されたものでもよいし、または、インターネットを介して所定のサイトからダウンロードすることで取得されたものでもよい。
記憶部103には、複数の印刷モードテーブルTBLと、色変換テーブルLUTとが格納されている。
複数の印刷モードテーブルTBLには、印刷データPDを生成するために必要な各種情報が記憶されている。本実施形態では、複数の印刷モードテーブルTBLには、媒体種類テーブルTBL11、カラーモードテーブルTBL12、モード評価テーブルTBL13、動作規定情報テーブルTBL14、及び、印刷性能テーブルTBL15が含まれる。但し、これらの複数の印刷モードテーブルTBLを1つのテーブルにまとめる態様としてもよい。
色変換テーブルLUTには、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色により規定される色空間上のおいて表現された色を、インクジェットプリンター10が印刷処理に使用する一または複数のインク色(例えば、CMYKの4色)により規定される色空間において表現するための情報が記憶されている。
本実施形態において、複数の印刷モードテーブルTBLと色変換テーブルLUTとは、ホストコンピューター9のCPUがプリンタードライバープログラムPgDRを実行するとき、または、プリンタードライバープログラムPgDRがホストコンピューター9にインストールされるときに、記憶部103の所定の記憶領域に記憶される。なお、これらの複数の印刷モードテーブルTBLと色変換テーブルLUTとは、プリンタードライバープログラムPgDRに含まれるものであってもよい。
ホストコンピューター9のCPUが、記憶部103に記憶されたアプリケーションプログラムを実行すると、文書作成や画像編集等の各種機能を有するアプリケーションAPが起動される。このアプリケーションAPは、例えば、印刷装置1の利用者からアプリケーションAPの処理対象の画像をインクジェットプリンター10により印刷させる旨の要求を受けた場合、当該画像を表す画像データImgを出力する。
印刷データ生成部90は、アプリケーションAPから出力された画像データImgを、印刷データPDに変換する。この印刷データ生成部90は、ホストコンピューター9のCPUがプリンタードライバープログラムPgDRを実行し、ホストコンピューター9のCPUがプリンタードライバープログラムPgDRに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
上述のとおり、本実施形態において画像データImgは、RGBにより表現されたデータである。このため、画像データImgの表す画像をインクジェットプリンター10で印刷するためには、当該画像を、インクジェットプリンター10が使用するインク色の色空間において表現する必要がある。また、画像データImgの表す画像をインクジェットプリンター10で印刷するためには、当該画像を、インクジェットプリンター10で取扱うことが可能な解像度で表す必要がある。
印刷データ生成部90は、画像データImgの表す画像を、インクジェットプリンター10の印刷処理に対応した解像度及び色空間により表現された画像に変換し、変換された画像のデータに基づいて、インクジェットプリンター10が印刷処理において当該画像を印刷するために記録媒体Pに形成すべきドットサイズやドット配置等を表す印刷データPDを生成する。インクジェットプリンター10は、印刷データ生成部90が生成した印刷データPDに基づいて、画像データImgの表す画像を記録媒体Pに印刷することが可能となる。
以下、印刷データ生成部90の詳細について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る印刷データ生成部90は、インクジェットプリンター10の印刷モードを設定する印刷モード設定部91と、画像データImgの示す画像の解像度を、印刷モード設定部91が設定した印刷モードに対応する解像度に変換する解像度変換部92と、画像データImgの示す画像の色のデータを、印刷モード設定部91が設定した印刷モードにおいてインクジェットプリンター10が使用するインク色で規定される色空間で表現したデータに変換する色変換部93と、インクジェットプリンター10が画像データImgの示す画像を印刷するときに記録媒体Pに形成すべきドット配置やドットサイズ等を決定するハーフトーン処理を行うハーフトーン処理部94と、ハーフトーン処理された画像データをインクジェットプリンター10に転送すべきデータ順に並べるラスタライズ処理を行い、ラスタライズされた画像データに基づいて印刷データPDを生成するラスタライズ部95と、を含む。
なお、印刷データ生成部90及び印刷モードの詳細については後述する。
<1.2.インクジェットプリンターの構成>
次に、図2乃至図5を参照しつつ、本実施形態に係るインクジェットプリンター10の構成について説明する。
図2は、インクジェットプリンター10の内部構成の概略を示す斜視図である。また、図3は、本実施形態に係るインクジェットプリンター10の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、インクジェットプリンター10は、Y軸方向(以下、「主走査方向」と称する場合がある)に往復動する移動体3を備える。
また、図2及び図3に示すように、移動体3は、9M個の吐出部Dを具備するヘッド部30と、9個のインクカートリッジ31と、ヘッド部30が備える各吐出部Dを駆動するための駆動信号Vinを生成する駆動信号生成部50と、ヘッド部30、9個のインクカートリッジ31、及び、駆動信号生成部50を搭載したキャリッジ32と、を備える(Mは、1以上の自然数)。各吐出部Dは、インクカートリッジ31から供給されたインクを内部に充填し、駆動信号Vinに従って、充填したインクを記録媒体Pに対して吐出する。
なお、ヘッド部30及び駆動信号生成部50は、上述した「印刷実行部」の一例である。
9個のインクカートリッジ31は、ブラック(Bk)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)、イエロー(Yl)、グリーン(Gr)、バイオレット(Vl)、オレンジ(Or)、淡シアン(CyL)、及び、淡マゼンタ(MgL)の、9種類の色と1対1に対応して設けられたものであり、各インクカートリッジ31には、当該インクカートリッジ31に対応する色のインクが充填されている。
以下では、上述した9種類の色を、基本色、特色、及び、淡色の3つの色区分に区分する。具体的には、ブラック(Bk)、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)、及び、イエロー(Yl)の4色を基本色に区分し、グリーン(Gr)、バイオレット(Vl)、及び、オレンジ(Or)の3色を特色に区分し、淡シアン(CyL)、及び、淡マゼンタ(MgL)の2色を淡色に区分する。
すなわち、本実施形態に係るインクジェットプリンター10は、基本色のインク(以下、「基本色インク」と称する場合がある)、特色のインク(以下、「特色インク」と称する場合がある)、及び、淡色のインク(以下、「淡色インク」と称する場合がある)の、合計3つの色区分のインクを使用することができる。換言すれば、本実施形態に係るインクジェットプリンター10は、4種類の基本色インク、3種類の特色インク、及び、2種類の淡色インクの、合計9種類のインクを使用することができる。
ここで、淡色のインクとは、基本色または特色のインクに比べて、インクに含まれる水やその他の溶剤成分の重量比が大きいインクである。具体的には、淡シアンのインクとは、シアンのインクに対して溶剤成分の重量比を大きくしたインクであり、淡マゼンタのインクとは、マゼンタのインクに対して溶剤成分の重量比を大きくしたインクである。
9M個の吐出部Dの各々は、9個のインクカートリッジ31のいずれか1つからインクの供給を受ける。
より具体的には、9M個の吐出部Dは、9個のインクカートリッジ31と1対1に対応するように9個の吐出群にグループ化される。各吐出群はM個の吐出部Dからなり、各吐出群を構成するM個の吐出部Dのそれぞれには、当該吐出群に対応するインクカートリッジ31からインクの供給を受ける。これにより、各吐出群を構成するM個の吐出部Dから1色のインクを吐出させることができ、9個の吐出群を構成する9M個の吐出部Dから全体として9色のインクを吐出させることが可能となる。
なお、本実施形態において、各インクカートリッジ31はキャリッジ32に搭載されているが、インクジェットプリンター10のキャリッジ32以外の場所に設けられてもよい。
図2に示すように、インクジェットプリンター10は、移動体3を、Y軸方向(以下、「主走査方向」と称する場合がある)に往復動させる移動機構4を備える。
図2及び図3に示すように、移動機構4は、移動体3を往復動させる駆動源となるキャリッジモーター41と、その両端が固定されたキャリッジガイド軸44と、キャリッジガイド軸44と平行に延在してキャリッジモーター41により駆動されるタイミングベルト42と、キャリッジモーター41を駆動するためのキャリッジモータードライバー43と、を有している。
移動体3のキャリッジ32は、移動機構4のキャリッジガイド軸44に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト42の一部に固定されている。そのため、キャリッジモーター41によりタイミングベルト42を正逆走行させると、移動体3がキャリッジガイド軸44に案内されて往復動する。
また、移動機構4は、移動体3の主走査方向における位置を検出するためのリニアエンコーダ45を備える。
図2に示すように、インクジェットプリンター10は、記録媒体Pを供給・排出するための給紙機構7を備える。
図2及び図3に示すように、給紙機構7は、その駆動源となる給紙モーター71と、給紙モーター71を駆動するための給紙モータードライバー73と、ヘッド部30の下側(図2において−Z方向)に設けられるプラテン74と、給紙モーター71の作動により回転して記録媒体Pを1枚ずつプラテン74上に供給するための給紙ローラ72と、給紙モーター71の作動により回転してプラテン74上の記録媒体Pを排紙口へと搬送する排紙ローラ(図示省略)と、を備える。この、給紙機構7は、記録媒体Pを、Y軸方向に交差するX軸方向(以下、「副走査方向」と称する場合がある)に搬送することができる。
インクジェットプリンター10は、給紙機構7により記録媒体Pがプラテン74上に搬送されるタイミングで、複数の吐出部Dから当該記録媒体Pに対してインクを吐出させることで、記録媒体P上に画像を形成する印刷処理を実行する。
なお、上述した移動機構4及び給紙機構7は、記録媒体Pに対する移動体3(キャリッジ32)の相対位置を変化させるための機構であり、以下では、移動機構4及び給紙機構7を相対位置変更部70と総称する場合がある。
また、インクジェットプリンター10は、吐出部Dにおいてインクを正確に吐出することのできない状態である吐出異常が生じた場合に、当該吐出部Dの吐出状態を正常に回復させるための回復処理を実行するための回復機構84を備える。
図2及び図3に示すように、回復機構84は、ヘッド部30のノズルプレート240(図4参照)を封止するためのキャップ842の他に、ワイパー841、インク受け部843、及び、チューブポンプ(図示省略)等を備える。これにより、回復機構84は、吐出部Dのノズルプレート240に付着した紙粉等の異物をワイパー841により拭き取るワイピング処理、吐出部Dからインク受け部843に対してインクを予備的に吐出させるフラッシング処理、吐出部D内の増粘したインクや気泡等をチューブポンプにより吸引するポンピング処理等、当該吐出部Dのインクの吐出状態を正常に戻すための回復処理を実行する。
図3に示すように、インクジェットプリンター10は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示省略)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示省略)とを具備する操作パネル82を備える。
図3に示すように、インクジェットプリンター10は、インクジェットプリンター10の各部の動作を制御するための制御部60(上述した「印刷動作制御部」の一例)を備える。
制御部60は、ホストコンピューター9から入力された印刷データPDに基づいて、駆動信号生成部50、及び、相対位置変更部70等を制御することにより、記録媒体Pに印刷データPDに応じた画像を形成する印刷処理を実行する。
具体的には、制御部60は、キャリッジモータードライバー43の制御を介して、記録媒体Pを副走査方向に搬送するようにキャリッジモーター41を駆動させ、また、給紙モータードライバー73の制御を介して、移動体3を主走査方向に往復動させるように給紙モーター71を駆動させ、さらに、駆動信号生成部50の制御を介して、各吐出部Dからのインクの吐出の有無と、インクを吐出する場合におけるインクの吐出量及び吐出タイミングを制御する。
これにより、制御部60は、記録媒体P上に吐出されたインクにより形成されるドットサイズ及びドット配置を調整し、印刷データPDに対応する画像を記録媒体Pに形成する印刷処理を実行する。
制御部60は、CPU61と、記憶部62とを備える。
記憶部62は、ホストコンピューター9から図示省略したインターフェース部を介して供給される印刷データPDをデータ格納領域に格納する不揮発性半導体メモリーの一種であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)と、印刷処理等の各種処理を実行する際に必要なデータを一時的に格納し、あるいは印刷処理等の各種処理を実行するための制御プログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)と、インクジェットプリンター10の各部を制御する制御プログラムを格納する不揮発性半導体メモリーの一種であるPROMと、を備える。
CPU61は、ホストコンピューター9から供給される印刷データPDを、記憶部62に格納する。
また、CPU61は、印刷データPD等の記憶部62に格納されている各種データに基づいて、駆動信号生成部50の動作を制御して各吐出部Dを駆動させるための印刷信号SI及び駆動波形信号Com等を生成し、これらを出力する。
また、CPU61は、記憶部62に格納されている各種データに基づいて、キャリッジモータードライバー43の動作を制御するための制御信号CtrM1、給紙モータードライバー73の動作を制御するための制御信号CtrM2、及び、回復機構84の動作を制御するための制御信号等の各種制御信号を生成し、これら生成した各種制御信号を出力する。
このように、制御部60(CPU61)は、印刷信号SIや駆動波形信号Com等の各種制御信号を生成してインクジェットプリンター10の各部に供給することで、インクジェットプリンター10の各部の動作を制御する。これにより、制御部60(CPU61)は、印刷処理や、回復処理等の各種処理を実行する。
駆動信号生成部50は、制御部60から供給される印刷信号SI及び駆動波形信号Com等の信号に基づいて、ヘッド部30が備える9M個の吐出部Dのそれぞれを駆動するための駆動信号Vinを生成する。本実施形態において駆動波形信号Comは、駆動波形信号Com-A及び駆動波形信号Com-Bを含む。
なお、駆動信号生成部50、及び、駆動波形信号Comの詳細については、後述する。
<1.3.ヘッド部及び吐出部の構成>
次に、図4乃至図7を参照しつつ、ヘッド部30と、ヘッド部30に設けられる吐出部Dと、について説明する。
図4は、ヘッド部30の概略的な一部断面図の一例である。なお、この図では、ヘッド部30のうち、9M個の吐出部Dの中の1個の吐出部Dと、当該吐出部Dにインク供給口247を介して通連するリザーバ246と、を示している。
図4に示すように、吐出部Dは、圧電素子200と、内部にインクが充填されたキャビティ245(圧力室)と、キャビティ245に通連するノズルNと、振動板243と、を備える。この吐出部Dは、圧電素子200が駆動信号Vinにより駆動されることにより、キャビティ245内のインクをノズルNから吐出させる。
吐出部Dのキャビティ245は、キャビティプレート242と、ノズルNが形成されたノズルプレート240と、振動板243と、により区画される空間である。このキャビティ245は、インク供給口247を介してリザーバ246と連通している。
リザーバ246は、キャビティプレート242とノズルプレート240とにより区画された空間であり、インク取り入れ口311を介してインクカートリッジ31と連通している。
キャビティプレート242は、第1プレート271、接着フィルム272、第2プレート273、及び、第3プレート274を含む。ノズルプレート240、第1プレート271、接着フィルム272、第2プレート273、及び、第3プレート274は、それぞれ所定の形状(凹部が形成されるような形状)に成形され、これらを重ねることにより、キャビティ245およびリザーバ246が形成される。
本実施形態では、圧電素子200として、図4に示すようなユニモルフ(モノモルフ)型を採用する。この圧電素子200は、下部電極263と、上部電極264と、下部電極263及び上部電極264の間に設けられた圧電体202と、を有する。そして、圧電素子200に駆動信号Vinが供給されて、下部電極263及び上部電極264の間に電圧が印加されると、当該印加された電圧に応じて圧電素子200が図において上下方向に撓み、その結果、圧電素子200が振動する。
第3プレート274の上面開口部には、振動板243が設置され、この振動板243には、圧電素子200の下部電極263が接合されている。圧電素子200が駆動信号Vinにより振動すると、圧電素子200に接合された振動板243も振動する。そして、この振動板243の振動によりキャビティ245の容積(キャビティ245内の圧力)が変化し、キャビティ245内に充填されたインクがノズルNより吐出される。
インクの吐出によりキャビティ245内のインクが減少した場合、リザーバ246からインクが供給される。また、リザーバ246へは、インクカートリッジ31からインク取り入れ口311を介してインクが供給される。
図5は、ヘッド部30の下面、すなわち、ノズルプレート240を、−Z方向(つまり、X軸方向及びY軸方向の双方に交差する方向)から見たときの、ヘッド部30に設けられた9M個のノズルNの配置の一例を示す図である。
9M個のノズルNは、9個の吐出群(9色のインク)と1対1に対応するように9列のノズル列に区分されて、ノズルプレート240に配置されている。各ノズル列を構成するM個のノズルNからは、当該ノズル列に対応する色のインクが吐出される。
なお、本実施形態では、図5に示すように、各ノズル列を構成するM個のノズルNがX軸方向に一列に整列するように配置される場合を例示しているが、例えば、各ノズル列を構成するM個のノズルNのうち一部のノズルN(例えば、偶数番目のノズルN)と、その他のノズルN(例えば、奇数番目のノズルN)とのY軸方向の位置が異なるように、所謂千鳥状に配列されるものであってもよい。
なお、詳細は後述するが、本明細書では、副走査方向の解像度を「Rx」で表す。また、副走査方向の解像度が「Rx」である場合のX軸方向に隣り合う2つの画素の間隔を「ドットピッチPxd」と称する。また、X軸方向に隣り合う2つのノズルN間のX軸方向の間隔を「ピッチPx」と称する。このとき、ピッチPxと、ドットピッチPxdとの間には、「Px=Rx*k」なる関係が成立する。ここで、kは正の整数であり、以下では、「ノズルピッチ」と称する。
次に、吐出部Dにおけるインクの吐出について、図6を参照しながら説明する。
図6(a)に示す状態において、駆動信号生成部50から圧電素子200に対して駆動信号Vinが供給されると、当該圧電素子200において、電極間に印加された電界に応じた歪が発生し、振動板243は図において上方向へ撓む。これにより、図6(a)に示す初期状態と比較して、図6(b)に示すようにキャビティ245の容積が拡大する。図6(b)に示す状態において、駆動信号生成部50の制御により、駆動信号Vinの示す電圧を変化させると、振動板243は、その弾性復元力によって復元し、初期状態における振動板243の位置を越えて図において下方向に移動し、図6(c)に示すようにキャビティ245の容積が急激に収縮する。このときキャビティ245内に発生する圧縮圧力により、キャビティ245を満たすインクの一部が、このキャビティ245に連通しているノズルNからインク滴として吐出される。
図7は、吐出部Dのキャビティ245に充填されたインクと空気との界面であるメニスカスMsを示す図である。
この図に示すように、本実施形態では、ノズルプレート240(厳密には、ノズルプレート240のうち−Z側に位置する下面)とメニスカスMsとのZ軸方向の距離を、メニスカス位置dZと称する。
なお、一般的に、メニスカスMsは、インクを吐出しないタイミングにおいてはインクの表面張力によって曲線的な形状を有し、また、インクを吐出するタイミングまたはインクを吐出した直後のタイミングでは、波打った形状を有する。このため、本実施形態では、ある瞬間におけるメニスカス位置dZを、当該ある瞬間におけるノズルプレート240とメニスカスMsとのZ軸方向の距離の最大値として定義する。ここで、「ノズルプレート240とメニスカスMsとのZ軸方向の距離の最大値」とは、厳密な最大値に限定することを意味するものではなく、例えば、図7に示すように、X軸方向及びY軸方向におけるノズルNの中央近傍のメニスカスMsと、ノズルプレート240との、Z軸方向の距離であればよい。
但し、メニスカス位置dZは、メニスカスMsのZ軸方向の位置を特定可能であればどのように定めてもよい。例えば、ある瞬間におけるメニスカス位置dZは、当該ある瞬間におけるノズルプレート240とメニスカスMsとのZ軸方向の距離の平均値または最小値でもよい。また、例えば、メニスカス位置dZは、ある瞬間におけるプラテン74(または、プラテン74上に搬送された記録媒体P)とメニスカスMsとのZ軸方向の距離の最大値(または、平均値、若しくは、最小値)であってもよい。
<2.印刷モードについて>
次に、図1と、図8〜図14とを参照しつつ、印刷データ生成部90により設定される印刷モードについて説明する。
上述のとおり、印刷データ生成部90は、印刷モード設定部91、解像度変換部92、色変換部93、ハーフトーン処理部94、及び、ラスタライズ部95を含む。
このうち印刷モード設定部91は、ホストコンピューター9のCPUが記憶部103に記憶されたアプリケーションプログラムを実行し、アプリケーションAPが画像データImgを出力する場合に、まず、図8及び図9に例示する印刷条件指定画面(いわゆるプリンターのコントロールパネル)を表示部101に表示させるための画面表示情報を生成する。そして、ホストコンピューター9のCPUは、当該画面表示情報に基づいて、表示部101に印刷条件指定画面を表示させる。
印刷装置1の利用者は、印刷条件指定画面において印刷モードを指定することができる。
ここで、「印刷モード」とは、記録媒体P上に形成される画像の解像度や、当該画像の各画素に対応するドットを形成するためのインクの吐出量等、インクジェットプリンター10が実行する印刷処理の動作を規定するための情報である。
具体的には、本実施形態において、印刷モードは、媒体モードm、画質モードg、印刷方向モードh、ドット種類モードd、及び、カラーモードcの5種類の設定モードの組み合わせとして定められる。
このうち、媒体モードmとは、印刷処理の対象とされる記録媒体Pの種類を規定するためのモードである。また、画質モードgとは、印刷処理において形成される画像の画質を規定するためのモードである。印刷方向モードhとは、後述するキャリッジ32の移動方向とインクの吐出の有無との関係を規定するためのモードである。ドット種類モードdとは、各ドットのサイズの種類数を規定するためのモードである。カラーモードcとは、インクジェットプリンター10において使用されるインクの種類を規定するためのモードである。
印刷装置1の利用者は、図8に例示する印刷条件指定画面において、「メディア種類の指定」を行うことで記録媒体Pの種類を選択することにより媒体モードmを指定することができ、「画質の指定」を行うことにより画質モードgを指定することができ、「カラー種類の指定」を行うことによりカラーモードcを指定することができる。
また、印刷装置1の利用者は、図9に例示する印刷条件指定画面において、「印刷方向の指定」を行うことにより印刷方向モードhを指定することができ、「ドット種類の指定」を行うことによりドット種類モードdを指定することができる。
さらに、印刷装置1の利用者は、印刷条件指定画面において、印刷モード以外の各種印刷条件、例えば、カラー印刷またはモノクロ印刷の別や、記録媒体Pのサイズ等を、指定することができる。
なお、本実施形態では、媒体モードmは、印刷装置1の利用者が印刷条件指定画面において必ず指定しなければならない必須の設定モードであり、それ以外の4種類の設定モードは、印刷装置1の利用者が必ずしも指定する必要のない任意の設定モードである。詳細は後述するが、印刷装置1の利用者が媒体モードm以外の設定モードを指定しない場合、印刷モード設定部91は、媒体モードm以外の4つの設定モードを、印刷装置1の利用者が指定した媒体モードmに応じて決定する。
図10は、印刷モードを構成する5種類の設定モード各々の設定内容を表す説明図である。
図10に示すように、媒体モードmは、写真用紙に印刷をするための写真用紙モード、普通用紙に印刷するための普通用紙モード、または、布地に印刷するための布地モードのうち、何れかに設定される。すなわち、本実施形態に係るインクジェットプリンター10が印刷処理の対象とする記録媒体Pには、写真用紙、普通用紙、及び、布地が含まれる。
ここで、写真用紙とは、フォトペーパー、光沢フォトペーパー、マットフォトペーパー、コート紙、光沢写真用紙、絹目調写真用紙等の記録媒体Pの総称であり、普通用紙とは、普通紙、再生紙、ファイン紙等の記録媒体Pの総称である。以下では、これら写真用紙及び普通用紙を、「紙媒体」と総称する場合がある。また、写真用紙モード及び普通用紙モードを、「紙媒体印刷モード」と総称する場合がある。
また、布地とは、天然繊維からなる布地(以下、単に「天然繊維」と称する場合がある)や、化学繊維からなる布地(以下、単に「化学繊維」と称する場合がある)等の、記録媒体Pの総称である。このうち、天然繊維としては、絹布、綿布、ウール等を例示することができ、化学繊維としては、ナイロン、アクリル、ポリエステル等を例示することができる。
本実施形態において、化学繊維及び天然繊維を含む布地は、「布地媒体」の一例であり、布地に対して印刷処理を実行するための布地モードは、「捺染印刷モード」の一例である。
なお、以下では、各種設定モードを、「写真用紙モード」等のモード名称で表現する代わりに、図10に示す「モード番号」によって表現する場合がある。
具体的には、媒体モードmについて、写真用紙モードを「媒体モードm=1」、普通用紙モードを「媒体モードm=2」、布地モードを「媒体モードm=3」という具合に、モード番号により表現することがある。
印刷装置1の利用者が印刷条件指定画面において、記録媒体Pの種類(媒体種類)を選択すると、印刷モード設定部91は、図11に例示するような、媒体種類と媒体モードmとを対応付けて記憶する媒体種類テーブルTBL11にアクセスし、印刷装置1の利用者が指定した媒体種類に対応する媒体モードmのモード番号(またはモード名称)を取得する。そして、印刷モード設定部91は、媒体モードmを、媒体種類テーブルTBL11から取得したモード番号に対応する内容に設定する。
なお、本明細書では、データの示す値を文言や記号で表す場合があるが、これは理解を容易にするためであり、実際にはデータの示す値が数値やその他のデータ型であって構わない。
図10に示すように、印刷モードのうち画質モードgは、印刷速度より画質を優先して印刷するための画質優先モード(画質モードg=1)、または、画質より印刷速度を優先して印刷するための速度優先モード(画質モードg=2)のうち、何れかに設定される。
また、印刷モードのうち印刷方向モードhは、キャリッジ32の主走査方向の往復動における往路及び復路の双方でインクを吐出して記録媒体Pへのドットの形成を実行する双方向モード(印刷方向モードh=1)、または、キャリッジ32の主走査方向の往復動における往路及び復路のうち一方のみでインクを吐出して記録媒体Pへのドットの形成を実行する単方向モード(印刷方向モードh=2)のうち、何れかに設定される。
また、印刷モードのうちドット種類モードdは、各ドットを「非記録」若しくは「大ドット」の2階調で表現する2ビットモード(ドット種類モードd=1)、または、各ドットを、「非記録」、「小ドット」、「中ドット」、若しくは、「大ドット」の4階調で表現する4ビットモード(ドット種類モードd=2)のうち、何れかに設定される。
また、印刷モードのうちカラーモードcは、ピュアブラックモード(カラーモードc=1)、基本カラーモード(カラーモードc=2)、濃淡カラーモード(カラーモードc=3)、特色カラーモード(カラーモードc=4)、または、全色カラーモード(カラーモードc=5)のうち何れかに設定される。
色変換部93は、カラーモードテーブルTBL12を参照することで、インクジェットプリンター10が指定されたカラーモードcで印刷処理を実行する場合における、インクジェットプリンター10が使用するインクの種類を決定する。
図12は、カラーモードテーブルTBL12のデータ構造の一例を示す図である。この図に示すように、カラーモードテーブルTBL12は、カラーモードcと、各カラーモードcにおいてインクジェットプリンター10が使用することのできるインクの色と、を関連付けて記憶している。
この図において、丸印「〇」は、当該丸印の位置する行に示されるカラーモードcにおいて、当該丸印の位置する列に示される色のインクを使用することができることを示す。また、この図において、バツ印「×」は、当該バツ印の位置する行に示されるカラーモードcにおいて、当該バツ印の位置する列に示される色のインクを使用することができないことを示す。
図12に示すように、インクジェットプリンター10は、ピュアブラックモードにおいては、基本色インクのうちブラックのインクを使用することができ、基本カラーモードにおいては、4色の基本色インクを使用することができ、濃淡カラーモードにおいては、4色の基本色インクに加えて2色の淡色インクを使用することができ、特色カラーモードにおいては、4色の基本色インクに加えて3色の特色インクを使用することができ、全色カラーモードにおいては、9色の全ての色のインクを使用することができる。
以上のように、印刷装置1の利用者は、図8及び図9に示す印刷条件指定画面において、設定モードを選択することで印刷モードを指定する。
図13に、理論上存在する印刷モードについて示す。上述のとおり、印刷モードは、媒体モードm(m=1〜3)、画質モードg(g=1〜2)、印刷方向モードh(h=1〜2)、ドット種類モードd(d=1〜2)、及び、カラーモードc(c=1〜5)の、5種類の設定モードの組み合わせである。すなわち、理論上、インクジェットプリンター10が実行可能な印刷モードとしては、3×2×2×2×5=120パターンの印刷モードが存在する。
以下では、図13に示すように、120パターンの印刷モードの各々を、(m、g、h、d、c)の5個のモード番号の組み合わせとして表現する場合がある。
例えば、媒体モードmとして布地モード(m=3)が指定され、画質モードgとして画質優先モード(g=1)が指定され、印刷方向モードhとして単方向モード(h=2)が指定され、ドット種類モードdとして4ビットモード(d=2)が指定され、カラーモードcとして特色カラーモード(c=4)が指定された場合、指定された印刷モードのモード番号(m、g、h、d、c)は、図13に示すように、「31224」と表される。
ところで、5種類の設定モードを組み合わせて得られる120パターンの印刷モードの中には、例えば、印刷される画像の画質が著しく劣悪であったり、記録媒体Pをインクで汚染してしまい印刷処理そのものが失敗する等、印刷処理を適正に実行できない不適切な印刷モードが存在する。また、画質モードgで画質優先モードが選択されたのにもかかわらず画質が劣悪であったり、画質モードgで速度優先モードが選択されたのにもかかわらず印刷速度が極端に遅かったりする等、印刷装置1の利用者の意思に反した印刷処理が実行される不適切な印刷モードも存在する。
このため、印刷装置1の利用者には、このような不適切な印刷モードの指定を避け、利用者の意思に応じた態様で適正に印刷処理を実行可能な適切な印刷モードを指定することが望まれる。
そこで、本実施形態に係る印刷モード設定部91は、各印刷モードにより印刷処理を実行することの適切さ程度を表す評価情報に基づいて、印刷装置1の利用者が各印刷モードを指定することの適否を判定する。これにより、印刷モード設定部91は、印刷装置1の利用者により不適切な印刷モードが指定されることを防止し、印刷装置1の利用者に対して適切な印刷モードを指定することを促す。
モード評価テーブルTBL13は、120パターンの印刷モードの各々についての評価情報を記憶している。
図14は、モード評価テーブルTBL13のデータ構造の一例を示す図である。この図に示すように、モード評価テーブルTBL13は、5種類の設定モードの組み合わせ(つまり、120パターンの印刷モード)の各々と、評価情報と、を関連付けて記憶している。
本実施形態において、評価情報は、印刷モードが指定された記録媒体Pに対して印刷処理を実行する場合に最も適した印刷モードであることを示す「最適」、適切さの程度においては最適印刷モードよりも劣るものの、印刷モードが印刷を不都合なく適切に実行することができることを示す「適切」、印刷モードが印刷を適切に実行することができないことを示す「不適切」、及び、カラー印刷の場合には「不適切」に該当するもののモノクロ印刷の場合には「適切」に該当することを示す「限定的適切」の、4種類の値のうち、いずれかの値を示す。
なお、本実施形態では、評価情報を「最適」、「適切」、「不適切」、「限定的適切」の4値をとる情報としているが、これは一例であり、例えば、印刷の適切さの程度を例えば実数値で表す情報であってもよい。
図14では、評価情報が「最適」を示す場合を「◎:二重丸印」で表し、「適切」を示す場合を「○:丸印」で表し、「限定的適切」を示す場合を「△:三角印」で表し、「不適切」を示す場合を「×:バツ印」で表している。以下では、評価情報が「最適」である印刷モードを「最適印刷モード」と称し、評価情報が「適切」である印刷モードを「適切印刷モード」と称し、評価情報が「限定的適切」である印刷モードを「限定的適切印刷モード」と称し、評価情報が「不適切」である印刷モードを「不適切印刷モード」と称する場合がある。
なお、図14は、モード評価テーブルTBL13のデータ構造の一例を示したものに過ぎず、モード評価テーブルTBL13は、例えば、120パターンの印刷モードの各々を特定する情報(例えば、モード番号)と、各印刷モードの評価情報とを、1対1に対応付けて記憶するものであってもよい。
印刷モード設定部91は、図8及び図9に示す印刷条件指定画面において、不適切印刷モード「×」が指定された場合、または、カラー印刷が指定されたのにもかかわらず限定的適切印刷モード「△」が指定された場合には、カラー印刷表示部101において、指定した印刷モードが不適切である旨のメッセージを表示し、印刷装置1の利用者に対して異なる印刷モードを再度指定することを促す。これにより、印刷モード設定部91は、不適切印刷モードが指定されたり、カラー印刷の場合に限定的適切印刷モードが指定されたりすることを防止する。換言すれば、本実施形態に係る印刷装置1では、カラー印刷の場合には、最適印刷モード「◎」、または、適切印刷モード「○」のうち何れかが指定され、モノクロ印刷の場合には、最適印刷モード「◎」、適切印刷モード「○」、または、限定的適切印刷モード「○」のうち何れかが指定されることになり、当該指定された印刷モードにより印刷処理が実行されることになる。
なお、以下の説明では、簡単のために、カラー印刷が指定された場合を想定し、限定的適切印刷モードが指定された場合を、不適切印刷モードが指定された場合に包含させて説明する。
また、印刷モード設定部91は、印刷装置1の利用者が印刷条件指定画面において5種類の設定モードのうち必須の指定項目である媒体モードmのみを指定した場合、モード評価テーブルTBL13を参照することで、指定された媒体モードmを含む40パターンの印刷モードの中から最適印刷モード「◎」に該当する印刷モードを指定する。換言すれば、本実施形態に係る印刷装置1では、印刷装置1の利用者が媒体モードm以外の設定モードを指定しない場合には、印刷モード設定部91によって、常に最適印刷モードが指定されることになる。
<3.記録媒体について>
本実施形態では、評価情報は、モード評価テーブルTBL13に予め記憶されている。この評価情報の示す値は、指定された印刷モードにおけるインクジェットプリンター10の動作の特性と、印刷対象となる記録媒体Pの特性と、インクの特性と、を総合的に考慮して設計される。
以下、評価情報の内容(評価情報の示す値)についての説明をする前提として、評価情報の示す値を決定するにあたって考慮が必要となる、各記録媒体Pの特性について説明する。
<3.1.写真用紙について>
上述のとおり、本実施形態では、記録媒体Pとして、写真用紙、普通用紙、及び、布地を想定している。以下では、まず最初に、図15及び図16を参照しつつ、これらの記録媒体Pのうち写真用紙の特性を説明する。
図15は、写真用紙の一例であるコート紙の断面を撮影した顕微鏡写真である。この図に例示されるように、一般的に写真用紙は、ベースペーパー層と、ベースペーパー層の表面側(+Z側)に設けられたインク受容層と、を備える。
インク受容層は、インクを受容し、インク中の色材を記録媒体Pの表面近傍に留めるためにベースペーパー層の表面側にコーティングされた層であり、例えば、合成シリカ等を含んで構成される。ベースペーパー層は、セルロース繊維やポリエチレンテレフタラート等を含んで構成された層である。
図16は、写真用紙にドットDt1が形成され、その後、ドットDt1が形成される画素に隣り合う画素にドットDt2が形成される様子を例示する説明図である。ここで、隣り合う画素とは、副走査方向に隣り合う場合、主走査方向に隣り合う場合、並びに、主走査方向及び副走査方向の間の斜めの方向に隣り合う場合、を含む。
この図に示す例では、時刻T1において、ドットDt1を形成するインク滴が写真用紙に着弾する。その後、時刻T1から時刻T2に至るまでの期間において、ドットDt1を形成するためのインク滴に含まれるインクの多くの部分はインク受容層に吸収され、また、当該インク滴に含まれる水分が蒸発するため、写真用紙の表面に残存するインク滴の体積は減少する。このため、時刻T2において、ドットDt2を形成するインク滴が写真用紙に着弾しても、ドットDt2を形成するインク滴と、ドットDt1を形成するインク滴とが結合することを防止することができる。これにより、インク滴の結合が連続した状態であるインクの凝縮といった、印刷画質の劣化を招来する事象の発生を抑止することが可能となる。
一般的にインク受容層は、例えばベースペーパー層等のインク受容層以外の層に比べて、単位体積当たりに吸収できるインクの量が多い。このため、図16に示す例では、時刻T3において、ドットDt1を形成するインク滴に含まれるインクの多くの部分がインク受容層に吸収され、時刻T4において、ドットDt2を形成するインク滴に含まれるインクの多くの部分がインク受容層に吸収される。
このように、写真用紙のように記録媒体Pがインク受容層を備える場合には、記録媒体Pがインク受容層を有しない場合と比較して、記録媒体Pがより多くのインクを受容することが可能となり、記録媒体P上に深みのある濃い色を再現することができる。
また、写真用紙のように記録媒体Pがインク受容層を備える場合には、図16の時刻T4に示すように、記録媒体Pに吐出されたインク滴に含まれるインクの多くの部分はインク受容層に留まる。より具体的には、記録媒体Pがインク受容層を備えることで、インク受容層より内側に設けられたベースペーパー層まで浸透するインクの量を少なく抑えることができ、インクの色材を記録媒体Pの表面近傍に留めることが可能となる。これにより、色再現性の優れた鮮やかな画像を形成することが可能となる。
なお、本明細書では、インクが記録媒体Pの厚み方向(Z軸方向)に広がることを「(インクの)浸透」と称し、インクが記録媒体Pの面方向(X軸及びY軸を含む面に平行な方向)に広がることを「(インクの)拡散」と称する。
ところで、ベースペーパー層に対してインク滴が吐出される場合には、ベースペーパー層に含まれる繊維に沿った方向にインクが広がるため、繊維の向きに応じてインクの広がりの程度が異なることになる。このため、ベースペーパー層の繊維の向きが所定の面方向(例えば、X軸方向)に向いている場合には、インクは当該繊維の向いている所定の面方向に対してのみ広く拡散する。
これに対して、一般的にインク受容層は、ベースペーパー層と比較して、インクの拡散の程度を小さく抑えたり、インクが拡散する場合の広がりの程度を均等にすることができる。すなわち、一般的にインク受容層は、ベースペーパー層と比較して、インクの広がりを均等化することができるため、インクの厚み方向への浸透及び面方向への拡散を均一化し、所定の面方向にのみインクが過度に広がることを抑制することが容易となる。
このため、図16に示すように、インクが記録媒体Pに吸収された後の時刻T3及びT4において、ドットDt1及びDt2を形成するインクが記録媒体Pの内部で混ざり合うことを防止したり、または、ドットDt1及びDt2を形成するインクのうち記録媒体Pの内部で混ざり合うインクの割合を低減したりすることが可能となる。
このように、写真用紙のように記録媒体Pがインク受容層を備える場合には、記録媒体Pがインク受容層を備えない場合と比較して、互いに隣り合う2つのドットを形成するインクが、記録媒体Pの表面または内部において混ざり合う可能性を低減させ、若しくは、混ざり合うインクの量をできるだけ少量に抑え、または、インクの拡散の方向をできるだけ均等にすることでインクが混ざりあう量が特定方向のみ過大になるという事象の発生を抑えることができるため、色再現性の優れた鮮やかな画像を形成することが可能となる。
また、記録媒体Pがインク受容層を備える場合、インク受容層を有しない場合と比較して、受容可能なインクの許容量が多い。このため、記録媒体Pが受容できる許容量を超えた量のインクが吐出されることにより記録媒体Pに波打ち状のうねりが生じるといった、所謂コックリング現象の発生を抑えることができる。これにより、吐出部Dから吐出されたインク滴を目標とする画素の位置に正確に着弾させることが可能となり、高品位な印刷が可能となる。
以上のように、写真用紙は、印刷に用いられることを前提として開発、生産されたものであり、インクを受容するためのインク受容層が設けられているため、インクの凝縮や、インクの滲み、または、コックリング現象の発生等を防止した高品位な画像を形成することが可能となる。
<3.2.普通用紙について>
次に、普通用紙の特性について説明する。普通用紙は写真用紙と同様に、印刷に用いられることを前提に開発、生産されたものである。
図17は、普通用紙の一例である普通紙の断面を撮影した顕微鏡写真である。この図に例示されるように、普通用紙は、ベースペーパー層を備える。しかし、普通用紙は、一般的には、インク受容層を備えないか、または、インク受容層を備える場合であっても写真用紙と比較してインク受容層の厚さが薄い。このため、普通用紙においては、インク受容層の代替として、ベースペーパー層にインクを受容する役割の一部または全部を担わせることになる。
上述のとおり、一般的にベースペーパー層は、インク受容層と比較して、単位体積当たりにおける受容可能なインクの量が少ない。また、一般的にベースペーパー層は、繊維質により構成されているため、インク受容層に比べて、インクの浸透や拡散におけるインクの広がり程度を制御することが難しい。
例えば、普通用紙において、ベースペーパー層がインクを浸透または拡散しやすい材料で形成されている場合には、写真用紙に比べて、インクの色材が記録媒体Pの表面近傍に留まらずに記録媒体Pの内部に深く浸透してしまい、インクの有する色を十分に再現できない可能性が高くなる。また、普通用紙において、ドットが形成されるべき画素の領域を超えてインクが拡散してしまい、互いに隣り合う画素に形成されるドットのインク同士が混ざり合うことで色が滲む可能性が高くなる。
また、例えば、普通用紙において、ベースペーパー層がインクを吸収しにくい材料で形成されている場合には、写真用紙に比べて、ベースペーパー層の表面に吐出されたインク滴の体積が小さくなる速度が遅いため、記録媒体Pの表面に留まったインク同士が凝縮する可能性が高くなり、また、記録媒体Pのインクの受容量が少ないために深みのある濃い色を再現できない可能性が高くなる。
このように、普通用紙は、印刷に用いられることを前提に開発、生産されたものではあるものの、写真用紙に比べて、印刷される画像の画質が低くなる場合が多い。
<3.3.布地について>
次に、布地の特性について説明する。
布地は、写真用紙及び普通用紙とは異なり、その多くは衣類への加工等を目的として開発、生産されるものであり、衣類としての着心地や肌触り等が重視される。そのため、布地はインクを受容するためのインク受容層を備えないことが一般的である。そこで、布地に印刷する場合には、インク受容層の代替として、布地の繊維にインクを受容する役割を担わせることになる。
しかし、布地の繊維は、印刷に用いられることを前提として開発されたものではないため、写真用紙はもちろん、普通用紙に比べても、印刷される画像の画質が低くなる可能性が高い。このため、布地に対して印刷を行う場合には、布地の有する特性を十分に考慮したうえで、印刷される画像が一定程度の画質を保てるように印刷処理を実行することが望まれる。
上述のとおり、本実施形態において対象とする布地には、天然繊維と、化学繊維とが存在し、これら両者の特性は異なる。そのため、以下では、天然繊維及び化学繊維のそれぞれについて個別に説明する。
<3.3.1.天然繊維について>
図18は、天然繊維にドットDt1が形成され、その後、ドットDt1が形成される画素と隣り合う画素にドットDt2が形成される様子を例示する説明図である。
この図に示す例では、時刻T1において、ドットDt1を形成するインク滴が天然繊維に着弾する。その後、時刻T1から時刻T2に至るまでの期間において、ドットDt1を形成するためのインク滴に含まれるインクの多くの部分、特に、インク滴に含まれる水分等の溶剤成分が、天然繊維に吸収される。このため、時刻T2において、ドットDt2を形成するインク滴が天然繊維に着弾すると、ドットDt2を形成するインク滴と、ドットDt1を形成するインク滴のうち天然繊維において拡散したインクとが接触する場合がある。この場合、ドットDt2を形成するインク滴に含まれるインクは、浸透圧の関係等により、天然繊維のうちドットDt1を形成するインク滴に含まれるインク(特に、インク滴に含まれるインクの溶剤成分)が拡散された領域に向かって拡散(または浸透)する場合がある。これにより、図18の時刻T3において示すように、ドットDt1及びDt2を形成するインク滴に含まれるインク同士が混ざり合い、印刷される画像における滲みが生じ画質劣化の原因となる場合がある。
また、天然繊維は、一般的にインクを吸収しやすいため、インクが布地の裏側まで染み込んでしまう所謂「裏抜け」が発生する等、インクに含まれる色材を記録媒体Pの表面近傍に留めることができない場合がある。この場合、色再現性に優れた鮮やかな色の画像を形成できず、画質劣化の原因となることが懸念される。
高品位な印刷を実現するためには、以上において説明したような、画質劣化の原因となる事象、すなわち、天然繊維に印刷する場合に生じうるインクの拡散による滲みや、インクの浸透または裏抜けによる色再現性の劣化等を防止する必要がある。
そこで、本実施形態では、画質劣化の原因となる事象の少なくとも一部を抑制するために、以下に示す第1〜第3の3つの対策を講ずる。以下、これら3つの対策について順番に説明する。
第1の対策は、吐出部Dが1つのドットを形成するために吐出するインクの吐出量を少なくすることである。
インクの吐出量が少ない場合、記録媒体Pに着弾するインク滴も小さくなるため、記録媒体Pおけるインクの拡散する範囲も狭くなる。このため、記録媒体Pにおいてインクが広く拡散することに起因する滲みを抑制することが可能となる。
また、インクの吐出量が少ない場合、インクの吐出量が多い場合と比較して、記録媒体Pに着弾したインク滴に含まれるインクが記録媒体Pに浸透する深さは浅くなる。このため、記録媒体Pにおいてインクの色材が深く浸透することに起因する色再現性の劣化を抑制することが可能となる。
第2の対策は、記録媒体Pに形成される画像の解像度を低くすることである。
解像度が低い場合、互いに隣り合う2つの画素間(ドット間)の距離が長くなる。この場合、インクが広く拡散したとしても、インク同士が混ざり合う可能性を低く抑えることができ、インクの拡散に起因する滲みを抑制することができる。
第3の対策は、印刷速度を遅くすることである。なお、詳細は後述するが、ここでいう印刷速度とは、印刷速度U、主走査印刷速度Uy、副走査印刷速度Uxの総称である。
印刷速度が遅くなる場合、あるドットが形成されてから、当該あるドットに隣接するドットが形成されるまでの時間長を長くすることが可能となる。この場合、天然繊維に吸収されたインクに含まれる水分などの溶剤成分の一部が、乾燥又は蒸発するため、印刷速度が速い場合(インクの吐出間隔が短い場合)と比較して、互いに隣り合うドットのインク同士が混ざり合う程度を低く抑えることができ、仮にインクが広く拡散しても画像の滲みの程度を低く抑えることが可能となる。
図19は、天然繊維にドットDt1が形成され、その後、ドットDt1が形成される画素に隣り合う画素にドットDt2が形成される様子を例示する説明図である。図19に示す例は、時刻T2にドットDt2を形成するインク滴を着弾させる代わりに、時刻T2が経過した後の時刻T4において当該インク滴を着弾させる点を除き、図18に示す例と同様である。
図19に示すように、ドットDt1を形成するインクのうち天然繊維に吸収され拡散したインクに含まれる水分等の溶剤成分は、時刻T2から時刻T4までの間に乾燥し減少する。このため、図18に示すような時刻T2にドットDt2を形成するインク滴を着弾させる場合よりも、図19に示すような時刻T4に着弾させる場合の方が、天然繊維に吸収され拡散したドットDt1を形成するインクの溶剤成分のうち、ドットDt2を形成するインク滴と接触する溶剤成分の量を少なくすることができる。よって、図19の時刻T5に示すように、ドットDt2を形成するインク滴に含まれるインクが、ドットDt1を形成するインク滴に含まれるインクが拡散された領域に向かって浸透または拡散する広がりの程度を小さくすることができる。これにより、互いに隣り合うドットに対応するインク同士が混ざり合う程度を低減させ、画像の滲みを抑制することが可能となる。
<3.3.2.化学繊維について>
次に、化学繊維の特性について説明する。
一般的にナイロン、アクリル、ポリエステル等の化学繊維は、インクを吸収しにくいため、インク滴のうち記録媒体Pの表面上に留まる部分の体積が小さくなり難く、その結果として、隣り合う画素のインク滴同士が結合して凝縮が生じる場合がある。
図20は、化学繊維にドットDt1が形成され、その後、ドットDt1が形成される画素に隣り合う画素にドットDt2が形成される様子を例示する説明図である。このうち、図20(A)は、凝集の発生する過程を示す図であり、図20(B)は、凝集が発生しない場合を示す図である。
図20(A)に示す例では、時刻T1において、ドットDt1を形成するインク滴が化学繊維に着弾する。そして、ドットDt1を形成するインク滴が化学繊維に吸収されたり蒸発したりして小さくなる前の時刻T2において、ドットDt2を形成するインク滴が着弾する。その後、時刻T3において、ドットDt1を形成するインク滴と、ドットDt2を形成するインク滴とが結合して、大きなインク滴を形成する。その結果、インク滴の結合が連続した状態であるインクの凝縮が生じ、印刷画質の劣化を招来する原因となる。
このような、化学繊維に印刷する場合に生じうるインクの凝縮を防止するための対策は、上述した天然繊維における第1〜第3の対策が有効である。
すなわち、第1の対策を施し、インクの吐出量を少なくすることで、互いに隣り合うドット間の距離を長くすることができ、また、インク滴に含まれるインクや溶剤成分等が乾燥するまでの時間長を短くすることができるため、隣り合うインク滴同士の結合による凝縮を防止することが可能となる。
また、第2の対策を施し、画像の解像度を低くすることによっても、互いに隣り合うドット間の距離を長くすることができ、インク滴同士の結合による凝縮を防止できる。
また、第3の対策を施し、印刷速度を遅くすることにより、印刷速度が速い場合と比較して、互いに隣り合うインク滴のうち先に着弾したインク滴に含まれるインクや溶剤成分等が、記録媒体Pに吸収されまたは蒸発して小さくなるため、結果的に隣り合うドット滴の間の距離を長くすることができ、インク滴同士の結合を防止できる。
図20(B)は、時刻T1においてドットDt1を形成するインク滴が着弾し、その後、時刻T2が経過した後の時刻T4においてドットDt2を形成するインク滴が着弾する場合を例示している。図20(B)に示すように、ドットDt1を形成するインクのうち化学繊維の表面に付着したインクの量(インク滴の体積)は、時刻T1から時刻T4までの間に減少し、ドットDt1のインク滴は小さくなる。このため、図20(B)に示す場合には、図20(A)に示す場合と比較して、ドットDt1及びDt2を形成する2つのインク滴同士が結合する可能性を低減することができる。これにより、凝縮の発生を抑制することが可能となる。
なお、凝縮は、天然繊維においても発生する場合がある。そのため、天然繊維においても、上述した第1乃至第3の対策を講ずることにより、化学繊維の場合と同様に凝縮の発生を抑制することができる。
また、上述した布地における第1乃至第3の対策は、普通用紙における画質劣化を防止する対策として採用することができる。
<3.4.記録媒体の表面性状について>
以上においては、記録媒体Pの特性のうちインクの吸収特性と、インクの吸収特性に関連して生じる画質劣化への対策と、について説明した。
評価情報は、上述したような、記録媒体Pのインクの吸収特性を考慮して決定される。より具体的には、評価情報は、各印刷モードが、インク吸収特性に関連する画質劣化防止対策を適切に講じられたものであるか否かという点を考慮して、その内容が決定される。
なお、評価情報の内容の決定にあたり考慮が必要となる記録媒体Pの特性には、上述した記録媒体Pのインク吸収特性の他に、記録媒体Pの表面性状が存在する。以下、図21及び図22を参照しつつ、記録媒体Pの表面性状と、記録媒体Pの表面性状に関連して生じる画質劣化への対策と、について説明する。
図21は、本実施形態に係る各記録媒体Pの表面性状、具体的には、総合表面粗さ、表面粗さ、および、表面うねりを測定した算術平均値を示す表である。この図に示すように、写真用紙と比較して、特に布地は、表面が粗い(つまり、表面が毛羽立っている)。なお、表面性状(粗さ曲線、うねり曲線および断面曲線)を表すための用語、定義および表面性状パラメータについては「JIS B 0601」に規定されている。
布地のように、表面粗さが粗い記録媒体Pにおいては、記録媒体Pを組成する繊維が、ノズルプレート240よりも上面(+Z側)まで到達してノズルNの内部に侵入し、さらには、当該繊維が、吐出部Dの内部に充填されたインクに接触する場合がある。記録媒体Pの繊維が吐出部Dに充填されたインクに接触すると、インクが当該繊維を伝わって記録媒体Pに伝播し、記録媒体Pがインクにより汚染される場合がある。記録媒体Pがインクにより汚染される場合には、記録媒体Pに形成される画像の画質は低下するし、また、当該汚染が印刷装置1の利用者により視認可能な場合には、印刷処理そのものが失敗となることもある。
本実施形態では、このような、記録媒体Pの繊維が吐出部D内部のインクに接触することに起因して生じる記録媒体Pの汚染(及び、記録媒体Pの汚染に伴う印刷画質の劣化)を防止するために、以下の第4の対策を講ずる。
第4の対策は、布地に対する印刷処理において、メニスカスMsを吐出部Dの内部へと+Z方向に引き込み、ノズルプレート240の下面(または、プラテン74上の記録媒体P)から離反させることである(以下、メニスカスMsの+Z方向への引き込みを、単に、「メニスカス位置dZの引き込み」と称する場合がある)。
図22は、メニスカス位置dZの引き込みを説明するための説明図である。このうち、図22(A)は、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lである場合を示し、図22(B)は、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lよりも+Z側であるハイポジションdZ-Hである場合を示している。
図22(A)に示すように、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lである場合、記録媒体Pの繊維がノズルNの内部に侵入すると、当該繊維と吐出部Dの内部に充填されたインクとが接触し、その結果として、記録媒体Pが汚染される。
一方、図22(B)に示すように、メニスカス位置dZの引き込み、メニスカス位置dZをハイポジションdZ-Hとする場合、記録媒体Pの繊維がノズルNの内部に侵入しても、当該繊維と吐出部Dの内部に充填されたインクとが接触する可能性を低く抑えることができ、その結果として、記録媒体Pの汚染を防止することができる。
このように、印刷の対象が布地である場合には、第4の対策を講じることで、記録媒体Pの繊維と吐出部Dの内部に充填されたインクとの接触に起因する記録媒体Pの汚染を防止することができる。
なお、本実施形態では、第4の対策を、布地に対する印刷処理の場合に限って施すことを想定するが、本発明はこのような態様に限定されるものでなく、例えば、布地と同様に表面粗さの粗い記録媒体Pである普通用紙に対する印刷処理においても第4の対策を施しても構わない。
ところで、記録媒体Pの表面性状に関しては、上述のような吐出部D内部のインクによる記録媒体Pの汚染とは逆に、インクが吐出された記録媒体Pによるヘッド部30(吐出部D)の汚染も生じうる。
具体的には、双方向モードによる印刷処理を実行するときに、往路において記録媒体Pにインクが吐出された後、復路において当該記録媒体Pの繊維がヘッド部30に接触することでヘッド部30にインクが付着してヘッド部30が汚染されたり、または、当該インクの付着した記録媒体Pの繊維自体がヘッド部30に付着してヘッド部30が汚染されたりする場合がある。ヘッド部30が汚染されると、当該汚染に起因して印刷品質が低下することがあるため、ヘッド部30を回復機構84によりクリーニングすることが必要となり、印刷処理に係る手間が増大するという弊害が生じる。
このような、インクが吐出された記録媒体Pによるヘッド部30の汚染は、表面粗さの粗い布地、特に天然繊維に対して双方向モードで印刷を行う場合に生じやすい。
そこで、本実施形態では、インクが吐出された記録媒体Pによるヘッド部30の汚染という弊害を防止するために、以下の第5の対策を講ずる。
第5の対策は、布地に対する印刷処理において双方向モードの採用を禁止することである。
第5の対策を施す場合、インクジェットプリンター10は、往路のみにおいて吐出部Dにインクを吐出させ、復路では吐出部Dからインクを吐出することなくキャリッジをホームポジション(往路における印刷の開始位置)に戻す。この場合、インクジェットプリンター10は、復路において、インク滴を目標位置に正確に着弾させるようなキャリッジ32の位置制御は不要であり、単にキャリッジ32をホームポジションに移動さればよい。このため、例えば、復路におけるキャリッジ32の移動速度を、記録媒体Pの繊維がヘッド部30に付着できない程度に速くする等の対応により、インクが吐出された記録媒体Pによるヘッド部30の汚染を防止することが可能となる。
<4.インクについて>
印刷処理においては、各記録媒体Pへの印刷に適したインクを使用することが好ましく、各記録媒体Pへの印刷に適さないインクの使用は回避すべきである。すなわち、印刷された画像の画質が劣悪になったり、印刷処理により媒体が汚染される可能性を低減して適切な印刷処理を実行するためには、上述した記録媒体Pの特性の他に、インクの特性を考慮することが必要である。
よって、評価情報の内容の決定にあたっては、記録媒体Pの特性の他に、インクの特性を考慮することが必要となる。
ところで、本実施形態に係るインクジェットプリンター10は、基本色、特色、淡色の3区分に区分される9種類(9色)のインクを使用する。インクジェットプリンター10によって、記録媒体Pの所定の領域に所定の色を印刷する場合、9種類のインクのうち、複数種類のインクを組み合わせることで、当該所定の色を再現することがある。この場合のインクの組み合わせ方は、通常は複数通り存在する。
以下では、インクの特性について説明する前提として、複数種類のインクを組み合わせて所定の色を再現する方法について説明する。
図23は、ある1つの色を再現する際のインクデューティと、各インクのドット記録率との関係を例示する図である。ここで、ドット記録率とは、画素にドットが記録される確率を意味する。例えば、ドット記録率が10%の場合、10画素に1画素の割合でドットが記録される。また、インクデューティーとは、ドットサイズ(画素の面積を100%としたときにドットが記録される面積の割合)と、ドット記録率との積である。すなわち、インクデューティーとは、印刷の対象となる所定の領域の面積を100%としたときに、当該所定の領域内に形成される複数のドットが記録される面積の割合を意味し、換言すれば、当該所定の領域内に吐出されるインクの総量を表す値である。
なお、本実施形態では、理解を容易にするために、ドットサイズが画素の面積と等しい場合を想定する。
図23は、ある所定の色を再現するためのインクの組み合わせ方の一例を示す図である。この図に示すように、当該所定の色は、例えば、インクデューティーが80%であり、シアンの記録率を20%とし、マゼンタの記録率を35%とし、イエローの記録率を45%とし、他の色の記録率を0%とすることで再現される。
ところで、理想的には、記録率10%のシアンと、記録率10%のマゼンタと、記録率10%のイエローとで再現される色と、記録率10%のブラックで再現される色とは、同じ色になる。従って、例えば、あるインクの組み合わせで再現される色と、当該あるインクの組み合わせから、シアン、マゼンタ、イエローの記録率をそれぞれ5%ずつ減らし、且つ、ブラックの記録率を5%増やした場合に再現される色とは、同じ色になる。
このため、図23に示す例では、インクデューティーが80%のときに再現される色と、インクデューティーが70%のときに再現される色とは、同じ色になる。同様に、インクデューティーが60%のときに再現される色、インクデューティーが50%のときに再現される色、及び、インクデューティーが40%のときに再現される色は、いずれも、インクデューティーが80%のときに再現される色と同じ色となる。このように、インクデューティーを低くするためには、ブラックのインクの記録率を増加させれば良いことがわかる。
なお、現実には、ブラックのインクの記録率を増大させると、ブラックのインクのドットの粒状感が増し、記録媒体Pの地肌の露出の程度が増す等、画質の劣化の原因となり得る問題が生じうるので、ブラックのインクの記録率は、これらの問題と記録媒体Pのインクデューティの最大許容値との間のトレードオフを考慮して決定される。例えば、インクの受容量の多い写真用紙においては、ブラックのインクの記録率を低くしてインクデューティーを大きくすることが好ましく、逆にインクの受容量の少ない布地においては、ブラックのインクの記録率を高くしてインクデューティーを小さくすることが好ましい。
また、この例では、記録率10%のシアンで再現される色と、記録率20%の淡シアンで再現される色とは、同じ色になり、記録率10%のマゼンタで再現される色と、記録率20%の淡マゼンタで再現される色とは、同じ色になる。従って、例えば、あるインクの組み合わせで再現される色と、当該あるインクの組み合わせから、シアン、マゼンタの記録率をそれぞれ10%ずつ減らし、且つ、淡シアン、淡マゼンタの記録率を20%増やした場合に再現される色とは、同じ色になる。このため、図23に示す例では、インクデューティーが80%のときに再現される色と、インクデューティーが100%のときに再現される色とは、同じ色になる。
このように、淡色インクの記録率を増加させるとインクデューティーが高くなり、淡色インクの記録率を減少させるとインクデューティーが低くなることが分かる。
淡色インクを使用する場合、印刷される画像の階調の刻みをより細やかにし(階調数を増加させ)、印刷される画像の画質を向上させることが可能となる。また、淡色インクを使用して、インクデューティーを向上させることで、インク滴の粒状感を減少させ、記録媒体Pの地肌の露出の程度を減少させることもできる。
しかし、淡色インクを使用した場合、インクデューティーが高くなり、記録媒体Pが受容可能なインク量を超える場合がある。特に、インク受容層を備えない布地に対して淡色インクを使用した場合には、インク滴同士が記録媒体Pの表面で結合して凝縮を起こしたり、インクが記録媒体Pの内部で混ざり合うことで滲みが発生したり、または、インクが深く浸透し過ぎる裏抜け等が生じて色再現性の低下を招いたりする等、画質劣化を招来する可能性が高い。
そこで、本実施形態では、淡色インクを使用することにより生じる画質劣化を防止するために、以下の第6の対策を講ずる。
第6の対策は、布地に対する印刷処理においては、淡色インクを使用しないことである。
すなわち、第6の対策は、布地に対する印刷処理においては、濃淡カラーモード及び全色カラーモードの採用を禁止することである。
なお、本実施形態では、淡色インクとは、基本色インクや特色インクと比較して、インクに含まれる水分等の溶剤成分の含有量が多いインク(例えば、溶剤成分のインク全体に占める重量比が高いインク)の総称である。よって、より一般的に表現するならば、第6の対策は、布地に対する印刷処理において使用するインクに含まれる水分等の溶剤成分の含有量を少なく(溶剤成分のインク全体に占める重量比を小さく)すること、と表現することもできる。
インクにおける溶剤成分の含有量が少ない場合、溶剤成分の含有用が多い場合と比較して、記録媒体Pにおいてインク(特に、インクの溶剤成分)が浸透しまたは拡散する範囲を狭くすることができる。これにより、インクが広く拡散することによる滲みや、インクが深く浸透することによる色再現性の劣化等を抑制することができる。
ところで、上述のとおり、本実施形態では、布地モードにおいて、インクの凝縮、インクの滲み、または、インクの浸透による色再現性の劣化等、画質の低下に繋がる事象の発生を低減させるため、写真用紙モードや普通用紙モードと比較して、ドット間の間隔を広くしたり、または、最大ドット形成インク量Wを少なくする等の対策を施す。このため、布地モードでは、その他の媒体モードmと比較して、複数種類のインクを用いて互いに異なる色の複数個のドットを形成する場合に、印刷装置1の利用者が当該複数個のドットを一体として視認できない可能性が高くなる。この場合、布地モードでは、写真用紙モードや普通用紙モードと比較して、互いに異なる色の複数種類のインクを用いて互いに異なる色の複数個のドットを形成することにより当該複数種類のインクとは異なる色(中間色)を再現する(視認させる)ことが難しくなる。換言すれば、複数種類のインクを使用して布地に対する印刷処理を実行する場合、当該複数種類のインクを使用して写真用紙や普通用紙に対する印刷処理を実行する場合と比較して、使用される複数種類のインクにより規定される色空間における色域(ガマット)を広げることが難しくなり、更には、印刷される画像の階調数を増加させることが難しくなる。このように、布地モードとその他の媒体モードmとで使用されるインクの種類が同一である場合には、布地モードは、その他の媒体モードmと比較して、印刷される画像の色再現性が乏しく画質が劣ったものとなる可能性が高い。
更に、第6の対策を講じる場合(布地モードにおいて淡色インクを使用しない場合)には、写真用紙モードや普通用紙モードで使用する淡色インクを、布地モードにおいて使用できないため、布地モードにおいて表現される階調数が、写真用紙モードや普通用紙モードにおいて表現される階調数よりも少なくなる。この場合には、布地モードにおける色再現性が、その他の媒体モードmと比較して劣るという傾向が、一層顕著なものとなる。
そこで、本実施形態では、布地に対して淡色インクを使用しないという第6の対策を講ずることにより生じる色再現性の劣化という弊害を防止する等の目的のために、以下の第7の対策を講ずる。
第7の対策は、少なくとも布地に対する印刷処理においては、特色インクを使用することである。すなわち、第7の対策は、布地に対する印刷処理においては、特色カラーモードを採用することである。
特色インクを使用する場合、使用しない場合と比較して、色空間において画像として表現可能な色域(ガマット)を広げることが可能となる。例えば、イエローの補色であるグリーンのインクを用いる場合、シアンとマゼンタとの間において表現可能な色域を広げることができる。
また、淡色インクを使用しない場合であっても、特色インクを使用する場合には、淡色インクを使用する場合と同様に細かい階調を刻むことが可能となる。例えば、CMYKの基本色インクに加えて、グリーンのインクとバイオレットの2色の特色インクを用いる場合、色空間上で当該2色の特色を表す2本の座標軸の間の座標軸に対応するマゼンタを、マゼンタのインクによって表現することの他に、当該2色の特色インクによっても表現することが可能となる。このため、グリーンのインクとバイオレットのインクとを用いれば、淡マゼンタを使用しない場合であっても、淡マゼンタを使用する場合と同様に、マゼンタの階調数を細かく刻んだ階調表現が可能となる。
このように、布地に対する印刷において特色インクを使用することで、色空間において表現可能な色域(ガマット)を広げることができるとともに、表現可能な階調数を増加させることができ、紙媒体に対する印刷と同様な十分な色再現性を有する高品位な画像の印刷が可能となる。
なお、写真用紙や普通用紙に対する印刷処理においても、特色インクの使用により階調数を増加させることができる。このため、色再現性向上の観点からは、写真用紙や普通用紙に対しても、特色インクを使用することが好ましい。
しかし、上述のとおり、普通用紙は、写真用紙と比較して、受容可能なインク量が少ない。
このため、普通用紙に対する印刷処理において、基本色インク及び淡色インクに加えて、特色インクを使用した場合(すなわち、3つの色区分のインクを全て使用した場合)、普通用紙が受容可能なインク量を超過することがある。この場合、凝縮、滲み、コックリング現象等が生じる可能性が高くなり、画質劣化を招来することがある。
また、普通用紙は、布地と比較して、複数種類のインクを用いて互いに異なる色の複数個のドットを形成することにより当該複数種類のインクとは異なる色を再現することが容易である。このため、普通用紙に対する印刷処理においては、基本色インクのみの使用、基本色インク及び特色インクの使用、または、基本色インク及び淡色インクの使用といった、1つの色区分または2つの色区分のインクのみを使用した場合であっても、十分な色再現性を確保することができる。
そこで、本実施形態では、普通用紙に対する印刷処理において、基本色インク、特色インク、及び、淡色インクの併用することにより生じる凝縮、滲み、コックリング現象等の弊害を防止するために、以下の第8の対策を講ずる。
第8の対策は、普通用紙に対する印刷処理においては、基本色インク、特色インク、及び、淡色インクの3区分のインクの併用を避けることである。すなわち、第8の対策は、普通用紙に対する印刷処理においては、全色カラーモードをの採用を禁止することである。
第8の対策を施すことで、凝縮、滲み、コックリング現象等の弊害を防止することができ、また、2区分のインクを併用すれば、印刷される画像の階調数を高めることができる。
以上において説明したように、インクの特性と、インクの特性に関連する画質劣化防止対策(第6の対策〜第8の対策)とを考慮することで、評価情報を適切に決定することができる。
なお、上述した第6乃至第8の対策を講ずる場合には、記録媒体P毎に異なるカラーモードcが採用されることがある。カラーモードcが異なれば、印刷処理において使用されるインク種類が異なるため、ある1つの色を再現する場合であっても、使用されるインクの種類と各インクの記録率とが異なることがある。
このため、本実施形態では、カラーモードc毎に、色変換テーブルLUT(図1参照)が設けられる。より具体的には、本実施形態では、5種類のカラーモードc(c=1〜5)が存在するため、これらと1対1に対応する5つの色変換テーブルLUTが設けられる。
そして、色変換部93は、印刷モード設定部91が設定したカラーモードc(印刷条件指定画面等において指定されたカラーモードc)に対応する色変換テーブルLUTを参照することで、画像データImgの示す画像の色のデータを、インクジェットプリンター10が使用するインク色で規定される色空間で表現したデータに変換する。
<5.動作規定情報について>
上述のとおり、評価情報は、記録媒体Pの特性やインクの特性に加えて、インクジェットプリンター10の動作の特性を考慮して設計される。
以下において、インクジェットプリンター10の動作の特性を規定する動作規定情報について説明する。
動作規定情報は、上述した記録媒体Pの特性に関連する対策、特に第1乃至第4の対策を考慮して定められた情報であり、予め動作規定情報テーブルTBL14に記憶されている。
印刷データ生成部90の印刷モード設定部91は、印刷モードが指定されると、動作規定情報テーブルTBL14にアクセスし、指定された印刷モードに対応する動作規定情報を取得する。そして、印刷データ生成部90は、印刷モード設定部91が設定した印刷モードに係る情報と、印刷モード設定部91が取得した動作規定情報とに基づいて、印刷データPDを生成する。これにより、インクジェットプリンター10は、印刷モードに係る情報と動作規定情報とに基づいて印刷処理を実行する。
図24は、動作規定情報テーブルTBL14のデータ構造の一例を示す図である。この図に示すように、動作規定情報テーブルTBL14は、印刷モードと、印刷モードに対応する動作規定情報とを関連付けて記憶している。
本実施形態において、動作規定情報は、印刷モードのうち、媒体モードm、画質モードg、ドット種類モードdの組合せ毎に定められる。このため、本実施形態では、動作規定情報テーブルTBL14は、印刷モードのうち、印刷方向モードh及びカラーモードc以外の3種類の設定モードの組み合わせと、動作規定情報とを1対1に対応付けて記憶している。なお、この図では、モード番号のうち、印刷方向モードhとカラーモードcとを変数により表す。例えば、この図において、媒体モードmとして写真用紙モード(m=1)が指定され、画質モードgとして画質優先モード(g=1)が指定され、ドット種類モードdとして4ビットモード(d=2)が指定された場合、モード番号(m、g、h、d、c)を「11h2c」と表す。この場合のモード番号「11h2c」は、印刷方向モードhが「1」及び「2」の双方の場合を含み、カラーモードcが「1」〜「5」の何れの場合も含むことを意味することとする。
図24に示すように、本実施形態において、動作規定情報は、最大ドット形成インク量W、解像度R、駆動周波数F、オーバーラップ数S、及び、メニスカス位置dZを含む。
以下、これら動作規定情報の内容と、動作規定情報の各値の設定条件に付いて説明する。
<5.1.最大ドット形成インク量について>
まず、動作規定情報のうち、最大ドット形成インク量Wについて説明する。
最大ドット形成インク量Wとは、記録媒体Pの1つの画素に対応する領域に吐出されるインク量(インクの重量または体積)の最大値である。
なお、本実施形態において、記録媒体Pに画素を記録する方法は、複数存在する。具体的には、第1の方法として、画素に対応する領域に、吐出部Dからインク滴を1回だけ吐出させて1つのドットを形成する方法が存在する。また、第2の方法として、画素に対応する領域に、吐出部Dからインク滴を2回以上吐出させることで2以上のインク滴を着弾させ、当該着弾した2以上のインク滴を結合させることで、最終的に1つのドットを形成する方法が存在する。また、第3の方法として、画素に対応する領域に、吐出部Dからインク滴を2回以上吐出させることで2以上のインク滴を着弾させ、これら2以上のインク滴を結合させることなく、最終的に2以上のドットを形成する方法が存在する。つまり、第3の方法は、第2の方法において、着弾した2以上のインク滴のうち一部または全部が結合しない場合である。
ここで、1つの画素を表現するために各画素に1対1に対応して最終的に形成されるドットと、1つの画素に1対1に対応するドットを形成する前段階において暫定的に設けられるドットとを区別するために、前者を単に「ドット」と表現し、後者を「暫定的ドット」と称する。
より具体的には、第1の方法においては、画素に対応する領域に対して吐出部Dからインク滴を1回だけ吐出させることで形成される1つのドットが、「暫定ドット」に該当し、同時に「ドット」にも該当する。また、第2の方法においては、画素に対応する領域に対して吐出部Dからインク滴を2回以上吐出させることで暫定的に形成される2以上のドットの各々が「暫定ドット」に該当し、また、これら2以上の暫定ドットが結合して最終的に形成される1つのドットが「ドット」に該当する。また、第3の方法においては、画素に対応する領域に対して吐出部Dからのインク滴を2回以上吐出させることで暫定的に形成される2以上のドットの各々が「暫定ドット」に該当し、また、これら2以上の暫定ドットの集合が「ドット」に該当する。つまり、第3の方法において、「ドット」は複数の暫定ドットを含む。なお、本実施形態に係るインクジェットプリンター10は、吐出部Dからのインク滴を2回以上吐出させる場合、画素に対応する領域に形成される2以上の暫定ドットが結合するようにインクを吐出させる。換言すれば、本実施形態に係るインクジェットプリンター10では、画素の記録方法として、上述した第1乃至第3の方法のうち、第1の方法及び第2の方法を採用する。但し、インクジェットプリンター10は、画素の記録方法として第3の方法を採用してもよい。
このように、本実施形態では、1つの画素に対応する領域に1対1に対応するように、1つのドットが最終的に形成される。また、1つのドットは、1または複数の暫定ドットによって形成される。
これらの説明からも明らかなように、本実施形態において、最大ドット形成インク量Wとは、1つのドット(前者の「ドット」)を形成するために吐出されるインク量の最大値である。なお、図16及び図18〜図20で説明したドットDt1及びDt2は、前者の「ドット」を意味するが、後者の「暫定ドット」を意味するものであってもよい。
以下、図24に示す12個のモード番号(11h1c、11h2c、…、32h2c)に対応する最大ドット形成インク量Wを、「W1」〜「W12」で表す。
最大ドット形成インク量Wは、上述した第1の対策を考慮して定められる。
上述のとおり、第1の対策は、インクの滲みや、色再現性の劣化、インク滴の凝縮等の弊害による画質劣化を防止するために、1つのドットを形成するためのインクの吐出量を少なくすることである。写真用紙がインク受容層を備えるのに対して、布地はインク受容層を備えず、普通用紙はベースペーパー層によりインクを受容する。よって、インクの吐出量を多くした場合の画質劣化の程度は、布地への印刷の場合が最も大きく、写真用紙への印刷の場合が最も小さい。このため、第1の対策を施す必要性は、布地への印刷の場合が最も高く、写真用紙への印刷の場合が最も低い。
そこで、本実施形態では、布地モードにおける最大ドット形成インク量Wが、写真用紙モードや普通用紙モードにおける最大ドット形成インク量Wよりも少なくなるように、最大ドット形成インク量Wを定める(以下、当該設定条件を、「第1の条件」と称する)。
具体的には、図24に示すように、布地モードにおける最大ドット形成インク量W(W9〜W12)を、普通用紙モードにおける最大ドット形成インク量W(W5〜W8)よりも少なくし、普通用紙モードにおける最大ドット形成インク量W(W5〜W8)を、写真用紙モードにおける最大ドット形成インク量W(W1〜W4)よりも少なくする。
より具体的には、本実施形態では、布地モードにおける最大ドット形成インク量Wの最大値を、普通用紙モードにおける最大ドット形成インク量Wの最小値よりも小さくし、且つ、普通用紙モードにおける最大ドット形成インク量Wの最大値を、写真用紙モードにおける最大ドット形成インク量Wの最小値よりも小さくする。この図の例では、布地モードの場合の最大ドット形成インク量Wの最大値はW12(14ナノグラム)であり、普通用紙モードの場合の最大ドット形成インク量Wの最小値はW5(16ナノグラム)である。また、普通用紙モードの場合の最大ドット形成インク量Wの最大値はW8(22ナノグラム)であり、写真用紙モードの場合の最大ドット形成インク量Wの最小値はW3(24ナノグラム)である。
但し、「第1の条件」に係る最大ドット形成インク量Wの定め方は上記に限定されるものではなく、例えば、布地モードにおける最大ドット形成インク量Wの最大値が、写真用紙モードにおける最大ドット形成インク量Wの最小値以下となり、且つ、普通用紙モードにおける最大ドット形成インク量Wの最小値以下となるよう定めてもよい。すなわち、写真用紙モードの最大ドット形成インク量Wと、普通用紙モードの最大ドット形成インク量Wとの関係を考慮せずに最大ドット形成インク量Wを定めてもよいし、布地モードにおける最大ドット形成インク量Wの最大値が、写真用紙モードにおける最大ドット形成インク量Wの最小値と等しい場合、または、普通用紙モードにおける最大ドット形成インク量Wの最小値と等しい場合が含まれるように、最大ドット形成インク量Wを定めてもよい。
また、最大ドット形成インク量Wは、例えば、媒体モードm以外の設定モードが同一である場合に、布地モードにおける最大ドット形成インク量Wが、写真用紙モードにおける最大ドット形成インク量W以下となり、且つ、普通用紙モードにおける最大ドット形成インク量W以下となるように定めてもよい。例えば、モード番号「11h1c」、「21h1c」、「31h1c」に対応する、最大ドット形成インク量W(W1、W5、W9)が、「W9≦W1」及び「W9≦W5」を充足するように、最大ドット形成インク量Wを定めてもよい。
本実施形態では、最大ドット形成インク量Wを、第1の対策に対応するための第1の条件の他に、印刷画質の向上を図るための各種条件を充足するように定める。
具体的には、本実施形態では、写真用紙モードにおいて、画質優先モードの場合の最大ドット形成インク量Wが、速度優先モードの場合の最大ドット形成インク量W以上の量となるように、最大ドット形成インク量Wを定める(以下、当該設定条件を、「第2の条件」と称する)。
写真用紙はインク受容層を備えるため、受容可能なインク量が多い。インク受容層が多くの量のインクを受容する場合、少量のインクを受容する場合と比較して、深みのある色を再現することができる。このため、写真用紙においては、印刷速度よりも画質を優先する画質優先モードの場合に、速度優先モードの場合と比較して、各画素に対応する領域に多くのインクを吐出させることで、深みのある色を再現可能として高画質な画像を印刷する。
また、本実施形態では、普通用紙モード及び布地モードにおいて、画質優先モードの場合の最大ドット形成インク量Wが、速度優先モードの場合の最大ドット形成インク量W以下の量となるように、最大ドット形成インク量Wを定める(以下、当該設定条件を、「第3の条件」と称する)。
普通用紙や布地は、写真用紙と比較して受容可能なインク量が少ない。よって、多くの量のインクを吐出すると、凝縮や滲み等の発生の可能性が高くなり、画質が低下する。このため、普通用紙及び布地においては、画質優先モードの場合に、速度優先モードの場合と比較して、各画素に対応する領域に吐出されるインク量を少量とすることで、凝縮や滲み等の発生の可能性を抑えた高画質な画像を印刷する。
また、本実施形態では、媒体モードm及び画質モードgが同一である場合において、2ビットモードの場合の最大ドット形成インク量Wが、4ビットモードの場合の最大ドット形成インク量W以下の量となるように、最大ドット形成インク量Wを定める(以下、当該設定条件を、「第4の条件」と称する)。
詳細は後述するが、本実施形態では、2ビットモードにおける解像度Rを、4ビットモードにおける解像度Rよりも高くなるように解像度Rを定める。このため、本実施形態では、2ビットモードの場合、つまり解像度Rが高い場合の最大ドット形成インク量Wを、4ビットモードの場合、つまり解像度Rが低い場合の最大ドット形成インク量W以下とすることで、2ビットモードの場合に互いに隣り合うインク滴同士が接近しすぎることを防止し、凝縮や滲み等の発生の可能性を低く抑える。
<5.2.解像度について>
次に、動作規定情報のうち、解像度Rについて説明する。
解像度Rとは、本明細書では、単位面積あたりの画素数、つまり、単位面積あたりに最終的に形成可能なドット数と定義する。また、主走査方向の解像度Ry(以下、単に「解像度Ry」と称する)を主走査方向の単位長さあたりに形成可能なドット数と定義し、副走査方向の解像度Rx(以下、単に「解像度Rx」と称する)を副走査方向の単位長さあたりに形成可能なドット数と定義する。つまり、本明細書では、解像度Rを、「(解像度Ry)×(解像度Rx)」と定義する。なお、以下では、「単位長さ」が1インチであり、「単位面積」が1平方インチである場合を例示して説明する。
以下、図24に示す12個のモード番号(11h1c、11h2c、…、32h2c)に対応する解像度Rを、「R1」〜「R12」で表す。
解像度Rは、上述した第2の対策を考慮して定められる。
上述のとおり、第2の対策は、インクの滲みや、インク滴の凝縮等の弊害による画質劣化を防止するために、記録媒体Pに形成される画像の解像度Rを低くすることである。インクの拡散による滲みやインク滴の結合による凝縮等の発生の可能性は、布地への印刷の場合が最も高く、写真用紙への印刷の場合が最も低い。このため、第2の対策を施す必要性は、布地への印刷の場合が最も高く、写真用紙への印刷の場合が最も低い。
そこで、本実施形態では、布地モードにおける解像度Rが、写真用紙モードや普通用紙モードにおける解像度Rよりも低くなるように、解像度Rを定める(以下、当該設定条件を、「第5の条件」と称する)。
なお、上述のとおり、解像度Rは、「(解像度Ry)×(解像度Rx)」である。このため、一の媒体モードm(例えば、布地モード)における解像度Rを、他の媒体モードm(例えば、写真用紙モード)における解像度Rよりも低くするためには、一の媒体モードmにおける解像度Ryを他の媒体モードmにおける解像度Ryよりも低くするという条件、または、一の媒体モードmにおける解像度Rxを他の媒体モードmにおける解像度Rxよりも低くするという条件、の少なくともいずれか一方を充足することが必要となる。よって、本実施形態では、第5の条件を充足するように解像度Rを定めるために、布地モードにおける解像度Ryを写真用紙モードや普通用紙モードにおける解像度Ryよりも低くするという条件、及び、布地モードにおける解像度Rxを写真用紙モードや普通用紙モードにおける解像度Rxよりも低くするという条件、の少なくとも一方の条件を充足するように、解像度Ry及び解像度Rxを定める。
以下において、上述した第5の条件の詳細を説明する。なお、以下の説明は、解像度Rについての説明であるが、当該説明は解像度Ry及び解像度Rxについても同様に該当する。
本実施形態において、第5の条件は、図24に示すように、布地モードにおける解像度R(R9〜R12)を、写真用紙モードにおける解像度R(R1〜R4)よりも低くし、且つ、普通用紙モードにおける解像度R(R5〜R8)よりも低くするように解像度Rを定めるものである。より具体的には、布地モードにおける解像度Rの最大値を、写真用紙モードにおける解像度Rの最小値よりも小さくし、且つ、普通用紙モードにおける解像度Rの最小値よりも小さくする。この図の例では、布地モードの場合の解像度Rの最大値はR9(800×800dpi)であり、写真用紙モードの場合の解像度Rの最小値はR4(1000×1000dpi)であり、普通用紙モードの場合の解像度Rの最小値はR8(900×900dpi)である。
但し、「第5の条件」に係る解像度Rの定め方は上記に限定されるものではなく、例えば、
布地モードにおける解像度Rの最大値が、写真用紙モードにおける解像度Rの最小値以下となり、且つ、普通用紙モードにおける解像度Rの最小値以下となるよう定めてもよい。
また、解像度Rは、例えば、写真用紙モードと普通用紙モードとの関係も考慮し、布地モードにおける解像度Rの最大値が、普通用紙モードにおける解像度Rの最小値以下となり、且つ、普通用紙モードにおける解像度Rの最大値が、写真用紙モードにおける解像度Rの最小値以下となるよう定めてもよい。
また、解像度Rは、例えば、媒体モードm以外の設定モードが同一である場合に、布地モードにおける解像度Rが、写真用紙モードにおける解像度R以下となり、且つ、普通用紙モードにおける解像度R以下となるように定めてもよい。例えば、モード番号「11h1c」、「21h1c」、「31h1c」に対応する、解像度R(R1、R5、R9)が、「R9≦R1」及び「R9≦R5」を充足するように、解像度Rを定めてもよい。
また、本実施形態では、解像度Rを、第2の対策に対応するための第5の条件の他に、以下の各種条件を充足するように定める。
具体的には、本実施形態では、各媒体モードmにおいて、画質優先モードの場合の解像度Rが、速度優先モードの場合の解像度R以上の解像度となるように、解像度Rを定める(以下、当該設定条件を、「第6の条件」と称する)。印刷速度よりも画質を優先する画質優先モードの場合に、速度優先モードの場合と比較して、解像度Rを高くすることで、高精細な画像の印刷が可能となる。
また、本実施形態では、媒体モードm及び画質モードgが同一である場合において、2ビットモードの場合の解像度Rが、4ビットモードの場合の解像度R以上の解像度となるように、解像度Rを定める(以下、当該設定条件を、「第7の条件」と称する)。
上述のとおり、2ビットモードは各ドットを2階調で表現し、4ビットモードは各ドットを4階調で表現する。このため、本実施形態では、2ビットモードの場合の解像度Rを4ビットモードの場合の解像度Rよりも高くして、2ビットモードの画質を4ビットモードの画質と同程度まで高めることを可能とする。
<5.3.駆動周波数について>
次に、動作規定情報のうち、駆動周波数Fについて説明する。
駆動周波数Fとは、1つの吐出部Dが単位時間あたりに形成可能なドット数である。駆動周波数Fが高くなるに従って、1つの吐出部Dが単位時間あたりに形成可能なドット数は多くなり、印刷速度が向上する。
以下、図24に示す12個のモード番号(11h1c、11h2c、…、32h2c)に対応する駆動周波数Fを、「F1」〜「F12」で表す。
駆動周波数Fは、上述した第3の対策を考慮して定められる。
上述のとおり、第3の対策は、インクの滲みや、インク滴の凝縮等の弊害による画質劣化を防止するために、印刷速度を遅くすることである。インクの拡散による滲みやインクの結合による凝縮等の発生の可能性は、布地への印刷の場合が最も高く、写真用紙への印刷の場合が最も低い。このため、第3の対策を施す必要性は、布地への印刷の場合が最も高く、写真用紙への印刷の場合が最も低い。
そこで、本実施形態では、布地モードにおける駆動周波数Fが、写真用紙モードや普通用紙モードにおける駆動周波数Fよりも低くなるように、駆動周波数Fを定める(以下、当該設定条件を、「第8の条件」と称する)。
具体的には、図24に示すように、布地モードにおける駆動周波数F(F9〜F12)を、写真用紙モードにおける駆動周波数F(F1〜F4)よりも高くし、且つ、普通用紙モードにおける駆動周波数F(F5〜F8)よりも高くする。より具体的には、布地モードにおける駆動周波数Fの最大値を、写真用紙モードにおける駆動周波数Fの最小値よりも小さくし、且つ、普通用紙モードにおける駆動周波数Fの最小値よりも小さくする。この図の例では、布地モードの場合の駆動周波数Fの最大値はF11(16000Hz)であり、写真用紙モードの場合の駆動周波数Fの最小値はF2(48000Hz)であり、普通用紙モードの場合の駆動周波数Fの最小値はR6(32000Hz)である。
但し、「第8の条件」に係る駆動周波数Fの定め方は、上記に限定されるものではなく、例えば、布地モードにおける駆動周波数Fの最大値が、写真用紙モードにおける駆動周波数Fの最小値以下となり、且つ、普通用紙モードにおける駆動周波数Fの最小値以下となるように定めてもよい。
また、駆動周波数Fは、例えば、写真用紙モードと普通用紙モードとの関係も考慮し、布地モードにおける駆動周波数Fの最大値が、普通用紙モードにおける駆動周波数Fの最小値以下となり、且つ、普通用紙モードにおける駆動周波数Fの最大値が、写真用紙モードにおける駆動周波数Fの最小値以下となるよう定めてもよい。
また、駆動周波数Fは、例えば、媒体モードm以外の設定モードが同一である場合に、布地モードにおける駆動周波数Fが、写真用紙モードにおける駆動周波数F以下となり、且つ、
普通用紙モードにおける駆動周波数F以下となるように定めてもよい。例えば、モード番号「11h1c」、「21h1c」、「31h1c」に対応する、駆動周波数F(F1、F5、F9)が、「F9≦F1」及び「F9≦F5」を充足するように、駆動周波数Fを定めてもよい。
また、本実施形態では、駆動周波数Fを、第3の対策に対応するための第8の条件の他に、以下の各種条件を充足するように定める。
具体的には、本実施形態では、各媒体モードmにおいて、画質優先モードの場合の駆動周波数Fが、速度優先モードの場合の駆動周波数F以下の駆動周波数となるように、駆動周波数Fを定める(以下、当該設定条件を、「第9の条件」と称する)。印刷速度よりも画質を優先する画質優先モードの場合に、速度優先モードの場合と比較して、駆動周波数Fを低くすることで、印刷速度を遅くし、これにより、滲みや凝縮等の発生の可能性を低減させ、高品位な画像の印刷が可能となる。
また、本実施形態では、媒体モードm及び画質モードgが同一である場合において、2ビットモードの場合の駆動周波数Fが、4ビットモードの場合の駆動周波数F以上の駆動周波数となるように、駆動周波数Fを定める(以下、当該設定条件を、「第10の条件」と称する)。
詳細は後述するが、2ビットモードの場合の駆動波形信号Comの波形の形状は、4ビットモードの場合の駆動波形信号Comの波形の形状よりも単純な波形である。そのため、2ビットモードの場合の駆動周波数Fを、4ビットモードの場合の駆動周波数Fよりも高くすることができ、これにより、2ビットモードの場合の印刷速度をより高速化することができる。
<5.4.オーバーラップ数Sについて>
次に、動作規定情報のうち、オーバーラップ数Sについて説明する。
オーバーラップ数Sとは、記録媒体P上の主走査方向に延在する1行の画素列上(1本のラスタライン上)に形成すべき全てのドットを形成するために、実行される主走査(パス)の回数である。
ここで、主走査(パス)とは、キャリッジ32が主走査方向に移動する場合において、当該移動の往路で吐出部Dからインクを吐出する場合における、当該往路に相当する1回の主走査、及び、当該移動の復路で吐出部Dからインクを吐出する場合における、当該復路に相当する1回の主走査、の総称である。
例えば、オーバーラップ数Sが「2」である場合、1行の画素列(ラスタライン)上において2回の主走査(パス)が実行されることで、当該1行の画素列上の全ての画素に対応するドットが形成される。
より詳細には、オーバーラップ数Sが「2」である場合、印刷モードが往路のみでインクを吐出する単方向モードであれば、キャリッジ32が主走査方向に2往復して2回の主走査を実行することで1行の画素列上のドットを全て形成し、印刷モードが往路及び復路の双方でインクを吐出する双方向モードであれば、キャリッジ32が主走査方向に1往復して2回の主走査を実行することで1行の画素列上のドットを全て形成する。これらの場合、通常は、1回の主走査においては、1画素おきに間欠的にドットが形成される。
このため、オーバーラップ数Sが大きくなるに従って、1行の画素列上の全ドットを形成するために必要な主走査の回数が増加し、その結果、印刷速度が低下する。
以下、図24に示す12個のモード番号(11h1c、11h2c、…、32h2c)に対応するオーバーラップ数Sを、「S1」〜「S12」で表す。
オーバーラップ数Sは、上述した第3の対策を考慮して定められる。
上述のとおり、第3の対策を施す必要性は、布地への印刷の場合が最も高く、写真用紙への印刷の場合が最も低い。そこで、本実施形態では、布地モードにおけるオーバーラップ数Sが、写真用紙モードや普通用紙モードにおけるオーバーラップ数Sよりも大きくなるように、オーバーラップ数Sを定める(以下、当該設定条件を、「第11の条件」と称する)。
具体的には、図24に示すように、布地モードにおけるオーバーラップ数S(S9〜S12)を、写真用紙モードにおけるオーバーラップ数S(S1〜S4)よりも大きくし、且つ、普通用紙モードにおけるオーバーラップ数S(S5〜S8)よりも大きくする。より具体的には、布地モードにおけるオーバーラップ数Sの最小値を、写真用紙モードにおけるオーバーラップ数Sの最大値よりも大きくし、且つ、普通用紙モードにおけるオーバーラップ数Sの最大値よりも大きくする。この図の例では、布地モードの場合のオーバーラップ数Sの最小値はS11(28回)等であり、写真用紙モードの場合のオーバーラップ数Sの最大値はS1(4回)等であり、普通用紙モードの場合のオーバーラップ数Sの最大値はS5(6回)等である。
但し、「第11の条件」に係るオーバーラップ数Sの定め方は、上記に限定されるものではなく、例えば、布地モードにおけるオーバーラップ数Sの最小値が、写真用紙モードにおけるオーバーラップ数Sの最大値以上となり、且つ、普通用紙モードにおけるオーバーラップ数Sの最大値以上となるように定めてもよい。
また、オーバーラップ数Sは、例えば、写真用紙モードと普通用紙モードとの関係も考慮し、布地モードにおけるオーバーラップ数Sの最小値が、普通用紙モードにおけるオーバーラップ数Sの最大値以上となり、且つ、普通用紙モードにおけるオーバーラップ数Sの最小値が、写真用紙モードにおけるオーバーラップ数Sの最大値以上となるよう定めてもよい。
また、オーバーラップ数Sは、例えば、媒体モードm以外の設定モードが同一である場合に、布地モードにおけるオーバーラップ数Sが、写真用紙モードにおけるオーバーラップ数S以上となり、且つ、普通用紙モードにおけるオーバーラップ数S以上となるように定めてもよい。例えば、モード番号「11h1c」、「21h1c」、「31h1c」に対応する、オーバーラップ数S(S1、S5、S9)が、「S9≧S1」及び「S9≧S5」を充足するように、オーバーラップ数Sを定めてもよい。
また、本実施形態では、オーバーラップ数Sを、第3の対策に対応するための第11の条件の他に、以下の条件を充足するように定める。
具体的には、本実施形態では、各媒体モードmにおいて、画質優先モードの場合のオーバーラップ数Sが、速度優先モードの場合のオーバーラップ数S以上となるように、オーバーラップ数Sを定める(以下、当該設定条件を、「第12の条件」と称する)。
印刷速度よりも画質を優先する画質優先モードの場合に、速度優先モードの場合と比較して、オーバーラップ数Sを大きくすることで、印刷速度を遅くし、これにより、滲みや凝縮等の発生の可能性を低減させ、高品位な画像の印刷が可能となる。
なお、本実施形態では、媒体モードm及び画質モードgが同一である場合において、オーバーラップ数Sを同一の値としている。
<5.5.メニスカス位置について>
次に、動作規定情報のうち、メニスカス位置dZについて説明する。
メニスカス位置dZとは、上述のとおり、メニスカスMsのZ軸方向の位置であり、本実施形態に係る動作規定情報においては、ハイポジションdZ-HまたはローポジションdZ-Lの2値のいずれかに設定される。
以下、図24に示す12個のモード番号(11h1c、11h2c、…、32h2c)に対応するメニスカス位置dZを、「dZ1」〜「dZ12」で表す。
メニスカス位置dZは、上述した第4の対策を考慮して定められる。
上述のとおり、第4の対策は、記録媒体Pの繊維が吐出部D内部のインクに接触することによる記録媒体Pの汚染を防止するために、メニスカス位置dZを引き込むことである。記録媒体Pの繊維が吐出部D内部のインクに接触することによる記録媒体Pの汚染の可能性は、布地への印刷の場合が最も高く、写真用紙への印刷の場合が最も低い。このため、第4の対策を施す必要性は、布地への印刷の場合が最も高く、写真用紙への印刷の場合が最も低い。
そこで、本実施形態では、布地モードにおけるメニスカス位置dZを、写真用紙モードや普通用紙モードにおけるメニスカス位置dZよりも+Z側に引き込まれた位置になるように定める(以下、当該設定条件を、「第13の条件」と称する)。
具体的には、布地モードにおけるメニスカス位置dZ(dZ9〜dZ12)を、写真用紙モードにおけるメニスカス位置dZ(dZ1〜dZ4)よりも+Z側とし、且つ、普通用紙モードにおけるメニスカス位置dZ(dZ5〜dZ8)よりも+Z側とする。より具体的には、図24に示すように、布地モードにおけるメニスカス位置dZをハイポジションdZ-Hとし、写真用紙モードにおけるメニスカス位置dZをローポジションdZ-Lとし、また、普通用紙モードにおけるメニスカス位置dZをローポジションdZ-Lとする。
なお、動作規定情報においてメニスカス位置dZを、ハイポジションdZ-Hに設定した場合、及び、ローポジションdZ-Lに設定した場合のそれぞれについての、吐出部Dからインクを吐出した場合の実際のメニスカス位置dZの変化の態様については、別途説明する。
<6.インクジェットプリンターの印刷速度について>
インクジェットプリンター10の動作の特性としては、動作規定情報により規定される値(最大ドット形成インク量W、解像度R、駆動周波数F、オーバーラップ数S、及び、メニスカス位置dZ)の他に、印刷速度U、主走査印刷速度Uy(「主走査速度」の一例)、及び、副走査印刷速度Ux(「副走査速度」の一例)が存在する。以下では、これら、印刷速度U、主走査印刷速度Uy、及び、副走査印刷速度Uxを、「印刷性能」と総称する。なお、評価情報は、インクジェットプリンター10の動作特性のうち、インクジェットプリンター10の印刷性能についても考慮したうえでその内容が設定される。
以下、インクジェットプリンター10の印刷性能について説明する。
印刷速度Uは、インクジェットプリンター10が単位時間あたりに印刷可能な記録媒体Pの面積である。この印刷速度Uは、動作規定情報のうち解像度R、駆動周波数F、及び、オーバーラップ数Sと、ドット種類モードdの設定内容と、インクジェットプリンター10が備えるノズルNの個数(総ノズル数)と、に基づいて定められる。
主走査印刷速度Uyは、インクジェットプリンター10の1個のノズルが単位時間あたりにドットを形成可能な記録媒体Pの主走査方向の長さである。この主走査印刷速度Uyは、動作規定情報のうち、解像度Ry、駆動周波数F、及び、オーバーラップ数Sと、ドット種類モードdの設定内容と、に基づいて定められる。
副走査印刷速度Uxは、インクジェットプリンター10が単位時間あたりに印刷可能な記録媒体Pの副走査方向の長さである。この副走査印刷速度Uxは、印刷速度Uと、記録媒体Pの主走査方向の長さ(記録媒体Pのサイズ)と、に基づいて定められる。
図25は、インクジェットプリンター10の印刷性能と、印刷モードとを関連付けて記憶する印刷性能テーブルTBL15のデータ構造の一例である。
インクジェットプリンター10の印刷性能は、動作規定情報テーブルTBL14が記憶する動作規定情報や、インクジェットプリンター10が印刷可能な記録媒体Pのサイズ等に基づいて予め計算され、印刷性能テーブルTBL15に記憶されている。
なお、図25では、印刷速度Uとして、1分間(60秒)あたりに印刷可能なA4サイズ(8.27×11.69inch≒96.68inch)の記録媒体Pの枚数を例示している。すなわち、この図に示す例において印刷速度Uは、駆動周波数F、解像度R、及び、オーバーラップ数Sに基づいて、以下の式(1)で与えられる。
印刷速度U
= {「60秒」×F×「総ノズル数」}÷
{(R×S×「キャリッジ移動係数」×「96.68」)} … 式(1)
ここで、キャリッジ移動係数とは、双方向モードにおいて一の画素列の印刷を開始してから次の画素列の印刷を開始するまでに要する時間を「1」とした場合に、単方向モードにおいて一の画素列の印刷を開始してから次の画素列の印刷を開始するまでに要する時間長を表す係数である。この図に示す例では、キャリッジ移動係数を「1.2」と仮定している。また、この図に示す例では、総ノズル数を「1000」と仮定している。
また、この図では、主走査印刷速度Uyとして、インクジェットプリンター10がA4サイズの記録媒体Pに対して印刷処理を実行する場合において、各ノズルNが1分間(60秒)あたりにドットを形成可能な記録媒体Pの行数を例示している。すなわち、この図に示す例において主走査印刷速度Uyは、駆動周波数F、解像度Ry、及び、オーバーラップ数Sに基づいて、以下の式(2)で与えられる。
主走査印刷速度Uy
= {「60秒」×F}÷
{Ry×S×「キャリッジ移動係数」×「8.27」)} … 式(2)
なお、副走査印刷速度Uxは、原則として(すなわち、印刷速度Uを算出する場合と同一サイズの記録媒体Pに対して印刷処理を行うという前提を置くときには)、印刷速度Uに比例する。このため、この図においては、副走査印刷速度Uxの図示を省略している。
印刷速度U、主走査印刷速度Uy、及び、副走査印刷速度Uxを算出するための情報、すなわち、解像度R、駆動周波数F、オーバーラップ数S、及び、ドット種類モードdの設定内容(以下、これらを「印刷速度規定情報」と総称する)は、上述した第3の対策を考慮して定められる。
上述のとおり、第3の対策を施す必要性は、布地への印刷の場合が最も高く、写真用紙への印刷の場合が最も低い。そこで、本実施形態では、布地モードにおける印刷速度U(「第1印刷速度」の一例)が、写真用紙モードや普通用紙モードにおける印刷速度U(「第2印刷速度」の一例)よりも、遅くなるように、印刷速度規定情報を定める(以下、当該設定条件を、「第14の条件」と称する)。
同様に、本実施形態では、布地モードにおける主走査印刷速度Uyが、写真用紙モードや普通用紙モードにおける主走査印刷速度Uyよりも遅くなるように、印刷速度規定情報を定める(以下、当該設定条件を、「第15の条件」と称する)。
同様に、本実施形態では、布地モードにおける副走査印刷速度Uxが、写真用紙モードや普通用紙モードにおける副走査印刷速度Uxよりも遅くなるように、印刷速度規定情報を定める(以下、当該設定条件を、「第16の条件」と称する)。
以下において、上述した第14の条件の詳細を説明する。なお、以下の説明は、第14の条件についての説明であるが、当該説明は、第15の条件、及び、第16の条件についても同様に該当する。
第14の条件は、図25に示すように、布地モードにおける印刷速度Uを、写真用紙モードにおける印刷速度Uよりも遅くし、且つ、普通用紙モードにおける印刷速度Uよりも遅くするように、印刷速度規定情報を定めるものである。より具体的には、布地モードにおける印刷速度Uの最大値を、写真用紙モードにおける印刷速度Uの最小値よりも遅くし、且つ、普通用紙モードにおける印刷速度Uの最大値よりも遅くするように印刷速度規定情報を定める。
但し、「第14の条件」に係る印刷速度規定情報の定め方は、上記に限定されるものではなく、例えば、布地モードにおける印刷速度Uの最大値が、写真用紙モードにおける印刷速度Uの最小値以下となり、且つ、普通用紙モードにおける印刷速度Uの最小値以下となるように定めてもよい。
また、印刷速度規定情報は、例えば、写真用紙モードと普通用紙モードとの関係も考慮し、布地モードにおける印刷速度Uの最大値が、普通用紙モードにおける印刷速度Uの最小値以下となり、且つ、普通用紙モードにおける印刷速度Uの最大値が、写真用紙モードにおける印刷速度Uの最小値以下となるよう定めてもよい。
また、印刷速度規定情報は、例えば、媒体モードm以外の設定モードが同一である場合に、布地モードにおける印刷速度Uが、写真用紙モードにおける印刷速度U以下となり、且つ、普通用紙モードにおける印刷速度U以下となるように定めてもよい。例えば、モード番号「11111」、「21111」、「31111」に対応する印刷速度Uが、「(モード番号31111の速度)≦(モード番号11111の速度)」、及び、「(モード番号31111の速度)≦(モード番号21111の速度)」を充足するように、印刷速度規定情報を定めてもよい。
また、印刷速度規定情報は、例えば、布地モードにおける印刷速度Uが所定の速度以下となるように定めてもよい。
<7.評価情報について>
次に、評価情報について説明する。
評価情報は、上述した、第1の対策〜第8の対策と、これらの対策に対応するための第1の条件〜第16の条件とを考慮して、その内容(値)が決定される。
より具体的には、本実施形態では、第1の対策〜第8の対策の全ての対策を適切に講じており、且つ、動作規定情報が第1の条件〜第16の条件の全ての条件を充足している印刷モードを、「最適印刷モード」、「適切印刷モード」、または、「限定的適切印刷モード」とし、これら以外の印刷モードを「不適切印刷モード」とする。
なお、動作規定情報が第1の条件〜第16の条件の全てを充足するように定められている場合には、第1の対策〜第4の対策の全てが適切に講じられていると看做すことができる。よって、本実施形態のように、動作規定情報が第1の条件〜第16の条件の全てを充足するように定められている場合には、第5の対策〜第8の対策が適切に施されているか否かにより、評価情報の内容を決定する。
以下、第5の対策〜第8の対策に言及しつつ、評価情報の具体的な内容について説明する。
上述のとおり、第5の対策は、「布地に対する印刷処理において双方向モードの採用を禁止すること」である。そこで本実施形態では、図14に示すように、第5の対策に対応するために、複数の印刷モードのうち、媒体モードmが「布地モード」であって、印刷方向モードhが「双方向モード」に該当する印刷モードを、不適切印刷モードとする。
また、上述のとおり、第6の対策は、「布地に対する印刷処理においては、濃淡カラーモード及び全色カラーモードの採用を禁止すること」であり、また、第7の対策は、「布地に対する印刷処理においては、特色カラーモードを採用すること」である。そこで本実施形態では、図14に示すように、第6の対策及び第7の対策に対応するために、複数の印刷モードのうち、媒体モードmが「布地モード」であって、カラーモードcが「特色カラーモード」以外のカラーモードcに該当する印刷モードを、不適切印刷モードとする。
また、上述のとおり、第8の対策は、「普通用紙に対する印刷処理においては、全色カラーモードの採用を禁止すること」である。そこで本実施形態では、図14に示すように、第8の対策に対応するために、複数の印刷モードのうち、媒体モードmが「普通用紙モード」であって、カラーモードcが「全色カラーモード」に該当する印刷モードを、不適切印刷モードとする。
なお、本実施形態では、図14に示すように、複数の印刷モードのうち、媒体モードmが「写真用紙モード」または「普通用紙モード」であり、画質モードgが「画質優先モード」であり、且つ、カラーモードcが「ピュアブラックモード」に該当する印刷モードを、不適切印刷モードとする。これにより、モノクロ印刷を行う場合においても、ブラックのインクに加えて、他の色のインクも併用することになるため、ブラックのインクのみを用いるピュアブラックモードにより印刷を実行する場合と比べて、深みのある黒を再現することができる。
本実施形態では、各媒体モードmに属する40パターンの印刷モードのうち、1つの印刷モードのみが、最適印刷モード「図において◎」に分類される。
より具体的には、図14に示すように、写真用紙モードにおいては、モード番号「11225」の印刷モードが最適印刷モードとして分類される。
写真用紙は通常、高品位な印刷を行う目的で用いられる記録媒体Pである。このため、写真用紙に対する印刷において、最も画質を高めることができる印刷モードである、「画質優先モード」、「単方向モード」、「4ビットモード」、及び、「全色カラーモード」の組み合わせを「最適印刷モード」とすることで、高品位な印刷という印刷装置1の利用者のニーズに対応した印刷処理を実行することができる。
また、普通用紙モードにおいては、モード番号「22112」の印刷モードが最適印刷モードとして分類される。
普通用紙は日常的に使用される記録媒体Pであり、印刷処理においては、画質よりも印刷速度が重視され、且つ、印刷に係るコストを低減することも求められることが多い。このため、普通用紙に対する印刷において、最も印刷速度を速くすることができる「速度優先モード」、「双方向モード」、及び、「2ビットモード」に該当する印刷モードであって、特色インクや淡色インク等を用いずにインクに係るコストを低減可能な「基本カラーモード」に該当する印刷モードを、「最適印刷モード」とすることで、印刷装置1の利用者のニーズに対応した印刷処理を実行することができる。
また、布地モードにおいては、印刷モード「31224」の印刷モードが最適印刷モードとして分類される。
布地は衣服等として使用される記録媒体Pであり、衣服等のデザイン性の向上を目的として印刷処理が実行されることが多い。すなわち、布地に対する印刷においては、画質が優先されることが多い。このため、布地に対する印刷において、最も画質を高めることができる「画質優先モード」、「単方向モード」、「4ビットモード」、及び、「特色カラーモード」の組み合わせを採用した印刷モードを「最適印刷モード」とすることで、印刷装置1の利用者のニーズに対応した印刷処理を実行することができる。
以上のように、複数の印刷モードのうち一部の印刷モードを、「最適印刷モード」及び「不適切印刷モード」とする。そして、複数の印刷モードのうち、「最適印刷モード」または「不適切印刷モード」である印刷モード以外の印刷モードを、「適切印刷モード」または「限定的適切印刷モード」とする。
具体的には、「最適印刷モード」または「不適切印刷モード」である印刷モード以外の印刷モードのうち、カラーモードcが「ピュアブラックモード」であり、且つ、媒体モードmが「写真用紙モード」または「普通用紙モード」である印刷モードを、「限定的適切印刷モード」とする。
そして、「最適印刷モード」、「不適切印刷モード」、または、「限定的適切印刷モード」である印刷モード以外の印刷モードを、「適切印刷モード」とする。
以上のようにして、図14に示すモード評価テーブルTBL13に記憶される評価情報が定められる。
印刷データ生成部90の印刷モード設定部91は、印刷条件指定画面において指定された設定モードと、モード評価テーブルTBL13が記憶する評価情報とに基づいて、印刷モードを設定する。また、印刷モード設定部91は、動作規定情報テーブルTBL14から、印刷モード設定部91が設定した印刷モードに対応する動作規定情報を取得する。
解像度変換部92は、画像データImgの示す画像の解像度を、印刷モード設定部91が取得した動作規定情報に含まれる解像度Rに変換する。
色変換部93は、印刷モード設定部91が設定した印刷モードのカラーモードcに対応する色変換テーブルLUTを参照することで、画像データImgの示す画像の色のデータを、印刷モード設定部91が指定した印刷モードのカラーモードcにおいてインクジェットプリンター10が使用するインク色で規定される色空間で表現した色のデータに変換する。また、色変換部93は、カラーモードテーブルTBL12を参照することで、印刷処理においてインクジェットプリンター10が使用するインクの種類を決定する。
ハーフトーン処理部94は、印刷モード設定部91が設定した印刷モードのうち、印刷方向モードhの設定内容、及び、ドット種類モードdの設定内容と、印刷モード設定部91が取得した動作規定情報のうち、最大ドット形成インク量W、解像度R、駆動周波数F、オーバーラップ数S等に基づいて、記録媒体Pに形成すべきドット配置やドットサイズ等を決定するハーフトーン処理を行う。
ラスタライズ部95は、ハーフトーン処理された画像データをインクジェットプリンター10に転送すべきデータ順に並べるラスタライズ処理を行い、ラスタライズされた画像データに基づいて印刷データPDを生成する。本実施形態において、印刷データPDは、ラスタライズされた画像データの他に、例えば、印刷モード設定部91が設定した印刷モードの各種設定モードの内容と、印刷モード設定部91が取得した動作規定情報とを含む。
<8.駆動信号生成部の構成及び動作>
次に、図26乃至図31を参照しつつ、駆動信号生成部50の構成及び動作について説明する。
図26は、駆動信号生成部50の構成を示すブロック図である。図26に示すように、駆動信号生成部50は、シフトレジスタSR、ラッチ回路LT、デコーダーDC、並びに、トランスミッションゲートTGa及びTGbからなる組を、9M個の吐出部Dに1対1に対応するように9M個有する。以下では、これら9M個の組を構成する各要素を、図において上から順番に、1段、2段、…、9M段と称することがある。
駆動信号生成部50には、制御部60から、クロック信号CL、印刷信号SI、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、及び、駆動波形信号Com(Com-A、Com-B)が供給される。
ここで、印刷信号SIとは、1つの画像に対応するドットを形成するにあたって、各吐出部D(各ノズルN)から吐出されるインクにより形成されるドットサイズの種類を規定するデジタルの信号であり、制御部60からクロック信号CLに同期して駆動信号生成部50に対して例えばシリアルで供給される。
より詳細には、本実施形態に係る印刷信号SIは、ドット種類モードdが4ビットモードである場合には、各吐出部Dから吐出されるインクにより形成されるドットサイズの種類を、第1ビットb1及び第2ビットb2の2ビットで規定し、ドット種類モードdが2ビットモードである場合には、各吐出部Dから吐出されるインクにより形成されるドットサイズの種類を、第1ビットb1の1ビットで規定する。ここで、各吐出部Dから吐出されるインクにより形成されるドットサイズの種類は、ドット種類モードdが4ビットモードである場合には、非記録、小ドット、中ドット、及び、大ドットの4種類のサイズとなり、記録媒体Pの各画素において4階調を表現することができ、ドット種類モードdが2ビットモードである場合には、非記録、記録の2種類のサイズとなり、記録媒体Pの各画素において、2階調を表現することができる。
シフトレジスタSRのそれぞれは、印刷信号SIを、各吐出部Dに対応するビット毎に、一旦保持する。詳細には、9M個の吐出部Dに1対1に対応する、1段、2段、…、M段の9M個のシフトレジスタSRが互いに縦続接続されるとともに、シリアルで供給された印刷信号SIが、クロック信号CLにしたがって順次後段に転送される。そして、9M個のシフトレジスタSRの全てに印刷信号SIが転送された時点で、クロック信号CLの供給が停止し、9M個のシフトレジスタSRのそれぞれが印刷信号SIのうち自身に対応する2ビット分(4ビットモードの場合)または1ビット分(2ビットモードの場合)のデータを保持した状態を維持する。
9M個のラッチ回路LTのそれぞれは、ラッチ信号LATが立ち上がるタイミングで、9M個のシフトレジスタSRのそれぞれに保持された各段に対応する3ビット分の印刷信号SIを一斉にラッチする。図26において、SI[1]、SI[2]、…、SI[9M]のそれぞれは、1段、2段、…、9M段のシフトレジスタSRに対応するラッチ回路LTによってそれぞれラッチされた、2ビット分(4ビットモードの場合)または1ビット分(2ビットモードの場合)の印刷信号SIを示している。
ところで、インクジェットプリンター10が印刷処理を実行する期間である動作期間は、複数の単位期間Tuからなる。単位期間Tuの時間長は、印刷データ生成部90において決定される駆動周波数Fに基づいて定められる。より具体的には、単位期間Tuは、「1/F」である。
なお、ドット種類モードdが4ビットモードである場合、各単位期間Tuは、制御期間Ts1とこれに後続する制御期間Ts2とに区分される。ここで、制御期間Ts1及びTs2は、互いに等しい時間長を有するものであってもよい。
制御部60は、駆動信号生成部50に対して単位期間Tu毎に印刷信号SIを供給するとともに、ラッチ回路LTが単位期間Tu毎に印刷信号SI[1]、SI[2]、…、SI[9M]をラッチするように駆動信号生成部50を制御する。すなわち、制御部60は、9M個の吐出部Dに対して単位期間Tu毎に駆動信号Vinが供給されるように、駆動信号生成部50を制御する。
デコーダーDCは、ラッチ回路LTによってラッチされた2ビット分(4ビットモードの場合)または1ビット分(2ビットモードの場合)の印刷信号SIをデコードし、選択信号Sa及びSbを出力する。
図27は、ドット種類モードdが4ビットモードである場合に、デコーダーDCが行うデコードの内容を示す説明図である。図27に示すように、m段(mは、1≦m≦9Mを満たす自然数)に対応する印刷信号SI[m]の示す内容が、例えば(b1、b2)=(1、0)である場合、m段のデコーダーDCは、制御期間Ts1において、選択信号SaをハイレベルHに設定するとともに選択信号SbをローレベルLに設定し、制御期間Ts2において、選択信号SbをハイレベルHに設定するとともに選択信号SaをローレベルLに設定する。
図28は、ドット種類モードdが2ビットモードである場合に、デコーダーDCが行うデコードの内容を示す説明図である。図28に示すように、印刷信号SI[m]の示す内容が、例えばb1=(1)である場合、m段のデコーダーDCは、単位期間Tuにおいて、選択信号SaをハイレベルHに設定するとともに選択信号SbをローレベルLに設定する。
説明を図26に戻す。図26に示すように、駆動信号生成部50は、トランスミッションゲートTGa及びTGbの組を9M個備える。これら、9M個のトランスミッションゲートTGa及びTGbの組は、9M個の吐出部Dに1対1に対応するように設けられる。
トランスミッションゲートTGaは、選択信号SaがHレベルのときにオンし、Lレベルのときにオフする。トランスミッションゲートTGbは、選択信号SbがHレベルのときにオンし、Lレベルのときにオフする。
トランスミッションゲートTGaの一端には駆動波形信号Com-Aが供給され、トランスミッションゲートTGbの一端には駆動波形信号Com-Bが供給される。また、トランスミッションゲートTGa及びTGbの他端は、吐出部Dへの出力端OTNに共通接続されている。
図27及び図28からも明らかなように、m段においてトランスミッションゲートTGa及びTGbの双方が同時にオンすることは無い。このため、トランスミッションゲートTGa及びTGbの一方がオンする場合、駆動波形信号Com-A及びCom-Bのいずれか一方が選択され、選択された駆動波形信号Comが駆動信号Vin[m]としてm段の吐出部Dの圧電素子200に供給される。
図29は、ドット種類モードdが4ビットモードである場合において、各単位期間Tuにおける駆動信号生成部50の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図29に示すように、単位期間Tuは、制御部60が出力するラッチ信号LATにより規定される期間である。また、単位期間Tuに含まれる制御期間Ts1及びTs2は、制御部60が出力するラッチ信号LAT及びチェンジ信号CHにより規定される期間である。
制御部60は、単位期間Tu毎に、駆動信号生成部50に対して印刷信号SIを供給する。また、9M個のラッチ回路LTは、ラッチ信号LATの立ち上がりのタイミング、すなわち、単位期間Tuが開始されるタイミングにおいて、印刷信号SI[1]、SI[2]、…、SI[9M]を出力する。また、m段のデコーダーDCは、ラッチ信号LATによりラッチされた2ビット分の印刷信号SI[m]を図27に示すテーブルの内容に基づいてデコードし、制御期間Ts1及びTs2のそれぞれにおいて選択信号Sa及びSbを出力する。
このため、駆動信号生成部50は、制御期間Ts1及びTs2のそれぞれにおいて駆動波形信号Com-AまたはCom-Bの一方を選択し、選択した駆動波形信号Com-AまたはCom-Bを駆動信号Vin[m]としてm段の吐出部Dに対して供給する。
図29(A)は、4ビットモードにおいて、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lに設定された場合における、駆動波形信号Comの波形を表す。
また、図29(B)は、4ビットモードにおいて、メニスカス位置dZがハイポジションdZ-Hに設定された場合における、駆動波形信号Comの波形を表す。
図29(A)に示すように、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lに設定された場合に、各単位期間Tuにおいて制御部60から供給される駆動波形信号Com-Aは、制御期間Ts1に設けられた単位波形PA1と、制御期間Ts2に設けられた単位波形PA2と、を含む波形を有する。
これら単位波形PA1及びPA2は、印刷データ生成部90が設定した印刷モードに対応する最大ドット形成インク量Wに応じて定められる。より具体的には、単位波形PA1及びPA2は、単位波形PA1を有する駆動信号Vinにより吐出部Dが駆動された場合に吐出部Dから吐出されるインク量と、単位波形PA2を有する駆動信号Vinにより吐出部Dが駆動された場合に吐出部Dから吐出されるインク量との合計値が、最大ドット形成インク量Wとなるように定められている。
また、単位波形PA1及びPA2は、単位波形PA1に基づいて吐出部Dから吐出されるインク量が、単位波形PA2に基づいて吐出部Dから吐出されるインク量よりも多くなるように定められる。より具体的には、本実施形態において、単位波形PA1及びPA2は、単位波形PA1の最高電位と最低電位との電位差dV1が、単位波形PA2の最高電位と最低電位との電位差dV2よりも大きくなるように定められている。
なお、単位波形PA1及びPA2は、単位波形PA1及びPA2の開始及び終了のタイミングにおける電位が、いずれも基準電位Vcとなるような波形に定められている。
また、図29(A)に示すように、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lに設定された場合に、各単位期間Tuにおいて制御部60から供給される駆動波形信号Com-Bは、制御期間Ts1に設けられた単位波形PB1と、制御期間Ts2に設けられた単位波形PB2と、を含む波形を有する。
これら単位波形PB1及びPB2は、例えば吐出部Dに微振動を与えるための波形であり、吐出部Dが単位波形PB1またはPB2により駆動された場合に、当該吐出部Dからインクが吐出されないような波形に定められている。
なお、単位波形PB1及びPB2は、単位波形PB1及びPB2の開始及び終了のタイミングにおける電位が、いずれも基準電位Vcとなるように定められている。
単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容が(b1、b2)=(1、1)である場合、m段の吐出部Dは、当該単位期間Tuにおいて単位波形PA1に基づく中程度の量のインクと、単位波形PA2に基づく小程度の量のインクとを吐出する。そして、これら2度にわたり吐出されたインクが記録媒体P上で合体するため、記録媒体P上には最大ドット形成インク量Wに相当するインク量の大ドットが形成される。
単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容が(b1、b2)=(1、0)である場合、m段の吐出部Dは、当該単位期間Tuにおいて単位波形PA1に基づく中程度の量のインクを吐出し、記録媒体P上には中ドットが形成される。
単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容が(b1、b2)=(0、1)である場合、m段の吐出部Dは、当該単位期間Tuにおいて単位波形PA2に基づく小程度の量のインクを吐出し、記録媒体P上には小ドットが形成される。
単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容が(b1、b2)=(0、0)である場合、m段の吐出部Dからはインクが吐出されず、記録媒体P上にはドットが形成されない(非記録となる)。
図29(B)に示すように、メニスカス位置dZがハイポジションdZ-Hに設定された場合に、各単位期間Tuにおいて制御部60から供給される駆動波形信号Com-Aは、制御期間Ts1に設けられた単位波形PA1hと、制御期間Ts2に設けられた単位波形PA2hと、を含む波形を有する。
これら単位波形PA1h及びPA2hは、単位波形PA1hに基づいて吐出部Dから吐出されるインク量が、単位波形PA2hに基づいて吐出部Dから吐出されるインク量との合計値が、最大ドット形成インク量Wとなるように定められている。
また、単位波形PA1h及びPA2hは、単位波形PA1hに基づいて吐出部Dから吐出されるインク量が、単位波形PA2hに基づいて吐出部Dから吐出されるインク量よりも多くなるよう、例えば、単位波形PA1hの最高電位と最低電位との電位差dV1hが、単位波形PA2hの最高電位と最低電位との電位差dV2hよりも大きくなるように定められている。
なお、単位波形PA1h及びPA2hは、単位波形PA1及びPA2の開始のタイミング及び終了のタイミングにおける電位が、いずれも引込電位Vchとなるような波形に定められている。ここで、引込電位Vchとは、引込電位Vchの駆動信号Vinが吐出部Dに供給されるときのメニスカス位置dZを、基準電位Vcの駆動信号Vinが吐出部Dに供給されるときのメニスカス位置dZよりも、+Z側(吐出部Dのキャビティ245の内部側)に引き込むような電位である。
図29(B)に示すように、メニスカス位置dZがハイポジションdZ-Hに設定された場合に、各単位期間Tuにおいて制御部60から供給される駆動波形信号Com-Bは、制御期間Ts1に設けられた単位波形PB1hと、制御期間Ts2に設けられた単位波形PB2hと、を含む波形を有する。
これら単位波形PB1h及びPB2hは、単位波形PB1及びPB2と同様に、例えば吐出部Dに微振動を与えるための波形であり、吐出部Dが単位波形PB1h及びPB2hにより駆動された場合に、当該吐出部Dからインクが吐出されないような波形に定められている。
なお、単位波形PB1h及びPB2hは、単位波形PB1h及びPB2hの開始のタイミング及び終了のタイミングにおける電位が、いずれも引込電位Vchとなるように定められている。
単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容が(b1、b2)=(1、1)である場合、m段の吐出部Dは、当該単位期間Tuにおいて、単位波形PA1hに基づく中程度の量のインクと、単位波形PA2hに基づく小程度の量のインクとを吐出する。そして、これら2度にわたり吐出されたインクが記録媒体P上で合体するため、記録媒体P上には最大ドット形成インク量Wに相当するインク量の大ドットが形成される。
同様に、単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容が(b1、b2)=(1、0)である場合、m段の吐出部Dは、当該単位期間Tuにおいて単位波形PA1hに基づく中程度の量のインクを吐出し、記録媒体P上には中ドットが形成される。
単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容が(b1、b2)=(0、1)である場合、m段の吐出部Dは、当該単位期間Tuにおいて単位波形PA2hに基づく小程度の量のインクを吐出し、記録媒体P上には小ドットが形成される。
単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容が(b1、b2)=(0、0)である場合、m段の吐出部Dからはインクが吐出されず、記録媒体P上にはドットが形成されない(非記録となる)。
図30は、ドット種類モードdが2ビットモードである場合において、各単位期間Tuにおける駆動信号生成部50の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図30に示すように、2ビットモードにおいては、制御部60からチェンジ信号CHが供給されず、単位期間Tuが制御期間Ts1及びTs2に区分されない点において、4ビットモードと相違する。m段のデコーダーDCは、ラッチ信号LATによりラッチされた1ビット分の印刷信号SI[m]を図28に示すテーブルの内容に基づいてデコードし、単位期間Tu毎に選択信号SaまたはSbを出力する。すなわち、駆動信号生成部50は、各単位期間Tuにおいて駆動波形信号Com-AまたはCom-Bの一方を選択し、選択した駆動波形信号Com-AまたはCom-Bを駆動信号Vin[m]としてm段の吐出部Dに対して供給する。
図30(A)は、2ビットモードにおいて、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lに設定された場合における、駆動波形信号Comの波形を表す。
また、図30(B)は、2ビットモードにおいて、メニスカス位置dZがハイポジションdZ-Hに設定された場合における、駆動波形信号Comの波形を表す。
図30(A)に示すように、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lに設定された場合に、駆動波形信号Com-Aの波形は単位波形PA3となる。単位波形PA3は、印刷データ生成部90が設定した印刷モードに対応する最大ドット形成インク量Wに応じて定められ、単位波形PA3を有する駆動信号Vinにより吐出部Dが駆動された場合に吐出部Dから吐出されるインク量が、最大ドット形成インク量Wとなるように定められている。なお、単位波形PA3は、最高電位と最低電位との電位差がdV3であり、単位波形PA3の開始及び終了のタイミングにおける電位が基準電位Vcである。
また、図30(A)に示すように、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lに設定された場合に、駆動波形信号Com-Bの波形は単位波形PB3となる。単位波形PB3は、単位波形PB1等と同様に、吐出部Dが単位波形PB3により駆動された場合に、当該吐出部Dからインクが吐出されないような波形である。なお、単位波形PB3は、単位波形PB3の開始及び終了のタイミングにおける電位が基準電位Vcである。
単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容がb1=「1」である場合、m段の吐出部Dは、当該単位期間Tuにおいて単位波形PA3に基づいてインクを吐出し、記録媒体P上にはドットが形成される。また、単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容がb1=「0」である場合、m段の吐出部Dからはインクが吐出されず、記録媒体P上にはドットが形成されない(非記録となる)。
図30(B)に示すように、メニスカス位置dZがハイポジションdZ-Hに設定された場合に、駆動波形信号Com-Aの波形は単位波形PA3hとなる。単位波形PA3hは、単位波形PA3hを有する駆動信号Vinにより吐出部Dが駆動された場合に吐出部Dから吐出されるインク量が、最大ドット形成インク量Wとなるように定められている。なお、単位波形PA3hは、最高電位と最低電位との電位差がdV3hであり、単位波形PA3の開始及び終了のタイミングにおける電位が引込電位Vchである。
また、図30(B)に示すように、メニスカス位置dZがハイポジションdZ-Hに設定された場合に、駆動波形信号Com-Bの波形は単位波形PB3hとなる。単位波形PB3hは、単位波形PB1等と同様に、吐出部Dが単位波形PB3hにより駆動された場合に、当該吐出部Dからインクが吐出されないような波形である。なお、単位波形PB3hは、単位波形PB3hの開始及び終了のタイミングにおける電位が引込電位Vchである。
単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容がb1=(1)である場合、m段の吐出部Dは、当該単位期間Tuにおいて単位波形PA3hに基づいてインクを吐出し、記録媒体P上にはドットが形成される。また、単位期間Tuにおいて供給される印刷信号SI[m]の内容が(b1)=(0)である場合、m段の吐出部Dからはインクが吐出されず、記録媒体P上にはドットが形成されない(非記録となる)。
図31は、各単位期間Tuにおけるメニスカス位置dZの変動を示す説明図である。なお、この図においては、簡単のため、各単位期間Tuが制御期間Ts1及びTs2に区分されない2ビットモードの場合を例示している。
上述のとおり、各単位期間Tuにおいて、吐出部Dは駆動信号Vinにより駆動されるため、各単位期間Tuにおいてメニスカス位置dZも変動する。そのため、本実施形態では、このようにメニスカス位置dZが変動する場合には、単位期間Tuにおけるメニスカス位置dZを、単位期間Tuにおけるメニスカス位置の平均値で表す。但し、メニスカス位置dZが変動する場合には、単位期間Tuにおけるメニスカス位置dZを、単位期間Tuの任意のタイミング(例えば、2ビットモードの場合には、単位期間Tuが開始されるタイミングや、4ビットモードの場合には、制御期間Ts1や制御期間Ts2が開始されるタイミング等)におけるメニスカス位置としてもよい。
図31(A)に示すように、印刷データ生成部90においてメニスカス位置dZがローポジションdZ-Lに設定された場合には、制御部60は、吐出部Dがインクを吐出する場合(A1)、及び、吐出しない場合(A2)の双方において、単位期間Tuにおけるメニスカス位置dZ(例えば、単位期間Tuにおけるメニスカス位置dZの平均値、または、単位期間Tuが開始されるタイミングにおけるメニスカス位置dZ)が、ローポジションdZ-Lとなるような波形の駆動波形信号Comを生成する。
同様に、図31(B)に示すように、印刷データ生成部90においてメニスカス位置dZがハイポジションdZ-Hに設定された場合には、制御部60は、吐出部Dがインクを吐出する場合(B1)、及び、吐出しない場合(B2)の双方において、単位期間Tuにおけるメニスカス位置dZが、ハイポジションdZ-Hとなるような波形の駆動波形信号Comを生成する。
<9.ドット記録方式について>
次に、本実施形態に係るドット記録方式について説明する。ここで、ドット記録方式とは、インクジェットプリンター10が印刷処理を実行する場合に、各ノズル列に属する各吐出部D(各ノズルN)がインクを吐出する画素位置とパスとの関係を規定する方式である。なお、以下では、まず、一般的に用いられるドット記録方式であるインターレース記録方式について説明する。
インターレース記録方式とは、ノズルピッチkが2以上であるときに採用される記録方式を言う。ノズルピッチkが2以上である場合、1回の主走査(パス)では、X軸方向に隣り合うノズルの間に記録できないラスタラインが残る。そこで、インターレース記録方式では、当該1回の主走査で記録できないラスタライン上の画素を、他の主走査時に記録する。
図32は、通常のインターレース記録方式の基本的条件を示すための説明図である。図32(A)は、4個のノズルNを用いた場合の副走査送りの一例を示しており、図32(B)はそのドット記録方式のパラメータを示している。
図32(A)において、数字を含む実線の丸は、各パスにおける4個のノズルNの副走査方向の位置を示している。上述のとおり、「パス」とは1回分の主走査を意味している。丸の中の数字0〜3は、ノズルNの番号(ノズル番号)を意味している。4個のノズルNの位置は、1回の主走査が終了する度に副走査方向に送られる。厳密には、副走査方向の送りは、給紙モーター71(図2及び図3参照)によって記録媒体Pを搬送することによって実現される。よって、4個のノズルNの位置の副走査方向の送りとは、記録媒体Pに対して副走査方向に相対的に移動させるという意味である。
図32(A)の左端に示すように、この例では副走査送り量Lは4ドットの一定値である。従って、副走査送りが行われる度に、4個のノズルNの位置が4ドットずつ副走査方向にずれてゆく。各ノズルは、1回の主走査中にそれぞれのラスタライン上のすべてのドット位置(「画素位置」とも呼ぶ)を記録対象としている。なお、上述のとおり、各ラスタライン(「主走査ライン」とも呼ぶ)上で行われる主走査の延べ回数を、「オーバーラップ数(S)」と呼ぶ。
図32(A)の右端には、各ラスタライン上のドットを記録するノズルNの番号が示されている。なお、ノズルNの副走査方向位置を示す丸印から右方向(主走査方向)に伸びる破線で描かれたラスタラインでは、その上下のラスタラインの少なくとも一方が記録できないので、実際にはドットの記録が禁止される。一方、主走査方向に伸びる実線で描かれたラスタラインは、その前後のラスタラインがともにドットで記録され得る範囲である。このように実際に記録を行える範囲を、以下では有効記録範囲(または「有効印刷範囲」、「印刷実行領域」、「記録実行領域」)と呼ぶ。
図32(B)には、このドット記録方式に関する種々のパラメータが示されている。ドット記録方式のパラメータには、ノズルピッチk[ドット]と、使用ノズル個数Nuse[個]と、オーバーラップ数Sと、実効ノズル個数Neff[個]と、副走査送り量L[ドット]とが含まれている。
図32の例では、ノズルピッチkは3ドットである。使用ノズル個数Nuseは4個である。なお、使用ノズル個数Nuseは、実装されている複数個のノズルNの中で実際に使用されるノズルNの個数である。この例では、オーバーラップ数Sは「1」である。実効ノズル個数Neffは、使用ノズル個数Nuseをオーバーラップ数Sで割った値である。この実効ノズル個数Neffは、一回の主走査でドット記録が完了するラスタラインの正味の本数を示しているものと考えることができる。
図32(B)のテーブルには、各パスにおける副走査送り量Lと、その累計値Lsumと、ノズルのオフセットNoffとが示されている。
ここで、オフセットNoffとは、最初のパス1におけるノズルNの周期的な位置(図32では4ドットおきの位置)をオフセットが0である基準位置と仮定した時に、その後の各パスにおけるノズルNの位置が基準位置から副走査方向に何ドット離れているかを示す値である。たとえば、図9(A)に示すように、パス1の後には、ノズルNの位置は副走査送り量L(4ドット)だけ副走査方向に移動する。一方、ノズルピッチkは3ドットである。従って、パス2におけるノズルNのオフセットNoffは「1」である(図32(A)参照)。同様に、パス3におけるノズルNの位置は、初期位置からLsum=8ドット移動しており、そのオフセットNoffは「2」である。パス4におけるノズルNの位置は、初期位置からLsum=12ドット移動しており、そのオフセットNoffは「0」である。3回の副走査送り後のパス4ではノズルNのオフセットNoffは「0」に戻るので、3回の副走査を1サイクルとして、このサイクルを繰り返すことによって、有効記録範囲のラスタライン上のすべてのドットを記録することができる。
図32の例からも解るように、ノズルNの位置が初期位置からノズルピッチkの整数倍だけ離れた位置にあるときには、オフセットNoffは「0」である。また、オフセットNoffは、副走査送り量Lの累計値Lsumをノズルピッチkで割った余り「Lsum%k」で与えられる。ここで、「%」は、除算の余りをとることを示す演算子である。なお、ノズルNの初期位置を周期的な位置と考えれば、オフセットNoffは、ノズルNの初期位置からの位相のずれ量を示しているものと考えることもできる。
オーバーラップ数Sが「1」の場合には、有効記録範囲において記録対象となるラスタラインに抜けや重複が無いようにするためには、以下のような条件を満たすことが必要である。
(条件c1) 1サイクルの副走査送り回数は、ノズルピッチkに等しい。
(条件c2) 1サイクル中の各回の副走査送り後のノズルNのオフセットNoffは、「0」〜「k−1」の範囲のそれぞれ異なる値となる。
(条件c3) 副走査の平均送り量「Lsum/k」は、使用ノズル個数Nuseに等しい。換言すれば、1サイクル当たりの副走査送り量Lの累計値Lsumは、使用ノズル個数Nuseとノズルピッチkとを乗算した値「Nuse×k」に等しい。
上記の各条件は、次のように考えることによって理解できる。近隣のノズルNの間には(k−1)本のラスタラインが存在するので、1サイクルでこれら(k−1)本のラスタライン上で記録を行ってノズルの基準位置(オフセットNoffが「0」の位置)に戻るためには、1サイクルの副走査送りの回数はk回となる。1サイクルの副走査送りがk回未満であれば、記録されるラスタラインに抜けが生じ、一方、1サイクルの副走査送りがk回より多ければ、記録されるラスタラインに重複が生じる。従って、上記の条件c1が成立する。
1サイクルの副走査送りがk回のときには、各回の副走査送りの後のオフセットNoffの値が「0」〜「k−1」の範囲の互いに異なる値のときにのみ、記録されるラスタラインに抜けや重複が無くなる。従って、上記条件c2が成立する。
上記条件c1及び条件c2を共に満足すれば、1サイクルの間に、Nuse個の各ノズルがそれぞれk本のラスタラインの記録を行うことになる。従って、1サイクルでは「Nuse×k」本のラスタラインの記録が行われる。
一方、上記条件c3を満足すれば、図32(A)に示すように、1サイクル後(k回の副走査送り後)のノズルNの位置が、初期のノズル位置から「Nuse×k」ラスタライン離れた位置に来る。従って、上記条件c1〜c3を満足することによって、これらの「Nuse×k」本のラスタラインの範囲において、記録されるラスタラインに抜けや重複を無くすることができる。
図33は、オーバーラップ数Sが2以上の場合のドット記録方式の基本的条件を示すための説明図である。オーバーラップ数Sが2以上の場合には、同一のラスタライン上でS回の主走査が実行される。オーバーラップ数Sが2以上のドット記録方式は、「オーバーラップ方式」と呼ばれることがある。
本実施形態では、図24に示すように、オーバーラップ数Sが2以上の場合を想定する。このため、本発明では、ドット記録方式として以下に説明するオーバーラップ方式を採用する。但し、図24に示すオーバーラップ数Sは例示であり、本発明は、オーバーラップ数Sが「1」である場合を含むものであってもよく、ドット記録方式として上述したインターレース記録方式を採用しても構わない。
図33に示すドット記録方式(オーバーラップ方式)は、図32(B)に示すドット記録方式のパラメータの中で、オーバーラップ数Sと副走査送り量Lとを変更したものである。図33(A)に示すように、図33のドット記録方式における副走査送り量Lは2ドットの一定値である。図33(A)においては、偶数回目のパスのノズルNの位置を菱形で示し、奇数回目のパスのノズルNの位置を丸で示すことで、両者を区別している。
通常は、図33(A)の右端に示すように、偶数回目のパスで記録されるドット位置は、奇数回目のパスで記録されるドット位置と、主走査方向に1ドット分だけシフトしている。従って、同一のラスタライン上の複数のドットは、異なる2つのノズルNによってそれぞれ間欠的に記録されることになる。たとえば、有効記録範囲内の最上端のラスタラインは、パス2において2番のノズルNで1ドットおきに間欠的に記録された後に、パス5において0番のノズルNで1ドットおきに間欠的に記録される。オーバーラップ数が「S」のオーバーラップ方式では、各ノズルNは、1回の主走査中に1ドット記録した後に、「S−1」ドット記録を禁止するように、間欠的なタイミングでノズルNが駆動される。
このように、各主走査時にラスタライン上の間欠的な画素位置を記録対象とするオーバーラップ方式を、「間欠オーバーラップ方式」と呼ぶ。なお、間欠的な画素位置を記録対象とする代わりに、各主走査時にラスタライン上のすべての画素位置を記録対象としてもよい。すなわち、1本のラスタライン上でS回の主走査を実行するときに、同じ画素位置でドットの重ね打ちを許容してもよい。このようなオーバーラップ方式を、「重ね打ちオーバーラップ方式」または「完全オーバーラップ方式」と呼ぶ。
なお、間欠オーバーラップ方式では、同一ラスタラインを記録する複数のノズルNの主走査方向の位置が互いにシフトしていればよいので、各主走査時における実際の主走査方向のシフト量は、図33(A)に示すもの以外にも種々のものが考えられる。例えば、パス2では主走査方向のシフトせずに丸で示す位置のドットを記録し、パス5において主走査方向にシフトして菱形で示す位置のドットを記録するようにすることも可能である。
図33(B)の表の最下段には、1サイクル中の各パスのオフセットNoffの値が示されている。1サイクルは6回のパスを含んでおり、パス2からパス7までの各パスにおけるオフセットNoffは、「0〜2」の範囲の値を2回ずつ含んでいる。また、パス2からパス4までの3回のパスにおけるオフセットNoffの変化は、パス5からパス7までの3回のパスにおけるオフセットNoffの変化と等しい。図33(A)の左端に示すように、1サイクルの6回のパスは、3回ずつの2組の小サイクルに区分することができる。すなわち、オーバーラップ数が「S」である場合、1サイクルは、小サイクルをS回繰り返すことによって完了する。
オーバーラップ数Sが2以上の整数の場合には、上述した条件c1〜c3は、以下の条件c1a、c2a、c3aのように書き換えられる。
(条件c1a) 1サイクルの副走査送り回数は、ノズルピッチkとオーバーラップ数Sとを乗じた値(k×S)に等しい。
(条件c2a) 1サイクル中の各回の副走査送り後のノズルNのオフセットNoffは、「0」〜「k−1」の範囲の値であって、それぞれの値がS回ずつ繰り返される。
(条件c3a) 副走査の平均送り量{Lsum/(k×S)}は、実効ノズル個数Neff(=「Nuse/S」)に等しい。換言すれば、1サイクル当たりの副走査送り量Lの累計値Lsumは、実効ノズル個数Neffと副走査送り回数(k×S)とを乗算した値{Neff×(k×S)}に等しい。
上記の条件c1a〜c3aは、オーバーラップ数Sが「1」の場合にも成立する。従って、条件c1a〜c3aは、オーバーラップ数Sの値に係わらず、ドット記録方式に関して一般的に成立する条件であると考えられる。すなわち、上記の3つの条件c1a〜c3aを満足すれば、有効記録範囲において、記録されるドットに抜けや不要な重複が無いようにすることができる。
但し、間欠オーバーラップ方式を採用する場合には、同じラスタラインを記録するノズルNの記録位置を互いに主走査方向にシフトするという条件も必要である。また、重ね打ちオーバーラップ方式を採用する場合には、上記の条件c1a〜c3aが満足されていればよく、各パスにおいてすべての画素位置が記録対象とされる。
なお、図32及び図33では、副走査送り量Lが一定値である場合について説明したが、上記の条件c1a〜c3aは、副走査送り量Lが一定値である場合に限らず、副走査送り量として複数の異なる値の組み合わせを使用する場合にも適用可能である。
なお、本明細書において、副走査送り量Lが一定値である副走査送りを「定則送り」と呼び、副走査送り量Lとして複数の異なる値の組み合わせを使用する副走査送りを「変則送り」と呼ぶ。
以下、本実施形態では、ドット記録方式として、図33で説明したオーバーラップ方式を採用するが、例えば、以下の図34〜図40で説明する第1乃至第4の例のドット記録方式を採用してもよい。
図34は、本発明で採用しうるドット記録方式のうち、ドット記録方式の第1の例を示す説明図である。図34では、ドット記録方式の第1の例におけるパラメータの一例として、ノズルピッチk=4、使用ノズル個数Nuse=12、オーバーラップ数S=4、副走査送り量L=3である場合を想定する。これらのパラメータは、上述した条件c1a〜c3aを満足している。従って、記録されるドットに抜けや不要な重複が無く印刷を実行することができる。また、記録方式の基本的条件で説明したように、ノズルピッチkが「4」でオーバーラップ数Sが「4」なので、1サイクルには16回のパスが含まれることになる。図34では、この1サイクルに含まれる16回のパスの一部を示している。
図34の右端に示す画素位置番号は、各ラスタライン上の画素の配列の順番を示しており、円内の番号はその画素位置におけるドットの形成を担当するパスの番号を示している。たとえば、1番目のラスタラインは#1と#5と#9と#13の4回のパスでドットが形成される。すなわち、nを「0」以上の整数としたとき、1番目のラスタラインについては、画素位置番号が(1+4×n)番のドットは#1のパスが形成し、画素位置番号が(2+4×n)番のドットは#5のパスが形成し、画素位置番号が(3+4×n)番のドットは#9のパスが形成し、画素位置番号が(4+4×n)番のドットは#13のパスが形成することを示している。同様に、2番目のラスタライン上のドットは#4と#8と#12と#16のパスで形成され、3番目のラスタライン上のドットは#3と#7と#11と#15のパスで形成され、4番目のラスタライン上のドットは#2と#6と#10と#14のパスで形成される。
このように、αを「0」以上の整数としたとき、(1+3×α)番目のラスタラインは#1と#5と#9と#13のパスで、(2+3×α)番目のラスタラインは#4と#8と#12と#16のパスで、(3+3×α)番目のラスタラインは#3と#7と#11と#15パスで、(4+3×α)番目のラスタラインは#2と#6と#10と#14のパスで形成される。
このようなラスタラインが形成されるように、制御部60は、印刷信号SI(図27及び図28を参照)の内容を決定する。
具体的には、例えば、1番目のラスタラインの画素位置番号が(1+4×n)番の画素に、#1のパスでドットを形成させるためには、#1のパスにおいて印刷信号SIの示す値を、(1+4×n)番目の画素位置においてのみ「記録」とし、(2+4×n)、(3+4×n)、及び、(4+4×n)番の画素位置においては「非記録」とすればよい。
ここで、印刷信号SIの内容が「記録」を示す場合とは、ドット種類モードdが4ビットモードであれば、(b1、b2)=(1、1)、(1、0)、(0、1)の何れかの場合であり、ドット種類モードdが2ビットモードであれば、b1=「1」である場合である。また、印刷信号SIの内容が「非記録」を示す場合とは、ドット種類モードdが4ビットモードであれば、(b1、b2)=(0、0)の場合であり、ドット種類モードdが2ビットモードであれば、b1=「0」である場合である。
この主走査方向に隣接する二つの画素のドット形成の時間的間隔は、たとえば、各パスに要する時間を5秒とすると、ラスタ番号が1番で画素位置番号が1番の画素(パス1で記録)と、ラスタ番号が1番で画素位置番号が2番の画素(パス5で記録)とでは、20秒間である。このように、オーバーラップ数Sが2以上となると、一本のラスタラインを複数のパスで形成することになるので、主走査方向に隣接する画素のドットを、連続する主走査では形成せず、連続しない主走査で形成するようにすることができる。この結果、主走査方向に隣接する画素に事前に形成されたドットのインク滴がかなり乾燥し、主走査方向へのインク滴の凝集または滲みが抑制されることになる。
ただし、画素位置番号が1の画素位置に着目すると、ラスタ番号が5の画素は#1のパスが、ラスタ番号が4の画素は#2のパスが、ラスタ番号が3の画素は#3のパスが、ラスタ番号が2の画素は#4のパスが担当する。このように、#1、#2、#3…といった連続するパスが副走査方向に順に隣接している。また、他の画素位置についても同様である。
図35は、本発明のドット記録方式の第2の例を示す説明図である。このドット記録方式は、ドット記録方式の第1の例とパラメータは同一であるが、各パスの記録する画素位置が第1の例のドット記録方式とは異なる。具体的には、(1+4×α)番目と(3+4×α)番目のラスタラインについては、ドット記録方式の第1の例と同様であるが、これと隣接する(2+4×α)番目と(4+4×α)番目のラスタラインについては、画素位置が異なる。例えば、このドット記録方式の第2の例では、画素位置番号が(1+4×n)番のドットは#10のパスが形成し、画素位置番号が(2+4×n)番のドットは#14のパスが形成し、画素位置番号が(3+4×n)番のドットは#2のパスが形成し、画素位置番号が(4+4×n)番のドットは#6のパスが形成するが、第1の例では別のパスが形成する点で異なる。
図36は、本発明のドット記録方式の第1の例と第2の例における各パスのドットが記録する画素を示す説明図である。図示するように、ドット記録方式の第2の例の(4+4×m)番目のラスタラインと、ドット記録方式の第1の例の(4+4×m)番目のラスタラインとでは、パス#2、#6、#10、#14の記録する画素の画素位置番号が入れ替えられている。具体的には、(1+4×n)番と(2+4×n)番のドットと、画素位置番号が(3+4×n)番と(4+4×n)番のドットとが入れ替えられている。この入れ替えは、印刷信号SIの示す値を変更することで実現できる。
このように、各パスにおける印刷信号SIの示す値を変更して、各画素位置の記録を担当するパスを変更することで、連続するパスが副走査方向に隣接する画素のドットを記録しないようにすることができる。
ただし、主走査方向と副走査方向との間の斜めの方向に隣接する画素に着目すると、この第2の例では、連続するパスが記録を担当する画素が存在する。具体的には、#4、#5のパスと#8、#9のパスである。ただし、斜めの方向に隣接する画素は、主走査方向や副走査方向に隣接する画素と比較すると、距離的間隔が大きいので、凝集等の発生は比較的起こりにくい。
図37は、本発明のドット記録方式の第3の例を示す説明図である。図37では、ドット記録方式の第3の例におけるパラメータの一例として、ノズルピッチk=4、使用ノズル個数Nuse=20、オーバーラップ数S=5、副走査送り量L=3である場合を想定する。これらのパラメータは、上述した条件c1a〜c3aを満足している。従って、記録されるドットに抜けや不要な重複が無く印刷を実行することができる。
図35に示したドット記録方式の第2の例との違いは、オーバーラップ数Sを「4」から「5」に増大して、各パスが記録を担当する画素位置の自由度を増大させた点である。
図38は、本発明のドット記録方式の第2の例と第3の例における各パスのドット記録位置を示す説明図である。図35に示したドット記録方式の第2の例では、4カ所の画素位置から各パスが記録する位置を選択できたが、このドット記録方式の第3の例では、画素位置番号が(1+5×n)、(2+5×n)、(3+5×n)、(4+5×n)、及び、(5+5×n)の5カ所の画素位置から各パスが記録する画素位置を選択できる。この結果、このドット記録方式の第3の例では、斜めの方向に隣接する画素についても、連続して記録するパスが存在しないように記録することが可能である。
図39は、本発明のドット記録方式の第4の例を示す説明図である。図35に示したドット記録方式の第2の例との違いは、副走査送りが変則送りである点である。このドット記録方式の第4の例では、副走査送りを定則送りから変則送りに変えることで、一部のパスの担当するラスタラインを入れ替えている。具体的には、#5のパスと#6のパスとの間と、#9のパスと#10のパスとの間とで記録する画素を入れ替えている。
図40は、本発明のドット記録方式の第2の例と第4の例における各パスのドット記録位置を示す説明図である。ドット記録方式の第2の例とドット記録方式の第4の例における各パスのドット記録位置を比較すると、#5のパスは、ドット記録方式の第2の例では(1+4×α)番目のラスタラインを記録しているが、ドット記録方式の第4の例では(4+4×α)番目のラスタラインを記録している。一方、#6のパスは、ドット記録方式の第2の例では(4+4×α)番目のラスタラインを記録しているが、ドット記録方式の第4の例では(1+4×α)番目のラスタラインを記録している。また、#9、#10のパスも同様に入れ替えられている。
パスが記録を担当するラスタラインの入れ替えは、各パスの副走査送り量Lを一部変更することによりできる。具体的には、#5のパスと#6のパスの入れ替えは、図39に示すように、ドット記録方式の第2の例における一定の副走査送り量L=3に対して、ドット記録方式の第4の例においては、#5のパスを副走査送り量L=2で、#6のパスを副走査送り量L=5で、#7のパスを副走査送り量L=2で、それぞれ送ることで可能となっている。#9のパスと#10のパスの入れ替えも、同様に副走査送り量を調整することにより行うことができる。
上述したドット記録方式の第1乃至第4の例から理解できるように、各パスが記録を担当する画素を、各パスにおける印刷信号SIの示す値の内容や各パスの副走査送り量Lを調整することにより変更することができる。このように、各パスが記録を担当する画素を適切に変更することにより、隣接する画素の記録のタイミングをずらすことができる。
上述した第3の対策(特に布地に対する印刷速度を遅くする)は、上述のとおり、あるドットが形成されてから、当該あるドットに隣接するドットが形成されるまでの時間長を長くすることを目的とするものである。
よって、本実施形態では、主走査方向、副走査方向、または、斜めの方向のいずれかの方向において隣接する画素について、連続して記録するパスが存在しないようにドットを記録するドット記録方式(例えば、ドット記録方式の第3の例または第4の例)を採用する。以下、「いずれかの方向において隣接する画素について、連続して記録するパスが存在しないようにドットを記録する」ことを、「第17の条件」と称する。第17の条件を満たすようなドット記録方式を採用することにより、第3の対策を有効に講ずることが可能となり、凝集や滲みの発生を防止し、印刷画像の劣化を抑制することができる。
なお、上述のとおり、本発明は、上述したインターレース記録方式や各種オーバーラップ方式を採用するものであってもよい。
<10.第1実施形態の結論>
以上に説明したように、本実施形態では、動作規定情報を、第1の条件〜第16の条件が充足されるように定め、また、ドット記録方式として、第17の条件が充足するような方式を採用することで、各印刷モードにおいて第1の対策〜第4の対策が適切に講じられるようにしている。また、第5の対策〜第8の対策を講じていない印刷モードを、不適切印刷モードとしている。よって、本実施形態では、第1の対策〜第8の対策を講じた印刷モードにより印刷処理を実行することができる。
このため、これらの対策を講じることなく写真用紙、普通用紙、及び、布地に対して印刷処理を実行する際に生じる様々な弊害、例えば、インクの凝縮、インクの滲み、コックリング現象の発生、インクに含まれる色材の浸透による色再現性の劣化、記録媒体Pの繊維及び吐出部D内のインクの接触よる記録媒体Pの汚染、並びに、記録媒体Pの繊維等の付着による吐出部D(ノズルN)の汚染等を適切に抑制することができる。これにより、写真用紙及び普通用紙等の紙媒体対する印刷処理と、布地に対する印刷処理とを、一つの印刷装置1によって実行することが可能となり、紙媒体への印刷と、布地への印刷の双方のニーズを有する利用者において、印刷に係るコストの低減と、利便性の向上とを図ることができる。
さらに、本実施形態に係るインクジェットプリンター10は、布地にインクを吐出する前に行う前処理として、インクの滲みを防止するための滲み防止剤を塗布したり、布地にインクを吐出した後に行う後処理として、着弾したインクを布地に安定的に定着させるために布地を加熱する等、布地に対する印刷に特有の各種処理を実行する必要がない。このため、これら布地に対する印刷に特有の印刷処理を行う場合と比較して、インクジェットプリンター10の製造コストを低く抑えることができる。
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター10では、インクの溶剤成分を揮発するための加熱処理等の後処理を行う必要がない(行わなくとも印刷処理を実行可能である)。このため、ナイロン等の熱に弱い化学繊維に対しても記録媒体Pを痛めることなく印刷処理を行うことが可能となる。
また、布地に対する印刷では、従来、布地にインクを定着させるための前処理剤や後処理剤(滲み防止剤)等を塗布する処理を行う。しかし、一部の化学繊維のように、前処理剤や後処理剤が、その機能を発揮できない記録媒体Pが存在する。よって、これらの記録媒体Pにおいては、従来のように前処理剤や後処理剤等を塗布する処理を行っても、インクを安定的に定着させることができない。しかし、本実施形態に係るインクジェットプリンター10では、記録媒体Pにインクを定着させるための前処理剤や後処理剤(滲み防止剤)等を塗布する処理を行うことなく、インクを記録媒体Pに定着させることが可能である。このため、化学繊維のように、前処理剤や後処理剤が有効に機能しない記録媒体Pに対しても、インクを安定的に定着させることができる。
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター10では、記録媒体Pにインクを定着させるための前処理剤や後処理剤(滲み防止剤)等を塗布する処理を行う必要がないため、記録媒体Pの厚みや材質に応じて前処理剤や後処理剤等の塗布量を制御する必要が無く、インクジェットプリンター10の制御を簡素化することが可能となる。
<B.第2実施形態>
上述した第1実施形態は、図10に示すように、印刷モードが、媒体モードm、画質モードg、印刷方向モードh、ドット種類モードd、及び、カラーモードcの、5種類の設定モードの組み合わせで定められるものである。
これに対して、第2実施形態は、図41に示すように、印刷モードが、媒体モードm、画質モードg、印刷方向モードh、ドット種類モードd、及び、カラーモードcに加えて、媒体種類モードpを含む、合計6種類の設定モードの組み合わせで定められる点で、第1実施形態と相違する。
なお、第2実施形態に係る印刷装置は、印刷モードに含まれる設定モードの種類と、動作規定情報の内容とが、第1実施形態に係る印刷装置1とは異なる点を除き、第1実施形態に係る印刷装置1と同様に構成される。このため、以下に示す第2実施形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する(以下で説明する変形例についても同様)。
図41は、第2実施形態に係る印刷モードを構成する6種類の設定モードの各々の設定内容を表す説明図である。
この図に示すように、第2実施形態に係る印刷モードのうち、媒体種類モードpを除く5種類の設定モードの内容については、図10に示す第1実施形態に係る設定モードの内容と同様である。
また、図41に示すように、媒体種類モードpは、写真用紙モードが指定される際に指定可能な媒体種類モードpとして、フォトペーパー、光沢フォトペーパー、マットフォトペーパー、コート紙、光沢写真用紙、及び、絹目調写真用紙への印刷にそれぞれ対応する、フォトペーパーモード(p=11)、光沢フォトペーパーモード(p=12)、マットフォトペーパーモード(p=13)、コート紙モード(p=14)、光沢写真用紙モード(p=15)、及び、絹目調写真用紙モード(p=16)を含む。
また、媒体種類モードpは、普通用紙モードが指定される際に指定可能な媒体種類モードpとして、普通紙、再生紙、及び、ファイン紙への印刷にそれぞれ対応する、普通紙モード(p=21)、再生紙モード(p=22)、及び、ファイン紙モード(p=23)を含む。
また、媒体種類モードpは、布地モードが指定される際に指定可能な媒体種類モードpとして、天然繊維、及び、化学繊維への印刷にそれぞれ対応する、天然繊維モード(p=31)、及び、化学繊維モード(p=32)を含む。
図42は、動作規定情報テーブルTBL14Aのデータ構造の概略を示す図である。
動作規定情報テーブルTBL14Aは、図24に示す動作規定情報テーブルTBL14と同様に、印刷モードと、印刷モードに対応する動作規定情報とを関連付けて記憶している。
第2実施形態において、動作規定情報は、印刷モードのうち、媒体モードm、媒体種類モードp、画質モードg、印刷方向モードh、及び、ドット種類モードdの組合せ毎に定められる。但し、第2実施形態では、メニスカス位置dZ以外の動作規定情報については、媒体種類モードpの設定内容にかかわらず、媒体モードm、画質モードg、及び、ドット種類モードdの組み合わせ毎に、第1実施形態と同様の内容に設定されている(図24参照)。
なお、図42では、動作規定情報のうち、メニスカス位置dZ、最大ドット形成インク量W、及び、オーバーラップ数Sのみを図示し、それ以外の動作規定情報については図示省略している。また、この図では、メニスカス位置dZの内容が同一となる設定モードの組み合わせについては、当該設定モードの組み合わせ毎に纏めて示している(図において「全て」と記載)。また、この図では、印刷性能テーブルTBL15に記憶されている印刷速度Uについても、説明の便宜上、一部図示している。また、最大ドット形成インク量W、オーバーラップ数S、及び、印刷速度Uについては、図23及び図24と同様であるため、これらの一部については図示を省略している(図において「図示略」と記載)。
図42に示すメニスカス位置dZは、上述した第4の対策を考慮して定められる。
上述のとおり、第4の対策は、「記録媒体Pの繊維が吐出部D内部のインクに接触することによる記録媒体Pの汚染を防止するためにメニスカス位置dZを引き込む」ことである。
当該第4の対策を適切に講じるため、第1実施形態では、第13の条件を充足するように動作規定情報を定めた。具体的には、布地モードにおけるメニスカス位置dZをハイポジションdZ-Hとし、普通用紙モードにおけるメニスカス位置dZをローポジションdZ-Lとした。
しかし、普通用紙に対して継続的にインクを吐出する場合、当該普通用紙に吐出されるインク量が当該普通用紙が受容可能なインク量を超過して、コックリング現象が生じることがある。このコックリング現象は、最大ドット形成インク量Wが多くなるに従って、発生確率が高くなる。そして、普通用紙においてコックリング現象が生じると、コックリング現象が生じていない場合と比較して、記録媒体Pと吐出部Dとが接近する。このため、記録媒体Pが吐出部D内のインクに接触して記録媒体Pが汚染される可能性が高くなる。
但し、記録媒体Pへのインクの吐出からコックリング現象の発生までには、ある程度の時間を要する。このため、コックリング現象が生じた場合であっても、印刷速度Uを速くすることで、記録媒体Pの汚染の可能性を低く抑えることができる。
なお、インクを記録媒体P上の目標位置に正確に着弾させるという観点からは、メニスカス位置dZと記録媒体Pとの距離が遠いハイポジションdZ-Hよりも、メニスカス位置dZと記録媒体Pとの距離が近いローポジションdZ-Lが好ましい。
以上を勘案して、第2実施形態では、媒体モードmが普通用紙モードである印刷モードのうち、特定の印刷モード(以下、「普通用紙特定印刷モード」と称する)においては、メニスカス位置dZが、複数回(オーバーラップ数Sにより規定される回数)のパスの途中で、ローポジションdZ-LからハイポジションdZ-Hに切り替わるように、動作規定情報を定める(以下、当該設定条件を、「第18の条件」と称する)。
ここで、普通用紙特定印刷モードとは、媒体モードmが普通用紙モードであって、最大ドット形成インク量Wが閾値Wth1(閾値Wth1は正の実数)以上であり、且つ、印刷速度Uが閾値Uth1(閾値Uth1は正の実数)以下となる印刷モードである。
第2実施形態において、普通用紙特定印刷モードは、図42においてメニスカス位置dZが「dZ-L→dZ-H」で示される印刷モードである。より具体的には、第2実施形態において普通用紙特定印刷モードは、媒体モードmが普通用紙モードであり、画質モードgが画質優先モードであり、印刷方向モードhが単方向モードであり、且つ、ドット種類モードdが4ビットモードである印刷モードである。
一般的に、速度優先モードに比べて、画質優先モードの印刷速度Uは遅くなる場合が多い(第9の条件または第12の条件を参照)。また、通常、双方向モードに比べて単方向モードの印刷速度Uは遅い。また、一般的に、2ビットモードに比べて、4ビットモードの最大ドット形成インク量Wは多くなる場合が多い(第4の条件を参照)。つまり、普通用紙特定印刷モードでは、複数回のパスの途中でコックリング現象が生じ、その結果として記録媒体Pが汚染される可能性が高い。
このため、第2実施形態では、普通用紙特定印刷モードにおいて、第13の条件の代わりに第18の条件を充足するようにメニスカス位置dZを定める。これにより、複数回のパスの途中で記録媒体P(普通用紙)にコックリング現象が生じたとしても、記録媒体Pの繊維が吐出部D内部のインクに接触する可能性を低く抑えることができ、記録媒体Pが汚染される可能性を低減させることができる。
なお、図42においては、閾値Wth1が「18ナノグラム」であり、閾値Uth1が「2.0ページ/分」である場合を想定している。但し、これらの閾値Wth1及び閾値Uth1の値は一例であり、これらの値は、普通用紙の特性を考慮して適宜定めればよい。
また、図42に示す普通用紙特定印刷モードは一例であり、例えば、媒体モードmが普通用紙モードであり、画質モードgが画質優先モードである印刷モードの全てを、普通用紙特定印刷モードとしてもよい。
また、第1実施形態では、第13の条件を充足するように、布地モードにおけるメニスカス位置dZをハイポジションdZ-Hとしたが、上述のとおり、インクを記録媒体P上の目標位置に正確に着弾させるという観点からは、メニスカス位置dZをローポジションdZ-Lとすることが好ましい。
また、天然繊維は、インクを吸収しやすいため、インク滴の吐出により、天然繊維の毛羽立ちを抑制することができる。毛羽立ちが抑制された場合、メニスカス位置dZをローポジションdZ-Lとしても、記録媒体Pの繊維が吐出部D内部のインクに接触する可能性を低く抑えることができる。
なお、天然繊維の毛羽立ちの抑制にはある程度以上の量のインクが必要であり、また、インクの吐出から毛羽立ちの抑制までにはある程度以上の時間を要する。
以上を勘案して、第2実施形態では、媒体モードmが布地モードである印刷モードのうち、特定の印刷モード(以下、「布地特定印刷モード」と称する)においては、メニスカス位置dZが、複数回(オーバーラップ数Sにより規定される回数)のパスの途中で、ハイポジションdZ-HからローポジションdZ-Lに切り替わるように、動作規定情報を定める(以下、当該設定条件を、「第19の条件」と称する)。
ここで、布地特定印刷モードとは、媒体モードmが布地モードであって、最大ドット形成インク量Wが閾値Wth2(閾値Wth2は正の実数)以上であり、且つ、印刷速度Uが閾値Uth2(閾値Uth2は正の実数)以下となる印刷モードである。
第2実施形態において、布地特定印刷モードは、図42においてメニスカス位置dZが「dZ-H→dZ-L」で示される印刷モードである。より具体的には、第2実施形態において布地特定印刷モードは、媒体モードmが布地モードであり、媒体種類モードpが天然繊維モードであり、画質モードgが画質優先モードであり、ドット種類モードdが4ビットモードである印刷モードである。
上述のとおり、速度優先モードに比べて画質優先モードの印刷速度Uは遅くなる場合が多く、また、2ビットモードに比べて4ビットモードの最大ドット形成インク量Wは多くなる場合が多い。つまり、布地特定印刷モードでは、複数回のパスの途中で毛羽立ちが抑制され、その結果として記録媒体Pが汚染される可能性が低くなる。このため、布地特定印刷モードにおいて、第13の条件の代わりに第19の条件を充足するようにメニスカス位置dZを定めることで、記録媒体Pを汚染することなく、複数回のパスの途中でメニスカス位置dZをローポジションdZ-Lとすることができ、その結果、印刷される画像の画質を高くすることができる。
なお、図42においては、閾値Wth2が「10ナノグラム」であり、閾値Uth2が「1.0ページ/分」である場合を想定している。但し、これらの閾値Wth2及び閾値Uth2の値は一例であり、これらの値は、布地(天然繊維)の特性を考慮して適宜定めればよい。
また、図42に示す布地特定印刷モードは一例であり、例えば、媒体モードmが布地モードであり、媒体種類モードpが天然繊維モードであり、画質モードgが画質優先モードである印刷モードの全てを、布地特定印刷モードとしてもよい。
以上に説明したように、第2実施形態では、媒体種類モードpを導入して印刷モードを細分化することで、記録媒体P毎の特性により細やかに対応した印刷処理を実行することができる。特に、布地において天然繊維と化学繊維とを区別して、それぞれに適した態様で印刷処理を実行することができることになる。
また、第2実施形態では、動作規定情報及びドット記録方式を、第1の条件〜第19の条件が充足されるように定めるため、第1の対策〜第8の対策を講じた印刷モードにより印刷処理を実行することができる。
このように、紙媒体に対する印刷処理と、布地に対する印刷処理とを、一つの印刷装置1によって実行する場合において、各印刷処理において印刷装置1の利用者が求めるニーズを充足した、質の高い印刷処理を実行することができる。
<C.変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。
<変形例1>
上述した実施形態において、印刷処理において採用可能な印刷モード(最適印刷モード、適切印刷モード、及び、限定的適切印刷モード)は第1の対策〜第8の対策の全てを適切に講じた印刷モードに限られ、それ以外の印刷モードを「不適切印刷モード」としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。印刷処理において採用可能な印刷モードは、第1の対策〜第8の対策のうち少なくとも1つの対策を適切に講ずるものであればよい。
同様に、動作規定情報は、第1実施形態においては第1の条件〜第17の条件の全てを充足するように定められ、また、第2実施形態においては、第1の条件〜第19の条件の全てを充足するように定められているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、これらの条件のうち少なくとも一つの条件を充足するようにを定められていればよい。
例えば、各印刷モードが、少なくとも第1の対策(特に布地に対する印刷においてインクの吐出量を少なくする)を適切に講じたものとするために、少なくとも第1の条件(布地モードにおける最大ドット形成インク量Wを、他の媒体モードmにおける最大ドット形成インク量Wよりも少なくする)を充足するように動作規定情報を定めてもよい。
また、例えば、各印刷モードが、少なくとも第2の対策(特に布地に対する印刷において解像度を低くする)を適切に講じたものとするために、少なくとも第5の条件(布地モードにおける解像度Rを、他の媒体モードmにおける解像度Rよりも低くする)を充足するように動作規定情報を定めてもよい。
また、例えば、各印刷モードが、少なくとも第3の対策(特に布地に対する印刷において印刷速度を遅くする)を適切に講じたものとするために、少なくとも、第8の条件(布地モードにおける駆動周波数Fを、他の媒体モードmにおける駆動周波数Fよりも低くする)、または、第11の条件(布地モードにおけるオーバーラップ数Sを、他の媒体モードmにおけるオーバーラップ数Sよりも大きくする)のうち何れか一方を充足するように動作規定情報を定めることで、動作規定情報が、第14の条件(布地モードにおける印刷速度Uを、他の媒体モードmにおける印刷速度Uよりも遅くする)を充足するようにしてもよい。なお、この場合において、例えば、動作規定情報を第5の条件(布地モードにおける解像度Rを、他の媒体モードmにおける解像度Rよりも低くする)を充足するように定めると、印刷速度が速くなり、第3の対策を適切に講ずることができなくなる場合も生じる。このような場合には、第3の対策を適切に講じられていない印刷モードを、不適切印刷モードとして、印刷処理において採用可能な印刷モードから除外してもよい。
なお、一般的に、駆動周波数Fやオーバーラップ数Sが一定である場合、解像度Rが低くなるに従って、印刷速度Uは速くなる。このため、印刷速度Uと解像度Rとの関係を考慮して、第3の対策(特に布地に対する印刷において印刷速度を遅くする)を緩和してもよい。具体的には、布地モードにおける解像度Rが、その他の媒体モードmにおける解像度Rよりも低い場合には、布地モードにおける印刷速度Uが、その他の媒体モードmにおける印刷速度Uよりも速くなるように、印刷速度規定情報の駆動周波数F及びオーバーラップ数Sを定めてもよい。
また、本変形例のように、第1の条件〜第19の条件のうち一部の条件のみを考慮して動作規定情報を定める場合には、第2の対策(特に布地に対する印刷において解像度を低くする)を施さず、第5の条件(布地モードにおける解像度Rを、他の媒体モードmにおける解像度Rよりも低くする)を考慮せずに動作規定情報を定めてもよい。すなわち、布地モードにおける解像度Rを、その他の媒体モードmにおける解像度R以上としてもよい。但し、この場合には、第3の対策(特に布地に対する印刷において印刷速度を遅くする)を施すことが好ましい。具体的には、布地モードにおける解像度Rと、その他の媒体モードmにおける解像度Rとが同一である場合や、布地モードにおける解像度Rが、その他の媒体モードmにおける解像度Rよりも高い場合には、布地モードにおける印刷速度Uが、その他の媒体モードmにおける印刷速度Uよりも遅くなるように、印刷速度規定情報の駆動周波数F及びオーバーラップ数Sを定めることが好ましい。
なお、第1の対策〜第8の対策のうち、1または2以上の対策を選択する場合、例えば、印刷装置1の利用者が、印刷条件指定画面において、第1の対策〜第8の対策から必要な対策を選択できるようにしてもよい。同様に、第1の条件〜第19の条件のうち、1または2以上の条件を、例えば印刷条件指定画面において選択しうる態様としてもよい。
<変形例2>
上述した実施形態及び変形例では、5種類の設定モードのうち媒体モードmのみが印刷条件指定画面における必須の指定項目であるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、5種類の設定モードのうち、少なくとも媒体モードmを含む2種類以上の設定モードを必須の指定項目としてもよい。
2種類以上の設定モードを必須の指定項目とする場合、媒体モードm及び画質モードgを必須の指定項目とすることが好ましい。この場合、図43に示すように、各媒体モードmに属する複数の印刷モード(この図では40個の印刷モード)において、画質モードgが画質優先モードである印刷モードのうち1つの印刷モードを最適印刷モードとし、且つ、画質モードgが速度優先モードである印刷モードのうち1つの印刷モードを最適印刷モードとすることが好ましい。より具体的には、図43に示す本変形例に係るモード評価テーブルTBL13のように、写真用紙モードにおいて、印刷画質が最も高い印刷モード(モード番号:11225)と、印刷速度が最も早い印刷モード(モード番号:12125)とを、最適印刷モードとし(モード番号については図13参照。印刷速度については図25参照)、普通用紙モードにおいて、印刷画質が最も高い印刷モード(モード番号:21222)と、印刷速度が最も早い印刷モード(モード番号:22112)とを、最適印刷モードとし、布地モードにおいて、印刷画質が最も高い印刷モード(モード番号:31224)と、印刷速度が最も早い印刷モード(モード番号:32224)とを、最適印刷モードとすればよい。
また、上述した実施形態及び変形例では、印刷装置1の利用者は、印刷条件指定画面において、媒体モードm、画質モードg、印刷方向モードh、ドット種類モードd、及び、カラーモードcの5種類の設定モードを指定することができるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、印刷条件指定画面において、当該5種類の設定モードのうち一部の設定モードのみを指定できる態様であってもよい。また、印刷条件指定画面において、動作規定情報、例えば解像度Rを指定できる態様であってもよい。但し、これらの場合であっても、印刷条件指定画面では、少なくとも媒体モードmを指定できることが好ましく、媒体モードm及び画質モードgを指定できることがより好ましい。
<変形例3>
上述した実施形態及び変形例において、第7の対策として、布地に対する印刷処理においては特色カラーモードを採用することとしているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、図43に示すように、第7の対策を緩和して、布地モードにおいて、カラーモードcを、特色カラーモードの他に、ピュアブラックモードまたは基本カラーモードに設定可能としてもよい。
この場合であっても、布地に対する印刷処理において、淡色インクが使用されないため、一定の画質を確保することができる。
<変形例4>
上述した実施形態及び変形例では、例えば図12に示すように、カラーモードcが、ピュアブラックモード、基本カラーモード、濃淡カラーモード、特色カラーモード、及び、全色カラーモードの何れかに設定されるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、5つのカラーモードcのうち、1または2以上のカラーモードcの何れかに設定可能な態様としてもよい。例えば、カラーモードcが、基本カラーモード、濃淡カラーモード、及び、特色カラーモードの何れかに設定されるものであってもよい。
この場合、例えば、図44に例示する本変形例に係るモード評価テーブルTBL13のように、媒体モードmが布地モードであれば、カラーモードcが特色カラーモードである印刷モードを、最適印刷モードまたは適切印刷モードとし、媒体モードmが写真用紙モードまたは普通用紙モードであれば、カラーモードcが基本カラーモードまたは濃淡カラーモードある印刷モードを、最適印刷モードまたは適切印刷モードとしてもよい。
この場合、布地モードにおいて使用されるインクの種類数は、写真用紙モード及び普通用紙モードにおいて使用されるインクの種類数よりも多くなる。
<変形例5>
上述した実施形態及び変形例では、各印刷モードにおいて、最大ドット形成インク量Wが、全ての吐出部Dに対して共通となるように定められているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、各印刷モードにおいて、ノズル列毎(吐出群毎)に最大ドット形成インク量Wを異なる値としてもよい。換言すれば、各印刷モードにおいて、吐出部Dから吐出するインクの種類毎に、最大ドット形成インク量Wを異なる値としてもよい。
この場合、例えば、吐出群毎に、駆動信号生成部50を個別に設け、駆動波形信号Comを駆動信号生成部50毎に異なる波形としてもよい。具体的には、9個の吐出群に1対1に対応するように9個の駆動信号生成部50を設け、そして、制御部60が、9個の駆動信号生成部50に1対1に対応する9種類の駆動波形信号Comを出力してもよい。
また、例えば、吐出部Dが吐出するインクの色区分毎に、駆動信号生成部50を個別に設けてもよい。具体的には、3つの色区分に1対1に対応するように3個の駆動信号生成部50を設け、そして、制御部60が、3個の駆動信号生成部50に1対1に対応する3種類の駆動波形信号Com(基本色インクに対応する駆動波形信号Com、特色インクに対応する駆動波形信号Com、及び、淡色インクに対応する駆動波形信号Com)を出力してもよい。
これらの場合において、制御部60は、各駆動信号生成部50に対して供給する駆動波形信号Comの波形を、当該駆動信号生成部50に対応する吐出部Dが形成する大ドットのインク量と、当該吐出部Dから吐出されるインクの種類に対応する最大ドット形成インク量Wとが、等しくなるような波形にすればよい。
ところで、淡色インクは他のインクと比較してインク中の溶剤成分の重量比が大きい。このため、淡色インクの最大ドット形成インク量Wが少ないと、十分な色再現性を確保できないことがある。そこで、例えば、各印刷モードにおいて、淡色インクについての最大ドット形成インク量Wを、基本色インクまたは特色インクの最大ドット形成インク量W以上してもよい。
また、上述した実施形態及び変形例において、最大ドット形成インク量Wは、設定されたカラーモードcの内容とは無関係に、媒体モードm、画質モードg、及び、ドット種類モードdの組合せ毎に決定されているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、カラーモードc毎に最大ドット形成インク量Wを異なる値としてもよい。
例えば、各色のインクにおいて、濃淡カラーモード及び全色カラーモードにおける最大ドット形成インク量Wを、それ以外のカラーモードcにおける最大ドット形成インク量W以下としてもよい。濃淡カラーモード及び全色カラーモードでは、淡色インクを使用するため、印刷で使用されるインクの総量が多くなることがある。このため、淡色インクを使用する場合には、各吐出部Dから吐出される最大ドット形成インク量Wを少なくすることで、インク滴同士が結合することによる凝縮や、インクが混ざり合うことで生じるの滲み等の発生を抑制することが可能となる。
また、例えば、各色のインクにおいて、ピュアブラックモード及び基本カラーモードにおける最大ドット形成インク量Wを、それ以外のカラーモードcにおける最大ドット形成インク量W以上としてもよい。ピュアブラックモードや基本カラーモードでは、その他のカラーモードcと比較して、印刷処理において使用されるブラックインクの割合が高くなり、インクデューティーが高くなる結果、記録媒体Pの地肌の露出する割合が増加する。このため、これらの場合において最大ドット形成インク量Wを多くすることで、記録媒体Pの地肌が露出する割合を低く抑えることが可能となる。
なお、インクの種類毎に最大ドット形成インク量Wを異なる値とする場合、及び、カラーモードc毎に最大ドット形成インク量Wを異なる値とする場合においては、上述した第1の条件(布地モードにおける最大ドット形成インク量Wを、他の媒体モードmにおける最大ドット形成インク量Wよりも少なくする)は、各色のインク毎に成立すればよい。より具体的には、写真用紙モード、普通用紙モード、及び、布地モードの全ての媒体モードmで使用可能な所定色のインクを用いる場合において、上述した第1の条件は、布地モードにおいて当該所定色のインクを用いるときの最大ドット形成インク量Wが、写真用紙モードや普通用紙モードにおいて当該所定色のインクを用いるときの最大ドット形成インク量Wよりも小さくなるように、当該所定色のインクに関する最大ドット形成インク量Wを定める、という条件にしてもよい。
<変形例6>
上述した実施形態及び変形例において、インクジェットプリンター10は、基本色、特色、及び、淡色の3つの色区分の、合計9種類のインクを使用可能であるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、上述した9種類のうちの一部のインクのみを使用するものであってもよいし、当該9種類のインク以外のインクを扱うものであってもよい。
例えば、インクジェットプリンター10は、基本色及び特色の2つの色区分の、合計7種類のインクのみを使用可能(淡色インクを使用しない態様)であってもよい。
<変形例7>
上述した実施形態及び変形例において、第5の対策は、布地に対する印刷処理において双方向モードの採用を禁止するという対策であるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、第5の対策の要件を緩和して、布地のうち天然繊維に対する印刷においてのみ双方向モードの採用を禁止し、布地のうち化学繊維に対する印刷においては双方向モードの採用を許容してもよい。
図21に示すように、化学繊維は天然繊維に比べて、表面の粗さの程度が低い(毛羽立っていない)。このため、化学繊維に対する印刷において双方向モードを許容しても、天然繊維に対する印刷において双方向モードを許容する場合と比較して、ヘッド部30が汚染される可能性は低い。このため、本変形例では、布地のうち化学繊維に対する印刷においては、双方向モードの採用を許容することで、化学繊維に対する印刷速度を向上させる。
<変形例8>
上述した実施形態及び変形例において、印刷データ生成部90は、ホストコンピューター9に設けられたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、印刷データ生成部90は、インクジェットプリンター10に設けられてもよい。すなわち、印刷データ生成部90は、インクジェットプリンター10のCPU61がプリンタードライバープログラムPgDRを実行することにより実現される機能ブロックであってもよい。
また、上述した実施形態及び変形例において、プリンタードライバープログラムPgDR、複数の印刷モードテーブルTBL、及び、色変換テーブルLUTは、ホストコンピューター9の記憶部103に格納されているが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、インクジェットプリンター10の記憶部62に格納されていてもよい。
これらの場合、印刷装置1は、インクジェットプリンター10及びホストコンピューター9を含んで構成されたが、ホストコンピューター9を含まずに構成されるものであってもよい。つまり、インクジェットプリンター10それ自体が印刷装置1であってもよい。
なお、印刷データ生成部(例えば、印刷データ生成部90)及び印刷動作制御部(例えば、制御部60)を、以下では、印刷制御部と総称する。この場合、本発明は、上述した実施形態及び変形例のように、印刷制御部がホストコンピューター9及びインクジェットプリンター10に分散して配置されている態様と、本変形例のように、インクジェットプリンター10に集中して配置されている態様とが含まれることになる。
すなわち、本発明に係る印刷装置は、例えば、紙媒体及び布地媒体を含む記録媒体に対する印刷が可能な印刷装置であって、前記記録媒体にインクを吐出することで前記記録媒体上に画像を形成する印刷実行部と、前記印刷実行部の動作を制御する印刷制御部とを備え、前記印刷制御部は、前記布地媒体に対して印刷を実行する捺染印刷モードにおいて、単位時間あたりに前記印刷実行部が形成できる画像の大きさの程度を表す第1印刷速度が、前記紙媒体に対して印刷を実行する紙媒体印刷モードにおいて、前記単位時間あたりに前記印刷実行部が形成できる画像の大きさの程度を表す第2印刷速度よりも遅くなるように、前記印刷実行部を制御する、ことを特徴としてもよい。
<変形例9>
上述した実施形態及び変形例においては、図29及び図30に示すように、吐出部Dからインクを吐出させるための駆動波形信号Com-Aについて、メニスカス位置dZがハイポジションdZ-Hである場合の波形と、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lである場合の波形とを、異なる波形としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、駆動波形信号Com-Aは、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lである場合の波形のみを有していてもよい。
吐出部Dに駆動波形信号Com-Aに対応する駆動信号Vinが供給されると、当該吐出部Dから記録媒体Pに対してインクが吐出される。このため、このような場合においては、吐出部D内部のインクと記録媒体Pの繊維が接触することによる弊害は少なく、記録媒体Pの繊維とインクとの接触が記録媒体Pの汚染に発展する可能性が少ないからである。
なお、本変形例においても、吐出部Dからインクを吐出させない波形である駆動波形信号Com-Bについては、図29及び図30に示すように、メニスカス位置dZがハイポジションdZ-Hである場合の波形と、メニスカス位置dZがローポジションdZ-Lである場合の波形と、の双方を有していることが好ましい。
<変形例10>
上述した実施形態及び変形例では、インクジェットプリンター10は、図4に示す吐出部D及びリザーバ246を有するものであったが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、図4に示す吐出部D及びリザーバ246の代わりに、図45に示す吐出部Da及びリザーバ246a備えるものであってもよい。
図45に示す吐出部Daは、圧電素子200の代わりに複数の圧電素子200aを積層してなる積層圧電素子201を備え、キャビティ245の代わりにキャビティ245aを備える点で、図4に示す吐出部Dと相違する。この吐出部Daは、圧電素子200aの駆動により振動板243aが振動し、キャビティ245a内のインクをノズルNから吐出するものである。
吐出部Daのキャビティ245aは、キャビティプレート242aと、ノズルNが形成されたノズルプレート240aと、振動板243aと、により区画される空間である。このキャビティ245aは、インク供給口247aを介してリザーバ246aと連通している。リザーバ246aは、キャビティプレート242aとノズルプレート240aとにより区画された空間であり、インク取り入れ口311を介してインクカートリッジ31と連通している。
図45において積層圧電素子201の下端は、中間層244を介して振動板243aと接合されている。積層圧電素子201には、複数の外部電極248および内部電極249が接合されている。即ち、積層圧電素子201の外表面には、外部電極248が接合され、積層圧電素子201を構成する各圧電素子200a同士の間(または各圧電素子200aの内部)には、内部電極249が設置されている。より具体的には、外部電極248と内部電極249の一部が、交互に、圧電素子200aの厚さ方向に重なるように配置される。
外部電極248と内部電極249との間に、駆動信号生成部50より駆動信号Vinを供給することにより、積層圧電素子201が図45の矢印で示すように変形して(図45において上下方向に伸縮して)振動し、この振動により振動板243aが振動する。この振動板243aの振動によりキャビティ245aの容積(キャビティ245a内の圧力)が変化し、キャビティ245a内に充填されたインクがノズルNより吐出される。インクが吐出されてキャビティ245a内のインク量が減少した場合、リザーバ246aからインクが供給される。また、リザーバ246aへは、インク取り入れ口311を介してインクカートリッジ31からインクが供給される。
<変形例11>
上述した実施形態及び変形例では、駆動波形信号ComはCom-A及びCom-Bの2つの信号を含むが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、駆動波形信号Comは、1つの信号(例えば、Com-Aのみ)からなるものでもよいし、3以上の任意の個数の信号からなるものでもよい。また、印刷信号SIのビット数は、1ビットまたは2ビットに限定されるものではなく、表示すべき階調や、駆動波形信号Comに含まれる信号の数により適宜決定すればよい。
1……印刷装置、3……移動体、4……移動機構、7……給紙機構、9……ホストコンピューター、10……インクジェットプリンター、30……ヘッド部、31……インクカートリッジ、32……キャリッジ、41……キャリッジモーター、43……キャリッジモータードライバー、50……駆動信号生成部、60……制御部、61……CPU、62……記憶部、70……相対位置変更部、71……給紙モーター、73……給紙モータードライバー、90……印刷データ生成部、91……印刷モード設定部、92……解像度変換部、93……色変換部、94……ハーフトーン処理部、95……ラスタライズ部、101……表示部、102……入力部、103……記憶部、D……吐出部、N……ノズル。

Claims (9)

  1. 紙媒体に対して印刷を実行するための紙媒体印刷モードと、
    布地媒体に対して印刷を実行するための捺染印刷モードと、
    を有し、
    前記捺染印刷モードにおける印刷速度は、
    前記紙媒体印刷モードにおける印刷速度よりも遅
    前記捺染印刷モードでは使用されず前記紙媒体印刷モードで使用されるインクに含まれる溶媒のインク全体に占める重量比は、
    前記捺染印刷モード及び前記紙媒体印刷モードで使用されるインクに含まれる溶媒のインク全体に占める重量比よりも大きい、
    ことを特徴とする印刷装置。
  2. 紙媒体に対して印刷を実行するための紙媒体印刷モードと、
    布地媒体に対して印刷を実行するための捺染印刷モードと、
    を有し、
    前記捺染印刷モードにおける印刷速度は、
    前記紙媒体印刷モードにおける印刷速度よりも遅
    前記捺染印刷モードにおける印刷解像度は、
    前記紙媒体印刷モードにおける印刷解像度よりも低い、
    ことを特徴とする印刷装置。
  3. 紙媒体に対して印刷を実行するための紙媒体印刷モードと、
    布地媒体に対して印刷を実行するための捺染印刷モードと、
    を有し、
    前記捺染印刷モードにおける印刷速度は、
    前記紙媒体印刷モードにおける印刷速度よりも遅
    前記捺染印刷モードにおいて最大ドットを形成するために要するインク重量は、
    前記紙媒体印刷モードにおいて最大ドットを形成するために要するインク重量よりも小さい、
    ことを特徴とする印刷装置。
  4. 前記捺染印刷モードにおける主走査速度は、
    前記紙媒体印刷モードにおける主走査速度よりも遅い、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の印刷装置。
  5. 前記捺染印刷モードにおける副走査速度は、
    前記紙媒体印刷モードにおける副走査速度よりも遅い、
    ことを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の印刷装置。
  6. 前記捺染印刷モードにおいて使用されるインクの種類は、
    前記紙媒体印刷モードにおいて使用されるインクの種類よりも多い、
    ことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の印刷装置。
  7. 前記捺染印刷モードにおいてインクを吐出するノズルのメニスカス位置と前記布地媒体との間の距離は、
    前記紙媒体印刷モードにおいてインクを吐出するノズルのメニスカス位置と前記紙媒体との間の距離よりも長い、
    ことを特徴とする請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の印刷装置。
  8. 紙媒体に対して印刷を実行するための紙媒体印刷モードと、
    布地媒体に対して印刷を実行するための捺染印刷モードと、
    を有する印刷装置の制御方法であって、
    前記捺染印刷モードにおける印刷速度を、
    前記紙媒体印刷モードにおける印刷速度よりも遅く
    前記捺染印刷モードにおいて最大ドットを形成するために要するインク重量を、
    前記紙媒体印刷モードにおいて最大ドットを形成するために要するインク重量よりも小さくする、
    ことを特徴とする印刷装置の制御方法。
  9. 紙媒体に対して印刷を実行するための紙媒体印刷モードと、
    布地媒体に対して印刷を実行するための捺染印刷モードと、
    を有し、
    コンピュータを具備する印刷装置の制御プログラムであって、
    前記捺染印刷モードにおける印刷速度は、
    前記紙媒体印刷モードにおける印刷速度よりも遅
    前記捺染印刷モードにおいて最大ドットを形成するために要するインク重量は、
    前記紙媒体印刷モードにおいて最大ドットを形成するために要するインク重量よりも小さい、
    ことを特徴とする印刷を、
    前記コンピュータによって実現させる印刷装置の制御プログラム。

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